発明の詳細な説明
本発明の実施態様を説明する際に、明確化のために特定の専門用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図したものではなく、それぞれの特定の用語は、同様の目的を達成するために同様の方法で作動する全ての技術的等価物を包含することが理解されよう。
本明細書に記載するように、本発明の発明者らは、WTAまたはCP、例えばCP5、に結合しかつFc領域に変異を含む抗体が、Fc領域に該変異を含まないことを除いて同じ抗体と比較して、WTAまたはCP、例えばCP5を発現する細菌に対する貪食を誘導する上で優れていることを見出した。Fc領域に特定の変異を導入することにより、細胞表面上での標的結合時のオリゴマー化が促進され得るが、該抗体分子は溶液中で単量体のままである(WO2013/004842、WO2014/108198)。
定義
本明細書で使用する用語「免疫グロブリン」は、1対の軽(L)低分子量鎖と1対の重(H)鎖の2対のポリペプチド鎖からなり、4本全てがジスルフィド結合によって潜在的に相互連結されている、構造的に関連した糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造はよく特徴付けられている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W.編, 第2版, Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。簡単に述べると、各重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、典型的には、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインからなる。重鎖は、いわゆる「ヒンジ領域」においてジスルフィド結合を介して相互連結されている。各軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLからなる。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(または構造的に規定されたループの配列および/または形態において超可変性であり得る超可変領域)にさらに分割することができ、この超可変領域には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が介在する。各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順で配置された3つのCDRと4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4 (Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901 917 (1987)も参照されたい)。特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本発明におけるアミノ酸位置への言及は、EUナンバリングに従うヒトIgG1に対応する(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(1):78-85; Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 1991 NIH Publication No. 91-3242)。さらに、特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、CDR領域はIMGTの定義に従ってアノテーションが付与される。
用語「免疫グロブリンIgG」、「IgG」および「免疫グロブリンG」は、本明細書中では相互交換可能に使用され得るが、これは、Gアイソタイプの免疫グロブリンを指す。
本明細書で使用する用語「ヒンジ領域」は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指すものとする。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、EUナンバリングによると、アミノ酸216-230に対応する。
本明細書で使用する用語「CH2領域」または「CH2ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指すものとする。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、EUナンバリングによると、アミノ酸231-340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれかであってもよい。
本明細書で使用する用語「CH3領域」または「CH3ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指すものとする。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、EUナンバリングによると、アミノ酸341-447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれかであってもよい。
用語「結晶性フラグメント領域」(fragment crystallizable region)、「Fc領域」、「Fcフラグメント」または「Fcドメイン」は、本明細書中では相互交換可能に使用され得るが、N末端からC末端の方向に、少なくともヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む抗体領域を指す。IgG1抗体のFc領域は、例えば、IgG1抗体をパパインで消化することによって生成され得る。抗体のFc領域は、様々な免疫系の細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体活性化の古典的経路の第1成分であるC1qなどの補体系の成分を含めて、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
本発明との関係において用語「Fabフラグメント」は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域ならびに軽鎖の定常領域およびCH1領域を含む、免疫グロブリン分子の断片を指す。「CH1領域」とは、例えば、EUナンバリングによると、アミノ酸118-215に対応するヒトIgG1抗体の領域を指す。したがって、Fabフラグメントは免疫グロブリンの結合領域を含む。
本明細書で使用する用語「抗体」(Ab)は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指す。本発明の抗体は、免疫グロブリンのFc領域および抗原結合領域を含む。抗体は、一般に、2つのCH2-CH3領域および連結領域、例えばヒンジ領域、例えば少なくともFc領域を含む。したがって、本発明の抗体は、Fc領域および抗原結合領域を含み得る。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。本明細書で使用する用語「抗体」はまた、特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体)、抗体混合物(組換えポリクローナル抗体)、キメラ抗体、およびヒト化抗体をも指す。本発明の抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。
本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する抗体を指す。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発、またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異、挿入または欠失)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
本明細書で使用する用語「哺乳動物抗体」は、哺乳動物生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する抗体を指す。
本明細書で使用する用語「有蹄動物抗体」は、有蹄動物生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する抗体を指す。
本明細書で使用する用語「キメラ抗体」は、重鎖および軽鎖が抗体エンジニアリングの結果としてキメラである抗体を指す。キメラ鎖は、ヒト由来の定常領域に連結された外来可変ドメイン(非ヒト種に由来するか、または合成もしくはヒトを含む任意の種から遺伝子工学的に作製される)を含む鎖である。
本明細書で使用する用語「ヒト化抗体」は、重鎖および軽鎖が抗体エンジニアリングの結果としてヒト化されている抗体を指す。ヒト化鎖は、典型的には、可変ドメインの相補性決定領域(CDR)が外来(ヒト以外の1つの種に由来するか、または合成)であるが、その鎖の残部がヒトに由来する鎖である。ヒト化の評価は、方法論それ自体に基づくのではなく、結果としてもたらされるアミノ酸配列に基づいており、移植以外のプロトコルを使用することが可能である。
本明細書で使用する用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンのクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgA2、IgEまたはIgM)を指す。標準的(canonical)な抗体を作製するには、各重鎖アイソタイプをカッパ(κ)軽鎖またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかと組み合わせるべきである。
本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などは、単一分子組成のAb分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する、単一の結合特異性を示すAbをいう。ヒトmAbは、機能的なヒト抗体を産生するように再配列されたヒト重鎖トランスジーンレパートリーとヒト軽鎖トランスジーンレパートリーを含むゲノムを有する、トランスジェニックまたはトランスクロモソーマル(transchromosomal)非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウス、から得られたB細胞を、不死化細胞に融合させた、ハイブリドーマによって産生され得る。さらに、mAbはまた、ファージディスプレイまたは当業者に公知の他の標準的な方法によっても産生され得る。
本明細書で使用する用語「完全長抗体」は、そのアイソタイプの野生型抗体に通常見出されるものに対応する全ての重鎖および軽鎖の定常ドメインと可変ドメインを含む抗体(例えば、親抗体または変異型抗体)を指す。
本明細書で使用する用語「オリゴマー」は、少なくとも原則的には、無制限の数のモノマーからなるポリマーとは対照的に、2つ以上であるが限られた数のモノマー単位(例えば、抗体)からなる分子を指す。例示的なオリゴマーは、ダイマー(2量体)、トリマー(3量体)、テトラマー(4量体)、ペンタマー(5量体)およびヘキサマー(6量体)である。多くの場合、オリゴマー中のモノマー単位の数を指定するためにギリシャ語の接頭語が使用されており、例えば、テトラマーは4つの単位を含み、ヘキサマーは6つの単位を含む。
本明細書で使用する用語「オリゴマー化」とは、分子を有限の重合度に変換するプロセスを指すものとする。本明細書においては、本発明による標的結合領域を含む抗体および/または他の2量体タンパク質は、例えば細胞表面での標的結合後に、Fc領域の非共有結合性会合によって、6量体などのオリゴマーを形成し得ることが観察される。
本明細書で使用する用語「Fc-Fc増強」とは、2つのFc領域含有抗体またはポリペプチドのFc領域間の結合強度を増加させるか、またはFc領域間の相互作用を安定化して、結果的に該ポリペプチドが標的結合時にオリゴマーを形成することを指すものとする。
本明細書で使用する用語「抗原結合性領域」、「抗原結合領域」、「結合領域」または「抗原結合ドメイン」は、抗原に結合することができる抗体の領域を指す。この結合領域は、典型的には、抗体のVHドメインとVLドメインによって規定され、これらのドメインは、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(すなわち、構造的に規定されたループの配列および/または形態において超可変性であり得る超可変領域)にさらに分割することができ、この超可変領域には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が介在する。抗原は、例えば細胞、細菌またはビリオン上に存在する、ポリペプチドなどの任意の分子であり得る。「抗原」および「標的」という用語は、文脈と矛盾しない限り、本発明との関係においては相互交換可能に使用することができる。
本明細書で使用する用語「標的」または「抗原」は、抗体の抗原結合領域が結合する分子を指す。標的には、分子に対して抗体が誘導される限り、あらゆる分子が含まれる。用語「抗原」および「標的」は、抗体との関連で、相互交換可能に使用することができ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成する。
本明細書で使用する用語「結合」は、抗体の抗原結合領域と、対応する標的との相互作用を指す。結合は、実施例5に記載されるFACSアッセイで測定することができる。個々の抗体についての抗体結合は、陰性対照のレベルを超える結合として測定される。陰性対照としては、抗体を含まないサンプルが使用され得る。
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸、糖側鎖またはそれらの組み合わせなどの、分子の表面グループからなり、通常、特定の3次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープの免疫優性成分とも呼ばれる)と、結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特定の抗原結合ペプチドによって効果的にブロックされたアミノ酸残基(言い換えれば、該アミノ酸残基は特定の抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)とを含むことができる。
本明細書で使用する用語「親和性」は、ある分子(例えば、抗体)の別の分子(例えば、標的または抗原)への単一部位での結合の強さ、例えば抗体の個々の抗原結合部位の抗原への1価結合の強さ、を指す。
本明細書で使用する用語「結合活性」は、2つの構造体間の複数の結合部位の合計した強さ、例えば標的と同時に相互作用する抗体の複数の抗原結合部位の合計した強さを指す。2つ以上の結合相互作用が存在する場合、2つの構造体は、全ての結合部位が解離した場合にのみ解離することになり、したがって、その解離速度は個々の結合部位の場合よりも遅くなり、それによって、個々の結合部位の結合強さ(親和性)と比較して、より一層有効な総結合強さ(結合活性)を提供する。
用語「壁タイコ酸」(WTA)は、ペプチドグリカン中のN-アセチルムラミン酸残基の6-OH基に、GlcNAc-1-PおよびN-アセチルマンノサミンからなる二糖を介して共有結合でつながれており、その後に2つのグリセロールリン酸(GroP)単位が続く、アニオン性の糖ポリマーを指す。一実施態様では、主なWTA骨格は、1,5-d-リビトールリン酸(RboP)の繰り返し単位または1,3-l-α-グリセロールリン酸(GroP)の繰り返し単位からなる。一実施態様では、WTAは、D-リビトールと2位のD-アラニルエステルと4位のグリコシル置換基の1,5-ホスホジエステル結合の繰り返し単位を有するリビトールタイコ酸である。グリコシル基は、黄色ブドウ球菌に存在するN-アセチルグルコサミニルα(アルファ)またはβ(ベータ)であり得る。アルジトール/糖アルコールリン酸繰り返し単位上のヒドロキシルは、カチオン性D-アラニンエステルおよびN-アセチルグルコサミンなどの単糖で置換される。一局面では、ヒドロキシル置換基は、D-アラニルおよびアルファ(α)またはベータ(β)GlcNHAcを含む。
用語「WTAに結合する抗体」、「抗WTA抗体」、「WTA結合抗体」、「WTA特異的抗体」、「WTA抗体」は、文脈と矛盾しない限り、本発明においては相互交換可能に使用することができ、WTA、例えばWTAアルファおよび/またはWTAベータ、に結合する任意の抗体を指す。用語「抗壁タイコ酸アルファ抗体」、「抗WTAアルファ抗体」、「抗WTAα」または「抗aGlcNac WTA抗体」は、壁タイコ酸(WTA)アルファに結合し、WTAベータに結合しない抗体を指すために相互交換可能に使用される。同様に、用語「抗壁タイコ酸ベータ抗体」、「抗WTAベータ抗体」、「抗WTAβ」または「抗PGlcNac WTA抗体」は、壁タイコ酸(WTA)ベータに特異的に結合する抗体を指すために相互交換可能に使用される。抗体がWTAベータに結合するということは、該抗体がWTAベータにのみ結合し、該抗体がWTAアルファに交差結合しないこととして理解されるべきである。
