JP2020122962A - 消火訓練装置及び模擬消火器 - Google Patents

消火訓練装置及び模擬消火器 Download PDF

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潤 佐伯
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良希 ▲高▼橋
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大樹 ▲徳▼田
大樹 ▲徳▼田
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Abstract

【課題】火炎の大きさ、高さの表現が、ディスプレイの面積によって制限されず、例えば、屋内での建物火災を模して訓練をする場合には火炎が天井に至る現象を体感させることができる消火訓練装置を提供すること。【解決手段】仮想火炎Bを映像として表示する映像表示手段1と、映像表示手段1で表示する映像を生成する制御手段10とを備え、制御手段10は、撮影手段2で撮影した映像から模擬消火器20の消火剤放射位置Dを判別する放射位置判別部11と、時間の経過に伴って仮想火炎Bを大きくする火炎演算部13と、放射位置判別部11で判別された消火剤放射位置Dが火元位置に一致している時間に応じて仮想火炎Bを小さくする消火演算部14とを有することを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、初期消火作業の訓練に用いる消火訓練装置、及びこの消火訓練装置に用いる模擬消火器に関する。
多くの場合に火災は、小規模の火炎の発生からはじまり、時間の経過によって火炎の規模が拡大する。建物などに設置されている消火器は、火災の発見者が、小規模の火炎の状態で消火作業を行う、いわゆる初期消火作業に用いられる機材である。初期消火作業は重要であり、特に火災が同時多発的に発生する震災時などにおいては、一般市民の各々が初期消火に努めることにより、大火災の発生による二次被害を防止することができる。そのため、より多くの一般市民が消火器を正しく使用できるように、防災訓練において消火器による初期消火訓練が実施されている。
初期消火訓練の方法には、火災を実際に起こしてから消火器の実機を用いて初期消火訓練をする方法と、炎という文字や炎のイラストを描いた看板を火炎に見立てて消火器の実機あるいは水などを放射する模擬消火器を用いて初期消火訓練をする方法とがある。
このうち実際の火炎を用いる方法は、初期消火の実体験を得られることから、学習の効果は大きいが、専門的な設備を除けば、屋外での実施に限定される上、消防署、消防団の立ち合いや、準備、片付けなどに多大なコストと時間が掛かる。そのために日常的に実施したり、一度の訓練で大勢の訓練者が体験することが困難である。
一方、火炎に見立てた看板を用いる方法は、特に水などを放射する模擬消火器を使用する場合には、コストが安く、多くの訓練者が体験することが可能であるが、臨場感に乏しい。また、実際の初期消火作業では、消火剤を火炎の火元に向けてほうきを掃くように左右に振りながら放射する必要があるが、火炎に見立てた看板を用いる方法の場合には、看板を的に見立てて水などを一点に放射することが目的となってしまい、実際の初期消火作業の動作を学習させる機能に乏しい。また排水設備などが整った施設でない限り、屋外で実施する必要がある。
これに対して、表示装置のディスプレイを用いる方法では、ディスプレイ上に表示された映像の火炎を、実在のレバーなどの外部入力装置を用いてディスプレイ上に表示された消火器を操作することで、消火する疑似体験を行う消火訓練用火災模擬装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、表示装置のディスプレイ上に火炎を映し出し、模擬消火器を用いて消火訓練を行うことができる装置が提案されている(特許文献2、3、4参照)。
特許文献2に記載された消火訓練用模擬装置は、模擬消火器のノズル部と表示装置との距離と、ノズル部の方向を検出し、適切に火炎に対して消火剤が放射されていると判定すると火炎の映像が切り替わり初期消火作業の訓練を行うことができる。
特許文献3に記載されたフレームレス消火器訓練方法及び装置は、表示装置表面に配設された複数の光源により火炎の映像を再現し、表示装置表面に配設されたセンサーが模擬消火器のノズルから発せられる可視光線などの刺激に対応して火炎の映像を変化させることで、初期消火作業の訓練を行うことができる。
特許文献4に記載された体験型消火訓練システム、消火訓練用火災模擬装置、消火訓練用火災模擬方法及びプログラムは、模擬消火器から放射される仮想の消火剤の仮想の粒子の質量及び体積、仮想の消火剤の吐出速度及び角度、火災の仮想環境における仮想の風向及び湿度などの各種のパラメータを算出し、仮想の消火剤が表示される火炎の火元領域内に到達したか否かを判定することで、より正確な消火器から放射される消火剤を再現した初期消火作業の訓練を行うことができる。
このように、特許文献2、3、4に記載された技術では、火炎を実際に発生させることなく模擬消火器を用いて初期消火作業の訓練を行うことができる。また、実際の火炎や、消火剤、あるいは、消火剤に模した水などを必要としないため、屋内での実施が可能であり、建物火災に係る初期消火作業の訓練を行うことができる。
特開2000−132080号公報 特開平4−76592号公報 特表2009−529708号公報 特開2018−4825号公報
しかし、特許文献2、3、4に記載された構成では、ディスプレイを有する表示装置を用いるため、火炎の大きさ、高さの表現はディスプレイの面積によって制限され、例えば、屋内での建物火災を模して訓練をする場合には火炎が天井に至る現象を体感させることができない。もちろん、実施する屋内の構造に合わせて大型の表示装置を用い、又は表示装置を複数組み合わせて火炎が天井に至る現象を再現することはできるが、その実施にあたっては莫大な設備が必要になり、簡易に移動させることもできず汎用性が失われる。
更に、消火器による初期消火作業では、消火剤を火炎の火元に向けてほうきを掃くように左右に振りながら放射する必要があるが、特許文献2、3、4に記載された構成では、模擬消火器のノズルをほうきを掃くように左右に振りながら放射する動作を検知することが考慮されておらず、実際の初期消火作業の技術を習得させるものとなっていない。
