JP2020059255A - 液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ヘッドの吐出検知方法 - Google Patents
液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ヘッドの吐出検知方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】液体吐出速度の低下を抑制しつつ、液体吐出ヘッドにおける液体の吐出状態の検出を適正に行うことが可能な液体吐出装置の提供を目的とする。【解決手段】液体吐出装置1は、吐出口から液体を吐出させるための第1の駆動エネルギーを液体吐出ヘッド3 発熱素子605に印加する第1の駆動制御と、前記第1の駆動エネルギーより大きな第2の駆動エネルギーを発熱素子に印加する第2の駆動制御とを行う駆動制御手段613、K1を備える。また、液体吐出装置は、温度検知素子により検知された温度を示す信号に基づいて当該温度検知素子に対応する吐出口の液体の吐出状態が正常であるか否かを判定する判定手段K2、630と、を備える。駆動制御手段は、判定手段による判定を行う場合に前記第2の駆動制御を行う。【選択図】図5
Description
本発明は、液体吐出ヘッドの吐出口から液体を吐出させて記録媒体への記録を行う液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ヘッドの吐出検知方法に関する。
液体吐出装置では、液体吐出ヘッドに設けられている吐出口の中で、吐出不良の発生した吐出口を特定するための検査を行い、その検査結果を画像の補完や吐出性能の回復動作に反映させることが行われている。吐出不良が発生した吐出口を特定するための検査方法としては、吐出口毎の温度情報を検知し、各吐出口の温度変化の様子に基づいて吐出不良が生じているか否かを判定する方法がある。また、吐出口毎の温度情報により吐出不良の発生を判定する方法としては、温度検知素子により検知される温度曲線において急激な降温変化が生じる際に現れる変曲点の有無を検出することにより、吐出状態の正否を判定する方法が知られている。
特許文献1には、温度曲線に現れる変曲点をより高精度に判定するため、発熱素子に印加する駆動電圧を制御する方法が開示されている。この制御方法では、吐出口からインクを吐出させるための第1の駆動電圧を発熱素子に印加した後、吐出口からのインクの吐出に至らない程度の第2の駆動電圧を、温度曲線の変曲点が検出される前に発熱素子に印加することが行われている。これによれば、温度曲線に含まれる雑音に対する耐性を向上させて変曲点を検出することが可能となる。
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、第1の駆動電圧を印加してから、第2の駆動電圧を印加するまでに遅延時間が生じるため、高速記録が要求される液体吐出装置には適用し難いという課題がある。
本発明は、液体吐出速度の低下を抑制しつつ、液体吐出ヘッドにおける液体の吐出状態の検出を適正に行うことが可能な液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ヘッドの吐出状態検査方法の提供を目的とする。
本発明は、吐出口から液体を吐出させるための熱エネルギーを発生可能な発熱素子と前記発熱素子の温度を検出する温度検知素子とを有する記録ヘッドを備えた液体吐出装置であって、前記吐出口から液体を吐出させるために第1の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第1の駆動制御と、前記第1の駆動エネルギーより大きな第2の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第2の駆動制御とを行う駆動制御手段と、前記温度検知素子により検知された温度を示す信号に基づいて当該温度検知素子に対応する前記吐出口の液体の吐出状態が正常であるか否かの判定を行う判定手段と、を備え、前記駆動制御手段は、前記判定手段による前記判定を行う場合に前記第2の駆動制御を行うことを特徴とする。
また、本発明は、吐出口から液体を吐出させるための熱エネルギーを発生可能な発熱素子と前記発熱素子の温度を検出する温度検知素子とを有する液体吐出ヘッドの吐出検知方法であって、前記吐出口から液体を吐出させるための第1の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第1の駆動制御と、前記第1の駆動エネルギーより大きな第2の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第2の駆動制御とを行う駆動制御工程と、前記温度検知素子により検知された温度を示す信号に基づいて当該温度検知素子に対応する前記吐出口の液体の吐出状態が正常であるか否かの判定を行う判定工程と、を備え、前記駆動制御工程は、前記判定工程において前記判定を行う場合に前記第2の駆動制御を行うことを特徴とする。
