以下に、本発明にかかる誘導システムおよび誘導方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる誘導システムの構成を示す図である。誘導システム101Aは、飛しょう体20Aの位置誤差を補正したうえで、遠隔交戦射撃であるEOR射撃を行うシステムである。
誘導システム101Aは、警戒機30Aと、母機10Aと、飛しょう体20Aと、ネットワーク50とを備えている。母機10Aは、飛しょう体20Aを搭載しており、EOR射撃にて飛しょう体20Aを発射する。
警戒機30Aは、母機10Aを観測するとともに、飛しょう体20Aの目標である目標60を観測する。目標60の例は、航空機、その他の飛しょう体である。ネットワーク50は、母機10Aおよび警戒機30Aが加入しているネットワークである。これにより、母機10Aは、ネットワーク50を介して警戒機30Aから種々の情報を受信する。
警戒機30Aは、警戒機GPS/INS31と、警戒機レーダ33Aと、警戒機ネットワーク端末35とを備えている。警戒機GPS/INS31は、GPS機能およびINS機能を備えている。INSは、外部から電波による支援を得ることなく、搭載するセンサによって自装置の位置および速度を算出するシステム、すなわち慣性航法装置である。INSは、慣性航法装置、慣性誘導装置、または慣性基準装置とも呼ばれる。GPSは、地球上の現在位置を測定するシステム、すなわち全地球測位システムである。
警戒機GPS/INS31は、GPS機能およびINS機能を用いて、警戒機30Aの位置情報である、警戒機位置情報32を検出する。警戒機GPS/INS31は、警戒機位置情報32を警戒機レーダ33Aに送る。
警戒機レーダ33Aは、レーダ照射によって目標60および母機10Aを観測する。警戒機レーダ33Aは、目標60を観測することによって、目標60の位置を示す目標位置観測情報34Gを生成する。目標位置観測情報34Gは、警戒機位置情報32を基準とした位置情報である。すなわち、目標位置観測情報34Gは、GPS機能およびINS機能を用いて生成された、警戒機30Aの位置を基準とした位置情報である。目標位置観測情報34Gには、目標60の緯度、経度、および高度を示す情報が含まれている。
警戒機レーダ33Aは、母機10Aを観測することによって、母機10Aの位置を示す母機位置観測情報36Gを生成する。母機位置観測情報36Gは、警戒機位置情報32を基準とした位置情報である。すなわち、母機位置観測情報36Gは、GPS機能およびINS機能を用いて生成された、警戒機30Aの位置を基準とした位置情報である。母機位置観測情報36Gには、母機10Aの緯度、経度、および高度を示す情報が含まれている。
警戒機レーダ33Aは、目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを警戒機ネットワーク端末35に送る。警戒機ネットワーク端末35は、ネットワーク50を介して母機10Aと通信を行う通信端末である。警戒機ネットワーク端末35は、目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを、ネットワーク50を介して母機10Aに送る。
目標位置観測情報34Gには、ネットワーク50におけるシステムタイムがタイムスタンプとして付与される。母機位置観測情報36Gには、ネットワーク50におけるシステムタイムがタイムスタンプとして付与される。タイムスタンプは、警戒機30Aが付与してもよいし、母機10Aが付与してもよい。なお、以下の説明では、母機位置観測情報36G、目標位置観測情報34G、および後述する母機位置観測情報18Gに付与された、ネットワーク50におけるシステムタイムをネットワークタイムという場合がある。
母機10Aは、母機INS11と、母機ネットワーク端末13とを備えている。母機INS11は、INS機能を用いて、母機10Aの位置情報である、母機位置情報12を検出する。母機位置情報12には、母機10Aの緯度、経度、および高度を示す情報が含まれている。母機INS11は、母機位置情報12を飛しょう体20Aに入力する。
母機ネットワーク端末13は、警戒機30Aから、ネットワーク50を介して、目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを受信する。母機ネットワーク端末13は、目標位置観測情報34Gを目標位置観測情報14Gとして飛しょう体20Aに入力し、母機位置観測情報36Gを母機位置観測情報18Gとして飛しょう体20Aに入力する。目標位置観測情報14Gは、目標位置観測情報34Gと同様の情報であり、母機位置観測情報18Gは、母機位置観測情報36Gと同様の情報である。
