以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳説する。
(レーザ加工装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の概略を示した構成図である。図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置10は、ステージ12と、加工装置本体(光学系ユニット)20と、加工レンズ26と、制御装置50とを備えている。なお、本実施形態では、加工装置本体20と制御装置50とが別々に構成される場合を例示したが、この構成に限らず、加工装置本体20は制御装置50の一部又は全部を含んでいてもよい。
ステージ12は、被加工物を吸着保持するものである。ステージ12は、ステージ駆動機構28(図2参照)によりX方向及びθ方向に移動可能に構成される。ステージ駆動機構28としては、例えば、ボールねじ機構、リニアモータ機構等の種々の機構にて構成することができる。ステージ駆動機構28の動作は、制御装置50(移動制御部54)により制御される。なお、図1においては、XYZの3方向は互いに直交し、このうちX方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。また、θ方向は、鉛直方向軸(Z軸)を回転軸とする回転方向である。
本実施形態では、被加工物として、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハ(以下、「ウェーハ」という。)Wが適用される。ウェーハWは、格子状に配列された切断予定ラインによって複数の領域に区画され、この区画された各領域に半導体チップを構成する各種デバイスが形成されている。なお、本実施形態においては、被加工物としてウェーハWを適用した場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ガラス基板、圧電セラミック基板、ガラス基板なども適用することができる。
ウェーハWは、デバイスが形成された表面(デバイス面)に粘着材を有するバックグラインドテープ(以下、BGテープ)が貼付され、裏面が上向きとなるようにステージ12に載置される。ウェーハWの厚さは、特に制限はないが、典型的には700μm以上、より典型的には700〜800μmである。
なお、ウェーハWは、一方の面に粘着材を有するダイシングテープが貼付され、このダイシングテープを介してフレームと一体化された状態でステージ12に載置されるようにしてもよい。
加工装置本体20は、筐体21と、レーザ光源22と、空間光変調器24と、リレー光学系30と、ビームエキスパンダ32と、λ/2波長板34とを備えている。
筐体21の内部には、レーザ光源22、空間光変調器24、リレー光学系30、ビームエキスパンダ32、及びλ/2波長板34が配置される。なお、レーザ光源22は、筐体21の外部(例えば、筐体21の天面や側面など)に配置されていてもよい。また、筐体21の底面には、加工レンズ26が着脱自在に取り付けられる。
加工装置本体20は、本体駆動機構29(図2参照)によりY方向及びZ方向に移動可能に構成される。本体駆動機構29としては、例えば、ボールねじ機構、リニアモータ機構等の種々の機構にて構成することができる。本体駆動機構29の動作は、制御装置50(移動制御部54)により制御される。これにより、ウェーハWにおける加工位置(レーザ加工領域を形成する位置)に応じて、加工装置本体20をY方向に移動させることができると共に、加工装置本体20をZ方向に移動させることができる。そのため、加工レンズ26により集光されるレーザ光Lの集光点の位置を変化させて、レーザ加工領域をウェーハWの所望の位置に形成することができる。
レーザ光源(IRレーザ光源)22は、ウェーハWの内部にレーザ加工領域を形成するための加工用のレーザ光Lを出射する。レーザ光源22によるレーザ光Lの出射動作は、制御装置50(レーザ制御部56)により制御される。レーザ光Lの条件としては、例えば、光源が半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ、波長が波長:1.1μm、レーザ光スポット断面積が3.14×10−8cm2、発振形態がQスイッチパルス、繰り返し周波数が80〜200kHz、パルス幅が180〜370ns、出力が8Wである。
空間光変調器24は、2次元的に配列された複数の画素(微小変調素子)からなる光変調面を備えており、光変調面に入射した光の位相を画素毎に変調する位相変調型の空間光変調器である。空間光変調器24は、加工レンズ26のレンズ瞳(射出瞳)26aと光学的に共役な位置に配置されている(図6及び図7参照)。空間光変調器24は、後述する空間光変調器制御部58により設定された所定の変調パターンに基づき、光変調面に入射した光の位相を画素毎に変調して、変調後の光を所定の方向に向けて出射する。なお、空間光変調器24としては、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)が用いられる。空間光変調器24の動作、及び空間光変調器24で呈示される変調パターンは、制御装置50(空間光変調器制御部58)によって制御される。変調パターンは、空間光変調器24の光変調面を構成する複数の画素のそれぞれに対応する制御値(位相変化量)が2次元的に分布するパターン(2次元情報)であってもよいし、変調領域内(光変調面)の変調をある関数で表したときの係数情報のようなものであってもよい。なお、空間光変調器24の具体的な構成については既に公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
加工レンズ26は、レーザ光LをウェーハWの内部に集光させる対物レンズ(集光光学系)である。この加工レンズ26の開口数(NA)は、例えば0.65である。
リレー光学系30は、空間光変調器24と加工レンズ26との間のレーザ光Lの光路に設けられている。リレー光学系30は、少なくとも2つのレンズ30a、30b(以下、「第1レンズ30a」、「第2レンズ30b」という。)を有している。リレー光学系30は、アフォーカル光学系(両側テレセントリックな光学系)を構成しており、空間光変調器24で変調されたレーザ光Lを加工レンズ26に投影する。このリレー光学系30は、両側テレセントリックな縮小光学系であり、その投影倍率(以下、単に「倍率」ともいう。)は1より小さく(例えば0.66)となっている。
ビームエキスパンダ32は、レーザ光源22から出射されたレーザ光Lを空間光変調器24のために適切なビーム径に拡大する。λ/2波長板34は、空間光変調器24へのレーザ光入射偏光面を調整する。
また、図示を省略したが、加工装置本体20には、ウェーハWとのアライメントを行うためのアライメント光学系、及びウェーハWと加工レンズ26との間の距離(ワーキングディスタンス)を一定に保つためのオートフォーカスユニット等が備えられている。
制御装置50は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータなどの汎用のコンピュータによって実現されるものである。
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェース等を備えている。制御装置50では、ROMに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、図2に示した制御装置50内の各部の機能が実現され、入出力インターフェースを介して各種の演算処理や制御処理が実行される。
図2は、制御装置50の構成を示したブロック図である。図2に示すように、制御装置50は、主制御部52、移動制御部54、レーザ制御部56、空間光変調器制御部58、及びメモリ部60として機能する。
主制御部52は、制御装置50を構成する各部(移動制御部54、レーザ制御部56、空間光変調器制御部58、及びメモリ部60を含む)を統括的に制御する。
移動制御部54は、ステージ12と加工装置本体20との相対移動を制御するものである。移動制御部54は、ステージ12のX方向及びθ方向の移動を制御する制御信号をステージ駆動機構28に出力すると共に、加工装置本体20のY方向及びZ方向の移動を制御する制御信号を本体駆動機構29に出力する。
