JP2020167136A - 全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質および全固体リチウムイオン二次電池 - Google Patents

全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質および全固体リチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 全固体電池の正極に用いた場合でも、電解液を用いたリチウムイオン電池より、高い充放電容量を有する正極活物質を提供する。【解決手段】 空間群R−3mに属する結晶相を持ち、少なくともLi、Niおよび遷移金属元素Mからなるリチウムニッケル複合酸化物であり、各成分元素の物質量比Li:Ni:Mがa:x:1−x(0.98≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0、MはCo、Al、Mnより選択される一つ以上)で表され、XRDで測定される(003)面に帰属されるピークからシェラー法により算出される結晶子径が145nm以下であり、中和滴定により求められる前記リチウムニッケル複合酸化物に含まれる余剰水酸化リチウム量が0.13質量%以上である、全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。【選択図】 なし

Description

本発明は、全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質およびこれを用いた全固体リチウムイオン二次電池に関する。
近年、電気自動車の普及にともない、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。このような二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。
現在、一般的なリチウムイオン電池には、正極活物質にLiCoO、LiNiO、LiMnといった酸化物が用いられ、負極活物質にリチウム金属やリチウム合金、金属酸化物、あるいはカーボン等が用いられ、電解液にエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO、LiPFなどのLi塩を支持塩として溶解させた電解液が用いられている。
リチウムイオン電池の構成要素の中で、特に電解液は耐熱性、電位窓などの化学的特性から、高速充電や安全性、寿命といった電池の性能を制限する要因となっている。そこで、電解液に替わり固体電解質を用いることで電池の性能を向上させた全固体リチウムイオン二次電池(以下、全固体電池ともいう)については、現在、研究開発が盛んに行われている。
その研究開発の中で、硫化物の固体電解質はリチウムイオンの伝導性が高く、全固体電池に用いるのに好ましいことが、例えば特許文献1に提案されている。しかし、例えば非特許文献1に開示されているように、硫化物の電解質と酸化物の正極活物質が接触すると、充放電中に電解質と正極活物質との界面において反応が起こり、高抵抗相が生成して電池の作動を阻害してしまう。
この高抵抗相の生成を抑制するためには、正極活物質の表面にLiNbOからなる被覆層を設けることが、例えば特許文献2などで提案されている。
一方で、リチウムイオン電池を高エネルギー密度化するためには、充放電容量が高いLiNiOやLiNi0.80Co0.15Al0.05、LiNi0.6Co0.2Mn0.2といったNiの含有量が高い正極活物質を用いることが好ましく、そこで、発明者は、全固体電池への高Ni組成正極活物質の適用可能性を調査した結果、これらの正極活物質から得られるエネルギー密度が、従来の電解液を用いたリチウムイオン二次電池から期待されるエネルギー密度を下回ることが見出された。
特開2014−56661号公報 特開2010−170715号公報 特開2011−116580号公報
Narumi Ohta et al., "LiNbO3−coated LiCoO2 as cathode material for all solid−state lithium secondary batteries", Electrochemistry Communications 9 (2007) 1486−1490
そこで、本発明は上記の問題性に鑑みてなされたものであって、全固体電池の正極に用いた場合でも、電解液を用いたリチウムイオン電池が示す充放電容量と同等の充放電容量を有する正極活物質を提供する。
上記課題を解決するため本発明の第1の発明は、空間群R−3mに属する結晶相を持ち、少なくともLi、Niおよび遷移金属元素Mからなるリチウムニッケル複合酸化物であり、各成分元素の物質量比Li:Ni:Mがa:x:1−x(0.98≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0、MはCo、Al、Mnより選択される一つ以上)で表され、XRD(粉末X線回折)で測定される(003)面に帰属されるピークからシェラー法により算出される結晶子径が145nm以下であり、中和滴定により求められる前記リチウムニッケル複合酸化物に含まれる余剰水酸化リチウム量が0.13質量%以上である、全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質である。
本発明の第2の発明は、空間群R−3mに属する結晶相を持ち、少なくともLi、Ni、遷移金属元素MおよびTiを含むリチウムニッケル複合酸化物であり、各成分元素の物質量比Li:Ni:M:Tiがa:x−t1:1−x−t2:t(0.98≦a≦1.05、0.6≦x<1.0、0<t≦0.05かつt=t1+t2、MはCo、Al、Mnより選択される一つ以上)で表され、XRD(粉末X線回折)で測定される(003)面に帰属されるピークからシェラー法により算出される結晶子径が145nm以下であり、中和滴定により求められる前記リチウムニッケル複合酸化物に含まれる余剰水酸化リチウム量が0.13質量%以上である、全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明におけるリチウムニッケル複合酸化物の体積基準の累積粒度分布において、頻度の累積が50%になる粒子径D50が7μm以下である全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質である。
本発明の第4の発明は、第1〜第3の発明におけるリチウムニッケル複合酸化物の体積基準の累積粒度分布において、頻度の累積が10%、90%になる粒子径D10、D90、および体積平均粒子径MVから下記式(1)で求められる「ばらつき指数」が0.3以上、0.9以下である全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質である。
Figure 2020167136
本発明の第5の発明は、第1〜第4の発明におけるリチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に、Al、Si、Ti、V、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる1種以上の遷移金属元素とリチウムからなる複合酸化物で構成される被覆層が形成された全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質である。
