(各実施形態の共通構成)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、以下に説明する第1から第4の実施形態における共通構成を説明するためのブロック図である。図1に示す干渉評価装置1は、データベース2、判定部3、演算部4及び干渉電力算出部5を備える。
データベース2は、電磁波を放射する複数の装置に関する情報を予め記憶する記憶部である。電磁波を放射する装置としては、例えば、通信、放送等の無線通信を行う無線通信装置があり、無線通信装置以外に、無線通信を行わない電子レンジや冷蔵庫のような家電等の電化製品、レーダ、本来の機能とは別に電磁波を副次的に発生するエンジンのような機器等の装置がある。無線通信装置以外の無線通信を行わない電子レンジや冷蔵庫のような家電等の電化製品、レーダ、本来の機能とは別に電磁波を副次的に発生するエンジンのような機器等の装置を以下、電磁波放射装置という。
図2は、データベース2のデータ構成の一例を示す図であり、無線通信装置や電磁波放射装置に関する情報の項目として、「識別情報」、「装置種類」、「送信マスク特性」、「受信フィルタ特性」、「与干渉信号電力密度」、「送信帯域」、「等価雑音帯域」の項目を有している。
「識別情報」の項目には、無線通信装置及び電磁波放射装置の各々に対して予め付与される各々を一意に識別可能な識別情報が書き込まれる。識別情報としては、例えば、製品名称等であってもよい。「装置種類」の項目には、装置の種類を示す情報、すなわち無線通信装置であるか、電磁波放射装置であるかを示す情報が書き込まれる。図2では、無線通信装置の場合、「無線通信」と書き込まれ、電磁波放射装置の場合、「電磁波放射」と書き込まれる例を示している。
「送信マスク特性」の項目には、送信マスク特性を示す情報、すなわち送信スペクトルマスクの周波数特性を示す情報(以下、送信マスク特性の情報という)が書き込まれる。「受信フィルタ特性」の項目には、受信フィルタ特性を示す情報、すなわち受信フィルタの周波数特性を示す情報(以下、受信フィルタ特性の情報という)が書き込まれる。
ここで、送信マスク特性の情報及び受信フィルタ特性の情報について、図3を参照しつつ説明する。図3は、送信マスク特性及び受信フィルタ特性における一般的な周波数スペクトル特性を示す図である。図3に示すグラフにおいて、横軸は、周波数[Hz]であり、縦軸は、送信マスクの場合、相対電力[dB]であり、受信フィルタの場合、減衰量[dB]である。
図3において、実際の無線通信装置における送信マスクや受信フィルタの周波数スペクトルは、符号90で示す点線のグラフとなる。符号100の実線で示すグラフは、無線システムにおける規格や無線通信装置の設計仕様に定められる無線システムが満足すべき値に基づく模式的なグラフである。実線のグラフ100の値は、電波法の遵守や他のシステムや装置への干渉を考慮するため、破線のグラフ90示す実際の値よりも大きな値となっている。干渉評価装置1における処理では、簡易に扱うことができる実線で示すグラフ100から得られるサンプルデータが用いられる。また、符号80で示す区間が、周波数スペクトルのピークの帯域である周波数帯であり、符号91で示す区間が、マスク対象の信号、または、フィルタリング対象の信号が通過する通過域の帯域幅である。
例えば、実線で示すグラフ100における菱形「◆」に示す箇所の値が、周波数スペクトルのサンプルデータとなる。なお、以下に示す他のグラフにおいても、菱形「◆」で示す箇所は、同様に、サンプルデータを意味するものとする。
例えば、サンプルデータの生成は以下のようにして行われる。1つの送信マスクや受信フィルタにおいて、中心周波数fcから周波数の高低の両方へ帯域幅91の数倍程度の範囲を定める。定めた範囲の数か所から数十か所の周波数の位置における値を抽出し、抽出した値と、当該値に対応する位置の周波数とを組み合わせてサンプルデータを生成する。なお、図3において、fmaxとfminは、サンプルデータを抽出する範囲として定めた範囲の最大周波数と最小周波数である。
送信マスク特性に基づいて予め生成された複数のサンプルデータが送信マスク特性の情報に含まれることになる。また、受信フィルタ特性に基づいて予め生成された複数のサンプルデータが受信フィルタ特性の情報に含まれることになる。
図2に戻り、「与干渉信号密度」の項目には、装置が、電磁波放射装置である場合に与干渉信号電力密度を示す情報が書き込まれる。「送信帯域」の項目には、装置の種類が、無線通信装置の場合であって送信マスク特性が存在しないときに、送信帯域の情報、すなわち送信帯域幅と送信中心周波数の情報が書き込まれる。「等価雑音帯域」の項目には、装置の種類が、無線通信装置の場合であって受信フィルタ特性が存在しないときに、等価雑音帯域の情報、すなわち等価雑音帯域幅と受信中心周波数の情報が書き込まれる。
ここで、データベース2が記憶する情報の性質について説明する。無線通信装置の場合、無線方式ごとに規格による規定が存在する。以下に説明する各実施形態では、汎用的な干渉評価を目的としているため、データベース2に記憶させておく情報は、無線通信を行う装置における設計仕様の設定データや通信サービスの運用前に試験測定されたデータから得られる送信マスク特性と受信フィルタ特性の情報である。
ただし、設計仕様に設定データが示されていない場合や、運用前の試験データが入手困難な状況である場合等、サンプルデータが得らえない場合、装置種類が無線通信装置の場合、無線規格の値をデータベース2に記憶させておく。
また、与干渉信号電力密度の情報、送信帯域の情報及び等価雑音帯域の情報は、送信マスク特性や受信フィルタ特性の情報が不明である場合であっても、装置の設計仕様等から得られる情報である。したがって、与干渉信号電力密度の情報、送信帯域の情報及び等価雑音帯域の情報は、利用者が、その都度、装置の設計仕様等から値を調べてデータベース2に記憶させてもよいし、予めデータベース2に記憶させておいてもよい。
図1に戻り、判定部3は、干渉評価装置1の利用者による与干渉側装置、すなわち送信側装置と、被干渉側装置、すなわち受信側装置の指定を受ける。なお、利用者は、与干渉側装置及び被干渉側装置の両方において無線通信装置を指定する場合、各々が異なる無線システムに属する無線通信装置を選択して指定する。
また、判定部3は、データベース2から、指定された与干渉側装置及び被干渉側装置に対応するレコードを読み出し、読み出した与干渉側装置のレコードと、被干渉側装置のレコードとに基づいて、演算部4が行う処理を判定する。また、判定部3は、読み出した与干渉側装置及び被干渉側装置のレコードを演算部4に出力する。
演算部4は、判定部3の判定結果に基づいて、後述する第1〜第4の実施形態の処理、及び、図6に示すステップS106並びにS110のいずれかの処理を行う。演算部4は、第1〜第4の実施形態の処理及びステップS110の処理においては、干渉軽減係数を算出して、干渉電力算出部5に出力する。
干渉電力算出部5は、演算部4が干渉軽減係数を算出する場合、算出した干渉軽減係数と、予め与えられる与干渉側装置の送信電力と、アンテナの利得と、電波の伝搬経路における損失とに基づいて干渉電力を算出する。干渉電力算出部5は、演算部4が干渉軽減係数を算出しない場合、例えば、ステップS106の場合、予め与えられる与干渉側装置の送信電力と、アンテナの利得と、電波の伝搬経路における損失とに基づいて干渉電力を算出する。
ここで、演算部4が算出する干渉軽減係数と干渉電力算出部5が算出する干渉電力について説明する。干渉電力算出部5に適用される干渉電力の算出式として、以下の式(1)と式(2)が存在する。
式(1)は、与干渉側装置と被干渉側装置の両方が、電磁波放射装置以外の無線通信装置の場合に適用される式であり、式(2)は、与干渉側装置が、電磁波放射装置であり、被干渉側装置が、無線通信装置の場合に適用される式である。
式(1)及び式(2)において、Pi[dB]は干渉電力であり、Pt[dB]は送信電力であり、G[dB]はアンテナ利得である。式(1)において、L[dB]は損失であり、IRF(Interference Reduction Factor)[dB]は干渉軽減係数である。式(2)において、Id[dB/Hz]は与干渉信号電力密度であり、Bw[Hz]は等価雑音帯域幅である。
図4は、式(1)の関係をブロック図により示した図であり、送信側では、送信信号生成処理60、送信マスクの適用処理61、送信アンテナ62による電波の送信処理が行われ、受信側では、受信アンテナ63による伝搬された電波の受信処理、受信フィルタの適用処理64、受信信号検知処理65が行われる。
送信信号生成処理60の際に送信電力Ptが定められる。送信マスクの適用処理61と受信フィルタの適用処理64の関係から干渉軽減係数IRFが求められる。送信アンテナ62と、受信アンテナ63の両方を合わせたアンテナ利得が、アンテナ利得Gとなる。送信アンテナ62と受信アンテナ63の間の電波の伝搬による損失が損失Lである。したがって、式(1)に示すように、送信電力Ptにアンテナ利得Gが加えられた値から、損失Lと干渉軽減係数IRFを減算することにより干渉電力Piを算出することができる。
ここで、演算部4が算出する干渉軽減係数のうち、与干渉側装置及び被干渉側装置の両方が無線通信装置であって送信マスク特性及び受信フィルタ特性が既知である場合の干渉軽減係数について、図5を参照しつつ説明する。図5(a)は、与干渉側装置、すなわち送信側装置の送信マスク特性101を示したグラフであり、図5(b)は、被干渉側装置、すなわち受信側装置の受信フィルタ特性111を示したグラフである。図5(a)の縦軸は、相対電力[dB]であり、図5(b)の縦軸は、減衰量[dB]であり、同一の単位[dB]で示されている。横軸は、図5(a)、(b)ともに周波数[Hz]である。
同一の無線システムでない限り、送信マスク特性と受信フィルタ特性における両者の周波数スペクトルは異なっている。すなわち、送信マスク特性101の送信中心周波数fc_t[Hz]と受信フィルタ特性111の受信中心周波数fc_r[Hz]は異なる値であり、周波数帯81の幅であるWd_t[Hz]と、周波数帯82の幅であるWd_r[Hz]の長さも異なっている。これらのパラメータの位置が、周波数軸上で異なることにより、干渉の影響を抑制し、干渉を避ける作用がある。
干渉電力を算出する際、送信マスク特性101と受信フィルタ特性111の周波数スペクトルの重なり具合を数値化して活用することができる。与干渉側装置の電力が、被干渉側装置に与える影響を示す係数として、上記のIRF、すなわち干渉軽減係数が存在する。干渉軽減係数は、以下のようにして算出することができる。
図5(a)の送信マスク特性101の領域の大きさをRt_smとする。これに対して、図5(b)のグラフにおいて、送信マスク特性101と受信フィルタ特性111の領域が重複する三角形のように見える領域500の大きさをRcrsとする。領域Rcrsに相当する相対電力が、与干渉側から送信される送信電力を意味しており、領域Rt_smに相当する相対電力が、被干渉側で受信される受信電力の周波数スペクトル成分における干渉電力を意味している。干渉軽減係数は、送信電力に対する干渉電力の比で表されるため、次式(3)により干渉軽減係数IRFを算出することができる。
式(3)により算出したIRFを、式(1)に適用することにより、精度の高い干渉電力を求めることができ、それにより、より正確に干渉評価を行うことができる。
ここで、式(1)の右辺の(IRF)と式(2)の(Id×Bw)とを対比すると、これらの値は、共に、与干渉側装置及び被干渉側装置の周波数スペクトルの両方、または、一方に基づいて算出される値であり、干渉の軽減に貢献する係数である。したがって、式(2)の(Id×Bw)も広義な意味でも干渉軽減係数である。そのため、以下の説明では、式(2)のId×Bw[dB]も干渉軽減係数という。なお、式(1)の干渉軽減係数を示す場合、干渉軽減係数IRFと記載し、式(2)の干渉軽減係数を示す場合、干渉軽減係数Id×Bwと記載する。
図6は、判定部3による判定処理と、判定処理の結果によって実行される処理の関係を示すフローチャートである。判定部3は、図6に示すフローチャートのうち、ステップS101,S102,S103,S104の処理の処理を行う。
以下、図6のフローチャートにしたがって、判定部3の構成について説明する。判定部3は、利用者による与干渉側装置、すなわち送信側装置と、与干渉側装置、すなわち受信側装置の指定の操作を受ける(ステップS101)。上述したように、利用者は、与干渉側装置及び被干渉側装置の両方において無線通信装置を指定する場合、各々が異なる無線システムに属する無線通信装置の識別情報を指定する。判定部3は、利用者の指定の操作を受けて与干渉側装置の識別情報と、被干渉側装置の識別情報を取り込む。判定部3は、与干渉側装置及び被干渉側装置の各々の識別情報に対応するレコードをデータベース2から読み出す。
判定部3は、読み出したレコードの「送信マスク特性」と「受信フィルタ特性」の項目に情報が書き込まれているか否かに基づいて、(i)送信マスク特性及び受信フィルタ特性の両方の情報が存在するか、または、(ii)送信マスク特性及び受信フィルタ特性の両方の情報が存在しないか、または、(iii)送信マスク特性が無いが、受信フィルタ特性は存在するの、(i)〜(iii)のいずれであるかを判定する(ステップS102)。
