JP2020072565A - 保護継電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置コストを増大させることなく、地絡や短絡による事故を精度よく検出することができる保護継電装置を提供することである。【解決手段】実施形態の保護継電装置は、基準値取得部と、校正対象値取得部と、校正部と、判定部とを持つ。前記基準値取得部は、電力系統における所定の保護区間に設けられた送電線の一端を流れる電流の電流値である基準電流値を取得する。前記校正対象値取得部は、前記送電線の他端に設けられた電流測定器により測定された校正対象電流値を取得する。前記校正部は、前記基準値取得部により取得された前記基準電流値に基づいて、前記校正対象値取得部により取得された前記校正対象電流値を校正する。前記判定部は、前記基準値取得部により取得された前記基準電流値と、前記校正部により校正された校正後の前記校正対象電流値との電流差に基づいて、前記保護区間における事故の有無を判定する。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、保護継電装置に関する。
電力系統を保護するために、保護区間に含まれる送電線を流れる電流を測定して保護区間における地絡や短絡による事故の有無を検知する保護継電システムがある。保護継電システムにおいては、地絡や短絡を精度よく検出するために、多数の電流測定器を送電線に取り付けることが効果的であるが、装置コストが増大する要因となっていた。
本発明が解決しようとする課題は、装置コストを増大させることなく、地絡や短絡による事故を精度よく検出することができる保護継電装置を提供することである。
実施形態の保護継電装置は、基準値取得部と、校正対象値取得部と、校正部と、判定部とを持つ。前記基準値取得部は、電力系統における所定の保護区間に設けられた送電線の一端を流れる電流の電流値である基準電流値を取得する。前記校正対象値取得部は、前記送電線の他端に設けられた電流測定器により測定された校正対象電流値を取得する。前記校正部は、前記基準値取得部により取得された前記基準電流値に基づいて、前記校正対象値取得部により取得された前記校正対象電流値を校正する。前記判定部は、前記基準値取得部により取得された前記基準電流値と、前記校正部により校正された校正後の前記校正対象電流値との電流差に基づいて、前記保護区間における事故の有無を判定する。
以下、実施形態の保護継電装置を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態の保護継電装置30が適用される保護継電システム1の構成例を示すブロック図である。保護継電システム1は、例えば、電力系統に設けられた送電線2と、電流測定器10と、電流測定器20と、保護継電装置30とを備える。
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態の保護継電装置30が適用される保護継電システム1の構成例を示すブロック図である。保護継電システム1は、例えば、電力系統に設けられた送電線2と、電流測定器10と、電流測定器20と、保護継電装置30とを備える。
図1に示すように、保護継電システム1において、送電線2の保護区間Xの両端に電流測定器10及び電流測定器20が設けられる。
電流測定器10は、送電線2に従来設けられていた電流測定器であり、例えば、抵抗による電圧降下の測定や、巻線型の変流器を用いた測定器である。このような従来の電流測定器においては、変流器により送電線2を流れる大電流を測定可能な小電流に変換し、変換した小電流の電流値を電流測定器10により測定する。電流測定器10は、測定した電流値を保護継電装置30に出力する。
電流測定器20は、電流測定器10より安価な電流測定器であり、例えば、ホール効果やファラデー効果を用いて、電流により生じる磁界を測定するタイプの電流測定器である。電流測定器20は、測定した電流値を保護継電装置30に出力する。
保護継電装置30は、電流測定器10及び電流測定器20により測定された測定値に基づいて、保護区間Xにおける事故の有無を判定し、事故が有った場合にその旨を示す事故信号を外部に出力する。
ここで、本実施形態における保護継電システム1は、保護区間Xの両端を流れる電流の電流差(差動電流)に基づいて、保護区間Xの事故の有無を判定する差動継電型の保護システムである。