レーザ制御部56は、レーザ光Lの出射を制御するものである。レーザ制御部56は、レーザ光Lの波長、パルス幅、強度、出射タイミング、及び繰り返し周波数などを制御する制御信号をレーザ光源22に出力する。
空間光変調器制御部58は、空間光変調器24の動作を制御する制御信号を空間光変調器24に出力する。すなわち、空間光変調器制御部58は、所定の変調パターンを空間光変調器24に呈示させる制御を行う。具体的には、空間光変調器制御部58は、ウェーハWの内部におけるレーザ光Lの集光点を合わせる位置で発生するレーザ光Lの収差が所定の収差以下となるように、レーザ光Lを変調するための変調パターンを空間光変調器24に設定する。
メモリ部60は、制御装置50に備えられた外部メモリ(例えばハードディスクやフレキシブルディスク等)又は内部メモリ(例えば半導体メモリからなるRAMやROM等)により構成される。メモリ部60は、上述した制御プログラム等の各種プログラムの他に、収差補正情報Sを記憶する。収差補正情報Sは、空間光変調器制御部58が空間光変調器24に呈示させる変調パターンを決定するための元となる情報である。収差補正情報Sは、後述する第1収差補正情報S1、第2収差補正情報S2、及び第3収差補正情報S3を含む。
図3及び図4は、ウェーハ内部の集光点近傍に形成されるレーザ加工領域を説明する概念図である。図3は、ウェーハWの内部に入射されたレーザ光Lが集光点にレーザ加工領域Pを形成した状態を示している。図4は、パルス状のレーザ光Lの下でウェーハWが水平方向に移動され、不連続なレーザ加工領域P、P、・・・が並んで形成された状態を表している。この状態でウェーハWはレーザ加工領域Pを起点として自然に割断するか、或いは僅かな外力を加えることによってレーザ加工領域Pを起点として割断される。この場合、ウェーハWは表面や裏面にはチッピングが発生せずに容易にチップに分割される。
図5は、ウェーハ内部にレーザ加工領域を多層状に形成した状態を説明する概念図である。ウェーハWの厚さが厚い場合で、レーザ加工領域Pの層が1層では割断できないときには、図5に示すように、レーザ光Lの集光点をウェーハWの厚さ方向に変化させて、レーザ光LをウェーハWに対して複数回走査することにより、レーザ加工領域Pを多層状に形成することができる。このようにして多層状に形成されたレーザ加工領域Pをきっかけとして、ウェーハWは、自然に割断するか、或いは僅かな外力を加えることにより割断される。
なお、図3から図5ではパルス状のレーザ光Lで不連続なレーザ加工領域P、P、…を形成した状態を示したが、レーザ光Lの連続波の下で連続的なレーザ加工領域Pを形成してもよい。
(レーザ加工装置の動作)
次に、本実施形態のレーザ加工装置10の動作(レーザ加工方法)について説明する。
まず、加工対象となるウェーハWのデバイス面とは反対側の裏面を上側に向けた状態で(すなわち、ウェーハWのデバイス面をステージ12側に向けた状態で)ウェーハWがステージ12に載置された後、図示しないアライメント光学系を用いてウェーハWのアライメントが行われる。その後、加工レンズ26により集光されるレーザ光Lの集光点がウェーハWのレーザ光入射面から所定の深さ位置(加工深さ)となるように、ウェーハWに対する加工装置本体20の高さ位置(Z方向位置)の調整が行われる。これにより、加工レンズ26とウェーハWとの間の距離(ワーキングディスタンス)が、加工深さに対応した適切な距離に設定される。
次に、ウェーハWに対してレーザ光Lを照射しつつ切断予定ラインに沿って相対移動させる。なお、レーザ光Lの相対移動は、ウェーハWを吸着保持したステージ12をX方向に加工送りすることにより行われる。
このとき、レーザ光源22から出射されたレーザ光Lは、ミラー36によって反射され、ビームエキスパンダ32に入射する。ビームエキスパンダ32に入射したレーザ光Lは、ビームエキスパンダ32によってビーム径が拡大されてビームエキスパンダ32から出射される。ビームエキスパンダ32から出射されたレーザ光Lは、ミラー38によって反射され、λ/2波長板34に入射する。λ/2波長板34に入射したレーザ光Lは、λ/2波長板34によって偏光方向が変更されてλ/2波長板34から出射される。λ/2波長板34から出射されたレーザ光Lは空間光変調器24に入射する。
空間光変調器24に入射したレーザ光Lは、空間光変調器24に呈示された所定の変調パターンに従って変調されて空間光変調器24から出射される。その際、空間光変調器制御部58は、ウェーハWの内部におけるレーザ光Lの集光点を合わせる位置で発生するレーザ光Lの収差が所定の収差以下となるように、レーザ光Lを変調するための変調パターンを空間光変調器24に設定する。空間光変調器24は、空間光変調器制御部58によって設定された変調パターンを呈示する。これにより、ウェーハWの内部におけるレーザ光Lの集光点を合わせる位置で発生するレーザ光Lの収差が所定の収差以下となる。
空間光変調器24から出射されたレーザ光Lは、ミラー40、42によって順次反射された後、第1レンズ30aを通過し、更にミラー44、46によって順次反射され、第2レンズ30bを通過し、加工レンズ26に入射する。これにより、空間光変調器24から出射されたレーザ光Lは、第1レンズ30a及び第2レンズ30bを有するリレー光学系30によって加工レンズ26に投影される。そして、加工レンズ26に入射したレーザ光Lは、ステージ12上に載置されたウェーハWの内部に加工レンズ26によって集光される。これにより、ウェーハWの内部には、レーザ光Lの集光点位置の近傍にレーザ加工領域が形成される。したがって、切断予定ラインに沿った1回のスキャンが行われると、ウェーハWの内部に1層のレーザ加工領域を形成することができる。
このように、切断予定ラインに沿った1回のスキャンで、ウェーハWの内部に1層のレーザ加工領域が形成されると、加工装置本体20がY方向に1ピッチ割り出し送りされ、次の切断予定ラインも同様にして、レーザ加工領域が形成される。
全てのX方向と平行な切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域が形成されると、ステージ12が90°回転され、先程のラインと直交するラインも同様にして全てレーザ加工領域が形成される。これにより、全ての切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域が形成される。
以上のようにして切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域が形成された後、図示しない研削装置を用いて、ウェーハWの裏面を研削してウェーハWを薄化する裏面研削工程が行われる。
裏面研削工程の後、ウェーハWの裏面にエキスパンドテープ(ダイシングテープ)が貼付され、ウェーハWの表面に貼付されているBGテープが剥離された後、ウェーハWの裏面に貼付されたエキスパンドテープに張力を加えて引き伸ばすエキスパンド工程が行われる。これにより、ウェーハWの内部に形成されたレーザ改質領域を起点として、ウェーハWが切断予定ラインに沿って切断され、複数のチップに分割される。
(レーザ加工装置の光学系配置構成)
次に、レーザ加工装置10における光学系配置構成について詳しく説明する。図6は、レーザ加工装置10における光学系配置構成の一例を示した構成図である。なお、図6においては、空間光変調器24、加工レンズ26、及びリレー光学系30の光学的な配置関係を分かりやすくするために、説明とは関係ない部分については図示を省略している。また、図6において、f1は第1レンズ30aの焦点距離、f2は第2レンズ30bの焦点距離、fobjは加工レンズ26の焦点距離である。後述する図7も同様である。
図6に示すように、本実施形態では、空間光変調器24と加工レンズ26のレンズ瞳26aとが光学的に共役関係にある。
具体的には、空間光変調器24と加工レンズ26との間にはリレー光学系30が配置される。リレー光学系30は、両側テレセントリックな縮小光学系を構成する第1レンズ30a及び第2レンズ30bを有している。すなわち、第1レンズ30aと第2レンズ30bとの距離は第1レンズ30aの焦点距離f1と第2レンズ30bの焦点距離f2との和(f1+f2)である。また、空間光変調器24と第1レンズ30aとの距離は第1レンズ30aの焦点距離f1であり、加工レンズ26のレンズ瞳26aと第2レンズ30bとの距離は第2レンズ30bの焦点距離f2である。
