JP2020023583A - リグニン抽出物を有効成分とする薬剤 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】 鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させることによって前記リグニン含有材料から抽出されるリグニン抽出物を有効成分とする、抗腫瘍剤、抗菌剤又は抗ウイルス剤とする。【選択図】なし

Description

本明細書は、リグニン抽出物を有効成分とする薬剤に関する。
リグニンを含有するリグノセルロース材料やリグノセルロース材料からパルプ原料であるセルロースを分離した残渣である黒液等は、必ずしも有効に利用されず、廃棄物として処分される比率が少なくはないのが現状である。
一方、リグニンを薬剤として有効利用する技術も開発されている。例えば、金属イオンとリグニン含有材料とを接触させることによってリグニン含有材料から抽出されるリグニン抽出物を有効成分とするシワ改善剤やシミ改善剤が知られている(特許文献1)。
特開2010−30921号公報
リグニン抽出物をシワ改善剤やシミ改善剤の有効成分として用いる以外にも、新たな用途が期待される。
本明細書は、リグニン抽出物の新たな用途を提供する。
本発明者は、リグニン抽出物が、抗腫瘍作用、抗菌作用及び抗ウイルス作用を含む新たな活性を有することを見出した。本明細書によれば、以下の手段が提供される。
(1)鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させることによって前記リグニン含有材料中のリグニンの分解を促進することによって抽出されるリグニン抽出物を有効成分とする、細胞増殖阻害剤。
(2)前記リグニン抽出物は、前記リグニン材料を鉄イオンの存在下発酵させることによって前記リグニン含有材料から抽出される、(1)に記載の細胞増殖阻害剤。
(3)前記発酵は、乳酸菌を用いて行う、(1)又は(2)に記載の細胞増殖阻害剤。
(4)前記リグニン含有材料は、草本類の茎葉を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞増殖阻害剤。
(5)癌細胞の増殖を抑制する、(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞増殖阻害剤。
(6)前記癌細胞は、肺癌、皮膚癌、食道癌及び肝臓癌からなる群から選択される1種又は2種以上の癌の細胞である、(5)記載の細胞増殖阻害剤。
(7)微生物細胞の増殖を阻害する、(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞増殖阻害剤。
(8)グラム陰性菌及びグラム陽性菌に対する抗菌作用を有する、(7)に記載の細胞増殖阻害剤。
(9)歯周病菌の増殖を阻害する、(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞増殖阻害剤。
(10)鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させることによって前記リグニン含有材料中のリグニンの分解を促進することによって抽出されるリグニン抽出物を有効成分とする、ウイルスの増殖阻害剤。
肺癌細胞株(A549細胞)の細胞生存率を示す図である。上側に培地中にリグニン抽出物を添加して培養したA549細胞の細胞生存率を示し、下側に培地中にDeferasiroxを添加して培養したA549細胞の細胞生存率を示す。 培地中にリグニン抽出物を添加して培養した食道癌細胞株(TE4細胞)の細胞生存率を示す図である。 培地中にリグニン抽出物を添加して培養した肝臓癌細胞株(HLE細胞)の細胞生存率を示す図である。 Deferasirox抵抗性肝臓癌細胞株(Huh−7細胞)の細胞生存率を示す図である。上側に培地中にDeferasiroxを添加して培養したHuh−7細胞の細胞生存率を示し、下側に培地中にリグニン抽出物を添加して培養したHuh−7細胞の細胞生存率を示す。 培地中にリグニン抽出物を添加して培養した皮膚癌(HMY−細胞)の細胞生存率を示す図である。 GC−MSの結果を示すスペクトル図である。
本明細書は、リグニン含有材料を鉄イオンと接触させてリグニンの分解を促進することによリグニン含有材料から抽出されるリグニン抽出物(以下、本リグニン抽出物)を有効成分とする薬剤に関する。本リグニン抽出物は、抗腫瘍作用、抗菌作用などの細胞増殖抑制作用、ウイルスの増殖抑制作用等を有している。すなわち、本明細書に開示される薬剤は、抗腫瘍剤、抗菌剤又は抗ウイルス剤としても用いられる。
本明細書の開示を理論的に拘束するものではないが、本リグニン抽出物のこうした作用のメカニズムとしては以下が考えられる。
細胞が細胞分裂するために鉄イオンが必要であるが、本リグニン抽出物は、当該鉄イオンに結合して錯体を形成して鉄イオンを消費する。本リグニン抽出物が鉄を消費することによって、細胞分裂が抑制される。これにより、細胞増殖抑制作用が発揮されるものと考えられる。
がん細胞は細胞分裂が活発であることから、鉄を一層必要とする。このため、本リグニン抽出物は、細胞分裂を抑制する作用により、腫瘍細胞の増殖を抑制することができる。これにより、抗腫瘍作用を発揮するものと考えられる。