なお、母機位置情報12には、母機10Aの機体クロックタイムが付与されるものとする。また、目標位置観測情報14Gおよび母機位置観測情報18Gには、ネットワーク50におけるシステムタイムがタイムスタンプとして付与されている。
飛しょう体20Aは、誘導制御装置21A、操舵装置71、推進装置72、およびシーカ装置73を備えている。誘導装置である誘導制御装置21Aは、飛しょう体20Aを誘導制御する装置であり、入力部26、記憶部27、位置補正部22A、および誘導算出部23を備えている。
入力部26は、母機10Aから送られてくる、母機位置情報12、目標位置観測情報14G、および母機位置観測情報18Gを受け付けて記憶部27に記憶させる。記憶部27は、母機位置情報12、目標位置観測情報14G、および母機位置観測情報18Gを記憶し蓄積する。
位置補正部22Aは、記憶部27から母機位置情報12および母機位置観測情報18Gを読み出す。位置補正部22Aは、母機位置情報12の中から、ネットワークタイムに対応する母機位置情報12を抽出する。すなわち、位置補正部22Aは、母機位置情報12の中から、母機位置観測情報18Gに付与されているシステムタイムを基準とした時刻の母機位置情報12を抽出する。
また、位置補正部22Aは、母機位置情報12を、目標位置観測情報14Gと同じ警戒機位置情報32を基準とした位置情報に補正するため、警戒機位置情報32を基準とした母機位置観測情報18Gに基づいて、母機位置情報12の位置情報を補正する。すなわち、位置補正部22Aは、母機位置観測情報18Gを基準として、母機位置情報12の位置情報を補正する。これにより、母機位置情報12の位置情報が、警戒機位置情報32を基準とした位置情報に補正される。位置補正部22Aは、補正した母機位置情報12を、母機位置情報24として誘導算出部23に送る。
誘導算出部23は、記憶部27から目標位置観測情報14Gを読み出す。誘導算出部23は、位置補正部22Aから送られてくる母機位置情報24と、読み出した目標位置観測情報14Gとに基づいて、誘導指令25を算出する。誘導算出部23は、母機位置情報24を飛しょう体20Aの初期の位置情報とし、飛しょう体20Aが目標60に到達できるよう、目標位置観測情報14Gに対する誘導指令25を算出する。誘導指令25は、飛しょう体20Aを目標60に誘導するための指令である。誘導算出部23は、誘導指令25を操舵装置71および推進装置72に入力する。
操舵装置71は、誘導指令25に基づいて、操舵翼(図示せず)を駆動させ、これにより飛しょう体20Aに旋回加速度を発生させる。推進装置72は、誘導指令25に基づいて、飛しょう体20Aに推進力を発生させる。飛しょう体20Aは、操舵装置71および推進装置72によって、初中期誘導の際の速度および姿勢が制御される。シーカ装置73は、終末誘導に使用されるセンサ装置である。
つぎに、誘導システム101Aにおける動作処理手順について説明する。警戒機30Aは、目標60の位置を示す目標位置観測情報34Gと、母機10Aの位置を示す母機位置観測情報36Gを生成する。警戒機30Aは、目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを、ネットワーク50を介して母機10Aに送る。目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gには、ネットワーク50におけるシステムタイムが付与される。
母機10Aは、INS機能を用いて母機位置情報12を検出する。母機位置情報12には、母機10Aの機体クロックタイムが付与される。母機INS11は、母機位置情報12を飛しょう体20Aに入力する。
母機ネットワーク端末13は、警戒機30Aから、ネットワーク50を介して、目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを受信する。母機ネットワーク端末13は、目標位置観測情報34Gを目標位置観測情報14Gとして飛しょう体20Aに入力し、母機位置観測情報36Gを母機位置観測情報18Gとして飛しょう体20Aに入力する。目標位置観測情報14Gおよび母機位置観測情報18Gには、ネットワーク50におけるシステムタイムがタイムスタンプとして付与されている。この後、飛しょう体20Aが、母機位置情報12の補正処理を行う。
図2は、実施の形態1にかかる誘導制御装置が実行する母機位置情報の補正処理手順を示すフローチャートである。ここでは、誘導制御装置21Aによる、母機位置情報12の補正処理について説明する。
