JP2020038024A - 全熱交換素子用シート、全熱交換素子、全熱交換器、及び水蒸気分離体 - Google Patents

全熱交換素子用シート、全熱交換素子、全熱交換器、及び水蒸気分離体 Download PDF

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麻紀 米津
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Koichi Harada
耕一 原田
由美 福田
Yumi Fukuda
由美 福田
敏弘 今田
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敏弘 今田
ひとみ 斉藤
Hitomi Saito
ひとみ 斉藤
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Keiko Albessard
恵子 アルベサール
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【課題】 高い水蒸気透過速度と高い水蒸気の分離率を両立した全熱交換素子用シート、全熱交換素子、全熱交換器、及び水蒸気分離体を提供する。【解決手段】 実施形態に係る全熱交換素子用シートは、有機繊維を含む多孔質部材と、多孔質部材の一方の面に設けられ、平均繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜とを備える。多孔質部材の一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の平均外挿接触角が100度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である。【選択図】図3

Description

実施形態は、全熱交換素子用シート、全熱交換素子、全熱交換器、及び水蒸気分離体に関する。
近年、地球環境の保護や二酸化炭素の削減、エネルギー不足等の観点から、使用エネルギーの削減が要求されている。住宅やビル等の住空間は、建築基準法により義務付けられた換気を必要とする。しかし、換気による空調エネルギー損失が問題になっている。空調装置の一つである全熱交換器は、調温及び調湿された建物内部の空気と屋外の空気との間で全熱(顕熱(温度)と潜熱(湿度))を交換することにより熱のロスを抑制し、省エネルギー化を図る装置である。
従来の全熱交換素子は、特殊加工が施された紙からなる全熱交換素子用シートを用い、屋内の空気と屋外の空気との混合を抑制しながら、顕熱及び潜熱を交換している。しかし、全熱交換素子用シートは全熱の交換効率が70%前後と低い値に留まる。全熱交換素子用シートは、交換効率のより高い材料に置き換えることによって、さらに省エネルギーが図られた全熱交換器を実現することができる。
特公昭61−058759号公報 特開2004−154457号公報 特開2010−234213号公報
本発明が解決しようとする課題は、高い水蒸気透過速度と高い水蒸気の分離率を両立した全熱交換素子用シート、全熱交換素子、全熱交換器、及び水蒸気分離体を提供する。
実施形態に係る全熱交換素子用シートは、有機繊維を含む多孔質部材と、多孔質部材の一方の面に設けられた平均繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜とを備える。多孔質部材の一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の平均外挿接触角が100度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である。
別の実施形態に係る全熱交換素子用シートは、有機繊維を含む多孔質部材と、多孔質部材の一方の面に設けられた平均繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜とを備える。多孔質部材の一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値が90度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である。
第1、第2の実施形態に係る全熱交換素子用シートを示す断面模式図である。 第1、第2の実施形態に係る全熱交換素子用シートに対する外気と還気の流れを図1と異ならせた断面模式図である。 水滴法による接触角を説明するための図である。 実施形態に係る全熱交換素子を示す斜視図である。 夏場の全熱交換を説明するための実施形態に係る全熱交換器を示す概略図である。 冬場の全熱交換を説明するための実施形態に係る全熱交換器を示す概略図である。
以下、第1、第2の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。説明中の上下等の方向を示す用語は、重力加速度方向を基準とした現実の方向とは異なる場合がある。
図1は、第1、第2の実施形態に係る全熱交換素子用シートを示す断面模式図、図2は第1、第2の実施形態に係る全熱交換素子用シートに対する外気と還気の流れを図1と異ならせた断面模式図である。全熱交換素子用シート1は、多孔質部材2と多孔質部材2の一方の面に設けられた膜3とを具備し、多孔質部材2と膜3との積層体は水蒸気分離体としての機能を有する。
このような全熱交換素子用シート1に対し、コスト面などを考慮して通常は導入側を変化させないが、以下に説明するように導入側を夏と冬で変化させてもよい。
