JP2020041087A - 溶剤組成物、洗浄方法、塗膜付基材の製造方法 - Google Patents

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宏明 光岡
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聡史 河口
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秀一 岡本
允彦 中村
Nobuhiko Nakamura
允彦 中村
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Abstract

【課題】金属の腐食を抑制できる溶剤組成物、洗浄方法、および、塗膜付基材の製造方法の提供。【解決手段】1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンと、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む溶剤組成物であって、1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムの含有の合計に対する、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムの含有量の合計の割合が、0.0001〜1質量%であることを特徴とする溶剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、溶剤組成物、洗浄方法および塗膜付基材の製造方法に関する。
IC、電子部品、精密機械部品、光学部品等の製造では、製造工程、組立工程、最終仕上げ工程等において、部品を洗浄用溶剤によって洗浄して、該部品に付着したフラックス、加工油、ワックス、離型剤、ほこり等を除去が行われる。
また、潤滑剤等の各種有機化学物質を含有する塗膜を有する物品の製造方法としては、例えば、有機化学物質を希釈塗布溶剤に溶解した溶液を調製し、この溶液を被塗布物上に塗布した後に希釈塗布溶剤を蒸発させて塗膜を形成する方法が知られている。希釈塗布溶剤には、有機化学物質を充分に溶解させることができ、また充分な乾燥性を有していることが求められる。
このような用途に用いる溶剤としては、不燃性で毒性が小さく、安定性に優れ、金属、プラスチック、エラストマー等の基材を侵さず、化学的および熱的安定性に優れる点から、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン等のクロロフルオロカーボン類(以下、「CFC類」と記す。)、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等のハイドロクロロフルオロカーボン類(以下、「HCFC類」と記す。)等を含有するフッ素系溶剤等が使用されていた。
しかし、CFC類およびHCFC類は、化学的に極めて安定であることから、気化後の対流圏内での寿命が長く、拡散して成層圏にまで達する。そのため、成層圏に到達したCFC類やHCFC類が紫外線により分解され、塩素ラジカルを発生してオゾン層が破壊される問題がある。
一方、塩素原子を有さず、オゾン層に悪影響を及ぼさない溶剤としては、ペルフルオロカーボン類(以下、「PFC類」と記す。)が知られている。また、CFC類およびHCFC類の代替溶剤として、ハイドロフルオロカーボン類(以下、「HFC類」と記す。)、ハイドロフルオロエーテル類(以下、「HFE類」と記す。)等も開発されている。しかし、HFC類やPFC類は、地球温暖化係数が高いため、京都議定書の規制対象物質となっている。
このような中、HFC類、HFE類、PFC類の溶剤に替わる新しい溶剤として、炭素原子−炭素原子間に二重結合を持つフルオロオレフィンが提案されている。これらのフルオロオレフィンは、分解しやすいために大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さいことから、地球環境への影響が小さいという優れた性質を有している。
例えば、特許文献1には、1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CHCl=CF−CF2Cl。HCFO−1223yd。以下、1223ydとも記す。)が開示されている。
英国特許第709887号公報
本発明者らは、特許文献1に記載された1223ydを金属に接触させたところ、金属の腐食が進行する場合があるという課題を見出した。
本発明は、上記課題に鑑みて、金属の腐食を抑制できる溶剤組成物、洗浄方法、および、塗膜付基材の製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できるのを見出した。
(1) 1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンと、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む溶剤組成物であって、
1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムの含有量の合計に対する、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムの含有量の合計の割合が、0.0001〜1.0質量%であることを特徴とする溶剤組成物。
