JP2020019904A - 成形用材料 - Google Patents

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大島 明博
Akihiro Oshima
明博 大島
優子 塩谷
Yuko Shioya
優子 塩谷
吉景 大向
Yoshikage Omukai
吉景 大向
数行 佐藤
Kazuyuki Sato
数行 佐藤
吉田 知弘
Tomohiro Yoshida
知弘 吉田
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Abstract

【課題】良好な物性を有する成形体、特にソルベントクラック耐性の良好な成形体の製造に適する成形用材料を提供する。【解決手段】グラフト鎖と樹脂材料とを含み、上記グラフト鎖が、式(1):CH2=C(Ra1)−CO−O−Rb・・・(1)[式中:Ra1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;Rbは、1価の有機基である]で表される基を有する非フッ素化合物に由来する構成単位を有する成形用材料。【選択図】図1

Description

本開示は、成形体の製造に用いる成形用材料に関する。
樹脂成形体は、様々な分野、例えば医療部材、光学部材、建築部材、衣料、包装、容器、モールドの分野等で利用されている。このような樹脂成形体には、用途に応じて、様々な機能、例えば、撥水性等が付加される。
例えば、特許文献1では、成形用材料から成形体を製造する方法について記載されており、該成形用材料は含フッ素グラフト鎖を有することが記載されている。
特開2017−160330号公報
上記のような成形体には、物性をより向上させることが求められる。本開示の目的は、良好な物性を有する成形体、特にソルベントクラック耐性の良好な成形体の製造に適する成形用材料を提供することにある。
本開示は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1] グラフト鎖と樹脂材料とを含み、
上記グラフト鎖が、式(1):
CH=C(Ra1)−CO−O−R ・・・(1)
[式中:
a1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
は、1価の有機基である]
で表される基を有する非フッ素化合物に由来する構成単位を有する成形用材料。
[2] 上記非フッ素化合物が、式:
CH=C(Ra1)−CO−O−Rb1
[式中:
a1が、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
b1が、C5−25アルキル基である]
で表される、[1]に記載の成形用材料。
[3] グラフト率が、樹脂材料に対して、0.05〜1.5%である、[1]または[2]に記載の成形用材料。
[4] グラフト鎖100質量部に対して、上記非フッ素化合物に由来する構成単位を5〜100質量部含む、[1]〜[3]のいずれか1に記載の成形用材料。
[5] 樹脂材料が、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリカーボネート、およびポリエチレンよりなる群より選ばれる少なくとも1である、[1]〜[4]のいずれか1に記載の成形用材料。
[6] [1]〜[5]に記載の成形用材料よりなる樹脂成形体。
[7] 表面におけるヘイズ値が、0.1%〜10%の範囲にある、[6]に記載の樹脂成形体。
[8] 樹脂材料に放射線を照射し、式(1):
CH=C(Ra1)−CO−O−R ・・・(1)
[式中:
a1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
は、1価の有機基である]
で表される基を有する非フッ素化合物に由来する構成単位を有するグラフト鎖を樹脂材料に導入して成形用材料を得、得られた成形用材料を成形すること、を含む製造方法。
[9] 樹脂材料に放射線を照射し、式(1):
(1)CH=C(Ra1)−CO−O−R ・・・(1)
[式中:
a1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
は、1価の有機基である]
で表される基を有する非フッ素化合物に由来する構成単位を含むグラフト鎖を樹脂材料に導入し、成形用材料を得、得られた成形用材料を成形すること、および
(2)前記樹脂材料および/または前記グラフト鎖を形成するポリマーは架橋すること、を含む製造方法。
[10] 上記非フッ素化合物が、
CH=C(Ra1)−CO−O−Rb1
[式中:
a1が、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
b1が、C5−25アルキル基である]
で表される、[8]または[9]に記載の方法。
[11] 電離放射線の照射前の樹脂材料に上記非フッ素化合物を接触させること、を更に含む、[8]〜[10]のいずれか1に記載の方法。
本開示によると、ソルベントクラック耐性の良好な成形体の製造に適する成形用材料を得ることができる。
ソルベントクラック限界応力の測定状態を示す概略図。
以下、本開示の具体的な実施態様について説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
本開示の樹脂成形体の製造に適した方法について説明する。
本開示の樹脂成形体の製造方法は、樹脂材料に放射線を照射し、式(1):
CH=C(Ra1)−CO−O−R ・・・(1)
[式中:
a1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
は、1価の有機基である]
で表される基を有する非フッ素化合物(以下において、単に「非フッ素化合物」と称することがある)に由来する構成単位を有するグラフト鎖を樹脂材料に導入して成形用材料を得、得られた成形用材料を成形することを含む。本開示において、成形用材料は、樹脂成形体の製造方法に適した新たな成形用材料(樹脂成形体の原料)を意味する。
上記方法に用いられる成形用材料は、非フッ素化合物に由来する構成単位を有するグラフト鎖と樹脂材料とを含む。グラフト鎖は、樹脂材料に導入されている。
グラフト鎖と樹脂材料との合計含有量は、成形に用いる成形用材料100質量部に対して、0.001〜100質量部の範囲であることが好ましい。
成形用材料には、他の材料、例えば染料、顔料等の着色剤、フィラー等の充填剤(具体的には、各種金属粉末、銀ナノワイヤー、炭素繊維、ガラス繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ等のセラミック材料)等が含まれていてもよい。
上記成形用材料に含まれるグラフト鎖の含有量は、グラフト鎖および樹脂材料100質量部に対して、0.01〜1000質量部であることが好ましく、0.1〜100質量部であることがより好ましく、さらに1〜20質量部であることがより好ましい。
上記成形用材料は、樹脂成形体を成形するために用いられる材料であって、成形方法にもよるが、比較的小さなサイズを有する。
成形用材料の表面積は、好ましくは600mm以下、より好ましくは400mm以下、さらに好ましくは300mm以下、さらにより好ましくは150mm以下、例えば100mm以下または80mm以下である。また、成形用材料の表面積は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上、さらにより好ましくは10.0mm以上であり、例えば30.0mm以上または50.0mm以上であってもよい。成形用材料の表面積は、例えば、ガス吸着法を用いて測定することができる。
成形用材料の体積は、好ましくは1000mm以下、より好ましくは600mm以下、さらに好ましくは300mm以下、さらにより好ましくは200mm以下、例えば100mm以下または80mm以下である。また、成形用材料の体積は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上、さらにより好ましくは5.0mm以上、特に好ましくは10.0mm以上であり、例えば20.0mm以上または30.0mm以上であってもよい。成形用材料の体積は、例えば、レーザー変位システム計を用いて測定することができる。
成形用材料のサイズをより大きくすることにより、成形用材料を得るための樹脂材料のグラフト反応処理における取り扱いが容易になる。一方、成形用材料のサイズをより小さくすることにより、成形加工処理が容易になる。
成形用材料の形状は、樹脂成形体を成形するのに適した形態であれば特に限定されず、例えば、粉状、粒子状、チップ状、繊維状、またはペレット状等であり得る。
本明細書において粉(または粉体)は、例えば、平均粒径が、0.1〜500μm、好ましくは1.0〜300μm、例えば10〜200μm、20〜200μmまたは30〜100μmである粉末である。ここで、平均粒径は、体積平均粒径を表す。平均粒径は、例えば、レーザー変位システム計、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。溶液分散可能な系では、ゼータサイザー等を用いて測定することができる。
本明細書において粒子は、平均粒径が、例えば、500〜1000μm、好ましくは60〜800μmである粒子である。
本明細書においてペレットは、例えば、最大径が、0.8〜8.0mm、好ましくは1.2〜5.0mm、より好ましくは1.5〜3.0mmの、球状、長球状、偏平球、棒状、板状、ブロック状またはこれらに類似する任意の形状を有する。
本明細書においてチップは、例えば、最大長が、8.0〜20mm、好ましくは10〜15mmの、球状、長球状、偏平球、棒状、板状、ブロック状またはこれらに類似する任意の形状を有する。
