JP2019527560A - リポタンパク質搬出シグナルおよびその使用 - Google Patents

リポタンパク質搬出シグナルおよびその使用 Download PDF

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Abstract

リポタンパク質搬出シグナルを含むポリペプチド、リポタンパク質搬出シグナルを含むポリペプチド前駆体、前記ポリペプチドまたはポリペプチド前駆体をコードする核酸、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする核酸および/またはポリペプチドまたはポリペプチド前駆体を含む組換え発現ベクター、およびこれらのベクターを含む5の組換え宿主細胞を本明細書中で記載する。本願はさらに、これらのポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞の使用も提供する。

Description

本発明は、リポタンパク質シグナルペプチドの分野に存する。さらに詳細には、本発明は、これらのシグナルペプチドを含むポリペプチド、その使用、前記ポリペプチドをコードする核酸、これらのペプチドをコードする核酸配列と組換え発現ベクターとを含む核酸構築物ならびにこれらの核酸構築物を含む組換え宿主細胞を提供する。
細胞表面ディスプレイにより、アンカー型モチーフとして細菌、酵母、またはさらには哺乳動物細胞の表面タンパク質を使用して安定的に細胞の表面上でのタンパク質もしくはペプチド、またはそのフラグメントの発現が可能になる。この強力なツールは、ヒト共生もしくは弱毒化病原菌細胞上に異種エピトープを露出させて抗原特異的抗体応答を誘発するための生ワクチンまたは不活化ワクチン開発、スクリーニングディスプレイ(screening−displayed)ペプチドライブラリー、動物においてポリクローナル抗体を産生するために表面抗原を発現させることによる抗体産生、酵素を固定化することによる全細胞触媒作用、バイオセンサー開発ならびに有害な化学物質や重金属の除去のための環境的バイオ吸着(bio adsorption)などの広範囲のバイオテクノロジーおよび工業用途で使用されてきた。
80年代半ばに、George P.Smithは、バクテリオファージの表面上で繊維状ファージのpIIIタンパク質と融合したペプチドおよび小タンパク質を提示することによって、はじめて表面発現系を開発した。それ以来、ファージの表面上で外来タンパク質を発現するために様々なファージディスプレイシステムが開発されてきた。しかしながら、ファージの表面上で提示される外来タンパク質のサイズはかなり限定される。その結果、微生物細胞表面ディスプレイシステムが開発された。微生物細胞表面ディスプレイは、通常、細胞表面タンパク質またはそれらのフラグメント(「キャリアタンパク質」)である、様々なアンカー型モチーフとの融合タンパク質として関心対象の異種ペプチドまたはタンパク質を発現することにより実施される。
典型的には、キャリアタンパク質の使用は細胞生理学に影響を及ぼし得る。例えば、外膜(OM)タンパク質および細胞付属物(cellular appendage)のサブユニットの使用は、成長異常および細胞表層統合性の不安定化につながり得る。さらに、有効なキャリアは、異種配列の挿入または融合に対して不安定になってはならず、またペリプラズム腔または培地中に存在するプロテアーゼによる攻撃に対して耐性でなければならない。
OprF、OmpC、OmpX、外膜タンパク質S、マルトプロテインLamBおよびリポタンパク質TraTをはじめとする様々なアンカー型モチーフが開発された。多くの成功結果が達成されたにもかかわらず、現行のアンカー型モチーフの使用は、全ての標的タンパク質の効率的なディスプレイを必ずしも可能にするものではなかった。細胞表面ディスプレイシステムにおいて、有効なタンパク質ディスプレイはアンカー型モチーフの選択に非常に依存する。したがって、組換えタンパク質の発現およびディスプレイのための新規かつ改善された細胞表面ディスプレイシステムを調査し開発することが非常に必要とされている。
本発明者らは表面に露出したリポタンパク質に対して特異的な新規コンセンサス配列モ
チーフを見出し、前記特異的モチーフはリポタンパク質搬出シグナル(LES)として作用する。そのようなLESを含むポリペプチドは、高い効率および安定性で宿主細胞の細胞表面にうまく搬出することができ、ディスプレイすることができる。
したがって、本明細書中で提供されるのは、
(a)前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドであって、前記lipoboxモチーフがアミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号230)からなり、シグナルペプチダーゼタイプIIにより特異的に認識可能である、N末端シグナルペプチド;
(b)以下のコンセンサス配列:
−Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ(配列番号197);
−BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ(配列番号198);または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOEE(配列番号200)
のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むリポタンパク質搬出シグナルであって、
前記リポタンパク質搬出シグナルが全体的に負に荷電し、前記リポタンパク質搬出シグナルが前記シグナルペプチドのC末端に直接隣接して位置する、リポタンパク質搬出シグナル;
(c)前記シグナルペプチドおよび前記リポタンパク質搬出シグナルのC末端に位置するポリペプチド;および
(d)任意に、前記lipoboxモチーフとは異なり、前記シグナルペプチドおよび前記リポタンパク質搬出シグナルのC末端かつ前記ポリペプチドのN末端に位置する、プロテアーゼ切断部位モチーフ
を含むポリペプチド前駆体であって;
前記シグナルペプチド、前記リポタンパク質搬出シグナルおよび前記ポリペプチドがポリペプチド配列において天然では一緒に存在しない、ポリペプチド前駆体である。特定の実施形態において、グラム陰性菌のリポタンパク質の前記N末端シグナルペプチドは、C.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)のシグナルペプチドである。特定の実施形態において、リポタンパク質搬出シグナルは、配列番号16〜配列番号20または配列番号40〜47;配列番号1〜配列番号15または配列番号25〜39のいずれか1つ;あるいは配列番号49〜配列番号51または配列番号63のいずれか1つによるアミノ酸配列から選択される。
本明細書中で記載するようなポリペプチド前駆体をコードする核酸も本明細書中で提供される。
本明細書中で記載されるような核酸とプロモータと転写および翻訳終止シグナル、ならびに任意に選択マーカーを含む組換え発現ベクターも本明細書中で提供される。
(a)グラム陰性菌のリポタンパク質のシグナルペプチドをコードする核酸配列であって、前記シグナルペプチドが前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含み、前記lipoboxモチーフが前記アミノ酸配列L(S/A)(A/G)Cからなり、シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識される、核酸配列;
(b)以下のコンセンサス配列:
−Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよび
Eからなる群から選択され;ただし、JがAである場合、XはQであるとする、XJZZ;
−BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ;または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOEE
のいずれか1つによるアミノ酸配列を有するリポタンパク質搬出シグナルをコードする核酸配列であって;前記リポタンパク質搬出シグナルが全体として負に荷電し、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸配列が、前記シグナルペプチドをコードする前記核酸配列の直接下流に位置する、核酸配列;
(c)任意に、プロテアーゼ切断部位モチーフをコードする核酸配列であって、前記プロテアーゼ切断部位モチーフが前記lipoboxモチーフとは異なり、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸配列および前記シグナルペプチドをコードする前記核酸配列の下流に位置する、核酸配列;ならびに
(d)マルチクローニングサイトであって、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸および前記シグナルペプチドをコードする前記核酸の下流で、任意に前記プロテアーゼ切断部位モチーフの下流に位置する、前記マルチクローニングサイト
を含む組換え発現ベクターも本明細書中で提供される。特定の実施形態において、グラム陰性菌のリポタンパク質の前記N末端シグナルペプチドは、C.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)のシグナルペプチドである。特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルは、配列番号16〜配列番号20もしくは配列番号40〜47のいずれか1つ;配列番号1〜配列番号15もしくは配列番号25〜39のいずれか1つ;または配列番号49〜配列番号51もしくは配列番号63のいずれか1つによるアミノ酸配列から選択される。
本明細書中で記載するようなベクターを含む組換え宿主細胞であって、前記宿主細胞がBacteroidetes門の細菌細胞である組換え宿主細胞も本明細書中で提供する。特定の実施形態において、Bacteroidetes門の前記細菌細胞はCapnocytophaga canimorsusまたはFlavobacterium johnsoniaeである。別の態様は、以下のコンセンサス配列:
−Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され;ただし、JがAである場合、XはQであるとする、XJZZ;
−BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ;または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOEE
の1つによるアミノ酸配列を含むリポタンパク質搬出シグナルの使用に関し;
前記リポタンパク質搬出シグナルは全体的に負に荷電し、前記リポタンパク質搬出シグナルは、前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドから生じるN末端脂質修飾システイン残基に直接隣接した位置にあり、宿主細胞におけるポリペプチドの表面露出のためには、前記lipoboxモチーフはアミノ酸配列L(S/A)(A/G)Cからなり、シグナルペプチダーゼタイプIIにより特異的に認識可能であり、前記ポリペプチドは、前記宿主細胞と同じかまたは異なる生物に由来し、前記リポタンパク質搬出シグナルおよび前記ポリペプチドはポリペプチド配列において天然では一緒に存在しない。特定の実施形態において、グラム陰性菌のリポタンパク質の前記N末端シグナルペプチドは、C.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)のシグナルペプチドである。特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルは、配列番号16〜配列番号20もしくは配列番号40〜47;配列番号1〜配列番号15もしくは配列番号25〜39のいずれか1つ;または配列番号49〜配列番号51もしくは
配列番号63のいずれか1つによるアミノ酸配列から選択される。
さらに本明細書中で提供するのは、
(i)本明細書中で前述したポリペプチド前駆体、
(ii)本明細書中で前述した核酸、
(iii)本明細書中で前述した発現ベクター、または
(iv)本明細書中で前述した宿主細胞
の、ワクチンを製造するため、抗体を産生するため、バイオソープション(biosrption)適用のため、バイオセンサーを製造するため、細菌ディスプレイを実施するため、全細胞に基づく生体触媒適用のため、またはタンパク質産生および精製のための使用であり、前記抗体産生は、治療法ではない。特定の実施形態において、前記ポリペプチド前駆体は、抗原、もしくはそのエピトープ、または酵素、もしくはその触媒活性なフラグメントを含む、および/または前記核酸もしくは前記発現ベクターは、抗原、もしくはそのエピトープ、または酵素、もしくはその触媒活性なフラグメントをコードし、それらは、前記ポリペプチド前駆体、前記核酸および/または前記発現ベクターを含むBacteroidetes門の細菌細胞の表面に露出される。特定の実施形態において、Bacteroidetes門の前記細菌細胞はCapnocytophaga canimorsusまたはFlavobacterium johnsoniaeである。
図1は、C.canimorsusリポタンパク質の多重配列アライメントを示す。図1A−1は、成熟表面露出リポタンパク質のMAFFTアライメントを示す。保存されたK−(D/E)モチーフを示すN末端領域のみが表示されている。高度に保存された残基を強調する。誘導されたコンセンサス配列を以下に示す。 図1A−1のつづき。 図1Bは、細胞内外膜(OM)成熟リポタンパク質の最初の15のN末端アミノ酸のMAFFTアライメントを示す。各配列の最初の不変システイン残基を除去した後、アライメントを実施した。高度に保存された残基が強調されている。誘導されたコンセンサス配列を以下に示す。シアリダーゼ(SiaC;Ccan_04790)を星印で示す。 図2は、C.canimorsus表面露出リポタンパク質のアライメントによりN末端保存モチーフの存在が明らかになることを示す。図2Aは、成熟表面露出リポタンパク質の最初の15のN末端アミノ酸の配列アライメントを示す。各配列の第1不変システイン残基を除去した後、アライメントを実施した。高度に保存された残基を強調する。誘導されたコンセンサス配列を以下に示す。ムチナーゼ(MucG)を星印によって表示する。 図2Bは、図2Aで決定したコンセンサス配列の生成したWebLogoである。+1システインに対する位置を以下に示す。 図2Cは、パーセンテージで表した、コンセンサス配列の各位置のアミノ酸頻度である。各位置の3つの最も代表的なアミノ酸を示す。 図3は、LESはSiaC表面露出を可能にすることを示す。図3Aは、シアリダーゼ(SiaC)wtおよびコンセンサス配列変異体構築物を示す。コンセンサス由来のアミノ酸を濃灰色で示し、点変異を薄灰色で示す。 図3Bは、図3Aで記載するSiaC構築物を発現する株の総細胞抽出物のウェスタンブロット分析を示す。ムチナーゼ(MucG)の発現をローディング対照としてモニタリングした。 図3Cは、抗SiaC血清で標識した生細胞のフローサイトメトリーによるSiaC表面露出の定量化を示す。標識された細胞のパーセンテージを下に示す。検出限界より低い株(NR、関連性なし;<2.5%)は灰色で強調され、統計的に低い染色集団を有する株は灰色である。示されているのは平均蛍光強度(MFI)である。3つの独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す。 図3Dは、抗SiaC血清で標識した細菌の免疫蛍光顕微鏡画像を示す。スケールバー:5μm。 図3Eは、異なるSiaC構築物を発現する細菌の総ライセート(TL)および外膜(OM)フラクションのウェスタンブロット分析によるSiaCの検出を示す。MucGの発現をローディング対照としてモニタリングした。 図4は、最小LESの位置はその機能にとって重大であることを示す。図4Aは、シアリダーゼ(SiaC)wtおよびコンセンサス配列変異体構築物を示す。コンセンサス由来のアミノ酸を濃灰色で示し、点変異を薄灰色で示す。 図4Bは、図4Aに記載されるSiaC構築物を発現する株の総細胞抽出物のウェスタンブロット分析によるSiaCの検出を示す。ムチナーゼ(MucG)発現をローディング対照としてモニタリングした。 図4Cは、抗SiaC血清で標識した生細胞のフローサイトメトリーによるSiaC表面露出の定量化を示す。示されているのは染色した細胞のみの蛍光強度である;NR:関連性なし。少なくとも3回の独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す;***、p≦0.001。染色細胞のパーセンテージを下に示す;SD:標準偏差。検出限界以下(≦2.5%)の株を灰色で強調し、統計的に有意な低染色集団を有する株は灰色である。 図4Dは、抗SiaC血清で染色された細菌の免疫蛍光顕微鏡画像を示す。スケールバー:5μm。 図4Eは、異なるSiaC構築物を発現する細菌の総ライセート(TL)および外膜(OM)フラクションのウェスタンブロット分析を示す。MucG発現をローディング対照としてモニタリングした。 図5は、MucGは表面露出リポタンパク質であることを示す。図5Aは、ムチナーゼ(MucG)ドメインの注釈を示す。予想される構造ドメインを灰色の四角で示し、アミノ酸位置を一番上に示す。予想されるリポタンパク質搬出シグナル(LES)を下に示す。 図5Bは、Hパルミテートで標識した細菌のMucG免疫沈澱の溶出フラクションのウェスタンブロット分析(上)およびフルオログラフィー(下)を示す。MucGは、wtおよびΔmucG+MucG株では脂質付加されているが、脂質付加の予想される部位が変異しているΔmucG+MucGC21G株では脂質付加されておらず、MucGがリポタンパク質であることを示す。 図5Cは、異なるMucG構築物を発現する細菌の総細胞ライセート(TL)および外膜(OM)フラクションのウェスタンブロット分析によるMucG検出を示す。MucGはOMフラクションで検出されるが、溶解性MucGC21Gは検出されず、MucGが真正のOMリポタンパク質であることを示す。SiaC発現をローディング対照としてモニタリングした。 図5Dは、抗MucG血清で標識された生細胞のフローサイトメトリーによるMucG表面露出の定量化を示す。示されているのは染色した細胞のみの蛍光強度である;NR:関連性なし。少なくとも3回の独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す;***、p≦0.001。染色細胞のパーセンテージを下に示す;SD:標準偏差。検出限界以下(≦2.5%)の株は灰色で強調されている。 図5Eは、抗MucG血清で標識された細菌の免疫蛍光顕微鏡写真を示す。スケールバー:5μm。 図5Fは、異なるMucG構築物を発現する細菌とのインキュベーション後のヒト唾液のPNAレクチン染色によるムチンの検出を示す。未処理の唾液は陰性対照としての役割を果たす。PNA染色の減少は、表面局在化MucGによるムチン分解を示す。 図6は、MucG LESの添加はSiaCの表面露出をもたらすことを示す。図6Aは、シアリダーゼ(SiaC)wtおよびムチナーゼ(MucG)コンセンサス配列変異体構築物を示す。MucGコンセンサス由来のアミノ酸を濃灰色で示し、点変異を灰色で示す。 図6Bは、図6Aに示すSiaC構築物を発現する株の総細胞抽出物のウェスタンブロット分析によるSiaCの検出を示す。MucG発現をローディング対照としてモニタリングした。 図6Cは、抗SiaC血清で標識した生細胞のフローサイトメトリーによるSiaC表面露出の定量化を示す。示されているのは染色した細胞のみの蛍光強度である;NR:関連性なし。