そこで、本発明は、複数の患者に対して薬剤の調製および分配を行う装置であって、介入者の仕事を容易にする装置を提供することを目的とする。
本発明はまた、薬剤の調製、輸送および分配のそれぞれの作業の安全性の向上も目的とする。
そのため、本発明は、1つの態様によれば、請求項10に記載の、複数の患者のために薬剤をピルケースに調製する装置に関する。共有のデータベースは第1の情報処理手段によって少なくとも書込みでアクセス可能であり、したがってその一部を形成する。
このような調製装置を用いることで、包装機によって調製され、識別されたピルケースは一意に識別される容器に直接収納される。それぞれのピルケースはあらかじめ定められた患者に対応しており、すなわち、1人だけの患者の識別コードを少なくとも有する。それぞれのピルケース自体は容器内で第1の情報処理手段によって識別され、位置確認が行われるが、その第1の情報処理手段はたとえば、患者、処方、使用薬剤(ロット、有効期限など)、ピルケースの引渡し先の介護施設などに関する情報をひとまとめにしたデータベースを含んだ記憶装置につながれたコンピュータを備える。そのため、第1の情報処理手段のプログラムを適切に組むことで、識別されないピルケースまたは所与の容器で承認されていないピルケースが挿入されたとき、場合により警報が発せられるようにすることができる。警報が出される可能性があるのは、たとえば、同じ患者に対応する2つのピルケース(たとえば、別個の2つの期間について調製されたもの)が同じ1つの容器内に収納された場合である。
考えられる有利ないくつかの実施形態では、調製スタンドは、容器内におけるピルケースの識別および所在の記録を行うだけでなく、たとえば患者や介護施設内でのその所在に応じて、包装機内で調製されたばかりのピルケースをどの容器に、また容器内のどの位置に挿入しなければならないかを作業者に示すことができる。そのため、本発明による調製装置はその後の薬剤の分配を可能な限り効率的に準備することができる。
本発明はまた、別の態様によれば、請求項12に記載の、複数の患者に薬剤を分配する装置にも関する。とりわけ、共有の前記データベースは、第2の情報処理手段によって少なくとも読取りでアクセス可能であり、薬剤の調製装置の情報処理手段との間で − 特に本発明による薬剤の調製装置の前記第1の情報処理手段との間で − 共有される。
本発明による薬剤の分配装置により、患者グループ、たとえば介護施設の1フロアでグループにした患者らに対する薬剤の分配が簡易に、安全に、かつより迅速になる。実際、介護者は、該当する患者グループに対応する容器を取り出し、その識別を確認し、分配用の移動ユニットに装備された分配スタンドに容器をセットするだけでよい。薬剤の分配では、あらかじめ定められた経路をもはやたどる必要はなく、当該患者の部屋の扉にある光学読取りコード(特にバーコードまたは二次元コード)を読み取るなり、ディスプレイに表示されたリストから患者を選択するなりして、誰であろうとその患者が識別手段によって特定されさえすれば、分配スタンドは、容器充填時に作成された共有のデータベースから得られる容器関連の情報であって、移動ユニットに装備された前記第2の情報処理手段が少なくとも読取りでアクセス可能な情報を組み合わせることで、対応するピルケースの位置を介護者に対して直ちに指し示す。調製済みのピルケース全体の中からそのピルケースを探す必要はなくなり、過誤の危険が最小化される。
本発明は、複数の患者に対して薬剤を調製し、分配する本発明による装置の集合体にも関する。そのため、本発明はとりわけ請求項1に記載の装置の集合体にも関する。
本発明による薬剤の調製装置および分配装置の集合体の性能は、調製装置と分配装置が同一の容器と、その同一の容器を受けるように適合されたスタンドとを使用することで大幅に改善される。また、中央の薬局で使用される調製装置と患者を収容する1つまたは複数の施設に振り分けられた1つまたは複数の分配装置との間の共通のデータベースで情報を共有することによって、過誤の危険を最小化するとともに、薬剤の調製および分配のトレーサビリティを改善することができる。
本発明のいくつかの実施形態によれば、それぞれのピルケースは複数のパッケージ区画を備え、それぞれのパッケージ区画は少なくとも1つの薬剤の集まりである一回服用分の薬剤を含み、それぞれのピルケースはピルケースの識別コードを有しており、それぞれの調製スタンドはその調製スタンドに受けたそれぞれの容器に含まれるそれぞれのピルケースのそれぞれの識別コードを読み取って記録することができるように適合されており、それぞれの分配スタンドはその分配スタンドに受けたそれぞれの容器に含まれるそれぞれのピルケースのそれぞれの識別コードを読み取ることができるように適合されている。