本発明の第6の発明は、正極活物質に、第1〜第5の発明のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質を用いた全固体リチウムイオン二次電池である。
本発明に係る正極活物質によれば、全固体電池の正極に用いた場合でも、電解液を用いたリチウムイオン電池が示す充放電容量とほぼ同等の充放電容量を示す全固体電池が得られる。
実施例、比較例において作製したコイン型の試験用電池の断面構成の説明図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
1.全固体型リチウムイオン電池用正極活物質
まず、本実施形態の非水系電解液二次電池用正極活物質の一構成例について説明する。
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質のリチウムニッケル複合酸化物粒子はリチウム(Li)と、ニッケル(Ni)、元素M(M)とを、化学組成がLi:Ni:M=a:x:1−xで書き表され、0.98≦a≦1.05、0.6≦x<1.0となるように含むことができる。ただし、0.98≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0を満たすことが好ましく、0.98≦a≦1.03、0.8≦x≦1.0を満たすことがより好ましい。
aが0.98未満では、材料中からLiが不足し電池材料としての容量不足を招き、aが1.05を超えると、リチウムニッケル複合酸化物の結晶構造が過剰に成長するため耐久性を損なう。
xが0.6未満であれば、充電に必要な電圧が高くなり、結果的に容量が低くなる。1.0を超えるxには原理上設定することができない。
また、元素Mはコバルト(Co)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)より選択される少なくとも1種の元素とすることができる。
元素Mは、正極活物質を用いて構成される二次電池の用途や要求される性能に応じて適宜選択されるものである。
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質のリチウムニッケル複合酸化物粒子は、リチウム(Li)と、ニッケル(Ni)、元素M(M)、元素T(T)とを、化学組成がLi:Ni:M:Ti=a:x−t1:1−x−t2:tで書き表され、0.98≦a≦1.05、0.6≦x<1.0、0<t≦0.05かつt=t1+t2となるように含むことができる。0.98≦a≦1.05、0<t<0.02、0.6≦x≦1.0を満たすことが好ましく、0.98≦a≦1.03、0.8≦x≦1.0、0.005≦t≦0.02を満たすことがより好ましい。
tは0.05を超えると、不活性なLiTiOを生成し容量の低下を引き起こす傾向がある。
また、Tiは結晶中で酸素と強く結合するため、固体電解質と正極活物質の接触界面においてリン酸などのオキソ酸を生成する反応を抑制し容量を向上させる効果がある。
さらに、本実施形態に係るリチウムニッケル複合酸化物粒子は、粉末X線回折(XRD)測定を行った場合に得られる回折パターンから、「R−3m」構造の層状岩塩型結晶構造に帰属されるピークが検出されることが好ましい。特に、回折パターンから、「R−3m」構造の層状岩塩型結晶構造に帰属されるピークのみが検出されることがより好ましい。
このことは、「R−3m」構造の層状岩塩型酸化物は、該リチウムニッケル複合酸化物粒子を含む正極活物質を二次電池とした場合に、特に内部抵抗を抑制することができ好ましいからである。
ただし、層状岩塩型の結晶構造を持つリチウムニッケル複合酸化物を単相では得られず、不純物が混入する場合がある。このように不純物が混入する場合であっても、これらの「R−3m」構造の層状岩塩型構造以外の異相ピークの強度は、「R−3m」構造の層状岩塩型構造に帰属されるピーク強度を上回らないことが好ましい。
リチウムニッケル複合酸化物粒子のXRD回折パターンの(003)に帰属するピークを用い、シェラー法により算出した結晶子径が、145nm以下であることが好ましい。145nmを超えると、結晶内の固体内拡散距離が長くなり電池容量が低下し、145nm未満であると、結晶構造が不完全になり、電池容量が低下する。
塩酸を用いた滴定により測定されるリチウムニッケル複合酸化物粒子中には、不純物として含まれる余剰水酸化リチウム量が0.13質量%以上であることが好ましい。余剰水酸化リチウム量が0.13質量%未満の場合、容量が低下する。その理由は、リチウムニッケル複合酸化物の表面を覆う余剰水酸化リチウムが、全固体電池中でリチウムニッケル複合酸化物と固体電解質との接触を妨げ、高抵抗相の生成を抑制するためと考えられる。
さらに、上記結晶子径が145nm以下であっても、上記余剰水酸化リチウムが0.13質量%未満であると、電池容量は低下するので好ましくない。
その理由は以下の通りに考えられる。
上記結晶子径は、リチウムニッケル複合酸化物の二次粒子を形成する一次粒子の大きさと相関する。また余剰水酸化リチウムは主に、一次粒子と一次粒子の粒子界面に存在している。そこで、余剰の水酸化リチウム量が減少すると、一次粒子界面に空隙ができ、全固体電池の電極作製過程でリチウムニッケル複合酸化物が割れやすくなり、リチウムニッケル複合酸化物と固体電解質の接触界面が増加する。その増加した接触界面で起こる副反応により生成する相が電解質、正極活物質の電荷の授受を妨害するので、電池の抵抗が高くなり電池容量が減少する。
一方、上記結晶子径が145nmを超えると、上記余剰水酸化リチウムが0.13質量%以上存在しても、電池容量は低下するので好ましくない。
このことは、上記一次粒子が粗大化すると粒界が減少するため、余剰水酸化リチウムは二次粒子表面に塊状に点在するようになり、余剰水酸化リチウム自体が抵抗相となるためと考えられる。
そこで、リチウムニッケル複合酸化物粒子をSEMやTEMなどの電子顕微鏡で観察した場合に、粒径が0.1μm以上、2.0μm以下の一次粒子が多数凝集して形成された粒径が3.0μm以上、7.0μm以下の二次粒子や、1.0μm以上、7.0μm以下の粒径をもつ単独の一次粒子、またはそれらの混合物であることが好ましい。
また、それぞれの粒子の内部には、1以上の一次粒子により囲まれた空間、空隙があってもよい。
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物粒子の体積平均粒子径は、レーザー光回折散乱式の粒度分布計で計測した場合、7μm以下であることが好ましく、3μm以上、7μm以下であることがより好ましく、2μm以上、7μm以下であることがさらに好ましい。
このことは、リチウムニッケル複合酸化物粒子の体積平均粒子径が7μm以下の場合、該リチウムニッケル複合酸化物粒子を含む正極活物質を正極に用いた二次電池では容量当たりの電池容量を十分に大きくすることができ、かつ高安全性、高出力等の優れた電池特性が得られるからである。
さらに、前記リチウムニッケル複合酸化物粒子の体積基準の粒度分布において下記式(1)で示される粒度分布のばらつき指数が0.3以上、0.9以下であることが好ましく、0.3以上、0.7以下、さらには0.3以上、0.6以下であることがより好ましい。
粒度分布が均一な粒子のほうが、粒子後との充放電反応への寄与も均一になり、耐久性に優れた電池特性が得られるからである。
Figure 2020167136