入力部26は、母機10Aの機体クロックタイムが付与された母機位置情報12を記憶部27に順次蓄積させる(ステップS101)。このステップS101の処理に並行して、入力部26は、ネットワーク50のシステムタイムが付与された母機位置観測情報18Gを記憶部27に順次蓄積させる(ステップS102)。また、入力部26は、ネットワーク50のシステムタイムが付与された目標位置観測情報14Gを記憶部27に順次蓄積させる。
位置補正部22Aは、記憶部27から母機位置情報12および母機位置観測情報18Gを読み出す。位置補正部22Aは、母機位置情報12の中から、ネットワークタイムを基準とした、母機位置情報12を抽出する(ステップS103)。すなわち、位置補正部22Aは、母機位置観測情報18Gに付与されたネットワークタイムの時刻に最も近い時刻(機体クロックタイム)に取得した母機位置情報12を抽出する。具体的には、位置補正部22Aは、機体クロックタイムとネットワークタイムとが同じ時刻の情報となるよう、母機位置情報12と母機位置観測情報18Gとを対応付けする。そして、位置補正部22Aは、最新の母機位置観測情報18Gに対応する母機位置情報12を抽出する。最新の母機位置観測情報18Gは、最新の目標位置観測情報14Gに対応している。すなわち、最新の母機位置観測情報18Gに付与されているネットワークタイムと、最新の目標位置観測情報14Gに付与されているネットワークタイムとは、同じ時刻を示している。したがって、位置補正部22Aが抽出した母機位置情報12の機体クロックタイムは、最新の目標位置観測情報14Gに付与されているネットワークタイムに対応した時刻を示す。
続いて、位置補正部22Aは、母機位置情報12を目標位置観測情報14Gと同じ、警戒機位置情報32を基準とした位置に補正するため、母機位置観測情報18Gの位置情報を基準として、母機位置情報12の位置を補正する(ステップS104)。すなわち、位置補正部22Aは、母機位置観測情報18Gの位置情報に基づいて、母機位置情報12の緯度、経度、および高度の情報に対する位置補正を行う。この後、母機10Aは、飛しょう体20Aを発射し、位置補正部22Aは、位置補正後の母機位置情報12を母機位置情報24として誘導算出部23に出力する。
誘導算出部23は、位置補正後の母機位置情報24を初期位置情報とし、目標60に到達できるよう、目標位置観測情報14Gに対する誘導指令25を算出する。誘導算出部23は、既存の方法によって誘導指令25を算出する。なお、目標位置観測情報14Gのばらつきが大きい場合には、誘導算出部23は、目標位置観測情報14Gに対して平滑計算を実行してもよい。
誘導算出部23は、誘導指令25を操舵装置71および推進装置72に入力する。操舵装置71および推進装置72は、誘導指令25に従って、飛しょう体20Aの速度および姿勢を制御する。この後、飛しょう体20Aが目標60を捕捉すると、飛しょう体20Aは、シーカ装置73を用いて終末誘導を行う。そして、飛しょう体20Aが目標60に会合する。
このように、誘導システム101Aは、警戒機30Aで生成された母機位置観測情報36Gに対応する母機位置観測情報18Gで、母機10Aが生成した母機位置情報12の時間を補正することにより、母機位置情報12が警戒機30Aの時間を基準とした位置情報となる。
また、誘導システム101Aは、警戒機30Aで生成された母機位置観測情報36Gに対応する母機位置観測情報18Gで、母機10Aが生成した母機位置情報12の位置を補正することにより、母機位置情報12が警戒機30Aで検出された位置(警戒機位置情報32)を基準とした母機位置情報24となる。
そして、誘導システム101Aは、警戒機位置情報32を基準とした母機位置情報24と、警戒機位置情報32を基準とした目標60の位置である目標位置観測情報14Gとに基づいて、飛しょう体20Aを目標60に誘導するための誘導指令25を生成している。
警戒機30Aで生成された母機位置観測情報36Gおよび目標位置観測情報34Gは、GPS機能を用いて生成された情報であるので、ドリフト誤差がほとんど無い。したがって、母機位置観測情報36Gに対応する母機位置観測情報18G、および目標位置観測情報34Gに対応する目標位置観測情報14Gは、ドリフト誤差がほとんど無い。誘導システム101Aは、母機位置観測情報18Gを用いて母機位置情報12を補正しているので、母機位置情報12が補正された母機位置情報24は、ドリフト誤差がほとんど無い。したがって、飛しょう体20Aは、ドリフト誤差がほとんど無い母機位置情報24および目標位置観測情報14Gを用いて、飛しょう体20Aを目標60に誘導するための誘導指令25を生成することができる。