少なくとも3回の独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す;***、p≦0.001。染色細胞のパーセンテージを下に示す;SD:標準偏差。検出限界以下(≦2.5%)の株を灰色の影を付け、統計的に有意な低染色集団は灰色である。 図6Dは、抗SiaC血清で標識された細菌の免疫蛍光顕微鏡写真を示す。スケールバー:5μm。 図6Eは、異なるSiaC構築物を発現する細菌の総ライセート(TL)および外膜(OM)フラクションのウェスタンブロット分析を示す。MucG発現をローディング対照としてモニタリングした。 図7は、B.fragilisおよびF.johnsoniaeリポタンパク質の多重配列アライメントを示す。図7Aは、プロテイナーゼK感受性B.fragilisリポタンパク質の最初の16個のN末端アミノ酸のMAFFTアライメントを示す。高度に保存された残基が強調されている。対応するWeblogoおよびアミノ酸頻度を下に示す。 図7Aのつづき。 図7Bのつづき。 図7Dは、SusD様F.johnsoniaeリポタンパク質の最初の16個のN末端アミノ酸のMAFFTアライメントを示す。高度に保存された残基が強調されている。対応するWeblogoおよびアミノ酸頻度を下に示す。 図7Dのつづき。 図7Eのつづき。 図8は、B.fragilisおよびF.johnsoniae LESはSiaC表面局在化を可能にすることを示す。図8Aは、シアリダーゼ(SiaC)wtおよびコンセンサス配列変異体構築物を示す。B.fragilisまたはF.johnsoniaeコンセンサス由来のアミノ酸を濃灰色で示し、点変異を薄灰色で示す。 図8Bは、図8Aで記載するSiaC構築物を発現する株の総細胞抽出物のウェスタンブロット分析によるSiaCの検出を示す。ムチナーゼ(MucG)発現をローディング対照としてモニタリングした。 図8Cは、抗SiaC血清で標識した生細胞のフローサイトメトリーによるSiaC表面露出の定量化を示す。示されているのは染色した細胞のみの蛍光強度である;NR:関連性なし。少なくとも3回の独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す;***、p≦0.001。染色細胞のパーセンテージを下に示す;SD:標準偏差。検出限界(≦2.5%)以下の株を灰色で強調する。 図8Dは、抗SiaC血清で標識した細菌の免疫蛍光顕微鏡画像を示す。スケールバー:5μm。 図9は、SiaCにおけるMucG LESの特性化を示す。図9Aは、シアリダーゼ(SiaC)wtおよびムチナーゼ(MucG)LES配列変異体構築物を示す。MucG由来のアミノ酸を濃灰色で示し、点変異を薄灰色で示す。 図9Bは、図9Aで記載するSiaC構築物を発現する株の総細胞抽出物のウェスタンブロット分析によるSiaCの検出を示す。MucGの発現をローディング対照としてモニタリングした。 図9Cは、抗SiaC血清で標識した生細胞のフローサイトメトリーによるSiaC表面露出の定量化を示す。示されているのは染色した細胞のみの蛍光強度である;NR:関連性なし。少なくとも3回の独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す;***、p≦0.001。染色細胞のパーセンテージを下に示す;SD:標準偏差。検出限界(2.5%)以下の株を灰色で強調し、統計的に有意な低染色集団を有する株は灰色である。 図10は、MucG LES突然変異分析−単一置換を示す。図10Aは、ムチナーゼ(MucG)wtおよび変異体構築物を示す。点変異を薄灰色で示す。 図10Bは、図10Aで記載するMucG構築物を発現する株の総細胞抽出物のウェスタンブロット分析によるMucGの検出を示す。シアリダーゼ(SiaC)の発現をローディング対照としてモニタリングした。 図10Cは、抗MucG血清で標識した生細胞のフローサイトメトリーによるMucG表面露出の定量化を示す。示されているのは染色した細胞のみの蛍光強度である;NR:関連性なし。少なくとも3回の独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す;***、p≦0.001。染色細胞のパーセンテージを下に示す;SD:標準偏差。検出限界(2.5%)以下の株を灰色で強調する。 図11は、MucG LES突然変異分析−多重置換を示す。図11Aは、ムチナーゼ(MucG)wtおよび変異体構築物を示す。点変異は薄灰色で示す。 図11Bは、図11Aで記載するMucG構築物を発現する株の総細胞抽出物のウェスタンブロット分析によるMucGの検出を示す。シアリダーゼ(SiaC)の発現をローディング対照としてモニタリングした。 図11Cは、抗MucG血清で標識した生細胞のフローサイトメトリーによるMucG表面露出の定量化を示す。示されているのは染色した細胞のみの蛍光強度である;NR:関連性なし。少なくとも3回の独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す;***、p≦0.001。染色細胞のパーセンテージを下に示す;SD:標準偏差。検出限界(2.5%)以下の株を灰色で強調し、統計的に有意な低染色集団を有する株は灰色である。 図12は、アルギニンはMucG LESにおけるリジンを機能的に置換することができることを示す。図12Aは、ムチナーゼ(MucG)wtおよび変異体構築物を示す。アルギニン置換を濃灰色で示し、アラニン置換を薄灰色で示す。 図12Bは、抗MucG血清で標識された生細胞のフローサイトメトリーによるMucG表面露出の定量化を示す。示されているのは染色した細胞のみの蛍光強度である;NR:関連性なし。少なくとも3回の独立した実験からの平均を示す。エラーバーは平均からの1標準偏差を表す;***、p≦0.001。染色細胞のパーセンテージを下に示す;SD:標準偏差。検出限界(2.5%)以下の株を灰色で強調し、統計的に有意な低染色集団を有する株は灰色である。 図12Bのつづき。 図13は、Bacteroidetes門の宿主細胞における表面露出リポタンパク質バイオジェネシスおよび輸送経路の例示的概略図を示す。本明細書中で記載するようなN末端シグナルペプチド、LESおよびポリペプチドを含むポリペプチド前駆体はSecトランスロカーゼによって内膜中に挿入される。N末端シグナルペプチド内に含まれるlipoboxモチーフは、ジアシルグリセリル部分を+1システインのSHに結合させるリポタンパク質ジアシルグリセリルトランスフェラーゼ(Lgt)によって認識される。次いで、シグナルペプチドはタイプIIシグナルペプチダーゼ(SPase II)によって切断される。シグナルペプチド切断後、N末端システイン残基は、リポタンパク質N−アシル−トランスフェラーゼ(Lnt)によってさらなるアシル鎖で修飾される。成熟リポタンパク質は、内膜から抽出され、Lol系によりペリプラズムを越えて外膜へ輸送され、そして最終的に外膜に挿入され、未知の機序(破線によって示される)により細菌表面へ転位置される。
本発明で用いられるこれらのペプチド、これらのポリペプチドを含むキット、ポリペプ
チド前駆体、これらのポリペプチドおよび/またはポリペプチド前駆体をコードする核酸配列と組換え発現ベクターとを含む核酸構築物、ならびにこれらの核酸構築物を含む組換え宿主細胞の当該使用を記載する前に、本発明は、記載した特定のポリペプチド、ポリペプチド前駆体、使用、核酸構築物、ベクターおよび宿主細胞に限定されず、したがって、特定のポリペプチド、ポリペプチド前駆体、使用、核酸構築物、ベクターおよび宿主細胞は、もちろん、様々であり得ることを理解すべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書中で使用する専門用語は限定的あることを意図するものではないことも理解されるべきである。
特に別段の定めのない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語や科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有すると解釈される。本明細書中で記載するものと類似または同等のいかなる方法および材料も本発明の実施または試験において使用できるが、好ましい方法および材料をここで記載する。
本明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈でそうでないことが明示されていない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数の指示対象を含む。
「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」および「〜構成される(comprised of)」という用語は、本明細書中で用いられる場合、「包含している(including)」、「包含する(includes)」または「含有している(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、両端を含むかまたは制限がなく、言及されていないさらなるメンバー、要素または方法ステップを除外しない。
「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」および「〜構成される(comprised of)」という用語はまた、「〜からなる(consisting of)」という語も包含する。
本明細書中で使用する「約」という用語は、例えばパラメータ、量、持続期間(temporal duration)などの測定可能な値について言及する場合、そのような変化が開示された発明を実施するために適切である限り、特定の値の、そして指定された値から+/−10%以下、好ましくは+/−5%以下、さらに好ましくは+/−1%以下、そしてなお一層好ましくは+/−0.1%以下の変化を包含することが意図される。修飾語「約」が指す値は、それ自体もまた具体的かつ好ましくは開示されていると理解すべきである。
端点による数値範囲の記載は、列挙した端点と同様に、各範囲内に含まれるすべての数値および分数を包含する。
「アミノ酸」という用語は、本明細書中で用いられる場合、一般に、アミン官能基およびカルボキシル官能基の両方を含む分子を指す。生化学では、この用語は、特に、一般式HNCHRCOOHを有するα−アミノ酸を指し、式中、Rは有機置換基である。α−アミノ酸では、アミノ基およびカルボキシレート基は同じ炭素、すなわちα−炭素に結合している。この用語は20個の天然に存在するアミノ酸;インビボで翻訳後に修飾されることが多い、例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含むアミノ酸;ならびに2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない他の異常アミノ酸(unusual amino acid)を包含する。この用語はD−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方を包含する。L−アミノ酸が好ましい。本願の範囲内では、アミノ酸をそれらの1文字コードまたはそれらの正式な名称で言及する。例えば、システインはシ
ステインまたはCとして言及され得る。
略号G、A、L、M、F、W、K、Q、E、S、P、V、I、C、Y、H、R、N、D、Tは、本明細書中で用いられる場合、当該技術分野で公知であり、以下に再現する一文字アミノ酸コードに対応する:
Figure 2019527560
略号B、J、O、U、X、YおよびZ、ならびにX〜X10は、可変アミノ酸を示し、変異の性質は本明細書中で指定されているとおりである。
「ペプチド」、「ポリペプチド」、または「タンパク質」という用語は、交換可能に用
いることができ、隣接するアミノ酸残基間のペプチド結合によって一緒に結合したアミノ酸を含む任意の天然、合成、または組換え分子に関する。「ペプチド結合(peptide bond)」、「ペプチド結合(peptide link)」または「アミド結合」は、1つのアミノ酸のカルボキシル基が他のアミノ酸のアミノ基と反応し、それによって水の分子が放出される場合、2つのアミノ酸間に形成される共有結合である。ポリペプチドは任意のソースからのものであり得、例えば、天然に存在するポリペプチド、化学的に合成されたポリペプチド、組換え分子遺伝学的技術によって産生されるポリペプチド、または細胞もしくは翻訳系からのポリペプチドであり得る。好ましくは、ポリペプチドは組換え分子遺伝学的技術によって産生されるポリペプチドである。ポリペプチドは、直鎖であり得るか、または折り畳んで球形にしてもよい。「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という語は、本明細書中で同義的に用いることができる。ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質という語は、完全長タンパク質のフラグメントを包含する。
「機能的に活性なポリペプチド、タンパク質またはペプチド」という語は、本明細書中で用いられる場合、意図する機能を発揮し得るポリペプチド、タンパク質またはペプチドの形態を指す。例えば、酵素の機能的に活性な形態は化学反応を加速または触媒することができる。機能的に活性なポリペプチドは宿主細胞に対して相同(同じ生物に由来する)または異種(異なる生物に由来する)であり得る。
タンパク質の「フラグメント」という語は、前記タンパク質のN末端および/もしくはC末端が欠失または切断(truncated)した形態を指す。この語は、限定されるものではないが、代替翻訳(alternative translation)、細胞外および/または細胞内タンパク質分解および/または例えば、物理的、化学的および/または酵素的タンパク質分解による、例えば、インビボまたはインビトロなどの前記タンパク質の分解などの任意のメカニズムによって生じるフラグメントを包含する。限定されないが、タンパク質のフラグメントは、前記タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも約5%(アミノ酸数による)、または少なくとも約10%、例えば20%以上、30%以上、または40%以上、例えば好ましくは50%以上、例えば60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上であり得る。
本明細書がタンパク質のフラグメントを言及または包含する場合、これは、機能的に活性であるかまたは機能的であるフラグメント、すなわち、個別または対応するタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの生物学的活性または意図する官能性を少なくとも部分的に保持するフラグメントを含む。特定の実施形態において、フラグメントまたはポリペプチドは、対応するタンパク質の抗原特性を少なくとも部分的に保持する。
以下の節で、本発明の異なる態様または実施形態をさらに詳細に定義する。そのように定義される各態様または実施形態は、明らかに反対の指示がない限り、任意の他の態様(複数可)または実施形態(複数可)と組み合わせることができる。特に、好ましいかまたは有利であると示されている任意の特徴を、好ましいかまたは有利であると示されている任意の他の特徴(複数可)と組み合わせることができる。
本明細書全体にわたる「一実施形態」、「実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたって様々な場所での「一実施形態において」または「実施形態において」という表現の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者には明らかであるように、任意の好適な方法で組み合わせることができる。さらに、当業者には理解されるように、本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるある特徴を含むが、他の特
徴は含まず、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあり、そして,異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、請求される実施形態のいずれも任意の組み合わせで用いることができる。
グラム陰性菌は、内部の細胞質側の細胞膜(inner cytoplasmic cell membrane)および細菌外膜(OM)間に挟まれた薄いペプチドグリカン細
胞壁で構成された、それらの細胞膜によって特徴づけられる細菌群である。グラム陰性菌にはプロテオバクテリア(Proteobacteria)だけでなく、膨大なバクテロイデス(Bacteroidetes)門も含まれる。現在、本発明者らは、Bacteroidetes門の数種由来のリポタンパク質を細胞表面へ向けるシグナルを見出した。さらに詳細には、本発明者らは、表面に露出したリポタンパク質に対して特異的な新規コンセンサス配列モチーフ、すなわち、
−Xが任意のアミノ酸であり得、XがK、S、TおよびAからなる群から選択され、ただし、XがAである場合、XはQである、X(D/E)(配列番号68〜71);
−Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ(配列番号197);
−BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ(配列番号198);または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOE(配列番号199)、好ましくはXKEOEE(配列番号200)
を見出し;
前記特異的モチーフはリポタンパク質搬出シグナル(LES)として作用する。さらに、前記LESを含むポリペプチドは、高い効率および安定性を有する細胞表面にうまく分泌されディスプレイされた。
なお、20個の天然に存在するアミノ酸のうちの1つの略号を表すのではなく可変アミノ酸を表す、本明細書中で記載するコンセンサス配列で使用するX、J、Z、BおよびOという文字は、本明細書中では代わりに「X」と称する場合があり、ここで、「n」は1または2以外の自然数である。例えば、「X」は「X」と記載することができ、「J」は「X」と記載することができ、「Z」は「X」と記載することができ、「B」は「X」と記載することができ、「U」は「X」と記載することができ、また「O」は「X10」と記載することができる。同様に、アミノ酸が2つの選択肢のうちの1つであるとして、例えば、E/D、S/AまたはA/Gとして表される場合、それらの選択肢も特定のXによって表すことができる。
本願はこのように、前記LESを含むポリペプチドに関する。したがって、本発明の第1の態様は:
(a)前記ポリペプチドのN末端領域の最初の15個のアミノ酸内に位置するリポタンパク質搬出シグナルであって、以下のコンセンサス配列:XDD(配列番号68)、XDE(配列番号69)、XED(配列番号70)またはXEE(配列番号71)のいずれか1つによるアミノ酸配列であって、Xが任意のアミノ酸であり得、XがK、S、TおよびAからなる群から選択され、ただしXがAである場合、XがQであるアミノ酸配列を含む前記リポタンパク質搬出シグナル;
(b)機能的に活性なポリペプチドまたはそのフラグメント;および
(c)任意に、前記リポタンパク質搬出シグナルのC末端および前記機能的に活性なポリペプチドまたはそのフラグメントのN末端にプロテアーゼ切断部位モチーフ
を含むポリペプチドに関する。
