JP2020020707A - 自然現象観測データ情報処理システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 様々な自然現象を表現する物理量を観測し、統合的に解析することで空間解像度を高めるとともに、予測精度も向上させること。【解決手段】 あらかじめ取得した過去の観測データを用いて観測値に影響する環境要因や定常的変動を特定して自然現象の変化のモデルを構築し、実際の観測データにそのモデルを当てはめることで、地震に関与しない変動を除去する。具体的には、各自然現象について、観測データに影響を与える可能性のある要因との関連性を線形モデルや非線形モデル、時系列モデルにより探索し、影響する要因を用いた観測データの予測モデルを構築する。構築したモデルを用いて各観測日の予測値を算出し、予測値と実測値の差分をとることで、補正観測データを算出する。【選択図】 図2
Description
本発明は情報処理システム、方法およびプログラムに関し、より具体的には、様々な自然現象の観測データにおける異常値とその判定基準を設定するための情報処理システム、方法およびプログラムに関する。
従来から、様々な自然現象、例えば地震や洪水、台風などの甚大な人的および経済的被害が発生しており、これらを事前に予知するため様々な研究が行われてきた。例えば、日常災害とは無関係と思われるような自然現象が、系統的な解析を行うことにより災害に関して一定の規則性を有している可能性が有り、地震についていえば、地表面の地殻変動や、井戸の水位急変や、動物の異常行動など明らかに大地震に関連して発生しているパターンが過去発見されている。
具体的には、大地震発生前に特徴のあるパターンで発生することがある地殻変動や電磁波の変化、ラドンガスの検出といった様々な自然現象と地震との関連性が研究され、地震予測への応用も試みられてきた。例えば、地球の表層を成す地殻と、地下にあるマントルの間にはプレートと呼ばれる岩盤が存在し、日本列島の周辺には4枚のプレートが存在する。マントルは常に対流しており、それに伴ってプレートも移動し、プレート間やプレート内には歪みが生まれる。この歪みが限界に達し、その歪みを解消する際に地震が発生すると考えられており、これはプレートテクトニクス理論と呼ばれ、地震発生のメカニズムの一つとして知られている。
ここで、地震前に発生する予兆現象は、一般に地震発生前における震源域周辺の地殻にかかる応力変化をトリガーとする一連のプロセス中に生じる変化であると考えられる。これまでの研究により、地震との明確な関連性が報告されている現象は数多く存在する。しかし、観測される物理量は、全て自然現象であることから気象要因や人的要因などによる影響を受けるため、地震に関連しない変動成分が混入する。このため、地震の数ヶ月前から直前にかけて現れる前兆現象の利用を含めた「短期地震予知」の実現は困難であると近年では一般に認識されており、さらに現状では観測点数にも限界があり、前兆現象を観測するために必要な広域にわたる機器の設置ができないことから詳細な震源域の予測は困難な状態である。
そのような状況であっても、こと人類に甚大な影響を与える大きな地震に関しては、地震の前後で地形をはじめ多くの地表および内部の変化が発生しており、通常の自然現象における上記のような問題があったとしても、過去の大地震前後の地形の変化や、特異な自然現象を分析することは将来の地震対策の指針を与えるものと言える。
このような予兆や自然現象の中で地震前後で明らかな変化が観測される可能性の高い自然現象で基本となるのが地殻変動である。一般に、大きな地震の発生前後では地形が変化するほどの地殻変動が発生しているのが通常であり、少なくとも地震発生前にプレート等の大きなストレスにより様々な地殻変動を観測することができることから、地殻変動データを蓄積して、地震の予兆の発見の基本データとして、その他の自然現象を補助データと合わせて用いることは極めて有効である。例えば、特許文献1の地震発生予測情報提供方法では、一定期間ごとの近くの平均変動量を計算し、過去の平均変動量のパターンとその近辺で発生した地震とを対応付けて地震発生を予測する技術が開示されている。具体的には、国土地理院の提供する電子基準点の位置を取得し、電子基準点の1週間ごとの平均変動量を計算し、過去の平均変動量のパターンとその近辺で発生した地震とを対応付けて地震発生を予測する技術が開示されている。また、この予測手法により提供された予測情報と実際に発生した地震情報を照合して地震予測の的中率も公開されており、その的中率の高さから、地殻変動の観測は有効な地震予測手法であるということができる。
国際公開第2015−025340号公報
以上の通り、地殻変動は、電子基準点の座標データという一定周期で確実に観測可能な自然現象として有用である。しかし、地殻変動で観測される予兆現象は、プレート境界型地震の場合、数週間前から生じる例があり十分に予兆として活用できるが、断層型地震の場合、地震発生1〜2日前に地殻変動が発生する事例が多く、地震予測情報を提供するには地震発生までの期間が短すぎて有効に活用できないという問題がある。さらに、都市部のように人工的な振動の多い地域では座標データに多くのノイズが加わってしまうことから電子基準点の数が少なく、全体として観測点数の拡大には限界があり、地殻変動の観測データに頼った場合空間解像度の低い予測となって、予測される震源域が広範囲に及び一定の範囲に特定できないという問題がある。本発明では、このような単一の自然現象だけでなく複数の自然現象の観測データに基づく多方式地震前予兆現象観測システムを用いることにより、この問題を解決することができる。すなわち、様々な自然現象を表現する物理量を観測し、統合的に解析することで空間解像度を高めるとともに、予測精度も向上させることができる。