本発明のいくつかの実施形態では、ピルケースは1回使用(すなわち使い捨て)タイプのもの、たとえば透明ブリスター型のものである。また、本発明のいくつかの実施形態では、それぞれのピルケースは複数のパッケージ区画を備え、ピルケースのそれぞれのパッケージ区画はピルケースの別のパッケージ区画と切離し可能で、好ましくはパッケージ区画の開放前に切離し可能である。たとえば、それぞれのパッケージ区画は除去可能なカバーフィルムによって閉ざされたブリスター型の透明な小房またはカップによって形成されており、その全体がピルケースの隣り合う別のパッケージ区画とミシン目でつながっている。それにより、それぞれのピルケースは少なくとも1列の − 特に1列だけの − カップであって、粘着ラベルなどの形の除去可能なカバー付きのカップによって形成される。しかしながら、本発明はそれ以外のあらゆる実施形態のピルケースにも適用される。
本発明によるこうした集合体の1つの実施形態によれば、その集合体は、容器一式の安全が確保された梱包手段をさらに備え、それら梱包手段は調製場所と分配場所との間のそのような容器一式の輸送が可能となるように、さらに分配場所における保管のために適合化される。たとえば4つの容器を収容できるケースの形を取るこうした安全を確保した梱包手段により、薬剤の分配を、たとえば服用時間ごとに分けて、4つの容器が同じ患者グループのそれぞれ別々の服用時間に対応するように企図することができる。
本発明の有利ないくつかの実施形態では、それぞれの容器は、1つだけのピルケースを受けるようにそれぞれ適合された複数の所定の位置を備える。その場合、それぞれの容器は側壁に平行な複数のスライダを備えるボックスの形に構成することができ、対のスライダはそれぞれ1つだけのピルケースを受け入れることができる。スライダの対の数は、介護施設の平均患者収容能力、たとえばフロア当たり25名程度に対して適合される。
本発明の有利ないくつかの実施形態では、それぞれのスタンドは、容器がスタンド内に設置されたときのその容器の少なくとも一部の位置 − 特にそれぞれの位置 − におけるピルケースの存在を検出する手段を備える。そのため、調製の際に容器の充填の検証を行うことができ、同様に、容器が分配スタンドに設置されたときに設置された容器およびピルケースの健全性の検証も行うことができる。そうすることにより、調製場所と分配場所との間の輸送の間に失われたピルケースがないか確認することができる。
本発明の有利ないくつかの実施形態では、それぞれの容器は第1および第2の情報処理手段による読取りが可能な一意の識別手段を備える。そのため、それぞれの容器はその使用時に確実かつ一意に識別することができる。
本発明の有利ないくつかの実施形態では、識別手段は少なくとも1つの非接触型読取りコード、特に光学読取り式またはRFID式のコードを備える。これらの識別手段は、薬剤分配時に患者の識別のために使用される識別手段と同様のものであることが好ましい。
別法として、または補完的に、本発明の有利ないくつかの実施形態では、識別手段は、容器と一体化した記憶装置であって、容器が設置されるスタンドによる読取りが行われるように適合された記憶装置を備える。そのため、容器と一体化されたUSBメモリなどの記憶装置を備える電子回路を、容器がスタンドに挿入されたときにスタンドに設けられた適当な差込口に差し込むことができる。記憶装置は、容器の一意の識別コードのほかに、その内容物に関する補完情報(たとえば、容器内に含まれるピルケースに関するデータベースの一部のコピーなど)を備えてよい。
本発明の有利ないくつかの実施形態では、それぞれの容器は、容器がスタンドに設置されていないときはピルケースを容器内に錠止する手段を備える。このような錠止手段は、少なくとも容器がスタンドに設置されていないときには、それぞれのピルケースを容器内の所定の位置に錠止できる。少なくとも容器がスタンド内に設置されていないときに機能する容器内のピルケースの個別または一括錠止手段を用いることにより、調製場所と分配場所との間の輸送操作中にピルケースが紛失するのを防ぐことができる。このような容器内におけるピルケースの錠止手段は、手動操作で錠止の位置に動かすタイプの手段であることもできれば、容器がスタンド内に設置されていないときに自動的に錠止の位置に動くタイプの手段であることも、さらには半自動(すなわち、自動的な動作に手動操作を組み合わせたもの)で錠止の位置にするタイプの手段であることもできる。このような容器内におけるピルケースの錠止手段はまた、手動操作で開錠の位置(ピルケースはその位置で容器から取り出すことができる)に動かすタイプの手段であることもできれば、容器がスタンド内に設置されているときに自動的に開錠の位置に動くタイプの手段であることも、さらには半自動(すなわち、自動的な動作に手動操作を組み合わせたもの)で開錠の位置にするタイプの手段であることもできる。