判定部3は、ステップS102において(i)送信マスク特性及び受信フィルタ特性の両方の情報が存在すると判定した場合、更に、送信マスク特性の情報及び受信フィルタ特性の情報に基づいて、以下の3条件の判定を行う。
すなわち、判定部3は、(i)送信マスク特性と受信フィルタ特性とが一部重なるか、または、(ii)受信フィルタ特性に送信マスク特性が含まれるか、または、(iii)送信マスク特性に受信フィルタ特性が含まれるかの、(i)〜(iii)のいずれであるかを判定する(ステップS103)。
ここで、(ii)受信フィルタ特性に送信マスク特性が含まれるという状態は、次の条件であることを指す。受信フィルタ特性における図3に示した周波数帯80の範囲(図5で挙げる受信フィルタ特性の周波数帯幅Wd_r)での最低周波数(減衰量が増加し“0dB”近くとなる周波数)が、送信マスク特性における周波数帯幅Wd_tにおいて最低周波数(相対電力が増加し“0dB”近くとなる周波数)より低い。加えて、受信フィルタ特性の周波数帯幅Wd_rで最大周波数(減衰量が“0dB”近くから減少する周波数)が、送信マスク特性の周波数帯幅Wd_tでの最大周波数(相対電力が“0dB”近くから減少する周波数)より高い。これら2つの周波数の条件を両方とも満たすとき、送信マスク特性が受信フィルタ特性に含まれる状態という。
判定部3が、ステップS103において、(i)送信マスク特性と受信フィルタ特性とが一部重なると判定した場合、判定部3は、読み出した与干渉側装置及び被干渉側装置の各々のレコードを演算部4に出力し、第1の実施形態に示す処理が行われる(ステップS105)。
判定部3が、ステップS103において、(ii)受信フィルタ特性に送信マスク特性が含まれると判定した場合、演算部4は、干渉軽減係数を算出せず、干渉電力算出部5は、干渉軽減係数を用いずに、予め定められる与干渉側装置の送信電力Ptと、アンテナの利得Gと、電波の伝搬経路における損失Lとに基づいて干渉電力を算出する(ステップS106)。
判定部3が、ステップS103において、(iii)送信マスク特性に受信フィルタ特性が含まれると判定した場合、判定部3は、読み出した与干渉側装置及び被干渉側装置の各々のレコードを演算部4に出力し、第2の実施形態に示す処理が行われる(ステップS107)。
ステップS102の判定処理に戻り、判定部3が、ステップS102において、(ii)送信マスク特性及び受信フィルタ特性の両方の情報が存在しないと判定した場合、判定部3は、読み出した与干渉側装置及び被干渉側装置の各々のレコードを演算部4に出力し、第4の実施形態に示す処理が行われる(ステップS108)。
判定部3は、ステップS102において、(iii)送信マスク特性が無いが、受信フィルタ特性は存在すると判定した場合、次に、読み出したレコードの「装置種類」の項目を参照し、「装置種類」の項目の情報が、電磁波放射装置を示す「電磁波放射」であるか否かを判定する(ステップS104)。
判定部3が、「装置種類」の項目の情報が、電磁波放射装置を示す「電磁波放射」であると判定した場合(ステップS104−Yes)、判定部3は、読み出した与干渉側装置及び被干渉側装置の各々のレコードを演算部4に出力し、第3の実施形態に示す処理が行われる(ステップS109)。
一方、判定部3が、「装置種類」の項目の情報が、電磁波放射装置を示す「電磁波放射」でないと判定した場合(ステップS104−No)、この場合、データベース2が、送信マスク特性の情報を記憶していないだけであると考えられる。そのため、判定部3は、読み出した与干渉側装置及び被干渉側装置の各々のレコードを演算部4に出力する。演算部4は、判定部3が出力する与干渉側装置のレコードの「送信帯域」の項目が記憶する送信帯域の情報と、被干渉側装置のレコードの「受信フィルタ特性」の項目が記憶する受信フィルタ特性の情報とに基づいて、送信帯域と受信フィルタの重なりから干渉軽減係数IRFを算出する。干渉電力算出部5は、演算部4が算出した干渉軽減係数IRFを用いて干渉電力を算出する(ステップS110)。
上記の通り判定部3は、2段階の構成の3つの条件判定(すなわち、ステップS102,S103,S104)を行って、次に、演算部4が行う処理を定めていることになる。2段階の構成の3つの条件判定で示されるように与干渉側装置の送信マスク特性の情報及び被干渉側装置の受信フィルタ特性の情報の有無などにより、与干渉側及び被干渉側において様々な形態が想定される。このような様々な与干渉側と被干渉側の形態に対し、干渉計算における周波数スペクトルを考慮するための干渉軽減係数の求め方が異なる。図7は、与干渉側の送信マスク特性の有無と、被干渉側の受信フィルタ特性の有無とに基づいて、与干渉側と被干渉側の形態に対する干渉軽減係数の求め方の違いを分類して表としてまとめた図である。
(第1の実施形態)
図8は、第1の実施形態による干渉評価装置1aの構成を示すブロック図である。図1の共通構成の干渉評価装置1と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。干渉評価装置1aは、データベース2、判定部3、演算部4a及び干渉電力算出部5を備える。演算部4aは、計算対象範囲設定部41、計算帯域間隔設定部42、サンプルデータ生成部43、送信側電力算出部44、重複指標算出部45及び干渉軽減係数算出部46を備える。
第1の実施形態が行われる前提状態は、図6のステップS102の分岐の(i)送信マスク特性及び受信フィルタ特性の両方の情報が存在する状態であって、かつステップS103の分岐の(i)送信マスク特性と受信フィルタ特性とが一部重なる状態、すなわち送信マスク特性の周波数スペクトルと、受信フィルタ特性の周波数スペクトルとが一部が重なっている状態である。
計算対象範囲設定部41は、判定部3が出力する与干渉側装置及び被干渉側装置のレコードを受けて、与干渉側装置のレコードから送信マスク特性の情報を読み出し、被干渉側装置のレコードから受信フィルタ特性の情報を読み出す。また、計算対象範囲設定部41は、読み出した送信マスク特性の情報のサンプルデータから最大周波数と最小周波数を検出し、読み出した受信フィルタ特性の情報のサンプルデータから最大周波数と最小周波数の情報を検出する。また、計算対象範囲設定部41は、送信マスク特性の周波数範囲と受信フィルタ特性の周波数範囲とを合わせた周波数範囲を与干渉側と被干渉側における共通の計算対象範囲として設定する。
また、計算対象範囲設定部41は、設定した計算対象範囲を示す最小周波数と最大周波数の情報を計算帯域間隔設定部42とサンプルデータ生成部43に出力する。また、計算対象範囲設定部41は、読み出した与干渉側装置の送信マスク特性の情報と、被干渉側装置の受信フィルタ特性の情報とをサンプルデータ生成部43に出力する。
計算帯域間隔設定部42は、計算対象範囲設定部41が出力する計算対象範囲の周波数長を、予め定められる分割数Nで、均等にN分割して、1つの区間の長さを示す計算帯域間隔であって与干渉側と被干渉側における共通の計算帯域間隔を算出する。また、計算帯域間隔設定部42は、算出した計算帯域間隔をサンプルデータ生成部43に出力する。
サンプルデータ生成部43は、計算対象範囲において計算帯域間隔設定部42が出力する計算帯域間隔で区切られる区間の境界の周波数位置においてサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータからサンプルデータを生成する。また、サンプルデータ生成部43は、与干渉側装置に対して生成したサンプルデータを送信マスク特性の情報に含めて、送信マスク特性の情報を更新する。また、サンプルデータ生成部43は、被干渉側装置に対して生成したサンプルデータを受信フィルタ特性の情報に含めて、受信フィルタ特性の情報を更新する。
また、サンプルデータ生成部43は、更新した送信マスク特性の情報と、計算対象範囲設定部41から受けた計算対象範囲の情報と、計算帯域間隔設定部42から受けた計算帯域間隔の情報とを送信側電力算出部44に出力する。また、サンプルデータ生成部43は、更新した送信マスク特性の情報及び受信フィルタ特性の情報と、計算対象範囲設定部41から受けた計算対象範囲の情報と、計算帯域間隔設定部42から受けた計算帯域間隔の情報とを重複指標算出部45に出力する。
送信側電力算出部44は、計算対象範囲において、計算帯域間隔ごとのサンプルデータに含まれる相対電力の和である送信側相対電力総和値を算出する。送信側相対電力総和値が、送信マスク特性の領域の大きさを示す値となる。また、送信側電力算出部44は、算出した送信側相対電力総和値を干渉軽減係数算出部46に出力する。
重複指標算出部45は、計算対象範囲において、計算帯域間隔ごとの送信マスク特性のサンプルデータと、受信フィルタ特性のサンプルデータとに基づいて、送信マスク特性と受信フィルタ特性の重複具合を示す重複指標値を算出する。また、重複指標算出部45は、算出した重複指標値を干渉軽減係数算出部46に出力する。
干渉軽減係数算出部46は、重複指標算出部45が出力する重複指標値を、送信側電力算出部44が算出する送信側相対電力総和値で除算して干渉軽減係数IRFを算出し、算出した干渉軽減係数IRFを干渉電力算出部5に出力する。
(第1の実施形態における演算部及び干渉電力算出部の処理)
次に、図9から図13を参照しつつ第1の実施形態における演算部4a及び干渉電力算出部5の処理について説明する。図9は、第1の実施形態における演算部4a及び干渉電力算出部5の処理の流れを示すフローチャートであり、図6に示したフローチャートのステップS105のサブルーチンである。
図9に示すフローチャートは、ステップS201〜S207の7個の処理段階から構成されており、その中で、演算部4aは、ステップS201〜ステップS206の6個の処理を行う。
ステップS201では、計算対象範囲設定部41が、送信マスク特性の情報及び受信フィルタ特性の情報から与干渉側と被干渉側において共通の計算対象範囲を設定する。ステップS202では、計算帯域間隔設定部42が与干渉側と被干渉側において共通の計算帯域間隔を設定する。ステップS203では、サンプルデータ生成部43が、設定された計算帯域間隔で区切られる区間の境界の周波数位置においてサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータからサンプルデータを生成する。ステップS204では、送信側電力算出部44が、送信マスク特性の領域の大きさを算出する。ステップS205では、重複指標算出部45が、送信マスク特性と受信フィルタ特性の重複具合を示す重複指標値として送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域の大きさを算出する。ステップS206では、干渉軽減係数算出部46が、送信マスク特性の領域の大きさと、重複指標値とに基づいて干渉軽減係数IRFを算出する。
以下、詳細な処理について説明する。図6のステップS103の判定処理を行った後、判定部3は、与干渉側装置のレコードと、被干渉側装置のレコードを出力する。判定部3が出力する与干渉側装置のレコードには、送信マスク特性の情報が含まれており、被干渉側装置のレコードには、受信フィルタ特性の情報が含まれている。
ステップS201において、計算対象範囲設定部41は、判定部3が出力する与干渉側装置のレコードを取り込み、取り込んだ与干渉側装置のレコードから送信マスク特性の情報を読み出す(ステップS201−1)。計算対象範囲設定部41は、判定部3が出力する被干渉側装置のレコードを取り込み、取り込んだ被干渉側装置のレコードから受信フィルタ特性の情報を取り込む(ステップS201−2)。
例えば、計算対象範囲設定部41が読み出した送信マスク特性の情報と、受信フィルタ特性の情報が、図5に示す送信マスク特性101と受信フィルタ特性111であるとする。この場合、送信マスク特性101と受信フィルタ特性111の各々の最大周波数と最小周波数は異なっており、また、サンプルデータの周波数位置も異なっている。
このように異なる理由は、送信マスク特性101と受信フィルタ特性111の無線システムが異なっているためである。そのため、送信マスク特性101のサンプルデータと、受信フィルタ特性111のサンプルデータをそのまま用いても干渉軽減係数IRFを算出することができない。そこで、まず、計算を行う範囲を一致させるため、計算対象範囲設定部41は、読み出した送信マスク特性101の情報のサンプルデータから最大周波数と最小周波数を検出し、読み出した受信フィルタ特性111の情報のサンプルデータから最大周波数と最小周波数の情報を検出する(ステップS201−3)。
計算対象範囲設定部41は、図10に示すように、送信マスク特性101の周波数範囲と受信フィルタ特性111の周波数範囲とを合わせた周波数範囲を計算対象範囲181として設定する。すなわち、計算対象範囲設定部41は、検出した送信マスク特性101の最小周波数と受信フィルタ特性111の最小周波数のうち小さい方を計算対象範囲の最小周波数とし、検出した送信マスク特性101の最大周波数と受信フィルタ特性111の最大周波数のうち大きい方を計算対象範囲の最大周波数として、図10に示す与干渉側と被干渉側において共通の計算対象範囲181を設定する(ステップS201−4)。