例えば、外気110aが還気110cよりも高温多湿である場合、図1に示すように外気110aは主に膜3の表面31を流路(図示せず)に沿って流通して吸気110bとして室内に排出され、還気110cは主に多孔質部材2の表面21を流路(図示せず)に沿って通過して排気110dとして室外に排出される。外気110a及び還気110cは、例えば互いに向き合うように流通させているが、全熱交換の設計により互いに角度を持って交差して流通させてもよい。このように外気110aを全熱交換素子用シート1の膜3の表面31、還気110cを全熱交換素子用シート1の多孔質部材2の表面21、に沿って流通させることによって、外気110aに含まれる水蒸気及び熱は全熱交換素子用シート1を透過して低湿低温に調整された還気110c側に移動する。
他方、外気110aが還気110cよりも低温低湿である場合、図2に示すように還気110cは主に膜3の表面31を流路(図示せず)に沿って通過して排気110dとして室外に排出され、外気110aは主に多孔質部材2の表面21を流路(図示せず)に沿って通過して吸気110bとして室内に排出される。還気110c及び外気110aは、互いに向き合うように流通させる。このように還気110cを全熱交換素子用シート1の膜3の表面31、外気110aを全熱交換素子用シート1の多孔質部材2の表面21、に沿って流通させることによって、還気110cに含まれる水蒸気及び熱(顕熱と潜熱)は全熱交換素子用シート1を透過して外気110a側に移動する。従って、全熱交換素子用シート1は外気110aと還気110cとの間で全熱を交換することができる。
外気及び還気は、互いに接触しないように全熱交換素子用シート1の膜3の表面31及び多孔質部材2の表面21を流路に沿って通過させ、水蒸気とその他の気体とを効率よく分離することが好ましい。そのため、全熱交換素子用シート1は温度と湿度を効率よく交換する機能を有することが求められる。全熱の交換効率をより高めるためには、例えば水蒸気透過速度Vsと水蒸気と水蒸気を除く気体(空気等)とを分離する能力を示す分離率αとの両方が高いことが好ましい。
全熱交換素子用シート1の水蒸気透過速度Vsは、50g/h/m/kPa以上、80g/h/m/kPa、さらに120g/h/m/kPaであることが求められる。全熱交換素子用シートの水蒸気透過速度Vsは、次式(1)により表される。全熱交換素子用シート1の水蒸気透過速度Vsが低いと、湿度交換効率が低下し、全熱交換器としてのロスが大きくなる虞がある。
全熱交換素子用シート1の水蒸気透過速度Vs(g/h/m/kPa)=(全熱交換素子用シート1を透過した水分量(g))/(全熱交換素子用シート1を水分が透過した時間(h))/(全熱交換素子用シート1の面積(m))/(全熱交換素子用シート1の両面における水蒸気圧差(kPa))…(1)
全熱交換素子用シート1の水蒸気と水蒸気を除く気体との分離率αは、10以上、20以上、さらに50以上であることが求められる。分離率αは、次式(2)により表される。
α=[(全熱交換素子用シート1を透過した水のモル数)/(排気7dの乾燥空気のモル数)]/[(外気7aの水のモル数)/(外気7aの乾燥空気のモル数)]…(2)
分離率αが低すぎると、水蒸気と水蒸気を除く気体との分離が困難になり、還気が効率よくおこなわれなくなる。その結果、室内の二酸化炭素等の排出が低下し、十分な換気のために余分な風量が必要になる。
前述した第1、第2の実施形態の全熱交換素子用シート1を構成する多孔質部材2について以下に詳述する。
<多孔質部材2>
第1の実施形態の多孔質部材2は、有機繊維を含み、その一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の平均外挿接触角が100度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である。
ここで、水滴法による「接触角」とは、図3に示すように水滴201の輪郭曲線と固体である多孔質部材202の一方の面203との交点である端点Pにおいて、水滴201の輪郭曲線の接線Lと多孔質部材202の一方の面203とのなす角(θ)として定義する。
「外挿」とは、ある既知の数値データ(この例では接触角の経時変化)を基にして、その数値データの範囲の外側で予想される数値、ここでは水の滴下時の接触角、を求めることである。
第1の実施形態の多孔質部材2において、3箇所以上の平均外挿接触角を100度未満であると撥水性が低く、その結果、多孔質部材2の一方の面に無機繊維を含む水系分散スラリーを塗布し、乾燥して膜3を形成した場合、水系分散スラリーが多孔質部材2の一方の面に留まらず、多孔質部材2の内部に侵入する。このため、高い水蒸気透過速度と高い水蒸気分離率とを両立した、多孔質部材と膜を備えた全熱交換用シートを得ることが困難になる。より好ましい3箇所以上の平均外挿接触角は105度以上、さらに好ましい3箇所以上の平均外挿接触角は110度以下である。
第1の実施形態の多孔質部材2において、水の滴下後5分間経過した後の3か所以上の平均接触角が40度未満であると、多孔質部材2の一方の面に高い撥水性を所望時間維持することが困難になる。それ故、多孔質部材2の一方の面に無機繊維を含む水系分散スラリーを塗布し、乾燥により膜3を形成する過程において、塗布時及び/又は乾燥時に多孔質部材2の一方の面での水系分散スラリーを保持できず、水系分散スラリーが多孔質部材の内部に侵入する。その結果、高い水蒸気透過速度と高い水蒸気分離率とを両立した、多孔質部材と膜を備えた全熱交換用シートを得ることが困難になる。より好ましい水の滴下後5分間経過した後の3か所以上の平均接触角は50度以上180度未満、さらに好ましい同平均接触角は60度以上180度未満である。
