JP2020059719A - 網膜色素変性症の治療 - Google Patents

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Abstract

【課題】眼疾患の遺伝子治療に関し、遺伝性網膜ジストロフィーの表現型である網膜色素変性症(RP)の治療に用いるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの提供。【解決手段】網膜色素変性症に罹患しているか、または網膜色素変性症を発症するリスクのある被験体において、視細胞死を減少させる方法であって、その方法が、毛様体神経栄養因子(CNTF)をコードするヌクレオチド配列を含有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、それを必要とする被験体に投与することを含み、治療を受けた眼において視覚機能が実質的に回復するか又は維持される、方法。AAVベクターがAAV血清型2ゲノムを含有し、CNTFがヒトCNTFである方法。AAVベクターが網膜下注射、直接網膜注射又は硝子体内注射によって、被験体の眼に投与される、方法。【選択図】なし

Description

本発明は、眼疾患の遺伝子治療に用いる化合物に関する。より詳細には、本発明は、網膜色素変性症(RP)の治療に用いるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関するものであって、このAAVベクターは毛様体神経栄養因子(CNTF)を目に送達することができる。
網膜色素変性症(RP)は、表現型として関連づけられる1群の遺伝性網膜ジストロフィーであって、ゆるやかな視力低下をもたらすものである。およそ3000-4000人に1人がRPに罹患する。
RPの初期症状には夜間視力および周辺視力の低下がある。病気が進行すると、総合的な視力、中心視力および色覚も冒されることがある。RP症状の発症年齢はさまざまであるが、典型的には10歳から30歳の間であって、悪化の速度には個人差がある。
RPは通常、桿体視細胞の進行性の変性によって引き起こされる。しかしながら、網膜色素上皮(RPE)および錐体視細胞も、病気の進行中に変性する可能性がある。
いくつかの化合物が、網膜神経細胞の維持に、ある程度の効果を有することが判明しており、これには脳由来神経栄養因子(BDNF; Okoye, G. et al. (2003) J. Neurosci. 23: 4164-4172)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF; McGee Sanftner, L.H. et al. (2001) Mol. Ther. 4: 622-629; Buch, P.K. et al. (2006) Mol. Ther. 14: 700-709)、および毛様体神経栄養因子(CNTF)などがある。CNTFは、酸化ストレスおよび実験的緑内障のモデルにおいて、網膜神経節細胞死を防ぐことが判明している(Ji, J.Z. et al. (2004) Eur. J. Neurosci. 19: 265-272; Leaver, S.G. et al. (2006) Eur. J. Neurosci. 24: 3323-3332; MacLaren, R.E. et al. (2006) Exp. Eye Res. 83: 1118-1127; Maier, K. et al. (2004) Brain Pathol. 14: 378-387; Pease, M.E. et al. (2009) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 50: 2194-2200)。
数多くの研究から、AAVによる遺伝子デリバリー後のCNTFの持続的発現が、マウスRPモデルにおいて数ヶ月間、視細胞体の保護をもたらす可能性があることが実証されている(Bok, D. et al. (2002) Exp. Eye Res. 74: 719-735; Schlichtenbrede, F.C. et al. (2003) Gene Ther. 10: 523-527; Liang, F.Q. et al. (2001) Mol. Ther. 3: 241-248)。しかしながら、RPのような神経変性疾患のゆっくり進行するという特性、ならびにこうした研究の短期間という特徴のため、観察された視細胞の保護が動物の一生を通じて維持されるかどうか、ならびに決定的に重要なこととして、保護された神経細胞が機能を保持するかどうかは、以前は不明であった。
その上、こうした研究で、CNTF治療が視細胞の解剖学的保存をもたらすことが観察されたが、CNTFのAAVによるデリバリーはRP治療の臨床的用途には適切でないと結論付けられた。具体的には、こうした研究で実施された実験(たとえば、網膜電図検査、ERG)は、ベクター投与後の視覚機能の低下を示している(Schlichtenbrede, F.C. et al. (2003) Gene Ther. 10: 523-527)。
CNTFを眼に送達する別の先行アプローチは、カプセル化細胞技術を使用したが、これはCNTFを産生する細胞を包含するデバイスを用いるものである。このアプローチに関する研究は、中期的な視細胞の保護にある程度の成功を示したが、適用された投与があまりにも低用量で、しかも時機を逸していたので、視覚機能の保護における有効性を測定することができなかった(Birch, D.G. et al. Long-term follow-up of patients with retinitis pigmentosa (RP) receiving sustained-release CNTF through intraocular encapsulated cell technology implants. ARVO annual meeting (Seattle, WA, 2013); Birch, D.G. et al. (2013) Am. J. Ophthalmol. 156: 283-292 e281)。さらに、この技術は、細胞を包含するデバイスを被験体の眼に移植するために、大きな外科的介入を要し、移植物それ自体も安全性および免疫原性に問題を生じる可能性がある。
現在、RPの発症を予防する、または病気の発症後に視力を向上させるために、よいと認められた治療法はない。したがって、RPの治療のために、より詳細には、視覚機能の低下を予防するために、または罹患した個体の視力向上を可能にするために、依然として大きな必要性がある。
Okoye, G. et al. (2003) J. Neurosci. 23: 4164-4172 McGee Sanftner, L.H. et al. (2001) Mol. Ther. 4: 622-629 Buch, P.K. et al. (2006) Mol. Ther. 14: 700-709 Ji, J.Z. et al. (2004) Eur. J. Neurosci. 19: 265-272 Leaver, S.G. et al. (2006) Eur. J. Neurosci. 24: 3323-3332 MacLaren, R.E. et al. (2006) Exp. Eye Res. 83: 1118-1127 Maier, K. et al. (2004) Brain Pathol. 14: 378-387 Pease, M.E. et al. (2009) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 50: 2194-2200 Bok, D. et al. (2002) Exp. Eye Res. 74: 719-735 Schlichtenbrede, F.C. et al. (2003) Gene Ther. 10: 523-527 Liang, F.Q. et al. (2001) Mol. Ther. 3: 241-248 Birch, D.G. et al. Long-term follow-up of patients with retinitis pigmentosa (RP) receiving sustained-release CNTF through intraocular encapsulated cell technology implants. ARVO annual meeting (Seattle, WA, 2013) Birch, D.G. et al. (2013) Am. J. Ophthalmol. 156: 283-292 e281
本発明者らは、AAVを介したCNTFの発現がマウスモデルにおいて、視細胞の変性からの長期的保護をもたらすことを明らかにした。本発明者らは、反復網膜イメージングを用いて、in vivoで自家蛍光性の錐体視細胞の生存を定量した。この新しいアプローチを用いて、視覚機能に対する副作用なしに視細胞の変性を止めることができるほど十分に高い、CNTFの具体的な用量範囲を特定した。
驚くべきことに、本発明者らは、生存している錐体細胞が機能、ならびに正しく脳に向かうシグナルを保持していることも実証した。具体的には、本発明者らは視覚野のイメージング、および視覚誘発行動反応の評価を用いて、AAVを介したCNTFの眼へのデリバリーの、視覚機能に及ぼす、予期せぬ有益な効果を発見した。
本発明者らは、クリニックを訪れる多くのRP患者の眼の表現型にもっとも類似した、桿体の変性がすでに確実となった段階で、錐体視細胞を保護するために、さまざまな投与を行った。本発明者らは、視覚誘導行動実験による標準的な電気生理学的機能評価を組み合わせることで、長期的CNTF治療後に保持される機能的視力の程度を測定する一方で、その所見と、視覚野における高度な信号処理の証拠とを相互に関連づけた。
まとめると、本発明者らは思いがけず、AAVを介したCNTFの眼へのデリバリーが、RPの視覚機能の維持および治療に臨床応用できることを見いだした。
したがって、ある態様において、本発明は、網膜色素変性症を治療または予防する方法を提供するが、その方法は、毛様体神経栄養因子(CNTF)をコードするヌクレオチド配列を含有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、それを必要とする被験体に投与することを含む。
AAVベクターは、そのベクターが眼の細胞に感染するか、または形質導入する能力を有する限り、いかなる血清型のものであってもよい(たとえば、いかなるAAV血清型ゲノムおよび/またはカプシドタンパク質を含んでいてもよい)。
ある実施形態において、AAVベクターは、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11ゲノムを含有する。別の実施形態において、AAVベクターは、AAV血清型2、4、5、または8ゲノムを含有する。好ましくは、AAVベクターは、AAV血清型2ゲノムを含有する。
好ましくは、AAVベクターは、AAVベクター粒子の形をとる。
ある実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV2カプシドタンパク質(AAV2/2);AAV2ゲノムおよびAAV5カプシドタンパク質(AAV2/5);またはAAV2ゲノムおよびAAV8カプシドタンパク質(AAV2/8)を含有する。好ましくは、AAVベクター粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV2カプシドタンパク質(AAV2/2)を含有する。
本発明のAAVベクター粒子は、1つもしくは複数の天然に存在するAAVの、キメラ、シャッフル、もしくはカプシド改変誘導体であってもよい。具体的には、AAVベクター粒子は、異なるAAV血清型、クレード、クローン、または分離株に由来するカプシドタンパク質配列を同一ベクター内に含有することができる(すなわち、偽型ベクター)。したがって、ある実施形態において、AAVベクターは、偽型AAVベクター粒子の形をとる。
ある実施形態において、CNTFはヒトCNTFである。
別の実施形態において、CNTFをコードするヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列;および
(b)配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、
からなる1群から選択され、
そのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質は、配列番号2で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
別の実施形態において、CNTFをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含有するが、そのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質は、配列番号2で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
別の実施形態において、CNTFをコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含有するが、そのアミノ酸配列は、配列番号2で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
ある実施形態において、AAVベクターは、CNTFをコードするヌクレオチド配列に機能しうるように連結された分泌シグナル配列を含有する。好ましくは、分泌シグナル配列は、ヒト神経成長因子(NGF)分泌シグナル配列である。
ある実施形態において、分泌シグナル配列は、配列番号3または7に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含有するが、そのヌクレオチド配列によってコードされるペプチドは、それが機能するように連結されたCNTFの、発現細胞からの分泌を引き起こす。
ある実施形態において、AAVベクターは、網膜下注射、直接網膜注射、または硝子体内注射によって被験体の眼に投与される。好ましくは、AAVベクターは、網膜下注射によって被験体の眼に投与される。網膜下注射は、本明細書に記載の2段階網膜下注射法によって実施することができる。
ある実施形態において、AAVベクターは被験体に、単回用量で投与される。
AAVベクターはたとえば、mL当たり約1-2×1011、1-2×1012または1-2×1013ゲノム粒子(gp)の濃度の懸濁液とすることができる。したがって、約2×1010 gpのAAVベクターの投与は、たとえば、2×1012 gp/mLの濃度で約10μL用量のAAVベクターを注射することによって投与することができる。当業者は必要に応じて、容易に、AAVベクターの投与量、容量、および濃度を調整することができる。
投与されるAAVベクターの容量は、たとえば約1-500μL、たとえば約10-500、50-500、100-500、200-500、300-500、400-500、50-250、100-250、200-250、50-150、1-100または1-10μLとすることができる。好ましくは、注入されるAAVベクター組成物の容量は約100μLである。
ある実施形態において、AAVベクターは、眼球当たり少なくとも2×109、2×1010、2×1011 または2×1012 gpの投与量で投与される。別の実施形態において、AAVベクターは、眼球当たり約2×109、2×1010、2×1011 または2×1012 gpの投与量で投与される。好ましくは、AAVベクターは、眼球当たり2×1011 gpの投与量で、なるべくなら網膜下注射によって、投与される。
本発明者らは驚くべきことに、たとえ桿体細胞の大半またはすべてが変性してしまっていても、たとえば生存している錐体細胞を保護することによって、本発明のAAVベクターを用いた網膜色素変性症の治療が(たとえば視覚機能の維持に)効果を有する可能性があることを見いだした。したがって、ある実施形態において、治療を受ける眼は、AAVベクターの投与時点で、約1億、5千万、2千万、1千万、9百万、8百万、7百万、6百万、5百万、4百万、3百万、2百万、百万、500000、250000、100000、または50000個未満の桿体細胞を含んでいる。別の実施形態において、被験体は、AAVベクター投与の時点で、治療を受ける眼において桿体細胞を実質的に欠いている。別の実施形態において、治療を受ける眼は、AAVベクター投与の時点で、桿体細胞を含有しない。
ある実施形態において、網膜色素変性症に起因する視細胞の変性は、被験体の一生を通じて実質的に予防される。視細胞は、錐体細胞および/または桿体細胞、好ましくは錐体および桿体細胞を包含しうる。別の実施形態において、AAVベクター投与時点で、治療を受ける眼に存在する視細胞(たとえば錐体細胞および/または桿体細胞)の数の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満が、網膜色素変性症のためにその後、被験体の一生にわたって変性する。
別の実施形態において、網膜色素変性症による錐体細胞変性は、被験体の一生にわたって、実質的に予防される。別の実施形態において、AAVベクター投与時点で治療を受ける眼に存在する錐体細胞数の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満が、網膜色素変性症のためにその後、被験体の一生にわたって変性する。生存細胞が機能的であり続けることが好ましい。
別の態様において、本発明は、網膜色素変性症に罹患しているか、または網膜色素変性症を発症する危険性のある被験体において、視細胞死を減少させる方法を提供するが、その方法は、毛様体神経栄養因子(CNTF)をコードするヌクレオチド配列を含有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、それを必要とする被験体に投与することを含む。
