以下に、本発明の実施の形態に係る異常要因特定方法、異常要因特定装置、電力変換装置及び電力変換システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施の形態]
図1は本発明の実施の形態に係る電力変換装置1を備えた電力変換システム300の構成例を示す図である。電力変換システム300は、電力変換装置1、バイパス25、受電設備24及び蓄電池23を備える。電力変換システム300は、電力変換装置1の故障に至らない異常や、電力変換装置1の外部環境に起因する異常が生じた場合、何らかの異常が発生したことを示す異常通知情報をユーザに通知するために、異常要因を特定して、例えば、電力変換装置1の表示部60に異常要因を表示させ、電力変換装置1の通信部61を介して、監視システムと異常要因を報知する。また電力変換システム300は、異常要因を特定して、電力変換装置1の警報部58を介して、ユーザに異常が発生したことを報知する。表示部60、通信部61及び警報部58の詳細は後述する。電力変換装置1は、例えば無停電電源装置である。本実施の形態では電力変換装置1が無停電電源装置である場合の例を説明しているが、電力変換装置1は、無停電電源装置に限定されず、例えばソーラーパネルからの直流電力を交流電力に変換する太陽光用電力変換装置(パワーコンディショナ)でもよいし、入力される直流電圧を異なる値の直流電圧に変換して出力するコンバータでもよいし、入力される直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータでもよい。
電力変換装置1は、交流電圧を整流する整流器4と、チョッパ5と、整流器4又はチョッパ5から出力される電圧を交流電圧に変換して負荷22に出力するインバータ3とを備える。整流器4、チョッパ5及びインバータ3は、電力変換器を構成する。
また電力変換装置1は、遮断器9A、遮断器9B、遮断器9C及び遮断器9Dを備える。
整流器4の入力側には、遮断器9Bを介して、受電設備24が接続される。整流器4は制御部200から出力される制御信号2Bにより制御される。整流器4と遮断器9Bとの間には、コンデンサ6B及びリアクトル8Bが接続される。コンデンサ6B及びリアクトル8Bは、高調波フィルタを構成する。
整流器4の出力側にはインバータ3が接続される。インバータ3は、制御部200から出力される制御信号2Cにより制御される。インバータ3と整流器4との間には、整流器4の出力電圧を平滑するコンデンサ7(直流中間コンデンサ)が接続される。
インバータ3の出力側には、遮断器9Aを介して、負荷22が接続される。インバータ3と遮断器9Aとの間には、リアクトル8A及びフィルタコンデンサ6Aが接続される。リアクトル8A及びフィルタコンデンサ6Aは、高調波フィルタを構成する。
整流器4の出力側とインバータ3の入力側には、チョッパ5が接続される。チョッパ5は、制御部200から出力される制御信号2Aにより制御される。チョッパ5には、遮断器9Cを介して、蓄電池23が接続される。
遮断器9Cとチョッパ5との間には、コンデンサ6C及びリアクトル8Cが接続される。コンデンサ6C及びリアクトル8Cは、高調波フィルタを構成する。
遮断器9A、遮断器9B、遮断器9C及び遮断器9Dのそれぞれは、制御部200から出力される投入指令又は遮断指令により開閉動作する。図1では、制御部200から出力される投入指令又は遮断指令が伝達される配線が省略されている。
遮断器9Aはインバータ3に負荷22を接続し、又はインバータ3と負荷22との接続状態を解除する開閉器である。遮断器9Bは受電設備24に整流器4を接続し、又は受電設備24と整流器4との接続状態を解除する開閉器である。遮断器9Cは蓄電池23にチョッパ5を接続し、又は蓄電池23とチョッパ5と接続状態を解除する開閉器である。遮断器9Dはバイパス25に負荷22を接続し、又はバイパス25と負荷22との接続状態を解除する開閉器である。
制御部200には、異常要因を特定するための情報である異常要因特定情報が入力される。この異常要因特定情報は、充電放電電流10、直流電圧11、直流電流12、直流中間電圧13、受電電圧14、交流入力電圧15、交流入力電流16、バイパス電圧17、バイパス電流18、交流出力電流19、交流出力電圧20、負荷電流21、遮断器アンサーバック27、ファン回転数28、温度29である。異常要因特定情報の種類は、これらに限定されるものではない。
異常要因特定情報を用いることにより、制御部200では、電力変換装置1に発生した異常であるのか、電力変換装置1の外部環境に起因する異常であるのかを特定し、さらに電力変換装置1の故障に至らない異常の要因を特定することができる。制御部200による異常要因特定方法についは後述する。
電力変換装置1で発生する異常の要因としては、例えばコンデンサのレアショートが発生した場合、半導体素子の異常加熱により半導体チップのジャンクション温度が定格温度以上になった場合などである。
電力変換装置1の外部環境に起因する異常の要因としては、例えば、雷が発生して受電設備24にサージが発生した場合、大容量の負荷22が切断又は投入されたことによって交流電力が大きく変動した場合、非常発電設備(受電設備24)の定格容量が小さいために電力変換装置1の出力が制限された場合などである。
その他にも、電力変換装置1の外部環境に起因する異常の要因としては、受電設備24と電力変換装置1との間に地絡が発生した場合、負荷22と電力変換装置1との間に地絡が発生した場合などである。
電力変換装置1の故障に至らない異常の要因としては、例えばリアクトルのレアショートによりインダクタンスが低下して、電圧、電流などにノイズが重畳した場合などである。
充電放電電流10は、蓄電池23と遮断器9Cとの間に流れる電流を検出する電流検出器で検出された電流である。直流電圧11は、コンデンサ6Cに印加される電圧の値を検出する電圧検出器で検出された電圧である。
直流電流12は、遮断器9Cとチョッパ5との間に流れる電流の値を検出する電流検出器で検出された電流である。直流中間電圧13は、コンデンサ7に印加される電圧の値を検出する電圧検出器で検出された電圧である。
受電電圧14は、受電設備24から出力される電圧の値を検出する電圧検出器で検出された電圧である。交流入力電圧15は、整流器4の入力側に印加される電圧の値を検出する電圧検出器で検出された電圧である。交流入力電流16は、整流器4に入力される電流の値を検出する電流検出器で検出された電流である。
バイパス電圧17は、バイパス25から出力される電圧の値を検出する電圧検出器で検出された電圧である。バイパス電流18は、バイパス25から負荷22に流入する電流の値を検出する電流検出器で検出された電流である。
交流出力電流19は、インバータ3から出力される交流電流の値を検出する電流検出器で検出された電流である。交流出力電圧20は、インバータ3から出力される交流電圧の値を検出する電圧検出器で検出された電流である。負荷電流21は、負荷22に流入する電流の値を検出する電流検出器で検出された電流である。
遮断器アンサーバック27は、遮断器9A、遮断器9B、遮断器9C及び遮断器9Dのそれぞれの開閉状態を示す情報である。遮断器アンサーバック27は、後述する補助スイッチ44から出力される。補助スイッチ44は、遮断器9A、遮断器9B、遮断器9C及び遮断器9Dのそれぞれに設けられるノーマリーオープン型又はノーマリークローズ型のスイッチである。ファン回転数28は、後述するファン回転数センサで検出されたファンの回転数を示す情報である。温度29は、後述する温度センサで検出された温度の値を示す情報である。
図2はPWMパルス35を生成する機能を説明するための図である。図2には、制御部200が有する複数の機能の内、PWMパルス35を生成して、制御信号2A、制御信号2B又は制御信号2Cとして出力する機能であるPWMパルス出力部200Aの構成例が示される。
PWMパルス出力部200Aは、減算部32、制御調節部36、及びPWMパルス生成部37を備える。
減算部32は、検出値31と制御指令値30との差分である制御偏差33を出力する。検出値31は、図1に示される充電放電電流10、直流電圧11、直流電流12、直流中間電圧13、受電電圧14、交流入力電圧15、交流入力電流16、バイパス電圧17、バイパス電流18、交流出力電流19、交流出力電圧20、負荷電流21などである。制御指令値30は、電力変換装置1の出力の目標値である。
制御調節部36は、減算部32から出力される制御偏差33に応じた制御調整値34(通電率を指定する情報)を生成して出力する。PWMパルス生成部37は、制御調整値34に基づきPWMパルス35を生成する。
図3は電力変換装置1が備えるデータ分析を行う機能を説明するための図である。電力変換装置1は、センサ検出値64(検出値)が入力される入力部90を備える。制御部200は、運転モード制御調整部46及びデータ分析部47を備える。
入力部90において、センサ検出値64がデータ分析部47にて扱えるようにデータ変換される。具体的には、入力部90は、センサ検出値64をアナログデジタル変換し、出力する。変換されたデータは、センサ検出データ38として、運転モード制御調整部46に入力される。運転モード制御調整部46は、センサ検出データ38に基づき、電力変換装置1の運転モード及び制御調整を行う。運転モード制御調整部46から出力される制御調整データ39は、データ分析部47に入力される。なお、制御偏差33及び制御調整データ39は、それぞれ図2における制御偏差33及び制御調整値34をアナログデジタル変換してデジタル化した数値である。
制御部200には、警報部58、表示部60及び通信部61が接続される。警報部58及び表示部60は、電力変換装置1の本体に設けられているものでもよいし、通信回線を介して、電力変換装置1から離れた場所に設けられているものでもよい。通信部61は、通信回線を介して、監視システムとの間で情報の伝送が可能である。
運転モード制御調整部46は、センサ検出データ38に基づき運転モード情報65(モードパラメータ)を生成して出力する。分析データ62は、要因特定部55の分析結果を示す情報である。運転モード制御調整部46は、受信した分析データ62に基づいて、例えば電力変換装置1の運転を停止させたり、具体的には、整流器4、インバータ3、チョッパ5に対する制御を決定する。運転モード情報65は、要因特定部55に入力される。モードパラメータは、電力変換装置1の運転状態と制御状態と要因判定対象とに応じて変更されるパラメータである。