本発明によれば、液体吐出速度の低下を抑制しつつ、液体吐出ヘッドにおける液体の吐出状態の検出を適正に行うことが可能になる。
以下、図面を参照して本発明に係る液体吐出装置の実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、液体を吐出する液体吐出装置の一例としてインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を例に挙げて説明する。記録装置は、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであっても良いし、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであっても良い。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置、例えば、回路基板を製造する装置、あるいは3次元プリンタであっても良い。また液体吐出装置には、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドが設けられる。
なお、以下の説明において、「記録」とは、記録媒体に対して液体を付与する動作を意味し、記録媒体に付与された液体によって表される情報の有意無意を問わない。すなわち、「記録」は文字、図形等のような有意の情報を形成する動作のみに限定されない。更に「記録」は人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する、又は媒体の加工を行なう動作も含む。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
更に、「液体」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、「液体」は、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いは記録媒体に吐出される液体の処理(例えば、記録媒体に付与される液体に含まれる色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を意味する。以下では、液体として色材を含んだ液体(インク)を用いる場合を例に採り説明する。
(第1の実施形態)
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における記録装置1の斜視図である。記録装置1は、矢印A方向(走査方向)に往復移動するキャリッジ2を備える。キャリッジ2には、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと呼ぶ)3が着脱可能に搭載される。また、記録装置1は、記録紙などの記録媒体Pを、給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送する。記録位置において、キャリッジ2と共に記録ヘッド3を走査させつつ記録ヘッド3からインクを吐出させることによって記録媒体Pに画像などの記録を行う。
記録装置1のキャリッジ2には、記録ヘッド3の他、例えば、インクカートリッジ6が搭載される。インクカートリッジ6は、記録ヘッド3に供給するインクを貯留する。なお、インクカートリッジ6は、キャリッジ2に対して着脱可能になっている。
図1に示す記録装置1は、カラー記録が可能である。そのため、キャリッジ2には、例えば、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクをそれぞれ収容する4つのインクカートリッジが搭載されている。これら4つのインクカートリッジは、それぞれ独立して着脱でき、装着されたインクカートリッジから、対応する記録ヘッドへとインクが供給される。
記録ヘッド3には、記録素子基板(以下、基板と略す場合もある)が設けられており、当該基板上には、複数の吐出口が配列された吐出口形成部材が配置される。記録ヘッド3は、例えば、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を用いた構成を有する。そのため、記録ヘッド3には、熱を発生可能な発熱素子(以下、ヒータと称す))605や、ヒータの駆動制御を行なう制御回路が設けられている。ヒータは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換可能な電気熱変換素子により構成されている。ヒータは、各吐出口に対応して設けられ、記録信号に応じてパルス状の電圧が印加される。
キャリッジ2の往復運動の範囲外(記録領域外)には、記録ヘッド3の各吐出口におけるインクの吐出不良を回復する回復装置4が配備されている。回復装置4が設けられる位置は、いわゆるホームポジションなどと呼ばれ、記録動作が行なわれていない間、記録ヘッド3はこの位置で静止する。