また、初期消火作業においては作業者の安全確保が最も重要であり、そのためには、火炎に対して適切な距離を置いて作業を行うことや、火炎が拡大した場合に初期消火作業を中断して避難をすることが重要である。特に建物火災の場合には、火炎が天井にまわった時点で火炎は急激に拡大するために、この時点で初期消火は無理と判断し迅速な避難が必要となる。しかし、特許文献2、3、4に記載された構成では、表示装置のディスプレイ、あるいは、表示装置のディスプレイ上に映し出された火炎と訓練者との距離を特定し評価するものとなっていない。従って、訓練者は火炎との適切な距離を学習することができず、あるいは、訓練者が火炎と適切な距離をおいて作業訓練を実施できていたか否かを判断することができない。
本発明は、火炎の大きさ、高さの表現が、ディスプレイの面積によって制限されず、例えば、屋内での建物火災を模して訓練をする場合には火炎が天井に至る現象を体感させることができる消火訓練装置を提供することを目的とする。
請求項1記載の本発明の消火訓練装置は、模擬消火器20を使用した消火訓練に用いる消火訓練装置であって、仮想火炎Bを映像として表示する映像表示手段1と、前記映像表示手段1で表示する前記映像を生成する制御手段10とを備え、前記制御手段10は、前記模擬消火器20の消火剤放射位置Dを判別する放射位置判別部11と、時間の経過に伴って前記仮想火炎Bを大きくする火炎演算部13と、前記放射位置判別部11で判別された前記消火剤放射位置Dが火元位置に一致している時間に応じて前記仮想火炎Bを小さくする消火演算部14とを有することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の消火訓練装置において、前記制御手段10は、前記模擬消火器20の消火剤放射開始からの放射時間を計測する放射時間計時部18を有し、前記放射時間計時部18が消火剤放射リミット時間を計測すると、消火剤が消失したことを前記映像として表示することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の消火訓練装置において、前記映像表示手段1を、壁面又はスクリーンに前記映像を投影する映写機としたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の消火訓練装置において、前記火炎演算部13では、前記時間の経過とともに燃焼強度を上限値まで上昇させる火元セルbを設定し、前記火元セルbの前記燃焼強度が前記上限値に至ると新たな前記火元セルbを増殖させ、前記火元セルbの個数が増加することによって、前記映像として表示する前記仮想火炎Bを大きくすることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の消火訓練装置において、前記火元セルbを、直交するX軸及びY軸で特定される平面上で増殖させ、前記火元セルbの前記個数が増加することによって、前記仮想火炎Bを高くすることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項4又は請求項5に記載の消火訓練装置において、前記火元セルbの前記燃焼強度に応じて前記仮想火炎Bを大きくすることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項4又は請求項5に記載の消火訓練装置において、前記火元セルbを前記火元位置とし、 前記消火剤放射位置Dが前記火元位置に一致している時には前記火元セルbの前記燃焼強度を減少させ、前記燃焼強度が下限値に至ると前記火元セルbを消滅させることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項7に記載の消火訓練装置において、全ての前記火元セルbが消滅することで、前記仮想火炎Bを消滅させることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の消火訓練装置において、前記火元セルbを、前記仮想火炎Bとともに、又は前記仮想火炎Bに代えて前記映像として表示することを特徴とする。
請求項10記載の本発明の模擬消火器20は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の消火訓練装置に用いる模擬消火器20であって、消火剤収容空間をイメージさせる本体21と、前記本体21の頂部に設けられたハンドルレバー22と、前記ハンドルレバー22に係止される安全ピン23と、前記本体21の前記頂部に一端が接続されたホース24と、前記ホース24の他端に設けられた模擬ノズル25とを有することを特徴とする。
請求項11記載の本発明の模擬消火器20は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の消火訓練装置に用いる模擬消火器20であって、消火剤収容空間をイメージさせる本体21と、前記本体21の頂部に設けられたハンドルレバー22と、前記ハンドルレバー22に係止される安全ピン23と、前記本体21の前記頂部に一端が接続されたホース24と、前記ホース24の他端に設けられた模擬ノズル25とを有し、前記模擬ノズル25に光源27を設けたことを特徴とする。
請求項12記載の本発明は、請求項10又は請求項11に記載の模擬消火器20において、前記ハンドルレバー22の操作によって作動するスイッチ26を設け、前記スイッチ26が作動することで、前記撮影手段2による撮影を開始し、又は前記光源27による放射を開始することを特徴とする。
本発明によれば、火炎の大きさ、高さの表現が、ディスプレイの面積によって制限されず、例えば、屋内での建物火災を模して訓練をする場合には火炎が天井に至る現象を体感させることができる。