リチウムニッケル複合酸化物粒子は表面に被覆層を備えることができる。被覆層を配置することで、本実施形態の正極活物質を含む正極を備えた二次電池において、正極活物質と固体電解質の相互反応を抑制できる。
この被覆層は、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、ニオビウム(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)から選ばれる1種以上の元素と、リチウムで構成される複合酸化物である。
その被覆層の含有量は特に限定されないが、被覆されるリチウムニッケル複合酸化物粒子の比表面積に応じて、その含有量を調整することが好ましい。具体的には被覆層は例えば、リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面積1m当たり、30μmol以上、600μmol以下の割合で、リチウムを除く被覆層構成元素を含有することが好ましく、50μmol以上、400μmol以下の割合でリチウムを除く被覆層構成元素を含有することがより好ましい。
その上記関係は、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面積(比表面積)1m当たりのリチウムを除く被覆層構成元素の含有量30μmol以上とすることで、該被覆層をリチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面全体に均一に配置できていることを示すからである。
また、被覆層を設けることで固体電解質との反応を抑制することができるが、同時に内部抵抗が増加する恐れもある。そして、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面積(比表面積)1m当たりのリチウムを除く被覆層構成元素の含有量を600μmol以下とすることで、被覆層がリチウムニッケル複合酸化物へのリチウムのインターカレーション/デインターカレーションの反応の障害になることを抑制し、内部抵抗を低減できるため好ましいからである。
被覆層のリチウムを除く被覆層構成元素の含有量の評価、算出方法は特に限定されるものではないが、例えばまず正極活物質1g中のリチウムを除く被覆層構成元素の含有量を化学分析等の方法で測定する。
例えばICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)などにより測定を行うことができる。また、リチウムを除く被覆層構成元素の化合物による被覆処理を施す前のリチウムニッケル複合酸化物粒子の比表面積を窒素吸着によるBET法等により測定する。そして、正極活物質1g中のリチウムを除く被覆層構成元素の含有量を、被覆処理前のリチウムニッケル複合酸化物粒子の比表面積で割ることで、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面積(比表面積)1m当たりのリチウムを除く被覆層構成元素の含有量を算出できる。
被覆処理前のリチウムニッケル複合酸化物粒子がリチウムを除く被覆層構成元素を含有する場合、被覆処理前後のリチウムを除く被覆層構成元素含有量の差分を、被覆に用いられたリチウムを除く被覆層構成元素として、用いることが好ましい。
SEMやTEMなどの電子顕微鏡で観察または付帯のEDSやEELSなどの分光器で分析すると、リチウムニッケル複合酸化物粒子の二次粒子表面に均一に形成された、好ましくは厚み2nm〜15nm、より好ましくは2nm〜10nm、さらに好ましくは5nm〜10nmの被覆層が検出される。
また被覆層と構成元素が同じ化合物が、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面から遊離して存在してもよいが、そのような遊離は少ない方が好ましい。遊離した被覆層は電気化学的に電池容量には寄与しないので、重量当たりの電池容量を下げる要因となる。さらに、被覆層とリチウムニッケル複合酸化物粒子とは明確な境界線を有している必要はない。このため、被覆層とは、本実施形態の正極活物質の表面側の領域において、被被覆物質であるリチウムニッケル複合酸化物粒子、すなわち中心領域よりも、被覆層を構成する元素の濃度が高い部位、領域のことを指す。
さらに被覆層は、部分的にリチウムニッケル複合酸化物と固溶していてもよい。例えば、被覆処理後に熱処理を行い、その際の条件により、被覆層の被覆層構成元素と、リチウムニッケル複合酸化物とを反応させることができる。
被覆層のチタンがリチウムニッケル複合酸化物に固溶することで、被覆層が単に、固体電解質とリチウムニッケル複合酸化物の粒子とが直接接触することを防ぎ、反応の機会を減少させるだけにとどまらず、リチウムニッケル複合酸化物表層の固体電解質との反応性を低下させる効果がある。ただし、正極活物質について、サイクル特性の向上効果も充分に発揮できるように、固溶の程度については調整することが好ましい。
2.全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
次に、本発明の一実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法について説明する。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、リチウムニッケル複合酸化物の粒子と、当該リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面の少なくとも一部が被覆された被覆層とを有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法である。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、少なくとも、前駆体晶析工程S1と、酸化焙焼工程S2と、リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3と、被覆工程S4を有する。以下、工程ごとに詳細に説明する。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、製造方法を限定するものではない。
<2−1.前駆体晶析工程S1>
前駆体晶析工程S1では、リチウムニッケル複合酸化物粒子の前駆体であるニッケル複合水酸化物を晶析反応により調製する。
具体的には例えば、各元素の物質量比が、Ni:M=x:1−xとなるように各元素の水溶性の原料を用いて原料水溶液を作製し、アルカリ金属水溶液およびアンモニウムイオン供給体と共に反応槽で反応させて、ニッケル複合水酸化物を得ることができる。
なお、上述の式中のx、yについては、リチウムニッケル複合酸化物の粒子において説明したx、yと同様の好適な範囲とすることができる。
前記原料水溶液の各元素の物質量比が、最終的に得られるニッケル複合水酸化物の物質量比と同様となる。そのため、目的とするニッケル複合水酸化物粒子中における各元素の物質量比と同じ比となるように、各元素の原料を準備する。
各元素の原料は同時に水に溶解させ混合水溶液とすることができる。各元素の原料の水溶液を混合水溶液とすると不都合がある場合は、原料毎に個別の水溶液を調整することが好ましい。具体的には各原料の水溶液の液性が、酸性および塩基性に分かれる場合などを例示できる。
金属化合物は水溶性であればよく硫酸塩、塩化物、硝酸塩などを用いることができるが、コストの観点から硫酸塩が好ましい。なお、元素Mなどで水溶性の好適な金属化合物が見出されない場合は、原料混合水溶液には加えずに後述する酸化焙焼工程S2や、リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3で添加しても良い。
