以下に、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの構成を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1がモータ200に取り付けられた状態を示す斜視図である。以下、XYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸方向は左方向あるいは右方向と、Y軸方向は前方向あるいは後方向と、Z軸方向は上方向あるいは下方向と表記することがある。図1では、Z軸方向で上から視た状態を平面視と、Y軸方向で前から視た状態を正面視と、X軸方向で左右から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ100−1の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ100−1は任意の姿勢で使用されうる。なお、図面において歯部形状は省略している。
図2は、図1に示されるケース115から蓋部116が取り外された状態を示す斜視図である。図3は、図2に示すアブソリュートエンコーダ100−1から基板120及び基板取付ねじ122が取り外された状態を示す斜視図である。図4は、基板120の底面図である。図5は、図3に示すアブソリュートエンコーダ100−1の平面図である。図6は、アブソリュートエンコーダ100−1を、モータ軸201の中心を通り、X−Z平面に平行な面で切断した状態の断面図である。ただし、第2副軸ギア138及び磁気センサ90は表示している。図7は、アブソリュートエンコーダ100−1を第1中間ギア102の中心線に垂直で、第1副軸ギア105の中心を通る平面で切断した断面図である。図7ではケース115及び蓋部116の記載が省略されている。図8は、アブソリュートエンコーダ100−1を第2副軸ギア138の中心及び第2中間ギア133の中心を通るZ軸方向に平行な平面で切断した状態を略右側方から視た断面図である。また図8では、ケース115及び蓋部116の記載が省略されている。
以下では、図1から図8を参照してアブソリュートエンコーダ100−1の構成について詳細に説明する。アブソリュートエンコーダ100−1は、モータ200の主軸の複数回転にわたる回転量を特定して出力するアブソリュート型のエンコーダである。モータ200は、一例として、ステッピングモータ、DCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ200は、波動歯車装置などの減速機構を介して産業用などのロボットを駆動する駆動源として適用されてもよい。モータ200のモータ軸201は、モータ200のZ軸方向の両側に突出している。アブソリュートエンコーダ100−1は、モータ軸201の回転量をデジタル信号として出力する。なお、モータ軸201は主軸の一例である。
アブソリュートエンコーダ100−1は、モータ200のZ軸方向の端部に設けられている。アブソリュートエンコーダ100−1の形状に特別な制限はないが、実施の形態では、アブソリュートエンコーダ100−1は、平面視で略矩形状を有し、正面視及び側面視で主軸の延伸方向(以下、軸方向という。実施の形態1で、軸方向はZ軸方向に平行な方向である。)に薄い横長の矩形状を有する。つまり、アブソリュートエンコーダ100−1はZ軸方向に偏平な直方体形状を有する。
アブソリュートエンコーダ100−1は、内部構造を収容する中空角筒状のケース115を備える。ケース115は、少なくとも主軸と中間回転体とを包囲する複数(例えば4つ)の外壁部115a、外壁部115b、外壁部115c及び外壁部115dを含む。ケース115の外壁部115a、外壁部115b、外壁部115c及び外壁部115dの端部に、蓋部116が固定されている。蓋部116は、平面視で略矩形状を有し、軸方向に薄い板状の部材である。
外壁部115a、外壁部115b、外壁部115c及び外壁部115dは、この順でそれぞれ連結されている。外壁部115a及び外壁部115cは、互いに平行に設けられる。外壁部115b及び外壁部115dは、外壁部115a及び外壁部115cの側端部に架け渡され、互いに平行に設けられる。この例では、外壁部115a及び外壁部115cは、平面視においてX軸方向に延伸し、外壁部115b及び外壁部115dは、平面視においてY軸方向に延伸している。
アブソリュートエンコーダ100−1は、メインベース110、ケース115、蓋部116、基板120、板バネ111、及び複数のねじ164を含む。メインベース110は、各回転体及び各歯車を軸支する基台である。メインベース110は、基部110aと、複数(例えば4個)の支柱141と、軸106、軸134、軸139を含む。
メインベース110の基部110aは、アブソリュートエンコーダ100−1のモータ200側に面する板状の部分であり、X軸方向及びY軸方向に延在する。メインベース110の基部110aには、中空角筒状のケース115が、複数(例えば3個)のねじ164によって固定される。
メインベース110に配設される支柱141は、基部110aから軸方向でモータ200から遠ざかる方向に突出する略円柱状の部分であり、基板120を支持する。支柱141の突出端には、基板120が、基板取付ねじ122を用いて固定される。図2では、基板120がエンコーダ内部を覆うように設けられている様子が示されている。基板120は、平面視で略矩形状を有し、軸方向に薄い板状のプリント配線基板である。基板120には、主に磁気センサ50、磁気センサ40、磁気センサ90及びマイコン121が実装されている。
またアブソリュートエンコーダ100−1は、主軸ギア101、ウォームギア部101c、ウォームホイール部102a、第1中間ギア102、第1ウォームギア部102b、ウォームホイール部105a、第1副軸ギア105、第2ウォームギア部102h、及びウォームホイール部133aを含む。またアブソリュートエンコーダ100−1は、第2中間ギア133、第4駆動歯車部133d、第4従動歯車部138a、第2副軸ギア138、永久磁石8、永久磁石9、永久磁石17、磁気センサ50、磁気センサ40、磁気センサ90、及びマイコン121を含む。
主軸ギア101は、モータ軸201の回転に従って回転し、モータ軸201の回転をウォームギア部101cに伝える。図6に示すように、主軸ギア101は、モータ軸201の外周に嵌合する第1筒状部101aと、ウォームギア部101cが形成される円盤部101bと、永久磁石9を保持する磁石保持部101dとを含む。磁石保持部101dは、円盤部101bの中央部、第1筒状部101aの上端面に設けられる円筒状の凹部形状を有する。第1筒状部101aと、円盤部101bと、磁石保持部101dとは、各中心軸が略一致するように一体に形成される。主軸ギア101は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。主軸ギア101は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。
ウォームギア部101cは、ウォームホイール部102aを駆動する第1駆動歯車の一例である。特に、ウォームギア部101cは、円盤部101bの外周に形成される条数=1のウォームギアである。ウォームギア部101cの回転軸線はモータ軸201の軸方向に延伸している。
図5に示すように、第1中間ギア102は、主軸ギア101の回転を、ウォームホイール部105a及び第2中間ギア133に伝えるギア部である。第1中間ギア102は、軸104によって基部110aに略平行に伸びる回転軸線Laの周りに軸支されている。第1中間ギア102は、その回転軸線Laの方向に延伸する略円筒形状の部材である。第1中間ギア102は、基部102cと、ウォームホイール部102aが形成される第1筒部102dと、第1ウォームギア部102bが形成される第2筒部102eと、第2ウォームギア部102hが形成される第3筒部102fとを含み、内部に貫通孔が形成され、この貫通孔に軸104が挿通されている。この軸104をメインベース110の基部110aに設けられた支持部110b及び支持部110cに形成された孔に挿通することで、第1中間ギア102を軸支している。また、軸104の支持部110b及び支持部110cより外側に突出した両端付近にはそれぞれ溝が設けられ、この溝に軸104の抜け止めのための止め輪107、及び止め輪108とが嵌め合わされ、軸104が抜ける事を防いでいる。
外壁部115aは、第1中間ギア102のモータ軸201とは反対側に設けられる。外壁部115cは、外壁部115aと平行に、第1中間ギア102のモータ軸201が配置される側に設けられる。第1中間ギア102は、その回転軸線Laが任意の方向に向くように配置されてもよい。第1中間ギア102の回転軸線Laは、平面視において、第1中間ギア102のモータ軸201とは反対側に設けられる外壁部115aの延伸方向に対して、5°から30°の範囲で傾斜して設けられてもよい。図5の例では第1中間ギア102の回転軸線Laは外壁部115aの延伸方向に対して20°傾斜している。換言すると、ケース115は、平面視において、第1中間ギア102の回転軸線Laに対して5°から30°の範囲で傾斜した方向に延在する外壁部115aを含んでいる。図5の例では、外壁部115aの延在方向と第1中間ギア102の回転軸線Laとの傾斜Dsは20°に設定されている。
実施の形態1では、第1中間ギア102の基部102cは円筒形状を有し、第1筒部102d、第2筒部102e、及び第3筒部102fは基部102cより大径の円筒形状を有する。また、第1中間ギア102の中央には貫通孔が形成されている。基部102cと、第1筒部102dと、第2筒部102eと、第3筒部102fと、貫通孔とは、各中心軸が略一致するように一体に形成される。第2筒部102e、第1筒部102d、及び第3筒部102fは、この順で互いに離れた位置に配置される。第1中間ギア102は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。実施の形態1では、第1中間ギア102は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
支持部110b及び支持部110cのそれぞれは、メインベース110の基部110aの一部を切り起こすことにより、基部110aからZ軸正方向に突き出る突形状の部材であり、第1中間ギア102の軸104が挿通する孔が形成されている。また、軸104の支持部110b及び支持部110cより飛び出た両端付近には溝が設けられ、この溝に軸104の抜け止めの為の止め輪107、及び止め輪108とが嵌め合わされ、軸104が抜ける事を防いでいる。このように構成されることによって、第1中間ギア102は回転軸線Laにおいて回転可能に支持される。
板バネ111について説明する。第1中間ギア102は、第1ウォームギア部102b及び第2ウォームギア部102hが各ウォームホイールを駆動することにより、第1中間ギア102の軸方向Tdに反力が作用し、軸方向Tdの位置が変動することがある。そこで、実施の形態1では、第1中間ギア102に付勢力を付与する板バネ111が設けられている。板バネ111は、第1中間ギア102の回転軸線La方向の付勢力を第1中間ギア102に付与することにより、軸方向Tdの位置変動を抑制する。板バネ111は、メインベース110の基部110aに取付けられる取付部111bと、取付部111bから延出して半球型突起102gに接触する摺動部111aと、を含む。取付部111bと、摺動部111aとは薄板状のスプリング材から形成され、摺動部111aの根元が途中で取付部111bに対して略直角に折曲げられている。このように板バネ111が第1中間ギア102の半球型突起102gに直接当接し押圧することで、第1中間ギア102を軸方向Tdに付勢する。また、メインベース110の支持部110cには第1中間ギア102の摺動部102iが当接し摺動する。これにより、第1中間ギア102の軸方向Tdの位置の変動を抑えることが可能となる。
実施の形態1では、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aとかみ合った第1ウォームギア部102bが回転することによって第1副軸ギア105のウォームホイール部105aから第1中間ギア102が受ける反力の向きは、第2中間ギア133のウォームホイール部133aとかみ合った第2ウォームギア部102hが回転することによって第2中間ギア133のウォームホイール部133aから第1中間ギア102が受ける反力の向きとは逆に設定されている。つまり、各反力の第1中間ギア102の軸方向Tdの成分が互いに逆向きになるように、各ウォームギアの歯形状が設定されている。具体的には、各ウォームギアにおける歯の傾斜方向が、それぞれが第1中間ギア102に与える反力の軸方向Tdの成分の向きが互いに逆向きになるように設定されている。この場合、各ウォームギアから第1中間ギア102が受ける反力の軸方向Td成分の方向が同じ場合に比べて軸方向Tdの合成反力が小さくなるので、それに応じて板バネ111の付勢力を小さくすることが可能になる。これにより、第1中間ギア102の回転抵抗が減少して円滑に回転することができる。
上記の方法は主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗が比較的小さく、主軸ギア101の回転により第1中間ギア102に与える軸方向Tdの力が、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aと、第2中間ギア133のウォームホイール部133aとから、第1中間ギア102が受ける反力に比べて比較的小さい場合に有効であるが、主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いの摺動抵抗が比較的大きい場合には、下記の方法が有効となる。
図5において、主軸ギア101が右回転する場合、主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗によって、第1中間ギア102には軸方向Tdに対して右の力が働き、第1中間ギア102は右方向に移動しようとする。この時、上記に述べたような手法によって、第1中間ギア102の両端のウォームギアにより発生する軸方向Tdの力を相殺するように設定されていた場合、前述のような主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗によって、第1中間ギア102に働く右方向の力が相対的に大きくなる。この第1中間ギア102に働く右方向の力に抗して、第1中間ギア102が右方向に動く事を阻止する為には板バネ111の押圧力を大きくしなければならない。それにより、板バネ111の摺動部111aと、摺動部111aに当接し押圧されている第1中間ギア102の半球型突起102gとの摺動抵抗と、半球型突起102gの第1中間ギア102の逆方向端部に位置する摺動部102iと支持部110cとの摺動抵抗とが増え、第1中間ギア102の回転抵抗が大きくなる。
主軸ギア101が右回転した時に、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aとかみ合った第1ウォームギア部102bが回転することによって、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aから第1中間ギア102が受ける反力の向きと、第2中間ギア133のウォームホイール部133aとかみ合った第2ウォームギア部102hが回転することによって、第2中間ギア133のウォームホイール部133aから第1中間ギア102が受ける反力の向きを、双方ともに、第1中間ギア102を軸方向Tdに対して左に動かそうとする方向の力に設定することによって、前述の主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗によって、第1中間ギア102に働く右方向の力を小さくすることが可能となる。この事により板バネ111によって第1中間ギア102に与える付勢力を小さくすることが出来る。これにより第1中間ギア102の回転抵抗が減少して円滑に回転することができる。