本発明の一実施例における消火訓練装置を機能実現手段で現したブロック図 同消火訓練装置のフローチャート 同消火訓練装置に用いる模擬消火器の構成図 同消火訓練装置の使用状態を示し、模擬ノズルに撮影手段を設けた模擬消火器を用いた場合の概念図 同消火訓練装置の使用状態を示し、模擬ノズルに光源を設けた模擬消火器を用いた場合の概念図 図4に示す消火訓練装置における消火剤放射位置の判別方法を示す説明図 図5に示す消火訓練装置における消火剤放射位置の判別方法を示す説明図 仮想火炎の増殖イメージを示す説明図 仮想火炎の増殖パターン例を示す説明図 一つの火元セルが燃焼強度を上限値まで上昇させ、その後に仮想消火剤の放射により燃焼強度が減少する様子を示すグラフ 仮想空間(映像表示領域)において火元セルの出現位置を定義するグリッドシステムを示す図 消火剤放射位置が火元セルに影響を与える範囲を示す説明図 グリッドシステム上で火元セルが増殖していく様子を示す説明図 火元セルの時間の経過による増減の様子を表した表 火元セルの時間の経過による増減の様子を表した表
本発明の第1の実施の形態による消火訓練装置は、仮想火炎を映像として表示する映像表示手段と、映像表示手段で表示する映像を生成する制御手段とを備え、制御手段は、模擬消火器の消火剤放射位置を判別する放射位置判別部と、時間の経過に伴って仮想火炎を大きくする火炎演算部と、放射位置判別部で判別された消火剤放射位置が火元位置に一致している時間に応じて仮想火炎を小さくする消火演算部とを有するものである。本実施の形態によれば、模擬消火器の消火剤放射位置を判別するため、映像表示手段として、ディスプレイを用いることができるとともに、壁面又はスクリーンに映像を投影する映写機を用いることができ、特に映写機を用いることで、火炎の大きさ、高さの表現が、ディスプレイの面積によって制限されず、例えば、屋内での建物火災を模して訓練をする場合には火炎が天井に至る現象を体感させることができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による消火訓練装置において、制御手段が、模擬消火器の消火剤放射開始からの放射時間を計測する放射時間計時部を有し、放射時間計時部が消火剤放射リミット時間を計測すると、消火剤が消失したことを映像として表示するものである。本実施の形態によれば、消火剤の残量を意識した消火訓練を行うことができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による消火訓練装置において、映像表示手段を、壁面又はスクリーンに映像を投影する映写機としたものである。本実施の形態によれば、映写機を用いることで、火炎の大きさ、高さの表現が、ディスプレイの面積によって制限されず、例えば、屋内での建物火災を模して訓練をする場合には火炎が天井に至る現象を体感させることができる。
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による消火訓練装置において、火炎演算部では、時間の経過とともに燃焼強度を上限値まで上昇させる火元セルを設定し、火元セルの燃焼強度が上限値に至ると新たな火元セルを増殖させ、火元セルの個数が増加することによって、映像として表示する仮想火炎を大きくするものである。本実施の形態によれば、火元セルを設定し、時間の経過に伴ってこの火元セルを増殖させ、火元セルの増殖に応じて仮想火炎を大きくするため、火炎の拡大をリアルに表示することができる。
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による消火訓練装置において、火元セルを、直交するX軸及びY軸で特定される平面上で増殖させ、火元セルの個数が増加することによって、仮想火炎を高くするものである。本実施の形態によれば、火炎高さをリアルに表示でき、例えば、屋内での建物火災を模して訓練をする場合には、火炎が天井に至る現象を体感させることができる。
本発明の第6の実施の形態は、第4又は第5の実施の形態による消火訓練装置において、火元セルの燃焼強度に応じて仮想火炎を大きくするものである。本実施の形態によれば、火元セルの増殖だけでなく、火元セル自体の燃焼強度に変化を持たせることで、火炎の拡大を更にリアルに表示することができる。
本発明の第7の実施の形態は、第4又は第5の実施の形態による消火訓練装置において、火元セルを火元位置とし、消火剤放射位置が火元位置に一致している時には火元セルの燃焼強度を減少させ、燃焼強度が下限値に至ると火元セルを消滅させるものである。本実施の形態によれば、消火剤を火炎の火元に向けてほうきを掃くように左右に振りながら放射するという、実際の初期消火作業の技術を訓練者に習得させることができる。
本発明の第8の実施の形態は、第7の実施の形態による消火訓練装置において、全ての火元セルが消滅することで、仮想火炎を消滅させるものである。本実施の形態によれば、消火剤を火炎の火元に向けてほうきを掃くように左右に振りながら放射すること、で火炎を消火できることを習得させることができる。
本発明の第9の実施の形態は、第4から第8のいずれかの実施の形態による消火訓練装置において、火元セルを、仮想火炎とともに、又は仮想火炎に代えて映像として表示するものである。本実施の形態によれば、火元セルを表示することで、放射する位置を訓練者に意識させることができる。
本発明の第10の実施の形態による模擬消火器は、第1から第9のいずれかの実施の形態による消火訓練装置に用いる模擬消火器であって、消火剤収容空間をイメージさせる本体と、本体の頂部に設けられたハンドルレバーと、ハンドルレバーに係止される安全ピンと、本体の頂部に一端が接続されたホースと、ホースの他端に設けられた模擬ノズルとを有するものである。本実施の形態によれば、消火訓練のリアリティを高めることができる。
本発明の第11の実施の形態による模擬消火器は、第1から第9のいずれかの実施の形態による消火訓練装置に用いる模擬消火器であって、消火剤収容空間をイメージさせる本体と、本体の頂部に設けられたハンドルレバーと、ハンドルレバーに係止される安全ピンと、本体の頂部に一端が接続されたホースと、ホースの他端に設けられた模擬ノズルとを有し、模擬ノズルに光源を設けたものである。本実施の形態によれば、光源を模擬ノズルに設けることで、表示された映像に光を照射でき映像に照射された光の位置を模擬ノズルでの放射位置として利用できる。
本発明の第12の実施の形態は、第10又は第11の実施の形態による模擬消火器において、ハンドルレバーの操作によって作動するスイッチを設け、スイッチが作動することで、撮影手段による撮影を開始し、又は光源による放射を開始するものである。本実施の形態によれば、実際の消火器の操作に合わせた訓練を行える。
以下に、本発明の消火訓練装置の一実施例について説明する。