第1の実施形態の多孔質部材2は、その一方の面と反対側の他方の面においても、一方の面と同じ平均外挿接触角及び平均接触角を有し得る。
第2の実施形態の多孔質部材2は、有機繊維を含み、その一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値が90度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である。
第2の実施形態の多孔質部材2において、3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値を90度未満であると、第1の実施形態で説明した3箇所以上の平均外挿接触角を100度未満にしたのと同様な理由により、高い水蒸気透過速度と高い水蒸気分離率とを両立した、多孔質部材と膜を備えた全熱交換用シートを得ることが困難になる。より好ましい3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値は、93度以上、さらに好ましい3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値は、95度以上である。
第2の実施形態の多孔質部材2において、水の滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角を40度未満であると、第1の実施形態で説明した平均接触角の規定と同様な理由により高い水蒸気透過速度と高い水蒸気分離率とを両立した、多孔質部材と膜を備えた全熱交換用シートを得ることが困難になる。より好ましい3箇所以上の平均接触角は50度以上、さらに好ましい同平均接触角は60度以上である。
第2の実施形態の多孔質部材2は、その一方の面と反対側の他方の面においても、一方の面と同じ平均外挿接触角及び平均接触角を有し得る。
第1、第2の実施形態において、多孔質部材の一方の面の接触角を所定の値にするには、多孔質部材に含まれる有機繊維を撥水処理剤で処理したり、多孔質部材に特定のサイズ剤を含有させたり、することにより達成することができる。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2において、有機繊維を含むとは当該有機繊維が多孔質部材の構成材料に対して50重量%以上含むことが好ましい。さらに、当該有機繊維が75重量%超、さらには90重量%超であることがより好ましい。有機繊維は、単一種の有機繊維又は複数種の有機繊維であってもよい。有機繊維に対する残り構成材料は、添加物、例えば有機繊維間の空隙を調整するための高分子成分を含んでいてもよく、多孔質部材2に難燃性を付与するために吸湿剤や酸化物等のセラミックス粒子等を含んでいてもよい。また、撥水性や耐水性を調整するための処理剤や、有機成分を含んでいてもよい。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2に含まれる有機繊維は、好ましくは平均繊維径が1μm以上100μm以下、より好ましくは平均繊維径が1μm以上50μm以下、である。このような有機繊維は、高い柔軟性を有するため好ましい。
有機繊維は、例えば合成繊維又は天然繊維等を用いることができる。天然繊維は、例えばセルロースを主成分として含む。有機繊維は、径方向に平であってもよい。また有機繊維は中空繊維であってもよい。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2は、例えば不織布、紙、有機多孔質体、又は合成繊維、天然繊維からなる成形体(紙を含む)であってもよい。多孔質部材2を構成する有機繊維は、サブミクロン以下のサイズの有機ナノ繊維の集合体であってもよい。有機ナノ繊維の集合体を用いることにより、多孔質部材2と膜3との結合力を増加させて、膜3が多孔質部材2から剥離するのを防ぐことができる。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2は、例えばポアフロン(住友電気工業株式会社の登録商標)などのフッ素系シートを延伸加工した多孔質シートから作製してもよい。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2は、有機繊維の間に細孔を有することが好ましい。平均繊維径が1μm以上100μm以下の有機繊維において、その平均繊維径の範囲及び/又は多孔質部材中の有機繊維の含有割合を調節して細孔径等を制御することによって、多孔質部材2の水蒸気透過速度Vs等を高めることができる。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2の細孔の平均径(平均細孔径)は、好ましくは0.05μm以上100μm以下、より好ましくは0.05μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上10μm以下である。平均細孔径が大き過ぎると、当該多孔質部材2に膜3を形成する際、膜3が孔に侵入しやすくなって、ピンホール又は亀裂の発生を促進して分離性能が低下する可能性がある。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2の厚さは、特に限定されないが、好ましくは30μm以上3mm以下、さらに好ましくは50μm以上1mm以下である。多孔質部材2を薄くし過ぎると、ハンドリングの際、たわみ又はよれ等の変形が生じ、多孔質部材2の一面に設けた膜3に亀裂等の欠陥が生じるだけでなく、破損する虞がある。また、多孔質部材2を厚くし過ぎると、水蒸気透過速度Vsが低下するだけでなく、熱伝導が低下するため、熱交換のロスが生じることが懸念される。