JP2020033659A - 含水塩又は含水塩の熱分解物を含むポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット及びその製造方法 - Google Patents

含水塩又は含水塩の熱分解物を含むポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット及びその製造方法 Download PDF

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華子 浅井
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幸治 中根
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真一 前田
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Takuma Nagahama
宅磨 長▲濱▼
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Abstract

【課題】β晶化率が高く、ウェアラブルデバイス用途として好適なPVDFマット及びその製造方法を提供する。【解決手段】ポリフッ化ビニリデン及び含水塩又は含水塩の熱分解物を含むナノファイバーからなるポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット。【選択図】なし

Description

本発明は、含水塩又は含水塩の熱分解物を含むポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット及びその製造方法に関する。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)には、α型、β型及びγ型の3種類の結晶構造が存在する。これらのPVDFの結晶多形の中でも、β型の結晶(β晶)は、単位格子当たり最大の自発分極を有し、高い強誘電性及び圧電特性を示すことが知られている(特許文献1)。
硝酸アルミニウム9水和物や硝酸マグネシウム6水和物を含むPVDF溶液を用いて基板上にPVDF膜を形成することで、PVDFのβ型結晶化率(β晶化率)が向上することが示されている(特許文献1)。しかしながら、PVDF膜を基板上に作製する場合、硝酸アルミニウム9水和物等の含水塩を含むPVDF膜用の溶液を調製する工程、溶液をコーティングする工程、PVDF膜を高温にて乾燥及び結晶化させる工程、並びに更なる高温にてアニーリングする工程が必要であり、特に、高温処理が2回必要なことが課題であった。
薄膜材料を用いたウェアラブルデバイスが注目を集めている。ウェアラブルデバイスは、人の肌に触れることから、ガス及び水分の透過性が高い部材が求められている。従来のシート(フィルムや膜)は、ガス及び水分の透過性が低く、肌に長時間装着すると蒸れにより不快感や違和感を覚えることが多かった。
特開2010−45059号公報
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、β晶化率が高く、ウェアラブルデバイス用途として好適なPVDFマット及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、PVDFと硝酸アルミニウム9水和物等の含水塩とを含む樹脂組成物を用いてエレクトロスピニングすることで、高温処理をしなくても又は1回の熱処理で、β晶化率の高いPVDFナノファイバーマットを得ることができ、得られるPVDFナノファイバーマットが、通気性にも優れ、ウェアラブルデバイス用途として好適であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記含水塩又は含水塩の熱分解物を含むPVDFナノファイバーマット及びその製造方法を提供する。
1.PVDFと含水塩又は含水塩の熱分解物とを含むナノファイバーからなるPVDFナノファイバーマット。
2.前記PVDFが、β型結晶構造を含むものである1のPVDFナノファイバーマット。
3.前記PVDFのβ型結晶化率が、70質量%以上である2のPVDFナノファイバーマット。
4.前記含水塩が、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種である1〜3のいずれかのPVDFナノファイバーマット。
5.平均繊維径が、0.1〜10μmである1〜4のいずれかのPVDFナノファイバーマット。
6.水蒸気透過度が、3,000g/(m2・24h)以上である1〜5のいずれかのPVDFナノファイバーマット。
7.PVDF及び含水塩を含む樹脂組成物をエレクトロスピニング法で紡糸する工程を含むPVDFナノファイバーマットの製造方法。
8.前記紡糸工程後、110〜170℃で加熱処理する工程を含む7のPVDFナノファイバーマットの製造方法。
9.前記含水塩が、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種である7又は8のPVDFナノファイバーマットの製造方法。
