第1実施形態に係る車両データ収集システムを、図1から図5を参照して説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る車両データ収集システムは、車載器1及びデータ分析サーバ2を含む。図1では、車載器1は説明の便宜上一つのみ図示されているが、車載器1は多数の車両に夫々車載されており、複数の車載器1及びデータ分析サーバ2が、無線通信3による一つのネットワークに収容されている。
図1において、車載器1は、車両のエンジンのイグニションのオンオフ或いは定期稼働に係る部位101、車両データを収集するデータ収集部100、及び該収集された車両データを送信するためのデータ送信部108を備えて構成されている。これらのうちデータ収集部100は、車両データを収集する際の要件書を取得するデータ収集要件書取得部102、該取得された要件書に応じて車両データの収集条件を変更するデータ収集条件変更部104、及び該変更を経て最新の収集条件でシーン検出を行い、検出されたシーン或いは車両状況に係る車両データを取得するシーン検出データ取得部106を備えて構成されている。
データ分析サーバ2は、データ収集の要件書データを車両別に格納する収集要件データ部109、制御部200、分析部202、及び車載器1側のデータ送信部108から送信された車両データを無線通信3を介して受信するデータ受信部204を備えて構成されている。分析部202は、データ受信部204で受信された車両データの全てを分析する、より具体的には車両データにおける車両別且つ車両状況別の傾向或いはデータ群相互間の相対的な多少を分析する、全収集データに対するデータ分析部110を含んで構成されている。制御部200は、定期若しくは不定期に又は車両データが受信される都度等に車両毎にデータ収集要件書を更新するデータ収集要件書更新部103a、車両毎にカテゴリ毎或いは項目毎のポイントを算出する部位103b、及び分析部で分析された全ての収集データに対するデータ重み付けを行う部位103cを備えて構成されている。制御部200及び分析部202等の構成及び機能について、以下に各種概念図、フローチャート等(即ち図2〜図5)を参照しながら更に詳述する。
図2に示すように先ず、データ収集をすべき車両状況或いはシーンとして、図2の上半分に例示された如く、車両において所定基準に照らして加減速が急である“急な加減速シーン”、車両においてTDが検知された“TD検知シーン”、車両に備えられた衝突予知機能において衝突予知が行われた“衝突予知シーン”、車両において所定基準に照らしてレーン横変位が大きい“レーン横変位大シーン”、車両に備えられた閉眼警告機能において閉眼が警告された“閉眼警告シーン”などが設定され、これらのシーン別に車両データが、矢印1Aの如く、車載器1側からデータ分析サーバ2側へ無線通信3を介して渡される。
本実施形態に係る「車両データ」は、例えば、急な加減速シーン、TD検知シーンなどの発生を直接示す車両データ(例えば、急な増減を示した加速度データや、特定シーンが検知された旨のデータ等)の他に、各シーン発生の際に或いは各シーン発生に相前後して各車両にて取得、検知或いは発生等される各種CAN(Control Area Network)データ、速度や加速度或いは走行距離センサによる各種走行データ、各種位置データ、各種時刻データ、車載カメラによる低画質や高画質の各種映像データ、或いは各種センサデータなどの、特定シーン発生が発生した車両に係る車両データを適宜に含んでよい。このような車両データは更に、当該車両の識別情報やドライバの識別情報を含んでもよい。言い換えれば、各種のシーン或いは車両状況に関連付けられる可能性のある、或いはディープマイニング可能なビッグデータの一部を成し得るような当該車両に係る任意の車両データでもよい。更に、いずれの場合も後で詳述するように、各シーンにおける車両データを構成するデータとして、 “データパターンID”で種類や単位等が規定されるデータもシーン別に送受信されることになる。
すると、データ分析サーバ2側では、分析部202において、図2の下半分に例示された如く、傾向分析用の幾つかの切り口(言い換えれば「カテゴリ」)501で、収集された車両データの傾向或いは分布が分析される。例えば、切り口501は、車両データのうち車両状況或いはシーンの発生の有無を検知或いは特定するデータ、車両識別データ等に基づく、車両別や車両状況別の“シーン検出率”であってもよいし、車両データのうち時刻データ等に基づく、車両別や車両状況別の“時間帯”であってもよいし、或いは車両データのうち位置データ等に基づく、車両別や車両状況別の“エリア”であってもよい。