請求項1に記載の発明は、継続して取得可能な自然現象の定量的数値の変動状況に基づいて自然現象の異常状態を判定するための閾値を取得する方法であって、定量的数値を一定の時間間隔で測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、取得された測定値と取得時間とから、自然現象に適用する所定のモデルに基づいて各取得時の予測値を算出する予測値算出ステップと、取得した測定値と算出した予測値との差異に基づいて、異常状態を判定するための閾値を決定する閾値決定ステップとを備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、予測値算出ステップは、取得された測定値と取得時間とから、最小二乗法により各取得時の予測値を算出することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、予測値算出ステップは、取得された測定値をy、予測値をxとして、以下の式から最小二乗法により予測値を算出することを特徴とする、y’=y−(ax+b)、y’を残差、a、bを定数とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、閾値決定ステップは、取得した測定値と算出した予測値との差異の標準偏差を用いて閾値を決定することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の方法において、閾値決定ステップは、地理的に所定の範囲内で発生した災害の規模に応じて閾値を決定することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法において、自然現象の実測値に対して所定の補正処理を適用することにより、測定値を取得する補正処理ステップをさらに備えたことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の方法において、自然現象は、地殻変動、地下水の推移変動、微弱地震の発生頻度、地電流の変動または牛の搾乳量の変動であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、異常予測通知システムであって、自然現象の定量的数値を測定して測定値を取得する測定手段を備え、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により取得した閾値を用いて、取得した測定値が閾値を超えたとき、異常状態が発生する可能性のあることを通知することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、複数の自然現象で得られる定量的数値に基づいて異常状態が発生する可能性のあることを通知する異常予測通知システムであって、複数の自然現象の各々について定量的数値を測定して測定値を取得する測定手段を備え、請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により取得した閾値を用いて、取得した測定値のいずれかが閾値を超えたとき、各々の自然現象の値を総合して得られる異常判定値により異常状態が発生する可能性のあることを判定することを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の異常予測通知システムにおいて、以上判定値は、測定値と対応する閾値との差異に各々の自然現象に対し予め定められた所定の重みを付けて合算して得ることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、継続して取得可能な自然現象の定量的数値の変動状況に基づいて当該自然現象の異常状態を判定するための閾値を取得する方法をコンピュータに処理させるプログラムであって、方法は、定量的数値を一定の時間間隔で測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、取得された測定値と取得時間とから、自然現象に適用する所定のモデルに基づいて各取得時の予測値を算出する予測値算出ステップと、取得した測定値と算出した予測値との差異に基づいて、異常状態を判定するための閾値を決定する閾値決定ステップとを備えることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、継続して取得可能な自然現象の定量的数値の変動状況に基づいて自然現象の異常状態を判定するための閾値を取得するシステムであって、定量的数値を一定の時間間隔で測定した測定値を取得する測定値取得手段と、取得された測定値と取得時間とから、自然現象に適用する所定のモデルに基づいて各取得時の予測値を算出する予測値算出手段と、取得した測定値と算出した予測値との差異に基づいて、異常状態を判定するための閾値を決定する閾値決定手段とを備えることを特徴とする。
本発明によると、継続して取得可能な自然現象の定量的数値の変動状況に基づいて自然現象の異常状態を判定するための閾値を取得する方法であって、定量的数値を一定の時間間隔で測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、取得された測定値と取得時間とから、自然現象に適用する所定のモデルに基づいて各取得時の予測値を算出する予測値算出ステップと、取得した測定値と算出した予測値との差異に基づいて、異常状態を判定するための閾値を決定する閾値決定ステップとを備えているので、様々な自然現象を表現する物理量を観測し、統合的に解析することで空間解像度を高めるとともに、予測精度も向上させることが可能となる。
以下、本発明の情報処理システムについて、図面を参照して実施形態を説明する。なお、異なる図面でも、同一の処理、構成を示すときは同一の符号を用いる。
(本発明の実施形態への適用)
本実施形態は、背景技術でも述べたように電子基準点に基づく地殻変動に加えて様々な自然現象で周期的に得られる測定データを、異常状態という観点で各自然現象同士を比較できるような形に変換することに適用することができる。対象となる自然現象としては、例えば以下のものがあげられる。
本実施形態は、背景技術でも述べたように電子基準点に基づく地殻変動に加えて様々な自然現象で周期的に得られる測定データを、異常状態という観点で各自然現象同士を比較できるような形に変換することに適用することができる。対象となる自然現象としては、例えば以下のものがあげられる。