一方、主軸ギア101が左回転した場合には、主軸ギア101のウォームギア部101cと第1中間ギア102のウォームホイール部102aとのかみ合いによる摺動抵抗によって、第1中間ギア102には軸方向Tdに対して左の力が働き、第1中間ギア102は左に動こうとする。この時、第1中間ギア102の両端にある第1ウォームギア部102b及び第2ウォームギア部102hが受ける反力は、ともに第1中間ギア102を右に動かそうとする力になる。よって、この場合にも、第1中間ギア102に働く左方向の力を小さくすることが可能となる。板バネ111によって第1中間ギア102に与える付勢力は、常に軸方向Tdに対して左向きの力なので、上記3箇所のギアのかみ合いによる第1中間ギア102に働く左方向の力が小さくなることによって、第1中間ギア102に加わる総合的な左向きの力も小さくなる。これにより、第1中間ギア102の図中左端の摺動部102iと、メインベース110の基部110aに設けられた支持部110cとの摺動による回転抵抗を小さくすることが出来る。
図5において、ウォームホイール部102aは、主軸ギア101のウォームギア部101cとかみ合う第1従動歯車の一例である。ウォームホイール部102aは、第1筒部102dの外周に形成される歯数=20のウォームホイールである。ウォームギア部101c及びウォームホイール部102aは第1ウォーム変速機構を構成する。ウォームホイール部102aの回転軸線はモータ軸201の軸方向に垂直な方向に延伸している。
主軸ギア101のウォームギア部101cの条数が1であり、第1中間ギア102のウォームホイール部102aの歯数が20である場合には、減速比は20である。すなわち、主軸ギア101が20回転すると第1中間ギア102は20÷20=1回転する。
第1ウォームギア部102bは、ウォームホイール部105aを駆動する第2駆動歯車の一例であり、かつ、第1中間ギア102のギア部である。特に、第1ウォームギア部102bは、第2筒部102eの外周に形成される条数=5のウォームギアである。第1ウォームギア部102bの回転軸線はモータ軸201の軸方向に垂直な方向に延伸している。
図5及び図7において、第1副軸ギア105は、モータ軸201の回転に従い、減速されて永久磁石8と一体となって回転する。第1副軸ギア105は、メインベース110の基部110aから略垂直に突出する軸106により軸支される円筒形状の軸受部105bと、ウォームホイール部105aが形成される円盤部105cと、永久磁石8を保持する保持部105dと、を含む平面視で略円形状の部材である。
図7において、円盤部105cは、軸受部105bの外周から半径方向に張出す円板形状を有する。実施の形態1では、円盤部105cは、軸受部105bの基部110aから遠い方の端部に寄った位置に設けられている。保持部105dは、円盤部105cの軸方向で基部110aから遠い方の端面に設けられる円筒状の凹部形状を有する。軸受部105bと、円盤部105cと、保持部105dと、は各中心軸が略一致するように一体に形成される。第1副軸ギア105は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。実施の形態1では、第1副軸ギア105は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
ウォームホイール部105aは、第1ウォームギア部102bがかみ合う第2従動歯車の一例である。特に、ウォームホイール部105aは、円盤部105cの外周に形成される歯数=25の歯車である。第1ウォームギア部102b及びウォームホイール部105aは第2ウォーム変速機構を構成する。ウォームホイール部105aの回転軸線はモータ軸201の軸方向に平行な方向に延伸している。
第1中間ギア102の第1ウォームギア部102bの条数が5であり、第1副軸ギア105のウォームホイール部105aの歯数が25である場合には、減速比は5である。すなわち、第1中間ギア102が5回転すると、第1副軸ギア105は1回転する。従って、主軸ギア101が100回転すると第1中間ギア102は100÷20=5回転し、第1副軸ギア105は5÷5=1回転する。第1副軸ギア105は永久磁石8と一体となって回転するので、主軸ギア101が100回転すると永久磁石8は1回転する。つまり、磁気センサ50は、主軸ギア101の100回転分の回転量を特定することができる。
このように構成されたアブソリュートエンコーダ100−1は、主軸ギア101の回転量を特定することができる。一例として、主軸ギア101が1回転したとき、第1副軸ギア105及び永久磁石8は1/100回転、すなわち3.6°回転する。このため、第1副軸ギア105の回転角度が3.6°以下であれば、主軸ギア101は1回転以内の回転量であると特定することができる。
図5において、第2ウォームギア部102hは、ウォームホイール部133aを駆動する第3駆動歯車の一例であり、かつ、第1中間ギア102のギア部である。特に、第2ウォームギア部102hは、第3筒部102fの外周に形成される条数=1のウォームギアである。第2ウォームギア部102hの回転軸線はモータ軸201の軸方向に垂直な方向に延伸している。
図5において、第2中間ギア133は、モータ軸201の回転に従って回転し、モータ軸201の回転を減速して第2副軸ギア138に伝える円盤状のギア部である。第2中間ギア133は、第2ウォームギア部102hと、第2副軸ギア138に設けられる第4従動歯車部138aとの間に設けられる。第4従動歯車部138aは、第4駆動歯車部133dとかみ合う。第2中間ギア133は、第3駆動歯車の第2ウォームギア部102hとかみ合うウォームホイール部133aと、第4従動歯車部138aを駆動する第4駆動歯車部133dとを有する。第2中間ギア133は、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。第2中間ギア133は、平面視で略円形状の部材である。第2中間ギア133は、メインベース110の基部110aに軸支される軸受部133bと、ウォームホイール部133aが形成される張出部133cと、を含む。
図5において、第2中間ギア133を備えることにより、その分、後述する第2副軸ギア138を第2ウォームギア部102hから遠ざけた位置に配置することができる。このため、永久磁石9、永久磁石17の間の距離を長くして互いの漏れ磁束の影響を減らすことができる。また、第2中間ギア133を備えることにより、その分減速比を設定できる範囲が拡がり設計の自由度が向上する。
図8において、張出部133cは、軸受部133bの外周から半径方向に張出す円板形状を有する。実施の形態1では、張出部133cは、軸受部133bのメインベース110の基部110aから遠い方の端部に寄った位置に設けられている。第4駆動歯車部133dは、軸受部133bの張出部133cより基部110a側の領域の外周に形成される。軸受部133bと、張出部133cと、は各中心軸が略一致するように一体に形成される。
ウォームホイール部133aは、第2ウォームギア部102hにかみ合わされる第2中間ギア133のギア部である。特に、ウォームホイール部133aは、張出部133cの外周に形成される歯数=30のウォームホイールである。第2ウォームギア部102h及びウォームホイール部133aは第3ウォーム変速機構を構成する。ウォームホイール部133aの回転軸線はモータ軸201の軸方向に平行な方向に延伸している。
第1中間ギア102の第2ウォームギア部102hの条数が1であり、第2中間ギア133のウォームホイール部133aの歯数が30である場合には、減速比は30である。すなわち、第1中間ギア102が30回転すると、第2中間ギア133は1回転する。従って、主軸ギア101が600回転すると第1中間ギア102は600÷20=30回転し、第2中間ギア133は30÷30=1回転する。
第4駆動歯車部133dは、第4従動歯車部138aを駆動する伝達要素である。第4駆動歯車部133dは、主軸ギア101の第1副軸ギア105側とは反対側に設けられ、ウォームホイール部133aの回転に従って回転する。第4駆動歯車部133dは、軸受部133bの外周に形成される歯数=24の平歯車である。
図8において、第2副軸ギア138は、モータ軸201の回転に従って回転し、モータ軸201の回転を減速して永久磁石17に伝える、平面視で円形状のギア部である。第2副軸ギア138は、メインベース110の基部110aから略垂直に伸びる回転軸線周りに軸支されている。第2副軸ギア138は、メインベース110の基部110aに軸支される軸受部138bと、第4従動歯車部138aが形成される張出部138cと、永久磁石17を保持する磁石保持部138dと、を含む。軸受部138bは、メインベース110の基部110aから突出する軸139を、隙間を介して環囲する円筒形状を有する。
張出部138cは、軸受部138bの外周から半径方向に張出す円板形状を有する。実施の形態1では、張出部138cは、軸受部138bのメインベース110の基部110aに寄った位置に設けられている。磁石保持部138dは、軸受部138bの軸方向で基部110aから遠い方の端面に設けられる円筒状の凹部形状を有する。軸受部138bと、張出部138cと、磁石保持部138dと、は各中心軸が略一致するように一体に形成される。第2副軸ギア138は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。実施の形態1では、第2副軸ギア138は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
第4従動歯車部138aは、第4駆動歯車部133dに駆動される伝達要素である。第4従動歯車部138a及び第4駆動歯車部133dは、減速機構を構成する。特に、第4従動歯車部138aは、張出部138cの外周に形成される歯数=40の平歯車である。
第4駆動歯車部133dの歯数が24で、第4従動歯車部138aの歯数が40である場合は、減速比は40/24=5/3である。主軸ギア101が1000回転すると第1中間ギア102は1000÷20=50回転し、第2中間ギア133は50÷30=5/3回転する。従って、第2副軸ギア138は5/3÷5/3=1回転する。第2副軸ギア138は永久磁石17と一体となって回転するので、主軸ギア101が1000回転すると永久磁石17は1回転する。つまり、磁気センサ90は、主軸ギア101の1000回転分の回転量を特定することができる。
図5〜図8において、永久磁石9は第1永久磁石であり、永久磁石8は第2永久磁石であり、永久磁石17は第3永久磁石である。永久磁石8、永久磁石9及び永久磁石17のそれぞれ(以下、各永久磁石と表記する)は軸方向に偏平な略円柱形状を有する。各永久磁石は、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)−Fe(鉄)−B(ホウ素)系などの磁性材料から形成される。各永久磁石は、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、あるいは、ボンド磁石であってもよい。各永久磁石には磁極が設けられる。各永久磁石の磁化方向に制限はないが、実施の形態1では、図43、図44に示すように2極の磁極が各永久磁石の磁気センサに対向する端面に設けられている。各永久磁石の回転方向の磁束密度分布は台形波形状であってもよく、正弦波状や矩形波形状であってもよい。
各永久磁石は、各回転体の端部に形成された凹部に一部または全部が収容され、例えば接着やカシメ、圧入等により固定される。永久磁石8は第1副軸ギア105の保持部105dに接着固定されている。永久磁石9は、主軸ギア101の磁石保持部101dに接着固定されている。永久磁石17は、第2副軸ギア138の磁石保持部138dに接着固定されている。
各永久磁石の間の距離が短いと、互いに隣り合うマグネットの漏れ磁束の影響により磁気センサの検出誤差が大きくなる。そこで図5の例では、平面視において、永久磁石9と永久磁石8は、ケース115の外壁部115aに対して傾斜する見通し線Lm上に離隔して配置されている。見通し線Lmは、永久磁石8と永久磁石9とを結ぶ仮想線に等しい。永久磁石9と永久磁石17は、ケース115の外壁部115aに対して傾斜する見通し線Ln上に離して配置されている。見通し線Lnは、永久磁石17と永久磁石9とを結ぶ仮想線に等しい。実施例1においては、見通し線Lm、Lnを外壁部115aに対して傾斜させて設けているため、見通し線Lm、Lnが外壁部115aに平行な場合に比べて、各永久磁石の間の距離を長くすることができる。
磁気センサ50、磁気センサ40及び磁気センサ90のそれぞれ(以下、各磁気センサと表記する)は、各回転体の1回転に対応する0°〜360°の範囲の絶対的な回転角を検知するセンサである。各磁気センサは検知した回転角に応じた信号(例えばデジタル信号)をマイコン121に出力する。各磁気センサは、一旦通電を停止して再通電をした場合にも、通電停止前と同じ回転角を出力する。このためバックアップ電源を備えない構成が可能である。
各磁気センサは、図4に示すように、基板120のメインベース110の基部110a側の面にはんだ付けや接着などの方法により同一平面上に固定されている。磁気センサ40は、主軸ギア101に設けた永久磁石9の端面と、一定の隙間を介して対向する位置になるように、基板120に固定される。磁気センサ40は、永久磁石9から発生する磁束の変化に対応する主軸ギア101の回転角度を検出する第1角度センサである。磁気センサ50は、第1副軸ギア105に設けた永久磁石8の端面と、一定の隙間を介して対向する位置になるように、基板120に固定される。磁気センサ50は、永久磁石8から発生する磁束の変化に対応する第1副軸ギア105の回転角度を検出する第2角度センサである。磁気センサ90は、第2副軸ギア138に設けた永久磁石17の端面と、一定の隙間を介して対向する位置になるように、基板120に固定される。磁気センサ90は、永久磁石17から発生する磁束の変化に対応する第2副軸ギア138の回転角度を検出する第3角度センサである。
各磁気センサには比較的分解能が高い磁気式角度センサを使用してもよい。磁気式角度センサは、それぞれの回転体の軸方向において、各永久磁石の磁極を含む端面と、一定の隙間を介して対向配置され、これら磁極の回転に基づいて対向する回転体の回転角を特定してデジタル信号を出力する。磁気式角度センサは、一例として、磁極を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいてデジタル信号を出力する演算回路と、を含む。検知素子は、例えばホールエレメントやGMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数(例えば4つ)含んでもよい。
演算回路は、例えば複数の検知素子の出力の差や比をキーとしてルックアップテーブルを用いてテーブル処理によって回転角を特定するようにしてもよい。この検知素子と演算回路とは一つのICチップ上に集積されてもよい。このICチップは薄型の直方体形状の外形を有する樹脂中に埋め込まれてもよい。各磁気センサは、不図示の配線部材を介して検知した各回転体の回転角に対応するデジタル信号である角度信号をマイコン121に出力する。例えば、各磁気センサは各回転体の回転角を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。
図9は、本発明の実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1が備えるマイコン121の機能構成を示す図である。マイコン121は、基板120のメインベース110の基部110a側の面にはんだ付けや接着などの方法により固定されている。マイコン121は、CPUで構成され、磁気センサ40、磁気センサ50及び磁気センサ90のそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、主軸ギア101の回転量を演算する。図9に示すマイコン121の各ブロックは、マイコン121としてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。マイコン121の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。従って、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