一般に、送電線2には浮遊容量3(浮遊容量3−1〜3−3)が存在し、送電線2を流れる電流の一部が充電電流となって浮遊容量3に充電されてしまう。また、浮遊容量3以外にもコロナ放電が発生する等の現象により、漏れ電流が生じることもある。このため、地絡や短絡が発生していなくとも保護区間Xの両端において流れる電流に差が生じ、地絡や短絡との判別が難しくなり、差動電流に基づいて地絡や短絡による事故を検出する感度が劣化する要因となる。通常、浮遊容量3は、保護区間Xの距離が長くなる程、浮遊容量3が大きくなる。このため、差動電流を検出する精度を向上させるためには保護区間Xの距離を短くすることが効果的である。保護区間Xの距離を短くすることで、事故の発生箇所を詳細に特定することができ、迅速に復旧させることが可能となる。その一方、保護区間Xの距離を短くすると保護区間Xの両端を流れる電流を測定するための電流測定器が多数必要となる。
本実施形態では、電流測定器を多数設けることに起因する装置コストの増大を抑制するために、保護区間Xの両端に設ける電流測定器のうちの一方を従来の電流測定器(例えば、電流測定器10)、他方を安価な電流測定器(例えば、電流測定器20)とする。ここで、従来の電流測定器は、高精度に電流値を測定することができるが、特に測定対象の送電線2における電圧が高い場合には測定器の価格が高くなる。また、安価な電流測定器は、電流により生じる磁界を測定対象としているため、電流との測定器との距離によって測定結果に変化が生じ、高精度に電流値を測定することが困難である。
そこで、本実施形態では、安価な電流測定器の測定値の精度を向上させるために、保護継電装置30が従来の電流測定器の測定値に基づいて、安価な電流測定器の測定値を校正する。以下、保護継電装置30について詳しく説明する。
保護継電装置30は、例えば、基準値取得部301と、校正対象値取得部302と、校正部303と、差動継電部304と、校正情報記憶部305とを備える。ここで、差動継電部304は、「判定部」の一例である。
保護継電装置30を構成するこれらの機能部は、例えば、CPUなどのプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。
基準値取得部301は、電流測定器10により測定された電流値を取得する。ここで、電流測定器10により測定された電流値は、上述した通り、送電線2における電流測定器10が設けられた箇所を流れる電流値を変流器により変換した小電流の電流値である。基準値取得部301は、取得した電流値を用いた演算を行うことにより、送電線2における電流測定器10が設けられた箇所を流れる電流値を取得する。すなわち、基準値取得部301は、保護区間Xに設けられた送電線2の一端を流れる電流の電流値を取得する。基準値取得部301は、取得した電流値を校正部303及び差動継電部304に出力する。ここで、基準値取得部301により取得された電流値は、電流測定器20により測定された電流値を校正する際の基準として用いられる。以下の説明では、基準値取得部301により取得された電流値を、「基準電流値」と称する。
校正対象値取得部302は、電流測定器20により測定された電流値、つまり保護区間Xに設けられた送電線2の他端に設けられた電流測定器により測定された電流値を取得する。基準値取得部301は、取得した電流値を示す情報を校正部303及び差動継電部304に出力する。ここで、校正対象値取得部302により取得された電流値は、校正の対象となる電流値である。以下の説明においては、校正対象値取得部302により取得された電流値を「校正対象電流値」と称する。
校正部303は、基準電流値に基づいて、校正対象電流値を校正する。校正部303は、校正後の電流値を示す情報を差動継電部304に出力する。校正部303による校正方法については後述する。
差動継電部304は、基準値取得部301により取得された基準電流値と、校正部303により校正された校正後の校正対象電流値との電流差に基づいて、保護区間Xの事故の有無を判定する。差動継電部304は、保護区間Xにおいて事故が発生したと判定した場合、その旨を示す事故信号を外部に出力する。差動継電部304による保護区間Xの事故の有無を判定する方法については後述する。
校正情報記憶部305は、校正情報を記憶する。校正情報は、校正に用いた種々の情報であって、例えば、校正前の電流値、校正後の電流値、校正係数などである。校正係数は、校正前後の電流値の関係を示す係数であり、例えば、校正前の電流値に対する校正後の電流値の比率である。校正情報は、校正部303により校正対象電流値が校正された場合に校正情報記憶部305に記憶される。
ここで、校正部303による校正方法について図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態の保護継電装置30による校正動作の例を示す図である。図2では、基準電流値と校正後の校正対象電流値の時系列変化を模式的に示している。図2の横軸は時間、縦軸は電流値を示す。時間T1〜T8は、保護継電装置30の各機能部の処理タイミングを示しており、各処理タイミングの間の電流値は、その前後の処理タイミングで取得された値から補間した値を示している。
