JP2020100582A - 多発性硬化症抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 新たな多発性硬化症の治療剤又はその病態を緩和する医薬を提供すること。【解決手段】 CD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAをコードする遺伝子の発現抑制物質、又はCD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAの機能を阻害する物質を有効成分として含有する、多発性硬化症抑制剤。【選択図】なし
Description
本発明は、多発性硬化症抑制剤に関する。
多発性硬化症(MultipleSclerosis:MS)とは、自己免疫疾患のひとつで、髄鞘及び神経軸索を標的とする多発性炎症が惹起され、広汎な脱髄に起因する神経伝導障害を引き起こす疾患である。多発性硬化症の病態が進行すると、運動障害や視覚障害などの重篤な神経症状が現れる。
多発性硬化症は、急性増悪と寛解を繰り返す再発寛解型MS(RRMS)と、進行型MSがある。進行型MSには、一次進行型MS(PPMS)と、RRMS病態が一定期間続いた後に進行性の病態へと移行する二次進行型MS(SPMS)、及び再発を繰り返しながら進行する進行再発型MS(PRMS)が知られている(非特許文献1〜3)。
多発性硬化症の患者は、世界中で約250万人存在すると推測されており、特に欧米地域において、その患者数が多い。日本においても、多発性硬化症の患者数は、年々増加傾向にあり、治療が困難な疾患(難病)の1つに指定されている。
NatureReviews Neurology 2012, 8, 647-656.
NatureReviews Neurology 2013, 9, 496-503.
MultipleSclerosis Journal 2013, 19: 1428-1436.
NatureCommunications 2015, 6: 8437, 1-11.
しかしながら、多発性硬化症の病態メカニズムは十分に解明されておらず、有効な多発性硬化症の治療剤もいまだ少ない。そこで、本発明の目的は、新たな多発性硬化症の治療剤又はその病態を緩和する医薬を提供することにある。
本発明者らは、これまでに、単相型の実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導したNR4A2欠損マウスでは、誘導初期に通常の四肢麻痺を伴うEAE病態が観察されない一方で、誘導後期(誘導後約28日以降)にEAE病態(以下、「後期EAE病態」ともいう。)が観察されること等の知見を得ていた(特許文献1〜4参照)。
本発明者らは、EAEマウスのCNS浸潤T細胞において、特定の遺伝子群がNR4A2依存的に発現することを見出し、さらにこれらの遺伝子の発現を抑制することにより、多発性硬化症の臨床病態を軽減できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供する。
[1] CD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAをコードする遺伝子の発現抑制物質、又はCD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAの機能を阻害する物質を有効成分として含有する、多発性硬化症抑制剤。
[2] 発現抑制物質が、CD11c、CCL2又はIL−1RAをコードする遺伝子の発現を抑制する発現抑制物質を含む、[1]に記載の多発性硬化症抑制剤。
[3] 発現抑制物質が、当該遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA及びリボザイムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の多発性硬化症抑制剤。
[4] 機能阻害物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対する抗体、抗原結合性断片及び化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の多発性硬化症抑制剤。
[5] 発現抑制物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対するモノクローナル抗体である、[3]又は[4]に記載の多発性硬化症抑制剤。
[6] CD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAをコードする遺伝子の発現抑制物質、又はCD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAの機能阻害物質を、それを必要とするヒト対象に投与するステップを含む、多発性硬化症の治療方法、又は病態の進行抑制方法。
[7] 発現抑制物質が、CD11c、CCL2又はIL−1RAをコードする遺伝子の発現を抑制する発現抑制物質を含む、[5]に記載の方法。
[8] 発現抑制物質が、当該遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA及びリボザイムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[5]又は[6]に記載の方法。
[9] 機能阻害物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対する抗体、抗原結合性断片及び化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 発現抑制物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対するモノクローナル抗体である、[8]又は[9]に記載の方法。
[1] CD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAをコードする遺伝子の発現抑制物質、又はCD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAの機能を阻害する物質を有効成分として含有する、多発性硬化症抑制剤。