マイコン121は、回転角取得部121p、回転角取得部121q、回転角取得部121r、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び出力部121eを備える。回転角取得部121qは、磁気センサ40から出力された信号をもとに主軸ギア101の回転角度を示す角度情報である回転角度Aqを取得する。回転角取得部121pは、磁気センサ50から出力された信号をもとに第1副軸ギア105の回転角度を示す角度情報である回転角度Apを取得する。回転角取得部121rは、磁気センサ90で検知された第2副軸ギア138の回転角度を示す角度情報である回転角度Arを取得する。
テーブル処理部121bは、回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア101の回転数とを格納した第1対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Apに対応する主軸ギア101の回転数を特定する。また、テーブル処理部121bは、回転角度Arと、回転角度Arに対応する主軸ギア101の回転数とを格納した第2対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Arに対応する主軸ギア101の回転数を特定する。
回転量特定部121cは、テーブル処理部121bによって特定された主軸ギア101の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて、主軸ギア101の複数回転にわたる第1回転量を特定する。出力部121eは、回転量特定部121cによって特定された主軸ギア101の複数回転にわたる回転量を、当該回転量を示す情報に変換して出力する。
このように構成された実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1の作用・効果を説明する。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1は、モータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、モータ軸201の回転に従って回転するウォームギア部101cと、ウォームギア部101cとかみ合うウォームホイール部102aと、ウォームホイール部102aの回転に従って回転する第1ウォームギア部102bと、第1ウォームギア部102bとかみ合うウォームホイール部105aと、ウォームホイール部105aの回転に従って回転する第1副軸ギア105と、第1副軸ギア105と一体に回転する永久磁石8と、永久磁石8の回転角を検知する磁気センサ50と、を備えている。この構成によれば、磁気センサ50の検知結果に応じてモータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。ウォームギア部101cと、ウォームギア部101cとかみ合うウォームホイール部102aとを含む第1ウォーム変速機構と、第1ウォームギア部102bと、第1ウォームギア部102bとかみ合うウォームホイール部105aとを含む第2ウォーム変速機構と、を備えるため、アブソリュートエンコーダ100−1は屈曲した伝達経路を構成して薄型化することができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1は、モータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、モータ軸201の回転に伴い第1減速比で回転する第1中間ギア102と、第1中間ギア102の回転に伴い第2減速比で回転する第1副軸ギア105と、第1副軸ギア105と一体に回転する永久磁石8と、永久磁石8の回転角を検知する磁気センサ50と、を備え、モータ軸201の回転軸線は、第1中間ギア102の回転軸線に対してねじれの位置にあり、第1副軸ギア105の回転軸線と平行に設定されている。この構成によれば、磁気センサ50の検知結果に応じてモータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。第1中間ギア102の回転軸線が、モータ軸201及び第1副軸ギア105の回転軸線に対してねじれの位置にあり正面視で直交するため、アブソリュートエンコーダ100−1は屈曲した伝達経路を構成して薄型化することができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1は、モータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、第1ウォーム変速機構を含み、モータ軸201の回転に伴い永久磁石8を回転させる減速機構と、永久磁石8の磁極に応じて永久磁石8の回転角を検知する磁気センサ50と、を備え、モータ軸201の回転軸線は、永久磁石8の回転軸線と平行に設定されている。この構成によれば、磁気センサ50の検知結果に応じてモータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。第1ウォーム変速機構を含み、モータ軸201の回転軸線と永久磁石8の回転軸線とが平行に設定されるため、アブソリュートエンコーダ100−1は屈曲した伝達経路を構成して薄型化することができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1は、モータ軸201の回転角を検知する磁気センサ40を備えている。この構成によれば、磁気センサ40の検知結果に応じてモータ軸201の回転角を特定することができる。磁気センサ40を備えない場合に比べて、アブソリュートエンコーダ100−1は特定可能なモータ軸201の回転角の分解能を向上することができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1では、ウォームホイール部102aの回転に従って回転する第2ウォームギア部102hと、第2ウォームギア部102hとかみ合うウォームホイール部133aと、ウォームホイール部133aの回転に従って回転する第2副軸ギア138と、第2副軸ギア138と一体に回転する永久磁石17と、永久磁石17の回転角を検知する磁気センサ90と、を備えている。この構成によれば、磁気センサ90の検知結果に応じてモータ軸201の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。磁気センサ90を備えない場合に比べて、アブソリュートエンコーダ100−1は特定可能なモータ軸201の回転量の範囲を大きくすることができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1では、第1ウォームギア部102b及び第2ウォームギア部102hが設けられる第1中間ギア102を備え、第1ウォームギア部102bが回転することによって第1中間ギア102が受ける反力の向きは、第2ウォームギア部102hが回転することによって第1中間ギア102が受ける反力の向きとは逆に設定されている。この構成によれば、反力の方向が同じ場合に比べて両反力の合成反力を小さくすることができる。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1では、ウォームホイール部102aの外径はウォームギア部101cの外径より小さく設定されている。この構成によれば、ウォームホイール部102aの外径が大きい場合に比べて、薄型化が容易である。
ここで、例えば、主軸ギア101と第1副軸ギア105が互いに隣接して配置される場合、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれで発生した磁束の一部が、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える、いわゆる磁気干渉について述べる。
図28は、主軸ギア101(主軸ギア1)に設けられた永久磁石9の磁束を磁気センサ40で検出した波形(A)と、第1副軸ギア105(副軸ギア5)に設けられた永久磁石8の磁束を磁気センサ50で検出した波形(B)と、永久磁石8の一部の磁束が漏れ磁束として永久磁石9の磁束に重畳した状態を磁気センサ40で検出した磁気干渉波形(C)との概念を表した図である。縦軸は磁束を表し、横軸は主軸ギア101の回転角度を表す。このように、磁気センサ40においては、(A)の波形を検出することが望ましいところ、磁気干渉が発生した場合は、(C)に示すような波形となり、正確な波形を検出する事ができなくなる。
同様に、図29は、第1副軸ギア105(副軸ギア5)に設けられた永久磁石8の磁束を磁気センサ50で検出した波形(A)と、主軸ギア101(主軸ギア1)に設けられた永久磁石9の磁束を磁気センサ40で検出した波形(B)と、永久磁石9の一部の磁束が漏れ磁束として永久磁石8の磁束に重畳した状態を磁気センサ50で検出した磁気干渉波形(C)との概念を表した図である。縦軸は磁束を表し、横軸は第1副軸ギア105の回転角度を表す。このように、磁気センサ50においては、(A)の波形を検出することが望ましいところ、磁気干渉が発生した場合は、(C)に示すような波形となり、正確な波形を検出する事ができなくなる。また、主軸ギア101と第2副軸ギア138においても、図29(C)と同様に磁気干渉が発生するおそれがある。
実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1は、第1中間ギア102のモータ軸201とは反対側に配置される外壁部115aを含むケース115を備え、平面視において、第1中間ギア102の回転軸線Laは外壁部115aの延在方向に対して20°で傾斜している。この構成によれば、第1中間ギア102の回転軸線Laが傾斜していない場合に比べて、各永久磁石の配置直線の外壁部115aに対する傾斜を大きくすることができる。そのため、各永久磁石の間の距離を大きくすることができる。このように、それぞれの永久磁石間の距離を大きくすることによって、永久磁石8、永久磁石9及び永久磁石17のそれぞれで発生した磁束の一部が、永久磁石8、永久磁石9及び永久磁石17のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える磁気干渉の発生を低減できる。例えば、第1副軸ギア105に設けられた永久磁石8で発生した磁束の変化を検出する事を本来の目的として設けられた磁気センサ50に、主軸ギア101に設けられた永久磁石9で発生した磁束の一部が、漏れ磁束として干渉することを低減できる。また、永久磁石9で発生した磁束の変化を検出する事を本来の目的として設けられた磁気センサ40に、第1副軸ギア105に設けられた永久磁石8で発生した磁束の一部が漏れ磁束として干渉することを低減できる。そのため、隣り合うマグネットの漏れ磁束の影響を低減することができる。
また実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1では、第2角度センサとモータ200との間、又は第3角度センサとモータ200との間に、鉄などの磁性体で構成される板状の部材であるメインベース110の基部110aが設けられている。すなわちモータ200から漏れ出た磁束に対して、基部110aが磁気シールドとして機能する。従って、モータ200から漏れ出た磁束が磁気センサ40などに到達し難くなる。その結果、基部110aが例えば透磁率が低い、アルミニウムなどの非磁性体で構成されている場合に比べて、磁気センサによるギアの回転角度又は回転量の検出精度の低下を低減できる。
<実施の形態2>
図10は、本発明の実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2がモータ200に取り付けられた状態を示す斜視図である。以下、実施の形態1と同様に、XYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向はそれぞれX軸方向に直交する。X軸方向は左方向あるいは右方向と、Y軸方向は前方向あるいは後方向と、Z軸方向は上方向あるいは下方向と表記することがある。図10では、Z軸方向で上から視た状態を平面視と、Y軸方向で前から視た状態を正面視と、X軸方向で左右から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ100−2の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ100−2は任意の姿勢で使用されうる。図10では、アブソリュートエンコーダ100−2のケース15の内側に設けられる部品が透過的に示される。なお、図面において歯部形状は省略している。
図11は、図10に示されるアブソリュートエンコーダ100−2からケース15及び取付ねじ16が取り外された状態を示す斜視図である。図11では、基板20の下面20−1に設けられる複数の部品が透過的に示される。図12は、図11に示されるアブソリュートエンコーダ100−2から基板20及び基板取付ねじ13が取り外された状態を示す斜視図である。図13は、図12に示されるアブソリュートエンコーダ100−2がモータ200に取り付けられた状態の斜視図から、モータ200及びねじ14が取り外された状態を示す斜視図である。図14は、図13に示されるメインベース10、中間ギア2などを平面視した状態を示す図である。図14には、アブソリュートエンコーダ100−2が備える複数の部品の内、主要な部品の配置が示される。図15は、図14に示されるアブソリュートエンコーダ100−2を、中間ギア2の中心を通り、かつ、X−Y平面に平行な面で切断した断面図である。
図16は、図15に示されるベアリング3が中間ギア2から外された状態を示す拡大部分断面図である。図16では、ベアリング3と中間ギア2に形成される圧入部2dとの配置関係を分かり易くするため、ベアリング3が、中間ギア2の圧入部2dから離れている。また図16では、ベアリング3とメインベース10の基部60に設けられる壁部80との配置関係を分かり易くするため、ベアリング3が、壁部80から離れている。
図17は、図14に示される主軸ギア1の中心を通り、中間ギア2の中心線に垂直な平面で図11に示されるアブソリュートエンコーダ100−2を切断した断面図である。ただし、基板20と磁気センサ40は断面にしていない。図17には、主軸ギア1への永久磁石9の取り付け状態と、モータ軸201への主軸ギア1の取り付け状態とが示される。また図17には、主軸ギア1のウォームギア部1dと中間ギア2のウォームホイール部2aとがかみ合っている状態が示される。図17によれば、主軸ギア1に設けられた永久磁石9の上面9aが、磁気センサ40からZ軸方向に一定距離離れた位置に存在していることが分かる。
図18は、図15に示される副軸ギア5の中心を通り、中間ギア2の中心線に垂直な平面で図11に示されるアブソリュートエンコーダ100−2を切断した断面図である。ただし、基板20と磁気センサ50は断面にしていない。図18には、ウォームホイール部5aとウォームギア部2bとがかみ合っている状態が示される。また図18には、マグネットホルダ6の軸部6bが2つのベアリング7で保持された状態と、マグネットホルダ6への永久磁石8の保持状態とが示される。また図18には、マグネットホルダ6に設けられるヘッド6cの径方向外側の表面が、ウォームギア部2bの歯先円から離れている状態が示される。また図18によれば、マグネットホルダ6に設けられた永久磁石8の表面8aが、磁気センサ50からZ軸方向に一定距離離れた位置に存在していることが分かる。また図18には、メインベース10のベアリングホルダー部10dの断面形状が示される。
図19は、図12に示される複数の部品の内、中間ギア2が除かれた状態を示す斜視図である。図20は、図19に示される壁部70からねじ12が取り外された状態と、ねじ12が取り外された後の板バネ11の状態と、板バネ11に向き合う板バネ取付面10eが設けられた壁部70とを示す斜視図である。ただし、モータ200と主軸ギア1は表示していない。
図21は、図14に示される基板位置決めピン10gの中心と、基板位置決めピン10jの中心とを通り、Z軸方向に平行な面で図11に示されるアブソリュートエンコーダ100−2を切断した断面図である。ただし、磁気センサ40は断面にしていない。