前記アルカリ金属水溶液とは、特に限定されるものではないが、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
前記アンモニウムイオン供給体としては、特に限定されるものではないが、炭酸アンモニウム水溶液、アンモニア水、塩化アンモニウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
前記反応槽の形状は、特に限定されるものではないが、内部にバッフルを備えた円筒型の容器に、撹拌機および温度調節器を備えたものが好ましい。撹拌機はモーター、シャフトおよびインペラーを備えたものが好ましい。温度調節器は円筒型容器の外側に熱媒を循環させて、円筒型容器を加熱また冷却する形式のものが好ましい。
反応槽における原料水溶液、アルカリ金属水溶液およびアンモニウムイオン供給体との反応では、pHおよびアンモニア濃度が一定値に維持されることが好ましい。
前記pHは液温25℃基準で11.0以上12.2以下となるように調整することが好ましい。ニッケル複合水酸化物を調製する際、用いた原料混合水溶液に含まれる金属化合物を構成するアニオンに起因する不純物がニッケル複合水酸化物に混入することがある。しかしながら、初期水溶液のpH値を11.0以上とすることで、係る原料の金属化合物を構成するアニオンに起因する不純物の混入を抑制することができ好ましい。また、初期水溶液のpHを12.2以下とすることで、得られるニッケル複合水酸化物粒子について、微粒子化することを抑制し、最適なサイズとすることができる。
前記アンモニア濃度は5g/L以上、20g/L以下に調整されることが好ましい。アンモニア濃度を5g/L以上とすることで原料混合水溶液のNiがアンモニア錯体化され、水酸化物として液相から固相に析出速度が低下するため、得られるニッケル複合水酸化物粒子の形状の球形度が上がるため好ましい。アンモニア濃度を20g/L以下とすることで、錯体を形成するニッケルの溶解度が過度に上昇することを防止し、得られるニッケル複合水酸化物の物質量比をより確実に目標の物質量比とすることができるため好ましい。またアンモニアの過剰な消費を抑制することができ工業的に好ましい。
反応槽内の雰囲気は非酸化性雰囲気、例えば酸素濃度が1容量%以下の雰囲気にすることが好ましい。これは、非酸化性雰囲気、例えば酸素濃度を1容量%以下の雰囲気とすることで、原料化合物等が酸化されることを抑制でき好ましいからである。例えば酸化されたコバルトやマンガンが微粒子として析出すること等を防止することができる。
前駆体晶析工程S1での反応槽内の温度は40℃以上、60℃以下に維持されていることが好ましく、45℃以上、55℃以下に維持されていることがより好ましい。
反応槽は反応熱や撹拌のエネルギーにより、自然に温度が上がるため、40℃以上とすることで、冷却に余分にエネルギーを消費することが無いため好ましい。また、反応槽の温度を60℃以下とすることで、初期水溶液や、反応水溶液からのアンモニアの蒸発を抑制することができ、目標のアンモニア濃度を維持することが容易になるため好ましい。
前述のとおり、リチウムニッケル複合酸化物は粒度分布の広がりが狭く、粒子径が均一性な粒子であることが好ましい。このような粒子を作製するためにはその前駆体となるニッケル複合水酸化物において粒子径が均一性な粒子を得る必要がある。そのような粒子を得る方法としては、具体的には特許文献3などが例示できる。
<2−2.酸化焙焼工程S2>
次に、酸化焙焼工程S2について説明する。酸化焙焼工程S2では、上記前駆体晶析工程S1で得られたニッケル複合水酸化物を酸化焙焼してニッケル複合酸化物を得る。酸化焙焼工程S2では、酸素含有雰囲気中で焼成し、その後室温まで冷却することで、ニッケル複合酸化物を得ることができる。
酸化焙焼工程S2における焙焼条件は特に限定されないが、酸素含有雰囲気中、例えば空気雰囲気中、500℃以上、700℃以下の温度で、1時間以上、12時間以下焼成することが好ましい。これは、焼成温度を500℃以上とすることで、ニッケル複合水酸化物粒子を完全にニッケル複合酸化物へ転化でき好ましいからである。また、焼成温度を700℃以下とすることで、ニッケル複合酸化物の比表面積が過度に小さくなることを抑制でき好ましいからである。
焼成時間を1時間以上とすることで、焼成容器内の温度を均一にすることができ、反応を均一に進行させることができ好ましい。また、12時間よりも長い時間焼成を行っても、得られるニッケル複合酸化物に大きな変化は見られないため、エネルギー効率の観点から、焼成時間は12時間以下とすることが好ましい。
熱処理の際の酸素含有雰囲気中の酸素濃度は、空気雰囲気中の酸素濃度以上、すなわち酸素濃度が20体積%以上であることが好ましい。酸素雰囲気とすることもできるため、酸素含有雰囲気の酸素濃度の上限値は100体積%とすることができる。
なお、例えば前駆体晶析工程S1で元素Mを含む化合物を共沈できなかった場合、例えば酸化焙焼工程S2に供するニッケル複合水酸化物に対して、元素Mを含む化合物を目的とした組成比と同じになるように加えて焼成してもよい。加える元素Mを含む化合物としては特に限定されず、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、もしくはその混合物等を用いることができる。
酸化焙焼工程終了後、ニッケル複合酸化物粒子に軽度の焼結が見られる場合には、解砕処理を加えてもよい。
<2−3.リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3>
リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3は、上記酸化焙焼工程S2で得られた上記ニッケル複合酸化物と、リチウム化合物とを混合し、焼成してリチウムニッケル複合酸化物を得る。
リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3ではまず、酸化焙焼工程S2で得られたニッケル複合酸化物粒子に、この粒子に含まれる金属の原子数の総和に対して、リチウムの含有量が95原子%以上120原子%以下となるようにリチウム化合物を加えて混合することにより、リチウム混合物を得ることができる(リチウム混合物調製)。
加えるリチウム化合物としては、特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、硝酸リチウム、または炭酸リチウム、もしくはその混合物等を用いることができる。リチウム化合物としては、特に融点が低く反応性が高い水酸化リチウムを用いることが好ましい。
次に、得られたリチウム混合物を酸素含有雰囲気中で焼成した後、室温まで冷却し、リチウムを含有するリチウムニッケル複合酸化物を得ることができる。焼成条件は特に限定されないが、例えば700℃以上、800℃以下の温度で、1時間以上、10時間以下で焼成することが好ましい。
なお、酸素含有雰囲気としては、酸素を80体積%以上含む雰囲気であることが好ましい。これは、雰囲気中の酸素濃度を80体積%以上とすることで、得られるリチウムニッケル複合酸化物中のLiサイトへNi原子が混合することを特に抑制することができ好ましいからである。酸素雰囲気とすることもできるため、酸素含有雰囲気の酸素濃度の上限値は100体積%とすることができる。