用語「莢膜多糖体」は、細菌細胞に結合して、細菌細胞表面を取り囲んでいる高分子量の莢膜多糖体を指す(莢膜多糖体は水溶性であり、ヘキソサミンウロン酸からなり、100〜2000kDa程度の分子量を有する;それらは線状であり、1〜6個の単糖の規則的に繰り返すサブユニットからなる)。
用語「莢膜多糖体5型」、「CP5」は、N-アセチルマンノサミンウロン酸、N-アセチル L-フコサミンおよびN-アセチル D-フコサミンの三糖繰り返し単位からなる莢膜多糖体の化学構造(→4)-3-O-Ac-β-D-ManNAcA-(1→4)-α-L-FucNAc-(1→3)-β-D-FucNAc-(1→)nを指す。
用語「CPに結合する抗体」、「抗CP抗体」、「CP結合抗体」、「CP特異的抗体」および「CP抗体」は、本明細書において相互交換可能に使用することができ、細菌上のCP(莢膜多糖体)に結合する任意の抗体を指す。
用語「抗CP5」および「抗CP5抗体」は、莢膜多糖体5型に結合する抗体を指す。この用語は、特に、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性細菌上に発現されたCP5に結合する抗体を指すことができる。
細菌は、伝統的に、そのグラム染色の保持に基づいて、グラム陽性(Gr+)およびグラム陰性(Gr−)の2つの主なグループに分けられる。グラム陽性細菌は、単一ユニットの脂質膜によって覆われており、一般に、グラム染色の保持に関与するペプチドグリカンの厚い層(20〜80nm)を含む。グラム陽性細菌は、グラム染色によって紺青色または紫色に染色されるものである。対照的に、グラム陰性細菌は、クリスタルバイオレット染色を保持することができず、代わりに、対比染色液(サフラニンまたはフクシン)を吸収して、グラム染色で赤色または桃色に見える(John G. Holt et al (1994). Bergey's Manual of Determinative Bacteriology (第9版). Lippincott Williams & Wilkins. p.11)。グラム陽性細胞壁は、典型的には、グラム陰性細菌に見出される外膜を欠いている。
グラム陽性細菌には、限定するものではないが、以下の群の細菌種が含まれる:スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、およびリステリア属(Listeria)。
用語「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)は、多剤耐性黄色ブドウ球菌またはオキサシリン耐性黄色ブドウ球菌(ORSA)の別名でも知られており、ペニシリン類(例えば、メチシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリンなど)を含むβ-ラクタム系抗生物質およびセファロスポリン類に耐性を示す黄色ブドウ球菌のいずれかの株を指す。「メチシリン感受性黄色ブドウ球菌」(Methicillin-sensitive Staphylococcus aureus:MSSA)は、β-ラクタム系抗生物質に感受性を示す黄色ブドウ球菌のいずれかの株を指す。
用語「菌血症」は、血液の培養を通して最もよく検出される、血流中の細菌の存在を指す。細菌は、(肺炎または髄膜炎のような)感染症の重度の合併症として、手術中に(特に胃腸管などの粘膜が関係する場合)、またはカテーテルおよび動脈もしくは静脈に入った他の異物のために、血流に入ることがある。菌血症はいくつかの好ましくない事態・結果をもたらし得る。細菌に対する免疫応答は、敗血症および敗血症性ショックを引き起こすことがあり、それらの死亡率は比較的高い。細菌はまた、血液を使って身体の他の部分にも広がり、元の感染部位以外の部位に感染を引き起こす可能性がある。元の感染部位以外の部位に感染を起こさせる例としては、心内膜炎または骨髄炎が挙げられる。
用語「エフェクター機能」は、抗体のアイソタイプによって変化する、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例としては、以下が挙げられる:貪食、補体活性化、オプソニン化、C5aによる食細胞活性化、食細胞依存性殺菌、C1q結合、補体活性化、補体依存性細胞傷害(CDC)、FcRn結合、Fcγ受容体結合を含むFc受容体結合、プロテインA結合、プロテインG結合、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、補体依存性細胞傷害(CDCC)、補体増強細胞傷害、オプソニン化、Fc含有ポリペプチドの内在化、ADC取り込み。
用語「貪食」は、細菌が宿主細胞(例えば、マクロファージまたは好中球)によって取り込まれるまたは内在化されるプロセスを指す。食細胞は3つの経路によって貪食を媒介する:(i)直接的な細胞表面受容体(例えば、レクチン、インテグリンおよびスカベンジャー受容体);(ii)補体による増強 - 補体オプソニン化病原体に結合して取り込むために補体受容体(例えば、CR1、C3b、CR3、CR4、CRIgの受容体)を使用する;および(iii)抗体による増強 - 抗体オプソニン化粒子に結合するためにFc受容体(例えば、FcgammaRI、FcgammaRIIAおよびFcgammaRIIIA)を使用する(その後、オプソニン化粒子は内在化され、リソソームと融合してファゴリソソームとなる)。
本明細書で使用する用語「治療」(およびその文法的変形、例えば「治療する」または「治療すること」など)は、臨床病理の経過中に治療される個体、組織または細胞の自然経過を変えるように設計された臨床介入を指す。治療の望ましい効果としては、限定するものではないが、疾患の原因となる生物、例えば細菌、のクリアランス、疾病の進行速度の低下、病状の改善または軽減、および寛解または予後の改善が挙げられ、これら全ては医師などの当業者によって測定可能である。一実施態様では、治療は、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の減少、感染症の進行速度の低下、病状の改善または軽減、および寛解または予後の改善を意味し得る。いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるために、または感染性疾患の進行を遅くするために使用される。
本発明の「変異体」または「抗体変異体」は、「親」抗体と比較して、1つまたは複数の変異を含む抗体分子である。例示的な親抗体には、野生型抗体、完全長抗体もしくはFc含有抗体フラグメント、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
例示的な変異には、親アミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、挿入および置換が含まれる。アミノ酸の置換は、天然のアミノ酸を、別の天然のアミノ酸または天然に存在しないアミノ酸誘導体と交換することができる。アミノ酸置換は保存的または非保存的であり得る。本発明との関係においては、置換は、以下の3つの表のうちの1つまたは複数に反映されたアミノ酸のクラスに従うことによって規定され得る。
本発明のためには、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)のNeedleプログラム、好ましくはバージョン5.0.0以降、で実行されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)を用いて決定される。使用されるパラメータは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、およびEBLOSUM62 (BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」(longest identity)と表示されたNeedleの出力(-nobriefオプションを使用して取得)は、同一性パーセントとして使用され、次のように計算される:
(同一の残基×100)/(アライメントの長さ−アライメントにおけるギャップの総数)。
本発明のためには、2つのデオキシリボヌクレオチド配列間の配列同一性は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, 上記参照)のNeedleプログラム、好ましくはバージョン5.0.0以降、で実行されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, 上記参照)を用いて決定される。使用されるパラメータは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、およびEDNAFULL (NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」と表示されたNeedleの出力(-nobriefオプションを使用して取得)は、同一性パーセントとして使用され、次のように計算される:
(同一のデオキシリボヌクレオチド×100)/(アライメントの長さ−アライメントにおけるギャップの総数)。
CDR変異体の配列は、親抗体配列のCDRの配列とは、主に保存的、物理的または機能的なアミノ酸の置換により異なっていてよく、抗体結合領域の6つのCDR配列にわたって、全部で多くても5回の、保存的、物理的もしくは機能的なアミノ酸から選択される変異または置換により、例えば、抗体結合領域の6つのCDR配列にわたって、全部で多くても4回の、保存的、物理的もしくは機能的なアミノ酸から選択される変異または置換により、例えば、多くても3回の、保存的、物理的もしくは機能的なアミノ酸から選択される変異または置換により、例えば、多くても2回の、保存的、物理的もしくは機能的なアミノ酸から選択される変異または置換により、例えば、抗体結合領域の6つのCDR配列にわたって、全部で多くても1回の、保存的、物理的もしくは機能的なアミノ酸から選択される変異または置換により、親抗体配列のCDRの配列とは異なり得る。保存的、物理的もしくは機能的アミノ酸は、存在する20種の天然アミノ酸、すなわちArg、His、Lys、Asp、Glu、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Gly、Pro、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、TyrおよびValから選択される。
別の配列のアミノ酸またはセグメントに「対応する」ある配列のアミノ酸またはセグメントは、(i) ALIGN、ClustalWなどの標準的な配列アライメントプログラムを用いて、他のアミノ酸またはセグメントとアライメントするものである。
本明細書で使用する用語「ベクター」は、ベクターに連結された核酸セグメントの転写を誘導することができる核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは環状二本鎖DNAループの形態である。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、このベクターでは核酸セグメントがウイルスゲノムに連結される。ある種のベクターは、それらが導入された宿主細胞内での自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーマル哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製され得る。さらに、ある種のベクターは、それらに機能的に連結された遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。本明細書では、プラスミドが最もよく用いられるベクターの形態であることから、「プラスミド」と「ベクター」は相互交換可能に使用することができる。しかし、本発明は、同等の機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、他の形態の発現ベクターを含むことが意図される。
本明細書で使用する用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、発現ベクターが導入されている細胞を指すものとする。こうした用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫をも指すものと理解すべきである。後続の世代では突然変異または環境の影響のためにある種の改変が起こることがあるので、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一ではないかもしれないが、本明細書で使用する用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。組換え宿主細胞には、例えば、トランスフェクトーマ、例えばCHO-S細胞、HEK-293F細胞、Expi293F細胞、PER.C6、NS0細胞、およびリンパ球細胞、ならびに大腸菌(E. coli)などの原核細胞、植物細胞および真菌などの他の真核細胞宿主が含まれる。
本発明の具体的な実施態様
本発明は、少なくとも一部には、WTAまたはCP、例えばCP5を発現する細菌に対する貪食を引き起こす補体活性化を誘導する抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体の能力が、EUナンバリングに従うヒトIgG1のアミノ酸位置E430、E345またはS440に対応するFc領域に特定の変異を導入することによって、大幅に増強され得るという発見に基づいている。
EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430、E345およびS440に対応するアミノ酸位置は、Fc領域のCH3ドメインに位置する。
ヒトIgG1の位置E430、E345およびS440の少なくとも1つに対応するFc領域に変異を導入することによって、細胞表面上での標的結合時のオリゴマー化が促進される一方で、抗体分子は溶液中で単量体のままである(WO2013/004842; WO2014/108198)。
本発明の一実施態様では、前記抗体は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WまたはS440Yから選択される変異を有するFc領域を含む。したがって、本発明の一実施態様では、該抗体は、変異がE430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択されるFc領域を含む。
本発明の特定の実施態様では、前記抗体は、変異がE430GまたはE345KであるFc領域を含む。
本発明の一実施態様では、抗体は、位置K439またはS440に対応するFc領域にさらなる置換を含むが、S440における変異はS440YまたはS440Wではないことを条件とする。
本発明によるFc-Fc増強置換、および位置S440でのさらなる変異、例えばS440K、を含む抗体は、位置S440での置換、例えばS440K、を含むポリペプチドまたは抗体とのオリゴマーを形成しない。本発明によるFc-Fc増強置換、および位置K439でのさらなる変異、例えばK439E、を含む抗体は、位置K439での変異、例えばK439E、を含むポリペプチドまたは抗体とのオリゴマーを形成しない。本発明の一実施態様では、該さらなる変異は、S440KおよびK439Eからなる群より選択される。
本発明の一実施態様では、Fc領域は、6量体化を阻害するさらなる変異、例えばK439EまたはS440Kを含む。すなわち、本発明の一実施態様では、Fc領域は、E430GなどのFc-Fc増強変異および6量体化阻害変異K439Eを含む。本発明の一実施態様では、Fc領域は、E345KなどのFc-Fc増強変異およびK439Eなどの6量体化阻害変異を含む。本発明の別の実施態様では、Fc領域は、E430GなどのFc-Fc増強変異および6量体化阻害変異S440Kを含む。本発明の一実施態様では、Fc領域は、E345KなどのFc-Fc増強変異および6量体化阻害変異S440Kを含む。それによって、K439E変異を含む抗体とS440K変異を含む抗体との組み合わせの間で排他的な6量体化を可能にする実施態様が提供される。すなわち、阻害変異K439EおよびS440Kは、相補的変異と見なすことができる。2つの異なる6量体化阻害変異を有する抗体の組み合わせは、異なる特異性を有する少なくとも2種類の抗体を含む組成物において特に注目に値しうる。
本発明の一実施態様では、前記抗体は、a) E430、E345およびS440からなる群より選択される位置での少なくとも1つのFc-Fc増強変異と、b) K439EまたはS440K変異とを含む。