特定の実施形態において、前記タンパク質は、タンパク質に連結したN末端シグナルペプチドを含むポリペプチドである、前駆体ポリペプチドに由来する成熟タンパク質である。そのような前駆体ポリペプチドは、典型的には、N末端シグナルペプチド内に、シグナルペプチダーゼタイプIIで切断可能なlipoboxモチーフを含む。その結果として、シグナルペプチダーゼタイプIIの切断により前記前駆体タンパク質から得られる成熟タンパク質は、lipoboxモチーフの残遺物である+1システインを含む。したがって、特定の実施形態において、成熟ポリペプチドは前記リポタンパク質搬出シグナルのN末端に+1システインを含む。なお、この文脈では、アミノ酸位置「+1」は、シグナルペプチダーゼの切断部位の後(またはC末端側)の最初のアミノ酸を指す。本明細書中に記載する前駆体タンパク質に由来する成熟リポタンパク質では、これは、成熟リポタンパク質の最初のアミノ酸残基に相当する。
本発明はさらに:
(a)任意に、N末端システイン残基であって、好ましくは脂質修飾された、前記システイン残基;
(b)以下のコンセンサス配列:
−Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ(配列番号197);
−BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ(配列番号198);または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOE(配列番号199)、好ましくはXKEOEE(配列番号200);
好ましくは、Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ
のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むリポタンパク質搬出シグナルであって、直接前記システイン残基のC末端に位置する、前記リポタンパク質搬出シグナル;
(c)前記リポタンパク質搬出シグナルおよび前記システイン残基のC末端に位置するポリペプチド;ならびに
(d)任意に、前記リポタンパク質搬出シグナルのC末端かつ前記ポリペプチドのN末端に位置するプロテアーゼ切断部位モチーフ
を含む成熟ポリペプチドにも関する。
上述のように、特定の実施形態において、前記N末端システイン残基は、シグナルペプチダーゼタイプII(SPaseII)によるポリペプチド前駆体からの前記lipoboxモチーフを含むN末端シグナルペプチドの切断から生じる、lipoboxモチーフの保存された+1システインである。
特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルは全体として負に荷電している。
特定の実施形態において、前記N末端システイン残基、前記リポタンパク質搬出シグナルおよび前記ポリペプチドは、ポリペプチド配列において天然では一緒に存在しない。
特定の実施形態において、機能的に活性なポリペプチドまたはそのフラグメントなどのポリペプチドは、N末端またはC末端タグに連結される。
したがって、「リポタンパク質搬出シグナル」または「LES」は、本明細書中で用いられる場合、リポタンパク質に由来し、グラム陰性菌細胞、好ましくはBacteroi
detes門由来の細菌細胞の細胞表面に搬出するためのリポタンパク質を標的とするシグナルペプチドとして作用する、少なくとも3つのアミノ酸残基、好ましくは最大30個のアミノ酸残基の短いアミノ酸配列を指す。LESは、任意の他のタンパク質またはポリペプチドに、さらに詳細には、本来、グラム陰性菌細胞の細胞表面に搬出されない/されないであろうタンパク質またはポリペプチドに添加することができる。
好ましくは、タンパク質またはポリペプチドは、200kDa以下、150kDa以下、100kDa以下、50kDa以下、さらに好ましくは、100kDa以下または50kDa以下のサイズを有する。好ましくは、完全長タンパク質のフラグメントを含むタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8のアミノ酸、少なくとも9のアミノ酸または少なくとも10のアミノ酸、好ましくは少なくとも10のアミノ酸残基を含む。前記LESを含む前記タンパク質またはポリペプチドは、グラム陰性菌細胞表面、好ましくはBacteroidetes門からの細菌細胞へ輸送される能力を獲得する。好ましくは、LESをポリペプチドのN末端、さらに好ましくは成熟ポリペプチドのN末端領域の最初の15のアミノ酸内に、またはその近くに、なお好ましくは成熟ポリペプチドのN末端領域の最初の10のアミノ酸内に、なお一層好ましくは成熟ポリペプチドのN末端領域の最初の5のアミノ酸内に挿入される。最も好ましくは、LESはシステイン残基のちょうどC末端に位置する。好ましくは、前記システイン残基は脂質修飾され、さらに好ましくは、前記システイン残基はlipoboxモチーフの保存されたシステインであり、これは、N末端シグナルペプチドに由来し、典型的には、シグナルペプチダーゼタイプII(SPaseII)による前記N末端シグナルペプチドを含むポリペプチド前駆体の切断後に成熟ポリペプチドの最初のアミノ酸(すなわち「+1システイン」)を形成する。
特定の実施形態において、本発明は、N末端シグナルペプチドを含むが、LESを含まず、したがって表面露出されないグラム陰性菌のポリペプチド露出させるために使用することができる。これらの実施形態において、LES配列は、前記lipoboxモチーフのC末端に直接隣接して挿入できるが、これは、前記lipoboxモチーフがアミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号203)からなる場合に、そのシステイン残基に直接隣接している。
ある特定の用途に関して、その表面露出後のポリペプチドからLESモチーフを除去することが望ましい場合がある。例えば、LESモチーフの除去により、「天然の」形態の機能的に活性なポリペプチドまたはそのフラグメントを生成する。この除去は、高特異性プロテアーゼ切断部位モチーフをLESモチーフと機能的に活性なポリペプチドとの間に挿入することによって達成することができる。好ましくは、特異的切断は、特異的配列(プロテアーゼ/基質対)を認識する組換えエンドプロテアーゼによって得られる。
「プロテアーゼ切断部位モチーフ」という用語は、本明細書中で用いられる場合、プロテアーゼまたは所与のタンパク質中の化学物質によって切断されたアミノ酸配列モチーフを指す。「プロテアーゼ」、「ペプチダーゼ」、または「プロテイナーゼ」という用語は、本明細書中で用いられる場合、タンパク質のさらに小さなポリペプチドまたはアミノ酸への分解であるタンパク質分解を実施する任意の酵素を指す。特定の実施形態において、アミノ酸配列モチーフは高特異性プロテアーゼ−感受性配列である。非限定例は、TEVプロテアーゼによって特異的に切断されるタバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位(ENLYFQ|G)(配列番号204)、scUlp1pプロテアーゼによって特異的に切断されるSaccharomyces cerevisiae(sc)SUMO(Smt3p)、bdSeNP1プロテアーゼによって特異的に切断されるBrachypodium distachyon(bd)SUMO、bdNEPD1によって特異的に切断されるbdNEDD8、ssNEDP1によって特異的に切断されるSalm
o salar(ss)NEDD8、scAtg4によって特異的に切断されるscAtg8、Usp2によって特異的に切断されるXenopus laevis Ub、E.coliまたはS.cerevisiaeエンテロペプチダーゼによって特異的に切断されるDDDDK(配列番号205)アミノ酸モチーフならびにトロンビンおよび第Xa因子によって特異的に切断されるLVPRGS(配列番号206)アミノ酸モチーフである。好ましくは、プロテアーゼはタグを含み、これによって、アフィニティ精製によりプロセスからプロテアーゼを除去することが可能になる。タグの非限定例は、His−タグ、FLAG、StrepタグII、HA−タグ、c−mycおよびグルタチオンS−トランスフェラーゼである。
特定の実施形態において、タンパク質またはポリペプチドは相同タンパク質またはポリペプチドである。
本発明に係るLESによりBacteroidetes門からの細菌細胞の細菌表面でタンパク質を発現させることにより、このタイプのタンパク質をE.coliなどの他の遠いかまたは関連性のない細菌で発現させる場合に起こり得るような、非機能的または部分機能的タンパク質を有する危険性なしに、グリコシルヒドロラーゼまたはプロテアーゼなどのBacteroidetes由来の完全に機能的な酵素を生成することが可能になる。
特定の実施形態において、タンパク質またはポリペプチドは、リポタンパク質、例えばシアリダーゼ(SiaC)またはムチナーゼ(MucG)、好ましくはC.canimorsusのシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)、さらに好ましくは、C.canimorsus 5のシアリダーゼ(SiaC)またはムチナーゼ(MucG)である。特定の実施形態において、タンパク質またはポリペプチドは異種タンパク質またはポリペプチドである。特定の実施形態において、異種タンパク質またはポリペプチドは哺乳動物タンパク質またはポリペプチド、例えばヒトタンパク質またはポリペプチドである。特定の実施形態において、異種タンパク質またはポリペプチドは、ウイルスタンパク質もしくはポリペプチドまたはBacteroidetes門ではない細菌細胞からのタンパク質もしくはポリペプチド、例えばグラム陽性菌タンパク質またはポリペプチドである。
細菌界はBacteroidetesなどのいくつかの門に分類することができる。Bacteroidetes門はBacteroidia、Cytophagia、Flavobacteriia、SphingobacteriaおよびBacteroidetes incertai sedisなどのいくつかの綱にさらに分類することができる。Flavobacteriiaの綱はさらに、科:Cryomorphaceae、Flavobacteriaceae、MyroidaceaeおよびBlattabacteriaceaeに分類することができる。Flavobacteriaceae科は、いくつかの属、例えば、Flavobacterium、Capnocytophaga、OrnithobacteriumおよびCoenoniaを含む。Capnocytophaga属は、C.canimorsus、C.canis nov. sp.、C.cynodegmi、C.gingivalis、C.granulosa、C.haemolytica、C.ochraceaおよびC.sputigenaなどの種にさらに分類することができる。これらの科学的分類は、当業者には公知である。本発明者らは、LESがBacteroidetes門において保存されることを見出した。本発明に係るLESは好ましくはBacteroidetes LESであり、さらに好ましくはC.canimorsus LES、B.fragilis LESまたはFlavobacterium johnsoniae LESであり、なお一層好ましくはC.canimorsus LESである。さらに、本発明者らは、Bacteroide
s門においてリポタンパク質搬出のための共通の新規経路があることを見出した。
本発明者らは、C.canimorsus表面露出リポタンパク質において、その後にアスパルテート(D)またはグルタメート(E)残基のいずれかが続くリジン(K)残基が、位置+1でN末端システイン(C)に近接して保存され、さらに詳細には、保存モチーフは以下のアミノ酸配列:CXK(D/E)X(配列番号21〜24)を有し、ここで、Xは任意のアミノ酸であり得ることを見出した。前記保存モチーフのN末端システインは、好ましくはlipoboxモチーフのシステインであり、これはN末端シグナルペプチドに由来し、典型的には、前記N末端シグナルペプチドを含むポリペプチド前駆体のシグナルペプチダーゼタイプII(SPaseII)による切断後に、成熟ポリペプチドの最初のアミノ酸を形成する。したがって、前記システイン残基のちょうどC末端に位置する保存されたLESモチーフは保存されたアミノ酸モチーフXK(D/E)X(配列番号191〜194)を有し得、ここで、Xは任意のアミノ酸であり得る。特に、アミノ酸配列QKDDE(配列番号16)に対応するLESコンセンサスモチーフは、それぞれ16%(Q)、72%(K)、48%(D)、44%(D)および23%(E)の保存を有する。位置+3の正に荷電した残基(K)に続いてシステイン残基、好ましくは脂質付加したシステイン残基の直後の位置+4、+5および+6に2〜3個の負に荷電したアミノ酸(Dおよび/またはE)がある。+1システインの下流の位置+2および+6の残基はなくてもよい。ペプチドの全体の電荷は負でなければならない。最小コンセンサスモチーフはアミノ酸配列KDD、KEE、KDEまたはKED、好ましくはKDDに対応し、リポタンパク質を表面に向かわせるために充分である。
例えば、配列QKDDE(配列番号16)を有するLES内で、最も保存されていないアミノ酸、すなわちQおよびEは、Aで置換し、その結果、以下の配列:AKDDE(配列番号17)およびAKDDA(配列番号18)を有するLESとすることができる。また、DをEで置換し、その結果、配列AKEEA(配列番号19)を有するLESとすることができ、KをAで置換して、その結果、配列QADDE(配列番号20)を有するLESとすることができる。
また、本発明者らは、C.canimorsusの自然に表面露出したリポタンパク質であるMucGのLESが、KKEVEEE(配列番号49)またはこの配列の一部、例えば、KKEVEE(配列番号63)であって、KKEVEEEおよびKKEVEEどちらも負に荷電しているものであるか、または電荷が中性であるKKEVE(配列番号64)であることを見出した。MucGのLESは、+1システインの直接C末端に位置し、これは、N末端シグナルペプチドに由来し、通常は、シグナルペプチダーゼタイプII(SPaseII)による前記N末端シグナルペプチドを含むポリペプチド前駆体の切断後に、成熟ポリペプチドの最初のアミノ酸を形成する、lipoboxモチーフのシステインである。好ましくは、KKEVEEE(配列番号49)またはKKEVEE(配列番号63)である。KKEVE(配列番号64)のK残基の1つのAへの置換を使用し、結果としてKAEVE(配列番号65)またはAKEVE(配列番号66)とすることによって、LESの全体的な電荷を負にすることができる。しかしながら、正に荷電したアミノ酸の位置、すなわち位置+3のKは適切な表面局在化のために重要である。したがって、アミノ酸配列AKEVE(配列番号66)を有するLESが好ましい。
配列KKEVEEE(配列番号49)を有するLES内で、個々のアミノ酸をAで置換することができ、その結果、以下の配列:AKEVEEE(配列番号50)、KKEAEEE(配列番号51)、KKEVEAE(配列番号52)、KAEVEEE(配列番号53)、KKAVEEE(配列番号54)またはKKEVAEE(配列番号55)を有するLESを得る。以下のLES配列が好ましい:AKEVEEE(配列番号50)、KKEAEEE(配列番号51)またはKKEVEAE(配列番号55)。さらに、配列KKE
VEEE(配列番号49)を有するLES中の一方または両方のリジンをRで置換することができ、その結果、以下の配列:RREVEEE(配列番号60)、RAEVEEE(配列番号61)またはAREVEEE(配列番号62)、好ましくはRAEVEEE(配列番号61)またはAREVEEE(配列番号62)、さらに好ましくはRAEVEEE(配列番号61)を有するLESを得る。
LES内で、位置+2のSもしくは位置+3のK、または位置+2もしくは+3で正の電荷を有するアミノ酸が表面搬出のために必要である。至適MucG表面露出のための最小LESは、+1C、好ましくは脂質修飾Cから下流のXK(D/E)(配列番号40〜47)であり、ここで、Xは任意のアミノ酸であり得る。
さらに、本発明者らは、B.fragilis表面露出リポタンパク質が+1システインにきわめて近接したN末端の負に荷電したコンセンサス配列を有し、好ましくは、前記システインは脂質修飾され、さらに詳細には、アミノ酸配列SDDDD(配列番号1)を有するコンセンサス配列であることを見出した。また、本発明者らは、F.johnsoniae表面露出リポタンパク質が、アミノ酸配列SDDFE(配列番号2)を有するN末端コンセンサス配列を有することを見出した。アミノ酸DおよびE、ならびにSおよびTは、配列番号1および配列番号2内で交換可能である。したがって、LESは配列番号3〜配列番号15または配列番号25〜配列番号39のいずれか1つを含み得る。全体の電荷が負である限り。
C.canimorsus、B.fragilisおよびF.johnsoniaeのLESは、正荷電または極性残基とそれに続く2または3個の負に荷電した残基を共有し、+1システインときわめて近接して全体的に負の電荷をもたらす。当業者は、本発明に係るLESが、これらの特性に適合する任意のBacteroidetesLESであり得ることを理解するであろう。
したがって、本発明に係るLESは、以下のコンセンサス配列XDD(配列番号68)、XDE(配列番号69)、XED(配列番号70)またはXEE(配列番号71)のいずれか1つに係るアミノ酸配列を含み、ここで、Xは任意のアミノ酸であり得、Xは、K、S、TおよびAからなる群から選択され、ただし、XがAである場合、XはQであるとする。
あるいは、本発明に係るLESは、以下のコンセンサス配列:
−Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ(配列番号197);
−BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ(配列番号198);または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOE(配列番号199)、好ましくはXKEOEE(配列番号200);
好ましくは、Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ
のいずれか1つに係るアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルは全体として負に荷電している。
特定の実施形態において、前記LESは、KDD、KDE、KEE、または配列番号1
、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67に記載するような配列のいずれか、さらに好ましくは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、46、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46または47に記載するような配列のいずれか、なお一層好ましくは、配列番号1、2、16、17または18に記載するような配列のいずれかである。
特定の実施形態において、前記LESは、
−配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47、191、192、193または194、好ましくは、配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46または47;
−配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38または39;あるいは
−配列番号49、50、51、63、64または66、好ましくは、配列番号49、50、51または63に記載するような配列のいずれかである。特定の実施形態において、前記LESは、配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47、191、192、193または194、好ましくは、配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46または47に記載するような配列のいずれかである。
Figure 2019527560