図2に示すように、基準電流値と校正後の校正対象電流値とは一致せずに差が生じる。これは、電流測定器10の精度と比較して、電流測定器20の精度が低いためである。また、校正の処理のタイミングである時間T1〜T8において、校正部303による校正が行われ、基準電流値と校正後の校正対象電流値とは一致した後にも、徐々に両者に差が生じている。これは、電流測定器20の精度が安定せず徐々に変化するためである。なお、この例では、地絡や短絡による事故が発生していない通常の状態(通常状態)において、校正対象電流値が基準電流値と同じ電流値となるように校正される例を示している。
一般に、地絡や短絡による事故が発生していない通常の状態において、送電線2を流れる電流が大きく変化することがない。図2の例においても、通常状態における時間T1〜T6にかけて徐々に電流値が減少し、時間T6からT7にかけて電流値が増加に転じているが、時間T1〜T7の各時間間隔における電流値の変化量は、事故発生時の変化量の大きさと比較して小さい。このように送電線2を流れる電流が大きく変化していない場合、校正部303は、校正対象電流値が基準電流値と同じ電流値となるように校正する。
具体的に、校正部303は、校正対象値取得部302により前回取得された校正対象電流値と今回取得された校正対象電流値との差分(以下、前回差分とも称する)に基づいて、基準電流値を用いて今回取得された校正対象電流値を校正するか否かを判定する。例えば、校正部303は、前回差分が所定の閾値未満である場合、校正対象電流値が基準電流値と同じ電流値となるように校正する。
一方、図2では、時間T7からT8の間に地絡や短絡による事故が発生している。この場合、事故が発生した後に校正対象電流値が基準電流値と同じ電流値となるような校正は行わない。これは、事故が発生した場合においても通常の状態と同様に校正してしまうと、校正対象電流値が基準電流値と同じ電流値となり、保護区間Xにおける地絡や短絡による事故の有無を判定することができなくなってしまうためである。校正部303は、前回差分が所定の閾値以上である場合、基準電流値を用いた校正を行わず、前回の校正に用いた校正係数を用いて、校正対象電流値を校正する。このように、直近の校正係数を用いることにより、校正後の電流値の精度を高く維持することが可能である。
ここで、校正情報記憶部305に記憶される校正情報について、図3を用いて説明する。図3は、第1の実施形態の校正情報記憶部305に記憶される校正情報の構成例を示す図である。
図3に示すように、校正情報は、例えば、時間、校正前電流値、前回差分、校正判定、校正係数の各項目を備える。時間には校正を行ったタイミングが示される。校正前電流値には電流測定器20により測定された電流値が示される。前回差分には前回取得された電流値との差分が示される。校正判定には校正が基準電流値、或いは前回の校正係数の何れにより行われたかが示される。校正係数には校正に用いた校正係数が示される。この例では、時間T4における前回差分が−5であり、前回差分が所定の閾値未満であるために基準電流値と一致させる校正が行われ、その校正係数が1.03であったことが示されている。また、時間T8における前回差分は−120となり、前回差分が所定の閾値以上であるために前回の校正係数(1.22)を用いた校正が行われたことが示されている。
ここで、差動継電部304による保護区間Xの事故の有無を判定する方法について図4及び図5を用いて説明する。図4は地絡や短絡による事故が発生していない通常時、図5は地絡や短絡による事故が発生した事故時、の各々における送電線2を流れる電流の関係を示す図である。
図4に示すように、通常時において測定点Aを流れる電流の電流値IAと測定点Bを流れる電流の電流値IBとは一致する。これは、キルヒホッフの法則により保護区間Xにおける送電線2を流れる電流量の総和が0(ゼロ)となるためである。
一方、図5に示すように、地絡が発生した場合、その地絡が発生した箇所から電流が漏れ、電流値IFが地面に流れ出てしまう。このため、事故時において測定点Aを流れる電流の電流値IAと測定点Bを流れる電流の電流値IBとは一致しない。
差動継電部304は、この性質を利用して保護区間Xにおける地絡や短絡による事故の有無を判定する。例えば、差動継電部304は、基準電流値と校正後の校正対象電流値との電流差が所定の閾値未満である場合、保護区間Xにおける事故は無いと判定する。差動継電部304は、基準電流値と校正後の校正対象電流値との電流差が所定の閾値以上である場合、保護区間Xにおける事故が発生したと判定する。