本明細書において繊維は、例えば、最大直径が、0.8〜1.0mm、好ましくは0.01〜0.2mm、より好ましくは0.02〜0.1mmであり、繊維長が5cm未満、好ましくは2cmの短繊維である。
一の態様において、成形用材料は、粉体またはペレット、あるいはこれらの混合物である。
一の態様において、成形用材料は、繊維である。
好ましい態様において、成形用材料は、粉体である。
別の好ましい態様において、成形用材料は、ペレットである。ペレットは、成形時のハンドリングが良好である観点から好ましい。
さらに、別の好ましい態様において、成形用材料は、粉体およびペレットの混合物である。
樹脂材料にグラフト鎖を導入して成形用材料を得る方法としては、例えば、樹脂材料を放射線で処理し、次いで、グラフト用化合物と、樹脂材料とを化学反応させる方法が挙げられる。
樹脂材料に放射線を照射することにより、樹脂材料において、例えば、樹脂材料を形成する化合物から水素原子が脱離し、あるいは樹脂材料を形成する化合物の主鎖および/または側鎖が放射線化学反応によって切断されて、ラジカル等の中間活性種が生成する。このラジカル等の中間活性種が、樹脂材料に機能を付与する化合物とグラフト重合し、樹脂材料にグラフト鎖が導入される。
本開示に用いる樹脂材料を構成する樹脂は、特に限定されないが、所望の機能、例えば防汚性、撥水性、良好なソルベントクラック耐性等を有しない、あるいは所望の機能が十分でない樹脂、例えば非フッ素樹脂(または汎用樹脂ともいう)であり得る。これらの樹脂は、1種類の樹脂のみを用いてもよく、複数の種類の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
上記非フッ素樹脂は、グラフト鎖を導入することができる樹脂、例えば、放射線を利用してグラフト鎖を導入する場合には、放射線、特に電離放射線の照射により反応開始点となるラジカル等の中間活性種を直接または間接に生成し得る樹脂であれば特に限定されない。例えば、非フッ素樹脂は、ポリエチレン(例えば、直鎖型低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等)、各種構造異性体(シンジオタクティック、アイソタクティック、アタクティック構造)を含むポリプロピレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン系樹脂、変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、各種構造異性体を含むポリスチレンまたはポリスチレン誘導体系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、アイオノマー、各種構造異性体を含むポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタラート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリジメチルシリコーン(PDMS)、ポリウレタン、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂等、あるいはこれらを含む共重合体、混合物、ポリマーアロイ等が挙げられる。
上記非フッ素樹脂としては、より具体的には、ポリエチレン(例えば、直鎖型低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等)、各種構造異性体(シンジオタクティック、アイソタクティック、アタクティック構造)を含むポリプロピレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン系樹脂、変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、各種構造異性体を含むポリスチレンまたはポリスチレン誘導体系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、アイオノマー、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタラート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリジメチルシリコーン(PDMS)、ポリウレタン、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂等、あるいはこれらを含む共重合体、混合物、ポリマーアロイ等が挙げられる。
上記非フッ素樹脂は、上記列挙のなかでも、シクロオレフィン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートが表面に防汚性、撥水性、ソルベントクラック耐性等の機能を良好に付与し得るため好ましい。
グラフト鎖とは、樹脂材料のポリマー主鎖に対して枝分れした分枝鎖であって、ポリマー主鎖に共有結合したものであり得る。
上記グラフト鎖は、式(1):
CH=C(Ra1)−CO−O−R ・・・(1)
で表される基を有する非フッ素化合物に由来する構成単位を有する。本明細書において、グラフト鎖の形成に用いる化合物を「グラフト用化合物」と称することがある。すなわち、上記グラフト用化合物は、少なくとも上記非フッ素化合物(モノマー、ダイマーオリゴマー等の低分子量体を含んでいてもよい)を含む。
なお、非フッ素化合物とは、構成原子にフッ素原子を有しない化合物をいう。このようなグラフト鎖を有することにより、本開示の成形用材料は、ソルベントクラック耐性の良好な樹脂成形体の形成に寄与し得る。ここで、ソルベントクラック耐性とは、溶媒に浸漬した際にクラックが生じにくいこと、すなわち、該溶媒に対する耐久性が良好であることを意味する。ソルベントクラック耐性は、ソルベントクラック限界応力(以下、「限界応力」と記載することがある)σを求め、σの数値が高い程、良好なソルベントクラック耐性を有する判断する。
上記限界応力は、図1に示すように、金属治具に、試験用サンプル2を固定して測定し得る。
金属治具としては、図1に示すように、X軸、Y軸およびZ軸を設けた場合に、Z軸に直交する断面の形状が楕円の4分の1の形状(楕円を長軸および短軸に沿って、4つに切断したものの1つ)である金属治具を用いる。上記金属治具としては、X軸方向の長さx1が10.0cm、Y軸方向の長さy1が4.0cm、Z軸方向の長さz1が1.0cmのものを用いることができる。
上記限界応力の測定は、具体的には、以下のように行うことができる。まず、断面が板状の試験用サンプル(例えば、10cm×1cm×厚み0.1cm)を用意する。上記金属治具に、上記サンプルを、金属治具の曲面(金属治具の曲率が連続的に変化する曲面)の曲率に沿わせた状態で、固定部材を用いて固定する。上記サンプルを固定した金属治具を、特定温度(例えば、25℃)に保った試験用の溶媒(例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、ミネラルオイル、ワセリン、グリセリン、n−ヘキサデカン等)に浸漬する。溶媒中に浸漬した状態で、上記金属治具を、特定時間静置する。上記短軸(Y軸)および長軸(X軸)の交点をx=0とし、クラックが発生した点のうち、最もx座標の小さな点(図1の点1)をクラック発生点1とする。クラック発生点1(x=x2)における歪みεを、以下の式により求める。ここで、tは、試験前のサンプルの厚み(cm)を表す。
ε=[0.02×(1−0.0084×(x2)−3/2]×t
上記式で得られた歪みε、およびフィルムの曲げ弾性率Eを用いて、x=x2における応力σを、以下の式により算出する。
σ(kgf/cm)=E×ε
上記式により算出された応力σの値が大きい程、ソルベントクラック耐性が良好であると判断する。
上記式中、Ra1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子を表す。好ましくは、Ra1は、水素原子、またはC1−3のアルキル基であり、より好ましくは水素原子またはメチル基である。
上記式中、Rは、1価の有機基であり、炭素および水素を含む基であって、分子から1個の水素原子を脱離させた基であることが好ましい。Rとしては、特に限定されるものではないが、1またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C5−25の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
の上記置換基としては、特に限定されないが、例えば、塩素原子、ヨウ素原子;1個またはそれ以上の塩素原子またはヨウ素原子により置換されていてもよい、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6−10アリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、イソボニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のRが環構造を有する化合物;ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等のRがC5−25アルキル基である化合物を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いても、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。
上記非フッ素化合物は、中間活性種と反応性を有する化合物であり得る。上記中間活性種としては、ラジカルカチオン、ラジカルアニオン、またはラジカルを挙げることができる。