図6に示した光学系配置構成によれば、空間光変調器24と加工レンズ26のレンズ瞳26aとが光学的に共役関係となるように各構成要素(光学系)が配置されているため、空間光変調器24で形成した波面形状が加工レンズ26のレンズ瞳26aに投影されることになり、加工レンズ26の焦点面(加工点)で所望の光分布を得ることができる。これにより、収差の影響を抑えて、切断の起点となるレーザ加工領域を高精度かつ効率よく形成することができる。
また、図6に示した光学系配置構成によれば、空間光変調器24と加工レンズ26の主点とが光学的に共役関係となるように配置する場合に比べて、各光学系を組み立てる際のアライメント(位置合わせ)をしやすく、且つウェーハWの内部におけるレーザ光Lの集光点を合わせる位置で発生するレーザ光Lの収差を抑えるための空間光変調器24の制御が容易になる。
なお、本実施形態において、より厳密には、空間光変調器24の光変調面(反射面)と加工レンズ26のレンズ瞳26aとが光学的に共役関係にあるのが望ましいが、空間光変調器24で形成した波面形状を加工レンズ26のレンズ瞳26aに投影する際に、その波面形状の変化の影響が小さければ、空間光変調器24の光変調面からずれた位置(例えば、空間光変調器24の表面又は表面近傍など)と加工レンズ26のレンズ瞳26aとが光学的に共役関係になるようにしてもよい。この場合、光学系の調整が容易となる。
また、本実施形態では、好ましい態様の一例として、加工レンズ26のレンズ瞳26aと第2レンズ30bとの距離が第2レンズ30bの焦点距離f2となる構成を示したが、空間光変調器24と加工レンズ26のレンズ瞳26aとが光学的に共役関係にあれば、図6に示した光学系配置構成に限定されない。
図7は、レーザ加工装置10における光学系配置構成の他の例を示した構成図である。図7に示すように、光学系配置構成の他の例では、加工レンズ26のレンズ瞳26aと第2レンズ30bとの距離が第2レンズ30bの焦点距離f2よりも長くなっている。この場合、空間光変調器24と第1レンズ30aとの距離は第1レンズ30aの焦点距離f1よりも短くなる。
具体的には、図7に示すように、加工レンズ26のレンズ瞳26aと第2レンズ30bとの距離をg2とし、その距離g2と第2レンズ30bの焦点距離f2との差分の絶対値(|g2−f2|)をΔx2とし、空間光変調器24と第1レンズ30aとの距離をg1とし、その距離g1と第1レンズ30aの焦点距離f1との差分の絶対値(|g1−f1|)をΔx1とした場合、以下の式を満たしている。
Δx2=(f2/f1)2×Δx1 ・・・(1)
また、リレー光学系30(両側テレセントリックな縮小光学系)の倍率(f2/f1)をmとした場合、式(1)を以下の式(2)のように表現することができる。
Δx2=m2×Δx1 ・・・(2)
図7に示した光学系配置構成によれば、空間光変調器24と加工レンズ26のレンズ瞳26aとが光学的に共役関係となるように各構成要素(光学系)が配置されているので、図6に示した光学系配置構成と同様の効果を得ることができる。
また、図7に示した光学系配置構成によれば、第2レンズ30bと加工レンズ26との距離が機械的な制約等により短くできない場合でも、第2レンズ30bとして焦点距離の小さいレンズを用いることができ、装置の小型化に寄与する。すなわち、この光学系配置構成では、レーザ加工装置10における光学系をコンパクトにするための手段として第2レンズ30bと加工レンズ26との距離よりもあえて短い焦点距離のレンズ(第2レンズ30b)を用いてリレー光学系30の全長を短くしており、それによって光学系のコンパクト化が可能となっている。
(レーザ加工装置の収差調整方法)
次に、本実施形態のレーザ加工装置10における収差調整方法について説明する。
レーザ加工装置10の個体差により、レーザ加工装置10に発生する収差の影響は個々の装置により異なる。そのため、レーザ加工装置10の製造段階において、レーザ加工装置10で発生する収差の調整作業を行う必要がある。
ここで、例えば、加工装置本体と加工レンズとを含むレーザ加工装置全体で発生する収差(波面)の測定が一括して行われ、その収差が打ち消されるように収差の調整が行われている場合には、加工レンズが別のものに交換されるとレーザ加工装置全体としてどのような収差になるか予想ができず、レーザ加工装置で発生する収差を補償できなくなる。この場合、レーザ加工装置で発生する収差を抑えることはできなくなり、レーザ加工領域を高精度かつ効率よく形成することができない問題を招く要因となる。
本実施形態では、このような問題を解決するために、レーザ加工装置10の製造段階において、以下のようにして収差の調整作業が行われる。
図8は、本実施形態のレーザ加工装置10の収差調整方法を示したフローチャートである。図9から図11は、本実施形態のレーザ加工装置10の収差調整方法を説明するための図である。以下、図8に示したフローチャートに従って、本実施形態のレーザ加工装置10の収差調整方法について説明する。なお、本実施形態のレーザ加工装置10では、倍率が異なる複数の加工レンズ26を交換して使用することが可能となっている。
〔第1収差補正情報取得工程〕
まず、加工装置本体20が有する収差を補正するための第1収差補正情報S1を取得して記憶する(ステップS10からステップS16)。
具体的には、図9に示すように、加工レンズ26を取り除いたレーザ加工装置10において、加工レンズ26のレンズ瞳近傍(厳密である必要はない)に相当する位置に波面センサ70を配置する。そして、加工装置本体20から出力されるレーザ光Lの波面を波面センサ70によって測定する(ステップS10)。波面センサ70で測定された波面は空間光変調器制御部58に出力される。
空間光変調器制御部58は、波面センサ70で測定された波面に基づいて空間光変調器24の変調パターンを調整する(ステップS12)。具体的には、空間光変調器制御部58は、波面センサ70で測定された波面が平面波に近づくように、空間光変調器24に設定する変調パターンを変更する。
次に、空間光変調器制御部58は、波面センサ70で測定された波面が収差のない平面波であるか否かを判定する(ステップS14)。波面センサ70で測定された波面が平面波でないと判定された場合にはステップS10に戻る。そして、波面センサ70で測定された波面が平面波であると判定されるまでステップS10からステップS14までの処理を繰り返す。
一方、波面センサ70で測定された波面が平面波であると判定された場合には、空間光変調器制御部58は、平面波であると判定されたときに空間光変調器24に設定されている変調パターンを、第1収差補正情報S1としてメモリ部60に記憶する(ステップS16)。
〔第2収差補正情報取得工程〕
次に、加工レンズ26が有する収差を補正するための第2収差補正情報S2を取得して記憶する(ステップS18からステップS28)。
具体的には、図10に示すように、レーザ加工装置10に加工レンズ26を取り付けると共に、加工レンズ26に対向する位置に平面ミラー72を配置する。平面ミラー72を配置する位置は、加工レンズ26が有する収差を補正するための基準(収差補正基準)となる位置であり、好ましくは、加工レンズ26の焦点位置に平面ミラー72を配置する。
更に、ビームスプリッタ(例えばハーフミラー)74と波面センサ76とを図10のように配置する。すなわち、ビームスプリッタ74をレーザ光Lの光路上であって、加工レンズ26の後側(レーザ光Lが入射する側)に配置する。そして、レーザ光源22からのレーザ光Lを加工レンズ26を介して平面ミラー72に照射し、平面ミラー72からの反射光を加工レンズ26を介して波面センサ76に入射し、波面センサ76に入射した反射光の波面を波面センサ76で測定する(ステップS18)。波面センサ76で測定された波面は空間光変調器制御部58に出力される。
なお、平面ミラー72に向かうレーザ光Lの光束が加工レンズ26を通る光路と、平面ミラー72で反射したレーザ光Lの光束が加工レンズ26を通る光路とが、加工レンズ26の光軸を中心とした対称な位置を通るので、波面センサ76は、非対称収差を測定することができないが、加工レンズ26の対称収差を測定することができる。