AAVベクター、CNTF、および投与方法(たとえば、手法および投与量)は本明細書に記載の通りとすることができる。
ある実施形態において、治療をうけた眼の視覚機能は、実質的に回復するかまたは維持される。視覚機能(たとえば、本明細書に記載の視覚機能検査によって測定される)は、たとえば、患眼において網膜色素変性症の発症前にあったほぼ同レベルまで回復させることができる。あるいはまた、視覚機能は、たとえば、網膜色素変性症を発症するおそれのある健常者において、またはすでに網膜色素変性症に罹患した被験体において、ほぼ同レベルに維持することができる(たとえば、本発明のAAVベクターの投与後に、網膜色素変性症の結果として、実質的に視覚機能の低下またはより一層の低下は起こらない)。
未治療で放置されると、網膜色素変性症の結果として時間が経つにつれて、桿体細胞の大半もしくはすべてが変性する(たとえば、死滅する)可能性がある。錐体細胞も、病気が進行する間に変性する可能性がある。
ある実施形態において、網膜色素変性症に起因する視細胞の変性は、被験体の一生を通じて実質的に予防される。視細胞は、錐体細胞および/または桿体細胞、好ましくは錐体および桿体細胞を包含しうる。別の実施形態において、AAVベクター投与時点で、治療を受ける眼に存在する視細胞(たとえば錐体細胞および/または桿体細胞)の数の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満が、網膜色素変性症のためにその後、被験体の一生にわたって変性する。
別の実施形態において、網膜色素変性症による錐体細胞変性は、被験体の一生にわたって、実質的に予防される。別の実施形態において、AAVベクター投与時点で治療を受ける眼に存在する錐体細胞数の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満が、網膜色素変性症のためにその後、被験体の一生にわたって変性する。生存細胞が機能的であり続けることが好ましい。
ある実施形態において、治療を受ける眼は、AAVベクターの投与時点で、約1億、5千万、2千万、1千万、9百万、8百万、7百万、6百万、5百万、4百万、3百万、2百万、百万、500000、250000、100000、または50000個未満の桿体細胞を含んでいる。別の実施形態において、被験体は、AAVベクター投与の時点で、治療を受ける眼において桿体細胞を実質的に欠いている。別の実施形態において、治療を受ける眼は、AAVベクター投与の時点で、桿体細胞を含有しない。
もう1つの態様において、本発明は、網膜色素変性症の治療もしくは予防に使用するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供するが、このAAVベクターは、毛様体神経栄養因子(CNTF)をコードするヌクレオチド配列を含有する。
AAVベクター、CNTF、投与方法(たとえば、手法および投与量)および投与効果、ならびに治療を受ける被験体は本明細書に記載の通りとすることができる。
別の態様において、本発明は、網膜色素変性症に罹患した被験体、もしくは網膜色素変性症を発症するおそれのある被験体において視細胞死を減らすのに用いるためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供するが、このAAVベクターは、毛様体神経栄養因子(CNTF)をコードするヌクレオチド配列を含有する。
AAVベクター、CNTF、投与方法(たとえば、手法および投与量)および投与効果、ならびに治療を受ける被験体は本明細書に記載の通りとすることができる。
別の態様において、本発明は、錐体細胞の生存および/または機能を分析するための遺伝子改変動物を提供するが、この動物はその錐体細胞内に検出可能なマーカーを含有するように遺伝子改変されている。
ある実施形態において、検出可能なマーカーは、蛍光タンパク質、たとえば緑色蛍光タンパク質である。
別の実施形態において、動物は哺乳動物であり、好ましくはマウスである。
もう1つの実施形態において、動物はまた、疾患モデル動物である。好ましくは、動物は、網膜色素変性症のためのモデルを提供するように遺伝子改変されたが、その動物はたとえば、ロドプシンのノックアウトについてホモ接合型である。
(a) 点状の白いドットとして表される錐体視細胞を示す、Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウス眼底の自発蛍光(AF)画像。(a') 鼻血管分岐部(α、点線)における特徴的な一群の錐体視細胞(βからγへ並ぶ)および個々の錐体(白い矢印)のAF画像の拡大図。(b) 網膜血管系をを詳細に示す近赤外(NIR)眼底画像、および(b') 鼻血管分岐部(α、点線)を詳細に示す拡大NIR画像。(c) レクチンで対比染色された網膜血管系を有する、フラットマウントの死後網膜。(c') 鼻分岐部(α、点線)における錐体視細胞(緑色の点)の分布を示す、網膜フラットマウントの拡大画像。パネル(c')の錐体パターンは、in vivoのAFイメージング(a')で観察されたパターンと正確に相関することに留意すべきである;特徴的な一群の錐体視細胞(βからγへ並ぶ)および個々の錐体(白い矢印)を含む。(d-g) 出生後週数(PW)8からPW30まで、高用量のrAAV2/2.hCNTFで処置したRho-/-TgOPN1LW-EGFP+/- マウスの反復AF眼底イメージング。(d'-g') 各動物の網膜血管l生涯を示すAF拡大画像。ROI内において錐体視細胞(白い点)を数値化することができるので(赤い点の重なり)、錐体生存に関する再現性の高い長期的評価が可能となる。生存は、ベースライン(PW8)における錐体視細胞数の関数(%)として表される。スケールバーはすべて〜100μmである。(h) 各処置群:高用量(ダークブルー)、中用量(明るいブルー)、低用量(淡いブルー)、またはPBS偽処置(グレー)についてベースライン(PW8)における錐体視細胞数の関数(%)として表される錐体視細胞の生存。hCNTF処置は、錐体視細胞の生存に有意な影響を及ぼす:* = p<0.05;** = p<0.01;*** = p<0.001、要因として用量および時間を用いた、反復測定二元配置分散分析。PW30において、高用量群 n=5、中用量群 n=6、低用量群n=8。 PW8およびPW30における高用量rAAV2/2.hCNTF処置マウスおよびPBS偽処置マウスの近赤外分光分析(NIR)および自発蛍光(AF)眼底イメージング。偽処置対照は、PW30までに網膜色素上皮(RPE)萎縮(a, c)およびEGFP発現錐体視細胞の消失(b, d)を示す、反射率の増大した領域を明示する。高用量のrAAV2/2.hCNTFで処置された眼は、同じ期間の終わりまで、RPE萎縮の兆候を示さず(e, g)、錐体視細胞の最低限の減少を示す(f, h)。PBS偽処置を受けた網膜の代表的な組織像(i)はPW30の時点で、桿体視細胞も錐体視細胞もいずれも存在しないことを示す。高用量のrAAV2/2.hCNTF処置を受けた網膜の組織像(j-o)はPW30時点で、外顆粒層(ONL)において、錐体(GFP発現型)および桿体(GFP非発現型)視細胞の保存を示す。(j-k)錐体視細胞(l-o)は、正しい細胞コンパートメント(外節;OS)内にMws-オプシンを発現しており(矢じり)、細胞体においてオプシンが誤った局在化をしている証拠はない(*)。錐体視細胞の形態は、内顆粒層(INL)とRPEとの間に圧縮を示唆するが、それは桿体変性後に複数列の核がなくなったことによる。 (a-b)PW6の未処置Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスにおける皮質血流量(CBF)の変化であって、これはレーザースペックルイメージング(LSI)が、510 nmフリッカー刺激による刺激後の、主に視覚野における細小血管の血流変化を検出することを示す。(c)マウスにおける視覚路の概略図であって、これは視覚入力が、刺激を受けた眼と反対側の脳半球にある視覚野で処理されることを示す。白い矢印 = 上矢状静脈洞;矢じり = ラムダ;OS = 左眼(左);OD = 右眼(右)。(d-e)中用量および(g-i)高用量で処置されたPW30 のRho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスにおいて、PBS処置(d, g)またはrAAV2/2.hCNTF(e, h)を受けた眼を独立に刺激した後にCBFの変化を調べ、偽処置対照と比較すると高用量処置の眼とのCBFの有意差が明らかになった(i)。ns = 有意でない;* = p<0.05、ウィルコクソン符号付順位和検定(Wilcoxon matched-paired signed rank test)。LSI: 高用量 n=3;中用量 n=6。 (a)ドラム回転の方向に関する視運動反応(OMR)の概要図。(b)PW30の個々のマウスから得られたヘッドトラッキング反応の回数(動物ごとに3回テスト)。誤差 = SEM;X = 反応なし;L = 低用量、M = 中用量、H = 高用量。(c)PW30でテストしたOMRに対する反応のグループ平均であって、これは中用量(明るいブルー)および高用量(ダークブルー)から得られたヘッドトラックの数が、対をなすPBS偽処置対照より有意に多いことを示す。ns = 有意でない、*** = p<0.001、一元配置分散分析。低用量n=5、中用量n=6、高用量n=4。 (a)低用量、中用量、および高用量rAAV2/2.hCNTF処置マウスからのトランスクリプトームアウトプットの階層的クラスタリングであって、これはPW30において、対をなすPBS偽処置対照(1群にマウス4匹)に対する遺伝子発現の変化を示し、それぞれの縦列のブルーの実線は、ベースライン(点線)に対する倍率変化を表す。最大の転写変化を伴う遺伝子に関する2つのクラスターを拡大する:上図は、イオン輸送および視覚サイクルに関する遺伝子のダウンレギュレーションを示す;下図は、セリン-、システイン-、およびメタロペプチダーゼインヒビターをコードする遺伝子の大幅なアップレギュレーションを示す。(b)Genome Search Meta Analysis (GMSA)の概念を用いた機能に基づく遺伝子のクラスタリングであって、これはCytoscape用のEnrichment Mapプラグインを用いて可視化された。 (a) rAAV2/2.hCNTF による形質導入後HEK293 細胞から吸引された培養液、または(b) rAAV2/2.hCNTFを注入した眼からの、ELISAによるhCNTFタンパク質レベルの検出であって、これは、hCNTFの強力な分泌作用、ならびに投与ベクター粒子数の変更により用量をおおまかにコントロールできる可能性を示す。(c-j)PW8からPW30まで高用量のrAAV2/2.hCNTFで処置されたRho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスの反復AF眼底イメージング。(c'-j')動物の一生を通じて一定を保つ対象領域(ROI)を決定するために網膜血管標識をいかに使用することができるかを示すAF拡大画像。ROI内において錐体視細胞(白い点)を数値化することができるので(赤い点の重なり)、錐体生存に関する再現性の高い長期的評価が可能となる。生存は、ベースライン(PW8)における錐体視細胞数の関数(%)として表される。スケールバーはすべて〜100μmである。* = p<0.05、Mann-Whitney U検定;n=3ウェル/グループ(a);n=3眼/グループ(b)。 Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスの代表的な近赤外(NIR)および自発蛍光(AF)眼底イメージングであって、各処置群に充てられる:(a) 高用量;(b) 中用量;もしくは(c) 低用量のrAAV2/2.hCNTF ;または(d) PBS偽処置。用量は、眼あたり投与される2μL容量中のゲノム粒子(gp)として与えられる。錐体視細胞は白い点を打ったような自発蛍光(AF)モードで観察される。RPE萎縮は、NIRイメージングによって明るさの増大として観察することができるが、特に低用量(c vii-viii)およびPBS偽処置(d vi-viii)群では、遅い時点で観察することができる。 一方の眼を(a) 低用量(淡いブルー)、(c) 中用量(明るいブルー)、または(e) 高用量のrAAV2/2.hCNTF(ダークブルー)で処置したRho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスの代表的な網膜電図検査(ERG)トレースであって、それを、対をなすPBS偽処置の眼(グレー)と比較した(b、d、f)。PW8、10、および12において1 Hz 25 cd.s / m2閃光刺激(30 cd / m2多色白色光バックグラウンド)に反応する明順応b波の測定であって、b波の振幅を示す。明順応b波の振幅は、12週までの全グループにおいて、存在しないかまたは記録可能なレベル以下であった。* = p<0.05;** = p<0.01;*** = p<0.001、ボンフェローニ(Bonferroni)の事後補正による多重t検定。 (a) 中用量および高用量処置を受けたPW30の個々のマウスに関する錐体視細胞生存とOMRスコアとの相関;実線 = 直線回帰、点線 = 95% 信頼区間。r2=0.80、F=33、p=0.0004。(b) PBS偽処置対照に対して高用量処置を受けた眼のトランスクリプトーム解析を示すグラフィック表示;23365個の転写産物(グレーの点)は、正規化された平均値に対して、log2倍率変化に基づく差次的発現変動を評価した。1533個の遺伝子(赤い点)は、高用量rAAV2/2.hCNTF処置を受けた眼において、対をなす偽処置対照と比較して、有意な発現レベルの相違を有することが認められた。
表1の説明
選定された遺伝子を、遺伝子オントロジーによって分類したものである。遺伝子記号(UCSC, mm9)、遺伝子名、倍率変化、log2比、および有意性をそれぞれの遺伝子について示す。アップレギュレートされた遺伝子 = ブルーの網掛け;ダウンレギュレートされた遺伝子 = 赤の網掛け。
発明の詳細な説明
本発明のさまざまな好ましい特徴および実施形態をここで、限定的でない例によって説明することとする。
本発明の実施は、特に指示のない限り、化学、生化学、分子生物学、微生物学、および免疫学の従来の技術を利用するものとするが、それらの技術は当業者の能力の範囲内である。そうした技術は文献で解説されている。たとえば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F.M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13 and 16, John Wiley & Sons; Roe, B., Crabtree, J. and Kahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; Polak, J.M. and McGee, J.O’D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press; Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; and Lilley, D.M. and Dahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照されたい。これらの一般的な文献は参考として本明細書に組み入れられる。
ある態様において、本発明は、網膜色素変性症を治療または予防する方法を提供するが、その方法は、毛様体神経栄養因子(CNTF)をコードするヌクレオチド配列を含有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、それを必要とする被験体に投与することを含む。網膜色素変性症(RP)
網膜色素変性症(RP)は、表現型として関連づけられる1群の遺伝性網膜ジストロフィーであって、これは通常、桿体視細胞の進行性の変性によって引き起こされる。網膜色素上皮(RPE)および錐体視細胞も、病気の進行中に変性する可能性がある。
RPは、臨床所見として網膜色素の変化という特徴があり、それは細動脈の狭細化および視神経萎縮を伴うことがある。網膜の変化は、網膜色素の分散および凝集に起因する可能性がある。これは、粒状もしくは斑点状から骨小体様の特有の局所凝集体に至るまで幅広い外観を生じさせる可能性がある。黒または焦茶色の星形をした色素の集団が現れることがある。さらに、網膜の四分円に限局された色素沈着、円盤から放射状に広がっているように見える異常、ならびに重篤な血管障害を伴う変化が、観察されることもある。
本明細書に記載のRPの治療または予防は、上記のRP表現型の出現を減らすかまたは予防することができる。それは、視細胞、たとえば錐体細胞を変性から保護する結果をもたらすことができる。好ましくは、治療は錐体および桿体細胞をいずれも変性から保護する。
当業者は、クリニックにおいて、補償光学、自発蛍光、および光干渉断層法(OCT)スキャンなどの技術を用いて桿体および錐体の数を推定することができる。
RPの治療は視覚機能の維持または向上を可能にすることが好ましい。
網膜の外観の可視化、および視覚機能の評価を、当業者は容易に実行することができる。たとえば、当業者が行う視覚機能検査には、最高矯正視力、視野検査、マイクロペリメトリー、色覚、暗順応検査、網膜電図検査、および錐体フリッカー値測定検査などがある。本明細書で使用される「視覚機能の維持または向上」は、本発明の方法を実施する前と後で治療を受けた眼の視覚を比較した時に、上記のような1つもしくは2つ以上の視覚機能検査によって評価される視覚が、実質的に同レベルに維持されること、またはその視覚レベルが向上することと理解されるべきである。
