JP2020167136A - 全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質および全固体リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
現在、一般的なリチウムイオン電池には、正極活物質にLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4といった酸化物が用いられ、負極活物質にリチウム金属やリチウム合金、金属酸化物、あるいはカーボン等が用いられ、電解液にエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO4、LiPF6などのLi塩を支持塩として溶解させた電解液が用いられている。
この高抵抗相の生成を抑制するためには、正極活物質の表面にLiNbO3からなる被覆層を設けることが、例えば特許文献2などで提案されている。
まず、本実施形態の非水系電解液二次電池用正極活物質の一構成例について説明する。
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質のリチウムニッケル複合酸化物粒子はリチウム(Li)と、ニッケル(Ni)、元素M(M)とを、化学組成がLi:Ni:M=a:x:1−xで書き表され、0.98≦a≦1.05、0.6≦x<1.0となるように含むことができる。ただし、0.98≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0を満たすことが好ましく、0.98≦a≦1.03、0.8≦x≦1.0を満たすことがより好ましい。
元素Mは、正極活物質を用いて構成される二次電池の用途や要求される性能に応じて適宜選択されるものである。
tは0.05を超えると、不活性なLi2TiO3を生成し容量の低下を引き起こす傾向がある。
ただし、層状岩塩型の結晶構造を持つリチウムニッケル複合酸化物を単相では得られず、不純物が混入する場合がある。このように不純物が混入する場合であっても、これらの「R−3m」構造の層状岩塩型構造以外の異相ピークの強度は、「R−3m」構造の層状岩塩型構造に帰属されるピーク強度を上回らないことが好ましい。
その理由は以下の通りに考えられる。
上記結晶子径は、リチウムニッケル複合酸化物の二次粒子を形成する一次粒子の大きさと相関する。また余剰水酸化リチウムは主に、一次粒子と一次粒子の粒子界面に存在している。そこで、余剰の水酸化リチウム量が減少すると、一次粒子界面に空隙ができ、全固体電池の電極作製過程でリチウムニッケル複合酸化物が割れやすくなり、リチウムニッケル複合酸化物と固体電解質の接触界面が増加する。その増加した接触界面で起こる副反応により生成する相が電解質、正極活物質の電荷の授受を妨害するので、電池の抵抗が高くなり電池容量が減少する。
このことは、上記一次粒子が粗大化すると粒界が減少するため、余剰水酸化リチウムは二次粒子表面に塊状に点在するようになり、余剰水酸化リチウム自体が抵抗相となるためと考えられる。
また、それぞれの粒子の内部には、1以上の一次粒子により囲まれた空間、空隙があってもよい。
このことは、リチウムニッケル複合酸化物粒子の体積平均粒子径が7μm以下の場合、該リチウムニッケル複合酸化物粒子を含む正極活物質を正極に用いた二次電池では容量当たりの電池容量を十分に大きくすることができ、かつ高安全性、高出力等の優れた電池特性が得られるからである。
粒度分布が均一な粒子のほうが、粒子後との充放電反応への寄与も均一になり、耐久性に優れた電池特性が得られるからである。
その被覆層の含有量は特に限定されないが、被覆されるリチウムニッケル複合酸化物粒子の比表面積に応じて、その含有量を調整することが好ましい。具体的には被覆層は例えば、リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面積1m2当たり、30μmol以上、600μmol以下の割合で、リチウムを除く被覆層構成元素を含有することが好ましく、50μmol以上、400μmol以下の割合でリチウムを除く被覆層構成元素を含有することがより好ましい。
また、被覆層を設けることで固体電解質との反応を抑制することができるが、同時に内部抵抗が増加する恐れもある。そして、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面積(比表面積)1m2当たりのリチウムを除く被覆層構成元素の含有量を600μmol以下とすることで、被覆層がリチウムニッケル複合酸化物へのリチウムのインターカレーション/デインターカレーションの反応の障害になることを抑制し、内部抵抗を低減できるため好ましいからである。
例えばICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)などにより測定を行うことができる。また、リチウムを除く被覆層構成元素の化合物による被覆処理を施す前のリチウムニッケル複合酸化物粒子の比表面積を窒素吸着によるBET法等により測定する。そして、正極活物質1g中のリチウムを除く被覆層構成元素の含有量を、被覆処理前のリチウムニッケル複合酸化物粒子の比表面積で割ることで、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面積(比表面積)1m2当たりのリチウムを除く被覆層構成元素の含有量を算出できる。
SEMやTEMなどの電子顕微鏡で観察または付帯のEDSやEELSなどの分光器で分析すると、リチウムニッケル複合酸化物粒子の二次粒子表面に均一に形成された、好ましくは厚み2nm〜15nm、より好ましくは2nm〜10nm、さらに好ましくは5nm〜10nmの被覆層が検出される。
被覆層のチタンがリチウムニッケル複合酸化物に固溶することで、被覆層が単に、固体電解質とリチウムニッケル複合酸化物の粒子とが直接接触することを防ぎ、反応の機会を減少させるだけにとどまらず、リチウムニッケル複合酸化物表層の固体電解質との反応性を低下させる効果がある。ただし、正極活物質について、サイクル特性の向上効果も充分に発揮できるように、固溶の程度については調整することが好ましい。
次に、本発明の一実施形態に係る全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法について説明する。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、リチウムニッケル複合酸化物の粒子と、当該リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面の少なくとも一部が被覆された被覆層とを有するリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法である。
前駆体晶析工程S1では、リチウムニッケル複合酸化物粒子の前駆体であるニッケル複合水酸化物を晶析反応により調製する。
具体的には例えば、各元素の物質量比が、Ni:M=x:1−xとなるように各元素の水溶性の原料を用いて原料水溶液を作製し、アルカリ金属水溶液およびアンモニウムイオン供給体と共に反応槽で反応させて、ニッケル複合水酸化物を得ることができる。
なお、上述の式中のx、yについては、リチウムニッケル複合酸化物の粒子において説明したx、yと同様の好適な範囲とすることができる。
各元素の原料は同時に水に溶解させ混合水溶液とすることができる。各元素の原料の水溶液を混合水溶液とすると不都合がある場合は、原料毎に個別の水溶液を調整することが好ましい。具体的には各原料の水溶液の液性が、酸性および塩基性に分かれる場合などを例示できる。
前記pHは液温25℃基準で11.0以上12.2以下となるように調整することが好ましい。ニッケル複合水酸化物を調製する際、用いた原料混合水溶液に含まれる金属化合物を構成するアニオンに起因する不純物がニッケル複合水酸化物に混入することがある。しかしながら、初期水溶液のpH値を11.0以上とすることで、係る原料の金属化合物を構成するアニオンに起因する不純物の混入を抑制することができ好ましい。また、初期水溶液のpHを12.2以下とすることで、得られるニッケル複合水酸化物粒子について、微粒子化することを抑制し、最適なサイズとすることができる。
反応槽は反応熱や撹拌のエネルギーにより、自然に温度が上がるため、40℃以上とすることで、冷却に余分にエネルギーを消費することが無いため好ましい。また、反応槽の温度を60℃以下とすることで、初期水溶液や、反応水溶液からのアンモニアの蒸発を抑制することができ、目標のアンモニア濃度を維持することが容易になるため好ましい。
次に、酸化焙焼工程S2について説明する。酸化焙焼工程S2では、上記前駆体晶析工程S1で得られたニッケル複合水酸化物を酸化焙焼してニッケル複合酸化物を得る。酸化焙焼工程S2では、酸素含有雰囲気中で焼成し、その後室温まで冷却することで、ニッケル複合酸化物を得ることができる。
酸化焙焼工程終了後、ニッケル複合酸化物粒子に軽度の焼結が見られる場合には、解砕処理を加えてもよい。
リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3は、上記酸化焙焼工程S2で得られた上記ニッケル複合酸化物と、リチウム化合物とを混合し、焼成してリチウムニッケル複合酸化物を得る。
