JP2020059348A - 車両前部構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の前突時に、フロントガラスが離脱することを抑制または防止する。【解決手段】車両前部構造10は、フロントピラー12と、エプロンアッパメンバ22とを備える。フロントピラー12は、フロントガラスの側枠をなす斜部12aと、斜部12aから下方に延びて車両下部構造であるロッカー20に接続された縦部12bとを含む構造部材である。また、エプロンアッパメンバ22は、縦部12bに接続されて車両前方に延び、車両前突時の荷重入力を受ける構造部材である。斜部12aとエプロンアッパメンバ22とは、構造的に不連続に形成されており、両者の間には隙間空間29がある。【選択図】図1
Description
本発明は、フロントピラー及びエプロンアッパメンバを含む車両前部構造に関する。
下記特許文献1には、車両の前突時にエプロンアッパメンバ(フロントホイールハウスのアッパメンバである)からフロントピラー(Aピラーとも呼ばれる)に伝達し、フロントピラーを後方に変位させることが記載されている。ここでは、フロントピラーが後方に大きく変位すると、ドア枠が変形してドアの閉鎖性が阻害されることから、フロントピラーの後退量を抑制することを目指している。具体的には、三角窓用の窓枠を有するフロントピラーにおいて、エプロンアッパメンバからの荷重を三角窓の斜め枠を構成する斜部で受けるなどして、フロントピラーの後退を抑制している。
フロントピラーの斜部は、フロントガラスの窓枠ともなっている。このため、エプロンアッパメンバから斜部へ過度の荷重が入力された場合に、フロントガラスが離脱してしまう可能性がある。例えば、フロントガラスが通常よりも車両前方にまで延びた意匠をなす車両では、エプロンアッパメンバと斜部とのなす角が小さくなるため、斜部への荷重が増大することが考えられる。
フロントガラスには、車両衝突時に膨張したエアバッグに上部から反力を与える役割があり、フロントガラスの離脱を防ぐことが望ましいと言える。
本発明の目的は、車両の前突時に、フロントピラーの斜部が変形して、斜部に取り付けられたフロントガラスが離脱することを抑制または防止することにある。
本発明にかかる車両前部構造は、フロントガラスの側枠をなす斜部と、当該斜部から下方に延びて車両下部構造に接続された縦部と、を含む構造部材であるフロントピラーと、 前記縦部に接続されて車両前方に延び、車両前突時の荷重入力を受ける構造部材であるエプロンアッパメンバと、を備え、前記斜部と前記エプロンアッパメンバとは、構造的に不連続に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、車両が前突した場合に、フロントガラスの離脱が抑制または防止されるため、エアバッグを想定通り膨張させることが可能となる。
以下に、図面を参照しながら、実施形態について説明する。説明においては、理解を容易にするため、具体的な態様について示すが、これらは実施形態を例示するものであり、他にも様々な実施形態をとることが可能である。
図1は、実施形態にかかる車両前部構造10の概略的構成を示す右側面図である。すなわち、図1は、車両前部の右側に配置された構造部材を、右方向から図示したものである。図中の座標系におけるF軸は車両前方向、U軸は上方向、R軸は搭乗者の右手方向を示している。
車両の前方側面には、構造部材であるフロントピラー12が設けられている。フロントピラー12は、斜部12aと縦部12bを備えている。ここで、構造部材とは、車両の重量の支持や、衝突時の荷重伝達などにおいて役割を果たす高強度部材をいう。骨格部材と呼ばれることもある。構造部材は、典型的には、折り曲げた鋼板を組み合わせて、閉じ断面形状(切断面が角柱のように全周的に部材によって囲まれた形状)に形成することで強度を確保している。
フロントピラー12における斜部12aは、図示を省略したフロントガラスの側面の窓枠を構成している。また、斜部12aの前方かつ車幅方向内側には、フロントガラスの下面の窓枠であるカウル14が溶接等により結合されている。カウル14は、車幅方向に延びる部材であり、両端が左右のフロントピラー12の斜部12a先端に結合されている。なお、フロントガラスの上面の窓枠はルーフによって構成されている。フロントガラスは、これらの窓枠に、ウレタン等の接着剤を用いて接着されている。
斜部12aは、側面では、三角窓16の斜め枠と、図示を省略したドア18の前方かつ上方の枠を構成している。三角窓16は、運転者の視界確保などの目的で車室の前方側面に設けられた窓であり、三角形のガラスが嵌め込まれている。また、ドア18は搭乗者が出入りするために開閉可能に形成されている。斜部12aの後端は、ルーフの側部前端に連結されている。
