以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
<A.概要>
図1〜図3を参照して、劣化推定装置200による劣化ランクの推定処理の概要について説明する。図1は、劣化推定装置200の機能構成の一例を示す図である。
劣化推定装置200は、保全対象の設備(以下、「保全設備」ともいう。)の劣化ランクを推定する。当該保全設備は、たとえば、電力会社での電気を送電する送変電設備や工場での物を生産する生産設備などの各種電力機器である。
保全設備については、予め決められた点検項目に従って定期点検が行われる。作業員は、当該定期点検結果に基づいて保全対象の劣化ランクを判断する。このとき、熟練作業員は、保全設備についての定期点検結果だけでなく、保全設備の機種や型式などの属性データを総合的に考慮して、保全設備の劣化ランクを推定する。そこで、本実施の形態に従う劣化推定装置200は、熟練作業員のノウハウを機械化するために、保全設備についての点検結果と、保全設備の属性データとの両方に基づいて、保全設備の劣化ランクを推定する。これにより、熟練作業員が行っている劣化診断方法を機械的に実現することができる。その結果、劣化推定装置200は、保全対象の設備の劣化ランクを従来の劣化推定装置よりも高精度に推定することが可能になる。
このような推定処理を実現するための機能構成として、劣化推定装置200の制御装置201は、点検結果取得部250と、属性データ取得部252と、推定部260とを含む。
点検結果取得部250は、保全設備の点検結果230Aを取得する。点検結果230Aは、予め決められた各点検項目についての測定値を示すデータである。
点検結果230Aの取得先は、任意である。ある局面において、点検結果230Aは、劣化推定装置200に格納されている点検結果データベース230から取得される。他の局面において、点検結果230Aは、外部サーバーに格納されている点検結果データベースから取得される。他の局面において、点検結果230Aは、劣化推定装置200に接続される入力デバイスに手動で入力され、点検結果取得部250は、劣化推定装置200の入力デバイスから点検結果230Aを取得する。
図2は、取得された点検結果230Aの一例を示す図である。図2に示されるように、典型的には、1つの保全設備の識別情報(たとえば、設備名や設備IDなど)に対して、複数の点検項目が対応付けられる。また、各点検項目には、当該点検項目の種別を示す点検種別と、点検実施日と、測定値と、測定値の単位とが対応付けている。
再び図1を参照して、属性データ取得部252は、保全設備の属性データ232Aを取得する。属性データ232Aは、保全設備の特徴を表わす保全設備固有の設備情報である。一例として、属性データ232Aは、保全設備の機種、保全設備の型式、保全設備の型名、保全設備の製造年度、保全設備の設置年月日・保全設備の稼働開始年月日、保全設備の電圧階級、保全設備の容量などを含む。
属性データ232Aの取得先は、任意である。ある局面において、属性データ232Aは、劣化推定装置200に格納されている属性データベース232から取得される。他の局面において、属性データ232Aは、外部サーバーに格納されている属性データベースから取得される。他の局面において、属性データ232Aは、劣化推定装置200に接続される入力デバイスに手動で入力され、属性データ取得部252は、劣化推定装置200の入力デバイスから属性データ232Aを取得する。
図3は、属性データ232Aの一例を示す図である。図3の例では、属性データ232Aは、保全設備の機種を示す識別情報(たとえば、機器IDや機器名)と、保全設備の型式と、保全設備の仕様と、保全設備の製造番号とを含む。
再び図1を参照して、推定部260は、保全設備の点検結果230Aと保全設備の属性データ232Aとを入力として、学習用データセットを用いた学習処理により予め得られている推定用パラメータ236に基づいて、保全設備の劣化ランクを推定する。当該学習用データセットは、他の保全設備の点検結果と、当該他の保全設備の属性データとに対して、当該他の保全設備の劣化ランクをラベル付けした学習用データを複数含む。推定用パラメータ236の学習処理の詳細については後述する。
以上のように、推定部260は、保全設備についての点検結果と、保全設備の属性データとの両方に基づいて、保全設備の劣化ランクを推定する。このように、点検結果と属性データとの両方が劣化ランクの判断指標として用いられることで、劣化推定装置200は、保全対象の設備の劣化ランクを従来の劣化推定装置よりも高精度に推定することが可能になる。
<B.劣化推定システム10>
図4を参照して、劣化推定システム10について説明する。図4は、劣化推定システム10の装置構成の一例を示す図である。
図4に示されるように、劣化推定システム10は、学習装置100と、劣化推定装置200とを含む。
学習装置100は、ノート型のパソコン、デスクトップ型のパソコン、タブレット端末、または、その他の情報処理端末である。学習装置100は、予め定められた学習処理により上述の推定用パラメータ236(図1参照)を生成する。
劣化推定装置200は、ノート型のパソコン、デスクトップ型のパソコン、タブレット端末、または、その他の情報処理端末である。劣化推定装置200は、学習装置100によって生成された推定用パラメータ236を用いて、保全設備の劣化ランクを推定する。
このように、劣化推定システム10で実行される処理は、学習装置100による推定用パラメータ236の学習工程と、劣化推定装置200による劣化ランクの推定工程とに分けられる。
以下では、図4を参照して、学習工程から推定工程までの処理の流れについて概略的に説明する。
ステップS1において、学習装置100は、種々の保全設備についての点検結果を情報通信端末から受信する。図4の例では、学習装置100は、情報通信端末20A〜20Cから点検結果21A〜21Cをそれぞれ収集している。点検結果21A〜21Cのデータ構造は、上述の点検結果230A(図2参照)と同じまたは略同じであるので、その説明については繰り返さない。
学習装置100は、収集した情報通信端末20A〜20Cを後述の点検結果データベース130(図5参照)に格納する。なお、点検結果は、必ずしも情報通信端末から受信する必要はなく、学習装置100に対して手動で入力されてもよい。