10.前記樹脂組成物が、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチルホスファート、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、イソホロン、メントン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、トリクロロエタン、クロロジフルオロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、酢酸エチル、酢酸、ピリジン、酢酸ブチル、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、スルホラン及び1,4−ジオキサンから選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む7〜9のいずれかのPVDFナノファイバーマットの製造方法。
エレクトロスピニング法ではその過程において溶媒が揮発することから、PVDF膜を形成する方法におけるPVDF膜用の溶液をコーティングする工程及び高温にて乾燥及び結晶化させる工程に相当する工程を同時に行うことができる。よって、PVDF膜を形成する方法よりも簡便な方法でPVDFナノファイバーマットを製造することができる。
本発明のPVDFナノファイバーマットは、しなやかな肌さわりで、通気性が高く、更には美しい光沢を有しており、従来のシート(フィルムや膜)に比べてウェアラブルデバイスに適合した構造体である。本発明のPVDFナノファイバーマットは、少ない工程数(熱処理回数)で作製可能なだけでなく、β晶化率が高いため優れた強誘電及び圧電特性を有し、ウェアラブルデバイスに好適な触り心地の良さを持っている。
[PVDFナノファイバーマット]
本発明のPVDFナノファイバーマットは、PVDFと含水塩又は含水塩の熱分解物とを含むナノファイバーからなるものである。
本発明において用いるPVDFは、その重量平均分子量(Mw)が、150,000〜3,000,000であるものが好ましく、150,000〜900,000であるものがより好ましい。
前記含水塩は、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらのうち、硝酸塩及び塩酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
硝酸塩としては、硝酸アルミニウムn水和物、硝酸マグネシウムn水和物、硝酸カルシウムn水和物、硝酸スカンジウムn水和物、硝酸クロムn水和物、硝酸マンガンn水和物、硝酸鉄n水和物、硝酸コバルトn水和物、硝酸ニッケルn水和物、硝酸銅n水和物、硝酸亜鉛n水和物、硝酸ガリウムn水和物、硝酸ストロンチウムn水和物、硝酸イットリウムn水和物、硝酸ジルコニウムn水和物、硝酸銀n水和物、硝酸インジウムn水和物、硝酸錫n水和物、硝酸バリウムn水和物、硝酸鉛n水和物、硝酸ビスマスn水和物、硝酸ランタンn水和物、硝酸セリウムn水和物等が挙げられる(nは、自然数である。)。これらのうち、硝酸アルミニウムn水和物、硝酸マグネシウムn水和物、硝酸クロムn水和物が好ましい。
塩酸塩としては、塩化マグネシウムn水和物、塩化アルミニウムn水和物、塩化カルシウムn水和物、塩化マンガンn水和物、塩化クロムn水和物、塩化鉄n水和物、塩化コバルトn水和物、塩化銅n水和物、塩化亜鉛n水和物、塩化ストロンチウムn水和物、塩化イットリウムn水和物、塩化ジルコニウムn水和物、塩化インジウムn水和物、塩化スズn水和物、塩化アンチモンn水和物、塩化バリウムn水和物、塩化セリウムn水和物、塩化サマリウムn水和物、塩化ガドリニウムn水和物、塩化ユウロピウムn水和物等が挙げられる(nは、自然数である。)。これらのうち、塩化アルミニウムn水和物が好ましい。
前記ナノファイバーは、その平均繊維径が、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましい。平均繊維径が前記範囲であれば、ビーズの発生が抑制されたナノファイバーマットとなる。なお、本発明において平均繊維径は、PVDFナノファイバーの走査型顕微鏡写真から、画像解析ソフトを用いて求めた値である。
本発明のPVDFナノファイバーマットにおけるPVDFの結晶化度は、全PVDF中、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がより一層好ましい。結晶化度が50質量%以上であれば、十分な強誘電性及び圧電特性が得られる。なお、結晶化度の上限は100質量%であるが、通常60質量%程度である。
本発明のPVDFナノファイバーマットにおけるPVDFのβ晶化率は、結晶化したPVDF中、50質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、75質量%以上がより一層好ましい。β晶化率が75質量%以上であれば、十分な強誘電性及び圧電特性が得られる。なお、β晶化率の上限は100質量%であるが、通常90質量%程度である。
本発明のPVDFナノファイバーマットの坪量は、2〜20g/m2が好ましく、3〜15g/m2がより好ましい。その厚さは、1〜300μmが好ましく、3〜100μmがより好ましい。また、その嵩密度は、0.7〜2g/cm3が好ましい。