本発明のいくつかの実施形態では、本発明による分配装置は、分配用の移動ユニットが第2の情報処理手段および分配スタンドの電源手段を備えることを特徴とする。移動ユニット(たとえば分配ワゴンであるもの)に電源(たとえば1つまたは複数の充電式バッテリからなるもの)を装備することにより、分配のために使用するすべての手段、すなわち分配スタンド、第2の情報処理手段、識別コード読取り装置などに対して給電することができる。その際、複数の移動ユニットを設けて、その一部は、他の部分が分配に使用されている間に充電することも可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、分配用の前記移動ユニットは、非接触型読取りコードの読取り手段であって、第2の情報処理手段と関連付けられて、患者の識別コード、容器の識別コードおよびそれぞれのピルケースに付けられた情報コードを読み取るように適合された読取り手段を備える。本発明による分配方法で使用される各種の識別コードおよび/または情報コードの読取りに、たとえばレーザースキャナ型の光学式読取りコード(たとえばバーコードや二次元コード)リーダなど、同一の手段を使用することで、介護者は患者、ピルケースおよび分配される薬剤を順に特定していく際に読取りツールを変える必要がなく、薬剤分配のプロセスは迅速化される。当然のことながら、上述の読取り手段に関しては、必要に応じて写真で補完されたリストから患者を選択することができるように第2の情報処理手段につながれたキーボード/マウスおよびディスプレイのセットやタッチパネルのようなその他のデータ入力手段を変形形態として、または組み合わせ形態で使用する可能性が排除されるものではない。
本発明のいくつかの実施形態では、分配用の前記移動ユニットは患者に対する一回服用分の薬剤の分配のタイムスタンプ用の時計を備える。それにより、それぞれのピルケースに関して予定された服用時間と分配時間について、少なくとも両者の一致を検証し、確認することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態では、分配用の移動ユニットの第2の情報処理手段は、共有の前記データベースに少なくとも読取りでアクセスするために情報処理ネットワークと通信するように適合された通信手段を備える。好ましくは、前記第2の情報処理手段は共有の前記データベースに対して書込みでもアクセスできるように適合される。Wi−FiやBluetooth(登録商標)のような無線周波数接続を介した無線通信手段を利用することで、共有のデータベースにリアルタイムでアクセスして、たとえば患者による薬剤服用の事実や、薬剤分配の日時などをそこに記録することが可能である。変形形態または組み合わせ形態で、特に電磁波に対する曝露制限の配慮から、第2の情報処理手段は情報処理ネットワークにケーブルで接続することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、分配用の移動ユニットの第2の情報処理手段は、共有のデータベースのローカルコピーが記録された少なくとも1つの記憶装置をさらに備える。第2の情報処理手段がケーブルでネットワークに接続されている場合、または建物の構成などのために薬剤分配用の移動ユニットとデータベースとの間の無線によるリアルタイム接続が不可能な場合は、分配用の移動ユニットの第2の情報処理手段は、記憶装置をそうして備えており、その記憶装置にデータベースのコピーを読み込み、関係する分配情報(タイムスタンプ、服用の事実など)をそこに書き込んで、分配が終われば共有のデータベースを更新することができる。さらに、共有のデータベースのそのようなコピーは、共有のデータベースとの連係を可能にする分配用の移動ユニットと通信ネットワークとの間の通信が万一途絶した場合に対処できるようにする。
