以下に、本発明の実施の形態にかかる駆動回路および磁気粒子イメージング装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるMPI装置100の要部概略図である。MPI装置100は、交流磁場を生成する第1のコイルである交流コイル2と、直流磁場を生成する第2のコイルである直流コイル3と、永久磁石4とを有する。永久磁石4は、直流コイル3の中心軸6上に配置されている。図1には、直流コイル3によって生成される直流磁場を表す磁力線と、永久磁石4によって生成される磁場を表す磁力線とを示している。直流コイル3と永久磁石4との間には静磁界が形成される。
中心軸6には、直流コイル3によって生成される直流磁場と永久磁石4によって生成される磁場との相殺によってFFPが形成される。MPI装置100は、直流コイル3へ供給する電流量の変化によって直流磁場の磁束密度を変化させることで、被検体におけるFFPの位置を移動させる。
交流コイル2の中心軸5は、中心軸6と平行である。中心軸5は、中心軸6と一致していても良い。交流コイル2は、直流磁場のうちFFPの付近において交流磁場を重畳させる。MPI装置100は、磁気信号を検出する検出器を有する。図1では、検出器の図示を省略している。検出器は、コイルを備えるものであっても良い。検出器は、交流磁場の印加によって磁化されたFFP上の磁気粒子からの磁気信号を検出する。MPI装置100は、被検体におけるFFPの位置を移動させながら磁気信号を検出することにより、磁気粒子の分布を求める。
図2は、図1に示すMPI装置100が有する駆動回路1の回路図である。駆動回路1は、交流電流源9および交流コイル2を有する交流駆動回路7と、直流電流源10および直流コイル3を有する直流駆動回路8とを備える。交流コイル2は、交流電流源9の第1の端子T1に接続されている。交流駆動回路7は、交流コイル2への交流電流の供給によって交流磁場を生成する。直流コイル3は、直流電流源10の第1の端子T3に接続されている。直流駆動回路8は、直流コイル3への直流電流の供給によって直流磁場を生成する。
図3は、図2に示す駆動回路1が有する交流電流源9の構成を示すブロック図である。交流電流源9は、交流電流を生成する交流電流生成回路14と、生成された交流電流の実効値を検出する電流検出器15と、交流電流生成回路14を制御する制御部16とを有する。制御部16は、電流検出器15で検出される実効値があらかじめ設定された指令値に一致するように、交流電流生成回路14から出力される電流を調節する。このように、交流電流源9は、交流電流の実効値を一定にするためのフィードバック制御を行う。電流検出器15は、電流値のほか、周波数またはひずみ率を検出しても良い。
図4は、図2に示す駆動回路1が有する直流電流源10の構成を示すブロック図である。直流電流源10は、直流電流を生成する直流電流生成回路17と、生成された直流電流の電流値を検出する電流検出器18と、直流電流生成回路17を制御する制御部19とを有する。直流電流生成回路17は、リニアレギュレータまたはスイッチングレギュレータといった変換器を有する。変換器は、商用電源から直流電流を生成する。制御部19は、電流検出器18で検出される電流値があらかじめ設定された指令値に一致するように、直流電流生成回路17から出力される電流を調節する。このように、直流電流源10は、直流電流の電流値を一定にするためのフィードバック制御を行う。図3および図4に示す構成によって、交流電流源9と直流電流源10とは、電流の波形がそれぞれの指令にしたがった波形となるように、互いに独立して制御される。
MPI装置100は、交流磁場と直流磁場とが被検体の同一箇所で重畳するように交流磁場と直流磁場とを生じさせる。実施の形態1では、図1に示すように、交流磁場の磁束が直流コイル3に鎖交する。交流コイル2と直流コイル3とは、空間的には別の位置に配置されているが、交流磁場の磁束が直流コイル3に鎖交することで、磁気的に結合している。駆動回路1の構成は、交流コイル2が一次巻線かつ直流コイル3が二次巻線であり一定の結合係数を持つトランスとみなすことができる。なお、図1に示す例では、交流コイル2の巻き方向と直流コイル3の巻き方向とは、同じであるものとする。
駆動回路1は、一次側コイル12と二次側コイル13とを有するトランス11を備える。一次側コイル12と二次側コイル13とは絶縁されている。一次側コイル12は、交流コイル2に直列に接続されており、かつ交流電流源9の第2の端子T2に接続されている。二次側コイル13は、直流コイル3に直列に接続されており、かつ直流電流源10の第2の端子T4に接続されている。一次側コイル12の巻き方向と二次側コイル13の巻き方向とは、互いに逆とされる。なお、交流コイル2の巻き方向と直流コイル3の巻き方向とが互いに逆である場合、一次側コイル12の極性と二次側コイル13の極性とは同じとする。
直流コイル3へ直流電流が供給されることによって、直流コイル3の両端には、直流コイル3の抵抗成分に起因する電位差が発生する。また、交流磁場の磁束が直流コイル3と鎖交することによって、直流コイル3の両端には、誘導起電力が発生する。直流コイル3には、直流電圧の他に、誘導起電力による交流電圧が印加される。直流電流源10から見ると、負荷である直流コイル3へ直流電流を供給しているにもかかわらず、当該負荷には直流電圧のほかに交流電圧が印加されることとなる。交流コイル2は被検体の体内の磁気粒子へ及ぼし得る強い磁力を生じさせることから、直流コイル3には、交流コイル2によって生成される交流磁場によって強い交流電圧が印加される。
