JP2020138957A - サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)由来の抗菌活性物質 - Google Patents

サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)由来の抗菌活性物質 Download PDF

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Abstract

【課題】抗菌活性を有する新規化合物、及びその製造方法を提供する。【解決手段】式(I):【化1】で表される化合物、又はその塩若しくはエステル。【選択図】図4−1

Description

本発明は、抗菌活性を有する新規化合物、及びその製造方法に関する。
サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis、以下「T. hazakensis」ともいう)は、クロロフレクサス門クテドノバクテリア綱クテドノバクテル目に属する細菌であり、好気性のグラム陽性細菌である。本発明者らにより、T. hazakensis SK20-1T株(= NBRC 105916T= JCM 16142T= ATCC BAA-1881T)が単離され、セルロース、キシラン、キチンを分解する能力を有することが示されている(非特許文献1)。これまでに、T. hazakensisに由来する抗菌活性物質は報告されているが(非特許文献2及び3)、さらなる抗菌活性物質が求められていた。
S. Yabe, et. al., International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2010), 60, 1794-1801 J.S. Park, et. al., Chem Bio Chem (2014), 15, 527-532 J.S. Park, et. al., The Journal of Antibiotics (2015), 68, 60-62
本発明は、抗菌活性を有する新規化合物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、T. hazakensis SK20-1T株(= NBRC 105916T= JCM 16142T= ATCC BAA-1881T)より、新規抗菌活性物質を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)式(I):
Figure 2020138957
で表される化合物、又はその塩若しくはエステル。
(2)UVスペクトルにおいて340 nmに吸収極大を有し、モル吸光係数が30630であり;
ESI/TOF/MSスペクトル及び高分解能マススペクトルによる解析から分子式がC74H58Cl8O26であり;
1H NMRスペクトル(DMSO−d6)が、δ11.49、10.92、6.67、6.41、6.21、6.00、5.91、4.95、4.26、3.96、3.95、3.79、3.71、3.70、2.69、2.19、及び0.90にシグナルを有し;
13C NMRスペクトル(DMSO−d6)が、δ 188.61、184.49、162.20、159.96、158.11、155.76、155.25、150.91、140.73、140.25、140.25、138.20、137.79、137.26、134.60、133.53、132.77、125.42、121.51、120.24、119.19、114.71、111.89、109.54、102.99、99.78、98.55、77.15、72.75、70.21、67.00、61.20、60.68、56.94、17.83、15.90、及び14.96にシグナルを有する化合物、又はその塩若しくはエステル。
(3)サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)を培地に培養して、その培養物から採取することにより得られる、上記(2)に記載の化合物、又はその塩若しくはエステル。
(4)培養物のアセトン水溶液抽出物を酢酸エチルと水とで分配して得られた酢酸エチル抽出物を、シリカゲルカラムにより処理して採取する、上記(3)に記載の化合物、又はその塩若しくはエステル。
(5)サーモスポロスリックス・ハザケンシスが、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20-1T株である、上記(3)又は(4)に記載の化合物、又はその塩若しくはエステル。
(6)サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)を培地に培養し、その培養物から上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物、又はその塩若しくはエステルを採取することを含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物、又はその塩若しくはエステルの製造方法。
(7)培養物のアセトン水溶液抽出物を酢酸エチルと水とで分配して得られた酢酸エチル抽出物を、シリカゲルカラムにより処理して上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物、又はその塩若しくはエステルを採取する、上記(6)に記載の方法。
(8)サーモスポロスリックス・ハザケンシスが、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20-1T株である、上記(6)又は(7)に記載の方法。
(9)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物、又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する抗菌剤。
本発明によれば、T. hazakensis SK20-1T株(= NBRC 105916T= JCM 16142T= ATCC BAA-1881T)に由来する新規抗菌活性物質、及びその製造方法を提供することができる。
