幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、実施形態の概要を説明する。実施形態の眼科装置は、被検眼の他覚屈折度数と眼底のOCTデータとを取得し、このOCTデータを解析して眼底の所定層の位置データ(層位置データ)を取得し、他覚屈折度数と層位置データとに少なくとも基づいて被検眼の屈折度数データを生成するように構成されている。
他覚屈折度数の取得は、例えば、他覚屈折測定装置による測定、及び、電子カルテシステム等からの他覚屈折度数データの受け付けのいずれかであってよい。同様に、OCTデータの取得は、例えば、OCT装置による計測(OCTスキャン及び画像データ構築)、及び、医用画像アーカイビングシステム等からのOCTデータの受け付けのいずれかであってよい。
実施形態の眼科装置は、他覚屈折測定装置及びOCT装置のいずれか一方又は双方を含んでいてよい。また、実施形態の眼科装置は、外部装置や記録媒体からデータを受け付けるデバイス(通信インターフェイス、入出力インターフェイス等)を含んでいてよい。
このように、実施形態の眼科装置は、例えば、次のいずれかであってよい:(A)他覚屈折測定装置(屈折測定部)とOCT装置(OCT部)とを含む検査装置:(B)他覚屈折測定装置(屈折測定部)を含み、OCT装置(OCT部)を含まない検査装置;(C)他覚屈折測定装置(屈折測定部)を含まず、OCT装置(OCT部)を含む検査装置;(D)他覚屈折測定装置(屈折測定部)及びOCT装置(OCT部)のいずれも含まない情報処理装置。
実施形態の眼科装置は、OCTデータを解析して層位置データを生成するようにプログラムされたプロセッサと、他覚屈折度数と層位置データとに少なくとも基づき屈折度数データを生成するようにプログラムされたプロセッサとを含む。これらプロセッサは、ハードウェアとして同一であってもよいし、別々のハードウェアであってもよい。
なお、本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することによって特定の機能を実現する。
実施形態の眼科装置により生成される屈折度数データは、被検眼の屈折度数として利用可能又は参照可能な任意のデータであってよい。例えば、実施形態の屈折度数データは、他覚屈折度数の測定データに基づく補正値(他覚屈折度数の補正値)であってよい。更に、この他覚屈折度数の補正値は、自覚屈折度数(推定値)であってよい。或いは、実施形態の屈折度数データは、或る時刻に実施された測定によって取得された他覚屈折度数に基づく、他の時刻における他覚屈折度数(推定値)であってよい。
本明細書において、特に言及しない限り、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを区別しない。また、特に言及しない限り、被検眼の部位又は組織と、それを表す画像とを区別しない。
<第1実施形態>
<構成>
実施形態に係る眼科装置の構成例を図1に示す。眼科装置1は、前述したタイプ(A)の装置、つまり、他覚屈折測定装置(屈折測定部)とOCT装置(OCT部)とを含む検査装置である。眼科装置1は、屈折測定部10と、OCT部20と、コンピュータ30とを含む。コンピュータ30は、層位置データ取得部40と、データ処理部50と、制御部60とを含む。
屈折測定部10は、被検眼Eの屈折度数を他覚的に測定する。屈折測定部10は、例えば、公知のレフラクトメータと同様の構成を有する。図示は省略するが、典型的なレフラクトメータは、特許文献1、2に開示されているように、投影系と、受光系と、プロセッサとを含む。
屈折測定部10の投影系は、光源から出射した光を被検眼Eの眼底Efに投影する。投影系は、例えば、光源からの光を、コリメートレンズ、合焦レンズ、リレーレンズ、瞳レンズ、穴開きプリズム、偏心プリズム、対物レンズ等を通じて眼底Efに投影する。
屈折測定部10の受光系は、眼底Efからの反射光を、対物レンズ、偏心プリズム、穴開きプリズム、他の瞳レンズ、他のリレーレンズ、他の合焦レンズ、円錐プリズム、結像レンズ等を通じて、撮像素子に投影する。これにより、撮像素子によりリングパターンが検出される。
屈折測定部10のプロセッサは、受光系の撮像素子からの出力を処理して他覚屈折度数を算出するようにプログラムされており、例えば、撮像素子によって取得されたリングパターン像の基準パターンからの偏位(位置ずれ、変形等)を求める処理と、この偏位から他覚屈折度数(測定データ)を求める処理とを実行する。
OCT部20は、眼底EfにOCTスキャンを適用してOCTデータを取得する。OCTデータは、干渉信号データでもよいし、干渉信号データにフーリエ変換を適用して得られた反射強度プロファイルデータでもよいし、反射強度プロファイルデータに画像表現を適用して得られた画像データでもよい。
OCT部20が実施可能なOCT手法は、典型的にはフーリエドメインOCTであり、スペクトラルドメインOCT及びスウェプトソースOCTのいずれでもよい。スウェプトソースOCTは、波長可変光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物に投射された測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光を光検出器で検出し、波長の掃引及び測定光のスキャンに応じて収集された検出データ(干渉信号データ)にフーリエ変換等を施して反射強度プロファイルデータを形成する手法である。一方、スペクトラルドメインOCTは、低コヒーレンス光源(広帯域光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物に投射された測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル分布を分光器で検出し、分光器による検出データ(干渉信号データ)にフーリエ変換等を施して反射強度プロファイルデータを形成する手法である。すなわち、スウェプトソースOCTはスペクトル分布を時分割で取得するOCT手法であり、スペクトラルドメインOCTはスペクトル分布を空間分割で取得するOCT手法である。
OCT部20は、例えば、公知のOCT装置と同様の構成を有する。図示は省略するが、典型的なOCT装置は、特許文献1、2に開示されているように、光源と、干渉光学系と、スキャン系と、検出系と、プロセッサとを含む。
光源から出力された光は、干渉光学系によって測定光と参照光とに分割される。参照光は、参照アームにより導かれる。測定光は、測定アームを通じて眼底Efに投射される。測定アームにはスキャン系が設けられている。スキャン系は、例えばガルバノスキャナを含み、測定光を2次元的に偏向可能である。
眼底Efに投射された測定光は、眼底Efの様々な深さ位置(層境界等)において反射・散乱される。被検眼Eからの測定光の戻り光は、干渉光学系によって参照光に合成される。測定光の戻り光と参照光とは重ね合わせの原理にしたがって干渉光を生成する。この干渉光は検出系によって検出される。検出系は、典型的には、スペクトラルドメインOCTでは分光器を含み、スウェプトソースOCTではバランスドフォトダイオード及びデータ収集システム(DAQ)を含む。
OCT部20のプロセッサは、検出系による検出データに基づいてOCTデータ(典型的には画像データ)を構築する。プロセッサは、従来のOCTデータ処理と同様に、フィルター処理、高速フーリエ変換(FFT)などを検出データに適用することにより、各Aライン(被検眼E内における測定光の経路)における反射強度プロファイルデータを構築する。更に、プロセッサは、この反射強度プロファイルデータに画像化処理(画像表現)を適用することにより、各Aラインの画像データ(Aスキャンデータ)を構築する。
プロセッサは、スキャン系によるスキャンモードにしたがって複数のAスキャンデータを配列することによりBスキャンデータを構築することができる。プロセッサは、スキャン系によるスキャンモードにしたがって複数のBスキャンデータを配列することによりスタックデータを構築することができる。プロセッサは、スタックデータからボリュームデータ(ボクセルデータ)を構築することができる。プロセッサは、スタックデータ又はボリュームデータをレンダリングすることができる。レンダリング手法としては、ボリュームレンダリング、多断面再構成(MPR)、サーフェスレンダリング、プロジェクションなどがある。
