JP2020174493A - 電力系統監視装置及び電力系統監視方法 - Google Patents

電力系統監視装置及び電力系統監視方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、計測信号に含まれる誤差に影響されることなく、精度良く、事故内容を判定する電力系統監視装置及び電力系統監視方法を提供する。【解決手段】本発明の電力系統監視装置は、電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する入力手段と、入力された電圧及び電流の瞬時値軌跡を生成する瞬時値軌跡生成手段と、生成された瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する特徴量算出手段と、算出された特徴量から、電力系統の事故内容を判定する事故内容判定手段と、を有することを特徴とする。【選択図】 図8

Description

本発明は、電力系統の状態を監視する電力系統監視装置及び電力系統監視方法に関する。
電力系統は、電力の安定供給のため、多くの機器と制御システムとが組み合わせて構築され、運用されている大規模システムである。
電力系統の状態は、電圧、電流、電力、周波数などの物理量で、表記することができる。この電力系統の状態は、面的な広がりを有すると共に、時間的に変化する。また、電力系統の状態は、系統連系する発電と負荷とによって、大きく変化する。
一方、電力は、安定供給される必要があり、電力の安定供給を維持するため、様々な制御システム(制御装置と制御方法)が利用されている。
電力の安定供給に支障をもたらす事故が発生し、停電が発生した場合には、速やかに停電の範囲を縮小し、事故復旧の作業を完了する必要がある。これにより、電力の安定供給に対する信頼度を高めることができる。多くの事故原因が存在する中、速やかに事故復旧の作業を完了するためには、速やかに事故内容を特定する必要がある。
しかし、現状では、事故が発生した現場において、人による確認作業によって、事故内容を特定している。したがって、現状では、事故内容を特定するためには、人が現場へ到着するまでの時間や人が確認作業をする時間が必要であり、また、人が確認作業をするため、経験、知識、体調などの人の状況が関与する。
ところで、近年、ネットワークやデジタル信号処理の発展により、センサにより計測された計測信号を使用して、電力系統の状態や事故内容を特定する技術が提案されている。
こうした本技術分野の背景技術として、特開2011−72163号公報(特許文献1)がある。この特許文献1には、地絡事故時に発生する零相電流と零相電圧との位相差を検出することにより、地絡の方向を検出する地絡方向検出装置が記載され、そして、零相電流検出装置から得られる零相電流検出信号がピークを迎えるタイミングを検出する零相電流ピーク検出手段と、零相電圧検出装置から得られる零相電圧検出信号がピークを迎えるタイミングを検出する零相電圧ピーク検出手段と、を設け、零相電流ピーク検出手段により検出されたタイミングと零相電圧ピーク検出手段により検出されたタイミングとの差を求めることにより、零相電流検出信号及び零相電圧検出信号の位相差を検出し、位相差の検出誤差を低減させることが記載されている(要約参照)。
特開2011−72163号公報
特許文献1に記載される地絡方向検出装置は、電圧及び電流の波形を計測信号として、電圧及び電流の位相差を検出し、地絡の方向を検出するものである。
ここで、電圧及び電流の位相差を検出するためには、波形のゼロクロス点を検出する方法、波形のピーク点を検出する方法、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)などを使用する必要がある。
しかし、計測信号には、ノイズ、高調波、線間のクロストークなどの誤差が含まれる。そして、こうした計測信号を使用して検出される位相差にも、誤差が発生する場合がある。また、事故発生時の計測信号の波形が小振幅又は短時間の場合にも、位相差の検出には誤差が発生する場合がある。このように、位相差(計測信号)に誤差が含まれる場合には、事故内容の特定(判定)にも誤差が発生する場合がある。
なお、計測信号に含まれる誤差を低減する方法として、周波数フィルタを使用して、ノイズを低減する方法がある。しかし、周波数フィルタを作るためには、ノイズ成分の周波数特性を事前に把握し、また、電力系統の周波数特性やサンプリング周波数などを考慮する必要がある。また、周波数フィルタの回路規模、処理負荷、信号遅延などがばらつく場合がある。こうしたことから、周波数フィルタを使用しても、有効にノイズを低減することができない場合がある。
また、事故内容の判定に発生する誤差を低減する方法として、複数回の判定結果を組み合わせて、多数決により、事故内容を判定する方法がある。しかし、複数回の判定結果を組み合わせるためには、複数回の判定結果を取得する必要があり、こうした複数回の判定結果を取得するまでの時間が必要となり、事故内容を判定するまでの時間が必要となる。また、事故発生時の計測信号の波形が短時間の場合には、時間の経過により、計測信号の波形が変化し、判定結果も変化し、多数決により、事故内容を判定することができない場合がある。
そこで、本発明は、計測信号に含まれる誤差に影響されることなく、精度良く、事故内容を判定するする電力系統監視装置及び電力系統監視方法を提供する。
上記課題を解決するため、本発明の電力系統監視装置は、電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する入力手段と、入力された電圧及び電流の瞬時値軌跡を生成する瞬時値軌跡生成手段と、生成された瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する特徴量算出手段と、算出された特徴量から、電力系統の事故内容を判定する事故内容判定手段と、を有することを特徴とする。
また、本発明の電力系統監視方法は、電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する工程、入力された電圧及び電流の瞬時値軌跡を生成する工程、生成された瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する工程、算出された特徴量から、電力系統の事故内容を判定する工程、判定された事故内容を表示する工程、を有することを特徴とする。
本発明によれば、計測信号に含まれる誤差に影響されることなく、精度良く、事故内容を判定するする電力系統監視装置及び電力系統監視方法を提供することができる。
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下に記載される実施例の説明により明らかにされる。
実施例1に記載する時系列信号及び瞬時値軌跡の原理を説明する説明図である。 実施例1に記載する瞬時値軌跡を説明する説明図である。 実施例1に記載する電力系統の事故発生時の電気現象を説明する説明図である。 実施例1に記載する回転方向の算出を説明する説明図である。 実施例1に記載する事故内容をベクトル表記で説明する説明図である。 実施例1に記載する事故内容を瞬時値軌跡で説明する説明図である。 実施例1に記載する判定基準の一例を説明する説明図である。 実施例1に記載する電力系統監視装置を説明する説明図である。 実施例1に記載する回転面と瞬時値軌跡とを説明する説明図である。 実施例1に記載する回転面と瞬時値軌跡の変化とを説明する説明図である。 実施例2に記載する電力系統監視装置を説明する説明図である。 実施例3に記載する電力系統監視装置を説明する説明図である。 実施例4に記載する電力系統監視装置を説明する説明図である。 地絡区間を判定する判定基準の作り方を説明する説明図である。 シミュレータによる地絡区間を判定する判定基準の作り方を説明する説明図である。
以下、図面を使用して、本発明の実施例を説明する。なお、同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