上述したように、誘導システム101Aでは、母機10Aから入力される母機位置観測情報18Gを基準として母機位置情報12に対して位置補正を実行し、位置補正された母機位置情報24を飛しょう体20Aの初期位置情報とし、母機10Aから入力される目標位置観測情報14Gを用いて飛しょう体20Aの誘導を行っている。これにより、飛しょう体20Aは、ドリフト誤差がほとんど無い母機位置情報24および目標位置観測情報14Gを用いて、飛しょう体20Aを目標60に誘導するための誘導指令25を生成することができるので、飛しょう体20Aの位置誤差(母機位置情報24の位置誤差)を低減したうえで、母機位置情報24を用いて誘導指令25を算出することができる。したがって、誘導システム101Aは、EOR射撃時の幾何学的ロックオン確率(飛しょう体20Aに搭載されるシーカ装置73が作動したときに目標60を送信ビーム範囲内に幾何学的に補足する確率)を向上させることができる。
このように、実施の形態1によれば、飛しょう体20Aが、INS機能を用いて取得した母機位置情報12を、GPS機能およびINS機能を用いて生成された母機位置観測情報36G(母機位置観測情報18G)に基づいて位置補正するので、母機位置情報12が目標位置観測情報34Gに対応する位置情報に補正されることとなる。飛しょう体20Aは、母機位置情報12の位置補正後の情報である母機位置情報24(飛しょう体20Aの初期の位置情報)および目標位置観測情報14Gに基づいて、目標60に向かう。したがって、飛しょう体20Aが、飛しょう体20Aの初期の位置誤差を低減したうえで、目標60に向かうことができるので、飛しょう体20Aが目標60を捕捉できる確率が向上する。
実施の形態2.
つぎに、図3および図4を用いてこの発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、警戒機から送られてくる情報および僚機から送られてくる情報を用いて、飛しょう体の位置誤差を補正する。
図3は、実施の形態2にかかる誘導システムの構成を示す図である。図3の各構成要素のうち図1に示す実施の形態1の誘導システム101Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。誘導システム101Bは、誘導システム101Aと同様に、飛しょう体20Bの位置誤差を補正したうえで、EOR射撃を行うシステムである。
誘導システム101Bは、警戒機30Bと、母機10Bと、飛しょう体20Bと、僚機40と、ネットワーク50とを備えている。僚機40は、母機10Bのレーダ覆域内に展開しているものとする。母機10Bは、飛しょう体20Bを搭載しており、EOR射撃にて飛しょう体20Bを発射する。実施の形態2のネットワーク50には、母機10B、警戒機30B、および僚機40が加入している。
警戒機30Bは、飛しょう体20Bの目標である目標60を観測する。警戒機30Bは、警戒機GPS/INS31と、警戒機レーダ33Bと、警戒機ネットワーク端末35とを備えている。
警戒機GPS/INS31は、警戒機位置情報32を警戒機レーダ33Bに送る。警戒機レーダ33Bは、レーダ照射によって目標60を観測し、目標60の位置を示す目標位置観測情報34Gを生成する。警戒機ネットワーク端末35は、目標位置観測情報34Gを、ネットワーク50を介して母機10Bに送る。
僚機40は、僚機GPS/INS41と、僚機ネットワーク端末43とを備えている。僚機GPS/INS41は、GPS機能およびINS機能を備えている。僚機GPS/INS41は、GPS機能およびINS機能を用いて、僚機40の位置情報である、僚機位置情報42Gを検出する。僚機位置情報42Gには、僚機40の緯度、経度、および高度の情報が含まれている。僚機GPS/INS41は、僚機位置情報42Gを僚機ネットワーク端末43に送る。
僚機ネットワーク端末43は、ネットワーク50を介して母機10Bと通信を行う通信端末である。僚機ネットワーク端末43は、僚機位置情報42Gを、ネットワーク50を介して母機10Bに送る。
母機10Bは、母機INS11と、母機ネットワーク端末13と、母機レーダ16とを備えている。母機INS11は、母機位置情報12を飛しょう体20Bに入力する。母機ネットワーク端末13は、警戒機30Bから、ネットワーク50を介して、目標位置観測情報34Gを受信する。母機ネットワーク端末13は、目標位置観測情報34Gを目標位置観測情報14Gとして飛しょう体20Bに入力する。