本発明のPVDFナノファイバーマットは、その水蒸気透過度が、3,000g/(m2・24h)以上であるものが好ましく、7,000g/(m2・24h)以上であるものがより好ましい。水蒸気透過度が前記範囲であれば、通気性が良く、ウェアラブルデバイス用途として好適なつけ心地を有する。なお、その上限は特に限定されないが、通常900,000g/(m2・24h)程度である。
[PVDFナノファイバーマットの製造方法]
本発明のPVDFナノファイバーマットの製造方法は、PVDF及び前述した含水塩を含む樹脂組成物をエレクトロスピニング法で紡糸する工程を含むものである。
前記樹脂組成物中、PVDFの濃度は、20〜40質量%が好ましく、22〜35質量%がより好ましく、25〜30質量%がより一層好ましい。PVDFの濃度が前記範囲であれば、ビーズの発生が抑制されたナノファイバーマットを得ることができる。
また、前記樹脂組成物中の含水塩の含有量は、PVDF100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部がより一層好ましい。含水塩の濃度が前記範囲であれば、高いβ晶化率が得られ、圧電特性や絶縁性が低下するおそれがない。
前記樹脂組成物に使用し得る溶媒としては、PVDF及び前記含水塩を溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチルホスファート、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、イソホロン、メントン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、トリクロロエタン、クロロジフルオロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、酢酸エチル、酢酸、ピリジン、酢酸ブチル、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、スルホラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらのうち、DMF、アセトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン等が好ましい。前記溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
エレクトロスピニング法は、市販の装置で行うことができる。紡糸条件は適宜選択され、例えば、紡糸距離(金属ノズル−ファイバー捕集コレクター間距離)が5〜30cm、金属ノズルとファイバー捕集コレクタータ間の印加電圧が5〜50kV、紡糸液射出量が0.1〜5.0mL/時間とすることができる。ファイバー捕集コレクターは、回転コレクターや平板状のものを用いることができる。回転コレクターを用いると、ドラムを高速回転させることにより金属ノズルから射出されたファイバーがドラムに巻き取られ、ファイバーが一定方向に配向したマットを得ることができる。回転コレクターの回転数は、例えば50〜5,000回転/分で使用される。平板状ファイバー捕集コレクターを用いると、無配向なファイバーからなる不織布状のマットが得られる。
前記エレクトロスピニング工程後、必要に応じて得られたナノファイバーマットを加熱処理してもよい。このときの加熱温度は、110〜170℃が好ましく、110〜150℃がより好ましい。また、加熱時間は、1〜240分間が好ましく、5〜30分間がより好ましい。この加熱処理によって、前記含水塩が分解され、絶縁性が向上し、PVDFナノファイバーマットの圧電特性を向上させることができる。
以下、調製例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。なお、使用した装置は、以下のとおりである。また、ナノファイバーの平均繊維径は、ナノファイバーの走査型顕微鏡写真から画像解析ソフト「Image J」を用いて、繊維径を10箇所測定したものの平均値である。
(1)エレクトロスピニング法:インフュージョンポンプ(シリンジポンプ):(有)メルクエスト製FP-1000、高圧電源:松定プレシジョン(株)製HR-40R0.75
(2)走査型電子顕微鏡:(株)キーエンス製VE-9800、(株)日立ハイテクノロジーズ製Miniscope TM3000
(3)示差走査熱量測定(DSC):(株)島津製作所製 DSC−60
(4)FT−IR:(株)島津製作所製IRAffinity-1、試料室一体型1回反射型全反射測定装置:MIRacle 10
[1]樹脂組成物の調製
[調製例1]樹脂組成物1の調製
PVDF(アルドリッチ社製、Mw=270,000)30gをDMF70gに加え、均一になるまで攪拌した後、硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO3)3・9H2O)0.6gを加え、均一になるまで攪拌して樹脂組成物1を調製した。
[調製例2]樹脂組成物2の調製
PVDF(アルドリッチ社製、Mw=270,000)30gをDMF70gに加え、均一になるまで攪拌して樹脂組成物2を調製した。
[調製例3]樹脂組成物3の調製
PVDF(アルドリッチ社製、Mw=270,000)10gをDMF45g及びアセトン45gの混合溶媒に加え、均一になるまで攪拌した後、硝酸アルミニウム9水和物1gを加え、均一になるまで攪拌して樹脂組成物3を調製した。