具体的には、例えば図2の下半分の左寄りに表示された如き「シーン検出率」のグラフは、ある車両データに係るパラメータの値を横軸にとり該横軸上で分割或いは分類し、分割された領域内のデータ量の積分値(即ち、特定の車両状況或いは特定シーンに属する車両データのデータ収集量)を取得することで作成したものである。例えば、特定シーンの場合なら、シーン別に分類すればよい。この「シーン検出率」グラフについては、特定シーン発生の際の、あるパラメータの値が正規分布を取る際、両端に係る車両データを高得点とする(即ち、該両端に対して高いポイント“3”を割り振ったり、中央に対して低いポイント“1”を割り振ったりする)。
例えば図2の下半分の中央に表示された如き「時間帯」のグラフは、24時間などの時間軸上における所定時間毎の、ある車両データに係るパラメータに係るデータ量の合算値、言い換えれば、特定の車両状況或いは特定シーンの時間帯別の発生頻度を取得することで作成したものである。この「時間帯」のグラフについては、特定シーンの発生頻度を時系列で並べた際に、頻度が少ない時間帯に発生した車両データを高得点とする(即ち、該時間帯に対して高いポイント“3”を割り振ったり、次に頻度が少ない時間帯に対して相応に高いポイント“2”を割り振ったりする)。
例えば図2の下半分の右寄りに表示された如き「エリア」のグラフは、予め分割されたエリア内で発生した車両データを取得して、或いは既知のクラスタリング等で各発生した車両データを分類して、作成したものである。この「エリア」のグラフについては、発生エリアごとに並べた際に、発生頻度が低いエリアで発生した車両データを高得点とする(即ち、該エリアに対して高いポイント“3”を割り振ったり、発生頻度が高いエリアに対して低いポイント“1”を割り振ったりする)。
以上のようにデータ分析サーバ2側では、制御部200を構成するデータ重み付けを行う部位103cに、図2の下端(及び図3の上端)にある矢印2Aで示された如く分析結果が渡されて、そこで車両毎のポイント算出が実行されることになる。
本実施形態では収集された車両データの傾向の分析結果に応じて、基本的には、収集される車両データの重複を減らし、各収集シーンで万遍なくサンプル(即ち車両データ)を集められるように、レアなシーンであればある程、より高いポイントを割り振ることを前提としている。但し、例外的に、特定のシーンの車両データを集中的に大量に収集したい要請がある場合には、発生頻度による重み付けを調整するなどして、該要請に応じて重み付けロジックをデータ分析サーバ2側で適宜更新することも前提としている。
図3において、その上半分に「車両毎のデータ取得ポイント」を表すテーブル502として例示されているように、車両毎に、幾つかの切り口或いはカテゴリで傾向分析の分析結果を受けて、重み付けポイントが算出され、更に車両毎にそれらの合計が算出される。
テーブル502において、具体的には、車両A、車両B、車両C、…の各々の別に、且つ、夫々の車両についてデータ収集シーンとして、加減速シーン、TD検知シーン、衝突予知シーン、…の別に、シーン検出率、時間帯、エリア、…という切り口或いはカテゴリのポイントの合計により、データ重み付を行う部位103cにより各データに対する重み付けがなされ、ポイントを算出する部位103bによりポイントが算出され、更に車両毎にそれらの合計が算出される。
ここに「ポイント」は、各データの収集要件及びそれらの組み合わせによって上記重み付けしたデータがどの車両からのものであるかをトレースし、車両毎のデータ取得効率或いはデータ収集効率を、ポイントとして定量化或いは数値化したものである。言い換えれば、傾向分析の対象となる幾つかの切り口或いはカテゴリの別に、より積極的にデータ収集するべき又はデータ収集することが好ましい若しくは望まれる理想的なデータ収集量に対する実際に収集されたデータ収集量の未達成の度合いを定量的に或いは数値化して示すように規定されている。