眼の構造
本明細書に記載の薬剤は、網膜色素変性症(RP)の治療または予防に関連して、哺乳動物、好ましくはヒトの眼に投与することができる。
眼疾患治療における当業者は、眼の構造を詳細かつ完全に理解しているものである。しかしながら、本発明に特に関連のある次の構造を説明する。
網膜
網膜は、多層からなる膜であって、眼の内部後眼房を覆い、視覚世界の像を感知して、神経を通じてその像を脳に伝達する。眼の内側から外側へ向かって順に、網膜は、網膜神経感覚上皮および網膜色素上皮の層を有し、網膜色素上皮の外側に脈絡膜がある。
網膜神経感覚上皮および視細胞
網膜神経感覚上皮は、光を直接感知する視細胞をその内部に有する。これは下記の層:内境界膜(ILM);神経線維層;神経節細胞層;内網状層;内顆粒層;外網状層;外顆粒層(視細胞核);外境界膜(ELM);ならびに桿体および錐体からなる視細胞(内節および外節)を含んでなる。
当業者は視細胞について詳細に理解している。簡潔に述べると、視細胞は網膜にある特殊化した神経細胞であって、光を生体信号に変換するものである。視細胞には桿体および錐体細胞があり、これらは網膜の全域にわたって異なる分布をしている。
桿体細胞は網膜の外側部分におもに分布する。この細胞は感度が高く、弱い光で視覚をもたらす。正常なヒト網膜には平均で約1億2500万個の桿体細胞がある。
錐体細胞は網膜の全域にみられるが、網膜神経感覚上皮の窪みである中心窩に特に高密度に存在し、この中心窩が高分解能の中心視力を担っている。錐体細胞の感度は桿体細胞より低い。正常なヒト網膜には平均で約600-700万個の錐体細胞がある。
網膜色素上皮
網膜色素上皮(RPE)は、網膜神経感覚上皮のすぐ外側にある色素性の細胞層である。RPEは、視細胞への栄養物およびその他の物質の輸送、ならびに視力向上のための散乱光の吸収などを含めて、多くの機能を果たしている。
脈絡膜
脈絡膜は、眼の外側にある強膜とRPEとの間にある血管に富んだ層である。脈絡膜の血管系は酸素と栄養を網膜に供給することができる。
毛様体神経栄養因子(CNTF)
毛様体神経栄養因子(CNTF)は、ポリペプチドホルモンであり神経成長因子であるが、これは神経細胞およびオリゴデンドロサイトの生存因子であることが明らかになっている。それに加えて、CNTFは特定の神経細胞集団において神経伝達物質合成および神経突起伸長を促進することが判明している。
本発明のある実施形態において、CNTFはヒトCNTFである。
ある実施形態においてCNTFをコードするヌクレオチド配列は、NCBIアクセッション番号NM_000614として登録されている配列である。
別の実施形態において、CNTFをコードするヌクレオチド配列は下記である:
Figure 2020059719
(配列番号1)
ある実施形態において、CNTFのアミノ酸配列は、NCBIアクセッション番号NP_000605とされる配列である。
別の態様において、CNTFのアミノ酸配列は下記である:
Figure 2020059719
(配列番号2)
本発明のCNTFをコードするヌクレオチド配列はたとえば、配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよく、そのヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質は、配列番号2で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
本発明のCNTFをコードするヌクレオチド配列はたとえば、配列番号2に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードしていてもよく、そのアミノ酸配列は、配列番号2で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
好ましくは、本発明のヌクレオチド配列は、RPに罹患したかまたは発症するリスクのある被験体において、
(a) RPに関連する網膜色素変化の臨床的所見
(b) 視細胞(たとえば、錐体細胞、好ましくは錐体および桿体細胞)死;および/または(c) 視覚機能の低下
を、配列番号2のタンパク質と比べて、同等またはそれ以上に予防するのに役立つタンパク質をコードする。
分泌シグナル配列
本発明のある実施形態において、AAVベクターは、CNTFをコードするヌクレオチド配列に機能しうるように連結された分泌シグナル配列を含有する。
シグナル配列は一般に、タンパク質のN末端にある短いペプチドであって、そのタンパク質を細胞の分泌経路に向かわせるものである。本明細書で使用される「分泌シグナル配列」は、必要に応じて、細胞からのタンパク質(たとえばCNTF)の分泌を促進するペプチド、または、そのペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
分泌シグナル配列のペプチドは、それが細胞から分泌されるときにタンパク質から切断され、結果としてそのタンパク質の成熟型がもたらされる。
ある実施形態において、分泌シグナル配列は、ヒト神経栄養因子(NGF)分泌シグナル配列である。
別の実施形態において、分泌シグナル配列は、NCBIアクセッション番号NM_002506とされるNGFヌクレオチド配列のシグナル配列である(たとえば、そのアクセッション番号を付されたmRNAのうちヌクレオチド170-223に相当する配列)。
別の実施形態において、分泌シグナル配列は下記である:
Figure 2020059719
(配列番号3)
もう1つの実施形態において、分泌シグナル配列は下記である:
Figure 2020059719
(配列番号7)
本発明の分泌シグナル配列は、たとえば、配列番号3または7に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよく、そのヌクレオチド配列によってコードされるペプチドが、機能しうるように連結されているCNTFを、その発現細胞から分泌させる。
「機能しうるように連結される」とは、個々の成分が、実質的に妨げられることなく、その機能を果たすことができるようにつなぎ合わされていることを意味すると理解される(たとえば、分泌シグナル配列は、目的のヌクレオチドに機能しうるように連結され、その目的のヌクレオチドによってコードされるタンパク質の、細胞からの分泌を促進することができる;あるいは、プロモーターは、目的のヌクレオチドに機能しうるように連結され、細胞においてその目的ヌクレオチドの発現を促進することができる)。
配列番号8および9は、ヒトCNTF配列に機能しうるように連結されたヒトNGF分泌シグナル配列の、それぞれ、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の一例に相当する。
Figure 2020059719
(配列番号8) - ヒトNGF分泌シグナル配列に下線を付す
Figure 2020059719
(配列番号9) - ヒトNGF分泌シグナル配列に下線を付す
本発明のある実施形態において、AAVベクターは、配列番号8に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含有し、そのヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質は、配列番号9で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
本発明の別の実施形態において、AAVベクターは、配列番号9に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含有し、そのアミノ酸配列は、配列番号9で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
ベクター
ベクターは、ある環境から別の環境への主体の移動を可能にするか、または促進するツールである。
本発明で使用されるベクターは、ポリヌクレオチドの発現用のプロモーター、ならびに必要ならばプロモーターの制御因子を含有することができる。
アデノ随伴ベクター(AAV)ベクター
本発明のベクターは、アデノ随伴ウイルス(AVV)ベクターである。AAVベクターはAAVベクター粒子の形をとることが好ましい。
たとえばAAVに由来するような、ウイルスベクターおよびウイルスベクター粒子を調製および改変する方法は当技術分野でよく知られており、当業者はそれを必要とされる目的に容易に適合させることができる。
AAVベクターはAAVゲノムもしくはその誘導体を含有することができる。
AAVゲノムは、AAV粒子の作製に必要な機能をコードするポリヌクレオチド配列である。こうした機能には、宿主細胞内でのAAVの複製およびパッケージングにおいて作動するもがあり、AAVゲノムをカプシドで包んでAAV粒子とすることも含まれる。天然に存在するAAVは複製欠損であり、複製およびパッケージングサイクルを完成するためにtransでのヘルパー機能の提供に頼ることになる。したがって、本発明のベクターのAAVゲノムは典型的には複製欠損性である。
AAVゲノムは一本鎖型であって、プラス鎖でもマイナス鎖でもよいが、二本鎖型をとることもできる。二本鎖型の使用は、標的細胞においてDNA複製ステップのバイパスを可能にし、導入遺伝子の発現を促進することができる。
AAVゲノムは、AAVの任意の天然由来の血清型、分離株、またはクレードから得られる。したがって、AAVゲノムは、天然に存在するAAVの完全なゲノムであるといえる。当業者に知られているように、天然に存在するAAVは、さまざまな生物学的体系にしたがって、分類することができる。
通常、AAVはその血清型の観点から言及される。血清型はAAVのさまざまな亜種に相当するが、それは、そのカプシド表面抗原の発現特性のため、特有の反応性を有しており、それを用いて、他のさまざまな亜種からそれを鑑別することができる。典型的には、特定のAAV血清型を有するウイルスは、他のいかなるAAV血清型に特異的な中和抗体とも、効率よく交差反応しない。
AAV血清型には、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、およびAAV11、ならびに組換え血清型、たとえばRec2およびRec3があり、最近霊長類の脳から同定された。これらのAAV血清型はいずれも本発明に使用することができる。このように、本発明のある実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rec2、またはRec3 AAV ベクター粒子である。
本発明で用いる好ましいAAV血清型はAAV2である。
本発明で用いる、特に関心の対象となる他の血清型は、AAV4、AAV5、およびAAV8などであるが、これらは、網膜色素上皮などの眼の組織において効率よく形質導入を生じさせるものである。
AAV血清型に関する総説は、Choi et al. (2005) Curr. Gene Ther. 5: 299-310 and Wu et al. (2006) Molecular Therapy 14: 316-27に見いだすことができる。本発明に使用されるAAVベクターゲノムの配列、またはITR配列、rep、もしくはcap遺伝子などを含むAAVゲノムのエレメントの配列は、AAV全ゲノム配列に関する下記のアクセッション番号から得られる:アデノ随伴ウイルス 1 NC_002077, AF063497;アデノ随伴ウイルス 2 NC_001401;アデノ随伴ウイルス 3 NC_001729;アデノ随伴ウイルス 3B NC_001863;アデノ随伴ウイルス 4 NC_001829;アデノ随伴ウイルス 5 Y18065, AF085716;アデノ随伴ウイルス6 NC_001862;鳥類AAV ATCC VR-865 AY186198, AY629583, NC_004828;鳥類AAV株DA-1 NC_006263, AY629583;ウシAAV NC_005889, AY388617。
AAVはまた、クレード(分岐株)またはクローンの観点からも言及されることがある。これは天然由来AAVの系統発生学上の類縁関係に関するものであって、典型的には、共通祖先にさかのぼることができ、その子孫のすべてを含む、AAVの系統発生群に関連している。それに加えて、AAVは、特定の分離株、すなわち天然に存在する特定のAAVの遺伝的隔離集団に関して言及されることがある。遺伝的隔離集団という用語は、天然に存在する他のAAVとの遺伝子混合をわずかしか受けてこなかったAAV集団のことを言い、したがって、遺伝子レベルですぐに識別できる程度に異なる集団を示す。
当業者は、周知の一般知識に基づいて、本発明で用いるAAVの適当な血清型、クレード、クローン、または分離株を選択することができる。たとえば、AAV5カプシドは、遺伝性色覚異常の矯正の成功からも明らかなように、霊長類錐体視細胞に形質導入することが判明している(Mancuso et al. (2009) Nature 461: 784-7)。
AAV血清型は、AAVウイルス感染の組織特異性(もしくは親和性)を決定する。したがって、本発明に沿って患者に投与されるAAVに使用するために好ましいAAV血清型は、眼の内部の標的細胞に自然の親和性を有するか、またはその細胞に高い感染効率を有するものである。ある実施形態において、本発明に使用するAAV血清型は、網膜神経感覚上皮、網膜色素上皮、および/または脈絡膜の細胞に感染するものである。
典型的には、AAVの天然由来の血清型、分離株、またはクレードのAAVゲノムは、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)を含有する。ITR配列はcisに作用して、機能的な複製開始点を提供し、ベクターの組込みおよび細胞ゲノムからのベクターの切り出しを可能にする。好ましい実施形態において、1つもしくは複数のITR配列がCNTFをコードするヌクレオチド配列に隣接する。AAVゲノムは典型的には、repおよび/またはcap遺伝子などのパッケージング遺伝子も含有しており、これらはAAV粒子のためのパッケージング機能をコードするものである。rep遺伝子は、タンパク質Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40、またはそれらのバリアントのうち1つもしくは複数をコードする。cap遺伝子は、VP1、VP2、およびVP3、またはそれらのバリアントなどの、1つもしくは複数のカプシドタンパク質をコードする。これらのタンパク質は、AAV粒子のカプシドを構成する。カプシドバリアントは下記で検討する。
プロモーターは、パッケージング遺伝子のそれぞれに機能しうるように連結される。そうしたプロモーターの具体例としては、p5、p19、およびp40プロモーターがある(Laughlin et al. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 5567-5571)。たとえば、p5およびp19プロモーターは、通常rep遺伝子の発現に使用されるのに対して、p40プロモーターは一般にcap遺伝子発現に使用される。
したがって、上記のように本発明のベクターに使用されるAAVゲノムは、天然に存在するAAVの全ゲノムとすることができる。たとえば、全AAVゲノムを含有するベクターを用いて、AAVベクターまたはベクター粒子をin vitroで調製することができる。しかしながら、そのようなベクターを患者に投与することは原理上は可能であるが、実際にはめったに行われない。好ましくは、AAVゲノムは患者に投与することを目的として誘導体化されている。そのような誘導体化は当技術分野では一般的であって、本発明は任意の既知のAAVゲノム誘導体の使用、ならびに当技術分野の既知の技術を応用して作製することができる誘導体の使用を包含する。AAVゲノムおよびAAVカプシドの誘導体化は、Coura and Nardi (2007) Virology Journal 4: 99、ならびにChoi et al. およびWu et al.、上記、において概説されている。
AAVゲノムの誘導体には、AAVゲノムの任意のトランケート型または改変型が含まれるが、これらはin vivoで本発明のベクターからの導入遺伝子の発現を可能にするものである。概して、重要なことであるが、最小限のウイルス配列しか含有しないのに上記の機能を保持するように、AAVゲノムをトランケートすることが可能である。これは、ベクターと野生型ウイルスとの組換えのリスクを低下させるために、また、標的細胞中にウイルス遺伝子タンパク質が存在することによる細胞性免疫反応の惹起を回避するためにも、安全上の理由で好ましい。
典型的には、誘導体は、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)、好ましくは2つ以上のITR、たとえば2つのITRもしくは3つ以上を含有する。1つもしくは複数のITRは、異なる血清型を有するAAVゲノムから得ることができるが、キメラもしくは変異型ITRであってもよい。好ましい変異型ITRは、trs(末端分離部位)の欠損を有するものである。この欠損は、コード配列と相補配列を共に含有する一本鎖ゲノム、すなわち自己相補的AAVゲノムを生成する、ゲノムの連続複製を可能にする。これは、標的細胞においてDNA複製のバイパスをもたらすので、導入遺伝子発現の促進を可能にする。
1つもしくは複数のITRは、いずれか一方の末端においてCNTFをコードするヌクレオチド配列に隣接することが好ましい。1つもしくは複数のITRを含有することは、たとえば、宿主細胞DNAポリメラーゼの作用によって一本鎖ベクターDNAを二本鎖DNAに変換した後、宿主細胞の核内において本発明のベクターのコンカテマー形成を促進するために好ましい。このようなエピソームコンカテマーの形成は、宿主細胞の生存期間中ベクター構築物を保護し、それによってin vivoで導入遺伝子の長期にわたる発現を可能にする。