センサ検出値64は、電流センサ40、電圧センサ41、ファン回転数センサ42及び温度センサ43の何れかで検出された検出情報である。
電流センサ40は、充電放電電流10、直流電流12、交流入力電流16、バイパス電流18、交流出力電流19、負荷電流21などを検出するセンサである。
電圧センサ41は、直流電圧11、直流中間電圧13、受電電圧14、交流入力電圧15、バイパス電圧17、交流出力電圧20などを検出するセンサである。
ファン回転数センサ42は、電力変換装置1の内部に設置される冷却ファンの回転数(ファン回転数28)を検出するセンサである。温度センサ43は、電力変換装置1の内部に設けられる部品の温度を検出するセンサ、当該部品の周囲温度を検出するセンサ、電力変換装置1の環境温度を検出するセンサ、整流器4、インバータ3及びチョッパ5のそれぞれに含まれる半導体素子の温度を検出するセンサなどである。
運転モード情報65は、運転モードの内容を示す情報である。運転モードには、例えば充電運転モード、交流運転モード、入力制限運転モード、直流運転モードなどがある。
充電運転モードは、受電設備24からの電力の供給が停止していないときに、チョッパ5を降圧運転することによって、蓄電池23に電力を蓄える運転モードである。
交流運転モードは、通常時(非停電時)の運転モードであり、受電設備24から供給される電力を利用して負荷22を駆動するモードである。
入力制限運転モードは、負荷22が受電設備24の電力容量より過負荷状態の場合、受電設備24から入力する電力を制限し、不足分の電力を蓄電池23からチョッパ5を経由して放電する場合の運転モードである。
直流運転モードは、停電時の運転モードであり、例えば受電設備24からの電力の供給が停止しているとき、チョッパ5を昇圧運転することによって、蓄電池23に蓄えられた電力を負荷に供給する運転モードである。
なお、運転モード制御調整部46は、以下に示すような情報を、運転モード情報65として生成して、要因特定部55に入力してもよい。
例えば、運転モード制御調整部46は、直流短絡が生じていることを示す情報、蓄電池23に異常が生じていることを示す情報(蓄電池23から発生する温度が設定値より高いことを示す情報、蓄電池23が過電圧状態又は充電不足状態になっていることを示す情報など)、インバータ3に異常が生じていることを示す情報(インバータ3の出力電圧が設定値よりも低下していることを示す情報など)などを生成して出力してもよい。
また、運転モード制御調整部46は、受電設備24から供給される電流が設定値よりも高いことを示す過電流情報を生成して出力してもよいし、受電設備24からバイパス25に切り替わるタイミングを示す切り替えタイミング情報などを生成して出力してもよい。なお、受電設備24からバイパス25に切り替わる際には、制御部200は、インバータ3の交流出力電圧をバイパス25の電圧、位相等を同期させるように制御してから切り替える。このためインバータ3に異常が発生して出力電圧が不足している場合には、バイパス切り替え時に、バイパス25からの電力がインバータ3に流れ込む現象が起きる。
データ分析部47は、異常判定部80、要因特定部55、状態分析データ記録部56、センサ波形記録部57、及び要因分析データ記録部59を備える。
異常判定部80は、第1分析を行う第1分析部48、第2分析を行う第2分析部49、第3分析を行う第3分析部50、第4分析を行う第4分析部51、第5分析を行う第5分析部52を備える。以下では、説明を簡単化するため、「第1分析部48、第2分析部49、第3分析部50、第4分析部51及び第5分析部」を、「第1分析部48など」と称する場合がある。
第1分析部48などには、センサ検出データ38、制御偏差及び制御調整データ39が入力される。
図4は図3に示される第1分析部48などで実行されるデータサンプリング処理と、サンプリングされた離散データを用いた演算処理を説明するための図である。
図4に示される評価入力Aは、前述した充電放電電流10、直流電圧11、直流電流12、直流中間電圧13、受電電圧14、交流入力電圧15、交流入力電流16、バイパス電圧17、バイパス電流18、交流出力電流19、交流出力電圧20、負荷電流21、遮断器アンサーバック27、ファン回転数28、温度29などである。
評価入力Aは、データサンプリング時間毎にサンプリングされて離散系のデータ(サンプル値)に変換される。図4ではサンプル値が、A(k−3)、A(k−2)、A(k)などで表記される。
第1分析部48などは、これらのサンプル値を2乗したものを、一定時間区間積算(2乗積和演算)することで、積算値Bを算出する。積算値B(k)は、A(k−3)からA(k)までのサンプル値を2乗したものを積算した値である。積算値B(k+1)は、A(k+1)からA(k+4)までのサンプル値を2乗したものを積算した値である。
また第1分析部48などは、隣り合うサンプル値同士の差分(各サンプルデータ差)を2乗し、2乗したものを、一定時間区間積算することで、積算値Cを算出する。積算値C(k)は、A(k−3)からA(k)までの各サンプルデータ差を2乗したものを積算した値である。積算値C(k+1)は、A(k+1)からA(k+4)までの各サンプルデータ差を2乗したものを積算した値である。
[第1分析部48]
次に第1分析部48の処理動作を説明する。図5は第1分析部48の処理動作を説明するためのフローチャートである。図6は直交座標に配置された積算値B(k)の平均値と積算値C(k)の平均値と正常範囲とを示す図である。正常範囲は、所定条件により予め設定された判定領域である。
ステップS1において、第1分析部48は、評価入力Aのサンプル値(データA(k))を取得する。
ステップS2において、第1分析部48は、データA(k)を2乗積和演算することにより、積算値B(k)を算出する。
ステップS3において、第1分析部48は、ステップS2で演算された積算値B(k)の平均値を算出する。
ステップS4において、第1分析部48は、ステップS3で演算された積算値B(k)の平均値を、ステップS2で演算された積算値B(k)から減算することによって、直交座標の原点近傍に配置する処理を行う。図6には、直交座標に配置された積算値B(k)の平均値が示される。
ステップS5において、第1分析部48は、2乗積和演算により積算値C(k)を算出する。
ステップS6において、第1分析部48は、ステップS5で演算された積算値C(k)の平均値を算出する。
ステップS7において、第1分析部48は、ステップS6で演算された積算値C(k)の平均値を、ステップS5で演算された積算値C(k)から減算することによって、直交座標の原点近傍に配置する処理を行う。図6には、直交座標に配置された積算値C(k)の平均値が示される。
ステップS8において、第1分析部48は、ステップS2で演算されたB(k)とステップS5で演算されたC(k)とのそれぞれに、パラメータ(規格化パラメータ)Wnを乗算することによって、B(k)及びC(k)を直交座標にプロット可能な値に変換し、変換された値を直交座標にプロットする。nは1以上の自然数であり、分析数を表す。
ステップS9において、第1分析部48は、ステップS8でプロットされたデータ(対象データ)が、図6に示される正常範囲内であるか正常範囲外であるかを判定する。正常範囲は、電力変換装置1の運転状態、電力変換装置1の製造誤差、各センサの検出誤差等を考慮して算出され、予め第1分析部48に設定されている。
例えばバイパス電圧、受電電圧、充電放電電流などのレベルが規定値よりも上昇又は下降した場合、バイパス電圧、受電電圧、充電放電電流などのレベルが短期間に変動(急変)した場合には、ステップS8でプロットされたデータが、正常範囲外に位置する。図6に示される異常データは、ステップS8でプロットされたデータである。
第1分析部48は、データが正常範囲内であると判定した場合(ステップS9,Yes)、処理を終了する。第1分析部48は、データが正常範囲外であると判定した場合(ステップS9,No)、ステップS10の処理を実行する。
ステップS10において、第1分析部48は、正常範囲外と判定されたデータが直交座標の第1象限〜第4象限の何れに存在するかを判定する。また、ステップS10において、第1分析部48は、正常範囲外と判定されたデータから正常範囲までの距離(正常範囲からの距離)ZAを算出する。すなわち第1分析部48は、プロットされたデータが、正常範囲からどの程度離れているのかを算出する。算出した距離情報70は要因特定部55に入力される。要因特定部55は、正常範囲外と判定されたデータが存在する直交座標の象限に基づいて、異常の要因を特定する。要因特定部55の詳細は後述する。
図7を用いてステップS10の動作について説明する。図7はステップS10における動作を説明するための図である。
図7に示される直交座標において、X軸方向は、例えばバイパス電圧、受電電圧、交流出力電流、交流出力電圧、充電放電電流などのレベルが上昇傾向にあるのか下降傾向になるのかを表す。X軸正方向はレベル上昇を表し、X軸負方向はレベル垂下(下降)を表す。
Y軸方向は、例えばバイパス電圧、受電電圧、交流出力電流、交流出力電圧、充電放電電流などのレベルの変動度合(変動率)を表す。Y軸正方向はレベル急変を表し、Y軸負方向はレベル漸変を表す。
第1象限は、検出されたデータのレベルが上昇しかつ急変したことを示す領域である。第2象限は、検出されたデータのレベルが下降(垂下)しかつ急変したことを示す領域である。第3象限は、検出されたデータのレベルが下降(垂下)しかつ漸変したことを示す領域である。第4象限は、検出されたデータのレベルが上昇しかつ漸変したことを示す領域である。
図7に示されるY1〜Y3とX1〜X3のそれぞれは、異常発生時にプロットされたデータから正常範囲までの距離を目安にして、異常レベルを判定するための判定領域である。
Y1、Y2、及びY3は、バイパス電圧、受電電圧、交流出力電流、交流出力電圧、充電放電電流などのレベルが短時間に急変したか漸変したかを判定するための判定領域である。Y1、Y2、Y3と数字が大きくなる順で電圧、電流などのレベルの変動率が大きい。すなわち、異常発生時にプロットされたデータが正常範囲から離れるほど、電圧、電流などのレベルの変動率が大きいことを意味する。Y1、Y2、及びY3は、予め第1分析部48に設定されている。