このようなポイントの割り振り方からして本例では、複数のデータ群の相互間でポイントが高ければ高い程、データ収集量が相対的に少ない旨を示すものである。即ち、本実施形態では、テーブル502における合計ポイント(図3の上半分参照)の高さは、リアルタイム的に現時点で又は当面の間若しくは固定的に、一の車両の一の収集シーンに関して、より優先的に或いは積極的にデータ収集を行うべき度合い或いは程度を定量的に或いは数値化して示すものである。なお、ポイントの割り振り方を逆にし、ポイントが低ければ低い程、データ収集量が相対的に少ない旨(即ち、ポイントが低い程、優先的にデータ収集するべき旨)を示すようにすることも可能である。
以上のように、本実施形態では、ポイントの高さがデータ収集効率の高さを示しており、要件書は、全体の中で或いは他の車両と比べて当該車両のポイントが高いシーンや当該車両の中で他のシーンに比べてポイントが高いシーンにおける車両データが優先的にデータ収集されるように、更新或いはアップデートされる。これにより、シーン発生の際或いはシーン発生に相前後して取得された車両データが、データパターンIDで規定されるデータを含む形式或いは単位で、優先的にデータ収集されることになる。
例えば、テーブル502において、車両Aの加減速シーンに対して算出された合計“14”なるポイントは、相対的に大きい値であり、これは、当該車両データのデータ収集量が相対的に少なくて当該車両データのデータ収集が優先的に行われるべき状況にあることを示すポイントとなる。他方、テーブル502において、車両AのTD検知シーンに対して算出された合計“3”なるポイントは、相対的に小さい値であり、これは、当該車両データのデータ収集量が相対的に多くて当該車両データのデータ収集が優先的に行われないべき(即ち、他のデータ収集が優先的に行われるべき)状況にあることを示すポイントとなる。
但し、このように算出されるポイントは、あくまで相対的なものであり、データ収集の対象となる他の車両や他の車両状況に対して算出されたポイントによっては、合計“14”なるポイントであっても相対的に小さい値とされる場合には、優先的にデータ収集が行われるべきとの要件書の作成に繋がるとは限らない。同様に、合計“3”なるポイントであっても相対的に大きい値とされる場合には、優先的にデータ収集が行われないべきとの要件書の作成に繋がるとは限らない。
以上のように算出されたポイントは、矢印3Aの如くデータ収集要件書更新部103aに渡されて、当該ポイントに基づいて、図3の下半分に、車両毎の収集要件書を表すテーブル503として例示されている如き要件書を構成する項目が更新される。具体的には、車両Aに対する収集要件書を表すテーブル503A、車両Bに対する収集要件書を表すテーブル503B、…の如く、車両毎の要件書が作成される。ここでの更新前の各要件書は、デフォールトとして設定されたもの又は従前に更新されたものである。なお、テーブル502における個々の収集シーンを識別するものとして、テーブル502におけるシーン条件及びシーンIDが要件書を構成する項目或いは要素とされている。
例えば、車両Aに関して言えば、データ収集が十分でない、他のシーン条件或いは他の車両と比較してデータ収集量が相対的に少ないと分析された「加減速」なるシーン条件に対しては、そのデータ収集が優先的に行われるように、取得がオン(On)とされ、送信もオン(On)とされ、アップロードタイミングも随時(言い換えれば、一時保持することのなく即時にアップロードされるもの)とされている。例えば、車両A或いはそのドライバの場合には、運転がマイルドで、加減速の幅が小さいことから、優先的にデータ取得がオンとされたものなどと考えらえる。これは、運転が荒い車両或いはドライバよりも、運転がマイルドな車両A或いはそのドライバが急な加減速をする場面程、危険な場面に遭遇したと判断できるので、そのように危険な場面のデータ収集を優先させる趣旨となる。また、加減速シーンに対して取得をオンとしつつ、他の一又は複数のシーンに対する取得をオフにすることで、収集が望ましい当該加減速シーンの車両データを優先的に収集できる。
加えて、「加減速」なるシーン条件に対して、データパターンID“1”が付与されている。ここに「データパターンID」は、シーン毎にカメラ画像やドライバ関連データの有無など如何なるデータを収集するかも予めパターン化し、ある程度指定可能であることから、シーン条件に依存して予め決められたデータパターンを示すIDである。データパターンIDは、取得のオンオフや送信のオンオフとは異なり、取得ポイントによって変更されることはない。言い換えれば、車載器1上で所定種類の車両データの取得がパターン化され、そのパターンIDとしてID化されたのが、データパターンIDということになる。