一局面において、本発明は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、WTAに結合する抗原結合領域とを含む抗体であって、該Fc領域が、EUナンバリングに従うヒトIgG1の位置E430、E345またはS440に対応する変異を含む、該抗体に関する。
本発明の一実施態様では、前記抗体は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、グラム陽性細菌の表面上のWTAに結合する抗原結合領域とを含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1の位置E430、E345またはS440に対応する変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記抗体は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、WTAに結合する抗原結合領域とを含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1の位置E430、E345またはS440に対応する変異を含む。本発明の一実施態様では、抗原結合領域はWTA-αに結合する。本発明の一実施態様では、抗原結合領域はWTA-βに結合する。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含み、該変異はEUナンバリングに従うヒトIgG1のアミノ酸位置に対応する。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E430G、E430S、E430FおよびE430Tからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE430G変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、ヒトIgG1のE345に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E345K、E345Q、E345RおよびE345Yからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE345K変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE345R変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のS440に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のS440に対応するアミノ酸位置に変異を含むが、S440における変異はS440YまたはS440Wであることを条件とする。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、S440YおよびS440Wからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はS440Y変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はS440W変異を含む。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、WTAに結合する抗原結合領域とを含み、該Fc領域はE430GまたはE345K変異を含む。一実施態様では、抗WTA抗体は抗WTA-α抗体である。別の実施態様では、抗WTA抗体は抗WTA-β抗体である。すなわち、本発明による抗体は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430、E345またはS440に対応するアミノ酸位置に変異を有する、ヒト免疫グロブリンGのFc領域を含む。本発明による抗WTA抗体は、抗WTA-α抗体または抗WTA-β抗体のいずれかであり得る。
WTAは、黄色ブドウ球菌、ならびにスタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、エンテロコッカス属、およびリステリア属の菌種を含めて、多くのグラム陽性細菌上に発現される。したがって、一実施態様では、該WTAは、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、エンテロコッカス属、およびリステリア属のうちの1つまたは複数に発現されたWTAである。さらなる実施態様では、該WTAは黄色ブドウ球菌上に発現される。別の実施態様では、該WTAはスタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)上に発現される。WTAはグラム陽性細菌の全細胞壁質量の60%も占めることができる。本発明は特定の抗WTA抗体に限定されず、また、抗体を作製する方法はどれも、本発明との関連において使用することができる。抗WTA抗体は、例えば、US 8283294; Meijer PJ et al (2006) J Mol Biol. 358(3):764-72; Lantto J, et al (2011) J Virol. 85(4): 1820-33に教示される方法によって選択および生産することができる。
WTAの化学構造は生物により異なる。黄色ブドウ球菌では、WTAは、N-アセチルムラミン酸(MurNAc)の6-OHに、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)-1-PとN-アセチルマンノサミン(ManNAc)からなる二糖を介して共有結合でつながれており、その後に約2または3単位のグリセロールリン酸が続く。実際のWTAポリマーは、その後、約11〜40のリビトールリン酸(Rbo-P)繰り返し単位から構成される。WTAの段階的合成は、最初に、TagOと呼ばれる酵素によって開始される。該繰り返し単位は、a-(アルファ)またはP-(ベータ)グリコシド結合を介してC2-OHでD-アラニン(D-Ala)と、かつ/またはC4-OH位置でN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と結合してさらに調整され得る。黄色ブドウ球菌株、または該細菌の増殖期に応じて、グリコシド結合はα-、β-または2つのアノマーの混合物であり得る。これらのGlcNAc糖修飾は、2つの特異的な黄色ブドウ球菌由来のグリコシルトランスフェラーゼ(Gtf)によって調整されている:TarM Gtfはα-グリコシド結合を媒介し、一方TarS Gtfはβ-(ベータ)グリコシド結合を媒介する。WTAが表面に露出しておりかつ複数の繰り返しエピトープからなるという事実は、WTAを抗体媒介療法(antibody-mediated therapy)のための理想的な標的にしている。
それにより、本発明の抗体がWTAに結合する、本発明の実施態様が提供される。本発明の一実施態様では、該抗体は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、WTAに結合する抗原結合領域とを含む。本発明の一実施態様では、該抗体は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、WTA-αに結合する抗原結合領域とを含む。本発明の一実施態様では、該抗体は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、WTA-βに結合する抗原結合領域とを含む。本発明の一実施態様では、該抗体はグラム陽性細菌上のWTA-αに結合する。本発明の一実施態様では、該抗体はグラム陽性細菌上のWTA-βに結合する。本発明の一実施態様では、該抗体は黄色ブドウ球菌上のWTA-αに結合する。本発明の一実施態様では、該抗体は黄色ブドウ球菌上のWTA-βに結合する。
本発明の抗体は、抗体が細菌に結合したときにオリゴマー化を増強する変異をFc領域に含む。理論に拘束されるものではないが、増強されたオリゴマー化は、補体系の活性化の増強および宿主からの細菌の食細胞依存性クリアランスをもたらすと考えられる。
人体からのグラム陽性細菌の効果的な根絶は、細菌を飲み込んで細胞内で殺傷することができる、好中球のようなプロフェッショナル食細胞による細菌の貪食に大きく依存している。好中球欠損患者における再発性感染は、多くの黄色ブドウ球菌感染を含めて、グラム陽性細菌に対するヒトの抗菌防御において好中球が極めて重要であることを示している[Bardoel BW, Kenny EF, Sollberger G, Zychlinsky A: The Balancing Act of Neutrophils. Cell Host Microbe 2014, 15:526-536]。グラム陽性細菌と補体系との接触は、C3b/C3bi分子による細菌表面の迅速なオプソニン化をもたらす。このプロセスは、食細胞による細菌の貪食に不可欠である。本発明の抗体は、グラム陽性細菌に対する抗体依存性補体活性化と、その後の免疫細胞による貪食を増強する。
一局面において、本発明は、抗WTA-αまたは抗WTA-βである抗WTA抗体を提供する。一実施態様では、抗WTA抗体はヒトモノクローナル抗体である。本発明はまた、キメラ抗体およびヒト化抗体も包含する。さらなる実施態様では、本発明の抗体は、表1に開示される本WTA抗体のCDRを含むことができる。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体は、以下のアミノ酸配列を有する、CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む可変重鎖(VH)領域と、CDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む可変軽鎖(VL)領域とを含む抗原結合領域を含む:
a) (VH) SEQ ID NO: 1、2、3および(VL) SEQ ID NO: 5、WAS、6;または
b) 6つのCDR配列にわたって全部で1〜5個の変異または置換を有する、a)に定義される(VH) CDR1、CDR2、CDR3および(VL) CDR1、CDR2、CDR3。
すなわち、一実施態様では、抗原結合部位を含む6つのCDRにわたって、全部で5個までの変異、例えば置換、が許容される。本発明のある実施態様では、VH領域の3つのCDRにわたって5個までの変異(例えば、置換)、例えば1、2、3、4または5個の変異(例えば、置換)が存在し、VL領域のCDRにわたっては変異が存在しない。他の実施態様では、VH領域のCDRにわたっては変異(例えば、置換)が存在しないが、VL領域のCDRにわたって5個までの変異(例えば、置換)、例えば1、2、3、4または5個の変異が見出される。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WまたはS440Yから選択される変異を有するFc領域を含む。本発明の一実施態様では、抗WTA抗体は、該変異がE430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択されるFc領域を含む。本発明の特定の実施態様では、抗WTA抗体は、該変異がE430GまたはE345KであるFc領域を含む。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体は、E430GまたはE345K変異を含むFc領域と、以下のアミノ酸配列:
a) (VH) SEQ ID NO: 1、2、3および(VL) SEQ ID NO: 5、WAS、6;
b) (VH) SEQ ID NO: 35、36、37および(VL) SEQ ID NO: 39、DAS、40;
を有する、CDR1、CDR2、CDR3ドメインを含む可変重鎖(VH)領域およびCDR1、CDR2、CDR3ドメインを含む可変軽鎖(VL)領域を含む抗原結合領域とを含む。
本発明の別の局面では、前記抗体は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、細菌の表面上の莢膜多糖体5型(CP5)などの莢膜多糖体(CP)に結合する抗原結合領域とを含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430、E345またはS440に対応する変異を含む。一実施態様では、該細菌はグラム陽性細菌である。
本発明の別の実施態様では、前記抗体は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、莢膜多糖体5型(CP5)などの莢膜多糖体(CP)に結合する抗原結合領域とを含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430、E345またはS440に対応する変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含み、該変異はEUナンバリングに従うヒトIgG1のアミノ酸位置に対応する。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E430G、E430S、E430FおよびE430Tからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE430G変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE345に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E345K、E345Q、E345RおよびE345Yからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE345K変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE345R変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のS440に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はS440YおよびS440Wからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はS440Y変異を含む。
一実施態様では、抗CP抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はS440W変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含み、該変異はEUナンバリングに従うヒトIgG1のアミノ酸位置に対応する。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E430G、E430S、E430FおよびE430Tからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE430G変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE345に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、E345K、E345Q、E345RおよびE345Yからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE345K変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はE345R変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のS440に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域は、S440YおよびS440Wからなる群より選択される変異を含む。
一実施態様では、抗CP5抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はS440Y変異を含む。
一実施態様では、抗WTA抗体はヒトIgGのFc領域を含み、該Fc領域はS440W変異を含む。
莢膜多糖体は、侵襲性疾患を引き起こす病原性細菌の共通の毒性構造物である。莢膜は、細菌を貪食に対して耐性にすることによって、細菌の毒力を増加させる。莢膜多糖体5型(CP5)は、臨床的な黄色ブドウ球菌株によって産生される主な血清型であり、莢膜多糖体5型(CP5)からなる血清型が全ての臨床分離株の約75%を占めている。CP5の発現は、インビボでの黄色ブドウ球菌の毒力および生存を高めることが示されている。貪食による取り込みの阻害に次いで、CP5の発現は細菌の細胞内殺傷からの保護をもたらすことが記載されている。黄色ブドウ球菌は様々な表面多糖体を産生しており、ほとんどの菌株はインビボまたは規定の培養条件下で莢膜多糖体(CPs)を発現する。好中球系の顆粒球による貪食および殺傷は、黄色ブドウ球菌感染からの防御において重要な役割を担っている。大部分のCPは、抗貪食特性を有することが示されている。CPが表面に露出されておりかつ複数の繰り返しエピトープからなるという事実は、CPを抗体媒介療法のための理想的な標的にしている。