X1、X2、及びX3は、バイパス電圧、受電電圧、交流出力電流、交流出力電圧、充電放電電流などのレベルがどの程度上昇したか又は下降したかを判定するための判定領域である。X1、X2、X3の順で電圧、電流などのレベルの上昇量又は下降量が大きい。すなわち、異常発生時にプロットされたデータが正常範囲から離れるほど、電圧、電流などのレベルの上昇量又は下降量が大きいことを意味する。X1、X2、及びX3は、予め第1分析部48に設定されている。
図7に示されるPT1は、第1象限においてX2とY2が重なる領域にプロットされたデータである。PT2は、第2象限においてX2とY2が重なる領域にプロットされたデータである。PT3は、第3象限においてX2とY2が重なる領域にプロットされたデータである。PT4は、第4象限においてX2とY2が重なる領域にプロットされたデータである。PT1〜PT4のデータは、異常発生時に検出された電流、電圧などが、前述した積和演算などにより直交座標上にプロットされたものである。
このように直交座標上にデータがプロットされることによって、異常発生時に検出された電流、電圧などのレベルが上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのかを、ユーザに知らせることができる。さらに、異常発生時に検出された電流、電圧などのレベルが急変したのか漸変したのかを、ユーザに知らせることができる。例えば、受電電圧に基づいてプロットする場合で、受電側の平衡が破れ、受電電圧が緩やかに上昇/下降(垂下)してしまった場合、電圧のレベルは上昇/下降(垂下)するが、レベル急変は生じない。したがって、このような場合は、X軸近傍の正常状態範囲から離れたところの正側/負側にプロットされる。また、受電設備24が太陽光発電設備などであって、日射の急変/漸変により受電電圧が急変/漸変する場合や、遮断器が開閉した場合、落雷により雷サージが生じた場合などには、受電電圧にリプルが生じることがある。このような場合、電圧のレベルは変化しないが、レベル急変が生じるため、Y軸近傍の正常状態範囲から離れたところの正側又は負側にプロットされる。ユーザはレベルが上昇傾向にあるのか下降(垂下)傾向にあるのか、レベルが急変したのか漸変したのかを知ることで異常の状態を推定できる。
さらに、直交座標上にX1、X2、X3、Y1、Y2、Y3などの判定領域を組み合わせることによって、検出されたデータが、正常範囲からどの程度離れているのかを、ユーザに知らせることができる。図8を用いて、第1分析部48における異常判定動作の具体例を説明する。
図8は第1分析部48における動作の具体例を説明するための図である。
図8(a)には、交流電圧のレベルが瞬間的に低下(垂下)、かつ、交流電圧の変動率が大きい(急変)場合の例が示される。図8(b)には、交流電圧のレベルが正常、かつ、交流電圧の変動率が大きい場合の例が示される。
図8(a)及び図8(b)のそれぞれには、例えば交流電圧の波形(検出波形)と、直交座標のX座標の値と、直交座標のY座標の値とが示される。なお、X座標の値は、検出波形の周期を任意に分割して、その周期内で積和演算を行った結果を示している。本実施例では、1周期を6分割した場合である。望ましくは、1周期を分析するにあたり、演算サイクルを開始するタイミングを、分割したタイミングのそれぞれで開始するように、並列処理を行うことで、より詳細に素早く検出波形の変化を捉えることが可能である。Y座標の値についても同様である。計算結果の最大値の推移をつなげた値がX座標、Y座標それぞれの値としてプロットされる。
図8(a)の検出波形では、交流の半周期において電圧レベルが垂下している。積算値B(k)の演算の結果、図8(a)のX座標の値は一時的に低下する傾向を示す。また積算値Y(k)の演算の結果、図8(a)のY座標の値は一時的に上昇する傾向を示す。
第1分析部48は、このような検出波形に対して第1分析を実施することにより、図8(c)の直交座標上にプロットPT5を行う。
図8(b)の検出波形では、交流電圧の実効値に揺らぎがあるものの、レベルは正常である。積算値B(k)の演算の結果、図8(b)のX座標の値は変動しないが、図8(b)のY座標の値は一時的に上昇する傾向を示す。
第1分析部48は、このような検出波形に対して第1分析を実施することにより、図8(c)の直交座標上にプロットPT6を行う。
図8(c)の直交座標には、変動正常範囲R1(変動が正常であることを示す範囲)と、レベル正常範囲R2(レベルが正常であることを示す範囲)とが設定されている。変動正常範囲R1は、図7に示される判定領域Y1に対応する。レベル正常範囲R2は、図7に示される判定領域X1に対応する。変動正常範囲R1及びレベル正常範囲R2は、予め設定されている。この説明における変動正常範囲R1及びレベル正常範囲R2のそれぞれの上限と下限を示す点線は、直線で示されているが、これに限定されるものではなく、曲線でもよい。
図8(c)では、第2象限において、プロットPT5が、変動正常範囲R1及びレベル正常範囲R2の外側に位置する。また第1象限において、プロットPT6が、変動正常範囲R1の外側であるが、レベル正常範囲R2の内側に位置する。このプロットから、図8(a)では、交流電圧のレベルが減少し、かつレベルが急変していることがわかる。また図8(b)では、交流電圧のレベルは変化せず、レベルの急変のみが生じていることがわかる。このように検出波形のみの比較では、区別できない波形の乱れを分析し異常の状態を推定することが可能となる。具体的には、電力変換装置1に発生した異常なのか、受電側または負荷側に発生した異常なのかを推定することが可能となる。
プロットPT5が、変動正常範囲R1及びレベル正常範囲R2のそれぞれの外側に位置するため、ステップS11において、第1分析部48は、何らかの異常が発生したと判定して、異常と判定した結果を異常判定情報53(図3参照)として出力する。異常判定情報53は、状態分析データ記録部56、センサ波形記録部57及び警報部58のそれぞれに入力される。
状態分析データ記録部56には、異常レベル数値54と、異常と判定した結果を示す情報である異常判定情報53とが記録される。なお、異常レベル数値54及び異常判定情報53には、異常発生日時を対応付けて記録してもよい。状態分析データ記録部56に記録された情報は、例えば表示部60及び通信部61に入力される。表示部60及び通信部61の詳細については後述する。
センサ波形記録部57には、例えば、異常判定情報53と評価入力データ45(図4に示される評価入力Aに相当)とが記録される。異常判定情報53及び評価入力データ45には、各センサ(電流センサ40など)で電流値などが検出された日時、異常発生日時などを対応付けて記録してもよい。センサ波形記録部57に記録された情報は、例えば表示部60及び通信部61に入力される。なお、評価入力データとは、本実施形態では、センサ検出値64、制御偏差33、制御調整値34、をアナログデジタル変換して生成される。
また第1分析部48は、プロットされたデータが正常範囲からどの程度離れているのかを計算し、計算結果である距離情報70を、要因特定部55に入力する。距離情報70の計算方法については後述する。
第1分析部48は、プロットされたデータが、前述したX1等の判定領域の何れに位置するかを示す数値(異常レベル数値54)を生成し、要因特定部55、状態分析データ記録部56などに入力する。
異常レベル数値54の生成方法は、例えばX1等の判定領域と、生成される数値(異常レベル数値54)とを対応付けたテーブル情報をメモリに格納しておき、このテーブル情報を第1分析部48が参照して、プロットされたデータに対応する数値を読み出して、異常レベル数値54として出力する方法を例示できる。
異常レベル数値54の生成方法の例としては、X1とY1が重なる領域を正常範囲として、それ以外の領域、例えばX1とY2が重なる領域、X2とY2が重なる領域、X2とY3が重なる領域などと、異常レベルに対応する数値とを対応付けたテーブル情報を、第1象限から第4象限のそれぞれで作成してメモリに格納しておき、これらのテーブル情報を第1分析部48が参照して、象限毎のテーブルに、プロットされたデータを照合することにより、対応する数値を読み出して、異常レベル数値54として出力する方法を例示できる。
[第2分析部49]
次に第2分析部49の処理動作を説明する。例えば停止中の負荷22の電源が投入された場合、整流器4の直流電圧が正定値から一時的に低下する。また、正常に運転中の大容量の負荷22の電源が解除された場合、整流器4の直流電圧が整定値から一時的に上昇する。制御指令値がノイズなどの影響により変動したりする。第2分析部49は、このような変化を直交座標にプロットすることによって、要因特定部55による異常要因特定のための情報を生成する。第2分析部49を利用することによって、電力変換装置1の外部環境で生じる擾乱を分析できる。
図9は第2分析部49の処理動作を説明するためのフローチャートである。図10は第2分析部49による分析例として評価入力Dが変動をした場合の直交座標のプロットの例を示す図である。
図10に示される評価入力Dは、例えば直流電圧11、直流電流12、直流中間電圧13、充電放電電流10などの検出値、交流入力電流16、交流出力電圧20などを実効値変換したもの、制御調整値34の何れかである。
ステップS110において、第2分析部49は、評価入力Dのサンプル値(データD(k))を取得する。
ステップS120において、第2分析部49は、データD(k)から指令値R(k)を減算することにより偏差ΔD(k)を求める。指令値R(k)は、図2に示される制御指令値30である。
ステップS130において、第2分析部49は、偏差ΔD(k)を積和演算することにより、積算値X(k)を算出する。
ステップS140において、第2分析部49は、偏差ΔD(k)の差分を積和演算することにより、積算値Y(k)を算出する。
ステップS150において、第2分析部49は、ステップS130で演算されたX(k)とステップS140で演算されたY(k)とのそれぞれに、パラメータ(規格化パラメータ)Wnを乗算することによって、X(k)及びY(k)を規格化することで、直交座標にプロット可能な値に変換し、変換された値を直交座標にプロットする。nは1以上の自然数であり、分析数を表す。
ステップS160において、第2分析部49は、ステップS150でプロットされたデータが、図10に示される正常範囲内であるか正常範囲外であるかを判定する。この正常範囲(変動正常範囲R11及びレベル正常範囲R12)は、電力変換装置1の運転状態、電力変換装置1の製造誤差、各センサの検出誤差等を考慮して算出され、予め設定されている。この説明における変動正常範囲R11、及びレベル正常範囲R12のそれぞれの上限と下限を示す点線は直線で示されているが、これに限定されるものではなく、曲線でもよい。
