<第1実施例>
図1を参照して、第1実施例の匂い提示システム10は、第1制御装置12を含み、第1制御装置12は、入力装置14、磁気共鳴画像装置(以下、「MRI装置」という)16、信号処理回路18および匂い提示装置22に接続される。また、信号処理回路18は、呼吸センサ20に接続される。
なお、図1に示す匂い提示システム10の電気的な構成は単なる一例であり、限定されるべきでない。たとえば、第1制御装置12は表示装置に接続されてもよい。
第1制御装置12は、汎用のパーソナルコンピュータまたはワークステーションなどのコンピュータであり、CPU30を含む。CPU30は、内部バス32を介して、ROM34、RAM36、HDD38、入力インターフェース(以下、「入力IF」という)40および通信IF42に接続される。
CPU30は、第1制御装置12の全体的な制御を司る。ROM34は、不揮発性のメモリであり、主として、第1制御装置12のブートプログラム(起動プログラム)を記憶する。RAM36は、揮発性のメモリであり、CPU30のワーキング領域およびバッファ領域として使用される。HDD38は、不揮発性のメモリであり、第1制御装置12の主記憶装置であり、オペレーティングシステムおよび各種のアプリケーションプログラム(後述する、制御プログラムを含む)を記憶する。
図1に示すように、入力装置14、MRI装置16および信号処理回路18は入力IF40に接続され、匂い提示装置22は、通信IF42に接続される。
入力IF40は、入力装置14からの入力信号または操作信号、MRI装置16からのMRI同期トリガ信号および信号処理回路18からの呼吸トリガ信号を受信して、各信号をCPU30に入力する。
通信IF42は、他のコンピュータと通信するためのインターフェイス(または通信モジュール)である。この第1実施例では、第1制御装置12のCPU30は、匂い提示装置22(第2制御装置220)のプロセッサ(たとえば、CPU)との間で通信する。
入力装置14は、キーボード、コンピュータマウスおよびタッチパッド(またはタッチパネル)の少なくとも1つである。
MRI装置16は、汎用のMRI装置であり、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging:機能的磁気共鳴画像法)による機能画像に基づいて、被験者の脳の活動を測定する。ここで、fMRIとは、MRI(核磁気共鳴)を利用して、人間の脳または脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法を意味する。この第1実施例では、被験者である人間の血流変化に基づく脳活動が測定される。つまり、fMRI信号(またはBOLD信号)が検出される。
この第1実施例では、機能画像は、被験者の頭部(顎先から頭頂まで)を、第1所定時間(2秒)の間に、所定枚数(50〜70枚)撮影される。ただし、撮影位置は、機能画像を1枚撮影する毎に変化(または移動)され、2秒間で顎先から頭頂まで移動される。たとえば、撮影枚数が60枚とすると、1/30秒毎に、1枚の機能画像が撮影される。つまり、MRI装置16では、被験者の頭部を2秒間で一回スキャンし、その間に複数枚の機能画像が撮影される。そして、MRI装置16では、スキャンする動作が複数回繰り返し実行される。この明細書においては、一回のスキャンにおいて複数枚の機能画像を撮影することを「撮影処理」と呼び、それを複数回繰り返す全体の処理のことを「測定処理」と呼ぶことにする。
なお、脳の活動の測定自体は、本願発明の本質的な内容では無く、既に周知であるため、測定方法等についての詳細な説明については省略する。
信号処理回路18は、呼吸センサ20から出力される呼吸信号を、増幅する増幅器と、増幅器で増幅された呼吸信号から吸気の開始するタイミング(以下、「開始時」という)でハイレベルとなるパルス信号(以下、「呼吸トリガ信号」という)を生成するための回路(再トリガ可能単安定マルチバイブレータ回路)を含む。
なお、呼吸信号から呼吸トリガ信号を生成するための回路およびその方法については、本願の出願人らが先に出願し、既に公開された特開昭63−79636に開示された回路および方法を採用することができるため、ここではその詳細な説明については省略することにする。