また、ウイルスが増殖する際にも鉄が必要である。このため、同様に、リグニン抽出物は、ウイルスの増殖抑制作用を発揮するものと考えられる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(リグニン抽出物)
本薬剤の有効成分であるリグニン抽出物は、水系媒体の存在下、鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させて、前記リグニン含有材料中のリグニンの分解を促進することによって前記リグニン含有材料から抽出される。以下、このリグニン抽出物(以下、本リグニン抽出物という。)の製造方法について説明する。
(リグニン抽出物の製造方法)
(リグニン含有材料)
リグニン含有材料としては、植物構造体に含まれているリグニン又は当該リグニンの誘導体を含んでいればよい。すなわち、ここでいうリグニン及び当該リグニン誘導体は、パルプ製造工程において強アルカリ下や強酸下でのリグニンの重縮合を促進する条件下で処理されたリグニンを実質的に含まないものである。したがって、本明細書におけるリグニン含有材料は、黒液などを含まない。
こうしたリグニン含有材料としては、植物由来のリグノセルロース系材料のそのまま、あるいは緩和な条件で処理されたリグノセルロース系材料処理物が挙げられる。リグノセルロース系材料としては、植物の全体又は部分、木質部分を有する加工品等が挙げられる。植物としては、特に限定しないが、針葉樹、広葉樹、ユーカリ等の木本類ほか、イネ、ムギ、トウモロコシ、サトウキビ、ケナフ、ゲットウ(月桃)、クマザサなどのササ、タケ等の草本類が挙げられる。植物由来のリグノセルロース材料の非利用材料を用いることもできる。非利用材料としては、間伐材、剪定された植物の枝葉等、マツカサなどの非食用である果実、食用部分の収穫後の茎葉等が挙げられる。なかでも、リグノセルロース系材料としては、草本類の茎葉を好ましく用いることができる。これらは、木本類よりも組織が粗であるため、効率的にリグニン抽出物を得ることができる。また、クロロフィルを含有する葉の部分を用いることで、リグニン抽出物にクロロフィル抽出物も含まれることになる。
リグニン含有材料は、抽出効率を考慮すると、ある程度破砕されていることが好ましい。例えば、草本類由来のリグノセルロース系材料は、適度に切断されていることが好ましく、木本類のリグノセルロース系材料は、チップ状あるいは粉末状となっていることが好ましい。
また、リグニン含有材料としては、リグノセルロース系材料を緩和な条件で処理した材料であってもよい。例えば、特開平2−233701号公報や特開平9−278904号公報に記載のリグノフェノール誘導体等が挙げられる。また、茶ガラ、杉酒等の植物性の食品廃棄物等が挙げられる。例えば、クマザサから精油を水蒸気蒸留で抽出し、精油を分離後の蒸留水にはクマザサのリグニン由来のポリフェノール類が含まれている。こうした蒸留残渣もリグニン含有材料として用いることができる。さらに、サトウキビの搾汁後の残渣であるバガス、リグノセルロースからセルロースを分離後の残渣等も挙げられる。かかる緩和な条件としては、好ましくは、100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下、一層好ましくは60℃以下の温度で、弱アルカリ〜弱酸のpH条件(例えば、pH10〜2程度)での処理が好ましい。
(鉄イオン)
鉄イオンは、水の存在下で2価又は3価のイオンとして存在できればよい。いずれの形態であっても、水の存在下で、結果的にリグニンの分解を促進することができる。こうした鉄イオン源としては、硫酸鉄(II)(FeSO4)、硫酸第二鉄(III)((Fe)2(SO43)、いわゆる鉄さび(酸化鉄(III)及びその水和物、酸化鉄(II、III)及びその水和物、水酸化鉄、各種オキシ水酸化鉄)が挙げられる。こうした鉄錆びは、水の存在下において、鉄イオン(II)や鉄イオン(III)を生成する鉄イオン源となる。また、金属鉄が錆びるときには、水の存在下で鉄イオン(Fe(II))が溶出し、水酸化鉄を経て、結果としては、鉄(III)の含水酸化物などのオキシ水酸化鉄(III)が生成し、あるいは鉄イオン(II)が空気酸化されて鉄イオン(III)となって、結果として、鉄(III)の含水酸化物などのオキシ水酸化鉄(III)を生じうる。このため、金属鉄あるいは鉄を含む金属合金も鉄イオン源となりうる。したがって、例えば、抽出工程に用いる混合機や圧搾機が鉄製内表面を有するもの及び当該内表面に鉄錆びを有するものも鉄イオン源となる。
鉄イオン(III)は、抽出物の安定性(嫌気発酵(腐敗))の抑制、コスト、入手容易性等の観点においても好ましい。
(抽出工程)
リグニン含有材料からの本リグニン抽出物を生成させ抽出する工程は、鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させる、リグニンの酸化を促進する工程である。この工程により、リグニンを分解し、低分子化し、及び/又は緩やかに改変できる。