好ましい実施形態において、ITRエレメントは、誘導体において天然AAVゲノムから保持された唯一の配列となる。したがって、誘導体は、天然ゲノムのrepおよび/またはcap遺伝子、ならびに天然ゲノムの他のいかなる配列も含有しないことが好ましい。これは上記の理由、ならびに宿主細胞ゲノムへのベクターの組込みの可能性を減少させるという理由でも、好ましい。それに加えて、AAVゲノムのサイズを小さくすることによって、導入遺伝子に加えて他の配列エレメント(たとえば調節エレメント)をベクター内に組み込む際の柔軟性を高めることができる。
したがって、本発明の誘導体において、以下の部分を除去することができる:1つの逆方向末端反復(ITR)配列、複製(rep)およびカプシド(cap)遺伝子。しかしながら、ある実施形態において、誘導体は、1つもしくは複数のrepおよび/またはcap遺伝子、またはAAVゲノムの他のウイルス配列を、追加して含有することができる。天然に存在するAAVは、高頻度でヒト第19染色体の特定部位に組み込まれ、無視できる頻度の無作為な組込みを示すが、ベクターの組込み能力の保持は治療の場において許容することができる。
誘導体がカプシドタンパク質、すなわちVP1、VP2、および/またはVP3を含有する場合、その誘導体は、1つもしくは複数の天然に存在するAAVのキメラ誘導体、シャッフル誘導体、またはカプシド改変誘導体とすることができる。より詳細には、本発明は、同一ベクター内に、AAVの異なる血清型、クレード、クローン、または分離株からのカプシドタンパク質配列の提供を包含する(すなわち偽型ベクター)。
キメラ、シャッフル、またはカプシド改変誘導体は、典型的には、1つもしくは複数の望ましい機能性をウイルスベクターに与えるように選択される。したがって、これらの誘導体は、AAV2などの天然に存在するAAVゲノムを含有するAAVベクターと比較して、遺伝子導入効率の増加、免疫原性(液性もしくは細胞性)の低下、ウイルス親和性域の変化、および/または特定の細胞型へのターゲティングの向上を示す可能性がある。遺伝子導入効率の増加は、細胞表面における受容体もしくはコレセプター結合の向上、内部移行の向上、細胞内および核内への輸送の向上、ウイルス粒子の脱殻の改善、ならびに一本鎖ゲノムから二本鎖型への変換の向上によって達成される可能性がある。効率の向上は、ウイルス親和性域の変化、または特定の細胞集団へのターゲティングにも関係する可能性があるので、ベクターは、必要のない組織への投与によって薄められない。
キメラカプシドタンパク質には、天然に存在するAAV血清型の2つ以上のカプシドコード配列間での組換えによって作製されるものが含まれる。これは、たとえば、マーカー救済アプローチによって行うことができるが、このアプローチにおいて、ある血清型の非感染性カプシド配列は、別の血清型のカプシド配列とコトランスフェクトされ、指定の選択によって、望ましい特性を有するカプシド配列を選択する。異なる血清型のカプシド配列を、細胞内で相同組換えによって変更し、新規キメラカプシドタンパク質を作製することができる。
キメラカプシドタンパク質には、特定のカプシドタンパク質ドメイン、表面ループ、もしくは特定のアミノ酸残基を、2つ以上のカプシドタンパク質の間、たとえば、異なる血清型の2つ以上のカプシドタンパク質の間、で移動させるようにカプシドタンパク質配列を操作することによって作製されたものも含まれる。
シャッフルもしくはキメラカプシドタンパク質は、DNAシャフリングまたはエラープローンPCRによって作製することもできる。ハイブリッドAAVカプシド遺伝子は、関連するAVV遺伝子の配列、たとえば、複数の異なる血清型のカプシドタンパク質をコードする配列、をランダムに断片化した後、セルフプライミングポリメラーゼ反応で断片を再構成することによって、作製することができるが、この反応は配列相同性のある領域においてクロスオーバーを引き起こす可能性もある。こうしていくつかの血清型のカプシド遺伝子をシャッフルすることによって作製されたハイブリッドAAV遺伝子のライブラリーをスクリーニングして、望ましい機能性を有するウイルスクローンを同定することができる。同様に、エラープローンPCRを用いて、AAVカプシド遺伝子をランダムに変異させ、その後望ましい特性を求めて選択することができる多様なバリアントのライブラリーを作製することができる。
カプシド遺伝子の配列を遺伝子改変して、天然の野生型配列に対して特定の欠失、置換、または挿入を導入することもできる。詳細には、カプシド遺伝子は、無関係のタンパク質もしくはペプチドの配列をカプシドコード配列のオープンリーディングフレーム内、またはカプシドコード配列のNおよび/またはC末端に挿入することによって改変することができる。
無関係なタンパク質もしくはペプチドは、特定の細胞型に対するリガンドとして機能するものであれば好都合であり、それによって標的細胞への結合の改善をもたらし、あるいは、特定の細胞集団に対するベクターのターゲッティング特異性を高めることができる。例としてはRGDペプチドの使用が挙げられるが、それは網膜色素上皮における取り込みをブロックし、それによって周囲の網膜組織の形質導入を促進することができる(Cronin et al. (2008) ARVO Abstract: D1048)。無関係なタンパク質は、製造過程の一環としてウイルス粒子の精製に役立つもの、すなわちエピトープもしくはアフィニティタグであってもよい。挿入部位は、典型的には、ウイルス粒子の他の機能、たとえば、内部移行、ウイルス粒子の輸送を妨げないように選択されるものとする。当業者は、その周知の一般知識に基づいて、挿入に適した部位を特定することができる。個別の部位は、上記で引用されたChoi et al.に記載されている。
本発明はさらに、天然のAAVゲノムの配列とは異なる順序および配置をとるAAVゲノムの配列の提供を含む。本発明はまた、1つもしくは複数のAAV配列または遺伝子の、別のウイルス由来の配列による置換、または2つ以上のウイルスに由来する配列で構成されるキメラ遺伝子による置換を含む。このようなキメラ遺伝子は、異なるウイルス種の2つ以上の関連ウイルスタンパク質に由来する配列からなるとすることができる。
本発明のベクターは、AAVゲノムもしくはその誘導体、およびCNTF導入遺伝子もしくはそのバリアントをコードする配列を含有するヌクレオチド配列の形をとることができる。
本発明のAAV粒子には、ある血清型のITRを有するAAVゲノムもしくは誘導体が、異なる血清型のカプシド内にパッケージされている、カプシドを交換した形のものが含まれている。本発明のAAV粒子には、2つ以上の異なる血清型に由来する未改変カプシドタンパク質の混合物がウイルス粒子を構成している、モザイク型のものもある。またAAV粒子には、カプシド表面に吸着されるリガンドを有する化学修飾型もある。たとえば、このようなリガンドには、特定の細胞表面受容体を標的とするための抗体を含めることができる。
したがって、たとえば、本発明のAAV粒子には、AAV2ゲノムおよびAAV2カプシドタンパク質を有するもの(AAV2/2)、AAV2ゲノムおよびAAV5カプシドタンパク質を有するもの(AAV2/5)、およびAAV2ゲノムおよびAAV8カプシドタンパク質を有するもの(AAV2/8)などがある。
プロモーターおよび制御配列
本発明のベクターはまた、in vitroおよびin vivoでCNTF導入遺伝子の発現を可能にするエレメントを含んでいてもよい。こうしたエレメントは発現制御配列と呼ばれることがある。したがって、ベクターは典型的には、導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列に機能しうるように連結された発現制御配列(たとえばプロモーター配列を含む)を含有する。
適当なプロモーターであればいずれを使用してもよく、当業者はそれを容易に選択することができる。プロモーター配列は、構成的に機能する(すなわち、いかなる宿主細胞環境においても作動する)こともあるが、特定の宿主細胞環境においてのみ作動し、したがって特定の細胞型において導入遺伝子の標的発現を可能にすることもできる(たとえば、組織特異的プロモーター)。プロモーターは別のファクター、たとえば宿主細胞中に存在するファクター、の存在に応じて誘導性の発現を示すこともある。いずれにせよ、ベクターが治療のために投与される場合、プロモーターは標的細胞環境において機能すれば好ましい。
ある実施形態において、プロモーターは、網膜細胞集団においてのみ導入遺伝子が発現されることを可能にするように、網膜細胞に特異的は発現を示すことが好ましい。したがって、プロモーターからの発現は、網膜細胞特異的であり、たとえば、網膜神経感覚上皮および網膜色素上皮の細胞だけに限定されるものとすることができる。
好ましいプロモーターにはニワトリβアクチン(CBA)プロモーターがあり、適宜、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントと組み合わせてもよい。本発明に用いるプロモーターの例としては、ハイブリッドCBA/CAGプロモーター、たとえばrAVE発現カセットに使用されるプロモーターがある(GeneDetect.com)。本発明に用いる他のプロモーター例は、次の配列を有する:
Figure 2020059719
Figure 2020059719
(配列番号4)
網膜特異的な遺伝子発現を引き起こす、ヒト配列に基づくプロモーターの例としては、桿体および錐体のロドプシンキナーゼ(Allocca et al. (2007) J. Virol. 81: 11372-80)、錐体だけのPR2.1(Mancuso et al. (2009) Nature 461: 784-7)、および/または網膜色素上皮のRPE65(Bainbridge et al. (2008) N. Engl. J. Med. 358: 2231-9)などがある。
本発明のベクターは、転写前または転写後に作用する1つもしくは複数の制御配列を追加して含んでいてもよい。制御配列は、天然の導入遺伝子座の一部であってもよいが、異種制御配列であってもよい。本発明のベクターは、天然の導入遺伝子転写物に由来する5'-UTRまたは3'-UTRの一部を含有することができる。
制御配列は、導入遺伝子の発現を促す任意の配列、すなわち、転写物の発現を増加させ、mRNAの核外輸送を改善し、またはその安定性を高めるように作用する任意の配列である。このような制御配列には、たとえば、エンハンサーエレメント、転写後制御エレメント、およびポリアデニル化部位が含まれる。好ましいポリアデニル化部位は、以下に示されるようなウシ成長ホルモンポリAシグナルである:
Figure 2020059719
(配列番号5)
本発明のベクターに関して、このような制御配列はシス作用性である。しかしながら、本発明は、追加の遺伝子構築物上にあるトランス作用性制御配列の使用も包含する。
本発明のベクターに用いる、好ましい転写後制御エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント(WPRE)またはそのバリアントである。WPREの典型的な配列を下記に示す:
Figure 2020059719
(配列番号6)
本発明はまた、WPREなしのベクターと比べて導入遺伝子の発現を増大させるWPREの任意のバリアント配列の使用も包含する。バリアント配列は、配列番号6に対してその配列全体を通して少なくとも70%の相同性を示すことが好ましく、配列番号6に対してその配列全体を通してより好ましくは75%、80%、85%、90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%相同性を示す。
本発明のベクターに使用することができる別の制御配列は、足場付着領域(SAR)である。追加の制御配列も当業者は容易に選択することができる。
投与方法
本発明のある実施形態において、AAVベクターは、網膜下注射、直接網膜注射、または硝子体内注射によって被験体の眼に投与される。
当業者は、個別の網膜下注射、直接網膜注射、または硝子体内注射に精通し、それをうまく行うことができる。
好ましくは、AAVベクターは網膜下注射により投与される。
網膜下注射
網膜下注射は、網膜下腔への、すなわち網膜神経感覚上皮のすぐ下への、注入である。網膜下注射の際に、注入された物質は、視細胞および網膜色素上皮(RPE)層に向けられ、それらの間に空間を作る。
注入が小さい網膜切開によって行われる場合、網膜剥離が引き起こされる可能性がある。注入物質によって生じる、剥離されて浮き上がった層は「ブレブ」と呼ばれる。
網膜下注射により生じる孔は、注入された溶液が投与後に硝子体腔に顕著に逆流しないように十分に小さくなければならない。このような逆流は、薬剤の効果が標的ゾーンから逸れていきかねないので、薬剤注入時に特に問題になるであろう。注射は、網膜神経感覚上皮に自然に閉じる注入孔を作ることが好ましく、すなわち、注射針が抜去されたら、針でできた孔は、注入物質がその孔を通って放出されることがほとんどないか、事実上ないように再び閉じられる。
このプロセスを容易にするために、専用の網膜下注射針が市販され利用できる(たとえば、DORC 41G Teflon subretinal injection needle, Dutch Ophthalmic Research Center International BV, Zuidland, The Netherlands)。これらは網膜下注射を行うためにデザインされた針である。
注射時に網膜への損傷が起こらないかぎり、また十分に細い針が使用されるかぎり、実質的にすべての注入物質が、局所的な網膜剥離部位において、剥離された網膜神経感覚上皮とRPEとの間に局在化し続ける(すなわち、硝子体腔に逆流しない)。実際、典型的な短期間のブレブの存続は、通常、注入物質の硝子体内への流出がほとんどないことを示す。ブレブは、注入物質が吸収されるにつれて、長い間には消失することになる。
たとえば光干渉断層撮影法を用いた、眼、とくに網膜、の可視化を、術前に行うことができる。
2段階網膜下注射
本発明のベクターは、第1の溶液の網膜下注射によって局所的な網膜剥離を生じさせるという、2段階法を用いることによって精度および安全性を高めて投与することができる。第1の溶液にはベクターは含まれていない。次に第2の網膜下注射を用いて、ベクターを含有する薬剤が、第1の網膜下注射により生じたブレブの網膜下液に送り込まれる。薬剤を送達する注射を、網膜を剥離するために使用すべきでないので、溶液の一定量を第2段階で注入することができる。
本発明のある実施形態において、AAVベクターは下記によって送達される:
(a) 網膜を少なくとも部分的に剥離させるのに十分な量の溶液を、網膜下注射によって被験体に投与し、網膜下ブレブを形成することであって、この溶液はベクターを含有しない;ならびに
(b) ステップ(a)で形成されたブレブ内に網膜下注射により、薬剤組成物を投与することであって、この薬剤組成物はベクターを含有する。
網膜を少なくとも部分的に剥離させるためにステップ(a)で注入される溶液の量は、たとえば、約10-1000 μL、たとえば約50-1000、100-1000、250-1000、500-1000、10-500、50-500、100-500、250-500μLとすることができる。その量はたとえば、約10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000μLとすることができる。
ステップ(b)で注入される薬剤組成物の量は、たとえば、約10-500μL、たとえば約50-500、100-500、200-500、300-500、400-500、50-250、100-250、200-250、または50-150μLとすることができる。その量はたとえば、約10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500μLとすることができる。好ましくは、ステップ(b)で注入される薬剤組成物の量は、100μLである。量が多いほど網膜を無理に伸ばすリスクを高める可能性があるが、量が少なくなると見えにくくなる可能性がある。
薬剤を含有しない溶液(すなわち、ステップ(a)の「第1の溶液」)は、上記の薬物祖含有する溶液と同様に調製することができる。薬剤を含有しない好ましい溶液は、網膜下腔のpHおよび浸透圧に適合した、平衡塩類溶液(BBS)または同様の緩衝溶液である。
術中における網膜の可視化
特定の状況下で、たとえば、網膜変性の末期に、網膜を確認することは困難であるが、それは網膜が薄く、透明であって、網膜が載っている崩壊した色素沈着の強い上皮を背景として見るのがむずかしいためである。青色の生体染色色素(たとえば、Brilliant Peel(登録商標)、Geuder; MembraneBlue-Dual(登録商標)、Dorc)の使用は、網膜剥離手順(すなわち、本発明の2段階網膜下注入法のステップ(a))のために作られる網膜の孔の識別を容易にすることができるので、薬剤は硝子体腔への逆流のリスクなしに同じ孔を通して投与することができる。
青色生体染色色素の使用はまた、肥厚した内境界膜や網膜上膜が存在する網膜のあらゆる領域を識別するが、これらの組織のいずれかを貫通する注入は、網膜下腔への巧みなアクセスを妨げるであろう。さらに、術後すぐの時期に上記組織構造のいずれかを収縮させることは、網膜の注入孔を無理に引き延ばすことにつながりかねず、これは硝子体腔への薬剤の逆流を引き起こす可能性がある。
医薬組成物および注射溶液
本発明の薬剤、たとえばベクターは、調剤して医薬組成物とすることができる。こうした組成物は、薬剤に加えて、製薬上許容される基剤、希釈剤、添加剤、緩衝剤、安定化剤、または当業者に周知のその他の物質を含有することができる。そのような物質は、毒性がなく、活性成分の有効性を妨げないことが必要である。基剤および他の物質の正確な特性は、投与経路、たとえば網膜下注射、直接網膜注射または硝子体内注射に応じて、当業者が決定することができる。