また、電力系統は、配電系統と送電系統とに分けて説明される場合がある。以下の実施例では、配電系統に着目して説明する。送電系統についても、以下の実施例を、適用することができる。なお、以下の実施例では、交流電圧や交流電流を、単に「電圧」や「電流」と、呼称する場合がある。
また、電力系統の構成方法には、電圧階級、接地方式、結線方式など、多くの階級や方式などの構成が関係する。本発明は、これらの構成を限定するものではない。したがって、これらの構成に言及することなく、以下、本発明の実施例を説明する。本発明は、必要に応じて、電力の技術の知見を使用することにより、これら構成に使用することができる。
本実施例に記載する電力系統監視装置は、電力系統の状態、特に、電圧及び電流を、計測信号として入力する入力手段、入力された電圧及び電流の瞬時値軌跡を生成する瞬時値軌跡生成手段、生成された瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する特徴量算出手段、算出された特徴量から、電力系統の事故内容を判定する事故内容判定手段、を有する。
そして、本実施例に記載する電力系統監視装置は、判定された事故内容(判定結果)を表示する判定結果表示手段に、判定結果を表示する。
ここで、事故内容とは、事故種別、事故原因、事故方向、及び、事故区間(事故点)の総称であり、本実施例では、事故種別、事故原因、事故方向、又は、事故区間を判定することができる。
事故種別とは、地絡、断線、及び、短絡の総称であり、本実施例では、地絡、断線、又は、短絡を判定することができる。事故方向には、電源側や負荷側などが、使用される。また、瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量には、瞬時値軌跡の回転方向や回転半径などが、使用される。
例えば、電力系統に発生する事故種別は、地絡、短絡、断線の3種に分類され、それぞれは、特有の電気現象(例えば、電圧ベクトル)により、説明される。本実施例では、計測信号に基づいて、電圧ベクトルを作ることにより、事故種別を判定する。なお、一般的に、事故種別(地絡、断線、短絡)を判定する際には、それぞれの判定装置、例えば、地絡検出リレー、短絡検出リレー、断線検出リレー、を使用する。このため、判定装置が大きく、そして複雑になる。しかし、本実施例では、こうした判定装置を使用せずに、事故種別を判定することができる。
事故発生時に発生する電気現象は、例えば、電力系統の構成(系統連系の箇所や容量など)、配電系統の発電機器や負荷機器の動作、分散電源の動作、電圧調整機器の動作などに依存して変化する。また、事故発生時に発生する電気現象は、単相2線式や3相3線式などの相違や接地方式の相違などに依存して変化する。
そして、事故発生時に発生する電気現象は、電力系統に発生する事故種別によっても、相違する。例えば、これら事故種別における電気現象は、以下のとおりである。
(地絡)地絡時には、地絡相の相電圧が零となる一方で、線間電圧は保たれるため、健全相の相電圧は線間電圧と等しくなりルート3倍となる。また、発電側からの電流と、電力系統の対地静電容量から放出される電流とが、事故点に向かって、地絡電流として、流れ込む。
(断線)断線時には、負荷が各相に均一に接続されている場合、健全相からの誘起により、電圧値が1/2で、位相が反転した電圧ベクトルが発生する。また、切れた電線が落下して、地面に接触する場合には、地絡電流が発生するため、地絡事故と同じ様相になる。一方、断線しても、切れた電線が落下せず、地面に接触しない場合には、地絡電流が発生しないため、地絡事故と異なる様相になる。断線点より負荷側では、負荷などを介して、断線相に電圧が誘起され、電圧値が1/2で、位相が反転した電圧ベクトルが発生する。
(短絡)短絡時には、2相短絡時の短絡電流は、線間電圧/(上位系統+配電線インピーダンス)/2となる。また、2相短絡時には、短絡した2相の電圧は同じになり、残る相の電圧と短絡した2相の電圧との位相関係は逆向きになる。また、発電側から、事故点に向かって、短絡電流が流れ込む。
本実施例によれば、電圧及び電流の瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を使用(瞬時値軌跡を幾何学的に解析)して、電力系統の事故を検出し、事故内容を判定することができる。特に、本実施例では、電圧及び電流の位相(位相差)を検出する必要がないため、計測信号に含まれる誤差や検出に伴う誤差に影響されることなく、精度良く、事故内容を判定することができる。
また、本実施例によれば、事故内容を判定するための処理負荷を軽減する(処理時間を短縮する)ことができる。また、事故発生時の計測信号の波形が小振幅又は短時間の場合にも、誤差に影響されることがない。また、本実施例によれば、地絡、短絡、断線の事故種別を、判定することができる。
なお、電圧及び電流を計測するために、電力系統の配電線には、センサ付き開閉器、PMU(Phasor Measurement Unit)などの計測機器が設置される。また、電圧及び電流を計測するためには、SVR(Step Voltage Regulator)、SVC(Static Var Compensator)などの電圧調整機器に設置される計測機器が使用される。また、変電所に設置される計測機器を使用することもできる。
これら計測機器で取得する計測信号は、3相交流の場合には、三つの相の電圧及び電流がある。また3相の計測信号から算出する零相の電圧及び零相の電流、又は、相電圧や相間電圧などの信号変換がある。また、波形サンプリングに関しては、サンプル時刻に取得される瞬時値と、時間的な積分特性を有する実効値とを、扱う場合がある。
また、計測される電圧及び電流の計測信号を表記する方法として、(1)時間軸方向に沿って波形をプロットする方法、(2)複数の計測信号(例えば、電圧及び電流)を組み合わせて、座標点としてプロットする方法、(3)ベクトルをプロットする方法、(4)周波数成分をプロットする方法、などがある。
そして、これらの計測信号を表記する方法によって、瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量の性質が大きく相違する場合がある。例えば、時系列の計測信号と周波数成分とは、フーリエ変換と逆フーリエ変換とにより、相互に変換することができるが、両者の特徴量の性質は大きく相違する。
図1は、実施例1に記載する時系列信号及び瞬時値軌跡の原理を説明する説明図である。
図1は、横軸に時間(t)及び縦軸に振幅の瞬時値をプロットして、電圧(v)及び電流(i、i)の時系列信号(時系列の計測信号)の波形を表記する方法(a)、電圧及び電流の2軸を有する2次元空間に、電圧(v)及び電流(i、i)の瞬時値軌跡をプロットして表記する方法(b)を示すものである。これらは、相互に変換することができる、つまり互換性があるが、取得される特徴量の性質は大きく相違する。
(a)は、時間軸上に、電圧又は電流を、独立的にプロットする。一方、(b)は、2次元空間に、電圧と電流とを組み合わせて、座標点としてプロットするため、一つの点が電圧と電流とを組み合わせた特徴を有する。本実施例では、特に、(b)の表記方法を使用する。そして、(b)の表記方法は、回転方向(図中矢印)を表記することができる。
本実施例は、電圧及び電流の瞬時値を組み合わせて、空間上に座標点としてプロットし、時間経過に基づいて、空間上の瞬時値軌跡を作り、この瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を使用して、事故によって発生する電気現象を解析する。
空間上の座標点は、電圧及び電流の性質を併せ持つため、同様に瞬時値軌跡も電圧及び電流の性質を併せ持つ。これより、電圧及び電流を独立的な時系列信号として扱う(a)とは、異なる特徴量を取得することができる。
図2は、実施例1に記載する瞬時値軌跡を説明する説明図である。
本実施例では、電圧及び電流の瞬時値軌跡を作るための空間を準備する。
図2に示すように、単相の電圧と電流との組み合わせであれば2次元平面(a)になり、3相電圧の組み合わせであれば3次元空間(b)になる。また、3相の電圧と電流との組み合わせであれば6次元空間になる。更に、零相の電圧と零相の電流とを組み合わせれば8次元空間になる。
