JP2019525911A - 長寿命アルファ溶血素ナノポア - Google Patents

長寿命アルファ溶血素ナノポア Download PDF

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Abstract

成熟野生型アルファー溶血素アミノ酸配列において、H35G、E111N、M113A、および/またはK147Nでの少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、アルファ溶血素の変異体を本明細書に記載する。特定の例において、変異体は、成熟アルファ溶血素アミノ酸配列において、E111S、M113S、T145S、K147S、またはL135Iでの置換を有してもよい。α−溶血素変異体にはまた、成熟野生型アルファ溶血素のH144Aでの置換および/または残基127〜131に渡る一連のグリシン残基もまた含まれてもよい。やはり提供するのは、アルファ溶血素変異体を含むナノポア集合体であって、増加したナノポア寿命を有する、前記ナノポア集合体である。さらに、増加した寿命を提供することに加えて、減少した通過時間(time−to−thread)を提供する変異体を提供する。したがって、本明細書に提供する変異体は、ナノポア寿命を増加させ、そしてかつ変異体を含むナノポアを用いて、DNA配列決定反応の効率および精度を改善する。

Description

[0001]マルチサブユニット・ナノポアに集合した際、核酸配列決定反応中のナノポアの配列決定寿命を増加させる、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)アルファ溶血素変異体に関する方法および組成物を開示する。マルチサブユニット・ナノポアに集合した際、配列決定効率および精度を改善する変異体もまた開示する。
背景
[0002]溶血素は、非常に多様な生物によって産生されるタンパク質毒素ファミリーのメンバーである。いくつかの溶血素、例えばアルファ溶血素は、膜中に孔またはチャネルを形成することによって、細胞膜(例えば宿主細胞膜)の完全性を破壊しうる。孔形成タンパク質によって膜中に形成される孔またはチャネルを用いて、膜の片側から反対側に、特定のポリマー(例えばポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を輸送することも可能である。
[0003]アルファ溶血素(α−HL、a−HLまたはアルファ−HL)は、宿主細胞膜中にチャネルを形成する自己集合溶血素毒素である。より具体的には、7つのアルファ溶血素単量体が、生物学的膜中で七量体ベータ−バレル孔に集合する。アルファ溶血素は、安定性が高く、そして一本鎖DNAを収容するには十分に広いが、二本鎖DNAを収容するほどには広くないナノポアに自己集合する(Kasianowiczら、1996)ことを含めて、多くの好適な特性を有する。これらの特性および他の特性に基づいて、アルファ溶血素は、ナノポア配列決定群の主な構成要素となってきている。
[0004]a−HL孔におけるDNA検出に関する以前の研究は、孔を通じてDNAが転位置する際のイオン電流シグネチャーを分析することに重点を置いており(Kasianowiczら、1996、Akesonら、1999、Mellerら、2001)、これは転位置速度(100mVで〜1nt/μs)およびイオン電流シグナルに生得的なノイズを考慮すると非常に困難な仕事であった。孔内部に永続的に係留されたプローブ分子の取り込みによって、ナノポアに基づくセンサーにおいて、より高い特異性が達成されてきている(Howorkaら、2001aおよびHoworkaら、2001b;Movileanuら、2000)。
[0005]ナノポアの使用は、DNA配列決定に革命を起こしたが、野生型アルファ溶血素を用いたナノポアは、短時間しか配列データを生成できない。したがって、配列決定反応中のアルファ溶血素ナノポアの寿命は、しばしば、配列決定反応の律速特徴として働く。さらに、野生型アルファ溶血素の使用は、しばしば、有意な数の欠失エラーを生じ、すなわち測定されない塩基が生じる。したがって、配列決定寿命の増加を含む、改善された特性を持つアルファ溶血素ナノポアが望ましい。
発明の概要
[0006]本明細書に提供するのは、ナノポアに取り込まれた際、DNA配列決定反応中のナノポアの寿命を改善する突然変異体ブドウ球菌アルファ溶血素(αHL)ポリペプチドである。例えば、本明細書記載の1またはそれより多い変異体を含むナノポアは、野生型アルファ溶血素からなるナノポアよりも、より長く持続し、そしてしたがってより多くの配列決定データを提供する。
[0007]特定の例示的側面において、α−溶血素(α−HL)変異体は、配列番号14(成熟野生型アルファ溶血素配列)のE111N、M113A、K147N、またはその組み合わせのいずれか1つに対応する位での置換を含む。α−溶血素変異体には、配列番号14のH35GまたはK135Gでの置換もまた含まれてもよい。α−溶血素変異体には、特定の側面において、配列番号14の残基126〜131で1またはそれより多いグリシン残基、例えば配列番号14の残基126〜131の全長に渡る一連のグリシン残基もまた含まれてもよい。例えば、変異体には、配列番号14の126〜131由来のグリシン残基スパンを生じる、配列番号14に示すアミノ酸配列のアミノ酸127〜129に対応するポリG置換もまた含まれてもよい。
[0008]特定の例示的側面において、α−溶血素変異体には、本明細書記載の置換の少なくとも1つを有するアミノ酸配列が含まれる一方、α−溶血素変異体の配列は、配列番号14に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、またはそれより高い配列同一性を有する。特定の例示的側面において、α−溶血素変異体には、配列番号17、18、19、20、または22に示すアミノ酸配列に、少なくとも80%、90%、95%、98%、またはそれより高い配列同一性を有するアミノ酸配列が含まれる。
[0009]特定の例示的側面において、本明細書記載のアルファ溶血素変異体は、例えば共有結合を通じて、DNAポリメラーゼに結合する。例えば、アルファ溶血素変異体は、SpyTag/SpyCatcher連結を通じてDNAポリメラーゼに結合する。特定の例示的側面において、アルファ溶血素変異体は、イソペプチド結合を通じてDNAポリメラーゼに結合する。
[0010]特定の例示的側面において、七量体ナノポア集合体を提供する。該集合体には、例えば、少なくとも1つまたはそれより多くの本明細書記載のアルファ溶血素変異体が含まれる。例えば、七量体ナノポア集合体には、本明細書記載のものなどの、配列番号14のE111N、M113A、K147N、またはその組み合わせの置換を有する1またはそれより多いアルファ溶血素タンパク質が含まれてもよい。特定の例示的側面において、七量体ナノポア集合体には、本明細書記載のものなどの、配列番号14のE111S、M113S、T145S、K147SまたはL135I、あるいはその組み合わせの置換を有する1またはそれより多いアルファ溶血素タンパク質が含まれてもよい。特定の例示的側面において、七量体ナノポアの7つのアルファ溶血素単量体の各々は、本明細書に記載されるようなアルファ溶血素変異体である。該変異体は、本明細書記載の同じ変異体または異なる変異体の組み合わせであってもよい。特定の例示的側面において、ナノポア集合体には、配列番号17、18、19、20、または22に示すアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、90%、95%、98%、またはそれより高い配列同一性を有する1またはそれより多い変異体が含まれる。ナノポアを組み立てるために、アルファ溶血素変異体を用い、そしてこれに頼ることによって、特定の例示的側面において、生じるナノポアの寿命は、天然アルファ溶血素からなる七量体ナノポア集合体に比較して、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれより多く増加する。
[0011]特定の例示的側面において、本明細書記載のアルファ溶血素変異体のいずれかをコードする核酸もまた提供する。例えば、核酸配列は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に由来してもよい(配列番号1)。特定の例示的側面において、本明細書記載の溶血素変異体のいずれか1つをコードする任意のこうした核酸を含むベクターもまた提供する。該ベクターで形質転換されている宿主細胞もまた提供する。
[0012]特定の例示的側面において、本明細書に記載するようなアルファ溶血素変異体を産生する方法を提供する。該方法には、例えば、適切な培地中で、アルファ溶血素変異体を産生するために適した条件下で、ベクターを含む宿主細胞を培養する工程が含まれる。次いで、当該技術に知られる方法を用いて、培養から変異体を得る。
[0013]特定の他の例示的側面において、ターゲット分子を検出する方法を提供する。該方法には、例えば、検出電極に隣接してまたはその近傍に配置される膜中に、本明細書に記載するようなナノポア集合体を含むチップを提供する工程が含まれる。次いで、該方法には、該ナノポアを通じて核酸分子を導く工程が含まれる。該核酸分子は、レポーター分子と会合し、そして該核酸分子にはアドレス領域およびプローブ領域が含まれる。該レポーター分子は、該プローブ領域で該核酸分子と会合し、そしてターゲット分子とカップリングする。該方法はさらに、前記核酸分子が前記ナノポアを通じて導かれる間に、該アドレス領域を配列決定して、前記アドレス領域の核酸配列を決定する工程を含む。該ターゲット分子は、コンピュータプロセッサの補助で、決定したアドレス領域の核酸配列に基づいて、同定される。
[0014]図1Aは、標準的H144Aナノポアに関する寿命評価を示すヒストグラムである。y軸は、x軸上のビン内の寿命を有した孔の数である。x軸は、電流が単一溶血素ナノポアのものに対応したチャネルを通過する100s間隔の数(回)である。この実験を7200s、または72回、行った。 [0015]図1Bは、図1Aと同じ実行に関するH144Aナノポアの障害の機構の分析を示すグラフである。この実験は7200s、または72回、行われ、図1Aと同じ実行に関するナノポアの障害の機構の分析に相当する。示すように、個々の孔をいくつかのカテゴリーにおいてドットとして示す。第一のカテゴリーは、実験終了まで存続した孔に関するものであり;障害の様式は、装置の停止であった。第二のカテゴリーは、電流が単一ナノポアの電流の>10xのレベルまで非常に迅速に増加したために、Genia FPGAによって停止されたセルに関するものであり、これは脂質二重層が破壊された一般的な指標である。第三のカテゴリーは、開口チャネル電流が、単一孔のものから、多数の単一孔のものに増加したが、10x電流未満である際のものである。これは、典型的には、元来は1つのみを宿していた二重層内に、2、3、4、5、6、7、8、または9のナノポアが挿入されたことを示す。ノイズのビンは、典型的には測定中の電流の不安定なレベルを生じる、何らかの未知の様式の障害が起こった孔を含有し;これらは電極の障害のためである可能性もある。最後のカテゴリーは、二重層であり、そしてナノポアを通過する電流はもはや測定されず、むしろ脂質二重層の特徴的に低いコンダクタンスが見られる状況に対応する。 [0016]図2Aは、N修正(N Rectification)ナノポアに関する寿命評価を示すヒストグラムである。y軸は、x軸上のビン内の寿命を有した孔の数である。x軸は、電流が単一N修正溶血素ナノポアのものに対応するチャネルを通過する100s間隔(回)の数である。この実験を3600s、または36回行った。 [0017]図2Bは、図2Aと同じ実行に関するN修正ナノポアの障害の機構の分析を示すグラフである。この実験は3600s、または36回、行われ、図1Aと同じ実行に関するナノポアの障害の機構の分析に相当する。この図において、個々の孔をいくつかのカテゴリーのドットとして示す。第一のカテゴリーは、実験終了まで存続した孔に関するものであり;障害の様式は、装置の停止であった。第二のカテゴリーは、電流が単一ナノポアの電流の>10xのレベルまで非常に迅速に増加したために、Genia FPGAによって停止されたセルに関するものであり、これは脂質二重層が破壊された一般的な指標である。