図1−1は、HK-1の1H-NMRスペクトルを示す図である。 図1−2は、HK-1の13C-NMRスペクトルを示す図である。 図1−3は、HK-1のCOSYスペクトルを示す図である。 図1−4は、HK-1のHSQCスペクトルを示す図である。 図1−5は、HK-1のHMBCスペクトルを示す図である。 図1−6(a)は2.19 ppmを照射した際のHK-1の1D-ROESYスペクトルを示す図、図1−6(b)はその拡大図である。 図1−7(a)は6.21 ppmを照射した際のHK-1の1D-ROESYスペクトルを示す図、図1−7(b)はその拡大図である。 図1−8は、HK-1のNMRスペクトル解析の結果を示す図である。 図1−9は、HK-1の重水素置換による同位体シフトを観測した13C-NMRスペクトルを示す図である。 図2は、HK-1のモノマー構造を示す図である。 図3は、HK-1の平面構造を示す図である。 図4−1は、pH変動後の高熱処理したHK-1抗菌活性測定の結果を示す図である。 図4−2は、pH変動及び保管温度と時間の経過に伴うB. subtilisに対する抗菌活性測定の結果を示す図である。 図4−3は、pH変動及び保管温度と時間の経過に伴うG. stearothermophilusに対する抗菌活性測定の結果を示す図である。
本発明は、式(I):
Figure 2020138957
で表される化合物、又はその塩若しくはエステルに関する(以下、本発明の化合物ともいう)。本発明の化合物は高い抗菌活性を有する。本発明の化合物は特にグラム陽性細菌に対して高い抗菌活性を有する。
式(I)の化合物は、以下の構造:
Figure 2020138957
が二量体となった構造を有する。当該二量体はC-6位の酸素を介したペルオキシド形成によるものである。式(I)の化合物に不斉炭素が存在する場合は、全ての鏡像異性体及びそれらの混合物が含まれ、立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体及びそれらの混合物が含まれる。式(I)の化合物は、水和物、溶媒和物又は結晶多形を形成してもよい。C-10位のグリコシド結合はα結合及びβ結合のいずれであってもよい。
また本発明は、以下の理化学的性質:
UVスペクトルにおいて340 nmに吸収極大を有し、モル吸光係数が30630であり;
ESI/TOF/MSスペクトル及び高分解能マススペクトルによる解析から分子式がC74H58Cl8O26であり;
1H NMRスペクトル(DMSO−d6、J=Hz)が、δ11.49、10.92、6.67、6.41、6.21、6.00、5.91、4.95(d, 4.7)、4.26、3.96、3.95、3.79、3.71、3.70、2.69、2.19、及び0.90(d, 5.7)にシグナルを有し;
13C NMRスペクトル(DMSO−d6)が、δ 188.61、184.49、162.20、159.96、158.11、155.76、155.25、150.91、140.73、140.25、140.25、138.20、137.79、137.26、134.60、133.53、132.77、125.42、121.51、120.24、119.19、114.71、111.89、109.54、102.99、99.78、98.55、77.15、72.75、70.21、67.00、61.20、60.68、56.94、17.83、15.90、及び14.96にシグナルを有する化合物、又はその塩若しくはエステルにも関する。当該理化学的性質を有することは以下の実施例において実証されている。上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルは高い抗菌活性を有する。上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルは特にグラム陽性細菌に対して高い抗菌活性を有する。上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルに不斉炭素が存在する場合は、全ての鏡像異性体及びそれらの混合物が含まれ、立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体及びそれらの混合物が含まれる。上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルは、水和物、溶媒和物又は結晶多形を形成してもよい。また式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルをまとめて本発明の化合物ともいう。
式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物の塩としては、特に限定されることなく種々の塩を用いることができる。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩等を挙げることができる。さらに、これらの塩は、水和物、溶媒和物又は結晶多形を形成してもよい。
式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物のエステルとしては、特に制限はなく、例えば、酢酸等の脂肪酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸とのエステル等を挙げることができる。脂肪酸とは飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含み、鎖長については短鎖、中鎖及び長鎖を含み、具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、デセン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、及びエイコサペンタエン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また芳香族脂肪酸とは、安息香酸、安息香酸のオルト、メタ及び/又はパラ位にアミノ基、水酸基等の置換基を有するものも含まれ、ナフトエ酸等の多環芳香族のカルボン酸も含む。式(I)の化合物は、式(I)中の水酸基の内1〜12個の位置、好ましくは、C-3’、C-6’、C-8’、C-10’、C-2”、及びC-3”位から選択される少なくとも1つの炭素に結合する水酸基においてエステルを形成しうる。これらのエステルは、常法に従い、例えば、酸性触媒下、対応するカルボン酸と式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物とを反応させることで得ることができる。