抽出工程は、水の存在下で行う。鉄イオン(II)及び(III)を介在させるためである。抽出工程における水は、リグニン含有材料自体から細胞液又は細胞間液として供給されるほか、リグニン含有材料に付随するとしても供給されうる。また、水は、別途抽出工程に供給されてもよい。抽出工程における水は、リグニン含有材料と空気中の酸素との接触が適度に可能な程度であることが好ましい。気液界面によって、リグニンの分解が促進されるからである。特に、草本類のリグノセルロース系材料を用いる場合には、水性媒体は必ずしも添加する必要はないが、抽出液の濃度や抽出効率を考慮して適宜水等を添加することができる。一方、木粉等の木本類のリグノセルロース系材料を用いる場合には、適量の水を用いることが好ましい。
抽出工程においては、水のほか他の溶媒を積極的に添加することもできる。こうした溶媒は、水を相溶するかあるいは相分離するものであってもよいが、水の存在によるリグニンの分解等を阻害しないものを適宜選択することができる。
抽出工程は、金属イオンが存在しうる状態で適宜リグニン含有材料を静置してもよいし、混合してもよい。金属イオンを含む水性媒体中にリグニン含有材料を浸漬しておくと抽出物を得られやすくなる。例えば、抽出工程で用いる金属塩の溶液中にリグニン含有材料を1時間から24時間程度浸漬しおくことで、緩やかに金属イオンとリグニン含有材料との接触が実現する。その後の発酵を考慮すると、常温あるいはそれよりも低温下で静置するのが好ましい。浸漬後のリグニン含有材料は、浸漬液とともに混合、発酵等を引き続き行ってもよいし、浸漬後のリグニン含有材料を新たに鉄イオンと接触させて抽出工程を行ってもよい。抽出工程を実施してもよいし、浸漬液から分離したリグニン含有材料につき改めて金属イオンと接触させて抽出工程を実施してもよい。
抽出工程において、金属イオンを含んだ水系媒体下でリグニン含有材料を混合(攪拌や振動による)することができる。混合等を伴う抽出工程の時間は、特に限定しないが、例えばリグノセルロース系材料からリグニン抽出物を得る場合には、リグニンによるセルロースの拘束状態がおおよそ解除される程度に行われればよい。特に限定しないが、例えば、数十分〜数時間程度で実施することができる。抽出工程においては、必要に応じ、混合等を停止したりすることもできる。また、抽出工程では、適宜、金属塩溶液を添加するなどして金属イオン濃度を調節することを含んでいてもよい。
また、抽出工程では、リグノセルロース系材料の形態によっては、圧搾や破砕を伴うこともできる。
抽出工程における混合・撹拌や、圧搾・破砕は、鉄イオンとリグニン含有材料との接触機会、接触面積及び接触時間を増大させることのほか、鉄イオンとリグニン含有材料との接触及びリグニンの分解を気体と液体との気液界面で生じさせることにも意義がある。こうした条件下では、鉄イオンの存在に基づくフェントン反応によりリグニンの分解が促進されると考えられるからである。
抽出工程における金属イオンの存在量は、特に限定しない。草本類の茎葉の破砕物をリグニン含有材料として用いるとき、十分量の金属イオンの存在により抽出液が着色する。例えば、鉄イオンの場合は黒色化する。したがって、抽出液の外観色を観察することで適当な金属イオン濃度を設定できる。金属イオンとして鉄イオンを用いる場合、典型的には、硫酸第二鉄溶液を用いることができる。また、鉄イオン濃度も特に限定しない。一例としては、硫酸第二鉄溶液として、0.2g/l以上1g/l以下程度の溶液を用いることができる。
鉄イオンを利用した処理を促進するには、リグニン含有材料の発酵を伴うことが好ましい。理由は明らかではないが、細胞増殖抑制作用の優れた本リグニン抽出物を得ることができる。発酵には、常在菌であってもよいが、好ましくは乳酸菌を用いる。乳酸菌としては、特に限定しないが、ラクトバシラス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、リューコノストック属等、公知の乳酸菌を適宜選択して用いることができる。例えば、Lactobacillus casei strain shirota、L.カゼイ YIT 9029等が好ましい。
発酵は、好ましくは好気発酵にて行う。発酵における好気条件は特に限定しないが、好気的発酵を維持でき、リグニンの分解を促進できる範囲に適宜設定すればよい。また、発酵のための温度条件も特に限定しないが、25℃以上40℃以下程度とすることができる。また、撹拌/通気条件も特に限定しないで、好気的発酵を維持でき、リグニンの分解を促進できる範囲で適宜設定すればよい。例えば、当初の24時間程度を撹拌通気培養し、その後72時間程度を静置培養としてもよい。この他、良好な好気発酵を確保できるように当業者であれば各種の条件を適宜設定することができる。
抽出工程に先立ってあるいは抽出工程における発酵に先立って、リグニンの分解を促進し、あるいはセルロースとの分離を促進する各種操作を実施することができる。例えば、特開平2−233701号公報や特開平9−278904号公報に記載のリグノフェノール誘導体化、リグノセルロース材料の破砕や抽出処理に用いられる爆砕や蒸煮、酸化処理、還元処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理、微生物処理、水や有機溶媒の亜臨界流体処理、超臨界流体処理等が挙げられる。これらの処理は、好ましくは、抽出工程に先立って行う。