[2] 発現抑制物質が、CD11c、CCL2又はIL−1RAをコードする遺伝子の発現を抑制する発現抑制物質を含む、[1]に記載の多発性硬化症抑制剤。
[3] 発現抑制物質が、当該遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA及びリボザイムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の多発性硬化症抑制剤。
[4] 機能阻害物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対する抗体、抗原結合性断片及び化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の多発性硬化症抑制剤。
[5] 発現抑制物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対するモノクローナル抗体である、[3]又は[4]に記載の多発性硬化症抑制剤。
[6] CD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAをコードする遺伝子の発現抑制物質、又はCD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAの機能阻害物質を、それを必要とするヒト対象に投与するステップを含む、多発性硬化症の治療方法、又は病態の進行抑制方法。
[7] 発現抑制物質が、CD11c、CCL2又はIL−1RAをコードする遺伝子の発現を抑制する発現抑制物質を含む、[5]に記載の方法。
[8] 発現抑制物質が、当該遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA及びリボザイムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[5]又は[6]に記載の方法。
[9] 機能阻害物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対する抗体、抗原結合性断片及び化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[6]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 発現抑制物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対するモノクローナル抗体である、[8]又は[9]に記載の方法。
本発明は、新たな多発性硬化症の治療剤又はその病態を緩和する薬剤を提供することができる。
本発明について、以下に詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、CD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAをコードする遺伝子の発現を抑制する物質(発現抑制物質)、又はCD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAの機能を阻害する物質(機能阻害物質)を有効成分として含有する、多発性硬化症抑制剤である。本実施形態に係る治療剤は、1種又は複数の発現抑制物質を含有していてもよく、1種又は複数の機能阻害物質を含有してもよく、発現抑制物質及び機能阻害物質をそれぞれ組み合わせて含有していてもよい。
本明細書において、「多発性硬化症抑制剤」とは、例えば、多発性硬化症の発症を抑制する薬剤、多発性硬化症の病態の進行を抑制する薬剤、多発性硬化症の症状を低減又は緩和する薬剤のいずれであってもよい。多発性硬化症の病態進行では、CIS(Clinically isolated syndrome)と称される単一の脱髄性症状を発症した後、脱髄性症状を再発して多発性硬化症の発症と診断される場合が多い。具体的には、CISを発症した患者は、脱髄性症状が時間的又は空間的多発性を呈することで多発性硬化症と診断され得る。本発明の多発性硬化症抑制剤は、CISから多発性硬化症への進展の予防又は抑制に使用するための薬剤としても有効であり得る。また、多発性硬化症は、一次進行型MS(PPMS)、二次進行型MS(SPMS)、及び進行再発型MS(PRMS)のいずれであってもよい。
CD11cは、インテグリンαX鎖を構成するタンパク(Itgaxとも呼ばれる。)であり、単球、マクロファージ、樹状細胞、顆粒球、NK細胞を含む種々の細胞上に存在する分子量145〜150kDaのI型膜貫通糖タンパクである。
CD116は、分子量75〜85kDaのヒト顆粒球・単球コロニー刺激因子(GM−CSF)受容体のα鎖を構成するタンパク(Csf2raとも呼ばれる。)であり、リンパ球には発現せず、単球、顆粒球及びそれらの前駆細胞に強く発現するタンパクである。CD116分子は、IL−3受容体、IL−5受容体の共通β鎖(CDw131)と会合して、GM−CSFに対する高親和性の受容体を形成する。
CCL2は、単球走化性タンパク−1(MCP−1)とも呼ばれ、主に単球、血管内皮細胞、繊維芽細胞、骨芽細胞等から産生されるサイトカインである。CCL2は、単球、メモリーT細胞及び樹状細胞を組織障害部位又は感染部位に誘引する作用、マクロファージ又は単球の表面抗原(例えば、CD11b、CD11c)又はサイトカイン(例えば、IL−1、IL−6)の発現を調節する作用、及び好塩基球の活性化に寄与し、ヒスタミンの遊離を促進する作用を有する。
IL−1RA(IL−1受容体アンタゴニスト)は、IL−1rnによってコードされるタンパクであり、IL−1受容体に結合してIL−1α及びIL−1βと競合的に拮抗し、IL−1の生理活性の発現に対して抑制的に作用する。
発現抑制物質は、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAのいずれかのタンパクをコードする遺伝子の発現を抑制する物質である。発現抑制物質は、当該遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA又はリボザイムの形態であってもよい。本実施形態に係る治療剤は、これら発現抑制物質の1種を単独で含有していてもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。発現抑制物質は少なくとも、CD11cをコードする遺伝子の発現を抑制する物質、CCL2をコードする遺伝子の発現を抑制する物質、又は、IL−1RAをコードする遺伝子の発現を抑制する物質のいずれかを含むことが好ましい。