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ここで、Xは任意のアミノ酸であり得、Bは、SおよびTからなる群から選択され、Zは、DおよびEからなる群から選択され、Uは、D、EおよびFからなる群から選択され、Oは任意のアミノ酸であり得、好ましくは、OはVである
**Xは任意のアミノ酸であり得、JはKおよびAからなる群から選択され、Zは、DおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XはQであるとする
***は任意のアミノ酸であり得、Xは、K、S、TおよびAからなる群から選択され、ただし、XがAである場合、XはQである。
本発明に係るLESを含むポリペプチドの有効な表面露出は、膜タンパク質分画、蛍光または共焦点顕微鏡法、蛍光ベースのフローサイトメトリー、ELISAを含むいくつかの実験の使用により、また、ポリペプチドが酵素である場合、活性検査により検証することができる。
特定の実施形態において、LESを含むポリペプチドは、アミノ酸配列KDDまたはXKDDX(配列番号70)、好ましくはXKDDXを含み、Xは任意のアミノ酸残基であり得る。
特定の実施形態において、本発明によるLESを含むポリペプチドは、本発明によるコンセンサス配列のいずれか1つで記載するアミノ酸配列のN末端から+1のアミノ酸位置で1つのシステイン残基を含み、好ましくは、前記システイン残基は脂質修飾され、さらに好ましくは、前記システイン残基はN末端シグナルペプチドから生じる。
対象のポリペプチドをN末端融合によってLESに融合させることができる。
サイトゾルから細菌細胞表面へ効率的に輸送されるために、組換えポリペプチドは、LESモチーフに加えて、少なくとも1つの特異的シグナルペプチドを必要とする。さらに詳細には、SPaseIIによって特異的に認識されるlipoboxモチーフを含む古典的リポタンパク質シグナルペプチドが、細菌細胞のサイトゾルからペリプラズムへポリペプチドを転位置させるために必要である。したがって、ポリペプチドが細菌細胞のペリ
プラズムに到達したらシグナルペプチドは切断されるので、最終的な機能的活性ポリペプチドではなくポリペプチド前駆体のみが、完全なシグナルペプチド配列を含むであろう。
したがって、本発明の別の態様は、
(a)N末端シグナルペプチドであって、好ましくは、シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識されるlipoboxモチーフを含む、前記シグナルペプチド、
(b)以下のコンセンサス配列:XDD(配列番号68)、XDE(配列番号69)、XED(配列番号70)またはXEE(配列番号71)のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むLESであって、Xが任意のアミノ酸であり得、Xが、K、S、TおよびAからなる群から選択され、ただし、XがAである場合、XはQであり、前記リポタンパク質搬出シグナルが前記シグナルペプチドのC末端に位置する、前記LES;
(c)任意に、プロテアーゼ切断部位モチーフであって、前記lipoboxモチーフとは異なり、前記シグナルペプチドおよび前記LESのC末端に位置する、前記プロテアーゼ切断部位モチーフ;ならびに
(d)ポリペプチド
を含むポリペプチド前駆体である。
「ポリペプチド前駆体」または「プロポリペプチド」という用語は、本明細書中で使用する場合、本発明に係るLESを含むポリペプチドをコードするmRNAの第一翻訳産物を指す。前記ポリペプチド前駆体は、ポリペプチド前駆体をある特定の位置に対して標的化させるために必要な短いN末端シグナルペプチドを含む。ポリペプチド前駆体がその位置に到達したら、シグナルペプチドが切断され、その結果としてポリペプチドが得られる。好ましくは、前記位置は、グラム陰性菌細胞の内膜またはペリプラズム腔である。
「N末端シグナルペプチド」という用語は、本明細書中で使用する場合、SPaseIIによって認識され切断され、ポリペプチドの、さらに詳細にはリポタンパク質のN末端に位置し、ポリペプチドの、さらに詳細にはリポタンパク質の、サイトゾルからグラム陰性菌細胞の内膜を越える搬出に必要とされるリポタンパク質シグナルペプチドを指す。リポタンパク質シグナルペプチドのC末端は、「lipobox」と呼ばれる4アミノ酸モチーフを含む。好ましくは、N末端シグナルペプチドは、少なくとも16個のアミノ酸残基で最大35個のアミノ酸残基からなる。当業者は、N末端シグナルペプチドが、SPase IIによって認識され切断されるlipoboxモチーフを含む任意のリポタンパク質シグナルペプチドであり得ることを理解するであろう。そのようなN末端シグナルペプチドの非限定例は、アミノ酸配列MNRIFYLLFAFVLLSACGS(配列番号195)を有するC.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)またはアミノ酸配列MKKIVSISLFFLISATIWLACK(配列番号196)を有するムチナーゼ(MucG)のシグナルペプチドであり得る。「lipoboxモチーフ」という用語は、本明細書中で用いられる場合、膜ホスファチジルグリセロール由来のジアシルグリセロール部分を+1システインのSHに結合させるプロリポタンパク質ジアシルグリセロールトランスフェラーゼによって最初に認識されるアミノ酸配列モチーフを指す。次いで、lipoboxは、プロリポタンパク質からシグナルペプチドを切断するSPase IIによって認識される。シグナルペプチド切断後、成熟タンパク質のN末端を形成するシステインは、さらなるアシル鎖で修飾され、Lol系によって内膜から抽出され、ペリプラズムを越えて輸送され、そしてその後、OMに挿入される(図13)。lipoboxモチーフは、通常は、保存された脂質修飾システイン残基、さらに詳細にはグリセリド−脂肪酸脂質が結合したシステイン残基を有する4アミノ酸モチーフであり、これによって、原形質膜または外膜のペリプラズムリーフレット上にリポタンパク質が結合することが可能になる。さらに詳細には、保存されたシステインは位置+1に位置し、位置−1でGまたはAを有し、位置−2でAまたはSを有し、位置−3でLを有する。SPas
eIIによるプロリポタンパク質の切断は、+1位システイン残基のN末端で、すなわち、lipobox内で起こる。
別の態様は、
(a)前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドであって、前記lipoboxモチーフがアミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号203)からなり、シグナルペプチダーゼタイプIIにより特異的に認識可能である、N末端シグナルペプチド;
(b)以下のコンセンサス配列:
−Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ(配列番号197);
−BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ(配列番号198);または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOE(配列番号199)
のいずれか1つ;
好ましくは、Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ
によるアミノ酸配列を含むリポタンパク質搬出シグナルであって、
前記シグナルペプチドのC末端に直接隣接して位置する、前記リポタンパク質搬出シグナル;
(c)前記シグナルペプチドおよび前記リポタンパク質搬出シグナルのC末端に位置するポリペプチド;ならびに
(d)任意に、プロテアーゼ切断部位モチーフであって、前記lipoboxモチーフとは異なり、前記シグナルペプチドおよび前記リポタンパク質搬出シグナルのC末端ならびに前記ポリペプチドのN末端に位置する、前記プロテアーゼ切断部位モチーフ
を含むポリペプチド前駆体に関する。
特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルは全体として負に荷電している。
特定の実施形態において、前記シグナルペプチド、前記リポタンパク質搬出シグナルおよび前記ポリペプチドは、ポリペプチド配列において天然では一緒に存在しない。
明確にするために、アミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号203)を有するlipoboxモチーフの表現は、本明細書中ではアミノ酸配列LXCとも称される場合があり、ここで、「X」はアミノ酸SまたはAであり得、「X」はアミノ酸AまたはGであり得る。
特定の実施形態において、前記LESは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67に記載される配列のいずれか、好ましくは配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、46、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46または47に記載される配
列のいずれか、さらに好ましくは、配列番号1、2、16、17または18に記載される配列のいずれかである。
特定の実施形態において、ポリペプチド前駆体中に存在する前記LESは
−配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47、191、192、193または194、好ましくは、配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46または47;
−配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38または39;あるいは
−配列番号49、50、51、63、64または66、好ましくは、配列番号49、50、51または63に記載される配列のいずれかである。
好ましい実施形態において、ポリペプチド前駆体中に存在する前記LESは、配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47、191、192、193または194、好ましくは、配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46または47に記載するような配列のいずれかである。
特定の実施形態において、ポリペプチド前駆体中に存在する前記N末端シグナルペプチドはBacteroidetesのN末端シグナルペプチドであり、さらに好ましくは、C.canimorsusのN末端シグナルペプチド、B.fragilisのN末端シグナルペプチドまたはFlavobacterium johnsoniaeのN末端シグナルペプチドであり、なお一層好ましくはC.canimorsusのN末端シグナルペプチドである。
特定の実施形態において、前記N末端シグナルペプチドは、シアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)、好ましくはC.canimorsusのシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)、なお一層好ましくはC.canimorsus 5のシアリダーゼ(SiaC)またはムチナーゼ(MucG)のシグナルペプチドである。
特定の実施形態において、前記N末端シグナルペプチドは、アミノ酸配列MNRIFYLLFAFVLLSACGS(配列番号195)を有するC.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)のシグナルペプチド、またはアミノ酸配列MKKIVSISLFFLISATIWLACK(配列番号196)を有するC.canimorsus 5のムチナーゼ(MucG)のシグナルペプチドである。
本発明の別の態様は、本発明によるポリペプチドまたはポリペプチド前駆体をコードする核酸である。
「核酸」とは、本質的に、ヌクレオチド、例えばデオキシリボヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドから構成される任意の長さのオリゴマーおよびポリマーを意味する。核酸は、プリンおよび/またはピリミジン塩基および/または他の天然のヌクレオチド塩基(例えば、キサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)、化学的もしくは生化学的に修飾された(例えば、メチル化)ヌクレオチド塩基、非天然ヌクレオチド塩基、または誘導体化ヌクレオチド塩基を含み得る。核酸の骨格は、典型的にはRNAもしくはDNAで見られるように糖およびリン酸基、および/または一つもしくは複数の修飾もしくは置換糖および/または一つもしくは複数の修飾もしくは置換リン酸基を含み得る。リン酸基または糖の修飾は、安定性、酵素的分解に対する抵抗性、または他のいくつかの有用な特性を
改善するために導入され得る。「核酸」は、例えば、二本鎖、部分的二本鎖、または一本鎖であり得る。一本鎖である場合、核酸はセンス鎖またはアンチセンス鎖であり得る。加えて、核酸は環状または線状であり得る。「核酸」という用語は、本明細書中で使用される場合、好ましくはDNAおよびRNAを包含し、特にRNA、ゲノムRNA、cDNA、DNA、プロウイルス、プレmRNAおよびmRNAを含む。
本発明による核酸は、好適な発現宿主においてポリペプチドを発現させることができる一つもしくは複数の制御配列に機能的に連結された核酸構築物中に含まれ得る。核酸構築物という用語は、発現宿主に移される予定の核酸の人工的に構築されたセグメントを指す。機能的連結は、発現させようとする調節配列および配列が、前記発現を可能にするような方法で結合されている連結である。例えば、プロモータおよびORFなどの配列は、前記配列間の連結の性質が:(1)フレームシフト変異の導入をもたらさない、(2)ORFの転写を指示するプロモータの能力を妨害しない、(3)プロモータ配列から転写されるORFの能力を妨害しない場合に、機能的に連結されているということができる。したがって、「機能的に連結される」とは、プロモータなどの発現制御配列が、本明細書中で定義する核酸分子などの関心対象のコーディング配列の発現を効果的に制御するように、遺伝子構築物に組み込まれることを意味し得る。
核酸配列はまた、タグをコードする核酸フラグメントも含み得る。タグは、発現されたペプチドの精製(例えば、ポリ(His)タグ)、適切なタンパク質フォールディングを支援するため(例えば、チオレドキシン)、分離技術を支援するため(例えば、FLAG−タグ)、または酵素的もしくは化学的修飾を支援するため(例えば、ビオチンリガーゼタグ、FIAsh)、あるいは検出(例えば、AviTag、カルモジュリン−タグ、ポリグルタメートタグ、E−タグ、FLAG−タグ、HA−タグ、His−タグ、Myc−タグ、S−タグ、SBP−タグ、Softag1、Softag3、Strepタグ、TCタグ、V5タグ、VSV−タグ、Xpressタグ、Isopeptag、SpyTag、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−タグ、緑色蛍光タンパク質タグ、ハロ−タグ、マルトース結合タンパク質−タグ、Nus−タグ、チオレドキシン−タグまたはFc−タグ)などの様々な目的のために有用であり得る。本発明の文脈では、それらの主な目的は精製である。
本発明の別の態様は、本発明にかかる核酸、プロモータ、および転写、翻訳終止シグナル、および好ましくは、選択マーカーを含む組換え発現ベクターに関する。
「ベクター」という用語は、本明細書中で使用する場合、1つの環境から別の環境への実体の移動を可能にするかまたは容易にするツールである。挿入されたセグメントの複製をもたらすために別のDNAセグメントを挿入することができるのは、プラスミド、ファージ、またはコスミッドなどのレプリコンである。本願では、ベクターは、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子である。ベクターの1種は「プラスミド」であり、これは、環状二本鎖DNAループであって、その中にさらなるDNAセグメントをライゲートできる環状二本鎖DNAループを指す。ベクターの別のタイプはファージベクターである。ベクターの別のタイプはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム中にライゲートすることができる。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律増殖が可能である(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターおよびエピソームの哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが機能的に連結される遺伝子の発現を行うことができる。そのようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または簡単に「組換えベクター」)と称される。概して、組換えDNA技術において有用性を有する発現ベクターは、多くの場合、プ
ラスミドの形態である。本明細書において、プラスミドは最も一般的に用いられるベクターの形態であるので、「プラスミド」および「ベクター」は交換可能に用いることができる。
特定のベクターの選択において重要性を有する因子としては、特に:レシピエント宿主細胞の選択、ベクターを含むレシピエント細胞が認識され、ベクターを含まないレシピエント細胞から選択され得る容易さ;特定のレシピエント細胞において望まれるベクターのコピー数;ベクターにとって染色体に組み込まれるか、それともレシピエント細胞において染色体外にとどまるのが望ましいか;そして異なる種のレシピエント細胞間のベクターを「往復」させることができることが望ましいか否かが挙げられる。
発現ベクターは自律的または組込み型であり得る。組換え核酸は、宿主細胞中にプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミッドまたはウイルス粒子などの発現ベクターの形態で導入することができる。組換え核酸は、染色体外に維持することができるか、または細胞染色体DNAに組み込むことができる。発現ベクターは、選択された条件下で細胞生存率のために必要なタンパク質をコードする選択マーカー遺伝子(例えば、ウラシル生合成に必要な酵素をコードするURA3またはトリプトファン生合成に必要な酵素をコードするTRP1)を含んで、所望の核酸で形質転換された細胞の検出および/または選択を可能にすることができる。発現ベクターはまた、自律増殖配列(ARS)を含み得る。
組込み型ベクターは、概して、少なくとも第1の挿入可能なDNAフラグメント、選択マーカー遺伝子、および第2の挿入可能なDNAフラグメントの順次配置された配列を含む。第1および第2の挿入可能なDNAフラグメントは、各々、約200(例えば、約250、約300、約350、約400、約450、約500、または約1000以上)のヌクレオチド長であり、形質転換される宿主細胞種のゲノムDNAの一部と相同性であるヌクレオチド配列を有する。発現のための関心対象の遺伝子を含むヌクレオチド配列を、マーカー遺伝子の前または後を問わず、このベクターに第1および第2の挿入可能なDNAフラグメント間で挿入する。組込み型ベクターは、形質転換前に線形化して、関心対象のヌクレオチド配列の宿主細胞ゲノムへの組込みを容易にすることができる。
ベクターは様々な方法を使用して宿主細胞に導入することができる。外来DNAを宿主細胞にトランスフェクションする方法は当該技術分野で公知であり、手段(例えば、エレクトロポレーション、微粒子銃技術、マイクロインジェクション、レーザーフェクション(laserfection)、オプトインジェクション(opto−injection))または試薬(例えば、脂質、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー、DEAE−デキストラン、活性化デンドリマーまたは磁気ビーズ)を含み得、ウイルス媒介性であり得るか、または当業者に公知の任意の他の手段によるものであり得る。安定なトランスフェクションにおいて、細胞は、それらのゲノム中に外来DNAを組み入れている。一過性トランスフェクションにおいて、外来DNAはゲノム中に組込まれないが、遺伝子が限定された時間で発現される(24〜96時間)。「形質転換」という用語は、細菌および非動物真核細胞中の外来DNA移入を説明するために用いられる。これは、化学的にコンピテントな細菌の熱ショックによるか、エレクトロポレーションによるか、または当該技術分野で公知の他の形質転換法によって得ることができる。
「宿主細胞」という用語は、本明細書中で使用する場合、一つもしくは複数のポリヌクレオチド、好ましくはDNAが、トランスフェクションにより導入された細胞を指す。一例として、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞を含む真菌細胞、動物細胞、またはヒト細胞および非ヒト哺乳動物細胞を含む哺乳動物細胞であってよい。好ましくは、バイオセーフティレベル(BSL)1または2で使用することができる種由来の細菌細胞(細菌のBSLは、例えば、アメリカ合衆国公衆衛生局ガイドラインまたは作業時の生物学的製剤への
曝露に関連する危険性からの作業員の保護に関する1990年11月26日の理事会指令90/679/EEC、OJ No.L374、p.1によって決定される)、さらに好ましくはBacteroidetes門、なお一層好ましくはCapnocytophaga canimorsusまたはFlavobacterium johnsoniae、最も好ましくはCapnocytophaga canimorsusの細菌細胞である。
本明細書中で使用する場合、「プロモータ」という用語は、遺伝子が転写されることを可能にするDNA配列を指す。プロモータは、RNAポリメラーゼによって認識され、これは次に転写を開始する。したがって、プロモータは、RNAポリメラーゼによって直接結合するか、またはRNAポリメラーゼの動員に関与するかのいずれかであるDNA配列を含む。プロモータ配列はまた、「エンハンサー領域」も含み得、これは、タンパク質(すなわち、トランス作用因子)と結合して、遺伝子クラスター中で遺伝子の転写レベルを増強することができるDNAの一つもしくは複数の領域である。エンハンサーは、通常はコーディング領域の5’にあるが、プロモータ配列から分離することもでき、例えば、遺伝子のイントロン領域または遺伝子のコーディング領域内に対して3’側にあり得る。
プロモータは構成的または誘導性(条件的)プロモータであり得る。構成的プロモータは、その発現が標準的培養条件下で定常的であるプロモータであると理解される。誘導性プロモータは、一つもしくは複数の誘導の手がかりに応答するプロモータである。例えば、誘導性プロモータは、化学的に調節することができる(例えば、その転写活性が、アルコール、テトラサイクリン、ステロイド、金属、もしくは他の小分子などの化学的誘導剤の有無によって調節されるプロモータ)または物理的に調節することができる(例えば、その転写活性が、光または高温もしくは低温などの物理的誘導因子の有無によって調節されるプロモータ)。誘導性プロモータはまた、化学的または物理的手がかりによってそれ自身が直接調節される一つもしくは複数の転写因子によって間接的に調節され得る。
本明細書中で使用する場合、「終止シグナル」という用語は、転写ターミネータまたは翻訳終止コドンを指す。転写ターミネータは、転写の間のゲノムDNA中の遺伝子またはオペロンの末端を示す核酸配列のフラグメントである。この配列は、転写複合体からmRNAを放出し、それによって転写終結を媒介するプロセスを引き起こす、新たに合成されたmRNAにおけるシグナルを提供する。終止コドンは、アミノ酸をコードせず、それによってタンパク質の合成の終結のシグナルを送るmRNA内のヌクレオチドトリプレットである。RNAにおいて、この終止コドンは、UAG、UAAまたはUGAであり得、ここで、Uはウラシルであり、Aはアデニンであり、Gはグアニンである。
本明細書中で使用する場合、「選択マーカー」という用語は、細胞がこのマーカー遺伝子の発現に基づいて核酸構築物の異なる核酸を発現することができるか否かが判定できるマーカー遺伝子を指す。典型的には、宿主細胞の培養培地に添加される化合物に対する耐性を付与し、トランスフェクトされていない細胞を除去するが、トランスフェクトされた細胞を除去しない(正の選択、例えば、抗生物質に対する耐性)、マーカー遺伝子を使用する。例えば、選択抗生物質は、ジェネテシン、ゼオシン、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、エリスロマイシン、セフォキシチン、ゲンタマイシンまたはブラスチシジンであり得る。それらのコーディング配列は、典型的には、遺伝子材料を標的細胞に送達するために使用される核酸ベクターに組み込まれる。
さらに、本発明はさらに、