[調製例4]樹脂組成物4の調製
PVDF(アルドリッチ社製、Mw=270,000)10gをDMF45g及びアセトン45gの混合溶媒に加え、均一になるまで攪拌して樹脂組成物4を調製した。
[調製例5]樹脂組成物5の調製
PVDF(アルドリッチ社製、Mw=270,000)10gをDMF95g及びアセトン95gの混合溶媒に加え、均一になるまで攪拌して樹脂組成物5を調製した。
[2]PVDFナノファイバーマットの製造
[実施例1]
樹脂組成物1を用いて、エレクトロスピニング法によりPVDFと硝酸アルミニウム9水和物とからなるPVDFナノファイバーマットを得た。エレクトロスピニングは、印加電圧21V、紡糸距離20cm、紡糸速度0.5mL/h、紡糸量2mLの条件で行った。また、ファイバー捕集のコレクターとして回転速度2,000rpmの回転コレクター(直径18cm)を使用した。ナノファイバーの平均繊維径は、1.39μmであった。
[実施例2]
樹脂組成物1を用いて、エレクトロスピニング法によりPVDFと硝酸アルミニウム9水和物からなるファイバーマットを得た。エレクトロスピニングは、実施例1と同じ条件で行った。次に、得られたマットを140℃で10分間熱処理し、PVDFと硝酸アルミニウム9水和物の分解物とからなるPVDFナノファイバーマットを得た。ナノファイバーの平均繊維径は、1.52μmであった。
[比較例1]
樹脂組成物2を用いて、エレクトロスピニング法によりPVDFからなるナノファイバーマットを得た。エレクトロスピニングは、実施例1と同じ条件で行った。ナノファイバーの平均繊維径は、1.22μmであった。
[比較例2]
樹脂組成物3を用いてスピンコート法によりシリコン基板上に塗膜を形成した後、90℃の熱処理によって、乾燥と結晶化を行い、PVDFと硝酸アルミニウム9水和物とからなる膜を形成した。得られた膜に対し、更に140℃で10分間の熱処理を行い、PVDFと硝酸アルミニウム9水和物の分解物からなる膜厚1μmの膜を得た。
[比較例3]
樹脂組成物3を用いてスピンコート法によりシリコン基板上に塗膜を形成した後、90℃の熱処理によって乾燥と結晶化を行い、PVDFと硝酸アルミニウム9水和物とからなる膜厚1μmの膜を得た。
[比較例4]
樹脂組成物3を用いてスピンコート法によりシリコン基板上に塗膜を形成した後、140℃の熱処理を行い、PVDFと硝酸アルミニウム9水和物の分解物とからなる膜厚1μmの膜を得た。
[比較例5]
樹脂組成物4を用いてスピンコート法によりシリコン基板上に塗膜を形成した後、90℃の熱処理によって乾燥と結晶化を行い、更に140℃で10分間の熱処理を行って、PVDFからなる膜厚1μmの膜を得た。
[比較例6]
樹脂組成物5を用いてドクターブレード法(スリット200μm、幅50mm)によりガラス基板上に塗膜を形成した後、80℃の熱処理によって乾燥と結晶化を行いPVDFからなる膜厚2.1μmの膜を形成した。
[3]PVDFナノファイバーマットの評価
(1)PVDFの結晶化度の評価
PVDFの結晶化度は、ナノファイバーマット又は膜を5mgになるように切り出し、示差走査熱量計((株)島津製作所製DSC-60)を用い、温度範囲:30〜250℃、昇温速度:10℃/min、空気雰囲気下で行った。測定結果の吸熱ピークより測定対象物のエンタルピー変化ΔHを算出し、次の式を用い結晶化度を求めた。ここで、純粋なPVDF結晶の融解エンタルピー:ΔH*=104.7J/gを用いた。
結晶化度=ΔH/ΔH*×100[%]
(2)PVDFのβ晶化率の評価
PVDFのβ晶化率は、ナノファイバーマットについては、フーリエ変換赤外分光光度計((株)島津製作所製IRAffinity-1)を用い、測定範囲:700〜4000cm-1、スキャン回数:45回、分解能:4cm-1の条件下で測定対象物の厚み方向の吸光度を測定し、次の式を用いてβ晶化率(F(β))を求めた。ここで、
α:761cm-1での吸光度
β:840cm-1での吸光度
α:761cm-1での吸光係数(6.1x104 cm2 mol-1
β:840cm-1での吸光係数(7.7x104 cm2 mol-1
を用いた。
Figure 2020033659
膜については、膜をシリコン基板から剥がすことなく、フーリエ変換赤外分光光度計(Tサーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製Nicolet iS5)を用い、測定範囲:700〜4000cm-1、スキャン回数:32回、分解能:8cm-1の条件下で測定対象物の厚み方向の吸光度を測定し、前記式を用いてβ晶化率(F(β))を求めた。
(3)水蒸気透過度の評価
水蒸気透過度は、40℃、90%RHの条件で、単位時間に単位面積の試験片を通過する水蒸気の質量を測定することで評価した。具体的には直径30mmの穴開き容器に吸湿剤として塩化カルシウムを4.1g入れ、ファイバーマット又は膜を容器の穴を完全に塞ぐように設置した。40℃、90%RHの環境に静置した後、容器の質量変化を精密天秤で計量することで、単位時間にファイバーマットもしくは膜を透過し塩化カルシウムに吸湿された水蒸気の質量を求めた。静置時間は、質量の増加量が塩化カルシウムの質量の10%を超えない条件にした。