本発明はまた、本発明による集合体の一部を構成するように適合された薬剤の調製装置にも関する。本発明はまた、本発明による集合体の一部を構成するように適合された薬剤の分配装置にも関する。
本発明はまた、本発明による集合体によって利用される複数の患者のための薬剤の調製および分配の方法にも及ぶ。本発明はそのため、請求項19に記載の複数の患者のための薬剤の調製および分配の方法にも関する。
本発明による調製の方法、集合体および装置では、前記第1の情報処理手段は共有の前記データベースに少なくとも書込みでアクセスできるように適合され、それによって調製ステップでは、それぞれの容器内におけるそれぞれのピルケースの少なくともそれぞれの識別情報および所在情報の少なくとも記録が可能となるようにする。本発明によるいくつかの実施形態では、前記第1の情報処理手段は共有の前記データベースに読取りでもアクセスできるようにも適合される。
本発明による分配の方法、集合体および装置では、前記第2の情報処理手段は共有の前記データベースに少なくとも読取りでアクセスできるように適合される。本発明によるいくつかの実施形態では、前記第2の情報処理手段は共有の前記データベースに書込みでもアクセスできるように適合される。
本発明はまた、薬剤の調製装置、薬剤の分配装置、薬剤の調製装置および分配装置の集合体、ならびに薬剤の調製および分配の方法において、前述または後述のとおりの特徴のすべてまたはいずれかを組み合わせた形で、または単独で特徴とするものにも関する。それについて形式的に説明されているところがどのようなものであれ、明示的に別段の指定がある場合を除き、前述または後述のそれぞれの特徴は、互いに密接にまたは解きがたく結びついているものと見なされるべきものではなく、本発明はそれらの特徴のうちの1つだけに関するものであるか、またはそれらの特徴のうちの1つの一部だけであることも、またそれらの特徴のすべてまたは一部のあらゆる集合、組み合わせまたは並列に関するものであることもできる。
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の説明および添付の図面を検討することによって明らかとなろう。
図1の例では、患者に分配するために薬剤をピルケースに調製する装置(全体を符号10で表す)であって、薬局など、調製サイトにある装置を図中左側に示した。図中中央(全体を符号25で表わす)には、調製装置10によって調製された薬剤およびピルケースを患者が入所する介護施設などの分配サイト30に向けて安全が確保された状態で配送できる輸送装置を示した。
調製サイトと分配サイトは図示するように互いに離れていることができ、その場合、第1のサイトで調製されたピルケース12は、たとえば車両27によって第2のサイトに輸送される。しかし、2つのサイトが互いに目と鼻の先にあっても、場合によっては両者が単一のサイトを構成して、ピルケースの調製が患者を収容中の施設内で行われるのであっても一向に差し支えない。
ピルケースは有利には1回使用(すなわち使い捨て)のもの、たとえば複数のパッケージ区画を有する透明ブリスター型のもので、それぞれのパッケージ区画は患者のための一回服用分の薬剤を含む。ピルケースのそれぞれのパッケージ区画は、印字された粘着カバーからなる除去可能なカバーフィルムによって閉ざされたブリスター型の透明な小房またはカップによって形成されるものであってよく、ピルケースの他のパッケージ区画と分離可能または不能であることができる。それぞれのパッケージ区画は、同じ一回服用分の薬剤のそれぞれの薬剤を互いに分けて保持するように分割されたものであっても、そうでなくてもよい。本発明ではそれ以外のあらゆる実施形態のピルケースも使用することができる。
調製装置10は、ばらの薬剤13入りの箱からそれぞれの患者専用の医師の処方に応じてピルケース12を調製するように適合された包装機11を備える。そのような包装機11はたとえば国際公開第2012/062986号に記載されている。包装機11は、たとえばデータベース14に接続されたコンピュータ19を備える第1の情報処理手段と組み合わされている。コンピュータ19は、それぞれのピルケース12ごとにピルケースの識別コード、そのピルケースが提供される患者の身元、ピルケースの内容物、ピルケースの充填に使用された薬剤のトレーサビリティ情報などをデータベース14に記録する。