ここで、図2(a)及び図2(b)を用いて、上述した記録素子基板の概略構成について説明する。図2(a)は記録素子基板の断面構成の一例を示し、図2(b)は記録素子基板の平面構成の一例を示す。なお、ここでは吐出口形成部材の図示は省略している。
図2(a)に示すように、記録素子基板は、シリコン基板901の上に複数の層が形成された積層構造を有する。具体的には、シリコン基板901上には、SiO2等のフィールド酸化膜902を介して絶縁膜PSG903が形成されている。絶縁膜PSG903上には、Al、Pt、Ti、Ta等の薄膜抵抗体で形成される温度検知素子905と、温度検知素子905を接続配線するAL1配線904とが設けられている。
さらに、温度検知素子905及びAL1配線904上層には、SiO等の層間絶縁膜906が設けられている。層間絶縁膜906上には、TaSiN等の電気熱変換するヒータ907や、ヒータ907とシリコン基板901に形成された駆動回路とを接続するAL2配線908が設けられている。この他、SiO2等のパシベーション膜909や、ヒータ907上の耐キャビテーション性を高めるTa等の耐キャビテーション膜910も設けられている。
図2(b)に示すように、記録素子基板の平面上には、ヒータの領域911、駆動回路と接続するAL2配線912を示す領域、温度検知素子の個別配線のAL1配線914を示す領域、共通配線のAL1配線915を示す領域がある。また、領域913は温度検知素子905が設けられている領域を示している。
このような記録素子基板の構成は、半導体プロセスで形成される。本実施形態に係る記録素子基板は、温度検知素子905をAL1層に置いて、成膜、パターニングすることで作製できるため、従来の記録素子基板の構造を変更せずに作製できる。
なお、図2(b)では、温度検知素子905が矩形形状で示されているが、これに限られず、温度検知素子905は、例えば、ジグザグに蛇行した形状でも形成されていても良い。このような形状の場合、温度検知素子905の抵抗値が大きくなるほど、検知信号が大きくなるので、温度変化を精度良く検知できるという利点が得られる。
図3は、インクを吐出するための熱エネルギーを発生させるヒータ907と温度検知素子905を拡大して示す断面図である。ヒータ907にインクを吐出させるための駆動電圧を印加すると、ヒータ907上のインクが発泡し、その発泡時の圧力によって吐出口形成部材930に形成された吐出口からインクが吐出される。その後、吐出されなかった液体がヒータ上に墜落してくる。この墜落インクの量や時間タイミングの変化を温度検知素子905の温度を検出することで、正常吐出と吐出異常とを判別することが可能になる。
ここで、図4を用いて、ヒータ907にインクを吐出させるための駆動電圧を印加したときの温度検知素子905の温度ロファイルについて説明する。図4の符号11〜15は、種々の吐出状態に対応した温度プロファイルを示している。具体的には、符号11は、正常吐出時の温度プロファイルを示しており、符号12は、吐出口内に気泡が残留したことにより引き起こされた吐出異常時の温度プロファイルを示している。また、符号13は、流路に不純物が堆積しインク再充填が正常に行なわれなかったために起こった吐出異常時の温度プロファイルを示している。符号14は、ノズル表面に付着したインクによって起こった吐出異常時の温度プロファイルを示している。符号15は、吐出口に異物が詰まったことによる吐出異常時の温度プロファイルを示している。
ここで、符号11に示す正常吐出時の温度プロファイルでは、検知温度が最高温度に到達した時間から一定時間後に温度が降下する速度が急激に変化するポイント(変曲点)が出現している。本実施形態では、インクを吐出させるための駆動電圧(第1の駆動電圧(第1の駆動エネルギー))の印加後、約7usに変曲点が現れる。なお、この変曲点が現れる時間については、吐出口、インクの流路といったヘッドの構造や、ヒータの発熱等の条件によって異なってくる。従って、変曲点が生じているか否かを判定するタイミングについては、記録ヘッドに応じて適宜設定されることが好ましい。
一方、符号12〜符号15に示す吐出異常時の温度プロファイルは、正常吐出時の温度プロファイルに対してその特徴が異なっている。特に、吐出異常時の全ての温度プロファイルにおいて共通した現象としては、変曲点が現れない点が挙げられる。そこで、所定の時間範囲内、例えば、変曲点前から変曲点後の所定期間に得られる温度を示す信号の波形(以下、温度波形と呼ぶ)を演算処理することにより、正常吐出が行なわれたか否かを判定することができる。
次に、図5を用いて、図1に示す記録装置1における制御系の機能的な構成の一例について説明する。なお、ここでは、正常吐出であるか否かの判定に係る構成について重点的に説明する。
記録装置1の制御系の構成は、記録ヘッド3側に配される記録素子基板601に設けられる回路と、記録装置1の本体部側に配される制御回路613、データ処理部630、及び電源部650とに大別される。
制御回路613は、記録装置1における各構成の動作を制御する。制御回路613では、例えば、発熱素子としてのヒータ(H1〜H4)605の駆動回路の制御や、当該駆動回路を介した温度検知動作を制御する。