(a)以下のコンセンサス配列:XDD(配列番号68)、XDE(配列番号69)、XED(配列番号70)またはXEE(配列番号71)であって、Xが任意のアミノ酸であり得、Xが、K、S、TおよびAからなる群から選択され
、ただし、XがAである場合、XがQであるもののうちのいずれか1つによるアミノ酸配列を含むLESをコードする核酸配列;
(b)任意に、シグナルペプチドをコードする核酸配列であって、前記シグナルペプチドが、好ましくは、シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識されるlipoboxモチーフを含み、前記シグナルペプチドをコードする前記核酸配列が、前記LESをコードする前記核酸配列の5’に位置する、核酸配列;
(c)任意に、プロテアーゼ切断部位モチーフをコードする核酸配列であって、前記lipoboxモチーフをコードする前記核酸配列とは異なり、前記LESをコードする前記核酸配列の3’に位置する、前記プロテアーゼ切断部位モチーフをコードする前記核酸配列;および
(d)マルチクローニングサイトであって、前記LESおよび前記プロテアーゼ切断部位モチーフをコードする前記核酸の3’に位置する、前記マルチクローニングサイト
を含む組換え発現ベクターにも関する。
「マルチクローニングサイト」という用語は、本明細書中で使用する場合、複数の、好ましくは5、10、15または20の、互いに非常に接近した制限酵素認識部位を含むDNAの短いセグメントを指し、この場合、前記制限酵素認識部位は、典型的には前記マルチクローニングサイトを含むベクター内で1回だけ存在し得る。したがって、制限酵素が前記制限酵素認識部位のうちの1つを切断する場合、ベクターは直線化されるが、フラグメント化されない。
本発明はさらに、
(a)グラム陰性菌のリポタンパク質のシグナルペプチドをコードする核酸配列であって、前記シグナルペプチドが前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含み、前記lipoboxモチーフが前記アミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号203)からなり、シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識される核酸配列;
(b)以下のコンセンサス配列:
−Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ(配列番号197);
−BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ(配列番号198);または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOE(配列番号199)、好ましくはXKEOEE(配列番号200)
のいずれか1つ;
好ましくは、Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ
によるアミノ酸配列を有するリポタンパク質搬出シグナルをコードする核酸配列であって;
前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸配列が前記シグナルペプチドをコードする前記核酸配列の直接下流に位置する、核酸配列;
(c)任意に、プロテアーゼ切断部位モチーフをコードする核酸配列であって、前記プロテアーゼ切断部位モチーフが前記lipoboxモチーフとは異なり、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸配列および前記シグナルペプチドをコードする前記核酸配列の下流に位置する、核酸配列;ならびに
(d)マルチクローニングサイトであって、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸および前記シグナルペプチドをコードする前記核酸の下流に位置し、そして任意に、前記プロテアーゼ切断部位モチーフの下流に位置する、マルチクローニングサイト
を含む組換え発現ベクターにも関する。
特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルは全体として負に荷電している。
特定の実施形態において、前記LESは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67に記載れている配列のいずれか、好ましくは配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、46、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46または47に記載されている配列のいずれか、さらに好ましくは、配列番号1、2、16、17または18に記載されている配列のいずれかである。
特定の実施形態において、前記LESは、
−配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47、191、192、193または194、好ましくは配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47;
−配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38または39;あるいは
−配列番号49、50、51、63、64または66、好ましくは、配列番号49、50、51または63
に記載されている配列のいずれかである。
好ましい実施形態において、前記LESは、配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47、191、192、193または194、好ましくは配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46または47
に記載されている配列のいずれかである。
特定の実施形態において、前記N末端シグナルペプチドは、BacteroidetesのN末端シグナルペプチド、さらに好ましくはC.canimorsusのN末端シグナルペプチド、B.fragilisのN末端シグナルペプチドまたはFlavobacterium johnsoniaeのN末端シグナルペプチド、なお一層好ましくはC.canimorsusのN末端シグナルペプチドである。
特定の実施形態において、前記N末端シグナルペプチドは、C.canimorsusのシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)、なお一層好ましくはC.canimorsus 5のシアリダーゼ(SiaC)またはムチナーゼ(MucG)のシグナルペプチドである。
特定の実施形態において、前記N末端シグナルペプチドは、アミノ酸配列MNRIFYLLFAFVLLSACGS(配列番号195)を有するC.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)のシグナルペプチドまたはアミノ酸配列MKKIVSISLFFLISATIWLACK(配列番号196)を有するC.canimorsus 5のムチナーゼ(MucG)のシグナルペプチドである。
細菌宿主細胞は、当業者に公知のすべての細菌種由来の細菌細胞であり得る。好ましくは、バイオセーフティレベル(BSL)1もしくは2(細菌のBSLは、例えば、アメリカ合衆国公衆衛生局ガイドラインによって、または、作業時の生物学的製剤への曝露に関連する危険性からの作業員の保護に関する1990年11月26日の理事会指令90/679/EEC、OJNo.L374、p.1によって決定される)で使用できる細菌種である。
特定の実施形態において、本発明による宿主細胞は細菌細胞であり、好ましくはBacteroides門の細菌細胞であり、さらに好ましくはCapnocytophaga
canimorsusまたはFlavobacterium johnsoniae、なお一層好ましくはCapnocytophaga canimorsusである。
本発明はまた以下のコンセンサス配列:XDD(配列番号68)、XDE(配列番号69)、XED(配列番号70)またはXEE(配列番号71)であって、Xが任意のアミノ酸であり得、Xが、K、S、TおよびAからなる群から選択され、XがQである場合、XはAのみであり得るもののいずれか一つによるアミノ酸配列を含むLESの、宿主細胞中の機能的に活性なポリペプチドなどのポリペプチドの表面露出のための使用も提供し、前記ポリペプチドは前記宿主細胞と同じかまたは異なる生物に由来する。
さらに、本発明は、以下のコンセンサス配列:
−Xが任意のアミノ酸であり得、Jが、KおよびAからなる群から選択され、Zが、DおよびEからなる群から選択され;ただし、JがAである場合、XはQであるとする、XJZZ(配列番号197);
−Bが、SおよびTからなる群から選択され、Zが、DおよびEからなる群から選択され、そしてUが、D、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ(配列番号198);または
−XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくは、OはVである、XKEOE(配列番号199)、好ましくはXKEOEE(配列番号200)
のいずれか1つ;
好ましくは、Xが任意のアミノ酸であり得、Jが、KおよびAからなる群から選択され、Zが、DおよびEからなる群から選択され;ただし、JがAである場合、XはQであるとする、XJZZ
によるアミノ酸配列を含むリポタンパク質搬出シグナル、宿主細胞におけるポリペプチドの表面露出のための使用も提供し、前記ポリペプチドは同じかまたは前記宿主細胞とは異なる生物由来である。
特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルは全体で負に荷電している。
特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルは、前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドに由来するN末端脂質修飾システイン残基に直接隣接する位置にあり、前記lipoboxモチーフは、アミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号230)からなり、シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識可能である。
特定の実施形態において、前記リポタンパク質搬出シグナルおよび前記ポリペプチドはポリペプチド配列において天然では一緒に存在しない。
特定の実施形態において、前記LESは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67に記載される配列のいずれか、好ましくは配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、46、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46または47に記載される配列のいずれか、さらに好ましくは、配列番号1、2、16、17または18に記載される配列のいずれかである。
特定の実施形態において、前記LESは
−配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47、191、192、193または194、好ましくは配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46または47;
−配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38または39;あるいは
−配列番号49、50、51、63、64または66、好ましくは配列番号49、50、51または63
に記載される配列のいずれかである。
好ましい実施形態において、前記LESは、配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46、47、191、192、193または194、好ましくは配列番号16、17、18、19、20、40、41、42、43、44、45、46または47に記載される配列のいずれかである。
以前は死因となっていた多くの疾患が、現在はワクチン接種によって予防される。ワクチンは、特定の疾患に対する免疫を改善する生物学的製剤である。ワクチンは、典型的には疾患を引き起こす微生物(「抗原」)に似た薬剤を含み、多くの場合、前記微生物の弱毒化または死菌形態、その毒素またはその表面タンパク質の1つから作製される。ワクチンは非常に成功を収めているが、いくつかの既存のワクチンの有効性を増大させるため、またはマラリアやHIVなどの疾患を予防もしくは治療するための新しい戦略を見出す必要がある。アジュバントを使用して、免疫系を刺激して、ワクチンに対してより活発に応答し、したがって特定の疾患に対する増大した免疫を提供することによって、ワクチンの効果を修飾または増強することができる。特に、アジュバントは、抗原に対する免疫応答を増強および/または所望の免疫応答へ向けて調節する成分であり、今日では、DC上に存在する表面分子と相互作用する溶解性メディエータおよび抗原キャリア(例えば、LPS、Flt3L、熱ショックタンパク質)、APCに利用可能であるが、他の細胞タイプには利用可能でない機序によって取り込まれる微粒子状抗原(例えば、免疫刺激複合体、ラテックス、ポリスチレン粒子)および抗原提示細胞に感染するウイルス/細菌ベクター(例えば、ワクシニア、レンチウイルス、アデノウイルス)が含まれる。
生細菌細胞は、組換え抗原を送達するためのビヒクルとして使用することができる。遺伝子工学技術の発展によって、異なる細胞コンパートメントにおいて異種タンパク質を発現できる組換え型微生物の構築が可能になり、ウイルス、細菌、および寄生虫に対するワクチンの生産のためのそれらの抗原の可能性が改善された。例えば、病原体の弱毒化型または非病原性型由来のワクチンは、その病原体によって引き起こされる疾患の予防または
治療において非常に有効である。特に、異種抗原を発現するためにそのような弱毒化または非病原性病原体を改変できることは公知である。
キャリアを組換え抗原のソースとして使用することによって、反応原性である可能性がある病原体からの任意のさらなる産物の存在が排除される(例えば、細胞ワクチン中の潜在的な微量の共精製された産物)。細菌キャリアの使用は、低い生産バッチ調製コスト、他の処方と比べて増大した有効期間および安定性、容易な投与および低い送達費用などのいくつかの利点と関連する。
抗原送達系として好適であるとみなされ、良好な免疫原性プロフィールを示す細菌種の非限定例は、L.monocytogenes、Salmonella spp.、V.cholera、Shigella spp.、M.bovis BCG、Y.enterocolitica、B.anthracis、S.gordonii、Lactobacillus spp.およびStaphylococcus spp.である。
タイプIおよびタイプIII分泌系などの多数の細菌分泌系を使用して、関心対象の抗原を抗原提示細胞(APC)のサイトゾルに直接送達し、エフェクタおよびメモリーT−CD8+リンパ球の活性化に至る。あるいは、抗原を細菌の表面上に発現させて、免疫応答を誘導することができる。この露出のために、関心対象の抗原を典型的に発現させて、ベクターの表面タンパク質に融合させる(da Silva et al.,Live bacterial vaccine vectors:an overview,Braz.J.Microbiol,2014,45(4))。これらの融合タンパク質の数例としては、Lpp−OmpA、TolC、ならびにE.coliのFimHおよびKlebsiellaのPulAが挙げられる。
本発明に係るLESを、関心対象の抗原に導入するかまたは結合させることができ、細菌細胞の表面上での前記抗原の発現に至り、それによって抗原特性が増強される。したがって、本明細書中で記載するLESを含むペプチドまたはポリペプチドおよび好ましくは前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドであって、前記lipoboxモチーフがアミノ酸配列L(S/A)(A/G)Cからなり、本明細書中で記載するシグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識可能であるものは、ヒト共生または弱毒化病原菌細胞上に相同または異種エピトープを露出させて抗原特異的抗体応答を誘導するための生または不活化ワクチン開発のために使用できる。
さらに、関心対象のタンパク質の表面発現を達成するために、関心対象のタンパク質と、OmpAもしくはTolCなどのトランスポータータンパク質、またはFimHなどの複雑な細胞機構の一部であるタンパク質との融合タンパク質の形成は、宿主細菌の生理学的影響がないわけではない可能性がある。本発明に係る、LES配列のみ、および好ましくはN末端シグナルペプチドも含むタンパク質またはポリペプチドを使用して、細菌生理学に影響を及ぼすことなく細胞表面の充分な被覆を達成することができ、したがって、タンパク質の細胞表面発現を得るための既存の方法よりも有利である。
したがって、本発明の別の態様は、ワクチンを製造するための、本発明にかかるペプチドまたはポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞の使用である。
特定の実施形態において、本発明にかかるペプチドまたはポリペプチドは、抗原、またはそのエピトープである。
「抗原」という用語は、本明細書中で使用する場合、宿主生物の部分に対して免疫応答を誘導することができる任意のポリペプチド、またはそのフラグメントを指し、それに対する抗体の産生をもたらす。好ましくは、抗原は、200kDa以下、150kDa以下、100kDa以下、50kDa以下、さらに好ましくは、100kDa以下または50kDa以下のサイズを有する。好ましくは、抗原は少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個のアミノ酸、少なくとも9個のアミノ酸または少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは少なくとも10個のアミノ酸を含む。さらに、抗原は、好ましくは、その元の宿主(病原体)において、BacteroidetesまたはF.johnsoniaeのような非病原性Bacteroidetesにおいて表面露出している。
LESおよび/または古典的リポタンパク質のN末端シグナルペプチド、好ましくは前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフであって、本明細書中で記載されるように、アミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号203)からなり、シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識可能である前記lipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドを抗原に添加すると、前記抗原の表面発現がもたらされる。したがって、特定の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、相同または異種抗原であり、宿主細胞の表面に露出している。
宿主細胞は、好ましくは、関心対象である抗原を発現することができる細胞である。さらに、宿主細胞は、好ましくは一つもしくは複数の輸送系と、古典的リポタンパク質シグナルペプチド、好ましくは前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドを認識できるSPIIペプチダーゼとを含み、この場合、前記lipoboxモチーフは、アミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号203)からなり、本明細書中で記載するようなシグナルペプチダーゼタイプII、および/またはLESコンセンサスモチーフを特異的に認識可能であり、本発明に係る前記LESモチーフを含む抗原を細胞表面へ輸送することができる。好ましくは、宿主細胞は細菌細胞であり、さらに好ましくはグラム陰性菌細胞であり、なお一層好ましくはBacteroidetes門由来の細菌細胞である。
特定の実施形態において、2つ以上の異なる関心対象の抗原が、同じ宿主細胞の細胞表面で発現され、露出している。
本発明に係る表面抗原を発現する宿主細胞を使用して、動物においてポリクローナル抗体などの抗体を産生することができる。これは、血清中の抗原特異的抗体の高い発現レベルを上昇させるために、表面抗原を発現する前記宿主細胞を実験動物または家畜に注射することによって達成され、これは次に、動物から回収することができる。ポリクローナル抗体は血清から直接回収することができる一方で、モノクローナル抗体は、免疫化されたマウスからの抗体を分泌する脾臓細胞を不死化骨髄腫細胞と融合させて、細胞培養上清において特異的抗体を発現するモノクローナルハイブリドーマ細胞系を作製することによって産生される。
したがって、本発明の別の態様は、抗体産生のための、本発明にかかるポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞の使用であって、好ましくは、前記ポリペプチドは抗原であり、さらに好ましくは異種抗原である。
特定の実施形態において、2つ以上の異なるポリペプチドは、宿主細胞の表面上で発現される。好ましくは、前記ポリペプチドは抗原であり、さらに好ましくは異種抗原である。
特定の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、Bacteroidetes門、好ましくはCapnocytophaga canimorsusまたはFlavobacterium johnsoniae由来の細菌細胞の表面に露出される。
組換えタンパク質は生物学的および生物医科学全体にわたって使用される。組換えDNA技術によって、多量の所望のタンパク質を産生する細胞の開発が可能になる。組換え型発現によってタンパク質が標識され(例えば、His−タグ)、これによって精製が容易になり、天然源で存在するよりも高い割合で関心対象のタンパク質が発現される。通常、タンパク質精製プロトコルは一つもしくは複数の沈殿およびクロマトグラフィーステップを含み、所望のタンパク質を単離することが可能になる。関心対象のタンパク質が生物によって周囲の溶液中に分泌されない場合、各精製プロセスの最初のステップは、タンパク質を含有する細胞の破砕である。これは、例えば、繰り返し凍結および解凍すること、超音波処理、高圧均質化または界面活性剤および/もしくは酵素による透過処理によって達成することができる。残念なことに、プロテアーゼも、細胞溶解の間に放出され、これはタンパク質の溶液中での消化を開始する。したがって、反応を減速するために抽出物を迅速に取り扱い、冷却しなければならない。別法として、一つもしくは複数のプロテアーゼ阻害剤を細胞破砕の直前に溶解緩衝液に添加することができる。場合によって、高DNA含有量に起因する細胞ライセートの粘度を低下させるために、DNAseも添加する必要がある。
本発明に係るLESを含むポリペプチドおよび好ましくはさらに前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドであって、前記lipoboxモチーフがアミノ酸配列L(S/A)(A/G)Cからなり、本明細書中で記載するようなシグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識可能であるものは、サイトゾルまたは分泌された組換えタンパク質の入念な精製ステップを回避する純粋なタンパク質を直ちに産生することが可能になる新規システムとして使用することができる。これは、関心対象の遺伝子の5’領域において、(i)シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識されるlipoboxモチーフ、好ましくは前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドを含む古典的リポタンパク質シグナルペプチドであって、前記lipoboxモチーフがアミノ酸配列L(S/A)(A/G)C(配列番号203)からなり、本明細書中で記載するようなシグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識可能である前記リポタンパク質シグナルペプチド、(ii)本発明に係るLESおよび(iii)特異的プロテアーゼ(例えばTEV)の切断部位を有するリポタンパク質を生成するオリゴヌクレオチドをクローニングすることによって達成できる。次に、関心対象の遺伝子は、Bacteroidetes群の細菌(例えば、C.canimorsusまたは好ましくはFlavobacterium johnsoniaeのようなバイオセーフティクラスI生物)で発現される。培養後、関心対象のタンパク質で覆われた細菌を得る。関心対象のタンパク質は脂質アンカーによってOMに結合したままである。その後、細菌を洗浄することができ、またタンパク質不含緩衝液中に再懸濁することができる。次いで、導入された切断部位を切断する特異的プロテアーゼの使用によって組換えタンパク質を放出させる。細菌をペレット化したのち、関心対象のタンパク質およびプロテアーゼのみを含む溶液を得る。プロテアーゼは、例えば、イムノビーズの使用によって容易に除去することができる。したがって、純粋な組換えタンパク質は、本発明に係るポリペプチド、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞を使用する最小数の精製ステップによって得ることができる。