(2) さらに安定化剤を含む、(1)に記載の溶剤組成物。
(3) 安定化剤が、フェノール類、エーテル類、エポキシド類、不飽和炭化水素類、およびアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(2)に記載の溶剤組成物。
(4) 安定化剤の含有割合が、1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部である、(2)または(3)に記載の溶剤組成物。
(5) 安定化剤を2種以上含み、うち1種はフェノール類である、(3)または(4)に記載の溶剤組成物。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の溶剤組成物と被洗浄物品とを接触させることを特徴とする洗浄方法。
(7) 被洗浄物品に付着した加工油を洗浄する、(6)に記載の洗浄方法。
(8) 不揮発性有機化合物および(1)〜(5)のいずれかに記載の溶剤組成物を含む塗膜形成用組成物を基材上に塗布した後、溶剤組成物を蒸発させて、基材の表面に不揮発性有機化合物を含む塗膜を形成することを特徴とする、塗膜付基材の製造方法。
(9) 基材が金属または金属との複合材料である、(8)に記載の塗膜付基材の製造方法。
本発明によれば、金属の腐食を抑制できる溶剤組成物、洗浄方法、および、塗膜付き基材の製造方法を提供できる。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
1223ydは二重結合上の置換基の位置により、幾何異性体であるZ体とE体が存在する。本明細書中では特に断らずに化合物名や化合物の略称を用いた場合には、Z体およびE体からなる群から選ばれる少なくとも1種を示し、より具体的には、Z体もしくはE体、または、Z体とE体の任意の割合の混合物を示す。
<溶剤組成物>
本発明の溶剤組成物は、1223ydと、ジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−225。以下、225とも記す。)、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CF3CF=CCl2。CFC−1214ya以下、1214yaとも記す。)、およびクロロホルム(CHCl3)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む溶剤組成物であって、1223ydと、225、1214yaおよびクロロホルムの含有量の合計に対する、225、1214yaおよびクロロホルムの含有量の合計の割合が、0.0001〜1.0質量%である。
本発明の溶剤組成物において、1223ydは溶剤として優れた特性を有する成分であり、225、1214yaおよびクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種は、1223ydを安定化させる安定化剤として溶剤組成物に含まれる成分である。
本発明者らは、1223ydは安定性が充分ではなく、1223ydを常温常圧で保管すると数日で分解して塩素イオンを発生するため、金属の腐食が進行するという課題があることを見出した。そこで、本発明の溶剤組成物においては、1223ydとともに、225、1214yaおよびクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種を所定量含有することで、1223ydの安定化が図られている。225、1214yaおよびクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種は、必ずしも明確ではないがラジカルの捕捉と推定される効果により、1223ydの分解を抑制し、安定化させる安定剤としての機能を有すると考えられる。
(1223yd)
1223ydは、上述した通り、1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(CHCl=CF−CF2Cl)を意味する。
本発明の溶剤組成物における1223ydの含有量は、溶剤組成物の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、溶剤組成物の各種有機物の溶解性に優れ、洗浄性に優れる。上限としては、99.9999質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましい。
1223ydは、例えば後述の実施例に記載の方法により製造できる。
(225)
225は、1223ydに可溶な化合物である。
225は、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ca)、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225cb)、2,2−ジクロロ−1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225aa)、1,2−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ba)、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225bb)、またはこれらの2種以上からなる混合物のことをいう。1223ydの安定化させる観点から、225cbがより好ましい。