図1は本発明の一実施例における消火訓練装置を機能実現手段で現したブロック図である。
本実施例による消火訓練装置は、仮想火炎を映像として表示する映像表示手段1と、映像表示手段1で表示された映像を撮影する撮影手段2と、映像表示手段1で表示する映像を生成する制御手段10とを備えている。
映像表示手段1は、ディスプレイのような表示装置でもよいが、壁面又はスクリーンに映像を投影する映写機とすることが好ましい。映像表示手段1として映写機を用いることで、火炎の大きさ、高さの表現が、ディスプレイの面積によって制限されず、例えば、屋内での建物火災を模して訓練をする場合には火炎が天井に至る現象を体感させることができる。
制御手段10は、放射位置判別部11と、一致判断部12と、火炎演算部13と、消火演算部14と、火元セル集計部15、火炎高さ演算部16、及び映像生成部17を有する。
放射位置判別部11では、撮影手段2で撮影した映像から模擬消火器の消火剤放射位置を判別する。
一致判断部12では、放射位置判別部11で判別された消火剤放射位置が火元位置に一致しているか否かを判断する。消火剤放射位置と火元位置との一致は、完全一致に限らず、一部が一致する場合でもよい。
火炎演算部13では、放射位置判別部11で判別された消火剤放射位置が火元位置に一致していない時には、時間の経過に伴って仮想火炎を大きくする。
消火演算部14では、放射位置判別部11で判別された消火剤放射位置が火元位置に一致している時間に応じて仮想火炎を小さくする。
火炎演算部13では、時間の経過とともに燃焼強度を上限値まで上昇させる火元セルを設定し、火元セルの燃焼強度が上限値に至ると新たな火元セルを増殖させる。火元セルは、直交するX軸及びY軸で特定される平面上で増殖させる。それぞれの火元セルは、火元位置とする。
消火演算部14では、消火剤放射位置が火元位置に一致している時には火元セルの燃焼強度を減少させ、燃焼強度が下限値に至ると火元セルを消滅させる。
なお、一部が一致する場合には、一致の比率に応じて、火炎演算部13での燃焼強度の上昇と、消火演算部14での燃焼強度の減少とを行ってもよい。
火元セル集計部15では、火元セルの個数、又はそれぞれの燃焼強度を加味した火元セルを集計する。
火炎高さ演算部16では、火元セルの個数、又は火元セルの個数とそれぞれの火元セルの燃焼強度から、火炎高さを演算する。仮想火炎は、火元セルが増加することによって、又はそれぞれの燃焼強度を加味した火元セルの総数に応じて高くする。
映像生成部17では、火元セルの燃焼強度に応じて大きくした仮想火炎の映像、火元セルの個数の増加に応じて大きくした仮想火炎の映像を生成する。
映像生成部17では、火元セル集計部15において火元セルがゼロとなった時、すなわち全ての火元セルが消滅した時には仮想火炎を消滅させる映像を生成する。
従って、映像生成部17で生成され、映像表示手段1で表示される仮想火炎は、火元セルの燃焼強度に応じて大きくなり、火元セルの個数が増加することによって大きくなる。
更に、制御手段10は、模擬消火器の消火剤放射開始からの放射時間を計測する放射時間計時部18を有している。
映像生成部17では、放射時間計時部18が消火剤放射リミット時間を計測すると、消火剤が消失したことを表示する映像を生成する。
更に、本実施例による消火訓練装置は、距離測定手段3、環境設定手段4、発熱手段5、発煙手段6、音響手段7、及び送風手段8を備え、制御手段10が体感演算部19を有していることが好ましい。
距離測定手段3では、訓練者又は模擬消火器の位置から仮想火炎が表示される映像位置までの距離を測定する。
環境設定手段4では、風向、風速、天候、及び火災現場の環境のいずれかを少なくとも含む、環境に関する状況を設定する。
発熱手段5は、訓練者に対して火炎による温度を体感させるものであり、ヒータを用いて加熱温度を変更できることが好ましい。発熱手段5には外部ヒータやヒータ内蔵衣類を用いることができる。
発煙手段6は煙を発生させ、音響手段7は効果音を発生させ、送風手段8は風を発生させる。
体感演算部19では、火元セル集計部15で集計された火元セルの個数や燃焼強度と、距離測定手段3で測定された火炎までの距離、又は環境設定手段4で設定された状況によって、発熱手段5での発熱温度、発煙手段6での発煙量、音響手段7での効果音、及び送風手段8での風量を演算する。
このように、距離測定手段3、環境設定手段4、発熱手段5、発煙手段6、音響手段7、及び送風手段8を備え、制御手段10が体感演算部19を有することで、火炎に対して適切な距離を置いて作業を行うことや、火炎が拡大した場合に初期消火作業を中断して避難することを訓練することができる。
なお、本実施例による消火訓練装置は、火炎設定手段9を備えており、火炎設定手段9では、火元セルの燃焼強度の上昇時間、燃焼強度の上限値、燃焼速度の下限値をそれぞれ変更することができる。
また、火炎設定手段9では、火元セルを、仮想火炎とともに、又は仮想火炎に代えて映像として表示することを設定することができる。
図2は本発明の一実施例における消火訓練装置のフローチャートである。
映像表示手段1によって、モニター、壁面、又はスクリーンに仮想火炎を表示する(S1)。
S1において表示された仮想火炎の映像を、撮影手段2によって撮影する(S2)。
S2における撮影は継続して行い、撮影手段2で撮影される映像は制御手段10にリアルタイムに送信される。
S3において、模擬消火器による消火剤放射操作が行われていない場合には、時間の経過に伴って火元セルの燃焼強度を上昇させる(S4)。
火元セルの燃焼強度が上限値に至っていない場合には(S5においてNo)、S4における燃焼強度の上昇を継続する。
燃焼強度が上限値に至ると(S5においてYes)、その火元セルの燃焼強度は上限値を維持したままで、新たな火元セルを増殖させる(S6)。新たな火元セルについても、増殖後は時間の経過とともに燃焼強度を上昇させ(S4)、燃焼強度が上限値に至ると(S5においてYes)、更に新たな火元セルを増殖させる(S6)。
火元セルの燃焼強度や増殖状態は、火元セル集計部15においてリアルタイムで集計され、火炎高さ演算部16では火元セル集計部15で集計された値から火炎高さを演算し(S7)、映像生成部17では、火元セル集計部15での集計結果及び火炎高さ演算部16での演算結果によって仮想火炎の映像を生成する(S8)。