まず、地下水における異常である。井戸水に関する宏観異常現象は古くから報告されているが、実際地震発生前には、地殻変動に伴って地下水にかかる地中圧力にも変化が生じると考えられ、井戸水の水位を観測することで、地震発生前の地下圧力の変化を捉えることができると考えられる。国立研究開発法人 産業技術総合研究所によって日本全国36か所に水位観測用の井戸が設置されており、各観測井の水位データが公開されているため、リアルタイムな観測が可能である。
また、大地震発生前には群発地震や前震が観測されることがある。これは、地殻にかかるストレスが限界に達する直前に、歪が蓄積した領域において地殻の微小破壊が生じることによるものであると考えられる。微小破壊による振動は震度1未満であることが多いが、気象庁の震度計によって記録されているため、微弱地震の発生状況を観測することで大地震発生前の地殻の微小破壊を把握することができると考えられる。
これらのような地中における異常の他に、地震発生前には様々な電磁気学的異常が生じることが報告されている。特に地電流に関する異常は古くから報告されており、1995年に発生した兵庫県南部地震の発生前にも異常な地電流の発生が報告されている。実際、花崗岩のように石英を含む岩石の場合、その岩石を圧縮した際に電流が発生することが知られており、これはピエゾ効果と呼ばれている。地震前に現れる地電流変化は、地殻にかかるストレスが蓄積した際のピエゾ効果によって地面に電流が流れるために生じると考えられる。地電流は、東西方向と南北方向にそれぞれ2個の電流計を設置し、その電位差を求めることで測定できる。現在、気象庁は日本に3箇所(女満別、柿岡、鹿屋)に地電流を常時観測する地磁気観測所を設置しており、地磁気観測所から得られる南北方向、東西方向の地電流データが随時公開されていることから、この値を測定値として使用することにより、自然現象を定量的に扱うことができる。
また、地震発生前には動物の行動変化が古くから報告されている。地震発生前に発生する自然現象としては、地殻変動、地電流、地熱、地下水の水位および電磁波の変化、帯電またはエアロゾルおよびラドンの放出など様々なものが報告されており、これらのうち一つもしくは複数の変化に動物が曝露されたことによるストレス反応として、動物の行動変化が発生するものと考えられる。しかし、現時点での動物の行動変化に関する報告のほとんどは地震後の定性的調査によるものであり、継続して取得可能な自然現象の定量的数値とは言い難いものであった。そこで、発明者らは地震による動物行動の変化として搾乳牛の乳量に着目した。これまで前兆的行動の指標として搾乳牛における乳量の変化が知られており、搾乳牛の乳量は、様々なストレス刺激の曝露によって減少することが報告されている。例えば、牛は地面の電位差に敏感に反応し、乳量が減少することが知られており、このような行動の変化が地震発生前の環境中の変化に対するストレス反応とすれば、地震前の地電流の変化に伴って乳量は減少するという仮説を立てることができる。発明者らは、この仮説の下研究を進めた結果、過去データと地震との統計的関連性が明らかになった。したがって、搾乳牛の乳量も継続して取得可能な自然現象の定量的数値として扱うことが可能である。
以上、本実施形態では、これまでに数多く報告されてきた地震前の自然現象の変化(以降、地震前予兆現象ともいう)のうち、リアルタイムで観測が可能であり、発生メカニズムが理論的に解釈可能である地殻変動、地下水水位、微弱地震、地電流、および動物の行動の変化を対象として、地震の予兆にどのように結びつけるかを検討した。
すなわち、地震前予兆現象は様々な自然現象の変化であるため、得られた観測値はその自然現象に特有なものであり、そのまま地震予測に使用しようとしても各自然現象で基準が大きく異なり誤判定につながる恐れがある。さらに得られた観測データには、各自然現象により異なる、地震とは関係のない様々な変動成分が混入している。そのため、あらかじめ取得した過去の観測データを用いて観測値に影響する環境要因や定常的変動を特定して自然現象の変化のモデルを構築し、実際の観測データにそのモデルを当てはめることで、地震に関与しない変動を除去する。具体的には、各自然現象について、観測データに影響を与える可能性のある要因との関連性を線形モデルや非線形モデル、時系列モデルにより探索し、影響する要因を用いた観測データの予測モデルを構築する。構築したモデルを用いて各観測日の予測値を算出し、予測値と実測値の差分をとることで、補正観測データを算出する。
以上の処理により、地震以外の既知要因による影響を補正したデータは、純粋な観測データよりも変動は少なくなっているものの、測定機器の誤差や未知要因による僅かな変動が残っているため、地震前予兆に現れる特異な変動とその他の変動とを区別して異常値と判定する閾値をあらかじめ設ける必要がある。本実施形態では、あらかじめ取得した過去の多方式観測データと地震データとから、地震発生前に現れる変動の大きさを特定し、的中率が最大となる閾値を導出する。具体的には、各観測日から過去所定期間分の補正観測データにおける平均値と標準偏差を用い、その標準偏差に所定パラメータを乗算した値をその平均値に加算、もしくは減算した値を閾値として用い、その閾値を超えた観測データを異常値とする。尚、所定期間、所定パラメータは、閾値を超えた異常値と地震データとを照合し、的中率が最大となる値を用いる。ここで、所定のパラメータを乗算するのは、標準偏差が自然現象のある異常状態の側面を示すものであるのは明らかであるが、所定の規模以上の地震につながるか否かはさらに全体的な判断が必要だからである。この閾値を現実の観測データに当てはめることで、地震前予兆現象以外の変動による「誤判定」を最小限に抑えることができる。このようにして得られた閾値を用いて、各観測データの異常を判別し、さらに各観測データの異常値発生状況を統合することで、精度の高い地震予測が可能になると考えられる。
(本実施形態のシステム構成)