第2分析部49は、データが正常範囲内であると判定した場合(ステップS160,Yes)、処理を終了する。第2分析部49は、データが正常範囲外であると判定した場合(ステップS160,No)、ステップS170の処理を実行する。
ステップS170において、第2分析部49は、正常範囲外と判定されたデータが直交座標の第1象限〜第4象限の何れに存在するかを判定する。また、ステップS170において、第2分析部49は、正常範囲外と判定されたデータから、正常範囲までの距離(正常範囲からの距離)ZBを算出する。すなわち第2分析部49は、プロットされたデータが正常範囲からどの程度離れているのかを算出し、算出結果である距離情報70を要因特定部55に入力する。
図10を用いて具体例を説明する。図10に示される直交座標において、X軸方向は、直流電圧11、直流電流12、直流中間電圧13などのレベルの高低を表す。X軸正方向はレベル高を表し、X軸負方向はレベル低を表す。
Y軸方向は、例えば直流電圧11、直流電流12、直流中間電圧13などのレベルが上昇傾向にあるのか下降傾向になるのかを表す。Y軸正方向はレベル上昇を表し、Y軸負方向はレベル下降を表す。
第1象限は、検出されたデータのレベルが高くなり、急変上昇したことを示す領域である。第2象限は、検出されたデータのレベルが低くなり、急変下降したことを示す領域である。第3象限は、検出されたデータのレベルが低いところから急変上昇したことを示す領域である。第4象限は、検出されたデータのレベルが高いところから急変下降したことを示す領域である。
変動正常範囲R11は、レベル変動が正常であることを示す範囲を表し、レベル正常範囲R12は、レベルが正常であることを示す範囲を表す。変動正常範囲R11及びレベル正常範囲R12は、予め設定されている。
図10の直交座標に示される「1」〜「5」までの番号は、図10の下側に示される番号に対応している。図10の下側には、評価入力Dの一例が示される。評価入力Dが例えば直流電圧11である。縦軸は電圧の値、横軸は時間である。
図10の番号「1」で示される直流電圧11は整定値である。
図10の番号「2」で示される直流電圧11は漸変かつ下降中である。番号「2」の直流電圧11は、第3象限に位置し、かつ、変動正常範囲R11及びレベル正常範囲R12の外側に位置する。
図10の番号「3」で示される直流電圧11はレベル低かつ上昇中である。番号「3」の直流電圧11は、第2象限に位置し、かつ、変動正常範囲R11の内側であるが、レベル正常範囲R12の外側に位置する。
図10の番号「4」で示される直流電圧11はレベル高かつ上昇中である。番号「4」の直流電圧11は、第1象限に位置し、かつ、変動正常範囲R11及びレベル正常範囲R12の外側に位置する。
図10の番号「5」で示される直流電圧11はレベル高かつ下降中である。番号「5」の直流電圧11は、第4象限に位置し、かつ、変動正常範囲R11及びレベル正常範囲R12の外側に位置する。
図10の直交座標では、番号「1」、「2」、「3」、「1」、「4」、「5」、「1」の順で直流電圧11のデータがプロットされる。
番号「2」〜「5」の直流電圧11のデータは、正常範囲外に位置するため、ステップS180において、第2分析部49は、何らかの異常が発生したと判定して、異常と判定した結果を異常判定情報53として出力する。異常判定情報53は、状態分析データ記録部56、センサ波形記録部57及び警報部58のそれぞれに入力される。
なお、第2分析部49は、番号「1」、「2」、「3」、「1」、「4」、「5」、「1」の順で推移するデータの軌跡を示す軌跡情報を生成し、生成した軌跡情報を状態分析データ記録部56に入力してもよい。また、表示部60は、状態分析データ記録部56に記録された軌跡情報に基づき、データの軌跡を視覚化して表示するように構成してもよい。これにより、ユーザは、直流電圧11などの変化の推移を詳細に把握することができる。なお、第2分析部49を利用することによって、電力変換装置1の外部環境で生じる擾乱、例えば、電力変換装置1からの電力が供給される負荷22が急に立ち上がる、または急に立ち下がる等した場合や、チョッパ5に異常が発生した場合等、第2分析部49を利用することによって、変化の推移を詳細かつ容易に把握することができる。また、軌跡を視覚化することによって、整定値を時間軸のグラフで検証する場合と比較して、一見性が向上するため変化の推移を詳細かつ容易に把握することができる。
[第3分析部50]
次に第3分析部50の処理動作を説明する。第3分析部50は、交流入力電圧15、交流入力電流16、交流出力電流19、交流出力電圧20などの変化を高速フーリエ変換(FFT)で解析し、その結果を直交座標にプロットすることによって、要因特定部55による異常要因特定のための情報を生成する。第3分析部50を利用することによって、電力変換装置1で生じる擾乱を分析できる。
図11は第3分析部50の処理動作を説明するためのフローチャートである。図12は第3分析部50における動作の具体例を説明するための第1図である。図13は第3分析部50における動作の具体例を説明するための第2図である。
図12には、上から順に、交流出力電流の波形と、交流出力電流の高速フーリエ変換(I−FFT)による分析結果と、交流出力電圧の波形と、交流電圧の高速フーリエ変換(V−FFT)による分析結果とが示される。なお、横軸は時間を表している。本実施例では、キャリア周波数成分とキャリア周波数の2倍の周波数成分を示しているが、これに限らず、キャリア周波数の整数倍の周波数成分であればよい。
図12には、例えば、電力変換装置1が正常運転しているときの交流出力電流及び交流出力電圧のそれぞれの波形と、電力変換装置1が備えるコンデンサに異常が発生したときの交流出力電流及び交流出力電圧のそれぞれの波形とが示される。また図12には、電力変換装置1が備えるリアクトルに異常が発生したときの交流出力電流及び交流出力電圧のそれぞれの波形と、スイッチング素子(例えばインバータ3に設けられる半導体スイッチング素子)に異常が発生したときの交流出力電流及び交流出力電圧のそれぞれの波形とが示される。
ステップS210において、第3分析部50は、評価入力Eのサンプル値(電流データE(k))を取得する。評価入力Eは、例えば図12に示される交流出力電流に相当する。
ステップS220において、第3分析部50は、電流データE(k)に対して特定周波数のFFT分析を行う。これにより、例えばインバータ3に設けられるスイッチ素子のスイッチング周波数の例えば2倍の周波数成分のレベルを検出する。このレベル検出結果は、図12に示されるI−FFTであり、図13の直交座標のX軸の値(X(k))に相当する。
ステップS230において、第3分析部50は、評価入力Fのサンプル値(電圧データF(k))を取得する。評価入力Fは、例えば図12に示される交流出力電圧に相当する。
ステップS240において、第3分析部50は、電圧データF(k)に対して特定周波数のFFT分析を行う。これにより、例えばインバータ3に設けられるスイッチ素子のスイッチング周波数(キャリア周波数)の例えば2倍の周波数成分のレベルを検出する。このレベル検出結果は、図12に示されるV−FFTであり、図13の直交座標のY軸の値(Y(k))に相当する。
例えばリアクトル8Aがレアショートすると交流出力電流19にノイズが重畳されるため、I−FFTの周波数成分のレベルが大きくなる。
例えばフィルタコンデンサ6Aが劣化して静電容量が低下すると、交流出力電圧20のリプルが増加し、V−FFTの周波数成分のレベルは、大きくなる。
例えばスイッチング素子が故障すると、スイッチング動作が正常に行われなくなるため、交流出力電流19及び交流出力電圧20の波形が乱れて、I−FFT、V−FFTの周波数成分のレベルが不安定になる。また、PWMパルスを生成する部品が劣化した場合、PWMパルスが欠落するため、I−FFT上で減少傾向となる(第2象限へプロットされる)。PWMパルスを生成する部品が劣化した場合とは、例えば、フォトカプラ等が劣化した場合、ゲート駆動回路の不具合が生じた場合などである。
ステップS250において、第3分析部50は、ステップS220での分析結果X(k)及びステップS240での分析結果Y(k)に、パラメータ(規格化パラメータ)Wnを乗算することによって、X(k)及びY(k)を直交座標にプロット可能な値に変換し、変換された値を直交座標にプロットする。nは1以上の自然数であり、分析数を表す。なお、本実施例では、X(k)及びY(k)は、キャリア周波数の2倍の成分における、例えば半周期内の平均値である。なお、直交座標へプロットする場合、本実施例では、X(k)及びY(k)の平均値がゼロ点にくるように、X(k)及びY(k)からそれぞれの平均値を差分している。
ステップS260において、第3分析部50は、ステップS250でプロットされたデータが、図13に示される正常範囲内(正常範囲X1内かつ正常範囲Y1内)であるか正常範囲外であるかを判定する。正常範囲X1はI−FFTの分析結果に対する正常範囲であり、正常範囲Y1はV−FFTの分析結果に対する正常範囲である。これらの正常範囲は、電力変換装置1を構成する部品の製造公差、使用環境条件など考慮して算出され、予め設定されている。
第3分析部50は、データが正常範囲内であると判定した場合(ステップS260,Yes)、処理を終了する。第3分析部50は、データが正常範囲外であると判定した場合(ステップS260,No)、ステップS270の処理を実行する。
ステップS270において、第3分析部50は、正常範囲外と判定されたデータが直交座標の第1象限又は第2象限に存在するかを判定する。また、ステップS270において、第3分析部50は、正常範囲外と判定されたデータから正常範囲までの距離(正常範囲からの距離)ZCを算出する。すなわち第3分析部50は、プロットされたデータが正常範囲からどの程度離れているのかを算出し、算出結果である距離情報70を要因特定部55に入力する。第1象限又は第2象限に存在するかを判定する理由の一つとして、高調波成分は、基本的にはリアクトル8A、フィルタコンデンサ6Aで構成されるフィルタに吸収させているが、当該フィルタからは一定値が出力される。このためV−FFT上の負側にプロットされることは稀だからである。
