以下、添付図面に従って本発明に係るリストバンド用クリップの好ましい実施形態について詳説する。
≪リストバンド用クリップの構成≫
図1、図2は、それぞれ本発明に係るリストバンド用クリップの一実施形態を表す平面図、側面図である。また、図3は、図1の3−3断面図である。
本実施形態のリストバンド用クリップ10は、2つのバンド穴にピンを通して、リストバンドを環状に巻き止めるタイプのものである。
図1〜図3に示すように、実施形態のリストバンド用クリップ10は、オスクリップ本体12と、メスクリップ本体14と、オスクリップ本体12とメスクリップ本体14とを折り畳み可能に連結するヒンジ16とで構成される。このリストバンド用クリップ10は、弾性を有する樹脂材料によって全体が一体的に形成されている。
オスクリップ本体12は、扁平な薄板状に形成され、その平面形状は、同じ径を有する2つの円の一部を重ねて並べた形状(8の字形状)に形成されている。
オスクリップ本体12の上面(メスクリップ本体14と重ね合わされる面)には、各円の中心位置にピン18、18が垂直に立設されている。
ピン18は、所定高さを有する円柱状に形成されている。このピン18は、使用するリストバンドのバンド穴に対応して形成され、その外径はバンド穴の内径と略同じ径(あるいは、若干小さい径)で形成されている(バンド穴が長穴形状の場合は、その短径に対応して形成される。)。
ピン18の先端部には、クビレ部20が形成され、このクビレ部20によってピン18の頂部に頭部22が形成されている。
クビレ部20は、ピン18の基端部(図2及び図3における下端部)から所定高さの位置に形成され、ピン18の軸方向に所定の幅をもって形成される。また、後述するように、その外径はメスクリップ本体14に形成されるピン孔34の内径と略同じ径に形成される。
頭部22は、半球状に形成され、クビレ部20の外周から張り出すようにして傘状に形成されている。後述するように、この頭部22はピン孔34の逆止部として機能し、その基端部の端面は、オスクリップ本体12の上面と平行になるように平坦に形成されている。
また、ピン18の外周には、クビレ部20の下部位置に4つの係止片24、24、…が、放射状に張り出して形成されている。各係止片24は、矩形の板片状に形成され、ピン18の基端部から所定高さの位置に形成されている。
この係止片24は、リストバンド用クリップ10をリストバンドに取り付ける際、ピン18を通したバンド穴が、ピン18から外れるのを防止する機能(リストバンドに仮止めしておく機能)を提供する。したがって、係止片24の突出量は、バンド穴の径に対応して設定され、ピン18の中心から先端までの距離(半径)が、バンド穴の半径(バンド穴が長穴の場合は短径の半径)よりも大きくなるように設定される。
なお、本例において、各係止片24は、その先端がピン18の基端部から先端部に向かって下り勾配を呈するよう傾斜して形成される。これにより、ピン18をバンド穴に通す際、通しやすくすることができ、かつ、バンド穴を通した後は、抜けにくくなる。
メスクリップ本体14は、所定厚さを有する扁平な板状に形成され、その平面形状は、オスクリップ本体12の平面形状に対応して形成されている(同じ径を有する2つの円の一部を重ねて並べた形状(8の字形状))。
メスクリップ本体14の上面(オスクリップ本体12と重ね合わされる面と逆側の面(図1、2において下側の面))には、各円の中心位置に円形状の収容孔30、30が形成されている。この収容孔30、30は、オスクリップ本体12に形成されたピン18、18と同じ間隔で形成され、所定の内径をもって形成されている。
収容孔30の内部には、半球状のフラップ部32が形成されている。フラップ部32は、所定の板厚をもって形成され、ピン18の挿入方向に凸となるように膨出して形成されている。したがって、フラップ部32の内部には、ドーム状の空間が形成されることになる。
フラップ部32の中央には、ピン18が嵌められるピン孔34が形成されている。ピン孔34は、ピン18の外径と略同じ径で形成される。
また、フラップ部32には、2本のスリット36が放射状に形成されている。フラップ部32は、このスリット36により、径方向への弾性変形が可能になり、これにより、フラップ部32の中央に形成されたピン孔34が拡縮可能に形成される。
なお、本例において、フラップ部32は、収容孔30の基端部(図2及び図3において上端部)から先端部に向かって膨出するように形成され、その先端(ピン孔34の上縁部を形成する端面)は平坦に形成されている。また、フラップ部32の先端の位置は、収容孔30の先端部よりも低くなるように設定され、ピン18を嵌めた際に、ピン18の頭部22が収容孔30の先端部から突出しないように形成されている。