その後、学習装置100は、収集した点検結果21A〜21Cに基づいて、学習用データセット136を生成する。より具体的には、学習装置100は、収集した点検結果21A〜21Cの各々に対して劣化ランクの入力を受け付ける。また、収集した点検結果21A〜21Cの各々には、点検対象の保全設備の識別情報が対応付けられており、学習装置100は、当該識別情報をキーとして、後述の属性データベース132(図5参照)から対応の属性データを取得し、点検結果21A〜21Cの各々に属性データを対応付ける。これにより、点検結果と属性データとの特徴量に対して劣化ランクがラベル付けされた複数の学習用データが学習用データセット136として生成される。ここでいう特徴量とは、劣化ランクと相関のある指標のことをいう。
ステップS2において、学習装置100は、学習用データセット136に含まれる複数の特徴量と、学習用データセット136に含まれる複数の劣化ランクとの間の相関関係を学習し、当該相関関係を推定用パラメータ236として出力する。推定用パラメータ236の学習手法には、種々の学習アルゴリズムが採用され得る。一例として、学習アルゴリズムとして、マハラノビスタグチメソッド(MT法)、ディープラーニング、またはサポートベクターマシンなどが採用される。推定用パラメータ236の学習手法の詳細については後述する。
ステップS3において、学習装置100は、ステップS2で生成した推定用パラメータ236を劣化推定装置200に送信する。劣化推定装置200は、学習装置100から受信した推定用パラメータ236を劣化推定装置200の記憶装置に保存する。
ステップS4において、劣化推定装置200は、劣化ランクの推定対象の保全設備について、点検結果と属性データとを入力として、推定用パラメータ236に基づいて、当該保全設備の劣化ランクを推定する。推定された劣化ランクは、たとえば、劣化推定装置200の表示デバイスなどに表示される。
<C.ハードウェア構成>
図5および図6を参照して、学習装置100および劣化推定装置200のハードウェア構成について順に説明する。
(C1.学習装置100のハードウェア構成)
まず、図5を参照して、学習装置100のハードウェア構成について順に説明する。図5は、学習装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
学習装置100は、制御装置101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、表示インターフェイス105と、入力インターフェイス107と、記憶装置120とを含む。これらのコンポーネントは、バス110に接続される。
制御装置101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
制御装置101は、学習用データ生成プログラム122や学習プログラム124などの各種プログラムを実行することで学習装置100の動作を制御する。制御装置101は、各種プログラムの実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置120またはROM102からRAM103に実行対象のプログラムを読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納する。
通信インターフェイス104には、LAN(Local Area Network)やアンテナなどが接続される。学習装置100は、通信インターフェイス104を介して、外部機器との間でデータをやり取りする。当該外部機器は、たとえば、上述の情報通信端末20A〜20C(図4参照)、上述の劣化推定装置200(図4参照)、およびサーバーなどを含む。
表示インターフェイス105には、表示デバイス106が接続される。表示インターフェイス105は、制御装置101などからの指令に従って、表示デバイス106に対して、画像を表示するための画像信号を送出する。表示デバイス106は、たとえば、液晶表示デバイス、有機EL(Electro Luminescence)表示デバイス、またはその他の表示機器である。なお、表示デバイス106は、学習装置100と一体的に構成されてもよいし、学習装置100とは別に構成されてもよい。
入力インターフェイス107には、入力デバイス108が接続される。入力デバイス108は、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、またはユーザの操作を受け付けることが可能なその他の装置である。なお、入力デバイス108は、学習装置100と一体的に構成されてもよいし、学習装置100とは別に構成されてもよい。
記憶装置120は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。記憶装置120は、たとえば、学習用データ生成プログラム122と、学習プログラム124と、点検結果データベース130と、属性データベース132と、学習用データセット136と、数値化ルール138と、推定用パラメータ236とを格納する。点検結果データベース130は、各種の保全設備について点検結果の履歴情報を格納する。属性データベース132は、各種の保全設備について属性データを格納する。数値化ルール138の詳細については後述する。学習用データ生成プログラム122と、学習プログラム124と、点検結果データベース130と、属性データベース132と、学習用データセット136と、後述の数値化ルール138と、推定用パラメータ236との格納場所は、記憶装置120に限定されず、制御装置101の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリなど)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
なお、学習用データ生成プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、学習用データ生成プログラム122による学習処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う学習用データ生成プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、学習用データ生成プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが学習用データ生成プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で学習装置100が構成されてもよい。