黄色ブドウ球菌上に発現されるCP5は、2-アセトアミド-2-デオキシ-L-フコース(1部)、2-アセトアミド-2-デオキシ-D-フコース(1部)、および2-アセトアミド-2-デオキシ-D-マンヌロン酸(1部)から構成される。
本発明の一実施態様では、抗CP5抗体は、以下のアミノ酸配列を有する、CDR1、CDR2、CDR3ドメインを含む可変重鎖(VH)領域およびCDR1、CDR2、CDR3ドメインを含む可変軽鎖(VL)領域を含む抗原結合領域を含む:
a) (VH) SEQ ID NO: 8、9、10および(VL) SEQ ID NO: 12、LAS、13;または
b) 上記6つのCDR配列わたって全部で1〜5個の変異または置換を有する、a)に定義される(VH) CDR1、CDR2、CDR3および(VL) CDR1、CDR2、CDR3。
すなわち、一実施態様では、抗原結合部位を含む6つのCDRにわたって、全部で5個までの変異、例えば置換、が許容される。本発明のある実施態様では、VH領域の3つのCDRにわたって5個までの変異(例えば、置換)、例えば1、2、3、4または5個の変異(例えば、置換)が存在し、VL領域のCDRにわたっては変異が存在しない。他の実施態様では、VH領域のCDRにわたっては変異(例えば、置換)が存在しないが、VL領域のCDRにわたって5個までの変異(例えば、置換)、例えば1、2、3、4または5個の変異が見出される。
本発明の一実施態様では、抗CP5抗体は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WまたはS440Yから選択される変異を有するFc領域を含む。本発明の一実施態様では、抗CP5抗体は、該変異がE430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択されるFc領域を含む。本発明の特定の実施態様では、抗CP5抗体は、該変異がE430GまたはE345KであるFc領域を含む。
本発明の抗体は、ヒトおよび動物の多数のグラム陽性細菌に対して有効な抗菌剤として役に立ち、そのようなグラム陽性細菌には、スタフィロコッカス属、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus)、S.シミュランス(S. simulans)およびS.ワーネリ(S. warneri);リステリア属、例えば、L.モノサイトゲネス(L. monocytogenes);エンテロコッカス属、例えば、フェカリス菌(E. faecalis)、フェシウム菌(E. faecium);ストレプトコッカス属、例えば、肺炎レンサ球菌(S. pneumoniae)、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)、アガラクチア菌(S. agalactiae)、豚レンサ球菌(S. suis);バチルス属、例えば、炭疽菌(B. anthracis);クロストリジウム属、例えば、ディフィシル菌(C. difficile);コリネバクテリウム属、例えば、ジフテリア菌(C. diphteriae)が含まれる。
血流に侵入した後、黄色ブドウ球菌はほとんど全ての器官で転移性感染を引き起こす可能性がある。二次感染は、治療開始前のケースの約3分の1で発生し(Fowler et al, (2003) Arch. Intern. Med. 163:2066-2072)、治療開始後でも患者の10%に発生する(Khatib et al., (2006) Scand. J. Infect. Dis., 38:7-14)。感染の顕著な特徴は、大量の膿の蓄積、組織の破壊、および膿瘍の形成である(いずれも大量の好中球を含む)。菌血症が48時間以内に消失する場合には、患者の約5%が合併症を発症するにすぎないが、菌血症が3日を超えて持続する場合には、そのレベルは40%に上昇する。黄色ブドウ球菌は手術部位感染症(surgical site infection:SSI)の主な原因である。特に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によって引き起こされるSSIは、深刻な合併症として浮上してきており、死亡率の増加、入院期間の長期化、費用の増加につながっている。それは、菌血症および感染性心内膜炎の主な原因であるだけでなく、骨関節の、皮膚と軟部組織の、胸膜肺の、および医療機器関連の感染症の主な原因でもある。
本発明の一実施態様では、グラム陽性細菌は、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、エンテロコッカス属、およびリステリア属の菌種から選択される。
本発明の一実施態様では、スタフィロコッカス属は、例えば、黄色ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、S.ワーネリ、またはS.シミュランスである。本発明の一実施態様では、ストレプトコッカス属は、例えば、肺炎レンサ球菌である。本発明の一実施態様では、クロストリジウム属は、例えば、ディフィシル菌である。本発明の一実施態様では、エンテロコッカス属は、例えば、フェカリス菌である。本発明の一実施態様では、リステリア属は、例えば、リステリア・モノサイトゲネスである。
本発明の特定の実施態様では、前記抗体は、黄色ブドウ球菌であるグラム陽性細菌上のWTAまたはCP5に結合する。本発明の別の実施態様では、黄色ブドウ球菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)である。本発明のさらなる実施態様では、黄色ブドウ球菌は、薬物によるこれまでの治療に対して耐性または非感受性である。すなわち、黄色ブドウ球菌は、抗生物質、例えばトリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX)、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、リファンピン、バンコマイシンまたはリネゾリドなど、によるこれまでの治療に耐性であり得る。
本発明の一実施態様では、前記抗体はモノクローナル抗体である。本発明の一実施態様では、該抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgDまたはIgMアイソタイプである。本発明の好ましい実施態様では、該抗体はIgG1またはIgG2アイソタイプである。
本発明の一実施態様では、前記抗体は哺乳動物、ヒト、または有蹄動物の抗体である。
本発明の一実施態様では、前記抗体はヒト化抗体またはキメラ抗体である。
本発明の一実施態様では、前記抗体はモノクローナル抗体である。
本発明の一実施態様では、軽鎖はκ(カッパ)またはλ(ラムダ)である。
一実施態様では、前記抗体は完全長抗体である。
本発明の一実施態様では、前記抗体は、以下の群のアミノ酸配列を含むFc領域を含む:
a) SEQ ID NO 15: IgG1, 430G;
b) SEQ ID NO 16: IgG1, 345K;
c) SEQ ID NO 17: IgG1, 430S;
d) SEQ ID NO 18: IgG1, E430F;
e) SEQ ID NO 19: IgG1, E430T;
f) SEQ ID NO 20: IgG1, E345Q;
g) SEQ ID NO 21: IgG1, E345R;
h) SEQ ID NO 22: IgG1, E345Y;
i) SEQ ID NO 23: IgG1, S440W;
j) SEQ ID NO 24: IgG1, S440; または
k) 上記配列にわたって全部で1〜5個の変異もしくは置換を有するa)〜j)のいずれか。
すなわち、一実施態様では、Fc領域にわたって、全部で5個までの変異または置換が許容される。本発明のある実施態様では、Fc領域にわたって、5個までの変異または置換、例えば1、2、3、4または5個の変異または置換が許容される。これにより、Fc領域における保存的変異を可能にする実施態様が提供され、そのような変異は、本発明によるFc領域の6量体促進機能を損なうことがない。
本発明の一実施態様では、抗体は、以下の群のアミノ酸配列を含むFc領域を含む:
a) SEQ ID NO 25: IgG2, E430G;
b) SEQ ID NO 26: IgG2, E345K;
c) SEQ ID NO 27: IgG2, E430S;
d) SEQ ID NO 28: IgG2, E430F;
e) SEQ ID NO 29: IgG2, E430T;
f) SEQ ID NO 30: IgG2, E345Q;
g) SEQ ID NO 31: IgG2, E345R;
h) SEQ ID NO 32: IgG2, E345Y;
i) SEQ ID NO 33: IgG2, S440W;
j) SEQ ID NO 34: IgG2, S440; または
k) 上記配列にわたって全部で1〜5個の変異もしくは置換を有するa)〜j)のいずれか。
すなわち、一実施態様では、Fc領域にわたって、全部で5個までの変異または置換が許容される。本発明のある実施態様では、Fc領域にわたって、5個までの変異または置換、例えば1、2、3、4または5個の変異または置換が許容される。これにより、Fc領域における保存的変異を可能にする実施態様が提供され、そのような変異は、本発明によるFc領域の6量体促進機能を損なうことがない。
本発明の一実施態様では、抗体は、以下からなる群のアミノ酸配列:
a) SEQ ID NO 15: IgG1, 430G;
b) SEQ ID NO 16: IgG1, 345K;
c) SEQ ID NO 17: IgG1, 430S;
d) SEQ ID NO 18: IgG1, E430F;
e) SEQ ID NO 19: IgG1, E430T;
f) SEQ ID NO 20: IgG1, E345Q;
g) SEQ ID NO 21: IgG1, E345R;
h) SEQ ID NO 22: IgG1, E345Y;
i) SEQ ID NO 23: IgG1, S440W; または
j) SEQ ID NO 24: IgG1, S440;
を含むFc領域を含み、a)〜j)のFc領域はK439EまたはS440K置換をさらに含む。
本発明の一実施態様では、前記抗体は、以下からなる群のアミノ酸配列:
a) SEQ ID NO 25: IgG2, E430G;
b) SEQ ID NO 26: IgG2, E345K;
c) SEQ ID NO 27: IgG2, E430S;
d) SEQ ID NO 28: IgG2, E430F;
e) SEQ ID NO 29: IgG2, E430T;
f) SEQ ID NO 30: IgG2, E345Q;
g) SEQ ID NO 31: IgG2, E345R;
h) SEQ ID NO 32: IgG2, E345Y;
i) SEQ ID NO 33: IgG2, S440W; または
j) SEQ ID NO 34: IgG2, S440;
を含むFc領域を含み、a)〜j)のFc領域はK439EまたはS440K置換をさらに含む。
本発明の一実施態様では、前記抗体は貪食を増強する。理論に拘束されるものではないが、本発明の抗体が細菌上のWTAまたはCP5に結合すると、Fc領域の変異が細菌上での抗体のオリゴマー化を高めると考えられる。細菌上での6量体構造などのオリゴマー抗体構造物の形成は、好中球、マクロファージ、樹状細胞などの免疫細胞による細菌の貪食を増強する。本発明の抗体は、グラム陽性細菌に対する抗体依存性補体活性化と、その後の免疫細胞による貪食を増強する。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体は、WTAを発現している標的細胞上での抗体のオリゴマー化を誘導する;そのような抗WTA抗体は、グラム陽性細菌上のWTA-αまたはWTA-βのいずれかに結合する抗WTA-α抗体または抗WTA-β抗体のいずれかであり得る。
本発明の一実施態様では、抗CP5抗体は、CP5を発現している標的細胞上での抗体のオリゴマー化、例えば6量体化を誘導する。
本発明の一実施態様では、前記抗体は補体の存在下で貪食を増強する。すなわち、細菌上での抗WTA抗体または抗CP5抗体のオリゴマー化は、該抗体のFc領域への補体因子C1qの結合を促進してC1q:抗体複合体を生成し、該複合体は食細胞上のC1q受容体へのC1qの結合を可能にし、それによって貪食を増強する。
本発明の一実施態様では、前記抗体は免疫細胞による細菌の貪食を増強する。すなわち、本発明の抗体は、好中球、単球、マクロファージ、クッパー細胞、樹状細胞、抗原提示細胞などの免疫細胞による貪食を増強することができる。
本発明の一実施態様では、前記抗体は好中球媒介性の貪食を増強する。好中球媒介性の貪食は、実施例6または実施例8のように測定することができる。本発明による抗体を、ヒト血清、蛍光標識した黄色ブドウ球菌およびヒト好中球と共にインキュベートする。貪食をフローサイトメトリーにより定量する。
本発明の一実施態様では、前記抗体はグラム陽性細菌に対する補体活性化を増強する。すなわち、一実施態様では、該抗体は補体タンパク質C4のC4bへの活性化を増強する。一実施態様では、該抗体は補体タンパク質C3のC3bへの活性化を増強する。グラム陽性細菌細胞に対するC3の活性化は、C3由来のオプソニン(C3bおよびC3bi)による該細菌のオプソニン化をもたらす。
本発明の一実施態様では、前記抗体は補体媒介食細胞活性化を増強する。すなわち、一実施態様では、該抗体は化学誘引物質C5aの形成を増強する。
本発明の一実施態様では、前記抗体は補体媒介殺傷を増強する。
組成物
本発明の一局面は、本発明の抗体を含む組成物に関する。したがって、本発明による組成物は、本明細書に記載されるいずれかの実施態様による抗体を含む。
本発明のいずれかの局面または態様によるモノクローナル抗体などの抗WTA抗体、抗CP抗体または抗CP5抗体は、組成物、例えば薬学的組成物、診断用組成物または任意の他の組成物中に含まれ得る。
一実施態様では、本発明は、本発明による抗体と、薬学的担体または薬学的賦形剤とを含む組成物に関する。
一局面において、本発明は、本明細書に記載されるいずれかの局面による抗体を含む組成物に関する。
一局面において、本発明は、WTAまたはCP、例えばCP5、に結合する抗原結合領域を含む抗体を含む組成物に関し、該抗体のFc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のアミノ酸位置E430、E345またはS440に対応する変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、WTAに結合する抗原結合領域を含む抗体を含み、該抗体のFc領域は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含む。一実施態様では、該組成物はWTA-αに結合する抗体を含む。一実施態様では、該組成物はWTA-βに結合する抗体を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域は、ヒトIgG1のE430に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域は、E430G、E430S、E430FおよびE430Tからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域はE430G変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域は、ヒトIgG1のE345に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域は、E345K、E345Q、E345RおよびE345Yからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域はE345K変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域はE345R変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域は、ヒトIgG1のS440に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域は、S440YおよびS440Wからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域はS440Y変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域はS440W変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、WTAに結合する抗原結合領域とを含む抗WTA抗体を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430GまたはE345Kに対応する変異を含む。