ヒンジ16は、オスクリップ本体12とメスクリップ本体14とを折り畳み可能に連結する。オスクリップ本体12とメスクリップ本体14とは対称に配置され、互いに中央部分をヒンジ16で連結される。
ヒンジ16は、屈曲可能な薄板状に形成され、その中央部に貫通孔38が形成されるとともに、その貫通孔を挟んで対称にクビレ40が形成されている。ヒンジ16は、このような貫通孔38及びクビレ40を形成することにより、中央部分で屈曲しやすくすることができる。
オスクリップ本体12とメスクリップ本体14は、図4に示すように、ヒンジ16を中央部分で折り曲げることにより折り畳まれ、互いに重ね合わされる。この折り畳む動作によって、オスクリップ本体12に形成された2つのピン18が、メスクリップ本体14に形成された2つのピン孔34に嵌め込まれる。
本実施の形態のリストバンド用クリップ10は、以上のように構成される。
なお、上記のように、本実施の形態のリストバンド用クリップ10は、弾性を有する樹脂材料によって全体が一体的に形成される。これにより、スリット36を形成したとき、フラップ部32が弾性変形可能な部位になる。
使用する樹脂材料としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレンのほか、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性エラストマー、ゴム、ウレタンのような、弾性を有する樹脂材料およびこれらの混合物を用いることができる。
また、樹脂材料の硬度(弾性係数)は、弾性変形を容易とする程度が好ましく、たとえば、リストバンドと同程度か、それ以下の弾性材料を用いることが好ましい。
樹脂材料としてポリエチレンを主体とする樹脂を用いることが好ましい。ポリエチレンを主体とした樹脂を、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などの樹脂成形法によりリストバンド用クリップ全体を一体的に形成することができる。
また、リストバンド用クリップ10は、人の肌に触れるものであるため、肌に触れた際、違和感がないように全体が丸みを帯びて形成されることが好ましい。具体的には、角部がR面取りされる。また、メスクリップ本体14については、外形を構成する2つの円ごとに表面に凸となるような半球状に形成されている。また、ヒンジ16については、クビレ40が円弧状に形成されている。
実施形態のリストバンド用クリップを構成する樹脂材料には、苦味成分が配合されている。苦味とは、ヒトの舌が感じる味覚であり、苦味成分は、ヒトに嚥下に対する拒否反応を起こさせる成分の一つである。苦味成分として、カフェイン、テオブロミン、テルペノイド、カテキン、ニコチン、フムロン、エピカテキンなどの多くの化合物が知られている。実施形態のリストバンド用クリップを形成する樹脂材料に配合される苦味成分として、安息香酸デナトニウム(デナトニウムベンゾエート、以下、「DB」と称する。)またはサッカリンデナトニウム(デナトニウムサッラライド、以下、「DS」と称する。)が挙げられる。DBおよびDSは、極微量でヒトに強烈な苦味を感じさせる成分であり、人体への健康被害が少ないことで知られている。
リストバンド用クリップへの苦味成分の適用は、まず樹脂材料でリストバンド用クリップを一体的に成形し、この表面に苦味成分を塗布することにより行うことができる。しかしリストバンド用クリップの製造において表面への塗布加工という工程が一つ増えることにより、製造コストの上昇を招く可能性がある。また、塗布加工により設けられた苦味成分は、リストバンド用クリップの使用までに経時的に剥がれ落ちる可能性があり、使用に際して誤飲防止の効果を発揮しないおそれがある。このような問題の発生を防ぐために、苦味成分を樹脂材料に配合することが特に好ましい。苦味成分は、リストバンド用クリップの樹脂材料100重量部に対し、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部配合することができる。
また、リストバンド用クリップは、人の肌に直接接触する態様で使用されるので、抗菌処理を施すことが好ましい。抗菌処理は、たとえば、樹脂材料への抗菌剤の練り込みや、抗菌コートを施すことにより行うことができる。樹脂材料への抗菌剤の練り込みは、樹脂材料に対し抗菌剤マスターバッチを混練することで行うことができる。一方抗菌コートは、塗膜機能を有する樹脂や溶剤(塗料の展色剤と同様のもの)に抗菌剤を混合したものを用いることができる。これらの処理により、リストバンド用クリップ上の細菌の増殖を抑制することができる。苦味成分の適用と同様、樹脂材料に抗菌剤を配合することが特に好ましい。
