先ず、本発明の実施の形態を詳細に説明する前に、本発明に至った経緯について説明する。
近年、部品の余寿命評価技術などの進歩により、回転部品を有する機械(以下、回転機械と称する)の予防的保全、計画的な保守が普及している。潤滑油の酸化劣化による潤滑機能低下や、潤滑油中の摩耗粉および塵埃などの汚染粒子は、回転機械の故障に繋がる軸受、歯車などの回転機械の摩耗損傷を誘起するため、潤滑油の監視技術は特に重要である。
本発明が適用される装置の一例である、風力発電機では、構成要素間の機械的な摩擦係数を低減するために潤滑油等を使用している。以下、風力発電機の潤滑油を例として潤滑油の監視技術を説明する。
図1に、ダウンウインド型の風力発電機の概略全体構成図を示す。図1では、ナセル3内に配される各機器を点線にて示している。図1に示すように、風力発電機1は、風を受けて回転するブレード5、ブレード5を支持するハブ4、ナセル3、及びナセル3を水平面内に回動可能に支持するタワー2を備える。
ナセル3内に、ハブ4に接続されハブ4と共に回転する主軸31、主軸31に連結されるシュリンクディスク32、シュリンクディスク32を介して主軸31に接続され回転速度を増速する増速機33、及び、カップリング38を介して増速機33により増速された回転速度で回転子を回転させて発電運転する発電機34を備えている。
ブレード5の回転エネルギーを発電機34に伝達する部位は、動力伝達部と呼ばれ、主軸31、シュリンクディスク32、増速機33及びカップリング38が動力伝達部に含まれる。そして、増速機33及び発電機34は、メインフレーム35上に保持されている。また、メインフレーム35上には、動力伝達部の潤滑用に潤滑油を貯留する潤滑油タンク37が一つまたは複数設置されている。また、ナセル3内には、ナセル隔壁30よりも風上側にラジエータ36が配置されている。外気を用いてラジエータ36で冷却された冷却水を発電機34や増速機33に循環させて発電機34や増速機33を冷却している。図1には、いわゆるダウンウインド型風車を例に説明したが、本実施の形態は、アップウインド型風車に適応できることは言うまでもない。
風力発電機では、多くの回転機械で潤滑油が使用されている。たとえば、図1において、主軸31、増速機33、発電機34、図示しないヨー、ピッチなどの軸受には潤滑油が供給される。風速に応じてブレードのピッチ角を変え出力を制御するのがブレードのピッチ制御であり、無駄なく風を受けるために風車の向きを風向きに追従させるナセルの方位制御がヨー制御である。
このような動力伝達部に加え、ヨー制御やピッチ制御を行うための回転機械を含む回転機械については潤滑油を強制循環により供給する必要がある。潤滑油は回転機械の回転部分の摩擦を低減し、部品の磨耗や破損、あるいはエネルギーロスを防止する。しかし、潤滑油の経時的な劣化による潤滑性能の低下や、摩耗粒子、塵埃などの潤滑油への混入による汚染が起こると、摩擦係数が増加し、風力発電機の故障リスクが増大する。
風力発電機が故障すると、故障部品交換のコスト・停電中の発電収入減など、多大なロスコストが発生するため、余寿命予測・予兆検知による早期部品手配、停電期間短縮などの対策が望まれている。特に、重要部品である増速機は、潤滑油の性能が低下すると故障リスクが増大するため、潤滑油の余寿命や交換時期を可能な限り早期に推定するための技術が重要である。
潤滑油の特性を評価するための監視対象パラメータとしては、粘度、全酸価測定、成分元素分析など種々のものが考えられる。
しかし、監視対象として風力発電機の潤滑油を想定した場合、例えば、粘度による特性の評価では、風車発電機の増速機の潤滑油は化学的に非常に安定な合成油が使用されており、粘度はほとんど変化しないため、これのみでは余寿命推定の指標として適していない。また、酸化による劣化を示す全酸価の測定では、風車発電機の増速機の潤滑油は、酸化に対して非常に安定な合成油が使用されており、全酸価はほとんど変化しないため、これのみでは余寿命推定の指標として適していない。
また、潤滑油に含有される微粒子粉や水分を測定する手法も考えられるが、潤滑油中にこれらの含有物が検出されている時点で、すでに磨耗やリークが生じている可能性があり、微粒子粉や水分の検出前に予兆を検出することが望まれる。また、風車発電機の増速機の潤滑油は粘度が高く、気泡が多数混入した状態で循環しており、パーティクルカウンタや鉄粉濃度計を設置して粒子計測を行う粒子計測法では気泡と粒子の識別が難しい。また、パーティクルカウンタや鉄粉濃度計によって、後述の潤滑油の添加剤の消耗を計測することは原理的に不可能である。
以上のようなことから、風力発電機の潤滑油余寿命を早期推定するためには、風力発電機の潤滑油の新たな性能評価方法が必要である。
ところで、上述したように、潤滑油には潤滑性能を維持するために種々の添加剤が含まれる。例えば、油性剤、摩耗防止剤、極圧添加剤(極圧剤)などの耐荷重添加剤や、酸化防止剤や消泡剤などである。風力発電機の増速機の潤滑油には、これらの添加剤が単独または複数含まれる。
油性剤は、金属表面に吸着して吸着膜を作り、この吸着膜が境界潤滑状態にある金属と金属の直接の接触を妨げ、摩擦、摩耗を減少させる働きをする。油性剤としては、金属表面に対して吸着力の大きい高級脂肪酸、高級アルコールおよびアミン、エステル、金属せっけんなどが使われる。
油性剤より厳しい荷重の条件下での摩耗防止に効果のあるのが摩耗防止剤で、一般にリン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸塩がよく使われる。摩耗防止剤は、タービン油、耐摩耗性作動油などに使用される。
境界潤滑状態のもっとも厳しい条件の高荷重の状態の接触面では、摩擦面は温度が非常に高くなり、油性剤による吸着膜は脱着して効果がなくなるが、極圧添加剤は硫黄、塩素、リンなどを含む化学的に活性な物質なので、金属面と反応して硫黄、塩素、リンなどを含む化合物を作り、せん断力の小さい被膜となって摩耗、焼付、融着を防止する。
極圧添加剤としては、一般に硫黄、塩素、リンなどを含んでいる物質で、硫化油脂、硫化エステル、サルファイド、塩素化炭化水素などのほか、ナフテン酸鉛や、同一分子内に硫黄、リン、塩素の中の二つ以上の元素を含む化合物も使用される。具体的な極圧添加剤としては、硫化スパーム油、硫化脂肪エステル、ジベンジルジサルファイド、アルキルポリサルファイド、オレフィンポリサルファイド、ザンチックサルファイド、塩素化パラフィン、メチルトリクロロステアレート、ナフテン酸鉛、アルキルチオリン酸アミン、クロロアルキルザンテート、フェノールチオカルバメート、トリフェニルフォスフォロチオネート(TPPT:Triphenyl Phosphorothionate)、4,4’-メチレンビス(ジチオカルバメート)、などがある。
酸化防止剤は、基油の酸化による劣化を防止するために用いられる。酸化防止剤には3種類ある。酸化の初期における遊離基(ラジカル)の生成を抑制し、炭化水素の酸化反応の連鎖を止める、遊離基抑制剤(Free Radical Inhibitor)、生成した過酸化物を分解し、安定な非遊離基化合物に変えてしまう役割をする過酸化物分解剤(Peroxide Decomposer)、および、強靭な吸着膜(不活性防食皮膜)を作る金属不活性化剤(Metal Deactivator)である。金属不活性化剤の役割は、潤滑油が酸化して生成した過酸化物の金属腐食性によって鉄や銅を溶解させないようにすることである。