図22は、図11に示される基板20を下面20−1側から見た図である。図23は、図10の状態からモータ200を取り除き、メインベース10の下面10−2側から見た図である。メインベース10の下面10−2は、図20に示されるメインベース10の上面側とは反対側の面である。メインベース10の下面10−2は、モータ200と向き合う面でもある。図24は、図10に示されるケース15の斜視図である。
図25は、図12に示される基板位置決めピン10gの中心と、基板位置決めピン10jの中心とを通るZ軸方向に平行な面で図10に示されるアブソリュートエンコーダ100−2を切断した断面図である。ただし、モータ200と主軸ギア1及び、磁気センサ40は断面にしていない。図25では、ケース15に設けられたツメ15aが、メインベース10に設けられた凹部10aaに掛け合わされた状態と、ケース15に設けられたツメ15bが、メインベース10に設けられた凹部10abに掛け合わされた状態とが示される。図26は、図18に示される永久磁石8、マグネットホルダ6、副軸ギア5及びベアリング7の分解斜視図である。図27は、図17に示される永久磁石9、主軸ギア1及びモータ軸201の分解斜視図である。
以下では、図10から図27を参照してアブソリュートエンコーダ100−2の構成について詳細に説明する。アブソリュートエンコーダ100−2は、主軸ギア1、中間ギア2、ベアリング3、軸4、副軸ギア5、マグネットホルダ6、ベアリング7、永久磁石8、永久磁石9、メインベース10、板バネ11、ねじ12、基板取付ねじ13、及びねじ14、ケース15、取付ねじ16、基板20、マイコン21、双方向性ドライバ22、ラインドライバ23、コネクタ24、磁気センサ40、及び磁気センサ50を備える。
モータ200は、例えば、ステッピングモータ、DCブラシレスモータなどである。モータ200は、例えば、波動歯車装置などの減速機構を介して産業用などのロボットを駆動する駆動源として用いられるものである。モータ200はモータ軸201を備える。図17に示すように、モータ軸201の一端は、モータ200の筐体202からZ軸正方向に突き出ている。また、図10に示すように、モータ軸201の他端は、モータ200の筐体202からZ軸負方向に突き出ている。また、モータ軸201は主軸の一例である。
平面視したモータ200の外形形状は、例えば、正方形状である。モータ200の外形を構成する4つの辺のそれぞれの長さは、例えば、25mmである。モータ200の外形を構成する4つの辺の内、第1辺と、第1辺と平行な第2辺とは、互いにY軸と平行である。また、4つの辺の内、第1辺に隣接する第3辺と、第3辺と平行な第4辺とは、互いにX軸と平行である。また、モータ200に設けられるアブソリュートエンコーダ100−2は、平面視で25mm角のモータ200の外形形状に合わせて、25mm角である。
次に、アブソリュートエンコーダ100−2が備える複数の部品のそれぞれについて説明する。
図17に示すように、主軸ギア1は、モータ軸201と同軸に設けられる筒状部材である。主軸ギア1は、筒状の第1筒状部1aと、第1筒状部1aと同軸に第1筒状部1aのZ軸正方向側に設けられる筒状の第2筒状部1bとを備える。また主軸ギア1は、第2筒状部1bの径方向内側に設けられる第1筒状部1aと第2筒状部1bをつなぐ連通部1cと、第2筒状部1bの径方向外側に設けられるウォームギア部1dとを備える。このように連通部1cを形成することで、連通部1cが、モータ軸201へ主軸ギア1を圧入する際の空気の逃げ道として機能する。連通部1cの内径は、第1筒状部1aの内径及び第2筒状部1bの内径よりも小さい。連通部1cのZ軸負方向の端面である底面1eと、第1筒状部1aの内周面とに囲まれる空間は、主軸ギア1をモータ軸201の端部に固定するための圧入部1fである。圧入部1fは、第1筒状部1aのZ軸負方向側の端部からZ軸正方向側に向かって窪む窪みである。圧入部1fには、モータ軸201が圧入され、主軸ギア1はモータ軸201と一体となって回転する。ウォームギア部1dは、主軸ギア1のギア部である。
連通部1cのZ軸正方向の端面である底面1gと、第2筒状部1bの内周面とに囲まれる空間は、永久磁石9を固定するための磁石保持部1hである。磁石保持部1hは、第2筒状部1bのZ軸正方向側の端部からZ軸負方向側に向かって窪む窪みである。磁石保持部1hには、永久磁石9が圧入されている。磁石保持部1hに圧入された永久磁石9は、外周面が第2筒状部1bの内周面に接し、下面9bが底面1gに接する。これにより、永久磁石9の軸方向の位置決めがなされると共に、軸方向と直交する方向の位置決めがなされる。永久磁石9の軸方向は、モータ軸201の中心軸方向に等しい。
図13から図15、及び図17に示すように、ウォームギア部1dは、螺旋状に形成された歯部により構成され、中間ギア2のウォームホイール部2aとかみ合う。ウォームホイール部2aは中間ギア2のギア部である。図17では歯部の形状の図示が省略されている。ウォームギア部1dは、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。ウォームギア部1dは、第1駆動歯車の一例である。
図13から図16などに示すように、中間ギア2は、メインベース10の上面上で、軸4により軸支されている。中間ギア2の中心軸は、X−Y平面に平行である。また中間ギア2の中心軸は、平面視でX軸及びY軸のそれぞれとは平行ではない。すなわち、中間ギア2の中心軸方向は、X軸及びY軸のそれぞれが伸びる方向に対して斜めである。中間ギア2の中心軸方向が、X軸及びY軸のそれぞれが伸びる方向に対して斜めであることは、中間ギア2の中心軸がメインベース10の四辺に対して斜めに伸びていることを意味する。図13及び図14に示すように、メインベース10の四辺は、Y−Z平面に平行な第1辺301と、第1辺301と平行な第2辺302と、X−Z平面に平行で第1辺301に隣接する第3辺303と、第3辺303と平行な第4辺304とにより構成される。第1辺301は、メインベース10のX軸正方向側に設けられる辺である。第2辺302は、メインベース10のX軸負方向側に設けられる辺である。第3辺303は、メインベース10のY軸正方向側に設けられる辺である。第4辺304は、メインベース10のY軸負方向側に設けられる辺である。
アブソリュートエンコーダ100−2を平面視した寸法は、一例として25mm角のモータ200の寸法に合わせられている。そのため、X−Y平面に平行に配置される中間ギア2が、メインベース10の四辺に対して斜めに伸びるように設けられることによって、水平方向へのアブソリュートエンコーダ100−2の寸法を、小さくすることができる。水平方向は、モータ軸201の中心軸と直交する方向に等しく、またX−Y平面と平行な方向に等しい。
図12から図16などに示すように、中間ギア2は、ウォームホイール部2a、ウォームギア部2b、軸受部2c、圧入部2d、摺動部2e、底面2f、及び貫通孔2gを有する。中間ギア2は、中心軸に沿って貫通する貫通孔2gの内部に、軸4が挿通される円筒状の部材である。貫通孔2gは、中間ギア2の内周面によって囲まれる空間である。中間ギア2は、金属、樹脂などで一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
ウォームホイール部2aは、主軸ギア1のウォームギア部1dがかみ合う歯車である。ウォームホイール部2aは、第1従動歯車の一例であり、かつ、中間ギア2のギア部である。ウォームホイール部2aは、中間ギア2の軸方向において、中間ギア2の軸方向の中央寄りの箇所に設けられている。またウォームホイール部2aは、中間ギア2の円筒部の外周部に設けられる複数の歯によって構成される。
ウォームホイール部2aの外径は、ウォームギア部1dの外径よりも小さい。ウォームホイール部2aの中心軸は、メインベース10の上面と平行であるため、ウォームホイール部2aの外径が小さくなることにより、アブソリュートエンコーダ100−2のZ軸方向(高さ方向)における小型化が可能である。
ウォームギア部2bは、螺旋状に形成された歯部によって構成され、ウォームホイール部2aと同軸上に隣接して設けられる。またウォームギア部2bは、中間ギア2の円筒部の外周部に設けられている。ウォームギア部2bが、副軸ギア5に設けられたウォームホイール部5aとかみ合うことによって、中間ギア2の回転力が副軸ギア5に伝達される。ウォームギア部2bは、第2駆動歯車の一例であり、かつ、中間ギア2のギア部である。ウォームホイール部5aは、副軸ギア5のギア部である。ウォームホイール部5aの中心線とウォームギア部2bの中心線とは、ウォームホイール部5aの中心線に垂直、かつ、ウォームギア部2bの中心線に垂直な方向から見たとき、互いに直交している。
ウォームギア部2bの外径は、アブソリュートエンコーダ100−2のZ軸方向(高さ方向)における小型化を可能にするために、可能な範囲で小さい値に設定されている。
図15に示すように、軸受部2cは、中間ギア2の圧入部2d側とは反対側、すなわち中間ギア2の摺動部2e側において、中間ギア2の径方向内側の内周面に設けられている。軸受部2cには軸4が摺動可能に挿通され、中間ギア2は、軸4に回転可能に支持されている。
圧入部2dは、ウォームギア部2bの内側において、中間ギア2の端面から中間ギア2の軸方向Tdの中央に向かって窪む窪みであり、貫通孔2gに連通している。圧入部2dは、貫通孔2gの端部の開口径を大きくした部分と解釈することもできる。圧入部2dには、ベアリング3の外輪3aが圧入され、固定されている。
図13から図15、図19、図20などに示すように、中間ギア2の摺動部2eは、中間ギア2の一端側、すなわち中間ギア2の軸方向Tdにおけるウォームギア部2b側とは反対側に設けられる。中間ギア2の摺動部2eは、板バネ11の摺動部11aに当接する。板バネ11は、弾性部材の一例であり、例えば金属製である。板バネ11の摺動部11aは、板バネ11の基部11dから二股状に分かれた2つの分岐体で構成される。板バネ11の基部11dは、板バネ11の全体の内、取付部11bと摺動部11aとの間に設けられる板状の部材である。
板バネ11の摺動部11aを構成する2つの分岐体の間には、軸4の直径より大きな隙間が形成されている。そのため、2つの分岐体は軸4を跨ぎ、軸4と接触しないように板バネ11の取付部11bが、メインベース10の壁部72に配設された板バネ取付面10eへ、ねじ12によって固定される。
板バネ11の摺動部11aは、中間ギア2が組み付けられた後に中間ギア2の摺動部2eと向き合う位置に設けられる。中間ギア2の摺動部2eは、板バネ11の摺動部11aに当接し押圧されることによって、軸4の中心軸に沿って、軸4の一端4a側から軸4の他端4b側に向かう方向に付勢される。この状態で中間ギア2が回転したとき、中間ギア2の摺動部2eは、板バネ11の摺動部11aと当接しながら摺動する。
中間ギア2の底面2fは、圧入部2dの隣に位置しており、ベアリング3の外輪3aの側面3cと接する。外輪3aは、外輪3aの側面3cが底面2fに接するまで、圧入部2dに圧入される。
中間ギア2の貫通孔2gは、軸受部2cから圧入部2dに向かって、中間ギア2の中心軸に沿って貫通しており、軸4と同軸上に配置されている。貫通孔2gの内径は、軸4の外径よりも大きいため、貫通孔2gと軸4の外周面との間には空間が確保されている。
図15及び図16に示すように、ベアリング3は、外輪3a、内輪3b、側面3c、及び側面3dを有する。ベアリング3の側面3cは、図15に矢印で示す軸4の軸方向Tdにおける外輪3aの側面であり、ベアリング3の側面3dは、当該方向における内輪3bの側面である。なお、本発明の実施の形態においては、中間ギア2または軸4の(中心)軸方向についてTdと記す。
ベアリング3の外輪3aは、圧入部2dに圧入されて固定されており、側面3cは、底面2fに接して固定されている。内輪3bの内側には軸4が挿入されている。図15に示すように内輪3bの側面3dは、メインベース10の壁部80の当接面10cに当接している。当接面10cは、中間ギア2の軸方向Tdの位置を規定している。前述のように、中間ギア2は、板バネ11によって、軸4の一端4aから軸4の他端4b側に向かう軸方向Tdに付勢されているため、中間ギア2の底面2fに接しているベアリング3の外輪3aの側面3cも同方向に付勢されている。これにより、ベアリング3の内輪3bも同方向に付勢されて、ベアリング3の内輪3bの側面3dが壁部80の当接面10cに当接する。その結果、付勢力が壁部80の当接面10cに伝えられ、中間ギア2は、軸4の軸方向Tdに安定して支持される。付勢力の詳細については後述する。
ベアリング3の外輪3aは、内輪3bに対して回転自在に設けられている。このため、中間ギア2は、図15に示される中間ギア2の軸受部2cとベアリング3との2箇所で、軸4によって回転自在に支持されている。なお軸4は、例えば、ステンレス鋼で形成される。
図15に示すように、壁部70及び壁部80は、軸4を介して中間ギア2を回転自在に保持する保持部の一例である。壁部80は、壁部70と対をなすように、基部60の上面に一体的に設けられ、基部60の上面からZ軸正方向に伸びる。壁部80は、平面視で、基部60の上面全体の内、X軸方向の中央よりも第2辺302側、かつ、Y軸方向の中央よりも第3辺303側の領域に設けられる。また壁部80は、当該領域の内、第2辺302寄りの位置に設けられると共に、Y軸方向の中央寄りに設けられる。壁部70、壁部80及び軸4は、中間ギア2を回転自在に保持する保持部として機能する。軸4は、円柱状の部材であり、一端4aと他端4bを有する。軸4の他端4bは、メインベース10の壁部80に形成された孔10bに圧入された上で、固定されている。一方、軸4の一端4aは、壁部70に形成された孔10aに挿入された上で位置決めされていればよく、軸4の一端4aが孔10aへ圧入される必要はない。このように軸4の一端4aが孔10aに圧入ではなく挿入されることによって、軸4の一端4aが孔10aに圧入される場合に比べて、軸4の組み立てが容易になる。
図14などに示すように、アブソリュートエンコーダ100−2では、副軸ギア5は、中間ギア2の主軸ギア1側とは反対側に設けられている。例えば、副軸ギア5は、メインベース10の四辺に囲まれる領域の内、メインベース10の角部に近い領域に配置される。当該角部は、例えば、図14に示される第2辺302と第3辺303とが交わる部分である。このように、副軸ギア5と主軸ギア1とは、メインベース10上の限られた領域を利用して、中間ギア2を挟むように配置されている。これにより、副軸ギア5と主軸ギア1とが中間ギア2を挟むことなく互いに隣接して配置される場合に比べて、副軸ギア5から主軸ギア1までの距離を広げることが可能となる。
磁気センサ40は、主軸ギア1と共に回転する永久磁石9の回転による永久磁石9が発生する磁束の変化を検出することにより、対応する主軸ギア1の回転角度を検出する事が出来る。一方、磁気センサ50は、副軸ギア5と共に回転する永久磁石8の回転による永久磁石8が発生する磁束の変化を検出することにより、対応する副軸ギア5の回転角度を検出する事が出来る。
ここで、例えば、主軸ギア1と副軸ギア5が互いに隣接して配置される場合、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれで発生した磁束の一部が、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える、いわゆる磁気干渉について述べる。
図28は、主軸ギア1を回転した時に、主軸ギア1に設けられた永久磁石9の磁束を磁気センサ40で検出した波形(A)と、副軸ギア5に設けられた永久磁石8の磁束を磁気センサ50で検出した波形(B)と、永久磁石8の一部の磁束が漏れ磁束として永久磁石9の磁束に重畳した状態を磁気センサ40で検出した磁気干渉波形(C)との概念を表した図である。縦軸は磁束を表し、横軸は主軸ギア1の回転角度を表す。このように、磁気センサ40においては、(A)の波形を検出することが望ましいところ、磁気干渉が発生した場合は、(C)に示すような波形となり、正確な波形を検出する事ができなくなる。
同様に、図29は、主軸ギア1を回転した時に、副軸ギア5に設けられた永久磁石8の磁束を磁気センサ50で検出した波形(A)と、主軸ギア1に設けられた永久磁石9の磁束を磁気センサ40で検出した波形(B)と、永久磁石9の一部の磁束が漏れ磁束として永久磁石8の磁束に重畳した状態を磁気センサ50で検出した磁気干渉波形(C)との概念を表した図である。縦軸は磁束を表し、横軸は副軸ギア5の回転角度を表す。このように、磁気センサ50においては、(A)の波形を検出することが望ましいところ、磁気干渉が発生した場合は、(C)に示すような波形となり、正確な波形を検出する事ができなくなる。