抗菌剤の材料としては、無機系抗菌剤(たとえば、銀、銅、亜鉛化合物)、有機系抗菌剤、合成系抗菌剤、天然系抗菌剤(たとえば、フィトンチッド、ヒノキチオール)を用いることができる。一例として、N−アルキルジアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、グアニジン系殺菌剤などの抗菌作用、殺菌作用が良好なものを用いることができる。また、防腐剤、防カビ剤などの他の成分を抗菌剤に代えてあるいは抗菌剤とともに用いることもできる。抗菌剤は、リストバンド用クリップの樹脂材料100重量部に対し、1〜10重量部、好ましくは3〜5重量部配合することができる。
リストバンド用クリップは、このほか、二酸化炭素削減物質を含んでいてもよい。二酸化炭素削減物質とは、(1)内部の空隙等に二酸化炭素を物理的に吸着固定化することができる構造を有している物質、あるいは、(2)燃焼等の高温下で代表的な温室効果ガスである二酸化炭素と化学反応することによりこれを吸収して固定化することができる物質、または(3)燃焼の際に、共に燃焼している物質から発生する可燃性ガスに作用してこれと共に二酸化炭素を炭化させることができる物質を主に意味する。二酸化炭素削減物質を含むリストバンド用クリップは、焼却廃棄の際に二酸化炭素を多く発生させないので、環境への負荷が低い。二酸化炭素削減物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、またはエチレン酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂に配合したマスターバッチの形態で、リストバンド用クリップの樹脂材料と混合することができる。二酸化炭素削減物質は、リストバンド用クリップの樹脂材料100重量部当たり1〜10重量部、好ましくは3〜5重量部配合することができる。
二酸化炭素削減物質として、金属水酸化物、金属酸化物、アルミノケイ酸塩、チタン酸化合物、またはリチウムケイ酸塩を用いることができ、これらの中から任意に2以上を選択して用いることもできる。金属水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。金属酸化物として、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。またアルミノケイ酸塩として、アルミノシリケート、ゼオライト等が挙げられる。チタン酸化合物としてチタン酸バリウム、オルソチタン酸バリウム等が挙げられる。リチウムケイ酸塩として、リチウムシリケート等が挙げられる。このほか、有機化合物の二酸化炭素削減物質も好適に用いることができ、たとえばテレフタル酸カリウム熱分解物、ココナツ中果皮繊維を挙げることができる。
二酸化炭素削減物質を熱可塑性樹脂と混合してマスターバッチとして用いる場合、該二酸化炭素削減物質が両親媒性脂質の脂質二重層内に取り込まれた状態で混合することもできる。ここで両親媒性脂質とは、一分子内に親水基と親油基とを有する脂質のことである。両親媒性脂質の例としてリン脂質が挙げられ、たとえば、ホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンを挙げることができる。両親媒性脂質は自己組織化によって水中あるいは有機溶媒中で脂質二重層を形成することができるが、この脂質二重層内に二酸化炭素削減物質を取り込んだ状態で熱可塑性樹脂と混合することができる。たとえば、アルミノ珪酸ナトリウムとリン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムとが内包されたホスファチジルコリンリポソーム(ナノベシクルカプセル)を用いることができる。このようにして、二酸化炭素削減物質を熱可塑性樹脂中により均一に分散させたマスターバッチを形成することができる。
≪リストバンド用クリップの使用方法≫
図5は、実施形態のリストバンド用クリップ10の使用方法の一例を、巻き止められるリストバンド1とともに3示す斜視図である。
同図に示すように、このリストバンド1は、表示部2と、表示部2の両側に延びるバンド部3、4とで構成される。
表示部2は、バンド部3、4に比して幅広に形成され、所定の情報(病院で使用される場合は、患者名、科名、病棟名、血液型、バーコード、二次元コードなどの情報)が印字されている。
表示部2の両側に延びるバンド部3、4は、左右異なる長さで形成され、短い方のバンド部3には、2つのバンド穴6、6が一定の間隔をもって形成されている。一方、長い方のバンド部4には、複数のバンド穴7、7、…が一定の間隔をもって形成されている。このバンド部3、4に形成されているバンド穴6、7の形成間隔は、リストバンド用クリップ10に形成される2つのピン18の間隔と同じ間隔に設定されている。また、その径は、ピン18の外径と略同じ径で形成されている。