コンピュータ30は、眼科装置1を動作させるための各種演算や各種制御を実行する。コンピュータ30は、1以上のプロセッサと、1以上の記憶装置とを含む。記憶装置としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などがある。記憶装置には各種のコンピュータプログラムが格納されており、それに基づきプロセッサが動作することによって本例に係る演算や制御が実現される。本例では、このような構成により、プロセッサが、層位置データ取得部40、データ処理部50、及び制御部60のそれぞれとして機能する。
層位置データ取得部40は、OCT部20により取得されたOCTデータを解析することによって眼底Efの層位置データを取得する。層位置データは、眼底Efの1以上の層のそれぞれの位置データを含む。1以上の層のそれぞれは、眼底Efの組織又は組織境界に相当する。眼底Efの組織としては、内境界膜、神経繊維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、視細胞層、網膜色素上皮層、脈絡膜、強膜などが知られている。層位置データは、予め決定された層についての位置データを含む。この層は任意に決定可能であり、例えば、IS/OS、RPE、脈絡膜、強膜などであってよい。
OCTデータから層を特定する処理は、典型的には、セグメンテーションを含む。セグメンテーションは、画像データ中の部分領域を特定するための公知の処理である。層位置データ取得部40は、例えば、OCT画像データの輝度値に基づきセグメンテーションを行う。すなわち、眼底Efのそれぞれの層組織は特徴的な反射率を有し、これら層組織に相当する画像領域もそれぞれ特徴的な輝度値を有する。層位置データ取得部40は、これら特徴的な輝度値に基づきセグメンテーションを実行することにより、目的の画像領域(層)を特定することができる。
データ処理部50は、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数(測定データ)と、層位置データ取得部40により取得された層位置データとに少なくとも基づいて、被検眼Eの屈折度数データを生成する。データ処理部50が実行する処理の例については後述する。
前述したように、データ処理部50により求められる屈折度数データは、被検眼Eの屈折度数として利用可能又は参照可能な任意のデータであってよい。具体的には、この屈折度数データは、他覚屈折度数の補正値(例えば、自覚屈折度数の推定値)、屈折測定部10による測定の実施時刻とは異なる時刻における他覚屈折度数の推定値、及び、屈折測定部10による測定の実施時刻とは異なる時刻における自覚屈折度数の推定値のいずれかであってよい。
制御部60は、眼科装置1の各部を制御する。制御部60は、図示しない表示デバイスを制御可能である。表示デバイスは、ユーザインターフェイスの一部として機能し、制御部60による制御を受けて情報を表示する。表示デバイスは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであってよい。
制御部60は、図示しない操作デバイスからの信号にしたがって眼科装置1を制御可能である。操作デバイスは、ユーザインターフェイス部の一部として機能する。操作デバイスは、眼科装置1に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含んでいてよい。また、操作デバイスは、眼科装置1に接続された各種の周辺機器(キーボード、マウス、ジョイスティック、操作パネルなど)を含んでいてよい。また、操作デバイスは、タッチパネルに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでよい。
眼科装置1は、眼底Efの1以上の層の厚みから屈折度数データを求めるように構成されていてよい。例えば、層位置データ取得部40は、眼底Efの第1層の位置データと第2層の位置データとを含む層位置データを取得する。第1層及び第2層のそれぞれは、予め決められた層であってよい。
更に、データ処理部50は、この層位置データに基づいて第1層と第2層との間の距離データを求める。この処理は、典型的には、第1層と第2層との間に存在するピクセルの個数と、所定のピクセル間距離とに基づき行われる。距離測定は、所定の方向に沿って行われる。距離計測方向は、例えば、OCTスキャンによって決定される方向(例えば、測定光の進行方向)でもよいし、OCTデータに基づき決定される方向(例えば、層に直交する方向)でもよい。また、距離データは、第1層と第2層との間の距離分布データでもよいし、この距離分布データから算出された統計値(例えば、平均、最大値、最小値、中央値、最頻値、分散、標準偏差)でもよいし、第1層上の代表点と第2層上の代表点との間の距離データでもよい。
続いて、データ処理部50は、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、層位置データから求められた距離データとに少なくとも基づいて、被検眼Eの屈折度数データを生成する。このように、眼科装置1は、眼底Efの1以上の層の厚みから屈折度数データを求めることが可能である。
屈折度数データを求めるために参照される眼底Efの層の厚みは、日内変動があることが知られている脈絡膜厚であってよい。例えば、層位置データ取得部40は、眼底Efの脈絡膜の前面及び後面を特定し、脈絡膜前面の位置データと脈絡膜後面の位置データとを含む層位置データを生成する。
更に、データ処理部50は、脈絡膜前面の位置データと脈絡膜後面の位置データとに基づいて、脈絡膜前面と脈絡膜後面との間の距離データを求める。この距離データは、脈絡膜の厚みデータである。脈絡膜の厚みデータは、厚み分布データでもよいし、この厚み分布データから算出された統計値でもよいし、代表的厚みデータでもよい。
続いて、データ処理部50は、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、脈絡膜の厚みデータとに少なくとも基づいて、被検眼Eの屈折度数データを生成する。このように、眼科装置1は、眼底Efの脈絡膜厚から屈折度数データを求めることが可能である。
眼科装置1は、被検眼Eの脈絡膜厚に基づいて他覚屈折度数の補正値を求めることができる。以下、その幾つかの例を説明する。各例において、データ処理部50は、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、脈絡膜の厚みデータとに少なくとも基づいて、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求めるように構成される。ここで、データ処理部50は、少なくとも脈絡膜厚を変数とする補正式を用いて、他覚屈折度数を自覚屈折度数に換算するように構成されていてよい。この補正式は、例えば線形補正式であってよいが、非線形補正式であってもよい。なお、以下の各例では、他覚屈折度数の補正値として自覚屈折度数の推定値を求める場合について特に説明するが、他覚屈折度数の補正値は自覚屈折度数の推定値には限定されず、他覚屈折度数(測定データ)に任意の補正処理を適用して求められる値であってよい。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第1の例を説明する。本例のデータ処理部50は、脈絡膜厚を変数とする所定の補正式と、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、脈絡膜の厚みデータとに基づいて、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。
本例では、脈絡膜厚(Choroidal Thickness;CT)を変数として他覚屈折度数をスケーリング(線形補正)することにより自覚屈折度数の推定値を求める。他覚屈折度数(Objective Refractivety;OR)は、例えば、球面度数(Spherical power;S)又は等価球面度数(Spherical Equivalent;SE)である。