なお、酸化処理用の酸化剤としては、オゾンやFe3+−HCl系、アルカリ−H22系、Ce4+などが挙げられる。還元処理用の還元剤としては、テトラヒドリドアルミン酸リチウムやテトラヒドロホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。なかでも、リグニンに含まれるカルボニル基を選択的に還元するテトラヒドロホウ酸ナトリウムが好適に用いられる。アルカリ処理用の薬剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニア、炭酸ナトリウウム、ホウ酸ナトリウムなど種々の塩基性化合物が挙げられる。酸処理用の薬剤としては、硫酸や塩酸、硝酸、燐酸、有機酸などが好適に用いられる。酵素処理としては、リグニンの断片化を促進するペルオキシダーゼや配糖体を形成する糖化酵素、グルクロン酸化するグルクロン酸転移酵素などが好適に用いられる。
抽出工程に先立って、あるいは抽出工程における発酵に先だって、リグニンの溶出を促進し、金属イオンとの結合を促進するために加熱してもよい。例えば、80℃以上100℃以下程度に加熱することが好ましい。好ましくは、80℃以下である。また、加圧も要するものではないが、加圧してもよい。これらの処理は、好ましくは抽出工程に先だって行う。
抽出工程実施後の抽出液は、リグニンを鉄イオンの存在下での分解物を含んでいる。抽出液中には、リグノセルロース系材料をリグニン含有材料に用いた場合など、高分子リグニンが固形分として存在する場合がある。この場合には、必要に応じ、遠心分離やろ過などにより公知の固液分離手法により液体部分をリグニン抽出物として分離することができる。また、使用したリグニン含有材料の種類やリグニン抽出物の用途に応じ、抽出液中の夾雑成分を適宜除去してもよい。
抽出工程により得られる抽出液は通常着色している。抽出液にクエン酸などの酸や、他のハーブ等の植物をクエン酸で抽出した抽出物(典型的には抽出液)を添加することで、抽出液の色調を淡色側に変化させたり、明度を向上させたりすることができる。このような色調調製用の抽出物としては、例えば、シソ葉、ハイビスカスの花弁、桜葉等の淡ピンク色〜淡紫色を呈するようなクエン酸抽出液を用いることができる。クエン酸濃度は適宜設定すればよい。なお、色調調整は出来るだけ低温で実施することが好ましい。
(本リグニン抽出物)
本リグニン抽出物は、鉄イオン存在下でのリグニンの抽出物であり、典型的には、本明細書に開示される上記した製造方法によって得ることができる。本リグニン抽出物は、液状、スラリー状、ペースト状、粉末等の固体状であってもよい。例えば、上記方法による抽出液をそのままであってもよいし、希釈、濃縮等したものであってもよい。また、抽出液をフリーズドライ等により乾燥して固形化したものであってもよい。本リグニン抽出物には、腐敗防止作用があり、それ自体安定性に優れている。
本リグニン抽出物は、抗腫瘍作用を発揮することができる。抗腫瘍作用とは、限定しないが、例えば、腫瘍増殖(例えば腫瘍増殖の遅延)、腫瘍サイズ又は転移の調節、特定の抗癌剤に伴う毒性及び副作用の低減、癌の臨床的障害又は症状の緩解又は最小限化、対象の延命、及び、投与前の何れの腫瘍形成も有さない動物における腫瘍増殖の防止、即ち予防的投与を含む。
したがって、本リグニン抽出物を抗腫瘍剤の有効成分として用いることができる。抗腫瘍剤によって治療できる腫瘍としては特に制限されるものではなく、固形癌であってもよいし、血液癌であってもよい。固形癌としては、例えば、結腸・直腸癌、肝臓癌、腎臓癌、頭頸部癌、食道癌、胃癌、胆道癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、皮膚癌、脳腫瘍、睾丸腫瘍等が挙げられ、血液癌としては、例えば、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫が挙げられる。好ましくは肺癌、食道癌、肝臓癌及び皮膚癌である。
抗腫瘍剤は、医薬品等として各種形態を採ることができる。具体的には、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、液剤、注射剤、軟膏剤、エキス剤、エリキシル剤、懸濁剤などとして使用することができる。
本リグニン抽出物は、抗菌作用を有している。抗菌作用とは、細菌を死滅させる作用(殺菌作用)と細菌の増殖を抑制する作用(静菌作用)を含む。したがって、本リグニン抽出物を抗菌剤の有効成分として用いることができる。本リグニン抽出物は、鉄イオンに結合して錯体を形成することによって、細胞への鉄イオン供給を阻害する作用があると考えられる。そのため、本リグニン抽出物が抗菌作用を示す細胞は、特に制限されるものではなく、グラム陽性菌であっても、グラム陰性菌であってもよい。グラム陽性菌としては、例えば、ブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌、ジフテリア菌、ボツリヌス菌が挙げられる。好ましくはブドウ球菌である。グラム陰性菌としては、例えば、淋菌、髄膜炎菌、インフルエンザ菌、大腸菌、サルモネラ菌、肺炎桿菌、赤痢菌、緑膿菌、歯周病菌が挙げられる。好ましくは、大腸菌である。好ましくは、歯周病菌である。歯周病菌には、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プレボテーラ・インターメディア、アクチノバシラス・アクチノマイセテムコミタンス等が含まれる。より好ましくは、ポルフィロモナス・ジンジバリスである。