そして、それぞれのピルケースは、ピルケースの1つのカップを閉じた少なくとも1つのフィルムカバーおよび/またはピルケースのそれぞれのカップを閉じたそれぞれのフィルムカバー上のRFIDタグまたは印字された1つまたは複数の光学読取り式コードによって一意に識別される。
コンピュータ19も、少なくとも1つの容器15を受けるように適合された調製スタンド16に接続される。図示した例では、それぞれの調製スタンド16は1つだけの容器15を受けるように適合されているが、同じ調製スタンド16が複数の隣接する容器を受けることができるようにしても何ら差し支えない。
それぞれの容器15は、複数のピルケース12をその容器に対して挿入/取出するための開口部を有する全体が平行六面体のボックスの形をなす。それぞれの容器15はピルケースを受け入れる複数の位置を有しており、それぞれの受入れ位置は1つだけのピルケースを受けるように適合される。
それぞれの調製スタンド16もまた、そのスタンド16内にセットするようにされたそれぞれの容器15を挿入/取出するための開口部を有する全体が平行六面体のボックスの形をなす。
図示した例では、それぞれの調製スタンド16は、容器がスタンド内に挿入されるときにそれぞれの容器15の識別コード18を、たとえば、RFIDタグのリーダまたは光学式リーダ、さらには容器と一体化された記憶装置の読取りを行うように適合された電子回路などを用いて、読み取る手段を備えている。調製スタンド16はまた、容器15のそれぞれの区画を識別し、示すことができるパイロットランプ17などの手段も備える。
それにより、ピルケース12が包装機11によって充填されると、コンピュータ19は、そのピルケースのために用意された容器15内の位置に対応する調製スタンド16のパイロットランプを点灯させることなどによって、容器15のどの部分にピルケース12を収納すべきかを作業者に指示する。さらに図5とあわせて見るとわかるように、スタンド16は容器のそれぞれの区画におけるピルケースの存在を検出する手段を備えていることができ、それによってピルケースが、指示された予定どおりの位置に挿入されたかどうかを検証することができる。
容器15の識別コード18に関する情報および調製スタンド16で充填中の容器15内におけるそれぞれのピルケース12の識別および所在に関する情報はスタンドからコンピュータ19に伝送され、コンピュータ19はそれをさらにデータベース14に転記する。
こうして、調製装置10は、包装機11によって容器15内に作成されたピルケース12をまとめ、どの容器のどの位置にそれぞれのピルケースが収納されたかを特定できるようにする。これらの情報は、データベース14内のそれぞれのピルケースに関する情報と組み合わされる。
データベース14はインターネット21などの遠隔リンクを用いて発注者である介護施設などと共有される。別法として、容器15が容器と一体をなす記憶装置を備えるときは、データベース14のうち、特にその容器およびその容器に挿入されたピルケースに関する部分は容器の記憶装置に転送されて、追って薬剤が患者に分配される際に活用されるようにすることができる。
調製装置10はいくつもの容器15を並行して調製することができる複数のスタンド16を備えることができる。そのため、たとえば、あらかじめ決められた時間(朝、昼、夕、就寝時など)に対応する服用分のみを備えるようにピルケース12が構成されるときなどに、同じ患者について複数のピルケースを調製してそのそれぞれを別個の容器にセットすることができ、それぞれのピルケースはあらかじめ決められたその服用時間に対応する容器にセットすることができる。調製装置10は、使用するピルケースの容量に応じて、ある患者グループのある曜日またはある週にそれぞれ対応する容器15を調製するように使用することもできる。
そうして調製された容器15は次いで仕向先の施設ごとに仕分けされ、その仕向先まで輸送車両27によって配送される。有利には、容器15は安全が確保された梱包26にまとめられ、その梱包はそれぞれ仕向先の施設に対応するものであるとともに、そこには複数の容器、たとえば所与の期間(1日または1週間)について4つの容器が含まれ、それぞれの容器が服用時間(朝、昼、夕、就寝前)に対応する。
容器15は分配サイト30に、たとえば、それぞれが部屋33に入所する複数の患者32を受け入れる介護施設内のあるフロアの医務室31に配達される。それまでの分配の際に使用され、医務室31に保管されていた空の容器は調製サイトに返却されて再利用される。