第三のカテゴリーは、開口チャネル電流が、単一孔のものから、多数の単一孔のものに増加したが、10x電流未満である際のものである。これは、典型的には、元来は1つのみを宿していた二重層内に、2、3、4、5、6、7、8、または9のナノポアが挿入されたことを示す。ノイズのビンは、典型的には測定中の電流の不安定なレベルを生じる、何らかの未知の様式の障害が起こった孔を含有し;これは電極の障害のためである可能性もある。最後のカテゴリーは、二重層であり、そしてナノポアを通過する電流はもはや測定されず、むしろ脂質二重層の特徴的に低いコンダクタンスが見られる状況に対応する。 [0018]図3Aは、N修正ナノポアに関する寿命評価を示すヒストグラムである。y軸は、x軸上のビン内の寿命を有した孔の数である。x軸は、電流が単一N修正溶血素ナノポアのものに対応するチャネルを通過する100s間隔(回)の数である。この実験を18000s、または180回行った。 [0019]図3Bは、図3Aと同じ実行に関するN修正ナノポアの障害の機構の分析を示すグラフである。この実験は3600s、または36回、行われ、図1Aと同じ実行に関するナノポアの障害の機構の分析に相当する。この図において、個々の孔をいくつかのカテゴリーのドットとして示す。第一のカテゴリーは、実験終了まで存続した孔に関するものであり;障害の様式は、装置の停止であった。第二のカテゴリーは、電流が単一ナノポアの電流の>10xのレベルまで非常に迅速に増加したために、Genia FPGAによって停止されたセルに関するものであり、これは脂質二重層が破壊された一般的な指標である。第三のカテゴリーは、開口チャネル電流が、単一孔のものから、多数の単一孔のものに増加したが、10x電流未満である際のものである。これは、典型的には、元来は1つのみを宿していた二重層内に、2、3、4、5、6、7、8、または9のナノポアが挿入されたことを示す。ノイズのビンは、典型的には測定中の電流の不安定なレベルを生じる、何らかの未知の様式の障害が起こった孔を含有し;これらは電極の障害のためである可能性もある。最後のカテゴリーは、二重層であり、そしてナノポアを通過する電流はもはや測定されず、むしろ脂質二重層の特徴的に低いコンダクタンスが見られる状況に対応する。 [0020]図4Aは、1つのアルファ溶血素/ファイ29 DNAポリメラーゼ・コンジュゲート、および配列番号4に示すように、各々、H35G+V149K+H144Aで置換を有する6つのアルファ溶血素変異体(すなわち1:6の比)を含む、七量体ナノポアと比較した際の、対照七量体ナノポアに関する通過時間(time−to−thread)を示すグラフである。対照ナノポア(「WT」と表示)には、1:6の比のアルファ溶血素/ファイ29 DNAポリメラーゼ・コンジュゲート対6つの野生型アルファ溶血素が含まれる。これらのデータは、孔がポリメラーゼおよびテンプレートDNAの両方を有したことを示す、タグ化ヌクレオチドを捕捉した多くの孔から組み合わされている。各タグ(A、C、G、Tに対応)に関して示されるように、変異体アルファ溶血素を含むナノポアに関する通過速度(threading rate)は、対照ナノポアに比較して有意に増加し、したがって、通過時間が改善された(減少した)ことが明らかであった。C−ヌクレオチドタグの場合、通過速度は、221.62s−1(標準偏差13.6s−1)から663.15(標準偏差172s−1)に増加した。他のヌクレオチドタグは、図1に示すのと類似の増加を示した。 [0021]図4Bは、図4Aを生成するために用いた生データを示すグラフである。図2は、本発明者らのACカップリング系のアナログ・デジタルコンバータ(ADC)値に相当し、これは、適用バイアスが正である(175ADC単位)場合、および適用バイアスが負である(45ADC単位)場合の開口チャネルに関するADC値を生じさせる。タグ化ヌクレオチドが孔内を通過する際、正バイアス適用中のADC値は、開口チャネルレベルから145ADC単位に減少する。このいくつかの例が、図4Bの拡大下部パネル中の1020〜1040sに示される。適用バイアスが負である場合、タグ化ヌクレオチドは孔から出ていき、これが、負の開口チャネルレベルが有意に減少しない理由である。通過速度を計算するため、通過レベルに到達するADC値に関する正のバイアス期間各々に必要な時間分布を、その直前のサイクルが通過ADC値で終了したサイクルに関してカウントする。次いで、このヒストグラムを、標準的な単一指数関数に適合させ、この減衰率が通過速度である。
[0022]本明細書に別に定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する業の一般の当業者の1人によって通常理解されるのと同じ意味を有する。Singletonら, DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 第2版, John Wiley and Sons, New York (1994)、およびHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)は、本発明で用いる用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。本明細書に記載するものと類似かまたは同等のいかなる方法および材料も本発明の実施または試験に使用可能であるが、好ましい方法および材料を記載する。実施者は、当該技術分野の定義および用語に関しては、特に、Sambrookら、1989、およびAusubel FMら、1993を参照されたい。本発明は、記載する特定の方法論、プロトコル、および試薬には限定されないことが理解される、これは、これらが多様でありうるためである。
[0023]数値範囲は、範囲を定義する数を包含する。用語「約」は、値のプラスまたはマイナス10パーセント(10%)を意味するよう用いられる。例えば、「約100」は、90〜110の間の任意の数を指す。
[0024]別に示さない限り、それぞれ、核酸は、5’から3’方向に、左から右に記述され;アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向へ、左から右に記述される。
[0025]本明細書に提供する見出しは、本発明の多様な側面または態様の限定ではなく、こうした側面または態様は、本明細書を全体として参照することによって得られうる。したがって、直後に定義する用語は、本明細書を全体として参照することによって、より完全に定義される。
定義
[0026]アルファ溶血素:本明細書において、「アルファ溶血素」、「α−溶血素」、「a−HL」および「α−HL」は、交換可能に用いられ、そして七量体の水充填膜貫通チャネル(すなわちナノポア)に自己集合する単量体タンパク質を指す。文脈に応じて、該用語はまた、7つの単量体タンパク質によって形成される膜貫通チャネルを指すことも可能である。
[0027]アミノ酸:本明細書において、用語「アミノ酸」は、最も広い意味で、ポリペプチド鎖内に取り込まれうる任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの態様において、アミノ酸は、一般構造HN−C(H)(R)−COOHを有する。いくつかの態様において、アミノ酸は天然存在アミノ酸である。いくつかの態様において、アミノ酸は合成アミノ酸であり;いくつかの態様において、アミノ酸はD−アミノ酸であり;いくつかの態様において、アミノ酸はL−アミノ酸である。「標準的アミノ酸」は、天然存在ペプチド中に一般的に見られる20の標準的L−アミノ酸のいずれかを指す。「非鎖アミノ酸」は、合成的に調製されたか、または天然供給源から得られたかにかかわらず、標準的アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書において、「合成アミノ酸」または「非天然アミノ酸」は、限定されるわけではないが、塩、アミノ酸誘導体(例えばアミド)、および/または置換を含む、化学的修飾アミノ酸を含む。ペプチド中のカルボキシ末端および/またはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸は、その活性に不都合に影響を及ぼすことなく、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または他の化学薬品での置換によって修飾されていてもよい。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与していてもよい。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と交換可能に用いられ、そして遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指してもよい。遊離アミノ酸またはペプチドの残基を指すかどうかは、該用語が用いられる文脈から明らかであろう。すべてのアミノ酸残基配列は、その左および右方向が、アミノ末端からカルボキシ末端の慣用的な方向である式によって表されることに注目すべきである。
[0028]塩基対(bp):本明細書において、塩基対は、二本鎖核酸中のアデニン(A)とチミン(T)、アデニン(A)とウラシル(U)またはシトシン(C)とグアニン(G)の相互関係を指す。
[0029]相補性:本明細書において、用語「相補性」は、2つのポリヌクレオチド鎖の領域間、または塩基対形成を通じた2つのヌクレオチド間の配列相補性の広い概念を指す。アデニン・ヌクレオチドは、チミンまたはウラシルであるヌクレオチドと、特異的水素結合(「塩基対形成」)を形成可能であることが知られる。同様に、シトシン・ヌクレオチドは、グアニン・ヌクレオチドと塩基対形成可能であることが知られる。
[0030]発現カセット:「発現カセット」または「発現ベクター」は、ターゲット細胞における特定の核酸の転写を可能にする一連の具体的な核酸要素を含む、組換え的または合成的に生成される核酸構築物である。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス、または核酸断片に取り込まれてもよい。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分には、他の配列の中に、転写しようとする核酸配列およびプロモーターが含まれる。
[0031]異種:「異種」核酸構築物または配列は、発現される細胞に対して天然ではない配列の部分を有する。異種は、調節配列に関しては、その発現を現在制御している同じ遺伝子を、天然には制御するように機能しない調節配列(すなわちプロモーターまたはエンハンサー)を指す。一般的に、異種核酸配列は、存在している細胞またはゲノム部分に内因性ではなく、そして感染、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等によって細胞に添加されている。「異種」核酸構築物は、天然細胞で見られる調節配列/DNAコード配列組み合わせと同じまたは異なる、調節配列/DNAコード配列の組み合わせを含有してもよい。
[0032]宿主細胞:用語「宿主細胞」によって、ベクターを含有し、そして発現構築物の複製、ならびに/あるいは転写または転写および翻訳(発現)を補助する細胞を意味する。本発明で使用するための宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)または枯草菌(Bacillus subtilus)、あるいは真核細胞、例えば酵母、植物、昆虫、両生類、または哺乳動物細胞であってもよい。一般的に、宿主細胞は、原核、例えば大腸菌である。
[0033]寿命:本明細書において、用語「寿命」または「ナノポア寿命」は、一般に、ナノポアが配列決定反応において機能して、有用な配列決定データを提供する時間の全長を指すように用いられる。より具体的には、ナノポアの寿命は、開口チャネル電流レベルによって決定されるように、実験開始およびナノポアが適切に機能するのをやめたときの間の時間を測定することによって、測定可能である。
[0034]単離:「単離」分子は、例えば天然環境において、通常会合している少なくとも1つの他の分子から分離されている核酸分子である。単離核酸分子には、核酸分子を通常発現する細胞に含有される核酸分子が含まれるが、該核酸分子は染色体外に存在するか、または天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