上述するように、直流電流源10は、直流電流の電流値を一定にするためのフィードバック制御を行う。仮に、直流コイル3の交流電圧に相当する交流電圧成分を直流電流源10の出力電圧に含ませることとした場合、交流電圧による直流コイル3の電圧変動にしたがった出力電圧の調整が直流電流源10において必要となる。この場合、直流電流源10において必要とされる出力電圧の調整幅が、直流電圧を交流電圧へ変換する通常の変換器によって実現可能な電圧変動幅では不足することがあり得る。強い交流電圧成分を出力電圧に含ませるとともに通常の変換器よりも電圧変動幅の拡大を可能とするために、直流電流源10には特殊な要素の追加を要する。特殊な要素の追加によって、直流電流源10の構成は複雑かつ大型となり、直流電流源10のコストは増加することになる。さらに、交流電圧の周波数が高くなるほど、強い交流電圧成分を出力電圧に含ませるとともに電圧変動幅の拡大を可能とする直流電流源10を実現することが困難となる。
実施の形態1において、トランス11は、誘導起電力による交流電圧を打ち消すための機能を果たす。以下の説明にて、誘導起電力による交流電圧を打ち消すための機能を、電圧補償機能と称することがある。トランス11は、一次側コイル12へ交流電圧が印加されることによって、二次側コイル13にて交流電圧を発生する。二次側コイル13は、直流コイル3にて発生する交流電圧と同じ電圧レベルの交流電圧を発生させる。交流コイル2の巻き方向と直流コイル3の巻き方向とが同じであり、かつ一次側コイル12の極性と二次側コイル13の極性とが互いに逆であることで、二次側コイル13で発生する交流電圧の極性は、直流コイル3で発生する交流電圧の極性とは逆となる。誘導起電力による電圧値と同じ電圧レベルの交流電圧であってかつ誘導起電力による交流電圧の極性とは逆の極性の交流電圧を二次側コイル13に発生させることによって、駆動回路1は、双方の交流電圧を相殺させる。
直流電流源10の出力電圧に交流電圧成分を含める必要がなくなるため、直流電流源10の構成は、直流コイル3の抵抗成分に起因する直流電圧を出力可能な構成であれば良い。これにより、直流電流源10は、通常の変換器を用いることができ、構成を簡易かつ小型にでき、低コスト化を実現できる。
次に、トランス11による電圧補償機能を実現するための駆動回路1の条件について説明する。上述するように、交流コイル2と直流コイル3とは、磁気的に結合している。交流コイル2のインダクタンスをLac、直流コイル3のインダクタンスをLdc、交流コイル2を一次巻線かつ直流コイル3を二次巻線とみなしたトランスの相互インダクタンスをMc、当該トランスの結合係数をkc、とすると、次の式(1)が成り立つ。
トランス11について、一次側コイル12のインダクタンスをLp、二次側コイル13のインダクタンスをLs、トランス11の相互インダクタンスをMt、トランス11の結合係数をkt、とすると、次の式(2)が成り立つ。
交流コイル2と一次側コイル12とに同じ交流電流が流れた場合、直流コイル3に発生する交流電圧の電圧レベルと二次側コイル13に発生する交流電圧の電圧レベルとが等しくなる場合の条件は、次の式(3)または式(4)によって表される。
Mc=Mt ・・・(3)
kc 2・Ldc・Lac=kt 2・Lp・Ls ・・・(4)
Lp=Lacおよびkt=1と仮定すると、次の式(5)が成り立つ。
Ls=kc 2・Ldc ・・・(5)
駆動回路1は、フィードバック制御が可能な交流電流源9および直流電流源10を備えるとともに、式(1)から式(5)に示す条件を満たすことによって、トランス11による電圧補償機能を実現できる。
上述するように、直流コイル3には強い交流電圧が印加されることから、交流コイル2と直流コイル3との相対的な位置が変化することによって、言い換えると結合係数であるkcが変化することによって、直流コイル3に発生する誘導起電力は大きく変化する。誘導起電力が変化する場合においてトランス11による電圧補償機能を実現するために、駆動回路1は、二次側コイル13に印加する交流電圧の微調整を行うこととしても良い。交流電圧の微調整は、駆動回路1のうちトランス11内またはトランス11の外部に設けられた機構によって行い得る。交流電圧の微調整については、後述する実施の形態6および7にて説明する。
図5は、実施の形態1の変形例にかかる駆動回路1Aを示す図である。駆動回路1の変形例である駆動回路1Aは、図2に示すトランス11に代えて、一次側コイル12と二次側コイル13とが接続されたトランス11Aを有する。トランス11Aは、一次側コイル12と二次側コイル13とが共通化されたいわゆる単巻トランスであって、オートトランスとも称される。一次側コイル12の巻き方向と二次側コイル13の巻き方向とが同じであるため、交流コイル2の巻き方向と直流コイル3の巻き方向とは、互いに逆とされる。駆動回路1Aは、上記の駆動回路1と同様に、交流磁場によって発生する誘導起電力の影響を低減することができる。