また、母機ネットワーク端末13は、僚機40から、ネットワーク50を介して、僚機位置情報42Gを受信する。母機ネットワーク端末13は、僚機位置情報42Gを僚機位置情報15Gとして飛しょう体20Bに入力する。目標位置観測情報14Gおよび僚機位置情報15Gには、ネットワーク50におけるシステムタイムであるネットワークタイムがタイムスタンプとして付与されている。母機ネットワーク端末13は、僚機位置情報42Gを僚機位置情報15Gとして飛しょう体20Bに入力する。
母機レーダ16は、レーダ照射によって僚機40を観測し、僚機40の位置を示す僚機位置観測情報17を生成する。僚機位置観測情報17には、母機10Bと僚機40との間の距離の情報と、母機レーダ16が照射したレーダ(送信ビーム)の中心に対する僚機40の角度の情報とが含まれている。母機レーダ16は、僚機位置観測情報17を飛しょう体20Bに入力する。なお、母機位置情報12および僚機位置観測情報17には、母機10Bの機体クロックタイムが付与されるものとする。
飛しょう体20Bは、誘導制御装置21B、操舵装置71、推進装置72、およびシーカ装置73を備えている。誘導制御装置21Bは、飛しょう体20Bを誘導制御する装置であり、入力部26、記憶部27、位置補正部22B、および誘導算出部23を備えている。
入力部26は、母機10Bから送られてくる、母機位置情報12、目標位置観測情報14G、僚機位置情報15G、および僚機位置観測情報17を受け付けて記憶部27に記憶させる。記憶部27は、母機位置情報12、目標位置観測情報14G、僚機位置情報15G、および僚機位置観測情報17を記憶し蓄積する。
位置補正部22Bは、記憶部27から母機位置情報12、僚機位置情報15G、および僚機位置観測情報17を読み出す。位置補正部22Bは、母機位置情報12の中から、ネットワークタイムを基準とした母機位置情報12を抽出する。また、位置補正部22Bは、僚機位置観測情報17の中から、ネットワークタイムを基準とした僚機位置観測情報17を抽出する。すなわち、位置補正部22Bは、母機位置情報12の中から、僚機位置情報15Gに付与されているシステムタイムを基準とした母機位置情報12を抽出し、僚機位置観測情報17の中から、僚機位置情報15Gに付与されているシステムタイムを基準とした僚機位置観測情報17を抽出する。
また、位置補正部22Bは、僚機位置情報15Gを基準とした、僚機位置観測情報17の位置誤差量を算出する。僚機位置観測情報17の位置誤差量は、僚機位置情報15Gに対する僚機位置観測情報17の誤差量であり、緯度、経度、および高度の情報で示される。また、位置補正部22Bは、僚機位置観測情報17の位置誤差量を補正する位置補正量を算出する。
また、位置補正部22Bは、母機位置情報12を、目標位置観測情報14Gと同じ警戒機位置情報32を基準とした位置情報に補正するため、母機位置情報12を、僚機位置観測情報17の位置補正量で補正する。僚機位置観測情報17の位置補正量は、僚機40で取得された僚機位置情報42G(僚機位置情報15G)に基づくものであるが、GPS機能およびINS機能を用いて取得されたものであるので、正確な僚機40の位置に基づいて算出されたものである。また、警戒機位置情報32は、警戒機30Bで取得されたものであるが、GPS機能およびINS機能を用いて取得されたものであるので、正確な警戒機30Bの位置に基づいて算出されたものである。したがって、母機位置情報12を、僚機位置観測情報17の位置補正量で補正することによって、補正後の母機位置情報12は、警戒機位置情報32を基準とした位置情報となる。すなわち、補正後の母機位置情報12と、目標位置観測情報14Gとは、ともに警戒機位置情報32を基準とした位置情報となる。位置補正部22Bは、母機位置情報12が示す緯度、経度、および高度を位置補正する。位置補正部22Bは、位置補正した母機位置情報12を、母機位置情報24として誘導算出部23に送る。
誘導算出部23は、実施の形態1と同様の処理によって誘導指令25を算出し、誘導指令25を操舵装置71および推進装置72に入力する。
つぎに、誘導システム101Bにおける動作処理手順について説明する。警戒機30Bは、目標60の位置を示す目標位置観測情報34Gを生成する。警戒機30Bは、目標位置観測情報34Gを、ネットワーク50を介して母機10Bに送る。目標位置観測情報34Gには、ネットワーク50におけるシステムタイムが付与される。