医薬組成物は、典型的には液体の形態をとる。液体医薬組成物は一般に、液体基剤、たとえば水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油、または合成油を含有する。生理食塩水、塩化マグネシウム、ブドウ糖もしくは他の糖類溶液、またはグリコール類、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどを含めることができる。場合によっては、界面活性剤、たとえばプルロニック酸(PF68)0.001%を使用してもよい。
患部に注射するために、活性成分は、発熱物質を除去され、安定したpH、等張性および安定性を有する水溶液の形態をとることができる。当業者は、たとえば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、または乳酸リンゲル液などの等張溶媒を用いて適切な溶液を調製することが十分可能である。防腐剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、および/または他の添加物を必要に応じて含有することができる。
遅延放出のために、薬剤は、当技術分野で既知の方法にしたがって、たとえば生体適合性ポリマーから形作られたマイクロカプセルとして、またはリポソーム輸送システムとして、持続放出用に製剤された医薬組成物中に含まれていてもよい。
治療方法
当然のことながら、ここで治療について言及することはすべて、治癒的、緩和的、および予防的治療を含む;ただし、本発明において予防に対する言及は、より一般的に予防的治療に関連づけられる。治療にはまた、疾患の重症度の進行を止めることを含めることもできる。
哺乳動物、特にヒトの治療が好ましい。しかしながらヒトの治療も獣医学的治療も、ともに本発明の範囲に含まれる。
バリアント、誘導体、アナログ、ホモログ、および断片
本明細書に記載の特定のタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明は、それらのバリアント、誘導体、アナログ、ホモログ、および断片の使用も包含する。
本発明に関連して、任意の所与の配列のバリアントは、残基(アミノ酸であるか核酸であるかにかかわらず)の特定の配列が、当該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの機能を実質的に保持するように改変されている配列である。バリアント配列は、天然に存在するタンパク質中に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、置き換えおよび/または変異によって得ることができる。
本発明のタンパク質もしくはポリペプチドに関して本明細書で使用される「誘導体」という用語は、結果として得られたタンパク質もしくはポリペプチドがその内在する機能のうち少なくとも1つを実質的に保持している限り、その配列からの、またはその配列に対する、1つ(もしくは複数の)アミノ酸残基の置換(substitution)、変異、修飾、置き換え(replacement)、欠失、および/または付加を含んでいる。
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して本明細書で使用される「アナログ(類似体)」という用語は、あらゆるミメティック(模倣化合物)、すなわちそれが模倣しているポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの内在する機能のうち少なくとも1つを保有する化合物を含む。
典型的には、改変された配列が実質的に必要とされる活性もしくは能力を保持するならば、アミノ酸置換を、たとえば1、2、もしくは3から10もしくは20置換まで行うことができる。アミノ酸置換は、非天然アナログの使用を含むことができる。
本発明に使用されるタンパク質は、サイレント変異を生じた結果、機能的に同等のタンパク質をもたらす、アミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を有することができる。内在する機能が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似に基づいて、計画的なアミノ酸置換を行うことができる。たとえば、負電荷を持つアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある;正電荷を持つアミノ酸には、リジンおよびアルギニンがある;さらに、類似した親水性値を有する非荷電性極性頭部基を持つアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、およびチロシンがある。
たとえば下記の表にしたがって、保存的置換を行うことができる。縦列第2列において同一ブロックにあるアミノ酸、好ましくは縦列第3列において同一行にあるアミノ酸を互いに置換することができる:
Figure 2020059719
本明細書で使用される「ホモログ」という用語は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列と一定の相同性を有するものを意味する。「相同性(homology)」という用語は「同一性(identity)」と同じと考えられる。
相同配列は、対象となる配列に対して少なくとも50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85% or 90%同一、好ましくは少なくとも95%もしくは97%もしくは99%同一と考えられるアミノ酸配列を含めることができる。典型的には、ホモログは、対象のアミノ酸配列と同一の活性部位などを含有すると考えられる。相同性は、類似性(すなわち類似した化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考察することもできるが、本発明に関しては、相同性を、配列同一性によって表すことが好ましい。
相同配列は、対象の配列に対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、もしくは90%同一であり、好ましくは少なくとも95%もしくは97%もしくは99%同一であるといえるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。相同性は、類似性の観点から考察することもできるが、本発明に関しては、相同性を、配列同一性によって表すことが好ましい。
好ましくは、本明細書に詳述される配列番号のいずれか1つに対してパーセント同一性を有する配列への言及は、言及された配列番号の全長にわたって記載のパーセント同一性を有する配列のことをいう。
相同性比較は、視覚的に、あるいはより一般的には、すぐに利用できる配列比較プログラムを用いて、行うことができる。この市販のコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間のパーセント相同性もしくは同一性を計算することができる。
パーセント相同性は、連続した配列にわたって計算することが可能であり、すなわち、一方の配列を他方の配列とともに整列させて、一方の配列中の各アミノ酸を直接、もう一方の配列中の対応するアミノ酸と、1残基ずつ比較する。これを「ギャップなしの」アラインメントと呼ぶ。典型的には、このようなギャップなしのアラインメントは、比較的短い残基数でしか行われない。
これは非常にシンプルで一貫性のある方法ではあるが、たとえば、大域アラインメントを行うとき、ヌクレオチド配列中の1つの挿入もしくは欠失が、その他の点では同一である配列ペアにおいて、後続のコドンをアラインメントから外れさせ、その結果パーセント同一性の大幅な減少をもたらす可能性があることを考慮に入れることができない。このため、ほとんどの配列比較法は、全体の相同性スコアに過度にペナルティを科すことなく、挿入および欠失の可能性を考慮した最適なアラインメントをもたらすようにデザインされている。これは、局所相同性を最大化しようと試みて、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することによって達成される。
しかしながら、こうしたより複雑な方法は、アラインメントに生じるギャップのそれぞれに「ギャップペナルティ」を割り当てるので、同数の同一アミノ酸に関して、できるだけ少数のギャップを有する配列アラインメントが、2つの比較される配列間の高い関連性を反映して、多くのギャップを有するものよりも高いスコアを達成することになる。「アフィンギャップコスト」が通常使用されるが、これはギャップの存在に比較的高いコストをかけ、ギャップの後続の各残基により小さいペナルティを科すものである。これはもっとも一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは当然、より少ないギャップを有する最適化されたアラインメントをもたらすことになる。大半のアラインメントプログラムはギャップペナルティを変更することができる。しかしながら、配列比較のためにそうしたソフトウェアを使用する場合、デフォルト値を使用することが好ましい。たとえば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティは、ギャップについて-12であり、それぞれの伸長について-4である。
したがって、最大パーセンテージ相同性を計算するにはまず、ギャップペナルティを考慮に入れて最適アラインメントを作ることが必要である。このようなアラインメントを実行するための適当なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A.; Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999) 前記 - Ch. 18を参照されたい)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)、ならびに比較ツールのGENEWORKS一式があるがそれらに限定されない。BLASTおよびFASTAはいずれも、オフラインおよびオンライン検索に使用可能である(Ausubel et al. (1999) 前記、ページ7-58から7-60)。しかしながら、用途によっては、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesというもう1つのツールもタンパク質およびヌクレオチド配列の比較のために使用することができる(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174: 247-50; FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177: 187-8を参照されたい)。
最終的なパーセンテージ相同性は、同一性の観点で評価することができるが、アラインメントプロセスそれ自体は通常、全か無かのペア比較に基づくものではない。にもかかわらず、スケーリングされた相同性スコア行列が一般に使用されるが、それは化学的類似性もしくは進化距離に基づいてそれぞれのペアワイズ比較にスコアを割り当てるものである。よく使用されるそうした行列の例は、BLOSUM62行列 - BLASTプログラム一式のためのデフォルト行列である。GCG Wisconsinプログラムは一般に、パブリックデフォルト値か、または、指定された場合は、カスタム記号比較テーブルのいずれかを使用する(さらに詳しくは、ユーザーマニュアルを参照されたい)。用途によって、GCGパッケージのパブリックデフォルト値か、または他のソフトウェアならBLOSUM62などのデフォルト行列を使用することが好ましい。
ソフトウェアが最適アラインメントを作成したら、パーセンテージ相同性、好ましくはパーセンテージ配列同一性を計算することができる。ソフトウェアは典型的には、配列比較の一環としてこれを行い、計算結果をもたらす。
全長CNTFの「断片」は、バリアントでもあるが、その用語は典型的には、機能として、またはたとえばアッセイにおいて、関心対象となるポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの選択された領域のことをいう。したがって、「断片」は、全長ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの一部分であるアミノ酸配列もしくは核酸配列を意味する。
このようなバリアントは、部位特異的変異誘発などの標準的な組換えDNA技術を用いて調製することができる。挿入を行う場合、挿入部位の両端に天然に存在する配列に相当する、5'および3'隣接領域とともに挿入部をコードする合成DNAを作製することができる。隣接領域は、天然に存在する配列中の部位に相当する、使いやすい制限酵素部位を含有することができるので、その配列を(1つもしくは複数の)適当な酵素で切断して、合成DNAを切断部にライゲートすることができる。その後DNAを本発明にしたがって発現させて、コードされたタンパク質を作製する。これらの方法は、DNA配列を操作するための、当技術分野で知られている数多くの標準技術を、単に説明する実例にすぎず、他の既知の技術も使用することができる。
コドン最適化
本発明に使用されるポリヌクレオチドは、コドン最適化することができる。コドン最適化はすでにWO 1999/41397およびWO 2001/79518において説明されている。異なる細胞は、特定のコドンの使用頻度に差がある。こうしたコドンの偏りは、細胞型における特定のtRNAの相対存在量の偏りに対応している。配列内のコドンを変更して、対応するtRNAの相対存在量に見合うように調整することによって、発現を増加させることができる。同様に、特定の細胞型において、対応するtRNAがめったにないことが知られているコドンを意図的に選択することによって、発現を減少させることができる。このようにして、追加的なレベルの翻訳調節を利用することができる。
(実施例)
材料および方法
マウスおよび麻酔法
すべての動物実験は、「視覚および眼科研究における動物の使用についてのARVO宣言(The ARVO Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research)」にしたがって実施し、有効な英国内務省の許可を得て行った。ロドプシンノックアウトマウス(C57B/6.129 Rhotm1Phm、本明細書ではRho-/-とする)はすでに記載されており(Humphries, M.M. et al. (1997) Nat. Genet. 15: 216-219)、Jane Farrar, Trinity College Dublin, Irelandの寄贈により入手した。OPN1LW-EGFPマウス(C57BL/6JTgOPN1LW-EGFP85933Hue、本明細書ではB6TgOPN1LW-EGFPとする)はすでに記載されているが(Fei, Y. et al. (2001) Vis. Neurosci. 18: 615-623)、これはRachel Pearson博士、University College London (UCL) Institute of Ophthalmology, London, UKの尽力によりMutant Mouse Regional Resource Centres (MMRRC), National Institute of Health, USAから入手した。錐体視細胞においてEGFPを発現し、桿体特異的な一次変性を有するマウス(Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-)は、B6TgOPN1LW-EGFP+/+マウス(OPN1LW-EGFP導入遺伝子挿入についてホモ型)とRho-/-(標的ロドプシンノックアウトについてホモ型)とを交配し、次にF1子孫(Rho+/-TgOPN1LW-EGFP+/-)を親Rho-/-系統と戻し交配することによって作製した。マウスは、離乳時にAFイメージングによって表現型を決定し、PCRで遺伝子型を同定した。すべてのマウスは、標準的な12時間/12時間の明暗周期で飼育され、飼料および水は自由に摂取することができた。全身麻酔は、ドミトール(塩酸メデトミジン、1 mg/kg体重)およびケタミン(60 mg/kg体重)の単回腹腔内注射により導入され、1%トロピカミドおよび2.5%塩酸フェニレフリン点眼薬(いずれもBausch & Lomb, Kingston-Upon-Thames, UK)により瞳孔を完全に散大させた。麻酔は、必要に応じてアンチセダン(アチパメゾール、5 mg/kg体重)の腹腔内注射による処置後に無効化される。
ベクター構築
アデノ随伴ウイルス血清型2ベクター骨格プラスミド(pUF11)は、William W. Hauswirth, University of Florida, USAにより提供された。ヒト神経成長因子(NGF; NM_002506)およびヒト毛様体神経栄養因子(CNTF; NM_000614)のcDNAクローンは、Origene (Rockville, MD, USA)より購入した。PCRを用いてNGF分泌シグナル(センスプライマー、GTACGCGGCCGCATGTCCATGTTGTTC; アンチセンスプライマー、GCTCTGTGAAAGCTGAGTGTGGTTCC)、ならびにCNTFコード領域マイナス翻訳開始コドンおよびkozakコンセンサス配列に同一性を有する周辺配列(センスプライマー、GGAACCACACTCAGCTTTCACAGAGC;アンチセンスプライマー、TCTAGTCGACCTACATTTTCTTG)を、それぞれの構築物から増幅した。その後「in vitro構築されたエクソンをライゲートするためのSwift PCR」(SPLICE)反応(Davies, W.L. et al. (2007) Biotechniques 43: 785-789)を用いて2つの断片を結合し、合成NotIおよびAccI制限酵素部位(下線)を用いてpUF11骨格にライゲートした。最終的なAAV2.CBA.hCNTF構築物の忠実度は、両方向の全長配列決定によって確認した。