空間光変調器制御部58は、波面センサ76で測定された波面に基づいて空間光変調器24の変調パターンを調整する(ステップS20)。具体的には、空間光変調器制御部58は、波面センサ76で測定された波面が平面波に近づくように、空間光変調器24に設定する変調パターンを変更する。
次に、空間光変調器制御部58は、波面センサ76で測定された波面が収差のない平面波であるか否かを判定する(ステップS22)。波面センサ76で測定された波面が平面波でないと判定された場合にはステップS18に戻る。そして、空間光変調器制御部58は、波面センサ76で測定された波面が平面波であると判定されるまでステップS18からステップS22までの処理を繰り返す。
一方、波面センサ76で測定された波面が平面波であると判定された場合には、空間光変調器制御部58は、平面波であると判定されたときに空間光変調器24に設定されている変調パターンを、合計収差補正情報T1としてメモリ部60に記憶する。
ここで、加工装置本体20が有する収差をR1とし、加工レンズ26が有する収差をR2とし、波面センサ76によって測定される波面に含まれる収差(合計収差)をRAとした場合、以下の式(3)が成り立つ。
RA=R1+2×R2 ・・・(3)
式(3)を変形すると、以下の式(4)が得られる。
R2=(RA−R1)/2 ・・・(4)
レーザ光源22から出射されたレーザ光Lが加工装置本体20の構成要素(空間光変調器24及びリレー光学系30を含む)を経て加工レンズ26を介して平面ミラー72に照射され、平面ミラー72からの反射光が加工レンズ26を介して波面センサ76に導かれ、その波面が波面センサ76で測定されるためである。すなわち、波面センサ76によって測定される波面に含まれる収差RAは、加工装置本体20が有する収差R1と、加工レンズ26が有する収差R2の2倍との合計(和)として表現できる。
以上から理解されるように、第2収差補正情報S2は、合計収差補正情報T1と第1収差補正情報S1との差分を差分収差補正情報とした場合、差分収差補正情報における各画素毎の制御値(位相変化量)をそれぞれ半分としたものに相当する。すなわち、第2収差補正情報S2は、次の式(5)により簡略的に示すことができる。
S2=(T1−S1)/2 ・・・(5)
このようにして空間光変調器制御部58は、メモリ部60に記憶した第1収差補正情報S1及び合計収差補正情報T1に基づき、第2収差補正情報S2を求める。そして、空間光変調器制御部58は、加工レンズ26と関連付けて第2収差補正情報S2をメモリ部60に記憶する(ステップS24)。
次に、全ての加工レンズ26に対応する第2収差補正情報S2を取得したか否か判断が行われる(ステップS26)。全ての加工レンズ26に対応する第2収差補正情報S2を取得していない場合には、他の加工レンズ26に交換して(ステップS28)、全ての加工レンズ26に対応する第2収差補正情報S2を取得したと判断されるまで、ステップS18からステップS28までの処理を繰り返す。これにより、レーザ加工装置10で使用可能な加工レンズ26毎に第2収差補正情報S2が取得され、メモリ部60には各加工レンズ26と関連付けて第2収差補正情報S2が記憶される。
なお、第2収差補正情報S2は、加工レンズ26単体の収差を補正するための情報であり、加工装置本体20の収差を補正するための情報は含まない。そのため、必ずしも加工装置本体20に加工レンズ26を装着した状態でレーザ加工装置10全体での収差を測定する必要はなく、例えば、所定の測定装置を用いて加工レンズ26単体の収差を測定し、その測定結果に基づいて第2収差補正情報S2を取得するようにしてもよい。
また、本実施形態の収差調整方法において測定できない非対称収差(例えばコマ収差など)については、加工レンズ26単体での標準的な性能評価で判別すればよい。コマ収差の少ない加工レンズを選別するなどの手段をとることで実用上問題のない収差補正が可能となる。
〔第3収差補正情報取得工程〕
次に、加工深さに応じた収差を補正するための第3収差補正情報S3を取得して記憶する(ステップS30からステップS40)。
具体的には、図11に示すように、被加工物小片78を用意し、加工レンズ26と平面ミラー72との間に被加工物小片78を配置する。ここで、被加工物小片78は、加工深さに応じた厚さを有する。具体的には、被加工物小片78の厚さは、加工レンズ26を介してレーザ光Lが被加工物(ウェーハW)に入射した後、レーザ光Lが集光点を形成する加工深さに達するまでに付加される収差に対応する厚さとなっている。換言すれば、被加工物小片78は、被加工物のレーザ光入射面(収差補正基準位置)から加工深さの光路長に対応する厚さを有する。そして、上述したステップS18と同様にして、レーザ光源22からのレーザ光Lを加工レンズ26を介して平面ミラー72に照射し、平面ミラー72からの反射光を加工レンズ26を介して波面センサ76に入射し、波面センサ76に入射した反射光の波面を波面センサ76で測定する(ステップS30)。波面センサ76で測定された波面は空間光変調器制御部58に出力される。
空間光変調器制御部58は、波面センサ76で測定された波面に基づいて空間光変調器24の変調パターンを調整する(ステップS32)。具体的には、空間光変調器制御部58は、波面センサ76で測定された波面が平面波に近づくように、空間光変調器24に設定する変調パターンを変更する。
次に、空間光変調器制御部58は、波面センサ76で測定された波面が収差のない平面波であるか否かを判定する(ステップS34)。波面センサ76で測定された波面が平面波でないと判定された場合にはステップS30に戻る。そして、空間光変調器制御部58は、波面センサ76で測定された波面が平面波であると判定されるまでステップS30からステップS34までの処理を繰り返す。
一方、波面センサ76で測定された波面が平面波であると判定された場合には、空間光変調器制御部58は、平面波であると判定されたときに空間光変調器24に設定されている変調パターンを、合計収差補正情報T2としてメモリ部60に記憶する。
ここで、被加工物小片78は加工深さに対応した厚さを有しているので、空間光変調器制御部58は、合計収差補正情報T2と合計収差補正情報T1との差分として第3収差補正情報S3を求めることができる。すなわち、第3収差補正情報S3は、次の式(6)により簡略的に示すことができる。
S3=(T2−T1)/2 ・・・(6)
このようにして空間光変調器制御部58は、メモリ部60に記憶した合計収差補正情報T1及び合計収差補正情報T2に基づき、第3収差補正情報S3を求める。そして、空間光変調器制御部58は、加工深さと関連付けて第3収差補正情報S3をメモリ部60に記憶する(ステップS36)。
次に、全ての加工深さに対応する第3収差補正情報S3を取得したか否か判断が行われる(ステップS38)。全ての加工深さに対応する第3収差補正情報S3を取得していない場合には、加工深さを変更して(ステップS40)、変更後の加工深さに対応した被加工物小片78を加工レンズ26と平面ミラー72との間に配置する。そして、全ての加工深さについて第3収差補正情報S3を取得したと判断されるまで、ステップS30からステップS40までの処理を繰り返す。これにより、レーザ加工装置10で設定可能な加工深さ毎に第3収差補正情報S3が取得され、メモリ部60には各加工深さと関連付けて第3収差補正情報S3が記憶される。なお、第3収差補正情報S3は加工深さの変化に伴い変化するので、加工深さの関数として表現することもできる。
そして、全ての加工深さについて第3収差補正情報S3を取得したと判断された場合には、図8に示したフローチャートは終了となる。
以上のようにして収差調整作業が終了した後、レーザ加工装置10の加工時においては、空間光変調器制御部58は、メモリ部60から、第1収差補正情報S1と、レーザ加工装置10で使用される加工レンズ26に対応した第2収差補正情報S2と、加工深さに対応した第3収差補正情報S3とを取得する。そして、空間光変調器制御部58は、取得した各収差補正情報S1、S2、S3をもとに、これらの収差補正情報S1、S2、S3を合成した合成収差補正情報Uを含む変調パターンを生成し、生成した変調パターンを空間光変調器24に呈示させる制御を行う。
ここで、収差補正情報(第1収差補正情報S1、第2収差補正情報S2及び第3収差補正情報S3を含む)の保持方式(メモリ部60に記憶させる形式)としては、空間光変調器24の光変調面における各画素のそれぞれに対応する制御値(位相変化量)を示す2次元情報として保持することが挙げられる。