上記グラフト鎖は、フッ素原子を有しないことが好ましい。
上記グラフト鎖は、グラフト鎖100質量部に対して、上記非フッ素化合物に由来する構成単位を3〜100質量部含むことが好ましく、5〜100質量部含むことがより好ましく、50〜100質量部含むことがさらに好ましく、80〜100質量部含むことが特に好ましい。グラフト鎖をこのような範囲で含むことにより、成形用材料は、樹脂成形体における良好なソルベントクラック耐性、透明性の発現に寄与し得る。
一の態様においては、上記グラフト鎖は、グラフト鎖100質量部に対して、上記非フッ素化合物に由来する構成単位を100質量部含む。
上記式(1)で表される化合物は、以下の式(2):
CH=C(Ra1)−CO−O−Rb1 ・・・(2)
で表されることが好ましい。
式中、Ra1は上記と同意義であり、Rb1は、C5−25アルキル基であり、C5−22アルキル基であることが好ましく、C5−18アルキル基であることがより好ましい。式(2)で表される化合物は、単独で用いても、複数の化合物を組み合わせて用いてもよい。このような化合物を用いることにより、本開示の成形用材料は、透明性、ソルベントクラック耐性等の良好な樹脂成形体の形成に寄与し得る。
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ヘンエイコシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等のRb1がアルキル基である化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート等のRb1が分岐型アルキル基である化合物;αクロロアクリル酸等のRb1がフッ素以外の元素を含む非フッ素化合物を挙げることができる。これらの中では、グラフト率がより良好になる観点から、ステアリル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」を包括する意味で使用し、これらの一方または双方であり得る。双方である場合には、本明細書に記載の量に関しては、その合計である。
上記グラフト鎖は、グラフト鎖100質量部に対して、上記式(2)で表される非フッ素化合物に由来する構成単位を5〜100質量部含むことが好ましく、30〜100質量部含むことがより好ましく、50〜100質量部含むことがさらに好ましく、80〜100質量部含むことが特に好ましい。
上記非フッ素化合物は、上記式(2)で表される化合物とともに、さらに、以下の式:
CH=C(Ra1)−CO−O−Rb2 ・・・(3)
で表される化合物を含み得る。これらの化合物は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。式(2)で表される化合物とともに、式(3)で表される化合物を用いることは、非フッ素化合物のハンドリング性の向上の観点、および、樹脂材料の表面へのグラフト改質を均一に行い得る観点から有利である。本態様においてグラフト鎖は、上記式(2)で表される化合物と、上記式(3)で表される化合物を含む共重合体であり得、上記式(2)で表される化合物と、上記式(3)で表される化合物との共重合体であり得る。
上記式中、Ra1は、上記と同意義である。
上記式中、Rb2は、C1−4の炭化水素基である。上記Rb2は、好ましくはC1−4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
上記式(3)で表される化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。樹脂材料へ均一にグラフト鎖を形成し得る観点からは、メチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
グラフト鎖は、グラフト鎖100質量部に対して、上記式(2)で表される化合物および上記式(3)で表される化合物の合計量が、1〜100質量部含むことが好ましく、5〜100質量部含むことがより好ましく、10〜100質量部含むことがさらに好ましく、30〜100質量部含むことが特に好ましい。
一の態様において、上記式(2)で表される化合物および上記式(3)で表される化合物は、質量比で、式(2)で表される化合物:式(3)で表される化合物が99:1〜1:99の範囲で用いてもよく、70:30〜50:50の範囲で用いてもよい。
一の態様において、上記式(2)で表される化合物および上記式(3)で表される化合物は、質量比で、式(2)で表される化合物:式(3)で表される化合物が90:10〜70:30の範囲で用いてもよい。
上記非フッ素化合物とともに用い得る他の化合物(以下において「他の化合物」と称することがある)として、グラフト率をさらに向上させる観点からは、さらに、多官能の(メタ)アクリレート類を用いてもよい。
多官能の(メタ)アクリレート類としては、具体的には、2官能である1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(#700)ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール#650ジ(メタ)アクリレート;3官能であるトリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
一の態様においては、上記他の化合物として、式(1)で表される化合物以外で、中間活性種となる部分を有する化合物を挙げることができる。
上記他の化合物としては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンを挙げることができる。このような化合物を用いることにより、本開示の成形用材料は、均一に樹脂中で透明性とソルベントクラック耐性を発現し得る材料となり得る。
上記他の化合物は、例えば下記式:
Figure 2020019904
[式中:
は上記と同意義であり、好ましくは、Rb1で表され;
d1は、それぞれ独立して、水素原子、あるいは炭素数1〜10のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基)またはフェニル基を表し、好ましくはメチル基または水素原子であり、より好ましくは水素原子であり;
n1’は、1〜5の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。]
で表される化合物であってもよい。
上記他の化合物としては、例えば、塩化ビニルなどのビニル系モノマー類を挙げることができる。
上記他の化合物は、上記非フッ素化合物とは異なる構造を有する。上記他の化合物は、分子構造内にフッ素原子を有しない。上記他の化合物は、非フッ素化合物と共重合可能な化合物であり得る。
グラフト率は、樹脂材料に対して、0.05%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがさらに好ましい。上記グラフト率は、樹脂材料に対して、1.5%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.45%以下であることがさらに好ましい。上記グラフト率は、樹脂材料に対して、0.05〜1.5%であることが好ましく、0.05〜0.5%であることがより好ましく、0.1〜0.5%であることがさらに好ましく、0.1〜0.45%であることが特に好ましい。このようなグラフト率を有することにより、本開示の成形用材料は、透明性、ソルベントクラック耐性等の良好な樹脂成形体の形成に寄与し得る。
なお、本明細書において、「グラフト率」とは、樹脂材料に対して導入されたグラフト鎖の割合を意味する。具体的には、グラフト率(Dg)は、グラフト重合反応前の樹脂材料とグラフト重合反応後の樹脂材料の重量変化を測定し、下記式により算出することができる。
グラフト率:Dg[%]=(W−W)/W×100
[式中、Wは、グラフト重合前の樹脂材料の重量であり、Wは、グラフト重合後の樹脂材料の重量である。]
また、上記グラフト率は、熱重量測定(TG:thermogravimetric analysis)により算出することもできる。具体的には、上記グラフト率は、グラフト鎖を有する成形用材料の重量の変化を、温度を一定のプログラムに従って変化させて(加熱または冷却させて)測定し、この重量変化から算出することができる。熱重量測定は、例えば、Rigaku社製や島津製作所のTGA測定器を用いて行うことができる。
上記のようなグラフト率を有することにより、本開示の成形用材料は、所望の機能(例えば、透明性、ソルベントクラック耐性、耐衝撃性、耐摩耗性)を有する樹脂成形体の形成に寄与し得る。
上記放射線は、樹脂材料に照射した場合にラジカル、あるいはラジカルカチオン、あるいはラジカルアニオンなどの中間活性種からなる反応開始点を発生させることができるものであれば特に限定されず、例えば、電子線(β線)、X線、γ線、中性子線、極端紫外線を含む紫外線、プラズマ、イオン照射等を用いることができる。
ある態様においては、電離放射線の浸透深さ(飛程)の制御が容易で、樹脂中に中間活性種を発生させやすいことから、電子加速器を用いた電子線が好ましい。
照射される電離放射線の吸収線量は、0.1〜1000kGy、好ましくは1〜300kGy、より好ましくは10〜200kGyである。1000kGy以下の吸収線量とすることにより、表層での樹脂材料そのものの化学反応による材料特性の変化(例えば劣化)を最小限に抑えることできる。また、1kGy以上の吸収線量とすることにより、表面グラフト重合に十分な量の中間活性種を生成することができる。樹脂材料のエネルギー吸収量は、フリッケ線量計、シンチレーション検出器や半導体検出器などにて計測可能であるが、より簡便には、例えば三酢酸セルロースフィルム(CTA:Cellulose triacetate)線量計や、ラジオクロミックフィルム線量計、PMMA線量計などによる光吸収量の変化により測定することができる。