僚機40は、僚機40の位置を示す僚機位置情報42Gを生成する。僚機40は、僚機位置情報42Gを、ネットワーク50を介して母機10Bに送る。僚機位置情報42Gには、ネットワーク50におけるシステムタイム(ネットワークタイム)が付与される。
母機10Bは、INS機能を用いて母機位置情報12を検出する。母機位置情報12には、母機10Bの機体クロックタイムが付与される。母機INS11は、母機位置情報12を飛しょう体20Bに入力する。
母機ネットワーク端末13は、警戒機30Bから、ネットワーク50を介して、目標位置観測情報34Gを受信し、僚機40から、ネットワーク50を介して、僚機位置情報42Gを受信する。母機ネットワーク端末13は、目標位置観測情報34Gを目標位置観測情報14Gとして飛しょう体20Bに入力し、僚機位置情報42Gを僚機位置情報15Gとして飛しょう体20Bに入力する。目標位置観測情報14Gおよび僚機位置情報15Gには、ネットワーク50におけるシステムタイムが付与されている。また、母機レーダ16は、僚機40の位置を示す僚機位置観測情報17を生成し、僚機位置観測情報17を飛しょう体20Bに入力する。この後、飛しょう体20Bが、母機位置情報12の補正処理を行う。
図4は、実施の形態2にかかる誘導制御装置が実行する母機位置情報の補正処理手順を示すフローチャートである。ここでは、誘導制御装置21Bによる、母機位置情報12の補正処理について説明する。
入力部26は、母機10Bの機体クロックタイムが付与された、母機位置情報12および僚機位置観測情報17を記憶部27に順次蓄積させる(ステップS201)。このとき、位置補正部22Bは、僚機40との距離および角度の情報を含んだ僚機位置観測情報17を、母機位置情報12を基準にした、緯度、経度、高度の情報に変換して記憶部27に記憶させておく。
ステップS201の処理に並行して、入力部26は、ネットワーク50のシステムタイムが付与された僚機位置情報15Gを記憶部27に順次蓄積させる(ステップS202)。また、入力部26は、ネットワーク50のシステムタイムが付与された目標位置観測情報14Gを記憶部27に順次蓄積させる。
位置補正部22Bは、記憶部27から僚機位置観測情報17、母機位置情報12、および僚機位置情報15Gを読み出す。位置補正部22Bは、ネットワークタイムを基準とした、母機位置情報12および僚機位置観測情報17を抽出する(ステップS203)。すなわち、位置補正部22Bは、僚機位置情報15Gに付与されたネットワークタイムの時刻に最も近い時刻(機体クロックタイム)に取得した母機位置情報12および僚機位置観測情報17を抽出する。具体的には、位置補正部22Bは、機体クロックタイムとネットワークタイムとが同じ時刻の情報となるよう、母機位置情報12と僚機位置情報15Gとを対応付けし、僚機位置観測情報17と僚機位置情報15Gとを対応付けする。そして、位置補正部22Bは、最新の僚機位置情報15Gに対応する母機位置情報12および僚機位置観測情報17を抽出する。これにより、位置補正部22Bが抽出した母機位置情報12および僚機位置観測情報17の機体クロックタイムは、最新の僚機位置情報15Gに付与されているネットワークタイム、すなわち最新の目標位置観測情報14Gに付与されているネットワークタイムに対応した時刻を示す。
続いて、位置補正部22Bは、僚機位置情報15Gを基準とした、僚機位置観測情報17の位置誤差量を算出する(ステップS204)。また、位置補正部22Bは、僚機位置観測情報17の位置誤差量を補正する位置補正量を算出する。
そして、位置補正部22Bが、母機位置情報12を、位置補正量で補正する(ステップS205)。これにより、母機位置情報12が示す緯度、経度、および高度が、僚機位置情報15Gを基準とした位置補正量で補正される。この後、母機10Bは、飛しょう体20Bを発射し、位置補正部22Bは、位置補正後の母機位置情報12を母機位置情報24として誘導算出部23に送る。
誘導算出部23は、位置補正後の母機位置情報24を初期位置情報とし、目標60に到達できるよう、目標位置観測情報14Gに対する誘導指令25を算出する。なお、目標位置観測情報14Gのばらつきが大きい場合には、誘導算出部23は、目標位置観測情報14Gに対して平滑計算を実行してもよい。
誘導算出部23は、誘導指令25を操舵装置71および推進装置72に入力する。操舵装置71および推進装置72は、誘導指令25に従って、飛しょう体20Bの速度および姿勢を制御する。この後、飛しょう体20Bが目標60を捕捉すると、飛しょう体20Bは、シーカ装置73を用いて終末誘導を行う。そして、飛しょう体20Bが目標60に会合する。