加えるリチウム化合物としては、特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、硝酸リチウム、または炭酸リチウム、もしくはその混合物等を用いることができる。リチウム化合物としては、特に融点が低く反応性が高い水酸化リチウムを用いることが好ましい。
なお、リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3の後、得られるリチウムニッケル複合酸化物に軽度の焼結が見られる場合には、解砕処理を加えてもよい。
被覆工程S4は、上記リチウムニッケル複合酸化物合成工程S3で得られた上記リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面被覆層を形成する。
具体的には例えば、リチウムニッケル複合酸化物合成工程で得たリチウムニッケル複合酸化物の粒子と、液状の被覆剤とを混合し、乾燥後、必要に応じて酸素含有雰囲気中で熱処理を行い、リチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面に被覆層を設けることができる。
被覆剤は、均一な被覆のために、被覆層構成元素化合物が溶媒に溶解したものや、常温で液状であったり、低温の熱処理で融解したりする低融点の被覆層構成元素化合物等を好ましく用いることができる。
被覆層の原料にはアルコキシド類やカルボニル基やペルオキシ基などを備えた錯体を用いたキレート類等から選択される1種類以上が挙げられる。
被覆工程では次に、リチウムニッケル複合酸化物粒子と、被覆剤とを混合することができる。混合には一般的な混合機を用いることができる(混合物調製ステップ)。
前述の通り、被覆層はリチウムニッケル複合酸化物の二次粒子表面を2nm〜15nmの厚みで均一に被覆するものであることが好ましい。このような被覆層を形成するためには混合物調製ステップと、乾燥ステップを並行して進めることができる転動流動コーティング装置を用いることが好ましい。
そこで、転動流動コーティング装置を用いると、その転動流動コーティング装置中では、加温された気流により流動しているリチウムニッケル複合酸化物粒子に被覆剤を噴霧されるため、混合物調製ステップと乾燥ステップが自動的に繰り返され、均一な被覆層が得られるため好ましい。
乾燥中の雰囲気には特に指定はないが、リチウムニッケル複合酸化物粒子が雰囲気中の水分と反応することを防ぐため、ドライヤーを備えたコンプレッサーから供給される空気や、窒素およびアルゴンガスといった不活性雰囲気が好ましい。
熱処理後は、室温まで冷却し、最終生成物である被覆層を有するリチウムニッケル複合酸化物の粒子である正極活物質を得ることができる。
熱処理の際の酸素含有雰囲気中の酸素濃度は、空気雰囲気中の酸素濃度以上、すなわち酸素濃度が20体積%以上であることが好ましい。熱処理の際の酸素含有雰囲気を空気雰囲気中の酸素濃度以上とすることで、得られる正極活物質内に酸素欠陥が生じることを特に抑制することができ、好ましいからである。酸素雰囲気とすることもできるため、酸素含有雰囲気の酸素濃度の上限値は100体積%とすることができる。
被覆工程後に得られる正極活物質に軽度の焼結が見られる場合には、解砕処理を加えてもよい。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、前述の正極活物質を正極に用いる。以下、本発明の一実施形態に係る二次電池について、構成要素ごとにそれぞれ説明する。
正極は、正極合剤を成型し、形成することができる。なお、正極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。例えば、電極密度を高めるためにプレスなどによる加圧圧縮処理等を行うこともできる。
上述の正極合剤は、粉末状になっている前述の正極活物質と、固体電解質とを混合して形成できる。
その固体電解質の材料は特に限定されないが、例えばLi3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S12などの硫化物系固体電解質や、Li7La3Zr2O12、Li0.34La0.51TiO2.94などの酸化物系固体電解質やPEOなどのポリマー系電解質を用いることができる。
結着剤は、正極活物質をつなぎ止める役割を果たすものである。係る正極合剤に使用される結着剤は特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸等から選択された1種類以上を用いることができる。
ただし、正極の作製方法は、上述した例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