図13に示される「リアクトル異常」、「コンデンサ異常」、「スイッチング素子異常」などのデータは、正常範囲外にプロットされているため、ステップS280において、第3分析部50は、何らかの異常が発生したと判定して、異常と判定した結果を異常判定情報53として出力する。異常判定情報53は、状態分析データ記録部56、センサ波形記録部57及び警報部58のそれぞれに入力される。
[第4分析部51]
次に第4分析部51の処理動作を説明する。例えば、充電運転、交流運転(満充電時)、入力制限運転、直流運転などが行われているとき、電力変換装置1に流れる電力の方向と大きさを分析することによって、直流短絡、バッテリ異常、インバータ異常などを検出できる。第4分析部51は、電力変換装置1に流れる電力の方向と大きさを計算し、その結果を直交座標にプロットすることによって、要因特定部55による異常要因特定のための情報を生成する。第4分析部51を利用することによって、電力変換装置1の内部又は外部環境で生じる異常を分析できる。なお、電力は、有効電力及び無効電力の少なくとも1つを含んでもよく、瞬時値、一定時間内での平均電力値でもよい。
図14は第4分析部51の処理動作を説明するためのフローチャートである。図15は第4分析部51における動作の具体例を説明するための図である。
図15に示される直交座標のX軸は、インバータ3と整流器4との間の電力フローを表す。X軸正方向はインバータ3に流れる電力が、整流器4に流れる電力よりも大きい領域を表す。X軸負方向は整流器4に流れる電力が、インバータ3に流れる電力よりも大きい領域を表す。なお、図15に示す座標の正の向きに、図1に示した整流器4、インバータ3、チョッパ5の出力がされているとして、電力の正負を定義している。例えば、整流器4へ受電設備24からの交流入力電力が流れている場合は、整流器4の軸とは逆向きなので負の値として扱う。
図15に示される直交座標のY軸は、蓄電池23の放電電力又は充電電力の大きさを表す。Y軸正方向は、蓄電池23の放電電力が充電電力よりも大きい領域を表す。Y軸負方向は、蓄電池23の充電電力が放電電力よりも大きい領域を表す。
図15に示される番号「1」は、充電運転モードで運転中の電力変換装置1で検出されたデータに基づきプロットされたデータである。
充電運転モードの場合、チョッパ5を降圧運転することによって、蓄電池23に電力が蓄えられるため、番号「1」で示されるプロットは、第3象限においてX軸とY軸との交点付近に位置する。
図15に示される番号「2」は、満充電時の交流運転モードで運転中の電力変換装置1で検出されたデータに基づきプロットされたデータである。
交流運転モードの場合、満充電状態のためチョッパ5から蓄電池23に向かう電力は発生しないが、インバータ3、整流器4、チョッパ5などにおいて電力損失が生じるため、番号「2」で示されるプロットは、X軸とY軸との交点付近からX軸負方向に僅かにずれた箇所に位置する。
図15に示される番号「3」は、入力制限モードで運転中の電力変換装置1で検出されたデータに基づきプロットされたデータである。
入力制限モードの場合、整流器4における入力電力が制限され、その不足分を蓄電池23からの放電電力にて補うため、番号「3」で示されるプロットは、第1象限において、X軸とY軸との交点付近から、X軸正方向とY軸正方向に一定距離離れた箇所に位置する。
図15に示される番号「4」は、直流運転モードで運転中の電力変換装置1で検出されたデータに基づきプロットされたデータである。
直流運転モードの場合、整流器4は停止し、電力源が蓄電池23の放電電力になるため、番号「4」で示されるプロットは、第1象限において、番号「3」のプロット位置から、X軸正方向とY軸正方向に一定距離離れた箇所に位置する。
直交座標上の番号「1」〜「4」で示されるプロットを囲む実線は、正常範囲を表す。
図15に示される番号「5」は、直流短絡時(異常モード1)に検出されたデータに基づきプロットされたデータである。
例えば、チョッパ5とインバータ3との間に配線される直流母線が短絡した場合、第4分析部51は、直交座標上の異常モード1で示される位置、すなわち第2象限において正常範囲を超える位置に、プロットを行う。これにより、ユーザは、電力変換装置1において直流短絡が発生していることを知ることができる。
図15に示される番号「6」は、蓄電池異常時(異常モード2)に検出されたデータに基づきプロットされたデータである。
例えば、蓄電池23の交換作業の際、蓄電池23の端子が短絡状態となった場合、蓄電池23に接続されるケーブルが誤配線された場合、第4分析部51は、直交座標上の異常モード2で示される位置、すなわち第3象限において正常範囲を超える位置に、プロットを行う。これにより、ユーザは、蓄電池23においてショートが発生していることを知ることができる。
図15に示される番号「7」は、インバータ異常時(異常モード3)に検出されたデータに基づきプロットされたデータである。
例えば、インバータ3のスイッチング素子に異常が生じた場合、第4分析部51は、直交座標上の異常モード3で示される位置、すなわち第4象限において正常範囲を超える位置に、プロットを行う。これにより、ユーザは、インバータ3に何らかの異常が生じたことを知ることができる。
ステップS310において、第4分析部51は、インバータ電力Pinv(k)を算出する。
ステップS320において、第4分析部51は、整流器電力Prec(k)を算出する。
ステップS330において、第4分析部51は、インバータ電力Pinv(k)から整流器電力Prec(k)を減算することにより、電力偏差X(k)を求める。
ステップS340において、第4分析部51は、評価入力データ45を利用して放電電力Pbat(k)を算出し、算出した放電電力Pbat(k)から、Y軸の値Y(k)を求める。例えば放電時は放電電力Pbat(k)が正の値(Y軸正方向)となり、充電時は放電電力Pbat(k)が負の値(Y軸負方向)となる。
ステップS350において、第4分析部51は、ステップS330で演算されたX(k)とステップS340で演算されたY(k)とのそれぞれに、パラメータ(規格化パラメータ)Wnを乗算することによって、X(k)及びY(k)を直交座標にプロット可能な値に変換し、変換された値を直交座標にプロットする。nは1以上の自然数であり、分析数を表す。
ステップS360において、第4分析部51は、ステップS350でプロットされたデータが、図15に示される正常範囲内であるか、正常範囲外であるかを判定する。
これらの正常範囲は、電力変換装置1を構成する部品の製造公差、使用環境条件など考慮して算出され、予め設定されている。
第4分析部51は、データが正常範囲内であると判定した場合(ステップS360,Yes)、処理を終了する。第4分析部51は、データが正常範囲外であると判定した場合(ステップS360,No)、ステップS370の処理を実行する。
ステップS370において、第4分析部51は、正常範囲外と判定されたデータが直交座標のどの象限に存在するかを判定する。またステップS370において、第4分析部51は、正常範囲外と判定されたデータから、正常範囲までの距離(正常範囲からの距離)ZDを算出する。すなわち第4分析部51は、プロットされたデータが正常範囲からどの程度離れているのかを算出し、算出結果である距離情報70を要因特定部55に入力する。
図15に示される番号「5」、「6」、「7」などのデータは、正常範囲外にプロットされているため、ステップS380において、第4分析部51は、何らかの異常が発生したと判定して、異常と判定した結果を異常判定情報53として出力する。異常判定情報53は、状態分析データ記録部56、センサ波形記録部57及び警報部58のそれぞれに入力される。
[第5分析部52]
次に第5分析部52の処理動作を説明する。例えば、負荷22において高調波発生負荷が動作した場合、容量が大きい負荷22が停止したことによって消費電力が短時間に大きく低下した場合、容量が大きい負荷22が起動したことによって消費電力が短時間に大きく増加した場合などにおいて、負荷22の変動に起因する負荷電流、負荷電圧の変動を分析することによって、異常要因を特定できるように構成されている。高調波発生負荷は、受電設備24などの交流電源からの受電に伴ない高調波を発生する負荷であり、電力変換器、蓄電設備などである。
図16は第5分析部52の処理動作を説明するためのフローチャートである。図17は第5分析部52における動作の具体例を説明するための第1図である。図17には負荷変動に伴う負荷電流の変化の例が4つ示される。
番号「1」が付される「負荷変換」は、例えば電力変換装置1に接続されていた特定の種類の負荷22が、当該負荷22とは異なる種類の負荷22に交換されたときの負荷電流の波形を表す。負荷変換とは、例えば線形負荷から非線形負荷に変換された場合を意味する。
番号「2」が付される「負荷振動」は、サーバなどの負荷22において、高調波が発生した場合の負荷電流の波形を表す。
番号「3」が付される「負荷急減」は、例えば大容量の負荷22が停止したことによって消費電力が短時間に大きく低下した場合の負荷電流の波形を表す。
番号「4」が付される「負荷急増」は、例えば大容量の負荷22が起動したことによって消費電力が短時間に大きく増加した場合の負荷電流の波形を表す。
図18は第5分析部52における動作の具体例を説明するための第2図である。図18の直交座標には、図17に示される波形を分析した結果が示される。図18の「1」のデータは、図17の「負荷変換」時の負荷電流をデータ化したものである。同様に「2」のデータは、図17の「負荷振動」時の負荷電流をデータ化したものである。「3」のデータは、図17の「負荷急減」時の負荷電流をデータ化したものである。「4」のデータは、図17の「負荷急増」時の負荷電流をデータ化したものである。
Y1〜Y3は、異常レベルを判定するための判定領域である。Y1、Y2、Y3の順でレベルの変動率が大きい。
「1」のデータは、直交座標上の第1象限において、X軸正方向の正常範囲内、かつ、Y軸正方向のY1内にプロットされている。
「2」のデータは、直交座標上の第1象限と第2象限の境界部において、X軸正方向の正常範囲内で、かつ、Y軸正方向のY3内にプロットされている。
「3」のデータは、直交座標上の第2象限において、X軸負方向の正常範囲外、かつ、Y軸正方向の正常範囲内にプロットされている。
「4」のデータは、直交座標上の第1象限において、X軸正方向の正常範囲外、かつ、Y軸正方向の正常範囲内にプロットされている。