呼吸センサ20は、呼吸の変化と、呼吸センサ20周辺の大気を比較することにより、呼吸の変化を圧力(以下、「呼吸圧」ということがある)P2に置き換え、呼吸圧P2の時間変化をアナログ信号として出力するセンサである。図示は省略するが、呼吸センサ20は、ハウジングを含み、このハウジングには、大気圧P1を検出するためのポート(以下、「第1ポート」という)と、呼吸圧P2を検出するためのポート(以下、「第2ポート」という)が設けられる。呼吸センサ20は、MRI操作室に設けられ、第2ポートには、呼吸圧P2を検出するためのチューブの一方端が接続され、チューブの他方端はMRIシールド室に設定されたMRI装置16の寝台上の被験者の鼻腔の近傍に配置されるように、チューブがノーズコーンまたはノーズマスクなどに固定される。このチューブを通して、被験者の呼吸による呼吸圧P2の変化が検出される。なお、チューブ内には、大気が充填されているため、チューブの他方端における被験者の呼吸による気体の移動は、チューブの一方端における気体の移動とリアルタイムに連動する。つまり、被験者の呼吸と、この呼吸による呼吸圧P2の検出との間には、時間差(または時間遅延)は無い。
図2(A)は呼吸センサ20の電気的な構成の一例を示す回路図である。図2(A)に示すように、呼吸センサ20は、ホイートストンブリッジ回路(以下、単に「ブリッジ回路」という)200および差動増幅器(以下、単に「増幅器」という)202を含む。ブリッジ回路200は、抵抗R1、R2、R3およびR4を含み、直列に接続された抵抗R1および抵抗R2と、直列に接続された抵抗R3および抵抗R4とが並列に接続される。抵抗R1と抵抗R2の接続点と、抵抗R3と抵抗R4の接続点に端子T1が接続され、端子T1には入力電圧Vsが印加される。また、抵抗R1と抵抗R4の接続点は、増幅器202のプラス入力端に接続され、抵抗R2と抵抗R3の接続点は、増幅器202のマイナス入力端に接続される。また、増幅器202の一方の電源端は端子T1が接続され、増幅器202の他方の電源端は接地されるとともに端子T3に接続される。増幅器202の出力端は端子T2に接続される。
ブリッジ回路200は、入力電圧Vsに対して数1で算出される出力電圧Vxが得得られる。出力電圧Vxが増幅器202のマイナス入力端に印加される。
[数1]
増幅器202は、プラス入力端の入力電圧とマイナス入力端の入力電圧の差分(ここでは、上記の出力電圧Vx)が、一定係数(差動利得)で増幅され、増幅されたアナログ電圧(アナログ信号)Voutが出力端から端子T2に出力される。
ただし、抵抗R1は、大気圧P1を検出するためのピエゾ素子200bに含まれるピエゾ抵抗であり、抵抗R3は、呼吸圧P2を検出するためのピエゾ素子200cに含まれるピエゾ抵抗である。図2(B)に示すように、大気圧P1と呼吸圧P2の差分(差圧)Pdを検出する検出部(図2(B)では「差圧検出部」と記載する)は、板状の支持体(または基材)200aを含み、支持体200aの一方の表面にピエゾ素子200bが貼り付けられ、支持体200aの他方の表面にピエゾ素子200cが貼り付けられる。大気圧P1が第1ポートを介してピエゾ素子200bに与えられ、呼吸圧P2がチューブおよび第2ポートを介してピエゾ素子200cに与えられる。
図2に戻って、匂い提示装置22は、被験者に匂いを提示するための装置である。図3に示すように、匂い提示装置22は、第2制御装置220を含み、第2制御装置220は、電磁バルブSV1、SV2、SV3、SV4、SV5およびSV6の各々のオン(開)およびオフ(閉)を制御するとともに、電磁バルブSV7の切り替え(オン/オフ)を制御する。図示は省略するが、第2制御装置220は、汎用のコンピュータであり、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力IFおよび通信IFなどの回路コンポーネントを備えている。
この第1実施例では、第2制御装置220は、第1制御装置12と通信可能に接続され、第1制御装置12からの命令に従って電磁バルブSV1−SV7のオン/オフを制御する。図3では、後述する導管224−242と区別するために、電磁バルブSV1−SV7のオン/オフを制御するための信号線を破線で示してある。また、図4および図5では、排出される気体の流れを分かり易く示すために、第2制御装置220および信号線の図示を省略するとともに、コンプレッサPから匂いセルOD1までの気体の流れと、コンプレッサPから電磁バルブSV6までの気体の流れの図示を省略してある。
図3に戻って、匂い提示装置22は、コンプレッサPおよび真空ポンプVを備えており、コンプレッサPは、導管224を介して、上記の電磁バルブSV1−SV6にそれぞれ接続される。また、真空ポンプVは、電磁バルブSV7に接続される。この第1実施例では、コンプレッサPおよび真空ポンプVは、匂いを提示するための処理が開始されるときに、ユーザによって、駆動を開始される。