例えば、データパターンID1は、CAN信号等の車両情報、車載カメラAの映像情報及び車載カメラBの映像情報を所定期間X1秒間だけアップロードするパターンを示す。また例えば、データパターンID2は、CAN信号等の車両情報及び車載カメラAの低画質の映像情報を所定期間X2秒間だけアップロードするパターンを示し、データパターンID3は、CAN信号等の車両情報及び車載カメラAの高画質の映像情報を所定期間X2秒間だけアップロードするパターンを示す。
ここに本実施形態において「データ収集量が相対的に少ない」とは、単純にデータ収集量の多少における少ないでもよいが、重み付けする部位103c及び算出する部位103bで重み付け及びポイント付与がなされることによって、より収集するべき又は収集することが好ましい若しくは望まれる状況にありながら、実際に収集されたデータ収集量が、複数のデータ群間で見ても少ないことを、データ収集量が相対的に少ないものとして扱っている。即ち、本実施形態では、テーブル502における合計ポイントは、リアルタイム的に現時点で又は当面の間若しくは固定的に、より収集するべき又は収集することが好ましい若しくは望まれる理想的なデータ収集量に対して実際に収集されたデータ収集量の達成の度合いが複数のデータ群間で見ても相対的に低いが故に、より優先的にデータ収集を行うべきとされる度合い或いは程度を、定量的に或いは数値化して示したものである。よって、合計ポイントが高い程、他に優先してデータ収集されるべき旨を示す要件書が作成されることになる。
これに対し、他のシーン条件或いは他の車両と比較して、データ収集量が相対的に非常に多いと分析された「TD検知」なるシーン条件に対しては、そのデータ収集が優先的に行われることがないように(即ち、他のデータ収集が優先的に行われるように)、取得がオフ(Off)とされ、送信もオフ(Off)とされ、アップロードタイミングも一時保存(言い換えれば、即時でなく一定期間保持した後に、アップロード又は廃棄するもの)とされている。例えば、TD検知が多い車両或いはそのドライバの場合、自動運転が苦手なシーンを走行する機会が多いと判断され、優先的にそのようなシーンのデータ取得がオフされたものなどと考えられる。
更に、他のシーン条件或いは他の車両と比較して、データ収集量が相対的に少ないと分析された「衝突予知」なるシーン条件に対しては、そのデータ収集が相応に優先的に行われるように、取得がオン(On)とされ、送信もオン(On)とされ、アップロードタイミングは一時保存とされている。
本実施形態において、トリガ条件の一つとして、「取得」が「オン(On)」にされるとは、対応する車両データを検知するセンサによる取得をオンにするという意味である。取得がオンにされると、センサからシーン検出データ取得部106(図1参照)への、当該シーン発生の際に或いは当該シーン発生に相前後して取得される車両データの入力が行われることになる。逆に、「取得」が「オフ(Off)」にされるとは、対応する車両データを検知するセンサによる取得をオフにするという意味であり、センサからシーン検出データ取得部106(図1参照)へのデータ入力が遮断されるか又は入力されてもデータ破棄されることになる。即ち、当該「オフ」の場合には、データ収集のためのシーン検出データ取得部106に関連する資源や時間などは、当該データのデータ収集に費やされることはなくなり、他の優先されるべきデータ収集に費やされることになる。
また、トリガ条件の他の一つとして、「送信」が「オン(On)」にされるとは、対応する車両データの送信をオンにするという意味である。送信がオンにされると、データ送信部108(図1参照)からのデータ送信が行われることになる。逆に、「送信」が「オフ(Off)」にされるとは、対応する車両データの送信をオフにするという意味である。即ち、当該「オフ」の場合には、データ送信のためのデータ送信部108に関連する資源や時間などは、当該データのデータ送信に費やされることはなくなり、他の優先されるべきデータ送信に費やされることになる。
更にまた、「アップロードタイミング」が「随時」にされるとは、対応する車両データの送信を随時に行うという意味であり、逆に、「アップロードタイミング」が「一時保存」にされるとは、対応する車両データの送信を一時保存してから適宜に行うという意味である。即ち、当該「一時保存」の場合には、例えばデータ分析サーバ2側からの送信指示又は不送信指示等に応じて適宜に送信が行われ、送信する優先度は「随時」の方が「一時保存」より高いことになる。これらの結果、データ送信のためのデータ送信部108に関連する資源や時間などは、当該データのデータ送信に費やされることは少なくなり、他の優先されるべきデータ送信により多く費やされることになる。