本実施形態に係る多発性硬化症抑制剤における発現抑制物質の含有量は、当該抑制剤全量を基準として0.0001〜100質量%であってよい。
機能阻害物質は、CD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAの機能を阻害する物質である。機能阻害物質は、前述の分子(タンパク)に対する抗体、抗原結合性断片の形態であってもよく、低分子化合物の形態であってもよい。本実施形態に係る治療剤は、これら機能阻害物質の1種を単独で含有していてもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。機能阻害物質は少なくとも、CD11cの機能を阻害する物質、CCL2の機能を阻害する物質、又は、IL−1RAの機能を阻害する物質のいずれかを含むことが好ましい。
各抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。各抗体は、マウス抗体、ラット抗体、モルモット抗体、ハムスター抗体、ウサギ抗体、サル抗体、イヌ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体のいずれであってもよい。また、各抗体は、血中滞留性等の物性を改善するために化学修飾を施したものであってもよい。さらに、各抗体は、多発性硬化症又は当該疾患に不随して発症する疾患に対する抑制効果、症状の緩和効果又は治療効果を高めるために、放射性核種、毒素等が結合したものであってもよい。抗CCL2抗体の具体例としては、ABN912(抗ヒトCCL2モノクローナル抗体)が挙げられる。各抗原結合性断片については、上述の抗体に関する説明と同様である。
抗原結合性断片としては、抗体の抗原結合部位を含む抗体断片であればよく、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、ダイアボディ等が挙げられる。
抗体又は抗原結合性断片は、常法に従い製造することができる。また、抗体又は抗原結合性断片は、市販品を使用してもよい。
また、機能抑制物質は、CCL2の受容体であるCCR2の活性化を阻害する物質であってもよい。このような物質としては、例えば、抗CCR2抗体、CCR2結合性断片、CCL2阻害剤が挙げられる。抗CCR2抗体又はCCR2結合性断片については、上述の抗体に関する説明と同様である。抗CCR2抗体の具体例としては、MLN1202が挙げられる。CCL2阻害剤としては、例えば、ドキシサイクリン、クエルセチン、カルシウムチャネル阻害剤(例えば、アムロジピン、マニジピン)、ヘムオキシゲナーゼI、p38 MAPK阻害剤(例えば、FR167653、SB203580、PD98059、AG490)、プロペントフィリン、プロパゲルマニウム、MCP−1のドミナントネガティブ変異体が挙げられる。
本実施形態に係る多発性硬化症抑制剤における機能阻害物質の含有量は、当該抑制剤全量を基準として0.0001〜100質量%であってよい。
本実施形態の多発性硬化症抑制剤における上記有効成分(発現抑制物質又は機能阻害物質)の総含有量は、特に制限されるものではなく、例えば、多発性硬化症抑制剤全量を基準として、0.001〜100質量%であってよい。
本実施形態に係る多発性硬化症抑制剤は、上記有効成分のみで構成されていてもよく、また上記有効成分以外に、製剤技術分野において常用される賦形剤、緩衝剤、安定化剤、抗酸化剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、乳化剤及び流動添加調節剤等の添加剤を含有していてもよい。
本実施形態に係る多発性硬化症抑制剤の剤形は、例えば、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤、注射剤等のいずれの剤形であってもよい。
本実施形態に係る多発性硬化症抑制剤は、経口投与されてもよく、非経口投与されてもよい。具体的な投与量の一例として、例えば、ヒト成人男子(体重60kg)に投与する場合、一日当たりの多発性硬化症抑制剤の投与量は、通常、有効成分量換算で、0.0001μg〜10000mg/日/人である。
上記実施形態は、それを必要とするヒト対象に発現抑制物質又は機能阻害物質を投与するステップを含む、多発性硬化症の治療方法、又は病態の進行抑制方法ということもできる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.動物
(1)NR4A2cKOマウス
本試験で使用したマウスはすべて6〜8週齢で、特定病原体不在条件下で飼育した。当該マウスは、特許文献1及び非特許文献4を参考にして、loxp配列でNR4A2遺伝子を挟んだターゲッティングベクターを用いて、NR4A2fl/flマウスを樹立した。すなわち、NR4A2遺伝子上流と下流にloxp配列を挿入して得たマウスを、C57BL/6 FLPeマウス(理研バイオリソースセンター)C57BL/6 FLPeマウス(理研バイオリソースセンター)と交雑させてネオマイシンカセットを除去した系統同士を交配して、ホモ接合NR4A2fl/fl C57BL/6マウス(nr4a2fl/fl)を作製した。得られたマウスをC57BL/6 CD4−Creマウス(タコニック社)と交配させることにより、CD4特異的NR4A2cKO C57BL/6マウス(Cre−CD4/NR4A2fl/fl C57BL/6マウス、以下、「NR4A2cKOマウス」という。)を樹立した。一群あたり5〜10匹のマウスとなるようにマウスを分類し、EAE臨床スコアの評価に使用した。
(1)NR4A2cKOマウス