225は、例えばテトラフルオロエチレンとジクロロフルオロメタンとを触媒の存在下で反応させることにより製造できる(国際公開第2010/074254号参照)。上記反応で得られる225は通常異性体混合物として得られるため、公知の方法により分離精製をして用いてもよいし、該異性体混合物をそのまま用いてもよい。
(1214ya)
1214yaは、1223ydに可溶な化合物である。
1214yaは、例えば225caを相間移動触媒の存在下にアルカリ水溶液と接触させることにより製造できる(特許第3778298号公報参照)。
(クロロホルム)
クロロホルムは、工業的に安定的に入手可能な、1223ydに可溶な化合物である。
なお、本明細書において、ある物質が1223ydに可溶であるとは、該物質を所望の濃度となるように1223ydに混合して、常温(25℃)で撹拌することにより二層分離や濁りを起こさずに均一に溶解できる性質を意味する。
また、本発明の溶剤組成物において安定性は、例えば、溶剤組成物の初期のpHと、溶剤組成物を一定期間保存した後のpHとの差を指標として評価できる。なお、本発明における溶剤組成物のpHとは、溶剤組成物とpH7の純水を混合して所定時間振盪し、その後静置して2層分離させたときの上層の水層のpHをいう。具体的なpHの測定条件は後述の実施例に記載したpH測定の項に記載した条件を採用できる。
本発明の溶剤組成物は、1223ydの沸点(約58℃)で7日間保存した場合、保存前の溶剤組成物のpHと比べて、保存後の溶剤組成物のpHの低下を1.5以下に抑えることができる。すなわち、1223ydの分解による酸の発生を抑えられる。保存によるpHの低下は1.0以下とすることがより好ましく、0とすることがさらに好ましい。
本発明の溶剤組成物における225、1214ya、およびクロロホルムの含有量の合計の割合は、1233yd、225、1214ya、およびクロロホルムの含有量の合計に対して、0.0001〜1.0質量%であり、0.0005〜1.0質量%が好ましい。
本発明の溶剤組成物は、225、1214ya、および、クロロホルム以外に、1223ydを安定化する安定化剤(以下、「その他の安定化剤」という。)を任意成分として含有してもよい。
その他の安定剤としては、フェノール類、エーテル類、エポキシド類、不飽和炭化水素類、およびアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
フェノール類としては、フェノール、1,2−ベンゼンジオール、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール(BHT)、m−クレゾール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、α−トコフェロールおよび2−メトキシフェノール、メトキシヒドロキノン(MEHQ)が好ましい。
エーテル類としては、4〜6員環の環状エーテルが好ましく、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフランが好ましい。
エポキシド類としては、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、ブチルグリシジルエーテルが好ましい。
不飽和炭化水素としては、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテンが好ましい。
アルコール類としては、炭素数が1〜3の直鎖または分岐鎖のアルコールであるメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)が好ましい。
その他の安定化剤は、上記のうち1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、うち1種はフェノール類を用いることが好ましい。溶剤組成物の安定性をさらに高める観点から、フェノール類と、エーテル類、エポキシド類、不飽和炭化水素類、およびアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種とを組合せて用いることが好ましい。
本発明の溶剤組成物におけるその他の安定化剤の含有割合は、1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部が好ましく、0.0005〜0.8質量部がより好ましく、0.01〜0.7質量部がさらに好ましい。
本発明の溶剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、1223yd、225、1214ya、クロロホルム、その他の安定剤以外の成分を含んでもよい。例えば、本発明の溶剤組成物が、銅または銅合金と接触する場合には、それらの金属の腐食を避けるために、ニトロ化合物類やトリアゾール類を含んでいてもよい。