なお、地絡や短絡による事故が発生していない場合であっても、例えば大型負荷が送電線2に接続されて電力が大型負荷に供給された場合などにおいて、送電線2を流れる電流の電流値が大きく変化する場合が考えられる。このような場合であっても、校正部303は、前回差分が所定の閾値以上であれば、前回の校正に用いた校正係数を用いて校正対象電流値の校正を行う。或いは、校正部303は、前回差分が所定の閾値未満であれば、校正対象電流値が基準電流値と同じ電流値となるように校正する。そして、差動継電部304は、基準値取得部301により取得された基準電流値と、校正部303により校正された校正後の校正対象電流値との電流差に基づいて、電流差が所定の閾値未満であれば保護区間Xに事故が発生していない判定する。
ここで、保護継電装置30の動作の流れについて図6を用いて説明する。図6は、第1の実施形態の保護継電装置30の動作例を示すフローチャートである。
まず、保護継電装置30は、校正を行う処理タイミングであるか否かを判定し(ステップS1)、処理タイミングでない場合には処理タイミングを待つ。
保護継電装置30は、校正を行う処理タイミングとなったら、基準値取得部301により基準電流値を取得する(ステップS2)と共に、校正対象値取得部302により校正対象電流値を取得する(ステップS3)。
保護継電装置30は、今回取得した校正対象電流値と前回取得した校正対象電流値との差分(前回差分)が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS4)。
保護継電装置30は、前回差分が所定の閾値未満である場合、基準電流値に基づいて、校正対象電流値を校正する(ステップS5)。一方、保護継電装置30は、前回差分が所定の閾値以上である場合、前回の校正係数に基づいて、校正対象電流値を校正する(ステップS8)。
保護継電装置30は、校正に用いた校正情報を校正情報記憶部305に記憶させる(ステップS6)。そして、保護継電装置30は、基準電流値、及び校正後の電流値に基づいて事故の有無を判定する(ステップS7)。
以上説明したように、第1の実施形態の保護継電装置30は、基準電流値に基づいて、校正対象電流値を校正する校正部303を持つことにより、精度が高い電流測定器10の測定値に基づいて取得された電流値を用いて精度が低い電流測定器20により測定された電流値を校正することができる。このため、校正後の電流値の精度を高くすることが可能となる。また、精度が低い電流測定器20は安価であるために装置コストを増加させることがない。
ここで、比較例として、電流測定器20を、電流測定器10と同様な測定器、つまり送電線2に抵抗や変流器を介して電流値を測定する電流測定器とする構成を考える。この場合、送電線2に多数の抵抗や変流器を接続させることになる。このため、装置コストが増大するだけでなく、送電線2に抵抗や変流器が接続させることに起因する事故が発生する可能性があり、測定器自体が事故の原因となることが考えられる。すなわち、比較例のようにやみくもに多数の電流測定器を取り付けることは得策ではなかった。
これに対し、本実施形態では電流測定器20を、電流により生じる磁界を測定するタイプの測定器とすることにより、装置コストが抑制できるだけでなく、測定器を送電線2の電流の経路の近傍に設置するだけでよいために、設置が容易で、測定器自体が事故の原因となることがない。また、設置が容易であるために、既存の電力系統に追加して設置することも容易である。
また、第1の実施形態の保護継電装置30は、今回取得した校正対象電流値と前回取得した校正対象電流値との差分(前回差分)を用いて、基準電流値に基づいて校正対象電流値を校正するか否かを判定することにより、事故が発生して電流値が大きく変化した場合に、基準電流値に基づく校正を行わないようにすることができ、保護区間Xにおいて事故が発生したか否かを判定することが可能となる。
また、第1の実施形態の保護継電装置30は、前回差分が所定の閾値未満である場合に基準電流値に基づいて校正対象電流値を校正し、前回差分が所定の閾値以上である場合に前回の校正係数により校正を行うことにより、事故が発生した後においても校正後の電流値の精度を高く維持することが可能となる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態は、両端に電流測定器10が設けられた保護区間の間に電流測定器20を設けることにより、保護区間を短い距離に分割する点において、上述した実施形態と相違する。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と相違する構成についてのみ説明する。
図7は、第2の実施形態の保護継電装置30Aが適用される保護継電システム1Aの構成例を示すブロック図である。保護継電システム1Aは、例えば、二つの電流測定器10(電流測定器10−1、10−2)と、保護継電装置30Aとを備える。