S8で生成された仮想火炎の映像は、S1において表示される。
消火訓練においては、S3における模擬消火器による消火剤放射操作のタイミングを遅らせることで仮想火炎を所定の大きさまで成長させる。
S3において、模擬消火器による消火剤放射操作が行われると、放射位置判別部11では、制御手段10にリアルタイムに送信される映像から、消火剤放射位置を判別する(S9)。
一致判断部12では、放射位置判別部11で判別された消火剤放射位置が火元位置(火元セル)に一致しているか否かを判断する(S10)。
S10において、消火剤放射位置が火元位置(火元セル)に一致していない場合には、一致していない火元セルについては、時間の経過に伴って火元セルの燃焼強度を上昇させ(S11)、燃焼強度が上限値に至ると(S12においてYes)、その火元セルの燃焼強度は上限値を維持したままで、新たな火元セルを増殖させる(S13)。
火元セルの燃焼強度が上限値に至っていない場合には(S12においてNo)、消火剤放射位置が火元セルに一致していない限り、時間の経過に伴って火元セルの燃焼強度を上昇させる(S11)。
S10において、消火剤放射位置が火元位置(火元セル)に一致している場合には、一致している火元セルについては、時間の経過に伴って火元セルの燃焼強度を減少させる(S14)。
火元セルの燃焼強度が下限値に至っていない場合には(S15においてNo)、消火剤放射位置が火元セルに一致している限り、時間の経過に伴って火元セルの燃焼強度を減少させる(S14)。
燃焼強度が下限値に至ると(S15においてYes)、下限値に至った火元セルを消滅させる(S16)。
S17では、火元セルが存在するか否かを判断する。S17における火元セルの存在は、火元セル集計部15において行うことができる。
S17において、火元セルが存在しない場合には、映像生成部17では、仮想火炎を消滅表示する映像を生成し、映像表示手段1によって仮想火炎の消滅を表示する(S18)。
S17において、火元セルが存在する場合には、火元セルの燃焼強度や増殖状態が、火元セル集計部15においてリアルタイムで集計され、火炎高さ演算部16では火元セル集計部15で集計された値から火炎高さを演算し(S19)、映像生成部17では、火元セル集計部15での集計結果及び火炎高さ演算部16での演算結果によって仮想火炎の映像を生成する(S20)。
S20で生成された仮想火炎の映像は、S1において表示される。
S21では、消火剤放射リミット時間に至ったか否かが判断され、放射時間計時部18が消火剤放射リミット時間を計測すると、映像生成部17では、消火剤が消失したことを表示する映像を生成する(S22)。
消火剤放射リミット時間に至っていない場合には(S21においてNo)、S9における消火剤放射位置が判別される。
図3は本発明の一実施例による消火訓練装置に用いる模擬消火器の構成図である。
本実施例による模擬消火器20は、消火剤収容空間をイメージさせる本体21と、本体21の頂部に設けられたハンドルレバー22と、ハンドルレバー22に係止される安全ピン23と、本体21の頂部に一端が接続されたホース24と、ホース24の他端に設けられた模擬ノズル25と、ハンドルレバー22の操作によって作動するスイッチ26とを有している。
また、本実施例による模擬消火器20は、模擬ノズル25に撮影手段2を設けている。
このように、撮影手段2を模擬ノズル25に設けることで、撮影手段2による撮影領域の中心位置を模擬ノズル25での放射位置とすることができるため、放射位置の特定を容易に行える。
また、スイッチ26が作動して撮影手段2による撮影を開始することで、実際の消火器の操作に合わせた訓練を行える。
なお、本実施例のように、模擬ノズル25に撮影手段2を設ける場合には、撮影手段2で撮影される映像を制御手段10に送信する送信手段を模擬消火器20に備えていることが好ましい。
制御手段10を模擬消火器20に備えている場合には、映像生成部17で生成される映像を映像表示手段1に送信する送信手段を模擬消火器20に備えていることが好ましい。
模擬消火器20は、撮影手段2に代えて模擬ノズル25に光源27を設けてもよい。光源27を模擬ノズル25に設けることで、表示された映像に光を照射でき、撮影手段2では、映像に照射された光の位置を撮影することで、模擬ノズル25での放射位置を特定できる。
また、スイッチ26が作動して光源27による放射を開始することで、実際の消火器の操作に合わせた訓練を行える。
図4は本発明の一実施例による消火訓練装置の使用状態を示し、模擬ノズルに撮影手段を設けた模擬消火器を用いた場合の概念図である。
図4では、映像表示手段1としてプロジェクターを用い、撮影手段2は模擬消火器20の模擬ノズル25に設けている。
本実施例による消火訓練装置では、制御手段10に、映像表示手段1と、発熱手段5と、発煙手段6と、音響手段7と、送風手段8とを接続している。
映像表示手段1は、任意の壁面に仮想空間Aを映写し、仮想火炎Bを仮想空間Aの底辺側基準線Adで仮想空間Aの左右中央線Acの交点に表示させる。仮想空間Aは、映像表示領域である。
映像表示手段1の設置位置と投影角度を調整することで、映像表示領域Aの底辺側基準線Adで映像表示領域Aの左右中央線Acとの交点を任意の壁面の仮想火炎Bとし、映像表示領域Aの上辺側基準線Auを任意の壁面の天井との接線に設定するができる。このように設定することで、仮想火炎Bが天井までの高さHまで増大させることができ、初期消火が実施可能な火炎が、天井に到達するまでの様子を映像表示領域Aに表示できる。
撮影手段2は映像表示領域Aを撮影する。撮影手段2による撮影領域Cは、映像表示領域Aとは必ずしも一致せず、映像表示領域Aより大きくても小さくてもよい。
撮影領域Cは、訓練者Pによる模擬ノズル25の操作によって位置が変わる。
図5は本発明の一実施例による消火訓練装置の使用状態を示し、模擬ノズルに光源を設けた模擬消火器を用いた場合の概念図である。
図5では、撮影手段2を模擬消火器20とは別体として設置し、模擬消火器20の模擬ノズル25には光源27を設けている。その他の点では図4と同一構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、撮影手段2を模擬消火器20とは別体として設置する場合には、撮影領域Cはあらかじめ設定でき、映像表示領域Aに一致させることもできるが、撮影領域Cを映像表示領域Aに一致させる必要はない。