負極は、負極合剤を成型し、形成することができる。
負極は、負極合剤を構成する成分やその配合等は異なるものの、実質的に上述の正極と同様の方法によって形成され、正極と同様に必要に応じて各種処理が行われる。
負極合剤は、負極活物質と固体電解質とを混合することで調製できる。負極活物質としては例えば、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
また負極は、例えば金属リチウムやインジウムなどのリチウムと合金化する金属を含有する物質により構成されたシート状の部材とすることもできる。
固体電解質は、Li+イオン導電性を持つ固体である。固体電解質としては、硫化物、酸化物、ポリマーなどから選ばれる1種を単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
次に、本実施形態の二次電池の部材の配置、構成の例について説明する。
以上のように説明してきた正極、負極、固体電解質で構成される本実施形態の二次電池は、コイン型や積層型など、種々の形状にすることができる。いずれの形状をとる場合であっても、正極および負極を、固体電解質を介して積層させることができる。そして、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通じる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して二次電池とすることができる。
上述の正極活物質を用いた本発明の一実施形態に係る二次電池は、高容量を発現する。
具体的には、本実施形態の正極活物質を正極に用いて、図に示す試験用電池を構成し、電流密度を0.2mA/cm2として、カットオフ電圧4.3V(vs.Li)まで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧2.5V(vs.Li)まで放電した場合の放電容量である、初期放電容量が130mAh/g以上であることが好ましく、140mAh/g以上であることがより好ましい。
以下の工程を実施することで、正極活物質の製造を行った。
(a)前駆体晶析工程
はじめに、反応槽(60L)内に、10Lのイオン交換水を入れて撹拌しながら、槽内温度を50℃に設定した。このときの反応槽内は、酸素濃度が1容量%以下である窒素雰囲気とした。
この反応槽内の水に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、pH値が液温25℃基準で12.8に、アンモニア濃度が15g/Lとなるように初期水溶液を調製した。
同時に、硫酸ニッケルと、硫酸コバルトを、ニッケルとコバルトの物質量比が、Ni:Co=0.84:0.16となるように純水に溶解して、2.0mol/Lの混合水溶液を25L調製した。また0.37mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液を5L調製した。
ニッケルコバルト混合水溶液を、反応槽の初期水溶液に対して200mLを一定速度で滴下し、反応水溶液とした。この際、25質量%アンモニア水および25質量%水酸化ナトリウム水溶液も一定速度で初期水溶液に滴下し、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で12.8に維持されるように制御した。
洗浄を終えた固液分離後のケーキ状の固相を、120℃の定置型乾燥機で24時間、空気雰囲気中で乾燥後、目開き100μmのフルイにかけて粉末状のニッケル複合水酸化物を得た。
雰囲気焼成炉(株式会社シリコニット製、BM−50100M)を用いて、作製した複合水酸化物粒子を酸素濃度が20体積%である空気雰囲気中、600℃、2時間焼成した後、室温まで冷却し、ニッケル複合酸化物粒子を得た。
ニッケル複合酸化物粒子に、この複合酸化物粒子に含まれるニッケル、コバルト、アルミニウムの原子数の総和に対して、リチウムの含有量が103原子%となるように秤量した水酸化リチウム一水和物を加えて、ターブラーシェーカーミキサ(株式会社ダルトン製、T2F)を用いて混合することにより、リチウム混合物を得た。
得られたリチウムニッケル複合酸化物の粒子に対して、以下の評価を行った。
ICP発光分光分析器(VARIAN社製、725ES)を用いた分析により、リチウムニッケル複合酸化物は、各元素の物質量比が、Li:Ni:Co:Al=1.03:0.81:0.15:0.04で表されるものであることを確認した。
このリチウムニッケル複合酸化物の粒子の結晶構造を、XRD(PANALYTICAL社製、X‘Pert、PROMRD)を用いて測定したところ、回折パターンにR−3m構造に帰属されるピークが検出される層状岩塩型の結晶構造であることが確認された。