なお、交流コイル2の中心軸5と直流コイル3の中心軸6とは平行である場合に限られない。中心軸5と中心軸6とは垂直でなければ良く、90度以外の角度をなしても良い。中心軸5と中心軸6とは、互いに交わるほか、ねじれの位置にあっても良い。仮に、中心軸5と中心軸6とが垂直である場合、交流磁場の磁束と直流コイル3との鎖交は生じないため、直流コイル3に誘導起電力は発生しない。ただし、中心軸5と中心軸6とが垂直である場合、FFPの位置はある1点に固定され、FFPを移動させることができない。実施の形態1にかかるMPI装置100は、中心軸5と中心軸6とが互いに平行であるか90度以外の角度をなすことで、FFPの位置を適宜設定可能とする。
MPI装置100は、FFPの位置を適宜設定できることにより、高い自由度での磁気信号の検出が可能となる。FFPを移動させながら磁気信号を検出することにより、磁気粒子の分布を高速に求めることができる。MPI装置100は、交流磁場の磁束と直流コイル3との鎖交による誘電起電力の影響をトランス11によって低減させるとともに、高い自由度で高速に磁気粒子の分布を求めることができる。また、MPI装置100は、FFPの位置を適宜設定できることにより、検出アルゴリズムの作成あるいは検出精度改善のための設計の自由度を向上できる。
実施の形態1によると、駆動回路1は、トランス11を備えることによって、誘導起電力によって直流コイル3に発生する交流電圧を打ち消すことが可能となる。これにより、駆動回路1およびMPI装置100は、交流磁場によって発生する誘導起電力の影響を低減することができるという効果を奏する。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2にかかる駆動回路20の回路図である。駆動回路20は、上記の実施の形態1にかかる駆動回路1に代えてMPI装置100に設けられる。駆動回路20は、図2に示す交流駆動回路7に代えて設けられた交流駆動回路21を有する。交流駆動回路21は、図2に示す交流電流源9に代えて設けられた交流電流源22を有する。交流電流源22は、交流電流の基本波に含まれる不要な高調波を低減させることにより、交流電流の波形を正弦波に近づけるための構成を備える。実施の形態2では、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
交流電流源22は、図3に示す交流電流生成回路14に代えて設けられた単相インバータ23を有する。図6に示す単相インバータ23は、フルブリッジインバータである。単相インバータ23は、直流電流源と、コンデンサと、フルブリッジ方式の回路を構成するスイッチング素子とを有する。単相インバータ23は、フルブリッジインバータよりも簡易な構成を持つハーフブリッジであっても良く、フルブリッジインバータよりも複雑な構成を持つ3レベルインバータであっても良い。
単相インバータ23の出力端子T5には、電流検出器15が接続されている。また、交流電流源22は、電流検出器15で検出される電流値があらかじめ設定された指令値に一致するように、単相インバータ23から出力される電流を調節する制御部を有する。図6では、制御部の図示を省略している。
交流電流源22は、リアクトル24とコンデンサ25とを有する。リアクトル24とコンデンサ25とは、共振回路を構成する。リアクトル24は、電流検出器15を介して出力端子T5に接続されている。コンデンサ25の一方の端子は、リアクトル24と第1の端子T1との間に接続されている。コンデンサ25の他方の端子は、単相インバータ23の入力端子T6と第2の端子T2との間に接続されている。負荷である交流コイル2および一次側コイル12がコンデンサ25に並列に接続されていることで、コンデンサ25は、並列共振回路を構成する。
交流駆動回路21に交流電流源22を設ける目的は、大きい電流量であってかつひずみが少ない正弦波電流である交流電流を、負荷である交流コイル2および一次側コイル12へ流すことである。大きい電流量とは、被検体の体内の磁気粒子へ及ぼし得る強い磁力を交流コイル2が生じさせ得る程度の電流量とする。交流電流源22は、コンデンサ25の共振周波数またはコンデンサの値を適宜設定することにより、コンデンサ25と交流コイル2および一次側コイル12との間における電流量を共振によって増幅させる。これにより、交流電流源22は、単相インバータ23から出力される電流量がきわめて小さい場合でも、交流コイル2と一次側コイル12とへ大きい電流量の交流電流を流すことができる。
また、共振回路は、入力される電流から特定の周波数成分を取り出し可能なフィルタ回路ともみなせる。交流電流源22は、共振回路による共振を適宜制御することによって、交流電流の基本波に含まれる不要な高調波をカットして、ひずみが少ない正弦波電流である交流電流を得ることができる。リアクトル24は、単相インバータ23の出力である矩形波と共振時におけるコンデンサ25の出力である正弦波との間を取り持つとともに、単相インバータ23の電流を制御する。
次に、交流電流源22によって大きい電流量かつひずみが少ない交流電流を得るための共振回路の条件について説明する。リアクトル24のインダクタンスをLb、コンデンサ25の容量とリアクトル24の容量との合成容量をLres、とすると、次の式(6)が成り立つ。なお、Lacは交流コイル2のインダクタンス、Lpは一次側コイル12のインダクタンスである。
コンデンサ25の容量をCresとすると、共振回路の共振周波数であるf0は、次の式(7)によって表される。