模擬ノズル25に光源27を設ける場合には、光源27によって照射された光の位置が消火剤放射位置Dとなる。
図6は図4に示す消火訓練装置における消火剤放射位置の判別方法を示す説明図である。
図6(a)では、映像表示手段1による映像表示領域Aと、撮影手段2による撮影領域Cを示している。
仮想火炎B、及びマーカM1、M2は、映像表示手段1によって映写される映像である。
マーカM1、M2は、所定の距離を持たせた少なくとも2点あればよいが、3点以上のマーカを映写してもよく、仮想火炎Bに対して対称な位置に配置することが好ましい。
図6(b)では、撮影手段2によって撮影された映像であり、撮影領域Cの中に、2つのマーカM1、M2と、仮想火炎Bが撮影されていることを示している。
図6(c)では、撮影領域Cの中央ポイントを示しており、この中央ポイントを消火剤放射位置Dxとして設定すると、マーカM1、M2に対する消火剤放射位置Dxを算出することができる。放射位置判別部11では、マーカM1、M2に対する消火剤放射位置Dxを算出することで放射位置を判別する。
また、算出したマーカM1、M2に対する消火剤放射位置Dxに、映像生成部17によって生成した放射位置映像を、映像表示手段1によって表示する。
図7は図5に示す消火訓練装置における消火剤放射位置の判別方法を示す説明図である。
図7(a)では、映像表示手段1による映像表示領域Aと、撮影手段2による撮影領域Cを示している。
仮想火炎B、及びマーカM1、M2は、映像表示手段1によって映写される映像である。
マーカM1、M2は、所定の距離を持たせた少なくとも2点あればよいが、3点以上のマーカを映写してもよく、仮想火炎Bに対して対称な位置に配置することが好ましい。
図7(b)では、模擬ノズル25に設けた光源27によって照射された光の位置を示しており、この光の位置が消火剤放射位置Dxとなる。
図7(c)では、撮影手段2によって撮影された映像であり、撮影領域Cの中に、2つのマーカM1、M2、仮想火炎B、及び消火剤放射位置Dxが撮影されていることを示している。
図7(d)に示すように、映像の中での撮影された消火剤放射位置Dxを、マーカM1、M2を用いて特定することで、放射位置判別部11では放射位置を判別する。
なお、放射位置判別部11によって判別した放射位置に、映像生成部17によって生成した放射位置映像を、映像表示手段1によって映像として表示してもよい。
図8は仮想火炎の増殖イメージを示す説明図である。
図8(a)に示すように、仮想火炎Bの映像は、初期においては一つの火元セルb1に対応して生成される。
一つの火元セルb1は、時間の経過に伴って燃焼強度が上昇し、燃焼強度が上限値に達すると、新たな火元セルb2を増殖させる。燃焼強度が上限値に達した火元セルb1は、所定時間が経過することで新たな火元セルb3を増殖させる。
新たな火元セルb2、b3についても、発生からの時間経過に伴って燃焼強度が上昇し、燃焼強度が上限値に達すると、新たな火元セルb4、b5を増殖させる。
図8(b)は、5つの火元セルb1〜b5に増殖した状態を示している。
仮想火炎Bの映像は、それぞれの火元セルbの燃焼強度に応じて生成してもよいし、全ての火元セルbの燃焼強度の総和に応じて生成してもよい。または、燃焼強度を考慮することなく、火元セルbの総和に応じて生成してもよい。
火元セルbは、直交するX軸及びY軸で特定される平面上で増殖させる。図8(b)では、火元セルb1〜b3がX軸方向に増殖し、火元セルb4、b5は、火元セルb1〜b3に対してY軸方向に増殖していることを示している。
消火訓練においては、火元位置は模擬ノズル25よりも低い位置とすることが多いため、図8(b)に示すように、Y軸方向に増殖させる火元セルb4、b5の少なくとも一部が火元セルb1〜b3の後方に映像で表現することが好ましい。
図9は仮想火炎の増殖パターン例を示す説明図である。
図9では、燃焼強度が上限値に至った後にt時間経過すると新たな火元セルを増殖させている。図9に示すように、火元セルの増殖は、火元セルの燃焼強度が上限値に至った時点でもよいし、上限値に至った後に所定時間のタイムラグを設けてもよい。
図9(a)は一つの火元セルが燃焼強度を上限値まで上昇させ、任意の時間が経過するたびに新たな火元セルを増殖させていく様子をグラフで表したものである。図9(a)では、燃焼強度が上限値まで上昇させる時間tと、火元セルを増殖させる時間tを同一に設定しているが、燃焼強度が上限値まで上昇させる時間tと、火元セルを増殖させる時間tとを異なる時間に設定してもよい。また、火元セルを増殖させる時間tについても、一定時間である必要はなく、例えば徐々に時間を短くしてもよい。
図9(b)では、消火剤放射操作が行われず、燃焼強度が減少することなく、仮想火炎が大きくなる状態を、火元セル数で表している。
新たに発現した火元セルも、燃焼強度が上昇して新たな火元セルを増殖するため、図9(a)のような燃焼強度の上昇に要する時間と、火元セルの増殖に要する時間とを同一に設定した場合には、同時期に火元セルが増殖していく。その場合、火元セルの数は、図9(b)に示されるように、フィボナッチ数列に基づき増大していく。このことから、仮想火炎は、火元セルの増殖につれて加速度的に大きくなることで、自然界における火炎の成長の様子を再現している。
図10は一つの火元セルが燃焼強度を上限値まで上昇させ、その後に仮想消火剤の放射により燃焼強度が減少する様子を示すグラフである。
なお図10では、燃焼強度が0に至るまで仮想消火剤が放射されなかったため、燃焼強度は再び増加傾向となり、燃焼強度が上限値まで上昇し、任意の時間が経過した後に火元セルを増殖させている。このように、仮想火炎は完全に燃焼強度が0に至らない限り再燃することで、自然界における火炎の再燃の様子を再現している。
図11は仮想空間(映像表示領域)において火元セルの出現位置を定義するグリッドシステムを示す図である。
グリッドシステム42は一つの火元セルを定義するグリッド422を最小単位とし、仮想空間(映像表示領域)Aにおいて水平方向(X軸方向)に連続してグリッド段421を構成し、グリッド段421が垂直方向(Y軸方向)に連続することで、グリッドシステム42を構成する。この場合に、図11(b)に示すように、グリッド段421をグリッド422の幅の半分だけ水平方向にずらすことで、1つのグリッド422の周囲に6つのグリッド422が接する構造でグリッドシステム42を構成することができる。