縦部12bは、斜部12aと溶接等により結合され、斜部12aから下側に向かって延びている。縦部12bの下端は、ロッカー20に結合されている。ロッカー20は、車室下部の側方に設けられ、車両の前後方向に延びる構造部材である。縦部12bには、その上部に、前述の三角窓16が設けられている。また、縦部12bの後面は、ドア18の前方の枠となっている。なお、ドア18を設置するにあたっては、縦部12bにドア18の外形に合わせて別途形成した枠部材を取り付ける場合もある。
縦部12bの前面には、エプロンアッパメンバ22が溶接等により結合されている。エプロンアッパメンバ22は、車両前部のいわゆるエンジンルームの両サイドの上部を前後方向に延びる部材である。ただし、本実施形態は、エンジン車に限るものではなく、また、車両後部等にエンジンを搭載した車両にも適用可能である。エプロンアッパメンバ22の下部には、図示を省略した前輪24が配置される。前輪24の内側にはサスペンションタワーが配置され、サスペンションタワーの上部の周囲にはエプロンと呼ばれる板状の部材が設けられる。エプロンアッパメンバ22の呼称はこのエプロンに由来しているが、本実施形態はサスペンションの構造、あるいは、エプロンの有無によらず適用できるものである。エプロンアッパメンバ22は、前輪24の上部に位置することから、フロントホイールハウスのアッパメンバなどと呼ばれることもある。
エプロンアッパメンバ22の前方には、クラッシュボックス26が結合されている。クラッシュボックス26は、塑性変形容易に形成された部材であり、衝突エネルギを安定的かつ効率的に吸収する。クラッシュボックス26の前方には、バンパリインフォースメント28が設けられている。バンパリインフォースメント28は、車幅方向にわたって設けられた部材であり、車両の前突時に車両前方を保護する。クラッシュボックス26の後面には、図示を省略した構造部材であるサイドメンバなども取り付けられて、衝突荷重を分散している。
図1の車両前部構造10においては、エプロンアッパメンバ22と、フロントピラー12の斜部12aが連結されていない。また、エプロンアッパメンバ22は、斜部12aに取り付けられたカウル14にも結合されていない。エプロンアッパメンバ22と斜部12aとの間には、隙間空間29が設けられていて、両者は構造的に不連続に形成されている。構造的に不連続とは、例えば前突時のように大きな荷重が加わった場合において、両者の間に構造的に意味のある大きさの荷重伝達が行われないように形成されていることを言う。したがって、荷重伝達を十分に行うことができない薄い板材などによって隙間空間29が埋められていたとしても、エプロンアッパメンバ22と斜部12aとは構造的に不連続な状態にある。
ここで、車両が前突を起こした場合の状況について説明する。前突時には、衝突対象がバンパリインフォースメント28を変形させながら、車両側に侵入してくる。このとき、バンパリインフォースメント28の両端では、クラッシュボックス26が塑性変形して衝突エネルギの一部を吸収するが、吸収できなかった荷重はエプロンアッパメンバ22に入力されることになる。
エプロンアッパメンバ22では、入力された荷重が大きな場合には、屈曲して一部のエネルギを吸収する場合もある。エプロンアッパメンバ22で吸収できない荷重は、フロントピラー12の縦部12bに入力される。縦部12bは、下端をロッカー20に溶接等により固定されており、入力された荷重の多くをロッカー20に伝達する。また、縦部12bに入力された荷重の一部は、斜部12aからルーフに伝達される。エプロンアッパメンバ22から縦部12bに大きな荷重が入力される場合、縦部12bは、エプロンアッパメンバ22との結合部分において、車両後方に屈曲する変形を起こすこともある。
この過程で、斜部12aも若干の変形を起こすことが考えられる。しかし、斜部12aは、縦部12bから入力される荷重と、ルーフからの反力とによって比較的小さな変形を起こすにすぎない。したがって、前突がかなり激しい場合であっても、斜部12aに取り付けられたフロントガラスは、離脱せずにとどまることになる。
図2は、前突時における車両の助手席の様子を模式的に示した側面図である。図2においては、図1に示したフロントピラー12の一部を参考までに破線で示している。
フロントガラス30は、前述の通り、下面をカウル14によって保持されている。フロントガラス30は、緩やかな曲面に形成されているため、斜部12aとは位置がずれているが、両側面は斜部12aによって保持されている。