他方で、車両Bに関しても、車両Aからは独立して車両Bに固有の要件書が上述した車両Aに関するのと同じ要領で更新される。従って、車両Bの要件書は、車両Aのそれと比べて内容が異なるものである。
以上のように更新された要件書は、収集要件データとして、データ分析サーバ2(図1参照)の要件書データ部109に格納される。この格納に相前後して又は並行して、更新された要件書は、矢印4Aの如く車載器1側のデータ収集部100にあるデータ収集要件書取得部102(図1参照)に渡されて、データ収集条件変更部104は該取得された要件書に従ってデータ収集条件を変更する。以降、シーン検出データ取得部106によって、再び図2の上半分に例示された如きデータ収集をすべき“急な加減速シーン”、“TD検知シーン”等のシーンにおけるデータ収集が、更新された要件書に基づく変更後の収集条件で行われることになる。
次に、このように構成された第1実施形態の構成及び機能について、図4のフローチャート及び図5のテーブルを参照しながら更に詳述する。
図4において先ず、車載器1側において、ドライバ操作によりIG_ON(イグニション_オン)状態に遷移すると(ステップS101)、これを検知したデータ収集要件書取得部102(図1参照)は、データ分析サーバ2側に無線通信3を介して取得要求を送信する(ステップS102)。
データ分析サーバ2側では、この取得要求を受けて、制御部200は、初期状態(即ち、蓄積された過去の要約書が収集要件データ部109に格納されていない状態)における要件書の生成或いは作成を行い、生成或いは作成された要件書を、無線通信3を介して車載器1側に送信する(ステップS103)。この際、先ずは初期状態であるので、全車両に共通の初期データ値からなるデフォールトの要件書を送信する。
なお、車載器1側から現在まで使われていた従前の(即ち、今回更新しようとする前の)要件書を取得要求と共にデータ分析サーバ2側に送信することで、或いは、データ分析サーバ2側で、そのような従前の(即ち、当該車両が今回更新しようとする前の)要件書を、車両識別データを手掛かりに収集要件データ部109中から特定し読み出すことで、従前の要件書を、全車両に共通のデフォールト代わりに(各車両に固有のものとして)利用することも可能である。
続いて、車載器1側では、データ収集要件書取得部102は、収集要件データ部109から当該車両に対する要件書を、無線通信3を介して受信することで取得し、データ条件変更部104は、当該車両におけるデータ取得条件を、取得された要件書に沿って更新する(ステップS104)。具体的には、要件書に沿って、当該車載器1に内包されたシーン条件の収集ロジックにおけるオンオフ等を切り替える。
このように更新しようとする際に、仮に要件書を受信できない場合には、車載器1に組み込まれたデフォールトの要件書に沿ってデータ取得条件を更新してもよいし、車載器1に残されていた直近にデータ分析サーバ2から取得した従前の要件書に沿ってデータ取得条件を更新してもよい。
ここで取得される要件書は、例えば図6に、テーブル504として例示した如きである。この要件書は、図2から図3に示した動作によって適宜更新される図3の下半分に示した要件書と同様に作成されるものであるが、固有の車両や車両状況、更には車両が置かれた環境或いは時期の相違に依存して、要件書の内容は異なる。図6に例示した要件書では、図3に例示したそれと異なり、「衝突予知」なるシーン条件を優先してデータ収集するべき等の内容とされている。
続いて、図4において破線で囲まれたステップ105の処理が、ステップS106のシーン検出が起こる毎に繰り返し実行される。
即ち先ず、当該車両の運転中に、特定のシーン条件(例えば、急加速、急減速、システムエラーなど)が満される場合、シーン検出データ取得部108(図1参照)は、「シーン検出」した旨を後段の処理を行う部位に伝える(ステップS106)。これを受けて、当該車両がセンシングしている各種センサの情報(例えば、カメラ画像、ミリ波、CAN信号に係る情報など)を、収集すべき車両データとしてパッケージング(即ち、送信を容易とするように圧縮集約)して、一時的に車載器1に搭載されている不図示のストレージに保存する(ステップS107)。この際、一時的に保存される車両データは、シーン発生の際に検出される車両データの他、シーン発生に相前後して検出される車両データを含んでよい。