図12は消火剤放射位置が火元セルに影響を与える範囲を示す説明図である。
図12(a)に示すように、消火剤放射位置Dが火元セルに影響を与える消火範囲DWを、消火剤放射位置Dを越えて設定することができる。
消火範囲DWの幅をグリッド422に近似させ、消火範囲DWの高さをグリッド422よりも広く設定することで、グリッドシステム42の垂直方向(Y軸方向)に位置する火元セルは同時に燃焼強度を低下されることができ、水平方向(X軸方向)に位置する火元セルは模擬ノズル25を水平方向に揺動させないと燃焼強度を低下されることができず、初期消火における消火器の使用法を恣意的に再現させることができる。
図13はグリッドシステム上で火元セルが増殖していく様子を示す説明図である。
図13(a)の段階で発現した火元セルbaは図13(b)の段階で燃焼強度を上限値まで上昇させている。図13(c)の段階では、燃焼強度が上限値まで上昇したのちに任意の時間が経過した火元セルbaが新たな火元セルbbを増殖させている。図13(d)の段階では、火元セルbbは燃焼強度を上限値まで上昇させ、火元セルbaはさらに任意の時間が経過したために火元セルbcを増殖させている。図13(e)の段階では、火元セルbaだけでなく、燃焼強度が上限値まで上昇し、任意の時間が経過した火元セルbbも増殖を行うために、同時に火元セルbdと火元セルbeが増殖されている。なお、グリッドシステム42上での火元セルが増殖する場合の新たな火元セルの発現位置は、(1)水平方向に隣接した空きグリッド、(2)垂直方向に隣接した空きグリッド、(3)隣接に空きグリッドが無い場合は最寄の空きグリッドであって、より垂直方向に下方向のグリッド段421上の空きグリッドを優先させる。この一連の火元セルbの増殖アルゴリズムにより、仮想火炎Bは燃焼強度の増加に伴い、垂直方向の高さを増すだけでなく、水平方向の幅を増していく。結果として、訓練者Pは模擬消火器20の模擬ノズル25を水平方向に揺動して複数の火元セルの燃焼強度をまんべんなく低下させていくことが要求され、実際の火災現場における初期消火において消火器のノズルをほうきを掃くように水平方向に揺動して消火活動を行う動作を学習することが可能となる。
図14及び図15は火元セルの時間の経過による増減の様子を表した表である。
図14(a)はグリッドシステム42において、グリッド段421を1段に設定した場合に、火元セルの時間の経過による増加の様子を表した表である。火元セルはF列に発現し、40秒で燃焼強度を上限値として設定された100まで上昇させ、さらに40秒が経過するごとに新たな火元セルを増殖させる設定としている。この表では、40秒が経過した時点でF列の火元セルが100まで上昇し、開始から80秒が経過した時点でG列に新たな火元セルを増殖させ、さらに40秒が経過した開始から120秒が経過した時点でE列に新たな火元セルを増殖させている。この表では、240秒が経過した後には、A列からL列まですべてのグリッドに火元セルが増殖している。
図14(b)は図14(a)の条件下で、238秒が経過した時点で訓練者Pが仮想火炎に接近し消火剤放射操作を開始した状況を示している。消火剤放射操作によって燃焼強度に与える燃焼強度の減少度合いを秒間120と設定している。火元セルは40秒で燃焼強度を100まで上昇させることから、秒間2.5で燃焼強度は増加傾向にあることになる。図14(b)の場合には、訓練者Pはグリッド段421のC列からJ列までを1秒かけて模擬ノズル25を水平方向に揺動させて、C列からJ列までのすべての火元セルに仮想消火剤を放射している。よって1つのグリッドには1/8秒ずつ仮想消火剤が放射されるため、1つの火元セルに放射される仮想消火剤が与える燃焼強度の減少影響は15となる。これに燃焼強度の秒間増加傾向2.5が相殺されるために、1つの火元セルは1秒あたり12.5ずつ燃焼強度が減少していくこととなる。図14(b)に示す初期消火訓練においては訓練者Pは模擬ノズル25を正しく水平方向に揺動させて初期消火活動を行ったために、初期消火活動開始8秒後には仮想火炎Bはすべての火元セルの燃焼強度が0となり鎮火されたことになる。
図15は図14(b)と同一の条件下で消火剤放射操作を開始した状況を示している。しかし、図15における訓練者Pは模擬ノズル25の水平方向の揺動の範囲が狭く、グリッド段421のうち、H列からJ列までの3つの火元セルにしか仮想消火剤を放射していない。揺動幅が狭小であるために、一つの火元セルに放射される仮想消火剤の減少影響は大きく、燃焼強度の増加傾向を加えても、秒間37.5の速度で燃焼強度は減少し、消火活動開始後3秒でH列からJ列の火元セルは鎮火された。しかし、D列からG列までの4つの火元セルが経過時間240秒の段階でA列、B列、K列、L列に火元セルを増殖している。これに対し、訓練者Pは消火活動開始後4秒の段階で、A列からL列までに仮想消火剤33を放射するように、範囲の広い水平方向の揺動を行った。範囲が広いために1つの火元セルに影響する燃焼強度の減少傾向は図14(b)の場合と比べて緩慢である。消火剤放射操作後15秒の段階で、放射時間計時部18が消火剤放射リミット時間を経過したため、訓練者Pはこれ以上の消火活動が不能となり、仮想火炎は鎮火されず、初期消火訓練は失敗に終わる。
本実施例によれば、第一の火元セルを出現させた仮想火炎が、第一の火元セルの持つ燃焼強度を増大させ、燃焼強度が上昇し一定時間が経過ごとに新たな火元セルを1つずつ増殖させていく。新たに増殖した火元セルもまた同様に燃焼強度の増大と火元セルの増殖を繰り返すため、火元セルの個数はフィボナッチ数列に基づき加速度的に増殖し、出現している燃焼強度の総和に応じて仮想火炎の高さも比例的に増大するため、徐々に火勢を強める実際の火炎を投影される仮想空間A上に再現することができる。
これらの映像を映像生成部17が生成してプロジェクター(映像表示手段)1から投射し、音響手段7によりスピーカーから効果音を、発熱手段5から熱を、発煙手段6から煙を、送風手段8が風を発生させるので、訓練者Pは実際の火災現場における火炎の拡大を見るような臨場感を得ることができる。