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態は、両端に電流測定器10が設けられた保護区間の間に電流測定器20を設けることにより、保護区間を短い距離に分割する点において、上述した実施形態と相違する。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と相違する構成についてのみ説明する。
図7は、第2の実施形態の保護継電装置30Aが適用される保護継電システム1Aの構成例を示すブロック図である。保護継電システム1Aは、例えば、二つの電流測定器10(電流測定器10−1、10−2)と、保護継電装置30Aとを備える。
本実施形態では、電流測定器10−1、10−2は、保護区間Xの両端に設けられ、電流測定器10−1と10−2との間に電流測定器20が設けられる。電流測定器10−1と10−2との間に電流測定器20が設けられることで、保護区間Xが、保護区間X1及び保護区間X2に短く分割される。
保護継電装置30Aは、校正部303Aと、差動継電部304Aとを備える。差動継電部304Aは、基準値取得部301−1により取得された基準電流値(以下、第1基準電流値と称する)と、基準値取得部301−2により取得された基準電流値(以下、第2基準電流値と称する)との電流差に基づいて、保護区間Xの事故の有無を判定する。
差動継電部304Aは、保護区間Xにおいて事故が発生したと判定した場合、校正部303Aに事故が発生した旨を示す事故発生信号を出力する。差動継電部304Aは、事故発生信号に対する応答として、校正部303Aから校正後の校正対象電流値を示す電流情報を取得する。差動継電部304Aは、校正後の校正対象電流値に基づいて、保護区間Xにおいて発生した事故が、保護区間X1、保護区間X2の何れの区間で発生したかを判定する。差動継電部304Aは、第1基準電流値と校正後の校正対象電流値との電流差が所定の閾値以上である場合、保護区間X1において事故が発生したと判定する。差動継電部304Aは、校正後の校正対象電流値と第2基準電流値との電流差が所定の閾値以上である場合、保護区間X2において事故が発生したと判定する。差動継電部304Aは、保護区間X1又は保護区間X2において事故が発生したことを示す事故信号を外部に出力する。
校正部303Aは、基準値取得部301−1により取得された第1基準電流値、及び基準値取得部301−2により取得された第2基準電流値に基づいて、校正対象電流値を補正する。校正部303Aは、例えば、第1基準電流値と第2基準電流値の平均値を、第1の実施形態の基準電流値に相当する基準値として用いることにより、校正対象電流値を補正する。なお、第1基準電流値と第2基準電流値の平均値は単純加算平均値であってもよいし、所定の重み付けをした平均値であってもよい。重みづけをした平均値は、例えば、以下の式(1)により導出される。ここで、AVEは重みづけ平均値、I1は第1基準電流値、I2は第2基準電流値、αは重みづけ係数である。また、重み付け係数αは0〜1の任意の実数である。
AVE=α×I1+(1−α)×I2 …(1)
なお、式(1)おける重み付け係数αは、電流測定器10−1、10−2の測定の精度や、保護区間Xにおいて電流測定器10−1が設けられた箇所から電流測定器20が設けられた箇所までの距離と、電流測定器20が設けられた箇所から電流測定器10−2が設けられた箇所からまでの距離との比などに応じて任意に決定されてよい。
以上説明したように、第2の実施形態の保護継電装置30Aは、保護区間Xに事故が有ったと判定した場合に、保護区間Xの両端から内側となる所定箇所を流れる電流の電流値に基づいて、事故が有った個所が保護区間X1側か、保護区間X側の箇所であるかを判定するため、事故が発生した箇所をより精度よく判定することが可能となる。しかも、所定箇所を流れる電流を測定する電流測定器を、電流により生じた磁界を測定するタイプの測定器とし、その測定値を校正することで、測定の精度を高めながらも装置コストを抑制でき、尚且つ既存の設備における追加の設置を容易とすることが可能である。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態は、上述した実施形態が差動継電型の保護システムであるのに対し、距離継電型の保護システムである点において相違する。距離継電型の保護システムにおいては、保護区間に供給される電力の電圧値と電流値とに基づいてインピーダンスを算出し、算出したインピーダンスの変化に基づいて保護区間における事故の有無を判定する。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と相違する構成についてのみ説明する。