本発明の一実施形態で用いる情報処理システムの動作及び処理を以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態の全体のシステム構成図である。本システムは、様々な自然現象を個別に処理するためのものであり、各自然現象ごとにデータベースを設けることもできるし、統合的に一つのデータベースとすることもできるがこれに限られず本実施系地帯で知られた種々のシステム構成をとることができる。本システムでは、様々な自然現象の観測データを一時的に格納し、配信するサーバとして、自然現象観測サーバ101、自然現象観測サーバ101から自然現象観測データを取得し、その後様々な情報処理をするため格納し、管理するデータ取得管理サーバ102、およびデータ取得管理サーバ102から処理された各自然現象についてのデータを読み出してさらに情報処理を加え、統合的な判定処理などを行う統合処理サーバ104を備えており、ネットワーク103を介して接続されている。
本発明の一実施形態で用いる情報処理システムの動作及び処理を以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態の全体のシステム構成図である。本システムは、様々な自然現象を個別に処理するためのものであり、各自然現象ごとにデータベースを設けることもできるし、統合的に一つのデータベースとすることもできるがこれに限られず本実施系地帯で知られた種々のシステム構成をとることができる。本システムでは、様々な自然現象の観測データを一時的に格納し、配信するサーバとして、自然現象観測サーバ101、自然現象観測サーバ101から自然現象観測データを取得し、その後様々な情報処理をするため格納し、管理するデータ取得管理サーバ102、およびデータ取得管理サーバ102から処理された各自然現象についてのデータを読み出してさらに情報処理を加え、統合的な判定処理などを行う統合処理サーバ104を備えており、ネットワーク103を介して接続されている。
自然現象観測サーバ101、データ取得管理サーバ102、および統合処理サーバ104と端末111とは、ネットワーク103に接続され、処理の指示を送信したり、処理データを受信しており、例えばタブレット端末とすることができ、本実施形態でネットワーク103との接続は、Wi−fi、BLUETOOTH(登録商標)等の無線ネットワークにより行うこともできる。ここで端末111はタブレット端末のほか、モバイルパソコン等とすることができるが、基本的に各自然現象の観測データ等をサーバから受信して画像を表示、およびマウスまたはキーボードで一定の入力操作をすることができれば、モバイルあるいはデスクトップのパソコン、専用端末などいずれの装置を用いることができる。
図2は、本発明の一実施形態のサーバの機能ブロック図である。図2に示すように、本実施形態のデータ取得管理サーバ102は、例えば所定の期間ごとに自然現象観測サーバ101にアクセスして、各自然現象の観測データを取得するデータ収集モジュール201、取得した観測データをもとに変動データを解析して、異常状態と判断するための閾値を算出する変動データ算出モジュール202および自然現象の観測データなどの管理を行うデータベース管理モジュール203を備える。
地震予測において、地震の発生日時、発生場所、マグニチュード(M)、および深さを予測するためには、過去の観測データと地震を照合する必要がある。本実施形態では、図3に示すような手法により、以上の処理システムを用いて本発明で提案された各観測データの補正手法と閾値を過去のデータにも適用し、閾値を超えた各観測データの変動量と実際に発生した地震の震央距離、M、震源の深さとの定量的関連性を明らかにすることで、変動量による震央距離、M、震源の深さの予測モデルを構築できる。さらに、各観測地の予測震央距離を求めることにより、予測震央地を求めることができる。地震発生日時について、時系列解析によって閾値を超えた各観測データとその後に発生した地震との時間差を検証し、予測モデルを構築する。また、実際の被害の大きさは震度によって決まり、地震予測情報を提供するうえで、各地域における予測震度情報を提供することが最も重要である。本発明では、特定地域における地震発生の可能性が高まっていると判断された場合、日本の地盤強度情報を利用することによって、各地の予測震度を算出することができる。
(地殻変動についての処理)
先ず地殻の変動について説明する。現在利用可能な自然現象のデータとしては、電子基準点を用いた地殻変動データが最も安定して継続取得でき、カバーエリアも広いことから、先ず地殻変動データを基本にその他の自然現象を加味することで、より精度高く予兆を捉えることができる。国土地理院は現在日本全国に約20km間隔で1300カ所以上のGPS電子基準点を設けており、これらを観測点としたGPS連続観測システムによる観測データが公開されている。本発明では、国土地理院から得られる各電子基準点の日別の地心直交座標データ(X,Y,Z)から算出された経緯度データを用いる。各基準点の観測開始時から1か月間の経緯度の平均を初期位置として用い、各観測日における初期位置からの移動距離を算出する。尚、電子基準点の座標データはGPSにより測位することで得られるため、天候状況によるノイズを含んでいる可能性がある。そのため、移動距離算出に用いる座標データは特許文献1の地震発生予測情報提供方法に記載されている手法により、ノイズを低減させたデータを用いた。図4を参照して、以下本実施形態の地殻変動についての処理について説明する。
先ず地殻の変動について説明する。現在利用可能な自然現象のデータとしては、電子基準点を用いた地殻変動データが最も安定して継続取得でき、カバーエリアも広いことから、先ず地殻変動データを基本にその他の自然現象を加味することで、より精度高く予兆を捉えることができる。国土地理院は現在日本全国に約20km間隔で1300カ所以上のGPS電子基準点を設けており、これらを観測点としたGPS連続観測システムによる観測データが公開されている。本発明では、国土地理院から得られる各電子基準点の日別の地心直交座標データ(X,Y,Z)から算出された経緯度データを用いる。各基準点の観測開始時から1か月間の経緯度の平均を初期位置として用い、各観測日における初期位置からの移動距離を算出する。尚、電子基準点の座標データはGPSにより測位することで得られるため、天候状況によるノイズを含んでいる可能性がある。そのため、移動距離算出に用いる座標データは特許文献1の地震発生予測情報提供方法に記載されている手法により、ノイズを低減させたデータを用いた。図4を参照して、以下本実施形態の地殻変動についての処理について説明する。