次に、サンプルデータの間隔を一致させるため、計算帯域間隔設定部42は、与干渉側と被干渉側において共通の計算帯域間隔171を算出する。計算帯域間隔設定部42は、計算対象範囲設定部41から受けた計算対象範囲181の最大周波数から最小周波数の値を減算して、計算対象範囲181の周波数長Wsm_tr[Hz]を算出する。計算帯域間隔設定部42は、算出した周波数長Wsm_trと、予め定められる分割数Nとに基づいて、次式(4)により、計算帯域間隔171の1つの区間の長さを示すWd_cal[Hz]を算出する(ステップS202)。
なお、分割数Nは、任意に定められる値であり、図10(a),(b)に示す周波数帯81及び周波数帯82の範囲において、計算帯域間隔171のWd_cal[Hz]の長さによって区切られる区間が、複数個になるように定められるのが望ましい。具体的には、例えば、N=「100」程度の値が予め定められる。なお、図10(a),(b)では、N=15として、15分割した場合の例を示している。
サンプルデータ生成部43は、計算対象範囲設定部41から受けた計算対象範囲181において、計算帯域間隔設定部42が算出した計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置においてサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータからサンプルデータを生成する(ステップS203)。
サンプルデータ生成部43は、計算対象範囲設定部41から受けた計算対象範囲181と、送信マスク特性101の情報とに基づいて、計算対象範囲181においてサンプルデータが存在しないサンプルデータ補完区間201を検出する。
図10(a)に示す例では、サンプルデータ補完区間201は、送信マスク特性101の最大周波数から、計算対象範囲181の最大周波数までの区間となる。サンプルデータ生成部43は、サンプルデータ補完区間201において、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置のサンプルデータを補完する。
サンプルデータ生成部43は、サンプルデータ補完区間201の計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置の全てに対して一定値、例えば、送信マスク特性の最大周波数の位置における相対電力の値を与える。これにより、サンプルデータ生成部43は、図11(a)において白丸「○」で示すTx9〜Tx15のサンプルデータを生成する。
サンプルデータ生成部43は、送信マスク特性101の最小周波数から最大周波数までの範囲において、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置ごとにサンプルデータが存在するか否かを判定する。サンプルデータ生成部43は、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置においてサンプルデータが存在しないと判定した場合、隣接する既存のサンプルデータから直線近似により補間して当該周波数の位置のサンプルデータを生成する。
例えば、図11(a)に示すTx7のサンプルデータを一例として説明する。Tx7の位置は、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置の1つである。これに対して、送信マスク特性101の情報に含まれるサンプルデータは、図5(a)に示した間隔70で区切られる区間ごとにしか存在しないため、送信マスク特性101の情報には、Tx7の位置のサンプルデータは存在しない。そのため、サンプルデータ生成部43は、Tx7の位置にサンプルデータは存在しないと判定する。
サンプルデータ生成部43は、Tx7の位置の両隣(Tx6側とTx8側)に存在する菱形「◆」で示される既存のサンプルデータの相対電力の値から直線近似によりTx7の周波数の位置における相対電力の値を算出し、算出した相対電力の値とTx7の周波数の位置を組み合わせてサンプルデータを生成する。具体的には、Tx7の値を求める例として、図11(a)の下部にサンプルデータ生成部分を拡大して示す。まず、Tx7の両隣にある菱形「◆」での周波数と相対電力の値としては、片方のTx6側がf*6[Hz]とr*6[dB]、他方Tx8側がf*8[Hz]とr*8[dB]はデータベース2から得た値である。次に、求めるTx7における周波数の値f7[Hz]は計算帯域間隔171の1つの区間の長さを示すWd_cal[Hz]から定まる。求めるTx7の相対電力r7[dB]としては、直線近似から図11(a)右下の式となる。従って、同式を活用してTx7での相対電力r7[dB]と、周波数のf7[Hz]を得る。同様にして、サンプルデータ生成部43は、Tx1〜Tx6,及びTx8のサンプルデータを生成する。
なお、Tx0の位置は、計算対象範囲181の最小周波数の位置であり、当該位置は、送信マスク特性の最小周波数の位置でもあるためサンプルデータが存在する。したがって、サンプルデータ生成部43は、Tx0の位置においてサンプルデータは存在すると判定し、サンプルデータの生成を行わず、送信マスク特性101の情報に含まれるTx0の位置のサンプルデータが、そのままTx0のサンプルデータとして参照される。
最終的に、サンプルデータ生成部43は、図11(a)において白丸「○」で示す15個のTx1〜Tx15のサンプルデータを生成する。サンプルデータ生成部43は、生成したTx1〜Tx15のサンプルデータを、送信マスク特性101の情報に含めて、送信マスク特性101の情報を更新する。これにより、更新した送信マスク特性101の情報には、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置、すなわちTx0〜Tx15の位置における16個のサンプルデータが含まれることになる。
同様に、サンプルデータ生成部43は、計算対象範囲設定部41から受けた計算対象範囲181と、受信フィルタ特性111の情報とに基づいて、計算対象範囲181においてサンプルデータが存在しないサンプルデータ補完区間202を検出する。
図10(b)に示す例では、サンプルデータ補完区間202は、計算対象範囲181の最小周波数から、受信フィルタ特性111の最小周波数までの区間となる。サンプルデータ生成部43は、サンプルデータ補完区間202の計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置のサンプルデータを補完する。
サンプルデータ生成部43は、サンプルデータ補完区間201の計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置の全てに対して一定値、例えば、受信フィルタ特性の最小周波数の位置における減衰量の値を与える。これにより、サンプルデータ生成部43は、図11(b)において白丸「○」示すRx0〜Rx3のサンプルデータを生成する。
サンプルデータ生成部43は、受信フィルタ特性の最小周波数から最大周波数までの範囲において、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置ごとにサンプルデータが存在するか否かを判定する。サンプルデータ生成部43は、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置においてサンプルデータが存在しないと判定した場合、隣接する既存のサンプルデータから直線近似により補間して当該周波数の位置のサンプルデータを生成する。
例えば、図11(b)に示すRx4のサンプルデータを一例として説明する。Rx4の位置は、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置の1つである。これに対して、受信フィルタ特性111の情報に含まれるサンプルデータは、図5(b)に示した間隔71で区切られる区間ごとにしか存在しないため、受信フィルタ特性111の情報には、Rx4の位置のサンプルデータは存在しない。そのため、サンプルデータ生成部43は、Rx4の位置にサンプルデータは存在しないと判定する。
サンプルデータ生成部43は、Rx4の位置の両隣(Rx3側とRx5側)に存在する菱形「◆」で示される既存のサンプルデータの減衰量から直線近似によりRx4の周波数位置における減衰量を算出し、算出した減衰量とRx4の周波数の位置を組み合わせてサンプルデータを生成する。同様にして、サンプルデータ生成部43は、Rx5〜Rx14のサンプルデータを生成する。
なお、Rx15の位置は、計算対象範囲181の最大周波数の位置であり、当該位置は、受信フィルタ特性の最大周波数の位置でもあるためサンプルデータが存在する。したがって、サンプルデータ生成部43は、Rx15の位置においてサンプルデータは存在すると判定し、サンプルデータの生成を行わず、受信フィルタ特性111の情報に含まれるRx15の位置のサンプルデータが、そのままRx15のサンプルデータとして参照される。
最終的に、サンプルデータ生成部43は、図11(b)において白丸「○」で示す15個のRx0〜Rx14のサンプルデータを生成する。サンプルデータ生成部43は、生成したRx0〜Rx14のサンプルデータを、受信フィルタ特性111の情報に含めて、受信フィルタ特性111の情報を更新する。これにより、更新した受信フィルタ特性111の情報には、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置、すなわちRx0〜Rx15の位置における16個のサンプルデータが含まれることになる。
これにより、図5において、与干渉側と被干渉側で異なっていたサンプルデータが存在する範囲と、サンプルデータの間隔と、サンプルデータの個数とを一致させることができる。
送信側電力算出部44は、サンプルデータ生成部43が出力する更新後の送信マスク特性101の情報を受けて、当該送信マスク特性101の情報から計算対象範囲のTx0〜Tx15のサンプルデータを読み出す。送信側電力算出部44は、読み出したTx0〜Tx15のサンプルデータの相対電力の総和(Tx0の相対電力+Tx1の相対電力+Tx2の相対電力+Tx3の相対電力+…+Tx14の相対電力+Tx15の相対電力)を、送信側相対電力総和値として算出する(ステップS204)。
一般的に、ある周波数範囲において均等にN分割した区間の境界の周波数位置ごとの相対電力Txi[dB](i=0〜N)を総和することにより送信マスク特性の領域の大きさを算出することができる。したがって、送信側電力算出部44が算出した送信側相対電力総和値が、図11(a)に示す送信マスク特性の領域510の大きさR1t_smとなる。
ステップS205において、重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の送信マスク特性101の情報を受けて、当該送信マスク特性101の情報から計算対象範囲のTx0〜Tx15のサンプルデータを読み出す。また、重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の受信フィルタ特性111の情報を受けて、当該受信フィルタ特性111の情報から計算対象範囲のRx0〜Rx15のサンプルデータを読み出す。
重複指標算出部45は、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置ごとに、送信マスク特性101のサンプルデータと、受信フィルタ特性111のサンプルデータとを加算する。すなわち、重複指標算出部45は、「Txiの相対電力+Rxiの減衰量」の式に基づいてi=0〜15までの16個の加算値を算出する(ステップS205−1)。重複指標算出部45は、16個の加算値の総和を算出し、算出した総和を重複指標値とする(ステップS205−2)。当該重複指標値は、図12に示す送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域511の大きさR11crsとなる。なお、図12において、横軸は周波数[Hz]を表し、左の縦軸は減衰量[dB]を表し、右の縦軸は相対電力[dB]を表す。図12において、送信マスク特性101については右の縦軸の相対電力[dB]を参照し、受信フィルタ特性111については右の縦軸の相対電力[dB]を参照する。
干渉軽減係数算出部46は、送信側相対電力総和値に対する重複指標値の比を干渉軽減係数IRFとして算出する(ステップS206)。換言すると、干渉軽減係数算出部46は、図13及び次式(5)に示すように、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域511の大きさR11crsを、送信マスク特性の領域510の大きさR1t_smで除算して干渉軽減係数IRFを算出する。
与干渉側から送信される送信電力は、送信マスク特性の領域510の大きさR1t_smに相当する相対電力である。干渉が発生することにより生じる干渉電力であって被干渉側で受信される受信電力の周波数スペクトル成分における干渉電力は、送信マスク特性と受信フィルタ特性の両方の周波数スペクトルが重畳した領域511の大きさR11crsに相当する相対電力となる。したがって、図13及び式(5)に示すように、送信電力に対する干渉電力の比、すなわちR11crsをR1t_smで除算した値が干渉軽減係数IRFとなる。
