JP2020129270A - 結合自由エネルギー計算の前処理方法、前処理装置及び前処理プログラム、並びに、結合自由エネルギーの算出方法 - Google Patents

結合自由エネルギー計算の前処理方法、前処理装置及び前処理プログラム、並びに、結合自由エネルギーの算出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】物質どうしの結合状態が変化しやすい場合でも、結合自由エネルギーの算出精度を向上できる結合自由エネルギー計算の前処理方法などの提供。【解決手段】コンピュータを用いた、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算する際の前処理方法であって、前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める、結合自由エネルギー計算の前処理方法である。【選択図】図16

Description

本件は、結合自由エネルギー計算の前処理方法、前処理装置及び前処理プログラム、並びに、結合自由エネルギーの算出方法に関する。
近年、創薬に要する膨大な費用と労力とを削減する目的で、コンピュータを用いた各種のシミュレーションが行われている。コンピュータを用いた創薬においては、標的疾患(ターゲットとする疾患)に関与するタンパク質などの標的分子と、医薬品の候補となる候補分子との結合自由エネルギーを正確に計算して予測することが重要となる。
コンピュータを用いて、標的分子と候補分子との結合自由エネルギーを算出する方法としては、例えば、仮想的(アルケミカル)な熱力学サイクルに沿った計算を行うアルケミカル経路計算法が、精度の高い方法として知られている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、アルケミカル経路計算法などの方法においては、結合自由エネルギーを算出するためのサンプリングの途中で、標的分子に対する候補分子の結合状態が変化した場合などに、結合自由エネルギーの定量的な予測が不可能となるときがあった。
John D. Chodera et. al., Alchemical free energy methods for drug discovery: Progress and challenges, Curr Opin Struct Biol. 2011 April ; 21(2): 150−160
一つの側面では、本件は、物質どうしの結合状態が変化しやすい場合でも、結合自由エネルギーの算出精度を向上できる、結合自由エネルギー計算の前処理方法、前処理装置及び前処理プログラム、並びに、結合自由エネルギーの算出方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段の一つの実施態様は、以下の通りである。
すなわち、一つの実施態様では、結合自由エネルギー計算の前処理方法は、コンピュータを用いた、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算する際の前処理方法であって、
第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように第2の物質を拘束した条件における、第1の物質と第2の物質との結合構造を求め、
求めた結合構造に基づいて、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める。
また、一つの実施態様では、結合自由エネルギーの算出方法は、コンピュータを用いた、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを算出する結合自由エネルギーの算出方法であって、
第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように第2の物質を拘束した条件における、第1の物質と第2の物質との結合構造を求め、
求めた結合構造に基づいて、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求めることにより行った後、
結合自由エネルギーを算出するための計算を実行する。
また、一つの実施態様では、結合自由エネルギー計算の前処理装置は、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算する際に用いる前処理装置であって、
第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように第2の物質を拘束した条件における、第1の物質と第2の物質との結合構造を求め、
求めた結合構造に基づいて、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める、制御部を有する。
また、一つの実施態様では、結合自由エネルギー計算の前処理プログラムは、コンピュータに、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算させる際に用いる前処理プログラムであって、
第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように第2の物質を拘束した条件における、第1の物質と第2の物質との結合構造を求め、
求めた結合構造に基づいて、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める。
一つの側面では、本件は、物質どうしの結合状態が変化しやすい場合でも、結合自由エネルギーの算出精度を向上できる、結合自由エネルギー計算の前処理方法、前処理装置及び前処理プログラム、並びに、結合自由エネルギーの算出方法を提供できる。
図1は、溶液中における標的分子と候補分子の状態の一例を表す図である。 図2は、アルケミカル経路計算法における熱力学サイクルの一例を表す図である。 図3は、結合自由エネルギー計算の前処理方法の流れの一例を表す図である。 図4は、自由エネルギー曲線の一例を表す図である。 図5は、自由エネルギー曲線の他の一例を表す図である。 図6は、結合自由エネルギー計算の前処理方法の流れの他の一例を表す図である。 図7は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法の流れの一例を表す図である。 図8は、結合自由エネルギー計算の前処理方法の流れ及び前処理に必要とされる時間の一例を表す図である。 図9は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法の流れ及び前処理に必要とされる時間の一例を表す図である。 図10は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法の一例のフローチャートである。 図11は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法の他の一例のフローチャートである。 図12は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置の構成例を表す図である。 図13は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置の他の構成例を表す図である。 図14は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置の他の構成例を表す図である。 図15は、実施例1における欠損残基を補完したタンキラーゼ−2とXAV−939との複合体構造であり、PDB ID:3KR8の構造とPDB ID:3UH4の構造を重ね合わせた状態を表す図である。 図16は、実施例1及び比較例1における計算手順と結合自由エネルギーの算出結果を表す図である。
創薬とは、医薬品を設計するプロセスを意味する。創薬は、例えば、以下のような順で行われる。
(1) 標的分子の決定
(2) リード化合物等の探索
(3) 生理作用の検定