(1)南北/東西方向への移動距離の算出
各観測日の座標データに後方7項移動平均処理を施す。移動距離計算にはヒュベニの公式を用い、南北方向と東西方向への移動距離を求める(式1)。
e=(a2−b2)/a2 (式1)
Mnum=a×(1−e)
dy=θ(y0−yt)
dx=θ(x0−xt)
各観測日の座標データに後方7項移動平均処理を施す。移動距離計算にはヒュベニの公式を用い、南北方向と東西方向への移動距離を求める(式1)。
e=(a2−b2)/a2 (式1)
Mnum=a×(1−e)
dy=θ(y0−yt)
dx=θ(x0−xt)
M=Mnum/W2
N=a/W
d1(cm)=(dy×M)×100
d2(cm)=(dx×N×cos(my))×100
赤道半径(a)=6378137.0
極半径(b)=6356752.314140
d1:南北方向移動距離、d2:東西方向移動距離。
N=a/W
d1(cm)=(dy×M)×100
d2(cm)=(dx×N×cos(my))×100
赤道半径(a)=6378137.0
極半径(b)=6356752.314140
d1:南北方向移動距離、d2:東西方向移動距離。
(2)定常的変動の補正
日本列島は海洋プレートの沈み込みに伴う定常的な地殻変動がみられるため、地震を予測するための閾値を算出するには定常的変動を補正する必要がある。そのため、各観測日の過去2年間(2か月前〜2年2か月前)の移動距離を従属変数、日時を独立変数として最小二乗法を用いた線形モデルを構築し、得られた係数から各観測日における予測移動距離を算出する(式2)。
y’=yt−(axt+b) (式2)
y’:残差、yt:日時tにおける実測値、xt:日時tにおける実測値
a、b:線形モデルで推定されたパラメータ。
日本列島は海洋プレートの沈み込みに伴う定常的な地殻変動がみられるため、地震を予測するための閾値を算出するには定常的変動を補正する必要がある。そのため、各観測日の過去2年間(2か月前〜2年2か月前)の移動距離を従属変数、日時を独立変数として最小二乗法を用いた線形モデルを構築し、得られた係数から各観測日における予測移動距離を算出する(式2)。
y’=yt−(axt+b) (式2)
y’:残差、yt:日時tにおける実測値、xt:日時tにおける実測値
a、b:線形モデルで推定されたパラメータ。
(3)閾値の設定
異常な移動距離の閾値を設定するため、各観測日の過去2年間(2か月前〜2年2か月前)における予測値と実測値の残差の標準偏差から標準化し、所定のパラメータとして|σ|>1.5を異常値として解析する(式3、4)。
異常な移動距離の閾値を設定するため、各観測日の過去2年間(2か月前〜2年2か月前)における予測値と実測値の残差の標準偏差から標準化し、所定のパラメータとして|σ|>1.5を異常値として解析する(式3、4)。
xi:移動距離、x’i;予測値、n:790、s:60
なお、閾値は解析対象地震発生前の地殻変動値を目視したうえで、前兆的な変化がみられると判断できる変動値が異常値となるように、加えて地震に関連しない変動が異常値とならない値を探索して設定するなど、本技術分野で知られたいずれかの方法で設定することができる。
なお、閾値は解析対象地震発生前の地殻変動値を目視したうえで、前兆的な変化がみられると判断できる変動値が異常値となるように、加えて地震に関連しない変動が異常値とならない値を探索して設定するなど、本技術分野で知られたいずれかの方法で設定することができる。
図5および6を参照して、以上の処理を具体的な例に適用した場合を説明する。図5は、電子基準点「伊東」の2007年12月17日から2009年10月17日までの地殻変動のうち南北方向のものを示す図であり、図5は東西方向のものを示す図である。図5のグラフ中、実線501は、実測値(式1)、破線502は予測値(式2)、網掛けの範囲503は通常範囲(式3)を示す。同様に、図6のグラフ中、実線601は、実測値、破線602は予測値、網掛けの範囲603は通常範囲を示す。図6のグラフの実測値601がすべて通常範囲603に含まれているのに対し、図5を参照すると、南北方向に2008年10月以降に通常範囲503からの乖離が確認できる。
(微弱地震の処理)
図7は、微弱地震に基づいて異常値を判定する閾値を求める流れを示す図である。図7を参照すると、日本全国を50km四方に分割し、各区画内で発生したマグニチュード(M)0以上の地震の日別発生回数を観測する。異常な地震発生回数の閾値を設定するため、各観測日の過去1年間(2か月前〜1年2か月前)における微弱地震数の標準偏差から標準化し、σ>5を異常値として解析する(式5)。
図7は、微弱地震に基づいて異常値を判定する閾値を求める流れを示す図である。図7を参照すると、日本全国を50km四方に分割し、各区画内で発生したマグニチュード(M)0以上の地震の日別発生回数を観測する。異常な地震発生回数の閾値を設定するため、各観測日の過去1年間(2か月前〜1年2か月前)における微弱地震数の標準偏差から標準化し、σ>5を異常値として解析する(式5)。
xi:微弱地震数、n:365、s:60
図8を参照して、以上の処理を具体的な例に適用した場合を説明する。図8は、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震M9.0、最大震度7発生前からの微弱地震の発生状況を示す図である。具体的には、2011年3月11日「東北地方太平洋沖地震」の震央から半径50km圏内における2010年3月10日から2011年3月11日までの微弱地震発生回数を示している。図8のグラフ中の各要素は以下の通り、実線801が実測値、網掛け範囲802が通常範囲(式5)である。東北地方太平洋沖地震の1日前である、2011年3月10日に微弱地震の発生回数が通常範囲を大きく超えており、微弱地震が地震前予兆現象として有効であることが理解される。