本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)を培地に培養し、その培養物から式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルを採取することを含む、式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルの製造方法にも関する(以下、本発明の製造方法ともいう)。本発明の製造方法によれば、本発明の化合物を高い収率で得ることができる。
本発明の製造方法におけるT. hazakensisの培養は、通常の微生物の培養方法が用いられる。培地としては、資化可能な炭素源、窒素源、無機物及び必要な生育・生産促進物質を適宜含有する培地であれば、合成培地又は天然培地のいずれでも使用可能である。炭素源としては、グルコース、澱粉、デキストリン、マンノース、フラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜等を単独又は組み合わせて用いられる。さらに、必要に応じて炭化水素、アルコール類、有機酸、アミノ酸(トリプトファン等)等も用いられる。窒素源としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、乾燥酵母、コーン・スチープ・リカー、大豆粉、綿実かす、カザミノ酸等が単独又は組み合わせて用いられる。そのほか、必要に応じて食塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸第一鉄、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛等の無機塩類を加える。さらに使用する微生物の生育や本発明の化合物の生産を促進する微量成分を適当に添加することができ、そのような成分は当業者であれば適当なものを選択することができる。
かかる栄養培地でのT. hazakensisの培養は、一般の微生物による抗生物質の製造において通常使用されている方法に準じて行なうことができる。通常は好気条件下に培養するのが好適であり、通常は攪拌しながら及び/又は通気しながら行なうことができる。また、培養方法としては静置培養、振盪培養、通気攪拌をともなう液体培養のいずれも使用可能であるが、振盪培養が適している。
使用しうる培養温度はT. hazakensisの発育が実質的に阻害されず、該抗生物質を生産しうる範囲であれば、特に制限されるものではなく、適宜選択できる。特に好ましいのは35〜50℃の範囲内の培養温度を挙げることができる。培地のpHは3〜11で培養することができ、6〜10が望ましい。培養は通常は抗生物質が十分に蓄積するまで継続することができる。その培養時間は培地の組成や培養温度、使用温度、使用生産菌株等により異なるが、通常2〜8日間の培養で目的の抗生物質が培養液中及び菌体中に生成蓄積される。
培養物中の新規抗生物質の蓄積量は検定菌としてGeobacillus stearothermophilus ATCC 7953株及び/又はBacillus subtilis NBRC 3134T株を使用して、通常の抗生物質の活性試験に用いられるペーパーディスク法により定量することができる。
培養物及び菌体中に蓄積された新規抗生物質は、これを培養物から採取する。培養後、必要により、濾過、遠心分離等のそれ自体公知の分離方法によって菌体と上清を分離後、その上清は有機溶媒、特にアセトン等を用いた溶媒抽出や、吸着やイオン交換能を利用したクロマトグラフィー、ゲルろ過、液液分配を利用したクロマトグラフィーを単独で又は、組み合わせて使用することにより培養上清から新規抗生物質を単離精製して採取することができる。吸着やイオン交換能を有するクロマトグラフィー用担体としては、活性炭、シリカゲル、多孔性ポリスチレン・ジビニルベンゼン樹脂若しくは各種のイオン交換樹脂を用いることができる。菌体は50%アセトン抽出後、上清と同様各種クロマトグラフィーを単独で又は、組み合わせて使用することにより単離精製する。新規抗生物質は、培養物のアセトン水溶液抽出物を酢酸エチルと水とで分配して得られた酢酸エチル抽出物を、シリカゲルカラムにより処理して得ることが好ましい。また、シリカゲルカラムの移動相としては酢酸エチルを用いることが好ましい。かくして、前記した特性を有する新規抗生物質が得られる。
式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物の抗菌活性について検討を行った結果、Geobacillus stearothermophilus ATCC 7953株、Bacillus subtilis NBRC 3134T株、Streptomyces griseus NBRC 15744T株、Escherichia coli NBRC 102203T株、Thermosporothrix hazakensis SK20-1T/NBRC 105916T株、Thermosporothrix narukonensis F4T株、Streptomyces sp. AGRN-7株、Streptomyces sp. AGRN-8株、及びStreptomyces sp. AGRN-9株に対して特に優れた抗菌活性を有することを見出した。
本発明は、式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する抗菌剤にも関する(以下、本発明の抗菌剤ともいう)。本発明の抗菌剤は、有効成分としての式(I)の化合物又は上記理化学的性質を有する化合物、又はその塩若しくはエステルを常用の液体又は固体担体、例えばエタノール、水、デンプン等と混和してなる組成物の形で調合して使用してもよい。有効濃度は、抗菌性を発揮できる範囲内であれば特に限定されないが、例えば、1〜1000μg/mlとすることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]Thermosporothrix hazakensis SK20-1Tが生産する抗菌活性物質「HK-1」の精製