(4) 安全性・毒性の試験
リード化合物等(リード化合物及びリード化合物から派生する化合物)の探索においては、多数のリード化合物等(候補分子)の各々と、標的分子との相互作用を精度よく評価することが重要である。
また、コンピュータを用いて医薬品を設計することを、IT(Information Technology)創薬と称する場合がある。IT創薬の技術は、創薬全般において利用可能であるが、特にリード化合物等の探索にIT創薬の技術を利用することは、創薬に必要とされる期間の短縮及び創薬の成功確率を高める上で有用である。
本件で開示する技術は、例えば、高い薬理活性が期待されるリード化合物等の探索に利用できる。
(結合自由エネルギー計算の前処理方法)
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法は、コンピュータを用いて行われ、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギー計算の初期構造である、第1の物質と第2の物質との結合構造を求める方法である。
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法においては、第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように、第2の物質を拘束した条件における結合構造を求める。次に、この結合構造に基づいて、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める。
また、本件で開示する技術の発明者は、物質どうしの結合状態が変化しやすい場合に、結合自由エネルギーの算出精度が低下するときがある原因について検討した。
コンピュータを用いた分子シミュレーションにより、”de novo”ドラッグデザインなどのIT創薬を行う場合、標的分子と候補分子との結合活性値(解離定数)を示す結合自由エネルギーを高精度に予測することが重要である。標的分子と候補分子との結合自由エネルギーを算出する際には、例えば、実際の値(実験値)に対して誤差が、1.4kcal/mol以内になるような高精度の予測が求められている。
図1は、溶液中における標的分子と候補分子の状態の一例を表す図である。
図1に示す状態においては、溶液中の標的分子Aと候補分子Bは、互いに結合しているものと、結合していないものが平衡状態になっている。この場合の解離定数Kは、溶液中における標的分子Aの濃度を[A]、候補分子Bの濃度を[B]、標的分子Aと候補分子Bとの結合体(複合体)の濃度を[AB]とすると、下記の式で表される。なお、下記の式におけるeqは、溶液の濃度が平衡状態であることを意味する。
コンピュータを用いた分子シミュレーションにより求められる結合自由エネルギー(ΔG bind)は、上記の解離定数Kと下記の式で表す関係にある。ここで、kはボルツマン定数を表し、Tは温度(K)を表し、Cは標準濃度(1mol/L)を表す。
上記の式に示されるように、実験値としての解離定数Kと、算出した結合自由エネルギーΔG bindを比較する際には、標準濃度Cを考慮するため、結合自由エネルギーを算出する際には、分子シミュレーションにおける濃度を一定に制御することが好ましい。ここで、分子シミュレーションにおける濃度とは、結合自由エネルギー計算における結合自由エネルギーを算出するためのデータを取得するプロセスであるサンプリングの空間体積(サンプリングすべき空間)を意味する。
結合自由エネルギー計算においては、サンプリングの空間体積を一定に保ち、かつ標的分子と候補分子との結合状態を定義するために、標的分子に対して候補分子を拘束(束縛)することが好ましい。
また、分子シミュレーションを用いて、標的分子と候補分子との結合自由エネルギーを予測する方法としては、例えば、アルケミカル経路計算法、アンブレラサンプリング法、拡張アンサンブル法などが挙げられる。これらの中でも、アルケミカル経路計算法は、結合自由エネルギーの算出精度が高い方法であることが知られている。
アルケミカル経路計算法は、アルケミカル自由エネルギー計算(alchemical free energy calculation)、アルケミカル変換(alchemical transformation)などとも称される。
アルケミカル経路計算法では、仮想的(アルケミカル)な経路に沿った熱力学サイクルを用いて結合自由エネルギーを算出する。具体的には、アルケミカル経路計算法では、標的分子に対する候補分子の距離又は向きの拘束の状態と、候補分子とその周囲の分子との相互作用の状態とを制御し、各状態における自由エネルギーの変化を算出する。こうすることにより、アルケミカル経路計算法では、標的分子と候補分子が結合していない状態における自由エネルギーと、標的分子と候補分子が結合している状態における自由エネルギーとの差を正確に算出して、結合自由エネルギーを正確に求めることができる。
なお、アルケミカル経路計算法についての詳細は、例えば、Adv Protein Chem Struct Biol. 2011 ; 85: 27−80.などに記載されている。
アルケミカル経路計算法では、例えば、図2に示す熱力学サイクル及び以下の数式に基づいて、結合自由エネルギーを算出する。
図2は、アルケミカル経路計算法における熱力学サイクルの一例を表す図である。図2における、三日月状の物体は、標的分子(A)であり、円形の物体は、候補分子(B)である。図2及び上記の数式において、Cは、静電相互作用を表し、Lは、ファンデルワールス相互作用を表し、Rは、候補分子に対する拘束を表す。
上記式における右辺の第1,2,3,4,6項は、例えば、自由エネルギー摂動(FEP, free energy perturbation)法、Bennett受容比(BAR, Bennett acceptance ratio)法、多状態Bennett受容比(MBAR,Multistate Bennett acceptance ratio)法、熱力学積分(TI, Thermo−dynamic Integration)法などにより求めることができる。
上記式の右辺における最後から2項目(第5項)は、標準状態補正と呼ばれることがある。なお、標準状態補正の詳細については、例えば、Michael S. Lee et. al., Calculation of Absolute Protein−Ligand Binding Affinity Using Path and Endpoint Approaches, Biophysical Journal, Volume 90, February 2006, 864−877などに記載されている。
アルケミカル経路計算法を用いた結合自由エネルギー計算においては、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、候補分子に対する拘束などを消去する過程(デカップリング工程)の各状態における熱平衡状態(熱平衡構造)を求める。これは、アルケミカル経路計算法を用いた結合自由エネルギー計算においては、各状態での熱平衡構造をサンプリングの際の初期構造とするという理論的要請のためである。
図2における熱力学サイクルの各状態を指定するパラメータを、以下の式に示すように、λを用いて表すとすると、例えば、候補分子に対する拘束を消去する過程は、図2における(0,1,1)の状態から(1,1,1)の状態に遷移する過程と対応する。
なお、上記の式において、λは候補分子に対する拘束の状態を指定するパラメータ、λは静電相互作用の状態を指定するパラメータ、λLJはファンデルワールス相互作用の状態を指定するパラメータを意味する。各パラメータは、「0」である場合に、候補分子に対する拘束、静電相互作用、又はファンデルワールス相互作用がない状態を意味し、「1」である場合に、候補分子に対する拘束、静電相互作用、又はファンデルワールス相互作用が(完全に)存在する状態を意味する。