干渉電力算出部5は、演算部4aが算出した干渉軽減係数IRFと、予め定められる与干渉側装置の送信電力と、アンテナの利得と、電波の伝搬経路における損失とに基づいて、式(1)により干渉電力を算出する(ステップS207)。処理は、第1の実施形態のサブルーチンを抜けて図6のフローチャートに示すように終了する。
(第1の実施形態の他の構成例)
第1の実施形態において、図9に示した重複指標算出部45によるステップS205の処理を、図14に示すステップS210に置き換えてもよい。図14に示すステップS210の処理の場合、重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の送信マスク特性101の情報を受けて、当該送信マスク特性101の情報から計算対象範囲のTx0〜Tx15のサンプルデータを読み出す。重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の受信フィルタ特性111の情報を受けて、当該受信フィルタ特性111の情報から計算対象範囲のRx0〜Rx15のサンプルデータを読み出す。
重複指標算出部45は、計算帯域間隔171で区切られる区間の境界の周波数位置ごとに、送信マスク特性のサンプルデータと、受信フィルタ特性のサンプルデータとを比較して、小さい方の値、すなわち「min(Txiの相対電力,Rxiの減衰量)[dB](i=0〜15)」の値を選択する(ステップS210−1)。
重複指標算出部45は、選択した小さい方の値の総和を算出し、算出した総和を重複指標値とする(ステップS210−2)。当該重複指標値は、図15に示す送信マスク特性と受信フィルタ特性とが重なる領域512の大きさR12crsとなる。なお、図15において、横軸は周波数[Hz]を表し、左の縦軸は減衰量[dB]を表し、右の縦軸は相対電力[dB]を表す。図15において、送信マスク特性101については右の縦軸の相対電力[dB]を参照し、受信フィルタ特性111については右の縦軸の相対電力[dB]を参照する。
干渉軽減係数算出部46は、重複指標算出部45が算出した重複指標値を、送信側電力算出部44が算出した送信側相対電力総和値で除算して干渉軽減係数IRFを算出する(ステップS206)。換言すると、干渉軽減係数算出部46は、図16及び次式(6)に示すように、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域512の大きさR12crsを、送信マスク特性の領域510の大きさR1t_smで除算して干渉軽減係数IRFを算出する。干渉軽減係数算出部46が算出した干渉軽減係数IRFを用いて干渉電力算出部5がステップS207の処理を行って干渉電力を算出する。
与干渉側から送信される送信電力は、送信マスク特性の領域510の大きさR1t_smに相当する相対電力である。干渉が発生することにより生じる干渉電力は、上述したように、被干渉側で受信される受信電力の周波数スペクトル成分における干渉電力である。上記のステップS205の処理では、当該干渉電力を、送信マスク特性と受信フィルタ特性の両方の周波数スペクトルが重畳した領域511の大きさR11crsに相当する相対電力としていた。
これに対して、上記のステップS210の処理は、当該干渉電力を、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域512の大きさR12crsに相当する相対電力とみなした上で、図16及び式(6)に示すように、R12crsをR1t_smで除算した値を干渉軽減係数IRFとしている。
図17は、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域512の大きさR12crsに対して、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域511の大きさR11crsを重ねた状態を示している。なお、図17において、横軸は周波数[Hz]を表し、左の縦軸は減衰量[dB]を表し、右の縦軸は相対電力[dB]を表す。図17において、送信マスク特性101については右の縦軸の相対電力[dB]を参照し、受信フィルタ特性111については右の縦軸の相対電力[dB]を参照する。2つの大きさの差は、符号301,302,303で示される3つの領域の大きさのみであり、例えば、Rx4,Rx5,Tx7、Tx8,Tx9,Tx10等の大部分の大きな値が一致している。したがって、ステップS210のように、干渉電力を、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域512の大きさR12crsに相当する相対電力とみなしたとしても、ステップS205の場合との誤差は大きくない。そのため、ステップS210では、少ない演算量で、干渉軽減係数IRFを算出することが可能となる。
理想の干渉軽減係数が得られた場合、正確な干渉電力を算出することができる。しかし、現実には、理想の干渉軽減係数は得られないため、現実に得られる干渉軽減係数を用いて算出する干渉電力は、現実よりも大きな値となるか、小さな値となる。この場合、無線通信装置を備えるシステム全体の安全性の観点から考えると、算出する干渉電力の値が、正確な干渉電力の値よりも大きな値になっていることが望ましい。
上述したように、第1の実施形態では、現実的な干渉軽減係数IRFの算出手段として、式(5)と式(6)を用いる手段を示している。式(5)に基づいて算出される干渉軽減係数IRFは、式(6)に基づいて算出される干渉軽減係数IRFよりも精度が高く、理想的な干渉軽減係数に近い値が得られる。
これに対して、式(6)に基づいて算出される干渉軽減係数IRFは、式(5)に基づいて算出される干渉軽減係数IRFよりも値が小さくなる傾向がある。そのため、干渉電力算出部5が、式(6)に基づいて算出された干渉軽減係数IRFを用いる場合、干渉電力の値は大きくなる。したがって、式(6)に基づいて算出された干渉軽減係数IRFを用いる方が、式(5)に基づいて算出された干渉軽減係数IRFを用いるよりも干渉評価としては安全性が高い計算結果ということができる。
なお、上記の図13及び図16に示すIRFは、先の図4で述べていた、受信フィルタの適用処理64から出力される電力(分子)を送信マスクの適用処理61から出力する電力(分母)で割った値とは違う。この違う要因は,干渉波が与干渉から被干渉側へ伝搬する減衰等(電波伝搬の損失L[dB]や送信アンテナと受信アンテナの利得G[dB])を別の図9に示すステップS207で加味するからである。従って、この図13及び図16でのIRFに関する説明では、伝搬損失等は考慮されていない。
上記の第1の実施形態の構成により、干渉評価装置1aの演算部4aにおいて、データベース2が記憶する与干渉側装置の周波数特性を示す情報の種類が送信マスク特性の情報であり、かつ被干渉側装置の周波数特性を示す情報の種類が受信フィルタ特性の情報である場合、計算対象範囲設定部41は、判定部3が、周波数領域において送信マスク特性101と受信フィルタ特性111とが一部重なると判定したとき、送信マスク特性101及び受信フィルタ特性111を合わせた際の最大周波数と最小周波数とを与干渉側及び被干渉側において共通の計算対象範囲181として定める。計算帯域間隔設定部42は、計算対象範囲181を、均等に分割し、分割した各々の間隔を与干渉側及び被干渉側において共通の計算帯域間隔171とする。サンプルデータ生成部43は、計算帯域間隔171で区切られた区間の境界の周波数位置において、送信マスク特性101の情報のサンプルデータ、または、受信フィルタ特性111の情報のサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータに基づいて、サンプルデータが存在しない境界の周波数位置のサンプルデータを生成する。送信側電力算出部44は、計算対象範囲における全ての境界の周波数位置の送信マスク特性101のサンプルデータに含まれる相対電力を総和して送信側相対電力総和値を算出する。重複指標算出部45は、計算対象範囲における境界の周波数位置の各々の送信マスク特性101のサンプルデータに含まれる相対電力と、受信フィルタ特性111のサンプルデータに含まれる減衰量とに基づいて重複指標値を算出する。干渉軽減係数算出部46は、重複指標算出部45が算出する重複指標値と、送信側電力算出部44が算出する送信側相対電力総和値とに基づいて干渉軽減係数IRFを算出する。これにより、異なる無線システム同士の送信マスク特性の情報と受信フィルタ特性とが周波数領域において一部重なる場合、異なる無線システム同士の干渉に対して、汎用的な手順により、より正確に干渉評価を行うことを可能とする精度の高い干渉軽減係数を算出することが可能となる。
また、上記の第1の実施形態では、与干渉側の送信マスク特性と、被干渉側の受信フィルタ特性の一部が重なる場合における2つの干渉軽減係数IRFの算出の手段について示した。第1の実施形態の構成により求めた干渉軽減係数IRFを用いることで、送信マスク特性と、受信フィルタ特性の両方の周波数スペクトル特性を考慮した干渉電力の算出が可能となり、干渉評価をより正確に行うことができる。また、2つのステップS205及びステップS210に示した手段を使い分けることで、ステップS210を用いる場合、少ない演算量により得られる干渉軽減係数IRFを用いた正確な干渉評価を行うことができ、ステップS205を用いる場合、更に精度が要求される際の干渉軽減係数IRFを算出することができる。
(第2の実施形態)
図18は、第2の実施形態の干渉評価装置1bの構成を示すブロック図である。図1の共通構成の干渉評価装置1及び第1の実施形態の干渉評価装置1aと同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。干渉評価装置1bは、データベース2、判定部3、演算部4b及び干渉電力算出部5を備える。演算部4bは、計算対象範囲設定部41b、計算帯域間隔設定部42、サンプルデータ生成部43、送信側電力算出部44、重複指標算出部45及び干渉軽減係数算出部46を備える。
第2の実施形態が行われる前提状態は、図6のステップS102の分岐の(i)送信マスク特性及び受信フィルタ特性の両方の情報が存在する状態であって、かつステップS103の分岐の(iii)送信マスク特性に受信フィルタ特性が含まれる状態である。この状態は、上述したように、受信フィルタ特性の周波数帯幅Wd_r(図3に示した周波数帯80と同じ)の最低周波数が送信マスク特性の周波数帯幅Wd_tの最低周波数よりも高く、かつ、受信フィルタ特性の周波数帯幅Wd_rの最大周波数が送信マスク特性の周波数帯幅Wd_tの最大周波数よりも低い条件を満たしている。図19(b)に一例として示す送信マスク特性102と受信フィルタ特性112とは、送信マスク特性102の周波数帯85の範囲内において、受信フィルタ特性の周波数帯幅Wd_r86の最低周波数が送信マスク特性の周波数帯幅Wd_t85の最低周波数よりも高く,かつ受信フィルタ特性の周波数帯幅Wd_r86の最高周波数が送信マスク特性の周波数帯幅Wd_t85の最高周波数よりも低くなっている。したがって、受信フィルタ特性112は、送信マスク特性102に含まれていることになり、ステップS103の分岐の(iii)の条件を満たしている。
送信マスク特性に受信フィルタ特性が含まれる場合の具体例として、以下のような場合が想定される。例えば、無線LANやBluetooth(登録商標)等では複数の無線端末装置が同一周波数を使用して通信を行っている。この状況において、ある無線端末装置を与干渉側とし、他の無線端末装置を被干渉側としたとき与干渉側の送信マスク特性の周波数スペクトルの範囲に、被干渉側の受信フィルタ特性が含まれる場合がある。
計算対象範囲設定部41bは、判定部3が出力する与干渉側装置及び被干渉側装置のレコードを受けて、与干渉側装置のレコードから送信マスク特性の情報を読み出し、被干渉側装置のレコードから受信フィルタ特性の情報を読み出す。計算対象範囲設定部41bは、読み出した送信マスク特性の情報のサンプルデータから最大周波数と最小周波数を検出し、検出した最大周波数と最小周波数の範囲を与干渉側と被干渉側における共通の計算対象範囲として設定する。
また、計算対象範囲設定部41bは、設定した計算対象範囲を示す最小周波数と最大周波数の情報を計算帯域間隔設定部42とサンプルデータ生成部43に出力する。また、計算対象範囲設定部41bは、読み出した送信マスク特性の情報と、被干渉側装置の受信フィルタ特性の情報とをサンプルデータ生成部43に出力する。
(第2の実施形態における演算部及び干渉電力算出部の処理)
次に、図20と図21を参照しつつ第2の実施形態における演算部4b及び干渉電力算出部5の処理について説明する。図20は、第2の実施形態における演算部4b及び干渉電力算出部5の処理の流れを示すフローチャートであり、図6に示したフローチャートのステップS107のサブルーチンである。
図20に示すフローチャートは、ステップS301〜S307の7個の処理段階から構成されており、その中で、演算部4bは、ステップS301〜ステップS306の6個の処理を行う。