具体的な酸化防止剤としては、フェノール誘導体(2,6-ジ-tert-ブチル p-クレゾール (BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル p-フェノール (DBP)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジアルキルフェノール)など)、アミン誘導体(2,6-ジアルキル-α-ジメチルアミノパラクレゾール、4,4’-テトラメチルジアミノジフェニルメタン、オクチル化フェニルナフチルアミン、ジ-オクチル-ジフェニルアミン、ジノニル-ジフェニルアミン、フェノチアジン、2,2,4-トリメチルジヒドロキシキニリン、など)、金属ジチオフォスフェート、アルキル硫化物、など、1,4-ジオキシジアントラキノン (別名:キニザリン)、1,2-ジオキシジアントラキノン (別名:アリザリン)、ベンゾトリアゾール、アルキルベンゾトリアゾール、などがある。
消泡剤の例としては、シリコーン系消泡剤、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコールが知られている。ギヤ油のような高粘度の潤滑油中では、気泡が発生すると消滅しにくく、潤滑性能低下による部品損傷発生、キャビテーション発生、油圧効率低下、冷却能力低下などの影響をおよぼす。
これらの添加剤(耐荷重添加剤、酸化防止剤、消防材)は、潤滑油に対して所定の割合(濃度)だけ含まれていることが、所望の潤滑性能の維持のために必要である。しかしながら、上述したように、従来は、特許文献1に記載のように、汚染物質による劣化、水分混入による劣化などを検出する技術は提案されているが、潤滑油自体の成分、特に潤滑油の添加剤濃度などの変化を直接計測する方が望ましい。
そこで発明者らは、潤滑油に含まれる添加剤の状態、特に濃度の推移をモニタすることにより潤滑油の劣化について予兆診断を行う手法について、比較検討した。
図2に、成分分析の手法の一つとして知られているICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)元素分析により、潤滑油中の極圧添加剤の成分であるリン濃度測定を行った結果を示す。横軸が経過時間(月数)であり、縦軸はリン(P)濃度(ppm)である。この結果では、経過時間とリン濃度との間に有意な関係が見られない。これは元素分析精度が、予兆診断のための精度に不十分である可能性を示唆する。
図3は、LC/MS(Liquid Chromatography Mass Spectrometry:以下LC測定)によって得られた、風車運転に伴う潤滑油中のリン系極圧添加剤の消耗挙動(減少)の結果を示すグラフである。この例では、リン系極圧添加剤(極圧剤)は具体的にはTPPTである。横軸が経過時間(月数)であり、縦軸はTPPT濃度(新油に対する相対値)である。この結果では、経過時間と濃度との間に有意な関係が見られ、経過月数に伴って濃度が線形に低下している。
LC測定では、高精度かつ高感度に潤滑油中の添加剤のみを定量可能である。
以上の検討により、潤滑油中の添加剤の濃度の変化を経時的にモニタして、添加剤の機能を維持管理するためには、LC測定のように潤滑油中の添加剤の濃度を直接測定できる測定方法が適していることが分かった。また、このとき潤滑油中の添加剤の濃度が所定閾値を下回ると、潤滑油の性能が不十分となり装置の故障につながることが分かった。
これらのことから、風力発電機の潤滑油余寿命を早期推定するための風力発電機の潤滑油の新たな性能評価方法として、潤滑油中の添加剤、とりわけ極圧剤の濃度測定が有効である。
LC測定以外に、潤滑油中の添加剤の濃度を正確に直接測定可能な方法としては、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、核磁気共鳴(NMR)、などがある。
LC測定や、FT−IR、NMRなどにより、潤滑油中の添加剤の濃度を正確に直接測定することにより、潤滑油の添加剤の劣化(減少)を監視することができる。しかしながら、これらの分析方法では、潤滑油のサンプル採取に伴う風力発電機の停止を要するだけでなく、分析に時間を要することから、簡易に潤滑油の添加剤の濃度を正確に測定できるようにすることが望ましい。また、風力発電機は、山間部や洋上に設置されることが多いことから、オンライン遠隔監視により潤滑油の添加剤濃度を測定できるようにすることが望ましい。
発明者は種々検討した結果、光学式センサの計測データに基づき求められる色度データを用いて潤滑油の添加剤の濃度を測定できることを見出した。ここで、光学式センサとは、潤滑油の可視光透過率または反射率に基づいて色を定量表現するものである。上述の例では、添加剤として、極圧剤のTPPTを用いて説明したが、この他、耐荷重添加剤である、油性剤、摩耗防止剤、他の極圧添加剤、酸化防止剤、消防剤においても、濃度と色度の相関がある場合、適応可能である。
発明者による検討の結果、LC測定などによって求められる潤滑油中の添加剤の濃度と、潤滑油の着色度(色度)には、図4に示すような相関があることが判明した。図4は潤滑油中の極圧剤濃度と色度の相関を示す図である。縦軸はLC測定などによって求められる潤滑油中の添加剤の濃度を示し、横軸は光学式センサの計測データに基づき求められる色度を示す。ここで、図4において色度はRGBの組み合わせから構成される色空間で計算される色差(△E)で表示している。
図4中の△Eの定義は、
△E=(R2+G2+B2)1/2
であり、R、G、B、は、加法混合における光の三原色(Red、 Green、 Blue)を意味し、色座標の数値表示では、(R、G、B)と表現する。なお、24bpp(24 bit per pixel、 ピクセルあたり24ビット)でエンコードされたRGB色度は、赤・緑・青の輝度を示す3つの8ビット符号の整数(0から255まで)で表わされる。たとえば、(0, 0, 0)は黒、(255, 255, 255)は白、(255, 0, 0)は赤、(0, 255, 0)は緑、(0, 0, 255)は青、をそれぞれ示す。なお、色度の表示としては、RGB表色系の他に、XYZ表色系、L*a*b*表色系、L*u*v*表色系等々多くの種類があり、これらは数学的に変換されて各種の表色系に展開することができるので、他の表色系で色度を表示しても良い。
添加剤毎に、LC測定などによって求められる潤滑油中の添加剤の濃度と、光学式センサの測定データに基づき求められる潤滑油の色度の関係を、図4のように予め求めておけば、潤滑油の監視の際には、光学式センサの測定データに基づき求められる潤滑油の色度が得られ、潤滑油の色度に基づき、潤滑油の添加剤の濃度を測定することができる。
このように、潤滑油の劣化の指標となる、潤滑油中の添加剤の減少(消耗度)は、光学式センサによって計測される色度より求められることが明らかになった。これにより、LC測定や、FT−IR、NMRなどによる分析と比して潤滑油の添加剤濃度を簡易に測定することが可能となる。また、光学式センサをナセル内に設置すれば、風力発電機の潤滑油のオンライン遠隔監視も可能となる。