本発明の一実施態様では、前記組成物は、抗WTA-α抗体である抗WTA抗体を含む。本発明の別の実施態様では、前記組成物は、抗WTA-β抗体である抗WTA抗体を含む。すなわち、本発明による抗体は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のアミノ酸位置E430、E345またはS440に対応する変異を有する、ヒト免疫グロブリンGのFc領域を含む。本発明による抗WTA抗体は、抗WTA-α抗体または抗WTA-β抗体のいずれかであり得る。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、CPに結合する抗原結合領域を含む抗体を含み、該抗体のFc領域は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域は、E430G、E430S、E430FおよびE430Tからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域はE430G変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域は、ヒトIgG1のE345に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域は、E345K、E345Q、E345RおよびE345Yからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域はE345K変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域はE345R変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域は、ヒトIgG1のS440に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域は、S440YおよびS440Wからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域はS440Y変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP抗体を含み、該Fc領域はS440W変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、CPに結合する抗原結合領域とを含む抗CP抗体を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430GまたはE345Kに対応する変異を含む。本発明の一実施態様では、本発明による抗CP抗体は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のアミノ酸位置E430、E345またはS440に対応する変異を有する、ヒト免疫グロブリンGのFc領域を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、CP5に結合する抗原結合領域を含む抗体を含み、該抗体のFc領域は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域は、E430G、E430S、E430FおよびE430Tからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域はE430G変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域は、ヒトIgG1のE345に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域は、E345K、E345Q、E345RおよびE345Yからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域はE345K変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域はE345R変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域は、ヒトIgG1のS440に対応するアミノ酸位置に変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域は、S440YおよびS440Wからなる群より選択される変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域はS440Y変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒトIgGのFc領域を含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域はS440W変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、ヒト免疫グロブリンIgGのFc領域と、CP5に結合する抗原結合領域とを含む抗CP5抗体を含み、該Fc領域は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のE430GまたはE345Kに対応する変異を含む。本発明の一実施態様では、本発明による抗CP5抗体は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のアミノ酸位置E430、E345またはS440に対応する変異を有する、ヒト免疫グロブリンGのFc領域を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、さらなる6量体化阻害変異、例えばK439EまたはS440K、を含む抗体を含む。すなわち、本発明の一実施態様では、Fc領域は、Fc-Fc増強変異と、K439EおよびS440Kからなる群から選択される6量体化阻害変異とを含む。
E430およびE345からなる群より選択される位置にFc-Fc増強変異を含み、かつS440K変異をさらに含む抗体は、S440K変異を含む抗体とオリゴマーを形成しない。E430およびE345からなる群より選択される位置にFc-Fc増強変異を含み、かつK439E変異をさらに含む抗体は、K439E変異を含む抗体とオリゴマーを形成しない。一実施態様では、前記組成物は第1抗体および第2抗体を含み、第1および第2の抗体は、E430およびE345からなる群より選択される位置に変異を含み、第1抗体はK439E変異をさらに含み、かつ第2抗体はS440K変異をさらに含む。一実施態様では、前記組成物は第1抗体および第2抗体を含み、第1および第2の抗体は、E430およびE345からなる群より選択される位置に変異を含み、第1抗体はS440K変異をさらに含み、かつ第2抗体はK439E変異をさらに含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は第1抗体および第2抗体を含み、第1および第2の抗体は、E430およびE345からなる群より選択される位置に変異を含み、第1抗体はS440K変異をさらに含み、かつ第2抗体はK439E変異をさらに含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は第1抗体および第2抗体を含み、第1または第2の抗体はS440WまたはS440Y変異を含み、かつ第1抗体および/または第2抗体はK439E変異をさらに含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、E430GなどのFc-Fc増強変異および6量体化阻害変異K439Eを含むFc領域を含む抗体を含む。本発明の一実施態様では、該組成物は、E345KなどのFc-Fc増強変異および6量体化阻害変異K439Eを含むFc領域を含む抗体を含む。本発明の別の実施態様では、該組成物は、E430GなどのFc-Fc増強変異および6量体化阻害変異S440Kを含むFc領域を含む抗体を含む。本発明の一実施態様では、該組成物は、E345KなどのFc-Fc増強変異および6量体化阻害変異S440Kを含むFc領域を含む抗体を含む。これにより、K439E変異を含む抗体とS440K変異を含む抗体との組み合わせの間で排他的な6量体化を可能にする実施態様が提供される。すなわち、阻害変異K439EおよびS440Kは、相補的変異と見なすことができる。2つの異なる6量体化阻害置換を有する抗体の組み合わせは、異なる特異性を有する少なくとも2種類の抗体を有する組成物において特に注目に値しうる。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、a) E430、E345およびS440からなる群より選択される位置に少なくとも1つのFc-Fc増強置換と、b) K439E変異とを含む、少なくとも1種類の抗体を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、a) E430およびE345からなる群より選択される位置に少なくとも1つのFc-Fc増強変異と、b) S440K変異とを含む、少なくとも1種類の抗体を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、EUナンバリングに従うヒトIgG1のK439EまたはS440Kに対応する、さらなる6量体化阻害変異を含む抗体を含む。すなわち、本発明の一実施態様では、Fc領域はFc-Fc増強変異と6量体化阻害変異を含む。したがって、一実施態様では、Fc領域は、E430GまたはE345KなどのFc-Fc増強変異と、K439Eなどの6量体化阻害変異とを含む。本発明の一実施態様では、Fc領域はE430G変異およびK439E変異を含む。本発明の一実施態様では、Fc領域はE345K変異およびK439E変異を含む。本発明の別の実施態様では、Fc領域は、E430GまたはE345KなどのFc-Fc増強変異と、S440Kなどの6量体化阻害変異とを含む。本発明の一実施態様では、Fc領域はE430G変異およびS440K変異を含む。本発明の一実施態様では、Fc領域はE345K変異およびS440K変異を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345RおよびE345Yからなる群より選択される変異を含む第1抗体と、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含む第2抗体を含み、第1抗体はK439E変異をさらに含み、かつ第2抗体はS440K変異をさらに含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含む第1抗体と、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345およびE345Yからなる群より選択される変異を含む第2抗体を含み、第1抗体はK439E変異をさらに含み、かつ第2抗体はS440K変異をさらに含む。これにより、K439E変異を含む抗体とS440K変異を含む抗体との組み合わせの間で排他的な6量体化を可能にする実施態様が提供される。理論に拘束されるものではないが、それぞれK439KおよびS440K変異を含む第1および第2の抗体の組み合わせは、細菌の細胞表面上での標的結合時に第1および第2の抗体のオリゴマー化を可能にすると考えられる。
本発明の一実施態様は、本明細書に記載される実施態様のいずれか1つによる少なくとも1種類の抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体を含む組成物に関する。
本発明の別の実施態様は、本明細書に記載される実施態様のいずれか1つによる2種類以上の抗WTA抗体または2種類以上の抗CP抗体、例えば抗CP5抗体を含む組成物に関する。該組成物は、同一ではない、本明細書に記載される本発明による1種類、2種類もしくはそれ以上の抗WTA抗体または1種類、2種類もしくはそれ以上の抗CP5抗体を含むことができ、例えば、2種類の異なる抗WTA抗体または2種類の異なる抗CP5抗体の組み合わせ、あるいは1種類もしくは複数種類の抗WTA抗体と1種類もしくは複数種類の抗CP5抗体の組み合わせを含む。本発明の一実施態様では、該組成物は、異なるWTA分子、例えばWTA-αおよびWTA-βに結合するか、または同じWTA分子上の異なるエピトープに結合する、2種類以上の抗WTA抗体の組み合わせを含む。本発明の一実施態様では、該組成物は、CP5上の異なるエピトープに結合する2種類以上の抗CP5抗体の組み合わせを含む。
一実施態様では、前記組成物は、1種類もしくは複数種類の抗WTA抗体、または抗CP5抗体などの抗CP抗体を、他の抗体と組み合わせて含むことができる。一実施態様では、該組成物はポリクローナル抗体を含んでもよく、その場合、本発明による1種類もしくは複数種類の抗WTA抗体または1種類もしくは複数種類の抗CP抗体、例えば1種類もしくは複数種類の抗CP5抗体、が該組成物に含まれる。
一実施態様では、本発明の組成物は、本発明による抗WTA抗体および本発明による抗CP抗体、例えば抗CP5抗体を含むことができる。
さらなる実施態様では、抗WTA抗体および抗CP5抗体などの抗CP抗体を含むそのような組成物は、本明細書に記載される抗WTA抗体の任意の組み合わせおよび/または抗CP5抗体などの抗CP抗体の任意の組み合わせを含み得る。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、薬学的組成物中に抗体を含む。すなわち、該組成物は、薬学的組成物中に本発明による抗WTA抗体または抗CP5抗体を含むことができる。したがって、該組成物は、薬学的担体または薬学的賦形剤を含み得る。
さらなる実施態様では、本発明の組成物は、薬学的担体または薬学的賦形剤を含むことができる。
本発明のいずれかの局面または態様による抗体または組成物は、医薬として、すなわち治療用途に使用することができる。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、医薬として使用するための、モノクローナル抗体などの本発明による1種類または複数種類の抗体を含む。
本発明の一実施態様では、前記抗体または組成物は、細菌によって引き起こされる感染症の治療に用いるためのものである。本発明の一実施態様では、該抗体または組成物は、グラム陽性細菌の治療に用いられる。グラム陽性細菌は以下の群から選択され得る:スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、エンテロコッカス属、およびリステリア属。
本発明の一実施態様では、スタフィロコッカス属は、例えば、黄色ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、S.ワーネリ、またはS.シミュランスである。本発明の一実施態様では、ストレプトコッカス属は、例えば、肺炎レンサ球菌である。本発明の一実施態様では、クロストリジウム属は、例えば、ディフィシル菌である。本発明の一実施態様では、エンテロコッカス属は、例えば、フェカリス菌である。本発明の一実施態様では、リステリア属は、例えば、リステリア・モノサイトゲネスである。
本発明の一実施態様では、前記抗体または組成物は、黄色ブドウ球菌、MRSAまたはMSSAによって引き起こされる感染症の治療に用いるためのものである。
本発明の一実施態様では、前記抗体または組成物は、グラム陽性細菌によって引き起こされる感染症の予防的治療(preventive treatment)に用いるためのものである。本発明の一実施態様では、該抗体または組成物は、グラム陽性細菌によって引き起こされる感染症の予防処置(prophylaxis treatment)に用いるためのものである。
黄色ブドウ球菌、MSSAおよびMRSAは、以下の疾患の1つまたは複数を引き起こす可能性がある:手術部位感染症(SSI)、創傷感染症、嚢胞性線維症、肺炎、人工呼吸器関連肺炎(vap)、敗血症、毒素性ショック症候群、静脈ライン感染症、および人工装具の存在下での感染症。
本発明の一実施態様では、前記抗体または組成物は、以下の群から選択される疾患の治療に用いるためのものである:手術部位感染症(SSI)、創傷感染症、嚢胞性線維症、肺炎、人工呼吸器関連肺炎(vap)、敗血症、毒素性ショック症候群、静脈ライン感染症、および人工装具の存在下での感染症。
本発明の一実施態様では、前記抗体または組成物は、髄膜炎、尿路感染症または肺炎の治療に用いるためのものである。
本発明の一実施態様では、前記組成物は薬学的賦形剤を含む。
本発明の一実施態様では、前記組成物は1種類または複数種類の薬学的賦形剤を含む。
本発明の一実施態様では、前記抗体または組成物は薬学的組成物である。
本発明の一実施態様では、前記抗体は薬学的組成物中に含まれる。
本発明の薬学的組成物は、本発明のいずれかの局面または態様によるモノクローナル抗体などの抗体を含むことができる。