医務室31には薬剤の分配装置40も置かれる。図2とあわせて見るとわかるように、この分配装置40は、介護スタッフの手で部屋33から別の部屋33に移動させることができるキャスタ付き台車41の形をなす分配用の移動ユニットを備えている。この台車41は、コンピュータ42の形をなす第2の情報処理手段を装備している。コンピュータ42は、インターネット21につないだアンテナ34およびルータ35を備える介護施設の情報通信ネットワークとの間にWi−Fiおよび/またはBluetooth(登録商標)リンクのような無線通信手段45を備えており、それによって薬剤の調製装置10と共有するデータベース14にインターネットで直接接続することができる。当然のことながら、患者やスタッフの電磁波への曝露を最小化するという配慮から、コンピュータ42はネットワークおよび共有のデータベース14に対するRJ45またはUSBケーブルなどによるケーブル接続での接続手段も備えている。コンピュータ42は、台車41と介護施設の情報通信ネットワーク34との間なり、介護施設の情報通信ネットワーク34と調製装置10のデータベース14との間なりで仮にリンクが切れた場合にも動作することができるように、データベース14のうち、少なくとも調製サイトから分配サイトに配達された容器15に対応する部分の1つのコピーを記録することのできる記憶装置を備えることもできる。
薬剤の分配装置40はさらに、キーボード/マウス/ディスプレイまたはタッチパネル50のセットなどのコンピュータ42へのデータ入力手段を、必要に応じてそれを補完するものとして、介護スタッフがケーブルにわずらわされずに台車41の周囲を移動できるように無線リンクによってコンピュータ42とつながれた光学式コード(バーコード、二次元コードの「Datamatrix」)リーダ46などの形の非接触型読取りコードの読取り手段とあわせて備える。リーダ46は、患者32のベッドの枕元やその部屋の入口などにセットされた患者の識別タグ37を読み取れるように適合される。リーダ46は患者の識別情報をコンピュータ42に伝送する。患者の識別は、タッチパネル50に表示されたリストからの選択によっても行うことができ、リストには患者の肯定的身元確認のための本人の写真を付け加えることもできる。
分配装置40は、台車41に固定され、コンピュータ42に接続された薬剤の分配スタンド43も備える。分配スタンド43は、ピルケース12が収納された状態の容器15を受けるように適合される。分配スタンド43もまた、調製装置10の調製スタンド16であらかじめ調製された容器15の挿入/取出開口部を有する全体に平行六面体のボックス形をなす。
台車41は、コンピュータ42、分配スタンド43、および分配装置40に付帯する可能性のあるその他あらゆる電気装備に給電することができる電源手段を充電式バッテリ48の形で備えることもできる。たとえば、台車は、薬剤の分配日時を示すことができる時計47をさらに備えることができる。当然のことながら、時計47は第2の情報処理手段の一部をなすものであることができ、コンピュータ42に含まれるものであることができる。
添付の図3〜5を参照しながら、調製スタンド16または分配スタンド43および容器15について、さらにそれらの相互作用について詳しく説明する。図示した例では、符号は分配スタンド43に対応している。もっとも、分配スタンド43は多くの点で調製スタンド16と共通している。
図3は、容器15が部分的に挿入された分配スタンド43を示している。容器15は、その大きな面のうちの1つが開いた平行六面体のボックス形をなしている。容器15の側壁内側は、ピルケース12の側縁121(図4)が係合できるように適合された複数のスライダ151を備えている。通常、容器15は25の異なるピルケースを受け入れるように25対のスライダを備えており、そのそれぞれのピルケースは一般的には介護施設の1フロアである分配ゾーンの患者いずれか1人に対応する。
容器15は、スタンドに係合した容器の識別を可能にする識別タグ18をそのいずれかの面に備える。識別タグ18の読取り手段は、分配台車41のためのコードリーダ46であっても、調製装置10のためのコードリーダ20であっても、さらにはスタンド16または43に固有の手段であってもよく、識別タグの読取りはスタンドへの容器15の挿入時に行われる。識別タグ18は、容器15と一体をなす電子回路(図示せず)であって、記憶装置を備える電子回路によって代替するか、またはむしろ補完することもできる。電子回路は、容器をスタンドに差し込む際にスタンドの対応するコネクタと接続することのできるコネクタを備える。そのため、コンピュータ42は、容器15の識別情報および容器の内容物に関するその他の情報にスタンド43を介してアクセスすることができる。