本例で適用可能な線形補正式は、他覚屈折度数(OR)を自覚屈折度数(Subjective Refractivety;SR)に変換するための、次のような変換式であってよい:SR=OR+b(CT)。ここで、b(CT)は、脈絡膜厚(CT)を変数とする、補正量を決定する関数である。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)に対応する補正量b(CT)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
本例で適用可能な他の線形補正式を以下に示す:SR=OR×c(CT)。ここで、c(CT)は、脈絡膜厚(CT)を変数とする、補正比率を決定する関数である。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)に対応する補正比率c(CT)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
以上の二例を組み合わせて、次のような線形補正式を適用することも可能である:SR=OR×c(CT)+b(CT)。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)に対応する補正比率c(CT)と、この厚みデータに示された値(CT)に対応する補正量b(CT)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
なお、本例に係る補正式と同様の補正式を、自覚屈折度数の推定以外の演算に適用することも可能である。以下においても同様である。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第2の例を説明する。脈絡膜厚が相違すれば、屈折度数の換算に与える影響の度合も異なる可能性がある。例えば、脈絡膜が特に薄い眼と特に厚い眼の双方に同じ換算式(補正式)を適用することは適当でない可能性がある。この観点から、脈絡膜厚値を複数の範囲に区分してそれぞれの範囲に対応する補正式を設け、これら補正式を選択的に適用することが可能である。
具体例を説明する。本例のデータ処理部50は、脈絡膜厚の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式を予め記憶している。データ処理部50は、これら補正式のうちから、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに対応する補正式を選択する。この補正式の選択は、例えば、脈絡膜厚の値の2以上の範囲のうちから、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された脈絡膜厚の値が属する範囲を選択する処理と、選択された範囲に対応する補正式を特定する処理とを含む。更に、データ処理部50は、選択された補正式に、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データを入力することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。
本例では、脈絡膜厚の値の2以上の範囲(CTm:m=1,2,・・・,M;Mは2以上の整数)にそれぞれ対応する2以上の補正式として、例えば、SRm=OR+bm(CTm)、SRm=OR×cm(CTm)、及び、SRm=OR×cm(CTm)+bm(CTm)のいずれかが準備される。ここでは、SRm=OR+bm(CTm)がデータ処理部50に記憶されているとする。
データ処理部50は、OCT部20により取得されたOCTデータから求められた脈絡膜の厚みデータに示された値が、2以上の範囲CTmのいずれに属するか判定する。例えば、脈絡膜の厚みデータに示された値が範囲CT1に属する場合、データ処理部50は、M個の補正式のうちから、範囲CT1に対応する補正式SR1=OR+b1(CT1)を選択する。更に、データ処理部50は、選択された補正式SR1=OR+b1(CT1)に、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値に対応する補正量b1(CT1)とを代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR1)を求める。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第3の例を説明する。線形補正の変数は脈絡膜厚のみに限定されない。例えば、データ処理部50は、脈絡膜厚及び屈折度数を変数とする所定の補正式と、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、脈絡膜の厚みデータとに基づいて、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されてよい。
本例では、脈絡膜厚(CT)と他覚屈折度数(OR)とを変数として他覚屈折度数をスケーリング(線形補正)することにより自覚屈折度数の推定値を求める。
本例で適用可能な線形補正式は、他覚屈折度数(OR)を自覚屈折度数(SR)に変換するための、次のような変換式であってよい:SR=OR+b(CT,OR)。ここで、b(CT,OR)は、脈絡膜厚(CT)と他覚屈折度数(OR)とを変数とする、補正量を決定する関数である。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)及び測定データ(OR)に対応する補正量b(CT,OR)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
本例で適用可能な他の線形補正式を以下に示す:SR=OR×c(CT,OR)。ここで、c(CT,OR)は、脈絡膜厚(CT)と他覚屈折度数(OR)とを変数とする、補正比率を決定する関数である。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)及び測定データ(OR)に対応する補正比率c(CT,OR)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
以上の二例を組み合わせて、次のような線形補正式を適用することも可能である:SR=OR×c(CT,OR)+b(CT,OR)。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)及び測定データ(OR)に対応する補正比率c(CT,OR)と、この厚みデータに示された値(CT)及び測定データ(OR)に対応する補正量b(CT,OR)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第4の例を説明する。第2の例と同様の観点から、脈絡膜厚値を複数の範囲に区分してそれぞれの範囲に対応する補正式を設け、これら補正式を選択的に適用することが可能である。本例の補正式は、第3の例で説明したような、脈絡膜厚及び屈折度数を変数とする所定の補正式である。
具体例を説明する。本例のデータ処理部50は、脈絡膜厚の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式を予め記憶している。データ処理部50は、これら補正式のうちから、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに対応する補正式を選択する。更に、データ処理部50は、選択された補正式に、例えば、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータとを入力することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第5の例を説明する。屈折度数の換算に影響を与えるファクターは、脈絡膜厚だけとは限らない。例えば、屈折度数が換算に影響する可能性がある。例えば、屈折度数が特に小さい眼と特に大きい眼の双方に同じ換算式(補正式)を適用することは適当でない可能性がある。この観点から、屈折度数値を複数の範囲に区分してそれぞれの範囲に対応する補正式を設け、これら補正式を選択的に適用することが可能である。なお、本例の補正式は、第3の例で説明したような、脈絡膜厚及び屈折度数を変数とする所定の補正式である。