また、他の保持方式として、例えば収差補正情報(波面データ)をゼルニケ多項式として取得し、ゼルニケ多項式の係数を保持するようにしてもよい。ゼルニケ多項式の係数(ゼルニケ係数)として収差補正情報をもつ場合、第1収差補正情報S1、第2収差補正情報S2、第3収差補正情報S3のそれぞれの係数を単純に足し合わせるだけで、これらの収差補正情報を合成した合成収差補正情報Uを簡単に得ることができる。
例えば、3次の球面収差の係数について、第1収差補正情報S1の係数をZ1とし、第2収差補正情報S2の係数をZ2とし、第3収差補正情報S3の係数をZ3とし、合成収差補正情報Uの係数をZとした場合、以下の式(7)により合成収差補正情報Uの係数Zを求めることができる。
Z=Z1+Z2+Z3 ・・・(7)
なお、ゼルニケ多項式の係数に限らず、別の形の多項式展開の係数であってもかまわない。
また、本実施形態において、空間光変調器24に呈示させる変調パターンは、合成収差補正情報U以外の他の変調パターンを含んでいてもよい。なお、他の変調パターンとしては、例えば、加工レンズ26により集光されるレーザ光Lが複数の位置に集光されるようにレーザ光を変調するためのパターンなどが挙げられる(例えば、特開2016−111315号公報を参照)。
また、本実施形態において、被加工物の内部を収差補正基準位置としてもよい。加工深さは被加工物の内部であることが多く、被加工物のレーザ光入射面から所定の深さに集光するレーザ光Lの集光点の位置を収差補正基準位置とした方が都合のいい状況も考えられる。その場合は、上述した場合と同様の考え方を適用することができる。すなわち、収差補正基準位置とする基準加工深さに対応した第2収差補正情報S2を求め、基準加工深さからの距離(深さ)に対応した第3収差補正情報S3を求めればよい。
また、本実施形態において、レーザ光源22として高出力レーザ光源を用いる場合、レーザ加工装置10の稼働中に熱による熱変形などの影響を受けないようにすることが望まれる。この影響が大きくなると、ウェーハWの内部におけるレーザ光Lの集光点を合わせる位置で発生するレーザ光Lの収差に変化が生じる場合がある。
そこで、本実施形態におけるレーザ加工装置10は、熱変形などの影響を防ぐために、加工動作中にレーザ光Lの収差の変化をリアルタイムで測定する収差変化検出装置を備えていることが好ましい。以下、収差変化検出装置について説明する。
(収差変化検出装置)
図12は、収差変化検出装置を備えたレーザ加工装置の一例を示した概略図である。図12において、図1と共通する要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
図12に示したレーザ加工装置10Aでは、加工動作中にレーザ光Lの収差の変化(波面変化)をリアルタイムで測定するための収差変化検出装置80を備えている。
図12に示すように、収差変化検出装置80は、加工レンズ26の後側(レーザ光Lが入射する側)のレーザ光Lの光路上に配置されたビームスプリッタ(例えばハーフミラー)82と、ビームスプリッタ82で分岐されたレーザ光Lの光路上に配置された波面センサ84とを備えている。
そして、レーザ光源22から加工装置本体20の構成要素(空間光変調器24及びリレー光学系30を含む)を経て加工レンズ26に入射するレーザ光Lの一部をビームスプリッタ82で分岐し、分岐したレーザ光Lの波面を波面センサ84によって測定する。波面センサ84で測定された波面は空間光変調器制御部58に出力される。
空間光変調器制御部58は、波面センサ84で測定された波面に基づいて空間光変調器24の変調パターンを補正する。
ここで、上記波面の測定が行われる際には、空間光変調器制御部58は、メモリ部60に記憶された第1収差補正情報S1に基づく変調パターンを空間光変調器24に設定して、加工レンズ26には平面波が入射するようにする。第1収差補正情報S1に基づく変調パターンで、加工レンズ26には平面波が入射するように調整されているはずなので、この状態で収差があれば、熱変形などの影響を受けていると判断することができる。すなわち、波面センサ84で測定された波面と平面波との乖離が、熱変形などの影響による収差変化に相当する。したがって、空間光変調器制御部58は、この収差変化が打ち消されるように、メモリ部60に記憶された第1収差補正情報S1を補正し、補正後の第1収差補正情報S1に基づいて空間光変調器24を制御する。すなわち、空間光変調器制御部58は、補正後の第1収差補正情報S1と、第2収差補正情報S2と、第3収差補正情報S3とから合成収差補正情報Uを求め、この合成収差補正情報Uを空間光変調器24に呈示させる制御を行う。これにより、レーザ加工装置10の加工動作中に、加工装置本体20に起因する収差変化の影響を受けることなく、安定した加工が可能となる。
なお、収差変化検出装置80は、加工装置本体20の一部として組み込まれていてもよいし、必要に応じて加工装置本体20に着脱可能に構成されていてもよい。
ここで、レーザ加工装置10Aにおいて発生する収差の変化には、加工装置本体20に起因する収差変化だけでなく、加工レンズ26に起因する収差変化も含まれる場合がある。
加工レンズ26に起因する収差変化については、次のようにして推測することができる。すなわち、加工装置本体20が熱の影響を受けると同時に加工レンズ26も同様に熱の影響を受けている。これら2つ(加工装置本体20と加工レンズ26)は完全に独立ではなく、加工装置本体20の収差変化と加工レンズ26の収差変化との間には一定の相関関係がある。そこで、この相関関係を実験的又は経験的に求めてメモリ部60に記憶させておけば、空間光変調器制御部58は、メモリ部60に記憶された相関関係を参照することにより、収差変化検出装置80(波面センサ84)で検出した加工装置本体20の収差変化をもとに加工レンズ26の収差変化を推測することができる。
そして、空間光変調器制御部58は、この推測した加工レンズ26の収差変化をもとに第2収差補正情報S2を補正する。更に空間光変調器制御部58は、補正後の第1収差補正情報S1と、補正後の第2収差補正情報S2と、第3収差補正情報S3とから合成収差補正情報Uを求め、この合成収差補正情報Uを空間光変調器24に呈示させる制御を行う。これにより、加工装置本体20に起因する収差変化の影響だけでなく、加工レンズ26に起因する収差変化の影響も受けることなく、より安定した加工が可能となる。
図13は、収差変化検出装置を備えたレーザ加工装置の他の例を示した構成図である。図13に示したレーザ加工装置10Bは、図12に示した収差変化検出装置80とは構成が異なる収差変化検出装置90を備えている。この収差変化検出装置90は、ビームスプリッタ(例えばハーフミラー)92と、結像レンズ94と、ピンホール形成部材96と、検出器98とを備えている。
ビームスプリッタ92は、加工レンズ26の後側(レーザ光Lが入射する側)のレーザ光Lの光路上に配置され、加工レンズ26に入射するレーザ光Lの一部を分岐する。結像レンズ94は、ビームスプリッタ92で分岐した光を結像する。
ピンホール形成部材96は、結像レンズ94によって結像された光の一部が通過可能なピンホール(孔)96aを有している。
検出器98は、例えばフォトダイオードなどからなり、ピンホール96aを通過した光に対応した光量を検出する。そして、検出器98は、検出した光の光量に応じた電気信号を空間光変調器制御部58へ出力する。
ここで、収差のない平面波が結像レンズ94に入射する場合に検出器98の出力が最大になる。空間光変調器制御部58は、検出器98の出力を取得し、検出器98の出力を最大にするように空間光変調器24を調整する。例えば、ゼルニケ多項式の形で空間光変調器24の変調パターンを生成し、多項式の係数を変数として、検出器98の出力が最大となるように最適化手法を用いる。最適化手法としては、例えばDLS法(damped least squares method)などを用いることができる。DLS法については公知であるので、ここでは説明を省略する。
図13に示したレーザ加工装置10Bにおいても、図12に示したレーザ加工装置10Aと同様に、レーザ加工装置10Bの加工動作中に、加工装置本体20に起因する収差変化の影響を受けることなく、安定した加工が可能となる。また、収差変化検出装置90で検出した加工装置本体20の収差変化をもとに加工レンズ26の収差変化を推測するようにしてもよい。この場合、加工装置本体20に起因する収差変化の影響だけでなく、加工レンズ26に起因する収差変化の影響も受けることなく、より安定した加工が可能となる。