同様に、学習プログラム124は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、学習プログラム124による学習処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う学習プログラム124の趣旨を逸脱するものではない。さらに、学習プログラム124によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが学習プログラム124の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で学習装置100が構成されてもよい。
(C2.劣化推定装置200のハードウェア構成)
次に、図6を参照して、劣化推定装置200のハードウェア構成について順に説明する。図6は、劣化推定装置200のハードウェア構成の一例を示す図である。
劣化推定装置200は、制御装置201と、ROM202と、RAM203と、通信インターフェイス204と、表示インターフェイス205と、入力インターフェイス207と、記憶装置220とを含む。これらのコンポーネントは、バス210に接続される。
制御装置201は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのGPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
制御装置201は、劣化ランクの劣化推定プログラム222などの各種プログラムを実行することで劣化推定装置200の動作を制御する。制御装置201は、各種プログラムの実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置220またはROM202からRAM203に実行対象のプログラムを読み出す。RAM203は、ワーキングメモリとして機能し、プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納する。
通信インターフェイス204には、LAN(Local Area Network)やアンテナなどが接続される。劣化推定装置200は、通信インターフェイス204を介して、外部機器との間でデータをやり取りする。当該外部機器は、たとえば、上述の学習装置100やサーバーなどを含む。
表示インターフェイス205には、表示デバイス206が接続される。表示インターフェイス205は、制御装置201などからの指令に従って、表示デバイス206に対して、画像を表示するための画像信号を送出する。表示デバイス206は、たとえば、液晶表示デバイス、有機EL表示デバイス、またはその他の表示機器である。なお、表示デバイス206は、劣化推定装置200と一体的に構成されてもよいし、劣化推定装置200とは別に構成されてもよい。
入力インターフェイス207には、入力デバイス208が接続される。入力デバイス208は、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、またはユーザの操作を受け付けることが可能なその他の装置である。なお、入力デバイス208は、劣化推定装置200と一体的に構成されてもよいし、劣化推定装置200とは別に構成されてもよい。
記憶装置220は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。記憶装置220は、たとえば、劣化推定プログラム222と、点検結果データベース230と、属性データベース232と、学習装置100によって生成された推定用パラメータ236と、故障履歴238とを格納する。点検結果データベース230は、各種の保全設備について点検結果の履歴情報を格納する。属性データベース232は、各種の保全設備について属性データを格納する。故障履歴238の詳細については後述する。点検結果データベース230、属性データベース232、推定用パラメータ236、および故障履歴238の格納場所は、記憶装置220に限定されず、制御装置201の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリなど)、ROM202、RAM203、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
なお、劣化推定プログラム222は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、劣化推定プログラム222による学習処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う劣化推定プログラム222の趣旨を逸脱するものではない。さらに、劣化推定プログラム222によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが劣化推定プログラム222の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で劣化推定装置200が構成されてもよい。
<D.学習装置100の機能構成>
図7〜図12を参照して、学習装置100の機能について説明する。図7は、学習装置100の機能構成の一例を示す図である。
学習装置100は、主要なハードウェア構成として、制御装置101と、記憶装置120とを含む。制御装置101は、機能構成として、学習用データを生成する学習用データ生成部152と、学習処理を実行する学習部154とを含む。
以下では、学習用データ生成部152および学習部154の機能構成について順に説明する。
(D1.学習用データ生成部152)
まず、図8〜図10を参照して、学習用データ生成部152の機能について説明する。図8は、学習用データの生成に用いられる点検結果表示画面30を示す図である。
制御装置101は、上述の学習用データ生成プログラム122が実行されたことに基づいて、学習用データ生成部152として機能し、学習装置100の表示デバイス106に点検結果表示画面30を表示する。点検結果表示画面30に対する操作は、たとえば、上述の入力デバイス108(図5参照)によって受け付けられる。
点検結果表示画面30は、設備選択欄31と、マップ表示欄34と、属性データ表示欄36と、点検結果表示欄40と、劣化ランク入力欄42とを有する。