単相インバータ23により出力される交流電流の周波数をf0に一致させることによって、交流電流源22による電流量は最大となる。また、単相インバータ23により出力される交流電流の周波数をf0に一致させることによって、単相インバータ23にとっての負荷であるリアクトル24およびコンデンサ25の力率が最大、すなわち駆動効率が最大となることで、高調波による正弦波電流のひずみが最小となる。
図6に示す交流電流源22には、単相インバータ23、リアクトル24およびコンデンサ25のそれぞれに不図示の抵抗成分が存在することから、共振回路における共振時の電流量は無限大とはならない。ただし、かかる回路上の抵抗成分が十分に小さいことで、共振回路におけるQ値が高くなりすぎる場合には、コンデンサ25と並列に抵抗を設置することによりQ値を低下させても良い。これにより、交流電流源22は、共振回路の制御性を改善し得る。
交流電流源22は、式(6)および(7)にしたがって単相インバータ23の周波数を調整することによって、共振回路における他の条件を固定として、共振回路の調整を容易に行うことができる。なお、MPI装置100による検出の観点では、単相インバータ23の周波数を固定とすることが望まれる場合もあり得る。この場合、交流電流源22は、単相インバータ23の周波数を固定として、共振回路における他の条件を調整することによって共振回路の調整を行っても良い。例を挙げると、コンデンサ25には、容量を調整するための機構を設けても良い。または、容量を調整可能なコンデンサをコンデンサ25と並列に接続しても良い。交流コイル2の容量あるいはリアクトル24の容量を可変としても良い。または、容量を可変とするリアクトルをリアクトル24に直列に接続しても良い。これにより、交流電流源22は、単相インバータ23の周波数を固定として、共振回路の調整を行うことができる。
図7は、実施の形態2の変形例にかかる駆動回路20Aの回路図である。駆動回路20の変形例である駆動回路20Aは、図6に示す交流電流源22に代えて、交流電流源22Aが設けられている。交流電流源22Aは、単相インバータ23と、単相インバータ23に接続され、かつ交流コイル2および一次側コイル12に直列に接続されたコンデンサ25Aとを備える。交流電流源22Aにおいて、負荷である交流コイル2および一次側コイル12がコンデンサ25Aに直列に接続されていることで、コンデンサ25Aは、直列共振回路を構成する。なお、交流電流源22Aには、リアクトル24は設けられていない。
並列共振回路を含む上記の交流電流源22は、大きい電流量の交流電流を流すのに有利である。一方、直列共振回路を含む交流電流源22Aは、負荷へ高電圧を印加するのに有利である。交流電流源22と交流電流源22Aとは、交流コイル2の仕様、または単相インバータ23の構成および仕様などを鑑みて適宜選択することができる。駆動回路20Aは、高調波による正弦波電流のひずみを低減できることで、電源効率の観点から有利である。
駆動回路20は、単相インバータ23によるスイッチングノイズを除去するための構成を備えても良い。例を挙げると、駆動回路20は、ロックインアンプの使用によるノイズ成分の除去、ノイズ成分が発生するタイミングでのフィルタリング、ノイズの空間的な伝導の遮蔽などの手法によって、スイッチングノイズを除去しても良い。スイッチングノイズを除去することで、MPI装置100は、スイッチングノイズの存在による磁気信号の検出への影響を低減できる。
実施の形態2によると、駆動回路20は、単相インバータ23と、共振回路を構成するコンデンサ25とを備えることによって、大きい電流量かつひずみが少ない交流電流を得ることができる。
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3にかかるMPI装置101の要部概略図である。MPI装置101は、図1に示す永久磁石4に代えて第3のコイルである直流コイル31が設けられている。実施の形態3では、実施の形態1および2と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1および2とは異なる構成について主に説明する。
直流コイル31の中心軸は、直流コイル3の中心軸6と一致している。図8には、直流コイル3によって生成される直流磁場を表す磁力線と、直流コイル31によって生成される磁場を表す磁力線とを示している。直流コイル3と直流コイル31との間には静磁界が形成される。MPI装置101は、直流コイル31へ流れる直流電流を調整することにより、静磁界の強度を空間的に自由に変化させることができる。図8に示す直流コイル31は、空間的に交流コイル2とは離れた位置に配置されている。実施の形態3では、交流磁場の磁束は、直流コイル3に鎖交するのみならず、直流コイル31にも鎖交する。
図9は、図8に示すMPI装置101が有する駆動回路30の回路図である。駆動回路30は、交流電流源9と交流コイル2とを有する交流駆動回路7を備える。また、駆動回路30は、第1の直流電流源である直流電流源10と直流コイル3とを有する第1の直流駆動回路である直流駆動回路8を備える。直流駆動回路8は、直流コイル3への直流電流の供給によって第1の直流磁場を生成する。また、駆動回路30は、第2の直流電流源である直流電流源33と直流コイル31とを有する第2の直流駆動回路である直流駆動回路32を備える。直流コイル31は、直流電流源33の第1の端子T7に接続されている。直流駆動回路32は、直流コイル31への直流電流の供給によって第2の直流磁場を生成する。