しかしながら、デカップリング工程の各λにおける熱平衡状態を求める際には、熱平衡状態への収束速度が大きく低下し、熱平衡状態を求めるための計算(熱平衡化計算)の計算時間が著しく長くなってしまうことがある。そのため、デカップリング工程の各λにおける熱平衡状態を求める際に、熱平衡状態への収束速度を速くするため、前処理計算を行う場合がある。
前処理計算(以下では、単に「前処理」とも称する)としては、例えば、各λの間においてλを段階的に変化させる(各λの間を複数の状態に分割する)ことにより行うことができる。ここで、λを段階的に変化させるとは、例えば、図2に示したように、(0,1,1)の状態から(1,1,1)の状態に遷移させる際に、λを0、0.2、0.4、0.6、0.8、1のように、各λの間を細かく区切って段階的に変化させることなどを意味する。
上記のようにλを段階的に変化させる場合、各λでの短い熱平衡化計算を連続して行うことにより、熱平衡状態への収束速度をより速くすることができる。なお、各λでの短い熱平衡化計算を連続して行うとは、例えば、λが0である状態における短い熱平衡化計算を行った後、その短い熱平衡化計算における最終構造を、λが0.2である状態の熱平衡化計算の初期構造とすることなどを意味する。
λを段階的に変化させて行う前処理について、図3に示すように、λを0、δ、δ、δと変化させる場合を例として、より詳細に説明する。
例えば、(δ,1,1)の状態における前処理は、(0,1,1)の状態における前処理により得られた構造((0,1,1)の状態における熱平衡化計算の最終構造)を、初期構造として行う。このようにすることで、各状態における適切な構造を前処理の初期構造とすることができるため、各状態での前処理(熱平衡化計算)に要する時間を短くすることができる。
しかしながら、上記のようにλを段階的に変化させる前処理を行う場合に、物質どうしの結合状態が変化しやすいときに、結合自由エネルギーの算出精度が低下することがあるという問題があった。より具体的には、図2における(0,1,1)の状態から(1,1,1)の状態に段階的にλを変化させる前処理を行う際に、候補分子の各結合状態を隔てるエネルギーの障壁が低い場合に、結合自由エネルギーの算出精度が低下することがあった。
上記の問題について、更に詳細に説明する。
結合自由エネルギー計算の前処理を、図2の径路に沿ってλを段階的に変化させて行う場合、(0,1,1)の状態と(1,1,1)の状態との間において、(0,1,1)近傍の状態(ε,1,1)で候補分子の拘束が極めて弱い前処理計算を行うことになる。
標的分子と候補分子との複合体構造についての自由エネルギー曲線が図4に示すような形状の場合、複合体構造は、室温揺らぎkT(k:ボルツマン定数、T:温度)よりも十分に大きなエネルギー障壁で隔てられている。このため、自由エネルギー曲線が図4に示すような形状の場合、図2における(0,1,1)近傍の状態(ε,1,1)で候補分子の拘束が極めて弱い前処理計算を行っても、複合体構造は、元の構造Aの状態に留まることが想定される。なお、図4及び図5における集団変数は、反応座標と称されることもあり、複合体構造の状態(結合状態)が遷移する過程で変化する幾何パラメータを意味する。
一方、複合体構造についての自由エネルギー曲線が図5に示すような形状の場合、図2における(0,1,1)近傍で候補分子の拘束が極めて弱い前処理計算を行うと、複合体構造は、元の構造Aの状態とは異なる構造Bや構造Cの状態に遷移してしまうことがある。このため、前処理において、構造Aの状態における結合自由エネルギー計算の初期構造を求めるべきであるにもかかわらず、実際には、室温揺らぎでエネルギー障壁を越えてしまうことにより、構造B又は構造Cの状態を初期構造として求めてしまう場合があった。
したがって、上記の前処理の方法では、前処理において標的分子と候補分子との結合状態が遷移してしまうことにより、結合自由エネルギー計算のサンプリングの空間体積が変わることで、結合自由エネルギーの定量的な予測が困難となる場合があった。
そこで、本件で開示する技術の発明者は、標的分子に対する候補分子の結合状態を所定の状態に維持した条件における結合構造(複合体構造)に基づいて、候補分子を拘束しない条件における結合構造を求めることで、上記の問題を解決できることを見出した。
本件で開示する技術の一例を、図6及び図7を用いて説明する。
図6に示すように、(0,1,1)の状態から(1,1,1)の状態になるようにλを段階的に変化させて前処理を行う場合、(0,1,1)近傍の状態(ε,1,1)における拘束が極めて弱い前処理計算の際に、複合体構造の状態が遷移してしまうときがある。
一方、本件で開示する技術の一例においては、例えば、図7に示すように、(1,1,1)の状態から(0,1,1)の状態になるようにλを段階的に変化させて前処理を行う。すなわち、本件で開示する技術においては、候補分子を拘束した条件における結合構造を求め、求めた結合構造に基づいて、候補分子を拘束しない条件における結合構造を求める。
こうすることにより、本件で開示する技術は、一つの側面では、前処理において標的分子と候補分子との結合状態が遷移してしまうことにより、結合自由エネルギー計算のサンプリングの空間体積が変わることを抑制できる。したがって、本件で開示する技術は、一つの側面では、物質どうしの結合状態が変化しやすい場合でも、結合自由エネルギーの算出精度を向上できる。これは、拘束のない状態から候補分子を拘束していくよりも、候補分子を拘束した状態から拘束を消去していく方が、標的分子と候補分子との結合状態の遷移を抑制できるためであると考えられる。
さらに、本件で開示する技術は、一つの側面では、並列処理を行うことが可能なコンピュータを用いて実行する場合には、前処理に要する計算時間を短縮することができる。本件で開示する技術が、前処理に要する計算時間を短縮することができることについて、図8及び図9を用いて説明する。
まず、図8に示すように、(0,1,1)の状態から前処理を始め、λを段階的に変化させて、(1,1,1)の状態、(1,0,1)の状態、(1,0,0)の状態の順に前処理を行う場合を考える。この場合、各状態の前処理は、1つ前の状態における最終構造を利用して前処理を行うため、(0,1,1)の状態の前処理から逐次的に処理することになる。
ここで、図8に示す例のように、(0,1,1)の状態から(1,1,1)の状態に遷移させるまでの前処理に必要とされる計算時間の合計をTとする。同様に、(1,1,1)の状態から(1,0,1)の状態に遷移させるまでの前処理に必要とされる計算時間の合計をT、(1,0,1)の状態から(1,0,0)の状態に遷移させるまでの前処理に必要とされる計算時間の合計をTとする。
この場合、(0,1,1)の状態から(1,0,0)の状態までの前処理全体に要する時間は、T+T+Tとなる。
一方、本件で開示する技術の一例においては、例えば、図9に示すように、(1,1,1)の状態から前処理を始める。こうすると、(1,1,1)の状態から(0,1,1)の状態に遷移させるまでの前処理と、(1,1,1)の状態から(1,0,1)の状態に遷移させるまでの前処理とは、互いに独立した(互いの結果を必要としない)処理となる。このため、(1,1,1)の状態から(0,1,1)の状態に遷移させるまでの前処理と、(1,1,1)の状態から(1,0,1)の状態に遷移させるまでの前処理とは、並列処理を行うことが可能である。
例えば、図9に示す例のように、図8の場合と同様に各状態を遷移させる際の前処理に必要とされる計算時間の合計を、それぞれ、T、T、Tとする。この場合、Tの時間が必要となる前処理と、Tの時間が必要となる前処理とは、並列処理を行うことが可能であるため、(0,1,1)の状態から(1,0,0)の状態までの前処理全体に要する時間は、T又はT+Tのいずれか長い方となる。
このように、本件で開示する技術は、一つの側面では、並列処理を行うことが可能なコンピュータを用いて実行する場合には、前処理に要する計算時間を短縮することができる。すなわち、本件で開示する技術の一例は、候補分子の状態を指定するパラメータ(λ)が互いに異なる条件における、標的分子と候補分子の結合構造を求める複数の計算を並列処理することにより、前処理に要する計算時間を短縮することができる。