ウイルス作製および力価測定
セルファクトリー(HYPERflask; Corning, Tewksbury, MA, USA)に播種されたHEK293細胞の一過性コトランスフェクションによって、CNTF構築物をパッケージした組換えAAV血清型2(rAAV2/2)ウイルスを作製し(rAAV2/2.hCNTFと称する)、次いで既報のように(Zolotukhin, S. (2005) Hum. Gene Ther. 16: 551-557; Jacobson, S.G. et al. (2006) Mol. Ther. 13: 1074-1084)、イオジキサノール勾配遠心分離により精製した。精製されたrAAV2/2.hCNTFウイルスをバッファー交換(Amicon Ultra-15, Millipore, Billerica, MA, USA)によって濃縮したが、これは残留イオジキサノールを除去するものであって、それから滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁して総容量を100μLとし、プレブロック済みチューブ(0.01% BSA)に分注した。ウイルスは、基準として既知の力価を有するベクタープラスミドおよびウイルスを使用して、ポリA領域内の120 bp断片を増幅するようにデザインされたプライマーを用いた定量的PCR(qPCR)により力価測定した。rAAV2/2.hCNTFウイルス力価は、2x1013ゲノム粒子(gp)/mLと算出された。
眼内注射
24週齢Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスの瞳孔を上記のように散大させて、ゲル状潤滑剤(Viscotears, Novartis, Frimley, UK)を塗ってから、角膜をおおって6 mm円形カバーガラスを載せ、外科用顕微鏡(M620 F20, Leica, Wetzlar, Germany)下で見るときに網膜を十分に可視化できるようにした。注射は、10 mm 34-ゲージ針(65N, Hamilton AG)をつけたハミルトンシリンジを、強膜を貫いて、網膜神経感覚上皮を通過して硝子体に入るように進めることによって実施した。2μLのベクター懸濁液またはバッファー(PBS)を、後極に近い硝子体腔に投与した;針を抜く前に眼圧を正常化させることによって逆流を最小限にした。眼の向きおよび安定は、刻み目のついた鉗子で上直筋を保持することによって、終始維持された。
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)
HEK293細胞を6ウェルプレートに蒔き(1x106 細胞/ウェル)、2μL rAAV2/2.hCNTF(1x1013 gp/mL)ウイルスを用いて形質導入した。形質導入の3日後、培地を回収し、市販のヒトCNTF特異的ELISA(R&D systems, Abingdon, UK)を用いて、メーカーの説明書にしたがってアッセイした。hCNTF発現のin vivo評価は、2x108gp(低用量)、2x109 gp(中用量)、または2x1010 gp(高用量)rAAV2/2.hCNTFベクターを用いた、生後4週(PW4)Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスの硝子体内注射によって行った。ゲノム組込みおよびベクター発現のために4週間が見込まれたので、その時点(PW8)で眼を摘出し、液体窒素で急速凍結した。眼球を100μL PBS中で解凍し、ホモジナイズしてから、市販のヒトCNTF特異的ELISA(R&D systems, Abingdon, UK)を用いて、上記のようにhCNTFタンパク質レベルを評価した。
自発蛍光(AF)イメージングおよび錐体の定量
共焦点走査レーザー検眼鏡(cSLO; Spectralis HRA, Heidelberg Engineering, Heidelberg, Germany)を用いて、上記のように、8、10、12、15、18、21、24、および30週の時点で各マウスの眼底を画像化した(Charbel Issa, P. et al. (2011) Optimization of in vivo confocal autofluorescence imaging of the ocular fundus in mice and its application to models of human retinal degeneration. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.)。概説すると、瞳孔散大後、粘稠性のカップリングゲル(0.3% w/v hypromellose, Matindale Pharmaceuticals, Romford, UK)を用いてコンタクトレンズを角膜上に載せて、混濁の形成を予防し、画質を改善して標準化した。マウスをイメージングプラットフォーム上に置き、近赤外(NIR)分光分析モード(820 nmレーザー)を使用して、網膜神経感覚上皮の焦点面にカメラの照準を定めることができた。本来EGFPを発現する錐体視細胞は、55°レンズを用いて自発蛍光(AF)モード(480 nm励起)によって画像化され、高解像度の画像(1536 x 1536ピクセル)が、自動リアルタイム(ART)平均法によって標準検出感度で記録された。錐体数は、各画像からImageJソフトウェアを用いて手作業で数値化したが(Abramoff, M.D. et al. (2004) Biophotonics International 11: 36-42)、それぞれの眼について、時間経過を越えて対象領域を標準化するために、下方網膜の血管標識を使用した。
網膜電図写真(ERG)
ERG記録は、上記のように、PW8、PW10、およびPW12時点で、標準プロトコールにしたがって、Espion E2システム(Diagnosys LLC, Cambridge, UK)を用いて行った(Lipinski, D.M., et al. (2011) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 52: 6617-6623)。明順応の期間(>10分、多色白色光、30 cd/m2)の後、短い(4 ms)白色フラッシュを3、10、および25 cd.s/m2(強度あたり20回フラッシュ)で与え、b波振幅をEspionソフトウェア(Diagnosys LLC, Cambridge, UK)を用いて数値化した。
視運動反応(OMR)
スピードおよび格子を正確に制御することができる回転シリンダーからなる、特注の視運動システムを作製した。マウスをドラム中央の一段高い台に載せ、それを明るい白色刺激(〜1000ルクス)で上から照らし、1分間ドラムに順応させたが、その間ドラムは静止したままで、マウスは自由に台を探索することができた。各実験は、交互30秒間に分割された1分間右回りおよび1分間左回りで構成された。実験は、各動物の各時点において、独立して3回繰り返して行い、反応の回数を平均した。方形波格子の回転がヘッドトラッキング反応を引き起こすが、1回の反応は、ドラム回転方向へのゆっくりとしたヘッドトラッキング動作と、それに続いて中心位置に頭部が急速に戻る反応からなる。回転ドラムに反応する各マウスの行動は、中央の台の真上に取り付けられたデジタルカメラを用いて記録した;処理に関して盲検の状態の記録係を使ってヘッドトラッキング反応の回数を手作業で数えた。
レーザースペックル皮質イメージング
片方の眼にrAAV2/2.hCNTF 処置を受け、反対側の眼にPBS偽処置を受けた30週齢Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスの皮質を画像化した(n=4、高用量;n=6、中用量;n=8、低用量)。陽性対象群は、錐体の変性がまだ始まらない時期(6週齢)の同じ背景を持つマウス(n=3)で構成された。マウスはイメージングの前に8時間暗順応させ、すべての準備段階を暗赤色照明下で行ったマウスを麻酔し、上記のように瞳孔を完全に散大させた。頭部を定位固定フレームに固定し、頭皮を切除して、視覚野をおおう頭蓋を露出させた。Speckle Contrast Imager (moorFLIP, Moor instruments, Delaware, USA)を用いて経頭蓋イメージングを実施し、25 Hzでデータを得た。直腸温度測定により深部体温をモニターし、実験動物体を包み込むフィードバック温熱パッドを用いて終始維持した。それぞれの眼を独立して刺激した後、皮質血流量(CBF)の変化を測定したが、その反対側の眼は、暗順応を維持するためにずっと覆っていた。最初に検査する眼はマウスごとにランダムに選ばれたが、検査担当者は、どちらの眼がrAAV.hCNTF処置を受けたかについて盲検の状態とした。それぞれの眼は、14.5 cd 510 ± 3 nm単色光、5 Hz、1 s間(LED刺激によるGrass PS33 Photic Stimulator)の短い(10 ms)フラッシュによって刺激された。刺激は眼ごとに刺激の間に30秒の間隔をおいて10回繰り返した(トータルで5分間)。光刺激は、検査のためにすぐに反対側の眼に移動し、その間、マウスおよびイメージング装置は固定したままとした。データは、MATLAB R2012b (version 8.0.0.783)を用いて処理した。データを5 Hzにダウンサンプリングした後、両側視覚野について関心領域(ROI)を選択し、そこから時系列変化を抽出して各ROI内のピクセルに関して平均した。個々の時系列を第1種チェビシェフフィルタを用いて平坦にした。10 sの予備刺激ベースライン期間に対する、CBFのパーセンテージ変化を、左半球および右半球について計算した。両半球の反応をそれぞれの眼の実験について合計し(対側 + 同側)、CBFの大きさの変化をrAAV.hCNTF処置眼とPBS偽処置眼との間で比較した。
RNA配列決定および解析
安楽死後、マウスの眼を摘出し、RNAlater(Ambion, Paisley, UK)に入れて液体窒素上で急速凍結して、処理するまで-80℃にて保存した。眼全体をホモジナイズして全RNAを抽出した(RNA Tissue Mini Kit, QIAGEN, Manchester, UK)。「オンカラム」消化プロトコール(RNase-Free DNase, QIAGEN, Manchester, UK)にしたがって、混入しているDNAをデオキシリボヌクレアーゼI処理で除去した。ポリアデニル化mRNAは、磁気分離(NEBNextPoly(A) mRNA Magnetic Isolation Module, New England Biolabs, Hitchin, UK)によって、サンプル当たり2μg全RNAから精製した。NEBNext mRNA Library Prep Master Mix Set for Illumina Kit (New England Biolabs, Hitchin, UK)を用いてライブラリ調製プロトコールを実施したが、次の変更を行った:断片化後EBバッファーに溶出する前に、RNAは、追加精製(Ampure XP, 容積比2.8x, Ambion, Paisley, UK)および洗浄(2 x 80% エタノール)ステップを受けた。Superscript II (Invitrogen, Paisley, UK)を用いて逆転写(RT)を実施し、RT後精製(Ampure XP, 容積比1.2x)および洗浄(2 x 80% エタノール)ステップを行った。cDNAは、末端修飾し、Aテールを付けて、アダプターをライゲートしてから(カスタムアダプター)、PCR増幅(12サイクル)した。調製されたライブラリをマルチプル化し(4x)、クオリティを評価した後、50 bpのリード長でIlluminaHiSeq 2000プラットフォームのペアエンドシーケンシングを行った。アウトプットFASTQファイルのクオリティを評価し(SAMStat and FastQC:Read QC)、アダプター除去(Cutadapt)の前に形式を整えて(FASTQ groomer; Blankenberg, D. et al. (2010) Bioinformatics 26: 1783-1785)、ペアエンド法(TopHat for Illumina; Trapnell, C. et al. (2009) Bioinformatics 25: 1105-1111)で基準ゲノム(Mus musculus, UCSC, mm9.fa)にアラインした。認められたヒットのアウトプットをSAMフォーマットに変換し(SAM Tools)、HiSeq-Countを用いて基準ゲノムとの比較により、ヒットをゲノムの特徴に割り当てた。DESeq Rパッケージ(Bioconductor)を用いて、有効なライブラリーサイズに対する正規化によって、発現差異を呼び出し、false discovery rate (FDR)を2%に設定した。発現に差のある遺伝子は、発現レベルに、2倍(1 2log倍)の最小変化を有する遺伝子と考えられた。ヒートマップアウトプットは、RColorBrewerおよびR用gplotsパッケージを用いて作製された。
統計データ
それぞれの実験に関する最大のデータセットの、正規性に関するアンダーソン-ダーリング(Anderson-Darling)検定は、そのデータが下記の場合には正規分布集団から抽出されていることを明らかにした:in vivo錐体定量、A2=0.509, p=0.1983; 低用量ERG, A2=0.3402, p=0.4824; 中用量ERG, A2=0.4483, p=0.2785; 高用量ERG, A2=0.7228, p=0.0594。各実験群に当てはめられた平均値に対する残差のプロットは、各群内で分散が等しいことを示した(プロットは図示せず)。反復測定二元配置分散分析法を用いて、用量(独立変数)および時間(反復測定)をファクターとし、錐体数を従属変数として、in vivo錐体定量を解析した。反復測定二元配置分散分析法を用いて、フラッシュ強度(独立変数)および時間(反復測定)をファクターとし、いずれの場合も明所b波振幅を従属変数として、ERG反応を解析したが、各用量は独立して解析された。正規性は、視運動反応データについては確認されなかった:A2=4.5536, p=<0.0005。ノンパラメトリックKruskal-Wallis検定をDunnの多重比較検定法とともに実施して、各用量における処置および未処置の眼から引き出されたヘッドトラッキング反応平均値を比較した。サンプルサイズが小さいため、in vitroまたはin vivoベクター形質導入後のCNTFレベルを評価する場合、分散を群についてプロットすることができなかった。ノンパラメトリックなマン-ホイットニーのU検定を2つの例に適用し、偽形質導入に対する形質導入細胞上清(in vitro)、または摘出眼(in vivo)において、平均CNTFレベルを比較した。ボンフェローニ事後検定をすべての分散分析に適用した。すべての検定の有意性(p)レベルは0.05に設定した。対照。ns = 有意でない、*** = p<0.001、一元配置分散分析。低用量n=5、中用量n=6、高用量n=4。
結果
長期間のCNTF治療に反応した、錐体の生存および機能を正確にモデル化するために、ロドプシン(Rho)ノックアウトについてホモ型のC57B/6.129 Rhotm1Phmマウスを、錐体視細胞において高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現するC57BL/6JTgOPN1LW-EGFP85933Hueトランスジェニックマウスと交雑した(Fei, Y. et al. (2001) Vis. Neurosci. 18: 615-623; Humphries, M.M. et al. (1997) Nat. Genet. 15: 216-219)。この末期網膜色素変性症(RP;本明細書での名称、Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-)モデルにおいて、ロドプシンタンパク質がないことに起因する桿体視細胞のアポトーシスが、出生後(PW)8週までには現れ、続いて自家蛍光性の錐体の二次的消失が生じ、全体的な視細胞の変性をもたらす(Hobson, A.H. et al. (2000) Exp. Eye Res. 71: 247-254)。進行した桿体の減少に続いて錐体視細胞が変性する動物モデルの利用は、RP患者(桿体-錐体ジストロフィー)にもっともよく見られる疾患の表現型を反映している。さらに、このモデルは、神経保護がもっとも適用されやすい臨床シナリオを厳密に再現しており、桿体視細胞の大半は変性してしまっているが、優先すべきは、視細胞を失う根底にある病因論にかかわらず、錐体による視力を守ることである。このアプローチはRPにとって特に意味があり、視細胞を失う原因は、常染色体優性例の50%、および常染色体劣性例の30%で、完全にはわかっていない(Hartong, D.T. et al. (2006) Lancet 368: 1795-1809; Lipinski, D.M. et al. (2013) Prog. Retin. Eye Res. 32: 22-47)。