図10は、図9に示す駆動回路30が有する直流電流源33の構成を示すブロック図である。直流電流源33は、直流電流を生成する直流電流生成回路37と、生成された直流電流の電流値を検出する電流検出器38と、直流電流生成回路37を制御する制御部39とを有する。直流電流生成回路37は、リニアレギュレータまたはスイッチングレギュレータといった変換器を有する。変換器は、商用電源から直流電流を生成する。制御部39は、電流検出器38で検出される電流値があらかじめ設定された指令値に一致するように、直流電流生成回路37から出力される電流を調節する。このように、直流電流源33は、直流電流の電流値を一定にするためのフィードバック制御を行う。直流電流源33は、交流電流源9および直流電流源10とは独立して制御される。
駆動回路30は、第1のトランスであるトランス11と、第2のトランスであるトランス34とを有する。トランス34は、一次側コイル35と二次側コイル36とを有する。一次側コイル35と二次側コイル36とは絶縁されている。一次側コイル35は、トランス11の一次側コイル12と、第2の端子T2との間に接続されている。二次側コイル36は、直流コイル31と、直流電流源33の第2の端子T8の間に接続されている。
直流コイル31へ直流電流が供給されることによって、直流コイル31の両端には、直流コイル31の抵抗成分に起因する電位差が発生する。また、交流磁場の磁束が直流コイル31と鎖交することによって、直流コイル31の両端には、誘導起電力が発生する。実施の形態3では、誘導起電力による交流電圧は、直流コイル3と直流コイル31とのそれぞれに発生する。
実施の形態3にかかる駆動回路30では、誘導起電力によって直流コイル3に発生する交流電圧をトランス11によって打ち消し、かつ誘導起電力によって直流コイル31に発生する交流電圧をトランス34によって打ち消す。トランス34は、一次側コイル35へ交流電圧が印加されることによって、二次側コイル36にて交流電圧を発生する。二次側コイル36は、直流コイル31にて発生する交流電圧と同じ電圧レベルの交流電圧を発生させる。交流コイル2の巻き方向と直流コイル3の巻き方向とが同じであり、かつ一次側コイル35の極性と二次側コイル36の極性とが互いに逆であることで、二次側コイル36で発生する交流電圧の極性は、直流コイル31で発生する交流電圧の極性とは逆となる。誘導起電力による電圧レベルと同じ電圧レベルの交流電圧であってかつ誘導起電力による交流電圧の極性とは逆の極性の交流電圧を二次側コイル36に発生させることによって、駆動回路1は、双方の交流電圧を相殺させる。これにより、トランス34による電圧補償機能を実現できる。
直流電流源33の出力電圧に交流電圧成分を含める必要がなくなるため、直流電流源33の構成は、直流コイル31の抵抗成分に起因する直流電圧を出力可能な構成であれば良い。これにより、直流電流源33は、通常の変換器を用いることができ、構成を簡易かつ小型にでき、低コスト化を実現できる。
MPI装置101には、図9に示す交流コイル2および直流コイル3,31以外の交流コイルおよび直流コイルが設けられる場合に、交流コイル2による交流磁場と直流コイル3,31との鎖交以外の鎖交が生じることがあり得る。MPI装置101は、交流コイル2による交流磁場と直流コイル3,31との鎖交以外に生じた鎖交についても、実施の形態3と同様の電圧補償機能を直流コイルごとに実現するための構成が設けられても良い。この場合も、MPI装置101は、実施の形態3の構成に交流コイルおよび直流コイルが追加されることによってさらに複雑な磁場が形成される場合も、直流コイルごとの電圧補償機能によって、誘導起電力による影響を低減できる。
直流コイル31は、交流コイル2とは空間的に離れた位置に配置される以外に、交流コイル2に重ね合わせられて配置されても良い。この場合、交流コイル2と直流コイル31とは、互いに単一のコイルに合成されたものとみなすことができる。かかる合成されたコイルである合成コイルは、直流磁場に交流磁場が合成された磁場を形成する。よって、合成コイルは、直流コイルの機能と交流コイルの機能とを果たすことができる。また、合成コイルは、交流電流源9の制御と直流電流源33の制御とによって、交流磁場の強さと直流磁場の強さとを個別に調整することができる。MPI装置101は、交流コイル2と直流コイル31に代えて合成コイルが設けられることにより、装置の構成の簡略化と小型化とが可能となる。実施の形態3の電圧補償機能は、合成コイルが設けられる場合のように、直流電流に交流電流が重畳されるコイルを駆動する駆動回路30に適用可能である。
実施の形態3によると、駆動回路30は、直流コイル3,31ごとにトランス11,34が設けられたことによって、誘導起電力によって生じる交流電圧を直流コイル3,31ごとにおいて打ち消すことが可能となる。これにより、駆動回路30およびMPI装置101は、交流磁場によって発生する誘導起電力の影響を低減することができるという効果を奏する。
上記の実施の形態1から3において、トランス11は、一次側コイル12には交流電流が流されるとともに二次側コイル13には直流電流が流されるように使用される。かかるトランス11の構成例について、以下に示す実施の形態4および5において説明する。実施の形態4および5にかかるトランス11は、実施の形態1から3にかかる駆動回路1,20,30のいずれに設けられても良い。なお、実施の形態3にかかるトランス34は、実施の形態4および5にかかるトランス11と同様の構成とすることができる。
実施の形態4.