大きな次元の空間を準備して、瞬時値軌跡を作り、その中の一部の座標に着目することにより、小さい次元の瞬時値軌跡として扱うこともできる。例えば、8次元空間に瞬時値軌跡をプロットし、その中の一組の電圧と電流とに着目することにより、2次元平面の特徴量として扱うことができる。
なお、幾何学的な特徴量を扱う場合には、必ずしも図を表示する必要はないが、理解支援のために、図を表示し、可視化してもよい。
なお、以下の説明では、特に、瞬時値の組み合わせで決定する空間上の座標を「瞬時点」と呼称し、時間経過に基づいて変化する瞬時値の軌跡を「瞬時値軌跡」と呼称する。
例えば、単相の電圧と電流とは、サイン関数(又は、コサイン関数)で表記される関係にある。電圧と電流との波形に位相差があるとき、電圧と電流とで作る瞬時値軌跡は、2次元平面上の円(以下「楕円」も含んで「円」と呼称する)(a)で表記される。一方、3相電圧で作る瞬時値軌跡は、3次元空間上の円(b)で表記される。
3相の電圧と電流とで作る瞬時値軌跡は、6次元空間(幾何学的には図示できない)に、表記することができ、更に、零相電圧と零相電流とを組み合わせて作る瞬時値軌跡は、8次元空間(幾何学的には図示できない)に、表記することができる。
このように、本実施例では、電力系統の電圧と電流とが作る瞬時値軌跡を使用して、電力系統の事故を検出し、事故内容を判定する。
なお、電圧と電流とは、基本的に三角波であるため、微分演算を実行しても、元の波形の性質を保持する。そこで、時間的に隣接する幾つかの計測信号(電圧及び電流)を使用して、微分演算を実行し、その結果を、波形信号として、利用することもできる。
ここで、瞬時値軌跡から取得される幾何学的な特徴量としては、瞬時値軌跡の回転方向、瞬時値軌跡の回転半径、サンプル時間当たりの回転角などがある。
また、これらの特徴量は、
(1)電圧及び電流の波形の1周期の期間に瞬時値軌跡は1回転する。
(2)電圧と電流との位相差により、瞬時値軌跡は回転方向が決定される。
(3)電圧(V)と電流(I)との瞬時値軌跡の回転半径は、電力(V×I)に相当する。
(4)事故発生時には、瞬時値軌跡の回転方向が反転し、また、回転半径が変化する。
などの性質を有する。
また、これら特徴量は、瞬時値軌跡の回転方向を、右回りと左回りで区別するため、数値だけでは無く、論理値(右回り又は左回りの二者択一)により、表記される。
このように、本実施例は、これら特徴量を事前に準備し、判定基準と比較し、電力系統の事故を検出し、事故内容を判定する。
本実施例では、事故内容と計測信号から取得される幾何学的な特徴量との対応関係に基づく判定基準を事前に準備する。例えば、事故種別として、地絡、断線、短絡について、事故時の3相の電圧ベクトルの変化を、3相電圧を座標軸とする3次元空間の瞬時値軌跡の変化に置き換えて、事故と計測信号との対応関係を作り、判定基準として、使用する。
つまり、本実施例に記載する電力系統監視装置は、事前に準備された特徴量の判定基準と算出された特徴量とを比較し、電力系統の事故内容を判定する事故内容判定手段を有する。
なお、本実施例は、事故種別を、地絡、断線、短絡に限定するものではない。例えば、地絡を、1線地絡、2線地絡などに区別してもよい。また、事故には至らない微地絡と呼称される電気現象を含めてもよい。
なお、事故内容と幾何学的な特徴量との対応関係に基づく判定基準は、適宜、好ましいタイミングで、修正し、追加することができる。また、この判定基準は、電力系統シミュレータを使用する事故時のシミュレーションに基づいて、又は、電力系統の理論的な考察に基づいて、準備することができる。また、事故内容に対応する幾何学的な特徴量は、実際に起きた事故(事故報告書や計測信号など)に基づいて、設定することができる。
この判定基準を準備する際には、取得した計測信号を使用して、判定基準を更新することもできる。本実施例に記載する電力系統監視装置は、こうした判定基準を更新する判定基準更新手段を有してもよい。この判定基準更新手段における更新の手順を「学習」と呼称する場合がある。
また、判定基準の表記方法は任意である。例えば、表形式に纏めて表記してもよく、又は、IF…THEN…ELSE…などのルールを決定して表記してもよい。また、ニューロコンピューティング等を使用して、判定基準を作ってもよい。
なお、このような事故内容に対応する幾何学的な特徴量は、データベース(DB)に保存される。つまり、本実施例に記載する電力系統監視装置は、幾何学的な特徴量を保存する幾何学的特徴量保存手段(DB)を有する。
図3は、実施例1に記載する電力系統の事故発生時の電気現象を説明する説明図である。
図3は、地絡事故発生時の電流の流れを示すものである。図3に示すように、地絡事故発生時は、事故点(地絡点)を挟む変圧器側の負荷側と電源側とで計測される零相電流の方向が相対する。つまり、事故点の両側から、事故点に向かって、地絡電流が流れ込む。なお、図3に示す矢印は、地絡事故発生時の電流の流れを示す。
このように零相電流の方向が相対する(逆向きである)ことは、負荷側から流れ込む電流と電源側から流れ込む電流の電流振幅の符号が反転していることと等価である。また、これら電流の位相が180度シフトしていることと等価である。また、これら電流の角周波数の符号が反転していることと等価である。つまり、零相電圧と零相電流との瞬時値軌跡を表記すると、これらは逆方向に回転する。
このように、本実施例では、瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量(回転方向)算出し、事故(短絡)方向及び事故(短絡)区間を判定することができる。
幾何学的な特徴量(回転方向)の算出において、瞬時値軌跡を作る電圧と電流とに直流分(低周波成分)がのっていない場合には、軌跡は原点を中心として回転するため、その軌跡を対象にする。一方、瞬時値軌跡を作る電圧と電流とに直流分(低周波成分)がのっている場合には、軌跡は原点を中心として回転しない場合がある。この場合には、回転方向を算出する前に、計測した電圧と電流とから直流分(低周波成分)を取り除くことが好ましい。その方法としては、(1)周波数領域で直流分を除去する。(2)時間的に連続する計測信号から平均値を算出し、計測信号から引き算する。(3)時間的に隣接する計測信号を使用して微分演算(差分演算)、などがある。
図4は、実施例1に記載する回転方向の算出を説明する説明図である。図4に、2次元平面の瞬時値軌跡を示し、回転方向の算出を説明する。
まず、軌跡上の2点と原点とで作る三角形の角度(回転角)を算出する方法を説明する。
2点の座標をa=(a1,a2)、b=(b1,b2)とする場合、式(1)〜式(4)により、2点の座標abと原点とが作る角度θが算出される。2点の座標abの間隔を時間t(秒)とすると、時間tと角度θとから、角周波数ω=θ/t、周波数f=ω/2πを取得することができる。
Figure 2020174493
Figure 2020174493
Figure 2020174493
Figure 2020174493
なお、判定結果を取得するために必要なサンプル数は、原点が決定している場合には、二つあればよい。複数のサンプルを使用して算出する回転角を累積することにより、計測信号のノイズにより、回転角にばらつきがあっても、ノイズは軽減され、回転角の累積値の符号から、回転方向を算出することができる。
次に、軌跡上の2点と原点との外積を算出する方法を説明する(図4(a)参照)。
3点の座標をC=(Cx,Cy)、P=(Px,Py)、Q=(Qx,Qy)とする場合、回転方向が、右回りか左回りかを判定するために、角度ではなく、角度差の符号を算出すればよい。つまり、以下の式(5)の外積計算を使用することができる。
S = (Px - Cx)・(Qy - Cy) - (Py - Cy)・(Qx - Cx)・・・(5)
式(5)により、S>0ならば左回り、S<0ならば右回り、S=0ならばC、P、Qは一直線上にある。なお、CPとCQとが同じ長さである必要はない。
また、Cが原点(0,0)にある場合(図4(b)参照)には、以下の式(6)の外積計算を使用することができる。