分配スタンド43は、容器15内のピルケースにそれぞれ対応する一列のパイロットランプ44を備える。調製スタンド16も同様に、容器15内のピルケースにそれぞれ対応する一列のパイロットランプ17を備える。パイロットランプ44の役割は、それぞれの患者に関係付けられた識別タグ37と分配台車41のコードリーダ46またはディスプレイ50上に表示されたリストによる患者の選択を用いて行った患者の識別結果に応じて使用すべきピルケースがどれかを薬剤の分配を行う介護者に対して指示することにある。同様に、調製スタンド16のパイロットランプ17は、調製されたばかりのピルケースを容器15内のどこに挿入するかを調製者に指示する役割を持つ。
容器15はまた、容器15が分配スタンド43に設置されていない間、ピルケース12を所定の位置に保持するように適合された錠止手段152も備えることができる。参考として図4に示した例では、錠止手段152は、容器15の全高にわたって延びる可動軸153であって、ピルケース12の側縁121の一方に設けられた孔122と協働するように適合された小突起154を備える可動軸153と一体のスライダの部分155を備える可動軸153によって構成される。可動軸153は、スライダの部分155がスライダ151と一直線をなし、小突起154がピルケース12の側縁121の孔122の中に入り込んでピルケースが容器15から引き出されるのを妨げる第1の位置(錠止位置という)と、スライダの部分155が移動することによって小突起154がピルケース12を解放する第2の位置(解放位置)との2つの位置の間で移動する。好ましくは、可動軸153はばね(図示せず)によって錠止位置に保持され、容器15が分配スタンド43内に挿入されると解放位置方向に移動する。錠止手段152により、容器15内に挿入されたピルケース12は、運搬や輸送の作業中に容器15から不注意によって引き出されたり、抜け落ちたりすることはあり得ない。
容器15内のピルケース12を一括して錠止する形で表わした錠止手段152は別の形を取ることもできる。とりわけ、ピルケースの錠止は、ピルケースが識別された薬剤の分配対象の患者に対応するものでない限りピルケースを解放しないように個別の形で企図することもできる。同様に、錠止手段はピルケースによって、たとえばピルケース12の側縁121から延びる弾性のタブであって、スライダ151の穴と弾性的な引留めによって協働するタブの形を取るなどして支えられる。この場合、分配スタンドは、スライダの穴に入り込んでそこから弾性タブを押し出す小突起の形を取るなどして、一括または個別の開錠手段を備えることができる。
また、分配スタンド43は、そのスライダにおけるピルケースの存在を検出する手段を備えることができる。例として、スタンドの後面などにセットされた装置であって、ピルケース12と一体の垂直の折返し123と協働する光電センサ49の形でピルケース12の存在を検出する装置を図5に示した。この場合、金属の被覆を施すことができる垂直の折返し123による光電センサ49から放出される光信号の反射によって、該当するスライドにおけるピルケース12の存在を示す信号を得ることができる。
存在検出装置のそれ以外の変形形態も企図することが可能で、たとえば、光電センサ49を、垂直の折返し123に取り付けたピルケースの識別タグを読み取ることができる非接触型コードリーダで置き換えることができる。こうした変形形態は、調製スタンド16に関して、容器15の充填時にパイロットランプ17で表示されたスライダに挿入されたピルケースの識別の検証を行えるようにする場合に特に有益である。
本発明による調製装置10および分配装置40の動作について、たとえばそれらの装置を使用した本発明による薬剤の調製方法および分配方法と関係付けて以下に説明する。
複数の介護施設向けに集中管理された薬局で一般に行われる第1の調製ステップでは、ピルケース12は包装機11によって施設の患者のために医師から交付された処方に応じて調製される。そうして調製された薬剤、その薬剤の投薬対象患者の身元およびその薬剤が調製されたピルケースの識別に関する情報は、調製装置10のコンピュータ19を用いてデータベース14に記録される。