[0035]修飾アルファ溶血素:本明細書において、用語「修飾アルファ溶血素」は、別の(すなわち親)アルファ溶血素から生じたアルファ溶血素を指し、そして親アルファ溶血素に比較して、1またはそれより多いアミノ酸改変(例えばアミノ酸置換、欠失、または挿入)を含有する。いくつかの態様において、本発明の修飾アルファ溶血素は、天然存在または野生型アルファ溶血素から生じるかまたは修飾されている。いくつかの態様において、本発明の修飾アルファ溶血素は、限定されるわけではないが、キメラアルファ溶血素、融合アルファ溶血素または別の修飾アルファ溶血素を含む、組換えまたは操作アルファ溶血素から生じるかまたは修飾されている。典型的には、修飾アルファ溶血素は、親アルファ溶血素に比較して、少なくとも1つの変化した表現型を有する。
[0036]突然変異:本明細書において、用語「突然変異」は、限定されるわけではないが、置換、挿入、欠失(一部切除(truncation)を含む)を含む、親配列に導入される変化を指す。突然変異の結果には、限定されるわけではないが、親配列によってコードされるタンパク質には見られない、新規特徴、特性、機能、表現型または特質の生成が含まれる。
[0037]ナノポア:用語「ナノポア」は、本明細書において、一般的に、膜中に形成されるかまたは別の方式で提供される孔、チャネル、または通路を指す。膜は、有機膜、例えば脂質二重層、または合成膜、例えばポリマー素材で形成される膜であってもよい。膜は、ポリマー素材であってもよい。ナノポアは、検出回路または検出回路にカップリングした電極、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)または電界効果トランジスタ(FET)回路に隣接してまたはその近傍に配置されてもよい。いくつかの例において、ナノポアは、0.1ナノメートル(nm)から約1000nmの桁の特徴的な幅または直径を有する。いくつかのナノポアはタンパク質である。アルファ溶血素は、タンパク質ナノポアの一例である。
[0038]核酸分子:用語「核酸分子」には、RNA、DNA、およびcDNA分子が含まれる。遺伝暗号の縮重の結果として、所定のタンパク質、例えばアルファ溶血素および/またはその変異体をコードする多数のヌクレオチド配列を産生可能であることが理解されるであろう。本発明は、変異体アルファ溶血素をコードする、すべてのありうる変異体ヌクレオチド配列を意図し、これらはすべて、遺伝暗号の縮重を仮定して可能である。
[0039]プロモーター:本明細書において、用語「プロモーター」は、下流遺伝子の転写を指示するように機能する核酸配列を指す。プロモーターは、一般的に、ターゲット遺伝子が発現される宿主細胞に適切であろう。プロモーターは、他の転写および翻訳制御核酸配列(「調節配列」ともまた称される)とともに、所定の遺伝子を発現するために必要である。一般的に、転写および翻訳制御配列には、限定されるわけではないが、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列、ならびにエンハンサーまたは活性化因子配列が含まれる。
[0040]精製された:本明細書において、「精製された」は、分子が、含有される試料重量の少なくとも95%、または重量の少なくとも98%の濃度で試料中に存在することを意味する。
[0041]精製する:本明細書において、用語「精製する」は、一般的に、トランスジェニック核酸またはタンパク質含有細胞を、生化学精製および/またはカラムクロマトグラフィに供することを指す。
[0042]タグ:本明細書において、用語「タグ」は、原子または分子、あるいは原子または分子のコレクションであってもよい、検出可能部分を指す。タグは、光学的、電気化学的、磁気的、または静電的(例えば誘導性、容量性)シグネチャーを提供してもよく、このシグネチャーをナノポアの補助で検出してもよい。典型的には、ヌクレオチドがタグに付着されている場合、これは「タグ化ヌクレオチド」と称される。タグは、リン酸部分を通じてヌクレオチドに付着してもよい。
[0043]通過時間:用語「通過時間」または「TTT」は、ポリメラーゼ−タグ複合体または核酸鎖がタグをナノポアのバレル内に通過させるためにかかる時間を意味する。
[0044]変異体:本明細書において、用語「変異体」は、親タンパク質に比較した際、改変された特性、例えば改変されたイオン電導度を示す修飾タンパク質を指す。
[0045]変異体溶血素:用語「変異体溶血素遺伝子」または「変異体溶血素」は、それぞれ、黄色ブドウ球菌由来のアルファ溶血素遺伝子の核酸配列が、コード配列を除去し、付加し、そして/または操作することによって改変されているか、あるいは発現されるタンパク質のアミノ酸配列が、本明細書記載の発明と一致して修飾されていることを意味する。
[0046]ベクター:本明細書において、用語「ベクター」は、異なる宿主細胞間のトランスファーのために設計されている核酸構築物を指す。「発現ベクター」は、外来(foreign)細胞において、異種DNA断片を取り込みそして発現する能力を有するベクターを指す。多くの原核および真核発現ベクターが商業的に入手可能である。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識内である。
[0047]野生型:本明細書において、用語「野生型」は、天然存在供給源から単離された際、その遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する、天然遺伝子または遺伝子産物を指す。
[0048]パーセント相同性:用語「%相同性」は、本明細書において、本明細書の用語「%同一性」と交換可能に用いられ、そして配列整列プログラムを用いて整列された際、本発明のポリペプチドのいずれか1つをコードする核酸配列または本発明のポリペプチドのアミノ酸配列間の核酸またはアミノ酸配列同一性の度合いを指す。例えば、本明細書において、80%相同性は、定義されるアルゴリズムによって決定される80%配列同一性と同じことを意味し、そしてしたがって、所定の配列の相同体は、所定の配列の全長に渡って、80%より高い配列同一性を有する。配列同一性の例示的レベルには、限定されるわけではないが、所定の配列、例えば本明細書に記載するような、本発明のポリペプチドの任意の1つに関するコード配列に対する、80、85、90、95、98%またはそれより高い配列同一性が含まれる。
[0049]2つの配列間の同一性を決定するために使用可能な例示的なコンピュータプログラムには、限定されるわけではないが、インターネット上で公的に利用可能である、一組のBLASTプログラム、例えばBLASTN、BLASTX、およびTBLASTX、BLASTPおよびTBLASTNが含まれる。Altschulら、1990およびAltschulら、1997もまた参照されたい。
[0050]典型的には、所定の核酸配列を、GenBank DNA配列および他の公的データベース中の核酸配列に比較して評価する際、BLASTNプログラムを用いて、配列検索を実行する。GenBankタンパク質配列および他の公的データベース中のアミノ酸配列に対して、すべての読み枠において翻訳されている核酸配列を検索するには、BLASTXプログラムが好ましい。BLASTNおよびBLASTXはどちらも、11.0のオープンギャップペナルティおよび1.0の伸長ギャップペナルティのデフォルトパラメータを用いて実行され、そしてBLOSUM−62マトリックスを利用する(例えばAltschul, S. F.ら, Nucleic Acids Res. 25:3389−3402, 1997を参照されたい)。
[0051]2またはそれより多い配列間の「%同一性」を決定するために、例えば、10.0のオープンギャップペナルティ、0.1の伸長ギャップペナルティ、BLOSUM 30類似性マトリックスを含むデフォルトパラメータで実行する、MacVectorバージョン13.0.7中のCLUSTAL−Wプログラムを用いて、選択された配列の好ましい整列を行う。
命名法
[0052]本明細書および請求項において、アミノ酸残基の慣用的な1文字および3文字暗号を用いる。
[0053]参照を容易にするため、本出願の変異体は、以下の命名法を用いて記載される:元来のアミノ酸(単数または複数);位(単数または複数);置換アミノ酸(単数または複数)。この命名法にしたがって、例えば、111位のアスパラギンによるグルタミン酸の置換は:
Glu111AsnまたはE111N
と示される。
多数の突然変異は、プラス記号によって分離され、例えば:
His35Gly+Glu111AsnまたはH35G+E111N
は、それぞれ、ヒスチジンに対してグリシンおよびグルタミン酸に対してアスパラギンを置換する、35位および149位の突然変異を示す。アミノ酸置換のスパンおよび/または残基のスパンは、ダッシュ記号によって示され、例えば残基126から131のグリシンのスパンは:126−131Glyまたは126−131Gである。特異的置換における変動は、フォワードスラッシュによって示される。例えば、E111N/E111Sは、111位のE残基が、それぞれ、N残基またはS残基のいずれに置換されてもよいことを意味する。
アルファ溶血素の部位特異的突然変異誘発
[0054]黄色ブドウ球菌アルファ溶血素野生型配列は、本明細書に提供され(配列番号1、核酸コード領域;配列番号14、タンパク質配列)そして別の箇所で入手可能である(National Center for BioinformaticsまたはGenBank寄託番号M90536およびAAA26598)。
[0055]当該技術分野に知られる任意の方法によって、点突然変異を導入可能である。例えば、製造者の指示にしたがって、QuikChange Lightning 2キット(Stategene/Agilent)を用いて、点突然変異を作製可能である。
[0056]商業的企業、例えばIDT DNAからプライマーを注文してもよい。
アルファ溶血素変異体
[0057]本明細書に提供するアルファ溶血素には、核酸配列決定反応中、変異体を取り込んだナノポアが、安定な開口チャネルを伴い、改善されたナノポア寿命を有する、特定の置換、あるいは1またはそれより多い組み合わせの置換が含まれる。ナノポア寿命を改善することによって、こうした長寿命ナノポアを用いた配列決定反応は、より長い配列決定反応の経過に渡って、より安定な配列決定データを生成可能である。
[0058]特定の例示的態様において、変異体には、特定の突然変異または一連の突然変異が含まれる。例えば、変異体には、配列番号14のE111N/E111S、M113A/M113S、L135I、T145S、K147N/K147S、またはその組み合わせのいずれか1つのアミノ酸置換が含まれてもよい。さらに、特定の例示的態様において、変異体にはまた、配列番号14のH35G置換も含まれてもよい。
[0059]さらに、変異体には、配列番号14の残基127〜129のポリG置換が含まれてもよい。変異体にはさらに、K131G突然変異が含まれてもよい。こうしたものとして、特定の例示的態様において、本明細書に記載する、E111N/E111S、M113A/M113S、L135I、T145S、K147N/K147S、および/またはH35G置換には、配列番号14の残基126〜131の一連のポリ−Gアミノ酸が付随する。ナノポア安定性を改善するため、特定の例示的態様において、本明細書記載のアルファ溶血素変異体には、配列番号14のH144Aのアミノ酸置換がさらに含まれてもよい。
[0060]特定の例示的態様において、アルファ溶血素変異体には、置換の特定の組み合わせが含まれる。例えば、アルファ溶血素変異体には、E111N+K147N置換またはE111S+K147S置換が含まれてもよい。さらにまたはあるいは、アルファ溶血素変異体には、E111N+K147N+M113A置換またはE111S+K147S+M113S置換が含まれてもよい。特定の例示的態様において、アルファ溶血素変異体には、置換/残基の以下の組み合わせの1つが含まれる:
E111N+126−131G+H144A+K147N;
H35G+E111N+H144A+K147N;
H35G+E111N+M113A+126−131G+H144A+K147N;
E111N+M113A+127−131G+K147N;または
E111S+M113S+T145S+K147S+L135I。