短い方のバンド部3に形成されているバンド穴6、6は、リストバンド用クリップ10をセットするためのバンド穴であり、長い方のバンド部4に形成されているバンド穴7、7、…は、リストバンド1の長さ調整用のバンド穴である。以下、短い方のバンド部3に形成されているバンド穴6、6については、長い方のバンド部4に形成されているバンド穴7、7、…と区別するため、セット穴6、6と表記する。
なお、本例では、バンド穴(セット穴6、バンド穴7)の形状を円形状としているが、バンド穴の形状は特に限定されるものではなく、たとえば、長穴形状とすることもできる。
本実施の形態のリストバンド用クリップ10を用いたリストバンド1の装着方法は、次のとおりである。
まず、図5に示すように、短い方のバンド部3に形成された2つのセット穴6にオスクリップ本体12に形成された2つのピン18を通し、リストバンド用クリップ10をリストバンド1に取り付ける。
この際、ピン18は、リストバンド1の裏面側からセット穴6に挿入する。なお、ピン18は、その頭部22が半球状に形成されているため、スムーズにセット穴6に通すことができる。
また、ピン18は、その先端外周部に係止片24が突出して設けられているので、この係止片24がセット穴6を通過するまでピン18を押し込んで、セット穴6に挿入する。これにより、ピン18に対してセット穴6から抜ける方向の力が働いた場合であっても、係止片24がセット穴6の周縁に係合し、容易に抜けるのが防止される。また、係止片24は、矩形の板片状に形成され、かつ、ピン18の外周に放射状に形成されているため、セット穴6に通す際、無理な力を掛けなくても、スムーズにセット穴に通すことができる。これにより、ピン18をセット穴6に通す作業を簡便に行うことができるとともに、確実にセット穴6に通すことができる。
以上のようにして、リストバンド用クリップ10をリストバンド1に取り付けたのち、リストバンド1を手首に巻き付ける。そして、リストバンド1が緩みなく手首に巻き付くように、長い方のバンド部4に形成されたバンド穴7を選択し(隣り合う一組のバンド穴を選択する)、その選択したバンド穴7にピン18を通す。この場合も、ピン18は、係止片24がバンド穴7を通過するまで押し込んで、バンド穴7に挿入する。この作業は片手での作業になるが、上記のように、ピン18は無理な力を掛けなくても、スムーズに係止片24を乗り越えさせて、バンド穴7に挿入することができる。これにより、確実にピン18をバンド穴7に通すことができる。
係止片24を通過するまでピン18を通すことにより、係止片24がバンド穴7の周縁部に係合し、リストバンド1が外れるのが防止される。すなわち、仮止めされる。
この後、ヒンジ16によってメスクリップ本体14をオスクリップ本体12に向けて折り畳む。
メスクリップ本体14をオスクリップ本体12に向けて折り畳むと、図4に示すように、メスクリップ本体14に形成されたピン孔34にピン18が嵌め込まれる。
ここで、ピン孔34は、ピン18よりも小さい径で形成されるが(ピン18に形成されたクビレ部20と略同じ径で形成)、拡縮可能に形成されているため、拡径しながらピン18が挿入される。そして、ピン18がクビレ部20まで挿入されると、縮径してピン18のクビレ部20に嵌合する(正確には、ピン孔34を形成するフラップ部32の先端部がクビレ部20に嵌合する)。これにより、ピン18の軸方向の移動が規制され、ピン18がピン孔34から抜けるのが防止される。
また、上記のように、ピン孔34は、一度拡径したのち縮径してピン18のクビレ部20に嵌まるが、クビレ部20に嵌まる際、その内周の縁部でクビレ部20の壁面を打つ。これにより、音(係合音)が鳴り、ピン18がピン孔34に嵌まったことを明確に認識することができる。
また、上記のように、ピン18は、セット穴6及びバンド穴7に通す際、確実に係止片24を通過させて挿入することができるため、ピン18をピン孔34に嵌めても、リストバンド1の生地を噛み込むことがない。これにより、確実にピン18をピン孔34に嵌めることができる。また、無理な力を掛けずにピン18をピン孔34に嵌めることができる。さらに、確実に係合音を鳴らすことができ、ピン18がピン孔34に嵌まったことを確実に了知することができる。
ピン孔34に嵌まったピン18は、図4に示すように、頭部22のみがフラップ部32から突出する。この頭部22は、メスクリップ本体14の表面からは突出することなく、収容孔30に完全に収容される。これにより、引っ掛かり等が発生するのを防止できるとともに、肌に接触したときなどに違和感が生じるのを防止できる。