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2の密度は、好ましくは0.8g/cm以下、さらに好ましくは0.7g/cm以下である。密度を高くし過ぎると、水蒸気の透過抵抗が高くなり、全熱の交換効率が低下する虞がある。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2の体積気孔率(細孔の体積率)は、好ましくは20%以上80%以下、より好ましくは25%以上70%以下である。多孔質部材2の体積気孔率が20%未満であると、水蒸気の透過抵抗が高くなり、全熱の交換効率が低下する虞がある。多孔質部材2の体積気孔率が80%を超えると、多孔質部材2の強度が低下して、多孔質部材2の一面に設けた膜3に亀裂が発生し、後述するウェットシールの形成を阻害する虞がある。なお、多孔質部材2の体積気孔率及び細孔の形状(平均孔径等)は、水銀圧入法により測定することができる。
第1、第2の実施形態の多孔質部材2の水蒸気透過速度Vsは、50g/h/m2/kPa以上、70g/h/m2/kPa以上、さらに120g/h/m/kPa以上であることが好ましい。多孔質部材2の水蒸気透過速度Vsは、次式(3)により表される。
多孔質部材2の水蒸気透過速度Vs(g/h/m/kPa)=(多孔質部材2を透過した水分量(g))/(多孔質部材2を水分が透過した時間(h))/(多孔質部材2の面積(m))/(多孔質部材2の両面における水蒸気圧差(kPa))…(3)
前記式(3)で求められる多孔質部材2の水蒸気透過速度Vsが低過ぎると、全熱交換素子用シート全体の水蒸気透過速度Vsが低下し、全熱の交換効率が低下する虞がある。
第1、第2の実施形態の全熱交換素子用シート1を構成する膜3について以下に詳述する。
<膜3>
膜3は、多孔質部材2の一方の面に設けられ、平均繊維径が1nm以上50nm以下の無機繊維を含む。
無機繊維は、耐熱性が高いため好ましい。親水性基、例えばOH基を有する無機繊維は、水蒸気が吸着しやすいため好ましい。
平均繊維径が1nm以上50nm以下の範囲の無機繊維を含む膜3は、その表面に後述するウェットシールを形成でき、水蒸気分離率を向上できる。
「平均繊維径が1nm以上50nm以下の無機繊維を含む」とは、当該無機繊維が膜の構成材料に対して80重量%以上含むことを意味する。無機繊維は、単一種の無機繊維であっても、又は複数種の無機繊維であってもよい。無機繊維に対する残り構成材料は、当該無機繊維以外のもの、例えば平均繊維径が1nm未満の無機繊維及び/又は平均繊維径が50nmを超える無機繊維(以下、別の無機繊維と称する)を用いることができる。別の無機繊維は、単一種である場合、無機繊維と同種又は異種のものを用いることができる。別の無機繊維は、複数種の無機繊維であってもよい。なお、膜3は平均繊維径が1nm以上50nm以下の無機繊維を90重量%以上含むことがより好ましい。
無機繊維の平均繊維長は、0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。無機繊維の平均繊維長は、より好ましくは1nm以上10nm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下である。平均繊維長を0.5μm未満にすると、繊維同士が絡み合う力が小さく、膜形成する際に亀裂が発生しやすくなる虞がある。平均繊維長が15μmを超えると、平均繊維径に対するアスペクト比が大きくなり過ぎて繊維が折れやすくなる。
無機繊維は、特に限定されないが、親水性材料であることが好ましい。親水性材料は、例えばアルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、及び鉄(Fe)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む酸化物又は水酸化物;アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むアルミノケイ酸塩;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及びストロンチウム(Sr)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む炭酸塩;Mg、Ca、及びSrからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むリン酸塩;Mg、Ca、Sr、及びAlからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むチタン酸塩;又はこれらの複合物若しくは混合物等を用いることができる。また、金属水酸化物を前駆体とし、これを加水分解等で結合させ、反応を途中で止めてOH基の数を制御することにより形成された金属化合物であってもよい。
具体的な親水性の無機繊維は、例えばアルミナ(ベーマイト又は擬ベーマイトを含む)、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、フェライト、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、チタン酸バリウム、又はその水和物等が挙げられるが、これらに限定されない。
無機繊維は、ベーマイト又は擬ベーマイトを含んでいることが特に好ましい。擬ベーマイトは、ベーマイトと結晶構造の一部が異なるアルミナ水和物を含む材料である。ベーマイト及び擬ベーマイトは、表面又は結晶の層間にOH基が多く存在するため、水蒸気を吸着しやすく、ウェットシールの形成に有利である。