[0061]特定の例示的態様において、変異体には、本明細書記載の置換の1またはそれより多くが含まれる一方、変異体の全配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列に、最大80%、85%、90%、95%、98%またはそれより高い配列同一性を保持する。同様に、他の例示的態様において、変異体には、本明細書記載の置換の1またはそれより多くが含まれる一方、変異体の全配列は、配列番号14に示すアミノ酸配列に、最大80%、85%、90%、95%、98%またはそれより高い配列同一性を保持する。特定の態様において、変異体は、配列番号17、18、19、20または22に示すアミノ酸配列に、80%、85%、90%、95%、98%またはそれより高い配列同一性を有する。
[0062]いかなる特定の理論によって束縛されることも望ましくないが、ナノポアが本明細書記載の変異体を含む場合、孔の収縮側が広がり、それによって核酸配列決定反応中に、孔を、より多くのイオンが流れることが可能になると考えられる。その結果、こうした変異体を含むナノポアは、ナノポアが交流電流に供された際、孔を渡る、より少ない純塩移動を有すると考えられる。純塩移動を減少させることによって、孔を渡る浸透圧不均衡が減少し、それによって、ナノポアの全体の安定性が改善される。したがって、生じるナノポアは、例えば野生型(天然)アルファ溶血素からなるナノポアに比較して、改善された寿命を有する。
[0063]特定の例示的態様において、ナノポア寿命を改善する本明細書記載のアルファ溶血素変異体はまた、配列決定反応中、通過時間を改善しうる。すなわち、変異体がナノポアに取り込まれた際、ナノポアの寿命および通過時間の両方が改善され、したがって、優れたナノポアを生じる。例えば、H35G、E111N、M113A、K147N、または127−129G置換のいずれかが、ナノポアの寿命および通過時間の両方を改善しうる。同様に、E111S、M113S、T145S、K147S、またはL135I突然変異のいずれかが、ナノポアの寿命および通過時間の両方を改善しうる。
[0064]特定の例示的態様において、さらなる置換が変異体内に取り込まれて、生じるナノポアの通過時間を改善し、それによってナノポアの全体の機能(寿命および通過時間の両方)を改善しうる。例えば、通過時間を改善するために、突然変異させうる残基のリストを表1に提供する。特定の例示的態様において、表1に同定する配列番号14のアミノ酸の1またはそれより多くを突然変異させる(muting)ことから形成される、改善されたナノポア寿命および改善された時間を生じる変異体は、配列番号14に示す配列に80%、85%、90%、95%、98%またはそれより高い配列同一性を有する。特定の例示的態様において、突然変異は、正電荷の付加を生じる。例えば、突然変異は、表1に同定するアミノ酸残基の、アルギニン、リジン、ヒスチジン、アスパラギン、または正電荷を所持しうる他のアミノ酸への置換を生じうる。
[0065]特定の例示的態様において、ナノポア寿命を改善するためのH35G、E111N/E111S、M113A/M113S、L135I、T145S、K147N/K147S、および/または127−129G置換(またはその組み合わせ)に加えて、突然変異には、通過時間もまた改善する、特定のさらなる置換が含まれてもよい。例えば、変異体には、配列番号14のV149K、E287R、T109K、P151K、またはその組み合わせのいずれか1つのアミノ酸置換がさらに含まれてもよい。他の例示的態様において、変異体には、1またはそれより多くのこれらの同じ置換が含まれてもよい一方、全体の配列は、配列番号14に示すアミノ酸配列に最大80%、85%、90%、95%、98%またはそれより高い配列同一性を有してもよい。特定の例示的態様において、配列番号14の最初の17アミノ酸の1またはそれより多くは、A、N、K、またはその組み合わせのいずれかに突然変異された。さらにまたはあるいは、任意の変異体には、本明細書に記載するように、配列番号14に示す配列の残基127から残基131に渡る一連のグリシン残基置換が含まれてもよい。
表1:アルファ溶血素変異体を形成するように突然変異されてもよい、成熟アルファ溶血素の残基
位は配列番号14の特定のアミノ酸位に対応する。
[0066]α−溶血素変異体には、本明細書に記載するような置換の多様な組み合わせが含まれてもよいが、特定の例示的態様において、α−溶血素変異体には、通過時間を改善するための置換の特定の組み合わせが含まれる。例えば、α−溶血素変異体には、配列番号14に示す配列のアミノ酸置換の以下の組み合わせが含まれてもよい:
H35G+V149K;
V149K+E287R+H35G;
V149K+E287R;
T109K+H35G;
P151K+H35G;
V149K+P151K+H35G;
T109K+V149K+H35G;
V149K+K147N+E111N+127−131G+M113A+H35G;
V149K+K147N+E111N+127−131G+M113A;または、
T109K+V149K+P151K+H35G。
こうした組み合わせには、例えば配列番号14のH144Aの置換、および/または配列番号14のアミノ酸127〜131での一連のグリシン残基も含まれてもよい。特定の例示的態様において、α−溶血素変異体には、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、または配列番号13に示すアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、90%、95%、98%、またはそれより高い配列同一性を有するアミノ酸配列が含まれ、各配列中で同定される置換(単数または複数)は、例えば、変異体において保持される。
[0067]特定の例示的態様において、本明細書記載のアミノ酸置換は、異種分子、例えばポリエチレングリコール(PEG)の付加を可能にする。特定の例示的態様において、a−HL変異体は、1またはそれより多い翻訳後修飾を有する。特定の例示的側面において、置換は、塩基性であるかまたは約5〜約8.5のpHで正に荷電される非天然アミノ酸である。
[0068]特定の例示的態様において、本明細書記載の変異体のすべてまたは部分を形成するアミノ酸は、立体異性体であってもよい。さらにまたはあるいは、本明細書記載の変異体のすべてまたは部分を形成するアミノ酸は、天然存在アミノ酸、非天然存在アミノ酸、翻訳後修飾アミノ酸、酵素的に合成されたアミノ酸、誘導体化アミノ酸、アミノ酸を模倣するように設計された構築物または構造等の修飾であってもよい。本明細書記載の変異体を形成するアミノ酸は、天然存在タンパク質中に見られる20の一般的なアミノ酸の1またはそれより多く、あるいは修飾および異常アミノ酸の1またはそれより多くであってもよい。特定の例示的態様において、アミノ酸は、DまたはLアミノ酸であってもよい。
[0069]特定の例示的態様において、変異体にはまた、1またはそれより多い修飾アミノ酸も含まれてもよい。修飾アミノ酸は、誘導体化アミノ酸または修飾および異常アミノ酸であってもよい。修飾および異常アミノ酸の例には、限定されるわけではないが、2−アミノアジピン酸(Aad)、3−アミノアジピン酸(Baad)、β−アミノ−プロピオン酸(Bala、β−アラニン)、2−アミノ酪酸(Abu、ピペリジン酸)、4−アミノ酪酸(4Abu)、6−アミノカプロン酸(Acp)、2−アミノヘプタン酸(Ahe)、2−アミノイソ酪酸(Aib)、3−アミノイソ酪酸(Baib)、2−アミノピメリン酸(Apm)、2,4−ジアミノ酪酸(Dbu)、デスモシン(Des)、2,2’−ジアミノピメリン酸(Dpm)、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、N−エチルグリシン(EtGly)、N−エチルアスパラギン(EtAsn)、ヒドロキシリジン(Hyl)、アロ―ヒドロキシリジン(AHyl)、3−ヒドロキシプロリン(3Hyp)、4−ヒドロキシプロリン(4Hyp)、イソデスモシン(Ide)、アロ−イソロイシン(Alle)、N−メチルグリシン(MeGly、ザルコシン)、N−メチルイソロイシン(Melle)、6−N−メチルリジン(MeLys)、N−メチルバリン(MeVal)、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)、およびオルニチン(Orn)が含まれる。修飾および異常アミノ酸の他の例は、一般的に、Synthetic Peptides: A User’s Guide, 第2版, 2002年4月, Gregory A. Grant監修, Oxford University Press; Hruby V J, Al−obeidi FおよびKazmierski W: Biochem J 268:249−262, 1990;ならびにToniolo C: Int J Peptide Protein Res 35:287−300, 1990に記載され;そのすべての解説は、本明細書に明確に援用される。
[0070]特定の例示的態様において、変異体のアミノ酸配列は、D−またはL−アミノ酸の配列を中断するいかなる修飾および異常アミノ酸も含まずに、連続的である。他の態様において、配列には、上述のような1またはそれより多い修飾および異常アミノ酸が含まれてもよい。例えば、変異体の配列は、1またはそれより多い修飾および異常アミノ酸によって中断されていてもよい。したがって、非ペプチド性主鎖を有する構造を含む、シュードペプチドおよびペプチド模倣体を提供する。特定の例示的態様において、変異体には、ペプチドの二量体または多量体が含まれる。
[0071]変異体およびWTアルファ溶血素が操作可能であるように、特定の例示的態様において、本明細書記載のアミノ酸配列のいずれか、例えば配列番号4〜14、および17〜20、および22に示すものにはまた、リンカー配列またはアフィニティタグも含まれてもよく、そしてさらに、こうしたタグを除去するための配列(例えばプロテアーゼ切断部位)が含まれてもよい。例えば、本明細書記載のアミノ酸配列のいくつかの態様において、配列には、C末端に、GLSAENLYFQGHHHHHH(配列番号16、式中、TEV配列を下線で示す)を有する、リンカー/TEV/HisTAG配列が含まれてもよい。当業者は、こうした配列が変異体の精製を可能にすることを認識するであろう。
ナノポア集合体および挿入
[0072]本明細書記載のアルファ溶血素ペプチドは、多量体タンパク質集合体(すなわちナノポア)に組み立て可能である。したがって、生じるナノポアには、複数のアルファ溶血素サブユニットが含まれるであろう。例えば、七量体アルファ溶血素ナノポアには7つのサブユニットが含まれる。
[0073]本明細書記載のアルファ溶血素変異体のいずれも、ナノポア集合体に使用可能である。所定のナノポアのサブユニットは、例えば、同じポリペプチドの同一コピーであってもよいし、またはこれらは異なるポリペプチドであってもよい。例えば、七量体集合体の7つのサブユニット各々は、配列番号17、18、19、20、または22に示すアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有してもよい。他の例示的態様において、サブユニットには、配列番号17、18、19、20、または22に同定される置換が含まれてもよいが、それぞれ、配列番号17、18、19、20、または22に示すアミノ酸配列に80%、85%、90%、95%、98%またはそれより高い配列同一性を有していればよい。
[0074]他の例示的態様において、サブユニット各々には、同じシリーズの置換が含まれてもよく、ナノポアの各サブユニットの1またはそれより多くが、異なる全体のアミノ酸配列を有してもよい。すなわち、特定の置換または置換の組み合わせが、所定のナノポア中のすべてのサブユニット間で保存されていてもよい一方、多様なサブユニットの全体のアミノ酸配列が異なっていてもよい。特定の例示的態様において、同じまたは実質的に同じである変異体アルファ溶血素サブユニットを含むナノポアは、異なるアルファ溶血素サブユニットの混合物を有するナノポアに比較して、改善された寿命を提供する。例えば、配列番号17、18、19、20、または22に示すアミノ酸配列の1つに、80%、85%、90%、95%、98%またはそれより高い配列同一性を有するアルファ溶血素変異体サブユニットのみを含むナノポアは、野生型(天然)サブユニットとともに変異体サブユニットを含むナノポアよりもより長い寿命を有しうる。