データ処理部630は、AD変換器614と、ダブルバッファ615と、演算器(演算手段)616と、判定器(判定手段)617と、レジスタ618とを備える。データ処理部630においては、温度検知信号VSに基づいて、上記各構成により各種データ処理を行なう。
具体的には、AD変換器614は、温度検知信号VSをアナログデータからデジタルデータに変換する。ダブルバッファ615は、2つのレジスタから構成され、時分割駆動時間毎に当該2つのレジスタを交互に切り替えて、AD変換器614からのデジタルデータを一時的に格納する。演算器616は、デジタルフィルタ処理と微分演算処理を行なう。判定器617は、演算器616の演算結果に基づいて各吐出口の吐出が正常吐出であるか吐出異常であるかを判定する。レジスタ618は、各吐出口に対する判定結果を格納する。
一方、記録素子基板601に設けられる回路は、ヒータ605を駆動させるための駆動回路K1と、ヒータの温度を検知するための温度検知回路K2とに分けられる。
駆動回路K1には、回路ブロック606と、ANDゲート602と、駆動制御回路641と、駆動スイッチ604と、発熱素子としてのヒータ605とが設けられている。ヒータ605と駆動スイッチ604とは直列に接続され、それらは装置本体側に設けられた電源部650におけるヒータ駆動用の第1電源651と第2電源652とに並列に接続されている。第1電源651と第2電源652には、それぞれスイッチ653、654が直列に接続されている。これらのスイッチ653、654は、制御回路613からの電源切換え信号に基づいてオン、オフが切換えられる。但し、スイッチ654には反転回路655が接続されているため、いずれか一方のスイッチ653又は654がオンとなるとき、他方のスイッチ653又は654がオフとなる。これにより、ヒータ605に接続された駆動スイッチ604がオンとなっているとき、そのヒータ605には、第1電源621からの第1駆動電圧又は、第2電源652からの第2駆動電圧が選択的に印加されることとなる。
第1電源651は、記録媒体に対して所定の画像を記録する際に、ヒータ605に第1駆動電圧を印加するための電源である。また、第2電源652は、記録ヘッド3の各吐出口が正常吐出の状態にあるか、吐出異常の状態にあるかを検査する際に、ヒータ605に対して電圧(第1駆動電圧Va)を印加するための電源である。第2電源652は、第1電源651より大きな電圧(第2駆動電圧Vb)をヒータ605に印加するための電源である。本実施形態では、第1電源651はヒータ605に対して24.7Vの電圧Vaを印加し、第2電源652はヒータ605に対して28.2Vの電圧Vbを印加するものとなっている。
回路ブロック606は、2ラインデコーダや3ビットシフトレジスタの他、ラッチを含み構成される。回路ブロック606には、制御回路613から出力される各種信号(CLK1(シリアルクロック))、DATA1(記録データ及び時分割駆動データを含むシリアルデータ)、LT(ラッチ信号))が入力される。これにより、回路ブロック606は、時分割駆動信号BL(ブロック選択信号)BL0、BL1や、記録信号D(D0、D1)を生成し、それらをANDゲート602へと出力する。
ANDゲート602は、時分割駆動信号BL(BL0、BL1)と記録信号D(D0、D2)との論理積をとり、印加イネーブル信号A(A1〜A4)を発生する。駆動制御回路641は、各ヒータ605(H1〜H4)に対応して設けられており、制御回路613から出力されるヒート信号HEと前述の印加イネーブル信号Aとの論理積をとり、対応するヒータに対して駆動信号B(B1〜B4)を出力する。駆動スイッチ604は、ヒータ605をオン/オフするMOSトランジスタである。
上記構成を有する駆動回路K1は、複数設けられるヒータ605(H1〜H4)を時分割駆動させることができる。図5では、ヒータH1,H3と、ヒータH2,H4とがそれぞれ異なるタイミングで駆動される。すなわち、ヒータH1とH3が同時に駆動され、これとは異なるタイミングでヒータH2とH4が同時に駆動される。このような時分割駆動を行うことにより、ヒータ605に接続される共通配線部などに同時に流れる電流を低減することができる。なお、図5ではヒータ605として4つのヒータ(H1〜H4)を示しているが、実際の記録ヘッドにおいては、周知のように多数の吐出口が設けられており、各吐出口に対応してヒータが設けられている。そして、所定数のヒータからなるヒータ群が時分割に駆動されることとなる。
次に、温度検知回路K2について説明する。温度検知回路K2としては、シフトレジスタ607、温度検知素子608、選択スイッチ609、読出スイッチ610及び611と、差動アンプ612と、が設けられている。温度検知素子608は、選択スイッチ609及び読出スイッチ610を介して温度検知素子バイアス用の定電流源620に接続されている。また、温度検知素子608は、各ヒータ605に対応して複数設けられている。各温度検知素子608は、対応するヒータ605の近傍に配されている。