以上一連の作業でリストバンド1の装着が完了する。リストバンド1を巻き止めたリストバンド用クリップ10は、ピン18がピン孔34から抜けることがないため、確実にリストバンド1を手首に装着することができる。また、生地を噛み込むことなく取り付けることができるため、途中で外れることもない。
≪リストバンド用クリップのその他の実施形態≫
図6、図7は、リストバンド用クリップの変形例を示す平面図、側面図である。
同図に示すように、本例のリストバンド用クリップ100は、1つのバンド穴にピンを通して、リストバンドを環状に巻き止めるタイプのものである。
このように、オスクリップ本体112に形成するピン118の数は、特に限定されるものではなく、1つとすることもできる。この場合、メスクリップ本体114に形成するピン孔134も1つとされる(図6)。
なお、上記実施形態で示したリストバンド用クリップ10のように、2つのピン18を備え、2つのバンド穴にピンを通して、リストバンドを環状に巻き止める構成とすることにより、装着したリストバンドが、ピンを軸に回動するのを防止でき、リストバンドの装着性を向上させることができる。
また、本例のリストバンド用クリップ100は、上記実施の形態のピン18のようにクビレ部を形成せずに一定の太さで形成している。この場合、ピン18の外径は、ピン孔34の内径と略同じ径で形成される。
このように、ピンには必ずしもクビレ部を設ける必要はないが、クビレ部を形成することにより、ピンの剛性を高めることができる。また、ピンに突出して形成される係止片の突出量も抑えることができ、係止片の剛性も確保することができる。
また、本例のリストバンド用クリップ100は、3つの係止片124を放射状に配置している。このように、係止片は必ずしも4つである必要はなく、バンド穴の抜けを防止可能に形成されていればよい。したがって、少なくとも2つ形成されていればよい。
また、本例のリストバンド用クリップ100は、フラップ部132の4箇所にスリット136を形成している。このように、スリット136の形成数は、特に限定されるものではなく、フラップ部132を弾性変形させることができるように形成されていればよい。なお、スリットの数が多すぎると、ピンがピン孔から抜けやすくなるため、必要最小限の数に留めることが好ましい。
また、符号116はヒンジであり、符号138は、ヒンジ116に設けられた貫通孔である。
なお、図示を省略するが、ヒンジ116は、貫通孔138を省略し、幅方向(図6における上下方向)にわたって断面U字型の溝を形成することもできる。すなわち、折り畳みの際、伸張する側(図7における下端側)に断面U字型(図7で説明すると、逆U字型、図7には図示せず)の溝を形成することにより、折り畳む際に折れ曲げやすくするとともに、外部に突出する突起部分を減少させることができるものである。
上記は一例であって、ヒンジ116には、上記実施の形態のヒンジ16に形成したクビレ40を設け、そのクビレ40の間の貫通孔138を省略して、上記の断面U字型の溝を設けるようにしてもよい。
図6および図7のリストバンド用クリップを構成する樹脂材料として、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレンのほか、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性エラストマー、ゴム、ウレタンのような、弾性を有する樹脂材料およびこれらの混合物を用いることができる。図6および図7のリストバンド用クリップを構成する樹脂材料には、苦味成分が配合されている。苦味成分として、カフェイン、テオブロミン、テルペノイド、カテキン、ニコチン、フムロン、エピカテキンなどのほか、安息香酸デナトニウム(DB)またはサッカリンデナトニウム(DS)を挙げることができる。
さらに図6および図7のリストバンド用クリップは、抗菌剤を含んでいてよい。抗菌剤の材料としては、無機系抗菌剤(たとえば、銀、銅、亜鉛化合物)、有機系抗菌剤、合成系抗菌剤、天然系抗菌剤(たとえば、フィトンチッド、ヒノキチオール)を用いることができる。一例として、N−アルキルジアミノエチルグリシンなどの両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、グアニジン系殺菌剤などの抗菌作用、殺菌作用が良好なものを用いることができる。また、防腐剤、防カビ剤などの他の成分を抗菌剤に代えてあるいは抗菌剤とともに用いることもできる。