XRDプロファイルの(003)ピークの半価幅を計測し、シェラー法を用いて結晶子の大きさを算出すると、143.2nmであることが確認された。
リチウムニッケル複合酸化物中の不純物である余剰水酸化リチウムの定量を滴定法により行った。リチウムニッケル複合酸化物粒子2.0gを、125mlに分散させ、さらに塩化バリウム10%溶液を2mL加えた。撹拌をしながら1mol/L塩酸で滴定を行い、得られた滴定曲線のpH値が8付近の変曲点までに要した1mol/L塩酸の量を、余剰水酸化リチウムに起因するLi量として換算すると、リチウムニッケル複合酸化物中の余剰水酸化リチウム量は0.21質量%であることが確認された。
このリチウムニッケル複合酸化物の粒子のBET比表面積を、全自動BET比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、マックソーブ)を用いて測定した。その結果から0.53m2/gであることを確認した。
このリチウムニッケル複合酸化物の粒子の体積平均粒子径を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。その結果からD50は5.10μm、D10、D90、MVから算出されるばらつき指数は、0.43であることを確認した。
上記リチウムニッケル複合酸化物の粒子に対して、以下の被覆工程を実施した。
32gのチタニウムテトラブトキシドのエタノール溶液を100mlおよび0.53gのリチウムのエタノール溶液を100mlをそれぞれに調製し、さらにこれらを混合して、コート液を調整した。
500gのリチウムニッケル複合酸化物を、120℃に加熱された流速0.3m3/hの空気でチャンバー内に流動させ、このリチウムニッケル複合酸化物に対して、コート液を1.7ml/m2で噴霧した。
(a)組成
ICP発光分光分析器(VARIAN社製、725ES)を用いた分析により、被覆リチウムニッケル複合酸化物は、0.88質量%のTiを含み、母材の単位面積当たりのTi量は350μmol/m2と確認された。
(b)クライオイオンスライサ(JEOL、IB−09060CIS)で薄片化した被覆リチウムニッケル複合酸化物をTEM(JEOL製、JEM−ARM200F)で観察した結果被覆層の厚みは11nmであることを確認した。
得られた正極活物質の容量の評価には、図1に示す構造の電池(以下、「試験用電池」という)を使用した。試験用電池1は、ケースと、ケース内に収容された圧粉体セル2から構成されている。
ケースは、中空かつ一端が開口された負極缶3と、この負極缶の開口部に配置される正極缶4とを有しており、正極缶を負極缶の開口部に配置すると、正極缶と負極缶との間に圧粉体セルを収容する空間が形成されるように構成されている。正極缶は負極缶に対して蝶ネジ5とナット6で固定される。
負極缶は負極、正極缶は正極のそれぞれの端子を備えている。ケースは絶縁スリーブ7を備えており、この絶縁スリーブによって、負極缶と正極缶との間が非接触の状態を維持するように固定されている。
負極缶の閉止された一端には、加圧ネジ8が備えられており、正極缶を負極缶に固定した後、加圧ネジを圧粉体セル収容空間に向けて締めこむことで、半球座金9を通して圧粉体セルを加圧状態に保持する。負極缶の加圧ネジが存在する一端には、ねじ込み式のプラグ10が備えられている。負極缶と正極缶の間および負極缶とプラグの間には、オーリング11が備えられており、負極缶と正極缶の間の隙間が密封し、ケース内の気密が維持される。
初めに、合成した固体電解質80mgをペレット形成器で25MPaで加圧し、固体電解質ペレットを得た。つぎに正極活物質70mgと、固体電解質30mgを乳鉢で混合した。固体電解質ペレットと正極活物質+固体電解質の混合物15mgをペレット形成器にセットし、360MPaで加圧し、固体電解質ペレット上に正極層を形成した。下から順に、下部電極、正極層を下向きにしたペレット、インジウム箔、上部電極の順に積層し、9kNで加圧し、電極を構成した。電極をケース内に封入し、加圧ねじを6〜7N・mのトルクで締め付けた。試験用電池は、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
作製した試験用電池の性能を示す充放電容量、以下のように評価した。
初期放電容量は、負極にインジウム箔を用いた試験用電池を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.2 mA/cm2としてカットオフ電圧3.7V(vs.Li−In)まで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧1.9V(vs.Li−In)まで放電したときの放電容量(初期放電容量)を測定することにより評価した。測定結果は134mAh/gであった。