図4では、潤滑油に添加剤として極圧剤を含む場合について示したが、添加剤としては、耐荷重添加剤である、油性剤、摩耗防止剤、極圧添加剤の他、酸化防止剤、消防剤に対して適応できる。
その例の一つとして、潤滑油中の極圧剤TPPT濃度と色度の相関を図5に示す。
潤滑油の劣化の指標である添加剤の消耗度が、色度と相関がある理由は以下のように説明される。添加剤が歯車や軸受の摺動面で作用すると分解するが、添加剤の分解生成物が、フェノール系の酸化物やキノンのような酸化生成物であり、それらは黄色〜赤褐色に着色している。たとえば、酸化防止剤であるBHTや、極圧剤であるTPPTが分解すると、着色化合物が生じる。酸化前のBHT、TPPTは、ほぼ無色である。これらのことから、潤滑油の劣化は、分解生成物である着色化合物の増加と正の相関がある。したがって、色度計測により、潤滑油の劣化度が求められる。
潤滑油には複数の添加剤が含まれる場合がある。この場合もLC測定などによって求められる潤滑油中のそれぞれの添加剤の濃度と、光学式センサの測定データに基づき求められる潤滑油の色度の関係を予め求めておけば、潤滑油の監視の際には、光学式センサの測定データに基づき求められる潤滑油の色度に基づき、潤滑油中のそれぞれの添加剤の濃度を測定することができる。
図6は、添加剤として極圧剤(ZDDP)と酸化防止剤(BHT)の二種の添加剤の添加剤濃度と色度との相関を示す図である。この図から分かるように、極圧剤と酸化防止剤の消耗速度が異なる。このような消耗速度が異なる添加剤の濃度も光学式センサの測定データに基づき求められる色度に基づき測定することができる。
さらに、本発明者は、光学式センサの計測データに基づき、潤滑油の添加剤の消耗(劣化)と潤滑油の汚染を識別することができることを見出した。つまり、本発明の適応分野の一つである風力発電の増速機に用いられる潤滑油の添加剤に対して、潤滑油中のそれぞれの添加剤の濃度と光学式センサの測定データに基づき求められる潤滑油の色度との関係を予め求めておけば、潤滑油の監視の際には、光学式センサの測定データに基づき潤滑油の添加剤の濃度を推定することができる。これにより、潤滑油の劣化度を判断することができる。
図7は、潤滑油中の極圧剤が消耗、すなわち、極圧剤が分解して酸化生成物を生成した際のR、G、Bの各値の変化の様子を示す図である。横軸が経過時間(月数)であり、縦軸はR、G、Bの値である。図7に示すように、添加剤の消耗では、R、G、B、のうち、主に、B値が大きく低下している。添加剤が、酸化防止剤、摩耗防止剤などの場合でも、同様なRGB値の変化が見られる。
一方、図8は、潤滑油中に摩耗粉が生成した際のR、G、Bの各値の変化の様子を示す図である。図7と同様に、横軸が経過時間(月数)であり、縦軸はR、G、Bの値である。図8に示すように、汚染の場合には、R、G、B、のすべての値が大きく低下する。これは、摩耗粉や塵埃による潤滑油汚染が起こるとそれらの固形分が潤滑油中を浮遊するために可視光透過率は低下する。同様に、水混入が起こると潤滑油が濁ることから可視光透過率が低下する。したがって、潤滑油を光学式センサで計測することにより、潤滑油の添加剤の濃度測定に加えて、摩耗粉や塵埃による潤滑油汚染、水混入のような汚染を検出することが可能であり、RGBのそれぞれの値の変化より、潤滑油の劣化と汚染を識別することが可能である。
潤滑油の劣化と汚染が軽微であり、潤滑油交換や部品交換が必要ない程度である場合に、風力発電機を停止し、風力発電機の増速機から潤滑油を採取し、LC測定、FT−IR、NMRなどの組成分析、元素分析、微粒子計測、粘度測定、全酸価分析を行うのは、時間とコストの面から適切ではない。そこで、増速機の潤滑油中に設置された光学式センサを含む種々のセンサで潤滑油の性状を検出し、そのセンサ情報(潤滑油の物理化学的な状態を示す数値)に基づいて潤滑油の異常度合いの程度をリアルタイムに判別し、その判別結果に応じて増速機が故障に至る前の適切なタイミングで詳細な潤滑油分析のための潤滑油採取を促す。これにより、適正な潤滑油交換やフィルタ交換、あるいは部品の交換などを行うことで故障を未然に防止することができ、また修理等の対応処理を迅速に行うことで風力発電機を効率的に管理できる。
潤滑油性状センサで測定すべき潤滑油性状としては、潤滑油の温度、色度、粘度、密度、誘電率、導電率、コンタミ等級(ISOコード、NAS等級)などがある。各潤滑油性状センサで測定可能な潤滑油性状はセンサの仕様により異なるため(1つだけでなく2つ以上の潤滑油性状を測定できるセンサも存在する)、実際に増速機に搭載される潤滑油性状センサの組み合わせは、測定したい潤滑油性状と各センサの仕様に応じて異なる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
本明細書における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
実施例1は、風力発電機の機械的駆動部に供給される潤滑油の監視するため、増速機の潤滑油中に設置された光学式センサを含む種々のセンサで潤滑油性状、回転機械の状態を把握するための増速機の加速度を検出し、そのセンサ情報(潤滑油の物理化学的な状態を示す数値)に基づいて潤滑油の異常度合いの程度、回転機械の状態をリアルタイムに判別する。そして、判別結果に応じて増速機が故障に至る前の適切なタイミングで詳細な潤滑油分析のための潤滑油採取、潤滑油交換、フィルタ交換、部品交換を促す風力発電機の診断システムである。このシステムは、入力装置、処理装置、記憶装置、および出力装置を備える。記憶装置は、潤滑油の添加剤の濃度と光学式センサのデータである色度との相対関係を記憶し、処理装置は、潤滑油の色度を計測する光学式センサデータに基づいて、潤滑油の色度特性より求められる潤滑油中の添加剤濃度が所定閾値以下(基準値)となる時間を推測する。
また、実施例1は、処理装置、記憶装置、入力装置、および出力装置を備えたサーバを用いる、光学式潤滑油センサを用いた風力発電機診断システムおよび方法である。この方法では、まず、潤滑油の性状を把握するため、風力発電機の潤滑油の色度データを取得する第1のステップ、サンプルに含まれる添加剤の濃度を測定する第2のステップ、測定した添加剤の濃度を、記憶装置に時系列に格納して添加剤濃度データとする第3のステップ、処理装置が添加剤濃度データを処理することにより、添加剤の濃度が所定閾値となる時間を推測する第4のステップを実行する。
(1.システム全体構成)
図9に潤滑油供給系統を有する風力発電機の潤滑油の監視システムの概略図を示す。図9には説明のため、図1の風力発電機1のナセル3部分を抽出して示している。ナセル3内部には、主軸31、増速機33、発電機34、図示しないヨー、ピッチなどの軸受があり、これらには潤滑油タンク37から潤滑油が供給される。