従って、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2によれば、主軸ギア1及び永久磁石9と、副軸ギア5及び永久磁石8とが、中間ギア2を挟んで互いに距離をおいて配置されていることから、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれで発生した磁束の一部が、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える磁気干渉の発生を低減できる。例えば、副軸ギア5に設けられた永久磁石8で発生した磁束の変化を検出する事を本来の目的として設けられた磁気センサ50に、主軸ギア1に設けられた永久磁石9で発生した磁束の一部が、漏れ磁束として干渉することを低減できる。また、永久磁石9で発生した磁束の変化を検出する事を本来の目的として設けられた磁気センサ40に、副軸ギア5に設けられた永久磁石8で発生した磁束の一部が漏れ磁束として干渉することを低減できる。
このように、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2によれば、アブソリュートエンコーダ100−2を平面視したときの寸法を相対的に小さくしながら、磁気センサ50による副軸ギア5の回転角度又は回転量の検出精度の低下を防ぐことができる。またアブソリュートエンコーダ100−2によれば、アブソリュートエンコーダ100−2を平面視したときの寸法を相対的に小さくしながら、磁気センサ40による主軸ギア1の回転角度又は回転量の検出精度の低下を防ぐことができる。
図18に示すように、副軸ギア5は、マグネットホルダ6の軸部6bに圧入されて固定される円筒状の部材である。副軸ギア5は、ウォームホイール部5aと貫通孔5bとを有する。副軸ギア5は、金属又は樹脂で一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
ウォームホイール部5aは、ウォームギア部2bがかみ合う歯車である。ウォームホイール部5aは、第2従動歯車の一例である。ウォームホイール部5aは、副軸ギア5の円筒部の外周部に設けられる複数の歯によって構成される。図13において、中間ギア2が回転することによって、中間ギア2の回転力は、ウォームギア部2bとウォームホイール部5aを介して、副軸ギア5に伝達される。
貫通孔5bは、円筒状の副軸ギア5の中心軸に沿って貫通する孔である。貫通孔5bには、マグネットホルダ6の軸部6bが圧入され、副軸ギア5はマグネットホルダ6と一体となって回転する。
図18、及び図26に示すように、マグネットホルダ6は、マグネット保持部6a、軸部6b、及びヘッド6cを有する。マグネットホルダ6は、金属又は樹脂で一体的に成型された部材であり、ここでは一例として、非磁性のステンレス鋼で形成されている。
メインベース10に形成されたベアリングホルダー部10dの内周面10dcに、2つのベアリング7の外輪7aが圧入されている。なお、2つのベアリング7のそれぞれは、外輪7a及び内輪7bを有している。
マグネットホルダ6の軸部6bは円柱状の部材であり、副軸ギア5の貫通孔5bに圧入され、軸部6bの下部は、2つのベアリング7の内輪7bに挿入されている。よって、マグネットホルダ6は、2つのベアリング7によってメインベース10に対して軸支され、副軸ギア5と一体となって回転する。
また、マグネットホルダ6の上端にはヘッド6cが設けられる。ヘッド6cは、有底円筒状の部材である。ヘッド6cにはマグネット保持部6aが形成される。マグネット保持部6aは、ヘッド6cの上端面から下方向側に向かって窪む窪みである。マグネット保持部6aに配置された永久磁石8の外周面は、ヘッド6cの内周面に接する。これにより、ヘッド6cのマグネット保持部6aに永久磁石8が固定される。
メインベース10に形成されたベアリングホルダー部10dに配設された2つのベアリング7によってマグネットホルダ6の軸部6bが軸支されることで、マグネットホルダ6の傾きを防止することができる。よって、2つのベアリング7は、軸部6bの軸方向においてできるだけ距離を離して配置すると、よりマグネットホルダ6の傾きを防止する効果が望める。
図18に示すように、ベアリングホルダー部10dの上部10dbは、ベアリングホルダー部10d全体の内、Z軸方向におけるベアリングホルダー部10dの上側領域である。ベアリングホルダー部10dの上部10dbの内側には、1つのベアリング7が設けられている。また、ベアリングホルダー部10dの下部10daは、ベアリングホルダー部10d全体の内、Z軸方向におけるベアリングホルダー部10dの下側領域である。ベアリングホルダー部10dの下部10daの内側には、1つのベアリング7が設けられている。
図18に示すように、モータ200の筐体202の一部には、切り欠き部202aが設けられている。切り欠き部202aは、Z軸負方向側に向かって窪む窪みである。メインベース10には、ベアリングホルダー部10dの下部10daが突出して設けられているため、モータ200の筐体202に切り欠き部202aを設けることによって、互いの干渉を防いでいる。ベアリングホルダー部10dの下部10daは、ベアリングホルダー部10d全体の内、Z軸方向におけるベアリングホルダー部10dの下側領域である。ベアリングホルダー部10dの下部10daの内側には、1つのベアリング7が設けられている。このように、モータ200の筐体202に切り欠き部202aを設けることによって、切り欠き部202aが設けられていない場合に比べ、2つのベアリング7のZ軸方向の距離を離して設置することを可能としている。また、ベアリングホルダー部10dの上部10dbは、ベアリングホルダー部10d全体の内、Z軸方向におけるベアリングホルダー部10dの上側領域である。
マグネットホルダ6の軸部6bの軸方向において、よりマグネット保持部6a及び永久磁石8に近い位置にベアリング7を設置すると、マグネットホルダ6及び永久磁石8の回転時の軸ブレを低減することができる。一方、ベアリングホルダー部10dの上部10dbの外径は中間ギア2に近接していることから、ベアリングホルダー部10dの上部10dbに斜面を形成することで中間ギア2の歯先円との干渉を避けつつ、よりマグネット保持部6a及び永久磁石8に近い位置にベアリング7を設置することを可能としている。
磁気センサ40は、主軸ギア1と共に回転する永久磁石9の回転による永久磁石9が発生する磁束の変化を検出することにより、対応する主軸ギア1の回転角度を検出する事が出来る。一方、磁気センサ50は、副軸ギア5と共に回転する永久磁石8の回転による永久磁石8が発生する磁束の変化を検出することにより、対応する副軸ギア5の回転角度を検出する事が出来る。
図18、図26に示すように永久磁石8は、表面8aを有する。永久磁石8は略円柱状であり、永久磁石8の中心軸MC1(永久磁石8の中心を表す軸、又は、磁極の境界の中心を通る軸)は、マグネットホルダ6の中心軸HC1、副軸ギア5の中心軸GC1及びベアリング7の中心軸BCと一致している。永久磁石8の表面8aは、磁気センサ50の表面50aから一定距離を隔てて、向き合っている。このように各中心軸を一致させることで、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となる。
なお、本実施形態においては、図26に示すように、永久磁石8の2つの磁極(N/S)は、永久磁石8の中心軸MC1に対して垂直な平面(X−Y平面)内で隣り合うように形成される。すなわち、中心軸MC1において、永久磁石8の回転中心と磁極の境界の中心が一致することが望ましい。これにより、さらに回転角又は回転量の検出精度が向上する。
図17、図27に示すように、永久磁石9は、主軸ギア1の磁石保持部1hの内部に圧入される略円柱状の永久磁石であり、上面9a及び下面9bを有する。上面9aは、磁気センサ40の表面40aから一定距離を隔てて、向き合っている。下面9bは、主軸ギア1の磁石保持部1hの底面1gと接し、主軸ギア1の中心軸GC2方向における位置(Z軸方向における位置)を規定する。永久磁石9の中心軸MC2(永久磁石9の中心を表す軸、又は、磁極の境界の中心を通る軸)は、主軸ギア1の中心軸GC2及びモータ軸201の中心軸RCと一致している。このように各中心軸を一致させることで、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となる。
なお、本実施形態においては、図27に示すように、永久磁石9の2つの磁極(N/S)は、永久磁石9の中心軸MC2に対して垂直な平面(X−Y平面)内で隣り合うように形成されることが望ましい。これにより、さらに回転角又は回転量の検出精度が向上する。
なお、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれは、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)−Fe(鉄)−B(ホウ素)系などの磁性材料から形成される。永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれは、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、ボンド磁石などであってもよい。
図22には、基板20に形成される複数の貫通孔である位置決め孔20a、位置決め孔20b、孔20c、孔20d、及び孔20eが示される。位置決め孔20aを形作る壁面の形状は、例えば円である。位置決め孔20bを形作る壁面の形状は、例えば楕円である。孔20c、孔20d、及び孔20eのそれぞれは、図11に示す基板取付ねじ13によって、基板20を、メインベース10へ固定するための貫通孔である。孔20c、孔20d及び孔20eのそれぞれを形作る壁面の形状は、例えば円である。孔20c、孔20d及び孔20eのそれぞれを形作る壁面の直径は、基板取付ねじ13の雄ねじ部の直径よりも大きく、かつ、基板取付ねじ13の頭部の直径よりも小さい。
図12から図15、図19から図21などに示すように、メインベース10は、孔10a、孔10b、当接面10c、ベアリングホルダー部10d、板バネ取付面10e、基部60、壁部70、壁部80、開口部10−1、及びねじ孔10fを有する。メインベース10は、基板位置決めピン10g、基板位置決めピン10j、先端部10h、先端部10k、柱10m、柱10q、柱10s、ねじ孔10u、ねじ孔10v、及びねじ孔10wを有する。基板位置決めピン10g、基板位置決めピン10j、柱10m、柱10q、及び柱10sは、柱状部材の一例である。メインベース10からZ軸方向に伸びる基板位置決めピン10gの先端部10hと、基板位置決めピン10gの基部10g1との間には、段差部10iが形成されている。基板位置決めピン10gの先端部10hが、基板20に形成される位置決め孔20aに挿入されたとき、基板20の下面20−1と段差部10iとの間には、隙間が形成される。同様に、メインベース10からZ軸方向に伸びる基板位置決めピン10jの先端部10kと、基板位置決めピン10jの基部10j1との間には、段差部10lが形成されている。基板位置決めピン10jの先端部10kが、基板20に形成される位置決め孔20bに挿入されたとき、基板20の下面20−1と段差部10lとの間には、隙間が形成される。このように、2本の基板位置決めピン10g,10jを用いた場合、基板20のZ軸方向と直交する方向の位置は規定される。しかしながら、段差部10i及び段差部10lのそれぞれから基板20までの間に隙間が形成されるため、2本の基板位置決めピン10g,10jによっては、基板20のZ軸方向の位置が規定されることはない。
メインベース10の基部60は、例えば、一体的に成型されたアルミダイキャストの部材であり、平面視で略正方形の板状の部材である。基部60は、プレート部の一例である。基部60は、モータ200の上面に取り付けられる。
図12に示す開口部10−1は、基部60を厚さ方向(Z軸方向)に貫通している。開口部10−1には、主軸ギア1が挿通される。開口部10−1は、第1貫通孔の一例である。
図13、図14、図19、図20などに示すように、壁部70は、壁部71及び壁部72を有する。壁部70は、軸4を支持すると共に板バネ11を固定する機能を有する。壁部71は、基部60の上面に一体的に設けられ、基部60からZ軸正方向に伸びる。壁部70は、平面視で、基部60の上面全体の内、X軸方向の中央よりも第1辺301側、かつ、Y軸方向の中央よりも第4辺304側の領域に設けられる。壁部71は、X軸正方向側に位置する取付面10adと、X軸方向に貫通するねじ孔10aeとを有する。図10、図23、及び図24に示すように、取付ねじ16が、ケース15の孔15dに挿通され、ねじ孔10aeにねじ留めされることによって、壁部71の取付面10adにケース15の内面が当接し固定される。
図14に示すように、壁部72は、平面視で、基部60の上面全体の内、X軸方向の中央よりも第1辺301側、かつ、Y軸方向の中央よりも第3辺303側の領域に設けられる。壁部72は、壁部71に接続されると共に、壁部71から第3辺303の中央付近に向かって伸びる。壁部72の第3辺303側の端部は、柱10sに接続される。壁部72に接続される柱10sは、メインベース10のX軸方向の中央寄りの位置に設けられると共に、メインベース10の第3辺303寄りの位置に設けられる。このように、壁部72は、壁部71から柱10sに向かって伸びる。すなわち、壁部72は、平面視で、X軸及びY軸のそれぞれに対して、斜めの方向に伸びる。
図20に示すように、板バネ11の取付部11bに形成された孔11cにねじ12が挿通され、メインベース10の壁部72に形成されたねじ孔10fへ、ねじ留めされる。これにより、板バネ11の取付部11bが、壁部72に形成された板バネ取付面10eに当接して、板バネ11が壁部72に固定される。壁部72は、板バネ11が固定される固定部として機能する。この時、図14及び図15に示すように、軸4が挿入された中間ギア2の摺動部2eには、板バネ11の摺動部11aが当接する。
図15に示される取付角度θについて説明する。主軸ギア1のウォームギア部1dは、ウォームホイール部2aにかみ合わされているため、主軸ギア1のウォームギア部1dの回転に伴って、中間ギア2には、軸4の他端4bから軸4の一端4aに向かう方向、又は、軸4の一端4aから軸4の他端4bに向かう方向に、第1スラスト力が発生する。さらに、ウォームギア部2bの、副軸ギア5のウォームホイール部5aへのかみ合いによっても、中間ギア2には、軸4の他端4bから軸4の一端4aに向かう方向、又は、軸4の一端4aから軸4の他端4bに向かう方向に、第2スラスト力が発生する。このように、第1スラスト力及び第2スラスト力が発生した場合でも、主軸ギア1のウォームギア部1dの回転量を副軸ギア5のウォームホイール部5aへ正確に伝達するためには、軸4の軸方向Tdへの中間ギア2の移動を抑制する必要がある。板バネ11は、軸4の一端4aから軸4の他端4bに向かう方向に、中間ギア2に付勢力を与える。板バネ11により発生する付勢力は、軸4の他端4bから軸4の一端4aに向かう方向の第1スラスト力と第2スラスト力とを合計した力よりも、高い値に設定されている。
図15において、取付角度θは、軸4に中間ギア2が挿入されていない状態で、メインベース10の壁部72へ固定された板バネ11の基部11dと、軸4の一端4aが挿入される壁部72の孔10aが形成された面の中間ギア2側の側面73とが成す角度に等しい。なお、本実施の形態における側面73と軸4は直交する角度となっているが、この限りでなくとも良い。この取付角度θは、中間ギア2を軸4へ組み込んだ際、中間ギア2の摺動部2eに板バネ11の摺動部11aが当接して板バネ11が所定量たわむことで、中間ギア2に対して軸4の軸方向Tdへの付勢力を適切に与えるような角度に設定されている。よって、板バネ11が軸4の一端4a側から軸4の他端4b側に向かう方向へ中間ギア2を付勢することによって、軸4の他端4bから軸4の一端4aに向かう方向の第1スラスト力と第2スラスト力とを合計した力による中間ギア2の移動が抑制される。その結果、副軸ギア5の回転精度の低下を防ぐことができる。なお、付勢力が大きくなるほど、図15に示される中間ギア2が回転する際の摺動抵抗が増加してしまう。そのため、中間ギア2が回転する際の摺動抵抗を必要最小限にしながら、スラスト力による中間ギア2の移動を抑制できるような充分な付勢力が発生するように、取付角度θを適切な値に設定することが望ましい。このように取付角度θを適切な値に設定するためには、板バネ11が取り付けられる板バネ取付面10eの面精度を高めると共に、壁部70の基部60への取付角度の誤差を小さくする必要がある。