具体例を説明する。本例のデータ処理部50は、屈折度数の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式を予め記憶している。データ処理部50は、これら補正式のうちから、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データに対応する補正式を選択する。更に、データ処理部50は、選択された補正式に、例えば、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータとを入力することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第6の例を説明する。本例では、第4の例と第5の例との組み合わせについて説明する。すなわち、脈絡膜厚値を複数の範囲に区分するとともに屈折度数値を複数の範囲に区分し、双方の区分の組み合わせごとに補正式を設け、これら補正式を選択的に適用することが可能である。本例の補正式は、第3の例で説明したような、脈絡膜厚及び屈折度数を変数とする所定の補正式である。
具体例を説明する。まず、脈絡膜厚の値の2以上の範囲と屈折度数の値の2以上の範囲との組み合わせのそれぞれについて、これに対応する補正式を準備する。本例では、4以上の補正式がデータ処理部50に記憶される。データ処理部50は、これら補正式のうちから、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータと被検眼Eの他覚屈折度数の測定データとの組み合わせに対応する補正式を選択する。更に、データ処理部50は、選択された補正式に、例えば、被検眼Eの他覚屈折度数の測定データと、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータとを入力することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第7の例を説明する。本例の眼科装置1は、被検眼Eの眼軸長データを取得する機能(眼軸長データ取得部)を更に備える。眼軸長データの取得は、例えば、眼軸長測定装置による計測、及び、電子カルテシステム等からの眼軸長データの受け付けのいずれかであってよい。
眼軸長測定の手法は、例えば、特許文献1、2に開示されているようなOCTを利用した手法であってよい。すなわち、OCTデータに基づいて角膜頂点位置と網膜表面位置とを特定し、これら位置の間の距離を演算することによって、眼軸長を求めることが可能である。なお、眼軸長測定の手法はこれに限定されず、例えば超音波を利用した他の公知の手法であってもよい。
さて、線形補正の変数は脈絡膜厚や屈折度数に限定されない。本例のデータ処理部50は、脈絡膜厚及び眼軸長を変数とする所定の補正式と、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、脈絡膜の厚みデータと、眼軸長データとに基づいて、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求めるように構成される。
本例では、脈絡膜厚(CT)と眼軸長(Axial Length;AL)とを変数として他覚屈折度数をスケーリング(線形補正)することにより自覚屈折度数の推定値を求める。
本例で適用可能な線形補正式は、他覚屈折度数(OR)を自覚屈折度数(SR)に変換するための、次のような変換式であってよい:SR=OR+b(CT,AL)。ここで、b(CT,AL)は、脈絡膜厚(CT)と眼軸長(AL)とを変数とする、補正量を決定する関数である。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)及び眼軸長データ(AL)に対応する補正量b(CT,AL)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
本例で適用可能な他の線形補正式を以下に示す:SR=OR×c(CT,AL)。ここで、c(CT,AL)は、脈絡膜厚(CT)と眼軸長(AL)とを変数とする、補正比率を決定する関数である。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)及び眼軸長データ(AL)に対応する補正比率c(CT,AL)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
以上の二例を組み合わせて、次のような線形補正式を適用することも可能である:SR=OR×c(CT,AL)+b(CT,AL)。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)及び眼軸長データ(AL)に対応する補正比率c(CT,AL)と、この厚みデータに示された値(CT)及び眼軸長データ(AL)に対応する補正量b(CT,AL)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第8の例を説明する。第2の例と同様の観点から、脈絡膜厚値を複数の範囲に区分してそれぞれの範囲に対応する補正式を設け、これら補正式を選択的に適用することが可能である。本例の補正式は、第7の例で説明したような、脈絡膜厚及び眼軸長を変数とする所定の補正式である。
具体例を説明する。本例のデータ処理部50は、脈絡膜厚の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式を予め記憶している。データ処理部50は、これら補正式のうちから、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに対応する補正式を選択する。更に、データ処理部50は、選択された補正式に、例えば、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータとを入力することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第9の例を説明する。屈折度数の換算に影響を与えるファクターは、脈絡膜厚や屈折度数だけとは限らない。例えば、眼軸長が換算に影響する可能性がある。なお、眼軸長は屈折度数に影響を与えることが知られている。例えば、眼軸長が特に長い眼は、強度近視である傾向がある。よって、眼軸長が特に長い眼と特に短い眼の双方に同じ換算式(補正式)を適用することは適当でない可能性がある。この観点から、眼軸長値を複数の範囲に区分してそれぞれの範囲に対応する補正式を設け、これら補正式を選択的に適用することが可能である。なお、本例の補正式は、第7の例で説明したような、脈絡膜厚及び眼軸長を変数とする所定の補正式である。
具体例を説明する。本例のデータ処理部50は、眼軸長の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式を予め記憶している。データ処理部50は、これら補正式のうちから、眼軸長データ取得部により取得された眼軸長データに対応する補正式を選択する。更に、データ処理部50は、選択された補正式に、例えば、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータとを入力することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第10の例を説明する。本例では、第8の例と第9の例との組み合わせについて説明する。すなわち、脈絡膜厚値を複数の範囲に区分するとともに眼軸長値を複数の範囲に区分し、双方の区分の組み合わせごとに補正式を設け、これら補正式を選択的に適用することが可能である。本例の補正式は、第7の例で説明したような、脈絡膜厚及び眼軸長を変数とする所定の補正式である。