組換えアデノ随伴ウイルス血清型2(rAAV2/2)に基づくベクターを作製し(1x1013 ゲノム粒子(gp)/ mL)、上流ヒト神経成長因子分泌シグナルの付加によって細胞外放出のために改変されたヒトCNTF(hCNTF)タンパク質を発現させた。その結果得られたrAAV2/2.hCNTFベクターからのタンパク質分泌は、in vitroでHEK293細胞の形質導入(MOI=1000)によって検証したが、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA;図6a)によって培地中に高レベルのhCNTFタンパク質が検出されるという結果をもたらした。PW4 Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウス(1群につきn=3)の硝子体腔へのrAAV2/2.hCNTFのin vivo投与(硝子体内注射)は、同様に、高レベルの分泌hCNTFタンパク質をもたらしたが、神経節およびミューラーグリア細胞からの可能性がもっとも高く、この細胞はAAV2に基づくベクターによって効率よく形質導入されることが知られている。重要なのは、眼ごとに投与されるゲノム粒子数を変更するとhCNTFタンパク質の有効量を広範にコントロールできることが確認されたことである(図6b)。
CNTFは用量依存的にRPの発症を予防する
Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスは、錐体視細胞が有意に失われる前(PW4)に、低用量(2x108 gp;n=8マウス)、中用量(2x109 gp;n=6マウス)、または高用量(2x1010 gp;n=5マウス)の、rAAV2/2.hCNTFの硝子体内注射を受けた。すべてのマウスにおいて、反対側の眼は、外科的介入の影響について対照とするために、同量(2μL)のリン酸緩衝食塩水(PBS)の偽注射を受けた。
注射の4週間後(PW8)に、注射を受けたマウスの網膜を共焦点走査レーザー検眼鏡(cSLO)で画像化したが、それは、瞳孔を通して眼底を直接可視化することによって網膜病変の非侵襲的評価を可能にする。具体的には、cSLO自発蛍光(AF)イメージングモードは、EGFPの吸収ピークにもっとも近い励起波長を持つレーザーを利用するが、これは網膜におけるEGFP発現細胞の可視化を可能にする(Beck, S.C. et al. (2010) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 51: 493-497; Charbel Issa, P. et al. (2011) Optimization of in vivo confocal autofluorescence imaging of the ocular fundus in mice and its application to models of human retinal degeneration. Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.)。Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウス眼底のAFイメージングは、網膜の全域にわたってEGFP発現錐体視細胞の予想分布に対応してドット状パターン(図1a)を示した。AFイメージング直後にRho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウスから切り離された網膜の死後レクチン染色(図1c)は、in vivoで観察された個々の「ドット状」シグナルが、1つ1つのEGFP発現錐体視細胞に相当することを確認した(図1a-c)。実験動物の一生を通じてずっと変わらないと考えられる、それぞれの眼の中の標準関心領域を指定するために血管標識を使用して、錐体視細胞数を正確に定量し、hCNTF処置に応じて生存を長期的に評価することができた(図1d-g;図6c-j)。
AFイメージングは、すべての処置および対照群において、PW8の時点で、EGFP発現錐体視細胞の同等な分布を示した(図1h;図7a-d)。錐体視細胞の数は、PBS偽処置群では実験の時間経過の間に急速に下落し、PW24において錐体数はゼロに至った(図1h、図7d)。検出可能なhCNTFタンパク質のないことと合致して(図6b)、低用量(2x108 gp)のrAAV2/2.hCNTFの硝子体内注射を受けた眼の錐体視細胞数は、対になるPBS偽注射をうけた眼に対してどの時点でも有意な差異はなかった(図1h;図7c;p≧0.05、ボンフェローニ事後検定を行う反復測定二元配置分散分析、n=8)。近赤外分光分析(NIR)イメージングは、末期RPの一般的な臨床所見である、上に重なる視細胞の消失に合致する、網膜色素上皮(RPE)における病巣の地理的変化を示した(図2a-d、図7c-d)。この所見は、PW30時点で行われた組織学的検討によって支持されたが、それはPBS偽処置眼において桿体および錐体視細胞がともに存在しないことを示すものであった(図2i)。
中用量(2x109gp)または高用量(2x1010 gp)のrAAV2/2.hCNTFベクターで処置された眼の錐体数は、PW12以降、対側の対照眼と比較して有意に大きかった(図1h;図7a-b)。錐体視細胞の神経保護は用量依存的であって、中用量処置眼(44.90 ± 1.69%;PW30 vs. PW8)に比べて、高用量処置眼(62.38 ± 1.95%)において最大の生存が観察された。錐体視細胞が失われる速度は、2つの処置群のいずれにおいてもPW15以降ゼロに近かった(図1h;0.42-0.69 %/週);中用量または高用量処置眼においてRP表現型はまったく見られなかった(図2e-h;図7a-b)。PW30において組織学的検討は、高用量rAAV2/2.hCNTFベクターを受け取った眼において、錐体(GFP発現)および桿体(GFP非発現)視細胞がいずれも保存されていることを明らかにした(図2j)。中波長感受性(Mws)錐体オプシン発現を伴うEGFPの共局在化がないことは、分離した錐体外節の存在を強く示唆しており(図2k-o)、その結合繊毛が、存在する場合には、視細胞体外節からのEGFPタンパク質の輸送を効果的に妨げている。
CNTFは電気生理学的反応の軽度の抑制にもかかわらず視覚機能を保護する
rAAV2/2.hCNTF処理マウスは、PW8時点で網膜電図検査(ERG)を行ったが、これは、光による刺激後に網膜のまとまった電気的反応を間接的に測定するために角膜電極を利用する技術である。CNTFタンパク質存在下での錐体感受性の減少を実証する、先行研究の証明に合致して、錐体視細胞を介した反応が用量依存的に抑制されることが観察された(Wen, R. et al (2012) Prog. Retin. Eye Res. 31: 136-151)(図8a-f)。ERGピーク記録は、PW12までは全群でバックグラウンドノイズ(〜20μV)の平均振幅を下回ったので、記録不能とみなされた。ERGピーク振幅の減少は、全群で錐体視細胞が有意に失われる期間と同時期に起こったが、中用量(2x109 gp)および高用量(2x1010gp)処置を受けた眼は、PW12を過ぎて錐体の有意な保護を示し、錐体視細胞体の保護にもかかわらず錐体による視力がないことを示している可能性がある(図2j-o)。したがって、PW30においてさらに電気生理学的検査および行動実験を行って、視覚機能をより詳細に検証した。
残存する錐体が、視覚路を経て脳へシグナルを伝達する能力を、光による網膜刺激中に視覚野のレーザースペックルイメージング(LSI)を実施することによって評価した。LSIは、高い時間空間分解能を持つ非接触イメージング技術であって、微小血管内の赤血球運動の増加と直線的に関連した、ランダムなスペックルパターンの変化を検出することができる(図3c)。本明細書では、LSIを用いて、14.5 cd単色光(510 ± 3 nm)の短時間(10 ms)フラッシュによる単眼刺激後の、視覚野の皮質血流量(CBF)の変化を測定したが、その波長はマウスのM-錐体の最大吸収ピークにもっとも近い。選択された刺激パラメーターが錐体を介した反応を引き起こす能力を、PW6未処置Rho-/-TgOPN1LW-EGFP+/-マウス(n=3)について検証した。CBF変化は、刺激を受けた眼の反対側の視覚野においておもに検出され、視覚刺激の適切な下流の処理を示した(図3a-c)。中用量(2x109 gp)のrAAV2/2.hCNTFベクターで処置された眼を刺激したとき、PW30の皮質LSIは、対側視覚野のCBF変化の増加を明らかにしたが、有意ではなかった(図3d-f;p=0.20、片側検定のウィルコクソン符号付き順位検定、n=6)。これに対して、高用量(2x1010 gp)のrAAV2/2.hCNTF投与を受けた眼を刺激したときのLSIは、対側視覚野のCBF増加を実証し、それは偽処置対照眼を刺激したときに惹起される反応より有意に大きかった(図3c、g-i;p=0.012、片側検定のウィルコクソンの符号付き順位検定、n=4)。PW6の動物から得られたベースラインのLSI CBF測定値と比較すると(+0.819%)、高用量CNTF処置眼の刺激後に惹起されたCBF変化の大きさ(+0.509%)は、PW30において観察された錐体視細胞生存パーセンテージとおおむね相関していた(PW8に対して62.38 ± 1.95%)。皮質のLSIは、生存する錐体が依然として光り感受性であり、シグナルを脳に伝達することができることを強く示した。皮質血流量の変化が実用視力の処理に対応する度合いを、視運動反応(OMR)測定によって評価した。OMRは、実験動物が全視野の視覚刺激に反応して行う、意図しないヘッドトラッキング運動の回数を測定するが、それは古典的に、縦方向に一定の幅およびコントラスト(100%コントラスト;0.2 サイクル/度)の白黒ストライプのついた明るく照らされた(〜1000 lux)回転ドラムで構成され、その中に動物が入れられている(図4a)。OMRは、ドラムの回転方向への緩徐相ヘッドトラッキング動作と、それに続く急速相の、中心位置への頭部の方向転換を特徴とする。緩徐相ヘッドトラッキング動作は、それぞれの眼によって独立して引き起こされるが、それはドラムの回転方向に依存する(図4a)(Hobbelen, J.F. et al. (1971) Doc. Ophthalmol. 30: 227-236; Harvey, R.J. et al. (1997) Vision Res. 37: 1615-1625; Douglas, R.M. et al. (2005) Vis. Neurosci. 22: 677-684)。PW30において実験動物を調べたとき、偽処置眼から記録された1分当たりのヘッドトラッキング反応の回数は、どの群においても有意にゼロを超えなかった(0.33 ± 0.05 /分)。中用量(2.11 ± 0.31 /分)および高用量(6.92 ± 0.92 /分)処置眼の刺激によって引き起こされる頭部追跡反応の回数は、対をなす偽処置眼より有意に大きく(図4b-c;p=<0.001、Kruskal-Wallis検定、Dunnの多重比較法、n=4)、PW30における残存錐体数に対するOMR反応の線形回帰分析は、有意な正の相関を明らかにした(r2=0.80, F=33, p=0.0004)(図9a)。
これらのデータは、まとめると、ERGで評価されたように電気生理学的機能は見かけ上抑制されているにもかかわらず、hCNTFによる神経保護によって保存された錐体視細胞は光に対して依然として感受性であり、視神経を経由して視覚神経経路にシグナルを有効に伝達する能力があることを強く示唆する。
CNTFは補体因子タンパク質およびタンパク質分解インヒビターをアップレギュレートする 23,365個のマウス遺伝子のトランスクリプトーム解析に取り組んで、CNTFに反応した錐体視細胞の長期にわたる神経保護の根底にあるメカニズムを究明した。PW30の眼全体から抽出された全RNAの次世代シークエンシングによって、処置された眼のトランスクリプトームを、それぞれの用量において、対をなす偽処置対照(各群についてn=4眼)と比較した。Benjamini-Hochberg 法にしたがって、false discovery rateを2%に固定し、全サンプルを、有効なライブラリーサイズに対して正規化した。高用量処置(2x1010 gp)した眼のトランスクリプトームを、対をなすPBS偽処置対照と比較すると、1,533遺伝子が有意な差次的発現変動を示すことが判明した(p<0.05;図9b)。それらのうち、460遺伝子は、発現レベルに>2倍の変化を示したので、次に遺伝子オントロジーを用いて細胞機能によって分類した(図5a-b)。セリン-、システイン-、およびメタロ型ペプチダーゼインヒビター(17遺伝子;表1.1)は、転写でもっともアップレギュレートされたファミリーを構成しており、メンバーは、高用量hCNTF処置眼において、対をなす偽処置対照と比べて最大で89倍までの高い発現を示した。このグループのメンバーは、細胞内および細胞外ペプチダーゼインヒビターをコードしているが、その機能不全はこれまで網膜疾患の発症と関連づけられてきた;前記インヒビターは、たとえば、メタロプロテイナーゼ3の組織阻害剤(Timp3、+3.49倍)であって、その変異は、常染色体優性ソースビー眼底変性症に関連がある(Weber, B.H. et al. (1994) Nat. Genet. 8: 352-356)。ペプチダーゼインヒビターの転写制御はあまりよく解明されていないが、活性化は、シグナル伝達性転写因子3(Stat3)を介し(+2.46倍発現)、転写因子のCCAAT/エンハンサー結合タンパク質(Cebp)ファミリーのメンバーを必要とすると思われるが、そのうち3つ(Cebpα、Cebpβ、およびCebpδ)も、やはり有意にアップレギュレートされていた(表1.2)(Zhao, H. et al. (2007) Mol. Cell Biol. 27: 5286-5295; Udofa, E.A. et al. (2013) PLoS One 8: e57855)。
古典的補体カスケードおよび補体第二カスケードのいくつかのメンバー(16遺伝子、表1.3)は有意にアップレギュレートされていたが(最大10倍まで)、それにはさまざまな補体成分(たとえばC3, C4a)および補体因子遺伝子(たとえばCfb)が含まれる。サイトカインシグナル伝達系の多数のモジュレーターがアップレギュレートされ(19遺伝子、最大8倍まで;表1.4)、これにはサイトカインシグナル伝達系3の抑制因子(SOCS3)および同じく5の抑制因子(SOCS5)が含まれるが、これらは視細胞中で発現され、ストレス誘導性炎症反応を低下させることが知られている(Ozawa, Y. et al. (2008) J. Biol. Chem. 283: 24561-24570; Takase, H. et al. (2005) J. Neuroimmunology 168: 118-127)。
ビタミンAサイクルの重要成分である、レシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT)、ならびに内部の網膜神経細胞において発現されるイオンチャネルおよびGタンパク質結合受容体をコードするいくつかの遺伝子のダウンレギュレーション(1.7倍)が、中用量、および高用量rAAV2/2.hCNTF処置眼において観察され(表1.5)、それは過去の研究に合致して、CNTF処置に反応した光情報伝達の大規模な変化を示した(Wen, R. et al. (2012) Prog. Retin. Eye Res. 31: 136-151)。
考察
眼に特有の視覚特性を活用することによって、進行性の神経変性をリアルタイムで評価し、自家蛍光性の錐体視細胞の生存を反復in vivoイメージングによって正確に定量することができる。この研究は、変性疾患モデルにおいて長期的保護をもたらす向神経性化合物の能力を初めて明らかにする。
本研究のデータは、介入がなければ完全な外側網膜変性が予想される時点を越えて、錐体視細胞がrAAVによるhCNTF分泌によって保護されることを実証する。錐体視細胞数の安定化は、中用量(44.90 ± 1.69%)および高用量(62.38 ± 1.95%)処置群で認められ、保護が長期間維持される可能性が示唆された。これらの知見は、カプセル化細胞技術を用いてCNTF徐放をもたらす最近の臨床試験に照らして重要であり、この視細胞保護は短期から中期的に(最大5年まで)示されているが、長期的神経保護について起こりうる結果は、ヒトではRPの進行が遅いという特徴のため、依然としてわからないままである(Birch, D.G. et al. Long-term follow-up of patients with retinitis pigmentosa (RP) receiving sustained-release CNTF through intraocular encapsulated cell technology implants. ARVO annual meeting (Seattle, WA, 2013); Birch, D.G. et al. (2013) Am. J. Ophthalmol. 156: 283-292 e281)。
本研究において、細胞の生存が用量依存的に観察されたが、網膜電図検査(ERG)で評価される機能の生理学的抑制も同様に観察された;以前提示されていた、機能抑制なしで神経保護を達成する用量は認められなかった(McGill, T.J. et al. (2007) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 48: 5756-5766)。保護される視細胞の数、およびそれぞれの視細胞の光に対する感受性は、hCNTFタンパク質のバイオアベイラビリティに正比例するようにみえる。このことは、機能抑制および細胞生存の根底にあるメカニズムが、表裏一体であることを強く示唆する。したがって、患者が良好な視力を有している場合、治療しなければ失明するであろう時点を越えて視力を伸ばす潜在力が、進行性変性疾患の初期段階での視覚機能の抑制をしのぐ可能性がある。