設備選択欄31は、保全設備を指定するための入力を受け付ける。一例として、設備選択欄31は、保全設備の場所を指定するための入力と、保全設備の種別を指定するための入力とを受け付ける。設備選択欄31に入力された情報に基づいて、保全設備が一意に特定される。
マップ表示欄34は、設備選択欄31で指定された保全設備の設置場所をマップ上に表示する。
属性データ表示欄36は、設備選択欄31で指定された保全設備についての属性データを一覧で表示する。属性データ表示欄36に表示される属性データは、設備選択欄31で指定された保全設備の識別情報(たとえば、保全設備名や保全設備のID)をキーとして、属性データベース132(図5参照)から取得される。
点検結果表示欄40は、設備選択欄31で指定された保全設備についての点検結果を表示する。点検結果表示欄40に表示される点検結果は、設備選択欄31で指定された設備の識別情報(たとえば、保全設備名や保全設備のID)をキーとして、点検結果データベース130(図5参照)から取得される。これにより、点検結果データベース130に含まれている一の点検結果が点検結果表示欄40に表示される。
点検結果表示欄40に表示される点検結果は、複数の点検項目と、各点検項目に対する測定値とを含む。点検結果表示欄40は、表示されている点検項目の内から表示対象の点検項目を絞るためのフィルタリング条件を受け付けるように構成される。一例として、表示対象のフィルタリングは、点検種別や点検日などに基づいて行われる。
点検種別に基づくフィルタリングは、たとえば、プルダウンメニュー41Aを用いて実現される。より具体的には、プルダウンメニュー41Aが押下されたことに基づいて、点検種別の選択欄が一覧で表示される。一覧表示されている点検種別の選択欄の中から1つ以上の点検種別が選択されたことに基づいて、選択された点検種別に対応する点検結果のみが、点検結果表示欄40に表示される。換言すれば、選択されなかった点検種別に対応する点検結果は、点検結果表示欄40に表示されない。
点検日に基づくフィルタリングは、たとえば、数値入力欄41Bによって実現される。数値入力欄41Bは、開始日の入力と終了日の入力とを受け付ける。当該数値入力欄41Bにおいて、開始日および終了日が入力されたことに基づいて、当該開始日から当該終了日までの間に含まれる点検日に対応する点検項目のみが、点検結果表示欄40に表示される。換言すれば、当該開始日から当該終了日までの間に含まれない点検日に対応する点検項目は、点検結果表示欄40に表示されない。
劣化ランク入力欄42は、設備選択欄31で指定された保全設備についての劣化ランクの入力を受け付ける。一例として、劣化ランク入力欄42は、プルダウンメニュー43と、登録ボタン44とを有する。作業者がプルダウンメニュー43を押下すると、劣化ランクの選択肢が一覧で表示される。
劣化ランクは、たとえば、数値で示される。一例として、「劣化ランク1」は、保全設備が正常であることを示し、今後も継続して使用可能なことを示す。「劣化ランク2」は、保全設備の劣化の進行がある程度進んでおり、保全設備の内部点検が必要であることを示す。「劣化ランク3」は、保全設備の劣化の進行が著しく、保全設備の修繕が必要であることを示す。
作業者は、表示された劣化ランクの選択肢から一の劣化ランクを選択する。劣化ランクの選択操作は、たとえば、上述の入力デバイス108(図5参照)を用いて実現される。
作業者が登録ボタン44を押下したことに基づいて、学習用データ生成部152は、点検結果表示欄40に表示されている点検結果と、属性データ表示欄36に表示されている属性データと、劣化ランク入力欄42に入力された劣化ランクとを対応付けて学習用データを生成する。生成された学習用データは、学習用データセット136(図5参照)に追加される。このように、保全設備の点検結果と保全設備の属性データと保全設備の劣化ランクとを紐付けるユーザインターフェイスが提供されることで、学習用データが容易に収集される。
図9は、生成された学習用データセット136の一例を示す図である。図9に示されるように、学習用データセット136は、学習用データの識別IDと、保全設備が属する設備グループと、保全設備についての特徴量(たとえば、点検結果および属性データ)と、保全設備の劣化ランクとを対応付けて格納する。
各保全設備が属する設備グループは、たとえば、属性データの組み合わせに基づいて決定される。一例として、学習用データ生成部152は、属性データが類似している保全設備ごとにグルーピングする。より具体的には、属性データの組み合わせごとに設備グループを規定しているグルーピングルールが予め準備されており、学習用データ生成部152は、当該グルーピングルールに基づいて、各保全設備が属する設備グループを決定する。当該グルーピングルールに規定される各設備グループは、たとえば、機種(たとえば、遮断器、変圧器など)、電圧階級、製造年度などの属性データの組み合わせに基づいて定義される。
学習用データセット136に含まれる点検結果および属性データは、それぞれ、数値列で表わされる。一例として、ID「1」の学習用データには、点検結果および属性データを数値列で表わした特徴量ベクトル「X1」が対応付けられている。
なお、ガス圧や分解ガス濃度などに係る点検項目は、測定値として数値化され得るが、油漏れや発錆などの程度を表わす点検項目は、数値化され得ない。このような数値化され得ない点検項目については、油漏れや発錆などの程度や場所に応じた階級で数値化が行われる。一例として、数値化できない点検項目については、予め定められた数値化ルールに従って数値化が行われる。
図10は、数値化ルール138の一例を示す図である。数値化ルール138には、各点検項目について階級が対応付けられている。学習用データ生成部152は、数値化できない各点検項目について階級レベルを特定する。特定された階級は、測定値として学習用データセット136に書き込まれる。
また、数値化できない属性データについても同様に、予め定められた数値化ルールに基づいた数値化が行われる。
(D2.学習部154)
次に、図11および図12を参照して、学習部154による学習機能について説明する。図11は、学習部154による学習機能の一例を説明するための図である。
制御装置101は、上述の学習プログラム124を実行することで学習部154として機能し、学習用データセット136(図9参照)に対して予め定められた学習処理を実行する。