図9に示すように、風力発電機1は通常複数が同一敷地内に設置され、これらをまとめてファーム200aなどと呼ぶ。それぞれの風力発電機1には、潤滑油の供給系統に各種センサ(図示せず)が設置され、潤滑油の状態を反映したセンサ信号は、ナセル3内のサーバ210に集約される。また、各風力発電機1のサーバ210から得られるセンサ信号は、ファームごとに配置される集約サーバ220に送られる。集約サーバ220からのデータは、ネットワーク230を介して中央サーバ240へ送られる。中央サーバ240へは、他のファーム200bや200cからのデータも送られる。また、中央サーバ240は、集約サーバ220やサーバ210を介して、各風力発電機1に指示を送ることができる。
(2.センサ配置)
図10は、潤滑油用センサを備えた回転機械の概念図である。潤滑油は、ポンプなどの潤滑油供給デバイス301から回転機械302に供給される。潤滑油供給デバイス301は、潤滑油タンク37に接続されて潤滑油の供給を受ける。回転機械302は、例えば増速機33その他の機械的な接触が生じる部位の他、ヨー・ピッチ制御を行うための動力伝達部を含む。
センサ群304は潤滑油の状態を検知するために潤滑油の流路等に配置される。実施例1では、回転機械302の潤滑油の排油口に接続する潤滑油の流路から分岐した流路(潤滑油経路の末端付近)に測定部303を設け、この測定部303に潤滑油の一部を導入して、測定部303にセンサ群304を設置している。測定部303を潤滑油のメインの流路に設けていないのは測定部303における潤滑油の流速を潤滑油の状態を検知するのに適した流速に調整するためである。回転機械302から排出した潤滑油はフィルタ305を経由してタンク37に戻る。なお、フィルタ305は必須ではない。センサ群304は、潤滑油の各種のパラメータを測定する。例えば、物理量としては、光学式センサによる色度の他、温度、油圧などがある。温度、油圧等は、公知のセンサを用いて測定することができる。これらのパラメータの時間的な変化に基づいて、潤滑油の状態を評価することができる。これらの温度などのセンサは必須ではないが、潤滑油の状態をより詳しく検知するために設けるのが好ましい。
そして、実施例1では、センサ群304には、可視光源と受光素子を備え、潤滑油の可視光透過率を計測する、光学式センサが含まれる。光学式センサにより、潤滑油の色度情報(R、G、Bの値)を測定し、取得した色度データより、潤滑油中の残存添加剤量を求め、劣化度診断と余寿命診断を行う。センサデータによる診断では、光学式センサによるセンサデータまたは光学式センサと他の一つまたは複数の種類のセンサデータに基づいて診断を行う。光学式センサは、潤滑油の可視光反射率を求めるものでも同様に診断を行うことができる。
潤滑油は、使用により品質が劣化し、初期の機能を果たさなくなる。このため、品質の劣化状況に応じて、交換等のメンテナンスを行う必要がある。このようなメンテナンスのタイミングを知るために、センサ群304で収集し得るデータを、遠隔地でモニタできるようにすることは、保守管理の効率上有用である。センサ群304で収集したデータは、例えばナセル3内のサーバ210に集められ、その後ファーム200内でデータを集約する集約サーバ220を経て、複数ファームのデータを集約する中央サーバ240に送られる。
ただし、LC測定やFT−IR測定、NMR測定のように、測定のための設備が必要な分析については、風力発電機を停止し、適宜潤滑油のサンプルを収集し、別途設けられた設備により分析を行う必要がある。これらのLC測定、FT−IR測定、NMR測定で測定された結果も、別途中央サーバ240にデータとして格納し、データの集約を行い、これらのデータも考慮して潤滑油の性状を把握することが望ましい。
また、集約されるデータとしては、潤滑油に関するデータだけでなく、風力発電機の稼動状況を示すデータを含めてもよい。例えば、風力発電機1の振動を検知する加速度センサ(大きいほど潤滑油の劣化速度大)、風車出力値(大きいほど潤滑油の劣化速度大)、実稼働時間(長いほど潤滑油の劣化速度大)、機械温度(高いほど潤滑油の劣化速度大)、軸の回転速度(速いほど潤滑油の劣化速度大)、潤滑油の温度(高いほど潤滑油の劣化速度大)等である。これらは、風力発電機の各所に設置された公知の構成のセンサや、装置の制御信号から収集することができる。
(3.潤滑油診断のフロー)
図11は、実施例1による潤滑油診断処理を示すフロー図である。図11で示す処理は、図9のサーバ210、集約サーバ220、中央サーバ240のいずれかのコントロール下で行われる。以下の例では中央サーバ240が行うものとする。計算や制御等の機能は、サーバの記憶装置に格納されたソフトウェアがプロセッサによって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現される。なお、ソフトウェアで構成した機能と同等の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアでも実現できる。
中央サーバ240が制御を行う場合、配下に複数の風力発電機1を持つため、以下の処理は風力発電機ごとに行うものとする。この処理は基本的に繰り返し処理であり、開始タイミングはタイマーなどで設定され、例えば、毎日0時に処理を開始する(S601)。また、中央サーバ240が、オペレータの指示により任意のタイミングで行うこともできる。
処理S602では、中央サーバ240は、潤滑油の交換時期をチェックする。交換時期の初期値は、例えば潤滑油が設計温度で動作しているという前提で、余寿命を初期設定する。この交換時期は、実測データに基づいて、後に処理S610で更新され得る。
潤滑油の交換時期であった場合には、処理S603で潤滑油交換を行う。潤滑油交換は通常は、作業員による作業となるため、中央サーバ240は交換を行うべき時期と対象を作業員に指示するための表示や通知を行う。
潤滑油の交換時期でない場合には、処理S604で、中央サーバ240は潤滑油の性状をセンサデータにより診断する。センサデータとしては光学式センサで得られる潤滑油の色度情報に加えて、温度、油圧、潤滑油に含まれる粒子の濃度等を用いることができる。センサ群304で測定されたデータは、中央サーバ240に送られ、例えば中央サーバが、センサから得られたパラメータを事前に定めた基準値と比較することにより、潤滑油の特性を評価する。中央サーバには、図4から図6に示した色度と添加剤濃度の相関、図7に示した潤滑油中の添加剤が消耗(添加剤が分解して酸化生成物を生成)した際のR、G、Bの各値の変化、図8に示した潤滑油中に摩耗粉が生成した際のR、G、Bの各値の変化を予め記憶させておき、センサデータとの比較に用いるものとする。この基準値には、予め定められた閾値の他、予め定められた単位時間当たりのセンサ情報の変化量を用いることができる。
処理S605、S606で診断の結果が異常であれば、処理S603で潤滑油交換を行う。異常がなければ、処理S609を行う。処理S605では、例えば、光学式センサのR、G、B、のすべての値が所定の閾値よりも低下している場合には汚染異常有りと判断する。ただし、汚染異常については従来のセンサのデータも合わせて用いてもよい。S606では、図4〜図6に示す添加剤濃度と色度の相関を用いて、光学式センサで測定した色度により求められる添加剤濃度が所定の閾値よりも低下した場合に添加剤劣化度異常有りと判断する。なお、色度により添加剤濃度を求めることなく、色度が所定の閾値よりも小さくなった場合に添加剤劣化度異常有りと判断することも可能である。