選択スイッチ609は、温度検知素子608を選択するためのスイッチであり、MOSトランジスタによって構成されている。読出スイッチ610及び611は、温度検知素子608の端子電圧を読み出すためのスイッチであり、MOSトランジスタによって構成されている。シフトレジスタ607は、制御回路613から出力されるシフトクロックCLK2及びシフトデータDATA2を受けて、選択信号C(C1〜C4)を順次出力する。これにより、駆動されるヒータに対応した温度検知素子608の読出スイッチ610、611がオンとなり、温度検知素子608の端子電圧が差動アンプ612に入力される。差動アンプ612は、入力された端子電圧に基づいて温度検知信号VSを発生する。この温度検知信号VSはデータ処理部630に入力される。データ処理部630は、各部において前述の処理を行い、各吐出口の吐出が正常吐出であるか吐出異常であるかを判定する。
なお、制御回路613と駆動回路K1とにより本発明における駆動制御手段が構成され、温度検知回路K2とデータ処理部630とにより、本発明における判定手段が構成されている。
なお、制御回路613と駆動回路K1とにより本発明における駆動制御手段が構成され、温度検知回路K2とデータ処理部630とにより、本発明における判定手段が構成されている。
次に、上記構成を有する記録装置の液体吐出動作、及び吐出口の吐出性能の検査方法を詳細に説明する。図6(a)は、ヒータ605に対して第1駆動電圧(第1の駆動エネルギー)Vaを印加したときに温度検知素子608よって検知された温度に対応する出力値(温度出力値)の変化(温度波形)を示す図である。なお、温度検知素子608から出力される温度出力値t[V]は、[−t/0.35×1000+40]℃で定義される。この第1の駆動電圧Vaは、記録媒体に対して画像を記録する際にヒータに印加すべきパルス電圧であり、その電圧値は24.7V、パルス幅は0.55μsとしている。
吐出口のインク吐出状態が正常吐出状態にある場合、温度検知素子608から出力される温度出力値の波形(温度波形)W1のようになる。すなわち、第1の駆動電圧Vaの印加に伴って昇温していき、最高到達温度を経て降温に転じていく。この正常吐出時においては、時刻tpで変曲点が現れる。これに対し、吐出異常時には変曲点が現れない。なお、時刻tpは、第1駆動電圧Vbの印加から約4.5μs経過した時刻である。
また、本実施形態では、微小変化の変曲点を検知し易くするために、温度波形の変化を強調するための微分演算を演算器616で行なって変曲点を検知し、その結果に基づいて正常吐出であるか否かの判定を判定器617で行なっている。しかし、雑音による影響や微分演算回路の製造公差(ばらつき)による影響を考慮した場合、誤判定を避けるためには、吐出時の変曲点の波形変化をより十分に大きくすることが必要になる。
図6(b)は、図6(a)の温度波形の中の変曲点付近の時間変化を拡大して示した図である。図示のように、tpにおける正常吐出時の変曲点を通過する接線Daの傾きは小さい。このため、接線の傾きに基づいて吐出口が正常吐出であるか否かを検知することは困難になる。そこで、本実施形態では、この正常吐出時における変曲点の変化を大きくすることによって、吐出口の吐出状態、すなわち、吐出口が正常吐出状態にあるか否かを、より確実に検知できるようにしている。
ここで、本実施形態において実施される吐出検知方法(以下、吐出検知という)について説明する。なお、以下に説明する吐出状態の検知処理は、検査モード記録または予備吐出時に行われる。
吐出口の吐出状態の検知処理を実行する場合、制御回路613は所定の制御信号PSを出力してスイッチ654をオンさせ、スイッチ653をオフさせる。これにより、第2電源652から出力される第2の駆動電圧(第2の駆動エネルギー)Vbをヒータ605に印加可能な状態になる。第2の駆動電圧Vbは、第1の駆動電圧Vaより高く、第1の駆動電圧Vaを印加した場合よりも大きい熱エネルギーをヒータ605から発生させることができる。なお、本実施形態では、吐出状態の検知処理を行う場合に、より大きな熱エネルギーをヒータにおいて発生させるため、ヒータに印加可能な電圧を高めるようにしている。しかし、ヒータに印加可能な電圧を一定とし、ヒータの通電駆動時間に相等する電圧印加時間(駆動パルス幅)を長くする制御を行うようにしても同様の効果が得られる。図7(a)は、ヒータ605に対して第2駆動電圧Vbを印加したときの温度検知素子608の温度出力値の変化(温度波形)を示す図である。図6と同様に、温度出力値t[V]は、[−t/0.35×1000+40]℃で定義される。ここでは、前述のようにインク吐出に用いられる第2の駆動電圧Vbの電圧値は28.2Vであり、パルス幅は0.55μsとしている。