抗菌剤は、医薬品、化粧品及び医薬部外品等として各種形態を採ることができる。具体的には、医薬品では、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、液剤、注射剤、軟膏剤、エキス剤、エリキシル剤、懸濁剤、リニメント剤、ローション剤などとして、化粧品等では、歯磨剤、ローション、クリーム、乳液、おしろい、化粧油、頭髪用化粧品、染毛料、練香水、パウダー、パック、ファンデーション、粉末香水、頬紅、アイライナー、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、眉墨、口紅、リップクリーム、石鹸、洗顔料、シャンプー、リンスなどとして使用することができる。
本リグニン抽出物は、抗ウイルス作用を有している。抗ウイルス作用とは、ヒトや動物の感染症の原因となる病原性ウイルスの感染性を不活性化する作用、あるいは既に宿主細胞に感染したウイルスの細胞内における増殖を抑制する作用を意味するこのため、本リグニン抽出物を抗ウイルス剤の有効成分として用いることができる。また、抗ウイルス剤の対象となるウイルスとしては特に制限されるものではなく、例えば、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルス、RS(respiratory syncytial virus)ウイルス、インフルエンザウイルス、HIV(Human Immunodeficiency Virus)ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが挙げられる。
抗ウイルス剤は、医薬品、化粧品及び医薬部外品等として各種形態を採ることができる。具体的には、医薬品では、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、液剤、注射剤、軟膏剤、エキス剤、エリキシル剤、懸濁剤、リニメント剤、ローション剤などとして、化粧品等では、歯磨剤、ローション、クリーム、乳液、おしろい、化粧油、頭髪用化粧品、染毛料、練香水、パウダー、パック、ファンデーション、粉末香水、頬紅、アイライナー、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、眉墨、口紅、リップクリーム、石鹸、洗顔料、シャンプー、リンスなどとして使用することができる。
また、リグニン抽出物は、抗アレルギー作用に基づき、抗アレルギー剤として用いることができる。抗アレルギー剤は、化粧品、医薬部外品及び医薬品等の各種形態を採ることができる。具体的には、化粧品等の形態としては、ローション、クリーム、乳液、おしろい、化粧油、頭髪用化粧品、染毛料、練香水、パウダー、パック、ファンデーション、粉末香水、頬紅、アイライナー、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、眉墨、口紅、リップクリーム、石鹸、洗顔料、シャンプー、リンス等が挙げられる。また、医薬品等としては、エアゾール剤、液剤、エキス剤、軟膏剤、眼軟膏剤、懸濁剤、貼付剤、パップ剤、リニメント剤、ローション剤等が挙げられる。
本発明のリグニン抽出物を含有する上記各種製剤(皮膚外用剤)は、リグニン抽出物以外の各種効能を有する成分をさらに含んでいてもよい。例えば、保湿剤、角質改善剤、角質溶解剤、抗生物質、皮膚透過促進剤、血行促進剤、消炎剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、鎮痛剤、皮膚軟化剤、皮膚緩和剤、創傷治療剤、新陳代謝促進剤が挙げられる。
本リグニン抽出物を含有する各種製剤は、本リグニン抽出物以外の各種効能を有する成分をさらに含んでいてもよい。抗腫瘍剤は、例えば、多剤併用療法を目的として他の抗腫瘍剤、癌に伴う症状や治療による副作用を予防又は軽減させるために鎮痛剤、制吐剤、瀉下剤、止瀉剤、気管支拡張剤、心疾患治療剤等を含んでいてもよい。抗菌剤及び抗ウイルス剤は、例えば、鎮痛剤、抗炎症剤等を含んでいてもよい。
本リグニン抽出物を含有する各種製剤は、これら製剤において薬学的に許容される各種成分を含むことができる。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、無痛化剤等が挙げられる。
なお、各成分の添加量や添加方法及び製剤化方法については、本技術分野に周知の方法に従うことができる。当業者は、上記の一般的な説明及び実施例の具体的開示を基にして、または必要に応じてそれらに適宜修飾や改変を加えることにより、本リグニン抽出物を含有する上記各種製剤を容易に製造できる。製剤中におけるリグニン抽出物含有量は、特に、特に限定されず、製剤の用途に応じて適宜選択される。
本発明のリグニン抽出物を有する各種製剤の用法は特に限定しない。即ち、これらの製剤は、上述したように、内服剤あってもよいし、外用剤であってもよいし、注射剤であってもよい。また、これらの製剤の用量も特に限定しないが、例えば、体重1kgあたり10〜30mgを1日1回投与することが考えられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(リグニン抽出物の調製)