そして、焼成温度を700℃以上とすることで、リチウムニッケル複合酸化物の結晶構造を十分に成長させることができ好ましい。また、焼成温度を800℃以下とすることで、得られるリチウムニッケル複合酸化物中のLiサイトへのNi原子の混入を抑制することができるため好ましい。
焼成時間は、1時間以上とすることで焼成容器内の温度を均一にすることができ、反応を均一に進行させることができるため好ましい。また、24時間よりも長い時間焼成を行っても、得られるリチウムニッケル複合酸化物に大きな変化は見られないため、エネルギー効率の観点から、焼成時間は24時間以下とすることが好ましい。
なお、リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3の後、得られるリチウムニッケル複合酸化物に軽度の焼結が見られる場合には、解砕処理を加えてもよい。
<2−4.被覆工程S4>
被覆工程S4は、上記リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3で得られた上記リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面被覆層を形成する。
具体的には例えば、リチウムニッケル複合酸化物合成工程で得たリチウムニッケル複合酸化物の粒子と、液状の被覆剤とを混合し、乾燥後、必要に応じて酸素含有雰囲気中で熱処理を行い、リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面に被覆層を設けることができる。
被覆工程ではまず、リチウムニッケル複合酸化物合成工程で得られたリチウムニッケル複合酸化物の比表面積を測定し、目標とするリチウムニッケル複合酸化物の単位面積当たりのリチウムを除く被覆層構成元素の量に応じて、液状の被覆剤を調製することができる(被覆剤調製ステップ)。
被覆剤は目的とする被覆層構成元素を含有すれば特に限定されない。
被覆剤は、均一な被覆のために、被覆層構成元素化合物が溶媒に溶解したものや、常温で液状であったり、低温の熱処理で融解したりする低融点の被覆層構成元素化合物等を好ましく用いることができる。
被覆層の原料にはアルコキシド類やカルボニル基やペルオキシ基などを備えた錯体を用いたキレート類等から選択される1種類以上が挙げられる。
被覆工程では次に、リチウムニッケル複合酸化物粒子と、被覆剤とを混合することができる。混合には一般的な混合機を用いることができる(混合物調製ステップ)。
そして、混合後に乾燥を行い(乾燥ステップ)、さらに必要に応じて熱処理を行い被覆層とリチウムニッケル化合物の結合を強固にすることができる(熱処理ステップ)。
前述の通り、被覆層はリチウムニッケル複合酸化物の二次粒子表面を2nm〜15nmの厚みで均一に被覆するものであることが好ましい。このような被覆層を形成するためには混合物調製ステップと、乾燥ステップを並行して進めることができる転動流動コーティング装置を用いることが好ましい。
また、被覆剤は乾燥により収縮を起こすため、それぞれ一回の混合物調製ステップと乾燥ステップを経るだけでは、被覆層に隙間ができてしまい、リチウムニッケル複合酸化物粒子と固体電解質の接触を保護する機能を十分に果たせない。
そこで、転動流動コーティング装置を用いると、その転動流動コーティング装置中では、加温された気流により流動しているリチウムニッケル複合酸化物粒子に被覆剤を噴霧されるため、混合物調製ステップと乾燥ステップが自動的に繰り返され、均一な被覆層が得られるため好ましい。
乾燥ステップでは、被覆剤の溶媒等を除去できる程度の温度で乾燥を行うことができる。例えば転動流動コーティング装置における給気温度を80℃以上、300℃未満に設定することができる。また被覆処理後、別途定置型の乾燥機で追加乾燥を行うこともできる。
乾燥中の雰囲気には特に指定はないが、リチウムニッケル複合酸化物粒子が雰囲気中の水分と反応することを防ぐため、ドライヤーを備えたコンプレッサーから供給される空気や、窒素およびアルゴンガスといった不活性雰囲気が好ましい。
熱処理ステップの熱処理条件は特に限定されてないが、酸素含有雰囲気、例えば空気雰囲気中、300℃以上、600℃以下の温度で、1時間以上、5時間以下で熱処理を行うことが好ましい。
熱処理後は、室温まで冷却し、最終生成物である被覆層を有するリチウムニッケル複合酸化物の粒子である正極活物質を得ることができる。
熱処理の際の酸素含有雰囲気中の酸素濃度は、空気雰囲気中の酸素濃度以上、すなわち酸素濃度が20体積%以上であることが好ましい。熱処理の際の酸素含有雰囲気を空気雰囲気中の酸素濃度以上とすることで、得られる正極活物質内に酸素欠陥が生じることを特に抑制することができ、好ましいからである。酸素雰囲気とすることもできるため、酸素含有雰囲気の酸素濃度の上限値は100体積%とすることができる。
熱処理の際の焼成温度は、300℃以上とすることで被覆剤に含まれていた不純物が正極活物質内に残留することを特に抑制できるため好ましい。また、焼成温度を600℃以下とすることで、被覆層の成分が過度に拡散されることを抑制し、被覆層の形態を保つことができるため好ましい。
熱処理の焼成時間は、1時間以上とすることで、被覆剤に含まれていた不純物が正極活物質内に残留することを特に抑制できるため好ましい。また、5時間よりも長い時間焼成を行っても、得られる正極活物質に大きな変化は見られないことから、エネルギー効率の観点から、焼成時間は5時間以下とすることが好ましい。
被覆工程後に得られる正極活物質に軽度の焼結が見られる場合には、解砕処理を加えてもよい。
なお、熱処理ステップについては実施しなくても良い。すなわち、混合物調製ステップまで実施し、正極活物質を製造することもできる。熱処理を行わなかったとしても、液状の被覆剤を用いることで、リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面に、均一に、かつ強固に被覆層を形成することができるからである。熱処理ステップを実施しない場合でも必要に応じて、被覆剤の溶媒や、水分等を低減、除去するために乾燥を行うことが好ましい。
<3.リチウムイオン二次電池>
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、前述の正極活物質を正極に用いる。以下、本発明の一実施形態に係る二次電池について、構成要素ごとにそれぞれ説明する。
本発明の一実施形態に係る二次電池は、上述の正極活物質を用いた正極と、負極と、固体電解質とを備えた構成を有することができる。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、二次電池は、下記実施形態をはじめとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
<3−1.正極>
正極は、正極合剤を成型し、形成することができる。なお、正極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。例えば、電極密度を高めるためにプレスなどによる加圧圧縮処理等を行うこともできる。
上述の正極合剤は、粉末状になっている前述の正極活物質と、固体電解質とを混合して形成できる。
固体電解質は、電極に適当なイオン伝導性を与えるために添加されるものである。
その固体電解質の材料は特に限定されないが、例えばLiPS、Li11、Li10GeP12などの硫化物系固体電解質や、LiLaZr12、Li0.34La0.51TiO2.94などの酸化物系固体電解質やPEOなどのポリマー系電解質を用いることができる。