本試験で使用したマウスはすべて6〜8週齢で、特定病原体不在条件下で飼育した。当該マウスは、特許文献1及び非特許文献4を参考にして、loxp配列でNR4A2遺伝子を挟んだターゲッティングベクターを用いて、NR4A2fl/flマウスを樹立した。すなわち、NR4A2遺伝子上流と下流にloxp配列を挿入して得たマウスを、C57BL/6 FLPeマウス(理研バイオリソースセンター)C57BL/6 FLPeマウス(理研バイオリソースセンター)と交雑させてネオマイシンカセットを除去した系統同士を交配して、ホモ接合NR4A2fl/fl C57BL/6マウス(nr4a2fl/fl)を作製した。得られたマウスをC57BL/6 CD4−Creマウス(タコニック社)と交配させることにより、CD4特異的NR4A2cKO C57BL/6マウス(Cre−CD4/NR4A2fl/fl C57BL/6マウス、以下、「NR4A2cKOマウス」という。)を樹立した。一群あたり5〜10匹のマウスとなるようにマウスを分類し、EAE臨床スコアの評価に使用した。
NR4A2遺伝子は、Nurr1遺伝子、NOT遺伝子、又はRNR1遺伝子とも呼ばれ、オーファン核内受容体の1種である。NR4A2遺伝子の主な発現部位は、中枢神経系であり、特に中脳腹側、脳幹、脊髄に強く発現している。また、NR4A2は,プロスタグランジン、増殖因子、炎症性サイトカイン、T細胞受容体架橋に応答して発現が誘導され、リガンド依存性又はリガンド非依存性にDNAと直接結合して転写を制御する。ヒトNR4A2遺伝子の転写産物のNCBI Reference Sequenceのアクセッション番号は、NM_006186.3である。
(2)EAE誘導(単相型EAE)
100μgのMOG35−55残基に相当するペプチド(東レリサーチセンターにて合成、以下、「MOGペプチド」ともいう。)と1mgの結核菌Mycobacterium Tuberculosis H37Ra死菌(Difco社製)を完全フロイントアジュバントで乳化したものを等量混和し、ホモジナイザーを用いて乳化させ、MOGエマルジョンを調製した。得られたMOGエマルジョンを、NR4A2cKOマウス及びNR4A2fl/fl C57BL/6マウス(対照マウス、Control)の背部皮下に1〜2か所注射し、免疫を付与した。さらに、免疫付与後0日目と2日目に、1匹あたり、200ngの百日咳毒素(List Biological Laboratories製)のPBS溶液200μLを、マウスの腹腔内に注射した。注射した後、表1に示すEAE評価基準にしたがい、マウスのEAE病態を毎日、評価した。
100μgのMOG35−55残基に相当するペプチド(東レリサーチセンターにて合成、以下、「MOGペプチド」ともいう。)と1mgの結核菌Mycobacterium Tuberculosis H37Ra死菌(Difco社製)を完全フロイントアジュバントで乳化したものを等量混和し、ホモジナイザーを用いて乳化させ、MOGエマルジョンを調製した。得られたMOGエマルジョンを、NR4A2cKOマウス及びNR4A2fl/fl C57BL/6マウス(対照マウス、Control)の背部皮下に1〜2か所注射し、免疫を付与した。さらに、免疫付与後0日目と2日目に、1匹あたり、200ngの百日咳毒素(List Biological Laboratories製)のPBS溶液200μLを、マウスの腹腔内に注射した。注射した後、表1に示すEAE評価基準にしたがい、マウスのEAE病態を毎日、評価した。
結果を図1(a)に示す。図1(a)に示すように、NR4A2cKOマウスでは、対照マウス(Control)で観察されたEAE発症期、ピーク期及び慢性期(EAE誘導後約9〜28日後)におけるEAE病態が抑制されていた。一方、NR4A2欠損マウスでは、EAE誘導後28日以降に新たな病態(後期EAE病態)が出現した。
(3)初期EAE病態とIL−17産生
上記1.(2)と同様に単相型EAEを誘導したNR4A2cKOマウス及び対照マウス(Control)から脳及び脊髄を採取し、フローサイトメーターを用いてCD4+T細胞を分離した。具体的には、組織を小さい破片に切断した後、37℃で40分間、1.4mg/mlのコラゲナーゼH及び100μg/mlのDNaseI(Roche社製)を含有したRPMI 1640培地(Invitrogen社製)において更に分解した。得られた組織のホモジネートを70μm細胞濾過器(GEヘルスケアサイエンス社製)に通し、不連続パーコール密度勾配遠心分離法(37%/80%)を用いて、白血球細胞を濃縮した。次いで、CNSヘ浸潤したCD4+T細胞をセルソーター(装置名:FACS ARIA II、BD Cytometry Systems社製)を用いたFACSソートで分離した。分離の際に使用した抗体は、抗CD3抗体(Biolegend社製)、及び抗CD4抗体(Biolegend社製)である。得られたT細胞を、GolgiPlug存在下に5ng/mL PMA(Sigma-Aldrich社製)及び500ng/mL イオノマイシンで5時間刺激し、培養上清中におけるIL−17含有量を、FlowCytomixサイトメトリックビーズアレイ(eBioscience社製)及びBio-Plexサスペンジョンアレイシステム(バイオラッド社)を用いて測定した。得られたIL−17量をCNS浸潤T細胞の数で除し、CNS浸潤T細胞あたりのIL−17産生量を算出した。
上記1.(2)と同様に単相型EAEを誘導したNR4A2cKOマウス及び対照マウス(Control)から脳及び脊髄を採取し、フローサイトメーターを用いてCD4+T細胞を分離した。具体的には、組織を小さい破片に切断した後、37℃で40分間、1.4mg/mlのコラゲナーゼH及び100μg/mlのDNaseI(Roche社製)を含有したRPMI 1640培地(Invitrogen社製)において更に分解した。得られた組織のホモジネートを70μm細胞濾過器(GEヘルスケアサイエンス社製)に通し、不連続パーコール密度勾配遠心分離法(37%/80%)を用いて、白血球細胞を濃縮した。次いで、CNSヘ浸潤したCD4+T細胞をセルソーター(装置名:FACS ARIA II、BD Cytometry Systems社製)を用いたFACSソートで分離した。分離の際に使用した抗体は、抗CD3抗体(Biolegend社製)、及び抗CD4抗体(Biolegend社製)である。得られたT細胞を、GolgiPlug存在下に5ng/mL PMA(Sigma-Aldrich社製)及び500ng/mL イオノマイシンで5時間刺激し、培養上清中におけるIL−17含有量を、FlowCytomixサイトメトリックビーズアレイ(eBioscience社製)及びBio-Plexサスペンジョンアレイシステム(バイオラッド社)を用いて測定した。得られたIL−17量をCNS浸潤T細胞の数で除し、CNS浸潤T細胞あたりのIL−17産生量を算出した。