また、この第1実施例では、電磁バルブSV1−SV7はいずれも三方電磁弁である。電磁バルブSV1−SV6は、匂い成分を含む気体(以下、「有臭の気体」)という)を充填および放出(または、匂いを提示)する場合にオンされ、匂いセルOD1−OD5側のポートに切り替えられ、有臭の気体を充填および放出しない場合にオフされ、開放されたポートに切り替えられる。ただし、電磁バルブSV6がオンされると、電磁バルブSV6は、導入口C6と接続される側のポートに切り替えられ、無臭の気体が充填および放出される。また、電磁バルブSV6がオフされると、電磁バルブSV6は、開放されたポートに切り替えられ、無臭の気体が充填おおよび放出されない。
また、電磁バルブSV7は、有臭の気体を充填する場合にオフされ、排出路ME1側のポートに切り替えられ、有臭の気体を放出する場合にオンされ、排出路ME2側のポートに切り替えられる。
また、電磁バルブSV1は導管を用いて匂いセルOD1に連結(または接続)され、電磁バルブSV2は導管を用いて匂いセルOD2に連結され、電磁バルブSV3は導管を用いて匂いセルOD3に連結され、電磁バルブSV4は導管を用いて匂いセルOD4に連結され、そして、電磁バルブSV5は導管を用いて匂いセルOD5に連結される。
また、匂い提示装置22は、有臭の気体を放出する部分すなわちノーズアウトレット(以下、「放出部」という)222を含む。この放出部222は、気体を放出する放出口OLを有し、また、気体を導入するための導入口C1、C2、C3、C4、C5およびC6と、気体を排出路ME1およびME2に導出するための導出口C7およびC8を有している。導入口C1−C6および導出口C7−C8の各々と、放出口OLは、配管222aによって連結される。放出部222は、放出口OLが被験者の鼻腔近傍に配置されるように、ノーズコーンまたはノーズマスクなどに固定される。
導入口C1−C5のそれぞれと放出口OLを結ぶ経路L1は、匂いを提示(有臭の気体を放出)するために設けられ、各経路L1は途中で合流される。導入口C6と放出口OLを結ぶ経路L2は、無臭の気体を放出するために設けられる。経路L3は、経路L1および経路L2のそれぞれの一部であり、経路L1および経路L2の共通部分である。また、経路L4は、経路L1から分岐して、排出路ME1に有臭の気体を排出するために設けられる。さらに、経路L5は、経路L2から分岐して、排出路ME2に無臭の気体を排出するために設けられる。
ただし、排出路ME1は、導管238、電磁バルブSV7および導管242で構成され、排出路ME2は、導管240、電磁バルブSV7および導管242で構成される。
また、匂いセルOD1は導管226を用いて導入口C1に連結され、匂いセルOD2は導管228を用いて導入口C2に連結され、匂いセルOD3は導管230を用いて導入口C3に連結され、匂いセルOD4は導管232を用いて導入口C4に連結され、匂いセルOD5は導管234を用いて導入口C5に連結される。電磁バルブSV6は、導管236を用いて導入口C6に連結される。さらに、電磁バルブSV7は、導管238を用いて導出口C7に連結されるとともに、導管240を用いて導出口C8に連結される。
匂いセルOD1−OD5は、バブラーとも呼ばれ、ステンレス製の圧力容器内に、たとえば蒸留水(無水溶媒)で一定濃度に希釈された匂い液を収容し、この匂い液中に吹き込み管を浸潤し、さらに容器栓から匂いガス(すなわち、有臭の気体)の通路(以下、「排出路」という)を導出したものである。この第1実施例では、匂いセルOD1−OD5は、それぞれ、異なる種類の匂い液が収容される。匂いセルOD1には第1の匂いの匂い液が収容され、匂いセルOD2には第2の匂いの匂い液が収容され、匂いセルOD3には第3の匂いの匂い液が収容され、匂いセルOD4には第4の匂いの匂い液が収容され、そして、匂いセルOD5には第5の匂いの匂い液が収容されているものとする。ただし、これは一例であり、同じ匂いの匂い液が複数の匂いセル(OD1−OD5のうちのいずれか2つ以上)に収容されていてもよい。
また、各匂いセルOD1−OD5の吹き込み管は、それぞれ、導管を介して対応する電磁バルブSV1−SV5に連結される。また、各匂いセルOD1−OD5の排出路は、それぞれ、導管226−234を介して対応する導入口C1−C5に連結される。
各匂いセルOD1−OD5では、コンプレッサPから供給される無臭の気体が吹き込み管から匂い液に吹き込まれることによってバブリングされ、有臭の気体が生成され、排出路から排出される。
この明細書においては、有臭の気体に対して、匂い成分または匂い物質を含まない気体を「無臭の気体」と呼ぶことにする。
また、図3からも分かるように、匂い提示装置22の一部(放出部222および導管226−240の一部)はMRIシールド室に設けられ、匂い提示装置22の他の一部はMRI操作室に設けられる。
つまり、この第1実施例では、匂い提示システム10のうち、MRI装置16、匂い提示装置22の一部および呼吸圧P2を検出するためのチューブの一部がMRIシールド室に設けられ、第1制御装置12、入力装置14、信号処理回路18、呼吸センサ20および匂い提示装置22の他の一部はMRI操作室に設けられる。