<使用菌株>
Thermosporothrix hazakensis SK20-1T/NBRC 105916T
<使用培地>
Figure 2020138957
<実験方法>
1.T. hazakensisの培養
1.1 菌起こし
300 ml三角フラスコにYS培地を250 ml作成し、オートクレーブで滅菌処理(121℃、20 min)を行った。50℃以下に冷ました後、シャーレに25 mlずつ分注した(プレート10枚作成)。YS培地1枚に-80℃保管のT. hazakensisのグリセロールストックから氷一かけら分を爪楊枝で放射状に植菌した。50℃で4日間静置培養した。
1.2 シード培養
500 mlバッフル付き三角フラスコにLB(+M)培地を100 ml作成し、オートクレーブで滅菌処理(121℃、20 min)を行った。50℃以下に冷ました後、「1.1 菌起こし」で植菌したプレートからT. hazakensisを1 cm2爪楊枝で抜き取り植菌した。振盪培養器にて45℃、135 rpmで24時間培養した。
1.3 ジャーファーメンターによる培養
DIAION HP-20(日本錬水株式会社)を4 Lミニジャー(ABLE株式会社)2つと5 Lミニジャー(株式会社丸菱バイオエンジン)1つにそれぞれ10 g、15 g加えた。R2A(+L)培地を10 Lプラスチックビーカーにて7 L作成し、4 Lミニジャーにそれぞれ2 Lずつ、5 Lミニジャーに3 L添加し、オートクレーブで滅菌処理した(121℃、15 min)。滅菌処理後、1日静置し、培地を冷ました。各ミニジャーにおける培地量の0.1%のシード培養したT. hazakensisを植菌した。制御装置に接続後、培地量の半分の空気を入れ、45℃で、回転数は4 Lミニジャーでは160 rpm、5 Lミニジャーでは135 rpmで4日間振盪培養を行った。
2.抽出実験
2.1 抽出
各ミニジャーにおけるHP-20添加培養液28 L全量を合併し、DIAMETER 315・OPENING 200 μm、DIAMETER 200・OPENING 300 μmの篩にあけ、菌体とHP-20を回収した。500 ml遠心管4本に等量分注し、サンプルと等量の100%アセトンを加えた。激しく撹拌した後、往復振盪培養器(135 rpm)で30分間振盪した。遠心管を冷却遠心機(4℃、6,000 rpm、10 min)で遠心した。遠心から得られた上清を桐山ロートで吸引濾過し、ろ液をナスコルベン(エバポレーター用)に移し替えた後、エバポレーターで蒸留し、試料中のアセトンを除去した。濃縮液計 2.8 Lを4℃室で保存した。
2.2 液液分配
(1)アセトン水溶液抽出試料をエバポレーターで800 mlまで濃縮し、アセトンを完全に飛ばした。
(2)得られた試料を6 N塩酸を用いてpH 5.7に調整した。
(3)3,000 ml分液ロートに全量入れ、400 mlの酢酸エチルを加えた。
(4)分液ロートを15〜30秒間激しく撹拌し、口を上に向け、栓を開放しガスを排出した。
(5)上記(4)の動作を5、6回繰り返した後、溶液が分離するまで静置した。
(6)下層と上層を2,000 ml三角フラスコに分け、上層を酢酸エチル抽出液とした。
(7)下層を上記(3)〜(6)と同様手順で2回繰り返した。
(8)酢酸エチル抽出液を全量合併し、3,000 ml分液ロートに入れ、500 mlの5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。
(9)上記(4)〜(5)の動作を行った後、下層を抽出液とし、500 ml分取した。
(10)上層を上記(8)〜(9)と同様手順で再度繰り返した。
(11)得られた下層1,000 mlを6 N塩酸でpH 5.7に調整した。
(12)下層全量を3,000 ml分液ロートに入れ、等量の酢酸エチルを加えた。
(13)上記(4)〜(6)の動作を行った後、上層を抽出液とし、500 ml分取した。
(14)下層を上記(3)〜(6)と同様手順で2回繰り返した。
(15)酢酸エチル抽出液を全量合併し、無水硫酸ナトリウムを適量加え(水分がなくなり固形になる程度)、15分室温放置した。
(16)露紙で濾過した後、エバポレーターを用いて乾固した。
(17)電子天秤を用いて収量を測定した。
3.シリカゲルカラムクロマトグラフィー
50 gのC-200シリカゲル(Wakogel(R) C-200、富士フィルム和光純薬)を100 mlの酢酸エチルで懸濁し、カラムに流し込んだ。カラムを外側から軽くたたき、シリカゲル懸濁液を滴下した。乾固した酢酸エチル抽出物を6 mlの酢酸エチルで溶かし、カラムに充填した。上部から酢酸エチルを追加し、目的物の色(黄色)が下部に到達した時点から、溶出液を試験管に15 mlずつ分取した。分取したフラクションに呈色を示さなくなったら溶媒を酢酸エチル:メタノール=1:1に変更し、溶出液に色がなくなるまで分取した。
4.薄層クロマトグラフィー
分取した酢酸エチル溶出液を一つおきにキャピラリーを用いてTLCプレート(Silica gel 60 F254、MERCK KGaK)上にスポットした。ドライアーで乾燥させた後、展開液(酢酸エチル:酢酸=4 ml:0.5 ml)を用いて展開した。展開液がTLCプレート上部1 cm程度に達した後、展開層から取り出し、ドライアーで乾燥させた。TLCプレートをUV254 nm及びUV325 nm照射下でスポットを検出した。夾雑スポットの少ないフラクションをエバポレーターを用いて濃縮した後、デシケーターで乾固した。電子天秤を用いて収量を測定した。
<結果>
培養液に添加したHP-20及び菌体の50%アセトン抽出液を濃縮後、酢酸エチルで抽出したところ1.0 gの抽出物が得られた。得られた抽出物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、酢酸エチルで溶出した。溶出液は分画し、各画分をTLCで分析した結果、18〜25番目のフラクションに単一スポット(Rf=0.74、以下、HK-1という)が確認された。18〜25番目のフラクションからHK-1は240 mg得られた。
[実施例2]HK-1の構造解析
[1.HK-1の物性及び化学的性質]
<実験方法>