S = Px・Qy - Py・Qx・・・(6)
式(6)により、S>0ならば左回り、S<0ならば右回り、S=0ならばP、Qは原点を通る一直線上にある。
この外積計算は、三角関数を必要とせず、四則演算の組み合わせによる簡易な計算で結果を取得することができる。また、座標点の取り方は、適宜、修正することができ、例えば、CをPとQと同じ軌跡上においてもよく、また、ある程度の時間間隔をおいて座標点とすることもでき、ある程度の時間間隔の平均値を座標点とすることもできる。
なお、判定結果を取得するために必要なサンプル数は、最少で三つあればよい。原点の取り方を工夫することにより、最少で二つあればよい。また、複数の判定結果を使用して、多数決で回転方向を決定することにより、計測信号のノイズは軽減される。
なお、回転方向の算出には、三角関数を組み合わせて幾何学的に算出する方法、周波数成分に変換する方法、ヒルベルト変換を使用する方法などを使用してもよい。
また、電圧と電流との位相差が0度、又は、180度になる場合には、瞬時値軌跡は、直線上を往復する。これら角度から±90度に変化するに連れて、瞬時値軌跡は、直線から楕円を経由して円になる。本実施例では、瞬時値軌跡が表記するこれらの直線、楕円、円を別々に区別することなく、瞬時値軌跡の変化として同一に扱うことができる。外積計算は、これらを区別することなく計算することができる。
なお、図4では、説明の都合上、2次元平面を使用したが、適宜な数学的手法を使用し、多次元空間の瞬時値軌跡の回転方向を算出することができることは言うまでもない。また、多次元空間で作る瞬時値軌跡の回転方向から、その一部の次元に着目して、座標値を切り出し、回転方向を算出してもよい。
例えば、地絡事故が発生するときの電気現象として、地絡点の電圧が下がり、また、地絡点に向かって電源側と負荷側とから電流が流れる。二つの計測箇所の電流方向が相対する場合、この電流方向に基づいて、二つの計測箇所で挟まれる区間に地絡点があると判定することができる。
本実施例では、二つの計測箇所の電流方向が相対することを、零相電圧と零相電流との瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量(例えば、回転方向)から算出し、そして、地絡事故の発生及び地絡事故の区間を判定する。
地絡点を挟む二つの計測箇所で計測した計測信号(電流及び電圧)から作る瞬時値軌跡は、二つの計測箇所における電流方向が相対することから、回転方向も相対する。一方、地絡点を挟まない二つの計測箇所で計測した電流方向は相対せず、同一方向であり、瞬時値軌跡の回転方向も同じになる。
本実施例では、このように、二つの計測箇所で計測した計測信号から作る瞬時値軌跡の回転方向が、相対するか否かで、この二つの計測箇所の間に地絡点が存在するか否かを判定する。
電圧を横軸、電流を縦軸とする2次元平面で、電圧を基準として電流の位相がδ(δ<90度)遅れている場合は、電圧電流の瞬時値軌跡は左回りに回転し、電圧を基準として電流の位相がδ(δ<90度)進んでいる場合は、電圧電流の瞬時値軌跡は右回りに回転する(図1参照)。
なお、電圧と電流との位相が一致する場合、軌跡は円ではなく線を表記することになるが、直線上の往復は回転の一種であるとして統合して扱うことができる。そして、このように電圧と電流との瞬時値軌跡を作り、二つの計測箇所の瞬時値軌跡の回転方向を比較する。
このように、事故区間の判定は、電圧と電流との瞬時値軌跡の回転方向が相対するか否かを判定する。このため、電流が流れる方向を知る必要はない。また、分散電源により逆潮流が発生する場合であっても、潮流方向(順潮流、逆潮流)を知る必要はない。
ところで、零相電圧には、事故発生前の状況に依存する電圧が残留する場合がある。残留電圧の発生原理の説明は省略するが、残留という言葉が示すように、直流分(低周波成分)である。本実施例では、零相電圧と零相電流との瞬時値軌跡を作る場合、残留電圧が低周波成分であることを使用し、以下の方法で残留電圧を除去する。つまり、(1)複数時刻の計測信号を使用して微分演算(差分演算)を実行することにより直流分を除去する。(2)複数時刻の計測信号から算出した平均値を引き算することにより直流分を除去する。
なお、事故の様相は、時間的に変化する場合がある。例えば、樹木と電線との接触事故が発生した場合には、事故の当初は、水分を多く含んだ樹木の葉が断続的に電線に接触して地絡する。その後、樹木の枝が電線に接触して地絡する。更に、樹木と電線との間に、熱が発生して、樹木が炭化してアークが発生する。このように事故の様相が変化する場合がある。このような事故の様相の変化は、遷移図として表記してもよい。事故の様相の変化に対応する遷移状態の移動元と移動先との関係を準備しておくことにより、事故の様相の変化を検出することができる。
また、ノイズにより電圧と電流との位相の検出結果に誤差が含まれる場合には、その誤差を判定する何らかの誤差判定手段を設置してもよい。
ここで、事故内容(地絡、断線、短絡)を判定する判定基準の作り方を説明する。
本実施例では、電圧と電流との瞬時値軌跡を作り、瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量と事故内容とを関連づける。この幾何学的な特徴量を使用することにより、瞬時値軌跡の特徴量の算出が容易になり、また、判定の誤りを低減することができる。
図5は、実施例1に記載する事故内容をベクトル表記で説明する説明図である。
図5に示すように、事故が発生した場合、事故種別(地絡、断線、短絡)における事故後の電気現象は、それぞれ相違し、事故前から事故後の電圧ベクトルに変化する。
つまり、地絡は、地絡相の相電圧が零となる一方で、線間電圧は保たれるため、健全相の相電圧は線間電圧と等しくなりルート3倍となる。断線は、負荷が各相に均一に接続されている場合、健全相からの誘起により、電圧値が1/2で、位相が反転した電圧ベクトルが発生する。短絡は、2相短絡時の短絡電流は、線間電圧/(上位系統+配電線インピーダンス)/2となる。
このように、本実施例に記載する電力系統監視装置は、これらの事故種別と電気現象との関係を、瞬時値軌跡から判定することを特徴とする。
図6は、実施例1に記載する事故内容を瞬時値軌跡で説明する説明図である。
図6に示すように、事故種別(地絡、断線、短絡)における判定基準は、地絡は地絡相電圧Va≒0、断線は断線相電圧Vaを含む電圧軌跡の回転方向が反転、短絡は短絡相電圧Vb≒Vcである。これらの判定基準は、電圧瞬時値(時系列)に示す波形(図中の三角点は事故発生時を示す)では必ずしも明確ではないが、電圧瞬時値軌跡(3次元)に示す円(楕円や直線を含む)では、瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量(回転方向や円の形状の変化)が明確であり、事故前と事故後とが明確に示される。これにより、事故の発生、事故の種別、事故の区間を判定することができる。
例えば、A相が地絡時の電圧ベクトルは、地絡相の相電圧が零となる一方で、線間電圧は保たれるため、健全相の相電圧は線間電圧と等しくなりルート3倍となる。このとき瞬時値軌跡は、Vaの電圧が0になるため、瞬時値軌跡の円はVbとVcとが作る平面上に表記される。したがって、瞬時値軌跡を使用した判定基準としては、瞬時値軌跡の表記の変化を利用できる。
例えば、A相が断線時の電圧ベクトルは、負荷が各相に均一に接続されている場合、健全相からの誘起により、電圧値が1/2で、位相が反転した電圧ベクトルが発生する。このとき瞬時値軌跡は、Vaの位相が反転するため、瞬時値軌跡の回転方向が反転する。したがって、瞬時値軌跡を使用した判定基準としては、瞬時値軌跡の回転方向の変化を利用できる。
例えば、BC相が短絡時の電圧ベクトルは、BC相で電圧が同じになり、BC相とA相とは位相が反転した電圧ベクトルが発生する。このとき瞬時値軌跡は、直線上を往復するようになる。このとき瞬時値軌跡は、BC相の電圧がほぼ一致し、更に、BC相とA相とが逆位相の関係(位相関係が逆向き)になるため、瞬時値軌跡の表記は、直線上を往復することになる。したがって、瞬時値軌跡を使用した判定基準としては、瞬時値軌跡の表記の変化を利用できる。