電子線を用いる場合、電子加速器を用い、樹脂材料に照射される電子線の電子のエネルギーは、樹脂材料表面で、好ましくは最大10MeV、より好ましくは、1MeV以下、さらに好ましくは、300keV以下、特に好ましくは、150keV以下、さらにより好ましくは100keV未満である。樹脂材料表面での電子のエネルギーを100keV未満とすることにより、実質的に樹脂材料の表面付近のみで大部分の電子線が吸収され、基材のより内部にまで浸透する電子線がほとんどなくなるので、電子線による樹脂材料そのものの化学反応を低減し、化学反応に伴う樹脂材料の架橋、分解などによる物理特性の変化を抑制することができる。さらに、樹脂材料表面でのみエネルギーを樹脂が吸収するため、極めて高いエネルギー付与が起き、グラフト重合に関与する中間活性種を効率的に生成することができる。一方、樹脂材料表面(例えば最表面)での電子の入射エネルギーを10keV以上,好ましくは、30keV以上とすることにより、樹脂材料表面において、表面グラフト重合に十分な程度の中間活性種を生成することができる。
一の態様において、上記電子線の電子のエネルギーは、低エネルギーにおいて行ってもよい。低エネルギーとは、電子線加速器の加速電圧が、1MeV以下、好ましくは、300keV以下、さらに好ましくは、150keV以下、特に好ましくは100keV未満のものを示す。低エネルギーにおいて行うことにより、成形用材料(例えば、ペレット形状の成形用材料)の表面から1mm以下深さにおいて、グラフト化改質し得、性能を発現し得る。さらに、製造コストにおいて、上記低エネルギーよりも高いエネルギーの電子線加速器を用いた場合よりも有利となり得る。
電子加速器からの電子線を用いる場合、電子源から樹脂材料まで間が1Pa以下の減圧または真空環境、であれば、電子のエネルギーは、加速電圧と概ね対応しその加速電圧は、好ましくは最大10MV、より好ましくは、1MV以下、さらに好ましくは、300kV以下、さらにより好ましくは、150kV以下、さらにより好ましくは100kV未満であればよい。
例えば、真空中で電子ビームの加速電圧が60kVの時、電子ビームの到達深度はそれぞれ、照射される成形用材料が非フッ素樹脂の時、約60μmとなり得る。
一方、電子銃から試料(即ち、樹脂材料)までの間に、大気中への取り出しのための照射窓(たとえば、チタン箔など)があるような電子加速器の場合、真空中の照射であっても電子のエネルギーは、照射窓通過の際に減衰する。照射環境が、窒素や、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気であれば、不活性ガス中での電子のエネルギー損失が起きるので、電子取り出し窓から樹脂材料までの距離により、樹脂材料表面でのエネルギーは異なる。例えば、窒素気流中を通過する場合も同様に、樹脂材料までの気流中の密度と距離に応じて減衰するエネルギーを考慮して高くする必要がある。
電子線を用いる場合、樹脂材料に照射される電子の照射線量は、10μC/cm〜10mC/cm、好ましくは、50μC/cm〜1mC/cm、より好ましくは100μC/cm〜300μC/cm、例えば200μC/cmである。このような範囲の照射線量とすることにより、効率よく中間活性種を発生させることができる。電子の照射線量は、ファラデーカップやカレント積算計にて計測可能である。
樹脂材料への電離放射線の照射は、樹脂材料の酸化劣化や生成した中間活性種の対消滅を抑制する観点から、好ましくは、実質的に酸素が存在しない雰囲気下、例えば、酸素濃度が1000ppm以下、より好ましくは、500ppm、さらにより好ましくは、100ppm以下の雰囲気下で行われる。例えば、電離放射線の照射は、真空中または不活性ガス雰囲気下、例えば窒素、アルゴン、またはヘリウム雰囲気下で行われる。尚、真空とは、完全に真空である必要はなく、実質的に真空であればよく、例えば103Pa程度の減圧環境、10−1Pa程度の低真空、それ以下の高真空のいずれであってもよい。また、別の態様において、電離放射線の照射は、過酸化ラジカルを得るために、大気下で行ってもよい。同時に酸化劣化による材料特性の低下を回避する観点からは、酸素不在下でのラジカルなどの中間活性種の生成後に酸素を供給することで過酸化ラジカルや過酸化物を得ることが好ましい。また、樹脂材料に生成した中間活性種の失活を防止するために、照射後の樹脂材料は、当該樹脂を構成するポリマーのガラス転移温度以下の低温、より好ましくは液体窒素温度で保管されることが好ましく、加えて、真空あるいは不活性雰囲気下での保管が好ましい。
電離放射線の浸透深さは、樹脂材料の厚み以上であってもよい。電離放射線の浸透深さは、好ましくは樹脂材料の厚みの0.001〜99%、例えば0.01〜99%、0.1〜99%または0.2〜99%、より好ましくは1.0〜95%、さらにより好ましくは3〜90%、例えば5〜80%、10〜60%、または20〜60%である。例えば、電離放射線の浸透深さは、樹脂材料の表面から、0.2〜20mmまで、0.2〜1mmまで、または0.2〜500μmまでの深さ、好ましくは0.2〜200μmまで、より好ましくは1〜100μmまで、さらに好ましくは2〜75μmまで、さらにより好ましくは3〜50μmまでの深さである。
別の態様としては電離放射線の浸透深さは、樹脂材料の表面から、例えば1〜250μmまで、または5〜75μmまでの深さであってもよい。
電離放射線の浸透深さとは、樹脂材料が電離放射線のエネルギーを吸収する深さ、あるいは、電離放射線が樹脂材料にエネルギーを付与する深さを意味する。電離放射線の浸透深さは、表面グラフト重合を誘起する中間活性種の生成する領域と実質的に同じであるが、表面グラフト反応により、樹脂材料表面はわずかに膨潤するため、グラフト反応後の成形用材料におけるグラフト鎖が存在する深さは、電離放射線の浸透深さよりも深くなり得る。
ある態様においては、放射線源は、紫外線である。樹脂材料中100質量%に対し、光反応開始剤0.5〜10質量%、好ましくは、1〜7質量%、より好ましくは、2〜5質量%を混合した樹脂材料に、紫外線を照射することで、光開始剤にエネルギーを吸収させ、樹脂中に中間活性種を発生させることができる。ここで、光反応開始剤としては、例として、BASF社のイルガキュアなどを挙げられる。また、光反応開始剤は、300nm〜450nm付近の紫外線吸収波長をもつケトン(C=O)構造を樹脂材料中の構造に導入したものであってもよい。
上記態様において紫外線を用いる場合、ArFやKrFのエキシマ-レーザー光源の他、水銀ランプ、Xeランプ、UV−LED光源を用いることが可能である。また、シンクロトロン装置からの放射光であってもよい。さらには、より短波長の極端紫外光であってもよい。
上記態様において樹脂材料に照射される紫外線の光量は、成形用材料表面で、好ましくは最大100J/cm、より好ましくは、50J/cm以下、さらに好ましくは、10J/cm以下、さらにより好ましくは、5J/cm以下、さらにより好ましくは2J/cm未満である。紫外線の光量は、例えば10mJ/cm以上とすることができる。
上記態様において、樹脂材料に透明な材料を選択することで、樹脂材料最表面からより内部での光化学反応を誘起できる。
上記樹脂材料上に生成した中間活性種と、グラフト用化合物とのグラフト重合は、放射線を照射することにより生成した樹脂材料中の中間活性種(例えばラジカル)と、グラフト用化合物とを接触させることにより行われる。上記接触は、気相、液相、固相問わずに、行うことができる。樹脂材料中の中間活性種と、グラフト用化合物との接触は、例えば、樹脂材料をグラフト用化合物の溶液に浸漬する、グラフト用化合物を樹脂材料上に滴下または塗布する、あるいは気体のグラフト用化合物の存在下に樹脂材料を置くことにより行われる。樹脂材料の表面とグラフト用化合物の濡れ性が低い場合であっても、均一かつ確実に接触させることができることから、樹脂材料を、グラフト用化合物の溶液に浸漬する方法が好ましい。
一の態様において、上記グラフト重合は、樹脂材料に放射線を照射し、次いで、放射線照射後の樹脂材料とグラフト用化合物とを接触させることによって行われる(後グラフト法)。
上記態様において、放射線照射時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば50℃以下、好ましくは室温以下、より好ましくは成形用材料の側鎖のセグメント運動の起きる温度であるγ分散温度以下である。低温で照射することにより、中間活性種の失活を防ぐことができる。本明細書において、室温とは、20℃〜30℃を示す。
上記態様において、放射線照射後のグラフト重合の反応温度は、特に限定されないが、例えば室温〜120℃、好ましくは40℃〜100℃、より好ましくは50℃〜80℃である。この反応温度が高い場合、グラフト反応に寄与せずにグラフト用化合物のみから形成されるポリマーの生成量が多くなる。
一の態様において、上記グラフト重合は、樹脂材料およびグラフト用化合物に同時に放射線を照射することによって行われる(同時グラフト法)。具体的には、樹脂材料にグラフト用化合物を接触させた状態で、放射線を照射する。本態様はグラフト反応がより良好に進行する観点から好ましい。
上記態様において、放射線照射時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば100℃以下、好ましくは10℃〜70℃、より好ましくは20℃〜50℃である。同時に照射することにより、樹脂材料とグラフト用化合物に生成する中間活性種は互いに反応してグラフト重合する。