1.MS
少量のHK-1をメタノールに溶解させた。ESI(-)/TOF-MSスペクトル解析に供した。分析機器は以下の通りである。
Agilent 1110 series(ポンプ)
The Accu TOF JMC-T100LC(MS)
2.HRMS
国立医薬品食品研究所へ測定を依頼した。HRMSは(M-H)-イオンのプロファイルを解析した。分析機器は以下の通りである。
Agilent 1200 series(ポンプ)
Agilent 6530 Q-TOF(MS)
3.UV
少量のHK-1をメタノールに溶解させJASCO V-630 Spectrophotometerで吸収極大を測定した。
4.pH安定性
50 mlファルコンチューブに20 mgのHK-1を電子天秤で測り取り、20 mlのメタノールを加え軽く撹拌した(1000 γ)。15 mlファルコンチューブに3.3 mlずつ計2本に分注した。そのうちの1本に1 Nの水酸化ナトリウムを20 μl加え軽く撹拌した。pH試験紙でpHを確認した。各試料を10 μlずつHPLCに供した。HPLC分析条件は以下の通りである。
カラム:CAPCELL PAK C185 μm 4.6 mm l.D×150 mm
移動相A:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液
移動相B:アセトニトリル
カラム恒温槽の温度:40℃
流速:1 ml/min
UV:254 nm
溶出方法:濃度勾配 0分〜18分 B濃度50%〜100%
18.1分〜23分 B濃度100%
23.1分〜25分 B濃度50%
<結果・考察>
HK-1は薄い黄色を呈する粉末で、そのメタノール溶液も同様の呈色を示した。HK-1を紫外可視分光光度計で測定したUVスペクトルでは、340 nmに吸収極大が認められ、モル吸光係数は30630であった。ネガティブモードで測定したESI/TOF/MSスペクトルでは、m/z 1645付近に(M-H)-イオンと考えられるイオンが観測され、シグナルパターンからハロゲン原子が含まれていることが示唆された。またm/z 822付近に(M-2H)2-イオンと考えられるイオンが観測された。さらに、HRMSでm/z 1645付近のイオンのプロファイルを解析した結果、HK-1は8つの塩素原子を持つ分子式C74H58Cl8O26の化合物であることが判明した。HK-1をpH無調整、pH 9に調製した溶液はHPLCにおいて分解物ピークが観測されず、安定であることがわかった。また比旋光度は[α]24 D -49 (c= 1.0, DMSO)であった。
[2.HK-1のNMRスペクトル]
<実験方法>
80 mgのHK-1を0.75 mlのジメチルスルホキシド-d6,99.9%D(NMR用、関東化学株式会社)に溶解した。パスツールピペットに石英綿を詰め、溶解したHK-1溶液を通し、NMR管に充填した。キャップを閉め、パラフィルムで密閉し、遮光して測定した(NMR機器、Varian Inova 500)。
<結果・考察>
HK-1の1H-NMR、13C-NMR、COSY、HSQC、及びHMBCスペクトルを図1−1〜図1−5に示す。さらに、2.19 ppm及び6.21 ppmでそれぞれ照射した際のHK-1の1D-ROESYスペクトルを図1−6及び図1−7に示す。1D-ROESYスペクトル(図1−6)において、H-11位(2.19 ppm)を照射した際にメトキシプロトン(H-13位)でROEが観測されたことから、メトキシ基(C-13位)の位置はC-8位であると決定した。これらのNMRスペクトルの解析により、HK-1には図1−8に示した部分構造が存在することが明らかになった。この部分構造には13C-NMR スペクトルで観測される炭素シグナル37本が全て含まれていることより、この部分構造が二量体となった構造をHK-1は有することが示唆された。
[3.塩酸による加水分解反応]
<実験方法>
1.加水分解
1 mgのHK-1をスターラーバー入り20 ml容ナスフラスコに入れた。1 mlのアセトニトリルを加えゆっくり撹拌しながら、1 mlの1 M塩酸を数滴ずつゆっくり加えた。混合液をオイルバス上で30分間加熱還流し、室温へ戻した後、凍結乾燥した。
2.HRMS
凍結乾燥後の塩酸加水分解物について、国立医薬品食品衛生研究所へ測定を依頼した。HRMSは(M-H)-イオン付近のプロファイルを解析した。分析機器は以下の通りである。
Agilent 1200 series(ポンプ)
Agilent 6530 Q-TOF(MS)
<結果・考察>
HK-1を0.5 Mの濃度で塩酸を含む50%アセトニトリル中、加熱還流により加水分解した後、加水分解物をそのままネガティブモードのQ-TOF/MSにより分析した。得られたマススペクトルでは、m/z 1413を最大強度とするイオンが観測され、HRMSにより、加水分解物の分子式はC64H42Cl8O20であることが分かった。この加水分解物の分子式は、HK-1の2つの5-デオキシフラノサイドが加水分解により除去された場合に生じるアグリコンのものと一致した。したがって、HK-1の5-デオキシフラノサイドの3位の炭素には水酸基が結合することが示された。
[4.13C-NMRスペクトル解析]
これまでの解析により、HK-1は図1−8の部分構造のC-3”に水酸基が結合したものが二量体となった構造を有すると考えられた。モノマー部分に塩素原子を4個加えると、HK-1のモノマー構造部分の分子式を満たすことになる。図1−8において、塩素原子が結合することができる炭素は、C-2、C-4、C-6、C-2’及びC-5’であるが、C-6には酸素が結合していることより、塩素原子はC-2、C-4、C-2’及びC-5’に結合することが明らかとなった。
[5.水酸基の結合位置の確認]
HK-1に存在する6個の水酸基の結合位置を、水酸基が結合した炭素の13C-NMRスペクトルでのケミカルシフトが、D2O中とH2O中で同位体シフトにより異なることで水酸基が結合した炭素を決定する手法を用いて確認した。D2O及びH2O溶液がそれぞれ入った二重管NMRチューブを用いて測定したところ図1−9の13C-NMRスペクトルが得られ、水酸基が結合したC-3’、C-6’、C-8’、C-10’、C-2”及びC-3”ではシグナルが2本観察され、6個の水酸基の結合位置が確認された。
[6.HK-1の構造]