図8を参照して、以上の処理を具体的な例に適用した場合を説明する。図8は、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震M9.0、最大震度7発生前からの微弱地震の発生状況を示す図である。具体的には、2011年3月11日「東北地方太平洋沖地震」の震央から半径50km圏内における2010年3月10日から2011年3月11日までの微弱地震発生回数を示している。図8のグラフ中の各要素は以下の通り、実線801が実測値、網掛け範囲802が通常範囲(式5)である。東北地方太平洋沖地震の1日前である、2011年3月10日に微弱地震の発生回数が通常範囲を大きく超えており、微弱地震が地震前予兆現象として有効であることが理解される。
(地電流の処理)
日本の3箇所(女満別、柿岡、鹿屋)に設置された地磁気観測所から得られる南北方向、東西方向の地電流データを用いる。各観測所の地電流のサンプリング頻度は1回/0.1秒であるため、本実施形態では日平均値を算出し、日別地電流データを解析に用いる。図9は、地電流に基づいて異常値を判定する閾値を求める流れを示す図である。
日本の3箇所(女満別、柿岡、鹿屋)に設置された地磁気観測所から得られる南北方向、東西方向の地電流データを用いる。各観測所の地電流のサンプリング頻度は1回/0.1秒であるため、本実施形態では日平均値を算出し、日別地電流データを解析に用いる。図9は、地電流に基づいて異常値を判定する閾値を求める流れを示す図である。
図9を参照すると、先ず日別データからトレンドを除去する(式6)
xi:地電流
次に、異常な地電流の閾値を設定するため、各観測日の過去、1週間前から1年間(7〜365日前)における地電流変動値で標準化し、|σ|>2を異常値として解析する(式2)。
次に、異常な地電流の閾値を設定するため、各観測日の過去、1週間前から1年間(7〜365日前)における地電流変動値で標準化し、|σ|>2を異常値として解析する(式2)。
xi;地電流、n:365
図10および11を参照して、以上の処理を具体的な例に適用した場合を説明する。図10は、柿岡における2009年11月17日から2009年12月17日までの地電流値の変動のうち南北方向のものを示す図であり、図10は東西方向のものを示す図である。図10のグラフ中、実線1001は実測値、網掛けの範囲1002は通常範囲(式7)を示す。同様に、図11のグラフ中、実線1101は実測値、網掛けの範囲1102は通常範囲を示す。図11のグラフの実測値1101がすべて通常範囲1102に含まれているのに対し、図10を参照すると、南北方向に2008年10月以降に通常範囲1002からの乖離が確認できる。2009年12月17日には、静岡県伊豆半島東方沖でM5.0、最大震度5弱の地震が発生している。図10を参照すると、本地震発生の11日前である2009年12月6日に、南方向への通常範囲1002から大きく解離した値が観測されており、地電流の変化も地震前予兆現象として有効であることが理解される。
図10および11を参照して、以上の処理を具体的な例に適用した場合を説明する。図10は、柿岡における2009年11月17日から2009年12月17日までの地電流値の変動のうち南北方向のものを示す図であり、図10は東西方向のものを示す図である。図10のグラフ中、実線1001は実測値、網掛けの範囲1002は通常範囲(式7)を示す。同様に、図11のグラフ中、実線1101は実測値、網掛けの範囲1102は通常範囲を示す。図11のグラフの実測値1101がすべて通常範囲1102に含まれているのに対し、図10を参照すると、南北方向に2008年10月以降に通常範囲1002からの乖離が確認できる。2009年12月17日には、静岡県伊豆半島東方沖でM5.0、最大震度5弱の地震が発生している。図10を参照すると、本地震発生の11日前である2009年12月6日に、南方向への通常範囲1002から大きく解離した値が観測されており、地電流の変化も地震前予兆現象として有効であることが理解される。
(搾乳量の処理)
これまでの研究により、乳量は地震の1週間〜数週間前までに減少することが明らかとなり、2011年の東北地方太平洋沖地震の発生前にも減少していたことが確認されている。乳量は牧場における生産性向上を目的として所定の牧場では毎日測定されており、また搾乳牛を飼育する牧場は現在日本に16,400戸(使用頭数1,323,000頭)存在するため多地点における観測が可能である。また近年、大規模農場や各地方の畜産試験場では搾乳作業の自動化が進み、電子乳量計により測定された毎回の搾乳成績が有線、または無線経由で牧場内のコンピュータへ自動転送され、保管されるシステムを導入している場合が多い。このシステムを導入している牧場であればリアルタイムな乳量データの取得が可能である。図12に示すような流れで処理を行う。
これまでの研究により、乳量は地震の1週間〜数週間前までに減少することが明らかとなり、2011年の東北地方太平洋沖地震の発生前にも減少していたことが確認されている。乳量は牧場における生産性向上を目的として所定の牧場では毎日測定されており、また搾乳牛を飼育する牧場は現在日本に16,400戸(使用頭数1,323,000頭)存在するため多地点における観測が可能である。また近年、大規模農場や各地方の畜産試験場では搾乳作業の自動化が進み、電子乳量計により測定された毎回の搾乳成績が有線、または無線経由で牧場内のコンピュータへ自動転送され、保管されるシステムを導入している場合が多い。このシステムを導入している牧場であればリアルタイムな乳量データの取得が可能である。図12に示すような流れで処理を行う。
(1)個体別、一乳期別に泌乳開始後現在までのデータを用いて日時tにおける泌乳曲線式(式8)を作成し、残差を求める(式9)。泌乳曲線式のパラメータ推定は乳量データ更新ごとに行う。
期待乳量t=a+bnt+cnt 2+dlog10nt+elog10(nt)2 (式8)
nt:分娩後経過日数、a、b、c、d、e:定数。
乳量変動値1=実乳量 − 期待乳量 (式9)。