一の態様において、上記グラフト重合は、樹脂材料およびグラフト用化合物に、別個に放射線を照射し、次いで、照射後の樹脂材料とグラフト用化合物とを接触させることによって行われる(シーケンシャル・グラフト法)。
上記態様において、放射線照射時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば100℃以下、好ましくは10℃〜70℃、より好ましくは20℃〜50℃である。同時に照射することにより、樹脂材料とグラフト用化合物に生成する中間活性種は互いに反応してグラフト重合し、重合に寄与しなかった樹脂材料中の中間活性種は、照射後さらに接触されたグラフト用化合物と反応し、グラフト重合し得る。
上記態様において、放射線照射後のグラフト用化合物との反応は、熱反応であることが好ましい。上記熱反応の温度は、例えば室温〜120℃、好ましくは40℃〜100℃、より好ましくは50℃〜80℃である。この反応温度を所定の温度以下とすることにより、グラフト反応に寄与せずにグラフト用化合物のみから形成されるポリマーの生成量を抑制することができる。
一の態様において、上記グラフト重合は、樹脂材料およびグラフト用化合物に、同時に放射線を照射してグラフト重合させ(同時グラフト法)、次いで、得られた樹脂材料と、グラフト用化合物とを接触させることによって行われる(シーケンシャル・グラフト法)。本態様はグラフト反応がより良好に進行する観点から好ましい。
本態様において、例えば、グラフト用化合物が、非フッ素化合物と非フッ素化合物以外の他の化合物とを含む場合、同時グラフト重合で上記他の化合物をグラフト重合させ、その後のシーケンシャル・グラフト法において上記非フッ素化合物をグラフト重合させ得る。非フッ素化合物、および、非フッ素化合物以外の他の化合物については上記のとおりである。
上記態様において、放射線照射時の温度は、特に限定されるものではないが、例えば100℃以下、好ましくは10℃〜70℃、より好ましくは20℃〜50℃である。
上記態様において、照射後の反応は熱反応であることが好ましい。上記熱反応の温度は、例えば室温〜120℃、好ましくは40℃〜100℃、より好ましくは50℃〜80℃である。この反応温度を所定の温度以下とすることにより、グラフト反応に寄与せずにグラフト用化合物のみから形成されるポリマーの生成量を抑制することができる。
上記放射線照射後の熱反応によるグラフト重合の反応時間は、特に限定されないが、例えば30分〜32時間、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜16時間である。
上記グラフト重合は、単独あるいは複数のグラフト用化合物と接触させて行い得る。グラフト用化合物は、好ましくは、窒素ガスアルゴンガスなどの不活性ガスによるバブリング、あるいは凍結真空脱気などの手法により、雰囲気中の反応阻害剤となり得る酸素やグラフト用化合物中の溶存酸素、重合禁止剤などの不純物の濃度を下げる、あるは除去して行うことが好ましい。
本開示におけるグラフト重合は、樹脂材料にグラフト用化合物を接触させた後、放射線照射と同時に1度のグラフト重合処理によって行ってもよい(同時グラフト法)。また、別法として、グラフト重合は、樹脂材料に放射線を照射後、照射後の樹脂材料にグラフト用化合物を加えてグラフト重合処理によって行ってもよい(後グラフト法)。また、さらなる別法として、グラフト重合は、複数回(例えば2回)のグラフト重合処理を行う多段階のグラフト重合処理により行ってもよい(シーケンシャル・グラフト法)。さらには、多段階のシーケンシャル・グラフト重合処理を行う場合には、グラフト用化合物を複数回に分けて加えてもよい。
一の態様においては、グラフト用化合物として、非フッ素化合物および非フッ素化合物以外の他の化合物を用い、1段目のグラフト重合処理において非フッ素化合物またはその他の化合物のいずれか一方を重合させ、続く2段目の重合処理において他の化合物または非フッ素化合物の他方を重合させてもよい。1段目の重合処理において他の化合物を重合させ、続く2段目の重合処理において非フッ素化合物を重合させることが好ましい。
一の態様においては、樹脂材料に1種あるいは複数のグラフト用化合物を接触させた後、放射線照射と同時に1段目のグラフト重合処理を行い、次いで、当該1段グラフト重合物に単独あるいは複数のグラフト用化合物を加えて2段目のグラフト重合処理によって行ってもよい。
一の態様においては、樹脂材料にグラフト用化合物を接触させた後、放射線照射と同時に1段目のグラフト重合処理を行い、次いで、当該1段グラフト重合物と反応未成分のグラフト用化合物に対して熱処理を行い、2段目のグラフト重合処理を行ってもよい。
一の態様においては、樹脂材料に1種あるいは複数のグラフト用化合物を接触させた後、放射線照射と同時に1段目のグラフト重合処理を行い、次いで、当該1段グラフト重合物に1種あるいは複数のグラフト用化合物を加えて2段目のグラフト重合処理を行い、さらに1種あるいは複数のグラフト用化合物を加えて3段目のグラフト重合処理を行ってもよい。
一の態様においては、樹脂材料に放射線照射した後、当該樹脂材料に1種あるいは複数のグラフト用化合物を加えて1段目のグラフト重合処理を行い、さらに1種あるいは複数のグラフト用化合物を加えて2段目のグラフト重合処理を行ってもよい。
一の態様においては、樹脂材料に1種あるいは複数のグラフト用化合物を接触させた後、放射線照射と同時に1段目のグラフト重合処理を行い、次いで、当該1段グラフト重合物にさらに1種あるいは複数のグラフト用化合物を加えて、放射線照射を行い2段目のグラフト重合処理を行ってもよい。
一の態様においては、樹脂材料に1種あるいは複数のグラフト用化合物を接触させた後、放射線照射と同時に1段目のグラフト重合処理を行い、次いで、当該1段グラフト重合物にさらに1種あるいは複数のグラフト用化合物を加えて、放射線照射を行い2段目のグラフト重合処理を行い、さらに当該2段グラフト重合物に1種あるいは複数のグラフト用化合物を加えて3段目のグラフト重合処理を行ってもよい。
一の態様においては、樹脂材料に1種あるいは複数のグラフト用化合物を接触させた後、放射線照射と同時に1段目のグラフト重合処理を行い、次いで、当該1段グラフト重合物にさらに1種あるいは複数のグラフト用化合物を加えて、放射線照射を行い2段目のグラフト重合処理を行い、さらに当該2段グラフト重合物と反応未成分のグラフト用化合物に対して熱処理を行い、3段目のグラフト重合処理を行ってもよい。
多段階のシーケンシャル・グラフト重合処理を行う場合には、重合の反応条件を段階的に変更させて反応させてもよい。例えば、放射線を照射した後に、反応温度または重合圧力を変更することにより、反応速度を制御してもよい。反応温度は、グラフト用化合物(非フッ素化合物、または非フッ素化合物およびその他の化合物)または溶媒に応じて適宜選択できるが、例えば10〜150℃の範囲で行うことができる。重合圧力は、グラフト用化合物(非フッ素化合物、または非フッ素化合物およびその他の化合物)または溶媒に応じて適宜選択できるが、例えば0.1Pa〜10MPaの範囲で行うことができる。放射線の照射は複数回行ってもよい。
シーケンシャル・グラフト重合は、複数の重合方法を組み合わせて行ってもよい。例えば、放射線を用いた同時グラフト重合を行い、次いで他の方法を用いた重合、例えば熱重合を行ってもよい。また、電離放射線を用いた同時グラフト重合を行い、次いで、紫外線を用いた同時グラフト重合を行ってもよい。
上記方法は、更に、放射線の照射前の樹脂材料に少なくとも溶媒を接触させる工程を含んでいてもよい。樹脂材料と溶媒とは、樹脂材料が溶媒によって膨潤するまで接触させることが好ましく、例えば樹脂材料(例えばペレット)の全部または一部が白濁するまで接触させてもよく、または樹脂材料と溶媒とを1〜24時間接触させてもよい。さらには、または樹脂材料と溶媒とを温度を加温、例えば、20℃〜150℃の温度で接触させてもよい。
上記工程により、樹脂材料が溶媒によって膨潤し、その後の工程で加えるグラフト用化合物が樹脂材料の内部にまで浸透および拡散しやすくなると考えられる。上記工程により、樹脂材料の内部にまでグラフト鎖の形成がより容易となり、グラフト率がさらに向上し得る。さらには、副次的にグラフト鎖による樹脂材料を構成するポリマー間での橋掛けによるネットワーク構造形成などが起き得る。
樹脂材料と溶媒との接触は、例えば、樹脂材料を溶媒に浸漬する、溶媒を樹脂材料上に滴下または塗布する、あるいは気体状態の溶媒の存在下に樹脂材料を置くことにより行われる。樹脂材料中に溶媒が均一に存在する観点からは、樹脂材料を上記溶媒に浸漬することが好ましい。
一の態様において、樹脂材料に少なくとも溶媒を接触させる上記工程において、溶媒と共にグラフト用化合物を樹脂材料に接触させる。この態様において、さらに、放射線の照射前に、溶媒と共に加えた上記グラフト用化合物と同一または異なる種類の化合物を樹脂材料と接触させてもよい。
一の態様において、樹脂材料に少なくとも溶媒を接触させる上記工程後であって、樹脂材料に放射線を照射する前に、グラフト用化合物と樹脂材料とを接触させてもよい。
上記溶媒は、樹脂材料を溶解または劣化させないものを用いることができ、グラフト用化合物を溶解または分散可能なものであることが好ましい。グラフト用化合物のみから形成されるポリマーを溶解できる溶媒を用いると、グラフト重合後の樹脂材料の分離が容易になる。取り扱い性が有利となる観点からは、上記溶媒は、揮発しにくいもの(例えば、沸点が100℃以上の化合物)を用いることが好ましい。上記溶媒は、重合溶媒と同一の種類のものであってもよい。