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、空間光変調器24と加工レンズ26のレンズ瞳26aとが光学的に共役関係にあるため、空間光変調器24で形成した波面形状が加工レンズ26のレンズ瞳26aに投影されることになり、加工レンズ26の焦点面(加工点)で所望の光分布を得ることができる。これにより、収差の影響を抑えて、切断の起点となるレーザ加工領域を高精度かつ効率よく形成することができる。
また、本実施形態によれば、レーザ加工装置10の製造段階で行われる調整作業において、加工装置本体20が有する収差を補正するための第1収差補正情報S1と、加工レンズ26が有する収差を補正するための第2収差補正情報S2と、レーザ加工領域の加工深さに起因する収差を補正するための第3収差補正情報S3とをそれぞれ求め、これらの収差補正情報S1、S2、S3はメモリ部60に記憶される。なお、本実施形態における収差調整作業は、レーザ加工装置10の製造段階に限らず、レーザ加工装置10の製造後(出荷後)に実施するようにしてもよい。
そして、レーザ加工装置10の加工時においては、空間光変調器制御部58は、メモリ部60から第1収差補正情報S1、第2収差補正情報S2、及び第3収差補正情報S3を取得し、取得した各収差補正情報S1、S2、S3をもとに、これらを合成した合成収差補正情報Uを含む変調パターンを生成し、生成した変調パターンを空間光変調器24に呈示させる制御を行う。このような制御を行うことにより、加工レンズ26が交換された場合や加工深さを変化させた場合でも、それらの影響を受けることなく、ウェーハWの内部におけるレーザ光Lの集光点を合わせる位置で発生するレーザ光Lの収差を抑制することができる。
なお、本実施形態では、第1収差補正情報S1、第2収差補正情報S2、及び第3収差補正情報S3を取得し、これらの収差補正情報S1、S2、S3に基づいて空間光変調器24を制御するように構成したが、本発明はこの構成に限定されず、少なくとも第1収差補正情報S1及び第2収差補正情報S2を取得し、これらの収差補正情報S1、S2に基づいて空間光変調器24を制御するように構成されていればよい。この場合、加工レンズ26の交換による影響を受けることなく、レーザLの収差を抑制することが可能となる。
また、本実施形態のレーザ加工装置10は、加工動作中にレーザ光Lの収差の変化をリアルタイムで測定する収差変化検出装置80、90を備える態様が好ましい(図12及び図13参照)。これにより、レーザ加工装置10の加工動作中に、加工装置本体20に起因する収差変化の影響を受けることなく、安定した加工が可能となる。
なお、本実施形態では、空間光変調器24として、反射型の空間光変調器(LCOS−SLM)を用いたが、これに限定されず、MEMS−SLM又はDMD(デフォーマブルミラーデバイス)等であってもよい。また、空間光変調器24は、反射型に限定されず、
透過型であってもよい。更に、空間光変調器24としては、液晶セルタイプ又はLCDタイプ等が挙げられる。
また、本実施形態では、ステージ12がX方向及びθ方向に移動可能に構成されると共に、加工装置本体20がY方向及びZ方向に移動可能に構成されるが、ステージ12と加工装置本体20とをX方向、Y方向、Z方向、及びθ方向に相対的に移動することができるものであれば他の構成であってもよい。例えば、ステージ12がX方向、Y方向、及びθ方向に移動可能に構成され、加工装置本体20がZ方向に移動可能に構成されていてもよい。
(応用例)
上記の実施形態では、レーザ加工装置について説明したが、上記の実施形態に係る光学系配置は、レーザ加工領域から伸びる亀裂の検出に用いることも可能である。
次に、上記の実施形態に係る光学系配置を亀裂検出装置に適用した例について、図14〜図18を参照して説明する。図14は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置を示した図である。
図14に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置100は、被加工物Wに対して検出光L1を照射し、被加工物Wからの反射光L2を検出することで、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さの測定を行う装置である。なお、亀裂検出装置100は、上記の実施形態に係るレーザ加工装置10と組み合わせて構成することも可能である。また、本実施形態においては、亀裂Kの亀裂深さとは、被加工物Wの裏面から亀裂Kの下端位置もしくは上端位置までの距離を示すものとして説明するが、もちろん、これに限定されるものではなく、被加工物Wの表面(検出光照射面)からの距離としてもよい。
図14に示すように、亀裂検出装置100は、光源部102と、照明光学系104と、ダイクロイックミラー106と、ハーフミラー108と、ダイクロイックミラー110と、対物レンズ112と、検出光学系114と、光検出器116と、アライメント機構118と、制御部150とを備えている。なお、被加工物Wは、図示しないステージに載置される。
光源部102は、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出するための検出光L1を出射するものである。光源部102は、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと共役な位置となるように配置されている。ここで、被加工物Wがシリコンウェーハの場合、検出光L1には、波長1100nm以長の赤外光を用いるのが望ましい。光源部102は、対物レンズ112のレンズ光軸と同軸である主光軸Pに対して平行であって主光軸Pから偏心した光源光軸QA及びQBをそれぞれ有する光源102A及び102Bを備えている。すなわち、光源102は、主光軸Pから偏心した位置から主光軸Pに沿って検出光L1を出射する。なお、光源102は、制御部150と接続されており、制御部150により光源102の出射制御が行われる。
なお、本実施形態では、2つの光源102A及び102Bを用いて偏射照明を行うようにしたが、本発明はこれに限定されない、例えば、1つの光源と、その光源の開口の一部を遮光する手段を設けることにより、偏射照明を行うことも可能である。
照明光学系104は、一対のリレーレンズ130及び132を含んでいる。一対のリレーレンズ130及び132は非テレセントリックなアフォーカル光学系を構成する。
ダイクロイックミラー106は、主光軸Pを90度折り曲げる。すなわち、ダイクロイックミラー106は、光源102からの検出光L1を直角に反射してハーフミラー108及びダイクロイックミラー110を経由して対物レンズ112に導く。なお、ダイクロイックミラー106の代わりに、全反射ミラーを配置してもよい。
ハーフミラー108は、照明光学系104とダイクロイックミラー110との間に配置されており、入射光の一部を透過し一部を反射する。すなわち、ハーフミラー108は、光源102から照明光学系104を経由して入射する検出光L1の一部を反射し、ダイクロイックミラー110を経由して検出光L1を集光レンズ102に導く。一方、ハーフミラー108は、被加工物Wからの検出光L1の反射光L2の一部を透過し、透過した反射光L2を検出光学系114に導く。
ダイクロイックミラー110は、ハーフミラー108を経由して入射する検出光L1を直角に反射して対物レンズ112に導く。一方、ダイクロイックミラー110は、被加工物Wからの反射光L2を直角に反射してハーフミラー108に導く。なお、ダイクロイックミラー110の代わりに、全反射ミラーを配置してもよい。
対物レンズ112は、被加工物Wに対向する位置に配置されており、光源102から照明光学系104、ダイクロイックミラー106、ハーフミラー108及びダイクロイックミラー110を介して入射した検出光L1を被加工物Wの内部に集光する。なお、対物レンズ112のレンズ光軸は主光軸Pと同軸となっている。対物レンズ112により被加工物Wの内部に検出光L1が集光されると、被加工物Wからの反射光L2は、対物レンズ112及びダイクロイックミラー110を経由してハーフミラー108を透過し、検出光学系114に導かれる。