具体例を説明する。まず、脈絡膜厚の値の2以上の範囲と眼軸長の値の2以上の範囲との組み合わせのそれぞれについて、これに対応する補正式を準備する。本例では、4以上の補正式がデータ処理部50に記憶される。データ処理部50は、これら補正式のうちから、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータと被検眼Eの眼軸長データとの組み合わせに対応する補正式を選択する。更に、データ処理部50は、選択された補正式に、例えば、被検眼Eの他覚屈折度数の測定データと、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータとを入力することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。
脈絡膜厚に基づき自覚屈折度数を推定するための処理の第11の例を説明する。本例は、第3の例と第7の例との組み合わせである。本例のデータ処理部50は、脈絡膜厚、屈折度数及び眼軸長の3つの変数を含む所定の補正式と、屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データと、脈絡膜の厚みデータと、眼軸長データとに基づいて、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求めるように構成される。
本例では、脈絡膜厚(CT)と他覚屈折度数(OR)と眼軸長(AL)とを変数として他覚屈折度数をスケーリング(線形補正)することにより自覚屈折度数の推定値を求める。
本例で適用可能な線形補正式は、他覚屈折度数(OR)を自覚屈折度数(SR)に変換するための、次のような変換式であってよい:SR=OR+b(CT,OR,AL)。ここで、b(CT,OR,AL)は、脈絡膜厚(CT)と他覚屈折度数(OR)と眼軸長(AL)とを変数とする、補正量を決定する関数である。屈折測定部10により取得された他覚屈折度数の測定データ(OR)と、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに示された値(CT)、測定データ(OR)及び眼軸長データ(AL)に対応する補正量b(CT,OR,AL)とを当該補正式に代入することにより、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値(SR)が得られる。
詳細については省略するが、本例で適用可能な他の線形補正式として、SR=OR×c(CT,OR,AL)や、SR=OR×c(CT,OR,AL)+b(CT,OR,AL)がある。ここで、c(CT,OR,AL)は、脈絡膜厚(CT)と他覚屈折度数(OR)と眼軸長(AL)とを変数とする、補正比率を決定する関数である。
同じく詳細については省略するが、脈絡膜厚値、屈折度数値及び眼軸長値のそれぞれを複数の範囲に区分し、これら区分の組み合わせごとに補正式を設け、これら補正式を選択的に適用することが可能である。本例の補正式は、脈絡膜厚、屈折度数及び眼軸長を変数とする所定の補正式である。
<動作>
本実施形態に係る眼科装置1の動作について説明する。眼科装置1の動作の例を図2及び図3に示す。図2のフローチャートは、眼軸長データを用いない場合の動作例を示し、図3のフローチャートは、眼軸長データを用いる場合の動作例を示す。
まず、図2に示す動作例について説明する。
(S1:他覚屈折測定)
本例のステップS1では、眼科装置1の屈折測定部10を用いて被検眼Eの他覚屈折測定が行われる。
(S2:眼底のOCTスキャン)
本例のステップS2では、眼科装置1のOCT部20を用いて眼底EfにOCTスキャンが適用され、OCTデータが取得される。
なお、他覚屈折測定の前にOCTスキャンを行ってもよいし、他覚屈折測定とOCTスキャンとを並行して行ってもよい。
図示は省略するが、眼科装置1は、被検眼Eの視線を誘導するための固視標を被検者に提示する機能を有していてよい。固視標は、被検眼Eに提示される内部固視標でもよいし、僚眼に提示される外部固視標でもよい。他覚屈折測定とOCTスキャンとを同じ固視位置の下に行うことができる。
(S3:OCTデータから層位置データを取得)
層位置データ取得部40は、ステップS2で取得されたOCTデータを解析することにより眼底Efの層位置データを取得する。
(S4:自覚屈折度数の推定)
データ処理部50は、ステップS1で取得された被検眼Eの他覚屈折度数の測定データと、ステップS3で取得された層位置データとに少なくとも基づいて、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。なお、同様の手法により、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を求めることも可能である。
次に、図3に示す動作例について説明する。本例では、被検眼Eの眼軸長データが参照される。
(S11:他覚屈折測定)
本例のステップS11では、眼科装置1の屈折測定部10を用いて被検眼Eの他覚屈折測定が行われる。
(S12:眼底のOCTスキャン)
本例のステップS12では、眼科装置1のOCT部20を用いて眼底EfにOCTスキャンが適用され、OCTデータが取得される。
(S13:眼軸長データを取得)
本例のステップS13では、眼科装置1の眼軸長データ取得部を用いて被検眼Eの眼軸長データが取得される。
なお、他覚屈折測定、OCTスキャン、及び眼軸長データ取得の3つの工程の実行順序や実行タイミングは任意である。また、他覚屈折測定とOCTスキャンと眼軸長測定とを同じ固視位置の下に行うことができる。
(S14:OCTデータから層位置データを取得)
層位置データ取得部40は、ステップS12で取得されたOCTデータを解析することにより眼底Efの層位置データを取得する。
(S15:自覚屈折度数の推定)
データ処理部50は、ステップS11で取得された被検眼Eの他覚屈折度数の測定データと、ステップS13で取得された眼軸長データと、ステップS14で取得された層位置データとに少なくとも基づいて、被検眼Eの自覚屈折度数の推定値を求める。なお、同様の手法により、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を求めることも可能である。
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、被検眼の脈絡膜厚に基づいて自覚屈折度数の推定値を屈折度数データとして求める場合について特に説明した。前述したように、屈折度数データは、他覚屈折測定の実施時刻とは異なる時刻における他覚屈折度数(又は自覚屈折度数)の推定値であってよい。本実施形態では、他覚屈折測定の実施時刻とは異なる時刻における他覚屈折度数の推定値を求める場合について説明する。
なお、他覚屈折測定の実施時刻とは異なる時刻における自覚屈折度数の推定値を求めるためには、例えば、次の2つの工程を適用することができる:(第1工程)本実施形態に係る処理を実行することにより、他覚屈折測定の実施時刻とは異なる時刻における他覚屈折度数の推定値を求める;(第2工程)第1の実施形態に係る処理を実行することにより、第1工程で求められた他覚屈折度数の推定値を、自覚屈折度数の推定値に換算する。なお、他覚屈折測定の実施時刻とは異なる時刻における自覚屈折度数の推定値を求める処理は、本例に限定されない。
正常眼では、網膜厚の有意な日内変動は見られないが、脈絡膜厚は有意に日内変動しており、固有のバイオリズムで日内変動していると考えられる。また、所定時刻における脈絡膜厚の値(ベースライン)と脈絡膜厚の変動幅との間の相関や、屈折度数と脈絡膜厚の変動幅との間の相関について報告されている(例えば非特許文献2を参照)。このような知見に基づく実施形態の例を以下に説明する。
なお、以下の説明において、第1の実施形態で用いられた符号を適宜に準用する。また、本実施形態では、第1の実施形態と同様の事項については、特に言及する場合を除き、その説明は省略し、第1の実施形態と異なる事項について特に説明する。
<構成>
本実施形態に係る眼科装置の構成例を図4に示す。眼科装置1Aは、屈折測定部10と、OCT部20と、コンピュータ30Aとを含む。コンピュータ30Aは、層位置データ取得部40と、データ処理部50Aと、制御部60と、時刻記録部70Aとを含む。
屈折測定部10、OCT部20、層位置データ取得部40、及び制御部60は、それぞれ、第1の実施形態における対応要素と同様であってよい。
