JP2020143247A - ガスバリア性膜状体形成用水性分散液、ガスバリア性膜状体、ガスバリア性積層体及びガスバリア性膜状体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、ガスバリア性材料としては、温度や湿度の影響が少ないアルミニウムやポリ塩化ビニリデンが用いられてきた。しかしながら、これらを焼却処分する際、アルミニウムにおいては焼却残渣が排気口や炉内部で詰まり焼却効率を下げてしまう等の問題、ポリ塩化ビニリデンにおいてはダイオキシンが発生してしまう等の問題が生じてしまうため、環境負荷の少ない材料への代替が求められている。例えば、同じ化石資源からつくられる材料であっても、アルミニウムや塩素を含まないポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体への代替が進められているが、将来的には、石油由来材料からバイオマス材料への代替が期待されている。
さらに、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を用いるガスバリア性膜状体の製造方法、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体、及び、基材上に前記ガスバリア性膜状体を有するガスバリア性積層体を提供することを目的とする。
[1] セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤及び助剤を含み、下記要件(a)〜(d)を満たす、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
要件(a):顔料体積濃度PVCと、臨界顔料体積濃度CPVCとの比である還元顔料体積濃度(Reduced Pigment Volume Content)Λが、以下の式(1)を満たす。
0<Λ≦1.1 ・・・(1)
(ただし、Λ=PVC/CPVC)
要件(b):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、セルロースナノファイバーの体積比率が50%以上である。
要件(c):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、助剤の体積比率が5%以下である。
要件(d):ガスバリア性膜状体形成用水性分散液中の全顔料の体積に対する、無機層状化合物の体積比率が85%以上である。
[2] 前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバー、化学変性セルロースナノファイバー、酵素変性セルロースナノファイバーの少なくとも1種から選択され、繊維径の長径が短径の3倍以下、繊維径の長径が1nmから100nm、繊維長が長径の10倍以上2000倍以下である、[1]のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
[3] 前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液に分散された無機層状化合物の分散度が40μm以下である、[1]又は[2]のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
[4] 前記助剤が、分散剤、シランカップリング剤、サイズ剤、撥水剤、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤及び安定剤から選択される少なくとも1種である、[1]〜[3]いずれかのガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
[5] [1]〜[4]いずれかのガスバリア性膜状体形成用水性分散液を基材上に塗工した後に、加熱乾燥する、ガスバリア性膜状体の製造方法。
[6] [1]〜[4]いずれかのガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られる、ガスバリア性膜状体。
[7] 前記ガスバリア性膜状体の厚みが0.1μm以上5μm以下である、[6]のガスバリア性膜状体。
[8] 基材の少なくとも一方の面上に、[1]〜[4]いずれかのガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体を有する、ガスバリア性積層体。
[9] 積層体の少なくとも一方の面上にシーラント層を有する、[8]のガスバリア性積層体。
さらに、本発明によれば、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を用いるガスバリア性膜状体の製造方法、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体、及び、基材上に前記ガスバリア性膜状体を有するガスバリア性積層体が提供される。
本発明のガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤及び助剤を含有する。以下、これらの成分について説明する。
セルロースナノファイバーは、未変性セルロースナノファイバー、化学変性セルロースナノファイバー、酵素変性セルロースナノファイバーの少なくとも1種から選択される。その繊維径の長径は、短径の3倍以下であり、繊維径の長径は、1〜100nm、好ましくは1〜50nmであり、繊維長は繊維径の長径の10倍以上2000倍以下である。
本発明において、無機層状化合物は、主として、セルロースナノファイバーを含む膜状体のガスバリア性をより一層高める目的で使用される。本発明で用いる無機層状化合物としては、層状の構造を有する結晶性の無機化合物を用いることができる。無機化合物の例としては、タルク、カオリナイト族、スメクタイト族、マイカ族等に代表される粘土鉱物をあげることができる。カオリナイト族の粘土鉱物としては、例えばカオリナイトがあげられる。スメクタイト族の粘土鉱物としては、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトがあげられる。マイカ族の粘土鉱物としては、例えばバーミキュライト、ハロイサイト、テトラシリシックマイカがあげられる。また、層状複水酸化物であるハイドロタルサイト等を用いることもできる。