本発明の溶剤組成物は、各種有機物の溶解性に優れ、洗浄性に優れ、かつ地球環境に悪影響を及ぼさず、安定化されて分解が抑制された安定な溶剤組成物であり、脱脂洗浄、フラックス洗浄、精密洗浄、ドライクリーニング等の洗浄用途に好ましく用いられる。本発明の溶剤組成物は、また、シリコーン系潤滑剤、フッ素系潤滑剤等の潤滑剤、鉱物油や合成油等からなる防錆剤、撥水処理を施すための防湿コート剤、防汚処理を施すための指紋除去付着防止剤等の防汚コート剤等を溶解して塗膜形成用組成物として、物品表面に塗布し塗膜を形成する用途で使用できる。本発明の溶剤組成物は、さらに、物品を加熱や冷却するための熱移動媒体としても適している。
本発明の溶剤組成物が適用できる物品は、コンデンサやダイオード、およびこれらが実装された基板等の電子部品、レンズや偏光板等の光学部品、自動車のエンジン部に使われる燃料噴射用のニードルや駆動部分のギヤ等の自動車部品、産業用ロボットに使われる駆動部分の部品、外装部品等の機械部品、切削工具等の工作機械に使われる超硬工具等に幅広く使用できる。さらに、本発明の溶剤組成物が適用可能な材質としては、金属、プラスチック、エラストマー、ガラス、セラミックス、布帛等の広範囲の材質が挙げられ、これらのなかでも、鉄、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ等の金属、焼結金属、ガラス、フッ素樹脂、PEEK等のエンジニアリングプラスチックに好適である。本発明の溶剤組成物は、金属または金属との複合材料等の洗浄、希釈塗布用途に特に好ましく適用できる。
<洗浄方法>
本発明の洗浄方法は、上記本発明の溶剤組成物によって被洗浄物品に付着された付着物を洗浄する方法であり、本発明の溶剤組成物と被洗浄物品とを接触させることを特徴とする。
本発明の洗浄方法において、洗浄除去される付着物としては、各種被洗浄物品に付着したフラックス;切削油、焼き入れ油、圧延油、潤滑油、機械油、プレス加工油、打ち抜き油、引き抜き油、組立油、線引き油等の加工油;離型剤;ほこり等が挙げられる。本発明の溶剤組成物は従来の溶剤組成物であるHFCやHFE等と比較して加工油の溶解性に優れることから、加工油の洗浄に用いることが好ましい。
また、本発明の溶剤組成物は、金属、プラスチック、エラストマー、ガラス、セラミックスおよびこれらの複合材料、天然繊維製や合成繊維製の布帛等、様々な材質の被洗浄物品の洗浄に適用できる。ここで、被洗浄物の具体的としては、繊維製品、医療器具、電気機器、精密機械、光学物品およびそれらの部品が挙げられる。電気機器、精密機械、光学物品およびそれらの部品の具体例としては、IC、コンデンサ、プリント基板、マイクロモーター、リレー、ベアリング、光学レンズ、ガラス基板が挙げられる。
本発明の溶剤組成物を用いた被洗浄物の洗浄方法は、本発明の溶剤組成物と被洗浄物品を接触させる以外は特に限定されない。接触により、被洗浄物品の表面に付着する汚れを除去できる。洗浄方法の具体例としては、手拭き洗浄、浸漬洗浄、スプレー洗浄、浸漬揺動洗浄、浸漬超音波洗浄、蒸気洗浄、およびこれらを組み合わせた方法が挙げられる。これらの洗浄方法における、接触の時間、回数、その際の本発明の溶剤組成物の温度等の洗浄条件は洗浄方法に応じて適宜選定すればよい。また、洗浄装置も各洗浄方法に応じて公知のものを適宜選択できる。これらの洗浄方法に本発明の溶剤組成物を用いれば、含有成分が殆ど分解することなく、洗浄性を保ったまま長期間繰り返し使用することができる。
本発明の洗浄方法は、例えば、液相の溶剤組成物に被洗浄物品を接触させる溶剤接触工程と、溶剤接触工程後に、溶剤組成物を蒸発させて発生させた蒸気に被洗浄物品を曝す蒸気接触工程と、を有する洗浄方法に適用できる。このような洗浄方法および洗浄方法が適用可能な洗浄装置としては、例えば、国際公開第2008/149907号に記載の洗浄装置および洗浄方法を用いて実施できる。
<ドライクリーニング方法>
次に、本発明の溶剤組成物を、各種繊維製品の汚れの除去洗浄に用いる場合について説明する。本発明の溶剤組成物は、繊維製品の洗浄用溶剤、すなわち、ドライクリーニング用溶剤、として適している。
繊維製品としては、シャツ、セーター、ジャケット、スカート、ズボン、ジャンパー、手袋、マフラー、ストール等の衣類が挙げられる。
繊維製品の素材としては、綿、麻、ウール、レーヨン、ポリエステル、アクリル、ナイロン等が挙げられる。本発明の溶剤組成物は、特に金属製のボタンや金具が付いている繊維製品のドライクリーニング用溶剤として適している。
<塗膜付基材の製造方法>
本発明の溶剤組成物は、不揮発性有機化合物の希釈塗布用の溶剤(希釈塗布溶剤)に使用できる。すなわち本発明の塗膜付基材の製造方法は、不揮発性有機化合物および上記本発明の溶剤組成物を含む塗膜形成用組成物を基材上に塗布した後、溶剤組成物を蒸発させて、基材の表面に不揮発性有機化合物を含む塗膜を形成することを特徴とする。
基材は、金属、プラスチック、エラストマー、ガラス、セラミックス等、様々な材質の基材であってよいが、金属または金属との複合材料がより好ましい。
ここで、本発明における不揮発性有機化合物とは、沸点が本発明の溶剤組成物より高く、溶剤組成物が蒸発した後も有機化合物が表面に残留するものをいう。不揮発性成分の具体例としては、国際公開第2017/122801号に記載の不揮発性成分が挙げられる。
<熱移動媒体>
本発明の溶剤組成物は、熱サイクルシステムにおける作動媒体(熱移動媒体)として使用してもよい。これにより物質を加熱したり冷却したりすることができる。