なお、判定基準の作り方には、幾つかの方法がある。例えば、短絡の場合は、BC相の電圧が同じになり、かつ、直線上を往復していることを条件にすることができる。また、短絡の場合、BC相とA相との逆位相の関係が、僅かでもずれるならば、楕円の回転になるため、判定基準とすることができる。更に、本実施例では、直線上の往復も回転の一部として扱うことができる。つまり、外積計算を使用する回転方向の算出は、回転と直線とを判定することができる。
これらの電力系統の事故発生時の電気現象は、事故種別(地絡、断線、短絡)によって変化する。また、電力系統の構成や事故内容(事故原因など)により変化する場合がある。これらの電気現象に対応する判定基準を事前に準備することが、事故内容を判定するために必要になる。
図7は、実施例1に記載する判定基準の一例を説明する説明図である。
図7に示すように、検出する特徴量と判定結果とを対応させ、整理し、蓄積(累積)する。一方、事故内容や事故の発生状況の組み合わせは、多種類になるため、判定基準(特徴量と判定結果と対応)を事前に網羅することが困難な場合がある。そこで、本実施例に記載する電力系統監視装置は、判定基準を自動生成する判定基準自動作成手段、及び、判定基準を追記及び修正する判定基準追記修正手段を有してもよい。また、本実施例に記載する電力系統監視装置は、判定基準を蓄積する判定基準蓄積手段を有してもよい。
なお、判定基準自動生成手段や判定基準追記修正手段は、以下の方法を使用することができる。(1)実際の電力系統から取得するデータを使用する方法、(2)実験設備で人工的に発生させた事故のデータを使用する方法、(3)シミュレータを使用して生成した事故のデータを使用する方法。
ここでは、シミュレータを使用して事故のデータを生成する方法について説明する。電力系統の構成と事故内容とに基づいて、判定基準を準備するため、過渡応答計算ができるシミュレータを使用し、事故発生時に発生する電気現象を生成する。この過渡応答計算ができるシミュレータは、電気回路の瞬時値応答(波形)を計算する機能を有する。そして、例えば、地絡、断線、短絡の事故種別を模擬し、電圧と電流との波形を生成する。計測機器から取得する事故発生時の波形と同等のシミュレーション結果から瞬時値軌跡を作り、模擬した事故種別と特徴量とを対応づけて、判定基準を準備する。
また、このシミュレーション結果から、事故方向、事故区間(事故点)、事故原因など判定基準を準備することができる。具体的な事故内容として、事故種別(地絡、断線、短絡)、事故方向、事故区間の判定についての組み合わせがある。組み合わせのそれぞれについて、瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を判定する判定基準を準備する。
また、このような判定基準は、実際の電力系統で発生した事故内容について、計測信号と事故内容とを対応づけることにより、判定基準を作ることができる。ただし、電力系統は、本来、事故が発生しないように運用されているため、事故の事例は少ないことが想定される。そこで、少数の計測信号に基づいて、波形(振幅)特性を修飾することにより、バリエーションを増加する。例えば、周波数フィルタを使用して計測信号を修飾し、また、係数を掛け算することにより計測信号の波形(振幅)特性を修飾する。こうして、少数の計測信号に基づいて、根拠を持って波形(振幅)特性を修飾し、計測信号を増加し、判定基準に使用する。
このように本実施例に記載する電力系統監視装置は、過去の実績、シミュレーション結果、理論解析などを使用して、事故内容と瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量との対応関係を記憶する。つまり、本実施例に記載する電力系統監視装置は、事故内容と特徴量との対応関係を記憶する対応関係記憶手段を有する。
また、事故発生後の巡視結果や事故報告書などを参照して、このような対応関係の妥当性を判定することにより、事故内容と瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量との対応関係を見直す。
このように本実施例は、これらの対応関係を判定基準として記憶する対応関係記憶手段を準備し、事故発生時に取得する計測信号から事故内容を判定する。
なお、図7に示すように、特徴量と判定結果とを判定基準の一例として、表形式にまとめることもできる。例えば、♯1では、特徴量が、「Va≒0、VbとVcとの大きさがルート3倍に増加し、Vaの瞬時値軌跡の回転方向が反転」であり、判定結果が「a相地絡事故」である。また、例えば、♯2では、特徴量が、「Vaの大きさがほぼ半減し、VaとVb、VaとVcの瞬時値軌跡の回転方向が反転」であり、判定結果が「a相断線事故」である。また、例えば、♯3では、特徴量が、「Vb≒Vcとなり、Va相と逆位相で振幅」であり、判定結果が「b相とc相との短絡事故」である。
また、この表には追加予備欄があり、特徴量と判定結果との関係を追加することができる。更に、それぞれの累積数を付加してもよい。
図8は、実施例1に記載する電力系統監視装置を説明する説明図である。
図8に示すように、本実施例に記載する電力系統監視装置1は、計測機器で取得した電力系統の状態、特に、電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する入力手段100、入力された電圧及び電流の瞬時値軌跡を生成する瞬時値軌跡生成手段120、生成された瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する特徴量算出手段130、算出された特徴量から、電力系統の事故内容を判定する事故内容判定手段140、を有する。そして、本実施例に記載する電力系統監視装置1は、判定された事故内容(判定結果)を表示する判定結果表示手段160に、判定結果を表示する。
つまり、瞬時値軌跡生成手段120では、これらの電圧と電流との瞬時値を組み合わせて多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成する。特徴量算出手段130では、多次元空間上の瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する。事故内容判定手段140では、算出された幾何学的な特徴量から電力系統の事故内容を判定する。
なお、電圧と電流との瞬時値を組み合わせて作られる多次元空間は、3相の電圧と3相の電流との組み合わせで作られる多次元空間、3相の電圧と3相の電流とから算出される零相電圧と零相電流との組み合わせで作られる多次元空間、であることが好ましい。
また、特徴量算出手段130は、多次元空間上の瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量として、瞬時値軌跡の回転方向を算出することが好ましい。
そして、事故内容判定手段140は、事前に準備された特徴量の判定基準と算出された特徴量とを比較し、電力系統の事故内容を判定することが好ましい。
なお、合わせて、判定した事故内容に対応する事故の復旧方法、手順、必要な機器などを記載してもよく、早期の事故復旧を支援する情報として活用することができる。
また、入力手段100は、電圧と電流との瞬時値軌跡を作るために、十分なサンプリング周期をもたせることが好ましい。電源の周波数が50Hz又は60Hzの場合、1周期のなかで4点をサンプリングする場合は、200Hz又は240Hzになる。瞬時値軌跡を作る場合、電源の周波数とサンプリング周期とを同期させる必要はないため、例えば、ゼロクロス点を検出したり、PLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路を使用して同期する必要はない。
また、高いサンプリングレートを設定するほど、滑らかな瞬時値軌跡を取得することができるが、一方で、データ量が増加するため、処理負荷が増大することに留意する。この入力手段100のサンプリングレートに基づいて、以降の手段の動作タイミングを設定する。これらのタイミングチャートの図示は省略するが、適宜、データ伝送手段、バッファメモリ、レジスタなどを設置し、タイミング設計を実行する。