結果を図1(b)に示す。NR4A2が関わるEAE病態にIL−17を産生するTh17細胞の関与が示唆されている。対照マウス(Control)のDay18(初期EAE病態)における高いIL−17産生量はこれを反映していると考えられる。一方、NR4A2cKOマウスでは、Day18における高いIL−17産生量は観察されなかった。
2.CNS浸潤T細胞の病原性
(1)CNS浸潤T細胞の単離
上記1.(2)と同様にして、マウスの脳及び脊髄を採取し、CNS浸潤リンパ球を単離した。すなわち、組織を切断して得られた小切片を、1.4mg/mLのコラゲナーゼH及び100μg/mLのDNaseIを添加したRPMI 1640培地(Invitrogen社製)溶液中で37℃、40分間消化した。得られた組織ホモジネートを70μgセルストレイナー(BD社製)に通して、白血球を得た。得られた白血球を、37%/80%パーコール密度勾配遠心法(GEヘルスライフサイエンス社製)を利用して、さらに濃縮した。
濃縮された白血球細胞を蛍光標識抗体で染色した後、フローサイトメトリーによって精製した。フローサイトメーター(装置名:FACS Canto II、BD Cytometry Systems社製)及びソフトウェア(製品名:FACS DIVA)を用いてデータを収集し、FlowJoソフトウェア(TreeStarSoftwear社製)を用いて解析した。セルソーティングには、染色したシングルセル浮遊液をセルソーター(装置名:FACS ARIA II、BD Cytometry Systems社製)を用いた。
(1)CNS浸潤T細胞の単離
上記1.(2)と同様にして、マウスの脳及び脊髄を採取し、CNS浸潤リンパ球を単離した。すなわち、組織を切断して得られた小切片を、1.4mg/mLのコラゲナーゼH及び100μg/mLのDNaseIを添加したRPMI 1640培地(Invitrogen社製)溶液中で37℃、40分間消化した。得られた組織ホモジネートを70μgセルストレイナー(BD社製)に通して、白血球を得た。得られた白血球を、37%/80%パーコール密度勾配遠心法(GEヘルスライフサイエンス社製)を利用して、さらに濃縮した。
濃縮された白血球細胞を蛍光標識抗体で染色した後、フローサイトメトリーによって精製した。フローサイトメーター(装置名:FACS Canto II、BD Cytometry Systems社製)及びソフトウェア(製品名:FACS DIVA)を用いてデータを収集し、FlowJoソフトウェア(TreeStarSoftwear社製)を用いて解析した。セルソーティングには、染色したシングルセル浮遊液をセルソーター(装置名:FACS ARIA II、BD Cytometry Systems社製)を用いた。
(2)単離したCNS浸潤T細胞の移入
上記2.(1)と同様にして、NR4A2cKOマウス及び対照マウスの脳及び脊髄から採取したCNS浸潤T細胞を染色して、フローサイトメーター(装置名:FACS ARIA II、BD Cytometry Systems社製)を用いたFACSソートにより、CD45+TcRb+CD4+CD11b−細胞を分離した。分離の際に使用した抗体は、抗CD45抗体(Biolegend製)、抗TcRb抗体(Biolegend製)、抗CD4抗体(Biolegend社製)及び抗CD11b抗体(Biolegend製)である。得られたT細胞を、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を用いた再刺激を24時間行った。再刺激の際に使用した抗体は、抗CD3抗体(Biolegend社製)及び抗CD28抗体(Biolegend製)である。再刺激されたT細胞を、免疫受容CD45.1(Ly5)コンジェニックマウスに静脈注射によって移入した。移入した日(Day0)及び移入後2日目(Day2)の日に、100ngの百日咳毒素を各マウスの腹腔内に投与し、Day11まで、上記EAE評価基準にしたがい、マウスのEAE病態を毎日、評価した。
上記2.(1)と同様にして、NR4A2cKOマウス及び対照マウスの脳及び脊髄から採取したCNS浸潤T細胞を染色して、フローサイトメーター(装置名:FACS ARIA II、BD Cytometry Systems社製)を用いたFACSソートにより、CD45+TcRb+CD4+CD11b−細胞を分離した。分離の際に使用した抗体は、抗CD45抗体(Biolegend製)、抗TcRb抗体(Biolegend製)、抗CD4抗体(Biolegend社製)及び抗CD11b抗体(Biolegend製)である。得られたT細胞を、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を用いた再刺激を24時間行った。再刺激の際に使用した抗体は、抗CD3抗体(Biolegend社製)及び抗CD28抗体(Biolegend製)である。再刺激されたT細胞を、免疫受容CD45.1(Ly5)コンジェニックマウスに静脈注射によって移入した。移入した日(Day0)及び移入後2日目(Day2)の日に、100ngの百日咳毒素を各マウスの腹腔内に投与し、Day11まで、上記EAE評価基準にしたがい、マウスのEAE病態を毎日、評価した。
結果を図2に示す。対照マウス由来のCNS浸潤T細胞を移入したLy5マウスでは、EAE病態は特に観察されなかった。一方、NR4A2cKOマウス由来のCNS浸潤T細胞を移入したLy5マウスでは、Day4からEAE病態が発現し始めた。これにより、EAEに関するCNS浸潤T細胞の病原性は、NR4A2依存的であることが示唆された。
3.NR4A2依存的に発現する遺伝子
(1)シングルセル逆転写PCR
CNS浸潤T細胞は、EAEが最も進行した状態のマウスの脳及び脊髄から採取したCNS浸潤T細胞を染色し、フローサイトメーター(装置名:FACS ARIA II、BD Cytometry Systems社製)を用いたFACSソートにより、CD45+TcRb+CD4+CD11b−細胞を分離した。分離の際に使用した抗体は、抗CD45抗体(Biolegend製)、抗TcRb抗体(Biolegend製)、抗CD4抗体(Biolegend社製)及び抗CD11b抗体(Biolegend製)である。