処理S609では、中央サーバ240に色度測定データなどを入力し、当該データは時系列的に保存される。
風力発電機の予防的保全、計画的な保守という観点からすれば、異常有りと判断される前に、潤滑油に含まれる添加剤の濃度の推移に基づき潤滑油の劣化について予兆診断を行うことが望ましい。
図12は、時系列的に保存された潤滑油の色度データ取得結果の概念を示すグラフ図である。横軸が時間(月)であり、縦軸は色度(△E)を示している。横軸と平行な点線は、色度が300を示している。この時、TPPT濃度が50となることは、例えば、図6に示したように予め実験により求めることができる。例えば、色度を定点観測しているものとし、30ヶ月経過時までの色度データ700がプロットされている。図3と同様に、経過時間と色度の間には有意な関係が認められ、例えば時間に伴い線形に色度が減少する。色度データ((R、G、B)の値)より、図4〜図6に示すような、色度(△E)と添加剤濃度の相関関係を用いて、潤滑油中の極圧剤などの添加剤濃度を求めることができる。従って、時系列的に保存された色度測定結果からは、添加剤の消耗速度を計算することができる。ここで、添加剤濃度が新品の約半分になると、潤滑油の性能が許容範囲を下回るとする。このような閾値は実験的に求めることができる。
本例では処理S610で、閾値を50に設定しておき、時系列的に保存された添加剤濃度測定結果から推定される濃度が50になる時点を交換時期として推定する。図3のような実測値を得ている場合であれば、濃度が単調に減少することを前提に、データを外挿することができる。
処理S610による交換時期推定結果は潤滑油診断結果として表示することができる(処理S611)。図13及び図14には、縦軸には色度から求めた添加剤濃度を示し、添加剤濃度と経過時間との関係を示している。
図12の例では、添加剤がTPPTの場合を示す。約50ヶ月後に色度が300に到達すると見積もられた。色度300のときに、TPPT濃度が50になるので、その前のタイミング(例えば半月前)を新たな交換時期に設定すればよい(処理610)。処理S613で1サイクルの処理が終了し、次のサイクルの処理S602では、新たな交換時期に従って判定処理を行う。
図13の例では、添加剤がZnDTPであり、新品の状態から約10ヶ月後に濃度が50になるので、その前のタイミング(例えば1ケ月前)を新たな交換時期に設定すればよい。処理S613で1サイクルの処理が終了し、次のサイクルの処理S602では、新たな交換時期に従って判定処理を行う。
図14の例では、添加剤がBHTであり、BHTの閾値は30である。新品の状態から約20ヶ月後に濃度が30になるので、その前(例えば1ケ月前)を新たな交換時期に設定すればよい。処理S613で1サイクルの処理が終了し、次のサイクルの処理S602では、新たな交換時期に従って判定処理を行う。
なお、例えば、S611の後に、光学式センサで測定された色度データを、色に変換して表示画面に表示することができる。このように表示画面に潤滑油の劣化状態を色で表示することにより、作業員は潤滑油の劣化状態を視覚的に認識することができる。これにより、例えば、作業員が現地で潤滑油の状態を目視した際に潤滑油の劣化状態を大まかに把握することの一助となる。
図15に光学式センサによる潤滑油中の摩耗粉検出の一例を示し、図16に光学式センサによる潤滑油中への水混入検出の一例を示す。それぞれ縦軸に色度(△E)を示し、横軸に経過月数を示す。これらの図及び図8から分かるように、添加剤の劣化のような△Eの単調な減少と異なり、摩耗粉や水混入は△Eの急激な変化を呈する。すなわち、△Eが単調な減少から逸脱すると、その後に、摩耗粉や水混入が急激に増大する。したがって、△Eが単調な減少から逸脱した場合には、潤滑油の早期交換を検討する。これにより、実施例2では、潤滑油の添加剤の劣化と汚染の両方を計測して潤滑油の予兆診断を行うことが可能となる。また、△Eが単調な減少から逸脱した際に、他のセンサの出力も併せて、摩耗粉や水混入の急激な増大について予兆診断することも有効である。
以上のように、添加剤濃度測定結果を用いて潤滑油中の添加剤の消耗速度を知ることにより、潤滑油の寿命を早期検出できる。このため、適切な潤滑油交換等のメンテナンスにより、風力発電機の異常を未然に防止することができる。また、潤滑油の交換周期を最適化することも可能である。また、添加剤濃度を簡易な方法により測定することができ、光学式センサをナセル内に設置すれば潤滑油中の添加剤の劣化をオンライン遠隔監視することも可能となる。
なお、実施例1では、光学式センサで測定された色度に基づき、オンラインにより、摩耗粉による汚染の予兆診断や、水混入の予兆診断も可能である。
また、潤滑油の交換周期を最適化することも可能である。また、添加剤濃度を簡易な方法により測定することができ、光学式センサをナセル内に設置すれば潤滑油中の添加剤の劣化をオンライン遠隔監視することも可能である。
(複数センサによる予兆診断と保守報告)
図17は、横軸に風車稼働時間、縦軸に増速機33の健全度とし、両者の関係を示した図である。
風車稼働時間Tがt=0からt=1(t=0〜1)までは、見かけ上異常がなく増幅機の健全度は高い状態が維持される。その後、風車稼働時間がt=1を超えたあたりから、増速機の摩耗が開始される(状態A)。増速機の摩耗が開始されるタイミングの前で潤滑油の交換を行うことが好ましい。
風車稼働時間がt=1〜2において増速機の摩耗の開始(状態A)が確認され、続く、t=2〜3において振動が発生(状態B)し、t=3〜4において異音が発生(状態C)し、t=4〜5において熱が発生する加熱発生状態(状態D)、t=5〜6において煙の発生が確認され(状態E)、風車稼働時間t=6において増速機は故障に至る(状態F)。
図17に示したように、風車の稼働時間に応じて風車の健全度は、異常のない状態の状態Aから故障状態Fに遷移することになるが、各状態を把握するためのセンサはその種類が異なる。増速機の各状態に合わせて、保守員に適切な処置を施すよう通知するためには、増速機の各状態を把握できるセンサの種類を適切に選択する必要がある。
図17で示したように、光学式センサ(色度センサ)、粘度センサ、誘電率センサ、密度センサ、伝導率センサ等の風車の稼働時間(t=0〜6)の全体を通して増速機の状態を把握できるセンサを第1のグループとし、パーティクルカウンタ、鉄粉センサ等の風車の稼働時間(t=1〜6)の範囲で増速機の状態を把握できるセンサを第2のグループ、加速度センサ、アコースティックエミッション(AE)センサ、温度センサ、煙センサ等の風車の稼働時間(t=2〜6)の範囲で増速機の状態を把握できるセンサを第3のグループとする。
図18は、第1のグループから第3のグループのセンサによる増速機の状態に応じた保守対応を示した図である。図18の例では、第1グループのセンサとして光学式センサ(色度)、第2グループのセンサとしてパーティクルカウンタ、第3グループのセンサとして加速度センサを選択した場合の例を示している。第1のグループから第3のグループでは、予め増速機の異常度合い応じてセンサの値の閾値を設定しておくものとする。この閾値は、センサにより異常の兆候が検出される注意レベルと異常が確認されるレベルの警告レベル等、センサに応じて種々の値を設定できる。例えば、第1のグループに属する光学式センサ(色度センサ)は、潤滑油の添加剤の濃度に対応する色度△Eの値を注意レベル、警告レベルの二つの閾値を設定する。