コンピュータ30Aは、眼科装置1Aを動作させるための各種演算や各種制御を実行する。コンピュータ30Aは、1以上のプロセッサと、1以上の記憶装置とを含む。記憶装置には各種のコンピュータプログラムが格納されており、それに基づきプロセッサが動作することによって本例に係る演算や制御が実現される。本例では、このような構成により、プロセッサが、層位置データ取得部40、データ処理部50A、制御部60、及び時刻記録部70Aのそれぞれとして機能する。
時刻記録部70Aは、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータを求めるためのOCTスキャンをOCT部20が実行した時刻を記録する。この時刻を測定時刻と呼ぶ。
時刻記録部70Aは、時計部と記録部とを含む。時計部は、時刻を提示する機能を有する。時計部は、例えば、リアルタイムクロック、高精度イベントタイマ、衛星測位信号受信器、基地局信号受信器などを含む。
記録部は、特定のイベントが発生したときに時計部が提示している時刻を記録する。すなわち、記録部は、特定のイベントの発生時刻を記録する。記録部は、時計部にアクセス可能なプロセッサと、プロセッサが時計部から取得した時刻データが記録される記憶装置を含む。
発生時刻が記録されるイベントは、前述したように、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータを求めるためのOCTスキャンをOCT部20が実行した時刻(測定時刻)であってよい。なお、測定時刻は、これに限定されず、例えば、被検眼Eの他覚屈折度数(測定データ)を求めるための他覚屈折測定を屈折測定部10が実行した時刻であってもよい。
典型的な実施形態では、屈折測定部10による測定とOCT部20による測定とを実質的に同じ時刻に実行可能である。「実質的に同じ時刻」とは、同時である場合だけでなく、脈絡膜厚の日内変動(バイオリズム)の観点において許容可能な時間差が介在する場合をも意味する。
データ処理部50Aは、時刻記録部70Aにより記録された測定時刻と、被検眼Eの他覚屈折度数の測定データと、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータとに少なくとも基づいて、所定時刻における被検眼Eの屈折度数の推定値を求める。所定時刻は、任意に設定可能であり、例えばユーザ又は眼科装置1Aにより設定される。
データ処理部50Aは、脈絡膜厚の日内変動の標準データを参照することができる。標準データは、例えば、少なくとも脈絡膜厚を変数とする回帰分析によって求められる。脈絡膜厚以外の変数としては、屈折度数、眼軸長、年齢などがある。
回帰分析は、例えば、線形回帰分析又は非線形回帰分析であってよい。非線形回帰分析の例として、三角関数に基づく周期回帰分析がある。線形回帰分析は、典型的には、24時間のうちの一部期間の標準データを求めるために用いられる。この一部期間は、例えば、日中や夜間のように、線形近似が可能な期間である。周期回帰分析は、典型的には、線形近似では十分な近似が不可能な長さの期間(例えば24時間の全期間)にわたる標準データを求めるために用いられる。
線形回帰分析が適用される場合、脈絡膜厚の変動ΔCTは例えば次式のように表現される:ΔCT=a×t。ここで、tは時刻であり、aは回帰直線の傾きである。この回帰直線は、例えば、横軸が時間軸を示し、且つ、縦軸が脈絡膜厚の変動量を示す座標系において定義される。
脈絡膜厚(CT)を変数として線形回帰分析を行う場合には、例えば、回帰直線ΔCT=a(CT)×tが用いられる。また、脈絡膜厚(CT)及び他覚屈折度数(OR)を変数として線形回帰分析を行う場合には、例えば、回帰直線ΔCT=a(CT,OR)×tが用いられる。ここで、他覚屈折度数(OR)は、球面度数(S)又は等価球面度数(SE)であってよい。他覚屈折度数(OR)を変数として線形回帰分析を行う場合には、例えば、回帰直線ΔCT=a(OR)×tが用いられる。
周期回帰分析が適用される場合、脈絡膜厚の変動ΔCTは例えば次式のように表現される:ΔCT=a×sin(t)。ここで、sin()は正弦関数であり、tは時刻であり、aは振幅である。この回帰曲線は、例えば、横軸が時間軸を示し、且つ、縦軸が脈絡膜厚の変動量を示す座標系において定義される。
脈絡膜厚(CT)を変数として周期回帰分析を行う場合には、例えば、回帰曲線ΔCT=a(CT)×sin(t)が用いられる。また、脈絡膜厚(CT)及び他覚屈折度数(OR)を変数として周期回帰分析を行う場合には、例えば、回帰曲線ΔCT=a(CT,OR)×sin(t)が用いられる。他覚屈折度数(OR)を変数として周期回帰分析を行う場合には、例えば、回帰曲線ΔCT=a(OR)×sin(t)が用いられる。
以上に例示した回帰直線や回帰曲線は、予め作成され、脈絡膜厚の日内変動の標準データとして用いられる。標準データは、例えば、データ処理部50Aに記憶される。
データ処理部50Aは、脈絡膜厚の日内変動の標準データと、測定時刻と、他覚屈折度数の測定データと、脈絡膜の厚みデータとに少なくとも基づいて、所定時刻における屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。
例えば、データ処理部50Aは、標準データと、測定時刻と、脈絡膜の厚みデータとに基づいて、屈折度数の変動量の推定値を求めることができる。典型的には、データ処理部50Aは、測定時刻と厚みデータとを標準データに当てはめることによって、屈折度数の変動量の推定値を求めることができる。
ここで、データ処理部50Aは、例えば、標準データと測定時刻と厚みデータとに基づいて脈絡膜厚の変動量の推定値を求める処理と、求められた脈絡膜厚の変動量の推定値に基づいて屈折度数の変動量の推定値を求める処理とを実行するように構成されていてよい。前者の処理は、測定時刻と厚みデータとを標準データに当てはめることにより実行される。後者の処理は、脈絡膜厚の変動量と屈折度数の変動量との間の関係式(予め求められる)を介して行われる。脈絡膜厚の変動量が網膜の変動量に相当すると仮定して計算すると、例えば、網膜の変動量40マイクロメートルは、典型的な眼においては、屈折度数の変動量0.1ディオプタに相当する。
更に、データ処理部50Aは、求められた屈折度数の変動量の推定値と、他覚屈折度数の測定データとに基づいて、所定時刻における屈折度数の推定値を求めることができる。典型的には、データ処理部50Aは、他覚屈折度数の測定データに示された値に、求められた屈折度数の変動量の推定値を加算することにより、所定時刻における屈折度数の推定値を求めることができる。
前述したように、所定時刻における脈絡膜厚の値(ベースライン)と脈絡膜厚の変動幅との間には相関があることが報告されている。この観点から、所定の基準時刻(例えば午前9時)における脈絡膜厚値に応じて複数の標準データを設けて選択的に使用するように構成することが可能である。ここで、複数の標準データのそれぞれは、屈折度数(OR)を変数とした回帰分析によって作成されてよい。
データ処理部50Aは、所定の基準時刻における脈絡膜厚の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の標準データを予め記憶している。データ処理部50Aは、これら標準データのうちから、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータに対応する標準データを選択する。
更に、データ処理部50Aは、選択された標準データと、時刻記録部70Aにより記録された測定時刻と、被検眼Eの他覚屈折度数の測定データと、被検眼Eの脈絡膜の厚みデータとに基づいて、所定時刻における屈折度数の推定値を求めることができる。この処理は、前述した要領で実行される。
<動作>
本実施形態に係る眼科装置1Aの動作について説明する。眼科装置1の動作の例を図5に示す。
(S21:他覚屈折測定)
本例のステップS21では、眼科装置1Aの屈折測定部10を用いて被検眼Eの他覚屈折測定が行われる。
(S22:眼底のOCTスキャン)
本例のステップS22では、眼科装置1AのOCT部20を用いて眼底EfにOCTスキャンが適用され、OCTデータが取得される。