学習部154によって実行される学習手法には、種々の学習アルゴリズムが採用され得る。一例として、学習アルゴリズムとして、マハラノビスタグチメソッド、ディープラーニング、またはサポートベクターマシンなどが採用される。以下では、マハラノビスタグチメソッドについて説明を行うが、採用される学習手法は、これに限定されない。
学習部154は、学習用データセット136に規定される設備グループごと、かつ、学習用データセット136に規定される劣化ランクごとに学習処理を実行し、各特徴量の平均ベクトルと、各特徴量の分散共分散行列とを学習結果として出力する。
図11には、学習用データセット136の一部である学習用データセット136Aが示されている。学習用データセット136Aは、学習用データセット136に含まれる学習データの内、設備グループ「A」に属し、かつ、劣化ランク「1」である学習データの集合である。
図11の例では、学習用データセット136Aにおいて、n個の保全設備の各々について、m個の特徴量の数値列が対応付けられており、同種の特徴量の数値列「x1j」〜「xnj」が特徴量ベクトル「Xj」として示されている。図11に示される「j」は、特徴量の番号(種別)を示す。図11に示される「i」は、保全設備の番号(種別)を示す。すなわち、「xij」は、「i」番目の保全設備についての「j」番目の特徴量の値を表わす。
学習部154は、特徴量ベクトル「X1」〜「Xm」に基づいて、平均ベクトル「μA1」を算出するとともに、分散共分散行列「ΣA1」を算出する。図11には、算出された平均ベクトル「μA1」および分散共分散行列「ΣA1」が推定用パラメータ236Aとして示されている。平均ベクトル「μA1」は、特徴量ベクトル「X1」〜「Xm」のそれぞれの平均値「μ1」〜「μm」からなる。分散共分散行列「ΣA1」は、特徴量ベクトル「X1」〜「Xm」から算出される分散共分散群である。より具体的には、分散共分散行列「ΣA1」に含まれる「σij」は、特徴量ベクトル「Xi」と、特徴量ベクトル「Xj」との共分散を表わす。分散共分散行列「ΣA1」に含まれる「σii」は、特徴量ベクトル「Xi」の分散を表わす。
このような平均ベクトル「μA1」および分散共分散行列「ΣA1」の算出処理が、設備グループごと、かつ劣化ランクごとに行われる。その結果、図12に示される推定用パラメータ236が生成される。図12は、推定用パラメータ236のデータ構造の一例を示す図である。
図12に示されるように、推定用パラメータ236において、設備グループおよび劣化ランクの組み合わせに対応付けて、平均ベクトルおよび分散共分散行列が対応付けられている。当該平均ベクトルおよび当該分散共分散行列は、学習用データセット136に含まれる特徴量群についての分布を表わす分布指標である。当該推定用パラメータ236は、劣化推定装置200に送信される。
なお、点検項目や属性データは、保全設備ごとに異なる可能性がある。この場合、学習用データセット136に含まれる特徴量の数を各保全設備間で揃えた上で学習処理を実行する。すなわち、学習部154は、保全設備間で同種の特徴量のみを用いて推定用パラメータ236を生成する。
<E.劣化ランクの推定処理>
引き続き図12を参照しつつ、図13を参照して、上述の推定部260による劣化ランクの推定処理について説明する。
上述したように、図12に示される推定用パラメータ236には、設備グループおよび劣化ランクの組み合わせに対応付けて、平均ベクトルおよび分散共分散行列などの分布指標が対応付けられている。推定部260は、劣化ランク別の当該分布指標に基づいて、推定対象の保全設備の点検結果と推定対象の保全設備の属性データとが属する劣化ランクを判別し、当該判別された劣化ランクを推定結果として出力する。
より具体的には、まず、推定部260は、入力された属性データの組み合わせに基づいて、推定対象の保全設備が属する設備グループを特定する。次に、推定部260は、特定した設備グループに対応する分布指標を推定用パラメータ236から取得する。その結果、設備グループに対応する分布指標が劣化ランク別に得られる。推定部260は、劣化ランク別の分布指標に基づいて、推定対象の保全設備の点検結果と、推定対象の保全設備の属性データとの特徴量が属する劣化ランクを判別し、当該判別された劣化ランクを推定結果として出力する。
典型的には、推定部260は、下記の式(1)に基づいて、劣化ランク別にマハラノビス距離を算出する。
式(1)に示される「MDZ」は、劣化ランク「Z」についてのマハラノビス距離を表わす。「Xin」は、推定対象の保全設備についての点検結果および属性データの数値列(すなわち、特徴量ベクトル)を表わす。「T」は、転置行列を意味する。「μ」は、推定用パラメータ236に規定されている平均ベクトルを表わす。「Σ」は、推定用パラメータ236に規定されている分散共分散行列を表わす。「Σ−1」は、分散共分散行列「Σ」の逆行列を表わす。
図13を参照して、マハラノビス距離の算出処理の具体例について説明する。図13は、マハラノビス距離「MD1」〜「MD3」を示す図である。説明の便宜のために、図13の例では、特徴量の次元数が「xk1」,「xk2」の2次元で表わされているが、実際には、特徴量の次元数は、学習時に用いられた特徴量の次元数と同数である。すなわち、特徴量ベクトル「Xin」は、以下の式(2)で示される。式(2)に示される「xkj」は、保全設備「k」の「j」番目の特徴量を示す。
マハラノビス距離「MD1」は、劣化ランク「1」に対応する平均ベクトル「μA1」と、特徴量ベクトル「Xin」との間の距離を分散共分散行列「ΣA1」で正規化したものに相当する。マハラノビス距離「MD2」は、劣化ランク「2」に対応する平均ベクトル「μA2」と、特徴量ベクトル「Xin」との間の距離を分散共分散行列「ΣA2」で正規化したものに相当する。マハラノビス距離「MD3」は、劣化ランク「3」に対応する平均ベクトル「μA3」と、特徴量ベクトル「Xin」との間の距離を分散共分散行列「ΣA3」で正規化したものに相当する。
推定部260は、算出されたマハラノビス距離の内から、最短のマハラノビス距離を特定する。図13の例では、マハラノビス距離「MD1」〜「MD3」の内から最短のマハラノビス距離「MD2」が特定される。そして、推定部260は、特定したマハラノビス距離「MD2」に対応する劣化ランク「2」を推定結果として出力する。このように、推定部260は、劣化ランク別の分布指標に基づいて、保全対象の設備の点検結果と、保全対象の設備の属性データとが属する劣化ランクを判別し、当該判別された劣化ランクを推定結果として出力する。