本実施例では、草本系の事例として、ショウガ科ハナミョウガ属の月桃(ゲットウ(サンニン))の茎葉部分(3キログラム単位)の破砕物を鉄イオン源としての錆びを内部に有する鉄製破砕機に投入し、水を添加することなく、植物から抽出される液を利用して、25℃〜35℃で、連続振動して常在菌での発酵を1週間継続し、20〜25mmのフィルター処理後にクエン酸紫蘇溶液で色を調整し、孔径0.45μmのフィルター(ミリポア社製)によって再度濾過した。
(ヒト肺癌細胞、ヒト食道癌細胞、ヒト肝臓癌細胞及びヒト皮膚癌に対する増殖抑制作用の評価)
実施例1で調製したリグニン抽出物溶液を用いて、以下の方法で、肺癌細胞、食道癌細胞及び肝臓癌細胞に対する抗腫瘍作用を評価した。肺癌細胞株(A549細胞)、食道癌細胞株(TE4細胞)、肝臓癌細胞株(HLE細胞)肝臓癌細胞株(Huh−7細胞)及び皮膚癌細胞株(HYM−1)を、10%FBS、1%NEAA、1mmol/l ピルピン酸ナトリウム含有MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。なお、Huh−7細胞は、鉄キレート剤であるDeferasiroxに抵抗性を示す細胞である。回収した細胞を、2×105cells/mlの濃度に上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μlずつを播種し、一晩培養した。培養終了後、培地を除去し、0.5%FBS含有MEMに溶解したリグニン抽出物溶液を各ウェルに添加し、リグニン抽出溶液の質量%濃度をそれぞれ、10%、5%、2%、1%、0.1%とした。次いで、細胞を3日間培養した。3日の培養終了後、回収した細胞をトリパンブルー染色し、その結果から、細胞生存率を評価した。また、リグニン抽出物溶液を添加せずに、各細胞について同様に実験を行った。
また、リグニン抽出物に代えて、Deferasiroxを用いて、同様に実験を行った。具体的には、Deferasiroxの濃度が100μM、10μM、1μMとなるようにし、細胞を2日間培養した。2日間の培養終了後、細胞生存率を評価した。また、Deferasiroxを添加せずに、同様に実験を行った。
培地中にリグニン抽出物を添加して培養したA549細胞と、Deferasiroxを添加して培養したA549細胞と、の細胞生存率を図1に示す。
図1上側に示すように、リグニン抽出物濃度依存的にA549細胞の生存率は低下した。即ち、リグニン抽出物が、肺癌細胞に対する抗腫瘍作用を有すること、特に、リグニン抽出物が高濃度の場合に、抗腫瘍作用が大きくなることが分かった。
図1下側に示すように、Deferasirox濃度依存的にA549細胞の生存率は低下した。即ち、鉄キレート剤の抗腫瘍作用は、リグニン抽出物の抗腫瘍作用と同様の挙動を示すことが分かった。この結果は、リグニン抽出物が鉄と錯体を形成することによって抗腫瘍作用を示すという仮説を支持するものである。
培地中にリグニン抽出物を添加して培養したTE4細胞の細胞生存率を図2に示す。
図2に示すように、リグニン抽出物濃度依存的にTE4細胞の細胞生存率は低下した。即ち、リグニン抽出物が、食道癌細胞に対する抗腫瘍作用を有すること、特に、リグニン抽出物が高濃度の場合に、抗腫瘍作用が大きくなることが分かった。
培地中にリグニン抽出物を添加して培養したHLE細胞の細胞生存率を図3に示す。
図3に示すように、リグニン抽出物濃度依存的にHLE細胞の生存率は低下した。即ち、リグニン抽出物が、肝臓癌に対する抗腫瘍作用を有すること、特に、リグニン抽出物が高濃度の場合に、抗腫瘍作用が大きくなることが分かった。
培地中にリグニン抽出物を添加して培養したHuh−7細胞と、Deferasiroxを添加して培養したHuh−7細胞と、の細胞生存率を図4に示す。
図4上側に示すように、500μMのDeferasiroxを添加することによってHuh−7細胞の細胞生存率が低下しているものの、それ以下の濃度のDeferasiroxを添加することによっては、Huh−7細胞の細胞生存率は低下しなかった。即ち、Huh−7細胞がDeferasirox抵抗性であることが確認された。
図4下側に示すように、ほぼリグニン抽出物濃度依存的にHuh−7細胞の細胞生存率は低下した。即ち、リグニン抽出物が、Deferasirox抵抗性肝臓癌細胞に対しても抗腫瘍作用を有すること、特に、リグニン抽出物が高濃度の場合に、抗腫瘍作用が大きくなることが分かった。
培地中にリグニン抽出物を添加して培養したHYM−1細胞の細胞生存率を図5に示す。図5に示すように、リグニン抽出物は、ヒト皮膚癌細胞に対して濃度依存的にその増殖を抑制することがわかった。
以上のことから、本リグニン抽出物は、各種の癌細胞に対して増殖抑制作用を有することがわかった。
(歯周病菌に対する細胞増殖抑制作用の評価)
