JP2020084899A - 潤滑油の診断システム、風力発電機、および潤滑油の性状測定用モジュール - Google Patents

潤滑油の診断システム、風力発電機、および潤滑油の性状測定用モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】風力発電機などの回転機械の潤滑油の状態診断を状態監視センサにより行う際に、信頼性が高い診断技術を提供することにある。【解決手段】潤滑油使用機器と、潤滑油使用機器に供給される潤滑油を貯留するための潤滑油タンクと、潤滑油タンクと潤滑油使用機器との間で循環される潤滑油が流れる循環ラインと、潤滑油を潤滑油使用機器に向かって循環させるため循環ライン内に設けられたポンプと、循環ライン中に配置されたフィルタと、潤滑油の特性を測定するセンサと、を備える潤滑油の診断システムである。このシステムにおいて、センサは、ポンプからフィルタへ向かって潤滑油が流れる経路中において、フィルタ直後の位置よりも油圧が高い箇所に配置される。あるいは、センサは、潤滑油タンクにおける潤滑油深さの半分より低い箇所に配置される。【選択図】 図6

Description

本発明は、大型回転機械の診断システムおよび診断方法等に係り、特に、風力発電機などの増速機に用いられる潤滑油の劣化診断と増速機の状態診断技術、および、空気圧縮機などの回転機械の潤滑油診断技術、機械の状態診断技術、に関する。
大型回転機械の保全・保守を行う上で、軸受、歯車などの回転部品で使用される潤滑油の性状診断は重要な技術である。大型回転機械の例として、例えば、風力発電機の増速機、空気圧縮機がある。潤滑油の性状診断では、大別すると、(1)潤滑油の経時的な酸化劣化と、(2)水、塵埃や摩耗粉などの外部混入物による汚染の2種類を診断する。
(1)の潤滑油の酸化劣化としては、基油の酸化による劣化、添加剤の消耗による劣化などがある。潤滑油の酸化劣化により、耐摩耗性の低下、粘度および粘度指数の変化、防錆性の低下、防食性の低下などが起こる。結果として、増速機の摩耗や材料疲労が促進されることがある。
(2)の潤滑油の汚染は、水、塵埃、回転部品から生じる摩耗粉などによって起こる。水混入は、潤滑油の粘度変化による潤滑性能低下、金属部品の腐食、錆、材料劣化の原因となる。塵埃は、そのものが致命的な故障の原因となることは少ないが、金属摩耗粉増加の原因となることがある。摩耗粉は、大きさによって、機械の致命的な故障原因となることが知られている。
増速機など回転機械の潤滑油は、予め定められた周期で微量を採取し、分析センタなどに送付して、粘度、汚染度、全酸価、金属濃度などの分析を行い、性状監視を行うことがある。また、風力発電機に設置されたセンサ群(例えば、出力、発電機回転数、発電量、油温、油圧、加速度などのセンサ)による状態監視が行われる。
従来、潤滑油の性状診断技術としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、潤滑油中の汚染物質の種類を光学センサで検出した色に基づき特定することが開示されている。
特開2012−117951号公報
潤滑油には、潤滑性能を維持するために種々の添加剤が含まれる。例えば、潤滑条件が過酷で、接触部分の圧力が高い場合や、すべり速度が小さかったり、油の粘度が低すぎたりする場合は、摩擦面の間の潤滑油の膜が薄くなり、摩擦抵抗が大きくなり摩耗が起こる。この状態を境界潤滑と呼び、極端な場合には焼付が起こる。このような境界潤滑の状態で摩擦や摩耗を減少させる働きをするのが添加剤であり、例えば、油性剤、摩耗防止剤、極圧添加剤(極圧剤)があり、これらを総称して耐荷重添加剤と呼ぶこともある。また、他の添加剤として、例えば酸化防止剤や消泡剤のようなものもある。添加剤は潤滑油に対して所定の割合(濃度)含まれていることが、所望の潤滑性能の維持のために必要である。
従来、潤滑油の劣化診断としては、特許文献1に記載のように、光の透過により汚染物質による劣化を検出する技術が提案されていた。特許文献1記載では、白色発光素子によって発せられた白色の光のうち油用隙間において潤滑油中の汚染物質によって吸収されなかった波長の光に対して、カラー受光素子によって色を検出するので、機械の潤滑油中の汚染物質の色を即時に検出することができると述べている(0009項)。
しかし、潤滑油中にはキャビテーションなどにより、気泡が発生しやすい。このため、色を検出して潤滑油の状態を診断しようとする場合、液体である潤滑油と気泡との界面で光が散乱され、センサデータが気泡の量、大きさなどにより変化する。
また、他のセンサの例として、パーティクルカウンタが知られている。パーティクルカウンタは、粒子により光が散乱されたり遮蔽されたりした際の電気信号により粒子を測定するものであるが、原理的に、酸化や添加剤の消耗を計測できない。また、潤滑油中に気泡が発生している場合、パーティクルカウンタは、参照光が潤滑油中を透過した影を計測するので、原理的に、気泡と固形粒子の区別が難しい。
別のセンサの例として、潤滑油の誘電率、導電率などの電気特性を計測する方式では、潤滑油中に気泡が含まれることにより、見かけのセンサデータが変化してしまうという課題がある。
風力発電機には、高レベルで安定した稼動と発電量が要求される。そのため、故障などの異常が発生する前の段階での異常を検知する予兆診断の機能を備え、ダウンタイムの削減が要求される。また、増速機のような高価な部品が使用されることからも、予兆診断によって故障を未然に防ぐことが要求される。そのためには、現場において高精度で潤滑油の状態を知る必要がある。しかし、風車の増速機潤滑油のような高粘度の潤滑油では、気泡が発生しやすく、かつ、消えにくいため、潤滑油の状態を測定する際の気泡の影響を排除あるいは考慮する必要がある。
本発明の目的は、風力発電機などの回転機械の潤滑油の状態診断を状態監視センサにより行う際に、信頼性が高い診断技術を提供することにある。
本発明の好ましい一側面は、潤滑油使用機器と、潤滑油使用機器に供給される潤滑油を貯留するための潤滑油タンクと、潤滑油タンクと潤滑油使用機器との間で循環される潤滑油が流れる循環ラインと、潤滑油を潤滑油使用機器に向かって循環させるため循環ライン内に設けられたポンプと、循環ライン中に配置されたフィルタと、潤滑油の特性を測定するセンサと、を備える潤滑油の診断システムである。このシステムにおいて、センサは、ポンプからフィルタへ向かって潤滑油が流れる経路中において、フィルタ直後の位置よりも油圧が高い箇所に配置される。あるいは、センサは、潤滑油タンクにおける潤滑油深さの半分より低い箇所に配置される。