このような匂い提示システム10(匂い提示装置22)では、被験者に匂いを提示する場合には、有臭の気体を放出する(匂いを提示する)タイミングよりも前に、提示する匂いについての有臭の気体が少なくとも放出部222内に充填される。つまり、被験者に匂いを提示する処理には、有臭の気体を充填する工程(つまり、匂いの提示を準備する状態)と、有臭の気体を放出する工程(つまり、実際に匂いを提示する状態)がある。
たとえば、第1の匂いを被験者に提示する場合には、まず、第1の匂いについての有臭の気体が充填される。具体的には、図4に示すように、電磁バルブSV1および電磁バルブSV6がオンされる。したがって、コンプレッサPから供給される無臭の気体は、電磁バルブSV1を介して第1の匂いについての匂いセルOD1に供給されるとともに、電磁バルブSV6を介して放出部222の放出口OLから放出される。また、第1の匂いについての有臭の気体が充填されるとき、電磁バルブSV7はオフされ、排出路ME1側に切り替えられる。
匂いセルOD1内では、無臭の気体によって第1の匂いの匂い液がバブリングされ、真空ポンプVによって、第1の匂いについての有臭の気体が、放出部222内の配管220aの経路L1および経路L4、排出路ME1および電磁バルブSV7を介して匂い提示装置22の外部に導出される。このように、第1の匂いについての有臭の気体が排出路ME1に導かれることにより、この有臭の気体が配管220aおよび導管226内に充填される。
なお、図4では、導管238(排出路ME1)、電磁バルブSV7、導管242および真空ポンプVを移動する有臭の気体を分かり易く示すために、導管238、電磁バルブSV7、導管242および真空ポンプVから少しずらして記載してある。
第1の匂いについて有臭の気体を放出するタイミングになると、図5に示すように、電磁バルブSV1および電磁バルブSV6はオンのままで、電磁バルブSV7がオンされる。すると、電磁バルブSV7は排出路ME2側に切り替えられる。このため、放出口OLから放出されていた無臭の気体が、配管222aの経路L2および経路L5を介して排出路ME2に導かれ、さらに、導管240および電磁バルブSV7を介して匂い提示装置22の外部に導出される。これにより、第1の匂いについての有臭の気体が放出口OLから放出される。したがって、第1の匂いが被験者に提示される。つまり、第1の匂いについての刺激が被験者に与えられる。
なお、図5では、導管240(排出路ME2)、電磁バルブSV7、導管242および真空ポンプVを移動する無臭の気体を分かり易く示すために、導管240、電磁バルブSV7、導管242および真空ポンプVから少しずらして記載してある。
図示および詳細な説明は省略するが、他の匂いを提示する場合には、オンされる電磁バルブ(この第1実施例では、電磁バルブSV2、SC3、SV4またはSV5)が異なるだけである。
この第1実施例では、被験者の吸気の期間(以下、「吸気期間」という)に匂いを提示し、匂い刺激による脳活動を測定する。このため、被験者に匂い刺激を与えたときのfMRI信号の時間変化を検出するようにしてある。
図6は、匂い選択電磁弁信号、匂い提示電磁弁信号、MRI同期トリガ信号、呼吸トリガ信号、呼吸信号および予想されるfMRI信号の時間変化の一例を示す図である。
匂い選択電磁弁信号は、提示する匂い(図6では、第1の匂い)を選択するとともに、当該匂いを充填および提示するための電磁バルブ(図6では、電磁バルブSV1)をオン/オフするとともに、電磁バルブSV6をオン/オフするタイミングを示す信号であり、予め用意されている。電磁バルブSV1は、匂い選択電磁弁信号のレベルがローレベルからハイレベルに変化されるときにオンされ、匂い選択電磁弁信号のレベルがハイレベルからローレベルに変化されるときにオフされる。電磁バルブSV6は、匂い選択電磁弁信号のレベルがローレベルからハイレベルに変化されるときにオンされ、匂い選択電磁弁信号のレベルがハイレベルからローレベルに変化されるときにオフされる。
なお、図6では、第1の匂いについての匂い選択電磁弁信号のみを示してあるが、他の匂い(第2の匂い〜第5の匂い)についての匂い選択電磁弁信号も予め用意されている。
匂い提示電磁弁信号は、匂いを提示するための電磁バルブSV7をオン/オフするタイミングを示す信号である。電磁バルブSV7は、匂い提示電磁弁信号のレベルがローレベルからハイレベルに変化されるときにオンされ、匂い提示電磁弁信号のレベルがハイレベルからローレベルに変化されるときにオフされる。この第1実施例では、匂いを提示する期間(以下、「提示期間」という)は第1所定時間TH1(この第1実施例では、2秒)に設定される。