吐出口のインク吐出状態が正常吐出状態にある場合、温度検知素子608から出力される温度出力値の波形(温度波形)W11のようになる。すなわち、第2の駆動電圧Vbの印加に伴って昇温していき、最高到達温度を経て降温に転じていく。このとき正常吐出時においては、時刻tpで変曲点が現れる。変曲点が現れる時刻tpは、本実施形態で用いるノズルにおいては第2電圧Vaの印加から約4.5μs経過した時刻である。これに対し、吐出口が不吐出状態にある場合の温度出力値の温度波形はW12のようになる。この温度波形では、変曲点は出現しない。
図7(b)は、図7(a)の温度波形の変曲点が表れる時刻tp付近の時間変化を拡大した図である。この図7(b)と図6(b)とを比較した場合、時刻tp2における正常吐出時の変曲点における接線Dbの傾きが前述の第1の駆動電圧Vaを印加した場合の傾きDaと比較して大きくなっていることが分かる。これにより、吐出口が正常吐出状態にある場合の傾きと、不吐出状態にあるときの傾きとを比較することによって、吐出口がいずれの状態にあるかを確実に検知することが可能になる。
第2の駆動電圧を印加した場合にも、傾きを検出するために、温度波形の変化を強調するための微分演算を演算器616において行う。図8は、図7に示した温度波形の変曲点前後の所定期間ts(時刻4us〜8us)において、当該温度波形を微分増幅して得られる検知出力値の波形を示している。図8の波形に示すように、正常吐出時における検知出力値のピーク電圧は約450mVとなるのに対し、異常吐出時(不吐時)における検知出力値のピーク電圧は約350mV程度に収まっている。これらの出力値を判定器617における比較器で比較することにより、吐出口が正常吐出状態にあるか不吐出状態にあるかを検知することが可能になる。
一般に、画像の記録時(通常駆動時)に用いる駆動電圧の値を高く設定すると、ヒータ605の耐久性の劣化が懸念される。しかし、本実施形態では、駆動回数(吐出数)の少ない吐出検知のときにのみ第2の駆動電圧Vbをヒータ605に印加し、駆動回数の多い通常駆動時には第1の駆動電圧Vaを印加する。これにより、ヒータ605の耐久性の劣化を抑えることができる。
図8に示す吐出検知における検知出力値の波形(第2の駆動電圧Vbをヒータ605に印加したときの検知出力値の波形)に対する比較例として、第1の駆動電圧Vaをヒータ605に印加したときの検知出力値の波形を図9に示す。図9は、図6に示す温度波形の変曲点の前後の所定期間ts(時刻4us〜8us)において、当該温度波形を微分増幅して得られる検知出力値の波形を示している。図9に示すように、第1の駆動電圧Vaを印加した場合にも、正常吐出時には約300mVのピーク電圧が表れ、異常吐出時(不吐時)には約250mVのピーク電圧が表れる。従って、両電圧の間には50Vの差が生じる。しかし、雑音による影響や微分演算回路の製造公差(ばらつき)による影響を加味すると、50mV程度の差分では誤検知となる場合が多い。
従って、本実施形態では、吐出検知の実施において第2の駆動電圧をヒータに印加し、正常吐出状態の電圧と不吐出状態の電圧との差分を、100mV程度まで広げた。このため、雑音や微分演算回路の製造公差(ばらつき)などによる影響を低減でき、高精度に吐出検出を行うことが可能になる。
さらに、本実施形態では、通常記録と吐出状態の検出のいずれにおいても、1回の吐出動作において、当該吐出動作を行う1つのヒータに対し1つの駆動電圧(第1駆動電圧または第2駆動電圧)を印加する構成を採る。このため、1回の吐出駆動において、駆動電圧の印加を2回行う従来の装置に比べ、1回の吐出動作に要する時間を短縮でき、記録動作の低下を抑制することができる。このため、近年の記録装置に要請されている高速記録にも十分に対応することが可能になる。
(他の実施形態)
上記第1の実施形態では、予め定めた一定の駆動条件(駆動電圧または駆動パルス幅)で吐出検知を行う例を示した。しかし、温度検知素子608には、温度に対する抵抗変化率の公差によるばらつきや、経時変動などによって性能差(感度差)が生じることがあり、その性能差が吐出検知における検知出力に影響を及ぼすことがある。
(他の実施形態)
上記第1の実施形態では、予め定めた一定の駆動条件(駆動電圧または駆動パルス幅)で吐出検知を行う例を示した。しかし、温度検知素子608には、温度に対する抵抗変化率の公差によるばらつきや、経時変動などによって性能差(感度差)が生じることがあり、その性能差が吐出検知における検知出力に影響を及ぼすことがある。
図10はヒータ605に印加される第2駆動電圧Vbと検知出力との関係を示している。図10において、破線は温度検知素子608の感度(例えば、温度に対する抵抗変化率)が低下している場合を、実線は温度検知素子608の感度が正常に保たれている場合をそれぞれ示している。
図10に示すように、温度検知素子608の感度が正常に保たれている場合、正常吐出時の検知出力(L1)と、不吐出状態の検知出力(L2)との差分を大きくすることができ、これによって適正に吐出検知を行うことが可能になる。これに対し、温度検知素子608の感度が低下している場合、正常吐出時の検知出力(L11)と、不吐出状態の検知出力(L12)との差分が小さくなって吐出検知が困難になり、誤検知の発生頻度が高くなる可能性がある。