[0075]特定の例示的態様において、1またはそれより多いサブユニットには、本明細書に記載するような通過時間を改善する置換がさらに含まれてもよい。したがって、生じるナノポアは、寿命の改善および通過時間の増加の両方を有してもよい。特定の例示的態様において、ナノポアには、本明細書記載の変異体および他のアルファ溶血素ポリペプチド、例えば野生型(天然)アルファ溶血素の混合物が含まれてもよい。特定の例示的態様において、ナノポアは、修飾サブユニット(例えばa−HL変異体)対非修飾サブユニット(例えばa−HL)の定義された比を有する。特定の例示的態様において、そして以下にさらに記載するように、ナノポアは、ナノポア集合体を形成するため、サブユニットの1つに付着するポリメラーゼを有する。
[0076]やはり本明細書に提供するのは、修飾サブユニット対非修飾サブユニットの定義された比を有する多量体タンパク質(例えばナノポアまたはナノポア集合体)を産生するための方法である。WO2014/074727の図27を参照すると、複数のサブユニットを有するタンパク質を組み立てるための方法には、複数の第一のサブユニット2705を提供し、そして複数の第二のサブユニット2710を提供する工程が含まれ、第二のサブユニットは第一のサブユニットと比較した際、修飾されている。いくつかの場合、第一のサブユニットは野生型である(例えば天然供給源から精製されるかまたは組換え的に産生される)。第二のサブユニットは、任意の適切な方式で修飾されてもよい。いくつかの場合、第二のサブユニットは、付着した(例えば融合タンパク質として)タンパク質(例えばポリメラーゼ)を有する。
[0077]特定の例示的態様において、修飾サブユニットは、化学的に反応性である部分(例えば連結を形成するために適したアジドまたはアルキン基)を含んでもよい。いくつかの場合、方法は、実体(例えばポリメラーゼ)を化学的に反応性である部分に付着させる反応(例えばクリック化学環化付加)を行う工程をさらに含んでもよい。
[0078]特定の例示的態様において、方法には、第一の比で、第一のサブユニットを第二のサブユニット2715と接触させて、第一のサブユニットおよび第二のサブユニットを有する複数のタンパク質2720を形成する工程がさらに含まれてもよい。例えば、ポリメラーゼと付着するために適した反応基を有する1部分の修飾aHLサブユニットを、6部分の野生型aHLサブユニットと混合してもよい(すなわち第一の比は1:6)。複数のタンパク質は、第一のサブユニット対第二のサブユニットの複数の比を有してもよい。例えば、混合サブユニットは、修飾対非修飾サブユニットの化学量論の分布を有する、いくつかのナノポアを形成してもよい(例えば1:6、2:5、3:4)。
[0079]特定の例示的態様において、単純にサブユニットを混合することによって、タンパク質を形成する。例えばaHLナノポアの場合、界面活性剤(例えばデオキシコール酸)は、aHL単量体を誘発して、孔コンホメーションを取らせる。ナノポアはまた、例えば脂質(例えば1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPhPC)または1,2−ジ−0−フィタニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DoPhPC))および中程度の温度(例えば約100℃未満)を用いて、形成可能である。いくつかの場合、DPhPCと緩衝溶液を混合すると、大型多層小胞(LMV)が生成され、そしてこの溶液にaHLサブユニットを添加して、そして40℃で30分間混合物をインキュベーションすると、孔形成が生じる。
[0080]2つの異なるタイプのサブユニットを用いる場合(例えば天然野生型タンパク質、および単一の点突然変異を含有していてもよい第二のaHL単量体)、生じるタンパク質は、混合化学量論(例えば野生型および突然変異体タンパク質の)を有しうる。これらのタンパク質の化学量論は、特定の例示的態様において、孔形成反応で用いられる2つのタンパク質の濃度比に依存する式にしたがうことも可能である。この式は、以下の通りである:
100P=100[n!/m!(n−m)!]・fmut ・fwt n−m、式中、
=mの数の突然変異体サブユニットを有する孔の可能性
n=サブユニット総数(例えばaHLに関して7)
m=「突然変異体」サブユニットの数
mut=ともに混合された突然変異体サブユニットの割合または比
wt=ともに混合された野生型サブユニットの割合または比
[0081]該方法は、第一のサブユニット対第二のサブユニットを有するタンパク質2725の第二の比を濃縮するため、複数のタンパク質を分画する工程をさらに含んでもよい。例えば、1つのそして1つのみの修飾サブユニット(例えば1:6の第二の比)を有するナノポアタンパク質を単離してもよい。しかし、任意の第二の比が適切である。第二の比の分布はまた、例えば、1または2のいずれかの修飾サブユニットを有するタンパク質を濃縮するよう分画されてもよい。タンパク質を形成するサブユニットの総数は、WO2014/074727の図27に示されるように、常に7というわけではない(例えば異なるナノポアを用いてもよいし、または6つのサブユニットを有するアルファ溶血素ナノポアを形成してもよい)。いくつかの態様において、1つの修飾サブユニットのみを有するタンパク質を濃縮する。こうした場合、第二の比は、(n−1)の第一のサブユニットあたり1つの第二のサブユニットであり、式中、nはタンパク質を構成するサブユニットの数である。
[0082]第一の比は、第二の比と同じであってもよいが、そうである必要はない。いくつかの態様において、突然変異単量体を有するタンパク質は、突然変異サブユニットを持たないものよりもより効率的に形成されない。この場合、第一の比は、第二の比より大きくてもよい(例えば、ナノポアにおいて、1つの突然変異対6つの非突然変異サブユニットの第二の比が望ましい場合、適切な数の1:6タンパク質を形成するには、1:6より高い比でサブユニットを混合する必要がありうる)。
[0083]異なる第二の比のサブユニットを有するタンパク質は、分離の際に異なって振る舞う可能性がある(例えば異なる保持時間を有する)。特定の例示的態様において、クロマトグラフィ、例えばイオン交換クロマトグラフィまたはアフィニティクロマトグラフィを用いて、タンパク質を分画する。第一および第二のサブユニットは修飾以外は同一でありうるため、タンパク質上の修飾の数は、分離の基礎として働きうる。いくつかの場合、第一または第二のサブユニットのいずれかは、分画を可能にするかまたはその効率を改善するため、(例えば修飾に加えて)精製タグを有する。いくつかの態様において、ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)、ストレプトアビジンタグ(Strepタグ)、または他のペプチドタグを用いる。いくつかの態様において、第一および第二のサブユニットは、各々、異なるタグを含み、そして分画工程は各タグに基づいて分画する。Hisタグの場合、低pHでタグ上に電荷を生成する(ヒスチジン残基は、側鎖のpKa未満で正に荷電するようになる)。他方に比較して、aHL分子の一方の電荷に有意な相違があるため、イオン交換クロマトグラフィを用いて、0、1、2、3、4、5、6、または7の「電荷タグ化」aHLサブユニットを有するオリゴマーを分離することも可能である。原理的には、この電荷タグは、均一な電荷を所持する任意の一連のアミノ酸であってもよい。図28および図29は、Hisタグに基づくナノポアの分画の例を示す。図28は、280ナノメートルの紫外吸光度、260ナノメートルの紫外吸光度、および伝導率のプロットを示す。ピークは、多様な比の修飾および非修飾サブユニットを持つナノポアに対応する。WO2014/074727の図29は、HisタグおよびStrepタグの両方を用いた、aHLナノポアおよびその突然変異体の分画を示す。
[0084]特定の例示的態様において、分画後、タンパク質に実体(例えばポリメラーゼ)を付着させる。タンパク質はナノポアタンパク質であってもよく、そして実体はポリメラーゼであってもよい。いくつかの例において、方法はさらに、第二の比を有するタンパク質を二重層内に挿入する工程を含む。
[0085]本明細書に記載するように、ナノポアは、複数のサブユニットを含んでもよい。ポリメラーゼは、サブユニットの1つに付着していてもよく、そして少なくとも1つでそしてすべてより少ないサブユニットが、第一の精製タグを含む。いくつかの例において、すべてのサブユニットが第一の精製タグまたは第二の精製タグを含む。第一の精製タグは、例えば、ポリヒスチジンタグであってもよい(例えばポリメラーゼが付着したサブユニット上)。
ナノポアへのポリメラーゼの付着
[0086]本明細書に記載するように、ポリメラーゼ(例えばDNAポリメラーゼ)をナノポアに付着させ、そして/またはその近傍に配置する。DNA合成反応中にDNAを合成可能な任意のDNAポリメラーゼを、本明細書記載の方法および組成物にしたがって用いてもよい。例示的なDNAポリメラーゼには、限定されるわけではないが、ファイ29(バチルス属(Bacillus)バクテリオファージφ29)、pоl6(クロストリジウム属(Clostridium)ファージ・ファイCPV4;GenBank:AFH27113.1)またはpоl7(アクチノミセス属(Actinomyces)ファージAv−1;GenBank:ABR67671.1)が含まれる。特定の例示的態様において、ナノポア集合体に付着するのは、DNA操作または修飾酵素、例えばリガーゼ、ヌクレアーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、トランスフェラーゼ、またはトポイソメラーゼである。
[0087]特定の例示的態様において、ポリメラーゼはポリメラーゼ変異体である。例えば、ポリメラーゼ変異体には、米国特許出願第15/012,317号(US 2016/0222363 A1として公開、本明細書において、「’317出願」とも称される)に同定される任意のポリメラーゼ変異体が含まれてもよい。こうした変異体には、例えば、配列番号15(’317出願の配列番号2に対応する)のH223A、N224Y/L、Y225L/T/I/F/A、H227P、I295W/F/M/E、Y342L/F、T343N/F、I357G/L/Q/H/W/M/A/E/Y/P、S360G、L361M/W/V、I363V、S365Q/W/M/A/G、S366A/L、Y367L/E/M/P/N、P368G、D417P、E475D、Y476V、F478L、K518Q、H527W/R/L、T529M/F、M531H/Y/A/K/R/W/T/L/V、N535L/Y/M/K/I、G539Y/F、P542E/S、N545K/D/S/L/R、Q546W/F、A547M/Y/W/F/V/S、L549Q/Y/H/G/R、I550A/W/T/G/F/S、N552L/M/S、G553S/T、F558P/T、A596S、G603T、A610T/E、V615A/T、Y622A/M、C623G/S/Y、D624F、I628Y/V/F、Y629W/H/M、R632L/C、N635D、M641L/Y、A643L、I644H/M/Y、T647G/A/E/K/S、I648K/R/V/N/T、T651Y/F/M、I652Q/G/S/N/F/T、K655G/F/E/N、W656E、D657R/P/A、V658L、H660A/Y、F662I/L、L690M、またはその組み合わせの1またはそれより多いアミノ酸置換が含まれる。特定の例示的態様において、ポリメラーゼには1またはそれより多いこうした置換が含まれ、そしてポリメラーゼは、配列番号15に示すアミノ酸配列に、80%、90%、95%、98%またはそれより高い配列同一性を有する。’317出願に記載されるように、ポリメラーゼ変異体は、親ポリメラーゼに比較して、改変された酵素活性、忠実性、処理能力、伸長速度、配列決定精度、長い連続読み取り能、安定性、または可溶性を有してもよい。
[0088]ポリメラーゼは、当該技術分野に知られる任意の適切な方式で、ナノポア集合体に付着していてもよい。例えば、PCT/US2013/068967(WO2014/074727として公開; Genia Technologies)、PCT/US2005/009702(WO2006/028508として公開)、およびPCT/US2011/065640(WO2012/083249として公開;コロンビア大学)を参照されたい。特定の例示的態様において、ポリメラーゼは、ナノポア(例えば溶血素)タンパク質単量体に付着し、そして次いで、完全ナノポア七量体に組み立てられる(例えば付着したポリメラーゼを伴う1つの単量体対付着したポリメラーゼを含まない6つのナノポア(例えば溶血素)単量体の比で)。次いで、ナノポア七量体を膜に挿入してもよい。