本発明の好ましい他の一側面は、風車ロータの回転エネルギーを発電機に伝えるための、少なくとも潤滑油使用機器を有する増速機と、潤滑油使用機器に供給される潤滑油を貯留するための貯留タンクと、貯留タンクと潤滑油使用機器との間で循環される潤滑油が流れる循環ラインと、潤滑油を循環させるための循環ライン内に設けられたポンプと、循環される潤滑油の固形分を除去するためのフィルタと、ポンプとフィルタとの間で、かつ、フィルタ直後の位置よりも油圧が高い場所に設けられ、潤滑油の性状を測定するセンサと、を有することを特徴とする風力発電機である。
本発明の好ましい他の一側面は、色度センサ、パーティクルカウンタ、誘電率センサ、導電率センサ、粘度センサ、の中から選ばれた、1つ以上のセンサと、遠心力を利用したサイクロン式、超音波式、赤外線あるいはヒーターを用いた加熱式、の中から選ばれた、1つ以上の気泡除去装置とが、一体化されてなる、潤滑油の性状測定用モジュールである。
本発明によれば、風力発電機などの回転機械の潤滑油の状態診断を状態監視センサにより行う際に、信頼性が高い診断技術を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
風力発電機の概略全体構成図。 潤滑油中の添加剤(極圧剤)濃度と色度の相関を示すグラフ図。 潤滑油中の添加剤(酸化防止剤)濃度と色度の相関を示すグラフ図。 潤滑油中の二種の添加剤濃度と色度の相関を示すグラフ図。 潤滑油供給系統を有する風力発電機の潤滑油の監視システムの概略図。 実施例1の潤滑油用センサを備えた回転機械の構成図。 潤滑油診断フロー図。 実施例2の潤滑油用センサを備えた回転機械の構成図。 実施例3の潤滑油用センサを備えた回転機械の構成図。 実施例4の潤滑油用センサを備えた回転機械の構成図。 実施例4の潤滑油用センサを備えた他の回転機械の構成図。 実施例5の潤滑油用センサを備えた回転機械の構成図。 実施例5の潤滑油用センサを備えた他の回転機械の構成図。 実施例6の潤滑油用センサを備えた回転機械の構成図。 実施例6の潤滑油用センサを備えた他の回転機械の構成図。 実施例7の潤滑油用センサを備えた回転機械の構成図。 実施例7の潤滑油用センサを備えた他の回転機械の構成図。
風力発電機では、構成要素間の機械的な摩擦係数を低減するために潤滑油等を使用している。以下の実施例では、風力発電機の潤滑油を例として潤滑油の監視技術を説明する。実施例で説明される一例は、増速機と発電機とを有する風力発電機から情報を収集し、収集された情報に基づいて風力発電機の異常を判断する風力発電機の診断システムである。このシステムでは、風力発電機の状態を監視するため、増速機に供給される潤滑油の性状をセンサ情報として出力するセンサと、センサ情報毎に定められた基準値を記憶する記憶部とを有する。そして、潤滑油性状を計測するセンサが、計測を阻害する気泡が比較的少ない位置に設置され、発生した気泡を減少させる機構を併せて備える。
<1.風力発電機の基本構成>
図1に、ダウンウインド型の風力発電機の概略全体構成図を示す。図1では、ナセル3内に配される各機器を点線にて示している。図1に示すように、風力発電機1は、風を受けて回転するブレード5、ブレード5を支持するハブ4、ナセル3、及びナセル3を水平面内に回動可能に支持するタワー2を備える。
ナセル3内に、ハブ4に接続されハブ4と共に回転する主軸31、主軸31に連結されるシュリンクディスク32、シュリンクディスク32を介して主軸31に接続され回転速度を増速する増速機33、及び、カップリング38を介して増速機33により増速された回転速度で回転子を回転させて発電運転する発電機34を備えている。
ブレード5の回転エネルギーを発電機34に伝達する部位は、動力伝達部と呼ばれ、主軸31、シュリンクディスク32、増速機33及びカップリング38が動力伝達部に含まれる。そして、増速機33及び発電機34は、メインフレーム35上に保持されている。また、メインフレーム35上には、動力伝達部の潤滑用に潤滑油を貯留する潤滑油タンク37が一つまたは複数設置されている。また、ナセル3内には、ナセル隔壁30よりも風上側にラジエータ36が配置されている。外気を用いてラジエータ36で冷却された冷却水を発電機34や増速機33に循環させて発電機34や増速機33を冷却している。図1には、いわゆるダウンウインド型風車を例に説明したが、本実施の形態は、アップウインド型風車に適応できることは言うまでもない。
風力発電機では、多くの回転機械で潤滑油が使用されている。たとえば、図1において、主軸31、増速機33、発電機34、図示しないヨー、ピッチなどの軸受には潤滑油が供給される。風速に応じてブレードのピッチ角を変え出力を制御するのがブレードのピッチ制御であり、無駄なく風を受けるために風車の向きを風向きに追従させるナセルの方位制御がヨー制御である。
このような動力伝達部に加え、ヨー制御やピッチ制御を行うための回転機械を含む回転機械については潤滑油を強制循環により供給する必要がある。潤滑油は回転機械の回転部分の摩擦を低減し、部品の磨耗や破損、あるいはエネルギーロスを防止する。しかし、潤滑油の経時的な劣化による潤滑性能の低下や、摩耗粒子、塵埃などの潤滑油への混入による汚染が起こると、摩擦係数が増加し、風力発電機の故障リスクが増大する。
風力発電機が故障すると、故障部品交換のコスト・停電中の発電収入減など、多大なロスコストが発生するため、余寿命予測・予兆検知による早期部品手配、停電期間短縮などの対策が望まれている。特に、重要部品である増速機は、潤滑油の性能が低下すると故障リスクが増大するため、潤滑油の余寿命や交換時期を可能な限り早期に推定するための技術が重要である。
<2.潤滑油の特性評価手法>
潤滑油等の特性評価手法として、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)元素分析や、LC/MS(Liquid Chromatography Mass Spectrometry:以下LC測定)等による成分分析が可能である。しかし、一般にLC測定等では、サンプルを取得して実験施設まで運搬し処理を行なう必要があり、現場での評価が困難である。そこで、現場でサンプルの光学的性質や電気的性質を測定し、間接的に潤滑油の性質を測定することが考えられる。測定手法としては上述のように、潤滑油の色を評価するもの、誘電率や導電率などの電気特性を評価するもの、混入粒子を光学的に測定するもの等、種々の手法が有る(例えば特許文献1やそれに引用される公知文献参照)。しかし、多くの測定手法では、潤滑油中の気泡は測定結果に影響を与える。