なお、他覚屈折測定とOCTスキャンとの実行順序や実行タイミングは任意である。また、他覚屈折測定とOCTスキャンとを同じ固視位置の下に行うことができる。
(S23:測定時刻を記録)
本例のステップS23では、眼科装置1Aの時刻記録部70Aを用いて測定時刻が記録される。
(S24:OCTデータから層位置データを取得)
層位置データ取得部40は、ステップS22で取得されたOCTデータを解析することにより眼底Efの層位置データを取得する。
(S25:所定時刻の屈折度数の推定)
データ処理部50Aは、ステップS23で記録された測定時刻と、ステップS21で取得された他覚屈折度数の測定データと、ステップS24で取得された層位置データから求められた脈絡膜の厚みデータとに少なくとも基づいて、所定時刻における被検眼Eの屈折度数の推定値を求める。
〈作用・効果〉
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1、1A)は、屈折測定部(10)と、OCT部(20)と、層位置データ取得部(40)と、データ処理部(50、50A)とを含む。屈折測定部は、被検眼の屈折度数を他覚的に測定する。OCT部は、被検眼の眼底にOCTスキャンを適用してOCTデータを取得する。層位置データ取得部は、OCTデータを解析することにより眼底の1以上の層のそれぞれの位置データを含む層位置データを取得する。データ処理部は、屈折測定部により取得された測定データと層位置データとに少なくとも基づいて、被検眼の屈折度数データを生成する。
このような眼科装置によれば、被検眼の他覚屈折度数の測定値と、眼底の層の位置とに基づいて、新たな屈折度数データを求めることができる。したがって、眼底の層の位置が考慮された屈折度数データを取得することが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1、1A)において、層位置データ取得部(40)は、眼底の第1層の位置データと第2層の位置データとを含む層位置データを取得するように構成されていてよい。更に、データ処理部(50、50A)は、この層位置データに基づいて第1層と第2層との間の距離データを求め、且つ、この距離データと他覚屈折度数の測定データとに少なくとも基づいて、被検眼の屈折度数データを生成するように構成されていてよい。
このような眼科装置によれば、眼底の2つの層の間の距離と他覚屈折度数の測定データとに基づいて、新たな屈折度数データを求めることができる。したがって、眼底の2つの層の間の距離が考慮された屈折度数データを取得することが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1、1A)において、層位置データ取得部(40)は、眼底の脈絡膜の前面及び後面の組み合わせを第1層及び第2層の組み合わせとして特定し、脈絡膜前面の位置データと脈絡膜後面の位置データとを含む層位置データを取得するように構成されていてよい。加えて、データ処理部(50、50A)は、第1層と第2層との間の距離データとして脈絡膜の厚みデータを求める処理と、他覚屈折度数の測定データと脈絡膜の厚みデータとに少なくとも基づいて被検眼の屈折度数データを生成する処理とを実行するように構成されていてよい。
このような眼科装置によれば、脈絡膜の厚みデータと他覚屈折度数の測定データとに基づいて、新たな屈折度数データを求めることができる。したがって、脈絡膜厚が考慮された屈折度数データを取得することが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、他覚屈折度数の測定データと脈絡膜の厚みデータとに少なくとも基づいて、被検眼の自覚屈折度数の推定値(屈折度数データ)を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
このような眼科装置によれば、脈絡膜の厚みデータと他覚屈折度数の測定データとに基づいて、被検眼の自覚屈折度数を推定することができる。したがって、脈絡膜厚を考慮して自覚屈折度数を求めることが可能である。典型的には、近赤外光を用いる他覚屈折測定で得られた他覚屈折度数から脈絡膜等の影響を除外して自覚屈折度数を推定することが可能である。なお、自覚屈折度数の推定とは異なる他覚屈折度数の補正についても同様である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、少なくとも脈絡膜厚を変数とする所定の補正式と被検眼の他覚屈折度数の測定データと被検眼の脈絡膜の厚みデータとに基づいて自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
このような眼科装置によれば、脈絡膜厚の相違を考慮することにより、高確度、高精度で自覚屈折度数の推定を行うことが可能である。なお、自覚屈折度数の推定とは異なる他覚屈折度数の補正についても同様である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、脈絡膜厚の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式のうちから被検眼の脈絡膜の厚みデータに対応する補正式を選択し、選択された補正式に少なくとも他覚屈折度数の測定データを入力することによって自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
このような眼科装置によれば、自覚屈折度数の推定の確度向上や精度向上を図ることが可能である。なお、自覚屈折度数の推定とは異なる他覚屈折度数の補正についても同様である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、少なくとも脈絡膜厚及び屈折度数を変数とする所定の補正式と他覚屈折度数の測定データと脈絡膜の厚みデータとに基づいて、被検眼の自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
このような眼科装置によれば、自覚屈折度数の推定の確度向上や精度向上を図ることが可能である。なお、自覚屈折度数の推定とは異なる他覚屈折度数の補正についても同様である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、脈絡膜厚の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式のうちから被検眼の脈絡膜の厚みデータに対応する補正式を選択し、選択された補正式に少なくとも他覚屈折度数の測定データを入力することによって自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
また、例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、屈折度数の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式のうちから被検眼の他覚屈折度数の測定データに対応する補正式を選択し、選択された補正式に少なくとも他覚屈折度数の測定データを入力することによって自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
また、例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、脈絡膜厚の値の2以上の範囲と屈折度数の値の2以上の範囲との組み合わせにそれぞれ対応する4以上の補正式のうちから被検眼の脈絡膜の厚みデータ及び被検眼の他覚屈折度数の測定データの組み合わせに対応する補正式を選択し、選択された補正式に少なくとも他覚屈折度数の測定データを入力することによって自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