次に、第1、第2の実施形態に係る全熱交換素子用シートの製造方法の一例を説明する。
最初に、有機繊維を含むシート状の多孔質部材を用意する。つづいて、シート状の多孔質部材の一方の面の上方に当該多孔質部材の幅より長いスリット状吐出部を有するノズルを配置させる。ノズルのスリット状吐出部から平均繊維径が1nm以上50nm以下の無機繊維を含む水系分散スラリーをシート状の多孔質部材の一方の面に向けて吐出し、スラリーを塗布する。その後、乾燥することにより多孔質部材の一方の面に膜を形成して全熱交換素子用シートを製造する。
以上説明した第1、第2の実施形態によれば、高い水蒸気透過速度と高い水蒸気の分離率を両立した全熱交換素子用シートを提供できる。
即ち、第1の実施形態に係る全熱交換素子用シート1の多孔質部材2は、有機繊維を含み、その一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の平均外挿接触角が100度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である。
このような多孔質部材2は、水の滴下時において高い撥水性を示し、さらに滴下後、5分間経過した後も、高い撥水性を維持する。その結果、多孔質部材2の一方の面に無機繊維を含む水系分散スラリーを塗布し、乾燥して膜を形成する場合、水系分散スラリーを滴下後、乾燥するまでの間、多孔質部材2の一方の面に留め、多孔質部材2の内部への侵入を抑えることができる。従って、高い水蒸気透過速度と高い水蒸気分離率とを両立した、多孔質部材と膜を備えた全熱交換用シートを得ることができる。
第1の実施形態の多孔質部材2は、その一方の面と反対側の他方の面においても、一方の面と同じ平均外挿接触角及び平均接触角を有し得る。このような多孔質部材のいずれの面に無機繊維を含む膜を設けても、前述した高い水蒸気透過速度と高い水蒸気分離率とを両立した、多孔質部材と膜を備えた全熱交換用シートを得ることができる。
また、第2の実施形態に係る全熱交換素子用シート1の多孔質部材2は、有機繊維を含み、その一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値が90度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である。
このような第2の実施形態に用いる多孔質部材2は、第1の実施形態と同様に水の滴下時において高い撥水性を示し、さらに滴下後、5分間経過した後も、高い撥水性を維持できるため、高い水蒸気透過速度と高い水蒸気分離率とを両立した、多孔質部材と膜を備えた全熱交換用シートを得ることができる。
第2の実施形態の多孔質部材2は、その一方の面と反対側の他方の面においても、一方の面と同じ平均外挿接触角及び平均接触角を有し得る。このような多孔質部材のいずれの面に無機繊維を含む膜を設けても、前述した高い水蒸気透過速度と高い水蒸気分離率とを両立した、多孔質部材と膜を備えた全熱交換用シートを得ることができる。
第1、第2の実施形態において、多孔質部材に含まれる有機繊維を平均繊維径1μm以上100μm以下にすれば、シート自体に柔軟性を付与しつつ、より高い水蒸気透過速度を実現できる。
さらに第1、第2の実施形態において、平均繊維径が1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜3は、無機繊維間に多くの微細な細孔を形成できる。その結果、外気等に含まれる水蒸気はケルビンの毛管凝縮理論により凝縮されて細孔内に凝縮水としてより多く満たされ、ウェットシールを形成できる。ウェットシールは、外気等に含まれる水蒸気を吸着して膜3から多孔質部材2に移動させることができる。ウェットシールは、水蒸気を除く気体(例えば空気)の透過を抑制できる。このような作用から水蒸気分離率をより一層向上できる。
第1、第2の実施形態に係る全熱交換素子用シートは、前述した優れた機能を有するため、水蒸気分離体として使用することができる。
また、第1、第2の実施形態に係る全熱交換素子用シートは、全熱交換素子以外にも適用できる。例えば、除湿シート、フィルタ、調湿素子等に用いることができる。また、具体的な応用は、除湿ローター素子、空調気化式加湿用素子、燃料電池の加湿用素子、除湿器用除湿素子、自動販売機などの吸水蒸散素子、冷却用吸水蒸散素子、デシカント空調の除湿ローター素子、車載用エアコン等が挙げられる。
次に、実施形態に係る全熱交換素子を詳述する。
全熱交換素子は、前述した全熱交換素子用シートを複数備えた構造を有する。図4は、実施形態に係る全熱交換素子を示す斜視図である。全熱交換素子10は、複数枚、例えば6枚の前述した全熱交換素子用シート1と、2枚(最下層及び最上層に配置される)の補強シート12a,12bと、複数枚(例えば7枚)の断面波形、例えば断面三角波形の流路部材13と備えている。
全熱交換素子用シート1は、その膜3が下面に位置するように互いに一定の間隔を積層されている。補強シート12a,12bは、積層体の最上層及び最下層に全熱交換素子用シート1に対して一定の間隔をあけて配置されている。断面三角波形の流路部材13は、補強シート12a、6枚の全熱交換素子用シート1及び補強シート12bの間に交互に例えば90°の角度で交差するように介在して固定されている。流路部材13は、特に限定されないが、例えばパルプを主成分とする紙製シートを波形に加工したもの、又はポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の汎用樹脂、或いはステンレス等の金属から作ることができる。第1の直線状流路41は、全熱交換素子用シート1の膜3と断面三角波形の流路部材13の断面三角波で囲まれて形成されている。第2の直線状流路42は、全熱交換素子用シート1の多孔質部材2と断面三角波形の流路部材13の断面三角波で囲まれて形成されている。第1、第2の直線状流路41,42は、全熱交換素子用シート1を挟んで例えば90°の角度で交差するように配置されている。