図6からも分かるように、匂い選択電磁弁信号と匂い提示電磁弁信号がハイレベルからローレベルに変化されるタイミングは同時であるが、有臭の気体を少なくとも放出部222に充填する必要があるため、匂い選択電磁弁信号がローレベルからハイレベルに変化されるタイミングは、匂い選択電磁弁信号がローレベルからハイレベルに変化されるタイミングよりも充填に必要な時間(充填時間)だけ早い。たとえば、充填時間は、第2所定時間TH2(この第1実施例では、2秒)である。
MRI同期トリガ信号は、MRI装置16から入力される信号であり、測定処理が開始され、撮影処理が開始される毎に、撮影処理が開始されるタイミングでローレベルからハイレベルに変化されるパルス状の信号である。以下、各パルス状の信号をMRI同期トリガと呼ぶことがある。ただし、図6ではパルスに代えて線分で示してある。このことは、呼吸トリガ信号についても同様である。
呼吸トリガ信号は、呼吸センサ20で検出されたアナログの呼吸信号において、吸気の開始時にハイレベルとなるパルス状の信号である。以下、各パルス状の信号を呼吸トリガと呼ぶことがある。上述したように、呼吸トリガ信号は、信号処理回路18によって、呼吸信号に所定の処理が施されることにより生成される。
呼吸信号は、上述したように、呼吸センサ20で検出される呼吸圧の時間変化を示す信号である。一般的な成人の場合には、1分間に12〜18回呼吸するため、呼吸の周期は約3.33〜3.75秒である。
この第1実施例では、MRI同期トリガ信号(MRI同期トリガ)を基準として、匂いの提示が行われる。スキャン番号は、MRI装置16で被験者の頭部の全体を撮影(スキャン)する撮影処理の回数に相当する。上述したように、2秒毎に、顎先から頭頂まで撮影(スキャン)されるため、MRI同期トリガ信号は2秒毎にハイレベルとなる。
また、図6からも分かるように、呼吸トリガに同期して、匂い提示電磁弁信号がローレベルからハイレベルに変化されるように制御される。これは、吸気期間に匂いを提示するためである。
ただし、匂いの提示に先立って有臭の気体を充填する必要がある。また、この第1実施例では、充填時間は第2所定時間(2秒)である。したがって、この第1実施例では、匂い選択電磁弁信号は、MRI同期トリガに同期して、ローレベルからハイレベルに変化される。また、匂い提示電磁弁信号は、匂い選択電磁弁信号がローレベルからハイレベルに変化されてから第2所定時間TH2(2秒)が経過した後に、呼吸トリガに同期してローベルからハイレベルに変化される。
上述したように、この第1実施例では、匂い刺激による脳活動を測定するため、匂いの提示を開始するタイミング(すなわち、呼吸トリガ)が直前のMRI同期トリガから第3所定時間TH3(この第1実施例では、1秒)以上遅れる場合には、匂い刺激を提示したときのfMRI信号の立ち上がり部分を正確に捉えることができない。
したがって、この第1実施例では、呼吸トリガ信号(匂い提示電磁弁信号)がローレベルからハイレベルに変化されたときに、つまり、呼吸トリガを検出したときに、MRI同期トリガ信号を参照して、直前のMRI同期トリガ(つまり、現在の撮影処理の開始時)からの時間遅れを検出し、この時間遅れが第3所定時間TH3(1秒)以内であれば、匂いを提示し、時間遅れが第3所定時間TH3を超えていれば、匂いを提示しないようにしてある。
また、fMRI信号は10−12秒程度の時定数を持つことが経験的に知られているため、今回匂いを提示してから次回匂いを提示するまでの間隔を第4所定時間TH4(この第1実施例では、12秒)以上空けるようにしてある。
したがって、図6では時刻t1と時刻t2において匂いが提示され、この匂い刺激によってfMRI信号が変化すると予測される。匂いを提示した時刻(以下、「提示時刻」という)は記録され、この提示時刻からMRI装置16で検出または測定されるfMRI信号の立ち上がり部分を正確に知ることができる。ただし、提示時刻は、匂い提示処理を開始した時刻を0秒とした場合の絶対時間である。
図7はMRI同期トリガ信号を考慮せずに、呼吸トリガに同期して匂いを提示した場合の提示タイミングと呼吸トリガを呼吸信号に重ねて記載した図である。図8はMRI同期トリガ信号を考慮して、呼吸トリガに同期して匂いを提示した場合の提示タイミングと呼吸トリガを呼吸信号に重ねて記載した図である。ただし、図7および図8のいずれの場合にも、上述したように、匂いの提示間隔を第4所定時間TH4(12秒)以上としてある。
図7および図8では、呼吸信号の時間変化が波形で示され、実線の直線および実線の丸で呼吸トリガすなわち呼吸トリガ信号がローレベルからハイレベルに変化されるタイミング(時間)を示し、破線の直線および破線の丸で提示タイミングすなわち匂い刺激を与えるタイミング(時間)を示す。