ここに一時的に保存する理由は、データ収集時に外部に(具体的には、無線通信3を介してデータ分析サーバ2に)通信可能な状態にある保証がないから、及びデータ送信にも処理リソースが必要であり、車載器1が構築されている車両のECU(Engine Control Unit)上で、制御にかかわる優先的な他の処理が動作している可能性があるからである。
続いて、一時保存したデータを、データ送信部108(図1参照)は、データ分析サーバ1に無線通信3を介して送信する(ステップS108)。この処理における送信のタイミングは、上述のデータ保存処理の一連の流れとしてではなく、無線通信3を介しての通信状態や当該車両のECU全体の処理リソースの空き状況などを監視した上での、送信に適切なタイミングとされる。よって、一度の送信処理で、複数のデータ送信を行うこともあり得る。言い換えれば、適切なタイミングまで待った後に、単独で又は纏めてデータ送信が行われる。
これを受けて、データ分析サーバ2側では、受信されたデータを、収集要件データ部109等のデータベースなどに蓄積する(ステップS109)。続いて、図2から図3を参照して既に説明した如き、データ分析及びポイント算出、即ち図3の下半分に示した如き車両別の要件書を作成するための処理が実行され、算出結果が車両毎に管理される(ステップS110)。
このような図4において破線で囲まれたステップ105の処理が、ステップS106のシーン検出が起こる毎に繰り返し実行され、最終的には、車両側において、ドライバ操作によりIG_OFF(イグニション_オフ)状態に遷移し(ステップS111)、一連の処理が終了する。なお、以上説明した本実施形態では、データ収集部100及びデータ送信部108(図1参照)が、本実施形態に係る「車両データの発生から収集までを少なくとも部分的に掌る部位」に相当する。
次に第2実施形態に係る車両データ収集システムを、図6を参照して説明する。なお、第2実施形態におけるハードウエア構成は上述の第1実施形態の場合と同様であり、第2実施形態は主としてそのソフトウエア構成において上述の第1実施形態とは異なる。このため、以下では、第2実施形態のハードウエア構成については説明を適宜省略し、そのソフトウエア構成について説明する。更に、図6に示した第2実施形態では、図4に示した第1実施形態と同様のステップに対しては同様のステップ番号を付し、その説明は適宜省略する。
図6において、ステップS101及び102の処理が車載器1側で行われると、これを受けて、データ分析サーバ2側では、取得要求を受けて、制御部200は、データ蓄積時(即ち、蓄積された過去の要約書が収集要件データ部109に格納されている状態)における要件書の生成或いは作成を行い、生成或いは作成された要件書を、無線通信3を介して車載器1側に送信する(ステップS203)。この際、初期状態でなく図2から図3で示した如きデータ分析及びポイント付与等による要件書の更新がなされているので(言い換えれば、下記ステップS204以降の処理が繰り返して行われているので)、更新された車両毎に適切な要件書を生成した上での送信となる。
ここに「適切な要件書」とは、例えば、既に第1実施形態のところで説明したのと同様に、車両毎に或いはドライバ毎に収集された車両データを元に、当該車両で収集すべきと判断した車両データに対し積極的に収集オン(即ち、要件書上で、取得オン、送信オンなど)とし、逆に当該車両で収集すべきでないと判断した車両データに対し収集オフ(即ち、要件書上で、取得オフ、送信オフなど)とするなどの要件書である。要件書の具体例は、第1実施形態と同じく図3の下半分に例示した車両A用の要件書や車両B用の要件書となる。
続いて、車載器1側では、データ収集要件書取得部102は、収集要件データ部109から当該車両に対する要件書を、無線通信3を介して受信することで取得し、データ条件変更部104は、当該車両におけるデータ取得条件を、取得された車両毎に異なる内容を有する要件書に沿って更新する(ステップS204)。具体的には、車両毎に異なる内容の要件書に沿って、当該車載器1に内包されたシーン条件の収集ロジックにおけるオンオフ等を切り替える。