実施例1で調製したリグニン抽出物溶液を用いて、以下の方法で、抗菌作用を評価した。寒天培地に、リグニン抽出物溶液が5、10及び20質量%となるように添加した5%ウマ脱繊維血液添加Brucella Agar15mlをプラスチックシャーレ(直径90mm)に分注して、固化し、試験平板とした。次いで、各培地に嫌気性グラム陰性桿菌で歯周病菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスの試験菌液0.1ml(103/ml)を塗布し、7日間35℃で嫌気培養した。培養後、集落数を計測した。リグニン抽出物を添加せずに、同様に実験を行った。各リグニン抽出物濃度における集落数を表1に示す。
表1に示すように、リグニン抽出物を添加することによって、ポルフィロモナス・ジンジバリスの集落数が減少した。以上のことから、本リグニン抽出物が、グラム陰性桿菌である歯周病菌の増殖抑制作用を有することがわかった。
(A型インフルエンザウイルスの増殖抑制作用の評価)
実施例1で調製したリグニン抽出物溶液を用いて、以下の方法で、抗ウイルス作用を評価した。イーグルMEM培地「ニッスイ」(日水製薬株式会社製)100質量部に対し、ウシ胎仔血清10質量部を加えて、細胞増殖培地とした。イヌ由来の腎細胞((MDCK(NBL−2)細胞ATTC CCL−34株(大日本製薬株式会社製))を細胞増殖培地を用いて組織培養用フラスコ内で常法に従い単層培養した。単層培養後した後に、回収した細胞にInfluenza A virus (H1N1) A/PR/8/34 ATCC(登録商標) VR-1469(American Type Culture. Collection製)を接種した。
イーグルMEM培地「ニッスイ」1000mL、10%NaHCO314mL、L−グルタミン(30g/L)9.8mL、100×MEM用ビタミン液30mL,10%アルブミン20mL及び0.25%トリプシン20mLの組成で細胞維持培地を作製した。次いで、細胞を細維持培地を用いて37±1℃、炭酸ガスインキュベータ(CO2濃度5%)内で1〜5日培養した。培養した後に、倒立位相差顕微鏡を用いて、回収した細胞の形態を観察し、細胞変性による形態変化が起こっていることを確認した。次いで、回収した細胞を3000rpm、10分間遠心分離し、得られた上清をウイルス浮遊液とした。
実施例1で調製したリグニン抽出物溶液1mLをメンブランフィルター(孔径0.45μm)でろ過し、ウイルス浮遊液0.1mLを添加し、作用液とした。作用液を室温で24時間放置した後に、細胞位置培地を用いて10倍に希釈した。なお、対照実験として、作用液に代えて、精製水を用いて、対照液を作製した。
ウイルス感染価は以下のように測定した。MDCK細胞を細胞増殖培地を用いて組織培養用96穴マイクロプレート内で常法に従い単層培養した。単層培養後した後に、細胞増殖培地を除き、細胞維持培地を0.1mLずつ加えた。さらに、細胞維持培地で10倍希釈し、検体希釈液を作製した。次いで、10倍希釈後の作用液、対照液のそれぞれを、検体希釈液を用いて10倍に段階希釈した。希釈後の各液を0.1mLずつ4穴に接種し、37±1℃の炭酸ガスインキュベータ(CO2濃度5%)内で4〜7日培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて、回収した細胞の形態を観察し、細胞変性による形態変化が起こっているか否かを確認し、Reed-Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して、作用液1mL当たりのウイルス感染価に換算した。 検体及び対象の1mL当たりのlogTCID50の値を表2に示す。
表2に示すように、本リグニン抽出物によれば、ウイルス濃度を有効に低減することができ、ウイルスの増殖抑制作用があることがわかった。
(GC−MSによるリグニン抽出物中の成分確認)
実施例1で得られたリグニン抽出物(原液)を、GC−MSを用いて一般的な条件で分析した。結果を図6に示す。
図6に示すように、リグニン抽出物中には、リグニンに由来すると考えられる各種の低分子化合物が確認できた。以上のことから、金属イオンとリグニン含有材料とを接触させることでリグニンは低分子化されると同時に安定化され、各種機能を有するリグニン抽出物が得られることがわかった。
(リグニン抽出物の毒性の評価)
実施例1と同様の手順で質量%濃度が20%であるリグニン抽出物溶液を調製した。20%リグニン抽出物溶液を用いて、以下の方法で、リグニン抽出物の毒性を評価した。まず、4匹のヌードマウスの体重を測定した。各ヌードマウスに対して、20%リグニン抽出物溶液を飲料水として適宜(給水ボトル式)で与えた。週間後、各ヌードマウスの体重を測定し、皮膚の変化と排泄物の色調とを観察した。リグニン抽出物投与前後の各ヌードマウスの体重と、体重の増減と、を表3に示す。
表3に示すように、いずれの個体においてもリグニン抽出物の投与前後で体重はほとんど変化しなかった。また、いずれの個体においても皮膚の変化は見られず、排泄物の色調の変化も見られなかった。即ち、本実施例におけるリグニン抽出物の投与量では、毒性を示さないことが分かった。
(HIVウイルスに対する増殖抑制作用の評価)
まつかさの粉末の懸濁液に対して硫酸第二鉄を加えて、まつかさ粉末100mg/ml、硫酸第二鉄1.0mg/mlの溶液を調製し、常温で乳酸菌を加えて軽く撹拌しつつ発酵した。その後、培養液をろ過して、ろ液についてCC50(50%毒性濃度)及びEC50(50%効果濃度)を測定した。その結果、CC50は、562μg/mlであり、EC50は、3.74μg/mlであった。