好ましくは、最短のマハラノビス距離が予め定められた閾値よりも大きい場合は、推定部260は、推定された劣化ランクの信頼性が低いものとみなし、エラーを出力してもよい。この場合、劣化ランクは、作業員によって手動で入力される。
なお、上述では、推定対象の保全設備が属する設備グループを特定した上で、劣化ランクを推定する例について説明を行ったが、設備グループは、必ずしも特定される必要はない。
<F.劣化ランクの出力画面>
図14を参照して、推定された劣化ランクの出力画面の一例について説明する。図14は、推定された劣化ランクの出力画面の一例である点検結果表示画面30Aを示す図である。
劣化推定装置200は、上述の劣化推定プログラム222(図6参照)が実行されたことに基づいて、劣化推定装置200の表示デバイス206に点検結果表示画面30Aを表示する。点検結果表示画面30Aに対する操作は、たとえば、上述の入力デバイス208(図6参照)によって受け付けられる。
基本的には、図14に示される点検結果表示画面30Aは、図8に示される点検結果表示画面30と同じである。図14に示される点検結果表示画面30Aは、劣化ランク表示欄42Aを有する点で、図8に示される点検結果表示画面30と異なる。点検結果表示画面30Aのその他の点については、点検結果表示画面30と同じであるので、それらの説明については繰り返さない。
設備選択欄31において、推定対象の保全設備が指定されたことに基づいて、劣化推定装置200は、指定された保全設備に対応する点検結果を上述の点検結果データベース230(図6参照)から取得するとともに、指定された保全設備に対応する属性データを上述の属性データベース232(図6参照)から取得する。その後、劣化推定装置200は、取得した点検結果と属性データとに基づいて、上述の推定処理を実行し、当該保全設備の劣化ランクを推定する。推定された劣化ランクは、劣化ランク表示欄42Aの結果表示欄45に表示される。
推定された劣化ランクは、手動で上書きすることができる。より具体的には、作業者がプルダウンメニュー43を押下すると、作業者は、表示された劣化ランクの選択肢から一の劣化ランクを選択する。その後、作業者が登録ボタン44を押下したことに基づいて、推定された劣化ランクが作業者によって選択された劣化ランクで上書きされる。上書き結果は、劣化ランクの評価結果データベース(図示しない)に書き込まれる。
<G.学習処理の変形例>
図15を参照して、学習部154による学習処理の変形例について説明する。図15は、変形例に従う学習処理を概略的に示す図である。
上述の図8で説明したように、保全設備の劣化ランクは、点検結果表示画面30に表示された点検結果や属性データを総合的に考慮することによって作業者によって入力される。このとき、作業者は、プルダウンメニュー41Aや数値入力欄41Bを用いて表示する点検結果を絞り、劣化ランクの付与に直接的に関係しない余分な情報を省いた状態で劣化ランクを判断する。すなわち、劣化ランクを入力した際に表示されている点検項目は、劣化ランクを判断する指標としては重要と言える。
そこで、本変形例に従う学習装置100は、入力デバイス108が劣化ランクの入力を受け付けた際に表示デバイス106に表示されている点検項目と測定値とを推定用パラメータ236の学習に用いる。これにより、作業者が劣化ランクの判断時に用いた点検結果のみが学習処理に用いられるので、劣化ランクの推定精度がさらに改善される。さらに、学習処理時や劣化ランクの推定処理時における計算量が削減される。
図15を参照して、本変形例に従う学習処理の具体例について説明する。図15に示されるように、ある保全設備について劣化ランクが入力された際、点検項目「1」〜「5」の内、フィルタリング条件「1」によって、点検項目「1」,「3」,「5」が表示されていたとする。この場合、学習部154は、点検項目「1」,「3」,「5」に対応する特徴量ベクトル「X1」,「X3」,「X5」を学習処理に用い、推定用パラメータを生成する。すなわち、学習部154は、点検項目「2」,「4」に対応する特徴量ベクトル「X2」,「X4」については学習処理に用いない。
同様に、他の保全設備について劣化ランクが入力された際、点検項目「1」〜「5」の内、フィルタリング条件「2」によって、点検項目「2」〜「4」が表示されていたとする。この場合、学習部154は、点検項目「2」〜「4」に対応する特徴量ベクトル「X2」〜「X4」を学習処理に用い、推定用パラメータを生成する。すなわち、学習部154は、点検項目「1」,「5」に対応する特徴量ベクトル「X1」,「X5」については学習処理に用いない。
その後、学習部154は、各条件で生成された推定用パラメータの内、評価結果が最良となる推定用パラメータを最終的な学習結果として出力する。より具体的には、学習部154は、学習用データセット136に含まれる各学習用データについて、生成された推定用パラメータごとに、劣化ランクの推定処理を行う。これらの学習用データには、正解値としての劣化ランクがラベル付されているため、推定結果と正解値とを比較することで、推定用パラメータの精度が評価され得る。学習部154は、正解率が最も高くなった推定用パラメータ236を学習結果として出力する。
なお、上述では、劣化ランクを入力した時点で表示されていた点検項目が学習処理に用いられる例について説明を行ったが、学習処理に用いる点検項目の絞り方は、これに限定されない。たとえば、学習装置100は、予め定められた時間の間、表示対象の点検項目を監視し、表示対象の点検項目の組み合わせを順次保存する。その後、学習装置100は、保存された点検項目の各組み合わせについて上述の学習処理を行う。
<H.劣化ランクの推定処理の変形例1>
図16および図17を参照して、劣化ランクの推定処理の変形例について説明する。図16は、変形例に従う劣化推定装置200Aの機能構成の一例を示す図である。
変形例に従う劣化推定装置200Aは、機能構成として、点検結果取得部250と、属性データ取得部252と、推定部260と、故障履歴取得部262と、補正部264とを含む。劣化推定装置200Aは、故障履歴取得部262および補正部264さらに備える点で、上述の劣化推定装置200とは異なる。故障履歴取得部262および補正部264以外の機能構成については上述の通りであるので、以下ではそれらの説明については繰り返さない。