無機層状化合物として粘土鉱物以外のものを用いることも可能である。そのような化合物としては、例えば層状の構造を有する、チタン酸塩、ニオブ酸塩、マンガン酸塩、リン酸塩、酸化スズ、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化白金、酸化ルテニウム、酸化ロジウム等の金属酸化物、あるいはこれらの成分元素の複合酸化物等があげられる。またグラファイトを用いることもできる。
無機層状化合物は、天然のものでもよく、あるいは合成されたものでもよい。無機層状化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この範囲の平均粒径を有する無機層状化合物を用いることで、膜状体における無機層状化合物の分散性を良好にすることができ、膜状体のガスバリア性を一層高めることができる。
無機層状化合物の平均粒径は、次の方法で測定される。
無機層状化合物とイオン交換水を混合し0.05質量%の分散液を作成する。レーザー回折式粒度分布計(SALD−300V、解析ソフトWingSALD−300V、島津製作所製)を用いて粒度分布を測定し、粒度分布の平均値を算出して、これを平均粒径として定義する。なお、屈折率は、モンモリロナイト、マイカ、テトラシリシックマイカ、タルク、サポナイト、酸化マグネシウムを1.6とし、チタン酸塩を2.6とする。
分散度は、ISO1524準拠のJIS K 5600−2−5:1999 塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第5節:分散度に準拠して測定されたものである。
水溶性高分子は、25℃の水に対する溶解度が0.1g/Lを超える高分子であれば特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸、デンプン、およびこれらの塩からなる群より選択される1種以上があげられる。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における水溶性高分子の含有量は、要件(a)〜(c)を満たすのであれば特に限定されない。
架橋剤は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体をより緻密なものとすることができ、基材への密着性、ガスバリア性をさらに向上し得る。架橋剤としては、前記水溶性高分子中のカルボキシ基、水酸基等と架橋反応し得る官能基を分子中に2つ以上有する化合物であればよく、使用目的に応じて適宜選択される。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における架橋剤の含有量は、要件(a)〜(c)を満たすのであれば特に限定されない。
エポキシ基を有する架橋剤としては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等があげられる。
アルデヒド基を有する架橋剤としては、グリオキサール、グルタルアルデヒド等があげられる。
アミノ基を有する架橋剤としては、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、トリエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、トリス(3−アミノプロピル)アミン等があげられる。
カルボキシ基を有する架橋剤としては、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、乳酸、グリセリン酸、ブタンテトラカルボン酸等があげられる。また、カルボキシ基の金属塩としては、ナトリウム塩、ジルコニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩等があげられる。
イソシアネート基を有する架橋剤としては、イソホロンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、それらのアダクト、多量体、変性物等があげられる。
ビニルスルホニル基を有する架橋剤としては、N,N’−エチレンビス[2−(ビニルスルホニル)アセトアミド]や、N,N’−トリメチレンビス[2−(ビニルスルホニル)アセトアミド]等があげられる。
ヒドラジド基を有する架橋剤としては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等があげられる。
オキサゾリン基を有する架橋剤としては、ビスオキサゾリン化合物、オキソザリン基含有ポリマー等があげられる。
メチロール基を有する架橋剤としては、テトラメトキシ尿素等の尿素系化合物、ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等があげられる。
アルコキシ基を含有する架橋剤としては、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン等があげられる。
カルボジイミド基を有する架橋剤としては、ビスカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド樹脂等があげられる。
水酸基を有する架橋剤としては、エチレングリコール等のポリオール、ビスフェノールA等の多価フェノール等があげられる。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液には、各種の機能性を付与するために、助剤を含んでいてもよい。例えば、分散剤、シランカップリング剤、サイズ剤、撥水剤、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤及び安定剤等から選択される少なくとも1種を用いることができ、用途に応じてフィルム特性を改良することができる。なお、本発明において、水溶性高分子、架橋剤及び顔料は、助剤に含まれない。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における助剤の含有量は、要件(a)〜(c)を満たし、ガスバリア性を損なわない範囲内であれば特に限定されない。本発明においては、助剤を使用しなくてもよい。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、下記要件(a)を満たす。これにより、ガスバリア性膜状体の高湿度下におけるガスバリア性と強度を上げることができる。