上記溶媒としては、具体的には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサデカン、流動パラフィン、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。
別の態様において、溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n−ヘキサデカン、流動パラフィン等を挙げることができる。
上記溶媒とともに、架橋助剤等を加えてもよい。架橋助剤は上記と同意義である。
一の態様において、放射線の照射により樹脂材料の同士を架橋してネットワーク構造(橋掛け構造)が形成される。本態様において用いられ得る樹脂材料を構成する樹脂は上記と同意義であるが、特にポリエチレンを用いることができる。
別の実施形態において、樹脂材料から成型用材料を形成する方法は、樹脂材料にグラフト用化合物(または、グラフト用化合物を含む組成物)を接触させ、次いで、この樹脂材料に放射線を照射し、グラフト用化合物に由来する構成単位を含むグラフト鎖を樹脂材料に導入し(グラフト重合し)、成形用材料を形成することを含む。樹脂材料とグラフト用化合物とは、樹脂材料がグラフト用化合物によって膨潤するまで接触させることが好ましく、例えば樹脂材料(例えばペレット)が白濁するまで接触させてもよく、または樹脂材料とグラフト用化合物とを1〜24時間接触させてもよい。電離放射線を樹脂材料に照射する前に、樹脂材料とグラフト用化合物とを予め接触させることにより、樹脂材料の内部にグラフト用化合物が含まれ易くなると考えられる。また、樹脂材料がグラフト用化合物によって膨潤し、樹脂材料を形成する樹脂の分子運動性が向上することにより、グラフト用化合物の樹脂材料内部への浸透性および拡散性が向上すると考えられる。その結果、樹脂材料の内部にまでグラフト鎖を形成することがより容易となり、グラフト率がより良好となり得る。
上記樹脂材料とグラフト用化合物(または、グラフト用化合物を含む組成物)との接触は、例えば、樹脂材料を少なくともグラフト用化合物に浸漬する、少なくともグラフト用化合物を樹脂材料上に滴下または塗布する、あるいは気体状態の少なくともグラフト用化合物の存在下に樹脂材料を置くことにより行われる。樹脂材料中にグラフト用化合物が均一に存在する観点からは、樹脂材料を上記グラフト用化合物に浸漬することが好ましい。
本態様において、樹脂材料にグラフト用化合物を接触させた後、放射線を樹脂材料に照射する前に、樹脂材料にグラフト用化合物を接触させてもよい。このグラフト用化合物は、予め樹脂材料に接触させたグラフト用化合物と同一または異なる種類である。
放射線の照射後に、さらにグラフト化合物と樹脂材料とを接触させる工程を含んでもよい。この工程で用いるグラフト化合物は、放射線を樹脂材料に照射する工程の前に用いるグラフト化合物と同一または異なる種類である。
本開示においては、上記のような成形用材料を成形することにより、樹脂成形体を得る。すなわち、上記樹脂成形体は、本開示の成形用材料よりなる。
成形用材料を樹脂成形体に成形する方法は、特に限定されず、一般的な成形方法、例えばモールド成形、押出成形、射出成形、ラム押出し、プレス成形、真空成形、トランスファ成形、ブロー成形、ナノインプリント等を用いることができる。また、本開示の成形用材料は、溶媒に溶解または分散、具体的には溶解させることにより、キャスト成形等のコーティング方法を用いた成形に用いることができる。成形用材料を樹脂成形体に成形する方法は、押出成形、モールド成形(特に、金型に入れてホットプレスによるモールド成形)、あるいは、射出成形、ラム押出し成形が好ましい。このような方法を用いることによって、グラフト鎖による効果(例えば、透明性、ソルベントクラック耐性等)を樹脂成形体に発現させ得る。
成形用材料を成形することにより得られた樹脂成形体を、後処理、好ましくは熱処理、より好ましくは、成形用材料に含まれるグラフト鎖の導入された樹脂材料のガラス転移温度(以下、Tgと示すことがある)付近、さらに好ましくはTgよりも3℃低い温度、さらにより好ましくはTgよりも5℃低い温度で熱処理することで、樹脂材料における分子運動性を促進し、樹脂成形体の形状を損なわずに、グラフト鎖が樹脂成形体の内部において均一に分散し得、樹脂成形体表面での機能発現を促進し得る。
樹脂成形体を熱処理する温度を調整することにより、得られる樹脂成形体の表面からの機能化領域を制御し得る。
別の実施形態では、当該グラフト反応後の成形用材料を成形加工する際、加えられる熱処理時間を通常よりも長くし、さらに成形後の樹脂成形体を熱処理する。
成形時の温度は、用いる樹脂材料の種類に応じて適宜選択することができ、ガラス転移点以上、分解温度以下の温度、好ましくは融点以上、分解温度以下の温度であり得る。
成形時の温度を調整することにより、得られる樹脂成形体の表面からの機能化領域を制御し得る。
一の態様においては、成形用材料を成形加工する際、加えられる熱処理時間を通常よりも長くすることで、樹脂材料の分子運動性を活性化し、グラフト用化合物が樹脂成形体表面に偏析させることを促進することにより、成形後の熱処理が不要となる。
一の態様において、当該成形用材料を溶媒に溶解または分散させたキャスト溶液を準備し、バーコート法やスプレーコート法などの手法により、基板上に成膜した後、さらに赤外線またはホットアイロンを用いて熱処理してもよい。上記熱処理によって、形成された成膜中のグラフト用化合物が膜の表面に偏析し得、表面における機能発現がより可能となり得る。
上記態様において、熱処理温度は、用いる樹脂材料の種類に応じて適宜選択することができ、好ましくはガラス転移点以上、分解温度以下の温度、より好ましくは融点以上、分解温度以下の温度であり得る。
一の態様において、当該成形用材料を溶媒に溶解または分散させたキャスト溶液を準備し、バーコート法やスピンコート法により、基板上に成膜した後、ナノインプリント装置によりモールド形状を転写して成形してもよい。
上記態様において、ナノインプリント時の温度は、用いる樹脂材料の種類に応じて適宜選択することができ、好ましくはガラス転移点以上、分解温度以下の温度、より好ましくは融点以上、分解温度以下の温度であり得る。
上記態様において、成形後、当該樹脂成形体を、好ましくは成形用材料のガラス転移温度付近、より好ましくはTgよりも3℃低い温度、さらにより好ましくはTgよりも5℃低い温度で熱処理することで、樹脂の分子運動性を促進し、樹脂成形体の形状を損なわずに、グラフト用化合物が樹脂成形体表面に偏析させることが可能であり、樹脂成形体表面での機能発現を促進することができる。
一の態様において、当該グラフト反応後の成形用材料と、グラフト反応を行っていない樹脂材料を混合して、各種方法により成形加工する。上記のように混合することによって、グラフト反応後の成形用材料中のグラフト用化合物による効果(例えば、透明性、ソルベントクラック耐性)を樹脂成形体に発現させることが容易になる。グラフト反応を行っていない樹脂材料の混合量は、グラフト反応を行った樹脂材料(本開示の成形用材料)100質量%に対し、好ましくは最大で200質量%、より好ましくは100質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下である。グラフト反応を行っていない樹脂材料の混合量は、グラフト反応を行った樹脂材料(本開示の成形用材料)100質量%に対し、1質量%以上とすることができる。
上記態様において、グラフト反応後の成形用材料に含まれる樹脂材料を構成する樹脂および上記のグラフト反応を行っていない樹脂材料を構成する樹脂が同一の樹脂である場合、当該成形用材料へのグラフト反応を行っていない樹脂材料の混合量(樹脂成形体に対する、グラフト反応を行っていない樹脂材料の添加割合)が少ないほど、成形加工して得られる樹脂成形体に発現する所望の機能性が向上し得る。また、グラフト反応を行っていない樹脂材料の混合量が多いほど、成形用材料および成形加工して得られる樹脂成形体の強度が向上する。
上記態様において、グラフト重合を行っていない樹脂材料の混合量および熱処理温度を制御することにより、得られる樹脂成形体の表面からの機能化領域を制御し得る。
一の態様において、成形用材料およびそれを用いた樹脂成形体の加工成形には、マスターバッチと呼ばれる、形状がペレットや粒子などからなるプラスチックに、本開示でグラフト鎖を導入した樹脂成形体(あるいは成形用材料)とグラフト鎖を有しないプラスチック樹脂(例えば、本開示における樹脂材料)とを練りこみ、プラスチックの成型時に規定の倍率でグラフト量を希釈し得る樹脂用グラフト剤を用いてもよい。
得られる樹脂成形体の形状は、特に限定されず、所望するいずれの形状、例えば、ブロック状、シート状、フィルム状、棒状、凹凸状、その他用途に応じた種々の形状であってもよい。
本開示の方法によれば、上記したグラフト鎖を有する成形用材料を用いることにより、従来の成形時に含フッ素撥剤等を添加して成形する方法よりも、ソルベントクラック耐性、透明度が良好であり得、表面が滑らかな樹脂成形体を得ることができる。
例えば、得られる樹脂成形体は、例えば、10.0%以下、好ましくは8.0%以下、好ましくは6.0%以下、より好ましくは1.0%以下のヘイズ値を有し得る。ヘイズ値の下限値は、例えば、0.1%であり得る。上記ヘイズ値は、市販のヘイズメーターにより測定することができる。
本開示の方法によれば、上記したグラフト鎖を有する成形用材料を用いることにより、従来と同様に成形した場合であっても、例えば、従来の成形用材料と同様の形状を有する成形用材料(例えば、ペレット材料等)を用いて、従来の成形方法(例えば、射出成形、押出成形等)で成形した場合であっても、グラフト鎖に由来する優れた機能(例えば、透明性、ソルベントクラック耐性等)を有する樹脂成形体を得ることができる。即ち、本開示の方法によれば、成形後に樹脂成形体の表面をグラフト化するよりも簡便に、樹脂成形体に機能を付与することができる。