図18の保守対応表は、例えば、第1のグループのセンサで注意レベルの値が検出されない場合、「保守は必要ない」という報告をするために用いられる。図17の増速機の健全度の遷移で説明した通り、第1のグループのセンサによって異常が検出できない場合には、通常、第2及び第3のグループでも異常が検出できないが、潤滑油等によらず、他の原因で増速機の故障の予兆が合わられることもあるため、図17の状態Aにおいても第2及び第3のグループのセンサによる監視は行う。
図18において、第1のグループのセンサが、例えば、注意レベルを検出した場合、オイル分析を行うよう保守員に対して通知を行う。第1のグループのセンサが警告レベルの値を検出した場合には、オイル交換及び増速機の点検を行うように通知するが、何れの内容とするかは、他のグループのセンサの値による。第2のグループが注意レベルの値を検出した場合、オイル交換の他増速機の点検を行うように通知する。尚、図18に示した例は、一例であって、センサの閾値の設定や閾値のレベルの値を検出した際の保守員に対する通知は、適宜適切な内容に設定することができる。
図19は、中央サーバ240と風力発電機1のセンサ群304の概略構成図である。
中央サーバ240は、風力発電機1に搭載された、色度センサ、粘度センサ、誘電率センサ、密度センサ、伝導率センサ等の第1のグループのセンサ、パーティクルカウンタ、鉄粉センサ等の第2のグループのセンサ、加速度センサ、アコースティックエミッション(AE)センサ、温度センサ、煙センサ等の第3のグループのセンサ群304にて測定されるセンサ情報をそれぞれのセンサに対応させて、第1のグループのセンサ情報901、第2のグループのセンサ情報902、第3のグループのセンサ情報903として記憶するための記憶装置2402を備えている。各センサ情報は、時系列データとして時間情報に対応付けられて記憶する。
第1のグループのセンサ情報901、第2のグループのセンサ情報902、第3のグループのセンサ情報903には、各グループの各センサについて、注意レベル、警告レベルの値がマウスやキーボード等の入力装置2411によって入力され、予め記憶装置2402に記憶されている。
記憶装置2402には、対処判定部2407として、状態判別プロブラム2404と、採取要否判別プログラム2405と、報告プログラム2406が記憶されており、各種プログラムをメモリ2403に読み込んでCPU2401が実行することで各種機能を実現する。ここでは、状態判別プログラムによって実現される機能を状態判別部2404、採取要否判別プログラムで実現される機能を採取要否判別部2405、状態判別プログラムで実現される機能を報告部2406と呼ぶ。
状態判別部2404は、第1のグループから第3のグループのセンサ情報に基づいて、増速機の状態を判別する処理、例えば、第1のグループのセンサでは、潤滑油の異常度合いの程度を判別する処理(第1の処理)を実行する。採取要否判別部2405は、状態判別部2404で判別された結果に基づいて潤滑油の採取を伴う潤滑油分析を行う必要性の有無を判別する処理(第2の処理)を実行する。報告部2406は、採取要否判別部2405で潤滑油の採取を伴う分析が必要であると判別された場合にその旨を他の端末(図21、22で示す保守会社PC、発電事業者PC)に送信する処理(第3の処理)を実行する。
さらに、中央サーバ240の対処判定部2407は、状態判別部2404、採取要否判別部2405、報告部2406の他、あるセンサ情報の前回値と今回値の差分である変化量を算出する変化量算出部、当該変化量と変化量基準値に基づいて当該変化量のランクを分類する変化ランク判定部、第2の処理で潤滑油採取を伴う潤滑油分析が必要という判別がされた場合、その判別の基礎となったセンサ情報を出力したセンサの設置箇所に基づいて異常が生じた、もしくは、異常が生じる可能性のある部品を特定する処理を実行する異常部品特定部と、或るセンサ情報と所定値(例えば、センサ情報の初期値)の差分値を算出する差分値算出部と、或るセンサ情報と当該或るセンサ情報に係る潤滑油性状の過去の潤滑油分析情報とに基づいて潤滑油の異常原因を特定する処理を実行する異常原因特定部とを備えていても良い。
中央サーバ240は、風量発電機1と相互にデータ通信可能なようにネットワーク230を介して接続されており、風力発電機1のサーバ210に記憶されたセンサ情報の時系列データは中央サーバ240の記憶装置2402に、第1のグループのセンサ情報である第1のセンサ情報901、第2のグループのセンサ情報である第2のセンサ情報902、第3のグループのセンサ情報である第3のセンサ情報903として記憶される。
中央サーバ240の記憶装置2402には、センサ群304により取得されるセンサ情報として、例えば、第1のグループに含まれる光学式センサについて、図4から図6に示した色度の濃度の相対関係等を予め記憶しており、潤滑油の性状情報として、光学式センサによって求められる色度、潤滑油の温度、回転機械の状態を示す増速機加速度のそれぞれについて、定められた閾値(注意レベル、警告レベル)が記憶されている。他のセンサについても、同様に、センサ値に注意レベル、警告レベル等の閾値を設定し、記憶部2402に記憶させておくことで、状態判別部2404がその判断の基準とすることは言うまでもない。
閾値は、状態判定部2404が潤滑油と増速機33の異常度合いの程度を判別する際に利用され、各閾値に対して所定の割合を乗じた値を異常度基準値として利用する。具体的には、所定の割合として50%および80%を利用しており、閾値の50%相当の値を注意レベル値とし、閾値の80%相当の値を警告レベルとする。
状態判別部2404、或るセンサ情報がこれに対応する閾値の50%以上から80%未満の場合(注意レベル値以上で警告レベル値未満の場合)には潤滑油や増速機に異常はないものの将来的に異常が認められる可能性が高く今後のセンサ情報変化に対する注意を喚起するために「注意」と判別し(注意判定)、閾値の80%以上の場合(警告レベル値以上の場合)には潤滑油や増幅機に異常が認められるものとみなして「異常」と判別し(異常判定)、閾値の50%未満の場合(注意レベル値未満の場合)には異常は認められないとみなして「正常」と判別する(正常判定)。各閾値は、風車で取得された過去のセンサ情報(潤滑油性状情報)と潤滑油の異常度合いの程度の相関関係の実績に基づいて定められている。
例えば、第1のグループの光学式センサによる色度による潤滑油の性状と、第2のグループの鉄粉センサの値により、潤滑油の異常と増速機の異常の両方を示した場合には、増幅機部品点検を行うように他の端末に通知し、潤滑油が異常で、増速機が正常を示した場合には、潤滑油の採取を伴う潤滑油分析、または潤滑油の交換を他の端末に出力する(図18参照)。