次に、実施形態に係る全熱交換器を詳述する。
全熱交換器は、前述した全熱交換素子を備えている。図5は、夏場の全熱交換を説明するための実施形態に係る全熱交換器を示す概略図である。すなわち、全熱交換器100は筐体101を備えている。筐体101内には、前述した図4に示す全熱交換素子10が配置されている。
筐体101内は、第1〜第4の区画室104a〜104dが全熱交換素子10を囲むように横方向の仕切壁102及び縦方向の隔壁103で区画されている。第1〜第4の区画室104a〜104dは全熱交換素子10の第1、第2の直線状流路(図示せず)の開口端とそれぞれ対向する箇所において、開放されている。第1〜第4の区画室104a〜104dは、それぞれ筐体101の左上部、右上部、左下部及び右下部に配置されている。
第1、第3の区画室104a,104cがそれぞれ位置する筐体101の左側壁105aには、それぞれ第1、第3の開口部106a,106cが設けられている。第2、第4の区画室104b,104dがそれぞれ位置する筐体101の右側壁105bには、それぞれ第2、第4の開口部106b,106dが設けられている。第3の区画室104c内の第3の開口部106cが位置する左側壁105aには、第1のファン107aが配置されている。第4の区画室104d内の第4の開口部106cが位置する右側壁105bには、第2のファン107bが配置されている。
このような全熱交換素子10を備えた全熱交換器100は、次のような操作により全熱交換がなされる。
<夏場の高温多湿の時期の全熱交換>
第2のファン107bを駆動することにより、室外から矢印に示す外気(還気よりも高温多湿)110aは第4の開口部106d、第4の区画室104dを通して全熱交換素子10の複数の第1の直線状流路(図示せず)内に図1に示す全熱交換素子用シート1の膜3の表面31に接触して流通し、さらに第1の区画室104a、第1の開口部106aを通して矢印に示す吸気110bとして室内に導入される。同時に、第1のファン107aを駆動することにより、室内から矢印に示す還気110cは第3の開口部106c、第3の区画室104cを通して全熱交換素子10の複数の第2の直線状流路(図示せず)内に図1に示す全熱交換素子用シート1の多孔質部材2の表面21に接触して流通し、さらに第2の区画室104b、第2の開口部106bを通して矢印に示す排気110dとして室外に排出される。
このような全熱交換素子10において、外気110aは全熱交換素子10の第1の直線状流路(図示せず)に導入されて、図1に示す全熱交換素子用シート1の膜3の表面31に接触して流通され、還気110cは全熱交換素子用シート1を挟んで第1の直線状流路と交差する第2の直線状流路(図示せず)に導入されて、図1に示す全熱交換素子用シート1の多孔質部材2の表面21に接触して流通される。このとき、外気110aは還気110cに比べて高温多湿であるため、全熱交換素子10において外気110aに含まれる水蒸気及び熱は全熱交換素子用シート1を通して還気110c側に移動される。
<冬場の低温低湿の時期の全熱交換>
図5を用いて説明した夏場の全熱交換に対して、冬場も外気、還気を同様な流路を流通させて全熱交換を行うことができる。また、冬場の全熱交換は、外気及び還気の導入流路、並びに第1、第2のファンによる送気方向をそれぞれ図6に示すように切り替えてもよい。図6は、冬場の全熱交換を説明するための実施形態に係る全熱交換器を示す概略図である。
すなわち、第2のファン107bを駆動することにより、室内から矢印に示す還気110cは第1の開口部106a、第1の区画室104aを通して全熱交換素子10の複数の第1の直線状流路(図示せず)内に図1に示す全熱交換素子用シート1の膜3の表面31に接触して流通し、さらに第4の区画室104d、第4の開口部106dを通して矢印に示す排気110dとして室外に排出される。同時に、第1のファン107aを駆動することにより、室外から矢印に示す外気(還気よりも低温低湿)110aは第2の開口部106b、第2の区画室104bを通して全熱交換素子10の第2の直線状流路(図示せず)内に多孔質部材2の表面21に接触して流通し、さらに第3の区画室104c,第3の開口部106cを通して矢印に示す吸気110bとして室内に導入される。
このような全熱交換素子10において、還気110cは第1の直線状流路(図示せず)に導入されて、図1に示す全熱交換素子用シート1の膜3の表面31に接触して流通され、外気110aは全熱交換素子用シート1を挟んで第1の直線状流路と交差する第2の直線状流路(図示せず)に導入されて、図1に示す全熱交換素子用シート1の多孔質部材2の表面21に接触して流通される。このとき、外気110aが還気110cに比べて低温低湿であるため、全熱交換素子10において還気110cに含まれる水蒸気及び熱は全熱交換素子用シート1を通して外気110a側に移動される。
従って、全熱交換器100に組み込まれた全熱交換素子10は水蒸気透過速度Vsと分離率αの両方が高い全熱交換用素子1を備えるため、外気と還気との間で全熱を効率的に交換することができる。
なお、流路部材13の断面波形は、断面三角波形に限らず、断面矩形波形、断面台形波形であってもよい。断面波形は、その山及び谷の形状が略同一、又は同一であることが好ましい。