また、本実施例に記載する電力系統監視方法は、計測機器で取得した電力系統の状態、特に、電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する工程、入力された電圧及び電流の瞬時値軌跡を生成する工程、生成された瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する工程、算出された特徴量から、電力系統の事故内容を判定する工程、を有する。そして、本実施例に記載する電力系統監視方法は、判定された事故内容(判定結果)を表示する工程を有する。
次に、実施例1に記載する回転面と瞬時値軌跡とを説明する。
図9は、実施例1に記載する回転面と瞬時値軌跡とを説明する説明図である。
ここで、瞬時値軌跡の特徴量である回転面を使用した判定手順を示す。瞬時値軌跡をプロットすると、空間内で回転する軌跡を描くため、この軌跡が描かれる面を回転面と呼称するにする。瞬時値軌跡は、系統状態によって変化するため、回転面も同様に変化する。
回転面を数式で表記するためには、回転面と瞬時値軌跡との誤差(距離)が小さくなるように最小二乗法、主成分分析、最適化計算などの手法を使用し、回転面の数式を算出する方法がある。この数式は、空間の座標軸に対する角度、切片で表記できるほか、連立式、マトリクスなどで記述することができる。そして、いったん回転面が決定されれば、空間内にプロットされる瞬時値軌跡を座標変換することにより、回転面の座標で瞬時値軌跡を扱えるようになる。
例えば、電圧と電流との瞬時値軌跡は、2次元の空間にプロットされるため、空間と回転面の座標とは一致する。3相電圧の瞬時値軌跡は、3次元の空間にプロットされるが、その空間内にある回転面の座標に変換することにより、2次元の回転面の座標で扱うことができる。3次元よりも大きなN次元空間の回転面は、超平面になるが、座標変換することにより、2次元の回転面の座標で扱うことができる。
このように、回転面を作ることは、次元数を削減することに相当して、瞬時値軌跡の特徴量の扱いが簡単になるメリットがある。これらの座標変換の原理と方法は、幾何学またはマトリクス変換などの一般的な手法を使用して説明することができるため、詳細は省略する。
回転面には、瞬時値軌跡を作る信号の特性が反映する。例えば、3相電圧の瞬時値軌跡を作る場合、回転面の数式には、3相電圧の位相関係が反映する。例えば、定常状態において、3相電圧の振幅が同じであり、位相が120度ずれている場合、3次元空間内の回転面は、三つの座標軸について同じ切片を有し、回転面内の瞬時値軌跡は円を描く。
系統状態は、瞬時値軌跡に反映して、更に、回転面に反映する。この関係を利用して、逆に、瞬時値軌跡または回転面から、系統状態を検出することができる。ここで系統状態とは、事故、不平衡状態、または位相などである。例えば、3相電圧で作る回転面を使用した位相検出、電圧と電流とで作る回転面を使用した電圧と電流との位相検出、などが可能になる。
このように、本実施例では、瞬時値軌跡から作る回転面を使用して、系統状態を検出することを特徴とする。
この方法には、以下に示すメリットがある。(1)多相の信号(電圧、電流)を一括して処理することができること。(2)ゼロクロス点やピーク点などの波形の特定点ではなく、波形全体を使用して計算するため、ノイズや誤差などの影響が少なく、精度が高いこと。(3)特徴量の変化から、系統状態の変化を検出することが、容易にできること、がある。
本実施例では、図6に示したように、瞬時値軌跡で作る回転面と回転面内の瞬時値軌跡とを使用して、系統状態を判定することを特徴とする。ここで、系統状態の判定結果としては、事故種別と電気現象との関係付けがある。
また、図5に示すようなベクトル図を作るためには、個々の信号の電圧と位相とを算出することが必要であるのに対して、本実施例では、信号を組み合わせて一括した処理が可能であるため、精度の高い判定結果が得られる。
このような、事故種別と電気現象との関係付けは、電気モデルの作成と解析、シミュレーション、実証実験、事故報告書などを使用して設定することができ、内容更新手順を用意することにより、運用結果を使用して、精度向上を図ることができる。これらは、回転面と瞬時値軌跡の特徴量とを使用して、関係付けることができる。
以下に、本実施例の事故判定手順を整理する。手順1:N次元空間の瞬時値軌跡の作成。手順2:回転面の作成と座標変換。手順3:回転面と瞬時値軌跡の特徴量の算出。手順4:回転面と瞬時値軌跡の特徴量と使用した系統状態の判定。
ここで判定に使用する特徴量としては、次のような数値を使用する。回転面については、空間座標軸に対する角度、切片等が使用できる。これらの関係は、マトリクスを使用した座標変換式として表記でき、更に、固有値などを算出して、特徴量として扱うことができる。瞬時値軌跡については、軌跡の回転方向、軌跡回転の主方向、回転半径などがある。この軌跡を楕円式で近似したり、マトリクス変換式で表記し、その数式を特徴量として使用することができる。また、特徴量の変化を時間的な差分値、積分(例えば、時間的な累積値)を算出して、特徴量として使用することもできる。
次に、実施例1に記載する回転面と瞬時値軌跡の変化とを説明する。
図10は、実施例1に記載する回転面と瞬時値軌跡の変化とを説明する説明図である。
ここで、瞬時値軌跡の変化に伴う、回転面の変化を検出する手順を示す。何らかの事故、不平衡状態の発生、または切り替え動作などが起きて、時刻tからt+Δtにおいて、系統状態が変化すると、瞬時値軌跡も変化し、同時に回転面も変化する。
本実施例では、これらの関係を使用して、逆に、瞬時値軌跡または回転面の変化から、系統状態の変化を検出する。また、次に起動する動作のトリガとして使用する。例えば、時刻tにおいて3相電圧の振幅と位相とが定常状態にあり、3つの座標軸に同じ切片を有する回転面で、瞬時値軌跡は回転しているとする。そして、時刻tからt+Δtまでの期間の回転面と瞬時値軌跡との変化を検出し、要因を判定する。このために、瞬時値軌跡または回転面の変化と、系統状態の変化と、起動する動作と、を関係付けておく。例えば、系統状態の変化として、事故が起きたことを検出した場合は、事故復旧のための手順を起動することで、復旧の迅速化に貢献することができる。
上記内容は、前記した手順1から4に引き続いて、下記手順を実施することにより、実行することができる。手順5:事故発生(または系統状態の変化)の検出。手順6:事故種別の判定と出力。手順7:事故方向の判定と出力。手順8:事故復旧支援情報の検索と出力。
なお、説明のため順次、手順として説明したが、上記の事故(状態変化)検出、事故種別の判定、事故点方向検出は、いずれも瞬時値軌跡と回転面とを使用した処理であることから、これらの手順を一括して実行することもできる。
また、結果の出力は、判定結果または検索結果を、復旧作業を担当する管理者および作業員へ提示するための手段であり、画面表示を使用して、可視化する方法がある。
また、電力系統で計測する電圧と電流とは、下記のような組み合わせを作ることができる。つまり、電圧が1相、電流が1相の場合、空間は2次元、電圧が3相、電流がなしの場合、空間は3次元、電圧がなし、電流が3相の場合、空間は3次元、電圧が3相、電流が3相の場合、空間は6次元、となる。
ここで、瞬時値軌跡は、空間上に作られる平面内で回転することに着目する。この回転面を切り出すことで、2次元平面上の瞬時値軌跡として観察できることになる。そして、空間上で切り出す回転面と回転面における瞬時値軌跡とを組み合わせて特徴量を作ることができる。
空間上の回転面と瞬時値軌跡とは、時々刻々の計測信号で作られる。そこで、計測した電圧と電流とを組み合わせて作る座標点を、空間上にプロットして、座標点との距離(誤差)の総和が最も小さくなるように回転面の式を決定する。誤差最小になる条件を見出すために、回帰、主成分分析、または最適化計算などの手法を使用する。
このように、算出した特徴量を使用して、対応付けられた系統状態または事故様相などを検出する。この対応関係は、電力系統の状態とベクトル図との関係から導くことができる。例えば、地絡、短絡、断線の事故が起きた場合の状態を、3相電圧のベクトル図で表記する方法がある。この3相電圧のベクトル図から、回転面の3相電圧の瞬時地軌跡を導くことができる。なお、これらは、事前に用意してもよく、または、運用実績データを使用して設定してもよい。