助手席の前方には、ダッシュボード32が設けられており、通常時には内部にエアバッグ34が収納されている。図2では、車両が前突を起こしたために、エアバッグ34がダッシュボード32から飛び出して膨張した状態にある。エアバッグ34は、ダッシュボード32とフロントガラス30の間で大きく膨らんでおり、これらに挟まれた状態にある。これによりエアバッグ34は、安定した位置に膨らむことができる。また、エアバッグ34は、ダッシュボード32及びフロントガラス30からの反力によって内圧が高まり、弾力性を高めることができている。
助手席に座った搭乗者36は、衝突の瞬間、図示を省略したシートベルトによって身体が前方に移動するのを抑制されている。また、頭部36aは、前方に膨張したエアバッグ34によって前方に動くことを制限されている。これにより、搭乗者36の安全性が確保されている。
ここで参考のために、図1及び図2で示したものとは異なる車両前部構造について考察する。図1に示した車両前部構造10では、エプロンアッパメンバ22と斜部12aは構造的に不連続に形成されていた。しかし、上記特許文献1の車両でも採用されているように、一般的に車両では、エプロンアッパメンバ22と、フロントピラー12の斜部12aとは結合されている。すなわち、エプロンアッパメンバ22に入力された荷重の一部は、斜部12aに直接伝達されることになる。
この場合、斜部12aは大きな荷重の入力を受けて、比較的大きな変形を起こすことになる。例えば、斜部12aが車幅方向外側に膨らむように変形した場合には、フロントガラス30が窓枠から離脱してしまう可能性も生じる。フロントガラス30が外に外れてしまった状況でエアバッグ34が膨張すると、エアバッグ34はフロントガラス30からの反力を得られずに、想定よりも上側に膨れてしまうことになる。この場合、エアバッグ34の位置が想定よりも若干ずれるほか、エアバッグ34の内圧も下がって、弾力性が減少することが考えられる。
これに対して、本実施形態では、エプロンアッパメンバ22と斜部12aは構造的に不連続に形成されたために、連結されている場合に比べて、フロントガラス30の離脱を抑制または防止することが可能となっている。本実施形態の車両前部構造10では、図1に示すように本実施形態では、斜部12aが一般的な車両に比べて車両の前方にまで到達している。これにより、フロントガラスも車両の前方にまで伸ばすことが可能となり、斬新な意匠が実現できている。その一方で、エプロンアッパメンバ22と斜部12aを連結した場合には、過剰な荷重が斜部12aに入力されて、フロントガラス30の離脱が生じると考えられた。そこで、本実施形態では、エプロンアッパメンバ22と斜部12aは構造的に不連続に形成されている。ただし、一般的な意匠の車両においても、エプロンアッパメンバ22と斜部12aとを構造的に不連続に形成することで、通常の場合に比べて、フロントガラス30の離脱の抑制または防止が可能になると考えられる。
10 車両前部構造、12 フロントピラー、12a 斜部、12b 縦部、14 カウル、16 三角窓、18 ドア、20 ロッカー、22 エプロンアッパメンバ、24 前輪、26 クラッシュボックス、28 バンパリインフォースメント、29 隙間空間、30 フロントガラス、32 ダッシュボード、34 エアバッグ、36 搭乗者、36a 頭部。
Claims (1)
- フロントガラスの側枠をなす斜部と、当該斜部から下方に延びて車両下部構造に接続された縦部と、を含む構造部材であるフロントピラーと、
前記縦部に接続されて車両前方に延び、車両前突時の荷重入力を受ける構造部材であるエプロンアッパメンバと、
を備え、
前記斜部と前記エプロンアッパメンバとは、構造的に不連続に形成されていることを特徴とする車両前部構造。
Priority Applications (1)
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Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH0999858A (ja) * | 1995-10-04 | 1997-04-15 | Honda Motor Co Ltd | 自動車の車体構造 |
JP2015047901A (ja) * | 2013-08-30 | 2015-03-16 | トヨタ車体株式会社 | 車両のボディ構造 |
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2018
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