以上よりHK-1は、図2に示すモノマー構造のC-6位の酸素間でペルオキシドを形成する、図3に示す二量体構造であることが判明した。表2には1H-NMR及び13C-NMRスペクトルにおける各シグナルの帰属を示した。ジフェニルパーオキサイド構造を持つ天然物は珍しく、植物成分として単離されたbungein Aにおいてのみ知られる(Hui Yang, Ai-Jun Hou, Shuang-Xi Mei, Han-Dong Sun and Chun-Tao Che, 2002年, Constituents of Clerodendrum Bungei, Journal of Asian Natural Products Research, 4 165-169)。5-デオキシフラノサイドの5つの炭素のケミカルシフト(99.78(C-1”)、72.75(C-2”)、70.21(C-3”)、77.15(C-4”)及び15.90(C-5”))から、C-10位にグリコシド結合しているのは、5-デオキシ-β-リキソフラノース(5-deoxyl-β-lyxofuranose)であるとした(Joseph R, Snyder and Anthony S. Serianni, 1987 年, Synthesis and N.M.R.-spectral analysis of unenriched and [1-13C]-enriched 5-deoxypentoses and 5-O-methylpentoses, Carbohydrate Research, 163(1987) 169-188)。5-デオキシリキソース(5-deoxylyxose)はこれまで天然物として得られた報告はなく、HK-1において初めてとなる。
Figure 2020138957
[実施例3]HK-1の活性測定試験
[1.抗菌スペクトラム試験]
HK-1の抗菌活性を下記の菌体についてペーパーディスクを用いてアッセイした。
<使用菌株>
Geobacillus stearothermophilus ATCC 7953
Bacillus subtilis NBRC 3134T
Streptomyces griseus NBRC 15744T
Escherchia coli NBRC 102203T
Thermosporothrix hazakensis SK20-1T/NBRC 105916T
Thermosporothrix narukonensis F4T
Streptomyces sp. AGRN-7
Streptomyces sp. AGRN-8
Streptomyces sp. AGRN-9
<使用培地>
Figure 2020138957
<実験方法>
1.G. stearothermophilus抗菌アッセイ
LB寒天培地(実施例1参照)に-80℃保管のG. stearothermophilusグリセロールストックから氷1かけらを爪楊枝で一面植菌した。60℃、18 h培養した。培養後、500 μlの滅菌水に1/2白金耳採取して懸濁した。懸濁した菌液を滅菌水で10 倍に希釈した。LB寒天培地に希釈液100 μl滴下し、スプレッターで乾くまで塗布した。露紙上にペーパーディスク1枚を置き、メタノールで1000 γに調整したHK-1溶液を50 μl滴下し、乾燥させた後、菌体を塗布した寒天培地上に置いた。60℃、18 h培養した後、阻止円の直径を測定した。
2.B. subtilis、E. coli抗菌アッセイ
培養温度を37℃に変更した以外は、上記1と同様にしてアッセイした。
3.S. griseus抗菌アッセイ
YMPD寒天培地に-80℃保管のS. griseusグリセロールストックから氷1かけらを爪楊枝で一面植菌した。28℃、5日間培養した。培養後、胞子を綿棒で少量かきとり、YMPD培地に一面植菌した。露紙上にペーパーディスク1枚を置き、メタノールで1000 γに調整したHK-1溶液を50 μl滴下し、乾燥させた後、菌体を塗布した寒天培地上に置いた。28℃、4日間培養した後、阻止円の直径を測定した。
4.T. hazakensis、T. narukonensis抗菌アッセイ
YS培地(実施例1参照)、50℃、2日間培養に変更した以外は、上記3と同様にしてアッセイした。
5.Streptomyces sp. AGRN-7抗菌アッセイ
ISP2培地、45℃、2日間培養に変更した以外は、上記3と同様にしてアッセイした。
6.Streptomyces sp. AGRN-8、9抗菌アッセイ
BM培地、45℃、2日間培養に変更しした以外は、上記3と同様にしてアッセイした。
<結果・考察>
各グラム陽性細菌における阻止円の直径は、B. subtilis 32.0 mm、G. stearothermophilus 34.0 mm、S. griseus 38.0 mmであり、HK-1生産菌T. hazakensisは10.0 mm、その類縁株であるT. narukonensisも同じ10.0 mmであった。また、アゴラ造園株式会社の堆肥から分離された好熱性放線菌であるStreptomyces sp. AGRN-7(Streptomyces thermodiastaticus に16S rRNA遺伝子配列が99%類似)は22.0 mm、Streptomyces sp. AGRN-8(Streptomyces mexicanus に16S rRNA遺伝子配列が99%類似)は16.0 mm、Streptomyces sp. AGRN-9(Streptomyces leeuwenhoeckiiに16S rRNA遺伝子配列が99%類似)は19.0 mmの阻止円を形成した。また、グラム陰性細菌であるE.coli は14.0 mmの阻止円を形成した。
阻止円の大きさから、HK-1はグラム陽性細菌に対し高い抗菌活性能力を保持していることが示された。また、種々の好熱性放線菌に対しても抗菌活性を示すことが判明した。抗生物質を生産する放線菌群は薬剤に対し高い耐性を有することが知られているが、今回の結果より、HK-1はその放線菌に対しても有効な抗生物質であることが示された。そして、生産菌であるT. hazakensis自身に対しても高濃度で抗菌作用を示すことから、生産菌はHK-1の生産量を致死濃度を下回るように制御している可能性が考えられた。
[2.最小生育阻止濃度の測定]