次に、シングルセル遺伝子解析装置(装置名:C1 single-cell Preamp 5-10μm IFC、Fluidigm社製)を用いて、シングルセルをキャプチャーした。キャプチャーサイト内でシングルセルを溶解した。前増幅用シングルセル試薬キット(Fluidigm社製)を用いて、製造者の取扱説明にしたがい、RNAの逆転写及び前増幅を行った。前増幅されたRNAを回収し、集積流体回路(IFC)用アレイ(商品名:96.96 Dynamic Array IFC for gene expression、Fluidigm社製)に供した。96個の標的遺伝子について、Biomark HD装置(Fluidigm社製)を用いて、製造者の取扱説明にしたがい、Delta遺伝子アッセイを実施した。解析ツール(商品名:Singular Toolset for the R environment、Fluidigm社製)を用いて、更に遺伝子解析を行った。
(1)シングルセル逆転写PCR
CNS浸潤T細胞は、EAEが最も進行した状態のマウスの脳及び脊髄から採取したCNS浸潤T細胞を染色し、フローサイトメーター(装置名:FACS ARIA II、BD Cytometry Systems社製)を用いたFACSソートにより、CD45+TcRb+CD4+CD11b−細胞を分離した。分離の際に使用した抗体は、抗CD45抗体(Biolegend製)、抗TcRb抗体(Biolegend製)、抗CD4抗体(Biolegend社製)及び抗CD11b抗体(Biolegend製)である。
次に、シングルセル遺伝子解析装置(装置名:C1 single-cell Preamp 5-10μm IFC、Fluidigm社製)を用いて、シングルセルをキャプチャーした。キャプチャーサイト内でシングルセルを溶解した。前増幅用シングルセル試薬キット(Fluidigm社製)を用いて、製造者の取扱説明にしたがい、RNAの逆転写及び前増幅を行った。前増幅されたRNAを回収し、集積流体回路(IFC)用アレイ(商品名:96.96 Dynamic Array IFC for gene expression、Fluidigm社製)に供した。96個の標的遺伝子について、Biomark HD装置(Fluidigm社製)を用いて、製造者の取扱説明にしたがい、Delta遺伝子アッセイを実施した。解析ツール(商品名:Singular Toolset for the R environment、Fluidigm社製)を用いて、更に遺伝子解析を行った。
EAE発症マウスにおけるCNS浸潤T細胞をシングルセル解析した結果、CD11c、CCL2、CD116及びIL−1rnが、NR4A2依存的に発現することがわかった。
(2)細胞表面におけるCD11c及びCD116遺伝子の発現
EAEが発症したNR4A2cKOマウス及び対照マウスの脳及び脊髄からCNS浸潤CD4+T細胞を分離し、その脾臓からCD4+T細胞を分離した。得られた各細胞の表面におけるCD11c及びCD116タンパクの発現量をフローサイトメーターにより解析した。解析の際に使用した抗体は、抗マウスCD11c抗体(Biolegend社製)及び抗マウスCD116抗体(Biolegend社製)である。
EAEが発症したNR4A2cKOマウス及び対照マウスの脳及び脊髄からCNS浸潤CD4+T細胞を分離し、その脾臓からCD4+T細胞を分離した。得られた各細胞の表面におけるCD11c及びCD116タンパクの発現量をフローサイトメーターにより解析した。解析の際に使用した抗体は、抗マウスCD11c抗体(Biolegend社製)及び抗マウスCD116抗体(Biolegend社製)である。
結果を図3に示す。図3(a)は、対照マウスのCNS及び脾臓由来の各CD4+T細胞の表面におけるCD11c及びCD116の発現を示すサイトグラムである。CNS由来のCD4+T細胞では、CD11c及び/又はCD116が発現したT細胞が多く存在しており、脾臓由来のCD4+T細胞では、これらの遺伝子はほとんど発現していないことがわかった。一方、図3(b)は、NR4A2cKOマウスのCNS及び脾臓由来の各CD4+T細胞の表面におけるCD11c及びCD116発現を示すサイトグラムである。NR4A2cKOマウスでは、CNS由来のCD4+T細胞においても、CD11c及びCD116発現が顕著に少ないことがわかった。
(3)
上記3.(2)と同様にして、NR4A2cKOマウス及び対照マウスの脳及び脊髄からCNS浸潤細胞を分離した。得られた各細胞の表面におけるCD11b及びCD45遺伝子の発現量をフローサイトメーターにより解析した。解析の際に使用した抗体は、抗CD11b抗体(Biolegend製)及び抗CD45抗体(Biolegend製)である。
上記3.(2)と同様にして、NR4A2cKOマウス及び対照マウスの脳及び脊髄からCNS浸潤細胞を分離した。得られた各細胞の表面におけるCD11b及びCD45遺伝子の発現量をフローサイトメーターにより解析した。解析の際に使用した抗体は、抗CD11b抗体(Biolegend製)及び抗CD45抗体(Biolegend製)である。
結果を図4に示す。図4(a)は、対照マウスのCNS由来細胞の表面におけるCD11b及びCD45遺伝子の発現を示すサイトグラムである。図4(b)は、NR4A2cKOマウスのCNS由来の各細胞の表面におけるCD11b及びCD45遺伝子の発現を示すサイトグラムである。CD45の発現量が約1.5×103であることを示す線を境界としてCD45hi(単球)及びCD45int(ミクログリア)に分類すると、NR4A2cKOマウス由来のCNSでは、対照マウス由来のCNSと比べて単球の数が顕著に少ないことがわかった。すなわち、NR4A2cKOマウスでは、CCL2依存性単球のCNSへの集積が低下していた。
4.In vivo試験
(1)マウス
本試験では、Cre−CD4/NR4A2fl/fl C57BL/6マウス(NR4A2cKOマウス)及びNR4A2fl/fl C57BL/6マウス(対照マウス)を使用した。
(1)マウス
本試験では、Cre−CD4/NR4A2fl/fl C57BL/6マウス(NR4A2cKOマウス)及びNR4A2fl/fl C57BL/6マウス(対照マウス)を使用した。
(2)抗体