また、図7および図8を比較して分かるように、匂いを提示した回数は、MRI同期トリガを考慮した場合の方が、MRI同期トリガを考慮しない場合に比べて少ない。図7に示す場合には、匂い提示の間隔は、平均値で14秒であり、最小値が12.1秒であり、最大値が18.5秒である。また、図7に示す場合には、すべての呼吸トリガの数に対して、匂いが提示された回数の割合は、25%である。一方、図8に示す場合には、匂い提示の間隔は、平均値で18秒であり、最小値が12.1秒であり、最大値が33.9秒である。また、図8に示す場合には、すべての呼吸トリガの数に対して、匂いが提示された回数の割合は、19%である。
このように、MRI同期トリガを考慮した場合には、MRI同期トリガを考慮しない場合に比べて、匂いを提示した回数を減らすことができる。つまり、無駄な匂い提示と、無駄な匂い刺激に対するfMRI信号の検出を省略することができる。
図9は図1に示した第1制御装置12に内蔵されるRAM36のメモリマップ300の一例を示す図である。図9に示すように、RAM36はプログラム記憶領域302およびデータ記憶領域304を含む。プログラム記憶領域302は、情報処理プログラムの一例である匂い提示システム10の制御プログラムを記憶し、制御プログラムは、MRI同期トリガ検出プログラム302a、呼吸トリガ検出プログラム302b、匂い充填プログラム302cおよび匂い提示プログラム302dなどを含む。
MRI同期トリガ検出プログラム302aは、MRI装置16から出力されたMRI同期トリガ信号を検出し、データ記憶領域304に記憶するためのプログラムである。呼吸トリガ検出プログラム302bは、呼吸トリガ信号を検出し、データ記憶領域304に記憶するためのプログラムである。
匂い充填プログラム302cは、MRI同期トリガ信号がローレベルからハイレベルに変化されるタイミングで、つまり、MRI同期トリガに同期して、選択された匂いについての有臭の気体を充填するためのプログラムである。具体的には、匂い充填プログラム302cに従って、選択された匂いに対応する電磁バルブSV1−SV5のいずれかをオンするとともに、電磁バルブSV6をオンし、さらに、電磁バルブSV7をオフする。ただし、この第1実施例では、匂い充填プログラム302cは、匂い提示処理を開始した当初では、匂い充填プログラム302cは、MRI同期トリガ信号の3つ目のトリガに同期して、匂いの充填を開始し、2回目以降では、前回の匂い提示から12秒した後に最初に検出されたMRI同期トリガ信号のトリガに同期して、匂いの充填を開始する。また、匂いは、予め用意されている選択電磁弁信号によって選択される。
匂い提示プログラム302dは、匂いの充填時間が第2所定時間TH2(2秒)を経過した後に、最初に検出された呼吸トリガに同期する、かつ、直近のMRI同期トリガに対する遅延時間が第3所定時間TH3(1秒)以下である場合に、匂いを第1所定時間TH1(2秒間)提示するためのプログラムである。具体的には、上記の匂い充填プログラム302cに従ってオンされた電磁バルブSV1−SV5のいずれか1つと電磁バルブSV6のオンの状態を維持して、電磁バルブSV7をオンし、この状態を2秒間維持する。ただし、匂い提示プログラム302dは、上記の遅延時間が第3所定時間TH3(1秒)を超える場合には、匂いを提示しないためのプログラムでもある。匂いを提示しない場合には、上記の匂い充填プログラム302cに従ってオンされた電磁バルブSV1−SV5のいずれか1つと電磁バルブSV6はオフされ、電磁バルブSV7はオフの状態が維持される。
なお、図示は省略するが、プログラム記憶領域302には、第1制御装置12の動作を制御するために必要な他のプログラムも記憶される。
データ記憶領域304には、MRI同期トリガデータ304a、呼吸トリガデータ304bおよび提示時刻データ304cが記憶される。また、データ記憶領域304には、絶対時間タイマ304d、充填タイマ304e、遅延タイマ304f、提示タイマ304gおよび間隔タイマ304hが設けられる。
MRI同期トリガデータ304aは、MRI同期トリガ信号についてのデータであり、時系列に従って記憶される。呼吸トリガデータ304bは、呼吸トリガ信号についてのデータであり、時系列に従って記憶される。提示時刻データ304cは、匂いを提示した時刻(提示時刻)についてのデータである。ただし、匂いは複数回提示されるため、提示時刻データ304cには、各回についての提示時刻のデータが含まれる。上述したように、各回についての提示時刻は、匂いの提示処理を開始(開始時を0秒とする)してからの絶対時間で記録される。