図11は、本発明の実施の形態4にかかるトランス11Bの概略構成図である。トランス11の構成例の1つであるトランス11Bは、直線である中心軸の周囲に巻き付けられた巻線を有するソレノイド型のトランスであって、コアを持たない空芯トランスである。実施の形態4では、実施の形態1から3と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から3とは異なる構成について主に説明する。なお、図11に示す破線は、トランス11Bにコアが設けられていないことを表している。ソレノイド型のトランスは、後述するトロイダル型のトランスと比べて、巻線を形成することが容易であるという利点がある。
ここで、コアおよび空芯の定義について説明する。各実施の形態において、コアとは、磁性材料のコア、つまり透磁率が1よりも十分に大きい、鉄系材料あるいはフェライトなどの磁性体で構成されているものを意味している。空芯とは、こういった磁性材料で作られたコアが存在しないことを意味している。したがって、空芯には、巻線の中心軸側が中空あるいは空気のみである場合のほか、巻線の中心軸側に磁性材料以外の材料が存在する場合も含まれる。例えば、紙あるいはプラスチックなどの非磁性体で作られた円筒に巻線が巻かれたトランスは、空芯トランスに該当する。また、コアである磁性体の飽和磁束密度を高くするために、コアにギャップを入れることが良く行われる。この場合、磁性体の部分と非磁性体の部分とで磁気回路が構成されることになる。通常のコアでは、ギャップがきわめて小さく、コアのうちギャップすなわち非磁性体が占める割合は十分に小さい。コアにおける非磁性体の割合が十分に大きくなった場合、例えば非磁性体の長さが磁路長全体の半分を超えた場合は、空芯であるとみなしても良い。
一次側コイル12の中心軸と二次側コイル13の中心軸とは、一致している。中心軸44は、一次側コイル12と二次側コイル13との中心軸とする。二次側コイル13には直流電流が流れることから、二次側コイル13の中心軸44側には、二次側コイル13に強い直流バイアスが印加された状態で交流磁場が形成される。仮に、通常用いられるコアである鉄芯がトランス11Bに設けられた場合に、強い直流バイアスの印加によってコアに磁束飽和が生じることがある。トランス11Bは、コアでの磁束飽和によって、二次側コイル13での交流電圧の発生による電圧補償機能を果たすことが困難となる。また、コアの大型化によって磁束飽和を抑制させ得るが、この場合、トランス11Bの構成が大型化することとなる。
実施の形態4では、トランス11Bを空芯としたことで、トランス11Bは、磁束飽和の問題を回避することができる。空芯のトランス11Bは、一次側コイル12または二次側コイル13に大きい直流電流が流れる場合に有効である。トランス11Bは、磁束飽和によって電圧補償機能を果たし得なくなる事態を回避できる。実施の形態4によると、トランス11Bは、小型な構成によって電圧補償機能を実現できるという効果を奏する。なお、トランス11Bは、図5に示すトランス11Aと同様に、一次側コイル12と二次側コイル13とが共通化された単巻トランスであっても良い。
実施の形態5.
図12は、本発明の実施の形態5にかかるトランス11Cの概略構成図である。トランス11の構成例の1つであるトランス11Cは、ソレノイド型のトランスであって、一次側コイル12および二次側コイル13が巻き付けられたコア41を有する。実施の形態5では、実施の形態1から4と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から4とは異なる構成について主に説明する。
鉄芯であるコア41の中心軸は、一次側コイル12および二次側コイル13の中心軸44に一致している。トランス11Cは、コア41と、コア41へ直流磁場を印加する永久磁石42とを有する。永久磁石42は、コア41のうち、中心軸44の方向における一方の端に対向して配置されている。ここで、永久磁石42は、二次側コイル13に直流電流が流れることによって発生する直流磁場を相殺可能な強さの直流磁場を発生させるものとする。トランス11Cは、二次側コイル13が発生させる直流磁場を、永久磁石42が発生させる直流磁場によって打ち消すことにより、コア41における磁束飽和の発生を回避することができる。磁束飽和の抑制のためにコア41を大型化させる必要がないことから、トランス11Cは、小型な構成とすることができる。
実施の形態5では、トランス11Cは、コア41とともに永久磁石42が設けられることで、磁束飽和によって電圧補償機能を果たし得なくなる事態を回避できる。実施の形態5によると、トランス11Cは、小型な構成によって電圧補償機能を実現できるという効果を奏する。
なお、トランス11Cは、コア41の端に対向して配置された1個の永久磁石42を有するものに限られない。トランス11Cは、2個の永久磁石42を有しても良い。2つの永久磁石42のうちの1つは、コア41の一方の端に対向して配置される。2つの永久磁石42のうちの他の1つは、コア41の他方の端に対向して配置される。さらに、永久磁石42の配置の態様は、適宜変更可能である。次に示す変形例では、永久磁石42の配置の例について説明する。
図13は、実施の形態5の変形例1にかかるトランス11Dの概略構成図である。トランス11の構成例の1つであるトランス11Dは、コア41と永久磁石42とを含む閉磁路である磁気回路43を有する。永久磁石42は、磁気回路43の一部を構成する。トランス11Dは、永久磁石42によって発生させた磁束を、磁気回路43を通じてコア41へ進行させる。変形例1にかかるトランス11Dも、二次側コイル13が発生させる直流磁場を、永久磁石42が発生させる直流磁場によって打ち消すことができる。トランス11Dは、永久磁石42を磁気回路43の一部としたことで、トランス11Dの外部への漏れ磁束を低減できるという利点がある。