精製された抗マウスCD11c抗体(Biolegend社製)及びそのアイソタイプ抗体(Biolegend製)、並びに精製された抗マウスCD116抗体(Biolegend社製)を準備した。
精製された抗マウスCD11c抗体(Biolegend社製)及びそのアイソタイプ抗体(Biolegend製)、並びに精製された抗マウスCD116抗体(Biolegend社製)を準備した。
(3)抗体の投与
対照マウスを2群に分けた後、NR4A2cKOマウス群と併せて3群を準備した。上記1.(2)と同様にして、各群のマウスにEAEを誘導した。誘導8日後(Day8)に、EAE状態の対照マウスに精製された抗マウスCD11c抗体又はそのアイソタイプ抗体を、マウス1匹あたり200μgの量で腹腔内投与した。その後、上述のEAE評価基準にしたがい、マウスのEAE病態を毎日、評価した。
別途、対照マウスを2群に分けた後、NR4A2cKOマウス群と併せて3群を準備した。上記1.(2)と同様にして、各群のマウスにEAEを誘導した。誘導8日後(Day8)及び11日後(Day11)に、EAE状態の対照マウスに、精製された抗マウスCD116抗体又はアイソタイプ抗体を、マウス1匹あたり200μgの量で腹腔内投与した。その後、上述のEAE評価基準にしたがい、マウスのEAE病態を毎日、評価した。
対照マウスを2群に分けた後、NR4A2cKOマウス群と併せて3群を準備した。上記1.(2)と同様にして、各群のマウスにEAEを誘導した。誘導8日後(Day8)に、EAE状態の対照マウスに精製された抗マウスCD11c抗体又はそのアイソタイプ抗体を、マウス1匹あたり200μgの量で腹腔内投与した。その後、上述のEAE評価基準にしたがい、マウスのEAE病態を毎日、評価した。
別途、対照マウスを2群に分けた後、NR4A2cKOマウス群と併せて3群を準備した。上記1.(2)と同様にして、各群のマウスにEAEを誘導した。誘導8日後(Day8)及び11日後(Day11)に、EAE状態の対照マウスに、精製された抗マウスCD116抗体又はアイソタイプ抗体を、マウス1匹あたり200μgの量で腹腔内投与した。その後、上述のEAE評価基準にしたがい、マウスのEAE病態を毎日、評価した。
結果を図5に示す。図5(a)は、抗マウスCD11c抗体又はそのアイソタイプ抗体を投与した対照マウスと、NR4A2cKOマウスのEAEスコアを示すグラフである。図5(b)は、抗マウスCD116抗体又はアイソタイプ抗体を投与した対照マウスと、NR4A2cKOマウスのEAEスコアを示すグラフである。図5(a)及び(b)中の点線は、抗体を投与した時を示す。抗CD11c抗体又は抗CD116抗体を投与することにより、EAEスコアの上昇が抑制された。
(4)抗CD116抗体の投与後のT細胞
上記4.(3)において誘導17日後(Day17)に、抗マウスCD116抗体又はアイソタイプ抗体を投与されたマウスのCNSを採取し、CNS浸潤T細胞を単離した。得られたT細胞をGolgi Stop(BD Bioscience社製)の存在下、5ng/mL PMA(Sigma-Aldrich社製)及び500ng/mL イオノマイシン(Sigma-Aldrich社製)を用いて5時間、再刺激した。その後、eBioscience Foxp3染色キットを使用し、製造者の取扱説明にしたがい、抗IFN−γ抗体蛍光標識抗体及び抗IL−17抗体蛍光標識抗体(ともにBiolegend社製)を利用して、表面染色及び固定/細胞内染色した。
上記4.(3)において誘導17日後(Day17)に、抗マウスCD116抗体又はアイソタイプ抗体を投与されたマウスのCNSを採取し、CNS浸潤T細胞を単離した。得られたT細胞をGolgi Stop(BD Bioscience社製)の存在下、5ng/mL PMA(Sigma-Aldrich社製)及び500ng/mL イオノマイシン(Sigma-Aldrich社製)を用いて5時間、再刺激した。その後、eBioscience Foxp3染色キットを使用し、製造者の取扱説明にしたがい、抗IFN−γ抗体蛍光標識抗体及び抗IL−17抗体蛍光標識抗体(ともにBiolegend社製)を利用して、表面染色及び固定/細胞内染色した。
結果を図6に示す。図6(a)は、アイソタイプ抗体を投与した対照マウス由来のCNS浸潤T細胞における、IL−17及びIFN−γ遺伝子の発現を示すサイトグラムである。また、図6(b)は、抗CD116抗体を投与したマウス由来のCNS浸潤T細胞における、IL−17及びIFN−γ遺伝子の発現を示すサイトグラムである。図7(a)及び(b)を比較すると、抗CD116抗体を投与することにより、IFN−γ−IL−17+T細胞(Th17細胞)の数が減少したことがわかった。
(5)抗CD116抗体の投与後のT細胞
上記4.(4)と同様にして得たCNS浸潤T細胞から、フローサイトメーター(装置名:FACS Canto II、BD Cytometry Systems社製)を用いたゲーティングにより、CD45+TcRb+CD4+CD11b−細胞を取得した。得られたCD45+TcRb+CD4+CD11b−細胞を、RLTバッファー中で溶解させ、RNeasyミニキットを用いて、製造者の取扱説明にしたがい、細胞集団から総RNAを抽出した。得られた総RNAから、ファーストストランドcDNA合成キットを用いてcDNAを生成させた。市販のプライマーを用いて、LightCycler96リアルタイムPCR装置で定量的リアルタイムPCRを行い、mRNAの転写物の定量を行った。各遺伝子の発現量は、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH、β−アクチンまたはRPL13)に基づいて補正した。
上記4.(4)と同様にして得たCNS浸潤T細胞から、フローサイトメーター(装置名:FACS Canto II、BD Cytometry Systems社製)を用いたゲーティングにより、CD45+TcRb+CD4+CD11b−細胞を取得した。得られたCD45+TcRb+CD4+CD11b−細胞を、RLTバッファー中で溶解させ、RNeasyミニキットを用いて、製造者の取扱説明にしたがい、細胞集団から総RNAを抽出した。得られた総RNAから、ファーストストランドcDNA合成キットを用いてcDNAを生成させた。市販のプライマーを用いて、LightCycler96リアルタイムPCR装置で定量的リアルタイムPCRを行い、mRNAの転写物の定量を行った。各遺伝子の発現量は、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH、β−アクチンまたはRPL13)に基づいて補正した。