実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、メインベース10がアルミダイキャストで形成されているため、例えば板金によって、個別に製作された基部60と壁部70とが互いに組み合わされる場合に比べて、壁部70の基部60への取付角度の誤差を小さくでき、板バネ取付面10eの面精度が高くなる。その結果、板バネ11の壁部72への取付角度θの誤差が小さくなり、付勢力の管理が容易化される。
図19に示すように、メインベース10は、3本のねじ14が、メインベース10に形成された3箇所の孔に挿通され、モータ200に形成されたねじ孔にねじ留めされることによって固定される。メインベース10からZ軸正方向に伸びる柱10q、柱10m及び柱10sのZ軸正方向先端側には、それぞれ、ねじ孔10v、ねじ孔10u及びねじ孔10wが形成される。各々のねじ孔10v、ねじ孔10u及びねじ孔10wには、図11に示す基板20に形成される孔20c、孔20e及び孔20dへ挿通された基板取付ねじ13がそれぞれねじ留めされる。これにより、柱10q、柱10m及び柱10sのそれぞれの上端面10r、上端面10p及び上端面10tが、図21に示す基板20の下面20−1と接する。基板20の下面20−1は、基板20が有するZ軸方向の2つの基板面の内、メインベース10と向き合う面である。その結果、基板20のZ軸方向の位置が規定される。
図10、図23から図25などに示されるように、ケース15は、上面部15−1、第1側面部15A、第2側面部15B、第3側面部15C、及び第4側面部15Dを備え、一面が開口している箱形状の部材である。ケース15は、例えば樹脂製であり、一体成型された部材である。上面部15−1は、箱形状の部材の底部に相当する。上面部15−1は、図11に示される基板20の上面20−2と向き合う面である。基板20の上面20−2は、基板20の下面20−1側とは反対側の基板面である。第1側面部15Aは、上面部15−1のX軸正方向側の辺部から、Z軸負方向に伸びる板状部材である。第2側面部15Bは、上面部15−1のX軸負方向側の辺部から、Z軸負方向に伸びる板状部材である。第3側面部15Cは、上面部15−1のY軸負方向側の辺部から、Z軸負方向に伸びる板状部材である。第4側面部15Dは、上面部15−1のY軸正方向側の辺部から、Z軸負方向に伸びる板状部材である。ケース15を平面視した形状は、モータ200を平面視した形状に対応した矩形状である。ケース15の内側の空間には、アブソリュートエンコーダ100−2が備える複数の部品が収容される。
図24に示すように、ケース15は、ツメ15a、ツメ15b、ツメ15c、孔15d、凹部15e、凹部15f、凹部15g、コネクタケース部15h、及び開口部15iを有する。ツメ15aは、第4側面部15DのZ軸負方向の端部寄りに設けられる。ツメ15aは、第3側面部15Cと向き合うように、第4側面部15DからY軸負方向に伸びる。ツメ15aは、図23に示すメインベース10に設けられた凹部10aaに掛け合わされる。ツメ15bは、第3側面部15CのZ軸負方向の端部寄りに設けられる。ツメ15bは、第4側面部15Dと向き合うように、第3側面部15CからY軸正方向に伸びる。ツメ15bは、図23に示すメインベース10に設けられた凹部10abに掛け合わされる。ツメ15cは、第2側面部15BのZ軸負方向の端部寄りに設けられる。ツメ15cは、第1側面部15Aと向き合うように、第2側面部15BからX軸負方向に伸びる。ツメ15cは、図23に示すメインベース10に設けられた凹部10acに掛け合わされる。
図24に示される凹部15e、凹部15f及び凹部15gは、図11に示される3つの基板取付ねじ13のそれぞれの頭部との干渉を避けるために、ケース15の上面5−1の一部がZ軸正方向に向かって窪むように形成された窪みである。
コネクタケース部15hは、図11に示されるコネクタ24を覆うために、ケース15の上面5−1の一部がZ軸正方向に向かって窪むように形成された窪みである。平面視したときのコネクタケース部15hの底面の形状は、長方形である。コネクタケース部15hは、上面5−1の内、X軸方向の中央よりも第1側面部15A側、かつ、Y軸方向の中央付近の領域に設けられる。またコネクタケース部15hは、当該領域の内、第1側面部15A寄りの部分に設けられる。
開口部15iは、コネクタケース部15hの底面と第1側面部15Aとの間に形成される。コネクタケース部15hの底面と向き合うように、図11に示されるコネクタ24が配置される。コネクタ24は、例えば、雌型コネクタであり、コネクタ24には、外部配線の一端に設けられる雄型コネクタが挿入される。当該雄型コネクタは、図24に示す開口部15iを介して、コネクタケース部15hに配置されたコネクタ24に挿入される。これにより、コネクタ24に設けられる導電性端子に、外部配線の一端に設けられる雄型コネクタの導電性端子が電気的に接続される。その結果、外部配線の他端に接続される外部装置とコネクタ24とが電気的に接続され、アブソリュートエンコーダ100−2と外部装置との間で信号の伝送が可能となる。
また、コネクタケース部15hが第1側面部15A寄りの位置に設けられることによって、図11に示すように、コネクタ24を平面視したときの位置は、モータ200を平面視したときのコネクタ400の位置と等しくなる。このようにアブソリュートエンコーダ100−2を構成することによって、コネクタ24に設けられる導電性ピンに電気的に接続される外部配線が引き出される位置を、コネクタ400に設けられる導電性ピンに電気的に接続される外部配線が引き出される位置に近づけることができる。従って、これらの外部配線を、アブソリュートエンコーダ100−2とモータ200との近くで、1つに束ねることができ、このようにした束ねられた配線群を、外部機器まで引き回すことが容易になる。
図22に示すように、基板20の下面20−1には、磁気センサ40、磁気センサ50、マイコン21、双方向性ドライバ22、及びラインドライバ23が設けられる。基板20の下面20−1は、磁気センサ40及び磁気センサ50のマウント面である。前述したように、基板20の下面20−1には、柱10qの上端面10r、柱10mの上端面10p、及び柱10sの上端面10tが接する。そして、図13に示すように、柱10q、柱10m及び柱10sは、メインベース10を平面視したときの互いの離隔距離の差が小さくなるように、メインベース10に設けられている。例えば、柱10qは、メインベース10のY軸方向の中央付近において、第2辺302寄りに設けられる。柱10qは壁部80と一体化されている。柱10mは、第1辺301と第4辺304とが交わる角部の近くに設けられる。柱10sは、メインベース10のX軸方向の中央付近において、第3辺303寄りに設けられる。柱10sは壁部70及び基板位置決めピン10gと一体化されている。このように、柱10q、柱10m及び柱10sが設けられることによって、基板20に設けられた磁気センサ40及び磁気センサ50のそれぞれのZ軸方向の位置を正確に規定できる。なお、柱10q、柱10m及び柱10sは、メインベース10においてX−Y平面方向において、それぞれできるだけ離れた場所に形成すると、基板20の位置をより安定して保持することができる。
実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、メインベース10がダイキャストで形成されている。そのため、例えば板金によってメインベース10の基部60を製作し、柱10q、柱10m、柱10s、基板位置決めピン10g、基板位置決めピン10j、壁部70、壁部80などを個別に製作して組み立てた場合に比べて、各部品間の位置精度が向上する。また、製作時の部品点数が少なくなることによって、アブソリュートエンコーダ100−2の構造を簡素化でき、組立が容易となって製造時間を短縮することができ、アブソリュートエンコーダ100−2の信頼性を高めることができる。
磁気センサ40は、主軸角度センサの一例である。磁気センサ40は、永久磁石9の真上に所定の間隔を隔てて配置されている。磁気センサ40は、主軸ギア1と共に回転する永久磁石9の回転による永久磁石9から発生する磁束の変化を検出することにより、対応する主軸ギア1の回転角度を検出及び特定し、特定した回転角度を示す角度情報を、デジタル信号として出力する。
磁気センサ50は、角度センサの一例である。また、副軸ギア5は、第2従動歯車であるウォームホイール部5aの回転に従って回転する回転体である。磁気センサ50は、永久磁石8の真上に所定の間隔を隔てて配置されている。磁気センサ50は、副軸ギア5と共に回転する永久磁石8の回転による永久磁石8から発生する磁束の変化を検出することにより、対応する副軸ギア5の回転角度を検出及び特定し、特定した回転角度を示す角度情報を、デジタル信号として出力する。
磁気センサ40及び磁気センサ50のそれぞれは、例えば、磁束の変化を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいて回転角度を表すデジタル信号を出力する演算回路と、を備える。検知素子は、例えばホールエレメント、GMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数組み合わせたものでもよい。磁界検知要素の数量は例えば4つである。
主軸ギア1のウォームギア部1dの条数が4であり、中間ギア2のウォームホイール部2aの歯数が20である場合には、減速比は5である。すなわち、主軸ギア1が5回転すると中間ギア2は1回転する。また、中間ギア2のウォームギア部2bの条数が1であり、副軸ギア5のウォームホイール部5aの歯数が18である場合には、減速比は18である。すなわち、中間ギア2が18回転すると副軸ギア5は1回転する。従って、主軸ギア1が90回転すると、中間ギア2は90÷5=18回転し、副軸ギア5は18÷18=1回転する。
主軸ギア1と副軸ギア5には、それぞれ一体となって回転する永久磁石9及び8が設けられている。そのため、それぞれに対応した磁気センサ40及び磁気センサ50が、主軸ギア1と副軸ギア5の回転角度を検出することにより、モータ軸201の回転量を特定できる。主軸ギア1が1回転すると、副軸ギア5は、1/90回転、すなわち4°回転する。このため、副軸ギア5の回転角度が4度未満の場合、主軸ギア1の回転量は1回転未満であり、副軸ギア5の回転角度が4度以上8度未満のとき、主軸ギア1の回転量は1回転以上かつ2回転未満である。このようにアブソリュートエンコーダ100−2では、副軸ギア5の回転角度に応じて主軸ギア1の回転数を特定できる。特にアブソリュートエンコーダ100−2は、ウォームギア部1dとウォームホイール部2aとの減速比と、ウォームギア部2bとウォームホイール部5aとの減速比とを利用することにより、主軸ギア1の回転数が複数回転であっても、主軸ギア1の回転数を特定できる。
マイコン21、双方向性ドライバ22、ラインドライバ23、及びコネクタ24は、基板20に実装されている。マイコン21、双方向性ドライバ22、ラインドライバ23、及びコネクタ24は、基板20上のパターン配線によって電気的に接続されている。
マイコン21は、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)で構成され、磁気センサ40及び磁気センサ50のそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、主軸ギア1の回転量を演算する。
双方向性ドライバ22は、コネクタ24に接続される外部装置との間で双方向の通信を行う。双方向性ドライバ22は、操作信号などのデータを差動信号に変換して外部装置との間で通信を行う。ラインドライバ23は、回転量を表すデータを差動信号に変換し、差動信号をコネクタ24に接続される外部装置にリアルタイムで出力する。コネクタ24には、外部装置のコネクタが接続される。
図30は、本発明の実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2が備えるマイコン21の機能構成を示す図である。図30に示すマイコン21の各ブロックは、マイコン21としてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。
マイコン21は、回転角取得部21p、回転角取得部21q、テーブル処理部21b、回転量特定部21c、及び出力部21eを備える。回転角取得部21qは、磁気センサ40から出力された信号をもとに主軸ギア1の回転角度Aqを取得する。回転角度Aqは、主軸ギア1の回転角度を示す角度情報である。回転角取得部21pは、磁気センサ50から出力された信号をもとに副軸ギア5の回転角度Apを取得する。回転角度Apは、副軸ギア5の回転角度を示す角度情報である。テーブル処理部21bは、回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア1の回転数とを格納した対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Apに対応する主軸ギア1の回転数を特定する。回転量特定部21cは、テーブル処理部21bによって特定された主軸ギア1の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて主軸ギア1の複数回転にわたる回転量を特定する。出力部21eは、特定された主軸ギア1の複数回転にわたる回転量を、当該回転量を示す情報に変換して出力する。
以上に説明したように、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、図14などに示すように、副軸ギア5が中間ギア2の主軸ギア1側とは反対側に設けられているため、永久磁石8及び永久磁石9のそれぞれに対応していない磁気センサに影響を与える磁気干渉の発生を低減できる。このように、アブソリュートエンコーダ100−2は、磁気干渉の発生を低減できる構造を採用することによって、アブソリュートエンコーダ100−2を平面視したときの寸法を相対的に小さくできる。従って、アブソリュートエンコーダ100−2の小型化を図りながら、磁気センサ40及び磁気センサ50のそれぞれによる磁束の検出精度の低下を防ぐことができる。
また実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、メインベース10の上面と平行に配置される中間ギア2が、メインベース10の四辺に対して斜めに伸びており、さらに中間ギア2に対して主軸ギア1と副軸ギア5とが、互いに中間ギア2の反対側に設けられている。このため、メインベース10の上面の全体領域の内、一部の狭い領域に主軸ギア1、中間ギア2、及び副軸ギア5を配置でき、水平方向に対するアブソリュートエンコーダ100−2の寸法を小さくできる。
また、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、ウォームホイール部2aの外径と、ウォームギア部2bの外径とは、可能な範囲で小さな値に設定されている。これにより、アブソリュートエンコーダ100−2のZ軸方向(高さ方向)における寸法を小さくできる。
このように、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2によれば、主軸ギア1の回転量の検出精度の低下を防ぎながら、Z軸方向の寸法と、Z軸方向と直交する方向の寸法とを小さくできるという効果を奏する。
また、実施の形態2に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、壁部80及び壁部72のそれぞれに固定又は挿入された軸4に対して、中間ギア2が軸支、すなわち回転可能に支持されているが、中間ギア2を軸支できれば、中間ギア2の支持方法はこれに限定されない。