ステップS301では、計算対象範囲設定部41bが、送信マスク特性の情報から与干渉側と被干渉側において共通の計算対象範囲を設定する。ステップS302では、計算帯域間隔設定部42が、与干渉側と被干渉側において共通の計算帯域間隔を設定する。ステップS303では、サンプルデータ生成部43が、設定された計算帯域間隔で区切られる区間の境界の周波数位置においてサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータからサンプルデータを生成する。ステップS304では、送信側電力算出部44が、送信マスク特性の領域の大きさを算出する。ステップS305では、重複指標算出部45が、送信マスク特性と受信フィルタ特性の重複具合を示す重複指標値として送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域の大きさを算出する。ステップS306では、干渉軽減係数算出部46が、送信マスク特性の領域の大きさと、重複指標値とに基づいて干渉軽減係数IRFを算出する。
以下、詳細な処理について説明する。図6のステップS103の判定処理を行った後、判定部3は、与干渉側装置のレコードと、被干渉側装置のレコードを出力する。判定部3が出力する与干渉側装置のレコードには、送信マスク特性の情報が含まれており、被干渉側装置のレコードには、受信フィルタ特性の情報が含まれている。
ステップS301において、計算対象範囲設定部41bは、判定部3が出力する与干渉側装置のレコードを取り込み、取り込んだ与干渉側装置のレコードから送信マスク特性の情報を読み出す(ステップS301−1)。計算対象範囲設定部41bは、判定部3が出力する被干渉側装置のレコードを取り込み、取り込んだ被干渉側装置のレコードから受信フィルタ特性の情報を読み出す(ステップS301−2)。
例えば、計算対象範囲設定部41bが読み出した送信マスク特性の情報と、受信フィルタ特性の情報が、図19に示す送信マスク特性102と受信フィルタ特性112であるとする。この場合、送信マスク特性102と受信フィルタ特性112の各々の最大周波数と最小周波数は異なっており、また、サンプルデータの周波数の位置も異なっている。
計算を行う範囲を一致させるため、計算対象範囲設定部41bは、読み出した送信マスク特性102の情報のサンプルデータから最大周波数と最小周波数を検出する(ステップS301−3)。
第2の実施形態では、図19に示すように、送信マスク特性102の周波数範囲が十分広く、受信フィルタ特性112の周波数範囲が送信マスク特性102の周波数範囲に含まれている。そのため、計算対象範囲設定部41bは、送信マスク特性102の情報から検出した最大周波数と最小周波数の範囲を、図21(a)に示すように、与干渉側と被干渉側において共通の計算対象範囲182として設定する(ステップS301−4)。
次に、サンプルデータの間隔を一致させるため、計算帯域間隔設定部42は、与干渉側と被干渉側において共通の計算帯域間隔172を算出する。計算帯域間隔設定部42は、計算対象範囲設定部41bから受けた計算対象範囲182の最大周波数から最小周波数の値を減算して、計算対象範囲182の周波数長Wsm_t[Hz]を算出する。計算帯域間隔設定部42は、算出した周波数長Wsm_t[Hz]と、予め定められる分割数Nとに基づいて、式(4)により計算帯域間隔172の1つの区間の長さを示すWd_cal[Hz]を算出する(ステップS302)。
なお、分割数Nは、第1の実施形態と同様に、任意に定められる値であり、図19(a),(b)に示す周波数帯85及び周波数帯86の範囲において、計算帯域間隔172のWd_cal[Hz]の長さによって区切られる区間が、複数個になるように定められるのが望ましい。具体的には、例えば、N=「100」程度の値が予め定められる。なお、図21(a),(b)では、N=15として、15分割した場合の例を示している。
サンプルデータ生成部43は、第1の実施形態と同様に、計算対象範囲設定部41bから受けた計算対象範囲182において、計算帯域間隔設定部42が算出した計算帯域間隔172で区切られる区間の境界の周波数位置においてサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータからサンプルデータを生成する(ステップS303)。
サンプルデータ生成部43は、送信マスク特性102の情報に含まれる既存のサンプルデータであって図21(a)において菱形「◆」で示すサンプルデータに基づいて、直線近似を行い、図21(a)において白丸「○」で示すTx1〜Tx14のサンプルデータを生成する。Tx0とTx15の位置については、送信マスク特性102の最小周波数と最大周波数の位置に対応するため、送信マスク特性102の情報に既にサンプルデータとして含まれている。サンプルデータ生成部43は、生成したTx1〜Tx14のサンプルデータを送信マスク特性102の情報に含めて、送信マスク特性102の情報を更新する。なお、図21(b)において、横軸は周波数[Hz]を表し、左の縦軸は減衰量[dB]を表し、右の縦軸は相対電力[dB]を表す。図21(b)において、送信マスク特性102については右の縦軸の相対電力[dB]を参照し、受信フィルタ特性112については右の縦軸の相対電力[dB]を参照する。
サンプルデータ生成部43は、計算対象範囲設定部41bから受けた計算対象範囲182と、受信フィルタ特性112の情報とに基づいて、計算対象範囲182においてサンプルデータが存在しない2つのサンプルデータ補完区間211,212を検出する。
サンプルデータ生成部43は、サンプルデータ補完区間211の計算帯域間隔172で区切られる区間の境界の周波数位置の全てに対して一定値、例えば、受信フィルタ特性の最大周波数の減衰量の値を与える。これにより、サンプルデータ生成部43は、図21(b)において白丸「○」示すRx14,Rx15のサンプルデータを生成する。
サンプルデータ生成部43は、サンプルデータ補完区間212の計算帯域間隔172で区切られる区間の境界の周波数位置の全てに対して一定値、例えば、受信フィルタ特性の最小周波数の減衰量の値を与える。これにより、サンプルデータ生成部43は、図21(b)において白丸「○」示すRx0,Rx1のサンプルデータを生成する。
サンプルデータ生成部43は、受信フィルタ特性112の情報に含まれる既存のサンプルデータであって図21(b)において菱形「◆」で示すサンプルデータに基づいて、直線近似を行い、図21(b)において白丸「○」で示すRx2〜Tx13のサンプルデータを生成する。サンプルデータ生成部43は、生成したRx0〜Rx15のサンプルデータを受信フィルタ特性112の情報に含めて、受信フィルタ特性112の情報を更新する。
これにより、図19において、与干渉側と被干渉側で異なっていたサンプルデータが存在する範囲と、サンプルデータの間隔と、サンプルデータの個数とを一致させることができる。
送信側電力算出部44は、サンプルデータ生成部43が出力する更新後の送信マスク特性102の情報を受けて、当該送信マスク特性102の情報から計算対象範囲のTx0〜Tx15のサンプルデータを読み出す。送信側電力算出部44は、読み出したTx0〜Tx15のサンプルデータの相対電力の総和(Tx0の相対電力+Tx1の相対電力+Tx2の相対電力+Tx3の相対電力+…+Tx14の相対電力+Tx15の相対電力)を求めることにより送信側相対電力総和値を算出する(ステップS304)。算出した送信側相対電力総和値が、図21(a)に示す送信マスク特性の領域520の大きさR2t_smとなる。
ステップS305において、重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の送信マスク特性102の情報を受けて、当該送信マスク特性102の情報から計算対象範囲のTx0〜Tx15のサンプルデータを読み出す。重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の受信フィルタ特性112の情報を受けて、当該受信フィルタ特性112の情報から計算対象範囲のRx0〜Rx15のサンプルデータを読み出す。
重複指標算出部45は、計算帯域間隔172で区切られる区間の境界の周波数位置ごとに、送信マスク特性102のサンプルデータと、受信フィルタ特性112のサンプルデータとを加算する。すなわち、重複指標算出部45は、「Txiの相対電力+Rxiの減衰量」の式に基づいてi=0〜15までの16個の加算値を算出する(ステップS305−1)。重複指標算出部45は、16個の加算値の総和を算出し、算出した総和を重複指標値とする(ステップS305−2)。当該重複指標値は、図21(b)に示す送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域521の大きさR21crsとなる。
干渉軽減係数算出部46は、重複指標算出部45が算出した重複指標値を、送信側電力算出部44が算出した送信側相対電力総和値で除算して干渉軽減係数IRFを算出する(ステップS306)。換言すると、干渉軽減係数算出部46は、次式(7)に示すように、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域521の大きさR21crsを、送信マスク特性の領域520の大きさR2t_smで除算して干渉軽減係数IRFを算出する。
干渉電力算出部5は、演算部4bが算出した干渉軽減係数IRFと、予め定められる与干渉側装置の送信電力と、アンテナの利得と、電波の伝搬経路における損失とに基づいて、式(1)により干渉電力を算出する(ステップS307)。処理は、第2の実施形態のサブルーチンを抜けて図6のフローチャートに示すように終了する。
(第2の実施形態の他の構成例(その1))
第2の実施形態において、図20に示した重複指標算出部45によるステップS305の処理を、図22に示すステップS310に置き換えてもよい。図22に示すステップS310の処理の場合、重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の送信マスク特性102の情報を受けて、当該送信マスク特性102の情報から計算対象範囲のTx0〜Tx15のサンプルデータを読み出す。重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の受信フィルタ特性112の情報を受けて、当該受信フィルタ特性112の情報から計算対象範囲のRx0〜Rx15のサンプルデータを読み出す。
重複指標算出部45は、計算帯域間隔172で区切られる区間の境界の周波数位置ごとに、送信マスク特性102のサンプルデータと、受信フィルタ特性112のサンプルデータとを比較して、小さい方の値、すなわち「min(Txiの相対電力,Rxiの減衰量)[dB](i=0〜15)」の値を選択する(ステップS310−1)。
重複指標算出部45は、選択した小さい方の値の総和を算出し、算出した総和を重複指標値とする(ステップS310−2)。当該重複指標値は、図23に示す送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域522の大きさR22crsとなる。なお、図23において、横軸は周波数[Hz]を表し、左の縦軸は減衰量[dB]を表し、右の縦軸は相対電力[dB]を表す。図23において、送信マスク特性102については右の縦軸の相対電力[dB]を参照し、受信フィルタ特性112については右の縦軸の相対電力[dB]を参照する。
干渉軽減係数算出部46は、重複指標算出部45が算出した重複指標値を、送信側電力算出部44が算出した送信側相対電力総和値で除算して干渉軽減係数IRFを算出する(ステップS306)。換言すると、干渉軽減係数算出部46は、次式(8)に示すように、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域522の大きさR22crsを、送信マスク特性の領域520の大きさR2t_smで除算して干渉軽減係数IRFを算出する。干渉軽減係数算出部46が算出した干渉軽減係数IRFを用いて干渉電力算出部5がステップS307の処理を行って干渉電力を算出する。
(第2の実施形態の他の構成例(その2))
第2の実施形態において、図20に示した重複指標算出部45によるステップS305の処理を、図24に示すステップS311に置き換えてもよい。図24に示すステップS311の処理の場合、重複指標算出部45は、サンプルデータ生成部43から更新後の受信フィルタ特性112の情報を受けて、当該受信フィルタ特性112の情報から計算対象範囲のRx0〜Rx15のサンプルデータを読み出す。
重複指標算出部45は、読み出したRx0〜Rx15のサンプルデータの減衰量の総和(Rx0の減衰量+Rx1の減衰量+Rx2の減衰量+Rx3の減衰量+…+Rx14の減衰量+Rx15の減衰量)を算出し、算出した総和を重複指標値とする(ステップS311)。当該重複指標値は、図25に示す受信フィルタ特性の領域523の大きさR2r_smとなる。なお、図25において、横軸は周波数[Hz]を表し、左の縦軸は減衰量[dB]を表し、右の縦軸は相対電力[dB]を表す。図25において、送信マスク特性102については右の縦軸の相対電力[dB]を参照し、受信フィルタ特性112については右の縦軸の相対電力[dB]を参照する。