上述したように、誘導システム101Bは、僚機位置情報15Gを基準として、母機レーダ16による僚機位置観測情報17の位置誤差量を算出し、位置誤差量を補正する位置補正量で、母機位置情報12を補正している。誘導システム101Bは、母機位置情報12を位置補正した母機位置情報24を、飛しょう体20Bの初期位置情報とし、目標60の位置情報を目標位置観測情報14Gとし、目標位置観測情報14Gおよび母機位置情報24に基づいて、飛しょう体20Bの誘導を行う。これにより、飛しょう体20Bの位置誤差が低減でき、EOR射撃時の幾何学的ロックオン確率が向上する。
このように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、飛しょう体20Bが、飛しょう体20Bの初期の位置誤差を低減したうえで、目標60に向かうことができるので、飛しょう体20Bが目標60を捕捉できる確率が向上する。
また、飛しょう体20Bが、僚機40から送られてくる僚機位置情報42Gに基づいて、僚機位置観測情報17の位置誤差量を算出し、この位置誤差量を補正する位置補正量を用いて母機位置情報12の位置を補正するので、母機位置情報12が僚機位置情報42Gに対応する位置情報に補正されて母機位置情報24(飛しょう体20Bの初期の位置情報)となる。飛しょう体20Bは、この母機位置情報24および目標位置観測情報14Gに基づいて、目標60に向かう。したがって、飛しょう体20Bが、飛しょう体20Bの初期の位置誤差を低減したうえで、目標60に向かうことができるので、飛しょう体20Bが目標60を捕捉できる確率が向上する。
実施の形態3.
つぎに、図5を用いてこの発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3では、実施の形態1の誘導システム101Aに対し、飛しょう体にネットワーク50を介した通信を実行できる通信端末(飛しょう体ネットワーク端末)を配置し、この通信端末が警戒機30Aから目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを受信する。
図5は、実施の形態3にかかる誘導システムの構成を示す図である。図3の各構成要素のうち図1に示す実施の形態1の誘導システム101Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。誘導システム101Cは、誘導システム101Aと同様に、飛しょう体20Cの位置誤差を補正したうえで、EOR射撃を行うシステムである。
誘導システム101Cは、警戒機30Aと、母機10Cと、飛しょう体20Cと、ネットワーク50とを備えている。母機10Cは、飛しょう体20Cを搭載しており、EOR射撃にて飛しょう体20Cを発射する。実施の形態3のネットワーク50には、飛しょう体20Cおよび警戒機30Aが加入している。
飛しょう体20Cは、飛しょう体ネットワーク端末19、誘導制御装置21A、操舵装置71、推進装置72、およびシーカ装置73を備えている。飛しょう体ネットワーク端末19は、警戒機30Aから、ネットワーク50を介して、目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを受信する。飛しょう体ネットワーク端末19は、目標位置観測情報34Gを目標位置観測情報14Gとして入力部26に入力し、母機位置観測情報36Gを母機位置観測情報18Gとして入力部26に入力する。実施の形態3では、母機10Cは、母機INS11を備えているが、母機ネットワーク端末13を備えていなくてもよい。
実施の形態1の誘導システム101Aでは、飛しょう体20Aが、母機ネットワーク端末13を介して、目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを取得したが、誘導システム101Cでは、飛しょう体20Cが、飛しょう体ネットワーク端末19を介して、目標位置観測情報34Gおよび母機位置観測情報36Gを取得する。誘導システム101Cと誘導システム101Aとでは、母機ネットワーク端末13および飛しょう体ネットワーク端末19の動作以外は同じである。
このように実施の形態3によれば、誘導システム101Cは、実施の形態1の誘導システム101Aと同様の効果を得ることができる。また、母機10Cから飛しょう中の飛しょう体20Cへ目標60の目標位置観測情報34Gを送信することなく、飛しょう体20Cの位置誤差を低減できる。したがって、EOR射撃時に母機10Cからコマンドが届かない領域であっても幾何学的ロックオン確率を向上させることができる。
実施の形態4.