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態は、上述した実施形態が差動継電型の保護システムであるのに対し、距離継電型の保護システムである点において相違する。距離継電型の保護システムにおいては、保護区間に供給される電力の電圧値と電流値とに基づいてインピーダンスを算出し、算出したインピーダンスの変化に基づいて保護区間における事故の有無を判定する。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略し、上述した実施形態と相違する構成についてのみ説明する。
図8は、第3の実施形態の保護継電装置30Bが適用される保護継電システム1Bの構成例を示すブロック図である。保護継電システム1Bは、例えば、保護区間に設けられた電圧測定器40(電圧測定器40−1、40−2)と、保護継電装置30Bとを備える。この例では、保護区間Xに電流測定器10と電圧測定器40−1が設けられ、保護区間Yに電流測定器20と電圧測定器40−2が設けられている。
電圧測定器40は、保護区間の送電線2に供給される電力の電圧値を測定する。電圧測定器40は、図示しない電圧計器用変圧器により送電線2に供給される電力の電圧を測定可能な電圧に降下させて測定する。電流測定器10は、測定した電圧値を保護継電装置30Bに出力する。
保護継電装置30Bは、例えば、距離継電部306(距離継電部306−1、306−2)を備える。
距離継電部306−1は、電圧測定器40−1により測定された測定値に基づいて演算を行うことにより、保護区間Xに供給される電力の電圧値を取得する。距離継電部306−1は、基準値取得部301により取得された基準電流値、及び演算により取得した電圧値に基づいてインピーダンスを算出し、算出したインピーダンスの変化に基づいて保護区間Xにおける事故の有無を判定する。距離継電部306−1は、例えば、今回算出したインピーダンスが、前回算出したインピーダンスから所定の閾値以上変化した場合、保護区間Xにおいて事故が発生したと判定する。距離継電部306−1は、保護区間Xにおいて事故が発生したと判定した場合、その旨を示す事故信号を外部に出力する。
距離継電部306−2は、電圧測定器40−2により測定された測定値に基づいて演算を行うことにより、保護区間Yに供給される電力の電圧値を取得する。距離継電部306−2は、校正部303により校正された校正後の校正対象電流値、及び演算により取得した電圧値に基づいてインピーダンスを算出し、算出したインピーダンスの変化に基づいて保護区間Yにおける事故の有無を判定する。距離継電部306−2は、例えば、今回算出したインピーダンスが、前回算出したインピーダンスから所定の閾値以上変化した場合、保護区間Yにおいて事故が発生したと判定する。距離継電部306−2は、保護区間Yにおいて事故が発生したと判定した場合、その旨を示す事故信号を外部に出力する。
以上説明したように、第3の実施形態の保護継電装置30Bは、保護区間に設けられた電圧測定器40と電流測定器10又は電流測定器20の測定値に基づいて保護区間における送電線2に供給される電力のインピーダンスを算出し、算出したインピーダンスの変化に基づいて保護区間における事故の有無を判定する。この場合において、所定の保護区間を流れる電流を測定する電流測定器を、電流により生じた磁界を測定するタイプの測定器とし、その測定値を校正することにより、上述した実施形態の効果と同様の効果を奏する。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。本実施形態は、送電線2が分岐する保護区間における事故の有無を判定する点において上述した実施形態と相違する。
図9は、第4の実施形態の保護区間Xにおける送電線2と測定点との関係を示す模式図である。本実施形態では、送電線2における端部に、測定点A〜測定点Dがそれぞれ設けられている。また、送電線2における端部よりも内側の所定箇所に測定点Eが設けられている。
次に、第4の実施形態について説明する。本実施形態は、送電線2が分岐する保護区間における事故の有無を判定する点において上述した実施形態と相違する。
図9は、第4の実施形態の保護区間Xにおける送電線2と測定点との関係を示す模式図である。本実施形態では、送電線2における端部に、測定点A〜測定点Dがそれぞれ設けられている。また、送電線2における端部よりも内側の所定箇所に測定点Eが設けられている。