絶対時間タイマ304dは、匂い提示処理が開始されてからの絶対時間をカウントするためのタイマである。充填タイマ304eは、充填時間をカウントするためのタイマである。遅延タイマ304fは、遅延時間をカウントするためのタイマである。提示タイマ304gは、匂いの提示期間をカウントするためのタイマである。間隔タイマ304hは、今回の匂い提示を終えてから次回匂いを提示するまでに空けるべき時間間隔をカウントするためのタイマである。
図示は省略するが、データ記憶領域304には、制御プログラムの実行に必要な他のデータが記憶されたり、制御プログラムの実行に必要な他のタイマ(カウンタ)およびフラグが設けられたりする。
図10−図12は図1に示した第1制御装置12に内蔵されるCPU30の匂い提示処理の一例を示すフロー図である。図10に示すように、CPU30は、匂い提示処理を開始すると、ステップS1で、絶対時間タイマ304dをリセットおよびスタートする。
続いて、ステップS3で、匂い充填の開始タイミングかどうかを判断する。ここでは、CPU30は、データ記憶領域304に記憶されたMRI同期トリガデータ304aを参照して、現在(最新)のMRI同期トリガを検出したかどうかを判断する。以下、MRI同期トリガを検出したかどうかを判断する場合について同じである。ただし、匂いの充填および提示が初回の場合には、CPU30は、3つ目のMRI同期トリガを検出したかどうかを判断する。
なお、図示は省略するが、CPU30は、匂い提示処理と並行して、MRI同期トリガ信号および呼吸トリガ信号を検出し、検出したMRI同期トリガ信号および呼吸トリガ信号に対応するMRI同期トリガデータ304aおよび呼吸トリガデータ304bをデータ記憶領域304に記憶する処理を実行している。
ステップS3で“NO”であれば、つまり、匂い充填の開始タイミングでなければ、ステップS3に戻る。一方、ステップS3で“YES”であれば、つまり、匂い充填の開始タイミングであれば、ステップS5で、匂い充填の開始を第2制御装置220に指示する。具体的には、CPU30は、提示する匂いについての電磁バルブV1−V5のいずれか1つと、電磁バルブV6をオンするとともに、電磁バルブV7をオフすることを第2制御装置220に指示する。
次のステップS7では、充填タイマ304eをリセットおよびスタートし、ステップS9で、充填時間が第2所定時間TH2(たとえば、2秒)を経過したかどうかを判断する。このステップS9では、CPU30は、充填タイマ304eのカウント値が2秒を経過したかどうかを判断する。ステップS9で“NO”であれば、つまり、充填時間が第2所定時間TH2を経過していなければ、ステップS9に戻る。一方、ステップS9で“YES”であれば、つまり、充填時間が第2所定時間を経過すれば、ステップS11で、MRI同期トリガを検出したかどうかを判断する。
ステップS11で“NO”であれば、つまり、MRI同期トリガを検出していなければ、ステップS11に戻る。一方、ステップS11で“YES”であれば、つまり、MRI同期トリガを検出すれば、ステップS13で、遅延タイマ304fをリセットおよびスタートして、図11に示すステップS15で、呼吸トリガを検出したかどうかを判断する。このステップS15では、CPU30は、呼吸トリガデータ304bを参照して、現在の呼吸トリガを検出したかどうかを判断する。
ステップS15で“NO”であれば、つまり、呼吸トリガを検出していなければ、ステップS17で、次のMRI同期トリガを検出したかどうかを判断する。ここで、次のMRI同期トリガとは、ステップS11で検出されたことが判断されたMRI同期トリガの次に検出されたMRI同期トリガを意味する。
ステップS17で“NO”であれば、つまり、次のMRI同期トリガを検出していなければ、ステップS15に戻る。一方、ステップS15で“YES”であれば、つまり、呼吸トリガを検出すれば、ステップS19で、遅延時間が第3所定時間TH3(たとえば、1秒)以内であるかどうかを判断する。このステップS19では、CPU30は、遅延タイマ304fのカウント値が1秒以内であるかどうかを判断する。
ステップS19で“NO”であれば、つまり、遅延時間が第3所定時間TH3を経過していれば、匂いを提示しないと判断して、ステップS21で、匂い充填の終了を第2制御装置220に指示する。ここでは、CPU30は、ステップS5でオンすることを指示した電磁バルブV1−V5のいずれか1つと電磁バルブV6をオフすることを第2制御装置220に指示する。
一方、ステップS19で“YES”であれば、つまり、遅延時間が第3所定時間TH3以内であれば、匂いを提示すると判断して、ステップS23で、匂い提示を第2制御装置220に指示する。このステップS23では、CPU30は、ステップS5でオンすることを指示した電磁バルブV1−V5のいずれか1つと電磁バルブV6のオンの状態を維持するとともに、電磁バルブV7をオンすることを第2制御装置220に指示する。