以下で、光学式センサの計測データに基づき求められる色度データを用いて潤滑油の添加剤の濃度を測定する例を説明する。添加剤である油性剤、摩耗防止剤、極圧添加剤、酸化防止剤、消防剤等においても、添加剤濃度と色度の相関がある場合が多く、濃度の評価が可能となる。発明者による検討の結果、LC測定などによって求められる、風車などの回転部品を有する機械で使用された潤滑油中の添加剤の濃度と、潤滑油の着色度(色度)には相関があることが判明した。
図2は潤滑油中の極圧剤濃度と色度の相関を示す図である。縦軸はLC測定などによって求められる潤滑油中の添加剤の濃度を示し、横軸は光学式センサの計測データに基づき求められる色度を示す。ここで、図2において色度はRGBの組み合わせから構成される色空間で計算される色差(△E)で表示している。
図2中の△Eの定義は、
△E=(R+G+B1/2
であり、R、G、B、は、加法混合における光の三原色(Red、 Green、 Blue)を意味し、色座標の数値表示では、(R、G、B)と表現する。光の三原色の波長については、Rが610から750nm、Gが500から560nm、Bが435から485nmである。
なお、24bpp(24 bit per pixel、 ピクセルあたり24ビット)でエンコードされたRGB色度は、赤・緑・青の輝度を示す3つの8ビット符号の整数(0から255まで)で表わされる。たとえば、(0, 0, 0)は黒、(255, 255, 255)は白、(255, 0, 0)は赤、(0, 255, 0)は緑、(0, 0, 255)は青、をそれぞれ示す。なお、色度の表示としては、RGB表色系の他に、XYZ表色系、L*a*b*表色系、L*u*v*表色系等々多くの種類があり、これらは数学的に変換されて各種の表色系に展開することができるので、他の表色系で色度を表示しても良い。潤滑油の色を、色度で数値化しておくと、色度値を変換することにより、元の潤滑油の色を、コンピュータや監視システムのモニタまたはディスプレイ上に表示させることが可能である。
添加剤毎に、LC測定などによって求められる、風車などの回転部品を有する機械で使用された潤滑油中の添加剤の濃度と、光学式センサの測定データに基づき求められる、風車などの回転部品を有する機械で使用された潤滑油の色度の関係を、図2のように予め求めておけば、潤滑油の監視の際には、光学式センサの測定データに基づき求められる潤滑油の色度が得られ、潤滑油の色度に基づき、潤滑油の添加剤の濃度を測定することができる。
このように、潤滑油の劣化の指標となる、潤滑油中の添加剤の減少(消耗度)は、光学式センサによって計測される色度より求められることが明らかになった。これにより、LC測定や、FT−IR(フーリエ変換赤外分光法)、NMR(核磁気共鳴)などによる分析と比較して、潤滑油の添加剤濃度を簡易に測定することが可能となる。また、光学式センサ等をナセル内に設置すれば、風力発電機の潤滑油のオンライン遠隔監視も可能となる。この例のように、潤滑油の色度から潤滑油の特性を評価する場合には、色度が正確に測定できることが必要であり、気泡による影響を低減する必要がある。
図2では、潤滑油に添加剤として極圧剤を含む場合について示したが、添加剤としては、耐荷重添加剤である、油性剤、摩耗防止剤、極圧添加剤の他、酸化防止剤、消泡剤に対しても同様に適応できる。
図3はその例の一つとして、潤滑油中の酸化防止剤濃度と色度の相関を示したものである。
潤滑油の劣化の指標である添加剤の消耗度が、色度と相関がある理由は以下のように説明される。添加剤が歯車や軸受の摺動面で作用すると分解するが、添加剤の分解生成物が、フェノール系の酸化物やキノンのような酸化生成物であり、それらは黄色〜赤褐色に着色している。たとえば、酸化防止剤であるBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)や、極圧剤であるTPPT(トリフェニルフォスフォロチオネート)が分解すると、着色化合物が生じる。酸化前のBHT、TPPTは、ほぼ無色である。これらのことから、潤滑油の劣化は、分解生成物である着色化合物の増加と正の相関がある。したがって、色度計測により、潤滑油の劣化度が求められる。
潤滑油には複数の添加剤が含まれる場合がある。この場合もLC測定などによって求められる、風車などの回転部品を有する機械で使用された潤滑油中のそれぞれの添加剤の濃度と、光学式センサの測定データに基づき求められる潤滑油の色度の関係を予め求めて、検量線を作成しておけば、潤滑油の監視の際には、光学式センサの測定データに基づき求められる潤滑油の色度に基づき、潤滑油中のそれぞれの添加剤の濃度を測定することができる。
潤滑油の劣化度と色度の関係を示す検量線は、潤滑油の劣化加速試験として知られている、種々の酸化試験によって、強制的に酸化劣化させた潤滑油を用いても作成可能である。添加剤の種類と初期濃度が同じであっても、基油の種類が異なると、機械での使用に伴う劣化による色度の変化の度合いが異なることがある。このため、潤滑油の劣化度と色度の関係を示す検量線は、油種ごとに作成する必要がある。
図4は、添加剤として極圧剤(TPPT)と酸化防止剤(BHT)の二種が一定量配合された潤滑油での、添加剤の添加剤濃度と色度との相関を示す図である。この図から分かるように、極圧剤と酸化防止剤のように消耗速度が異なる添加剤の濃度も光学式センサの測定データに基づき求められる色度に基づき測定することができる。
さらに、本発明者は、光学式センサの計測データに基づき、潤滑油の添加剤の消耗(劣化)と潤滑油の汚染を識別することができることを見出した。潤滑油が、塵埃、水、機械から発生する摩耗粒子などにより汚染された際には、塵埃と摩耗粒子は固形分であり、また、水はほとんど潤滑油に溶解せずに分散し、波長に依存せず、光の透過率が低下することを利用して、光学式センサで検出できる。潤滑油の汚染が起こった場合には、光学式センサの計測データが、主に添加剤の消耗による潤滑油の劣化とは異なる挙動を示すことから、劣化の検量線からの乖離度によって、潤滑油の汚染度を計測できる。