最小発育阻止濃度(MIC)とは抗生物質感受性試験の一つで、微生物の視認できる発育を阻止する抗微生物物質の最小濃度を意味する。研究現場において、新しい抗生物質と従来の物質との効果の比較や数種の菌株に対する作用の検証にもMIC測定が用いられ、抗生物質の評価する上で重要な判断基準とされている。今回得られた抗菌活性物質「HK-1」について液体培地による希釈法を用いてMICを測定した。
<使用菌株>
Geobacillus stearothermophilus 111499 MERCK (ATCC 7953)
Bacillus subtilis NBRC 3134T
<使用培地>
Figure 2020138957
<実験方法>
1.G. stearothermophilus菌液の調製
LB寒天培地1枚に-80℃保管のG. stearothermophilusのグリセロールストックから氷一かけらを爪楊枝で一面植菌した。60℃、18 h培養した。培地1 cm2を爪楊枝でくり抜き、液体LB培地10 ml入り長試験管に入れ、60℃、300 rpm、18 h振盪培養した。培養液を滅菌水でMcF標準液 No.1程度に希釈した。
2.B. subtilis菌液の調製
温度のみ37℃に変更した以外は、上記1と同様にして調製アッセイした。
3.HK-1添加培地の作成
2 mlエッペンチューブに電子天秤で2 mgのHK-1を量り取った。エッペンチューブに2 mlのメタノールを加え溶解し、10 kγのHK-1溶液とした。滅菌済み0.22 μmのフィルターに通した。100 μlのHK-1溶液を使用し、メタノールを用いて50 μlの2倍希釈系列(10 kγから19 γ)を作成した。LB液体培地5 mlの入った試験管に各1%ずつ添加した。上記1及び2で作成した培養液を各1%ずつ試験管に加えた。各温度(G. stearothermophilus、60℃、B. subtilis、37℃)、135 rpm、18 hで培養した。培養後、目視観察及びOD600を5 ml LB液体培地に1%のメタノールと滅菌水を加えた試験管をコントロールとして測定した。
<結果・考察>
HK-1は両菌株ともに0.78 μg/mlの濃度まで生育を阻害した。OD600測定結果からは、混濁が観察された0.78 μg/ml以下の試験管では顕著な差は観られなかった。高濃度のHK-1添加培地は通常のLB培地と比較すると若干の黄色を呈していた。培養後も色は変化しなかった。
上記結果より、枯草菌B. subtilis及び食料腐敗原因菌G. stearothermophilusにおいてHK-1は比較的強い抗菌効果を有することが示された。
[3.pH変更時の抗菌活性試験]
化合物の安定性は物質を評価する上で重要な情報の一つとされている。外部環境に変化が生じても化合物自体が安定であれば、様々な場面での応用が可能となり、またその情報から生物学的知見の獲得にも繋がるからである。よって上記「1.抗菌スペクトラム試験」で調製した溶液を用いてG. stearothermophilus及びB. subtilisによる抗菌活性測定を行い活性の安定性を調べた。
<使用菌株>
Geobacillus stearothermophilus ATCC 7953
Bacillus subtilis NBRC 3134T
<使用培地>
Figure 2020138957
<実験方法>
1.抗菌活性検定用培地の作成及びアッセイ
1.1 Bacillus subtilis 抗菌活性検定用培地 (プレート10枚分)
< Bacillus subtilis 芽胞懸濁液の作成>
(1)300 ml三角フラスコにLB培地を250 ml作成し、オートクレーブで滅菌処理(121℃、20 min)を行った。
(2)50℃以下に冷ました後、シャーレに25 mlずつ分注した(プレート10枚作成)。
(3)LB寒天培地(実施例1参照)10枚に各30 μlずつB. subtilis胞子液を綿棒で一面植菌した。
(4)37℃で1週間静置培養した。
(5)滅菌した脱脂綿1枚に滅菌水を3 ml加え、プレート1枚分の胞子をかきとった。
(6)1 mlシリンジで脱脂綿から約3 mlの菌液を吸い取り、滅菌した50 mlファルコンチューブに移した。
(7)上記(5)及び(6)を計10回行った。
(8)約30 mlの菌液が入った50 mlファルコンチューブを30分、60℃の浴槽で加温した。
(9)冷却遠心機で遠心(6,000 rpm、10 min、4℃)し、上清を捨てた。
(10)沈殿に30 mlの滅菌水を加え、撹拌した。
(11)上記(9)及び(10)を計2回行った。
(12)冷却遠心機で遠心(6,000 rpm、10 min、4℃)し、上清を捨てた後、沈殿が溶ける程度少量の滅菌水を加えた。
(13)30分間、60℃の浴槽で加温した。
(14)4℃で保存し、これをB. subtilis芽胞懸濁液とした。
< Bacillus subtilis 抗菌活性検定用培地の作成>
(1)200 ml三角フラスコにNB培地を100 ml作成し、オートクレーブで滅菌処理(121℃、20 min)を行った。
(2)50℃以下に冷ました後、B. subtilis芽胞懸濁液を100 μl添加した。
(3)軽く撹拌したのち10 mlずつシャーレに分注した。
(4)凝固後、4℃で保存した。
アッセイ時、37℃で18時間インキュベートした。
1.2 Geobacillus stearothermophilus抗菌活性検定用培地 (プレート10枚分)
(1)長試験管2本にLB培地(実施例1参照)(オートクレーブ済み)を10 ml分注した。
(2)各長試験管に市販のG. stearothermophilus芽胞懸濁液を50 μl植菌した。
(3)各長試験管を60℃、300 rpmで24時間振盪培養した。
(4)200 ml三角フラスコにAM2培地を100 ml作成し、オートクレーブで滅菌処理(121℃、20 min)した。
(5)上記培地を50℃以下に冷ました後、G. stearothermophilus培養液を20 ml添加した。
(6)軽く撹拌したのち10 mlずつシャーレに分注した。
(7)凝固後、4℃で保存した。
アッセイ時、50℃で18時間インキュベートした。
1.3 各抗菌活性検定用培地の活性測定方法:ペーパーディスクアッセイ