(リグニン含有材料からのリグニン抽出物の取得及び抗菌評価)
(1)クマザサの小片5gを5%濃度の水酸化ナトリウム溶液100mlに7日間浸漬し、25℃〜35℃の室温で、硫酸第二鉄(III)0.1gを添加したのち、乳酸菌1ml(約4億〜5億個)を投入して発酵を行った。培養液を固液分離後、孔径0.25mmのフィルターで濾過し、色調を整えるため、紫蘇クエン酸抽出液半量を投入して、クマザサの破砕物の質量基準で質量濃度50%に調整後に、さらに孔径0.45μmのフィルター(ミリポア社製)によって再度濾過した。なお、紫蘇クエン酸抽出液は、赤・青紫蘇約300gを1.8Lの水で数分煮だした後、35gのクエン酸を添加したものであった。
(2)スギの粉0.5gを20%濃度の水酸化ナトリウム水溶液400mlに7日間浸し、精製水400mlを加えて調整した100mlの溶液に10分の1量の杉の粉を残し、25℃〜35℃の室温で、硫酸第二鉄(III)0.1gを添加したのち、乳酸菌1ml(約4億〜5億個)を投入して発酵を行った。培養液を固液分離後、孔径0.5mmのフィルターで濾過し、色調を整えるため、紫蘇クエン酸抽出液半量を投入して、杉の破砕物の質量基準で質量濃度50%に調整後に、さらに孔径0.45μmのフィルター(ミリポア社製)によって再度濾過した。
上記(1)で得られたリグニン抽出液について、大腸菌、黄色ブドウ状球菌についての増殖抑制作用について評価した。その結果を、それぞれ表4に示す。
表4に示すように、いずれのリグニン抽出物についても大腸菌及び黄色ブドウ状球菌についての増殖抑制作用を確認できた。
(リグニン抽出物の調製)
本実施例では、ショウガ科ハナミョウガ属の月桃(ゲットウ(サンニン))の茎葉部分の破砕物を鉄イオン源としての錆びを有する内部に有する鉄製破砕機に投入し、水を添加することなく常温で圧搾抽出して黒褐色のリグニン抽出液を得た。この抽出液の固形分を遠心分離で除去して得られた褐色の上清を得た。得られた上清に、体積比で2倍量の水を添加して3倍希釈した。また、1倍量の水で2倍希釈した。実施例2、4及び5において3倍希釈液をリグニン抽出物として用い、実施例3において2倍希釈液をリグニン抽出物として用いた。なお、本実施例で調製したリグニン抽出物(原液)につき、3種の菌株(Salmonella typhimurium TA100、Eschericha coli WP2uvrA株、Salmonella yphimurium TA198株)につき、遺伝子突然変異誘発性試験(復帰突然変異試験)を行ったところ、変異誘発性は認められなかった。また、Marzulli-maibach法による刺激性と感作性を評価したところ(被験者50名)、刺激性及び感作性がなく、低アレルギー性であることが確認された。
本実施例で調製したリグニン抽出物(3倍希釈液)を用いて、抗アレルギー作用を評価した。被験者はラテックスアレルギー患者2名であり、用法及び用量は、症状が発現したときに、リグニン抽出物を患部に適量塗布した。その結果、被験者の2名について、かゆみが抑制され、アレルギー症状の改善が確認された。以上のことから、リグニン抽出物は、特に初期の炎症を抑制する抗アレルギー作用を有することが分かった。

Claims (10)

  1. 鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させることによって前記リグニン含有材料中のリグニンの分解を促進することによって抽出されるリグニン抽出物を有効成分とする、細胞増殖阻害剤。
  2. 前記リグニン抽出物は、前記リグニン材料を鉄イオンの存在下発酵させることによって前記リグニン含有材料から抽出される、請求項1に記載の細胞増殖阻害剤。
  3. 前記発酵は、乳酸菌を用いて行う、請求項2に記載の細胞増殖阻害剤。
  4. 前記リグニン含有材料は、草本類の茎葉を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞増殖阻害剤。
  5. 癌細胞の増殖を抑制する、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞増殖阻害剤。
  6. 前記癌細胞は、肺癌、皮膚癌、食道癌及び肝臓癌からなる群から選択される1種又は2種以上の癌の細胞である、請求項5に記載の細胞増殖阻害剤。
  7. 微生物の増殖を阻害する、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞増殖阻害剤。
  8. グラム陰性菌及びグラム陽性菌に対する抗菌作用を有する、請求項7に記載の細胞増殖阻害剤。
  9. 歯周病菌の増殖を阻害する、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞増殖阻害剤。
  10. 鉄イオンとリグニン含有材料とを接触させることによって前記リグニン含有材料中のリグニンの分解を促進することによって抽出されるリグニン抽出物を有効成分とする、ウイルスの増殖阻害剤。
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