さらに図6及び図7のリストバンド用クリップは、二酸化炭素削減物質を含んでいてよい。二酸化炭素削減物質として、金属水酸化物、金属酸化物、アルミノケイ酸塩、チタン酸化合物、またはリチウムケイ酸塩を用いることができ、これらの中から任意に2以上を選択して用いることもできる。金属水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。金属酸化物として、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。またアルミノケイ酸塩として、アルミノシリケート、ゼオライト等が挙げられる。チタン酸化合物としてチタン酸バリウム、オルソチタン酸バリウム等が挙げられる。リチウムケイ酸塩として、リチウムシリケート等が挙げられる。このほか、有機化合物の二酸化炭素削減物質も好適に用いることができ、たとえばテレフタル酸カリウム熱分解物、ココナツ中果皮繊維を挙げることができる。二酸化炭素削減物質を熱可塑性樹脂と混合してマスターバッチとして用いる場合、該二酸化炭素削減物質が両親媒性脂質の脂質二重層内に取り込まれた状態で混合することもできる。ここで両親媒性脂質とは、一分子内に親水基と親油基とを有する脂質のことである。両親媒性脂質の例としてリン脂質が挙げられ、たとえば、ホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンを挙げることができる。両親媒性脂質は自己組織化によって水中あるいは有機溶媒中で脂質二重層を形成することができるが、この脂質二重層内に二酸化炭素削減物質を取り込んだ状態で熱可塑性樹脂と混合することができる。たとえば、アルミノ珪酸ナトリウムとリン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムとが内包されたホスファチジルコリンリポソーム(ナノベシクルカプセル)を用いることができる。このようにして、二酸化炭素削減物質を熱可塑性樹脂中により均一に分散させたマスターバッチを形成することができる。
図6および図7のリストバンド用クリップが苦味成分、抗菌剤、二酸化炭素削減物質を含む場合、リストバンド用クリップを構成する樹脂材料にこれらの成分を練り込んで配合することが特に好ましい。
本実施形態のリストバンド用クリップは、主に患者(ヒトおよび動物を含む)の識別のために用いられるリストバンド用クリップとして用いられるほか、たとえば、遊園地、美術館、博物館等の入場券の機能を備えるリストバンド用クリップとしても用いることができる。そのほか、コンサート会場の入退場証、ファンクラブ会員証、乗物用乗車券、団体旅行参加証等の、個人の識別のために用いられるリストバンド用クリップとして好適に用いられる。
[実施例1]
ポリエチレンペレットと、苦味成分である安息香酸デナトニウム(DB)の粉末と、抗菌剤として銀系無機抗菌剤とを自動混合装置に投入しドライブレンドした。次いで70℃で3時間以上乾燥した。得られた樹脂ブレンドを射出成形機に投入し、約145℃、タクト25秒間/1ショットの条件下で射出成形して、苦味成分含有リストバンド用クリップを得た。
なお、DB粉末は、ポリエチレンペレット100重量部に対し、0.005重量部、0.025重量部、0.050重量部、0.100重量部となるように秤量し、抗菌剤は、ポリエチレンペレット100重量部に対し5重量部となるように秤量した。
得られたリストバンド用クリップを人が舐めて、味を確かめた。0.005重量部の苦味成分が含まれているリストバンド用クリップは、苦味がわずかに感じられた。0.025重量部の苦味成分が含まれているリストバンド用クリップは、舌で舐めただけでは苦味はわずかに感じられるのみであるが、口に含み舐めると苦味が感じられた。0.050重量部の苦味成分が含まれているリストバンド用クリップは、舌で舐めただけで苦味が感じられた。0.100重量部の苦味成分が含まれているリストバンド用クリップは、舌で舐めただけで苦味が強く感じられた。リストバンド用クリップの誤飲を防止する効果を発揮するためには、樹脂マスターバッチ100重量部に対し、少なくとも0.025重量部以上の苦味成分を含ませると良いことがわかった。
[実施例2]
実施例1と同様に、DBが0.050重量部含まれているリストバンド用クリップを作成した。一方、苦味成分を入れないこと以外は実施例11と同様にして、苦味成分が含まれていないリストバンド用クリップを作成した。これらのリストバンド用クリップを、皮膚に24時間貼付し、肉眼およびレプリカ法による顕微鏡により、皮膚に異常が起きていないかどうかを判定する試験を行った。
皮膚貼付試験の結果は、苦味成分が含まれているリストバンド用クリップと、苦味成分が含まれていないリストバンドクリップとで差が見られなかった。
苦味成分が配合されている本発明のリストバンド用クリップは、従来品と同様に使用することができ、かつ、これに含まれている苦味成分は、誤飲を防止することができると考えられる。