例えばアブソリュートエンコーダ100−2は、軸4の一端4aが壁部72に形成された孔10aに挿入され、軸4の他端4bが壁部80に形成された孔10bに圧入で固定されるように構成される。さらに、アブソリュートエンコーダ100−2は、ベアリング3の外輪3aが中間ギア2に形成される圧入部2dに圧入で固定され、ベアリング3の内輪3bに軸4が圧入で固定されるように構成してもよい。これにより、軸4に固定された中間ギア2の軸方向Tdへの移動が制限される。このようにアブソリュートエンコーダ100−2を構成した場合でも、中間ギア2が軸4に軸支される。さらに、壁部72及び壁部80によって軸4の軸方向Tdへの移動が制限されると共に、軸4に固定されるベアリング3の内輪3bによって中間ギア2の軸方向への移動も制限される。従って、板バネ11が不要になる。
他にも、例えばアブソリュートエンコーダ100−2は、図15に示すベアリング3を用いずに、軸4に中間ギア2が固定された状態で、壁部72及び壁部80の少なくとも一方に設けられた不図示のベアリングによって、軸4が軸支されるように構成してもよい。
不図示のベアリングの外輪が壁部72又は壁部80に固定され、内輪に軸4の一端4a又は他端4bが挿入される場合、軸4に中間ギア2が固定され、軸4は不図示のベアリングに軸支されていることから、軸4と中間ギア2は一体となって回転することが可能となる。この場合、軸4はベアリングの内輪に固定されてはおらず、内輪に挿入されているだけなので、軸4は中間ギア2と共に軸方向Tdへ移動可能になっている。その為、中間ギア2を軸方向Tdへ付勢し、位置を規定するための板バネ11が必要となる。
あるいは、不図示のベアリングの外輪が壁部72又は壁部80に固定され、不図示の内輪に軸4の一端4a又は他端4bが圧入されてもよい。この時、軸4に固定された中間ギア2の軸方向Tdへの移動が制限される。そのため、不図示のベアリングによって軸4に固定される中間ギア2が回転可能に支持されるだけでなく、軸4の軸方向Tdへの移動が制限されるため、中間ギア2の軸方向Tdへの移動も制限される。従って、板バネ11が不要になる。
図17に示すように、本来、磁気センサ40は主軸ギア1と共に回転する永久磁石9からの磁束の変化を検出して主軸ギア1の回転角度を検出及び特定する。また、図18に示すように、磁気センサ50は副軸ギア5と共に回転する永久磁石8の磁束の変化を検出し、副軸ギア5の回転角度を検出及び特定する。実施の形態2のアブソリュートエンコーダ100−2は、今まで述べたように、磁気干渉の発生を低減できる構造を採用することによって、磁気センサ40への永久磁石8からの磁束の影響を低減出来る。また、磁気センサ50への永久磁石9からの磁束の影響を低減出来る。つまり、主軸ギア1と副軸ギア5のお互いの磁気干渉による回転の検出精度の低下を防ぐことが出来る。
図10で示すのは、アブソリュートエンコーダ100−2がモータ200に取り付けられた状態であるが、モータ200には、内部に永久磁石及び駆動用のコイルが内蔵されている。従って、モータ200はモータ軸201が回転していない場合でも、磁束を発生している。またモータ200に外部から駆動信号を与えてモータ軸201を回転させた場合、さらに発生する磁束が増加する。このモータ200から発生する磁束によって、アブソリュートエンコーダ100−2の内部に設けられた磁気センサ40及び磁気センサ50に悪影響を与え、検出精度の低下が起きる場合がある。このようなモータ200からの不要な磁束の影響がある場合、メインベース10を鉄などの強磁性体で構成すると、上述のモータ200からの磁束の影響を低減する事が可能となる。
図31は、実施の形態2の第1変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2が備える副軸ギア5Aの斜視図である。図32は、図31に示す副軸ギア5Aの断面図である。副軸ギア5Aは、第2従動歯車であるウォームホイール部52eが形成される円筒状部材である。ウォームホイール部52eは、前述したウォームホイール部5aに相当し、第2従動歯車である。副軸ギア5Aは、樹脂シート5A1及び樹脂ギア部5A2を備える。樹脂シート5A1及び樹脂ギア部5A2は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。樹脂ギア部5A2は、永久磁石8の外周面を取り囲む環状部である。
樹脂シート5A1は、永久磁石8の軸方向の端面と向き合うように、樹脂ギア部5A2に形成される開口部を閉塞する板状部材である。樹脂シート5A1は、当該開口部を閉塞する円形板状の蓋部5A11と、蓋部5A11の外周部に設けられる一対の鍔部5A12とを備える。鍔部5A12は、蓋部5A11の外周部において、割線CL上に設けられる。割線CLは、副軸ギア5Aの中心軸AXと直交し、かつ、蓋部5A11の外周部の2点と交わる線である。以下では、中心軸AXを単に中心軸と称する場合がある。一対の鍔部5A12のそれぞれは、蓋部5A11の外周部から中心軸に向かって、径方向に伸びる突起である。径方向は、図32に矢印D1で示される方向である。
樹脂ギア部5A2は、径方向内側に空洞が形成された筒状部材である。径方向内側の空洞は、中心軸方向に段階的に変化する樹脂ギア部5A2の内周面に囲まれる空間である。中心軸方向は、図32に矢印D2で示される方向であり、軸方向と称する場合がある。
樹脂ギア部5A2は、互いに軸部6bと同軸に設けられる第1環状部51、第2環状部52、及び第3環状部53を備える。第1環状部51、第2環状部52、及び第3環状部53は、軸方向に、第1環状部51、第2環状部52、第3環状部53の順で並ぶ。
第1環状部51は、一対の鍔部5A12のそれぞれが嵌め込まれる溝部51aと、永久磁石8の外周面と向き合う第1内径の第1内周面51bとを備える。また第1環状部51は、樹脂シート5A1の外周面と向き合い第1内径より大きい第2内径の第2内周面51cと、第1内周面51bと第2内周面51cとの境界部分に設けられる第1段差部51dとを備える。溝部51aは、第1環状部51の軸方向の端面の一部が、第1環状部51から第2環状部52に向って、突状に窪むように形成された部分である。第1環状部51には、2つの溝部51aが設けられている。なお、溝部51a及び、鍔部5A12の数は2つに限定されず、3つ以上でもよい。第1内周面51bは、中心軸に対して傾斜する傾斜面であり、第1環状部51から第2環状部52に向かって第1内径が狭くなるように形成される。このように傾斜する第1内周面51bを設けることにより、第2環状部52の第3内周面52bで囲まれる空間への永久磁石8の取り付け時に、第1段差部51dに永久磁石8が引っかかり難くなり、永久磁石8を容易に取り付けることができる。第2内周面51cには、樹脂シート5A1の外周面が接する。第1段差部51dには、樹脂シート5A1の軸方向の端面が接する。
第2環状部52は、軸部6bと同軸に設けられる円筒部52aと、永久磁石8の外周面と向き合うよう第3内径の第3内周面52bとを備える。また第2環状部52は、軸部6bの外周面と向き合い第3内径より小さい第4内径の第4内周面52cと、第3内周面52bと第4内周面52cとの境界部分に設けられる第2段差部52dと、円筒部52aの径方向外側に設けられ、副軸ギア5Aのギア部であるウォームホイール部52eとを備える。
樹脂シート5A1から第2段差部52dまでの高さは、永久磁石8の軸方向の高さ以下とすることが望ましい。このように構成することで、永久磁石8を第2段差部52dと樹脂シート5A1とによって挟み込むことができる。永久磁石8を第2段差部52dと樹脂シート5A1とによって挟み込むとは、永久磁石8の軸方向の第1端面81が、第2段差部52dに接しており、かつ、永久磁石8の軸方向の第1端面81側とは反対側の第2端面82が、樹脂シート5A1の軸方向の端面に接している状態である。
第2環状部52の第3内周面52bと永久磁石8の外周面との間には、隙間が設けられている。この隙間は、樹脂ギア部5A2の第3内周面52bに囲まれる空間への永久磁石8の取り付け時に、センターオフセット値の変化に対する磁気センサ50による角度誤差が規定値以下となる程度が好ましい。センターオフセット値は、永久磁石8を軸方向から見て、磁気センサ50の磁束検出領域の中心から、永久磁石8の径方向中心までのずれ幅に等しい。角度誤差は、副軸ギア5Aの回転角度の実際の回転角度と、磁気センサ50で検出される回転角度との角度差に等しい。永久磁石8を圧入で押し込む必要がなくなることにより、副軸ギア5Aへの永久磁石8の取り付け作業が容易化されると共に、樹脂ギア部5A2への圧入による永久磁石8の割れを抑制できる。なお、このように構成した場合でも、樹脂シート5A1が永久磁石8の抜け止め部材として機能するため、アブソリュートエンコーダ100−2の動作中に永久磁石8が樹脂ギア部5A2から外れることがない。
第3環状部53は、軸部6bの外周面と向き合い、内径が第4内径と等しい第5内周面53aを備える。
なお、軸部6bは、メインベース10の基部60にカシメや圧入等を用いて固定されており、副軸ギア5Aは、軸部6bに対して回転可能に支持されている。
次に、樹脂ギア部5A2の第3内周面52bに囲まれる空間に、永久磁石8が取り付けられる。永久磁石8が取り付けられた後、樹脂シート5A1が永久磁石8を覆うように、樹脂ギア部5A2の第1段差部51dに設置される。このとき、溝部51aに、樹脂シート5A1の鍔部5A12が嵌め込まれる。その後、樹脂シート5A1及び第1環状部51の互いの対向面は、お互いに樹脂材料のため、接着剤による接着では、強度が不足する恐れがあり、例えばレーザ溶接、熱溶着などにより、溶着される。これにより、樹脂ギア部5A2に固定された樹脂シート5A1が、永久磁石8の抜け止め部材として機能する。永久磁石8の樹脂ギア部5A2への圧入による固定の場合、永久磁石8などの製造時の誤差によっては、永久磁石8の外周面と樹脂ギア部5A2との間の摩擦力が小さくなり、樹脂ギア部5A2による永久磁石8を保持する力が十分に得られない場合がある。これに対して、第1変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、樹脂シート5A1が永久磁石8の抜け止め部材として機能するため、樹脂ギア部5A2による永久磁石8を保持する力が十分に得られない場合でも、副軸ギア5Aに接着剤を塗布することなく、永久磁石8を副軸ギア5Aに固定できる。
また、樹脂シート5A1が永久磁石8の抜け止め部材として機能するため、永久磁石8を樹脂ギア部5A2に圧入する必要がない。そのため、樹脂ギア部5A2への圧入による永久磁石8の割れを抑制できる。
図33は、実施の形態2の第2変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2が備える副軸ギア5Bの斜視図である。図34は、図33に示す副軸ギア5Bの断面図である。副軸ギア5Bの樹脂ギア部5A2には、複数の突起部51eが設けられる。突起部51eは、永久磁石8の軸方向の端面と向き合うように、環状部である樹脂ギア部5A2から樹脂ギア部5A2の径方向中心に向かって伸びる突形状の部材である。第2変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2において、第1変形例と同一の構成を有する部位には、同一の符号を付してその説明を省略する。
複数の突起部51eのそれぞれは、第1環状部51と一体に設けられる。図33には、4つの突起部51eが示される。4つの突起部51eは、樹脂ギア部5A2の回転方向に隣接する突起部51e同士の離隔距離が等しくなるように、当該回転方向に沿って、互いに離れて配列される。回転方向は、図33に矢印D3で示される方向であり、副軸ギア5Bが回転する方向に等しい。突起部51eの数は、4つに限定されず、樹脂ギア部5A2に設けられた永久磁石8が、樹脂ギア部5A2から抜け出ることを抑制できれば良く、4つ未満でもよいし、4つを超えてもよい。
突起部51eの永久磁石8との対向面から第2段差部52dまでの高さは、永久磁石8の軸方向の高さ以下とすることが望ましい。このように構成することで、永久磁石8を第2段差部52dと突起部51eとによって挟み込むことができる。永久磁石8を第2段差部52dと突起部51eとによって挟み込むとは、永久磁石8の第1端面81が、第2段差部52dに接しており、かつ、永久磁石8の第2端面82が、突起部51eの永久磁石8との対向面に接している状態である。
副軸ギア5Bでは、例えば、第1環状部51から軸方向に伸びる突形状の部材が、カシメ矢などで押されて変形することによって、図33及び図34に示すような突起部51eが形成される。すなわち、第1環状部51から径方向に伸びる突起部51eが形成される。また、カシメ矢などで押された突起部51eは、永久磁石8の第2端面82に押しつけられることによって、永久磁石8の抜け止め部材として機能する。従って、第2変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、第1変形例と同様に、副軸ギア5Bに接着剤を塗布することなく、永久磁石8を固定できる。
また第2変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、図32に示される樹脂シート5A1のような部材が不要である。そのため、樹脂シート5A1と樹脂ギア部5A2とが個別に製造された後に、これらが組み合わされる場合に比べて、副軸ギア5Bを構成する複数の部品の製造が容易化され、さらに、副軸ギア5Bの組み立て時間が短縮される。
図35は、実施の形態2の第3変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2が備える副軸ギア5Cの斜視図である。図36は、図35に示す副軸ギア5Cの断面図である。副軸ギア5Cの樹脂ギア部5A2には、図31及び図32に示す樹脂シート5A1の代わりに、中間円筒部170が用いられる。第3変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2において、第1変形例と同一の構成を有する部位には、同一の符号を付してその説明を省略する。
中間円筒部170は、アルミ、銅などの非磁性金属材料を用いて、筒状に形成された部材である。中間円筒部170は、樹脂ギア部5A2の内周面と永久磁石8の外周面との間に設けられる、環状の円筒部である。中間円筒部170は、例えばインサート成型や圧入により、樹脂ギア部5A2の第1環状部51及び第2環状部52の内側に組み込まれている。従って中間円筒部170の外周面170aは、樹脂ギア部5A2に固定されている。
中間円筒部170の内周面170bで囲まれる空間には、永久磁石8が設けられる。永久磁石8の外径と中間円筒部170の内径との間には隙間があり、この隙間は、中間円筒部170の内周面170bに囲まれる空間への永久磁石8の取り付け時に、センターオフセット値の変化に対する磁気センサ50による角度誤差が規定値以下となる程度が好ましい。
中間円筒部170の内周面170bと永久磁石8との間には、永久磁石8を中間円筒部170に固定するための接着剤117が設けられる。接着剤117は、永久磁石8を中間円筒部170に接着が可能なものであればよく、例えばエポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などである。第3変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、接着剤117を利用して、金属製の中間円筒部170の内周面170bに永久磁石8を固定できる。すなわち、中間円筒部170及び接着剤が永久磁石8の抜け止め部材として機能し、永久磁石8が副軸ギア5Cに固定される。
また第3変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、インサート成型や圧入により中間円筒部170が樹脂ギア部5A2に組み込まれる。そのため、図32に示される樹脂シート5A1が樹脂ギア部5A2に組み合わされる場合に比べて、永久磁石8の組み付け作業が容易化され、副軸ギア5Cの組み立て時間が短縮される。
図37は、実施の形態2の第4変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2が備える副軸ギア5Dの斜視図である。図38は、図37に示す副軸ギア5Dの断面図である。副軸ギア5Dの樹脂ギア部5A2は、環状部124及び円筒部125を備える。環状部124及び円筒部125は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。第4変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2において、第1変形例と同一の構成を有する部位には、同一の符号を付してその説明を省略する。