つまり、本実施例に記載する瞬時値軌跡生成手段120は、3相電圧の瞬時値を組み合わせて多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成すること、3相電流の瞬時値を組み合わせて多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成すること、3相電圧と3相電流との瞬時値を組み合わせて多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成すること、ができる。
このように、本実施例では、特に、瞬時値軌跡の回転方向を算出し、事故内容を判定することにより、計測信号に含まれる誤差に影響されることなく、精度が良く、信頼性が高く、事故内容を判定する電力系統監視装置及び電力系統監視方法を提供することができる。
図11は、実施例2に記載する電力系統監視装置を説明する説明図である。
図11に示すように、本実施例に記載する電力系統監視装置1は、計測機器で取得した電力系統の状態、特に、3相の電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する入力手段100、3相の電圧と電流との瞬時値から零相電圧と零相電流との瞬時値を算出する零相信号算出手段110、入力された電圧及び電流の瞬時値を組み合わせて、多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成する瞬時値軌跡生成手段120、生成された多次元空間上の瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する特徴量算出手段130、判定基準を蓄積する判定基準蓄積手段150、算出された幾何学的な特徴量から、電力系統の事故内容を判定する事故内容判定手段140、を有する。
そして、事故内容判定手段140を使用して、特徴量算出手段130にて算出された幾何学的な特徴量と判定基準蓄積手段150に蓄積された判定基準とを比較することにより、事故内容を判定する。
そして、本実施例に記載する電力系統監視装置1は、判定された事故内容(判定結果)を表示する判定結果表示手段160に、判定結果を表示する。
そして、本実施例に記載する電力系統監視方法は、計測機器で取得した電力系統の状態、特に、3相の電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する工程、3相の電圧と電流との瞬時値から零相電圧と零相電流との瞬時値を算出する工程、入力された電圧及び電流の瞬時値を組み合わせて、多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成する工程、生成された多次元空間上の瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する工程、判定基準を蓄積する工程、算出された幾何学的な特徴量から、電力系統の事故内容を判定する工程を有する。
そして、算出された幾何学的な特徴量と蓄積された判定基準とを比較することにより、事故内容を判定する。
なお、判定基準蓄積手段150には、判定基準を入力する信号経路を設置することにより、判定基準の初期設定や更新を可能にする。
なお、入力する計測信号は、一定のサンプリング間隔ではなく、ある時間の間の計測信号が、まとめて入力される場合がある。このため入力手段100は、入力される計測信号を一時的に蓄積するメモリを有してもよく、時間軸方向のデータ形式を揃える機能を有してもよい。また、必要に応じて、ノイズを除去するため、周波数フィルタを有してもよい。
なお、多次元空間は、3相と零相電圧及び零相電流とを組み合わせれば8次元空間になる。単純に8次元空間の座標点をすべて準備する場合、膨大なメモリ容量が必要となるため、適宜、工夫する。その方法は、本実施例では限定しない。
なお、後述する判定結果の妥当性を評価するため、判定結果と幾何学的な特徴量とを表示する、又は、蓄積することが好ましいが、その方法は、本実施例では限定しない。
なお、判定結果の表示として、事故の有無、事故内容(事故種別、事故原因、事故方向、事故区間)がある。また、これ判定結果の根拠となる計算(途中経過)を併せて表示してもよい。また、事故の予兆又は前兆(事故ではない)に相当する波形が計測された場合には、アラームを表示してもよい。
このように、本実施例では、計測信号に含まれる誤差に影響されることなく、特に、3相の計測信号の場合であっても、精度良く、事故内容を判定する電力系統監視装置及び電力系統監視方法を提供することができる。
図12は、実施例3に記載する電力系統監視装置を説明する説明図である。
本実施例は、複数の電力系統監視装置1の判定結果を使用して、事故区間を判定するものである。つまり、複数個所の計測信号を使用することにより、事故区間を判定することができる。
本実施例に記載する電力系統監視装置(電力系統監視システム)1は、2つの実施例2に記載する電力系統監視装置1、事故区間を判定する事故区間判定手段200、を有する。
事故区間判定手段200は、計測箇所Aの3相計測信号を使用して判定した結果と計測箇所Bの3相計測信号を使用して判定した結果とを入力して、電流方向の相対関係の有無から事故区間を判定する。計測箇所Aと計測箇所Bとを、電力系統上の任意箇所に置き換えて判定を繰り返すことにより、事故点を挟む2か所を判定することができる。
図13は、実施例4に記載する電力系統監視装置を説明する説明図である。
本実施例では、サーバによる集中型処理を実行する電力系統監視装置を説明する。
本実施例に記載する電力系統には、電圧及び電流を計測する計測機器として、センサ付き自動開閉器が設置される。計測機器にて計測された計測信号は、ケーブル、ワイヤ、ファイバなどの伝送路を介して、サーバに入力される。
なお、ここでは、計測信号をサーバにて集中的に処理する集中型の電力系統監視装置を記載するが、子局による分散的に処理する分散型の電力系統監視装置や変電所にて処理する電力系統監視装置であってもよい。
なお、本実施例は、これらのいずれかの処理に限定するものではない。取得する計測信号の種類、メモリの容量、伝送路の容量、信号処理の能力などの電力系統監視装置の能力や処理負荷及び信号遅延などの制約を考慮して、適宜、装置構成を考慮する。
例えば、電力系統上の計測箇所A、計測箇所B、計測箇所C、計測箇所Dがある場合、計測箇所Aと計測箇所Bとの間及び計測箇所Cと計測箇所Dとの間では、電流方向は相対的に同一であるが、計測箇所Bと計測箇所Cとの間では、電流方向が相対的に反転することから、事故区間を判定することができる。
図13に示すように、計測機器で計測した電圧と電流との計測信号(波形データ)を、自動開閉器に搭載される通信機器を使用して、伝送路を介して、サーバ(サーバ装置)に、集約する。つまり、本実施例では、計測箇所A、計測箇所B、計測箇所C、計測箇所Dから電圧及び電流の波形データがサーバに入力される。このサーバでは、地絡区間が判定される。なお、ここでは、電力系統(所定の区間)全体の波形データを処理対象とする。電力系統(所定区間)全体の状態を把握できる一方、波形データの信号遅延や処理負荷を考慮する必要がある。
このサーバでは、
(1)入力された電圧及び電流の波形データを、バッファメモリに保存する。
(2)保存された波形データに基づいて、瞬時値軌跡を作成する。
(3)瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量から地絡方向を判定する。
(4)地絡方向の判定結果から地絡区間を判定する。
(5)地絡区間の判定結果を出力する。
そして、出力された地絡区間の判定結果は、例えば、判定結果表示手段に表示される。
なお、サーバの信号処理の能力が、子局の信号処理の能力よりも高い場合には、サーバでアルゴリズムを使用した信号処理を実行する。また、サーバにて信号処理を実行することにより、機能やソフトのメンテナンス性にも優れ、性能向上のアップデートも容易になる。