潤滑油の劣化と汚染が軽微であり、潤滑油交換や部品交換が必要ない程度である場合に、風力発電機を停止し、風力発電機の増速機から潤滑油を採取し、LC測定、FT−IR、NMRなどの組成分析、元素分析、微粒子計測、粘度測定、全酸価分析を行うことは、時間とコストの面から、必ずしも必要ではない。
そこで、増速機の潤滑油中に設置された光学式センサを含む種々のセンサで潤滑油の性状を検出し、そのセンサ情報(潤滑油の物理化学的な状態を示す数値)に基づいて潤滑油の異常度合いの程度をリアルタイムに判別し、その判別結果に応じて増速機が故障に至る前の適切なタイミングで詳細な潤滑油分析のための潤滑油採取を促す。センサ情報と潤滑油の異常度合い(不純物濃度や酸化の程度等)の関係については、予め実験的に求めておき、データベースとして記憶しておく。これにより、適正な潤滑油交換やフィルタ交換、あるいは部品の交換などを行うことで故障を未然に防止することができ、また修理等の対応処理を迅速に行うことで風力発電機を効率的に管理できる。
潤滑油性状センサで測定できる潤滑油性状としては、潤滑油の温度、色度、粘度、密度、誘電率、導電率、コンタミ等級(ISOコード、NAS等級)などがある。各潤滑油性状センサで測定可能な潤滑油性状はセンサの仕様により異なるため(1つだけでなく2つ以上の潤滑油性状を測定できるセンサも存在する)、実際に増速機に搭載される潤滑油性状センサの組み合わせは、測定したい潤滑油性状と各センサの仕様に応じて異なる。
<3.潤滑油中の泡への対応>
風車のような回転部品を有する機械で潤滑油を使用する際には、潤滑油中に気泡が発生し、潤滑油性状を計測するためのセンサデータに少なからず影響を及ぼす。コンタミ等級を計測するセンサの場合は、光が潤滑油中を透過する際の、固形物である汚染粒子の影を検出するので、潤滑油中に気泡があると、気泡の影が固形物の影と区別困難であり、正しい汚染度が計測できない。粘度、密度、誘電率、導電率のような物性を計測するセンサの場合は、一定体積の潤滑油中に、物性値が大きく異なる空気を含んでしまうため、潤滑油中に気泡があると、正しい計測ができない。潤滑油の可視光透過率を計測して色度を求める光学式センサの場合は、潤滑油中の気泡と潤滑油界面で光の反射が起こるため、正しい光透過率を計測できない。
従って、稼働中の風車の潤滑油をセンサで計測する場合、気泡がより少ない場所にセンサを設置する、あるいは、追加の手段により、気泡を除去することが、正確な計測をするためには有効である。
潤滑油中の気泡は、潤滑油の流路の中で、圧力が急減する箇所で増加し、急増する箇所で減少する。圧力の急減によって気泡が大量発生する現象は、キャビテーションと呼ばれ、圧力差が0.02MPa以上の箇所で発生する。よって、潤滑油性状センサは、潤滑油の循環流路中の、局所的に圧力が変化する箇所において、相対的に圧力が高い箇所に設置するのがよい。たとえば、オイルフィルタの手前側や、流路が曲がる箇所の手前側、などがよい。潤滑油の流路の中で、局所的に温度差が生じる箇所でも圧力差が生じるため、相対的に温度が高い箇所では圧力が高く、センサ設置に適する。また、潤滑油中の気泡は、重力によって上昇するため、潤滑油の貯蔵タンクの底面に近い箇所では気泡が少なく、センサ設置に適する。
潤滑油中の気泡を、積極的に除去する手段を、潤滑油流路において潤滑油性状センサの手前に設けることは、正確な計測を行うために、有効である。潤滑油中の気泡を除去する手段としては、サイクロン式の気泡除去装置を流路に設置する、超音波発信源をセンサ手前に設置して気泡を含んだ潤滑油に照射する、赤外線を照射する、ヒーターを設置して加熱する、などの手段が有効である。サイクロン式の気泡除去装置の原理は、装置内で旋回流を発生させて、比重の差によって、液体である潤滑油と空気(気泡)を分離する。超音波の原理は、機械的なエネルギーを与えることにより、気泡を除去する。赤外線、ヒーターは、気泡を含んだ潤滑油を局所加熱することにより、圧力が高い状態を生成して気泡を除去する。
潤滑油中の気泡除去は、センサ計測だけでなく、潤滑性能向上、潤滑油の冷却性能向上による機械部品の寿命延伸、潤滑油と空気中の酸素との接触量減少による潤滑油の劣化防止と寿命延伸、などにも効果がある。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
本明細書における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
以下の実施例では、増速機と発電機とを有する風力発電機、および、風力発電機から情報を収集し、収集された情報に基づいて風力発電機の異常を判断する風力発電機の診断システムであって、増速機に供給される潤滑油の性状をセンサで計測、診断する際に、気泡がより少ない位置にセンサを設置する、あるいは、気泡除去手段を備えることにより、より正確なセンサ計測を行う例を説明する。
実施例1は、風力発電機の機械的駆動部に供給される潤滑油の監視するため、増速機の潤滑油中に設置された光学式センサを含む種々のセンサで潤滑油性状、回転機械の状態を把握するための増速機の加速度を検出し、そのセンサ情報(潤滑油の物理化学的な状態を示す数値)に基づいて潤滑油の異常度合いの程度、回転機械の状態をリアルタイムに判別する。そして、判別結果に応じて増速機が故障に至る前の適切なタイミングで詳細な潤滑油分析のための潤滑油採取、潤滑油交換、フィルタ交換、部品交換を促す風力発電機の診断システムである。このシステムは、入力装置、処理装置、記憶装置、および出力装置を備える。記憶装置は、潤滑油の添加剤の濃度と光学式センサのデータである色度との相対関係を記憶し、処理装置は、潤滑油の色度を計測する光学式センサデータに基づいて、潤滑油の色度特性より求められる潤滑油中の添加剤濃度が所定閾値以下(基準値)となる時間を推測する。
また、実施例1は、処理装置、記憶装置、入力装置、および出力装置を備えたサーバを用いる、光学式潤滑油センサを用いた風力発電機診断システムおよび方法である。この方法では、まず、潤滑油の性状を把握するため、風力発電機の潤滑油の色度データを取得する第1のステップ、サンプルに含まれる添加剤の濃度を測定する第2のステップ、測定した添加剤の濃度を、記憶装置に時系列に格納して添加剤濃度データとする第3のステップ、処理装置が添加剤濃度データを処理することにより、添加剤の濃度が所定閾値となる時間を推測する第4のステップを実行する。
(1.システム全体構成)