図14は、実施の形態5の変形例2にかかるトランス11Eの概略構成図である。トランス11の構成例の1つであるトランス11Eは、コアである永久磁石42を有する。変形例2にかかるトランス11Eも、二次側コイル13が発生させる直流磁場を、永久磁石42が発生させる直流磁場によって打ち消すことができる。
実施の形態5にかかるトランス11C,11D,11Eでは、二次側コイル13の直流磁場を相殺可能に永久磁石42の強さが設定される。トランス11C,11D,11Eは、二次側コイル13と永久磁石42との相対位置を調整するための機構を設け、かかる機構による調整によって二次側コイル13の中心軸44側における直流磁場を相殺可能としても良い。この場合も、トランス11C,11D,11Eは、磁束飽和によって電圧補償機能を果たし得なくなる事態を回避できる。また、トランス11C,11D,11Eは、二次側コイル13を流れる直流電流の電流量が変化した場合などにおいて、かかる機構による微調整を行うことで、直流磁場を相殺させるための再調整を行うことができる。なお、トランス11C,11D,11Eは、図5に示すトランス11Aと同様に、一次側コイル12と二次側コイル13とが共通化された単巻トランスであっても良い。
トランス11は、ソレノイド型のトランスに限られず、トロイダル型のトランスであっても良い。図15は、実施の形態5の変形例3にかかるトランス11Fの概略構成図である。トランス11の構成例の1つであるトランス11Fは、トロイダル型のトランスである。トロイダル型のトランスにおいて、巻線は、環状のコアに巻き付けられている。トランス11Fにおいて、一次側コイル12と二次側コイル13とは、円環に沿って巻かれている。図15では、一次側コイル12と二次側コイル13との見分けのために、一次側コイル12を一点鎖線で示し、二次側コイル13を実線で示している。図15に示す例では、一次側コイル12と二次側コイル13とは交互に巻かれている。トロイダル型のトランスでは、円環状の巻線によって形成されるトーラス形状の内部がコアとなる。トランス11Fは、空芯であっても良い。
トロイダル型のトランスは、ソレノイド型のトランスと比べて、トランス11の外部への漏れ磁束を低減できるという利点がある。トランス11Fは、トランス11Fの外部への漏れ磁束を低減し、トーラス形状の内部に磁束を閉じ込め可能とする。これにより、トランス11Fは、二次側コイル13において効率良く交流電圧を発生することができる。
次に、二次側コイル13に印加する交流電圧の微調整を可能としたトランス11の構成例について、以下の実施の形態6および7において説明する。なお、実施の形態3にかかるトランス34は、実施の形態6および7にかかるトランス11と同様の構成とすることができる。
実施の形態6.
図16は、本発明の実施の形態6にかかるトランス11Gの概略構成図である。トランス11の構成例の1つであるトランス11Gは、二次側コイル13の接点51を移動させることによって、二次側コイル13に印加する交流電圧の電圧値の調整を行う。実施の形態6では、実施の形態1から5と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から5とは異なる構成について主に説明する。
トランス11Gは、実施の形態1にかかる駆動回路1に設けられる。トランス11Fは、駆動回路1に限られず、実施の形態1から3にかかる他の駆動回路20,30に設けられても良い。また、図16には、コア41を有するソレノイド型のトランス11Gを示しているが、トランス11Gは、実施の形態4および5にて説明するトランス11と同様に構成可能である。図16では、永久磁石42など、説明に不要な構成要素の図示を省略している。
接点51は、駆動回路1のうちトランス11G内またはトランス11Gの外部に設けられた機構によって移動させ得る。接点51は、中心軸44の方向において移動可能とされている。トランス11Gは、中心軸44の方向における接点51の位置の調整によって、二次側コイル13の巻き数を変化させる。二次側コイル13の巻き数の変化により一次側コイル12および二次側コイル13の巻き数比が変化することで、上記の式(4)におけるLsである二次側コイル13のインダクタンスが変化する。トランス11Gは、二次側コイル13のインダクタンスの変化による一次側コイル12と二次側コイル13との間の昇圧比の調整によって、二次側コイル13の交流電圧を調整する。なお、図16では、接点51の移動のための機構の図示を省略している。
駆動回路1は、図4に示す直流電流源10において直流電流の電流値を一定にするためのフィードバック制御を行うとともに、接点51の位置の調整によって、二次側コイル13にて発生させる交流電圧の電圧レベルを調整し得る。駆動回路1は、直流コイル3にて発生する交流電圧と同じ電圧レベルの交流電圧を二次側コイル13において発生させる調整によって、電圧補償機能を果たすことができる。また、駆動回路1は、接点51を移動させることによって、交流電圧の電圧レベルの微調整を容易に行うことができる。
直流電流源10にとっての負荷である直流コイル3および一次側コイル12の条件変化によって、負荷に印加される電圧レベルは変動し得る。負荷の条件変化とは、交流コイル2と直流コイル3との相対位置の変化、あるいは、交流コイル2、直流コイル3またはトランス11Fのインダクタンスの変化といった、駆動回路1の電気的特性を変化させ得る変化とする。しかしながら、状況によっては、負荷の電圧変動幅が、直流電流源10によるフィードバック制御によって対処可能な変動幅を超えることがあり得る。かかる状況の例としては、直流電流源10によって負荷に印加される直流電圧に対して、直流コイル3に発生する誘導起電力が極端に大きい場合が挙げられる。