本実施形態の保護区間Xを保護する保護継電装置30Cは、例えば差動継電型である。また、測定点A〜測定点Dに設けられる測定器は、従来用いられている電流測定器10である。測定点Aを流れる電流の電流値をIA、測定点Bを流れる電流の電流値をIB、測定点Cを流れる電流の電流値をIC、測定点Dを流れる電流の電流値をID、とすると、地絡や短絡による事故が発生していない通常時において以下の式(2)が成立する。
Idiff=IA+IB+IC+ID=0 …(2)
式(2)を利用して、差動継電部304は、式(2)における電流値Idiffが所定の閾値以上である場合に保護区間Xにおいて事故が発生したと判定する。
一方、測定点Eには、磁界を測定するタイプの電流測定器20が用いられる。測定点Eを流れる電流の電流値をIE、とすると地絡や短絡による事故が発生していない通常時において以下の式(3)が成立する。
IE=IA+IC=−(IB+ID) …(3)
式(3)を利用して、校正部303は、測定点A及び測定点Cの各々に設けられた電流測定器10により測定された測定値に基づいて取得された基準電流値により、上述した実施形態と同様に、電流測定器20により取得された校正対象電流値を校正する。なお、校正部303は、測定点B及び測定点Dの各々に設けられた電流測定器10により測定された測定値に基づいて校正対象電流値を校正するようにしてもよいし、測定点A〜測定点Dの各々に設けられた電流測定器10により測定された測定値に基づいて校正対象電流値を校正するようにしてもよい。
また、式(3)を利用して、差動継電部304は、測定点A及び測定点Cで取得された電流値の和と、測定点Eで計測された電流値の校正後の値との電流差が所定の閾値以上である場合に保護区間X1において事故が発生したと判定する。また、差動継電部304は、測定点B及び測定点Dで取得された電流値の和と、測定点Eで計測された電流値の校正後の値との電流差が所定の閾値以上である場合に保護区間X2において事故が発生したと判定する。
以上説明したように、第4の実施形態の保護継電装置30Cは、送電線2が分岐する保護区間Xにおいて、保護区間Xに設けられた送電線2の端部より内側の所定箇所に電流測定器20を設けることにより、保護区間Xを分割した保護区間X1及び保護区間X2の何れで事故が発生したかを判定することができる。この場合において、所定の箇所を流れる電流を測定する電流測定器を、電流により生じた磁界を測定するタイプの測定器とし、その測定値を校正することにより、上述した実施形態の効果と同様の効果を奏する。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、基準電流値に基づいて校正対象電流値を校正する校正部303を持つことにより、精度が低い電流測定器20により測定された電流値を校正することができる。このため、校正後の電流値の精度を高くすることが可能となる。また、精度が低い電流測定器20は安価であるために装置コストを増加させることがない。
実施形態による保護継電システムは、特にホール効果やファラデー効果を用いて、送電線2の電流路の近傍の磁界を測定する事により、当該電流路を流れる電流の電流値を測定する方法を用いるときに効果的である。このようなホール効果やファラデー効果を用いて測定する方法は、従来の巻線型の変流器やロゴスキーコイルのように電流路の回りにセンサ部分を周回させる必要がなく、また、シャント抵抗器のように主回路を切断する必要もないため、取り付けが容易で、特に既存設備に電流測定点を追加したい場合に効果的である。しかしながら、電流により生じる磁界は、図10に示すように距離の2乗に反比例し、支持部材の熱膨張や変形によって電流路との距離が変化する。このため、磁界を測定するタイプの電流計測器は、測定の精度が変動し易く、高精度に測定することが難しいという課題があった。実施形態の保護継電システムを採用することにより、熱膨張や変形による測定の精度の変化を常に校正しながら使用することで、測定誤差に起因する事故判定の精度の劣化を抑制して測定の精度を高め、精度よく事故判定をおこなうことができる保護継電システムが実現可能となる。また、保護区間における測定点を増加させることにより、事故が発生した箇所の特定が容易となり、保護区間を復旧させるまでの時間を短縮することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…保護継電システム、2…送電線、10…電流測定器、20…電流測定器20、30…保護継電装置、301…基準値取得部、302…校正対象値取得部、303…校正部、304…差動継電部、305…校正情報記憶部、306…距離継電部、40…電圧測定器
Claims (5)
- 電力系統における所定の保護区間に設けられた送電線の一端を流れる電流の電流値である基準電流値を取得する基準値取得部と、
前記送電線の他端に設けられた電流測定器により測定された校正対象電流値を取得する校正対象値取得部と、