なお、本実施例では、撮影手段2で撮影した映像から模擬消火器20の消火剤放射位置Dを判別しているが、消火剤放射位置Dの判別は他の手段によって行うこともできる。例えば、模擬ノズル25に、赤外線センサーや3軸加速度センサーを設けることで、模擬ノズル25の方向情報、又は方向情報と映像表示手段1で表示される映像までの距離情報を用いて消火剤放射位置Dを判別してもよい。
本発明によれば、実際に火炎を発生させる必要がなく、訓練後の清掃が不要であるために、安全であり、かつ、消火訓練に要するコストを低減でき、容易に消火訓練を繰り返すことができるので、多数の人が実際に訓練を体験できる。
また、実際の初期消火にあっては、複数の消火器が入手可能であれば、複数の消火器を用いて消火にあたるべきであり、本発明では、複数の消火器を備えて、複数人が同時に初期消火活動にあたる状況を再現することができるので、より実践的な訓練を体験できる。
1 映像表示手段
2 撮影手段
3 距離測定手段
4 環境設定手段
5 発熱手段
6 発煙手段
7 音響手段
8 送風手段
9 火炎設定手段
10 制御手段
11 放射位置判別部
12 一致判断部
13 火炎演算部
14 消火演算部
15 火元セル集計部
16 火炎高さ演算部
17 映像生成部
18 放射時間計時部
19 体感演算部
20 模擬消火器
21 本体
22 ハンドルレバー
23 安全ピン
24 ホース
25 模擬ノズル
26 スイッチ
27 光源
42 グリッドシステム
421 グリッド段
422 グリッド
A 仮想空間(映像表示領域)
Ac 左右中央線
Ad 底辺側基準線
Au 上辺側基準線
b、b1、b2、b3、b4、b5、ba、bb、bc、bd、be 火元セル
B 仮想火炎
C 撮影領域
D 消火剤放射位置
Dx 消火剤放射位置
DW 消火範囲
H 高さ
M1、M2 マーカ
P 訓練者
t 時間

Claims (12)

  1. 模擬消火器を使用した消火訓練に用いる消火訓練装置であって、
    仮想火炎を映像として表示する映像表示手段と、
    前記映像表示手段で表示する前記映像を生成する制御手段と
    を備え、
    前記制御手段は、
    前記模擬消火器の消火剤放射位置を判別する放射位置判別部と、
    時間の経過に伴って前記仮想火炎を大きくする火炎演算部と、
    前記放射位置判別部で判別された前記消火剤放射位置が火元位置に一致している時間に応じて前記仮想火炎を小さくする消火演算部と
    を有する
    ことを特徴とする消火訓練装置。
  2. 前記制御手段は、
    前記模擬消火器の消火剤放射開始からの放射時間を計測する放射時間計時部を有し、
    前記放射時間計時部が消火剤放射リミット時間を計測すると、消火剤が消失したことを前記映像として表示する
    ことを特徴とする請求項1に記載の消火訓練装置。
  3. 前記映像表示手段を、壁面又はスクリーンに前記映像を投影する映写機とした
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消火訓練装置。
  4. 前記火炎演算部では、
    前記時間の経過とともに燃焼強度を上限値まで上昇させる火元セルを設定し、
    前記火元セルの前記燃焼強度が前記上限値に至ると新たな前記火元セルを増殖させ、
    前記火元セルの個数が増加することによって、前記映像として表示する前記仮想火炎を大きくする
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の消火訓練装置。
  5. 前記火元セルを、直交するX軸及びY軸で特定される平面上で増殖させ、
    前記火元セルの前記個数が増加することによって、前記仮想火炎を高くする
    ことを特徴とする請求項4に記載の消火訓練装置。
  6. 前記火元セルの前記燃焼強度に応じて前記仮想火炎を大きくする
    ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の消火訓練装置。
  7. 前記火元セルを前記火元位置とし、
    前記消火剤放射位置が前記火元位置に一致している時には前記火元セルの前記燃焼強度を減少させ、
    前記燃焼強度が下限値に至ると前記火元セルを消滅させる
    ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の消火訓練装置。
  8. 全ての前記火元セルが消滅することで、前記仮想火炎を消滅させる
    ことを特徴とする請求項7に記載の消火訓練装置。
  9. 前記火元セルを、前記仮想火炎とともに、又は前記仮想火炎に代えて前記映像として表示する
    ことを特徴とする請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の消火訓練装置。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の消火訓練装置に用いる模擬消火器であって、
    消火剤収容空間をイメージさせる本体と、
    前記本体の頂部に設けられたハンドルレバーと、
    前記ハンドルレバーに係止される安全ピンと、
    前記本体の前記頂部に一端が接続されたホースと、
    前記ホースの他端に設けられた模擬ノズルと
    を有する
    ことを特徴とする模擬消火器。
  11. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の消火訓練装置に用いる模擬消火器であって、
    消火剤収容空間をイメージさせる本体と、
    前記本体の頂部に設けられたハンドルレバーと、
    前記ハンドルレバーに係止される安全ピンと、
    前記本体の前記頂部に一端が接続されたホースと、
    前記ホースの他端に設けられた模擬ノズルと
    を有し、
    前記模擬ノズルに光源を設けた
    ことを特徴とする模擬消火器。
  12. 前記ハンドルレバーの操作によって作動するスイッチを設け、
    前記スイッチが作動することで、前記撮影手段による撮影を開始し、又は前記光源による放射を開始する
    ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の模擬消火器。

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