図5に潤滑油供給系統を有する風力発電機の潤滑油の監視システムの概略図を示す。図5には説明のため、図1の風力発電機1のナセル3部分を抽出して示している。ナセル3内部には、主軸31、増速機33、発電機34、図示しないヨー、ピッチなどの軸受があり、これらには潤滑油タンク37から潤滑油が供給される。
図5に示すように、風力発電機1は通常複数が同一敷地内に設置され、これらをまとめてファーム200aなどと呼ぶ。それぞれの風力発電機1には、潤滑油の供給系統に各種センサ(図示せず)が設置され、潤滑油の状態を反映したセンサ信号は、ナセル3内のサーバ210に集約される。また、各風力発電機1のサーバ210から得られるセンサ信号は、ファームごとに配置される集約サーバ220に送られる。集約サーバ220からのデータは、ネットワーク230を介して中央サーバ240へ送られる。中央サーバ240へは、他のファーム200bや200cからのデータも送られる。また、中央サーバ240は、集約サーバ220やサーバ210を介して、各風力発電機1に指示を送ることができる。
(2.センサ配置)
図6は、潤滑油用センサを備えた回転機械の概念図である。潤滑油は、ポンプなどの潤滑油供給デバイス301から回転機械302に供給される。潤滑油供給デバイス301は、潤滑油タンク37に接続されて潤滑油の供給を受ける。回転機械302は、例えば増速機33その他の機械的な接触が生じる部位の他、ヨー・ピッチ制御を行うための動力伝達部を含んでよい。
センサ群304は潤滑油の状態を検知するために潤滑油の流路等に配置される。実施例1では、回転機械302の潤滑油の排油口に接続する潤滑油の流路から分岐した流路(分岐ライン)に測定部303を設け、この測定部303に潤滑油の一部を導入して、測定部303にセンサ群304を設置している。分岐ラインは、潤滑油の劣化状態をモニタするために、潤滑油経路の末端付近に設けるのが良い。測定部303を潤滑油のメインの流路(循環ライン)に設けていないのは測定部303における潤滑油の流速を潤滑油の状態を検知するのに適した流速に調整するためである。このように、循環ラインから分岐して循環ラインと並列に配置された分岐ラインを用い、分岐ラインの屈曲形状や太さを調節することで、油圧を調整することもできる。
回転機械302から排出した潤滑油はオイルフィルタ305を経由して潤滑油タンク37に戻る。オイルフィルタ305のメッシュ径は、5から50μmである。オイルフィルタ305を潤滑油が通過する際に、抵抗が発生するため、オイルフィルタ305の手前の位置では圧力が上昇する。圧力上昇により泡が減少するため、センサ設置にふさわしい。具体的なセンサ設置位置としては、潤滑油供給デバイス301からオイルフィルタ305へ向かって潤滑油が流れる経路中において、オイルフィルタ305直後の位置よりも油圧が高い箇所である。ここで、「直後の位置」とはオイルフィルタ305の下流であって、油圧が測定または推定できるできるだけ近い位置という意味である。センサ設置位置としては、例えばフィルタ直後の位置よりも油圧が0.02MPa以上高い場所が望ましい。
潤滑油の流路に沿った位置関係を表す際に、上流、下流という表現を用いることがある。潤滑油は上流から下流に向けて相対的に移動する。図6の場合には、潤滑油供給デバイス301が上流にあり、オイルフィルタ305が下流にあり、測定部303はその間に配置されている。なお、各要素の配置は図6の構成に限定されず、例えば後述のように、潤滑油タンク37を回転機械302と測定部303の間に配置してもよい。
センサ群304は、潤滑油の各種のパラメータを測定する。例えば、物理量としては、光学式センサによる色度の他、温度、油圧などがある。光学式センサに代えてあるいは追加して潤滑油の誘電率、導電率などの電気特性を測定するセンサを備えても良い。温度、油圧等は、公知のセンサを用いて測定することができる。これらのパラメータの時間的な変化に基づいて、潤滑油の状態を評価することができる。これらの温度などのセンサは必須ではないが、潤滑油の状態をより詳しく検知するために設けるのが好ましい。実施例1では、センサ群304を、潤滑油中の気泡が10vol%以下と少ない箇所に設置したため、潤滑油性状を正確に計測できた。なお、気泡の量は、「空気の体積/(空気の体積+油の体積)」で規定した。気泡の量は、例えば、いくつかの周波数を用いて計測チューブ内の気泡を含む流体のインピーダンスを計測することで計測できる。
実施例1では、センサ群304には、可視光源と受光素子を備えた、光学式センサが含まれる。光学式センサは、潤滑油の可視光透過率を計測し、潤滑油の色度情報(R、G、Bの値)を出力する。取得した色度データより、潤滑油中の残存添加剤量を求め、劣化度診断と余寿命診断を行う。センサデータによる診断では、光学式センサによるセンサデータまたは光学式センサと他の一つまたは複数の種類のセンサデータに基づいて診断を行う。
潤滑油は、使用により品質が劣化し、初期の機能を果たさなくなる。このため、品質の劣化状況に応じて、交換等のメンテナンスを行う必要がある。このようなメンテナンスのタイミングを知るために、センサ群304で収集し得るデータを、遠隔地でモニタできるようにすることは、保守管理の効率上有用である。センサ群304で収集したデータは、例えばナセル3内のサーバ210に集められ、その後ファーム200内でデータを集約する集約サーバ220を経て、複数ファームのデータを集約する中央サーバ240に送られる。
また、集約されるデータとしては、潤滑油に関するデータだけでなく、風力発電機の稼動状況を示すデータを含めてもよい。例えば、風力発電機1の振動を検知する加速度センサ(大きいほど潤滑油の劣化速度大)、風車出力値(大きいほど潤滑油の劣化速度大)、実稼働時間(長いほど潤滑油の劣化速度大)、機械温度(高いほど潤滑油の劣化速度大)、軸の回転速度(速いほど潤滑油の劣化速度大)、潤滑油の温度(高いほど潤滑油の劣化速度大)等である。これらは、風力発電機の各所に設置された公知の構成のセンサや、装置の制御信号から収集することができる。
(3.潤滑油診断のフロー)
図7は、実施例1による潤滑油診断処理を示すフロー図である。図7で示す処理は、図5のサーバ210、集約サーバ220、中央サーバ240のいずれかのコントロール下で行われる。以下の例では中央サーバ240が行うものとする。計算や制御等の機能は、サーバの記憶装置に格納されたソフトウェアがプロセッサによって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現される。なお、ソフトウェアで構成した機能と同等の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアでも実現できる。