また、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法は、結合自由エネルギー計算が、アルケミカル経路計算法により行われる場合に、特に好適に用いることができる。
なお、本件で開示する技術は、標的分子と候補分子とに限らず、複合体を形成することが可能な第1の物質と第2の物質との組み合わせに適用できる。
<第2の物質を拘束した条件における結合構造の算出>
まず、本件で開示する技術の一例においては、第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように、第2の物質を拘束した条件における、第1の物質と第2の物質との結合構造を求める。
第1の物質と第2の物質との組み合わせとしては、複合体を形成可能な組み合わせであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
複合体は、例えば、種々の相互作用により形成される。
第1の物質としては、例えば、標的分子などが挙げられる。
第2の物質としては、例えば、標的分子に対する結合性が評価される候補分子などが挙げられる。
標的分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タンパク質、RNA(リボ核酸、ribonucleic acid)、DNA(デオキシリボ核酸、deoxyribonucleic acid)などが挙げられる。
候補分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薬の候補となる分子(薬候補分子)、又は薬候補分子を設計する際のフラグメントなどが挙げられる。フラグメントは、例えば、フラグメントベースドラッグデザイン(FBDD)に使用される。
また、第1の物質としては、例えば、抗体、DNAなどとしてもよく、第2の物質としては、例えば、病原体、がん細胞、ストレス物質などとしてもよい。これらの第1の物質は、例えば、これらの第2の物質を検出する際に用いられるものとすることができる。本件で開示する技術は、一つの側面では、第1の物質における第2の物質の検出能力を評価する際に用いることができる。
ここで、第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように第2の物質を拘束するとは、第2の物質を拘束した条件における結合構造を求める際に、第2の物質の結合状態が遷移しないように第2の物質を拘束することを意味する。換言すると、結合状態を所定の状態に維持できるように第2の物質を拘束するとは、第2の物質を拘束した条件の計算(シミュレーション)中に、結合構造が所望の状態(所望のエネルギーの谷)から遷移しないように第2の物質を拘束することを意味する。
第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように第2の物質を拘束する手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第2の物質に拘束ポテンシャルを付加する手法が好ましい。
拘束ポテンシャルとしては、少なくとも第2の物質を拘束できるポテンシャルであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、調和ポテンシャル、井戸型ポテンシャルなどが挙げられる。
調和ポテンシャルは、定点からの距離に比例する力で拘束する拘束ポテンシャルであり、バネによる拘束ポテンシャルともいう。本件で開示する技術においては、第2の物質の拘束の強さを適宜設定できるため、拘束ポテンシャルが調和ポテンシャルであることが好ましい。
また、調和ポテンシャルの付加は、例えば、調和ポテンシャルを0から最大値まで漸増させながら付加することで行ってもよいし、計算の最初から所定の強さの調和ポテンシャルを付加することによって行ってもよい。
調和ポテンシャルの強さ(大きさ)を規定するバネ定数Kξは、第1の物質と第2の物質の組み合わせに応じて、結合構造を所望の状態で維持できる範囲で、適宜選択することができる。バネ定数Kξとしては、第1の物質に対する第2の物質の結合状態をより確実に所定の状態に維持するため、十分に大きな値とすることが好ましい。
拘束ポテンシャルは、例えば、第1の物質のアンカー点と第2の物質のアンカー点とを用いて、第1の物質と第2の物質との間に付加される。
第1の物質のアンカー点と、第2の物質のアンカー点との間に付加される拘束ポテンシャルは、例えば、第2の物質の揺らぎの大きさを特定の範囲になるように決定される。
第1の物質と第2の物質との距離の拘束は、例えば、結合活性に最も寄与の大きな分子の並進運動の自由度を正しく考慮するために行われる。
そのため、第2の物質の重心を第2の物質のアンカー点とすることが好ましい。第2の物質の重心は、例えば、以下の式で求めることができる。
ここで、上記の式中、mは、質量を表し、xは、第2の物質を形成する原子の座標を表す。
なお、水素原子は軽いため、重心の位置への影響が小さい。このため、第2の物質の重心は、第2の物質を形成する水素原子を除いて求められることが、計算時間を短縮できる点で好ましい。以下、水素原子を除く原子を重原子と称することがある。
第1の物質と第2の物質との結合構造(複合体構造)を求める手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分子力学法、分子動力学法などが挙げられる。これらの中でも、第1の物質と第2の物質との結合構造を求める手法としては、分子動力学法が好ましい。
分子動力学(Molecular Dynamics、MD)法とは、ニュートンの運動方程式を数値的に解くことにより、原子などの粒子(質点)の運動をシミュレーションする方法を意味する。
分子動力学法による分子動力学計算(シミュレーション)は、例えば、分子動力学計算プログラムを用いて行うことができる。分子動力学計算プログラムとしては、例えば、AMBER、CHARMm、GROMACS、GROMOS、NAMD、myPresto、MAPLECAFEE(登録商標)などが挙げられる。
分子動力学計算においては、例えば、定温定圧の条件(NPTアンサンブル)での計算を行うことなどにより、結合構造を熱平衡状態(に近い状態)に緩和させることができる。
つまり、本件で開示する技術は、一つの側面では、分子動力学計算により第1の物質と第2の物質との結合構造を求めることにより、熱平衡状態であると考えられる結合構造を求めることができる。
また、第1の物質と第2の物質との結合構造(複合体構造)を求める際の初期構造を作成する手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の物質と第2の物質との結合構造を求める際の初期構造は、例えば、第1の物質及び第2の物質の立体構造のデータに基づいて、上述の分子動力学計算プログラムの機能を用いることなどで作成できる。第1の物質及び第2の物質の立体構造のデータは、例えば、X線結晶構造解析、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)解析、クライオ電子顕微鏡を用いた解析などから得られる実験データから作成することができる。これらの手法により作成された立体構造のデータは、例えば、RCSB PDB(Protein Data Bank)などから取得できる。
また、例えば、第1の物質(例えば、標的分子としてのタンパク質など)の初期構造を上記の実験データを元にした立体構造のデータから作成し、第2の物質(例えば、候補分子)の初期構造をモデリングソフト等で設計して作成してもよい。なお、第1の物質(例えば、標的分子としてのタンパク質など)の初期構造としては、例えば、ホモロジーモデリング等の技術により予測された立体構造、RCSB PDBから取得した立体構造のデータにおける欠損部分(欠損残基)をモデリングして補完した立体構造などを用いてもよい。
なお、第1の物質と第2の物質との結合構造を求める際の初期構造については、第1の物質と第2の物質との結合構造の周囲に、水分子を配置した構造を用いることが好ましい。