(4)圧電特性の測定
圧電特性は、半径22mmの円形電極間を覆うようにナノファイバーマット試料を挟み込み、1Hz、0.14MPaの周期的な圧力を試料にかけ、その時に発生した電圧を測定することで評価した。圧力を印加した際に発生した最大電圧を10回測定し、平均値を算出した。
結果を表1に示す。
Figure 2020033659
樹脂組成物1を用いてエレクトロスピニング法により形成したPVDFナノファイバーマットは、高いβ晶化率と高い結晶化度を有していた。更に、140℃の熱処理を行った後でも高い結晶化度及びβ晶化率を保っていた。また、エレクトロスピニング後に熱処理を1回のみ行うことで硝酸アルミニウム9水和物が分解し、優れた絶縁性を有するナノファイバーマットが得られた。
更に、硝酸アルミニウム9水和物又は硝酸アルミニウム9水和物の分解物を含むPVDFナノファイバーマットは、しなやかで、水蒸気透過性が高く、美しい光沢を有していた。特に水蒸気透過性が高いことから、肌に装着した場合も不快感を覚えることはなかった。
樹脂組成物2を用いてエレクトロスピニング法により形成したPVDFナノファイバーマットは、結晶化度及びβ晶化率がともに低かった。
樹脂組成物3を用いてスピンコート法により形成した膜は、90℃の熱処理のみでは、硝酸アルミニウム9水和物が残存している影響によって絶縁性が悪化した。一方、140℃の熱処理のみでは、溶媒の乾燥が急激なためβ晶化率が低くなった。従来のスピンコートにより形成した膜は、乾燥と結晶化のための熱処理と、硝酸アルミニウム9水和物を分解するための2回の熱処理が必須であることが確認できた。更に、前記膜は、水蒸気透過性が悪いことから、肌に装着することでムレの原因になり、不快感を生じさせることが想定される。
樹脂組成物4を用いてスピンコート法により形成した膜は、2回の熱処理を行った場合でも結晶化度及びβ晶化率がともに低かった。
樹脂組成物5を用いてキャスト法により形成した膜は、水蒸気透過度が低かった。肌に装着することでムレの原因になり、不快感を覚える生じさせることが想定される。スピンコート法で成膜した膜についても、同様に蒸れの原因になり、不快感を覚える生じさせることが想定される。

Claims (10)

  1. ポリフッ化ビニリデンと含水塩又は含水塩の熱分解物とを含むナノファイバーからなるポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット。
  2. 前記ポリフッ化ビニリデンが、β型結晶構造を含むものである請求項1記載のポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット。
  3. 前記ポリフッ化ビニリデンのβ型結晶化率が、70質量%以上である請求項2記載のポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット。
  4. 前記含水塩が、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載のポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット。
  5. 平均繊維径が、0.1〜10μmである請求項1〜4のいずれか1項記載のポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット。
  6. 水蒸気透過度が、3,000g/(m2・24h)以上である請求項1〜5のいずれか1項記載のポリフッ化ビニリデンナノファイバーマット。
  7. ポリフッ化ビニリデン及び含水塩を含む樹脂組成物をエレクトロスピニング法で紡糸する工程を含むポリフッ化ビニリデンナノファイバーマットの製造方法。
  8. 前記紡糸工程後、110〜170℃で加熱処理する工程を含む請求項7記載のポリフッ化ビニリデンナノファイバーマットの製造方法。
  9. 前記含水塩が、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項7又は8記載のポリフッ化ビニリデンナノファイバーマットの製造方法。
  10. 前記樹脂組成物が、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチルホスファート、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、イソホロン、メントン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、トリクロロエタン、クロロジフルオロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、酢酸エチル、酢酸、ピリジン、酢酸ブチル、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、スルホラン及び1,4−ジオキサンから選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む請求項7〜9のいずれか1項記載のポリフッ化ビニリデンナノファイバーマットの製造方法。
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