その後、ステップS106〜S110を含むステップS105が、第1実施形態の場合と同様にシーン検出の都度に繰り返して実行され、最終的にドライバ操作によりIG_OFF(イグニション_オフ)状態に遷移し(ステップS111)、一連の処理が終了する。
以上に説明した実施形態から導き出される発明の態様を以下に説明する。
本発明の一態様に係る車両データ収集システムは、車両が予め設定された車両状況になった場合に、該車両状況に係る車両データを収集するための車両データ収集システムであって、前記車両データが少なくとも前記車両状況別に夫々分類されてなる複数のデータ群の相互間におけるデータ収集量の相対的な多少を分析する分析部と、前記分析された相対的な多少に基づいて、前記データ収集量がより少ないデータ群に対するもの程、相対的に高い優先度で車両データが収集されるように、前記車両及び当該車両データ収集システムにおける、前記車両データの発生から収集までを少なくとも部分的に掌る部位を制御する制御部とを備える。
この態様によれば、車両が予め設定された車両状況或いはシーンになった場合、分析部は、少なくとも車両状況別(即ち、車両状況別或いは車両状況別且つ車両別)に夫々分類されてなる複数のデータ群の相互間における、データ収集量の相対的な多少を分析する。ここに「データ収集量の相対的な多少」とは、車両データの車両状況別或いは車両別のデータ収集の傾向と言い換えてもよい。「複数のデータ群の相互間におけるデータ収集量の相対的な多少」とは、複数のデータ群の相互間におけるデータ収集量の大小であってもよいし、複数のデータ群の各々について望ましい或いは理想的なデータ収集量に対する実際のデータ収集量の不足若しくは要望の程度又はデータ収集効率の程度の相互間における大小であってもよい。即ち、このような「データ収集量の相対的な多少」の分析は、上述した実施例で実施された如く、より具体的には、重み付けポイント制を採用することで、データ群別の車両データに与えられた数値化或いは定量化された合計ポイントの大小分析或いは傾向分析として行われても良い。
すると、制御部は、該分析されたデータ収集量の相対的な多少に基づいて、データ群間で相対的にデータ収集量が少ないデータ群に対するもの程、相対的に高い優先度で車両データが収集されるように、車両データの発生から収集までを少なくとも部分的に掌る部位を制御する。例えば、車両データは、その取得や送信或いはアップロードが制御されつつ、選択的に取得されたり選択的に送信されたり選択的に随時アップロード(又は選択的に一時保存後にアップロード若しくは廃棄)されることになる。
このように本態様により、収集される車両データの傾向を考慮して効率的に、言い換えれば、実践上キャパシティ的及びアビリティ的に或いはコスト的に(例えば、通信費やサーバ使用料、サーバ保守費等の観点から)限界があるハードウエア資源を利用しつつ有効性の高い車両データが収集されるように収集条件或いは収集ロジックを変更する仕組みが提供される。
ここで一般には、車両データの項目或いは種類によっては、取得される時間帯、取得される値等に起因して、各項目間におけるデータの収集量間に或いは各車両におけるデータの収集量間に、無視し得ない程度の偏りが生じ得る。すると、特定条件下で取得される車両データに係る、データ収集がより望まれる車両データ(例えば、レアなシーンや特定地点のデータなどのサンプル)のデータ量が不足する虞が生じる。即ち、相対的に有効性の高い車両データを効率的に収集或いは取得できない、言い換えれば、相対的に有効性の低い車両データを不必要なまでに収集或いは取得してしまう虞がある。
これに対し、仮に各車両における車載器側で、蓄積されるデータを分析しながら収集条件に変更を加えようとしても、機能的にも分析に係るデータ量の少なさからしても実践上困難となってしまう。或いは、仮に各車両で手動により収集条件を管理しようとしても、手間コストが甚大となってしまい実践的でない。更に仮に、収集された車両データの傾向分析を行うことなく一定の収集条件のままデータ収集を続けたり、全車両が同一の収集ロジックでデータ収集を続けようとしても、不要な車両データが集まり過ぎて、サーバのスケーリング上で或いはビックデータの管理上で問題が生じかねない。