<第2の物質を拘束しない条件における結合構造の算出>
次に、本件で開示する技術の一例においては、上記のようにして求めた第2の物質を拘束した条件における結合構造に基づいて、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める。言い換えると、本件で開示する技術の一例においては、第2の物質を拘束した条件における結合構造を初期構造として、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める。
第2の物質を拘束した条件における結合構造に基づいて、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める際には、第2の物質の拘束を段階的に弱くすることにより、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求めることが好ましい。
第2の物質の拘束を段階的に弱くすることは、例えば、調和ポテンシャルを最大値から0まで漸減させながら付加することなどにより行うことができる。
本件で開示する技術は、一つの側面では、2の物質の拘束を段階的に弱くすることにより、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求めることにより、前処理において第1の物質と第2の物質との結合状態が遷移してしまうことをより確実に抑制できる。これにより、本件で開示する技術は、一つの側面では、物質どうしの結合状態が変化しやすい場合でも、より確実に結合自由エネルギーの算出精度を向上できる。
ここで、結合自由エネルギー計算を上述したアルケミカル経路計算法により行う場合、アルケミカル経路計算法における熱力学サイクルの経路に沿って、第2の物質の状態を指定するパラメータ(例えば、上述のλ)を段階的に変化させてもよい。
この場合において、パラメータが、第1の数値である条件、及び第1の数値の次の数値となる第2の数値である条件における結合構造を求めるときを考える。このとき、本件で開示する技術の一例においては、パラメータが第1の数値である条件における結合構造を求め、求めた第1の数値である条件における結合構造に基づいて、パラメータが第2の数値である条件における結合構造を求めることが好ましい。言い換えると、本件で開示する技術の一例においては、第1の数値である条件において前処理を行った結果の構造(最終構造)を、第1の数値である条件における前処理の初期構造とすることが好ましい。こうすることにより、本件で開示する技術は、一つの側面では、各状態における適切な構造を前処理の初期構造とすることができるため、各状態での前処理に要する時間を短くすることができる。
なお、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める際においては、例えば、第2の物質を拘束した条件における結合構造を求める際と同様の手法を用いて、第2の物質の拘束及び結合構造の算出を行うことができる。
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法は、例えば、CPU、RAM、ハードディスク、各種周辺機器等を備えた通常のコンピュータシステムを用いることによって実現することができる。ここで、CPUはCentral Processing Unit、RAMはRandom Access Memoryを意味する。また、各種周辺機器等を備えた通常のコンピュータシステムとしては、例えば、各種ネットワークサーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータなどを有するものが挙げられる。
ここで、フローチャートを用いて、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法の一例を説明する。図10には、前処理を逐次的に(並列処理を行わずに)実行する場合の流れの一例を示す。
まず、ステップS101では、図2における(0,1,1)の状態に対応する第1の物質と第2の物質の初期構造を作成する。
次に、ステップS102では、S101で作成した(0,1,1)の状態の初期構造を用いて、第2の物質を拘束した条件における結合構造である(1,1,1)の状態の結合構造を求める。
次に、ステップS103では、S102で求めた(1,1,1)の状態の結合構造に基づいて、(0,1,1)の状態の結合構造を求めるための前処理を行う。
次に、ステップS104では、S102で求めた(1,1,1)の状態の結合構造に基づいて、(1,0,1)の状態の結合構造を求めるための前処理を行う。
次に、ステップS105では、S104で求めた(1,0,1)の状態の結合構造に基づいて、(1,0,0)の状態の結合構造を求めるための前処理を行う。
なお、図10に示す前処理の流れの一例においては、S103を行った後に、S104及びS105を行うこととしたが、本件で開示する技術はこれに限られるものではなく、例えば、S104及びS105を行った後に、S103を行ってもよい。
図11には、並列処理を行うことが可能なコンピュータを用いて、複数の前処理を並列して実行する場合の流れの一例を示す。
図11におけるステップS201からS205は、図10におけるステップS101からS105に、それぞれ対応する。
図11に示す例においては、S203と、S204及びS205とを並列して同時に行う。こうすることにより、図11に示す例では、前処理に要する計算時間を短縮することができる。
(結合自由エネルギーの算出方法)
本件で開示する結合自由エネルギーの算出方法は、コンピュータを用いた、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを算出する結合自由エネルギーの算出方法である。
本件で開示する結合自由エネルギーの算出方法は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法における前処理を行った後、結合自由エネルギーを算出するための計算を実行する。こうすることにより、本件で開示する結合自由エネルギーの算出方法は、一つの側面では、物質どうしの結合状態が変化しやすい場合でも、結合自由エネルギーの算出精度を向上できる。
結合自由エネルギーを算出するための計算としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述したアルケミカル経路計算法により行われることが好ましい。
(結合自由エネルギー計算の前処理プログラム)
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムは、コンピュータに、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法を実行させるプログラムである。
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムは、使用するコンピュータシステム及びオペレーティングシステムの種類・バージョンなどに応じて、公知の各種のプログラム言語を用いて作成することができる。
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムは、内蔵ハードディスク、外付けハードディスクなどの記録媒体に記録しておいてもよいし、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、MOディスク(Magneto−Optical disk)、USBメモリ〔USB(Universal Serial Bus) flash drive〕などの記録媒体に記録しておいてもよい。