検出光学系114は、ハーフミラー108で反射した反射光L2を光検出器116に導くためのものであり、1対のリレーレンズ134及び136を含んでいる。一対のリレーレンズ134及び136は両側テレセントリックなアフォーカル光学系を構成する。
光検出器116は、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの有無に応じて変化する反射光L2を検出する。光検出器116は、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと共役な位置となるように配置されている。光検出器116は、2つフォトディテクタ116A及び116Bを含んでいる。フォトディテクタ116A及び116Bは、それぞれが受光した光量に応じた検出信号をそれぞれ制御部150に出力する。なお、光検出器116としては、2つのフォトディテクタではなく、複数に分割された受光面を有する分割型光検出器(例えば、2分割フォトディテクタ、4分割フォトディテクタ等)を用いてもよい。また、光検出器116の代わりに、赤外線カメラで撮像し、画像処理を行ってもよい。
制御部150は、不図示のフォーカス調整機構によりフォーカスレンズ群を移動させることにより、対物レンズ112の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に調整することが可能となっている。なお、本明細書において、対物レンズ112の集光点とは、対物レンズ112により集光された検出光L1の集光点の位置をいう。また、対物レンズ112の集光点の深さ位置(Z方向位置)は、被加工物Wの裏面からの距離で示すものとする。
アライメント機構118は、アライメント手段の一例であり、対物レンズ112と被加工物Wとの水平方向(XY方向)における相対的な位置合わせ(アライメント)を行うものである。アライメント機構118は、対物レンズ112をレンズ光軸に垂直な水平方向に微小移動させるレンズ駆動部(不図示)を有している。レンズ駆動部は制御部150に接続されており、制御部150によりレンズ駆動部を制御することで、対物レンズ112と被加工物Wとの水平方向における相対的な位置合わせが行われる。なお、アライメント機構118に代えて、被加工物Wを載置するステージ(不図示)を対物レンズ112に対して相対的に移動させるようにしてもよい。
制御部150は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力回路部等からなり、亀裂検出装置100の各部の動作を制御する。具体的には、制御部150は、フォーカス調整機構28により対物レンズ112の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に変化させながら、光検出器116から出力された検出信号を順次取得し、取得した検出信号に基づいて被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂上端位置又は亀裂下端位置)を検出する処理(亀裂検出処理)を行う。制御部150は、亀裂検出手段の一例である。
ここで、本実施形態における亀裂検出処理の原理について説明する。なお、ここでは、亀裂Kの亀裂深さとして亀裂下端位置を検出する場合を一例に説明する。
図15及び図16は、それぞれ亀裂検出装置100の照明光学系104及び検出光学系114を含む要部構成の光学的な配置を示した図である。なお、図15及び図16では、図面を簡略化するため、ダイクロイックミラー106、110及びハーフミラー108の図示を省略している。
図15に示すように、光源102からの検出光L1は、主光軸Pに対して偏心した位置から主光軸Pに沿って出射される。そのため、検出光L1は、対物レンズ112のレンズ瞳112Aの一方側の領域(すなわち、主光軸Pと同軸であるレンズ光軸からずれた位置)に入射する。したがって、対物レンズ112を通過した検出光L1の照射方向は対物レンズ112の像面(集光面)に対して斜め方向となる。すなわち、被加工物Wに対して検出光L1が斜め方向に照射される偏射照明が行われる。なお、対物レンズ112の像面は被加工物Wの表面(検出光照射面)に対して平行となるように配置される。
図16に示すように、検出光L1は、被加工物Wの内部の亀裂K又は裏面で反射される。そして、被加工物Wからの反射光L2は、対物レンズ112及び検出光学系114を経由して光検出器に到達する。
図15に示すように、照明光学系104は、第1リレーレンズ130及び第2リレーレンズ132を含んでおり、アフォーカル光学系を構成する。図15におけるF11A及びF11Bは第1リレーレンズ130の焦点位置であり、F12A及びF12Bは第2リレーレンズ132の焦点位置である。ここで、リレーレンズ130及び132は、それぞれ本発明の第1レンズ及び第2レンズに相当する。
図15に示すように、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと第2リレーレンズ132との間の距離g12が第2リレーレンズ132の焦点距離f12よりも長くなっている。そして、光源部102(光源102A及び102B)のレーザ出射開口102a及び102bは、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと共役関係となる位置に配置される。この場合、光源部102(光源102A及び102B)のレーザ出射開口102a及び102bと第1リレーレンズ130との間の距離g11は第1リレーレンズ130の焦点距離f11よりも短くなる。
距離g12と第2リレーレンズ132の焦点距離f12との差分をΔx12(=|g12−f12|)、距離g11と第1リレーレンズ130の焦点距離f11との差分をΔx11(=|g11−f11|)とすると、Δx11とΔx12の関係は下記の式(8)により示される。
Δx11=(f11/f12)2×Δx12 ・・・(8)
照明光学系104の倍率をm1(=f12/f11)とすると、式(8)は式(9)のように表現することができる。
Δx12=m1 2×Δx11 ・・・(9)
図15に示した光学系配置構成では、レーザ出射開口102a及び102bと対物レンズ112のレンズ瞳112Aとが光学的に共役関係となるように各構成要素(光学系)が配置されている。したがって、レーザ出射開口102a又は102bから出力される平面波は、レンズ瞳112Aにおいても平面波として到達するため、照明光学系104は4F光学系の性質を有する。
図15に示した光学系配置構成によれば、第2リレーレンズ132として、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと第2リレーレンズ132との間の距離g12よりも焦点距離が短いレンズを用いることができ、装置の小型化に寄与する。
なお、図14及び図15に示した光学系配置構成では、リレーレンズ130及び132は必須ではない。例えば、図14において、光源部102とハーフミラー108との間の距離を短く設定できる場合には、(レーザーの広がらない範囲であれば)光源102A及び102Bを光軸に対して偏心した位置に配置して、リレーレンズ130及び132を省略することも可能である。
図16に示すように、検出光学系114は、第1リレーレンズ136及び第2リレーレンズ134を含んでおり、アフォーカル光学系を構成する。図16におけるF21A及びF21Bは第1リレーレンズ136の焦点位置であり、F22A及びF22Bは第2リレーレンズ134の焦点位置である。ここで、第1リレーレンズ136及び第2リレーレンズ134は、それぞれ本発明の第1レンズ及び第2レンズに相当する。
図16に示すように、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと第2リレーレンズ134との間の距離g22が第2リレーレンズ134の焦点距離f22よりも長くなっている。そして、光検出器(フォトディテクタ116A及び116B)の受光面116a及び116bは、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと共役関係となる位置に配置される。この場合、光検出器(フォトディテクタ116A及び116B)の受光面116a及び116bと第1リレーレンズ136との間の距離g21は第1リレーレンズ130の焦点距離f21よりも短くなる。