したがって、本発明の別の態様は、本発明にかかるポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞の、タンパク質産生および精製のため
の使用である。
細菌表面ディスプレイは、タンパク質の機能を、それをコードする遺伝子と関連付けることを可能にし、所望の特性を有する標的タンパク質(例えば、酵素基質、細胞特異的ペプチドまたはタンパク質結合ペプチド)を見出し、細胞特異的アフィニティリガンドを作製する、タンパク質工学技術である。ポリペプチドのライブラリは、細菌の表面上でディスプレイすることができ、その後、蛍光活性化細胞選別、磁気活性化細胞選別および/または反復選択手順を使用してスクリーニングすることができる。
したがって、本発明の別の態様は、本発明にかかるポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞の、細菌ディスプレイを実施するための使用である。
特定の実施形態において、2つ以上の異なるポリペプチドが宿主細胞の表面上で発現される。
酵素をそれらの細胞表面に露出させる細菌を固定することができ、固体支持体またはマトリックスへの酵素固定化のための代替策として使用することができる。細菌は、例えば、キャリア結合、自己凝集または捕捉により固定化することができる。細菌の表面上に露出した酵素は、関心対象の酵素が抽出するのが困難もしくは費用がかかる場合、または一連の酵素が反応において必要とされる場合に特に有用である。酵素をそれらの細胞表面に露出させる細菌は全細胞生体触媒として作用し得る。固定化された全細胞生体触媒によって触媒される反応は、任意に補助因子または完全な代謝経路を伴う、単一の酵素、複数の酵素系を含む反応であり得る。典型的には、酵素を露出させる細菌を、基質またはエフェクタまたは阻害剤分子を含む培地と接触させ、酵素的反応を起こさせる。固定化酵素を、抗生物質、飲料またはアミノ酸の工業生産を含む多くの用途のために、薬物送達系として、疾患の診断および治療において、食品の生産において(例えば、果実および野菜からのシロップ)、バイオディーゼルの生産において、下水および工業廃水の廃水処理において、繊維産業において(例えば、精錬、バイオポリッシング(bio−polishing))、衣類の汚れ除去のためなどで使用することができる。例えば、それらの細胞表面上でアミノ−アシラーゼを発現する細菌を、L−アミノ酸産生のために使用できる。
したがって、本発明の別の態様は、本発明にかかるポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞の、全細胞に基づく生体触媒適用のための使用であり、好ましくは、前記ポリペプチドは酵素またはその触媒活性なフラグメントである。
特定の実施形態において、2つ以上の異なるポリペプチドが宿主細胞の表面上に発現される。好ましくは、前記ポリペプチドは酵素、またはその触媒活性なフラグメントである。
バイオセンサーは、生物学的認識成分(「バイオレセプター」)を物理化学的検出器と組み合わせ、とりわけ、バイオプロセスモニタリング、食品中の残留薬剤の測定、創薬、糖尿病患者におけるグルコースモニタリングまたは環境への応用に有用である。生物学的認識成分は、それらの細胞表面上で関心対象のバイオレセプターを発現する、細菌などの宿主細胞であり得る。バイオレセプターとサンプル中の関心対象のアナライトとの相互作用は、サンプル中の標的アナライトの存在に比例して測定可能なシグナルを出力する物理化学的検出器によって測定することができる。バイオレセプター/アナライト相互作用は、抗体/抗原、酵素、核酸/DNA、細胞構造/細胞または生体模倣物質の相互作用に基づくものであり得る。
したがって、本発明の別の態様は、バイオセンサーを産生するための本発明にかかるポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞の使用である。
自身の細胞表面上に汚染物質を結合させることができるポリペプチドを発現する、細菌などの宿主細胞は、汚染物質を宿主細胞の細胞表面上に吸着させる、バイオ吸着(「バイオソープション」)と呼ばれるプロセスのために使用することができる。宿主細胞のバイオソープション能力は、前記宿主細胞の細胞表面上で発現されるポリペプチドのセットを修飾することによって増強することができる。例えば、関心対象の化学物質または重金属を特異的に認識して結合するポリペプチドを発現する細菌は、環境から関心対象の前記特異的有害化学物質または重金属を除去するために使用することができる。工業規模で、バイオソープションは、汚染物質を含有する廃液が供給される収着カラムを使用して実施されることが多い。
したがって、本発明の別の態様は、バイオソープション適用のための本発明にかかるポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸、組換え発現ベクターおよび組換え宿主細胞の使用である。
本発明さらに、本発明に係るポリペプチド、ポリペプチド前駆体、核酸または発現ベクターの使用であって、前記ポリペプチドおよび/または前記ポリペプチド前駆体が、前記ポリペプチド、前記ポリペプチド前駆体、前記核酸および/または前記発現ベクターを含む宿主細胞の表面に露出される抗原、もしくはそのエピトープ、または酵素、もしくはその触媒活性なフラグメントを含む、ならびに/あるいは前記核酸もしくは前記発現ベクターが、前記ポリペプチド、前記ポリペプチド前駆体、前記核酸および/または前記発現ベクターを含む宿主細胞の表面に露出される抗原、もしくはそのエピトープ、または酵素、もしくはその触媒活性なフラグメントをコードする前記使用にも関する。
特定の実施形態において、前記宿主細胞は、Bacteroidetes、好ましくはC.canimorsusまたはFlavobacterium johnsoniaeである。
本発明をさらに、以下の非限定的実施例で説明する。
材料および方法
1.菌種および成長条件
この研究で使用した菌種を表S1に列挙する。Escherichia coli株を溶原性ブロス(LB)中、37℃にて通例どおり成長させた。C.canimorsus株を、5%ヒツジ血液(Oxoid)を追加したハートインフュージョン寒天(Difco)プレート(SBプレート)で2日間、37℃にて5%COの存在下で通例どおり成長させた。プラスミドを選択するために、抗生物質を以下の濃度で添加した:E.coliについて100μg/mlアンピシリン(Amp)、50μg/mlカナマイシン(Km)およびC.canimorsusについて10μg/mlエリスロマイシン(Em)、10μg/mlセフォキシチン(Cfx)、20μg/mlゲンタマイシン(Gm)。
2.正常なヒト血清(NHS)の熱不活性化
NHSの10mlアリコート(S1−Liter;Millipore)を解凍し、56℃で1時間熱不活性化した。熱不活性化ヒト血清(HIHS)を次いで単回使用のアリコート中に分注し、−20℃で保存した。
3.siaCおよびmucG発現プラスミドの構築
この研究で使用したプラスミドおよびプライマーをそれぞれ表S2およびS3に列挙する。siaC(Ccan_04790)は、Q5 High−Fidelity DNAポリメラーゼ(M0491S;New England Biolabs)を使用してプライマー4159および7696で100ngのC.canimorsus 5ゲノムDNAから増幅させた。初期変性は98℃にて2分間、続いて30サイクルの増幅(98℃で30秒、52℃で30秒、そして72℃で2分)を行い、最後に72℃で10分間であった。精製後、NcoIおよびXhoI制限酵素を用いてフラグメントを消化し、プラスミドpMM47.Aにクローニングし、プラスミドpFL117を得た。プライマー7182および7625を増幅のために使用し、フラグメントをpPM5にクローニングする以外は同じようにしてmucG(Ccan_17430)をクローニングした。
部位特異的点変異は、siaCについてはプライマー4159および7696そしてmucGについては7182および7625と組み合わせてそれらの配列において所望の変異を有するフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いて各遺伝子のN末端部分およびC末端部分を別々に増幅することによって導入された。両PCRフラグメントを精製し、次いでPrimeStar HS DNAポリメラーゼ(R010A;Takara)を使用してPCRのために等量で混合した。初期変性は98℃で2分間、続いて30サイクルの増幅(98℃で10秒、60℃で5秒、そして72℃で3分30秒)、そして最後に72℃で10分であった。最終的PCR産物を次いで精製し、NcoIおよびXhoI制限酵素を使用して消化し、siaCおよびmucGについてそれぞれプラスミドpMM47またはpPM5にクローニングした。全ての挿入物における所望の点変異の組込みは配列決定によって確認した。siaCおよびmucG変異体を発現するプラスミドをC.canimorsus 5 siaCおよびmucG欠失株にそれぞれエレクトロポレーションによって移した。
4.SDS PAGEおよびウェスタンブロッティング
SBプレート上で2日間成長させた細菌を集め、PBSで1回洗浄し、そして約5×10細菌に相当する、1のOD600で1mlのPBS中に再懸濁させた。細菌を、3分間5,000gでの遠心分離によって集め、100μlのSDS PAGE緩衝液(1%SDS、10%グリセロール、50mMジチオトレイトール、0.02%ブロモフェノールブルー、45mM Tris、pH6.8)中に再懸濁させた。サンプルを5分間96℃で加熱し、5μlを12%SDS PAGEゲル上にロードした。ゲル電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜(1060008;GE Healthcare)上に移し、一次抗体としてウサギ抗SiaCまたは抗MucG抗血清、ならびに二次抗体としてブタ−HRP抗ウサギ(P0217;Dako)を使用してウェスタンブロットによって分析した。タンパク質は、LumiGLO(54−61−00、KPL)を製造業者の指示に従って使用して検出した。
5.ヒト唾液ムチン分解
新鮮なヒト唾液を健常なボランティアから集め、0.22μmフィルター(Millipore)を使用してろ過滅菌した。SBプレート上で2日間成長させた細菌を集め、PBSで1回洗浄し、そして1のOD600に設定した。100μlの細菌懸濁液(約5×10細菌)を次に100μlのヒト唾液と混合し、240分間37℃でインキュベートした。陰性対照として、100μlの唾液を100μlのPBSとインキュベートした。サンプルを次いで5分間13,000gで遠心分離し、上清を慎重に集め、10%SDS
PAGEゲル上にロードした。PNAアグルチニン(DIGグリカン分化キット、11210238001;Roche)を用いて製造業者の指示に従ってレクチン染色することによってムチン分解をモニタリングした。ムチン分解は、陰性対照と比較した、PNA
染色の損失または減少によって評価した。
6.外膜タンパク質精製
外膜タンパク質を、(Wilson et al.,Analysis of the
outer membrane proteome and secretome of Bacteroides fragilis reveals a multiplicity of secretion mechanisms.PloS one,2015 10(2):e0117732 and Kotarski et al.,Isolation and characterization of outer membranes of Bacteroides thetaiotaomicron
grown on different carbohydrates.J Bacteriol,1984.158(1):p.102−9)で記載されているようにして、いくつかの修飾を加えて、単離した。すべてのステップは、特に明記しない限り氷上で実施した。全てのスクロース濃度は10mM HEPES(pH7.4)中のw/vのパーセンテージとして表す。2つのプレートから集めた細菌を30mlの10mM HEPES(pH7.4)で2回洗浄した後、4.5mlの10%スクロース中に懸濁させた。細菌細胞を次いで、35,000psiにてフレンチプレスに2回通すことによって破砕した。ライセートを集め、16,500gにて10分間遠心分離して、不溶性物質をペレット化した。粗細胞抽出物を次いで、1.33mlの70%スクロースおよび6mlの37%スクロースから構成されるスクロース段階勾配の最上部に積層し、100,000g(28,000rpm)で70分間4℃にてSW41Tiローター中で遠心分離した。溶解性で濃縮された内膜タンパク質に対応する、37%スクロース溶液上および10%/37%界面の黄色物質を集め、10mM HEPES(pH7.4)で7mlに希釈した。濃縮された外膜タンパク質に相当する37%/70%界面での高密度バンドを集め、10mM HEPES(pH7.4)で7mlに希釈した。両フラクションからの膜を次いで、320,000g(68,000rpm)で90分間4℃にて70.1Tiローター中で遠心分離した。溶解性タンパク質に相当する黄色物質フラクションの上清を新しいチューブに移し、−20℃で保存した。内および外膜フラクションの混合物に相当する、同じチューブのペレットを1mlの40%スクロース中に再懸濁させ、そして−20℃で保存した。外膜タンパク質バンドの上清を捨て、ペレットを、1%Sarkozyl(L5777;Sigma−Aldrich)を含む7mlの10mM HEPES(pH7.4)中に再懸濁させ、一定して撹拌しながら室温にて30分間インキュベートした。外膜を次いで320,000gで60分間4℃にて70.1Tiローター中で遠心分離し、7mlの100mM NaCO(pH11)中に再懸濁させ、濃縮された外膜タンパク質に相当する界面を4℃でインキュベートし、回収し、10mM HEPES(pH7.4)で7mlに希釈した。両フラクション(fracy)からの膜、精製された外膜を200〜400μlのバッファリングされていない40mM Tris中に再懸濁させ、−20℃で保存した。全フラクションのタンパク質濃度を、製造業者の指示に従って、Bio−Rad Protein Assay(500−0006;Bio−Rad)を用いて評価した。全細胞ライセートおよび外膜フラクションの全タンパク質1〜2μgを12%SDS PAGEゲルにロードした。ゲル電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜上に移し、ウェスタンブロットによって分析した。
7.フローサイトメトリーおよび顕微鏡分析のための免疫蛍光標識
SBプレート上で2日間成長させた細菌を集め、PBSで1回洗浄し、1mlのPBS中に0.1のOD600となるように再懸濁させた。5μlの細菌懸濁液(約3×10細菌)を使用して、12ウェルプレート(665 180;Greiner Bio−one)中に10%熱不活性化ヒト血清(HIHS)を含有する2.5mlのDMEM(41965−039;Gibco)を接種した。5%COの存在下、37℃での23時間成長させた後に細菌を収集し、PBSで2回洗浄し、そして1mlのPBS中に再懸濁さ
せた。600nmでの光学密度を測定し、約3×10細菌に相当する等量を各株について集めた。細菌を、1%BSA(w/v)を含有する200μlのPBS中に再懸濁させ、そして30分間室温でインキュベートした。細菌を次いで遠心分離し、200μlの一次抗体希釈液(1:1500ウサギ抗SiaC抗血清または1:500ウサギ抗MucG抗血清)中に再懸濁させ、そして30分間室温でインキュベートした。遠心分離後、細菌細胞を3回洗浄した後、200μlの二次抗体1:500希釈液(Alexa Fluor 488に結合したロバ抗ウサギ;A−21206;Invitrogen)中に再懸濁し、30分間室温にて暗所でインキュベートした。遠心分離後、細菌細胞を3回洗浄した後、200μlの4%PFA(w/v)中に再懸濁させ、そして15分間室温で暗所にてインキュベートした。最後に、細菌を遠心分離し、1回洗浄し、700μlのPBS中に再懸濁させた。フローサイトメトリー分析のために、サンプルをBD FACSVerse(商標)(BD Biosciences)で直接分析し、そしてデータをBD FACSuite(商標)(BD Biosciences)で処理した。顕微鏡分析のために、標識した細菌をポリ−L−リジンでコーティングしたカバースリップの上に添加し、30分間室温で付着させた。細菌懸濁液の除去後、カバースリップを3回洗浄し、ガラス製スライド上に上下さかさまで載せ、そして室温で暗所にて一晩乾燥させた。Orca−Flash 4.0カメラ(Hamamatsu)およびZen 2012ソフトウェア(Zeiss)を備えたAxioscop(Zeiss)顕微鏡で全ての顕微鏡画像を撮影した。ImageJソフトウェアを用いて画像を処理した。対照として、ウサギ予備免疫血清を標識のために使用する以外は、上記のとおり並行してサンプルを調製した。
8.[H]パルミテートを用いたインビボ放射標識、免疫沈澱およびフルオログラフィー
6ウェルプレート(657 160;Greiner Bio−one)中、5mlの培地中で成長させる以外は、細菌を免疫蛍光標識のために上記のように一晩成長させた。18時間のインキュベーションの後、[9,10−H]パルミチン酸(32Ci/mmol;NET043;Perkin−Elmer Life Sciences)を50μCi/mlの最終濃度になるように添加し、インキュベーションを6時間継続した。細菌を次いで遠心分離により集め、1mlのPBSで2回洗浄し、ペレットをさらなる使用まで−20℃で保存した。ペレットを、1%Triton(商標)X−100(28817.295;VWR)を含む300μlのPBS中に再懸濁させ、10秒間ボルテックスして、細菌を溶解させた。ライセートを2分間14,000gで遠心分離し、そして上清を新しいチューブに移した。15μlのMucG抗血清を90分間室温にて一定して撹拌しながら添加することによって、MucGタンパク質を免疫沈降させた。並行して、20μlのプロテインAアガローススラリー(P3476;Sigma−Aldrich)を500μlの洗浄緩衝液(PBS中0.1%Triton(商標)X−100)で2回洗浄し、500μlの0.2%BSA(w/v)で30分間飽和させ、再度洗浄緩衝液で2回洗浄した。プロテインAアガローススラリーを次いで細胞ライセートに添加し、そして30分間室温にて一定して撹拌しながらインキュベーションを継続した。サンプルを次いで14,000gにて2分間遠心分離し、そして上清を捨てた。ペレットを500μlの洗浄緩衝液で5回洗浄した。50μlのSDS PAGE緩衝液を添加し、10分間95℃で加熱することによって、結合したタンパク質を溶出させた。サンプルを再度遠心分離し、上清を慎重にアガロースビーズから分離し、10%SDS PAGEゲルにロードした。ゲル電気泳動後、ゲルを25/65/10のイソプロパノール/水/酢酸溶液中で一晩固定し、その後、Amplify(NAMP100;Amersham)溶液中に30分間浸漬した。ゲルを真空乾燥し、所望のシグナル強度に達するまで、SuperRXオートラジオグラフィフィルム(Fuji)に13〜21日間曝露した。
リポタンパク質多重配列アライメント
C.canimorsus 5の表面プロテオームの一部であることが前以て特定され
ている40のリポタンパク質の配列(Manfredi,P.,et al.,The genome and surface proteome of Capnocytophaga canimorsus reveal a key role of glycan foraging systems in host glycoproteins deglycosylation.Mol Microbiol,2011.81(4):p.1050−60)をUniprotデータベース(Release 2015_12;UniProt: a hub for protein information.Nucleic Acids Res, 2015.43(Database
issue):p.D204−12)から検索した。さらに、細菌表面で検出されるがSPIシグナルを保有すると推測される2つのC.canimorsus 5タンパク質(F9YSD4およびF9YTT3)をPATRICデータベース(Wattam,A.R.,et al.,PATRIC, the bacterial bioinformatics database and analysis resource.Nucleic Acids Res, 2014.42(Database issue):p.D581−91)で再分析し、SPIIシグナルおよびひいては考慮されるリポタンパク質を有することが判明し、43の予想される表面露出リポタンパク質の最終的リスト(表S4)を示す。次に、LipoPソフトウェア(1.0Server、初期設定)を使用して各タンパク質のSPII切断部位を予測し、すべてのタンパク質は1つの明確なSPII切断部位を有することを示した。したがって、タンパク質配列をそれらの予想される成熟形態にトリミングした。+1システインの下流の完全長タンパク質配列または15のアミノ酸のいずれかに対応するリストを作成した。データセットを次に、MAFFTオンラインツール(バージョン7.268、初期設定)を使用して多重配列アライメントにかけ、Jalviewソフトウェア(バージョン2.9.0b2)を使用して出力を分析した。最終的なコンセンサス配列ロゴを、WebLogo(バージョン2.8.2、初期設定)を用いて描いた。ペリプラズムに面すると推定される17のC.canimorsus外膜リポタンパク質の配列(Manfredi,P.,et al.,The genome and surface proteome of Capnocytophaga canimorsus reveal a key role of glycan foraging systems in host glycoproteins deglycosylation.Mol Microbiol, 2011.81(4):p.1050−60)を同様に処理した(表S5)。22の事前に同定されたプロテイナーゼK感受性Bacteroides fragilisNCTC9343表面露出リポタンパク質の配列(Wilson MM,Anderson DE,&Bernstein HD(2015)Analysis of the outer membrane proteome and secretome of Bacteroides fragilis reveals a multiplicity of secretion mechanisms.PloS one 10(2):e0117732)を同様に処理した(表S6)。42のFlavobacterium johnsoniae UW101推定SusD様リポタンパク質をCAZYデータベースのPULDBで同定し(Terrapon N,Lombard V,Gilbert HJ,&Henrissat B(2015) Automatic prediction
of polysaccharide utilization loci in Bacteroidetes species.Bioinformatics 31(5):647−655.)、対応する配列をUniprotデータベースから抽出し、前記のように処理した(表S7)。
9.統計分析
全てのデータは平均±標準偏差(SD)として提示する。一元配置分散分析と、それに続いてWindows用GraphPad Prismバージョン5.00、GraphPadソフトウェア、La Jolla California USA、www.gra
phpad.comを用いたBonferroni試験によって統計分析を行った。0.05以下のP値は統計的に有意とみなした。
実験1:推定リポタンパク質搬出シグナルのインシリコ同定