また、サーバにて信号処理を実行することにより、電力系統(所定区間)全体の波形データを集中させることができるため、サーバにて、隣接する自動開閉器の波形データを比較して、事故内容を判定することができる。例えば、地絡事故が、ある自動開閉器とある自動開閉器との間で発生した場合には、地絡点に向かって電流が流れるため、この自動開閉器間に流れる電流の向きが相対する。この相対関係を判定することにより、この自動開閉器間に地絡事故があるか否かを判定することができる。
また、図示はしないが、子局による分散型処理を実行する電力系統監視装置を説明する。
計測機器で取得した計測信号(波形データ)は、自動開閉器に搭載される通信機器を使用して、子局に伝送させる。子局に信号処理機能を設置することにより、子局にて、取得した波形データに信号処理を実行する。子局にて信号処理を実行した後、判定結果をサーバに伝送する。このように、判定結果を子局からサーバに伝送することにより、伝送するデータ量を削減することができる。また、処理負荷を分散することができる。なお、子局の処理負荷やメンテナンス性など等を考慮し、子局に搭載される電力系統監視装置を決定する。
また、各子局に、隣接する子局間で通信することができる通信機器を設置することにより、隣接する子局間で電流の向きが相対するか否かを通信することができ、子局間に地絡事故があるか否かを判定することができる。
また、図示はしないが、変電所にて処理する電力系統監視装置を説明する。電力系統の変電所には、リレーと呼称される多種類の判定装置が設置される。これらに、例えば、実施例1、2、3に記載する電力系統監視装置を搭載することにより、事故内容を判定することができる。
図14は、地絡区間を判定する判定基準の作り方を説明する説明図である。
図14に示すように、まず、地絡が発生した対象の電力系統を設定する。そして、地絡発生時の計測信号(波形データ)を取得する。また、計測箇所Bと計測箇所Cとの電圧及び電流の波形データから、瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する。そして、例えば、図7に示すような、地絡事故(判定結果)と特徴量との対応関係を作成し、データベースに保存する。
なお、対象の電力系統は、実際の電力系統である場合、実験設備を使用する場合、又は、シミュレータを使用して作る電力系統である場合などがある。
図15は、シミュレータによる地絡区間を判定する判定基準の作り方を説明する説明図であり、シミュレータを使用した学習型の判定基準の作成について説明するフローチャートである。
まず、電力系統を設定する(S1301)。次に、事故条件(事故内容)を設定する(S1302)。次に、過渡解析を実行する(S1303)。つまり、その事故内容の波形データ(瞬時値)を生成する。次に、生成された波形データに基づいて、瞬時値軌跡を生成する(S1304)。次に、生成された瞬時値軌跡に基づいて、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する(S1305)。次に、事故条件(事故内容)と特徴量との対応関係を作成する(S1306)。
次に、次の事故条件の設定があるかないかを判定する(S1307)。ある場合には、S1302〜S1306を繰り返す。ない場合にはこの対応関係を、例えば図7に示すような、データベースに保存する(S1308)。なお、ある場合にも、その対応関係は、例えば図7に示すような、データベースに保存される。
また、実際の事故が発生した場合には、その事故の事例に基づいて、判定基準を見直す学習手順を準備する。初期段階からこの学習手順を使用することにより、判定基準の種類と精度とを向上させることができる。そして、人間が判断して判定基準を作る場合に比較して、様々な条件を網羅することが容易になる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明の具体例を示すものであり、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
1・・・電力系統監視装置
100・・・入力手段
110・・・零相信号算出手段
120・・・瞬時値軌跡生成手段
130・・・特徴量算出手段
140・・・事故内容判定手段
150・・・判定基準蓄積手段
160・・・判定結果表示手段
200・・・事故区間判定手段

Claims (15)

  1. 電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する入力手段と、入力された電圧及び電流の瞬時値軌跡を生成する瞬時値軌跡生成手段と、生成された瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する特徴量算出手段と、算出された特徴量から、電力系統の事故内容を判定する事故内容判定手段と、を有することを特徴とする電力系統監視装置。
  2. 判定された事故内容を表示する判定結果表示手段に判定結果を表示することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  3. 前記瞬時値軌跡生成手段は、電圧と電流との瞬時値を組み合わせて多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  4. 前記特徴量算出手段は、多次元空間上の瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  5. 前記事故内容判定手段は、算出された幾何学的な特徴量から電力系統の事故内容を判定することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  6. 前記特徴量算出手段は、多次元空間上の瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量として、瞬時値軌跡の回転方向を算出することを特徴とする請求項4に記載の電力系統監視装置。
  7. 前記事故内容判定手段は、事前に準備された判定基準と算出された特徴量とを比較し、電力系統の事故内容を判定することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  8. 前記判定基準を更新する判定基準更新手段を有することを特徴とする請求項7に記載の電力系統監視装置。
  9. 前記幾何学的な特徴量を保存する幾何学的特徴量保存手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  10. 前記事故内容が、事故種別、事故方向、事故区間であることを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  11. 前記事故種別が、地絡、断線、短絡のいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の電力系統監視装置。
  12. 電圧及び電流の瞬時値を、計測信号として入力する工程、入力された電圧及び電流の瞬時値軌跡を生成する工程、生成された瞬時値軌跡から、その瞬時値軌跡の幾何学的な特徴量を算出する工程、算出された特徴量から、電力系統の事故内容を判定する工程、判定された事故内容を表示する工程、を有することを特徴とする電力系統監視方法。
  13. 前記瞬時値軌跡生成手段は、3相電圧の瞬時値を組み合わせて多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  14. 前記瞬時値軌跡生成手段は、3相電流の瞬時値を組み合わせて多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
  15. 前記瞬時値軌跡生成手段は、3相電圧と3相電流との瞬時値を組み合わせて多次元空間上の座標を作り、時間経過に沿う瞬時値軌跡を生成することを特徴とする請求項1に記載の電力系統監視装置。
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