各菌体重層培地(B. subtilis、G. stearothermophilus)の上に50 μlの試料を浸したペーパーディスクを置いた。培地をインキュベートした。インキュベーターから培地を取り出し、阻止円の直径をノギス(kanon hardened stainless 150 mm)で測定した。
<結果・考察>
B. subtilisでは、pH 無調整の溶液の阻止円直径は18.5 mmであったのに対し、pH 9に調整した溶液は20.2 mmであった。G. stearothermophilusでは、pH 無調整の溶液の阻止円直径は21.9 mmであったのに対し、pH 9に調整した溶液は22.6 mmであった。塩基性に調整した溶液はコントロールと比較して阻止円が多少大きくなった。
[4.温度変動時の安定性試験]
化合物の安定性を測定する上で代表的な試験は、pH安定性試験のほかに耐熱性試験、保存試験等が挙げられる。これらの情報も上述したように化合物を評価する上で重要とされている。上記「3.pH変更時の抗菌活性試験」で調製したHK-1の試料を用い、化合物が安定であるか抗菌活性を指標に、G. stearothermophilus及びB. subtilisを使用し実験を行った。
<使用菌株>
Geobacillus stearothermophilus ATCC 7953
Bacillus subtilis NBRC 3134T
<実験方法>
1.耐熱性試験A
上記「3.pH変更時の抗菌活性試験」で調製した1000 γHK-1溶液(pH 9及び無調整)を1 ml容アシストチューブに300 μl分注した。チューブの口をパラフィルムで密閉し、98℃で5分間温浴させた。上記「3.pH変更時の抗菌活性試験」で作成した抗菌活性検定用培地を用いてアッセイした。
2.耐熱性試験B
上記「3.pH変更時の抗菌活性試験」で調製した2つの試料を1 ml容アシストチューブに1 mlずつ各2本に分注した。計4つのチューブの口をパラフィルムで密閉し、それぞれ-28℃設定したフリーザー及び28℃、50℃に設定したインキュベーター内に各1本ずつアルミホイルで遮光し保管した。各試料を保管開始日から1、3、6、12、24日経過後に上記「3.pH変更時の抗菌活性試験」で作成した抗菌活性検定用培地を用いてアッセイした。
<結果・考察>
上記耐熱性試験Aについて、HK-1をpH 9に調整し高温で加熱した結果、2つの試料に関しては数値に多少の差異があるものの抗菌作用は失われなかった(図4−1)。
上記耐熱性試験Bについて、2本の試料について、24日経過後にも抗菌活性が失われなかったことから、高温に耐性がある化合物であることが示された。無調整のHK-1であっても保存温度による顕著な差は観られなかった(図4−2及び図4−3)。
本発明の化合物は抗菌剤として有用である。
本明細書で引用した全ての刊行物はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (9)

  1. 式(I):
    Figure 2020138957
    で表される化合物、又はその塩若しくはエステル。
  2. UVスペクトルにおいて340 nmに吸収極大を有し、モル吸光係数が30630であり;
    ESI/TOF/MSスペクトル及び高分解能マススペクトルによる解析から分子式がC74H58Cl8O26であり;
    1H NMRスペクトル(DMSO−d6)が、δ11.49、10.92、6.67、6.41、6.21、6.00、5.91、4.95、4.26、3.96、3.95、3.79、3.71、3.70、2.69、2.19、及び0.90にシグナルを有し;
    13C NMRスペクトル(DMSO−d6)が、δ 188.61、184.49、162.20、159.96、158.11、155.76、155.25、150.91、140.73、140.25、140.25、138.20、137.79、137.26、134.60、133.53、132.77、125.42、121.51、120.24、119.19、114.71、111.89、109.54、102.99、99.78、98.55、77.15、72.75、70.21、67.00、61.20、60.68、56.94、17.83、15.90、及び14.96にシグナルを有する化合物、又はその塩若しくはエステル。
  3. サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)を培地に培養して、その培養物から採取することにより得られる、請求項2に記載の化合物、又はその塩若しくはエステル。
  4. 培養物のアセトン水溶液抽出物を酢酸エチルと水とで分配して得られた酢酸エチル抽出物を、シリカゲルカラムにより処理して採取する、請求項3に記載の化合物、又はその塩若しくはエステル。
  5. サーモスポロスリックス・ハザケンシスが、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20-1T株である、請求項3又は4に記載の化合物、又はその塩若しくはエステル。
  6. サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)を培地に培養し、その培養物から請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又はその塩若しくはエステルを採取することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又はその塩若しくはエステルの製造方法。
  7. 培養物のアセトン水溶液抽出物を酢酸エチルと水とで分配して得られた酢酸エチル抽出物を、シリカゲルカラムにより処理して請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又はその塩若しくはエステルを採取する、請求項6に記載の方法。
  8. サーモスポロスリックス・ハザケンシスが、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20-1T株である、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する抗菌剤。
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