熱サイクルシステムの具体例としては、国際公開第2017/122801号に記載の熱サイクルシステムが挙げられる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。例2〜6、10〜14、18〜22、25〜61が本発明の溶剤組成物の実施例、例1、7〜9、15〜17、23〜24、62〜63が比較例である。
(製造例:1223ydの製造)
特許文献1(GB709887)に記載の方法に従って、1223ydを製造した。
具体的には、還流冷却器を取り付けたフラスコに粒状の亜鉛(39g)を入れ、50ccの無水エタノールで表面を覆った。1,1,2,3−テトラクロロ−2,3,3−トリフルオロプロパン(118g)を75ccの無水エタノールで溶解し、得られた溶液をフラスコ内の亜鉛/エタノール混合物に滴下した。激しい還流を防ぐため、滴下速度を制御した。滴下が完了した後、反応混合物を約90分間還流させた。余剰のエタノールを水に溶解させ、有機相を水相から分離し、無水塩化カルシウムで乾燥させて1223ydを得た。
(例2〜6、10〜14、18〜22:溶剤組成物(実施例)の製造)
上記で得られた1223ydと、225、1214ya、およびクロロホルムのいずれか1つを、表1に示す含有割合になるように加え、1223ydと、225、1214yaおよびクロロホルムの1つとを含む例2〜6、10〜14、18〜22の溶剤組成物をそれぞれ500gずつ調製した。
例2〜6の溶剤組成物は1223ydと225のみからなる溶剤組成物である。例10〜14の溶剤組成物は1223ydと1214yaのみからなる溶剤組成物である。例18〜22の溶剤組成物は1223ydとクロロホルムのみからなる溶剤組成物である。225は、AGC社製のアサヒクリンAK225(225caと225cbの質量比(225ca/225cb)が45/55の異性体混合物を用いた。1214yaは、WO2010/074254に記載される方法により製造したものを用いた。
(例1、7、9、15、17、23:溶剤組成物(比較例)の製造)
上記で得られた1223yd、225、1214ya、およびクロロホルムを用いて、表1に示す含有割合になるように、1223ydと、225、1214yaおよびクロロホルムのいずれか1つとを含む例1、7、9、15、17、23の溶剤組成物をそれぞれ500gずつ調製した。例1、7の溶剤組成物は1223ydと225のみからなる溶剤組成物である。例9、15の溶剤組成物は1223ydと1214yaのみからなる溶剤組成物である。例17、23の溶剤組成物は1223ydとクロロホルムのみからなる溶剤組成物である。
(例8、16、24:溶剤組成物(比較例)の製造)
上記で得られた1223ydを用いて、1223ydのみからなる例8、16、24の溶剤組成物をそれぞれ500gずつ製造した。
[評価]
1.安定性試験および金属耐食試験
例1〜24の溶剤組成物の100gを、一般用冷間圧延鋼板(SPCC)の試験片を入れた耐熱ガラス瓶に入れ、1223ydの沸点(約58℃)で7日間保存した。調製直後(試験前)と7日間保存後(試験後)のpHの測定結果、および7日間保存後(試験後)のSPCC表面の外観観察の評価結果を表1に示す。
(pH測定)
例1〜24の溶剤組成物40gとpH7に調製した40gの純水とを、200mL容分液漏斗に入れ、1分間振盪した。その後、静置して2層分離した上層の水層を分取し、その水層のpHをpHメーター(型番:HM−30R、東亜ディーケーケー株式会社製)で測定した。結果を表1に示す。
試験前後の金属表面の変化は、各金属の未試験品を比較対象として目視にて評価した。評価基準は次のとおりである。
「S(優良)」:試験前後で変化なし。
「A(良)」:試験前に比べて試験後では光沢が失われたが、実用上は問題ない。
「B(やや不良)」:試験後の表面がわずかに錆びている。
「×(不良)」:試験後の表面の全面に錆びが認められる。
表1より、本発明の実施例の溶剤組成物はいずれも比較例に比べて、酸性化が抑制されたことがわかる。また、実施例では比較例よりも金属試験片の腐食が抑制されたことがわかる。これにより、本発明の溶剤組成物は、優れた溶剤組成物の安定化効果を奏するだけでなく、金属腐食を抑制できることが明らかである。
(例25〜48、56〜57、59〜60:溶剤組成物(実施例)の製造)
上記で得られた1223ydと、225、1214ya、およびクロロホルムのいずれか1つと、安定化剤1として、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール(BHT)、メトキシヒドロキノン(METQ)、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテン、プロパルギルアルコール、1,4−ジオキサン、および1,2−ブチレンオキシドのいずれか1つと、を表2に示す含有割合になるように加え、1223ydと、225、1214yaおよびクロロホルム(CHCl3)のいずれか1つと、BHT、METQ、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテン、プロパルギルアルコール、1,4−ジオキサン、および1,2−ブチレンオキシドのいずれか1つと、を含有する例25〜48、56〜57、59〜60の溶剤組成物をそれぞれ500gずつ調製した。
(例49〜55、58、61:溶剤組成物(実施例)の製造)