本発明の薬学的組成物は、本発明の1種類もしくは複数種類の抗体、例えばモノクローナル抗体、本発明による抗体と別の治療用化合物との組み合わせ、または本発明の化合物の組み合わせを含むことができる。
本発明の一実施態様では、本発明の抗体は薬学的組成物中に含まれる。
本発明の薬学的組成物は、本発明のいずれかの局面または態様による抗体を含むことができる。
本発明の薬学的組成物は、(Rowe et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2012 June, ISBN 9780857110275)に開示されるような従来の技術に従って、薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに他の公知のアジュバントおよび賦形剤を用いて、製剤化され得る。
薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに他の公知のアジュバントおよび賦形剤は、本発明の抗体および所定の投与方法に適していなければならない。薬学的組成物の担体および他の成分に対する適合性は、選択された本発明の化合物または薬学的組成物の所望の生物学的特性に重大な負の影響を与えないこと(例えば、抗原結合時のあまり大きくない影響(10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的阻害など))に基づいて確認される。
本発明の薬学的組成物はまた、希釈剤、充填剤、塩類、緩衝剤、界面活性剤、安定剤、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の物質を含むことができる。
本発明の薬学的組成物中の活性成分、すなわち抗体、の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性を示すことなく、特定の患者、組成物、および投与方法に対して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように、変えることができる。選択される投与量レベルは、様々な薬物動態学的要因に依存し、例えば、使用する本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用する特定の化合物の排泄速度、治療期間、使用する特定の組成物と併用される他の薬物、化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、症状、全般的な健康状態およびこれまでの病歴、ならびに医学分野でよく知られた同様の要因に依存する。
薬学的組成物は任意の適切な経路および方法で投与することができる。インビボおよびインビトロでの本発明の化合物の適切な投与経路は、当技術分野で周知であり、当業者によって選択され得る。一実施態様では、本発明の薬学的組成物は非経口的に投与される。
本明細書で使用する用語「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、経腸投与および局所投与以外の、通常は注射による、投与方法を指し、表皮内、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、胸骨内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、ならびに胸骨下への注射および注入が含まれる。一実施態様では、本発明の薬学的組成物は、静脈内または皮下への注射または注入によって投与される。
本発明の一実施態様では、薬学的組成物は、1種類または複数種類の本発明による抗体、例えばモノクローナル抗体を、薬学的担体と共に含む。
薬学的に許容される担体には、本発明の化合物と生理学的に適合する、ありとあらゆる適切な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、抗酸化剤、吸収遅延剤などが含まれる。
本発明の薬学的組成物に使用することができる適切な水性および非水性担体の例としては、以下が挙げられる:水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油など、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントガム、注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル、および/または種々の緩衝液。他の担体は製薬分野において周知である。
薬学的に許容される担体には、無菌の注射溶液または分散液の即時調製のための無菌の水性溶液または分散液および無菌の粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および作用剤の使用は、当技術分野で公知である。従来の媒体または作用剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、本発明の薬学的組成物中でのそれらの使用が企図される。
本発明の薬学的組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝剤などの、選択された投与経路に適した1種類または複数種類の補助剤を含有してもよく、これらは薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を高めることができる。本発明の化合物は、インプラント、経皮パッチ、マイクロカプセル化送達システムなどの放出制御製剤のように、化合物を急速放出から保護する担体を用いて調製することができる。そのような担体には、以下が含まれる:ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸単独もしくはワックスとの組み合わせ、または当業者に周知の他の材料。そのような製剤の調製方法は、一般に、当業者に知られている。
一実施態様では、本発明の化合物は、インビボでの適切な分布を確実にするように製剤化され得る。非経口投与のための薬学的に許容される担体には、無菌の注射溶液または分散液の即時調製のための無菌の水性溶液または分散液および無菌の粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および作用剤の使用は、当技術分野で公知である。従来の媒体または作用剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、本発明の薬学的組成物中でのそれらの使用が企図される。その他の活性化合物または治療化合物も該組成物に組み入れることができる。
注射または注入のための薬学的組成物は、典型的には、製造・貯蔵条件下で無菌であり、かつ安定でなければならない。該組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の秩序構造(ordered structure)として製剤化することができる。担体は、例えば以下を含有する水性または非水性の溶媒もしくは分散媒であり得る:水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散体の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合、該組成物中に等張剤、例えば、糖、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。注射用組成物の長期持続的吸収は、吸収を遅らせる作用剤、例えばモノステアレート塩およびゼラチン、を該組成物中に含めることによって達成することができる。無菌注射溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、例えば上に列挙した成分の1つまたは組み合わせを含む、適切な溶媒中に組み入れて、滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒と、例えば上に列挙した成分からの、必要な他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に入れることによって調製される。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末の場合、調製方法の例は真空乾燥および凍結乾燥であり、こうした方法は、活性成分とさらなる所望の成分の粉末を、予め滅菌濾過したその溶液から生じさせる。
無菌注射溶液は、必要な量の活性化合物、すなわち抗体を、必要に応じて、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせを含む、適切な溶媒中に入れて、滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒と上に列挙した成分からの必要な他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に組み入れることによって調製される。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末の場合、調製方法の例は真空乾燥および凍結乾燥であり、こうした方法は、活性成分とさらなる所望の成分の粉末を、予め滅菌濾過したその溶液から生じさせる。
本発明の薬学的組成物は、1種類もしくは複数種類のモノクローナル抗体または数種のモノクローナル抗体、例えば、本発明のポリクローナル抗体、本発明の抗体、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体と他の治療化合物との組み合わせ、または本発明の化合物の組み合わせ、を含有することができる。
本発明の方法
本発明の抗体は、細菌によって引き起こされる感染性疾患に対して有効な抗菌剤として有用である。
したがって、一局面では、本発明は、感染性疾患を有する個体を治療する方法であって、該個体に、有効量の本発明による抗WTA抗体、例えば抗WTA-α抗体もしくは抗WTA-β抗体、本発明による抗CP抗体、例えば抗CP5抗体、または本発明による組成物を投与することによる方法を含む。
そのような感染性疾患の例としては、限定するものではないが、細菌性肺感染症、例えば黄色ブドウ球菌肺炎または結核感染症、細菌性眼感染症、例えばトラコーマおよび結膜炎、心臓、脳または皮膚の感染症、胃腸管の感染症、例えば旅行者下痢、骨髄炎、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、および一般的なIBD(炎症性腸疾患)、細菌性髄膜炎、ならびにいずれかの器官(例えば、筋肉、肝臓、髄膜または肺)における膿瘍が挙げられる。細菌感染症は、尿路、血流、傷口またはカテーテル挿入部位のような身体の他の部分にも存在し得る。
本発明の抗体または組成物は、バイオフィルム、インプラントまたはサンクチュアリ部位(sanctuary sites)と関係する難治性の感染症(例えば、骨髄炎および人工関節感染症)、ならびに院内感染肺炎および菌血症のような高死亡率の感染症に有用である。黄色ブドウ球菌感染を予防するために治療され得る脆弱な患者群には、血液透析患者、免疫不全患者、集中治療室の患者、および特定の手術患者が含まれる。
別の局面において、本発明は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおける微生物感染を死滅、治療または予防する方法を提供し、該方法は、動物、例えばヒトに、本発明による抗体、組成物または薬学的製剤を投与することを含む。本発明はさらに、そのような微生物感染に関連する疾患、またはそのような微生物感染から日和見的に生じる疾患を治療または予防することを特徴とする。こうした治療または予防方法は、本発明の抗体または組成物の経口、局所、静脈内、筋肉内、または皮下投与を含み得る。例えば、外科手術またはIVカテーテルの挿入の前に、ICUケア中に、移植医療の分野で、癌化学療法または感染の危険性が高い他の活動と一緒にまたはその後で、本発明の抗体または組成物を投与して、感染の開始または広がりを予防することができる。
細菌感染は活性型および不活性型の細菌によって引き起こされ、本発明の抗体または組成物は、細菌感染の活性型および不活性潜伏型の両方を治療するのに十分な量で、かつ十分な期間にわたって投与することができ、不活性潜伏型の治療期間は細菌感染の活性型を治療するのに必要な期間よりも長い。
本発明の別の局面は、Fc領域に変異を導入することによって抗体のエフェクター機能を増強する方法に関する。
したがって、一局面において、本発明は、Fc領域と、WTAまたはCP5に結合する抗原結合領域とを含む、抗体のエフェクター機能を増強する方法であって、EUナンバリングに従うヒトIgG1の位置E430、E345またはS440に対応するFc領域に変異を導入する段階を含む方法に関する。
本発明の一実施態様では、前記方法は、Fc領域がE430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WまたはS440Yから選択される変異を含む、抗WTA抗体のエフェクター機能を増強することを含む。本発明の一実施態様では、該方法は、Fc領域がE430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含む、抗WTA抗体のエフェクター機能を増強することを含む。本発明の特定の実施態様では、該方法は、Fc領域がE430GまたはE345Kから選択される変異を含む、抗WTA抗体のエフェクター機能を増強することを含む。一実施態様では、抗WTA抗体は、抗WTA-α抗体または抗WTA-β抗体のいずれかであり得る。
本発明の一実施態様では、前記方法は、Fc領域がE430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WまたはS440Yから選択される変異を含む、抗CP抗体のエフェクター機能を増強することを含む。本発明の一実施態様では、該方法は、Fc領域がE430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440WおよびS440Yからなる群より選択される変異を含む、抗CP抗体のエフェクター機能を増強することを含む。本発明の特定の実施態様では、該方法は、Fc領域がE430GまたはE345Kから選択される変異を含む、抗CP抗体のエフェクター機能を増強することを含む。一実施態様では、抗CP抗体は抗CP5抗体である。
本発明の一実施態様では、前記エフェクター機能は補体活性化である。
本発明の一実施態様では、前記エフェクター機能はオプソニン作用であり、このようなオプソニン作用はC3オプソニンによって駆動され得る。本発明の別の実施態様では、該エフェクター機能は、抗体誘導性の貪食、例えばマクロファージおよび/または好中球のような免疫細胞によって媒介される貪食である。
本発明の一実施態様では、前記エフェクター機能はC5a形成および食細胞活性化である。
さらなる実施態様では、前記エフェクター機能は好中球媒介性の貪食である。一実施態様では、好中球媒介性の貪食は、実施例6または8に開示されるように測定される。本発明による抗体をヒト血清、蛍光標識した黄色ブドウ球菌およびヒト好中球と共にインキュベートする。貪食をフローサイトメトリーにより定量する。
本発明の一実施態様では、前記抗体は補体の存在下で貪食を増強する。すなわち、細菌上での抗WTA抗体または抗CP5抗体のオリゴマー化は、該抗体のFc領域への補体因子C1qの結合を促進してC1q:抗体複合体を生成し、該複合体は食細胞上のC1q受容体へのC1qの結合を可能にし、それによって貪食を増強する。
本発明の一実施態様では、前記抗体は免疫細胞による細菌の貪食を増強する。すなわち、本発明の抗体は、好中球、単球、マクロファージ、クッパー細胞、樹状細胞、抗原提示細胞などの免疫細胞による貪食を増強することができる。
本発明の一実施態様では、前記抗体は好中球媒介性の貪食を増強する。好中球媒介性の貪食は、実施例6または8に記載されるように測定することができる。本発明による抗体をヒト血清、蛍光標識した黄色ブドウ球菌およびヒト好中球と共にインキュベートする。貪食をフローサイトメトリーにより定量する。
本発明の一実施態様では、前記抗体はグラム陽性細菌に対する補体活性化を増強する。すなわち、一実施態様では、該抗体は補体タンパク質C4のC4bへの活性化を増強する。一実施態様では、該抗体は補体タンパク質C3のC3bへの活性化を増強する。グラム陽性細菌細胞に対するC3の活性化は、C3由来のオプソニン(C3bおよびC3bi)による該細菌のオプソニン化をもたらす。
本発明の一実施態様では、前記抗体は補体媒介性の食細胞活性化を増強する。すなわち、一実施態様では、該抗体は化学誘引物質C5aの形成を増強する。
本発明の一実施態様では、前記抗体は補体媒介性の殺傷を増強する。
本発明の一局面は、インビボで標的細胞上の抗体分子間のFc-Fc接触を増強する方法を提供し、該方法は、以下の段階を含む:
(i) 本明細書で定義される抗体を提供する段階;および