加えて一般には、収集したいデータは、ビジネス環境や収集された車両データのサンプル数に応じて時々刻々と変化するため、収集した或いは収集する車両データが、使用に相前後して或いはリアルタイム的に本当に使える価値があるかの評価或いは分析を時々刻々と変化する収集条件ロジックを用いて行う必要性が生じる。よって、該分析或いは評価無しで効率的なデータ収集を続けようにも、そもそも困難であり、或いは、該分析或いは評価を車載器側で行うべく収集ロジック或いは機能(ソフト)に更新を行おうとしても、該更新の際にOTA(Over The Air)などの複雑な手続きが必要となり、ドライバ等で対応することは実践上困難となってしまう。また、データ収集効率を考慮すること無く、車両データの収集を行おうとすれば、市販車の販売台数が多ければ数千万台にも及ぶので、データの分析或いは保管に莫大なコストがかかってしまうことが想定される。
しかるに本態様によれば上述したように、実際にどの車両データに収集すべき価値があるかを見極めること、実際に取得した車両データの統計分析を行い、車両状況毎の或いはデータカテゴリ毎の重み付けを行うことにより車両状況別或いは車両別のデータ収集効率を数値化し、データ収集シーンの要件書に変更を加えることで、有効性の高い車両データを効率的に(言い換えれば、適宜各車両に対して要件書或いはその変更をフィードバックすることで、複数台の車両を網羅的に効率良く)収集すること、更にこれにより効率的に保存や活用することが可能となる。このため、サーバに対して大量に集まってくる車両データに対して、通信費、サーバ保守費等のコストの増大を効率的に防ぐことが可能となる。或いは、複数の車両からデータ収集をする際におけるデータ収集効率を数値化した上で、高めることが可能となる。
本発明の他の態様に係る車両データ収集システムでは、前記分析部は、前記相対的な多少の分析として、前記車両状況の前記車用別且つ項目別の前記車両データの分布或いは偏りを分析し、前記制御部は、前記分析された分布或いは偏りに応じて重み付けしたポイントを前記車両別且つ前記項目別の車両状況に対して付与し、該付与されたポイントの合算がより大きい程、相対的に高い優先度で、前記車両別且つ前記項目別の車両状況に係る車両データが収集されるように制御する。
この態様によれば、ポイントにより数値化或いは定量化された車両データの相対的な多少、言い換えれば、ポイントにより数値化或いは定量化されたデータ収集効率に基づいて、データ収集量が理想的なそれより少ないデータ群に対するもの程、言い換えれば、付与されたポイントの合算により示されるデータ収集効率が高いもの程、相対的に高い優先度で、対応する車両データが収集されるので、有効性の高い車両データを効率的に収集するが可能となる。
本発明の他の態様に係る車両データ収集システムでは、前記制御部は、前記車両の各々において、前記部位の一つである記憶部により前記車両データを一時的に記憶する際のオンオフ制御、並びに前記部位の他の一つである通信部により前記車両データを送信する際のオンオフ制御又はアップロードする際の時期制御のうち、少なくとも一つの制御を行う。
この態様によれば、記憶部におけるオンオフ制御(即ち、記憶するか否かの制御)や、通信部におけるオンオフ制御(即ち、送信するか否かの制御)や、通信部におけるアップロードの時期制御(即ち、随時アップロードか又は一時保存後のアップロードかの制御)によって、有効性の高い車両データを優先的にデータ収集することが可能となる。
本発明の他の態様に係る車両データ収集システムでは、前記車両データは、動的な車両情報に係るデータである。
この態様によれば、車両データが静的な車両情報に係るデータであっても、動的な(即ち、一定でない、或いは、車両の走行や停止、使用、時間経過などに応じて変化し得る)車両情報に係るデータであっても、データ収集条件を適宜に更新し続けることにより、データ収集量が相対的に少ない或いはデータ収集効率が高い車両状況に係る車両データのデータ収集量を増加させることが可能となる。
なお、当該車両データ収集システムは、複数の車両と共に通信ネットワークに収容されており、前記通信ネットワークを介して前記車両データを収集し、前記通信ネットワークを介して前記車両に対して前記車両データを収集する際の条件を規定する要件書を送信する、車両データ収集用サーバとして構築されてもよい。或いは、分析部若しくは制御部の一部又は一機能を車両側に即ち車載器に組み込む形で構築されてもよく、即ち当該車両データ収集システムは、車両データ収集サーバと車載器とを含んで構築されてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両データ収集システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。