[0089]ポリメラーゼをナノポアに付着させるための別の方法は、溶血素単量体にリンカー分子を付着させるか、または溶血素単量体が付着部位を有するように突然変異させて、そして次いで、完全ナノポア七量体を(例えばリンカーおよび/または付着部位を有する1つの単量体対リンカーおよび/または付着部位を持たない6つの溶血素単量体の比で)組み立てる工程を含む。次いで、ポリメラーゼを付着部位または付着リンカーに付着させてもよい(例えば、膜に挿入する前にまとめて)。また、(例えば七量体)ナノポアが膜中で形成された後に、付着部位または付着リンカーにポリメラーゼを付着させてもよい。いくつかの場合、複数のナノポア−ポリメラーゼ対を、バイオチップの複数の膜(例えばウェルおよび/または電極上に沈着される)内に挿入する。いくつかの場合、ナノポア複合体へのポリメラーゼの付着は、各電極上のバイオチップ上で起こる。
[0090]任意の適切なケミストリー(例えば共有結合および/またはリンカー)で、ポリメラーゼをナノポアに付着させてもよい。いくつかの場合、ポリメラーゼを分子ステープルでナノポアに付着させる。いくつかの例において、分子ステープルは、3つのアミノ酸配列(リンカーA、BおよびCと示される)を含む。リンカーAは、溶血素単量体から伸長可能であり、リンカーBはポリメラーゼから伸長可能であり、そしてリンカーCは、次いで、リンカーAおよびBを結合させ(例えばリンカーAおよびBの両方の周囲に巻き付くことによって)、そしてしたがってナノポアにポリメラーゼをナノポアに付着させることも可能である。また、リンカーCを、リンカーAまたはリンカーBの一部として構築して、こうしてリンカー分子の数を減少させてもよい。
[0091]特定の例示的態様において、SolulinkTM化学を用いて、ポリメラーゼをナノポアに連結させる。SolulinkTMは、HyNic(6−ヒドラジノ−ニコチン酸、芳香族ヒドラジン)および4FB(4−ホルミルベンゾエート、芳香族アルデヒド)の間の反応であってもよい。いくつかの例において、クリック化学(例えばLifeTechnologiesより入手可能)を用いて、ポリメラーゼをナノポアに連結させる。いくつかの例において、溶血素分子内にジンクフィンガー突然変異を導入し、そして次いで、分子(例えばDNA中間体分子)を用いて、ポリメラーゼを溶血素のジンクフィンガー部位に連結させる。
[0092]さらにまたはあるいは、生理学的条件下で、自発的に共有イソペプチド連結を形成する、SpyTag/SpyCatcher系を用いて、アルファ溶血素単量体をポリメラーゼに連結してもよい。例えば、Liら, J Mol Biol. 2014 Jan 23; 426(2):309−17を参照されたい。例えば、SpyTagドメインを有するアルファ溶血素タンパク質を発現させてもよい。さらに、アルファ溶血素に連結しようとするDNAポリメラーゼを、SpyCatcherドメインを有する融合タンパク質として、別個に発現させてもよい。アルファ溶血素/SpyTag融合タンパク質とDNAポリメラーゼ/SpyCatcherタンパク質を混合することによって、SpyTagおよびSpyCatcherタンパク質が相互作用して、共有イソペプチド連結を通じて、DNAポリメラーゼに連結されたアルファ溶血素単量体を形成する。特定の例示的態様において、リンカー配列を通じて、SpyTagドメインをアルファ溶血素に付着させる。例えば、リンカー−SpyTagタンパク質には、配列GGSSGGSSGGAHIVMVDAYKPTK(配列番号21)が含まれてもよく、ここで下線部分はリンカー配列であり、そして太字部分はSpyTag配列である。特定の例示的態様において、HisTagは、SpyTag配列のSpyTag配列に付着する。例えば、KGリンカーを通じて、HisTagをSpyTagに連結してもよい。
[0093]特定の例示的態様において、ナノポア単量体をナノポア集合体に取り込む前に、ポリメラーゼをナノポア単量体に付着させてもよい。例えば、アルファ溶血素/SpyTag融合タンパク質の発現および精製後、精製アルファ溶血素/SpyTag融合タンパク質を、精製ポリメラーゼ/SpyCatcher融合タンパク質と混合して、こうしてSpyTagおよびSpyCatcherタンパク質が互いに結合して、アルファ溶血素/ポリメラーゼ単量体を形成することを可能にする。次いで、本明細書に記載するように、単量体をナノポア集合体に取り込んで、七量体集合体を形成してもよい。
[0094]特定の例示的態様において、ナノポア集合体の形成後に、ナノポア集合体にポリメラーゼを付着させる。例えば、アルファ溶血素/SpyTag融合タンパク質の発現および精製後、融合タンパク質をナノポア集合体に取り込んで、七量体ナノポア集合体を形成する。次いで、ポリメラーゼ/SpyCatcher融合タンパク質を、七量体集合体と混合して、こうしてSpyTagおよびSpyCatcherタンパク質が互いに結合することを可能にし、次いで、ポリメラーゼのナノポア集合体への結合を生じる。
[0095]ナノポアに基づく配列決定反応の性質のため、当業者は、各ナノポア集合体と会合するのは(多数のポリメラーゼでなく)単一のポリメラーゼのみであることが有益であることを認識するであろう。こうした集合体を達成するため、例えば、単一のSpyTagしか持たず、したがって、単一のポリメラーゼ/SpyCatcherの付着を可能にするように、ナノポア集合体を設計してもよい。
[0096]アルファ溶血素の場合、例えばアルファ溶血素/SpyTagタンパク質とさらなるアルファ溶血素タンパク質を混合すると、0、1、2、3、4、5、6、または7つのアルファ溶血素/SpyTagサブユニットを有する七量体が生じる。しかし、各七量体と会合するSpyTag配列の数が異なる(0、1、2、3、4、5、6、または7)ため、七量体は異なる電荷を有する。したがって、特定の例示的態様において、陽イオン交換クロマトグラフィでの溶出を通じるなど、当該技術分野に知られる方法によって、七量体を分離してもよい。次いで、溶出された分画を調べて、どの分画が単一のSpyTagを含む集合体を含むか決定してもよい。次いで、単一のSpyTagを含む分画を用いて、単一ポリメラーゼを各集合体に付着させて、それによって、単一ポリメラーゼが付着したナノポア集合体を生成してもよい。
[0097]どの七量体分画が単一のSpyTagを含有するか(そしてしたがって、七量体あたり、1つのみのポリメラーゼ/SpyCatcher融合タンパク質に結合可能であるか)を決定するために、多様な方法が適切でありうるが、特定の例示的態様において、分子量に基づいて、例えばSDS−PAGEを通じて、異なる七量体分画を分離することも可能である。次いで、試薬を用いて、各分画と会合するSpyTagの存在を確認してもよい。例えば、SDS−PAGEを通じて分離する前に、SpyCatcher−GFP(緑色蛍光タンパク質)を分画に添加してもよい。
[0098]より少数のSpyTagを含む七量体は、より多数のSpyTagを含む七量体よりも小さいため、単一のSpyTagを含む分画は、最も遠いバンド移動、およびバンドに対応するSDS−PAGEゲル中のGFP蛍光の存在によって明らかであるように、同定可能である。例えば、7つのアルファ溶血素単量体およびゼロのSpyTag融合タンパク質を含有する分画は、最も遠くに移動するであろうが、SpyCatcher−GFPと混合した際に、七量体に結合するSpyTagが存在しないため、蛍光を生じないであろう。しかし、単一のSpyTagを含有する分画は、(他の蛍光バンドに比較して)二番目に遠くに移動し、そしてかつ蛍光を生じ、それによって、七量体に結合した単一SpyTagを含む分画の同定が可能であろう。七量体に結合した単一SpyTagを含む分画の同定後、次いで、ポリメラーゼ/SpyCatcher融合タンパク質をこの分画に添加して、それによって、ポリメラーゼをナノポア集合体に連結することも可能である。
[0099]本明細書に記載する方法および組成物を用いることによって、単一DNAポリメラーゼに係留され、そして本明細書に記載するようなアルファ溶血素変異体の1またはそれより多くを含む、ナノポア集合体を達成してもよい。例えば、七量体ナノポアには、7つの変異体サブユニットが含まれてもよく、各サブユニットは、配列番号17、18、19、20、または22に示すアミノ酸配列の1つ、あるいはサブユニットの1つに付着したDNAポリメラーゼとそれぞれ80%、85%、90%、95%、98%またはそれより同一であるアミノ酸配列に対応する配列を有する。
装置セットアップ
[0100]本明細書記載のナノポアを、検出回路、例えば集積回路の検出電極に隣接して配置された膜中に形成するかまたは別の方式で包埋してもよい。集積回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)であってもよい。いくつかの例において、集積回路は電界効果トランジスタまたは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)である。検出回路は、チップまたはナノポアを有する他のデバイス中に配置されてもよいし、あるいはチップまたはデバイスから離れて、例えばオフチップ配置であってもよい。半導体は、限定されるわけではないが、IV族(例えばケイ素)およびIII−V族半導体(例えばガリウムヒ素)を含む、任意の半導体であってもよい。ヌクレオチドまたはタグを検出するための装置およびデバイスセットアップに関しては、例えばWO2013/123450を参照されたい。
[0101]孔に基づくセンサー(例えばバイオチップ)を、単一分子の電気検査に用いてもよい。孔に基づくセンサーには、検出電極に隣接してまたはその近傍に配置された膜中に形成された本開示のナノポアが含まれてもよい。センサーには、対電極が含まれてもよい。膜には、トランス側(すなわち検出電極に向く側)およびシス側(すなわち対電極に向く側)が含まれる。
[0102]特定の例示的態様において、本明細書記載のアルファ溶血素変異体の1またはそれより多くを含むナノポアは、野生型アルファ溶血素を含むナノポア(すなわち、本明細書記載の置換のいずれも含まないナノポア)に比較して、改善されたナノポア寿命を有するであろう。特定の例示的態様において、ナノポアに含まれる変異体の数がより多いことは、ナノポア寿命の改善のレベルがより高いことに対応する。例えば、7つのアルファ溶血素サブユニット各々が、配列番号17、18、19、20、または22に示す配列、あるいはそれぞれこれらに80%、85%、90%、95%、98%またはそれより同一である配列の1つに対応する、七量体ナノポアは、野生型(天然)アルファ溶血素のみまたは7より少ない変異体を含むナノポアよりも、より長い寿命を有しうる。すなわち、特定の例示的態様において、ナノポア中に含まれる変異体の数がより多いことは、より長いナノポア寿命に対応する。特定の例示的態様において、七量体ナノポアのサブユニットの7つすべてに、置換、例えばナノポア寿命を改善する同じ置換または重複する置換が含まれる。所定のナノポアにおける変異体は、同じ変異体または異なる変異体の組み合わせであってもよい。
[0103]特定の例示的態様において、配列番号17、18、19、20、および22に提供するものなどの、本明細書に記載するような1またはそれより多いアルファ溶血素変異体を含むナノポアの寿命は、野生型(天然)アルファ溶血素のみを含むナノポアに比較した際、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれより多く増加する。特定の例示的態様において、本明細書に記載するような1またはそれより多いアルファ溶血素変異体を含むナノポアの寿命は、野生型(天然)アルファ溶血素のみを含むナノポアに比較した際、2倍または3倍になる。
[0104]特定の例示的態様において、改善されたナノポア寿命に加えて、タグが孔を通過する時間(通過時間またはTTT)を減少させることも可能である。例えば、本明細書記載の変異体の1またはそれより多くを含むナノポアに関するTTTは、野生型(天然)アルファ溶血素からなる七量体ナノポアに比較した際、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれより多く減少することも可能である。こうしたものとして、本明細書記載の変異体の1またはそれより多くを含むナノポアは、野生型(天然)アルファ溶血素からなる七量体ナノポア集合体に比較した際、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれより多く増加した寿命、ならびに5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれより多く減少したTTTを有することも可能である。