本開示の方法によれば、複雑な表面形状を有する樹脂成形体を形成することができる。また、本開示の方法によれば、設備的な観点からの制限が少なく、大きな樹脂成形体の形成が容易になり得る。
本開示の方法によれば、グラフト鎖を有する成形用材料を用いることにより、樹脂成形体表面にグラフト鎖を比較的均一に存在させることができる。これに対して、成形体自体にグラフト鎖を形成する場合には、樹脂成形体を均一な温度に調整することが困難である、電離放射線を樹脂成形体に均一に照射することが困難である、または、樹脂成形体の形状(特に複雑な形状に成形された樹脂成形体)によっては誘起されるラジカル等の中間活性種の濃度に差が生じ得る等の理由により、樹脂成形体の表面にグラフト鎖を均一に形成することは困難であると思われる。なお、樹脂成形体の表面部分に存在するグラフト鎖の存在は、例えば、FT−ラマン顕微鏡(イメージングを含む)、陽電子寿命測定を用いて観察することができる。
また、樹脂成形体にグラフト鎖を形成する場合、樹脂成形体の表面の全体にグラフト鎖を形成するためには、長時間の放射線照射を必要とする場合があった。このような場合、放射線照射の影響を受けやすい、例えば分解または劣化しやすい樹脂材料を用いると、樹脂成形体の機械強度が保たれない場合がある。これに対して、本開示の方法では、グラフト鎖を有する成形用材料を用いるため、樹脂成形体の機械強度の低下を抑制しながら、表面にグラフト鎖が比較的均一に存在する樹脂成形体を形成することができる。
特に、本開示の一態様では、放射線の照射に電子線照射装置を用いるが、このような態様では、電子線照射装置の加速電圧を例えば1MV未満、好ましくは、300kV以下、より好ましくは、150kV、さらに好ましくは100kV未満に下げることで、樹脂本来の物理特性(例えば、強度、弾性率、ガラス転移温度、融点)を損なうことなく、成形用材料の表面にグラフト鎖を導入することが容易になる。この態様は、放射線照射により機械的特性などの物理特性が大きく変化するような樹脂材料に有用である。
本開示の方法によれば、表面の凹凸の少ない樹脂成形体を形成し得る。表面粗度は、レーザー顕微鏡、光干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡などを用いて測定することができる。
上記樹脂成形体の凹凸は、グラフト率が、例えば、樹脂材料に対して0.05〜1.5%、具体的には0.05〜0.5%、より具体的には0.1〜0.5%、0.1〜0.45%の範囲にある場合であっても少なくなり得る。これに対し、上記の従来の方法では、樹脂成形体表面に、均一にグラフト鎖を形成することが困難であり、また、グラフト鎖が樹脂成形体の内部に形成されることにより樹脂成形体が膨潤する場合があることから、グラフト鎖を形成した後の樹脂成形体表面に凹凸が生じ得る。表面の凸凹が小さいことは、レーザー顕微鏡または干渉顕微鏡等を用いて樹脂成形体の表面状態を観察することによっても確認し得る。
上記したように、本開示の方法は、グラフト鎖が非フッ素化合物に由来する構成単位を有し、このグラフト鎖の導入された樹脂材料を含む成形用材料を用いることを特徴とする。従って、本開示は、さらに、上記グラフト鎖の導入された樹脂材料を含む成形用材料をも提供する。本開示の成形用材料は、上記本開示の樹脂成形体の製造方法において、樹脂成形体の原料として用いるのに適している。
一の態様において、本開示の成形用材料(例えばペレット)は、樹脂に添加する材料として用いる(内添する)ことができる。樹脂に上記成形用材料を内添すると、形成される樹脂成形体のブリードアウトを低減できる。樹脂成形体の形成方法、内添方法については従来から行われている手法を用いることができる。
ある態様においては、樹脂材料および/またはグラフト鎖を形成するポリマーは架橋された構造を有していてもよい。かかる架橋により、樹脂材料は、ネットワーク構造を有し得る。上記のような構造は、例えば、樹脂材料に放射線を照射し、(1)非フッ素化合物に由来する構成単位を有するグラフト鎖を樹脂材料に導入し、成形用材料を得、得られた成形用材料を成形すること、および(2)樹脂材料および/またはグラフト鎖を形成するポリマーを架橋すること、により形成され得る。
本態様において、より具体的には、グラフト鎖の一部は、樹脂材料のポリマー主鎖を架橋していてもよい。または、グラフト鎖は、架橋された樹脂材料に導入されてもよい。
グラフト鎖は、成形用材料の少なくとも表面に存在する。成形用材料の表面がグラフト鎖を有することは、例えば成形用材料の表面(例えば、深さ数μmまで)を分光分析することにより確認することができる。分光分析の方法は、例えば赤外分光法による全反射測定法(Attenuated Total Reflection:ATR)等による最表面観察、あるいは、FT−ラマン顕微鏡(イメージングを含む)、SEM−EDX(エネルギー分散X線分光分析)による断面観察等を用いることができる。
上記グラフト反応後の成形用材料は、表面から内部にかけてグラフト鎖を有し得る。このグラフト鎖の形成される深さは、放射線の照射装置の能力、またはグラフト反応時間によって変化し得る。例えば、10MVの高加速電圧で電子線を成形用材料に照射した場合は、成形用材料の表面から、最大で深さ20mm程度までグラフト鎖は成長し得る。10MVの加速電圧であっても、反応時間を調整することで、成形用材料の表面からのグラフト鎖の分布またはグラフト鎖の形成される深さを制御することができる。例えば、反応時間を短くすることで、成形用材料の表面からのグラフト鎖の形成される深さを浅くすることができる。また、文献(A.Oshima et al, Radiait.Phys.Chem.Vol.80,pp196-200,2011)にあるように、電子線照射装置の加速電圧を調整することで、電子線の浸透深さを制御することができる。例えば、加速電圧を下げることで、電子線の浸透深さが浅くなり、成形用材料内に誘起されるラジカル等の中間活性種の分布を当該材料の表面付近にのみに制御することができる。これにより、グラフト反応により導入されるグラフト鎖の、成形用材料の深さ方向に沿った分布を制御することができる。
本開示におけるグラフト鎖は、成形用材料の表面から、最大で深さ20mmまで、好ましくは最大で1mmまで、より好ましくは最大で500μmまで、さらに好ましくは最大で200μmまで、さらにより好ましくは最大で深さ75μmまで存在する。
好ましくはグラフト鎖が存在する深さは、成形用材料の表面から、成形用材料の厚みの0.001〜99%までの深さ、例えば0.01〜99%までの深さ、または0.1〜99%までの深さであり得る。グラフト鎖が存在する深さは、成形用材料の表面から、好ましくは1〜95%までの深さ、より好ましくは3〜90%、より好ましくは5〜80%までの深さ、さらに好ましくは10〜60%までの深さ、さらにより好ましくは20〜60%までの深さであってもよい。
好ましくは、グラフト鎖が存在する深さは5〜15%の範囲にあることが好ましい。このような範囲にあると、樹脂成形体の透明性、ソルベントクラック耐性が良好になり得る。
本開示における樹脂成形体の機能化領域の深さは、好ましくは最大で深さ10mm、より好ましくは最大で500μm、さらに好ましくは最大で200μm、特に好ましくは最大で50μm、さらにより好ましくは最大で深さ20μm存在する。
グラフト鎖が存在する深さは、樹脂成形体の表面から、樹脂成形体の厚みの0.001〜99%までの深さ、例えば0.01〜99%までの深さ、または0.1〜99%までの深さであり得る。グラフト鎖が存在する深さは、樹脂成形体の表面から、好ましくは2〜90%までの深さ、より好ましくは5〜80%、さらにより好ましくは10〜60%までの深さであってもよい。
一の態様において、本開示の成形用材料は、グラフト鎖の導入された樹脂材料からなり、成形用材料の表面から、最大で200μmの深さまでグラフト鎖が存在し、その表面積は、100mm以下であり得る。
成形用材料(好ましくは、グラフト重合後の樹脂材料)におけるグラフト鎖が存在する深さは、表面グラフト重合後の成形用材料の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によるEDX(Energy dispersive X-ray)分析、EPMA(Electron Probe Microanalyser)分析、走査透過電子顕微鏡(STEM)によるEDX等により測定することができる。また、グラフト鎖が存在する深さは、顕微FT−IRや、ラマン顕微鏡等によっても測定することができる。
また、成形用材料(好ましくは、グラフト重合後の樹脂材料)におけるグラフト鎖が存在する深さは、陽電子寿命測定によっても測定することができる。陽電子が発生してから電子と対消滅するまでの時間を計測して得られる陽電子寿命は、高分子の非晶質自由体積および結晶中の原子空孔のサイズと相関を持つため、グラフト鎖がグラフトするにつれて成形用材料における非晶質の自由体積が小さくなり、陽電子寿命も短くなる。このことから、陽電子寿命測定により、グラフト鎖が存在する深さを測定することができる。陽電子寿命測定は、一般に、β+崩壊時に放出されるガンマ線と消滅ガンマ線を異なるシンチレーション検出器で検出し、それらの入射時間差から、ある時間で消滅した陽電子の頻度を計数する。このようにして得られた減衰曲線を解析することで陽電子寿命を決定することができる。例えば、The 2nd Japan-China Joint Workshop on Positron Science (JWPS2013) で発表された T. Okaらによる「Free volume study of the functionalized fluorinated polymer」において、フッ素樹脂にスチレンがグラフトされた例が紹介されている。本開示においても、この方法によりグラフト鎖の存在を計測することができる。