期待乳量t=a+bnt+cnt 2+dlog10nt+elog10(nt)2 (式8)
nt:分娩後経過日数、a、b、c、d、e:定数。
乳量変動値1=実乳量 − 期待乳量 (式9)。
(2)各牧場に最も近い気象観測点の温度、湿度データを気象庁から入手し、温度・湿度データからTHI(Thermal Humidity Index)を算出し(式10)、過去の乳量変動値1とTHIデータから乳量予測モデルを構築し(式11)、残差を求める(式12)。
THIt=(1.8Tt+32)−(5.5+0.055Ht)(1.8Tt−26) (式10)
Tt:日時tにおける摂氏温度、Ht:日時tにおける相対湿度
THIt=(1.8Tt+32)−(5.5+0.055Ht)(1.8Tt−26) (式10)
Tt:日時tにおける摂氏温度、Ht:日時tにおける相対湿度
yt:時点tにおける乳量、a、b、c:定数、x:THI、x0:臨界THI
乳量変動値2=乳量変動値1−期待乳量 (式12)
(3)トレンドを除去する。分娩後経過日数と暑熱ストレスによる影響を除去した乳量変動値には、わずかな傾向変動が残っている可能性があるため、各日の1〜7日前に測定された乳量変動値2の平均値から、各日に測定された乳量変動値を引くことで、傾向変動を除去する
乳量変動値2=乳量変動値1−期待乳量 (式12)
(3)トレンドを除去する。分娩後経過日数と暑熱ストレスによる影響を除去した乳量変動値には、わずかな傾向変動が残っている可能性があるため、各日の1〜7日前に測定された乳量変動値2の平均値から、各日に測定された乳量変動値を引くことで、傾向変動を除去する
xi:乳量変動値2。
(4)1〜30日前の平均化された日別の乳量変動値の標準偏差から、正常範囲を定義する(式14)。
(4)1〜30日前の平均化された日別の乳量変動値の標準偏差から、正常範囲を定義する(式14)。
図13を参照して、以上の処理を具体的な例に適用した場合を説明する。図13は、茨城県つくば市の牧場における2014年10月24日から2014年11月22日までの搾乳量値を示す図である。図13のグラフ中、実線1301は実測値、網掛けの範囲1302は通常範囲(式14)を示す。2014年11月22日に長野県北部を震源とするM6.7最大震度6弱の地震が発生しており、図13を参照すると、地震の震央地から約213km離れた、茨城県つくば市の牧場における乳量データ1201において、発生の17日前である2014年11月5日に通常値1202から大きく外れた値が観測さており、搾乳量の変化も地震前予兆現象として有効であることが理解される。
(地下水位の処理)
産業技術総合研究所地質調査総合センター活断層・火山研究部門から提供される88か所の観測井戸の毎時地下水位データを入手することができる。本実施形態では、日毎の平均水位、最高水位および最低水位を取得して使用する。図14を参照して、本実施形態の地下水位に関する処理を説明する。
産業技術総合研究所地質調査総合センター活断層・火山研究部門から提供される88か所の観測井戸の毎時地下水位データを入手することができる。本実施形態では、日毎の平均水位、最高水位および最低水位を取得して使用する。図14を参照して、本実施形態の地下水位に関する処理を説明する。
図14を参照すると、先ず取得したデータからトレンドを除去する(式15)。
x:地下水位(平均、最高、または最低)
次に、過去1年の水位変動値で標準化し、|σ|>2を異常値として解析する(式16)。
現在水位については、数値データの提供がされていないが、今後はリアルタイムに提供される予定であり、これによりリアルタイムの観測、処理が可能となる。
次に、過去1年の水位変動値で標準化し、|σ|>2を異常値として解析する(式16)。
現在水位については、数値データの提供がされていないが、今後はリアルタイムに提供される予定であり、これによりリアルタイムの観測、処理が可能となる。
x:水位変動値、n:365
図15を参照して、以上の処理を具体的な例に適用した場合を説明する。図15は、静岡県伊東市大室山北における2009年11月21日から2009年12月21日までの地下水位の変化を示す図である(出典元:「2009年12月の伊豆半島東方沖群発地震活動に伴う地下水変化」、2009年12月22日、産業技術総合研究所活断層・地震研究センター)。図15のグラフ中、実測値である生データ1502から所定の補正処理を行った補正水位1501は変化が平準化されて判断しやすいことが理解される。2009年12月の伊豆半島東方沖群発地震活動が発生しており、図15を参照すると、地震発生の約25日前(11月22日〜23日)より地下水位の断続的な低下が観測されていたが、1日前の2009年12月16日から、顕著な水位低下が観測されており、地下水位の変化も地震前予兆現象として有効であることが理解される。
図15を参照して、以上の処理を具体的な例に適用した場合を説明する。図15は、静岡県伊東市大室山北における2009年11月21日から2009年12月21日までの地下水位の変化を示す図である(出典元:「2009年12月の伊豆半島東方沖群発地震活動に伴う地下水変化」、2009年12月22日、産業技術総合研究所活断層・地震研究センター)。図15のグラフ中、実測値である生データ1502から所定の補正処理を行った補正水位1501は変化が平準化されて判断しやすいことが理解される。2009年12月の伊豆半島東方沖群発地震活動が発生しており、図15を参照すると、地震発生の約25日前(11月22日〜23日)より地下水位の断続的な低下が観測されていたが、1日前の2009年12月16日から、顕著な水位低下が観測されており、地下水位の変化も地震前予兆現象として有効であることが理解される。
以上、本実施形態では、これまでに数多く報告されてきた地震前の自然現象の変化である、地震前予兆現象のうち、地殻変動、微弱地震、地下水位、地電流、作乳牛の乳量について、異常現象の発生する確率が上昇する閾値を定めることができ、これらの情報を統合することにより空間解像度を高めるとともに、予測精度も向上させることが可能となったが、これにかかわらずさらに様々な自然現象も、リアルタイムで観測が可能であり、発生メカニズムが理論的に解釈可能であれば、データ化して活用することができる。また、これらの様々なデータをさらに複雑な統合処理に供して、地震等の災害の余地に結びつけることもできる。