表1〜2に正極活物質の作製条件、形態特性、及び二次電池の評価結果を纏めて示す。
なお、表中の「Li/Me」(物質量比)はLiの物質量とLi以外の金属元素の物質量の総和Meとの比(Li/Me)を示す。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例8のtをt=0.100になるように秤量した硫酸チタン溶液を滴下した以外は実施例6と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。結果を表1〜2に示す。
実施例1のリチウムニッケル複合酸化物合成工程における焼成温度を820℃にした以外は実施例1と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
比較例1のリチウムニッケル複合酸化物合成工程における焼成時間を11.7時間にし、焼成温度を760℃にした以外は比較例1と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
実施例2で得たリチウムニッケル複合酸化物を300gを25℃の200mlの純水に分散させ、15分間撹拌後、真空ろ過機で固液分離し、真空乾燥器を用いて240℃で20時間、乾燥した。その後、被覆工程におけるチタンテトラブトキシドの量を77.5g、リチウムの量を1.26gとした以外は実施例2と同じ条件で被覆リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
実施例1と同様に結果を表1〜2に示す。
2 圧粉体セル
3 負極缶
4 正極缶
5 蝶ネジ
6 ナット
7 絶縁スリーブ
8 加圧ネジ
9 半球座金
10 プラグ
11 オーリング
12 下部集電体
13 上部集電体
14 スリーブ
Claims (6)
- 空間群R−3mに属する結晶相を持ち、少なくともLi、Niおよび遷移金属元素Mからなるリチウムニッケル複合酸化物であり、
各成分元素の物質量比Li:Ni:Mがa:x:1−x(0.98≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0、MはCo、Al、Mnより選択される一つ以上)で表され、
XRD(粉末X線回折)で測定される(003)面に帰属されるピークからシェラー法により算出される結晶子径が145nm以下であり、
中和滴定により求められる前記リチウムニッケル複合酸化物に含まれる余剰水酸化リチウム量が0.13質量%以上である、全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。 - 空間群R−3mに属する結晶相を持ち、少なくともLi、Ni、遷移金属元素MおよびTiを含むリチウムニッケル複合酸化物であり、
各成分元素の物質量比Li:Ni:M:Tiがa:x−t1:1−x−t2:t(0.98≦a≦1.05、0.6≦x<1.0、0<t≦0.05かつt=t1+t2、MはCo、Al、Mnより選択される一つ以上)で表され、
XRD(粉末X線回折)で測定される(003)面に帰属されるピークからシェラー法により算出される結晶子径が145nm以下であり、
中和滴定により求められる前記リチウムニッケル複合酸化物に含まれる余剰水酸化リチウム量が0.13質量%以上である、全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。 - 前記リチウムニッケル複合酸化物の体積基準の累積粒度分布において、頻度の累積が50%になる粒子径D50が7μm以下である、請求項1または2に記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に、Al、Si、Ti、V、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ta、Wから選ばれる1種以上の遷移金属元素とリチウムからなる複合酸化物で構成される被覆層が形成された、請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 正極活物質に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の全固体リチウムイオン二次電池用正極活物質を用いた、全固体リチウムイオン二次電池。
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