そこで、温度検知素子608の感度(例えば、温度に対する抵抗変化率)を予め測定し、感度が低下している場合には、第2の駆動電圧Vbとして30.0Vの電圧をヒータに印加するようにしてもよい。これにより、吐出検知を適正に実施することが可能になる。なお、第2の駆動電圧は、30.0Vに限定されるものではない。温度検知素子608の感度の測定結果によっては、さらに高い駆動電圧Vbを設定し、適正な吐出検知を実施可能にすることもできる。但し、駆動電圧Vbを高く設定すると、ヒータ605の耐久性が劣化する虞があるため、駆動電圧Vbの設定値はヒータ605の耐久性や吐出検知回数などに応じて適宜設定することが好ましい。
また、温度検知素子608の温度に対する抵抗変化率の測定は、出荷時に実施しても良いし、記録ヘッドの着荷時に実施しても良い。さらに、定期的に温度検知素子608の感度測定を行うようにすれば、常に良好な吐出検知性能を得ることができる。
また、微分演算回路の公差によって検知出力が低下する場合もある。このため、微分演算回路についても、当該回路の諸特性を予め測定し、その測定結果に応じて第2の駆動電圧Vbを高めるようにすれば、さらに吐出検知の適正化を図ることができる。
また、上記実施形態では、第1駆動電圧を発生させるための第1電源と、第2の駆動電圧を発生させるための第2電源を備える例を示した。この場合、2つの電源を具備する必要がある。さらに、上記のように温度検知素子の感度低下などに対応すべく第2駆動電圧を変更する場合には、第2電源を交換する必要がある。これに対し、第2駆動電圧のパルス幅を変更可能とする制御を採用すれば、単一の駆動電源を用いて異なる電気エネルギーをヒータに供給することが可能になり、製造コストの低減、及びユーザの利便性を高めることができる。但し、駆動電圧のパルス幅の拡大には、記録動作におけるヒータの駆動周波数によって自ずと限界があり、第2駆動電圧を増大させる程度によっては、上記実施形態のように、複数の駆動電源を用い、これらを選択的に切り換えるようにすることが有効である。その他、単一の電源によって供給可能な最大電圧を分圧してヒータに供給する構成を採ることも可能である。
1 記録装置(液体吐出装置)
3 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
605 発熱素子
613 制御回路
630 データ処理部
K1 駆動回路
K2 温度検知回路
3 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
605 発熱素子
613 制御回路
630 データ処理部
K1 駆動回路
K2 温度検知回路
Claims (11)
- 吐出口から液体を吐出させるための熱エネルギーを発生可能な発熱素子と前記発熱素子の温度を検出する温度検知素子とを有する記録ヘッドを備えた液体吐出装置であって、
前記吐出口から液体を吐出させるために第1の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第1の駆動制御と、前記第1の駆動エネルギーより大きな第2の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第2の駆動制御とを行う駆動制御手段と、
前記温度検知素子により検知された温度を示す信号に基づいて当該温度検知素子に対応する前記吐出口の液体の吐出状態が正常であるか否かの判定を行う判定手段と、を備え、
前記駆動制御手段は、前記判定手段による前記判定を行う場合に前記第2の駆動制御を行うことを特徴とする液体吐出装置。 - 前記判定手段は、前記温度検知素子によって検出された温度を示す信号の波形における変曲点を検出した場合に、当該温度検知素子によって検知された前記吐出口の液体の吐出状態が正常でないと判定することを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
- 前記温度を示す信号の波形の中の前記変曲点が検出される前後の所定期間における前記温度を示す信号に微分演算することにより前記判定を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
- 前記駆動制御手段は、前記吐出口の吐出性能を回復させるための予備吐出において前記吐出口から液体を吐出させる際に前記第2の駆動制御を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
- 前記第2の駆動制御は、第2の駆動エネルギーを前記記録ヘッドの前記温度検知素子の温度に対する抵抗変化率に応じて変更する制御であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
- 前記第2の駆動制御は、前記温度を示す信号を微分演算する手段の特性に応じて変更する制御であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
- 前記発熱素子は、印加された電圧に応じた熱エネルギーを発生する電気熱変換素子であり、