ステップS410において、第5分析部52は、サンプル値(データJ(k))を取得する。サンプル値(データJ(k))は、負荷電流21である。なお、サンプル値(データJ(k))は、負荷電流21の代わりに、交流出力電流19、又は交流入力電流16でもよい。本実施の形態では、サンプル値(データJ(k))が負荷電流21と仮定して説明する。
ステップS420において、第5分析部52は、2乗積和演算により積算値L(k)を算出する。図17にこの算出結果が示される。
ステップS430において、第5分析部52は、ステップS420で演算された積算値L(k)の平均値を算出する。
ステップS440において、第5分析部52は、ステップS420で演算された積算値L(k)の平均値を、ステップS420で演算された積算値L(k)から減算することによって、直交座標のX軸のゼロ点に配置する処理を行う。
ステップS450において、第5分析部52は、2乗積和演算により積算値M(k)を算出する。図17にこの算出結果が示される。
ステップS460において、第5分析部52は、積算値M(k)を積算値L(k)で除算することによって、積算値L(k)に対する積算値M(k)の割合(Y(k))を算出する。
ステップS470において、第5分析部52は、ステップS440で演算されたX(k)とステップS460で演算されたY(k)とのそれぞれに、パラメータ(規格化パラメータ)Wnを乗算することによって、X(k)及びY(k)を直交座標にプロット可能な値に変換し、変換された値を直交座標にプロットする。nは1以上の自然数であり、分析数を表す。
ステップS480において、第5分析部52は、ステップS470でプロットされたデータが、図18に示される正常範囲内であるか正常範囲外であるかを判定する。
第5分析部52は、データが正常範囲内であると判定した場合(ステップS480,Yes)、処理を終了する。第5分析部52は、データが正常範囲外であると判定した場合(ステップS480,No)、ステップS490の処理を実行する。
ステップS490において、第5分析部52は、正常範囲外と判定されたデータが直交座標の第1象限、第2象限の何れに存在するかを判定する。
また、ステップS490において、第5分析部52は、正常範囲外と判定されたデータから、正常範囲までの距離(正常範囲からの距離)ZEを算出する。すなわち第5分析部52は、プロットされたデータが正常範囲からどの程度離れているのかを算出し、算出結果である距離情報70を要因特定部55に入力する。
図18に示すように、番号「1」、「2」のデータは、正常範囲外に位置するため、ステップS4100において、第5分析部52は、何らかの異常が発生したと判定して、異常と判定した結果を異常判定情報53として出力する。異常判定情報53は、状態分析データ記録部56、センサ波形記録部57及び警報部58のそれぞれに入力される。
[距離の算出方法]
図19は異常と判定されたデータのプロット点から正常範囲までの距離の算出方法を説明するための図である。図19に示される距離Zは、第1分析部48などで算出される距離ZA、ZB、ZC、ZD、ZDを表す。
図19に示されるように、距離Zは、プロットされたデータのX軸方向位置と正常範囲のX軸方向位置との差分を2乗したものに、第1象限にプロットされたデータのY軸方向位置と正常範囲のY軸方向位置との差分を2乗したものを足し合わせて、平方根をとった値である。なお、図19に示す正常範囲を示す線は、4辺が直線の四角形状に限定されるものではなく、楕円形状の線でもよいし、湾曲した線を環状の線でもよく、その評価入力データにてかえてもよい。
[要因特定部55による異常発生の要因判定動作]
次に要因特定部55の動作を説明する。要因特定部55は、例えば下記(1)の要因判定式に、要因判定の対象毎の、モードパラメータ、規格化パラメータ、重み係数、距離Z及びバイアス値を設定することによって、異常の要因判定を行う。重み係数は、要因判定対象に応じて分析データの感度を変化させるための係数である。
図5、図9、図11、図14、図16のフローチャートに示されるWnは、規格化パラメータである。nは1以上の自然数であり、分析数を表す。Wnは、電圧、電流、電力、FFT、制御量の数値と、分析A〜分析Eのそれぞれの分析式の数値との規格化に利用される。前記分析値として演算されたX(k)、Y(k)に対して、要因特定部55は、X(k)=Wn・X(k)、Y(k)=Wn・Y(k)として規格化した数値に変換する処理を行う。
要因判定式は、要因数毎に、下記(1)式にて構成される。下記(1)式における該当要素を添え字にて分別するため、第1分析部48を分析A、第2分析部49を分析Bとし、第3分析部50を分析Cとし、第4分析部51を分析Dとし、第5分析部52を分析Eとし、下記の各パラメータの添え字A,B,C,D,Eにて各分析に該当する事を示すものとする。
要因判定式
Ym=MAm1・WAm1・ZA1+・・・+MAmn・WAmn・ZAn
+MBm1・WBm1・ZB1+・・・+MBmn・WBmn・ZBn
+MCm1・WCm1・ZC1+・・・+MCmn・WCmn・ZCn
+MDm1・WDm1・ZD1+・・・+MDmn・WDmn・ZDn
+MEm1・WEm1・ZE1+・・・+MEmn・WEmn・ZEn
−B1 ・・・(1)
MAmn、MBmn、MCmn、MDmn及びMEmnは、モードパラメータ(運転モードの内容を示す情報である運転モード情報65)である。A、B、C、D及びEは、各分析に応じたモード判定である。モードパラメータは、運転モードと要因判定式に応じて変化する−1、0、1の何れかである。
WAmn、WBmn、WCmn、WDmn及びWEmnは、各データの重み係数であり、各判定式における判定精度を調整するためのパラメータである。これは、機械学習などに連動して判定精度を高めるために修正される。mは1以上の自然数で、要因判定の数である。nは1以上の自然数で、検出分析数を意味する。
ZAn、ZBn,ZCn、ZDn及びZEnは、第1分析部48などで算出された距離を表す。nは1以上の自然数であり、分析数を表す。
B1は各要因判定の誤差やノイズを考慮した誤判定防止用のバイアス値である。
但し、実際の判定式には膨大な変数が含まれるため、(1)式には、数点の変数のみを含む要因判定式を例示している。図22Aは要因特定部55で行われる要因判別処理の流れを示す第1図である。図22Bは要因特定部55で行われる要因判別処理の流れを示す第2図である。図22Cは要因特定部55で行われる要因判別処理の流れを示す第3図である。
図22Aにおいて要因判別式の流れを説明すると、図22の左から右に向かって、各種検出、制御誤差、制御補正の入力が行われる、これは評価入力データ45の事を示している。各分析A、B、C、D、Eが実施され、各々の入力と分析に応じた規格化のためにWnがかけられ、分析毎にX,Yの成分が算出される。
そして、要因特定部55は、図22Bに示すように、各検出、各分析毎に直交座標にプロットし、さらに、正常、注意、故障などを示す判定範囲を表記する。
また、要因特定部55は、正常領域から逸脱した距離(ZAn、ZBn,ZCn、ZDn及びZEn)を、図19に示した方法にて算出する。算出した距離(ZAn、ZBn,ZCn、ZDn及びZEn)に、モードパラメータをかけて、判定する要因毎に、式を構成する。そのため要因判定式は、図22Aに示されたY1〜Ymのように多数存在する。mは1以上の自然数で、要因判定の数である。要因特定部55は、図22Cの要因度分析のヒストグラムのように、Y1〜Ymまでの各分析データを算出し、縦軸の要因度にて要因特定を行う。
なお要因判定式は(1)式に限定されず、要因特定部55における要因判定には(1)式以外の式を利用してもよい。
<要因特定例>
図23及び図24を用いて、要因判定式までの処理の実施例を示す。この実施例では重み係数をすべて1とした場合について説明する。図23Aは直流電圧を一定値に制御している電力変換装置1を例とし、出力電圧に垂下変動が発生した場合における波形を示す第1図である。図23Bは直流電圧を一定値に制御している電力変換装置1を例とし、出力電圧に垂下変動が発生した場合における波形を示す第2図である。図23Cは直流電圧を一定値に制御している電力変換装置1を例とし、出力電圧に垂下変動が発生した場合における波形を示す第3図である。図24Aは図23に示される出力電圧の変化が生じた場合における要因判定処理の一連の流れを示す第1図である。図24Bは図23に示される出力電圧の変化が生じた場合における要因判定処理の一連の流れを示す第2図である。図24Cは図23に示される出力電圧の変化が生じた場合における要因判定処理の一連の流れを示す第3図である。
図23Aには、異常要因がスイッチング素子駆動系異常に起因する場合の波形が示される。図23Bには、異常要因が負荷急変に起因する場合の波形が示される。
図23Cには、異常要因が電力変換装置の入力電圧急変(垂下)に起因する場合の波形が示される。図23に示される各データを分析した数値は、図24Aに示すように、直交座標にプロットされる。図24Aには、図23に示される出力電圧、出力電流、入力電圧、入力電流、FFT(例えばフィルタ電圧のFFT解析結果)、及び電力(例えば電力変換装置の出力電力)のデータが示される。(1)のプロットは、スイッチング素子駆動系のデータである。(2)のプロットは、負荷系のデータである。(3)のプロットは、電力変換装置の入力電圧系のデータである。
図24Aに示される各データの距離Zは、判定要因毎に、図24Bの下側の表の通りである。また、出力電圧変動時の要因判別式における判定要因毎のモードパラメータは、図24Bの上側の表の通り、−1、0、1となる。これを図24Cに示される要因判別式に代入し計算すると、図24Cの表の結果となる。
図24Cの表によれば、スイッチング素子駆動系の判別式においてスイッチング素子駆動系異常時は11.5、すなわちゼロ以上となるため、要因度ありとなるが、この判別式に、負荷系の異常時データZを代入すると−20となり、入力電圧系の異常時データZを代入すると−10となる。すなわち、ゼロ以下となり、要因外(要因度なし)となる。負荷系の異常時データZを代入するとは、スイッチング素子駆動系のMB1〜MD1に、負荷系のZB1〜ZD1を掛け合わせることをいう。入力電圧系の異常時データZを代入するとは、スイッチング素子駆動系のMB1〜MD1に、入力電圧系のZB1〜ZD1を掛け合わせることをいう。
また、図24Cの表に示される負荷系判別式において、負荷系異常時は6、すなわちゼロ以上となるため、要因度ありとなるが、この判別式に、スイッチング素子駆動系異常時データZを代入すると−29.5となり、入力電圧異常時のデータZを入力すると−10となる。すなわち、ゼロ以下となり、要因外(要因度なし)となる。