[0105]以下の実験的開示において、以下の略語が当てはまる:eq(当量);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);N(規定濃度);mоl(モル);mmоl(ミリモル);μmоl(マイクロモル);nmоl(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(セ氏温度);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒)。
[0106]本発明は、請求するような本発明の範囲をいかなる意味でも制限することを意図しない、以下の実施例において、さらに詳細に記載される。付随する図は、本発明の明細および説明の不可分の一部と見なされるよう意味される。引用されるすべての参考文献は、そこに記載されるものすべてに関して、本明細書に特に援用される。以下の例は、例示のために提供され、請求する発明を限定するためではない。
実施例1
発現および回収
[0107]本実施例は、細菌宿主細胞、例えば大腸菌(E. coli)からのタンパク質の発現および回収を例示する。
[0108]野生型a−HLをコードするDNAを商業的供給源から購入した。配列を、配列決定によって検証した。
[0109]プラスミド構築。野生型または変異体α−溶血素のいずれかをコードする遺伝子を、T7プロモーターの調節下、pPR−IBA2プラスミド(IBA Life Sciences、ドイツ)内に挿入した。
[0110]形質転換。当該技術分野に周知の技術を用いて、野生型または変異体α−溶血素をコードするDNAを含む発現ベクターで、大腸菌BL21 DE3(Life Technologiesより)細胞を形質転換した。簡潔には、細胞を氷上で融解した(凍結されている場合)。次に、望ましいDNA(適切なベクター/プラスミド中)をコンピテント細胞内に直接添加し(コンピテント細胞のものの5%を超えてはならない)、そしてチューブをはじくことによって混合した。チューブを氷上に20分間置いた。次に、細胞を混合せずに42℃の水槽に45秒間置き、その後、チューブを氷上に2分間置いた。次いで、細胞を、0.9mlのSOC培地を含有する15mlの無菌培養チューブ(室温であらかじめ温めておく)に移し、そして振盪装置中、37℃で1時間培養した。最後に、細胞アリコットを、適切な抗生物質を含有するLB寒天プレート上に広げ、そしてプレートを37℃で一晩インキュベーションした。
[0111]タンパク質発現。形質転換後、コロニーを摘み取り、そして適切な抗生物質を含有する少量(例えば3ml)の増殖培地(例えばLBブロス)に接種し、37℃で一晩振盪した。
[0112]翌朝、1mlの一晩培養物を、発現プラスミドを選択するために適切な抗生物質を含有する新規の100mlの自己誘導培地、例えばMagic培地(Life Technologies)に移す。培養物を振盪しながら25℃でおよそ16時間増殖させるが、これは発現プラスミドに応じる。3,000gで20分間、4℃で遠心分離することによって、細胞を採取し、そして使用するまで−80℃で保存した。
[0113]精製。超音波によって細胞を溶解した。アフィニティカラムクロマトグラフィによって、均質になるまでアルファ溶血素を精製した。
実施例2
アルファ溶血素変異体
[0114]以下の実施例は、所望の残基での突然変異の導入を詳述する。
[0115]突然変異。QuikChange多部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)を用いて、部位特異的突然変異誘発を行い、例としてのH35G+V149K+H144A(配列番号4)およびH35G+E111N+M113A+126−131G+H144A+K147N(配列番号19)を調製し、これらの配列は、精製のため、C末端リンカー/TEV/HisTagを含む。また、QuikChange多部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)を実行して、変異体(E111N+M113A+126−131G+K147N、配列番号20)を調製し、該変異体は、ポリメラーゼ付着のため、C末端SpyTag、KGリンカー、およびHisTagを含む。実施例1におけるように変異体を発現させ、そして精製した。
実施例3
変異体を含むナノポアの組み立て
[0116]本実施例は、続くポリメラーゼ付着のためのSpyTag配列を有する1つのサブユニット(「α−HL変異体−SpyTag」サブユニット)およびSpyTagを含まない6つのα−HL変異体サブユニット(「α−HL変異体」サブユニット)を含む、1:6七量体ナノポアの組み立てを記載する。
[0117]実施例1および2に記載するように、C末端SpyTag、KGリンカー、およびHisTagを含むα−HL変異体−SpyTag(E111N+M113A+126−131G+K147N、配列番号20)を調製し、そして発現させた。次いで、α−HL変異体−SpyTagタンパク質を、コバルト溶出緩衝剤(200mM NaCl、300mMイミダゾール、50mM tris、pH8)を用いて、コバルトアフィニティカラム上で精製した。5日以内に用いる場合はタンパク質を4℃で保存し、そうでない場合は、8%トレハロースを添加し、そして−80℃で保存した。
[0118]α−HL変異体サブユニットに関しては、実施例1および2に記載するように、リンカー/TEV/HisTagを含むH35G+E111N+M113A+126−131G+H144A+K147N(配列番号19)の変異体を調製し、そして発現させ、そしてコバルト溶出緩衝剤(200mM NaCl、300mMイミダゾール、50mM tris、pH8)を用いて、コバルトアフィニティカラム上で精製した。次いで、α−HL変異体タンパク質を、タンパク質5mgあたり1mgのTEVプロテアーゼとともに、4℃で4時間インキュベーションした。TEVプロテアーゼとインキュベーションした後、混合物をコバルトアフィニティカラム上で精製して、TEVプロテアーゼおよび未消化タンパク質を除去した。5日以内に用いる場合はタンパク質を4℃で保存し、そうでない場合は、8%トレハロースを添加し、そして−80℃で保存した。
[0119]およそ10mgの総タンパク質を用いて、α−HL変異体−SpyTag対所望のα−HL変異体タンパク質溶液を、1:9の比でともに混合し、最終的に望ましい比で七量体混合物の形成が促進されるようにした。こうした混合物七量体は、多様な比のα−HL変異体−SpyTag対α−HL変異体タンパク質(0:7、1:6、2:5、3:4等)を含む多様な分画を生じ、ここでα−HL変異体−SpyTag構成要素は、七量体の0、1、2、3、4、5、6、または7の単量体サブユニットとして存在する。
[0120]ジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)脂質を50mM Tris、200mM NaCl、pH8または150mM KCl、30mM HEPES、pH7.5のいずれかに、最終濃度50mg/mlで溶解し、そしてα−HL単量体の混合物を最終濃度5mg/mlまで添加した。α−HL単量体混合物を、37℃で少なくとも60分間インキュベーションした。その後、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド(βOG)を最終濃度5%(重量/体積)まで添加して、生じた脂質−タンパク質混合物を可溶化した。試料を遠心分離して、タンパク質凝集物および残った脂質複合体を除去し、そしてさらに精製するため、上清を収集した。
[0121]次いで、α−HL七量体の混合物を陽イオン交換精製に供し、そして溶出分画を収集した。各分画に関して、SDS−PAGE用に2つの試料を調製した。第一の試料には、15μLのα−HL溶出物のみが含まれ、そして第二の試料を、3μgのSpyCatcher−GFPと合わせた。次いで、試料を遮光して、室温で1〜16時間インキュベーションした。インキュベーション後、5μLの4xLaemmli SDS−PAGE緩衝剤(Bio−RadTM)を各試料に添加した。次いで、試料およびPrecisionPlusTM Stain−Freeタンパク質ラダーを、4−20% Mini−PROTEAN Stain−Freeタンパク質プレキャストゲル(Bio−Rad)上に装填した。ゲルを200mVで30分間泳動した。次いで、Stain−Freeフィルターを用いて、ゲルを画像化した。
[0122]七量体α−HL/SpyTagへのSpyCatcher−GFPのコンジュゲート化は、SDS−PAGE中の分子量バンドシフトを通じて観察可能である。単一のSpyTagを含有する七量体は、単一のSpyCatcher−GFP分子に結合し、そしてしたがって七量体孔の分子量に加えてSpyCatcher−GFPの分子量に対応するシフトを有する一方、2またはそれより多いSpyTagを含む七量体は、対応するより大きな分子量シフトを有するはずである。したがって、上記の七量体α−HL精製中に陽イオン交換カラムから溶出されるピークを、α−HL/SpyTag対α−HL変異体の比に関して分析することも可能である。さらに、SpyCatcher−GFP付着の存在は、SDS−PAGEゲルを画像化した際、GFP−蛍光フィルターを用いて観察可能である。
[0123]この原理に基づき、分子量標準タンパク質ラダーを用いて、分子量シフトがSpyCatcher−GFPの単一の付加に対応する分画を決定した。Bio−Radのステイン・フリー画像化系を用いて、分子量シフトを決定した。ブルーフィルターを用いて、GFP蛍光の存在を決定した。蛍光の存在を用いて、SpyTagタンパク質の存在を確認した。次いで、1:6の比、すなわち1つのα−HL変異体−SpyTag対6つのα−HL変異体に対応する溶出分画をさらなる実験に用いた。
[0124]これらの同じまたは類似の方法を用いて、H35G+E111N+M113A+126−131G+H144A+K147N(配列番号19)α−HL変異体の各々に付加されたV149K置換を有する1:6七量体もまた産生した。すなわち、1:6七量体の「6つ」の構成要素には、V149K置換が含まれ、α−HL変異体−SpyTagの「1つ」の構成要素は、表1にN修正と示すE111N+M113A+126−131G+K147Nであった(配列番号20)。
[0125]上述の1:6七量体に加えて、これらの同じまたは類似の方法を用いて、6つのH35G+V149K+H144A(配列番号4)α−HL変異体を有する1:6七量体を生成した。より具体的には、こうした1:6七量体は、1:6比の「1つ」の構成要素としての野生型α−HL−SpyTag、および6つのH35G+V149K+H144A(配列番号4)α−HL変異体を含む「6つ」の構成要素を有する。
実施例4
ポリメラーゼの付着
[0126]本実施例は、ナノポアへのポリメラーゼの付着を提供する。
[0127]ポリメラーゼは任意の適切な手段によってナノポアにカップリングさせてもよい。例えば、PCT/US2013/068967(WO2014/074727として公開; Genia Technologies)、PCT/US2005/009702(WO2006/028508として公開)、およびPCT/US2011/065640(WO2012/083249として公開;コロンビア大学)を参照されたい。
[0128]ポリメラーゼ、例えばファイ29 DNAポリメラーゼを、リンカー分子を通じてタンパク質ナノポア(例えばアルファ溶血素)にカップリングした。具体的には、生理学的条件下で、自発的に共有イソペプチド連結を形成する、SpyTagおよびSpyCatcher系を用いた。例えば、Liら, J Mol Biol. 2014 Jan 23;426(2):309−17を参照されたい。