さらに、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムを、上記の記録媒体に記録する場合には、必要に応じて、コンピュータシステムが有する記録媒体読取装置を通じて、これを直接又はハードディスクにインストールして使用することができる。また、コンピュータシステムから情報通信ネットワークを通じてアクセス可能な外部記憶領域(他のコンピュータなど)に本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムを記録しておいてもよい。この場合、外部記憶領域に記録された本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムは、必要に応じて、外部記憶領域から情報通信ネットワークを通じてこれを直接、又はハードディスクにインストールして使用することができる。
なお、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムは、複数の記録媒体に、任意の処理毎に分割されて記録されていてもよい。
(コンピュータが読み取り可能な記録媒体)
本件で開示するコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムを記録してなる。
本件で開示するコンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、USBメモリなどが挙げられる。
また、本件で開示するコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムが任意の処理毎に分割されて記録された複数の記録媒体であってもよい。
(結合自由エネルギー計算の前処理装置)
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置は、制御部を少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部を有する。
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置は、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギー計算の初期構造である、第1の物質と第2の物質との結合構造を求める。
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置における制御部は、第1の物質に対する第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように、第2の物質を拘束した条件における結合構造を求める。次に、この結合構造に基づいて、第2の物質を拘束しない条件における結合構造を求める。
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法は、例えば、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置により行うことができる。
図12に、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置の構成例を示す。
結合自由エネルギー計算の前処理装置10においては、例えば、CPU11(制御部)、メモリ12、記憶部13、表示部14、入力部15、出力部16、I/Oインターフェース部17がシステムバス18を介して接続されている。
CPU11は、演算(四則演算、比較演算等)、ハードウェア及びソフトウェアの動作制御などを行う。
メモリ12は、RAM、ROMなどのメモリである。RAMは、ROM及び記憶部13から読み出されたOS(Operating System)及びアプリケーションプログラムなどを記憶し、CPU11の主メモリ及びワークエリアとして機能する。
記憶部13は、各種プログラム及びデータを記憶する装置であり、例えば、ハードディスクである。記憶部13には、CPU11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OSなどが格納される。
本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理プログラムは、記憶部13に格納され、メモリ12のRAM(主メモリ)にロードされ、CPU11により実行される。
表示部14は、表示装置であり、例えば、CRTモニタ、液晶パネルなどのディスプレイ装置である。
入力部15は、各種データの入力装置であり、例えば、キーボード、ポインティングデバイス(例えば、マウス等)などである。
出力部16は、各種データの出力装置であり、例えば、プリンタなどである。
I/Oインターフェース部17は、各種の外部装置を接続するためのインターフェースである。I/Oインターフェース部17は、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、MOディスク、USBメモリなどのデータの入出力を可能にする。
図13に、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置の他の構成例を示す。
図13に示す例は、結合自由エネルギー計算の前処理装置をクラウド型にした場合の例であり、CPU11が、記憶部13などとは独立している。図13に示す例においては、ネットワークインターフェース部19、20を介して、記憶部13などを格納するコンピュータ30と、CPU11を格納するコンピュータ40とが接続される。
ネットワークインターフェース部19、20は、インターネットを利用して、通信を行うハードウェアである。
図14に、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理装置の他の構成例を示す。
図14に示す例は、結合自由エネルギー計算の前処理装置をクラウド型にした場合の例であり、記憶部13が、CPU11などとは独立している。図13に示す例においては、ネットワークインターフェース部19、20を介して、CPU11等を格納するコンピュータ30と、記憶部13を格納するコンピュータ40とが接続される。
以下、本件で開示する技術について、実施例を示してより詳細に説明するが、本件で開示する技術は、下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
第1の物質としてのタンキラーゼ−2と、第2の物質としてのXAV−939との系(PDB ID:3KR8)について、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法を用いて、結合自由エネルギーの算出を行った。その手順について、説明する。
まず、上記のPDB ID:3KR8における欠損残基を、タンキラーゼ−1とXAV−939の複合体の立体構造であるPDB ID:3UH4を参考にして補完した。欠損残基を補完したタンキラーゼ−2とXAV−939との複合体構造であり、3KR8の構造と3UH4の構造を重ね合わせたものを図15に示す。
次に、補完した構造に基づいて、分子動力学計算に用いることができる初期構造を作成した。なお、分子動力学計算に用いることができる初期構造は、例えば、タンパク質に対する水素原子の付加、タンパク質の周囲に対する水分子の配置などを行うことにより作成できる。
そして、作成した初期構造を用いて、XAV−939を拘束した条件における分子動力学計算を実行し、図2における(1,1,1)の状態に対応するタンキラーゼ−2とXAV−939の結合構造を求めた。なお、XAV−939の拘束としては、調和ポテンシャルを用いて、XAV−939の結合状態が遷移しないような十分な強さの拘束を付与した。
続いて、求めた結合構造を用いて、XAV−939の拘束を段階的に弱くすること(λを1から0に段階的に変化させること)により、XAV−939を拘束しない条件における結合構造(図2における(0,1,1)の状態に対応)を求めた。なお、λを1から0に段階的に変化させる際には、一の条件で前処理を行った結果の構造(最終構造)を、次の条件における前処理の初期構造とした。