結果を図7に示す。図7(a)に示すように、対照マウスのCNS浸潤T細胞と比較して、抗マウスCD116抗体を投与したマウスでは、CCL2遺伝子及びCD11c遺伝子の発現量が顕著に低下したことがわかった。
5.ヒトへの投与
本試験は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の倫理委員会の承認、及び、全ての患者からの明示の同意を得て、実施された。標準McDonald基準を用いて診断された24名のRRMS患者と16名の健康成人(HC:HealthyControl)を採用し、ヘパリン処理済チューブを用いて末梢血及び脳脊髄液を採取した。得られた末梢血をフィコール勾配(GEヘルスケア)に沈殿させ、400gで30分間、遠心分離することによってPBMCサンプルを分離した。蛍光標識化抗体とともに室温で90分間震盪することにより、PBMCサンプルを染色した。フローサイトメーター(装置名:FACS Canto、BD Cytometry Systems社製)及びFlowJoソフトウェア(TreeStar Softwear社製)を用いて、CD116+CD3+CD4+T細胞の割合を計算し、CD116+CD3+CD4+T細胞の平均蛍光強度(MFI)を算出した。
また、蛍光標識化抗体とともに室温で90分間震盪することにより、脳脊髄液サンプルを染色した。使用した蛍光標識化抗体は、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識化抗CD116抗体(Biolegend製)、PacificBlue標識化抗CD11c抗体(Biolegend製)及びPE(フィコエリスリン)標識化抗CD11c抗体(Biolegend製)である。
本試験は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の倫理委員会の承認、及び、全ての患者からの明示の同意を得て、実施された。標準McDonald基準を用いて診断された24名のRRMS患者と16名の健康成人(HC:HealthyControl)を採用し、ヘパリン処理済チューブを用いて末梢血及び脳脊髄液を採取した。得られた末梢血をフィコール勾配(GEヘルスケア)に沈殿させ、400gで30分間、遠心分離することによってPBMCサンプルを分離した。蛍光標識化抗体とともに室温で90分間震盪することにより、PBMCサンプルを染色した。フローサイトメーター(装置名:FACS Canto、BD Cytometry Systems社製)及びFlowJoソフトウェア(TreeStar Softwear社製)を用いて、CD116+CD3+CD4+T細胞の割合を計算し、CD116+CD3+CD4+T細胞の平均蛍光強度(MFI)を算出した。
また、蛍光標識化抗体とともに室温で90分間震盪することにより、脳脊髄液サンプルを染色した。使用した蛍光標識化抗体は、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識化抗CD116抗体(Biolegend製)、PacificBlue標識化抗CD11c抗体(Biolegend製)及びPE(フィコエリスリン)標識化抗CD11c抗体(Biolegend製)である。
結果を図8及び図9に示す。図8(a)及び(b)は、健康成人及びRRMS患者の末梢血における、CD116+CD3+CD4+T細胞の割合とその平均蛍光強度を示したグラフである。図9(a)は、健康成人のCNSにおけるCD116及びCD11c発現を示すサイトグラムである。図9(b)及び(c)は、RRMS患者のCNSにおけるCD116及びCD11c発現を示すサイトグラムであり、使用した抗CD11c抗体の蛍光標識が異なっている。これらの結果によれば、RRMS患者の末梢血及びCNSでは、健康成人のものと比較して、T細胞のCD116及びCD11cの発現が亢進していることがわかった。
Claims (4)
- CD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAをコードする遺伝子の発現抑制物質、又はCD11c、CD116、CCL2若しくはIL−1RAの機能を阻害する物質を有効成分として含有する、多発性硬化症抑制剤。
- 発現抑制物質が、当該遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA及びリボザイムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の多発性硬化症抑制剤。
- 機能阻害物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対する抗体、抗原結合性断片及び化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の多発性硬化症抑制剤。
- 発現抑制物質が、CD11c、CD116、CCL2又はIL−1RAに対するモノクローナル抗体である、請求項3に記載の多発性硬化症抑制剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018239181A JP2020100582A (ja) | 2018-12-21 | 2018-12-21 | 多発性硬化症抑制剤 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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Family Applications (1)
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JP2018239181A Pending JP2020100582A (ja) | 2018-12-21 | 2018-12-21 | 多発性硬化症抑制剤 |
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