なお、正極合剤には結着剤や導電助剤を添加することもできる。
結着剤は、正極活物質をつなぎ止める役割を果たすものである。係る正極合剤に使用される結着剤は特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸等から選択された1種類以上を用いることができる。
導電材は、電極に適当な導電性を与えるために添加されるものである。導電材の材料は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛などの黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボンブラック系材料を用いることができる。
また、正極合剤における各物質の混合比は特に限定されるものではない。例えば、正極合剤の正極活物質の含有量を50質量部以上、90質量部以下、固体電解質の含有量を10質量部以上、50質量部以下とすることができる。
ただし、正極の作製方法は、上述した例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
<3−2.負極>
負極は、負極合剤を成型し、形成することができる。
負極は、負極合剤を構成する成分やその配合等は異なるものの、実質的に上述の正極と同様の方法によって形成され、正極と同様に必要に応じて各種処理が行われる。
負極合剤は、負極活物質と固体電解質とを混合することで調製できる。負極活物質としては例えば、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
吸蔵物質は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体等から選択された1種類以上を用いることができる。係る吸蔵物質を負極活物質に採用した場合には、正極同様に、固体電解質として、LiPS等の硫化物電解質を用いることができる。
また負極は、例えば金属リチウムやインジウムなどのリチウムと合金化する金属を含有する物質により構成されたシート状の部材とすることもできる。
<3−3.固体電解質>
固体電解質は、Li+イオン導電性を持つ固体である。固体電解質としては、硫化物、酸化物、ポリマーなどから選ばれる1種を単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
<3−4.二次電池の形状、構成>
次に、本実施形態の二次電池の部材の配置、構成の例について説明する。
以上のように説明してきた正極、負極、固体電解質で構成される本実施形態の二次電池は、コイン型や積層型など、種々の形状にすることができる。いずれの形状をとる場合であっても、正極および負極を、固体電解質を介して積層させることができる。そして、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通じる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して二次電池とすることができる。
<3−5.二次電池の特性>
上述の正極活物質を用いた本発明の一実施形態に係る二次電池は、高容量を発現する。
具体的には、本実施形態の正極活物質を正極に用いて、図に示す試験用電池を構成し、電流密度を0.2mA/cmとして、カットオフ電圧4.3V(vs.Li)まで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧2.5V(vs.Li)まで放電した場合の放電容量である、初期放電容量が130mAh/g以上であることが好ましく、140mAh/g以上であることがより好ましい。
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
1.リチウムニッケル複合酸化物粒子の製造
以下の工程を実施することで、正極活物質の製造を行った。
(a)前駆体晶析工程
はじめに、反応槽(60L)内に、10Lのイオン交換水を入れて撹拌しながら、槽内温度を50℃に設定した。このときの反応槽内は、酸素濃度が1容量%以下である窒素雰囲気とした。
この反応槽内の水に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、pH値が液温25℃基準で12.8に、アンモニア濃度が15g/Lとなるように初期水溶液を調製した。
同時に、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトを、ニッケルとコバルトの物質量比が、Ni:Co=0.84:0.16となるように純水に溶解して、2.0mol/Lの混合水溶液を25L調製した。また0.37mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液を5L調製した。
ニッケルコバルト混合水溶液を、反応槽の初期水溶液に対して200mLを一定速度で滴下し、反応水溶液とした。この際、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液も一定速度で初期水溶液に滴下し、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で12.8に維持されるように制御した。
続いて、反応槽中に硫酸を滴下し、反応水溶液のpHを11.5に調整した。この操作はpH値を下げることで、続く前駆体晶析工程において、ニッケル、コバルト、およびアルミニウムの複合水酸化物が液相から固相に析出する速度を低下させることで、得られる粒度分布の均一性や粒子の球状性を向上することを意図したものである。
pH制御後、反応槽の反応水溶液に対して、24.8Lのニッケルコバルト混合水溶液を103mL/minで滴下し、さらに同時に5Lの硫酸アルミニウム水溶液を20.8mL/minで滴下した。この際、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液も一定速度で初期水溶液に滴下し、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で11.5に、アンモニア濃度が15g/Lに維持されるように制御した。
ニッケルコバルト混合水溶液および硫酸アルミニウム水溶液を全量滴下した後、反応槽水溶液のpH値を液温25℃基準で13.0になるまでpH値を向上させた。この操作はアンモニア錯体化され液相に溶存するニッケルイオンを水酸化物上に析出させ、目標どおりの化学組成を得ることを意図している。
その後、反応溶液をブフナーロート、ろ過缶、および真空ポンプ真空濾過機で固液分離した。さらに得られた固相を40℃の20Lの純水に分散させ固液分離する操作を2回繰り返し、ニッケル複合水酸化物から硫酸ナトリウム等の水溶性の不純物を除去した。
洗浄を終えた固液分離後のケーキ状の固相を、120℃の定置型乾燥機で24時間、空気雰囲気中で乾燥後、目開き100μmのフルイにかけて粉末状のニッケル複合水酸化物を得た。
(b)酸化焙焼工程
雰囲気焼成炉(株式会社シリコニット製、BM−50100M)を用いて、作製した複合水酸化物粒子を酸素濃度が20体積%である空気雰囲気中、600℃、2時間焼成した後、室温まで冷却し、ニッケル複合酸化物粒子を得た。
(c)リチウムニッケル複合酸化物合成工程