次に、図2における(1,1,1)の状態に対応するタンキラーゼ−2とXAV−939の結合構造を用いて、図2における(1,0,1)の状態に対応する結合構造を求めた。続いて、求めた図2における(1,0,1)の状態に対応する結合構造を用いて、(1,0,0)の状態に対応する結合構造を求め、結合自由エネルギー計算の前処理を行った。なお、これらの計算においても、なお、λを1から0に段階的に変化させる際には、一の条件で前処理を行った結果の構造(最終構造)を、次の条件における前処理の初期構造とした。
上記のように前処理を行った後、分子動力学計算に基づくアルケミカル経路計算法を用いた方法により、タンキラーゼ−2とXAV−939との結合自由エネルギーを算出した。結合自由エネルギーを算出するための分子動力学計算は、定温定圧の条件(NPTアンサンブル)で、シミュレーション時間を140nsとして行った。分子動力学計算を行うことにより得られたデータを、多状態Bennett受容比(MBAR)法により解析して、結合自由エネルギーを算出した。結果を表1に示す。
なお、実施例1において、分子動力学計算の力場としては、タンキラーゼ−2には、AMBER ff14SBを、XAV−939には、GAFF(General AMBER force field)を用いた。
(比較例1)
比較例1においては、実施例1と同様の手順で作成したタンキラーゼ−2とXAV−939との複合体の初期構造を、図2における(0,1,1)の状態に対応する結合構造とした。次に、作成した(0,1,1)の状態に対応する結合構造を用いて、(1,1,1)、(1,0,1)、(1,0,0)の順に、結合自由エネルギー計算の前処理を行った。上記の部分以外は、実施例1と同様にして、結合自由エネルギーを算出した。結果を表1に示す。
また、上記の表1における実験値は、タンキラーゼ−2とXAV−939との活性値(解離定数)Kが記載された論文(T. Karlberg et al. J. Med. Chem. 53, 5352 (2010).)を参考に算出した。
上記の論文には、ITC(Isothermal Titration Calorimetry)装置を用いて測定されたタンキラーゼ−2とXAV−939との活性値Kが、8±3nMであることが記載されている。ここで、結合自由エネルギーΔG bindは、活性値Kと下記の式で表す関係にある。kはボルツマン定数を表し、Tは温度(K)を表し、Cは標準濃度(1mol/L)を表す。
上記の式から、活性値Kが8nMである場合、室温でのΔG bindは、−11.0kcal/molと計算できる。
上記の表2に示したように、実施例1の結果は、比較例1の結果よりも実験値に近い値となっている。また、実施例1と比較例1の前処理の手順の差異と、それぞれの手順で前処理を行った場合における結合自由エネルギーの算出結果を図16に示す。図16においては、図2と同様に、三日月状の物体は、標的分子(タンキラーゼ−2)を示し、円形の物体は、候補分子(XAV−939)を示す。
以上のことから、本件で開示する結合自由エネルギー計算の前処理方法を用いることにより、物質どうしの結合状態が変化しやすい場合でも、結合自由エネルギーの算出精度を向上できることが確認できた。
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
コンピュータを用いた、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算する際の前処理方法であって、
前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、
求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める、
ことを特徴とする結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記2)
前記第1の物質が、標的分子であり、前記第2の物質が、前記標的分子に対する結合性が評価される候補分子である付記1に記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記3)
分子動力学計算により前記結合構造を求める付記1から2のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記4)
前記第2の物質の拘束が、前記第2の物質に拘束ポテンシャルを付加することにより行われる付記1から3のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記5)
前記拘束ポテンシャルが、調和ポテンシャルである付記4に記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記6)
前記第2の物質の前記拘束を段階的に弱くすることにより、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める付記4から5のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記7)
前記結合自由エネルギー計算が、アルケミカル経路計算法により行われる付記1から6のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記8)
前記アルケミカル経路計算法における熱力学サイクルの経路に沿って、前記経路における前記第2の物質の状態を指定するパラメータを段階的に変化させ、
前記パラメータが、第1の数値である条件、及び前記経路において前記第1の数値の次の数値となる第2の数値である条件における、前記結合構造を求める際に、
前記パラメータが前記第1の数値である条件における前記結合構造を求め、
前記第1の数値である条件における前記結合構造に基づいて、前記パラメータが前記第2の数値である条件における前記結合構造を求める付記7に記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記9)
並列処理を行うことが可能なコンピュータを用いて、前記パラメータが互いに異なる条件における、前記第1の物質と前記第2の物質の結合構造を求める複数の計算を並列処理する付記8に記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
(付記10)
コンピュータを用いた、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを算出する結合自由エネルギーの算出方法であって、
前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、
求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求めた後、
前記結合自由エネルギーを算出するための計算を実行する、
ことを特徴とする結合自由エネルギーの算出方法。
(付記11)
前記結合自由エネルギーを算出するための計算が、アルケミカル経路計算法により行われる付記10に記載の結合自由エネルギーの算出方法。
(付記12)
第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算する際に用いる前処理装置であって、
前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、
求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める、
制御部を有することを特徴とする結合自由エネルギー計算の前処理装置。
(付記13)
前記第1の物質が、標的分子であり、前記第2の物質が、前記標的分子に対する結合性が評価される候補分子である付記12に記載の結合自由エネルギー計算の前処理装置。
(付記14)
分子動力学計算により前記結合構造を求める付記12から13のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理装置。
(付記15)
アルケミカル経路計算法における熱力学サイクルの経路に沿って、前記経路における前記第2の物質の状態を指定するパラメータを段階的に変化させ、