グラフト鎖が存在する厚みが小さいほど、あるいは、グラフト率が低いものほど成形用材料および成形加工して得られる樹脂成形体の強度が向上し得る。グラフト率を制御することにより、得られる樹脂成形体の機能化領域を制御し得る。
(合成例1)
樹脂材料であるZEON社の熱可塑性樹脂COP(シクロオレフィンポリマー)のペレット(φ2mm×4mm)5gをシート状の容器(50mm×50mm×0.1mm)に入れ、該容器を減圧脱気した。ステアリルアクリレート(以下、STA)モノマーに対して、窒素ガスを用いて30分間バブリングし脱酸素処理したモノマー試薬を、当該シート状容器に2cc注入し、COPペレットを当該モノマー試薬に浸漬した。その後、35℃、酸素不在下において、低エネルギー電子加速器を用いて、ペレットの表面に低エネルギー電子線を照射した。照射条件は、加速電圧250kV、照射電子流1.2mA、コンベア速度10m/分、試料−照射窓間距離100mmとした。シート状容器の両面から低エネルギー電子線を各1pass照射し、グラフト反応(同時グラフト反応)させた。このときの吸収線量は、20kGy/passであった。反応後、当該容器からペレットを大気に暴露して取り出し、アセトンとHFE7200(3M製)とを用いて、ペレットを洗浄し、グラフト用化合物のみから形成されたポリマーを完全に除去した。30分間風乾後、70℃において2時間乾燥処理を行うことで、成形用材料であるペレットを得た。
(合成例2)
合成例1と同様に同時グラフト反応を行った。同時グラフト反応後、70℃においてさらに16時間反応させることで、未反応モノマーを用いたグラフト反応(後グラフト反応)を行った(2段階のシーケンシャル・グラフト重合反応)。グラフト反応後のペレットの洗浄および乾燥は、合成例1と同様に行い、成形用材料であるペレットを得た。
(合成例3)
照射電子流を4.3mAに変更した以外は合成例2と同様に行い、成形用材料であるペレットを得た。このときの吸収線量は75kGy/passであった。
(実施例1)
合成例1で得られたペレットから成形シートを作製した。成形シートの作製条件は以下のとおりである。
(成形シートの作製)
合成例1で得られたペレットを、以下の条件でメルトフローレイト(MFR)装置を用いて加熱した後、吐出させて直径4mmのストランドを形成した。2回MFR装置を通したストランド2gを1kgの荷重をかけて260℃で5分間加熱し、1mmの厚さになるようにプレスし1mmの厚さの成形シートを作製した。
(MFRの条件)
MFR装置を用いた加熱は、TOYOSEIKI社製(Melt Indexer G-01)を用い、ペレット約3gを5kgの加重のもとで成形温度190℃に保たれたシリンダーに投入して行った。
(実施例2)
合成例2で得られたペレットから成形シートを作製した。成形シートの作製は、実施例1と同様に行った。
(実施例3)
合成例3で得られたペレットから成形シートを作製した。成形シートの作製は、実施例1と同様に行った。
(比較例1)
樹脂材料であるZEON社の熱可塑性樹脂COPのペレット(φ2mm×4mm)5gから成形シートを作製した。成形シートの作製は、合成例1と同様に行った。
(グラフト率)
グラフト率(Dg)は、グラフト重合反応前の樹脂材料とグラフト重合反応後の樹脂材料との重量変化を測定し、下記式により算出して求めた。
グラフト率:Dg[%]=(W−W)/W×100
[式中、Wは、グラフト重合前の樹脂材料の重量であり、Wは、グラフト重合後の樹脂材料の重量である。]
(透明性)
透過率の値が大きいほど成形シートの透明性が良好であると判断した。なお、透過率は、以下のように求めた。
プレスシートの全光線透過率は、JIS K 7361に準拠し測定を行った。透過率の算出には、波長450nmでの全光線透過率を用いた。
(ヘイズ値の測定)
プレスシートの両面に流動パラフィン(関東化学製、Cat.No.32033−00)を塗布して流動パラフィン膜を形成した。次いで、上記プレスシートおよび上記流動パラフィン膜を一対のカバーガラスで挟んで試験体を得た。この試験体について、ヘイズ測定装置(株式会社村上色彩技術研究所製HM−150型)を用い、JIS K7136に従ってヘイズ値を測定した。
(ソルベントクラック耐性)
ソルベントクラック耐性は、限界応力の値が大きいほど溶媒に対する耐久性が良好であると判断した。
限界応力は、以下の方法により求めた。まず、断面が板状の試験用サンプル(10cm×1cm×厚み0.1cm)を用意した。また、上記金属治具としては、X軸方向の長さx1が10.0cm、Y軸方向の長さy1が4.0cm、Z軸方向の長さz1が1.0cmのものを用いた。上記金属治具に、上記サンプルを、金属治具の曲面(金属治具の曲率が連続的に変化する曲面)の曲率に沿わせた状態で、固定部材3を用いて固定した。なお、固定後のサンプルのZ軸方向の幅(z2)は、0.6cmであった。上記サンプルを固定した金属治具を、25℃に保った試験用の溶媒(メチルエチルケトン)に浸漬した。溶媒中に浸漬した状態で、上記金属治具を、1時間静置した。クラック発生点1(x=x2)における歪みεを、以下の式により求めた。なお、クラックの確認は、目視により行った。
ε=[0.02×(1−0.0084×(x2)−3/2]×t
[式中、tは、試験前のサンプルの厚み(0.1cm)]
上記式で得られた歪みε、およびフィルムの曲げ弾性率Eを用いて、x=x2における応力σを、以下の式により算出した。
σ(kgf/cm)=E×ε
ここで、Eとしては、COPの曲げ弾性率E=2500MPaを用いた。
実施例および比較例の結果を表1に示す。
Figure 2020019904
本開示は、種々多様な基材、特に、ソルベントクラック耐性が求められる光学部材の表面に、表面処理層を形成するために好適に利用され得る。例えば、医療用シリンジバレル、バイアル瓶、光学レンズ、衣類用の糸素材等の製造に用いることができる。
1:クラック発生点
2:試験用サンプル
3:固定部材

Claims (11)

  1. グラフト鎖と樹脂材料とを含み、
    上記グラフト鎖が、式(1):
    CH=C(Ra1)−CO−O−R ・・・(1)
    [式中:
    a1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
    は、1価の有機基である]
    で表される基を有する非フッ素化合物に由来する構成単位を有する成形用材料。
  2. 上記非フッ素化合物が、式:
    CH=C(Ra1)−CO−O−Rb1
    [式中:
    a1が、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
    b1が、C5−25アルキル基である]
    で表される、請求項1に記載の成形用材料。
  3. グラフト率が、樹脂材料に対して、0.05〜1.5%である、請求項1または2に記載の成形用材料。
  4. グラフト鎖100質量部に対して、上記非フッ素化合物に由来する構成単位を5〜100質量部含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形用材料。
  5. 樹脂材料が、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリカーボネート、およびポリエチレンよりなる群より選ばれる少なくとも1である、請求項1〜4のいずれか1に記載の成形用材料。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形用材料よりなる樹脂成形体。
  7. 表面におけるヘイズ値が、0.1%〜10.0%の範囲にある、請求項6に記載の樹脂成形体。
  8. 樹脂材料に放射線を照射し、式(1):
    CH=C(Ra1)−CO−O−R ・・・(1)
    [式中:
    a1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
    は、1価の有機基である]
    で表される基を有する非フッ素化合物に由来する構成単位を有するグラフト鎖を樹脂材料に導入して成形用材料を得、得られた成形用材料を成形すること、を含む製造方法。
  9. 樹脂材料に放射線を照射し、式(1):
    (1)CH=C(Ra1)−CO−O−R ・・・(1)
    [式中:
    a1は、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
    は、1価の有機基である]
    で表される基を有する非フッ素化合物に由来する構成単位を含むグラフト鎖を樹脂材料に導入し、成形用材料を得、得られた成形用材料を成形すること、および
    (2)前記樹脂材料および/または前記グラフト鎖を形成するポリマーは架橋すること、を含む製造方法。
  10. 上記非フッ素化合物が、
    CH=C(Ra1)−CO−O−Rb1
    [式中:
    a1が、水素原子、C1−10のアルキル基、フェニル基、または塩素原子であり;
    b1が、C5−25アルキル基である]
    で表される、請求項8または9に記載の方法。
  11. 電離放射線の照射前の樹脂材料に上記非フッ素化合物を接触させること、を更に含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
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