干渉軽減係数算出部46は、重複指標算出部45が算出した重複指標値を、送信側電力算出部44が算出した送信側相対電力総和値で除算して干渉軽減係数IRFを算出する(ステップS306)。換言すると、干渉軽減係数算出部46は、次式(9)に示すように、受信フィルタ特性の領域523の大きさR2r_smを、送信マスク特性の領域520の大きさR2t_smで除算して干渉軽減係数IRFを算出する。干渉軽減係数算出部46が算出した干渉軽減係数IRFを用いて干渉電力算出部5がステップS307の処理を行って干渉電力を算出する。
図26は、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域521と、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域522と、受信フィルタの領域523を重ねた図である。なお、図26において、横軸は周波数[Hz]を表し、左の縦軸は減衰量[dB]を表し、右の縦軸は相対電力[dB]を表す。図26において、送信マスク特性102については右の縦軸の相対電力[dB]を参照し、受信フィルタ特性112については右の縦軸の相対電力[dB]を参照する。送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域522は、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重畳した領域521よりも、符号311,312で示される領域の大きさ分、広くなっている。また、受信フィルタの領域523は、送信マスク特性と受信フィルタ特性が重なる領域522よりも符号321,322で示される領域の大きさ分、広くなっている。しかしながら、例えば、Rx6,Rx7,Rx8、Rx9等は、これら以外のサンプルデータ(Rx0,Rx1,Rx2,・・・,Rx5や、Rx10,Rx11,Rx12,・・・,Rx15)と比較して大きな値となる大部分が一致している。しかも、これらRx6,Rx7,Rx8、Rx9(の減衰量[dB])は、これら以外のサンプルデータの値に比べてグラフの縦軸が対数スケールで20dBを超える違いがある。この違いは、例えば、そのRx6,Rx7,Rx8、Rx9(の減衰量[dB])に対し、それ以外にサンプルデータが10倍の個数があっても,それらRx6,Rx7,Rx8、Rx9が支配的であり、この他のサンプルデータを軽微に見做すことができる。これらの理由から、図20(ステップS305)、図22(ステップS310)、図24(ステップS311)に示した手法により算出される干渉軽減係数には、それほど大きな誤差が存在しない。
上記の領域の大きさの差が存在するため、干渉軽減係数算出部46が算出する干渉軽減係数IRFの精度が高い順番は、式(7),式(8),式(9)の順、すなわち精度の高い順はステップS305,ステップS310,ステップS311である。これに対して、演算量の少ない順は、式(9),式(8),式(7)の順となる。
ただし、式(8)や式(9)に基づいて算出する干渉軽減係数IRFは、式(7)に基づいて算出する干渉軽減係数IRFよりも小さい値となる。そのため、干渉電力算出部5が、式(8)や式(9)に基づいて算出された干渉軽減係数IRFを用いる場合、干渉電力の値は大きくなる。したがって、式(8)や式(9)に基づいて算出された干渉軽減係数IRFを用いる方が、式(7)に基づいて算出された干渉軽減係数IRFを用いるよりも干渉評価としては安全性が高い計算結果ということができる。
上記の第2の実施形態の構成により、干渉評価装置1bの演算部4bにおいて、データベース2が記憶する与干渉側装置の周波数特性を示す情報の種類が送信マスク特性の情報であり、かつ被干渉側装置の周波数特性を示す情報の種類が受信フィルタ特性の情報である場合、計算対象範囲設定部41bは、判定部3が、周波数領域において送信マスク特性102に受信フィルタ特性112が含まれると判定したとき、送信マスク特性102の最大周波数と最小周波数とを与干渉側及び被干渉側において共通の計算対象範囲182として定める。計算帯域間隔設定部42は、計算対象範囲182を、均等に分割し、分割した各々の間隔を与干渉側及び被干渉側において共通の計算帯域間隔172とする。サンプルデータ生成部43は、計算帯域間隔172で区切られた区間の境界の周波数位置において、送信マスク特性102の情報のサンプルデータ、または、受信フィルタ特性112の情報のサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータに基づいて、サンプルデータが存在しない境界の周波数位置のサンプルデータを生成する。送信側電力算出部44は、計算対象範囲の全ての境界の周波数位置の送信マスク特性102のサンプルデータに含まれる相対電力を総和して送信側相対電力総和値を算出する。重複指標算出部45は、計算対象範囲の境界の周波数位置の各々の送信マスク特性102のサンプルデータに含まれる相対電力、または、受信フィルタ特性112のサンプルデータに含まれる減衰量に基づいて重複指標値を算出する。干渉軽減係数算出部46は、重複指標算出部45が算出する重複指標値と、送信側電力算出部44が算出する送信側相対電力総和値とに基づいて干渉軽減係数IRFを算出する。これにより、異なる無線システム同士の送信マスク特性に受信フィルタ特性が含まれる場合、異なる無線システム同士の干渉に対して、汎用的な手順により、より正確に干渉評価を行うことを可能とする精度の高い干渉軽減係数を算出することが可能となる。
また、上記の第2の実施形態では、送信マスク特性に受信フィルタ特性が含まれる場合における3つの干渉軽減係数IRFの算出の手段について示した。第2の実施形態の構成により求めた干渉軽減係数IRFを用いることで、送信マスク特性と、受信フィルタ特性の両方の周波数スペクトル特性を考慮した干渉電力の算出が可能となり、干渉評価をより正確に行うことができる。また、3つのステップS305、ステップS310及びステップS311に示した手段を使い分けることで、ステップS310やステップS311を用いる場合、少ない演算量により得られる干渉軽減係数IRFを用いた正確な干渉評価を行うことができ、ステップS305を用いる場合、更に精度が要求される際の干渉軽減係数IRFを算出することができる。
(第3の実施形態)
図27は、第3の実施形態の干渉評価装置1cの構成を示すブロック図である。図1の共通構成の干渉評価装置1及び第1の実施形態の干渉評価装置1aと同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。干渉評価装置1cは、データベース2、判定部3、演算部4c及び干渉電力算出部5を備える。演算部4cは、計算対象範囲設定部41c、計算帯域間隔設定部42c、サンプルデータ生成部43c、重複指標算出部45c、干渉軽減係数算出部46c及び情報取得部47を備える。
第3の実施形態が行われる前提状態は、図6のステップS102の分岐の(iii)送信マスク特性が無いが、受信フィルタ特性は存在する状態であって、かつステップS104において、判定部3が、与干渉側装置の「装置種類」の項目の情報が、電磁波放射装置を示す「電磁波放射」であると判定した状態である。
演算部4cにおいて、計算対象範囲設定部41cは、判定部3が出力する被干渉側装置のレコードを受けて、被干渉側装置のレコードから受信フィルタ特性の情報を読み出す。また、計算対象範囲設定部41cは、受信フィルタ特性の情報のサンプルデータから最大周波数と最小周波数を検出し、検出した最大周波数と最小周波数の範囲を計算対象範囲として設定する。
また、計算対象範囲設定部41cは、設定した計算対象範囲を示す最小周波数と最大周波数の情報と、読み出した受信フィルタ特性の情報とを計算帯域間隔設定部42c及びサンプルデータ生成部43cに出力する。
計算帯域間隔設定部42cは、計算対象範囲設定部41cが出力する受信フィルタ特性の情報に含まれるサンプルデータから受信フィルタ特性のピークの範囲である周波数帯の範囲を算出する。また、計算帯域間隔設定部42cは、計算対象範囲設定部41cが出力する最小周波数と最大周波数とによって示される計算対象範囲の周波数長を、分割数Nで、均等にN分割して、1つの区間の長さを示す計算帯域間隔を算出する。また、計算帯域間隔設定部42cは、計算帯域間隔を算出する際、算出した周波数帯の範囲内に、算出した計算帯域間隔で区切られる区間が複数含まれるようにNの値を調整する。また、計算帯域間隔設定部42cは、最終的に算出した計算帯域間隔をサンプルデータ生成部43cに出力する。
サンプルデータ生成部43cは、計算対象範囲において計算帯域間隔設定部42cが出力する計算帯域間隔で区切られる区間の境界の周波数位置において、受信フィルタ特性のサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータからサンプルデータを生成する。また、サンプルデータ生成部43cは、被干渉側装置に対して生成したサンプルデータを受信フィルタ特性の情報に含めて、受信フィルタ特性の情報を更新する。また、サンプルデータ生成部43cは、更新した受信フィルタ特性の情報を重複指標算出部45cに出力する。
重複指標算出部45cは、サンプルデータ生成部43cが出力する更新後の受信フィルタ特性の情報に含まれるサンプルデータに基づいて等価雑音帯域幅を算出し、算出した等価雑音帯域幅を重複指標値として干渉軽減係数算出部46cに出力する。
情報取得部47は、判定部3が出力する与干渉側装置のレコードを受けて、与干渉側装置のレコードから電磁波放射装置の与干渉信号電力密度の情報を読み出し、読み出した与干渉信号電力密度の情報を干渉軽減係数算出部46cに出力する。干渉軽減係数算出部46cは、情報取得部47が出力する与干渉信号電力密度と、重複指標算出部45cが出力する等価雑音帯域幅との積を算出し、算出した積を干渉軽減係数Id×Bwとして干渉電力算出部5に出力する。
(第3の実施形態における演算部及び干渉電力算出部の処理)
次に、図28と図29を参照しつつ第3の実施形態における演算部4c及び干渉電力算出部5の処理について説明する。図28は、第3の実施形態における演算部4c及び干渉電力算出部5の処理の流れを示すフローチャートであり、図6に示したフローチャートのステップS109のサブルーチンである。
図28に示すフローチャートは、ステップS401〜S407の7個の処理段階から構成されており、その中で、演算部4cは、ステップS401〜ステップS406の6個の処理を行う。
ステップS401では、計算対象範囲設定部41cが、受信フィルタ特性の情報から計算対象範囲を設定する。ステップS402では、計算帯域間隔設定部42cが計算帯域間隔を設定する。ステップS403では、サンプルデータ生成部43cが、設定された計算帯域間隔で区切られる区間の境界の周波数位置において受信フィルタ特性のサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータからサンプルデータを生成する。ステップS404では、重複指標算出部45cが、サンプルデータ生成部43cが更新した受信フィルタ特性のサンプルデータに基づいて等価雑音帯域幅を算出し、算出した等価雑音帯域幅を重複指標値とする。ステップS405では、情報取得部47が、与干渉側装置の与干渉信号電力密度の情報を取得する。ステップS406では、干渉軽減係数算出部46cが、与干渉信号電力密度と、等価雑音帯域幅との積を算出し、算出した積を干渉軽減係数Id×Bwとして出力する。
以下、詳細な処理について説明する。図6のステップS104の判定処理を行った後、判定部3は、与干渉側装置のレコードと、被干渉側装置のレコードを出力する。判定部3が出力する与干渉側装置のレコードには、送信マスク特性の情報の代わりに電磁波放射装置の与干渉信号電力密度の情報が含まれている。被干渉側装置のレコードには、受信フィルタ特性の情報が含まれている。
ステップS401において、計算対象範囲設定部41cは、判定部3が出力する被干渉側装置のレコードを取り込み、取り込んだ被干渉側装置のレコードから受信フィルタ特性の情報を読み出す(ステップS401−1)。例えば、計算対象範囲設定部41cが読み出した受信フィルタ特性の情報が、図29(b)に示す受信フィルタ特性113であるとする。
計算対象範囲設定部41cは、読み出した受信フィルタ特性113の情報のサンプルデータから最大周波数と最小周波数を検出する(ステップS401−2)。計算対象範囲設定部41cは、受信フィルタ特性113の情報から検出した最大周波数と最小周波数の範囲を、図29(b)に示すように、計算対象範囲183として設定する(ステップS401−3)。
計算帯域間隔設定部42cは、計算対象範囲設定部41cから受けた計算対象範囲183の最大周波数から最小周波数の値を減算して、計算対象範囲183の周波数長Wsm_r[Hz]を算出する。計算帯域間隔設定部42cは、算出した周波数長Wsm_r[Hz]と、予め定められる分割数Nとに基づいて、Wsm_tr=Wsm_rとした式(4)により計算帯域間隔173の1つの区間の長さを示すWd_cal[Hz]を算出する(ステップS402−1)。