以下、実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
最初に、平均繊維径20μmのパルプと撥水性を付与するためにサイズ剤とからなる厚さ100μmのシート状の多孔質部材を用意した。つづいて、シート状の多孔質部材の一方の面に当該多孔質部材の幅より広いスリット状吐出部を有するノズルを配置した。ノズルのスリット状吐出部から平均繊維直径が4nm、平均繊維長さが1μmの擬ベーマイトナノファイバを含む水系分散スラリーを多孔質部材の一方の面に吐出して塗布した。その後、乾燥することにより多孔質部材の一方の面に10g/mの膜を形成して全熱交換素子用シートを製造した。
(実施例2)
平均繊維径20μmのナイロンからなる厚さ80μmのシート状の多孔質部材を用意した。つづいて、シート状の多孔質部材の一方の面に当該多孔質部材の幅より広いスリット状吐出部を有するノズルを配置した。ノズルのスリット状吐出部から平均繊維直径が4nm、平均繊維長さが1μmの擬ベーマイトナノファイバを含む水系分散スラリーを多孔質部材の一方の面に吐出して塗布した。その後、乾燥することにより多孔質部材の一方の面に10g/mの膜を形成して全熱交換素子用シートを製造した。
(実施例3)
平均繊維径15μmのパルプと、撥水性を付与するためのサイズ剤と、表面処理剤とからなる厚さ110μmのシート状の多孔質部材を用意した。つづいて、シート状の多孔質部材の一方の面に当該多孔質部材の幅より広いスリット状吐出部を有するノズルを配置した。ノズルのスリット状吐出部から平均繊維直径が4nm、平均繊維長さが1μmの擬ベーマイトナノファイバを含む水系分散スラリーを多孔質部材の一方の面に吐出して塗布した。その後、乾燥することにより多孔質部材の一方の面に厚さ10g/mの膜を形成して全熱交換素子用シートを製造した。
(比較例1)
平均繊維径20μmのパルプのみからなる厚さ100μmのシート状の多孔質部材を用意した。つづいて、シート状の多孔質部材の一方の面に当該多孔質部材の幅より広いスリット状吐出部を有するノズルを配置した。ノズルのスリット状吐出部から平均繊維直径が4nm、平均繊維長さが1μmの擬ベーマイトナノファイバを含む水系分散スラリーを多孔質部材の一方の面に吐出して塗布した。その後、乾燥することにより多孔質部材の一方の面に厚さ10g/mの膜を形成して全熱交換素子用シートを製造した。
(比較例2)
平均繊維径30μmのパルプの不織布からなる厚さ90μmの多孔質部材を用意した。つづいて、シート状の多孔質部材の一方の面に当該多孔質部材の幅より広いスリット状吐出部を有するノズルを配置した。ノズルのスリット状吐出部から平均繊維直径が4nm、平均繊維長さが1μmの擬ベーマイトナノファイバを含む水系分散スラリーを多孔質部材の一方の面に吐出して塗布した。その後、乾燥することにより多孔質部材の一方の面に厚さ10g/mの膜を形成して全熱交換素子用シートを製造した。
実施例1〜3及び比較例1〜2で用いた多孔質部材の一方の面の接触角を以下に示す液滴法により測定した。
1)用意した多孔質部材の一方の面に5μLの水滴を滴下した。
2)滴下した瞬間から、10秒間後、70秒間後、130秒間後、…610秒間まで、60秒間毎に11点の箇所で接触角を測定した。
3)時間に対する接触角の関係(横軸x:時間、縦軸y:接触角)をグラフ化し、最小二乗法により線形近似を行った。その際の切片、即ちx=0の際のyの値、を滴下した瞬間の接触角、つまり外挿接触角とした。
4)前記1)〜3)の操作を一つの多孔質部材に対して異なる3点の場所で行った。
5)前記4)で得られた3点の値の平均値を平均外挿接触角とした。また、得られた3点の最低値を外挿接触角の最低値とした。さらに、滴下後5分間経過した後における平均接触角を5分間後の接触角とした。
得られた実施例1〜3及び比較例1,2の全熱交換素子用シートの水蒸気透過速度Vs及び水蒸気分離率αを測定した。
最初に、全熱交換素子用シートの膜表面に断面三角波形の流路部材を接して配置し、当該膜と流路部材の各波とで囲まれた三角柱をなす複数の第1の直線状流路を形成した。つづいて、全熱交換素子用シートの多孔質部材表面に断面三角波形の流路部材を接して配置し、当該多孔質部材と流路部材の各波とで囲まれた三角柱をなす複数の第2の直線状流路を形成することにより評価用全熱交換セルを組立てた。この全熱交換セルの第1、第2の直線状流路は、互いに対向するとともに、平行になっている。また、第1、第2の直線状流路のピッチ、高さは既存の全熱変換素子に準じる形状とした。
前記評価用全熱交換セルの水蒸気透過速度Vs及び水蒸気分離率αを以下の方法により測定した。
1.水蒸気透過速度Vsの測定方法
全熱交換セルを恒温恒湿槽内に設置し、その第1の直線状流路の一端に高湿側ダクトを接続した。第1の直線状流路の高湿側ダクトの接続端と反対側に位置する第2の直線状流路の一端に低湿側ダクトを接続した。高湿側ダクトにはファンを介装し、低湿側ダクトには熱交換器が介装した。
ファンの駆動により、高湿空気を第1の直線状流路に高湿ダクトを通して供給した。一方、恒温恒湿槽の外部から露点−110℃の窒素を第2の直線状流路に低湿側ダクトを通して供給した。当該窒素が低湿側ダクトを流通する間に、熱交換器で熱交換されて等温にし、乾燥窒素とすることにより、当該乾燥窒素を第2の直線状流路に供給した。すなわち、高湿空気と乾燥窒素は対向流として全熱交換セルの第1、第2の直線状流路にそれぞれ供給した。このとき、第1、第2の直線状流路での通過風速は全熱交換素子の評価時と同一になるようにした。
低湿側ダクトの出口において、排気空気の温度、湿度、酸素濃度を測定し、水蒸気透過速度を算出した。