ニッケル複合酸化物粒子に、この複合酸化物粒子に含まれるニッケル、コバルト、アルミニウムの原子数の総和に対して、リチウムの含有量が103原子%となるように秤量した水酸化リチウム一水和物を加えて、ターブラーシェーカーミキサ(株式会社ダルトン製、T2F)を用いて混合することにより、リチウム混合物を得た。
雰囲気焼成炉(株式会社シリコニット製、BM−50100M)を用いて、得られたリチウム混合物を、酸素濃度が90体積%以上の酸素含有雰囲気中、745℃で、5時間焼成した後、室温まで冷却した。これにより、リチウムニッケル複合酸化物粒子を得た。
2.リチウムニッケル複合酸化物の粒子の評価
得られたリチウムニッケル複合酸化物の粒子に対して、以下の評価を行った。
(a)組成
ICP発光分光分析器(VARIAN社製、725ES)を用いた分析により、リチウムニッケル複合酸化物は、各元素の物質量比が、Li:Ni:Co:Al=1.03:0.81:0.15:0.04で表されるものであることを確認した。
(b)結晶構造
このリチウムニッケル複合酸化物の粒子の結晶構造を、XRD(PANALYTICAL社製、X‘Pert、PROMRD)を用いて測定したところ、回折パターンにR−3m構造に帰属されるピークが検出される層状岩塩型の結晶構造であることが確認された。
XRDプロファイルの(003)ピークの半価幅を計測し、シェラー法を用いて結晶子の大きさを算出すると、143.2nmであることが確認された。
(c)余剰水酸化リチウム量測定
リチウムニッケル複合酸化物中の不純物である余剰水酸化リチウムの定量を滴定法により行った。リチウムニッケル複合酸化物粒子2.0gを、125mlに分散させ、さらに塩化バリウム10%溶液を2mL加えた。撹拌をしながら1mol/L塩酸で滴定を行い、得られた滴定曲線のpH値が8付近の変曲点までに要した1mol/L塩酸の量を、余剰水酸化リチウムに起因するLi量として換算すると、リチウムニッケル複合酸化物中の余剰水酸化リチウム量は0.21質量%であることが確認された。
(d)比表面積
このリチウムニッケル複合酸化物の粒子のBET比表面積を、全自動BET比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、マックソーブ)を用いて測定した。その結果から0.53m/gであることを確認した。
(e)体積平均粒子径
このリチウムニッケル複合酸化物の粒子の体積平均粒子径を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。その結果からD50は5.10μm、D10、D90、MVから算出されるばらつき指数は、0.43であることを確認した。
3.リチウムニッケル複合酸化物粒子への被覆
上記リチウムニッケル複合酸化物の粒子に対して、以下の被覆工程を実施した。
32gのチタニウムテトラブトキシドのエタノール溶液を100mlおよび0.53gのリチウムのエタノール溶液を100mlをそれぞれに調製し、さらにこれらを混合して、コート液を調整した。
上記コート液を用いて、転動流動コーティング装置(MP−01、パウレック社製)により、500gのリチウムニッケル複合酸化物に対して、被覆処理を行った。
500gのリチウムニッケル複合酸化物を、120℃に加熱された流速0.3m/hの空気でチャンバー内に流動させ、このリチウムニッケル複合酸化物に対して、コート液を1.7ml/mで噴霧した。
コート液を全量噴霧後、チャンバー内からリチウムニッケル複合酸化物を回収し、雰囲気焼成炉(株式会社シリコニット製、BM−50100M)を用いて、酸素流通下、400℃で10時間焼成した。その後、室温まで冷却し、正極活物質である被覆層を有するリチウムニッケル複合酸化物の粒子を得た。
4.被覆リチウムニッケル複合酸化物の粒子の評価
(a)組成
ICP発光分光分析器(VARIAN社製、725ES)を用いた分析により、被覆リチウムニッケル複合酸化物は、0.88質量%のTiを含み、母材の単位面積当たりのTi量は350μmol/mと確認された。
(b)クライオイオンスライサ(JEOL、IB−09060CIS)で薄片化した被覆リチウムニッケル複合酸化物をTEM(JEOL製、JEM−ARM200F)で観察した結果被覆層の厚みは11nmであることを確認した。
5.二次電池の作製
得られた正極活物質の容量の評価には、図1に示す構造の電池(以下、「試験用電池」という)を使用した。試験用電池1は、ケースと、ケース内に収容された圧粉体セル2から構成されている。
ケースは、中空かつ一端が開口された負極缶3と、この負極缶の開口部に配置される正極缶4とを有しており、正極缶を負極缶の開口部に配置すると、正極缶と負極缶との間に圧粉体セルを収容する空間が形成されるように構成されている。正極缶は負極缶に対して蝶ネジ5とナット6で固定される。
負極缶は負極、正極缶は正極のそれぞれの端子を備えている。ケースは絶縁スリーブ7を備えており、この絶縁スリーブによって、負極缶と正極缶との間が非接触の状態を維持するように固定されている。
負極缶の閉止された一端には、加圧ネジ8が備えられており、正極缶を負極缶に固定した後、加圧ネジを圧粉体セル収容空間に向けて締めこむことで、半球座金9を通して圧粉体セルを加圧状態に保持する。負極缶の加圧ネジが存在する一端には、ねじ込み式のプラグ10が備えられている。負極缶と正極缶の間および負極缶とプラグの間には、オーリング11が備えられており、負極缶と正極缶の間の隙間が密封し、ケース内の気密が維持される。
また、圧粉体セルは、正極層、固体電解質層および負極層とからなり、この順で並ぶように積層されたペレットである。正極層が下部集電体12を通して正極缶の内面に接触し、負極層が上部集電体13、座金および加圧用ねじを通して負極缶の内面に接触するようにケースに収容されている。下部集電体、圧粉体セルおよび上部集電体はスリーブ14によって正極層、負極層が電気的に接触しないように保護されている。
このような試験用電池1を、以下のようにして作製した。
初めに、合成した固体電解質80mgをペレット形成器で25MPaで加圧し、固体電解質ペレットを得た。つぎに正極活物質70mgと、固体電解質30mgを乳鉢で混合した。固体電解質ペレットと正極活物質+固体電解質の混合物15mgをペレット形成器にセットし、360MPaで加圧し、固体電解質ペレット上に正極層を形成した。下から順に、下部電極、正極層を下向きにしたペレット、インジウム箔、上部電極の順に積層し、9kNで加圧し、電極を構成した。電極をケース内に封入し、加圧ねじを6〜7N・mのトルクで締め付けた。試験用電池は、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
6.二次電池の評価
作製した試験用電池の性能を示す充放電容量、以下のように評価した。
(a)初期放電容量
初期放電容量は、負極にインジウム箔を用いた試験用電池を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.2 mA/cmとしてカットオフ電圧3.7V(vs.Li−In)まで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧1.9V(vs.Li−In)まで放電したときの放電容量(初期放電容量)を測定することにより評価した。測定結果は134mAh/gであった。
表1〜2に正極活物質の作製条件、形態特性、及び二次電池の評価結果を纏めて示す。
なお、表中の「Li/Me」(物質量比)はLiの物質量とLi以外の金属元素の物質量の総和Meとの比(Li/Me)を示す。