実施の形態6によると、駆動回路1は、直流電流源10での制御によって対処可能な変動幅を超える電圧レベルの変動が負荷に生じた場合であっても、接点51の位置調整によって、交流電圧の電圧レベルを調整し得る。なお、トランス11Gは、二次側コイル13の巻き数の変化に代えて、中心軸44の方向における二次側コイル13の幅を変化させることによって、二次側コイル13のインダクタンスを変化させても良い。
図17は、実施の形態6の変形例1にかかるトランス11Hの概略構成図である。トランス11の構成例の1つであるトランス11Hは、図5に示すトランス11Aと同様に、一次側コイル12と二次側コイル13とが共通化された単巻トランスである。トランス11Gは、一次側コイル12および二次側コイル13として機能する巻線52を有する。巻線52の一端の電位は、一次側コイル12と二次側コイル13との共通電位とする。巻線52の当該一端は、一次側コイル12の入力端子および二次側コイル13の入力端子として共用される。巻線52の他端は、一次側コイル12の出力端子とされる。接点51は、巻線52の一端と他端との間において移動可能に設けられている。接点51は、二次側コイル13のうち低圧側の端子である出力端子とされる。トランス11Hは、スライダック(登録商標)と同様の構成を備える。このように、単巻トランスでは、巻線52の一端と他端との間にて接点51を移動させることによって、二次側コイル13の巻き数を変化させることができる。
図18は、実施の形態6の変形例2にかかるトランス11Iの概略構成図である。トランス11の構成例の1つであるトランス11Iは、一次側コイル12と二次側コイル13との相対位置を変化させることによって、上記の式(4)におけるktである結合係数を調整する。トランス11Iは、トランス11Iの結合係数を調整することによって、二次側コイル13の交流電圧を調整する。
図18に示すトランス11Iは、中心軸44の方向における二次側コイル13の位置を変化させる。二次側コイル13を一次側コイル12に近づけることによって、結合係数は増大する。また、二次側コイル13が一次側コイル12とは離れた状態から、一次側コイル12の一部に二次側コイル13の一部を重ねることによっても、結合係数は増大する。さらに、一次側コイル12から離れる方向へ二次側コイル13を移動させることによって、結合係数は減少する。トランス11Iは、二次側コイル13の移動に限らず、一次側コイル12の移動によって結合係数を調整しても良い。
トランス11Iは、中心軸44の方向における一次側コイル12と二次側コイル13との相対位置の変化に限られず、一次側コイル12の中心軸と二次側コイル13の中心軸との間隔を変化させることによって結合係数を調整しても良い。トランス11Iが空芯トランスである場合、結合係数を大きく変化させるように、一次側コイル12と二次側コイル13との相対位置を容易に変化させることができる。
実施の形態6にかかるトランス11G,11H,11Iは、二次側コイル13について、巻き数とインダクタンスと結合係数との少なくとも1つを変化させることによって、二次側コイル13の交流電圧を調整することができる。なお、トランス11G,11H,11Iは、巻き数の変化、インダクタンスの変化、および結合係数の変化を適宜組み合わせることによって、二次側コイル13の交流電圧を調整しても良い。
実施の形態7.
図19は、本発明の実施の形態7にかかるトランス11Jの概略構成図である。トランス11Jは、トランス11の構成例の1つである。トランス11Jの二次側コイル13は、主巻線53と、交流電圧の調整のための補助巻線54とを有する。実施の形態7では、実施の形態1から6と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1から6とは異なる構成について主に説明する。
主巻線53は、交流電圧の調整において、インダクタンスまたは結合係数の調整のための変化が施される対象外とされる部分である。主巻線53は、巻かれた状態でトランス11Jの構造に固定されている。補助巻線54は、主巻線53に直列に接続されている。補助巻線54は、交流電圧の調整において、インダクタンスまたは結合係数の調整のための変化が施される対象とされる部分である。補助巻線54は、インダクタンスまたは結合係数の調整のための移動が可能とされている。
インダクタンスまたは結合係数の調整のために、二次側コイル13に必要とされる構成上の変化はわずかにとどまる。実施の形態7によると、トランス11Jは、インダクタンスまたは結合係数の調整のための補助巻線54を主巻線53とは別に設けることとしても、二次側コイル13の交流電圧を調整することができる。
上記の交流コイル2と直流コイル3とは、空間的に互いに異なる位置に配置され、かつ互いに磁気的に結合している。かかる交流コイル2と直流コイル3とを有するMPI装置100,101は、実施の形態1から7にかかる駆動回路1,20,30およびトランス11が設けられることによって、交流磁場によって発生する誘導起電力の影響を、低コストで簡易かつ小型な構成によって低減可能とする。駆動回路1,20,30およびトランス11は、交流磁場を発生させるコイルと直流磁場を発生させるコイルとが磁気的に結合されている駆動回路、あるいは直流電流と交流電流とを重畳させた場合と同様の電流波形の電流を1つのコイルに流す駆動回路に広く適用することができる。駆動回路1,20,30およびトランス11は、MPI装置100,101以外の装置に適用されても良い。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。