なお、センサ情報(潤滑油性状、加速度情報)ごとに閾値を1つ設定し、当該閾値から決定した2つの異常度基準値(注意レベル値、警告レベル値)により潤滑油の異常度合いの程度を判定したが、3つ以上の異常度基準値を設定して異常度合いの程度をさらに細かく分類しても良い。また、閾値を介して複数の異常度基準値を決定することに代えて、閾値を介さずに複数の異常度基準値を直接的に決定して異常度合いの程度を分類しても良い。
なお、上記のように1つの閾値に対して複数の割合を決定しておくことにより複数の異常度基準値を定義すると、当該割合の数値を変更するだけで各異常度基準値を容易に変更することができる。風車の重要度等はユーザで異なることが多いが、このように異常度基準値を容易に変更可能にしておくと、ユーザの嗜好に合わせて風力発電機を管理することが容易となる。
次に、状態判別部2404、採取要否判別部2404と報告部2406からなる対処判定部2407の処理について図20を用いて詳細に説明する。尚、図20では、説明を簡素化するために、センサの種類は、第1グループと第3グループを例に説明するが、第1のグループと第2のグループ、或いは、第1から第3のグループの全てのグループとすることも可能である。尚、第1のグループから第3のグループの全てを用いる場合には、状態判別部2404は、第1のグループのセンサ情報の値による判定、第2のグループのセンサ情報の値による判定、第3のグループのセンサ情報の値による判定の順に、判定を行うこととなる。
まず、状態判別部2404に対し、第1のグループのセンサとして光学式センサ(センサ1)および第3のグループのセンサとして加速度センサ(センサ3)の情報が選択されたことを示す情報が入力される(S2002)。
次に、状態判別部2404は、記憶装置2402から光学式センサ(センサ1)と加速度センサ(センサ3)に対して予め記憶されている、注意レベル値と警告レベル値を読み出す(S2003)。
状態判別部2404は、光学式センサの値が記憶装置2402から読み出された注意レベル以下であるかを判定する(S2004)、注意レベル以下である場合には、正常判定を行い(S2005)、報告部2406から判定結果を報告する(S2006)。
ステップS2004で光学式センサの値が注意レベルより多い値である場合には、ステップS2007に進み、光学式センサの値が注意レベル以上かつ警告レベル未満であるかを判定する(S2007)。
光学式センサの値が注意レベル以上かつ警告レベル未満である場合、ステップS2008に進み、状態判別部2404は、光学式センサについて注意判定を行う(S2008)。
次に、状態判別部2404は、加速度センサ(センサ3)の値が、注意レベル未満か判定する(S2009)。注意レベル未満の場合には、加速度センサ(センサ3)について正常判定を行う(S2010)。この場合、光学式センサの値は注意レベルを超えるが、加速度センサでは注意レベルに達していない状態となる。状態判別部2404から情報を受け取った採取要否判別部2405は、オイル分析の判定を行い(S2011)、報告部2406に送信する。
ステップS2009で加速度センサの値が注意レベル以上の場合、ステップS2012に進み、加速度センサについて注意判定を行う(S2012)。状態判別部2404から注意判定を受け取った採取要否判別部2405は、オイル分析及び増速機点検判定を行い(S2013)、報告部2406に送信する。
ステップS2007で、光学式センサの値が注意レベル以上かつ警告レベル未満でない、即ち、センサの値が警告値を超える場合は、ステップS2014に進み、状態判別部2404は、光学式センサに関して警告判定を行う(S2014)。
次に、加速度センサの値が、注意レベル未満であるか判定し(S2015)、注意レベル未満である場合には、加速度センサについて正常判定を行う(S2016)。この状態は、光学式センサの値が警告レベルに達しているが、加速度センサは正常である状態を示す。採取要否判別部2405は、この状態に基づいて、オイル交換判定を行う(S2017)。
また、ステップS2015で、加速度センサの値が注意レベル以上である場合、加速度センサについて、注意判定(S2018)を行う。採取要否判別部2405はオイル交換及び増幅機点検の判定を行い(S2019)、報告部2406に報告する。
報告部2406は、ステップS2005、ステップS2011、ステップS2017、ステップS2019で、採取要否判別部2405が行った判定結果を受信すると、判定結果に応じてその内容を保守員に通知する(S2006)。
報告部2406は、採取要否判別部2405で潤滑油採取を伴う潤滑油分析を行う「必要が有る」と判別された場合には、できるだけ速やかに潤滑油採取して詳細な潤滑油分析を潤滑油分析会社で実施するように、その旨を、図21や図22で示した発電事業者のコンピュータ2101や保守会社のコンピュータ2102等の関係者に送信することで報知する。
なお、潤滑油分析会社、潤滑油交換会社、部品会社に送信しても良い。一方、「必要が無い」と判別された場合には、その旨の診断結果を送信する。
図21は、風力発電機の増速機の診断システムの概略構成図である。この図に示す診断システムは、風車に搭載されたコンピュータ(エッジPC)210と、風車ファームを経由してセンサデータを処理する中央サーバ240(サーバPC)と、風車の保守会社が使用するコンピュータ(保守会社PC)2102と、発電事業者が使用するコンピュータ2101とを備えている。この例では、発電事業者が、潤滑油採取を伴う潤滑油分析、潤滑油交換、部品交換などの対応を依頼している。図22のように、保守会社が、潤滑油採取を伴う潤滑油分析、潤滑油交換、部品交換などの対応を依頼する形態もある。また、発電事業者が自前で保守を実施する場合もある。
なお、各コンピュータは、各種プログラムを実行するための演算手段としての演算処理装置(例えば、CPU)と、当該プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶手段としての記憶装置(例えば、ROM、RAMおよびフラッシュメモリ等の半導体メモリや、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置)と、演算処理装置及び記憶装置等へのデータ及び指示等の入出力制御を行うための入出力演算処理装置を備えている。さらに、コンピュータの操作者をはじめとする人への情報提供が必要な場合には、演算処理装置の処理結果等を表示するための表示装置(例えば、液晶モニタ等)を備えても良い。また、本診断システムを構成する各コンピュータとしては、据え置き型の端末だけでなく、携帯用の端末(携帯電話、スマートフォン、タブレット端末など)も利用可能である。
実施例2によれば、複数の特性の異なるセンサを用いることで、増速機の状態にあった保守の実施が可能となる。このため、適切な潤滑油交換等のメンテナンスにより、風力発電機の異常を未然に防止することができる。また、光学式センサに加え、センサ情報の値が急激に変化する加速度センサ、潤滑油温センサの情報に基づいて、適切な注意喚起、潤滑油分析、潤滑油交換増速機の部品交換、増速機診断等のメンテナンスにより、風力発電機の異常を未然に防止することができる。
(寿命推定の補正)
実施例3では、センサから得られたデータを用いて、潤滑油の寿命推定の補正を行う例を示す。実施例1では、風力発電機1の運転状況が一定不変であることを前提としている。しかし、実際には風力発電機1の運転状況は一定ではなく、さまざまな要因で状況が変化する。