前記パラメータが、第1の数値である条件、及び前記経路において前記第1の数値の次の数値となる第2の数値である条件における、前記結合構造を求める際に、
前記パラメータが前記第1の数値である条件における前記結合構造を求め、
前記第1の数値である条件における前記結合構造に基づいて、前記パラメータが前記第2の数値である条件における前記結合構造を求める付記12から14のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理装置。
(付記16)
並列処理を行うことが可能な結合自由エネルギー計算の前処理装置であって、前記パラメータが互いに異なる条件における、前記第1の物質と前記第2の物質の結合構造を求める複数の計算を並列処理する付記15に記載の結合自由エネルギー計算の前処理装置。
(付記17)
コンピュータに、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算させる際に用いる前処理プログラムであって、
前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、
求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする結合自由エネルギー計算の前処理プログラム。
(付記18)
前記第1の物質が、標的分子であり、前記第2の物質が、前記標的分子に対する結合性が評価される候補分子である付記17に記載の結合自由エネルギー計算の前処理プログラム。
(付記19)
アルケミカル経路計算法における熱力学サイクルの経路に沿って、前記経路における前記第2の物質の状態を指定するパラメータを段階的に変化させ、
前記パラメータが、第1の数値である条件、及び前記経路において前記第1の数値の次の数値となる第2の数値である条件における、前記結合構造を求める際に、
前記パラメータが前記第1の数値である条件における前記結合構造を求め、
前記第1の数値である条件における前記結合構造に基づいて、前記パラメータが前記第2の数値である条件における前記結合構造を求める付記17から18のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理プログラム。
(付記20)
並列処理を行うことが可能なコンピュータを用いて、前記パラメータが互いに異なる条件における、前記第1の物質と前記第2の物質の結合構造を求める複数の計算を並列処理する付記19に記載の結合自由エネルギー計算の前処理プログラム。
10 結合自由エネルギー計算の前処理装置
11 CPU(制御部)
12 メモリ
13 記憶部
14 表示部
15 入力部
16 出力部
17 I/Oインターフェース部
18 システムバス
19 ネットワークインターフェース部
20 ネットワークインターフェース部
30 コンピュータ
40 コンピュータ

Claims (13)

  1. コンピュータを用いた、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算する際の前処理方法であって、
    前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、
    求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める、
    ことを特徴とする結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  2. 前記第1の物質が、標的分子であり、前記第2の物質が、前記標的分子に対する結合性が評価される候補分子である請求項1に記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  3. 分子動力学計算により前記結合構造を求める請求項1から2のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  4. 前記第2の物質の拘束が、前記第2の物質に拘束ポテンシャルを付加することにより行われる請求項1から3のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  5. 前記拘束ポテンシャルが、調和ポテンシャルである請求項4に記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  6. 前記第2の物質の前記拘束を段階的に弱くすることにより、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める請求項4から5のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  7. 前記結合自由エネルギー計算が、アルケミカル経路計算法により行われる請求項1から6のいずれかに記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  8. 前記アルケミカル経路計算法における熱力学サイクルの経路に沿って、前記経路における前記第2の物質の状態を指定するパラメータを段階的に変化させ、
    前記パラメータが、第1の数値である条件、及び前記経路において前記第1の数値の次の数値となる第2の数値である条件における、前記結合構造を求める際に、
    前記パラメータが前記第1の数値である条件における前記結合構造を求め、
    前記第1の数値である条件における前記結合構造に基づいて、前記パラメータが前記第2の数値である条件における前記結合構造を求める請求項7に記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  9. 並列処理を行うことが可能な前記コンピュータを用いて、前記パラメータが互いに異なる条件における、前記第1の物質と前記第2の物質の前記結合構造を求める複数の計算を並列処理する請求項8に記載の結合自由エネルギー計算の前処理方法。
  10. コンピュータを用いた、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを算出する結合自由エネルギーの算出方法であって、
    前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、
    求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求めた後、
    前記結合自由エネルギーを算出するための計算を実行する、
    ことを特徴とする結合自由エネルギーの算出方法。
  11. 前記結合自由エネルギーを算出するための計算が、アルケミカル経路計算法により行われる請求項10に記載の結合自由エネルギーの算出方法。
  12. 第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算する際に用いる前処理装置であって、
    前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、
    求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める、
    制御部を有することを特徴とする結合自由エネルギー計算の前処理装置。
  13. コンピュータに、第1の物質と第2の物質との結合自由エネルギーを計算させる際に用いる前処理プログラムであって、
    前記第1の物質に対する前記第2の物質の結合状態を所定の状態に維持できるように前記第2の物質を拘束した条件における、前記第1の物質と前記第2の物質との結合構造を求め、
    求めた前記結合構造に基づいて、前記第2の物質を拘束しない条件における前記結合構造を求める、
    処理をコンピュータに実行させることを特徴とする結合自由エネルギー計算の前処理プログラム。
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