計算帯域間隔設定部42cは、計算対象範囲設定部41cから受けた受信フィルタ特性113の情報のサンプルデータからピークの範囲である周波数帯87の幅の長さWd_r[Hz]を算出する。
計算帯域間隔設定部42cは、算出した周波数帯87の幅の長さWd_r[Hz]と、算出した計算帯域間隔173の長さWd_cal[Hz]とに基づいて、周波数帯87に、計算帯域間隔173が複数含まれるか否かを判定する(ステップS402−2)。計算帯域間隔設定部42cは、周波数帯87に、計算帯域間隔173が複数含まれると判定した場合(ステップS402−2−Yes)、算出した計算帯域間隔173をサンプルデータ生成部43cに出力する。
計算帯域間隔設定部42cは、周波数帯87に、計算帯域間隔173が複数含まれないと判定した場合(ステップS402−2−No)、分割数Nの値を増やして(ステップS402−3)、再びステップS402−1を行い、ステップS402−2の判定条件を満たすまで、Nの値を増やすことを繰り返し行う。なお、Nの値は、任意に定められる値であり、例えば、ステップS402により適切なWd_cal[Hz]が得られるように、少なくともステップS402−2の判定が1回は行われる程度の小さい値であることが望ましい。また、Nの値の増加分の値も任意に定められる値であり、例えば、「1」ずつ分割数を増やすのが望ましい。
サンプルデータ生成部43cは、計算対象範囲設定部41cから受けた計算対象範囲183において、計算帯域間隔設定部42cが算出した計算帯域間隔173で区切られる区間の境界の周波数位置において、受信フィルタ特性のサンプルデータが存在しない場合、サンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータからサンプルデータを生成する(ステップS403)。
第3の実施形態では、サンプルデータ生成部43cがサンプルデータを生成する区間である計算対象範囲183は、受信フィルタ特性113の最小周波数から最大周波数の範囲に一致するため、サンプルデータ補完区間は存在しない。
サンプルデータ生成部43cは、受信フィルタ特性112の最小周波数から最大周波数までの範囲において、計算帯域間隔173で区切られる区間の境界の周波数位置ごとにサンプルデータが存在するか否かを判定する。サンプルデータ生成部43cは、計算帯域間隔173で区切られる区間の境界の周波数位置においてサンプルデータが存在しないと判定した場合、隣接する既存サンプルデータから直線近似により補間して当該周波数の位置のサンプルデータを生成する。
サンプルデータ生成部43cは、第1及び第2の実施形態において説明した手法により、図29(b)において白丸「○」で示すサンプルデータを生成する。サンプルデータ生成部43cは、生成したサンプルデータを、受信フィルタ特性113の情報に含めて、受信フィルタ特性111の情報を更新する。
重複指標算出部45cは、サンプルデータ生成部43cが出力する更新後の受信フィルタ特性の情報に含まれるサンプルデータに基づいて、図29(b)に示す等価雑音帯域幅610の長さBw[Hz]を算出し、算出した等価雑音帯域幅610の長さBw[Hz]を重複指標値として干渉軽減係数算出部46cに出力する(ステップS404)。
例えば、重複指標算出部45cは、周波数の低いサンプルデータから順に隣接するサンプルデータとの差を算出し、増加率が予め定められる一定値を超える場合、急激に増加したと判定する。重複指標算出部45cは、当該急激な増加が開始した周波数位置のサンプルデータの周波数を等価雑音帯域幅610の開始点とする。
また、重複指標算出部45cは、隣接するサンプルデータの差が、増加からあまり変化が無いほぼ一定値の期間を経て急激に減少し始めると、今度は、減少率が予め定められる一定値未満となった場合、急激な減少が終了したと判定する。重複指標算出部45cは、当該急激な減少が終了した周波数位置のサンプルデータの周波数を等価雑音帯域幅610の終了点とする。
情報取得部47は、判定部3が出力する与干渉側装置のレコードを取り込み、取り込んだ与干渉側装置のレコードから与干渉信号電力密度600の情報を読み出し、読み出した与干渉信号電力密度600の情報を干渉軽減係数算出部46cに出力する(ステップS405)。干渉軽減係数算出部46cは、情報取得部47が出力する与干渉信号電力密度600の値であるId[dB/Hz]と、重複指標算出部45cが出力する等価雑音帯域幅610の長さBw[Hz]との積を算出し、算出した積を干渉軽減係数Id×Bwとする(ステップS406)。
干渉電力算出部5は、演算部4cが算出した干渉軽減係数Id×Bwと、予め定められる与干渉側装置の送信電力と、アンテナの利得とに基づいて、式(2)により干渉電力を算出する(ステップS407)。処理は、第3の実施形態のサブルーチンを抜けて図6のフローチャートに示すように終了する。
図29(a)において、横軸は、周波数[Hz]であり、縦軸は、電力密度[dB/Hz]であり、与干渉信号電力密度600は、全周波数において一定値Id[dB/Hz]となるグラフで表される。図29(a)に示すグラフにおいて、縦軸の電力密度[dB/Hz]は、電波の強さP[W]に対する相対電力を単位周波数当たりに換算した値に相当する。
図29(b)において、符号530に示す領域は、電磁波放射装置である与干渉側装置が送信する電磁波の周波数スペクトルと、被干渉側装置の受信フィルタ特性の周波数スペクトルとが重なる領域であり、電磁波放射装置が放射する電磁波による干渉が影響を及ぼす領域となる。
したがって、横軸の長さとして、受信フィルタ特性113の等価雑音帯域幅610を適用して、与干渉信号電力密度600との積であるId×Bwを算出することにより、若干の誤差が存在するが、Id×Bwは、符号530で示した領域の大きさ、すなわち干渉軽減係数となる。
上記の第3の実施形態の構成により、干渉評価装置1cの演算部4cにおいて、データベース2が記憶する被干渉側装置の周波数特性を示す情報の種類が受信フィルタ特性の情報であるが、与干渉側装置の周波数特性を示す情報の種類が送信マスク特性の情報でない場合、計算対象範囲設定部41cは、判定部3が、与干渉側装置が、電磁波を放射する電磁波放射装置であると判定したとき、受信フィルタ特性113の最大周波数と最小周波数とを計算対象範囲183として定める。計算帯域間隔設定部42cは、計算対象範囲183を、均等に分割し、分割した各々の間隔を計算帯域間隔173とする。サンプルデータ生成部43cは、計算帯域間隔173で区切られた区間の境界の周波数位置において、受信フィルタ特性113の情報のサンプルデータが存在しない場合、既存のサンプルデータに基づいて、サンプルデータが存在しない境界の周波数位置のサンプルデータを生成する。重複指標算出部45cは、境界の周波数位置のサンプルデータに含まれる減衰量の変化に基づいて、等価雑音帯域幅を重複指標値として算出する。情報取得部47は、与干渉信号電力密度の情報を取得する。干渉軽減係数算出部46cは、重複指標算出部45cが算出する等価雑音帯域幅と、情報取得部47が取得した与干渉信号電力密度とに基づいて干渉軽減係数Id×Bwを算出する。これにより、無線通信装置以外の装置である電磁波放射装置が放射する電磁波により無線システムが影響を受ける干渉に対して、汎用的な手順により干渉軽減係数Id×Bwを算出し、算出した干渉軽減係数Id×Bwを用いることで、より正確に干渉評価を行うことを可能とする。
(第4の実施形態)
図30は、第4の実施形態の干渉評価装置1dの構成を示すブロック図である。図1の共通構成の干渉評価装置1及び第1の実施形態の干渉評価装置1aと同一の構成については、同一の符号を付し、以下、異なる構成について説明する。干渉評価装置1dは、データベース2、判定部3、演算部4d及び干渉電力算出部5を備える。演算部4dは、情報取得部47d、重複判定部48、重複指標算出部45d及び干渉軽減係数算出部46dを備える。
第4の実施形態が行われる前提状態は、図6のステップS102の分岐の(ii)送信マスク特性及び受信フィルタ特性の両方の情報が存在しない状態である。
演算部4dにおいて、情報取得部47dは、判定部3が出力する与干渉側装置のレコードから送信マスク特性の情報の代わりに含まれている送信帯域の情報を読み出す。また、情報取得部47dは、判定部3が出力する被干渉側装置のレコードから受信フィルタ特性の情報の代わりに含まれている等価雑音帯域の情報を読み出す。また、情報取得部47dは、読み出した送信帯域の情報と、等価雑音帯域の情報とを重複判定部48に出力する。また、情報取得部47dは、読み出した送信帯域の情報に含まれる送信帯域幅Wdtx[Hz]を干渉軽減係数算出部46dに出力する。
重複判定部48は、情報取得部47dから受けた送信帯域の情報と、等価雑音帯域の情報とに基づいて、送信帯域と等価雑音帯域とが重なるかを判定する。また、重複判定部48は、送信帯域と等価雑音帯域とが重なると判定した場合、情報取得部47dから受けた送信帯域の情報と、等価雑音帯域の情報とを重複指標算出部45dに出力する。
重複指標算出部45dは、重複判定部48が送信帯域と等価雑音帯域とが重なると判定した場合、重複指標値となる送信帯域と等価雑音帯域とが重なる帯域幅の長さWd_over[Hz]を算出する。また、重複指標算出部45dは、算出した送信帯域及び等価雑音帯域が重なる帯域幅の長さWd_over[Hz]を干渉軽減係数算出部46に出力する。
干渉軽減係数算出部46dは、重複指標算出部45dが出力する送信帯域及び等価雑音帯域が重なる帯域幅の長さWd_over[Hz]と、情報取得部47dが出力する送信帯域幅Wdtx[Hz]とを用いて、次式(10)により干渉軽減係数IRFを算出する。また、干渉軽減係数算出部46dは、算出した干渉軽減係数IRFを干渉電力算出部5に出力する。
(第4の実施形態における演算部及び干渉電力算出部の処理)
次に、図31から図33を参照しつつ第3の実施形態における演算部4d及び干渉電力算出部5の処理について説明する。図31は、第3の実施形態における演算部4d及び干渉電力算出部5の処理の流れを示すフローチャートであり、図6に示したフローチャートのステップS108のサブルーチンである。
図31に示すフローチャートは、ステップS501〜S505の5個の処理段階から構成されており、その中で、演算部4dは、ステップS501〜ステップS504の4個の処理を行う。
ステップS501では、情報取得部47dが、送信帯域の情報と、等価雑音帯域の情報とを取得する。ステップS502では、重複判定部48が、送信帯域と等価雑音帯域とが重なるかを判定する。ステップS503では、重複指標算出部45dが、重複判定部48が送信帯域と等価雑音帯域とが重なると判定した場合、重複指標値となる送信帯域と等価雑音帯域とが重なる帯域幅の長さWd_over[Hz]を算出する。ステップS504では、干渉軽減係数算出部46dが、送信帯域と等価雑音帯域とが重なる帯域幅の長さWd_over[Hz]と、情報取得部47dが取得した送信帯域の情報に含まれる送信帯域幅Wdtx[Hz]とに基づいて干渉軽減係数IRFを算出する。
以下、詳細な処理について説明する。図6のステップS102の判定処理を行った後、判定部3は、与干渉側装置のレコードと、被干渉側装置のレコードを出力する。判定部3が出力する与干渉側装置のレコードには、送信マスク特性の情報の代わりに送信帯域の情報が含まれている。被干渉側装置のレコードには、受信フィルタ特性の情報の代わりに等価雑音帯域の情報が含まれている。
ステップS501において、情報取得部47dは、判定部3が出力する与干渉側装置のレコードを取り込み、取り込んだ与干渉側装置のレコードから送信帯域の情報を読み出す(ステップS501−1)。情報取得部47dは、判定部3が出力する被干渉側装置のレコードを取り込み、取り込んだ被干渉側装置のレコードから等価雑音帯域の情報を読み出す(ステップS501−2)。
情報取得部47dが読み出した与干渉側装置のレコードの送信帯域の情報には、送信中心周波数fc_t[Hz]と、送信帯域幅Wdtx[Hz]とが含まれている。また、情報取得部47dが読み出した被干渉側装置のレコードの等価雑音帯域の情報には、受信中心周波数fc_r[Hz]と、等価雑音帯域幅Bw[Hz]とが含まれている。
情報取得部47dは、送信中心周波数fc_t[Hz]及び送信帯域幅Wdtx[Hz]と、受信中心周波数fc_r[Hz]及び等価雑音帯域幅Bw[Hz]とを重複判定部48に出力する。また、情報取得部47dは、送信帯域幅Wdtx[Hz]を干渉軽減係数算出部46dに出力する。
重複判定部48は、情報取得部47dが出力する送信中心周波数がfc_t[Hz]であって送信帯域幅がWdtx[Hz]である送信帯域幅と、受信中心周波数がfc_r[Hz]であって等価雑音帯域幅がBw[Hz]である等価雑音帯域幅とが重なるか否かを判定する(ステップS502)。送信帯域と等価雑音帯域が重なる場合は、図32と図33に示すように、2通りのパターンがある。
図32及び図33において、縦軸は、電波の強さP[W]であり、横軸は、周波数[Hz]である。図32は、送信帯域710の送信中心周波数fc_t[Hz]が、等価雑音帯域700の受信中心周波数fc_r[Hz]よりも小さい場合であり、図33は、等価雑音帯域701の受信中心周波数fc_r[Hz]が、送信帯域711の送信中心周波数fc_t[Hz]よりも小さい場合である。なお、与干渉側装置と被干渉側装置は、異なる無線システム同士であるため、本実施形態において、送信中心周波数がfc_t[Hz]と、受信中心周波数がfc_r[Hz]とが同一周波数にはならない。