故障履歴取得部262は、推定対象の保全設備について故障履歴238を取得し、当該故障履歴238を補正部264に出力する。点検結果230Aの取得先は、任意である。ある局面において、故障履歴238は、劣化推定装置200内の記憶装置220から取得される。他の局面において、故障履歴238は、外部サーバーから取得される。
図17は、故障履歴238の一例を表わす図である。図17に示されるように、故障履歴238において、保全設備の識別情報(たとえば、設備名や設備ID)と、故障日時と、故障種別とが対応付けられている。
再び図16を参照して、補正部264は、取得した故障履歴238が予め定められた補正条件を満たす場合、推定部260によって推定された劣化ランクを、当該劣化ランクよりも劣化が進んでいることを示す劣化ランクに補正する。一例として、推定結果としての劣化ランクは、補正処理により、劣化が進んでいる方向に1段階上げられる。
当該予め定められた補正条件は、たとえば、下記の条件(1)〜(3)の少なくとも1つが成り立った場合に満たされる。
(1)推定対象の保全設備についての故障がa回以上発生している
(2)推定対象の保全設備についての直近P年での故障がb回以上発生している
(3)推定対象の保全設備についての直近Q年での同種の故障がc回以上発生している
但し、条件(1)〜(3)に示されるa,b,c,A,Bは、予め定められた正の正数であり、c<b<aおよびQ<Pの関係を有する。
条件(1)〜(3)の少なくとも1つが成り立った場合には、劣化が進んでいる可能性が高い。そのため、このような条件が満たされる保全設備については、劣化ランクが上げられる。これにより、劣化が進んでいる保全設備をより確実に抽出することができる。
なお、上述では、推定された劣化ランクの補正用に故障履歴238が用いられる例について説明を行ったが、故障履歴238の利用方法は、これに限定されない。たとえば、故障履歴238は、劣化ランクの推定処理に用いられてもよい。この場合、推定部260は、保全設備の点検結果230Aと保全設備の属性データ232Aと故障履歴238の入力を受けて、学習用データセットを用いた学習処理により予め得られている推定用パラメータ236に基づいて、保全設備の劣化ランクを推定する。当該学習用データセットは、他の保全設備の点検結果と、当該他の保全設備の属性データと、当該他の保全設備の故障履歴と特徴量に対して、当該他の保全設備の劣化ランクをラベル付けした学習用データを複数含む。これらの特徴量が用いられて学習処理が行われることで、保全設備の劣化ランクがより高精度に推定される。
<I.学習用データの生成フロー>
図18を参照して、学習装置100による学習用データの生成処理のフローについて説明する。図18は、学習用データの生成処理の流れを示すフローチャートである。
図18に示される処理は、学習装置100の制御装置101が上述の学習用データ生成プログラム122(図5参照)を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
ステップS110において、制御装置101は、学習用データ生成プログラム122が実行されたか否かを判断する。制御装置101は、学習用データ生成プログラム122が実行されたと判断した場合(ステップS110においてYES)、制御をステップS112に切り替える。そうでない場合には(ステップS110においてNO)、制御装置101は、ステップS110の処理を再び実行する。
ステップS112において、制御装置101は、上述の点検結果表示画面30(図8参照)を学習装置100の表示デバイス106に表示する。
ステップS120において、制御装置101は、一の保全設備が指定されたか否かを判断する。一例として、保全設備を指定するための入力は、点検結果表示画面30の設備選択欄31(図8参照)において受け付けられる。制御装置101は、一の保全設備が指定されたと判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御装置101は、制御をステップS130に切り替える。
ステップS122において、制御装置101は、ステップS120で指定された保全設備に対応する点検結果を上述の点検結果データベース130(図6参照)から取得する。取得された点検結果は、点検結果表示画面30に表示される。
ステップS124において、制御装置101は、ステップS120で指定された保全設備に対応する属性データを上述の属性データベース132(図6参照)から取得する。取得された属性データは、点検結果表示画面30に表示される。
ステップS130において、制御装置101は、劣化ランクの登録指示を受け付けたか否かを判断する。一例として、劣化ランクの登録指示は、たとえば、劣化ランク入力欄(図8参照)の登録ボタン44が押下されたことに基づいて発せられる。制御装置101は、劣化ランクの登録指示を受け付けたと判断した場合(ステップS130においてYES)、制御をステップS132に切り替える。そうでない場合には(ステップS130においてNO)、制御装置101は、制御をステップS140に切り替える。
ステップS132において、制御装置101は、点検結果表示画面30に表示されている点検結果と、点検結果表示画面30に表示されている属性データと、点検結果表示画面30において入力された劣化ランクとを対応付けて学習用データを生成し、当該学習用データを学習用データセット136に追加する。
ステップS140において、制御装置101は、学習用データ生成プログラム122の終了指示を受け付けたか否かを判断する。当該終了指示は、たとえば、点検結果表示画面30を閉じる操作を受け付けたことに基づいて発せられる。制御装置101は、学習用データ生成プログラム122の終了指示を受け付けたと判断した場合(ステップS140においてYES)、図18に示される処理を終了する。そうでない場合には(ステップS140においてNO)、制御装置101は、制御をステップS120に戻す。
<J.学習フロー>
図19を参照して、学習装置100による学習処理のフローについて説明する。図19は、学習装置100による学習処理の流れを示すフローチャートである。
図19に示される処理は、学習装置100の制御装置101が上述の学習プログラム124(図5参照)を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
ステップS150において、制御装置101は、学習プログラム124が実行されたか否かを判断する。制御装置101は、学習プログラム124が実行されたと判断した場合(ステップS150においてYES)、制御をステップS152に切り替える。そうでない場合には(ステップS150においてNO)、制御装置101は、ステップS150の処理を再び実行する。