環状部124は、円筒部125の外周面が接する第1内径の第1内周面124aと、第1内径よりも小さい第2内径の第2内周面124bと、第1内周面124aと第2内周面124bとの境界部分に設けられ、円筒部125の軸方向の端部125cと向き合う第1段差部124cとを備える。また環状部124は、第2内径よりも小さい第3内径の第3内周面124dを備える。また環状部124は、第2内周面124bと第3内周面124dとの境界部分に設けられ、永久磁石8の第2端面82と向き合う第2段差部124eと、環状部124の径方向外側に設けられ、副軸ギア5Dのギア部であるウォームホイール部124fとを備える。第1内周面124aの第1内径は、円筒部125の外径よりも小さく設定されている。
環状部124の第2内周面124bと永久磁石8の外周面との間には、樹脂ギア部5A2の第2内周面124bに囲まれる空間への永久磁石8の取り付け時に、センターオフセット値の変化に対する磁気センサ50による角度誤差が規定値以下となる隙間が空いている。
環状部124の第1段差部124cから第2段差部124eまでの高さは、永久磁石8の軸方向の高さ以下とすることが望ましい。このように構成することで、永久磁石8を第2段差部124eと円筒部125とによって挟み込むことができる。永久磁石8を第2段差部124eと円筒部125とによって挟み込むとは、永久磁石8の第1端面81が円筒部125の端部125cに接しており、かつ、永久磁石8の第2端面82が環状部124の第2段差部124eに接している状態である。
軸部6bに副軸ギア5Dを取り付ける場合、まず、環状部124の第2内周面124bに囲まれる空間に、永久磁石8が取り付けられ、その後、円筒部125が圧入で嵌め込まれる。このとき、環状部124は、円筒部125の端部125cが第1段差部124cに接するまで、軸方向に押し込まれる。これにより、永久磁石8が環状部124と円筒部125とにより挟まれた状態となる。
このように、第4変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、永久磁石8の軸方向の第1端面81に向き合う円筒部125と、永久磁石8の第2端面82に向き合い、内側に円筒部125が嵌め込まれる環状部124とによって、永久磁石8が挟まれる。そのため、第4変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、環状部124と円筒部125が、永久磁石8の抜け止め部材として機能する。従って、第4変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2は、副軸ギア5Dに接着剤を塗布することなく、永久磁石8を副軸ギア5Dに固定できる。なお、図38に示される第2段差部124eは、例えば、図34に示される突起部51eと同様に、環状部124から軸方向に伸びる環状の部材を、カシメ矢などで変形させることで形成したものでもよい。
図39は、実施の形態2の第5変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2が備える副軸ギア5Eの断面斜視図である。図40は、図39に示す副軸ギア5Eが備える樹脂ギア部5A2の断面斜視図である。樹脂ギア部5A2の内周面128には、永久磁石8を固定するための窪みである凹部126が設けられる。凹部126は、樹脂ギア部5A2の径方向の中心から径方向の外側に向かって窪むように形成された窪みである。凹部126は、例えば、樹脂ギア部5A2の回転方向に沿って、複数設けられる。複数の凹部126は、回転方向に隣接する凹部126同士の離隔距離が等しくなるように、互いに離れて配列される。複数の凹部126のそれぞれには、接着剤127が設けられている。接着剤127は、永久磁石8の外周面に接している。なお、副軸ギア5Eの特徴は、凹部126が設けられていることと、凹部126に接着剤127が設けられていることである。そのため、これらの特徴以外の構成については、例えば図36に示す樹脂ギア部5A2と同様に構成してもよい。
副軸ギア5Eを組み立てる場合、まず、複数の凹部126のそれぞれに接着剤127が充填される。このとき、凹部126の底部分126aから、樹脂ギア部5A2の内周面128と凹部126との境界部分126bまでが、接着剤127で満たされる。次に、充填された接着剤127が硬化する前に、樹脂ギア部5A2の内周面128で囲まれる空間に永久磁石8が取り付けられる。このとき、永久磁石8の外周面には接着剤127が付着する。その後、接着剤127が硬化することにより、永久磁石8には、樹脂ギア部5A2の凹部126に嵌まり込む突起が形成された状態になる。この突起は、永久磁石8の外周面から樹脂ギア部5A2の凹部126の底部分126aに向かって突き出た形状を有する。
第5変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、樹脂ギア部5A2の内周面128に形成される凹部126と、接着剤127とが、永久磁石8の抜け止め部材として機能する。これにより、樹脂ギア部5A2がポリアセタール樹脂で構成されているために、接着剤127が樹脂ギア部5A2に付着し難い場合でも、永久磁石8を副軸ギア5Eに固定できる。
また第5変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、図31に示される樹脂シート5A1、図33に示される突起部51e、図35に示される中間円筒部170、図38に示される円筒部125などの抜け止め部材が不要なため、アブソリュートエンコーダ100−2の製造コストを低減することができる。
図41は、実施の形態2の第6変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2が備える副軸ギア5Fの斜視図である。図42は、図41に示す副軸ギア5Fの断面図である。副軸ギア5Fの樹脂ギア部5A3は、開口部54aが形成される頂部54bを有する椀形状の環状部54と、リング形状の筒体55と、ベアリング56とを備える。筒体55は、永久磁石8の軸方向の第1端面81に向き合う第1環状部である。環状部54は、第2環状部である。環状部54は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。環状部54の内周面に囲まれる空間には、永久磁石8、筒体55及びベアリング56が設けられている。永久磁石8、筒体55及びベアリング56は、環状部54の頂部54b側から永久磁石8、筒体55、ベアリング56の順で並ぶ。副軸ギア5Fの特徴は、ベアリング56及び筒体55を利用して、永久磁石8を、環状部54の頂部54bに向かって押圧している点である。なお、図42に示される軸143は、図32などに示される基部60のメインベース10に固定されているものとする。軸143の端部には、ベアリング56の内輪56bが圧入により固定される。環状部54の内周面の内径は、ベアリング56の外輪56aの外径よりも僅かに小さい。この「僅か」とは、環状部54にベアリング56を圧入できる値である。
筒体55の外径は、ベアリング56の外輪56aの内径よりも大きく、かつ、外輪56aの外径よりも小さい。筒体55の内径は、ベアリング56の内輪56bの外径よりも大きい。そのため、ベアリング56の軸方向に隣り合う筒体55は、ベアリング56の内輪56bに接触せず、かつ、ベアリング56の外輪56aに接する。これにより、回転時に筒体55がベアリング56の内輪56bと接触して筒体55が摩耗することを防ぐことができる。
副軸ギア5Fを組み立てる場合、まず、環状部54の内周面に囲まれる空間に、永久磁石8が取り付けられ、その次に筒体55が取り付けられる。一方、ベアリング56の内輪56bに、軸143の端部が圧入で嵌め込まれる。軸143が嵌め込まれたベアリング56と軸143との組み立て体は、環状部54の内周面に、圧入で嵌め込まれる。このとき、ベアリング56は、筒体55に接するまで、軸方向に押し込まれる。これにより、永久磁石8が、環状部54と頂部54bと筒体55とに挟まれた状態となる。筒体55を用いることによって、ベアリング56から永久磁石8までの距離を大きくすることができる。また、筒体55は、アルミ・銅などの非磁性の金属材料や樹脂材料などで構成されているため、ベアリング56が直接永久磁石8に接触するように構成した場合に比べて、永久磁石8で発生した磁束の流れが乱れることを抑制できる。なお、副軸ギア5Fを組み立てる手順は、これに限定されず、例えば、環状部54の内周面に囲まれる空間へ、永久磁石8、筒体55及びベアリング56が嵌め込まれた後、ベアリング56の内輪56bに軸143の端部が圧入で嵌め込まれてもよい。このように、第6変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−2では、筒体55を介して、永久磁石8を軸方向に挟む環状部54及びベアリング56により、抜け止め部材が構成される。
なお、環状部54の頂部54bには、環状部54を軸方向から見て、中心軸を取り囲むように開口部54aが形成されている。開口部54aの形状は、例えば、第1曲率半径の曲面54b1と、第1曲率半径よりも小さい第2曲率半径の曲面54b2とを組み合わせた形状である。このような形状の開口部54aを設けることにより、例えば、開口部54aには、中心軸を取り囲む真円の第1領域と、第1領域よりも径方向外側に形成される第2領域とが形成される。この第2領域を塞ぐように設けられる永久磁石8へ、接着剤を塗布することによって、この接着剤は、永久磁石8に付着した状態で硬化する。そして、硬化後の接着剤は、第2領域を形作る壁面(第2曲率半径の曲面54b2)に係り止めされるため、永久磁石8の回り止めとして機能する。このように、開口部54aを設けた上で、接着剤を塗布することにより、永久磁石8はより確実に副軸ギア5Fとともに回転することができる。例えば、筒体55による永久磁石8の軸方向への押圧力が規定値よりも小さい場合でも、環状部54に設けられるウォームホイール部52eの回転角度に対し、永久磁石8の回転角度がずれることを抑制でき、磁気センサ50による副軸ギア5Fの回転角度又は回転量の検出精度の低下を抑制できる。
なお、実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1の第1副軸ギア105は、第1〜第6変形例で説明した副軸ギア5A,5B,5C,5D,5E,5Fの何れか1つと同様に構成してもよい。また、実施の形態1に係るアブソリュートエンコーダ100−1の第2副軸ギア138は、第1〜第6変形例で説明した副軸ギア5A,5B,5C,5D,5E,5Fの何れか1つと同様に構成してもよい。このようにアブソリュートエンコーダ100−1を構成することにより、第1副軸ギア105及び第2副軸ギア138に永久磁石17をより確実に固定できる。
実施の形態1,2では、接着材による固定が満足に得られない場合でも、第1副軸ギア105(副軸ギア5)、第2副軸ギア138などから、永久磁石が抜けることを防止する磁石抜け止め構造について説明した。このように、主軸ギア101(主軸ギア1)ではなく、第1副軸ギア105(副軸ギア5)、第2副軸ギア138などに磁石抜け止め構造が採用される理由は、以下の通りである。第1副軸ギア105(副軸ギア5)などでは、主軸ギア101(主軸ギア1)の回転数が減速されるため、それぞれの角度センサによる検出角度の許容誤差を考えた場合、第1副軸ギア105(副軸ギア5)などの方が主軸ギア101(主軸ギア1)に比べて許容可能な誤差は大きい。そのため、第1副軸ギア105(副軸ギア5)などにおける軸ずれ許容量は、主軸ギア101(主軸ギア1)における軸ずれ許容量よりも高い。軸ずれとは、例えば、例えば永久磁石8を平面視したときに、永久磁石8の中心軸が、永久磁石8に対応する磁気センサ50の検知素子から離れている状態を言う。軸ずれ許容量とは、軸ずれの量が増加した場合でも、磁気センサ50などが磁束を検出し、適切な角度信号を出力することが可能な範囲の軸ずれの量を示す。このように、軸ずれ許容量が高い第1副軸ギア105(副軸ギア5)などでは、永久磁石8が圧入されずに取り付けられた場合でも、センターオフセット値の変化に対する磁気センサ50などによる角度誤差を、規定値以下に収めることができる。従って、第1副軸ギア105(副軸ギア5)などに磁石抜け止め構造が採用されることにより、磁気センサ50などで検出される回転角度の誤差の増加を抑制しながら、圧入による永久磁石8などの割れを抑制できる。このようなことから、実施の形態1,2では、主軸ギア101(主軸ギア1)ではなく、第1副軸ギア105(副軸ギア5)などに磁石抜け止め構造が採用される。
図43は、実施の形態1,2のアブソリュートエンコーダ100−1,100−2に適用可能な永久磁石9Aを示す図である。図44は、実施の形態1,2のアブソリュートエンコーダ100−1,100−2に適用可能な永久磁石9Bを示す図である。図43には、第1構成例に係る永久磁石9Aが示される。永久磁石9Aでは、第1極性の第1磁極部分Nと、第1極性とは異なる第2極性の第2磁極部分Sとが、永久磁石9Aの径方向D1に配列されている。図44には、第2構成例に係る永久磁石9Bが示される。永久磁石9Bでは、永久磁石9Bの中央を境に、図中左半分に第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが永久磁石9Bの図中軸方向D2に配列され、一方、図中右半分には、左半分とは上下逆方向に第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが永久磁石9の図中軸方向D2に配列されている。図43及び図44に示される矢印「DM」は着磁方向を表す。
永久磁石9Aと永久磁石9Bは、何れも実施の形態1,2のアブソリュートエンコーダ100−1,100−2の永久磁石9として利用可能である。但し、永久磁石9Bでは、複数の磁力線によって形成される磁場が、永久磁石9Aに発生する磁場に比べて、軸方向D2に広がるように分布する。これに対して、永久磁石9Aでは、複数の磁力線によって形成される磁場が、永久磁石9Bに発生する磁場に比べて、径方向D1に広がるように分布する。そのため、実施の形態1,2のアブソリュートエンコーダ100−1,100−2に永久磁石9Aが用いられる場合、永久磁石9Aの径方向外側に広がるように発生する磁場によって、前述した他の磁気センサに磁束が影響する磁気干渉が発生し易くなる。
実施の形態1,2の各変形例に係るアブソリュートエンコーダ100−1,100−2は、永久磁石9Bが永久磁石9として利用された場合、永久磁石9Aが利用された場合に比べて、永久磁石9から発生する漏れ磁束が、磁気センサ50に流れ込むことが少なくなる。また、永久磁石9Bが永久磁石8として利用された場合、永久磁石9Aが利用された場合に比べて、永久磁石8から発生する漏れ磁束が、磁気センサ40に流れ込むことが少なくなる。その結果、副軸ギア5又は主軸ギア1の回転角度又は回転量の検出精度の低下を低減できる。また、回転角度又は回転量の検出精度の低下を低減できる分、アブソリュートエンコーダ100−1,100−2のより一層の小型化を図ることができる。
なお、実施の形態1のアブソリュートエンコーダ100−1は、永久磁石8及びマグネットホルダ6のそれぞれの中心軸が、図26に示される永久磁石8及びマグネットホルダ6と同様に互いに一致するように構成される。また、実施の形態1のアブソリュートエンコーダ100−1は、永久磁石17及び第2副軸ギア138のそれぞれの中心軸が、図26に示される永久磁石8及びマグネットホルダ6と同様に互いに一致するように構成される。また、実施の形態1のアブソリュートエンコーダ100−1は、永久磁石9及び主軸ギア1のそれぞれの中心軸が、図27に示される永久磁石9及び主軸ギア1と同様に互いに一致するように構成される。この構成により、実施の形態1のアブソリュートエンコーダ100−1は、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となる。
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。