中央サーバ240が制御を行う場合、配下に複数の風力発電機1を持つため、以下の処理は風力発電機ごとに行うものとする。この処理は基本的に繰り返し処理であり、開始タイミングはタイマーなどで設定され、例えば、毎日0時に処理を開始する(S601)。また、中央サーバ240が、オペレータの指示により任意のタイミングで行うこともできる。
処理S602では、中央サーバ240は、潤滑油の交換時期をチェックする。交換時期の初期値は、例えば潤滑油が設計温度で動作しているという前提で、余寿命を初期設定する。この交換時期は、実測データに基づいて、後に処理S610で更新され得る。
潤滑油の交換時期であった場合には、処理S603で潤滑油交換を行う。潤滑油交換は通常は、作業員による作業となるため、中央サーバ240は交換を行うべき時期と対象を作業員に指示するための表示や通知を行う。
潤滑油の交換時期でない場合には、処理S604で、中央サーバ240は潤滑油の性状をセンサデータにより診断する。センサデータとしては光学式センサで得られる潤滑油の色度情報に加えて、温度、油圧、潤滑油に含まれる粒子の濃度等を用いることができる。センサ群304で測定されたデータは、中央サーバ240に送られ、例えば中央サーバが、センサから得られたパラメータを事前に定めた基準値と比較することにより、潤滑油の特性を評価する。中央サーバには、図2〜図4に示した色度と添加剤濃度の相関、潤滑油中の添加剤が消耗(添加剤が分解して酸化生成物を生成)した際のR、G、Bの各値の変化、潤滑油中に摩耗粉が生成した際のR、G、Bの各値の変化を予め記憶させておき、センサデータとの比較に用いるものとする。この基準値には、予め定められた閾値の他、予め定められた単位時間当たりのセンサ情報の変化量を用いることができる。
処理S605、S606で診断の結果が異常であれば、処理S603で潤滑油交換を行う。異常がなければ、処理S609を行う。処理S605では、例えば、光学式センサのR、G、B、のすべての値が所定の閾値よりも低下している場合には汚染異常有りと判断する。ただし、汚染異常については従来のセンサのデータも合わせて用いてもよい。S606では、図2〜図4に示す添加剤濃度と色度の相関を用いて、光学式センサで測定した色度により求められる添加剤濃度が所定の閾値よりも低下した場合に添加剤劣化度異常有りと判断する。なお、色度により添加剤濃度を求めることなく、色度が所定の閾値よりも小さくなった場合に添加剤劣化度異常有りと判断することも可能である。
処理S609では、中央サーバ240に色度測定データなどを入力し、当該データは時系列的に保存される。
風力発電機の予防的保全、計画的な保守という観点からすれば、異常有りと判断される前に、潤滑油に含まれる添加剤の濃度の推移に基づき潤滑油の劣化について予兆診断を行うことが望ましい。
以上のように、添加剤濃度測定結果を用いて潤滑油中の添加剤の消耗速度を知ることにより、潤滑油の寿命を早期検出できる。このため、適切な潤滑油交換等のメンテナンスにより、風力発電機の異常を未然に防止することができる。また、潤滑油の交換周期を最適化することも可能である。また、添加剤濃度を簡易な方法により測定することができ、光学式センサをナセル内に設置すれば潤滑油中の添加剤の劣化をオンライン遠隔監視することも可能となる。
なお、実施例1では、光学式センサで測定された色度に基づき、オンラインにより、摩耗粉による汚染の予兆診断や、水混入の予兆診断も可能である。また、潤滑油の交換周期を最適化することも可能である。また、添加剤濃度を簡易な方法により測定することができ、光学式センサをナセル内に設置すれば潤滑油中の添加剤の劣化をオンライン遠隔監視することも可能である。
図8は、センサ群304が、主流路に設けられた例である。センサ群304が、オイルフィルタ305の直前に設置されているため、潤滑油中の気泡が体積比率10vol%以下と少なく、潤滑油性状を正しく計測できた。なお、流路中の、オイルフィルタ305のすぐ下流、かつ、潤滑油タンク37の手前の位置では、潤滑油中の気泡量が増加し、25vol%であった。油温は50℃、センサ群304の位置での流量は毎分100Lであった。なお、流量が毎分5Lから500Lの範囲でも、効果が得られることを確認した。
図9は、センサ群304が、増速機33に接続している、深さ70cmの潤滑油タンク37の底部(タンク底面から上方10cmの位置)に設けられた例である。気泡は自然に上に移動するため、タンク上部より下部の気泡が少ないと考えられる。センサ群304が潤滑油面の下方約60cmの位置は、潤滑油中の気泡が5vol%以下と少なく、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できた。
センサ群304の位置は、潤滑油タンク37の底に近いほうが気泡が少ないため効果的である。例えば、センサ群304は潤滑油タンク37における潤滑油深さの半分より低い箇所に配置される。理想的には潤滑油タンク37の底部であり、センサ群304の設置スペースを考慮すれば、潤滑油タンク底面から上方30cm以内の位置がよい。
以降の実施例では、実施例1〜3のセンサ配置に加えて、積極的に泡を除去する手段を設けた例を説明する。ただし、実施例1〜3のセンサ配置の代わりに、実施例4以降の積極的に泡を除去する手段を採用しても、測定精度を向上させる効果はあると考えられる。
図10は、センサ群304が、主流路から分岐された流路に設けられ、センサの直前にサイクロン式の気泡除去装置1000を設置した例である。気泡を20vol%以上含んだ潤滑油が、気泡除去装置1000通過後には気泡量が5vol%以下となり、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できた。
図11は、センサ群304が、主流路に設けられ、センサ群304のセンサの直前にサイクロン式の気泡除去装置1000を設置した例である。気泡を20vol%以上含んだ潤滑油が、気泡除去装置1000通過後には気泡量が5vol%以下となり、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できた。気泡除去装置1000としては、気泡を含む液体をサイクロン室に導入し、流体を旋回流にして、遠心力により気泡を集合させ分離除去するもの等が知られている。