距離g22と第2リレーレンズ134の焦点距離f22との差分をΔx22(=|g22−f22|)、距離g22と第1リレーレンズ136の焦点距離f21との差分をΔx21(=|g21−f21|)とすると、Δx21とΔx22の関係は下記の式(10)により示される。
Δx21=(f21/f22)2×Δx22 ・・・(10)
検出光学系114の倍率をm2(=f21/f22)とすると、式(10)は式(11)のように表現することができる。
Δx21=m2 2×Δx22 ・・・(11)
図16に示した光学系配置構成では、受光面116a及び116bと対物レンズ112のレンズ瞳112Aとが光学的に共役関係となるように各構成要素(光学系)が配置されている。したがって、対物レンズ112のレンズ瞳112Aにおける平面波は、受光面116a及び116bに平面波として到達するため、検出光学系114は4F光学系の性質を有する。
検出光学系114の全長L(対物レンズ112のレンズ瞳112Aとフォトディテクタ116A及び116Bの受光面116a及び116bとの間の距離)は、下記の式(12)により表される。
L=2f22(1−m2)−Δx21(1−m2 2) ・・・(12)
例えば、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと第2リレーレンズ134との間の距離g22=100mm、第2リレーレンズ134の焦点距離f22=60mm、倍率m2=−1とすると、L=240mmとなる。なお、倍率m2については、検出光学系114の前後で倒立像となるため負の値をとる。
比較例として、対物レンズ112のレンズ瞳112Aの位置を第2リレーレンズ134の対物レンズ112側の焦点位置F22Aと一致させた場合には、光検出器は、第1リレーレンズ136の光検出器側の焦点位置F21Bに配置されることになる。一例として、距離g22=f22=f21=100mmとすると、比較例における検出光学系の全長は400mmとなる。
したがって、図16に示した光学系配置構成によれば、第2リレーレンズ132として、対物レンズ112のレンズ瞳112Aと第2リレーレンズ132との間の距離g22よりも焦点距離が短いレンズを用いることができ、装置の小型化に寄与する。
なお、ダイクロイックミラー106及びハーフミラー108の配置を変更することにより、第2リレーレンズ134を照明光学系104と共用にして第2リレーレンズ132を省略したり、又は検出光学系114と照明光学系104とを共用にすることも可能である。
図17A〜図17Cは、被加工物Wに対して検出光L1の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。図17Aは対物レンズ112の集光点に亀裂Kが存在する場合、図17Bは対物レンズ112の集光点に亀裂Kが存在しない場合、図17Cは対物レンズ112の集光点と亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)とが一致する場合をそれぞれ示している。図18は、被加工物Wからの反射光L2がレンズ瞳112Aに到達する経路を説明するための図である。なお、ここでは、検出光L1は、レンズ瞳112Aの一方側(図4の右側)の第1領域G1を通過して、被加工物Wに対して偏射照明が行われる場合について説明する。
図17Aに示すように、対物レンズ112の集光点に亀裂Kが存在する場合には、検出光L1は亀裂Kで全反射して、その反射光L2は主光軸Pに対して検出光L1の光路と同じ側の経路をたどって、レンズ瞳112Aの検出光L1と同じ側の領域に到達する成分となる。すなわち、図18に示すように、光源102からの検出光L1が対物レンズ112を介して被加工物Wに照射されるときの検出光L1の経路をR1としたとき、被加工物Wの内部の亀裂Kで全反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸Pに対して同じ側(図18の右側)の経路R2をたどってレンズ瞳112Aの第1領域G1を通過する。この場合、図4Aに示すように、光検出器116の受光面116a、116bのうち一方の受光面116a側に反射光L2が受光し、受光面116aから出力される検出信号のレベルが高くなる。
図17Bに示すように、対物レンズ112の集光点に亀裂Kが存在しない場合には、検出光L1は被加工物Wの裏面で反射し、その反射光L2はレンズ瞳112Aの検出光L1と反対側の領域に到達する成分となる。すなわち、図18に示すように、被加工物Wの裏面で反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸Pに対して反対側(図18の左側)の経路R3をたどってレンズ瞳112Aの第2領域G2を通過する。この場合、図4Bに示すように、光検出器116の受光面116a、116bのうち他方の受光面116b側に反射光が受光し、受光面116bから出力される検出信号のレベルが高くなる。
図17Cに示すように、対物レンズ112の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合には、検出光L1は、亀裂Kで全反射してレンズ瞳112Aの検出光L1と同じ側の領域に到達する反射光成分L2aと、亀裂Kで全反射されずに被加工物Wの裏面で反射してレンズ瞳112Aの検出光L1と反対側の領域に到達する非反射光成分L2bとに分割される。すなわち、図18に示すように、反射光L2のうち、被加工物Wの内部の亀裂Kで全反射した反射光成分L2aは、検出光L1の経路R1とは主光軸Pに対して同じ側(図18の右側)の経路R2をたどってレンズ瞳112Aの第1領域G1を通過するとともに、亀裂Kで全反射されずに被加工物Wの裏面で反射した非反射光成分L2bは、検出光L1の経路R1とは主光軸Pに対して反対側(図18の左側)の経路R3をたどってレンズ瞳112Aの第2領域G2を通過する。この場合、図4Cに示すように、光検出器116の受光面116a、116bに反射光L2の各成分L2a、L2bがそれぞれ受光し、受光面116a、116bから出力される検出信号のレベルが略等しくなる。
このように光検出器116の受光面116a、116bで受光される光量は、対物レンズ112の集光点に亀裂Kが存在するか否かによって変化する。本実施形態では、このような性質を利用して、被加工物Wの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
具体的には、光検出器116の受光面116a、116bから出力される検出信号の出力をそれぞれD1、D2としたとき、対物レンズ112の集光点と亀裂Kの亀裂深さとの関係を示す評価値Sは、次式で表すことができる。
S=(D1−D2)/(D1+D2) ・・・(13)
式(1)において、S=0の条件を満たすとき、すなわち、光検出器116の受光面116a、116bで受光される光量が一致するとき、対物レンズ112の集光点と亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とが一致した状態を示す。
したがって、制御部150は、フォーカス調整機構28を制御して対物レンズ112の集光点を被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に変化させながら、光検出器116の各受光面116a、116bから出力される検出信号を順次取得し、取得した検出信号に基づいて式(1)で示される評価値Sを算出し、この評価値Sを評価することによって亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
なお、亀裂Kで反射されない方の検出光のみ、又は亀裂Kで反射される方の検出光のみを用いて亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)を検出することも可能である。その場合、例えば、亀裂Kがない場合の検出光に比べ、検出光量が1/2となった位置を亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とする。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。