さらに、図24Cの表に示される入力電圧系判別式において、入力電圧異常時は6、すなわちゼロ以上となるため、要因度ありとなるが、この判別式に、スイッチング素子駆動系異常時のデータZを代入すると−6.5となり、負荷系異常時のデータZを代入すると−24となる。すなわち、ゼロ以下となり、要因外(要因度なし)となる。
要因特定部55による要因判定の結果は、要因判定された日時と対応付けて、要因分析データ記録部59に記録されると共に、表示部60及び通信部61に伝送される。
表示部60は、距離情報70、異常レベル数値54及び異常判定情報53に基づき、異常要因などをユーザへ通知する表示器である。
表示部60には、例えば図7、図10、図13、図15、図18などに示される直交座標の形式で、異常と判定されたデータを各象限にプロットしたものに、正常範囲とレベル判定領域とを対応付け、視覚化して表示される。また表示部60には、例えば、要因特定部55による判定結果を、例えばメッセージ形式で表示してもよい。
この場合のメッセージの例は、例えば「X月X日の○時○分ごろ、大型の負荷が投入された可能性が高いです」、「X月X日の○時○分現在、電力変換装置内の部品の劣化が進行している可能性が高いです」、「X月X日の○時○分ごろ、蓄電池の活線作業が行われた可能性があります」などである。
これにより、ユーザは、異常要因、異常発生時期などを直感的に把握できる。そのため、異常の発生要因を特定し易くなるため、電力変換装置1、受電設備24、負荷22、及びバイパス25の何れで発生した異常なのかを切り分けた上で、復旧の対策方法などを講じることがでる。
例えば、負荷22の増設に起因する交流電圧の変動が生じた場合や、受電設備24の瞬時停電に起因する交流電圧の変動が生じた場合でも、ユーザは、表示部60に表示された停電発生時期と、異常要因(要因特定部55による判定結果)と、異常と判定されたデータとを確認することによって、電力変換装置1の異常ではないことを判別することができる。
また、異常と判定されたデータがレベル判定領域と共に表示部60に表示されることによって、即座に対応する必要がある事象であるのか、暫く監視してから対策を講じるべきかを、ユーザに判断させることができる。
従って、ユーザは、電力変換装置1に起因する異常が発生したのか、電力変換装置1以外の外部環境に起因する異常が発生したのかを把握した上で、復旧対応策を検討することができる。そのため、異常発生の要因毎に最適は復旧措置を講じることができる。その結果、復旧作業に要する検討時間などを大幅に削減できると共に、復旧作業に要する人的リソースを最適化でき、復旧作業に要する工数を大幅に削減することが可能になる。
通信部61は、距離情報70、異常レベル数値54及び異常判定情報53に基づき、異常要因などの情報を、監視システムに伝達する通信インタフェースである。
通信部61を用いることによって、電力変換装置1が設置される場所から離れた遠隔地でも、異常要因、異常発生時期などを含む情報を取得できる。そのため、電力変換装置1に記録される情報を、当該遠隔の場所に駐在する作業員と共有でき、復旧作業時を円滑に行うことができる。また、通信部61が設けられていない場合には電力変換装置1に記録される情報を持ち運び可能な記録媒体に記録した上で、作業員に渡すという手間が発生するが、通信部61を用いることによってこのような手間が生じることがなくなり、復旧作業に要するコストを削減できる。
警報部58は、異常判定情報53に基づき、異常が発生したことを報知する音声出力部である。警報部58による報知方法は、アラーム音でもよいし、音声ガイダンスでもよい。
警報部58を用いることによって、表示部60において常に異常監視を行わなくとも、アラーム音が発生したときに表示部60を確認することによって、ユーザは異常要因、異常発生時期などを把握できる。そのため、異常が発生したことを即座に知得できると共に、表示部60に表示された異常要因などの情報を見落とすることを抑制できる。
図20は本実施の形態に係る電力変換装置1の制御部200のハードウェア構成例を示す図である。制御部200は、プロセッサ601と、RAM、ROMなどで構成されるメモリ602と、プロセッサ601などを警報部58、表示部60及び通信部61に接続するための入出力インタフェース603とにより実現することが可能である。
プロセッサ601、メモリ602及び入出力インタフェース603は、バス604に接続され、バス604を介して、異常判定情報53、異常レベル数値54、距離情報70、センサ検出値64などの受け渡しを行うことが可能である。
電力変換装置1を実現する場合、制御部200用のプログラムをメモリ602に格納しておき、このプログラムをプロセッサ601が実行することにより、制御部200の第1分析部48、要因特定部55などが実現される。制御部200用のプログラムは、第1分析部48、要因特定部55などの機能を実行するプログラムである。入出力インタフェース603は、警報部58、表示部60及び通信部61との間で、情報の伝送するときに利用される。
前述した特許文献1には、外部環境における擾乱の判別や、運転状態における変化に対しての要因判定の方法が開示されていない。また従来技術には、電力変換装置の内部で高速に異常の分析を行うものはなく、電力変換装置の接続される外部装置(異常診断装置など)で異常の分析が行われる。これは統計学的計算における主成分分析処理の負荷が大きいためである。
また、電力変換装置1には受電設備24、負荷22などが接続されるため、交流運転モード、直流運転モードなどにおいて様々な周波数成分が発生する。従来技術では、波形差、周波数成分差のみで異常の判定が行われるため、交流運転モード、直流運転モードなどにおいて異常要因の特定が困難であり、瞬間的な異常事象を分析することができない。
これに対して、本実施の形態では、異常事象が数値化され、異常発生時の電圧、電流などの波形が記録され、さらに異常発生の要因が電力変換装置1本体に起因するものであるのか電力変換装置1の外部環境に起因するものであるのかを分析できる。そのため、早急に異常要因の是正対策を講じることができる。
また、異常発生時の分析履歴と波形を用いることによって、異常要因の確認と異常要因の報告書作成に活用できる。
また、異常発生時の分析履歴と波形を用いることによって、例えば異常判定値を調整することができ、それにより、電力変換装置1が故障に至る前や、電力変換装置1の外部への異常擾乱波及に至る前などに、電力変換装置1を安全に停止させるという措置をとることも可能になる。
図21は要因特定部55に適用される機械学習部400の一例を示す図である。機械学習部400は、例えば異常の要因を特定するための判定式に含まれるパラメータの修正方法を学習する。
機械学習とは、コンピュータに人のような学習能力を獲得させるための技術であり、コンピュータが、データ識別等の判断に必要なアルゴリズムを、事前に取り込まれる学習データから自律的に生成し、新たなデータについてこれを適用して予測を行う技術のことをいう。機械学習方法の一例を以下に説明する。
(教師あり学習)事前に与えられたサンプルとなるデータをもとにデータの識別や法則性の導出を行う手法(例:回帰分析、SVM(サポートベクターマシーン))。
(教師なし学習)サンプルとなるデータがない状態で、実データそのものを解析することで、データに存在する本質的な構造や特徴を抽出する手法(例:k平均法(K-Means)、潜在的意味インデックス(LSI)、トピックモデル手法(LDA))。
(半教師学習)少数のサンプルを用いて学習をおこない、その後ある程度の実データを分類して、その結果のうち高い確度のものをサンプルと捉えなおして再度学習をする手法。(例:ブートストラップ法、Adaboost)
(構造学習)個別にデータを推定せず、データ全体の構造に最適化した形で個々の推定をまとめて行う手法。(例:構造化SVM、条件付き確率場(CRF))。
(強化学習)サンプルが存在しないが、代わりに学習した後からフィードバック情報を得ることでさらなる学習の手がかりとする手法。(例:バンディットアルゴリズム、UCBアルゴリズム)。
(深層学習)人の脳の構造をソフトウェア的に模倣するニューラルネットという手法を多層化し、高度化を図った手法(例:制限付きボルツマン機械、Category2Vec)。
図21には、例えばニューラルネットで構成された機械学習部400が示される。
上記の機械学習方法は、教師あり学習、教師なし学習、半教師学習、構造学習、強化学習、深層学習のいずれかの方法でもよく、さらに、これらの学習方法を組み合わせた方法でもよく、機械学習のための学習方法は問わない。
要因特定部55が、例えば異常要因の判定に利用したパラメータ(モードパラメータ、重み係数又はバイアス値)を、ユーザによって修正されたモードパラメータ、重み係数又はバイアス値を用いて、機械学習された機械学習部400である場合、モードパラメータの値、重み係数、バイアス値などが自動的に最適値に修正されるため、異常要因の判定の精度が大幅に向上する。
以上に説明したように本実施の形態に係る異常要因特定方法は、コンピュータに適用される異常要因特定方法であって、電力変換装置で検出される検出値に基づき算出される数値を直交座標にプロットし、前記直交座標にプロットされた対象データが所定条件により予め設定された判定領域内にあるか否かを判定し、前記数値が前記判定領域外であると判定されたときに、前記対象データが存在する前記直交座標の象限に基づいて、異常の要因を特定する。
これにより、異常発生時に検出されたデータが直交座標の各象限にプロットされ、そのデータの位置から電力変換装置に発生した異常であるのか、電力変換装置の外部環境に起因する異常であるのかなどを特定することができる。さらに電力変換装置の故障に至らない異常の要因も特定することができる。従って、多大な労力とコストを生じさせることなく、異常要因の特定を容易に行うことができる。
また第1分析部48は、前記検出値を一定間隔でサンプルしたデータを2乗したものを一定時間区間積算した第1数値(ステップS2のB(k))と、前記サンプルしたデータの差分を2乗したものを一定時間区間積算した第2数値(ステップS5のC(k))とを、前記直交座標にプロットし、前記第1数値の平均値を前記直交座標のゼロ点に配置し、前記第2数値の平均値を前記直交座標のゼロ点に配置するように構成される。