上記で得られた1223ydと、225、1214ya、およびクロロホルムのいずれか1つと、安定化剤1として、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、および2,4,4−トリメチル−2−ペンテンのいずれか1つと、安定化剤2として、BHT、およびMETQのいずれか1つと、を表2に示す含有割合になるように加え、1223ydと、225、1214yaおよびクロロホルム(CHCl3)のいずれか1つと、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、および2,4,4−トリメチル−2−ペンテンのいずれか1つと、BHT、およびMETQのいずれか1つと、を含有する例49〜55、58、61の溶剤組成物をそれぞれ500gずつ調製した。
(例62:溶剤組成物(比較例)の製造)
上記で得られた1223ydと、安定化剤1として、2−メチル−2−ペンテンとを表2に示す含有割合になるように加え、1223ydと、2−メチル−2−ペンテンと、を含有する溶剤組成物を500g調製した。
(例63:溶剤組成物(比較例)の製造)
上記で得られた1223ydを用いて、1223ydのみからなる溶剤組成物を500g調製した。
2:加速酸化試験による安定性評価試験
上記で得られた例25〜61(実施例)、例62〜63(比較例)の溶剤組成物について、還流時間を48時間における安定性を確認する加速酸化試験を実施した。すなわち、各200mLの溶剤組成物中に、気相と液相に機械構造用炭素鋼(S20C)試験片を共存させた条件下で、水分を飽和させた酸素気泡を通しながら、電球で光を照射し、その電球の発熱で48時間還流した。
上記加速酸化試験前後の塩素イオン濃度を測定し、以下の指標で安定性を評価した。また、上記加速酸化試験前後の試験片外観の変化の度合いを以下の指標で評価した。結果を表2に示す。
<安定性評価の指標>
以下の、評価の指標における濃度はいずれも塩素イオン濃度である。
「S」:5質量ppm未満
「A」:5質量ppm以上10質量ppm未満
「B」:10質量ppm以上50質量ppm未満
「C」:50質量ppm以上100質量ppm未満
「D」:100質量ppm以上
<試験片外観評価の指標>
「S」:試験前後で変化なし。
「A」:試験前に比べて試験後ではわずかに光沢が失われたが、実用上問題ない。
「B」:試験後の表面がわずかに錆びている。
「C」:試験後の表面の全面に錆びが認められる。
表2より、安定化剤を含む本発明の実施例の溶剤組成物は、加速酸化試験を施した場合に安定性に優れていることがわかる。特に、安定化剤を2種含み、うち1種がフェノール類である実施例は、安定性に優れていることがわかる。

Claims (9)

  1. 1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンと、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む溶剤組成物であって、
    1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムの含有量の合計に対する、ジクロロペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびクロロホルムの含有量の合計の割合が、0.0001〜1.0質量%であることを特徴とする溶剤組成物。
  2. さらに安定化剤を含む、請求項1に記載の溶剤組成物。
  3. 前記安定化剤が、フェノール類、エーテル類、エポキシド類、不飽和炭化水素類、およびアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の溶剤組成物。
  4. 前記安定化剤の含有割合が、1,3−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンの100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部である、請求項2または3に記載の溶剤組成物。
  5. 前記安定化剤を2種以上含み、うち1種はフェノール類である、請求項3または4に記載の溶剤組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶剤組成物と被洗浄物品とを接触させることを特徴とする洗浄方法。
  7. 前記被洗浄物品に付着した加工油を洗浄する、請求項6に記載の洗浄方法。
  8. 不揮発性有機化合物および請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶剤組成物を含む塗膜形成用組成物を基材上に塗布した後、前記溶剤組成物を蒸発させて、前記基材の表面に前記不揮発性有機化合物を含む塗膜を形成することを特徴とする、塗膜付基材の製造方法。
  9. 前記基材が金属または金属との複合材料である、請求項8に記載の塗膜付基材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114644849A (zh) * 2022-01-28 2022-06-21 航天材料及工艺研究所 一种有机硅涂料用安全稀释剂及其制备方法

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