(ii) 該抗体を、グラム陽性細菌の細胞表面上の抗原とインビボで、かつ
(iii) Fc-Fc相互作用を可能にする濃度で、接触させる段階。
これにより、インビボで標的細胞に結合すると、本発明の抗体分子間のFc-Fc接触を増強する方法を開示する本発明の実施態様が記載される。インビボという用語は、ヒトを含む動物などの、生物全体の内部(生体内)として理解されるべきである。
本発明の一実施態様では、グラム陽性細菌は、黄色ブドウ球菌である。
本発明の一実施態様では、グラム陽性細菌は、スタフィロコッカス・ワーネリである。
本発明の一実施態様では、グラム陽性細菌は、これまでの薬物による治療に対して耐性または非感受性である。
本発明の別の実施態様では、グラム陽性細菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)またはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)である。
治療用途
本発明のいずれかの局面または態様によるモノクローナル抗体などの抗体または組成物は、医薬として、すなわち治療に応用するために、使用することができる。
前記抗体は、ヒトおよび他の哺乳動物、例えばウシの治療に使用することができる。
特に、本発明による抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、感染性疾患の治療のために使用され得る。
一局面では、本発明の抗WTA抗体は、グラム陽性細菌の治療に使用される。本発明の一実施態様では、抗WTA-α抗体はグラム陽性細菌の治療に用いられる。本発明の一実施態様では、抗WTA-β抗体はグラム陽性細菌の治療に用いられる。
一局面では、本発明の抗CP抗体は、感染性疾患の治療に用いるためのものである。一局面では、本発明の抗CP抗体は、細菌の治療に用いられる。本発明の一実施態様では、抗CP抗体は、グラム陽性細菌の治療に用いられる。本発明の一実施態様では、抗CP5抗体は、感染性疾患の治療に用いるためのものである。本発明の一実施態様では、抗CP5抗体は、細菌の治療に用いられる。本発明の一実施態様では、抗CP5抗体は、グラム陽性細菌の治療に用いられる。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体または抗CP5抗体などの抗CP抗体は、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、エンテロコッカス属、およびリステリア属の群から選択されるグラム陽性細菌によって引き起こされる疾患の治療に用いられる。
本発明の一実施態様では、スタフィロコッカス属は、例えば、黄色ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、S.ワーネリ、またはS.シミュランスである。本発明の一実施態様では、ストレプトコッカス属は、例えば、肺炎レンサ球菌である。本発明の一実施態様では、クロストリジウム属は、例えば、ディフィシル菌である。本発明の一実施態様では、エンテロコッカス属は、例えば、フェカリス菌である。本発明の一実施態様では、リステリア属は、例えば、リステリア・モノサイトゲネスである。
本発明の一実施態様では、抗WTA-β抗体または抗WTA-α抗体は、黄色ブドウ球菌の治療に用いられる。本発明の特定の実施態様では、抗WTA-β抗体または抗WTA-α抗体は、MRSAの治療に用いられる。本発明の一実施態様では、抗WTA-β抗体または抗WTA-α抗体は、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX)、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、リファンピン、バンコマイシンまたはリネゾリドなどの抗生物質による以前の治療に対して耐性を示す黄色ブドウ球菌の治療に使用される。
本発明の一実施態様では、抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、黄色ブドウ球菌の治療に使用される。本発明の特定の実施態様では、抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、MRSAの治療に使用される。本発明の一実施態様では、抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX)、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、リファンピン、バンコマイシンまたはリネゾリドなどの抗生物質による以前の治療に対して耐性を示す黄色ブドウ球菌の治療に用いられる。
黄色ブドウ球菌、MSSAおよびMRSAは、以下の疾患の1つまたは複数を引き起こす可能性がある:手術部位感染症(SSI)、創傷感染症、嚢胞性線維症、肺炎、人工呼吸器関連肺炎(vap)、敗血症、毒素性ショック症候群、静脈ライン感染症、および人工装具の存在下での感染症。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、以下の群から選択される疾患の治療に用いられる:手術部位感染症(SSI)、創傷感染症、嚢胞性線維症、肺炎、人工呼吸器関連肺炎(vap)、敗血症、毒素性ショック症候群、静脈ライン感染症、および人工装具の存在下での感染症。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、髄膜炎、尿路感染症、肺炎の治療に使用される。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、グラム陽性細菌によって引き起こされる感染症の予防的治療に使用される。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、グラム陽性細菌によって引き起こされる感染症の補助的治療に使用される。これにより、本発明の抗体および/または組成物を抗生物質と組み合わせて投与することができる実施態様が提供される。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、SSI、VAPまたは血管内カテーテル関連感染症を発症するリスクのある患者を予防する際に使用することができる。
本発明の一実施態様では、抗WTA抗体または抗CP抗体、例えば抗CP5抗体は、敗血症または肺炎などの全身感染症の予防的治療に使用することができる。
本発明の一実施態様では、前記組成物は、医薬として使用するための1種類または複数種類の本発明による抗体、例えばモノクローナル抗体を含む。
調製方法
抗体に関して以下に記載される実施態様は、免疫グロブリンのFc領域と抗原結合領域とを含む抗体を指すことを理解すべきである。抗体はまた、免疫グロブリンの第1のFc領域と第1の抗原結合領域、および免疫グロブリンの第2のFc領域と第2の抗原結合領域を有する多重特異性抗体であり得る。
本発明はまた、上記の局面のいずれか1つに記載の変異体をコードする単離された核酸およびベクター、ならびに該変異体をコードするベクターおよび発現システムを提供する。抗体および変異体のための適切な核酸構築物、ベクターおよび発現システムは、当技術分野で公知であり、実施例に記載される。変異体が重鎖(またはそのFc含有フラグメント)だけでなく軽鎖をも含む実施態様では、重鎖部分と軽鎖部分をコードするヌクレオチド配列は、同じ核酸またはベクター上に存在してもよいし、異なる核酸またはベクター上に存在してもよい。
本発明はまた、宿主細胞において、上記の局面のいずれか1つに記載の抗体(該抗体は少なくとも重鎖のFc領域を含む)を産生させるための方法を提供し、該方法は、以下の段階を含む:
a) 該変異体のFc領域をコードするヌクレオチド構築物を提供する段階;
b) 該ヌクレオチド構築物を宿主細胞において発現させる段階;および
c) 該宿主細胞の細胞培養物から該抗体変異体を回収する段階。
いくつかの実施態様では、前記抗体は重鎖抗体である。しかし、ほとんどの実施態様では、該抗体は軽鎖をも含み、したがって、前記宿主細胞は、同じまたは異なるベクター上の、軽鎖をコードする構築物をさらに発現する。
抗体の組換え発現に適した宿主細胞は、当技術分野で周知であり、CHO、HEK-293、Expi293、PER-C6、NS/0およびSp2/0細胞が含まれる。一実施態様では、該宿主細胞は、タンパク質のAsn結合型グリコシル化が可能な細胞であり、例えば、哺乳動物細胞などの真核生物細胞、例えばヒト細胞である。さらなる実施態様では、該宿主細胞は、ヒト様グリコシル化またはヒトグリコシル化を有する糖タンパク質を産生するように遺伝子操作された非ヒト細胞である。そのような細胞の例は、遺伝子組換えのピキア・パストリス(Pichia pastoris)(Hamilton et al., Science 301 (2003) 1244-1246; Potgieter et al., J. Biotechnology 139 (2009) 318-325)、および遺伝子組換えのコウキクサ(Lemna minor)(Cox et al., Nature Biotechnology 12 (2006) 1591-1597)である。
一実施態様では、前記宿主細胞は、抗体重鎖からC末端リシンK447残基を効率的に除去することができない宿主細胞である。例えば、Liu et al. (2008) J Pharm Sci 97: 2426 (参照により本明細書に組み入れられる)中の表2は、C末端リシンの部分的除去のみが得られる、多数のそのような抗体産生系、例えば、Sp2/0、NS/0またはトランスジェニック乳腺(ヤギ)を掲載している。一実施態様では、該宿主細胞は、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞である。そのような細胞は当技術分野において記載されており、本発明の変異体を発現させ、それによって、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生させるための宿主細胞として使用することができる。例えば、Shields, R.L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-1; ならびにEP1176195; WO03/035835; およびWO99/54342を参照されたい。遺伝子改変グリコフォームを作製するためのさらなる方法は、当技術分野で公知であり、限定するものではないが、以下に記載の方法が含まれる:Davies et al., 2001, Biotechnol Bioeng 74:288-294; Shields et al, 2002, J Biol Chem 277:26733-26740; Shinkawa et al., 2003, J Biol Chem 278:3466-3473); US 6602684; WO 00/61739A1; WO 01/292246A1; WO 02/311140A1; WO 02/30954A1; Potelligent(商標)技術(Biowa社, Princeton, N.J.); GlycoMAb(商標)グリコシル化遺伝子工学技術(GLYCART biotechnology AG, Zurich, スイス); US 20030115614; Okazaki et al., 2004, JMB, 336: 1239-49。
本発明はまた、上記の本発明の方法によって得られた、または得ることができる抗体に関する。
さらなる局面では、本発明は、本発明の抗体を産生することができる宿主細胞に関する。一実施態様では、該宿主細胞は、本発明のヌクレオチド構築物で形質転換またはトランスフェクトされている。
本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例はさらなる限定として解釈されるべきではない。
(表1)配列の表
表1:CDR領域はIMGTの定義に従ってアノテーションが付与されている。
実施例1:抗体およびペプチド
抗体の発現構築物
モノクローナル抗体(mAb)の発現のために、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)配列を、実施例に示されるように、ヒトIgG1またはIgG2重鎖(HC)および軽鎖(LC)定常領域を含むpcDNA3.3発現ベクターにクローニングした。遺伝子合成または部位特異的変異誘発のいずれかによって所望の変異を導入した。本出願で言及される抗MRSA抗体は、以前に記載された以下の抗体に由来するVHおよびVL配列を有する:ヒトmAbである抗壁タイコ酸GlcNAcβ4497(抗WTA 4497; WO2014/193722に基づく)および抗WTA IgG1-6297 (WO2014/193722に基づく)、ヒト化mAbである抗ClfA テフィバズマブ(tefibazumab)(WO2002/072600に基づく)、ならびにマウスmAbである抗莢膜多糖体5型(抗CP5; WO2014/027698に基づく)。いくつかの実施例では、HIV gp120に対するヒト抗体IgG1-b12を非結合性のアイソタイプ対照として用いた(Barbas et al., J Mol Biol. 1993 Apr 5;230(3):812-23)。
一過性の発現
抗体はIgG1,κまたはIgG2,κとして発現させた。抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードするプラスミドDNA混合物をExpi293T細胞(Life technologies社, 米国)に、293fectin (Life technologies社)を用いて、本質的にVinkら(Vink et al., Methods, 65 (1), 5-10 2014)に記載されるように一過性にトランスフェクトした。
タンパク質の精製および分析
固定化プロテインGクロマトグラフィーによって抗体を精製し、SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィーなどの、いくつかの生物学的分析法によってバッチを分析した。
ペプチド
Fc-IIIペプチド
(deLano et al., 2000 Science)、Fc-III配列のスクランブル型(Fc-IIIスクランブル1:
; Fc-IIIスクランブル2:
)および対照ペプチド
は、Pepscan社(Lelystad, オランダ)で合成した。ペプチドをMiliQ水に1または2mg/mLで溶解し、アリコートに分けて−80℃で保存した。
実施例2:Fc-Fc相互作用の阻害は、黄色ブドウ球菌に対する天然の抗体による細菌表面への補体沈着の誘導を減少させる
競合性Fc結合ペプチドが黄色ブドウ球菌に対する抗体による補体活性化に及ぼす影響は、該ペプチドの存在下または非存在下で正常ヒト血清(NHS)中に存在する天然の抗体によりオプソニン化した後に、非プロテインA保有Wood 46株の黄色ブドウ球菌へのC4bおよびC3bの沈着を測定することによって試験した。C4bは、C1によって細菌表面上に共有結合的に沈着する第1の補体成分である。
黄色ブドウ球菌に対する天然に存在するヒト抗体および補体の供給源として、健康なドナー20人からの正常ヒト血清(NHS)をプールした。健康なボランティアからの静脈血を、血餅活性化因子(clot activator)を含有する9mL BDバキュテイナ(Vacutainer)採血管(BD社; カタログ番号367896)中に、UMC UtrechtのMini Donor Dienst (MDD)(2010年3月1日に承認されたMETCプロトコル07-125/C)で採取した。室温(RT)で15分間、撹拌せずに凝固させ、2080gで4℃、20分間遠心分離することによって血清を回収した。健康なボランティア20人の血清をプールし、アリコート(エッペンドルフチューブ中100〜1000μL)を−80℃で保存した。解凍した血清を56℃で30分間インキュベートすることにより、加熱不活性化(HI)血清を調製した。