次のステップS25では、提示時刻を記録する。つまり、CPU30は、絶対時間タイマ304dのカウント値を提示時刻として取得し、提示時刻に対応するデータをデータ記憶領域304に記憶する。
続いて、ステップS27で、提示タイマ304gをリセットおよびスタートし、図12に示すステップS29で、提示時間が第1所定時間TH1(たとえば、2秒)を経過したかどうかを判断する。このステップS29では、CPU30は、提示タイマ304gのカウント値が2秒を経過したかどうかを判断する。
ステップS29で“NO”であれば、つまり、提示時間が第1所定時間TH1を経過していなければ、ステップS29に戻る。一方、ステップS29で“YES”であれば、つまり、提示時間が第1所定時間TH1を経過すれば、ステップS31で、間隔タイマ304hをリセットおよびスタートする。続いて、ステップS33で、今回の匂い提示の終了を第2制御装置220に指示する。このステップS33では、CPU30は、ステップS23でオンすることを指示した電磁バルブV1−V5のいずれか1つと電磁バルブV6と電磁バルブV7をオフすることを第2制御装置220に指示する。
そして、ステップS35で終了かどうかを判断する。ここでは、CPU30は、匂い提示処理を終了することをユーザから指示されたかどうかを判断する。他の実施例では、CPU30は、所定時間(たとえば、10秒間)、MRI同期トリガを検出しない場合に、匂い提示処理を終了することを判断するようにしてもよい。
ステップS35で“NO”であれば、つまり、終了でなければ、ステップS37で、前回の提示から第4所定時間TH4(たとえば、12秒)を経過したかどうかを判断する。ここでは、CPU30は、間隔タイマ304hのカウント値が12秒を経過したかどうかを判断する。
ステップS37で“NO”であれば、つまり、前回の提示から第4所定時間TH4を経過していなければ、ステップS35に戻る。一方、ステップS37で“YES”であれば、つまり、前回の提示から第4所定時間TH4を経過すれば、図10に示したステップS3に戻る。
この第1実施例によれば、被験者の吸気期間に合わせるのみならず、MRI装置の撮影処理の開始タイミングを考慮して、被験者に匂いを提示するので、匂い刺激を与えたことによるfMRI信号の立ち上がりを確実に検出することができる。つまり、匂い刺激による被験者の脳活動を正しく測定することができる。
<第2実施例>
第2実施例の匂い提示システムでは、匂いを提示するかどうかを判断するための所定の閾値すなわち第3所定時間TH3を被験者毎に設定するようにした以外は第1実施例と同じであるため、異なる内容について説明し、重複した内容については説明を省略することにする。
第2実施例では、匂いを提示する前に、被験者の呼吸信号を所定時間(たとえば、60秒)検出し、検出した呼吸信号に基づいて、被験者の呼吸(吸気)の最大流量の時間が検出される。この第1実施例では、最大流量の時間が遅延時間の最大値として設定される。
ただし、この第2実施例では、呼吸の最大流量の時間とは、呼吸信号のレベルが0から最大値に至るまでの時間を意味する。
また、検出された呼吸信号において、最大流量の時間を各回の呼吸について検出し、各回の最大流量の時間を平均した値が、遅延時間の最大値として設定される。ただし、平均値は一例であり、他の統計量を用いるようにしてもよい。
第2実施例の匂い提示システム10では、呼吸センサ20から出力される呼吸信号が増幅され、増幅された呼吸信号も第1制御装置12に入力される。第1制御装置12は、匂いを提示する前に、被験者の呼吸信号に基づいて遅延時間の最大値を算出する。この遅延時間の最大値が第3所定時間TH3(つまり、閾値)として決定され、匂いを提示するかどうかの判断処理(S19)において用いられる。
第2実施例では、このように、予め検出した呼吸信号に基づいて、第3所定時間TH3を設定するためのプログラム(以下、「設定プログラム」という)がプログラム記憶領域302にさらに記憶されるとともに、図10−図12に示した匂い提示処理のステップS1よりも前において、設定プログラムに従う第3所定時間TH3の設定処理が実行される。したがって、ステップS19では、設定処理によって設定された第3所定時間TH3を用いて判断処理が実行される。
第2実施例によれば、被験者毎に、匂いを提示するかどうかを判断するための閾値が設定されるため、第1実施例の効果に加え、被験者の呼吸に合わせて匂いを提示する制御を行うことができる。
なお、上述の各実施例で示した具体的な数値は単なる一例であり、限定されるべきではなく、実施される製品等に応じて適宜変更可能である。