2.水蒸気の分離率α
本来、JIS規格に準じて二酸化炭素の透過量を把握する必要があるが、二酸化炭素と酸素では窒素中のガス拡散係数がほぼ同じであることから、本測定では低湿側ダクトの出口からの酸素の透過(濃度)をCOの透過の代わりとし、水蒸気の分離率を算出した。
また、セルのピッチ、流路高さは既存の全熱交素子に準じる形状とし、通過風速が全熱交素子の評価時と同一になるようにした。高湿空気と低湿空気は対向流で供給した。
実施例1〜3及び比較例1,2における多孔質部材の一方の面の接触角と、全熱交換セルの水蒸気透過速度Vs及び分離率αの値とを下記表1に示す。
Figure 2020038024
前記表1から明らかなように、実施例1〜3で用いた多孔質部材の一方の面は高い撥水性を示すのに対し、比較例1,2で用いた多孔質部材はその一方の面に滴下した水が染み込み、撥水性が劣ることが分かった。特に、比較例1で用いた多孔質部材は水を滴下した瞬間に染み込み、接触角が0度であった。
また、実施例1〜3は多孔質部材の一方の面にベーマイトナノファイバを含む水系分散スラリーを塗布、乾燥して全熱交換素子用シートを製造する過程において、多孔質部材へのスラリーの染み込みが抑えられ、亀裂又はピンホールのない薄い膜を形成できた。
これに対し、比較例1は同様な全熱交換素子用シートを製造する過程において、スラリーが多孔質部材の他方の面(裏面)に抜け、目視で膜形成がなされていないことを確認した。比較例2は同様なに全熱交換素子用シートを製造する過程において、スラリーが多孔質部材の他方の面(裏面)に抜けることが確認されたが、多孔質部材の他方の面に膜形成がなされていた。
さらに、実施例1〜3の全熱交換素子用シートを組み込んだ評価用全熱交換セルは、水蒸気透過速度Vsが94g/h/m/kPa以上と高く、その上、分離率αが比較例1、2の全熱交換素子用シートを組み込んだ評価用全熱交換セルに比べてはるかに高い値を示すことがわかる。このことから、実施例1〜3の全熱交換素子用シートは比較例1、2の全熱交換素子用シートよりも全熱の交換効率が高いことがわかる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…全熱交換素子用シート、2…多孔質部材、3…膜、10…全熱交換素子、41…第1の直線状流路、42…第2の直線状流路、100…全熱交換器、110a…外気、110b…吸気、110c…還気、110d…排気。

Claims (9)

  1. 有機繊維を含む多孔質部材と、前記多孔質部材の一方の面に設けられた平均繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜とを備えた全熱交換素子用シートであって、
    前記多孔質部材の一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の平均外挿接触角が100度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である全熱交換素子用シート。
  2. 前記多孔質部材の一方の面と反対側の他方の面は、前記一方の面と同じ前記平均外挿接触角及び前記平均接触角を有する請求項1に記載の全熱交換素子用シート。
  3. 有機繊維を含む多孔質部材と、前記多孔質部材の一方の面に設けられた平均繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜とを備えた全熱交換素子用シートであって、
    前記多孔質部材の一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値が90度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である全熱交換素子用シート。
  4. 前記多孔質部材の一方の面と反対側の他方の面は、前記一方の面と同じ前記3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値及び前記平均接触角を有する請求項3に記載の全熱交換素子用シート。
  5. 前記無機繊維は、ベーマイト又は擬ベーマイトを含む請求項1〜4いずれか1項に記載の全熱交換素子用シート。
  6. 請求項1〜5いずれか1項に記載の全熱交換素子用シートを備える全熱交換素子。
  7. 請求項6に記載の全熱交換素子を備える全熱交換器。
  8. 有機繊維を含む多孔質部材と、前記多孔質部材の一方の面に設けられた平均繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜とを備えた水蒸気分離体であって、
    前記多孔質部材の一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の平均外挿接触角が100度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である水蒸気分離体。
  9. 有機繊維を含む多孔質部材と、前記多孔質部材の一方の面に設けられた平均繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜とを備えた水蒸気分離体であって、
    前記多孔質部材の一方の面に水を滴下した場合に、接触角の経時変化から外挿した滴下時の外挿接触角における、3箇所以上の外挿接触角のうちの最低値が90度以上180度未満であり、滴下後5分間経過した後の3箇所以上の平均接触角が40度以上180度未満である水蒸気分離体。
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