この調製ステップでは、コンピュータ19につながれた調製スタンド16と称する第1のスタンドであって、複数のピルケース12を受けるように適合された容器15をその中に設置するスタンドを少なくとも1つ使用する。それぞれの容器は一意の識別タグ18を備え、そのタグは調製者によって操作されるコードリーダ20またはスタンド16に固有の読取り手段によって読み取られる。使用中の容器15の識別はコンピュータ19に伝送され、データベース14に記録される。
それぞれのピルケース12の調製が終わると、ピルケースは、対応するパイロットランプ17の点灯によって決定される位置など、容器15内に挿入される。それぞれのピルケースの位置の決定は、分配巡回の順序に関して介護施設から提供される情報に基づいて行うことができる。使用中の容器内で確認されたそれぞれのピルケースの位置の所在はコンピュータ19に伝送され、該当するピルケースの識別と関係付けてデータベース14に記録される。
それにより、データベース14には、それぞれの患者について、その患者のためのピルケースの識別、識別された容器内におけるその所在、ピルケースに含まれる薬剤に関する情報などが含まれる。
所定の介護施設など、何らかの分配サイト30に仕向けられる容器15は、安全が確保された梱包26としてひとまとめにされてその施設まで輸送される。
分配ステップでは、第2のスタンドである分配スタンド43が取り付けられた移動台車41を備える分配装置40であって、そこにつながれたコンピュータ42が無線通信手段および/またはインターネットでデータベース14と接続されているか、またはそのデータベースの全体もしくは一部のコピーを含んでいる装置が使用される。
次いで、分配スタンド43内に容器15を設置し、コンピュータ42とつながれたコードリーダ46などのデータ入力手段を使用して容器のタグ18に付けられた識別を読み取る。それを受けてコンピュータ42はデータベース14に接続され、分配に使用する容器15に関する前記データベースのすべてのデータを記録することができる。別法として、または補完的に、それらのデータは容器15と一体をなす記憶装置に含まれるものであってもよい。
次いで、介護者は移動台車41を使ってそれぞれの患者のもとに移動する。それぞれの患者について、患者の身元は、ディスプレイ50に表示される患者リストから選択することで決定されるか、またはコードリーダ46および患者の部屋の入口もしくはその枕元など、患者の近くにセットされた識別タグ37を用いて読み取られる。そうして得られた患者の識別をもとに、コンピュータ42は識別された患者に対応するピルケース12の容器15内における所在にデータベース14でアクセスする。
その所在に応じて、スタンド43はそれに対応するパイロットランプ44を点灯させることによって容器15内におけるピルケースの所在を示す。
それにより、介護者は患者に対応するピルケースに直接アクセスして、当該服用分に相当する薬剤を患者に供給することができる。それと同時に、ピルケース12のカップを閉鎖するカバーフィルムにコードの形で記された情報を改めて読み取ることなどにより、それ以外にいくつかのチェックを行うことができ、それによって薬剤/患者および現在時刻/予定服用時間の対応関係について二重チェックを行うことができる。同様に、患者への薬剤の分配情報およびその分配のタイムスタンプはコンピュータ42に伝送することができ、コンピュータはそれをデータベースに転記する。
それにより、どの薬剤が調製され、投与されたか、それはいつかなどを含め、患者のための薬剤の調製および分配に関する完全なトレーサビリティを得ることができる。
この説明はもっぱら説明のための例として行ったものであり、当業者であれば、上の説明の過程で触れた変形形態以外にも、たとえば、容器15の識別ばかりでなく、その容器に対応するデータベース内のデータ部分までも含むことで、データベース14と分配装置40との間のリンクなしで済ませることができるようにした記憶装置をそれぞれの容器15に設置することなど、本発明の範囲から外れることなしにいくつもの変更をそこに加えることができるであろうことは言うまでもない。
本発明は上述のもの以外のいくつもの変形形態や用途の対象となりうる。とりわけ、別途指定のある場合を除き、上述の実施形態の様々な特徴は、組み合わされたもの、ならびに/または互いに緊密に、および/もしくは分かちがたく連関したものであると見なされてはならず、単に列挙されたものとして考えるべきものであることは自明である。また、上述の様々な実施形態の特徴は、そのすべてまたは一部があらゆる異なる列挙または異なる組み合わせの対象となりうるものである。