特異的アミノ酸モチーフがリポタンパク質の細菌表面へのターゲティングの一因となるか否かを調べるために、本発明者らはC.canimorsus 5の表面で検出された43のリポタンパク質の配列を詳細に調べた(Manfredi,P.,et al.,The genome and surface proteome of Capnocytophaga canimorsus reveal a key role of glycan foraging systems in host glycoproteins deglycosylation.Mol Microbiol, 2011.81(4):p.1050−60)。本発明者らはまず、LipoPソフトウェアを用いてSPII切断部位を特定し、次にMAFFTを用いて成熟リポタンパク質を整列させた。いくつかの残基は、タンパク質配列全体にわたって保存されているようであるが、明確なモチーフを構成しないようであった(データは不掲載)。しかしながら、アスパルテート(D)またはグルタメート(E)残基のいずれかが続くリジン(K)残基は、位置+1でN末端システインにきわめて近接して保存されているようであった(図1A)。これは、+1システインを除く成熟リポタンパク質の15のN末端残基のみを使用してこの不変残基が分析を妨害することを回避した2回目のアラインメントによって精密化した(図2A)。同定されたコンセンサスモチーフは、Q−K−D−D−E(配列番号16)(図2B)に相当し、それぞれ16、72、48、44および23%の保存率であった(図2C)。したがって、それは、位置+3の正に荷電した残基(K)と、それに続く、脂質付加システインの直後の位置+4、+5および+6の2〜3個の負に荷電したアミノ酸(Dおよび/またはE)からなる。このモチーフが表面露出リポタンパク質に対して特異的であるか否かを調べるために、細菌表面で検出されず、したがってペリプラズムに面すると推定されたOMリポタンパク質に関して同じ分析を実施した。これらのリポタンパク質のうち、位置+3の保存されたDまたはE残基だけが同定され(図1B)、QKDDE(配列番号16)ペプチドが確かに真正のリポタンパク質搬出シグナル(LES)であり得ることを示唆した。
実験2:QKDDE配列はペリプラズムリポタンパク質SiaCの表面局在化を導く
この仮説を検証するために、本発明者らは、ペリプラズムに面することが前以て示されている外膜リポタンパク質であるC.canimorsusシアリダーゼ(SiaC)タンパク質の配列にQKDDE(配列番号16)モチーフを導入した(Mally,M.,et al.,Capnocytophaga canimorsus:a human
pathogen feeding at the surface of epithelial cells and phagocytes.PLoS Pathog,
2008.4(9):p.e1000164 and Renzi,F.,et al.,The N−glycan glycoprotein deglycosylation complex(Gpd)from Capnocytophaga canimorsus deglycosylates human IgG.PLoS Pathog,2011.7(6):p.e1002118)。そうするために、本発明者らは、wtSiaC、アシル化されないSiaCC17Gまたはwt残基18〜22の代わりに仮説の搬出シグナルを保有するSiaC+2QKDDE+6のいずれかをコードする遺伝子をC.canimorsus発現ベクターにクローニングし、また本発明者らはsiaC欠失株においてこれらの遺伝子を発現させた(図3A)。本発明者らはまず、3つのタンパク質の発現が類似していることを検証し(図3B)、次にインタクトな細胞でフローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡法を使用して、免疫蛍光によって表面露出をモニタリングした(図3CおよびD)。興味深いことに、wtSiaCおよびSiaCC17Gは予想どおりどちらもいずれかの方法によって細菌表面で検出不可能であったが、SiaC
+2QKDDE+6タンパク質の発現は、予想通り、フローサイトメトリーおよび顕微鏡法によって測定されるように強力な蛍光をもたらし(図2CおよびD)、タンパク質が表面に露出されていることを示した。これらの結果は、同定されたコンセンサス配列がリポタンパク質の表面への輸送を駆動するためにそのままで充分であることを意味した。
実験3:SiaCの表面局在化を可能にする最小コンセンサスの決定
本発明者らは次に、QKDDE(配列番号16)コンセンサスの5個の残基すべてが機能的LESを形成するために必要であるか否かを問うた。本発明者らはまず、最も保存されていないアミノ酸、すなわちQ18およびE22をアラニンで置換して、構築物SiaC+2AKDDE+6およびSiaC+2AKDDA+6を生成した(図3A)。タンパク質発現(図3B)をモニタリングした後、フローサイトメトリーおよび顕微鏡法は、両構築物が表面に局在化しているが(図3CおよびD)、SiaC+2QKDDE+6よりも若干程度が低いことを示した。このことは、KDDモチーフがリポタンパク質を表面に向かわせるために充分であり、したがって、+1システインの下流の位置+2および+6の残基がなくてもよいことを示した。本発明者らは次いで、両残基がコンセンサスで濃縮されていたので(図2C)、グルタメートがアスパルテートを機能的に置換可能(SiaC+2AKEEA+6)か否かを試験した(図3A)。図3CおよびDで示されるように、2つのグルタメートでのアスパルテートの置換は表面局在化を防止しなかったが、位置+4および+5でのグルタメートの低い保存と一致して蛍光の明らかな減少をもたらし(図2C)、C.canimorsus表面リポタンパク質において、アスパルテートがグルタメートよりも好ましい可能性があることを示す。注目すべきことに、全ての分析された変異体細胞は抗血清によって標識されたので、細菌表面でディスプレイされたSiaCの総量のみがこれらの変異によって影響を受け(図3C)、これらの変異がSiaCの表面への輸送の効率を減少させただけであることを示唆する。
本発明者らは次いで、KDまたはKE(SiaC+2AKDAA+6およびSiaC+2AKEAA+6)のいずれかのみを有する2つのSiaC構築物(図3A)を生成したが、わずか29.8±4.7(SiaC+2AKDAA+6)および16.3±2.5%(SiaC+2AKDAA+6)の細胞しかそれらの表面でタンパク質をディスプレイしなかったので(図3C)、これらの2つの残基だけが非常に劣悪なLESであることが判明した。加えて、蛍光強度は弱く、SiaC+2QKDDE+6基準について観察された強度のそれぞれ28.2および29.4%であった(図3C)。これらの構築物がOMへのそれらの輸送を損なわなかったことを検証するために、本発明者らは単離された外膜フラクションに関するウェスタンブロットによってタンパク質の局在化を確認した(図3E)。このことは、K(D/E)が最小LESを表すという彼らの仮説を裏付けた。これらの構築物はまた、機能的LESが全体的な負の電荷を必要とし得ることを示唆し、これはKDDがSiaCの表面への効率的な輸送を可能にする一方で、KDは可能にしないという事実によって示された(図3C)。
最後に、本発明者らは位置+3で高度に保存されたリジン残基の重要性を調べた(図3A)。意外なことに、K単独の置換(SiaC+2QADDE+6)は細菌表面のSiaCのディスプレイに対してごくわずかしか影響を及ぼさなかった(図3CおよびD)。しかしながら、KおよびQの両方の除去(SiaC+2AADDA+6)は、SiaC+2AKDDA+6と比較して蛍光強度の60%を超える減少をもたらした。グルタミン残基自体は重要ではなかったので(SiaC+2AKDDE+6、図3C)、+2Qまたは+3Kのいずれかが効率的なLESのために必要であると結論付けざるを得ない。
まとめると、これらのデータは、SiaCの表面局在化を可能にする最小搬出モチーフが正に荷電しているかまたは極性の残基に続く2つの負に荷電したアミノ酸(アスパルテートおよび/またはグルタメート)だけで構成されていることを示す。コンセンサスに基
づいて、本発明者らはしたがって、位置+2でのQの低い保存を考慮して、最小LESがK(D/E)であると定義した。
実験4:SiaC表面局在化に対する最小LESの位置効果
初期アライメントは、Kが位置+3で強力な保存(72%)を有し、位置+2で低い保存(13%)を有し(図2C)、位置+4で完全に存在しなかったことを示した。対照的に、DおよびEは位置+4、+5および+6で保存され(それぞれ、Dについて48、44および11%、Eについて20、13および23%)(図2C)、位置+3で完全に存在しなかった。このことは、搬出モチーフの組成だけでなく、+1システインに対するその位置も重要であることを示唆した。したがって、本発明者らは、KDDモチーフが+1システインから0、2、3または4個のアラニン残基によって隔てられている構築物を作製した(図4A)。4つのタンパク質が発現されたが(図4B)、いずれも、1つのアラニンだけが+1システインからKDDモチーフを分離していたものほど効率的に搬出されなかった(図4CおよびD)。興味深いことに、すべてのタンパク質はOMに固定され、したがって、これもまた、表面への輸送の最終ステップだけがこれらの変異により影響を受けることを意味する。(図4E)。
全体として、これらのデータは+1システインに対するLESの位置の重要性を強調する。
実験5:MucG搬出シグナルは表面露出SiaCを決定する
本発明者らは、自身の結果のロバスト性を確認するために、C.canimorsusの天然の表面露出リポタンパク質の搬出モチーフを分析した。この目的のために、本発明者らは前以て特性が決定されたPUL9コード化MucGタンパク質を選択した(Renzi, F., et al., Glycan−foraging systems reveal the adaptation of Capnocytophaga canimorsus to the dog mouth.MBio,2015.6(2):p.e02507)。本発明者らは、まず、パルミチン酸標識および細胞分画によって、MucGが実際にOMリポタンパク質であることをチェックし、本発明者らは免疫蛍光および酵素アッセイによってその表面局在化を確認した(図5A〜F)。図2にしたがって、本発明者らは、MucGのLESが+1システインの直接C末端に位置する、KKEVEEE(配列番号49)またはこの配列の一部(図5A)のいずれかであると仮定した。興味深いことに、仮定したMucG LESは、2つのリジン残基の存在およびグルタメート残基間の非極性バリンの存在のために、コンセンサス配列とは若干異なる。したがって、本発明者らは、仮定したMucG LES(図6A)からのSiaCの残基18〜22を残基22〜26(SiaC+2KKEVE+6)、22〜27(SiaC+2KKEVEE+7)または22〜28(SiaC+2KKEVEEE+8)を置換し、タンパク質の発現を確認した(図6B)。興味深いことに、フローサイトメトリーおよび顕微鏡法によって示されるように、SiaC+2KKEVEE+7およびSiaC+2KKEVEEE+8タンパク質のみが表面に局在化していた(図6CおよびD)。対照的に、SiaC+2KKEVE+6は細胞の14.2±3.2%だけで表面露出していたが(図6CおよびD)、それでもOMに固定されていた(図6E)。後者の構築物は、他の2つのものと同じくらい、前記LESが+1システインのC末端に直接位置するコンセンサスLES(X−K−(D/E)−X)(配列番号40〜47)から近いので、別の特徴が関与するはずである。この特徴は、2つだけの負に荷電した残基と組み合わせた2つの正に荷電した残基が存在して、全体的なシグナル領域を負に荷電するのではなく中性にすることである可能性が高い。この事実もまた、LESが負に荷電していなかった場合にSiaCが細胞表面に輸送されなかったことを示す彼らの以前の結果と一致した(図3CおよびD)。
まとめると、MucG搬出シグナルに関するデータは、2つの新しい情報を付け加える
:第一に、カノニカルLES(X−K−(D/E)−X)(配列番号191〜194)であって、前記LESが+1システインの直接C末端に位置するものは、小さな疎水性残基により中断されている場合があり、第二に、LESの全体的な電荷は負でなければならない。これは、+2および+6残基がコンセンサスモチーフの全体的な負の電荷と干渉しないという条件で、KDDがSiaCの表面局在化を促進するために充分であるという結論を補強する。
実験6:LESはBacteroidetes門で保存される
本発明者らは次に、同定されたLESが他のBacteroidetes種の表面リポタンパク質において存在するか否かを調べようとした。本発明者らはしたがって、最近公開されたB.fragilis surfome分析(Wilson,M.M.,D.E.Anderson,and H.D.Bernstein, Analysis of
the outer membrane proteome and secretome of Bacteroides fragilis reveals a multiplicity of secretion mechanisms.PLoS One,2015.10(2):p.e0117732)を活用し、表面で同定されたリポタンパク質のN末端に関してバイオインフォーマティック分析を実施した(図7A〜C)。N末端は、+1システインときわめて近接した負に荷電したアミノ酸を多く含むことが判明した(SDDDD、配列番号1)(図8A)。しかしながら、C.canimorsus LESにおいてとは異なり、アスパルテート残基は、+4および+5の代わりに主に位置+3および+4に位置していた。さらに、この領域は正に荷電したアミノ酸ではなく、極性残基に富んでいた。本発明者らは、C.canimorsusにおいて、グルタミンが位置+2に存在していたならば、リジン残基はアラニンで置換することができること(図3CおよびD)を示したので、C.canimorsus LESと強く矛盾しない。したがって、本発明者らは、SDDDD(配列番号1)がB.fragilisのLESを形成すると仮定する。C.canimorsusおよびB.fragilisは系統学的に遠いので、本発明者らはLESが、より密接に関連した種、すなわちFlavobacterium johnsoniaeにおいてより類似しいているかどうかを調べようとした。この細菌に関してsurfome分析は実施されていなかったので、本発明者らは、CAZYデータベースのPULDBから、全ての予想されたSusD−ホモログの配列、予想される表面露出リポタンパク質を回収した。本発明者らは次にこれらのリポタンパク質のN末端を分析し、コンセンサス配列SDDFE(配列番号2)(図7D〜F)を得た。興味深いことに、これらのリポタンパク質のN末端は、正に荷電した残基よりもむしろ極性残基に富んでいるという意味で、この配列は、C.canimorsusのLESに対してよりもB.fragilisのLESにより近いようである。しかしながら、負に荷電したアミノ酸は、依然としてタンパク質のこの領域において依然として優勢である。
実験7:B.fragilisおよびF.johnsoniae由来のLESはC.canimorsusにおいて機能的である
最後に、本発明者らはB.fragilisについて予測されるカノニカル配列(SDDDD、配列番号1)およびF.johnsoniaeについて予測されるカノニカル配列(SDDFE)(配列番号2)がC.canimorsus(図8A)において機能的LESを表すか否かを試験した。両配列をSiaCに挿入し、組換えタンパク質をC.canimorsus 5で試験した。図8CおよびDに示すように、両構築物は表面局在化されることが判明した。
まとめると、これらのデータは、C.canimorsusで同定されたLESが、他のBacteroidetes属でかなり保存されること、およびBacteroidesおよびFlavobacteriaからのLESがCapnocytophagaにお
いてリポタンパク質の表面輸送を可能にすることを示す。興味深いことに、+3Kの保存または負に荷電したアミノ酸の位置などのC.canimorsus LESの特徴のすべてが他のBacteroidetesで保存されるわけではない。しかしながら、3つの同定されたLESが正に荷電した、または極性の残基と、それに続く2または3個の負に荷電した残基についての要件を共有し、+1システインときわめて近接して全体的に負の電荷を与える。したがって、これは、グラム陰性菌のこの門におけるリポタンパク質搬出の共有された新規経路の証拠を裏付ける。
実験8:SiaCにおけるMucG LESのさらなる調査
本発明者らは、インシリコ分析から、MucG LESが22−KKEVEEE−28(配列番号49)(図5A)に相当すると推定し、これは次にこの配列をSiaCに導入した場合に確認された(図6)。興味深いことに、SiaCへの22−KKEVE−26(配列番号64)のみの挿入はタンパク質の非常に不充分な表面局在化をもたらし(図6CおよびD)、これは、負に荷電したLESの要件の彼らの以前の知見を裏付けた。実際、22−KKEVE−26(配列番号64)ペプチドは、2つの正電荷および2つの負電荷の存在のために電荷において中性であり、その一方で、22−KKEVEE−27(配列番号63)および22−KKEVEEE−28(配列番号49)は、どちらもSiaCの明らかな表面局在化をもたらし(図6)、さらなるグルタメート残基のために負に荷電している。
この仮説をさらに裏付けるために、本発明者らは、リジン残基のうちの1つをアラニンに変異させたSiaCKKEVEタンパク質の2つのバージョン(それぞれSiaC+2KAEVE+6およびSiaC+2AKEVE+6)を構築し、かくしてシグナルの全体の電荷を負にした(図9A)。発現を確認するためのウェスタンブロット分析(図9B)後に、本発明者らはこれらのSiaC変異体の細胞表面での存在をフローサイトメトリーによってモニタリングした(図9C)。興味深いことに、SiaC+2AKEVE+8変異体は細胞の79.3±3.4%で表面局在化(図9C)していたが、各細胞によってディスプレイされるSiaCの総量は、SiaC+2KKEVEE+7およびSiaC+2KKEVEEE+8構築物におけるよりも低かった(約25%)。これはSiaC+2KKEVE+6と比べて劇的な増加であり、1つの正に荷電したアミノ酸の除去が表面ターゲティングに実際に有利であることを裏付けた。ごく少量のSiaCしかこの関連では表面に輸送されなかったという事実は、グルタメートがアスパルテートよりもSiaC表面搬出の促進に効率的でないという彼らの以前の知見を反映し得る(図3CおよびD)。一方、SiaC+2KAEVE+6はSiaC+2KKEVE+6として挙動し、表面へはタンパク質はほとんど輸送されなかった(図9C)。この結果は、導入されたペプチドモチーフは全体的に負に荷電しているが、正に荷電したアミノ酸の位置(位置+3のK)は適切な表面局在化にとって重要であるらしいという事実を強調した。
この点をさらに検証するために、本発明者らは、SiaCからのアミノ酸18〜22をMucGのアミノ酸23〜27で置換し、付加されたMucGペプチドをSiaC+2KKEVE+6と比較して1つのアミノ酸だけシフトさせることによってさらなるハイブリッドタンパク質(SiaC+2KEVEE+6)を構築した。したがって、この結果、1つだけ正に荷電した残基を有するが、位置+3ではなく+2にKを有するシグナルペプチドが得られる(図9A)。SiaC+2KAEVE+6構築物と同様に、そして我々の以前の結果とよく一致して、この構築物は標識された細胞の47.9±1.9%の細胞表面でのみ局在化していた(図9C)。さらに、蛍光強度は低く、表面輸送に対するリジン残基の位置効果を裏付けた。
まとめると、SiaC中のMuG LESに関する本発明者らのデータは、SiaC中のコンセンサスLESに関して事前に得られた結果、すなわち、C.canimorsu
s LESの組成ならびに位置要件をさらに強化する。
実験9:モデル表面露出リポタンパク質 MucGにおけるLESの調査
本発明者らは次に、その天然の背景でMucG LESを分析し、それらをして、wtMucGタンパク質においてアラニンで残基22〜29を系統的に置換させようとした(図10A)。全変異体タンパク質が発現されたことを検証した後(図10B)、フローサイトメトリーによってMucG変異体の表面露出をモニタリングした(図10C)。K22、V25およびE27のアラニン置換はMucGの表面露出を著しく変更しなかったが、K23、E24、E26、E28またはP29Aの変異は露出の25〜50%の減少をもたらした。単一変異のいずれも表面局在化を完全に無効にすることはなく、このことは、おそらくは2つのリジンおよび4つのグルタメートの存在のために、MucGモチーフが重複性であることを示唆する。したがって、それらの残基の1つの変異は、きわめて近接した別のものの存在によって相殺され得る。K22の変異は、SiaCで得られたそれらの以前のデータや位置+2での残基がC.canimorsus表面リポタンパク質(図2BおよびC)において高度に保存されないという事実と一致して、表面露出を変更しなかった。驚くことではないが、V25A置換はMucG表面露出を変更せず、このことは、この残基が、MucG LES配列に関与しない可能性があることを意味する。この結果もまた、SiaCで前以て得られたデータと一致し、タンパク質の表面露出は付加されたコンセンサス配列中にバリン残基が無い状態で達成された(図3CおよびD)。
MucG LESは重複性であるので、本発明者らは複数の残基を同時に変異させることによって、二回目のセットとなるアラニン置換を実施した(図11A)。全構築物の正しい発現をチェックした後(図11B)、本発明者らはフローサイトメトリーによってそれらの表面局在化を分析した(図11C)。予想されるように、2つのリジン残基の置換(MucG+2AAEVEEE+8)の結果、細胞のわずか23.1±4.5%でMucG表面露出が得られた(図10C)。さらに、細胞のこのサブセットにおける蛍光強度はwt株(23.8%)と比較して著しく減少し、このことは、輸送効率もこの亜集団において強力に影響を受けたことを意味する。これは、+2セリンまたは+3リジンが表面搬出のために必要であることを示す事前データとよく一致している。
同じアプローチを使用して、負に荷電した残基(MucG+2KKAAAAA+8、MucG+2KKAAAEE+8およびMucG+2KKEVAAA+8変異)の役割を調査した(図11A)。MucG+2KKAAAEE+8およびMucG+2KKEVAAA+8はすべての分析した細胞において表面露出されていたが、蛍光強度の50%減少により反映されるように、表面でのそれらの存在量は減少した(図11C)。一方、MucG+2KKAAAAA+8は細胞のわずか41.9±6.9%で表面局在化し(図11C)この亜集団における蛍光強度はwt株と比べて減少した(24.5%)。これによって、負に荷電した残基は、それらの役割がSiaCで観察されたものよりは若干重要ではないようであっても、MucGの表面局在化に重要であることが確認された。
単一および多重アラニン置換から得られたデータを組み合わせると、至適MucG表面露出についての最小LESは、SiaCでの分析から推測されるように、ちょうど+1システインから下流のX−K−(D/E)(配列番号40〜47)のようである。
実験10:アルギニンはMucG LESにおいてリジンを機能的に置換できる
本発明者らの最初のインシリコ分析において、位置+3に位置するリジンはC.canimorsus表面露出リポタンパク質において最も保存された残基であった(図2BおよびC)。しかしながら、驚くべきことに、+2残基も変異しない限り、この残基の点変異は表面露出に影響を及ぼさなかった(図3CおよびD)。リジンの高い保存がアミノ酸自体の性質に関連づけられるか、またはその電荷のみに関連付けられるかを明らかにする
ために、本発明者らはMucG LESのリジン残基をアルギニン残基で置換した(図12A)。次いで、結果として得られる構築物である、MucG+2RREVEEE+8、MucG+2RAEVEEE+8およびMucG+2AREVEEE+8の発現をウェスタンブロットによって確認した(図12B)。興味深いことに、両リジンのアルギニンでの置換は、MucG+2RREVEEE+8の明らかな表面局在化をもたらしたが、wt株においてと同様に若干低かった(図12C)。これは、位置+3でのアルギニンがC.canimorsus表面リポタンパク質においてごくまれにしか見られないという事実によって説明がつく可能性が高い。これはまた、実際、表面標的化に重要なのはアミノ酸自体というよりもむしろアミノ酸の電荷であることを示す。驚くべきことに、MucG+2RAEVEEE+8およびMucG+2AREVEEE+8はまた、どちらも表面露出され、22−RAEVEEE−28(配列番号61)はMucG搬出に関してwt配列よりも一層強力であった(図12C)。一方、MucG+2AREVEEE+8はあまり効率的には輸送されなかった(図12C)。
まとめると、これらのデータは、位置+2または+3のアミノ酸の性質ではなくむしろ電荷がMucG表面露出に関与することを示している。
Figure 2019527560
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Figure 2019527560