本実施例では、油温は50℃、センサ群304の位置での流量は毎分100Lであった。なお、流量が毎分5Lから500Lの範囲でも、効果が得られることを確認した。なお、本実施例では、気泡除去装置1000とセンサ群304以外の部品の相対位置が変わっても、同様の効果が得られることを確認した。
図11の例では、潤滑油タンク37の下流かつセンサ群304の上流に、ポンプなどの潤滑油供給デバイス301を配置しており、ポンプの圧力を気泡除去に有効に利用することができる。
図10や図11に示すように、センサ群304と気泡除去装置1000の両方を備える場合には、図11に示すように、センサ群304と気泡除去装置1000を一体化してモジュール1100としてもよい。モジュール化しておくと、主流路や分岐した流路に設置することが簡単であり、センサ群の測定精度を容易に向上させることができる。
本実施例では、超音波を用いて泡を除去する手段を用いる。気泡を含む潤滑油に超音波を照射すると、潤滑油中に高圧部と低圧部が交互に存在することになり、低圧部では気体が膨張し、その気体が圧力の低い部分にさらに集まることとなり、気泡が大きくなっていく。気泡がある程度の大きさに成長すると潤滑油面に浮いてくるので、気泡の除去が可能となる。
図12は、センサ群304が、主流路から分岐された流路に設けられ、センサ群304の直前10cmの位置に、超音波発生装置1001を設置する例である。超音波発振周波数は40kHz、最大振幅は60μmである。気泡を20vol%以上含んだ潤滑油が、超音波発生装置1001による超音波照射後には気泡量が5vol%以下となることが期待でき、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できる。発振周波数20kHzの超音波を照射した場合にも、同様の効果が得られると考えられる。
図13は、センサ群304が、主流路に設けられ、センサ群304の直前10cmの位置に超音波発生装置1001を設置する例である。超音波発振周波数は40kHz、最大振幅は60μmである。気泡を20vol%以上含んだ潤滑油が、超音波発生装置1001による超音波照射後には気泡量が5vol%以下となることが期待でき、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できる。発振周波数20kHzの超音波を照射した場合にも、同様の効果が得られると考えられる。
本実施例では、油温は45℃、センサ群304の位置での流量は毎分200Lとした。なお、流量が毎分5Lから500Lの範囲でも、効果が得られると考えられる。なお、本実施例では、気泡除去装置1000とセンサ群304以外の部品の相対位置が変わっても、同様の効果が得られると考えられる。
図12や図13に示すように、センサ群304と超音波発生装置1001の両方を備える場合には、センサ群304と超音波発生装置1001を一体化してモジュールとしてもよい。モジュール化しておくと、主流路や分岐した流路に設置することが簡単であり、センサ群の測定精度を容易に向上させることができる。
本実施例では、赤外線による加熱により泡を除去する手段を用いる。潤滑油を加熱することで、潤滑油の粘性の低下と気泡の膨張とにより気泡の上昇速度を増加させて、溶液から気泡を除去する。
図14は、センサ群304が、主流路から分岐された流路に設けられ、センサ群304の直前に赤外線発生装置1002を設置した例である。赤外線の出力は500Wである。気泡を30vol%以上含んだ潤滑油が、赤外線発生装置1002による赤外線照射後には気泡量が5vol%以下となり、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できる。
図15は、センサ群304が、主流路に設けられ、センサ群304の直前に赤外線発生装置1002を設置した例である。赤外線の出力は500Wである。気泡を30vol%以上含んだ潤滑油が、赤外線発生装置1002による赤外線照射後には気泡量が5%以下となることが期待でき、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できると考えられる。
本実施例では、油温は45℃、センサ群304の位置での流量は毎分200Lである。なお、流量が毎分5Lから500Lの範囲でも、効果が得られると考えられる。なお、本実施例では、気泡除去装置1000とセンサ群304以外の部品の相対位置が変わっても、同様の効果が得られると考えられる。
本実施例では、実施例6の赤外線の代わりに、ヒーターを用いて潤滑油を加熱する。
図16は、センサ群304が、主流路から分岐された流路に設けられ、センサ群304の直前にヒーター1003を設置した例である。ヒーターの容量は1kWである。気泡を20vol%以上含んだ潤滑油がヒーター1003による加熱後には気泡量が5%以下となることが期待でき、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できる。
図17は、センサ群304が、主流路に設けられ、センサ群304の直前にヒーター1003を設置した例である。ヒーターの容量は1kWである。気泡を20vol%以上含んだ潤滑油が、ヒーター1003による赤外線照射後には気泡量が5%以下となることが期待でき、センサ群304によって潤滑油性状を正しく計測できると考えられる。
本実施例では、油温は45℃、センサ群304の位置での流量は毎分200Lである。なお、流量が毎分5Lから500Lの範囲でも、効果が得られると考えられる。なお、本実施例では、気泡除去装置1000とセンサ群304以外の部品の相対位置が変わっても、同様の効果が得られると考えられる。
図14〜図17に示すように、センサ群304と加熱手段の両方を備える場合には、センサ群304と加熱手段を一体化してモジュールとしてもよい。モジュール化しておくと、主流路や分岐した流路に設置することが簡単であり、センサ群の測定精度を容易に向上させることができる。
以上詳細に説明した実施例では、潤滑油性状の状態を直接検知可能なセンサ計測を正確に行うことができる。潤滑油性状センサから出力される情報に基づいて、潤滑油採取を伴う詳細な潤滑油分析の必要性の有無を的確に判断することができる。よって、潤滑油交換周期の最適化と、風車の信頼性向上、風車発電量向上を図ることができる。