ステップS152において、制御装置101は、学習装置100の記憶装置120から学習用データセット136を取得する。
ステップS154において、制御装置101は、上述の学習部154(図7参照)として機能し、ステップS152で取得した学習用データセット136に対して予め定められた学習処理を実行し、劣化ランクの推定処理に用いられる推定用パラメータ236を生成する。学習処理については上述の「D2.学習部154」などで説明した通りであるので、その説明については繰り返さない。
ステップS156において、制御装置101は、ステップS154で生成した推定用パラメータ236を劣化推定装置200に送信する。
<K.学習処理のフローチャート>
図20を参照して、劣化推定装置200による劣化ランクの推定処理のフローについて説明する。図20は、劣化ランクの推定処理の流れを示すフローチャートである。
図20に示される処理は、劣化推定装置200の制御装置201が上述の劣化推定プログラム222(図6参照)を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
ステップS210において、制御装置201は、劣化推定プログラム222が実行されたか否かを判断する。制御装置201は、劣化推定プログラム222が実行されたと判断した場合(ステップS210においてYES)、制御をステップS212に切り替える。そうでない場合には(ステップS210においてNO)、制御装置201は、ステップS210の処理を再び実行する。
ステップS212において、制御装置201は、上述の点検結果表示画面30A(図14参照)を劣化推定装置200の表示デバイス206に表示する。
ステップS220において、制御装置201は、一の保全設備が指定されたか否かを判断する。一例として、保全設備を指定するための入力は、点検結果表示画面30Aの設備選択欄31(図14参照)において受け付けられる。制御装置201は、一の保全設備が指定されたと判断した場合(ステップS220においてYES)、制御をステップS222に切り替える。そうでない場合には(ステップS220においてNO)、制御装置201は、制御をステップS240に切り替える。
ステップS222において、制御装置201は、上述の点検結果取得部250(図1参照)として機能し、ステップS220で指定された保全設備に対応する点検結果を上述の点検結果データベース230(図6参照)から取得する。取得した点検結果は、点検結果表示画面30Aに表示される。
ステップS224において、制御装置201は、上述の属性データ取得部252(図1参照)として機能し、制御装置201は、ステップS220で指定された保全設備に対応する属性データを上述の属性データベース232(図6参照)から取得する。取得された属性データは、点検結果表示画面30Aに表示される。
ステップS226において、制御装置201は、上述の推定部260(図1参照)として機能し、ステップS222で取得した点検結果と属性データとの特徴量を入力として、学習装置100で生成された推定用パラメータ236に基づいて、ステップS220で指定された保全設備の劣化ランクを推定する。劣化ランクの推定方法については図13で説明した通りであるので、その説明については繰り返さない。
ステップS228において、制御装置201は、上述の故障履歴取得部262(図16参照)として機能し、制御装置201は、ステップS220で指定された保全設備に対応する故障履歴238(図17参照)を劣化推定装置200の記憶装置220(図6参照)から取得する。取得された故障履歴は、点検結果表示画面30Aに表示される。
ステップS230において、制御装置201は、上述の補正部264(図16参照)として機能し、ステップS228で取得した故障履歴が予め定められた補正条件を満たすか否かを判断する。当該補正条件については上述の通りであるので、その説明については繰り返さない。制御装置201は、ステップS228で取得した故障履歴が予め定められた補正条件を満たすと判断した場合(ステップS230においてYES)、制御をステップS232に切り替える。そうでない場合には(ステップS230においてNO)、制御装置201は、制御をステップS240に切り替える。
ステップS232において、制御装置201は、上述の補正部264(図16参照)として機能し、ステップS226で推定された劣化ランクを、当該劣化ランクよりも劣化が進んでいることを示す劣化ランクに補正する。
ステップS234において、制御装置201は、ステップS232の補正処理が実行されていない場合、ステップS226で推定された劣化ランクを点検結果表示画面30Aに表示する。一方で、制御装置201は、ステップS232の補正処理が実行されている場合、補正後の劣化ランクを点検結果表示画面30Aに表示する。
ステップS240において、制御装置201は、劣化推定プログラム222の終了指示を受け付けたか否かを判断する。当該終了指示は、たとえば、点検結果表示画面30Aを閉じる操作を受け付けたことに基づいて発せられる。制御装置201は、劣化推定プログラム222の終了指示を受け付けたと判断した場合(ステップS240においてYES)、図20に示される処理を終了する。そうでない場合には(ステップS240においてNO)、制御装置201は、制御をステップS220に戻す。
<L.まとめ>
以上のようにして、劣化推定装置200は、保全設備の点検結果と保全設備の属性データとを入力として、学習用データセットを用いた学習処理により予め得られている推定用パラメータ236に基づいて、保全設備の劣化ランクを推定する。このように、点検結果と属性データとの両方が劣化ランクの判断指標として用いられることで、劣化推定装置200は、保全対象の設備の劣化ランクを従来の劣化推定装置よりも高精度に推定することが可能になる。
また、保全費用、保全員、保全機器などの限られた企業資源で保全設備の保守保全を行うためには、保全設備の劣化度合いの差を考慮して保全処置の優先度を決める必要がある。劣化推定装置200によって高精度に推定された劣化ランクは、保全処置の優先度を決める上で有効な指標になり得る。結果として、保全費用や人件費などを削減することができる。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。