このような眼科装置によれば、自覚屈折度数の推定の確度や精度の更なる向上を図ることが可能である。なお、自覚屈折度数の推定とは異なる他覚屈折度数の補正についても同様である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1)は、被検眼の眼軸長データを取得する眼軸長データ取得部(20、30)を更に含んでいてよい。加えて、データ処理部(30)は、少なくとも脈絡膜厚及び眼軸長を変数とする所定の補正式と他覚屈折度数の測定データと脈絡膜の厚みデータと眼軸長データとに基づいて自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
このような眼科装置によれば、脈絡膜厚の相違と眼軸長の相違とを考慮することにより、高確度、高精度で自覚屈折度数の推定を行うことが可能である。なお、自覚屈折度数の推定とは異なる他覚屈折度数の補正についても同様である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、脈絡膜厚の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式のうちから被検眼の脈絡膜の厚みデータに対応する補正式を選択し、選択された補正式に少なくとも被検眼の他覚屈折度数の測定データを入力することにより自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
また、例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、眼軸長の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の補正式のうちから被検眼の眼軸長データに対応する補正式を選択し、選択された補正式に少なくとも被検眼の他覚屈折度数の測定データを入力することにより自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
また、例示的な実施形態に係る眼科装置(1)において、データ処理部(50)は、脈絡膜厚の値の2以上の範囲と眼軸長の値の2以上の範囲との組み合わせにそれぞれ対応する4以上の補正式のうちから被検眼の脈絡膜の厚みデータ及び被検眼の眼軸長データの組み合わせに対応する補正式を選択し、選択された補正式に少なくとも被検眼の他覚屈折度数の測定データを入力することにより自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
このような眼科装置によれば、自覚屈折度数の推定の確度や精度の更なる向上を図ることが可能である。なお、自覚屈折度数の推定とは異なる他覚屈折度数の補正についても同様である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1)は、被検眼の眼軸長データを取得する眼軸長データ取得部(20、30)を更に含んでいてよい。加えて、データ処理部(50)は、少なくとも脈絡膜厚、屈折度数及び眼軸長を変数とする所定の補正式と被検眼の他覚屈折度数の測定データと被検眼の脈絡膜の厚みデータと被検眼の眼軸長データとに基づいて自覚屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。なお、幾つかの例示的な実施形態において、自覚屈折度数の推定値とは異なる他覚屈折度数の補正値を同様の手法によって求めることが可能である。
このような眼科装置によれば、脈絡膜厚の相違と屈折度数の相違と眼軸長の相違とを考慮することにより、高確度、高精度で自覚屈折度数の推定を行うことが可能である。なお、自覚屈折度数の推定とは異なる他覚屈折度数の補正についても同様である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1A)は、被検眼の脈絡膜の厚みデータを求めるためのOCTスキャンをOCT部(20)が実行した時刻である測定時刻を記録する時刻記録部(70A)を更に含んでいてよい。加えて、データ処理部(50A)は、測定時刻と被検眼の他覚屈折度数の測定データと被検眼の脈絡膜の厚みデータとに少なくとも基づいて、所定時刻における被検眼の屈折度数の推定値(屈折度数データ)を求めるように構成されていてよい。
このような眼科装置によれば、脈絡膜厚を考慮することにより、測定時刻とは異なる時刻における被検眼の屈折度数を推定することが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1A)において、データ処理部(50A)は、少なくとも脈絡膜厚の日内変動の標準データと測定時刻と被検眼の他覚屈折度数の測定データと被検眼の脈絡膜の厚みデータとに基づいて、所定時刻における屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。
更に、データ処理部(50A)は、少なくとも脈絡膜厚の日内変動の標準データと測定時刻と被検眼の脈絡膜の厚みデータとに基づいて屈折度数の変動量の推定値を求め、求められた変動量の推定値と被検眼の他覚屈折度数の測定データとに基づいて所定時刻における屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。
更に、データ処理部(50A)は、少なくとも標準データと測定時刻と被検眼の脈絡膜の厚みデータとに基づいて脈絡膜厚の変動量の推定値を求め、求められた脈絡膜厚の変動量の推定値に基づいて屈折度数の変動量の推定値を求め、求められた屈折度数の変動量の推定値と被検眼の他覚屈折度数の測定データとに基づいて所定時刻における屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。
このような眼科装置によれば、標準的な脈絡膜厚の日内変動を考慮することにより、測定時刻とは異なる時刻における被検眼の屈折度数を高確度、高精度で推定することが可能である。
例示的な実施形態に係る眼科装置(1A)において、データ処理部(50A)は、所定の基準時刻における脈絡膜厚の値の2以上の範囲にそれぞれ対応する2以上の標準データのうちから被検眼の脈絡膜の厚みデータに対応する標準データを選択し、選択された標準データと測定時刻と被検眼の他覚屈折度数の測定データと被検眼の脈絡膜の厚みデータとに基づいて所定時刻における屈折度数の推定値を求めるように構成されていてよい。
このような眼科装置によれば、測定時刻と異なる時刻における屈折度数を推定する処理をより高い確度や精度で行うことが可能である。
幾つかの例示的な実施形態によれば、眼底(網膜、脈絡膜、強膜)の特定の層の位置情報(高さ情報)を用いて、他覚屈折度数の測定データから自覚屈折度数を推定したり(より一般に、他覚屈折度数を補正したり)、或る時刻に行われた他覚屈折測定で得られたデータから異なる時間帯の屈折度数を推定したりすることが可能である。特定の層の位置情報は、特定の眼底組織の厚み(例えば脈絡膜厚)であってもよい。
幾つかの例示的な実施形態によれば、眼底組織(網膜等)の位置や脈絡膜厚を考慮した屈折度数値が得られる。特に、脈絡膜厚の日内変動を考慮した屈折度数値が得られる。
これにより、例えば、日中に適した屈折度数や夜間に適した屈折度数のように、それぞれの時間帯に適した眼鏡等の処方が可能になる。また、全ての時間帯において過矯正にならないように眼鏡等を処方することも可能である。なお、特に近視眼における過矯正の場合、遠方視時に常に調節が必要となり、調節の負荷による眼軸長の伸展を引き起こすおそれがある。
また、日内変動を考慮した屈折度数の範囲を求めて提示することも可能である。
このように、幾つかの例示的な実施形態によれば、従来の眼の屈折測定がはらむ様々な問題を解決することが可能である。
以上に説明した実施形態は例示に過ぎない。よって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を施すことが可能である。
例示的な実施形態において説明した方法(情報処理方法、眼科装置の制御方法など)を、眼科装置やコンピュータに実行させることができる。また、当該方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供することができる。また、このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この非一時的記録媒体は任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。