つぎに、図6を用いてこの発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4では、実施の形態2の誘導システム101Bに対し、飛しょう体にネットワーク50を介した通信を実行できる通信端末(飛しょう体ネットワーク端末)を配置し、この通信端末が警戒機30Bから目標位置観測情報34Gを受信し、僚機40から僚機位置情報42Gを受信する。
図6は、実施の形態4にかかる誘導システムの構成を示す図である。図6の各構成要素のうち図3に示す実施の形態2の誘導システム101Bと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。誘導システム101Dは、誘導システム101Bと同様に、飛しょう体20Dの位置誤差を補正したうえで、EOR射撃を行うシステムである。
誘導システム101Dは、警戒機30Bと、母機10Dと、飛しょう体20Dと、ネットワーク50とを備えている。母機10Dは、飛しょう体20Dを搭載しており、EOR射撃にて飛しょう体20Dを発射する。実施の形態4のネットワーク50には、飛しょう体20D、僚機40、および警戒機30Bが加入している。
飛しょう体20Dは、飛しょう体ネットワーク端末19、誘導制御装置21B、操舵装置71、推進装置72、およびシーカ装置73を備えている。飛しょう体ネットワーク端末19は、ネットワーク50を介して、警戒機30Bから目標位置観測情報34Gを受信し、僚機40から僚機位置情報42Gを受信する。飛しょう体ネットワーク端末19は、目標位置観測情報34Gを目標位置観測情報14Gとして入力部26に入力し、僚機位置情報42Gを僚機位置情報15Gとして入力部26に入力する。実施の形態4では、母機10Dは、母機INS11を備えているが、母機ネットワーク端末13を備えていなくてもよい。
実施の形態2の誘導システム101Bでは、飛しょう体20Bが、母機ネットワーク端末13を介して、目標位置観測情報34Gおよび僚機位置情報42Gを取得したが、誘導システム101Dでは、飛しょう体20Dが、飛しょう体ネットワーク端末19を介して、目標位置観測情報34Gおよび僚機位置情報42Gを取得する。誘導システム101Dと誘導システム101Bとでは、母機ネットワーク端末13および飛しょう体ネットワーク端末19の動作以外は同じである。
このように実施の形態4によれば、誘導システム101Dは、実施の形態2の誘導システム101Bと同様の効果を得ることができる。また、母機10Dから飛しょう中の飛しょう体20Dへ目標60の目標位置観測情報34Gを送信することなく、飛しょう体20Dの位置誤差を低減できる。したがって、EOR射撃時に母機10Dからコマンドが届かない領域であっても幾何学的ロックオン確率を向上させることができる。
ここで、位置補正部22A,22Bのハードウェア構成について説明する。図7は、実施の形態1から4にかかる飛しょう体が備える位置補正部の第1のハードウェア構成例を示す図である。なお、位置補正部22A,22Bは、同様のハードウェア構成を有しているので、ここでは、位置補正部22Aのハードウェア構成について説明する。位置補正部22Aを構成する構成要素の一部又は全部の機能は、プロセッサ301およびメモリ302により実現することができる。
プロセッサ301の例は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ302の例は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)である。
位置補正部22Aは、プロセッサ301が、メモリ302で記憶されている、位置補正部22Aの動作を実行するための位置補正プログラムを読み出して実行することにより実現される。また、この位置補正プログラムは、位置補正部22Aの手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。メモリ302は、プロセッサ301が各種処理を実行する際の一時メモリにも使用される。
図8は、実施の形態1から4にかかる飛しょう体が備える位置補正部の第2のハードウェア構成例を示す図である。なお、位置補正部22A,22Bは、同様のハードウェア構成を有しているので、ここでは、位置補正部22Aのハードウェア構成について説明する。位置補正部22Aを構成する構成要素の一部又は全部の機能は、処理回路303により実現することができる。
処理回路303は、専用のハードウェアである。処理回路303は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
なお、位置補正部22Aの機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。すなわち、位置補正部22Aの一部の機能を図7に示したプロセッサ301およびメモリ302で実現し、残りの機能を図8に示した専用の処理回路303で実現するようにしてもよい。
なお、実施の形態1から4で説明した、誘導算出部23についても、位置補正部22Aと同様のハードウェア構成を有しているので、その説明を省略する。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。