前記第1の駆動エネルギーは、前記発熱素子に印加する第1の駆動電圧であり、
前記第2の駆動エネルギーは、前記第1の駆動電圧より高い電圧値を有する第2駆動電圧であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。 - 前記第1の駆動エネルギーは、前記発熱素子に印加するパルス状の第1の駆動電圧であり、
前記第2の駆動エネルギーは、前記第1の駆動電圧より広いパルス幅を有するパルス状の第2駆動電圧であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。 - 吐出口から液体を吐出させるための熱エネルギーを発生可能な発熱素子と前記発熱素子の温度を検出する温度検知素子とを有する液体吐出ヘッドを備え、前記液体吐出ヘッドの前記吐出口から液体を吐出させる液体吐出方法であって、
前記吐出口から液体を吐出させるために第1の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第1の駆動制御と、前記第1の駆動エネルギーより大きな第2の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第2の駆動制御とを行う駆動制御工程と、
前記温度検知素子により検知された温度を示す信号に基づいて当該温度検知素子に対応する前記吐出口の液体の吐出状態が正常であるか否かの判定を行う判定工程と、を備え、
前記駆動制御工程は、前記判定工程において前記判定を行う場合に前記第2の駆動制御を行うことを特徴とする液体吐出方法。 - 吐出口から液体を吐出させるための熱エネルギーを発生可能な発熱素子と前記発熱素子の温度を検出する温度検知素子とを有する液体吐出ヘッドの吐出検知方法であって、
前記吐出口から液体を吐出させるための第1の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第1の駆動制御と、前記第1の駆動エネルギーより大きな第2の駆動エネルギーを前記発熱素子に印加する第2の駆動制御とを行う駆動制御工程と、
前記温度検知素子により検知された温度を示す信号に基づいて当該温度検知素子に対応する前記吐出口の液体の吐出状態が正常であるか否かの判定を行う判定工程と、を備え、
前記駆動制御工程は、前記判定工程において前記判定を行う場合に前記第2の駆動制御を行うことを特徴とする液体吐出ヘッドの吐出検知方法。 - 前記判定手段は、前記温度検知素子によって検出された温度を示す信号の波形における変曲点を検出した場合に、当該温度検知素子によって検知された前記吐出口の液体の吐出状態が正常でないと判定することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッドの吐出検知方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018193620A JP2020059255A (ja) | 2018-10-12 | 2018-10-12 | 液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ヘッドの吐出検知方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018193620A JP2020059255A (ja) | 2018-10-12 | 2018-10-12 | 液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ヘッドの吐出検知方法 |
Publications (1)
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JP2020059255A true JP2020059255A (ja) | 2020-04-16 |
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Family Applications (1)
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JP2018193620A Pending JP2020059255A (ja) | 2018-10-12 | 2018-10-12 | 液体吐出装置、液体吐出方法、及び液体吐出ヘッドの吐出検知方法 |
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JP (1) | JP2020059255A (ja) |
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2018
- 2018-10-12 JP JP2018193620A patent/JP2020059255A/ja active Pending
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