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:C.canimorsusの選択マーカーは括弧内である。
Figure 2019527560

Figure 2019527560

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:制限部位に下線を施している
Figure 2019527560

Figure 2019527560

Figure 2019527560

:注釈をつけた翻訳開始部位を使用すると、Ccan_17430は細胞質タンパク質であることが予想されるが、翻訳が13コドン下流のAUGで開始する場合、それはリポタンパク質であると予想される。
:注釈をつけた翻訳開始部位を使用すると、Ccan_20120は細胞質タンパク質であると予想されるが、翻訳が18コドン下流のAUGで開始する場合、それはリポタンパク質であると予想される。
:LipoPソフトウェアによって予想されるSPII切断部位;数字は、シグナルペプチドの最後のアミノ酸の位置および+1システインの位置を示す。
:(Manfredi,P.,et al.,The genome and surface proteome of Capnocytophaga canimorsus reveal a key role of glycan foraging
systems in host glycoproteins deglycosylation.Mol Microbiol,2011.81(4):p.1050−60)で記載されるような、パーセンテージで表されたsurfome組成に対する定量的
寄与。
「/」は定量化されていないことを表す。
Figure 2019527560

Figure 2019527560

:LipoPソフトウェアによって予想されるSPII切断部位;数字は、シグナルペプチドの最後のアミノ酸の位置および+1システインの位置を示す。
Figure 2019527560

Figure 2019527560

:BF9343_1295の翻訳開始部位は15コドン下流に移動し、その結果、予想リポタンパク質が得られた。
BF9343_p20の翻訳開始部位は38コドン下流に移動し、その結果、予想リポタンパク質が得られた。
:LipoPソフトウェアによって予想されるSPII切断部位;数字は、シグナルペプチドの最後のアミノ酸の位置と+1システインの位置を示す。
Figure 2019527560

Figure 2019527560

Figure 2019527560

:LipoPソフトウェアによって予測されるSPII切断部位;数字は、シグナルペプチドの最後のアミン酸の位置および+1システインの位置を示す。

Claims (16)

  1. (a)前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドであって、前記lipoboxモチーフがアミノ酸配列L(S/A)(A/G)Cからなり、シグナルペプチダーゼタイプIIにより特異的に認識可能である、N末端シグナルペプチド;
    (b)以下のコンセンサス配列:
    −Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XがQであるとする、XJZZ;
    −BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ;または
    −XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOEE
    のいずれか1つによるアミノ酸配列を含むリポタンパク質搬出シグナルであって;
    ここで、前記リポタンパク質搬出シグナルは全体として負に荷電し、前記リポタンパク質搬出シグナルは前記シグナルペプチドの前記C末端に直接隣接して位置する、リポタンパク質搬出シグナル;
    (c)ポリペプチドであって、前記シグナルペプチドおよび前記リポタンパク質搬出シグナルのC末端に位置する前記ポリペプチド;ならびに
    (d)任意に、プロテアーゼ切断部位モチーフであって、前記lipoboxモチーフとは異なり、前記シグナルペプチドおよび前記リポタンパク質搬出シグナルのC末端ならびに前記ポリペプチドのN末端に位置する、前記プロテアーゼ切断部位モチーフ;
    を含むポリペプチド前駆体であって、
    前記シグナルペプチド、前記リポタンパク質搬出シグナルおよび前記ポリペプチドが、ポリペプチド配列において天然では一緒に存在しない、前記ポリペプチド前駆体。
  2. グラム陰性菌のリポタンパク質の前記N末端シグナルペプチドが、C.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)の前記シグナルペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド前駆体。
  3. 前記リポタンパク質搬出シグナルが、
    −配列番号16〜配列番号20または配列番号40〜47のいずれか1つ;
    −配列番号1〜配列番号15または配列番号25〜39のいずれか1つ;あるいは
    −配列番号49〜配列番号51または配列番号63のいずれか1つ
    によるアミノ酸配列から選択される、請求項1または2に記載のポリペプチド前駆体。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド前駆体をコードする核酸。
  5. 請求項4に記載の核酸と、プロモータならびに転写および翻訳終止シグナルと、任意に選択マーカーとを含む、組換え発現ベクター。
  6. (a)グラム陰性菌のリポタンパク質のシグナルペプチドをコードする核酸配列であって、前記シグナルペプチドが前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含み、前記lipoboxモチーフが前記アミノ酸配列L(S/A)(A/G)Cからなり、シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識される、核酸配列;
    (b)以下のコンセンサス配列:
    −Xが任意のアミノ酸であり得、JがKおよびAからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され;ただし、JがAである場合、XはQであるとする、XJZZ;
    −BがSおよびTからなる群から選択され、ZがDおよびEからなる群から選択され、UがD、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ;または
    −XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくはOがVである、XKEOEE
    のいずれか1つによるアミノ酸配列を有するリポタンパク質搬出シグナルをコードする核酸配列であって、
    前記リポタンパク質搬出シグナルが全体として負に荷電し、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸配列が、前記シグナルペプチドをコードする前記核酸配列の直接下流に位置する、核酸配列;
    (c)任意に、プロテアーゼ切断部位モチーフをコードする核酸配列であって、前記プロテアーゼ切断部位モチーフが前記lipoboxモチーフとは異なり、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸配列および前記シグナルペプチドをコードする前記核酸配列の下流に位置する、核酸配列;ならびに
    (d)マルチクローニングサイトであって、前記リポタンパク質搬出シグナルをコードする前記核酸および前記シグナルペプチドをコードする前記核酸の下流に位置し、任意に前記プロテアーゼ切断部位モチーフの下流に位置する、前記マルチクローニングサイト
    を含む、組換え発現ベクター。
  7. グラム陰性菌のリポタンパク質の前記N末端シグナルペプチドが、C.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)の前記シグナルペプチドである、請求項6に記載の組換え発現ベクター。
  8. 前記リポタンパク質搬出シグナルが
    −配列番号16〜配列番号20または配列番号40〜47のいずれか1つ;
    −配列番号1〜配列番号15または配列番号25〜39のいずれか1つ;あるいは
    −配列番号49〜配列番号51または配列番号63のいずれか1つ
    によるアミノ酸配列から選択される、請求項6または7に記載の組換え発現ベクター。
  9. 前記宿主細胞がBacteroidetes門の細菌細胞である、請求項5〜8のいずれか1項に記載のベクターを含む組換え宿主細胞。
  10. Bacteroidetes門の前記細菌細胞がCapnocytophaga canimorsusまたはFlavobacterium johnsoniaeである、請求項9に記載の宿主細胞。
  11. 以下のコンセンサス配列:
    −Xが任意のアミノ酸であり得、Jが、KおよびAからなる群から選択され、Zが、DおよびEからなる群から選択され、ただし、JがAである場合、XはQであるとする、XJZZ;
    −Bが、SおよびTからなる群から選択され、Zが、DおよびEからなる群から選択され、Uが、D、EおよびFからなる群から選択される、BZZUZ;または
    −XおよびOが任意のアミノ酸であり得、好ましくは、OがVである、XKEOEE;
    の1つによるアミノ酸配列を含むリポタンパク質搬出シグナルの使用であって、
    前記リポタンパク質搬出シグナルは全体的に負に荷電し、前記リポタンパク質搬出シグナルは、前記シグナルペプチドのC末端の一番端に位置するlipoboxモチーフを含むグラム陰性菌のリポタンパク質のN末端シグナルペプチドに由来するN末端脂質修飾システイン残基に直接隣接して位置し、前記lipoboxモチーフはアミノ酸配列L(S/A)(A/G)Cからなり、宿主細胞において、ポリペプチドの表面露出に関して、シグナルペプチダーゼタイプIIによって特異的に認識可能であり、前記ポリペプチドは前記宿主細胞と同じかまたは異なる生物に由来し、前記リポタンパク質搬出シグナルおよび前記ポリペプチドは、ポリペプチド配列において天然では一緒に存在しない、リポタンパク
    質搬出シグナルの使用。
  12. グラム陰性菌のリポタンパク質の前記N末端シグナルペプチドが、C.canimorsus 5のシアリダーゼ(siaC)またはムチナーゼ(MucG)の前記シグナルペプチドである、請求項11に記載の組換え発現ベクター。
  13. 前記リポタンパク質搬出シグナルが、
    −配列番号16〜配列番号20もしくは配列番号40〜47のいずれか1つ;
    −配列番号1〜配列番号15もしくは配列番号25〜39のいずれか1つ;または
    −配列番号49〜配列番号51または配列番号63のいずれか1つ
    によるアミノ酸配列から選択される、請求項11または12に記載の組換え発現ベクター。
  14. (i)請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド前駆体、
    (ii)請求項4に記載の核酸、
    (iii)請求項5〜8のいずれか1項に記載の発現ベクター;または
    (iv)請求項9もしくは10に記載の宿主細胞
    の、ワクチンを製造するため、抗体を産生するため、バイオソープション適用のため、バイオセンサーを製造するため、細菌ディスプレイを実施するため、全細胞に基づく生体触媒適用のため、またはタンパク質産生および精製のための使用であって、前記抗体産生が治療方法ではない、前記使用。
  15. 前記ポリペプチド前駆体が、前記ポリペプチド前駆体、前記核酸および/または前記発現ベクターを含む前記Bacteroidetes門の細菌細胞の前記表面に露出する抗原、もしくはそのエピトープ、または酵素、もしくはその触媒活性なフラグメントを含む、ならびに/あるいは前記核酸または前記発現ベクターが前記ポリペプチド前駆体、前記核酸および/または前記発現ベクターを含む前記Bacteroidetes門の細菌細胞の前記表面に露出する抗原、もしくはそのエピトープ、または酵素、もしくはその触媒活性なフラグメントをコードする、請求項14に記載のポリペプチド前駆体、核酸または発現ベクターの使用。
  16. Bacteroidetes門の前記細菌細胞が、Capnocytophaga canimorsusまたはFlavobacterium johnsoniaeである、請求項14または15に記載のポリペプチド前駆体、核酸、発現ベクターまたは宿主細胞の使用。
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