[0129]簡潔には、Stickyファイ29 SpyCatcher HisTagを、実施例1にしたがって発現させ、そしてコバルトアフィニティカラムを用いて精製した。SpyCatcherポリメラーゼおよびSpyTagオリゴマー化タンパク質を、1:1モル比で、3mM SrCl中、4℃で一晩インキュベーションした。次いで、サイズ排除クロマトグラフィを用いて、1:6のポリメラーゼ−テンプレート複合体を精製する。
実施例5
変異体の活性
[0130]本実施例は、実施例1〜4に提供されるようなナノポア(付着したポリメラーゼを含むナノポア)の活性を示す。
[0131]変異体ナノポアをアッセイして、置換の影響を決定した。より具体的には、α−HL変異体−SpyTag(ポリメラーゼが付着している)を含むナノポアの「1つ」の構成要素、およびα−HL変異体を含む「6つ」の構成要素を含む、1:6比のナノポアをアッセイして、ナノポア寿命に対する置換の影響を決定した。V149K置換もまた含むナノポアを同様にアッセイして、ナノポア寿命を決定した(以下の表1を参照されたい)。さらに、1:6の「1つ」の構成要素としての野生型α−HL−SpyTag(ポリメラーゼが付着している)および「6つ」の構成要素としての6つのH35G+V149K+H144A(配列番号4)α−HL変異体を有するナノポアを、通過時間に対する置換の影響に関して分析した。
[0132]アッセイを実行するため、2014年10月23日出願のPCT/US14/61853に記載されるように、二重層を形成し、そして孔を挿入した。分子(および/または核酸の配列)を検出するために用いたナノポアデバイス(またはセンサー)は、WO2013123450に記載されるようにセットアップされた。
ナノポア寿命の評価
[0133]このアッセイは、ナノポアが、交流電圧、すなわち方形波の影響下で、脂質二重層中で適切に機能可能である時間を測定するように設計された。
[0134]ナノポア寿命を測定するため、我々は、孔寿命に対して、交流正電圧および負電圧(方形波)を用いるアッセイを考案した。我々の配列決定複合体は、単一のDNAポリメラーゼに付着したタンパク質ナノポア(αHL)で構成される(実施例4を参照されたい)。電流は、適用される正電圧および負電圧において、孔を通じて示差的に通過する。ナノポアは、負電圧に比較して、正電圧下でイオンを示差的に通過させうる。これは、ウェルの外への塩および水イオンのポンピングを導く。孔の寿命全体で、このプロセスは次第に二重層を変形させ、そしてナノポアがもはや二重層を渡ってイオンを伝導しないようにする。これが起きた場合、孔寿命は終了となる。次いで、これらの時間を記録して、そして図1A、図2A、および図3Aに示すように、ヒストグラムとしてプロットする。
[0135]「寿命」アッセイを実行するため、Genia SequencingデバイスをGenia Sequencingチップとともに用いる。電極を条件化し、そしてPCT/US2013/026514に説明されるように、チップ上にリン脂質二重層を確立する。PCT/US2013/026514(WO2013/123450として公開)に記載されるプロトコルにしたがって、Geniaの配列決定複合体を二重層に挿入する。20mM HEPES pH8、300mM KGlu、3μMタグ化ヌクレオチド、3mM Mg2+で構成される緩衝系を用い、80Hzの調節率で、235mVピーク間適用電圧で、孔寿命データを収集した。
[0136]図1A〜1B、2A〜2B、および3A〜3Bに示すように、1:6比のα−HL変異体−SpyTag(E111N+M113A+126−131G+K147N、配列番号20)およびα−HL変異体サブユニット(H35G+E111N+M113A+126−131G+H144A+K147N(配列番号19))を含むナノポアは、有意に改善された寿命を示した。そして、V149K置換は、改善されるナノポア寿命の全体のレベルを減少させたが、にもかかわらず、寿命は、5.4%から〜26%の孔が少なくとも1時間持続することによって改善された(対照に比較した際)(表1を参照されたい)。
表1−改善されたナノポア寿命に対するV149Kの評価。簡潔には、異なる条件下での通過時間および孔寿命両方に関して、異なる孔タイプを試験した。E111N+M113A+126−131G+K147Nは、スペースを節約するために「N修正」と称する。N修正孔は、H144AまたはV149K対応物よりもより長い孔寿命を有する。V149KおよびN修正突然変異が組み合わされると、生じる突然変異体は、0.0001μMに希釈された際、V149K単独よりも>2xの孔寿命を有する。
通過時間の評価
[0137]このアッセイは、交流電圧、すなわち方形波を用いて、ナノポアに付着したDNAポリメラーゼによってタグ化分子が捕捉されるためにかかる時間を測定するように設計された。
[0138]我々の配列決定複合体において、DNAポリメラーゼによってタグ化ヌクレオチドが捕捉されるためにかかる時間を測定するため、我々は、交互の正電圧および負電圧(方形波)を用いて、これにかかる時間量を決定するアッセイを考案した。我々の配列決定複合体は、単一DNAポリメラーゼに付着したタンパク質ナノポア(αHL)で構成される(実施例4を参照されたい)。タグ化ヌクレオチドは、負に荷電され、そしてしたがって、適用される電圧の性質が正である際に、ナノポアに誘引され、そしてナノポア配列決定複合体に適用される電圧が負である際に、反発する。したがって、我々は、正および負電位の間で電圧をサイクリングすることによって、タグが孔を通過するためにかかる時間を測定し、そしてタグが通過する(減少した電流の束(reduced current flux))際に対して、ナノポアの電流が遮られていない(開口チャネル)場合の時間がどのくらいかを決定することが可能である。
[0139]「通過時間」アッセイを実行するため、Genia Sequencingチップとともに、Genia Sequencingデバイスを用いる。電極を条件化し、そしてPCT/US2013/026514に説明されるように、チップ上にリン脂質二重層を確立する。PCT/US2013/026514(WO2013/123450として公開)に記載されるプロトコルにしたがって、Geniaの配列決定複合体を二重層に挿入する。20mM HEPES pH8、300mM KGlu、3μMタグ化ヌクレオチド、3mM Mg2+で構成される緩衝系を用い、80Hzの負荷サイクル、235mVピーク間適用電圧で、通過時間データを収集した。
[0140]データを収集した後、方形波の正の部分の最後まで持続し、そして続く方形波上の別のタグ捕捉が続く、タグ化ヌクレオチドの捕捉(通過レベル)を示した、方形波に関して、データを分析した。第二の方形波が、開口チャネル電流を閉塞していないと報告される時間の長さを決定することによって、通過時間を測定した。例として、10の連続方形波が、方形波の正部分の終わりまで持続するタグ化ヌクレオチド捕捉を示した場合、通過時間パラメータは、方形波2〜10(ポリメラーゼは以前の方形波において結合したタグを持たなかったため、第一の方形波は計算に組み込まれない)より計算されるであろう。次いで、これらの通過時間数を、実験における孔のすべてに関して収集し、そして統計パラメータをこれらから抽出した(例えば平均、中央値、標準偏差等)。
[0141]対照に比較した際の、H35G+V149K+H144A変異体に関する結果を、図4A〜4Bに示す。
[0142]引用リスト
特許文献
非特許文献
[0143]本明細書に引用される各特許、特許出願、刊行物、文書、GENBANK配列、ウェブサイト、および他の刊行資料の全体は、すべての表、図面、および図表を含めて、本明細書に援用される。すべての特許および刊行物は、各々が特にそして個々に本明細書に援用されると示されるのと同じ度合いまで、本明細書に援用される。上記特許、特許出願、刊行物および文書の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることの承認ではなく、あるいはこれらの刊行物または文書の内容または日付に関するいかなる承認も構成しない。本明細書に言及するすべての特許および刊行物は、本発明が関連する技術分野の一般の当業者の技術レベルを示す。

Claims (15)

  1. 配列番号14に示すアミノ酸配列のα−溶血素(α−HL)変異体であって、配列番号14に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、またはそれより高い配列同一性を有し、そして配列番号14のE111N/E111S、M113A/M113S、K147N/K147S、T145S、L135I、またはその組み合わせのいずれか1つに対応する位のアミノ酸置換を含む、前記α−溶血素変異体。
  2. 配列番号14に示すアミノ酸配列のH144Aに対応するアミノ酸置換をさらに含む、請求項1のα−溶血素変異体。
  3. 配列番号14に示すアミノ酸配列のH35Gに対応する置換をさらに含む、請求項1または2のα−溶血素変異体。
  4. 配列番号14に示すアミノ酸配列のアミノ酸127〜129に対応するポリG置換をさらに含む、請求項1〜3のいずれかのα−溶血素変異体。
  5. 配列番号14に示すアミノ酸配列のK131Gに対応する置換をさらに含む、請求項1〜4のいずれかのα−溶血素変異体。
  6. 配列番号14に示すアミノ酸配列のV149K、E287R、T109K、またはP151Kの任意の1つに対応する位、あるいはその組み合わせでのアミノ酸置換をさらに含む、請求項1〜5のいずれかのα−溶血素変異体。
  7. 配列番号17、18、19、20、または22に示す配列に対して、少なくとも80%、90%、95%、98%、またはそれより高い配列同一性を有する配列を有する、請求項1〜6のいずれか記載のα−溶血素変異体。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項記載の少なくとも1つのα−溶血素(α−HL)変異体を含む、七量体ナノポア集合体。
  9. アルファ溶血素変異体の1つに結合しているDNAポリメラーゼをさらに含む、請求項8のいずれかの七量体ナノポア集合体。
  10. 変異体が、イソペプチド結合を通じてDNAポリメラーゼに結合している、請求項9の七量体ナノポア集合体。
  11. 天然アルファ溶血素からなるナノポア集合体に比較して、増加した寿命を有する、請求項9または10記載の七量体ナノポア集合体。
  12. 天然アルファ溶血素からなる七量体ナノポア集合体に比較して、寿命が、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれより多く増加する、請求項11記載の七量体ナノポア集合体。
  13. ターゲット分子を検出するための方法であって:
    (a)膜において、検出電極に隣接してまたはその近傍に配置される、請求項8〜12記載の七量体ナノポアを含むチップを提供し;
    (b)該ナノポアを通じて核酸分子を導き、ここで該核酸分子はレポーター分子と会合し、該核酸分子はアドレス領域およびプローブ領域を含み、該レポーター分子は該プローブ領域で該核酸分子と会合し、そして該レポーター分子はターゲット分子とカップリングする;
    (c)該核酸分子が該ナノポアを通じて導かれる間に、該アドレス領域を配列決定して、該アドレス領域の核酸配列を決定し;そして
    (d)コンピュータプロセッサの補助で、(c)で決定した該アドレス領域の核酸配列に基づいて、該ターゲット分子を同定する
    工程を含む、前記方法。
  14. 核酸配列決定のための七量体ナノポア集合体であって:
    7つのアルファ溶血素単量体であって、各単量体が、配列番号17、18、19、20、または22に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、またはそれより高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記単量体;
    該7つのアルファ溶血素単量体の少なくとも1つに結合している、DNAポリメラーゼ
    を含む;
    該ナノポア集合体は、天然アルファ溶血素からなるナノポアに比較して、増加した寿命を有する、
    前記ナノポア集合体。
  15. 配列番号17、18、19、20、または22に示すアミノ酸配列のV149K置換をさらに含み、該V149K置換が通過時間(Time−To−Thread)を減少させる、請求項14の七量体ナノポア集合体。
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