要件(a):顔料体積濃度PVCと、臨界顔料体積濃度CPVCとの比である還元顔料体積濃度(Reduced Pigment Volume Content)Λが、以下の式(1)を満たす。
0<Λ≦1.1 ・・・(1)
(式中、Λ=PVC/CPVC)
本発明において好ましいΛの範囲は、0<Λ≦0.95の範囲である。
本発明において、顔料体積濃度PVCの範囲は、特に限定されない。例えば5〜40体積%、好ましくは9〜35体積%とすることができる。
CPVC=1/(1+O1・d/100) ・・・(ii)
(式中、O1は顔料のアマニ油吸油量(ml/100g)、dは顔料の密度(g/cm3))
CPVC=1/(1+O2・d/93.5) ・・・(iii)
(式中、O2は顔料のアマニ油吸油量(g/100g)、dは顔料の密度(g/cm3))
また、n種類の顔料が用いられる場合の臨界顔料体積濃度CPVCは、下記の式(iv)又は(v)から求められる。
なお、アマニ油吸油量O1及びO2は、ISO 787−5:1980準拠のJIS K 5101−13−1:2004 第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法に準拠して求められたものである。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、下記要件(b)を満たす。
要件(b):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、セルロースナノファイバーの体積比率が50%以上である。
要件(b)は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における顔料以外の固形分の体積に対する、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液におけるセルロースナノファイバーの体積が、50%以上であることを示す。好ましくは50〜99%とすることができる。
本発明において、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の全固形分体積におけるセルロースナノファイバーの体積比率の範囲は、特に限定されない。例えば20体積%以上、好ましくは30〜50体積%とすることができる。
本発明において、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の全固形分体積における水溶性高分子の体積比率の範囲は、特に限定されない。例えば15〜45体積%、好ましくは30〜45体積%とすることができる。
本発明において、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の全固形分体積における架橋剤の体積比率の範囲は、特に限定されない。例えば1〜10体積%、好ましくは2〜5体積%とすることができる。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、下記要件(c)を満たす。
要件(c):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、助剤の体積比率が5%以下である。
要件(c)は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における顔料以外の固形分の体積に対する、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における助剤の体積が、5%以下であることを示す。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液は、下記要件(d)を満たす。
要件(d):ガスバリア性膜状体形成用水性分散液中の全顔料の体積に対する、無機層状化合物の体積比率が85%以上である。
要件(d)は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液における全顔料の体積に対する、無機層状化合物の体積が、85%以上であることを示す。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液には、必要に応じて、無機層状化合物以外の顔料成分(着色顔料、充填剤、填料等)が含まれていてもよい。しかしながら、無機層状化合物以外の顔料成分の含有量は、要件(d)を満たす範囲内とされる。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を調製する工程としては、水性分散液の調製方法として公知の手段を制限なく用いることができる。
例えば、セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤、助剤及び液媒体を、混合容器内に投入し、撹拌して混合する。各成分の投入量は、要件(a)〜(d)を満たす範囲において、ガスバリア性膜状体における各成分の含有質量比に応じて設定される。各成分の投入順序は、特に制限されず、各成分を同時に投入してもよく、段階的に投入してもよい。また、少なくとも一部の成分を、あらかじめ液媒体に分散又は溶解させた後に投入してもよく、各成分のうちの2種以上を混合した後に残りの成分を投入してもよい。液媒体としては、水が好ましく用いられるが、水に可溶な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類等)と水との混合溶媒を用いることができる。
ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の調製に際して、その固形分濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下となるように調製される。
ガスバリア性膜状体は、前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を、基材の少なくとも一方の面に塗工し、乾燥することで調製できる。本発明においては、必要に応じて、ガスバリア性膜状体を基材から剥離して用いることができる。
基材としては、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の塗膜を形成することが可能なものであればよく、例えば、紙、フィルム、シート、織布、不織布等の薄状物を用いることができる。
好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムがあげられる。
基材の厚みは、特に制限されないが、5〜150μmの範囲から適宜選択される。
基材としては、基材の塗工面をコロナ放電処理等で表面処理して濡れ性(親水性)を改善したものや、基材の塗工面に離性を付与したものを用いることもできる。
ガスバリア性膜状体の乾燥後の膜厚(乾燥膜厚)は特に制限されず、膜状体の用途等に応じて適宜設定することができる。好ましくは0.1〜5μmである。
積層体は、ガスバリア性膜状体が、基材の少なくとも一方の面上に積層されたものである。
積層体は、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を基材の少なくとも一方の面上に塗工し乾燥して調製することができる。また、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を基材の少なくとも一方の面上に塗工し乾燥してガスバリア性膜状体を得た後、基材から剥離し別の基材に積層して調製することもできる。
積層体には、少なくとも一方の面上にシーラント層を設けることができる。シーラント層としては、ヒートシール層などの公知の層を用いることができる。シーラント層を構成する成分としては特に制限されず、ポリオレフィン等の材料を用いることができる。これにより、積層体にヒートシール性等を付与することができ、包装材料とした際の利便性が向上することとなる。
<セルロースナノファイバー>
(CNF1)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)1.95g(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム51.4g(絶乾1gのセルロースに対し1mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物に塩酸を添加し、pHを2.4にした後、ガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、イオン交換水を用いて酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシ基量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られた変性パルプを、2−プロパノール/水=30/70の混合液を用いて1.0%(w/v)分散液とし、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、セルロースナノファイバー1(CNF1;密度1.4g/cm3)の2−イソプロパノール/水分散液を得た。
(CNF2)
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で253g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で56.3g(パルプのグルコース残基当たり0.9倍モル)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分間撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを127g(パルプのグルコース残基当たり0.7倍モル)添加した。30分間撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。
上記の工程で得られた変性パルプを、2−イソプロパノール/水=30/70の混合液を用いて1.0%(w/v)分散液とし、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、セルロースナノファイバー2(CNF2;密度1.4g/cm3)の2−イソプロパノール/水分散液を得た。
(マイカ)
マイカ(密度2.8g/cm3、吸油量70ml/100g)を用い、固形分40%となるように水媒体中でホモディスパーにより分散し、その後、2−プロパノール/水=29.7/65.3の混合液を用いて1%に希釈分散した。
(ベントナイト)
ベントナイト(密度2.6g/cm3、吸油量80ml/100g)を用い、固形分40%となるように水媒体中でホモディスパーにより分散し、その後、2−プロパノール/水=29.7/65.3の混合液を用いて1%に希釈分散した。
(PVA)
ポリビニルアルコール(PVA;密度1.22g/cm3)を用い、水で10%に希釈し、その後2−プロパノール/水=29.7/60.3で1%に希釈した。
(EVOH)
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH;密度1.21g/cm3)を用い、水で10%に希釈し、その後2−プロパノール/水=29.7/60.3で1%に希釈した。
(架橋剤1)
ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(DEGDGE;密度1.12g/cm3)を架橋剤1として用いた。
(架橋剤2)
N,N−トリメチレンビス[2−(ビニルスルホニル)アセトアミド](密度1.12g/cm3)を架橋剤2として用いた。