図32に示す場合、すなわち、次式(11)を満たす場合、送信中心周波数fc_t[Hz]よりも受信中心周波数fc_r[Hz]が大きくなるため、送信帯域幅Wdtx[Hz]と等価雑音帯域幅Bw[Hz]の和を半分にして、送信中心周波数fc_t[Hz]に加えた周波数が、受信中心周波数fc_r[Hz]よりも大きいという条件を満たすことが、送信帯域710と等価雑音帯域700とが重なることを意味する。
上記の条件を式で表すと次式(12)となる。式(12)を満たす場合に、送信帯域710と等価雑音帯域700とが重なり、図32に示す重なる帯域幅720が生じることになる。
これに対して、図33に示す場合、すなわち、次式(13)を満たす場合、受信中心周波数fc_r[Hz]よりも送信中心周波数fc_t[Hz]が大きくなるため、送信帯域幅Wdtx[Hz]と等価雑音帯域幅Bw[Hz]の和を半分にして、受信中心周波数fc_r[Hz]に加えた周波数が、送信中心周波数fc_t[Hz]よりも大きいという条件を満たすことが、送信帯域710と等価雑音帯域700とが重なることを意味する。
上記の条件を式で表すと次式(14)となる。次式(14)を満たすときに、送信帯域710と等価雑音帯域700とが重なり、図33に示す重なる帯域幅721が生じることになる。
したがって、送信中心周波数fc_t[Hz]及び送信帯域幅Wdtx[Hz]と、受信中心周波数fc_r[Hz]及び等価雑音帯域幅Bw[Hz]とが、式(11)及び式(12)を満たさず、かつ、式(13)及び式(14)も満たさない場合、重複判定部48は、送信帯域と等価雑音帯域とが重ならないと判定し(ステップS502−No)、処理は、第4の実施形態のサブルーチンを抜けて図6のフローチャートに示すように終了する。
一方、送信中心周波数fc_t[Hz]及び送信帯域幅Wdtx[Hz]と、受信中心周波数fc_r[Hz]及び等価雑音帯域幅Bw[Hz]とが、式(11)及び式(12)を満たすか、または、式(13)及び式(14)を満たす場合、重複判定部48は、送信帯域と等価雑音帯域とが重なると判定する。
ステップ503において、重複指標算出部45dは、重複判定部48が送信帯域と等価雑音帯域とが重なると判定した場合(ステップS502−Yes)、送信帯域の送信中心周波数fc_t[Hz]と、等価雑音帯域の受信中心周波数fc_r[Hz]とはどちらが大きいかを判定する(ステップS503−1)。
重複指標算出部45dは、等価雑音帯域の受信中心周波数fc_r[Hz]が送信帯域の送信中心周波数fc_t[Hz]よりも大きいと判定した場合(ステップS503−1−(fc_rが大きい))、図32に示すように、送信帯域710と等価雑音帯域700とが重なり、重なる帯域幅720が生じている。したがって、重複指標算出部45dは、式(15)に基づいて、重なる帯域幅720の長さWd_over[Hz]を重複指標値として算出する。重複指標算出部45dは、算出した重複指標値であるWd_over[Hz]を干渉軽減係数算出部46dに出力する(ステップS503−2)。
一方、重複指標算出部45dは、送信帯域の送信中心周波数fc_t[Hz]が等価雑音帯域の受信中心周波数fc_r[Hz]よりも大きいと判定した場合(ステップS503−1−(fc_tが大きい))、図33に示すように、送信帯域711と等価雑音帯域701とが重なり、重なる帯域幅721が生じている。したがって、重複指標算出部45dは、式(16)に基づいて、重なる帯域幅721の長さWd_over[Hz]を重複指標値として算出する。重複指標算出部45dは、算出した重複指標値であるWd_over[Hz]を干渉軽減係数算出部46dに出力する(ステップS503−3)。
干渉軽減係数算出部46dは、重複指標算出部45dが出力する重複指標値である送信帯域と等価雑音帯域とが重なった帯域幅の長さWd_over[Hz]と、情報取得部47dが出力する送信帯域幅Wdtx[Hz]とを用いて、式(10)により干渉軽減係数IRFを算出する。
Wd_over[Hz]が、ステップS503−2、すなわち式(15)により算出されている場合、干渉軽減係数算出部46dが算出する干渉軽減係数IRFは、次式(17)となる。
これに対して、Wd_over[Hz]が、ステップS503−3、すなわち式(16)により算出されている場合、干渉軽減係数算出部46dが算出する干渉軽減係数IRFは、次式(18)となる。
干渉軽減係数算出部46dは、算出した干渉軽減係数IRFを干渉電力算出部5に出力する(ステップS504)。
干渉電力算出部5は、演算部4dが算出した干渉軽減係数IRFと、予め定められる与干渉側装置の送信電力と、アンテナの利得と、電波の伝搬経路における損失とに基づいて、式(1)により干渉電力を算出する(ステップS505)。処理は、第4の実施形態のサブルーチンを抜けて図6のフローチャートに示すように終了する。
上記の第4の実施形態の構成により、干渉評価装置1dの演算部4dにおいて、データベース2が記憶する与干渉側装置の周波数特性を示す情報の種類が送信マスク特性の情報でなく、かつ被干渉側装置の周波数特性を示す情報の種類が受信フィルタ特性の情報でない場合、情報取得部47dは、与干渉側装置の送信帯域の情報と、被干渉側装置の等価雑音帯域の情報とを取得する。重複判定部48は、情報取得部47が取得した送信帯域の情報と、等価雑音帯域の情報とに基づいて、送信帯域と等価雑音帯域とが重なるか否かを判定する。重複指標算出部45dは、重複判定部48が、送信帯域と等価雑音帯域とが重なると判定した場合、送信帯域の情報に含まれる送信帯域幅及び送信中心周波数と、等価雑音帯域の情報に含まれる等価雑音帯域幅及び受信中心周波数とに基づいて、送信帯域と等価雑音帯域とが重なる帯域幅を重複指標値として算出する。干渉軽減係数算出部46dは、重複指標算出部45dが算出する送信帯域と等価雑音帯域とが重なる帯域幅と、送信帯域の送信帯域幅とに基づいて干渉軽減係数を算出する。これにより、データベース2が与干渉側装置と被干渉側装置の両方に関係する周波数スペクトルといった十分な情報、すなわち送信マスク特性及び受信フィルタ特性を記憶していない場合であっても、与干渉側装置と被干渉側装置における最小限の情報、すなわち送信帯域の情報及び等価雑音帯域の情報を利用して、異なる無線システム同士の干渉に対して、汎用的な手順により干渉軽減係数IRFを算出し、算出した干渉軽減係数IRFを用いることで、より正確に干渉評価を行うことが可能となる。
なお、上記の第1及び第2の実施形態において、例えば、第1の実施形態の図12の領域511のグラフは、図12に示す連続値の送信マスク特性101と、受信フィルタ特性111とを重畳した場合の形状を示している。16個のサンプルデータを重畳した場合には、計算帯域間隔171で区切られる区間の間は線形に変化するため、符号150で示す点線の形状となり、分割数Nを増やすことにより、領域511により示す形状に近づいていく。同様に、第1の実施形態の図15の領域512のグラフ及び図17の領域511と領域512を重ねたグラフ、並びに、第2の実施形態の図21(b)の領域521のグラフ、図23の領域522のグラフ、図25の領域523のグラフ及び図26の領域521と領域522と領域523を重ねたグラフにおいても16個のサンプルデータを対象とする場合には、各図面において示した領域の形状とは若干異なる形状となり、分割数Nを増やすことにより、各々の図に示す形状に近づいていく。
また、上記の第3の実施形態の構成において、図29(b)では、受信フィルタ特性113の実際の形状に応じたピークの幅として周波数帯87を示しているが、計算帯域間隔設定部42cが実際に算出する周波数帯87の幅の長さWd_rは、符号88で示すピークのサンプルデータが存在する幅の長さとなる。また、図29(b)では、受信フィルタ特性113の形状に応じて等価雑音帯域幅610を示しているが、重複指標算出部45cが実際に算出する等価雑音帯域幅610の幅の長さBwは、符号611で示すサンプルデータが存在する幅の長さとなる。分割数Nを増やすことにより、周波数帯88の幅の長さは、周波数帯87の幅の長さに近づき、符号611の長さは、等価雑音帯域幅610の幅の長さに近づくことになる。
また、上記の第1から第4の実施形態では、電磁波放射装置を、無線通信装置以外の無線通信を行わない電子レンジや冷蔵庫のような家電等の電化製品、レーダ、本来の機能とは別に電磁波を副次的に発生するエンジンのような機器等としている。ただし、レーダの中で、最近の車両の衝突防止を目的にする車載レーダ等の市販の製品レーダや探知レーダでは、種類により送信マスクが規格として定められることもある。そのようなレーダについては、データベース2は、無線通信装置と同じく、送信マスク特性の情報を記憶することになり、「装置種類」も「無線通信」を示す情報が書き込まれる。ただし、そのようなレーダは、被干渉側、すなわち受信側になることはないため、利用者は、与干渉側装置としてしか指定することができない。
また、上記の第1、第2及び第4の実施形態において、利用者が、与干渉側装置及び被干渉側装置の両方の装置として無線通信装置を指定する場合、各々が異なる無線システムに属する無線通信装置を指定することを前提としている。そのため、データベース2は、同一の無線システムに属する無線通信装置の情報を重複して記憶していてもよい。仮に、利用者が、データベース2から与干渉側装置及び被干渉側装置の両方の装置として同一の無線システムに属する無線通信装置を選択したとしても干渉評価装置1a,1bは、処理を行って干渉軽減係数IRFを算出する。同一の無線システムの場合、例えば、第1及び第2の実施形態の場合には、計算対象範囲181,182、計算帯域間隔172,173が一致しているためサンプルデータを生成する必要がなく、送信マスク特性及び受信フィルタ特性に含まれる既存のサンプルデータを用いて干渉軽減係数IRFを算出することになる。第4の実施形態の場合には、送信中心周波数fc_t[Hz]と、受信中心周波数fc_r[Hz]が、同一周波数になるため、式(17)または式(18)において、(fc_t−fc_r)または(fc_r−fc_t)の部分が0になるため、IRF=Bw/2Wdtx+1/2の式で干渉軽減係数IRFが算出されることになる。
また、上記の第1及び第2の実施形態では、分割数Nは、送信マスク特性の周波数帯及び受信フィルタ特性の周波数帯の範囲において、計算帯域間隔171,172のWd_cal[Hz]の長さによって区切られる区間が、複数個になるように定められるのが望ましいとしている。また、第3の実施形態では、受信フィルタ特性の周波数帯87の範囲において、計算帯域間隔173のWd_cal[Hz]の長さによって区切られる区間が、複数個になるように、分割数Nの値を調整する構成となっている。しかしながら、本発明の構成は、当該実施の形態に限られない。例えば、周波数帯に含まれる数が、複数個の最低条件である2個で少ないと考えられる場合、周波数帯に含まれる区間の適切な数を予め定めるようにしてもよい。また、第1及び第2の実施形態のステップS202、ステップS302に替えて、分割数Nの値を調整する第3の実施形態のステップS402の処理を適用してもよいし、逆に、第3の実施形態のステップS402を、第1及び第2の実施形態のステップS202、ステップS302のように予め定められる分割数Nで均等に分割するようにしてもよい。
また、上記の第1から第4の実施形態において、以下の処理については順番が入れ替わってもよい。すなわち、図9に示した第1の実施形態のフローチャートのステップS201−1とステップS201−2の処理の順番が入れ替わってもよく、また、ステップS204とステップS205の処理の順番が入れ替わってもよい。また、図20に示した第2の実施形態のステップS301−1とステップS301−2の処理の順番が入れ替わってもよく、ステップS304とステップS305の処理の順番が入れ替わってもよい。また、図28に示した第3の実施形態のステップS405の処理は、ステップS401の前に行われていてもよい。また、図31に示した第4の実施形態のステップS501−1とステップS501−2の処理の順番が入れ替わってもよい。
また、上記の第1から第4の実施形態において領域の大きさRcrs,Rt_sm,R11crs,R1t_sm,R12crs,R21crs,R22crs、R2t_sm,R2r_smの単位は、[dB]である。また、与干渉信号電力密度Idは、[dB/Hz]ではなく[W/Hz]であってもよく、その場合、干渉軽減係数Id×Bwの単位は、[W]となる。また、Wd_cal,Wsm_tr,Wsm_t,Wsm_rの帯域幅は、一般には、[MHz]や[kHz]といった単位となる。
また、上記の第1から第4の実施形態において、干渉評価装置1,1a,1b,1c,1dから、干渉電力算出部5を除いた構成を、干渉軽減係数を算出する干渉軽減係数算出装置としてもよい。
上記の干渉評価装置1,1a,1b,1c,1dをコンピュータで実現するようにしてもよいし、また、上記の干渉軽減係数算出装置をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。