前記基準値取得部により取得された前記基準電流値に基づいて、前記校正対象値取得部により取得された前記校正対象電流値を校正する校正部と、
前記基準値取得部により取得された前記基準電流値と、前記校正部により校正された校正後の前記校正対象電流値との電流差に基づいて、前記保護区間における事故の有無を判定する判定部と、
を備える保護継電装置。 - 前記校正部は、前記校正対象値取得部により前回取得された前記校正対象電流値と今回取得された前記校正対象電流値との前回差分に基づいて、前記基準電流値を用いて今回取得された前記校正対象電流値を校正するか否かを判定し、判定した結果に基づいて前記校正対象電流値を校正する、
請求項1に記載の保護継電装置。 - 前記校正部は、前記前回差分が所定の閾値未満である場合に前記基準電流値を用いて前記校正対象電流値に校正し、前記前回差分が所定の閾値以上である場合に前記校正対象値取得部により前回取得された前記校正対象電流値の校正に用いた校正情報を用いて前記校正対象電流値を校正する、
請求項2に記載の保護継電装置。 - 電力系統における所定の保護区間に設けられた送電線の一端を流れる電流の電流値である第1基準電流値を取得する第1基準値取得部と、
前記送電線の他端を流れる第2基準電流値を取得する第2基準値取得部と、
前記送電線の両端より内側の所定箇所に設けられた電流測定器により測定された校正対象電流値を取得する校正対象値取得部と、
前記第1基準値取得部により取得された前記第1基準電流値及び前記第2基準値取得部により取得された前記第2基準電流値に基づいて、前記校正対象値取得部により取得された前記校正対象電流値を校正する校正部と、
前記第1基準値取得部により取得された前記第1基準電流値と、前記第2基準値取得部により取得された前記第2基準電流値との電流差に基づいて前記保護区間における事故の有無を判定し、前記保護区間に事故が有ったと判定した場合に、前記校正部により校正された校正後の前記校正対象電流値に基づいて、事故が有った個所が前記送電線における前記所定箇所から見て送電線の一端側の箇所であるか、他端側の箇所であるかを判定する判定部と、
を備える保護継電装置。 - 電力系統における所定の第1保護区間の送電線を流れる電流の電流値である基準電流値を取得する基準値取得部と、
前記第1保護区間とは異なる第2保護区間の送電線に設けられた電流測定器により測定された校正対象電流値を取得する校正対象値取得部と、
前記基準値取得部により取得された前記基準電流値に基づいて、前記校正対象値取得部により取得された前記校正対象電流値を校正する校正部と、
前記校正部により校正された校正後の前記校正対象電流値、及び前記第2保護区間の送電線に印加された電圧値を用いて算出されるインピーダンスに基づいて、前記第2保護区間における事故の有無を判定する判定部と、
を備える保護継電装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018205282A JP2020072565A (ja) | 2018-10-31 | 2018-10-31 | 保護継電装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018205282A Pending JP2020072565A (ja) | 2018-10-31 | 2018-10-31 | 保護継電装置 |
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JP (1) | JP2020072565A (ja) |
Cited By (1)
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CN111766431A (zh) * | 2020-06-11 | 2020-10-13 | 积成电子股份有限公司 | 一种免二次校准的交流电压、电流复用采集方法及系统 |
-
2018
- 2018-10-31 JP JP2018205282A patent/JP2020072565A/ja active Pending
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CN111766431A (zh) * | 2020-06-11 | 2020-10-13 | 积成电子股份有限公司 | 一种免二次校准的交流电压、电流复用采集方法及系统 |
CN111766431B (zh) * | 2020-06-11 | 2023-03-21 | 积成电子股份有限公司 | 一种免二次校准的交流电压、电流复用采集方法及系统 |
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