前記のセルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子及び架橋剤を、それぞれ表1に示す組成となるように混合し、全体の固形分を100質量部とした。次に、ホモミキサーを用いて、12,000rpmで15分間混合して、実施例1〜8及び比較例1〜5に係るガスバリア性膜状体形成用水性分散液を得た。なお、実施例1〜8及び比較例1〜5に係るガスバリア性膜状体形成用水性分散液において、要件(b)のセルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、セルロースナノファイバーの体積比率は50%である。
得られた各ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を、表面にコロナ放電処理が施された厚み25μmのPETフィルム基材の一面上に、バーコート方式の塗工装置を用いて乾燥膜厚1.0μmになるように塗工後、乾燥させガスバリア性膜状体を製造した。
(PVC)
内径寸法10cm×10cmのテフロン(登録商標)製の容器に、各ガスバリア性膜状体形成用水性分散液を25ml注入後に乾燥し、厚み及び重量を測定して塗膜の密度を得た。
得られた塗膜の密度を用い、上記式(i)に基づき顔料体積濃度PVCを得た。なお、Λが1.0を超える場合、塗膜内部に空隙が生じるため、見かけ密度から計算するPVCは実際のPVCよりも小さい値となる場合がある。
(CPVC)
上記式(ii)〜(v)のいずれかを用いて、臨界顔料体積濃度CPVCを得た。
(分散度)
JIS K 5600−2−5:1999 塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第5節:分散度に準拠し、100μmグラインドゲージを用いて、各ガスバリア性膜状体形成用水性分散液の分散度を得た。
(水蒸気透過度)
得られたガスバリア性膜状体を基材から剥離した後に、JIS K 7129:2008に準拠し、温度40±0.5℃、相対湿度差90±2%の条件下で、試験片を透過した水蒸気による低湿度チャンバ内の相対湿度変化を感湿センサ法により、透湿度測定器(Dr.Lyssy社製、L80−4000)を用いて測定した。
(屈曲前の酸素透過度)
得られたガスバリア性膜状体を基材から剥離した後に、ISO 15105−2:2003準拠するJIS K 7126−2 プラスチック−フィルム及びシート− ガス透過度試験方法−第2部:等圧法 付属書A(規定)電解センサ法による酸素ガス透過度の試験方法に準拠し、酸素透過率測定装置(MOCON社製OX−TRAN2/21)用い、23℃−85%RH条件にて測定した。ここで、23℃−85%RH条件は、23℃及び湿度85%RHの酸素ガス(試験ガス)、23℃及び湿度85%の窒素ガス(キャリアガス)の環境下での酸素透過度である。
(屈曲後の酸素透過度)
得られたガスバリア性膜状体を基材から剥離した後に、JIS K 5600 5−1:円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行った。その後、屈曲前の酸素透過度と同様にして酸素透過度を測定した。
Claims (9)
- セルロースナノファイバー、無機層状化合物、水溶性高分子、架橋剤及び助剤を含み、下記要件(a)〜(d)を満たす、ガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
要件(a):顔料体積濃度PVCと、臨界顔料体積濃度CPVCとの比である還元顔料体積濃度(Reduced Pigment Volume Content)Λが、以下の式(1)を満たす。
0<Λ≦1.1 ・・・(1)
(ただし、Λ=PVC/CPVC)
要件(b):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、セルロースナノファイバーの体積比率が50%以上である。
要件(c):セルロースナノファイバー、水溶性高分子、架橋剤及び助剤の体積の和に対する、助剤の体積比率が5%以下である。
要件(d):ガスバリア性膜状体形成用水性分散液中の全顔料の体積に対する、無機層状化合物の体積比率が85%以上である。 - 前記セルロースナノファイバーが、未変性セルロースナノファイバー、化学変性セルロースナノファイバー、酵素変性セルロースナノファイバーの少なくとも1種から選択され、繊維径の長径が短径の3倍以下、繊維径の長径が1nmから100nm、繊維長が長径の10倍以上2000倍以下である、請求項1に記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
- 前記ガスバリア性膜状体形成用水性分散液に分散された無機層状化合物の分散度が40μm以下である、請求項1又は2に記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
- 前記助剤が、分散剤、シランカップリング剤、サイズ剤、撥水剤、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤及び安定剤から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液を基材上に塗工した後に、加熱乾燥する、ガスバリア性膜状体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られる、ガスバリア性膜状体。
- 前記ガスバリア性膜状体の厚みが0.1μm以上5μm以下である、請求項6に記載のガスバリア性膜状体。
- 基材の少なくとも一方の面上に、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性膜状体形成用水性分散液から得られるガスバリア性膜状体を有する、ガスバリア性積層体。
- 積層体の少なくとも一方の面上にシーラント層を有する、請求項8に記載のガスバリア性積層体。
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