Claims (12)
- 継続して取得可能な自然現象の定量的数値の変動状況に基づいて当該自然現象の異常状態を判定するための閾値を取得する方法であって、
前記定量的数値を一定の時間間隔で測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、
前記取得された測定値と取得時間とから、前記自然現象に適用する所定のモデルに基づいて各取得時の予測値を算出する予測値算出ステップと、
前記取得した測定値と前記算出した予測値との差異に基づいて、前記異常状態を判定するための閾値を決定する閾値決定ステップと
を備えることを特徴とする方法。 - 前記予測値算出ステップは、前記取得された測定値と取得時間とから、最小二乗法により各取得時の予測値を算出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記予測値算出ステップは、前記取得された測定値をy、予測値をxとして、以下の式から最小二乗法により予測値を算出することを特徴とする請求項1に記載の方法
y’=yt−(axt+b)
y’を残差、a、bを定数とする。 - 前記閾値決定ステップは、前記取得した測定値と前記算出した予測値との差異の標準偏差を用いて前記閾値を決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- 前記閾値決定ステップは、地理的に所定の範囲内で発生した災害の規模に応じて前記閾値を決定することを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 前記自然現象の実測値に対して所定の補正処理を適用することにより、前記測定値を取得する補正処理ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
- 前記自然現象は、地殻変動、地下水の推移変動、微弱地震の発生頻度、地電流の変動または牛の搾乳量の変動であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
- 異常予測通知システムであって、
自然現象の定量的数値を測定して測定値を取得する測定手段を備え、
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により取得した閾値を用いて、前記取得した測定値が閾値を超えたとき、異常状態が発生する可能性のあることを通知することを特徴とする異常予測通知システム。 - 複数の自然現象で得られる定量的数値に基づいて異常状態が発生する可能性のあることを通知する異常予測通知システムであって、
前記複数の自然現象の各々について定量的数値を測定して測定値を取得する測定手段を備え、
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法により取得した閾値を用いて、前記取得した測定値のいずれかが閾値を超えたとき、各々の自然現象の値を総合して得られる異常判定値により異常状態が発生する可能性のあることを判定することを特徴とする異常予測通知システム。 - 前記以上判定値は、前記測定値と対応する閾値との差異に各々の自然現象に対し予め定められた所定の重みを付けて合算して得ることを特徴とする請求項9に記載の異常予測通知システム。
- 継続して取得可能な自然現象の定量的数値の変動状況に基づいて当該自然現象の異常状態を判定するための閾値を取得する方法をコンピュータに処理させるプログラムであって、該方法は、
前記定量的数値を一定の時間間隔で測定した測定値を取得する測定値取得ステップと、
前記取得された測定値と取得時間とから、前記自然現象に適用する所定のモデルに基づいて各取得時の予測値を算出する予測値算出ステップと、
前記取得した測定値と前記算出した予測値との差異に基づいて、前記異常状態を判定するための閾値を決定する閾値決定ステップと
を備えることを特徴とするプログラム。 - 継続して取得可能な自然現象の定量的数値の変動状況に基づいて当該自然現象の異常状態を判定するための閾値を取得するシステムであって、
前記定量的数値を一定の時間間隔で測定した測定値を取得する測定値取得手段と、
前記取得された測定値と取得時間とから、前記自然現象に適用する所定のモデルに基づいて各取得時の予測値を算出する予測値算出手段と、
前記取得した測定値と前記算出した予測値との差異に基づいて、前記異常状態を判定するための閾値を決定する閾値決定手段と
を備えることを特徴とするシステム。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2018145778A JP2020020707A (ja) | 2018-08-02 | 2018-08-02 | 自然現象観測データ情報処理システム |
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Cited By (1)
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WO2023042303A1 (ja) * | 2021-09-15 | 2023-03-23 | 日本電気株式会社 | 状態判定装置、状態判定方法、及び、状態判定プログラムが格納された記録媒体 |
-
2018
- 2018-08-02 JP JP2018145778A patent/JP2020020707A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023042303A1 (ja) * | 2021-09-15 | 2023-03-23 | 日本電気株式会社 | 状態判定装置、状態判定方法、及び、状態判定プログラムが格納された記録媒体 |
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