例えば、人為的な運転状況の変動としては、点検のための装置の停止期間や、発電量調整のための運転調整がある。これらの変動パラメータは、風力発電機1の運転パラメータとして取得することができる。
図9及び図10で説明したように、風力発電機には各種のセンサを設置することができる。センサ群304からのセンサデータは、サーバ210を介して、集約サーバ220や中央サーバ240に送信される。また、風力発電機1の運転パラメータは、当該制御を行う、サーバ210、集約サーバ220あるいは中央サーバ240から得ることができる。
図11を再度用いて、運転状況を反映した潤滑油の監視方法を説明する。基本的な処理は実施例1と同様であるが、センサデータによる診断処理(S604)において、センサデータあるいは運転パラメータを時系列的に記憶しておき、交換時期推定及び更新処理(S610)で利用する。
説明を単純化するために、この例では、軸受け部への潤滑油の供給機構を対象とし、運転状況を示す運転パラメータとしては、軸の回転数R(rpm)の制御パラメータを用いることにした。センサデータや運転パラメータはこれに限定されるものではなく、他の種々のものを利用可能である。実施例3では、各種センサのデータは中央サーバ240へ集約し、ここで一括処理することにしたが、これに限るものではない。
中央サーバ240では、交換時期推定及び更新処理(S610)において、処理S609で入力された添加剤濃度測定結果と、処理S604で記憶された軸の回転数Rの制御パラメータを取得する。これらのデータは、記憶装置に時間データとともに時系列に格納する。
いま、簡単な例として極圧剤の濃度低下、すなわち消耗には軸の回転数R(rpm)が関連しているとする。この前提では、極圧剤の濃度C(t)は時間tと軸の回転数Rの関数と把握できるので、
f(t,R)=C(t)
となる。
図23は、風力発電機1の過去1年の添加剤温度のデータ1001を元に、将来の値1002を予測して表示する例を示すグラフ図である。1年分の過去データ1003は実測値である。将来のデータ1004A、1004Bは予測値である。
図23(a)では、将来の運転状況は変わらず、回転数Rは常に一定とした。この場合には、極圧剤濃度の将来の値(予測データ)1002は過去1年のデータ1001と同様に推移する。この場合には、極圧剤の濃度限界はt1の時点に到来すると予測される。
図23(b)では、将来の運転状況が変化し、1年経過以降の回転数Rは過去1年の2倍とした。ここで、極圧剤の消費速度は回転数Rに比例するとすれば、極圧剤濃度の予測データは過去1年と同様に推移せず、たとえば図23(b)の1004Bに示すように、減少割合が大きくなる。この場合には、極圧剤の濃度限界はt1よりも短いt2の時点に到来すると予測される。
上記では運転パラメータとして軸の回転数Rを用いて添加剤の推定消耗速度を補正したが、センサデータを用いることもできる。例えば、極圧剤の濃度低下には潤滑油の温度T(℃)が関連していると考えられる。この前提では、極圧剤の濃度C(t)は時間tと温度Tの関数と把握でき、軸の回転数Rの場合と同様に極圧剤の推定消耗速度を補正することができる。
図23に示すように、予測データに風力発電機の運転状況を表す運転パラメータやセンサデータを反映することにより、極圧剤濃度等の潤滑油品質を示すパラメータが閾値を超えるタイミングをより正確に判断することが可能となる。
運転状況を表すパラメータのうち、例えば運転時間や発電目標値のように、人為的にコントロールができるものについては、運転スケジュール等に従って、将来のデータを準備することができる。
また、天候や温度のように人為的にコントロールができないものについては、過去の実績データから将来のデータを予想することができる。
図24は、実施例3の中央サーバ240の構成例を示すブロック図である。中央サーバ240は、本構成は、図19に示したものと同様のものは、同じ符号を付し、説明を省略する。入出力装置2403は、ネットワーク230経由で風力発電機1やそのサーバ210、集約サーバ220、あるいは、液体クロマトグラフ質量分析計などの添加剤定量分析システム(図示省略)とデータのやり取りをするネットワークインタフェースを含む。
風力発電機1およびそのセンサ群304からは、各種の運転パラメータやセンサデータが直接あるいは、サーバ210や集約サーバ220を経由して中央サーバ240に入力される。これらのデータは記憶装置2402に時系列の運転パラメータデータ2411として、あるいは、時系列のセンサデータ2412として格納される。また、実施例3では、センサ群304の一つとして、たとえば、可視光源と受光素子を備え、潤滑油の色度を計測する、光学式センサが用いられている。
光学式センサによって得られる潤滑油の色度より、図4〜図6に示すような色度(△E)と添加剤濃度の相関関係を用いて、潤滑油中の添加剤濃度を定量する。
たとえば、図6に示すような色度(△E)と添加剤濃度の相関関係を用いて、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP:Zinc Dialkyldithiophosphate、ZDDP(ZnDTP)とフェノール誘導体(2,6-ジ-tert-ブチル p-クレゾール (BHT)のような異なる機能を有する添加剤を定量し、その結果を診断に用いると、より正確な診断を行うことができる。
処理装置(CPU)2401は、記憶装置2402に記憶された添加剤濃度データ903と、必要に応じて運転パラメータデータ2411およびセンサデータ902を用いて、添加剤濃度の消耗速度を予測し、出力装置に出力する。図23に示す例では、運転状況を示す運転パラメータなどにより極圧剤などの推定消耗速度を補正しているが、横軸を経過時間に変えて、風車運転情報である発電機総回転数や総発電量を用いて、消耗速度の補正を行ってよい。
実施例3によれば、運転状況を表す運転パラメータやセンサデータを反映することにより、極圧剤濃度等の潤滑油品質を示すパラメータが閾値を超えるタイミングをより正確に判断することが可能となる。
以上のように、実施例3では風力発電機の主軸、発電機、ヨー、ピッチなどの重要な回転機械(軸受)や増速機で使用される潤滑油の適切な監視を行うため、添加剤の濃度を測定している。また、潤滑油の自動供給機構が備わる回転機械の排油口の付近にセンサを設置することで、定常的に監視(オンライン監視)ができるようにしている。また、風力発電機の運転状況のパラメータをモニタすることで、より正確な予測診断が可能としているこれらにより、早期に潤滑油の交換時期の予測が可能となり、その結果、風力発電機の停止時間が短縮するため、保守コストが低減し、発電量が向上する。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
例えば、上述の実施例では、回転機械として風力発電機を例にとり説明したが、原子力発電機、火力発電機、ギヤードモータ、鉄道車両車輪フランジ、圧縮機、変圧器、可動プラント機械、大型ポンプ機械などの回転機械の潤滑油の添加剤の劣化診断にも本発明は適用できる。