実施例1のリチウムニッケル複合酸化物合成工程における焼成温度を730℃にした以外は実施例1と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例1のリチウムニッケル複合酸化物合成工程における焼成時間を10hにした以外は実施例2と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例1のリチウムニッケル複合酸化物合成工程における水酸化リチウム一水和物の混合量を複合酸化物粒子に含まれるニッケル、コバルト、アルミニウムの原子数の総和に対して、リチウムの含有量が101原子%になるようにし、焼成温度を760℃、焼成時間を5hにした以外は実施例1と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例1の前駆体晶析工程における原料水溶液を、硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンによるニッケル、コバルト、マンガンの物質量比が、Ni:Co:Mn=0.82:0.09:0.09のものとし、硫酸アルミニウム水溶液を用いず、リチウムニッケル複合酸化物合成工程における水酸化リチウム一水和物の混合量を複合酸化物粒子に含まれるニッケル、コバルト、マンガンの原子数の総和に対して、リチウムの含有量が103原子%になるようにし、焼成温度を780℃、焼成時間を8hにし、被覆工程におけるチタンテトラブトキシドの量を43.9g、リチウムの量を0.72gとした以外は実施例1と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例1の前駆体晶析工程における固液分離後のケーキ状の固相を、再度イオン交換水に分散させたスラリーに、pH11.0になるようにpHコントローラーを用いて水酸化ナトリウム水溶液で調整しながら、t=0.005になるように秤量した硫酸チタン溶液を滴下するとともに、リチウムニッケル複合酸化物合成工程における焼成温度を760℃にした以外は実施例1と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。結果を表1〜2に示す。
実施例6のtをt=0.020になるように秤量した硫酸チタン溶液を滴下した以外は実施例6と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。結果を表1〜2に示す。
実施例6のtをt=0.050になるように秤量した硫酸チタン溶液を滴下するとともに、リチウムニッケル複合酸化物合成工程における焼成温度を760℃にした以外は実施例6と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。結果を表1〜2に示す。
(実験例1)
実施例8のtをt=0.100になるように秤量した硫酸チタン溶液を滴下した以外は実施例6と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。結果を表1〜2に示す。
(比較例1)
実施例1のリチウムニッケル複合酸化物合成工程における焼成温度を820℃にした以外は実施例1と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
(比較例2)
比較例1のリチウムニッケル複合酸化物合成工程における焼成時間を11.7時間にし、焼成温度を760℃にした以外は比較例1と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
(比較例3)
実施例2で得たリチウムニッケル複合酸化物を300gを25℃の200mlの純水に分散させ、15分間撹拌後、真空ろ過機で固液分離し、真空乾燥器を用いて240℃で20時間、乾燥した。その後、被覆工程におけるチタンテトラブトキシドの量を77.5g、リチウムの量を1.26gとした以外は実施例2と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
Figure 2020167136
Figure 2020167136
1 試験用電池
2 圧粉体セル
3 負極缶
4 正極缶
5 蝶ネジ
6 ナット
7 絶縁スリーブ
8 加圧ネジ
9 半球座金
10 プラグ
11 オーリング
12 下部集電体
13 上部集電体
14 スリーブ

Claims (6)

  1. 空間群R−3mに属する結晶相を持ち、少なくともLi、Niおよび遷移金属元素Mからなるリチウムニッケル複合酸化物であり、
    各成分元素の物質量比Li:Ni:Mがa:x:1−x(0.98≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0、MはCo、Al、Mnより選択される一つ以上)で表され、
    XRD(粉末X線回折)で測定される(003)面に帰属されるピークからシェラー法により算出される結晶子径が145nm以下であり、
    中和滴定により求められる前記リチウムニッケル複合酸化物に含まれる余剰水酸化リチウム量が0.13質量%以上である、全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 空間群R−3mに属する結晶相を持ち、少なくともLi、Ni、遷移金属元素MおよびTiを含むリチウムニッケル複合酸化物であり、
    各成分元素の物質量比Li:Ni:M:Tiがa:x−t1:1−x−t2:t(0.98≦a≦1.05、0.6≦x<1.0、0<t≦0.05かつt=t1+t2、MはCo、Al、Mnより選択される一つ以上)で表され、
    XRD(粉末X線回折)で測定される(003)面に帰属されるピークからシェラー法により算出される結晶子径が145nm以下であり、
    中和滴定により求められる前記リチウムニッケル複合酸化物に含まれる余剰水酸化リチウム量が0.13質量%以上である、全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 前記リチウムニッケル複合酸化物の体積基準の累積粒度分布において、頻度の累積が50%になる粒子径D50が7μm以下である、請求項1または2に記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 前記リチウムニッケル複合酸化物の体積基準の累積粒度分布において、頻度の累積が10%、90%になる粒子径D10、D90、および体積平均粒子径MVから下記式(1)で求められる「ばらつき指数」が0.3以上0.9以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。
    Figure 2020167136
  5. 前記リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に、Al、Si、Ti、V、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる1種以上の遷移金属元素とリチウムからなる複合酸化物で構成される被覆層が形成された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  6. 正極活物質に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質を用いた、全固体リチウムイオン二次電池。
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