介入の時点は、錐体視細胞の保護および機能の維持を成功させるのに重要になりそうなもう一つの要因となる。本研究においては、CNTF最大発現時点でかなりの割合の桿体視細胞がなくなっているという臨床シナリオを綿密に構築することを目指した。これは、導入遺伝子発現のピークがPW8-10までに現れないようにrAAV.hCNTF投与の時期を決めることによって達成されたが、その時点までにはロドプシンノックアウトマウスモデルにおいて桿体の変性は十分に進行している(Humphries, M.M. et al. (1997) Nat. Genet. 15: 216-219)。本発明者らの知見は有望であるが、本明細書に示される組織学的検査は、CNTF処置後に、錐体に加えて桿体視細胞(GFP非発現細胞)の保護も明白に示した。
興味深いことに、早期の介入にもかかわらず、過去の前臨床試験は、一様に機能の保護を観察することができず、たとえ網膜変性の発症前に処置を行っても視力の維持はできないかもしれないことが示唆された。そうした研究に合致して、本発明者らは最初に、残存する電気生理学的機能の一次評価としてERGを使用し、測定値がPW12までには全群において記録不能となることを観察した。ERGは、角膜表面に載せた電極によって検出するのに十分な振幅および均一性をもつ電気信号の伝播に依存する、網膜機能の間接的な測定であるので、記録可能な錐体ERGがPW12を過ぎてなくなることは、必ずしも機能性視力がないことを反映するものではないと考えられた。実際、網膜の小領域が光感受性であるが、検出可能な信号を伝播しない可能性は十分にあり、変性した網膜に光感受性を回復させるために視細胞移植およびオプトジェネティックアプローチに焦点を合わせた研究によって、原理がもっともよく浮き彫りになったが、この場合、機能性視力は部分的に回復させることが可能であり、それにもかかわらずERG応答はほぼ確実に存在しないままである(Mace, E. et al. (2015) Mol. Ther. 23: 7-16; Gaub, B.M. et al. (2014) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111: E5574-5583; Singh, M.S. et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110: 1101-1106; Francis, P.J. et al. (2013) Translational vision science & technology 2: 4)。
本研究においてPW12を過ぎて観察されるERG応答の欠如を生じる要因は、CNTF処置後の桿体視細胞について述べられているように、外節形成の抑制であるかもしれない(Wen, R. et al. (2006) J. Neurosci. 26: 13523-13530)。錐体外節形成に及ぼすCNTFの影響に関する研究は限られている;しかしながら、本発明者らは、PW30において一定のオプシン含有錐体外節の持続を観察し、そのことは、錐体が、ERGの欠如にもかかわらず依然として光感受性である可能性があることを強く示唆する(Li, Y. et al. (2010) PLoS One 5: e9495; Beltran, W.A. et al. (2007) Exp. Eye Res. 84: 753-771; Rhee, K.D. et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110: E4520-4529)。錐体視細胞が解釈可能なシグナルを脳の視覚野および視蓋前野にリレーする能力を保持しているという仮説を検討するために、レーザースペックルイメージング(LSI)を実施した。片側の眼を刺激したときのLSIは、残存する錐体の光感受性を評価するためのロバスト法となり、重大なことに、各動物において処置および未処置眼からの反応をそれぞれ別々に説明することを可能にする。皮質イメージングは、高用量rAAV.hCNTF処置眼の刺激が、対側視覚野の皮質血流量の有意な変化を引き起こすことを明らかに示したが、それは、残存する錐体視細胞が光を受容することが可能であって、依然として正しくシナプス形成された状態であることを強く示唆する。重要なことに、視運動反応の伝播は、視覚野が受け取るシグナルが生理学的に適切な情報を記号化していることを示した。ヘッドトラッキング反応は、偽処置対照眼の刺激後には生じなかったが、これは、末期変性においても内網膜に存在する、内因性光受容性網膜神経節細胞がOMRに関与しないという証拠を裏付ける(Cahill, H. et al (2008) PLoS One 3: e2055)。その知見は、カプセル化細胞技術を用いてhCNTFを発現させる臨床試験にも特に関連性を有するが、それらは、短期間の抑制にもかかわらず、実用視力が依然として末期疾患において、そして失明が生じる可能性のある時点を越えて、保存されている可能性があることを実証するからである。
CNTF投与の影響は、用量の増加にしたがって視細胞が機能的に抑制される、RPの治療において重要であると思われるだけでなく、他の神経変性疾患の治療を評価する場合に重要な検討事項である。より詳細には、ALSにおいて運動ニューロンの消失を防ぐことを目的とした、過去のうまくいかなかった臨床試験は、高用量のCNTFで全身的に処置された患者において、治療効果はなく、有害事象が有意に発生することを示した(A double-blind placebo-controlled clinical trial of subcutaneous recombinant human ciliary neurotrophic factor (rHCNTF) in amyotrophic lateral sclerosis. ALS CNTF Treatment Study Group. (1996) Neurology 46: 1244-1249; Bongioanni, P. et al. (2004) The Cochrane database of systematic reviews, CD004302)。これらの知見は、現行の神経保護戦略によって与えられるよりも、もっと的を絞ったアプローチが必要となるかもしれないことを示しており、それによって細胞生存の根底にある有効なメカニズムが、副作用をもたらすメカニズムから分離される。本研究において、持続発現後のCNTFを介した神経保護の推定機序については、これまで完全には明らかにされていない状態であったが、末期網膜疾患において生存する神経細胞のトランスクリプトーム解析を行うことによって、独自の識見を明らかにすることができた。偽処置眼に対するrAAV2/2.hCNTF処置眼のトランスクリプトーム解析は、いくつかの重要な結果を明らかにした。第1に、Stat3遺伝子の有意な過剰発現が、中用量および高用量rAAV2/2.hCNTF処置眼において観察され、これは、CNTFがStat3により仲介されるCntfr/Lifrβ/Gp130活性の受容体複合体を介してシグナルを伝達することを示す過去の研究と一致した(Rhee, K.D. et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110: E4520-4529; Davis, S. et al. (1993) Science 259: 1736-1739; Kassen, S.C. et al. (2009) Exp. Eye Res. 88: 1051-1064; Peterson, W.M. et al. (2000) J. Neurosci. 20: 4081-4090)。
第2に、タンパク質分解のインヒビターをコードするいくつかの遺伝子ファミリーが、強く過剰発現され(最大89倍まで)、hCNTFが介在する神経保護における主要な役割を示唆する。セリンプロテアーゼインヒビター(Serpin)ファミリー(11遺伝子)メンバーの活性化は、特に、Stat3発現レベルと密接に関連しており、腫瘍において過剰発現されると、抗アポトーシス性であることが判明している(Ahmed, S.T. et al. (2009) Biochem. Biophys. Res. Commun. 378: 821-825)。タンパク質分解の阻害剤は、網膜疾患においてきわめて重要な役割を果たす可能性があり、この阻害剤はTimp3およびSerpin1bなどであるが、これらはそれぞれ、細胞外マトリックス成分およびブルッフ膜の分解を妨げるように作用し、ソースビー眼底変性症および加齢黄斑変性症(AMD)に関与する(Weber, B.H. et al. (1994) Nat. Genet. 8: 352-356; Chong, N.H. et al. (2005) Am. J. Pathol. 166: 241-251; Sorsby, A. et al. (1949) Br. J. Ophthalmol. 33: 67-97)。視細胞などの神経細胞の物理的分解は、神経変性疾患において、典型的には、セリン-システインプロテアーゼ、リソソームプロテアーゼ、ならびに補体を介した溶解によってもたらされるので、本明細書で観察されたタンパク質分解の内因性インヒビターの過剰発現は、細胞ストレスに反応した神経細胞アポトーシスに対して決定的な防御をもたらす可能性があると想定される。分泌型タンパク質分解インヒビターの直接的な過剰発現は、変性疾患における神経細胞死を防ぐための新たな治療手段をもたらす可能性があると提言する。実際、細胞体および細胞外マトリックスの変性を直接的に阻害することによってRPにおける視細胞変性を防ぐことを目的とする、的を絞ったアプローチを利用することは、機能を生理的に抑制することなしに視細胞を保護できる可能性がある。ALSの場合、皮質運動ニューロンの変性をタンパク質分解の阻害によって直接的に防ぐことは、CNTFが高用量で全身的に投与されたときに臨床試験で観察された重大な副作用なしに治効を達成できる可能性がある(A double-blind placebo-controlled clinical trial of subcutaneous recombinant human ciliary neurotrophic factor (rHCNTF) in amyotrophic lateral sclerosis. ALS CNTF Treatment Study Group. (1996) Neurology 46: 1244-1249; Bongioanni, P. et al. (2004) The Cochrane database of systematic reviews, CD004302)。
最後に、古典的補体カスケードおよび補体第二カスケードのいくつかのメンバー(16遺伝子)の有意なアップレギュレーション(最大10倍まで)を特徴とする、持続性の自然免疫反応が、中用量および高用量処置眼で観察されたが、これにはAMD (Cfi遺伝子によりコードされる) および網膜光損傷 (Cfd遺伝子によりコードされる)に関係する2つの補体因子が含まれる(van de Ven, J.P. et al. (2013) Nat. Genet. 45: 813-817; Rohrer, B. et al. (2007) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 48: 5282-5289)。興味深いことに、PW30の低用量処置眼では補体アップレギュレーションもサイトカインアップレギュレーションも観察されなかったが、それは、視細胞変性が完了すると自然免疫反応が終わることを示す。いくつかのアップレギュレートされたプロテアーゼインヒビターの役割は依然としてわからないままであるが、タンパク質分解インヒビターをコードする遺伝子の発現は、さまざまな成分(たとえば、C3、C4、およびCfbタンパク質)がタンパク質分解切断後にはじめて活性化される、中枢神経系に起こる自然免疫反応の変更にも、特に関連する可能性がある。たとえば、Serpin3kは、強い抗炎症性および抗血管形成作用があることが知られており、Wnt経路の遮断によって腫瘍壊死因子α(Tnf-α)、細胞接着分子1(Icam-1)および血管内皮細胞増殖因子(Vegf)を阻害する(Zhang, B. et al. (2009) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 50: 3943-3952)。網膜の壊死性細胞死を防ぐことに加えて、Serpin3kは桿体外節形成も有意に阻害するので、hCNTFによるそのアップレギュレーションは網膜の感受性低下の一因となる可能性もある(Zhang, B. et al. (2009) Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 50: 3943-3952; Zhang, B. et al. (2010) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107: 6900-6905; Zhang, B. et al. (2008) PLoS One 3: e4077)。
要約すると、本研究は、眼に特有の光学的性質によって、治療的介入に応じた神経細胞生存を、反復in vivoイメージングにより長期的に、しかもきわめて正確に、評価することが可能であることを実証した。本明細書において、持続的なhCNTF発現は、錐体視細胞の長期的な保存をもたらし、わずかな電気生理学的抑制があるにもかかわらず、実用視力は変性の末期まで維持されることを示した。本研究は、健常な細胞の生存が、利用可能なCNTFの用量に直接関連していることを示した。トランスクリプトーム解析は、Stat3を介した細胞内および細胞外プロテアーゼインヒビターの過剰発現が、hCNTF処置後のRPにおける錐体保護の根底にあり、それはおそらく細胞分解および細胞外マトリックス分解を直接阻害することによる、ということを強く示唆する。本発明者らは、特定の内因性プロテアーゼインヒビターの過剰発現が、RP/AMDおよび他の、ALSなどの、神経変性疾患における細胞死に対する神経細胞保護のための新規治療手段をもたらすことができることを提唱する。
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上記明細書に記載のすべての刊行物は、参照により本明細書に組み入れられる。記載されている本発明の化合物、使用、および方法のさまざまな修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明白であろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、当然のことながら、請求される発明はそのような個別の実施形態に過度に制限されるべきではない。実際、記載されている本発明を実施するための方法のさまざまな修正が、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者には明白であり、それらは下記の特許請求の範囲に含まれるものとする。

Claims (15)

  1. 網膜色素変性症を治療または予防する方法であって、毛様体神経栄養因子(CNTF)をコードするヌクレオチド配列を含有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、それを必要とする被験体に投与することを含む、前記方法。
  2. AAVベクターがAAV血清型2ゲノムを含有する、請求項1に記載の方法。
  3. CNTFがヒトCNTFである、請求項1または2に記載の方法。
  4. AAVベクターが、CNTFをコードするヌクレオチド配列に機能しうるように連結された分泌シグナル配列を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 分泌シグナル配列が、ヒト神経栄養因子(NGF)分泌シグナル配列である、請求項4に記載の方法。
  6. AAVベクターが、網膜下注射、直接網膜注射、または硝子体内注射によって被験体の眼に投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. AAVベクターが網膜下注射によって被験体の眼に投与される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. AAVベクターが単回用量で被験体に投与される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 被験体が、AAVベクター投与の時点で、治療を受ける眼において桿体細胞を実質的に欠いている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 網膜色素変性症に起因する視細胞の変性が、被験体の一生にわたって実質的に予防される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 網膜色素変性症に起因する錐体細胞の変性が、被験体の一生にわたって実質的に予防される、請求項10に記載の方法。
  12. 網膜色素変性症に罹患しているか、または網膜色素変性症を発症するリスクのある被験体において、視細胞死を減少させる方法であって、その方法が、毛様体神経栄養因子(CNTF)をコードするヌクレオチド配列を含有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを、それを必要とする被験体に投与することを含み、治療を受けた眼において視覚機能が実質的に回復するかまたは維持される、前記方法。
  13. 網膜色素変性症に起因する視細胞の変性が、被験体の一生にわたって実質的に予防される、請求項12に記載の方法。
  14. 網膜色素変性症に起因する錐体細胞の変性が、被験体の一生にわたって実質的に予防される、請求項12または13に記載の方法。
  15. 被験体が、AAVベクター投与の時点で、治療を受ける眼において桿体細胞を実質的に欠いている、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
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