上記実施例では、光学的な色度センサを例に説明したが、本発明は色度センサの他、パーティクルカウンタ、誘電率センサ、導電率センサ、粘度センサなど、気泡により測定値が影響を受け得るセンサについて有効である。
具体的な実施例では、潤滑油中の泡の量を減らして測定する、あるいは、泡の量の少ない条件で測定することにより、潤滑油の特性を精度よく測定することが可能となる。また、潤滑油中の気泡の割合が多くなると、潤滑性能の低下、潤滑油による冷却性能の低下、エネルギー利用効率の低下、などの弊害が生じる。冷却性能が低下すると、アレニウス則により高価な機械部品材料の経年劣化が加速され、機械の寿命が縮まる。たとえば、風車の場合では、発電量の低下、風車稼働率低下につながり、空気圧縮機の場合では、機械の寿命が短くなり、消費電力が大きくなる。上記説明した実施例に拠れば、風車の増速機中の気泡を積極的に除去することにより、増速機の寿命を延ばし、風車の発電量および稼働率が向上する、風力発電システムおよび方法を提供することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
例えば、上述の実施例では、回転機械として風力発電機を例にとり説明したが、原子力発電機、火力発電機、ギヤードモータ、鉄道車両車輪フランジ、空気圧縮機、変圧器、可動プラント機械、大型ポンプ機械などの回転機械の潤滑油の添加剤の劣化診断にも本発明は適用できる。
1:風力発電機、2:タワー、3:ナセル3、4:ハブ、5:ブレード、33:増速機、34:発電機、210:サーバ、220:集約サーバ、230:ネットワーク、240:中央サーバ、301:潤滑油供給デバイス、302:回転機械、303:測定部、901:第1のセンサ情報、902:第2のセンサ情報、903:第3のセンサ情報、2401:CPU、2402:記憶装置、2403:メモリ、2404:状態判別プログラム、2405:採取要否判別プログラム、2406:報告部

Claims (15)

  1. 潤滑油使用機器と、
    前記潤滑油使用機器に供給される潤滑油を貯留するための潤滑油タンクと、
    前記潤滑油タンクと前記潤滑油使用機器との間で循環される潤滑油が流れる循環ラインと、
    前記潤滑油を前記潤滑油使用機器に向かって循環させるため前記循環ライン内に設けられたポンプと、
    前記循環ライン中に配置されたフィルタと、
    前記潤滑油の特性を測定するセンサと、を備え、
    前記センサは、前記ポンプから前記フィルタへ向かって前記潤滑油が流れる経路中において、前記フィルタ直後の位置よりも油圧が高い箇所、あるいは、前記潤滑油タンクにおける潤滑油深さの半分より低い箇所に配置される、
    潤滑油の診断システム。
  2. 前記センサは、前記ポンプから前記フィルタへ向かって前記潤滑油が流れる経路中において、前記フィルタ直後の位置よりも油圧が高い箇所であって、前記フィルタ直後の位置よりも油圧が0.02MPa以上高い場所に設けられている、
    請求項1記載の潤滑油の診断システム。
  3. 前記センサが、色度センサ、パーティクルカウンタ、誘電率センサ、導電率センサ、粘度センサ、の中から選ばれた、1つ以上のセンサである、
    請求項1記載の潤滑油の診断システム。
  4. 前記センサは、前記潤滑油タンクにおける潤滑油深さの半分より低い箇所であって、潤滑油タンク底面から上方30cm以内に配置される、
    請求項1記載の潤滑油の診断システム。
  5. 前記ポンプと前記センサの間に、
    潤滑油中の気泡を除去するための、気泡除去装置を有する、
    請求項1記載の潤滑油の診断システム。
  6. 前記気泡除去装置は、遠心力を利用したサイクロン式、超音波式、赤外線あるいはヒーターを用いた加熱式、の中から選ばれた、1つ以上の装置である、
    請求項5記載の潤滑油の診断システム。
  7. 前記センサは、前記ポンプから前記フィルタへ向かって前記潤滑油が流れる経路中において、前記フィルタ直後の位置よりも油圧が高い箇所であって、前記循環ラインから分岐して該循環ラインと並列に配置された分岐ラインに設けられている、
    請求項1記載の潤滑油の診断システム。
  8. 前記分岐ライン中の前記センサの上流に、潤滑油中の気泡を除去するための、気泡除去装置を有する、
    請求項7記載の潤滑油の診断システム。
  9. 前記潤滑油使用機器は、風力発電機の回転機械である、
    請求項1記載の潤滑油の診断システム。
  10. 風車ロータの回転エネルギーを発電機に伝えるための、少なくとも潤滑油使用機器を有する増速機と、
    前記潤滑油使用機器に供給される潤滑油を貯留するための貯留タンクと、
    前記貯留タンクと前記潤滑油使用機器との間で循環される潤滑油が流れる循環ラインと、
    前記潤滑油を循環させるための前記循環ライン内に設けられたポンプと、
    前記循環される潤滑油の固形分を除去するためのフィルタと、
    前記ポンプと前記フィルタとの間で、かつ、前記フィルタ直後の位置よりも油圧が高い場所に設けられ、前記潤滑油の性状を測定するセンサと、
    を有することを特徴とする風力発電機。
  11. 前記センサは、前記フィルタ直後の位置よりも油圧が0.02MPa以上高い場所に設けられる、
    請求項10記載の風力発電機。
  12. 前記ポンプと前記センサの間に、
    潤滑油中の気泡を除去するための、気泡除去装置を有する、
    請求項10記載の風力発電機。
  13. 前記循環ラインから分岐し、該循環ラインと並列に配置される分岐ラインを有し、
    前記センサと気泡除去装置は、前記分岐ライン中に設けられる、
    請求項12記載の風力発電機。
  14. 前記センサと気泡除去装置は、一体化されたモジュールで構成される、
    請求項12記載の風力発電機。
  15. 色度センサ、パーティクルカウンタ、誘電率センサ、導電率センサ、粘度センサ、の中から選ばれた、1つ以上のセンサと、
    遠心力を利用したサイクロン式、超音波式、赤外線あるいはヒーターを用いた加熱式、の中から選ばれた、1つ以上の気泡除去装置とが、
    一体化されてなる、潤滑油の性状測定用モジュール。
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