これにより、積和演算などの簡易な演算により、異常要因の特定が可能になるため、電力変換装置を構成する演算回路に処理能力が低いものを利用した場合でも異常要因の特定が可能であり、電力変換装置の製造コストの上昇を抑制しながら、異常要因の特定の容易化を図ることができる。
また第2分析部49は、直流中間電圧、直流電流及び直流電圧の何れかである前記検出値を一定間隔でサンプルしたデータと制御指令値との偏差(ステップS120のΔD(k))を一定時間区間積算した第1数値(ステップS130のX(k))と、前記偏差の差分を一定時間区間積算した第2数値(ステップS140のY(k))とを、前記直交座標にプロットするように構成される。
これにより、直流中間電圧、直流電流及び直流電圧などを利用して電力変換装置の外部環境で生じる異常を特定できるため、電力変換装置で異常が発生しているのか、電力変換装置の外部環境で異常が発生していのかを容易に切り分けることができる。
また第3分析部50は、電力変換装置で検出される電圧値のフーリエ変換結果(ステップS220のX(k))と、前記電力変換装置で検出される電流値のフーリエ変換結果(ステップS240のY(k))とを、前記直交座標にプロットするように構成される。
これにより、例えば交流波形のレベルと異常判定用の閾値とを比較するだけでは検出が困難な事象についても、FFT解析することによって、図12に示されるようなコンデンサ異常、リアクトル異常、スイッチング素子異常などの様々な異常要因を判定することが可能になる。
また第4分析部51は、電力変換装置で検出される交流出力電力を前記直交座標の第1座標軸上の第1方向(例えばX軸正方向)にプロットし、前記電力変換装置で検出される交流入力電力を前記直交座標の第1座標軸上の第2方向(例えばX軸負方向)にプロットし、放電電力を前記第1座標軸と直交する第2座標軸上の第1方向(例えばY軸正方向)にプロットし、充電電力を前記第2座標軸上の第2方向(例えばY軸負方向)にプロットするように構成されている。
これにより、充電運転、交流運転、入力制限運転、直流運転などが行われているとき、電力変換装置1に流れる電力の方向と大きさを分析することによって、直流短絡、バッテリ異常、インバータ異常などを特定することができる。
また第5分析部52は、前記電力変換装置で検出される交流入力電流又は交流出力電流を一定間隔でサンプルしたデータを2乗したものを一定時間区間積算した第1数値(ステップS420のL(k))を演算し、前記サンプルしたデータの差分を2乗したものを一定時間区間積算した第2数値(ステップS450のM(k))を演算し、複数の前記第1数値の平均値と前記第1数値との差分を、前記直交座標の第1座標軸の方向にプロットし、前記第2数値を前記第1数値で除算した値を、前記第1座標軸と直交する第2座標軸の方向にプロットするように構成されている。
これにより、異常要因が負荷22の故障、負荷22に供給される電力の増減などに起因するものであるのかを特定できる。
また、本実施の形態に係る異常判定部80及び要因特定部55の機能(異常要因特定方法)は、電力変換装置1以外の装置(異常要因特性装置)で実現することも可能である。異常要因特性装置は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することがデバイスであればよく、サーバ、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、ノートPCなどでもよい。この場合、異常判定部80及び要因特定部55の機能を実行するプログラムを異常要因特性装置のメモリに格納しておき、このプログラムを異常要因特性装置のプロセッサが実行することにより、異常判定部80及び要因特定部55などが実現される。
図25は本発明の実施の形態に係る異常要因特定装置500の構成例を示す図である。以下では、異常要因特定装置500は、入力部90、データ分析部47、表示部60、通信部61及び警報部58を備える。異常要因特定装置500によれば、タブレット端末、スマートフォン、ノートPCなどを利用して、異常要因の特定が可能になる。
図26は電力変換装置1の機能ブロックを示す図である。電力変換装置1は電力変換装置1で検出される検出値が入力される入力部90と、前記検出値に基づき算出される数値を直交座標にプロットするプロット部91と、前記直交座標にプロットされた対象データが所定条件により予め設定された判定領域内にあるか否かを判定する判定部92と、前記数値が前記判定領域外であると判定されたときに、前記対象データが存在する前記直交座標の象限に基づいて、異常の要因を特定する要因特定部55と、を備える。これにより、電力変換装置1に機能を追加するだけで異常要因の特定が可能になり、電力変換システムの構成を簡素化することができる。
図27は異常要因特定装置500の機能ブロックを示す図である。異常要因特定装置500は、電力変換装置で検出される検出値が入力される入力部90と、前記検出値に基づき算出される数値を直交座標にプロットするプロット部91と、前記直交座標にプロットされた対象データが所定条件により予め設定された判定領域内にあるか否かを判定する判定部92と、前記数値が前記判定領域外であると判定されたときに、前記対象データが存在する前記直交座標の象限に基づいて、異常の要因を特定する要因特定部55と、を備える。これにより、電力変換装置1への機能追加をすることなく、電力変換装置1以外の端末装置などを利用して、異常要因の特定が可能になる。
電力変換システム300は、異常要因特定装置500と電力変換装置1との何れかに異常要因を表示させるように構成してもよい。また、電力変換システム300は、異常要因特定装置500の結果(異常要因の特定結果)をネットワークを介して、端末に表示させてもよい。
また、異常要因特定装置は、電源から供給される電力を変換して負荷に供給する電力変換装置の異常を特定する異常要因特定装置であって、前記電力変換装置から検出される検出値に基づいて算出される制御パラメータを出力する運転モード制御調整部と、前記検出値及び前記制御パラメータを用いて算出される数値を少なくとも2軸を有する座標上にプロットするデータ分析部と、前記数値がプロットされた前記座標の象限に基づいて異常要因を特定する特定部と、を備えるように構成してもよい。制御パラメータは、運転モード制御調整部46からデータ分析部47に入力される制御偏差33及び制御調整データ39である。データ分析部は、制御偏差33及び制御調整データ39と、電力変換装置から検出される検出値のデジタルデータとが入力される。
また、異常要因特定装置のデータ分析部は、前記プロットされた数値が所定の範囲を超えた場合、異常と判断するように構成してもよい。
また、異常要因特定装置のデータ分析部は、前記プロットされた数値が所定の範囲を超えた場合、前記プロットされた数値が前記所定の範囲からどの程度逸脱したかを表す距離を算出して前記特定部に出力し、前記運転モード制御調整部は、前記検出値に基づいて判断される前記電力変換装置の運転状態を表す運転モード情報を前記特定部に出力し、前記特定部は、前記運転モード情報に加えて異常事象の何れかに対応する運転モードパラメータを選択し、前記運転モードパラメータ、ベクトル値及び予め設定された重み係数に基づいて異常要因を特定するように構成してもよい。
また、異常要因特定装置の特定部は、前記運転モードパラメータと、前記重み係数とを乗算し、当該乗算した値から、異常要因の誤判定防止用のバイアス値を減算し、当該減算後の値がゼロを超える場合、前記ゼロを超える値の中で最も大きな値に対応する異常事象を、異常の要因として特定するように構成してもよい。
前記データ分析部は、前記検出値及び前記制御パラメータに基づいて算出される数値を一定間隔でサンプリング処理するサンプリング部と、前記サンプリング処理された数値を2乗し、一定時間区間積算して算出される第1数値を生成する第1数値生成部と、前記サンプリング処理された数値の前記一定間隔における差分を2乗し、一定時間区間積算して算出される第2数値を生成する第2数値生成部と、前記第1数値及び前記第2数値を前記座標にプロットする第1プロット部と、を含む第1分析部を備えるように構成してもよい。
前記データ分析部は、前記検出値及び前記制御パラメータに基づいて算出される数値を一定間隔でサンプリング処理するサンプリング部と、前記サンプリング処理された数値と前記制御パラメータとの偏差を一定時間区間積算して算出される第3数値を生成する第3数値生成部と、前記偏差の前記一定間隔における差分を一定時間区間積算して算出される第4数値を生成する第4数値生成部と、前記第3数値及び前記第4数値を前記座標にプロットする第2プロット部と、を含む第2分析部を備えるように構成してもよい。
前記データ分析部は、前記電力変換装置で検出される電圧値をフーリエ変換して第5数値を算出する第5数値生成部と、前記電力変換装置で検出される電流値をフーリエ変換して第6数値を算出する第6数値生成部と、前記第5数値及び前記第6数値を前記座標にプロットする第3プロット部と、を含む第3分析部を備えるように構成してもよい。
前記データ分析部は、前記電力変換装置で検出される交流出力電力と交流出力電力を用いて第7数値を生成する第7数値生成部と、前記電力変換装置に含まれるチョッパ部からの充放電電力を用いて第8数値を生成する第8数値生成部と、前記第7数値及び前記第8数値を前記座標にプロットする第4プロット部と、を含む第4分析部を備えるように構成してもよい。
前記データ分析部は、前記検出値及び前記制御パラメータを用いて算出される数値を一定間隔でサンプリング処理するサンプリング部と、前記サンプリング処理された数値を2乗し、一定時間区間積算して算出される第9数値と該第9数値の平均値との差分である第10数値を生成する第10数値生成部と、前記サンプリング処理された数値の前記一定間隔における差分を2乗し、一定時間区間積算して算出される第11数値と前記第9数値との比率である第12数値を生成する第12数値生成部と、前記第10数値及び前記第12数値を前記座標にプロットする第5プロット部と、を含む第5分析部を備えるように構成してもよい。
前記第1プロット部は、前記第1数値及び前記第2数値の各々の平均値が前記座標のゼロ点となるようにプロットするように構成してもよい。
前記第3プロット部は、前記第5数値、前記第6数値の各々の平均値が前記座標のゼロ点となるようにプロットするように構成してもよい。
前記特定部は、前記重み係数の修正方法を学習する機械学習部をさらに含むように構成してもよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。