Wood 46細菌(ATCC #10832)を血液寒天プレート上で37℃にて一晩増殖させた。細菌を白金耳でPBS中に採取し、5×108/mLの濃度へと測光的(OD 660nm)に調整し、洗浄して、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA; Serva社; カタログ番号11930.03)を添加した、5mM CaCl2および2.5mM MgCl2を含有するHEPES緩衝液(20mM HEPES, 140mM NaCl)(HEPES++)pH7.3中に再懸濁した。オプソニン化のために、洗浄した細菌(5×108/mL)50μLを、丸底96ウェルマイクロプレート(Greiner社; カタログ番号650101)で、ペプチドとプレインキュベートしたNHS 50μLと共に、600rpmで振とうしながら37℃で20分間インキュベートした。一方の実験では、NHSの濃度系列(2倍希釈で0.075〜5%の範囲)を20μg/mLのFc-IIIペプチドまたは対照ペプチドと共にプレインキュベートし、他方の実験では、1%NHSの一定濃度を、Fc-IIIペプチド、Fc-IIIスクランブル1、またはFc-IIIスクランブル2ペプチドの濃度系列(2倍希釈で40〜0.0375μg/mLの範囲)と共にプレインキュベートした。全てのペプチドのプレインキュベーションは、振とうすることなく室温で10分間行った。細菌を1%BSA含有PBS (PBSA)で2回洗浄し、1μg/mLのマウス抗ヒトC4d抗体(Quidel社, カタログ番号A213)またはマウス抗ヒトC3d抗体(Quidel社, カタログ番号A207) 50μLと共に、600rpmで振とうしながら4℃で45分間インキュベートした。細菌をPBSAで2回洗浄し、1μg/mLのFITC結合ヤギF(ab')2抗マウス免疫グロブリン抗体(Dako社, カタログ番号F0479) 50μLと共に、600rpmで振とうしながら4℃で45分間インキュベートした。サンプルを洗浄し、PBS中の1%パラホルムアルデヒド(PFA;10%メタノール不含ホルムアルデヒド, Polysciences社, カタログ番号04018) 150μLを用いて固定し、96ウェルマイクロプレート用のユニバーサルローダー(universal loader)を備えたFACSVerseフローサイトメーター(BD)で分析した。logモードの前方散乱光(FSC)と側方散乱光(SSC)の両方での低イベント閾値によりサンプルを取得した。単一の細菌を最高の相対的集団密度としてゲーティングするために、また、それらの平均蛍光強度(MFI)を決定するために、疑似カラー(pseudocolor)FSC対SSC密度プロットを用いた。FlowJoソフトウェアバージョン10.0.7によってフローサイトメトリーのデータを解析した。
図1は、ペプチドの非存在下で(緩衝液対照)、黄色ブドウ球菌Wood 46と血清とのインキュベーションが、細菌表面への用量依存的なC4b(図1A)およびC3b(図1B)沈着をもたらしたことを示す。Fc-IIIペプチドの存在下では、補体沈着が強く阻害された;C4dレベルは、試験した全ての血清濃度において、活性補体を含まない加熱不活性化(HI)血清で観察された基礎レベルと同程度に低く、C3bレベルは、1%までの血清濃度範囲において、HI血清で観察された基礎レベルと同程度に低かった。対照的に、陰性対照ペプチドはC4bおよびC3b沈着に影響を及ぼさなかった。1%血清の一定濃度を用いると、Fc-IIIペプチドはC4b(図1C)およびC3b(図1D)沈着の用量依存的阻害をもたらしたが、非特異的スクランブルペプチドは阻害効果を示さなかった。
結論として、競合するFc-IIIペプチドDCAWHLGELVWCTにより観察されたC4bおよびC3b沈着の阻害は、ヒト血清中の天然に存在する抗体が、IgG 6量体化に関与するFc-Fc相互作用を確立して、非プロテインA保有Wood 46黄色ブドウ球菌に対する古典的な補体経路活性化を誘導することを示唆している。
実施例3:Fc-Fc相互作用の阻害は、黄色ブドウ球菌に対する天然に存在する抗体による細菌の貪食取り込みの誘導を減少させる
ヒトでは、黄色ブドウ球菌の宿主クリアランスは、食細胞による適切な飲み込みおよび細胞内殺傷に決定的に依存しており、そうした食細胞は、補体活性化後に細菌表面上に沈着したC3b/iC3b分子へのそれらの補体受容体(CD35, CD11b/CD18)の結合を介して最も強力に動員される。実施例2に記載されるFc-IIIペプチドによるC4bおよびC3bの沈着の阻害が細菌の貪食取り込みに影響を及ぼすかどうかを試験するために、蛍光標識したWood 46細菌を、該ペプチドの存在下または非存在下でNHS中に存在する天然の抗体によりオプソニン化した後、ヒト好中球とインキュベートした。
Wood 46細菌をフルオレセインイソチオシアナート(FITC)で標識した。そのため、細菌を血液寒天プレート上で37℃にて一晩増殖させ、PBS中に回収した。細菌を3000×gで15分間遠心分離し、10mLのPBS中に懸濁することにより洗浄した。FITC Isomer I (Sigma社, カタログ番号F4274;DMSOに10mg/mLで溶解)を0.5mg/mLで加え、氷上で30分間インキュベートした。細菌を10mLのPBSで2回洗浄し、0.05%ヒト血清アルブミン(HSA;Sanquin社からの静注用のアルブミン200g/L)を補充した、L-グルタミンおよび25mM HEPES (Gibco Life Technologies社, カタログ番号52400)を含む1×RPMI培地1640中に再懸濁させた。細菌の濃度を660nmで分光光度計により測定し、1×109細胞/mLのアリコートを1.5mLエッペンドルフチューブ内に−20℃で保存した。黄色ブドウ球菌に対する天然の抗体を含有するプールしたNHSの濃度系列(3倍希釈で0.01〜10%) 20μLを、RPMI-0.05%HSA中の0、5、10もしくは20μg/mLのFc-IIIペプチドまたは20μg/mLの対照ペプチド10μLと共に室温で10分間プレインキュベートした。3.75×107/mLのFITC標識Wood 46細菌20μLを添加し、振とう(600rpm)しながら37℃で20分間インキュベートした。ヒト好中球の分離のために、健康なドナーからの血液をVacuette NH Sodium Heparinバキュテイナ(Greiner Bio-one社, カタログ番号455051)で採取し、Ficoll-Histopaque勾配(Ficoll-Paque PLUS, GE Healthcare Lifesciences社, カタログ番号17-1440-03; Histopaque 1119, Sigma社, カタログ番号11191; Bestebroer et al., 2007 Blood 109: 2936-2943)で好中球を分離して、RPMI-HSAに懸濁させた。7.5×106/mLの好中球10μLをオプソニン化された細菌に添加し、600rpmで振とうしながら37℃で15分間貪食を誘導した。その反応を停止させるために90μLの冷パラホルムアルデヒド(RPMI-HSA中1.7%)を添加し、好中球の蛍光のフローサイトメトリー(FACSVerse, BD社)測定によってサンプルを解析した。細胞デブリを排除するためにFSC対SSCの疑似カラー密度プロットにおいて好中球集団をゲーティングし、関連する蛍光細菌を表すMFIについて該集団を分析した。
図2は、NHS中では、FITC標識細菌が好中球によって用量依存的(緩衝液対照)に取り込まれたことを示す。対照的に、HI血清中では貪食は観察されず、好中球媒介性の貪食には補体活性化が必要であることが示唆された。競合するFc-IIIペプチドの存在下では、貪食は強力にブロックされたが、対照ペプチドは何の影響も及ぼさなかった。
結論として、競合するFc-IIIペプチドDCAWHLGELVWCTによる好中球媒介貪食の阻害は、黄色ブドウ球菌に対する天然の抗体がIgG 6量体化に関与するFc-Fc相互作用を確立して、好中球による非プロテインA保有Wood 46細菌の補体媒介貪食を誘導することを示唆している。
実施例4:Fc-Fc相互作用の阻害は、黄色ブドウ球菌に対する天然の抗体によるC5a分泌の誘導を減少させる
補体カスケードの最終段階がFc結合性のFc-IIIペプチドによっても影響を受けたかどうかを分析するために、該ペプチドの存在下または非存在下で、NHS中の黄色ブドウ球菌に対する天然の抗体によりWood 46細菌をオプソニン化した後に、C5aアナフィラトキシンの放出を定量した。
25μLのNHS(最終濃度1%)を、25μLのFc-IIIペプチド、対照ペプチド、Fc-IIIスクランブル2ペプチド(最終濃度20μg/mL)と共に、またはペプチドの非存在下(緩衝液対照)に、RPMI-HSA中で振とうすることなく室温で10分間プレインキュベートし、その後RPMI-HSA中の50μLのWood 46細菌(5×108/mL)と混合して、600rpmで振とうしながら37℃で20分間インキュベートした。該細菌を3500rpmで7分間遠心分離し、上清を回収して、Bestebroer et al, Cellular Microbiology, 2010 Oct; 12(10):1506-16に記載されるC5aレポーターアッセイでC5aを分析した。簡単に説明すると、C5aRを安定に発現するヒトU937細胞(New Mexico大学のEric Prossnitzにより提供された;Kew et al. J Leukoc Biol. 1997 Mar;61(3):329-37)を、Ca2+の結合時に蛍光の増加を示す細胞質カルシウム感受性蛍光プローブFluo-3 (Fluo-3, AM; Molecular Probes社, カタログ番号F1241)で標識した。C5a結合によるC5aRの活性化は、細胞内Ca2+の放出をもたらす。細胞を10%FCS含有RMPI中で培養し、洗浄し、RPMI-0.05%HSA中に1×106細胞/mLで再懸濁させた。サンプルあたり、225μLの細胞をフローサイトメトリー(FACSVerse; BD)で9秒間測定して、レポーター細胞の基礎蛍光強度を測定した。続いて、25μLの上清を用いてリアルタイムにレポーター細胞を刺激し、50秒の合計時間まで蛍光シグナルの変化を記録した。陽性対照として、レポーター細胞を10-8Mの合成C5a (C5aアナフィラトキシン(ヒト)トリフルオロ酢酸塩;Bachem社, カタログ番号H-6322)で刺激して、蛍光シグナルの最大増加を誘導した。C5aの生成は、100%に設定されたペプチド不含の緩衝液対照に対比して計算された。
図3は、競合するFc-IIIペプチドの存在下でのWood 46細菌とNHSとのインキュベーションが、ペプチド不含緩衝液対照に対比してC5a生成を強く(100%から12%に)減少させたが、対照ペプチドはわずかな影響しか与えなかったことを示す。
結論として、競合するFc-IIIペプチドDCAWHLGELVWCTによるC5a放出の阻害は、ヒト血清中に天然に存在する黄色ブドウ球菌に対する抗体が、非プロテインA保有Wood 46黄色ブドウ球菌への結合時のIgG 6量体化に関与するFc-Fc相互作用を確立して、補体カスケードの最終段階を活性化することを示唆している。
実施例5:2種類の黄色ブドウ球菌株に対するモノクローナル抗体の結合
黄色ブドウ球菌表面分子に対する2種類の組換え抗体を実施例1に記載したようにIgG1として作製し、いくつかの黄色ブドウ球菌株への結合について試験した。IgG1-S4497は壁タイコ酸(WTA)(Lehar et al., Nature 2015 Nov 19;527(7578):323-8)を認識し、IgG1-T1-2-F405L(テフィバズマブに基づく)はクランピング因子A (ClfA)(Domanski et al., Infect Immun. 2005 Aug;73(8):5229-32)を認識する。結合は、Wood 46、USA300、8325-4 (T.J. Foster教授から入手; Trinity College Dublin)およびCOL (Andreas Peschel教授から入手; University Tubingen)上でFACS解析によって試験した。F405L変異(EUナンバリング)は、WO2011/131746による二重特異性抗体の作製に関連しており(Labrijn et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Mar 26;110(13):5145-50)、この出願には関連していない。このF405L変異は、抗体の結合に何の影響も及ぼさないことが以前に示されている。
菌株を血液寒天上で37℃にて一晩増殖させ、PBSで洗浄し、0.5%BSAを含むHEPES++中に5×108細胞/mLで再懸濁させた。細菌50μLを2.5μg/mLの抗体50μLと混合し(最終濃度1.25μg/mL)、振とう(600rpm)しながら4℃で30分間インキュベートした。細菌をPBSAで2回洗浄し、Alexa647標識プロテインA (Molecular probes社, カタログ番号P21462) 50μLと共に振とう(600rpm)しながら4℃で45分間インキュベートした。サンプルをPBSAで2回洗浄し、PBS中の1%パラホルムアルデヒド150μLで固定し、FACSVerse装置(BD Biosciences社)を用いてFACSにより解析した。
抗WTA IgG1-S4497は、抗ClfA IgG1-T1-2と比較して、試験した全ての黄色ブドウ球菌株への優れた結合を示した(図4)。したがって、WTAに対するIgG1-S4497を、実施例6〜8に記載のさらなる分析のために選択した。
実施例6:抗WTA抗体IgG1-S4497への6量体化促進変異E430Gの導入は、補体沈着および貪食取り込みを増強させる
6量体化促進変異E430G(EUナンバリングに従う)を抗WTA抗体IgG1-S4497に導入した。黄色ブドウ球菌株Wood 46およびUSA300へのIgG1-S4497-E430Gの結合を、実施例5に記載されるFACS結合アッセイで、野生型(WT) IgG1-S4497への結合と比較した。図5Aは、Wood 46およびUSA300へのIgG1-S4497の結合が、E430G変異の導入によって影響されなかったことを示す。
黄色ブドウ球菌に対する補体活性化を誘導するIgG1-S4497-E430Gの能力を、WT IgG1-S4497の能力と比較した。最初に、C4bおよびC3bを沈着させるIgG1抗体の能力を、精製された古典的経路系において分析した。測定に影響を与える可能性がある、黄色ブドウ球菌に対する天然の抗体が存在しないことを保証するために、精製済の成分を血清の代わりに使用した。Wood 46細菌を増殖させ、実施例2に記載したように回収した。抗体濃度系列(2倍希釈で最終濃度0.08〜10μg/mL)のIgG1-S4497またはIgG1-S4497-E430G 50μLを、5×108/mLの洗浄した細菌50μLに添加し、振とう(600rpm)しながら37℃で30分間インキュベートした。オプソニン化された細菌をPBSAで2回洗浄し、1μg/mLのC1 (Complement Technology社, カタログ番号A098)を含むHEPES緩衝液50μLに再懸濁させて、600rpmで振とうしながら4℃で30分間インキュベートした。サンプルをPBSAで2回洗浄し、10μg/mLのC4 (Complement Technology社, カタログ番号A105)を含むHEPES緩衝液50μLに再懸濁させて、600rpmで振とうしながら37℃で30分間インキュベートした。C3b沈着のために、サンプルを、続いて、C2 (最終濃度10μg/mL, Complement Technology社, カタログ番号A112)と、C3 (最終濃度10μg/mL;Rooijakkers and Wu, Nature Immunology, 2009 Jul; 10(7):721-7に従ってヒト血漿から単離)と一緒に、600rpmで振とうしながら37℃で30分間インキュベートした。サンプルを洗浄して固定し、実施例2に記載したようにFACSアッセイでC4dおよびC3dの沈着を分析した。
抗WTA mAbとのインキュベーションは、IgG1-S4497およびIgG1-S4497-E430Gの両方について用量依存的C4bおよびC3b沈着をもたらした。注目すべきことに、IgG1-S4497へのE430G変異の導入は、Wood 46細菌へのC4b (図5B)およびC3b (図5C)沈着を増強させた。データは、GraphPad Prism(バージョン6.02)でlog(agonist) vs 反応-可変傾斜(4パラメータ)の非線形フィットを用いて解析した。C4b沈着の場合、EC50値は、それぞれ、IgG1-S4497について0.886±0.040μg/mLであり、IgG1-S4497-E430Gについては0.431±0.080μg/mLであった。C3b沈着の場合、EC50値は、それぞれ、IgG1-S4497について0.668±0.031μg/mLであり、IgG1-S4497-E430Gについては0.354±0.068μg/mLであった。
次に、6量体化促進E430G変異の導入が好中球媒介貪食を誘導するIgG1-S4497の能力に及ぼす影響を分析した。Wood 46細菌を、スーパーフォールディングされたグリーン蛍光タンパク質(superfolded green fluorescent protein: sGFP)をsarAP1プロモーターから構成的かつ強力に発現する、改善されたGFP発現プラスミドpCM29で遺伝子改変した(Pang et al., J Innate Immun. 2010;2(6):546-59)。コンピテント細菌に、Schenk et al., FEMS Microbiol Lett. 1992 Jul 1;73(1-2):133-8に記載されるように、Gene Pulser II (BioRad社; 100オーム抵抗, 2.5kVで25μF容量)を用いて10μLのプラスミドをエレクトロポレーションした。回収後、10μg/mLのクロラムフェニコール(Sigma-Aldrich社, カタログ番号C0378)を含有するTodd Hewitt寒天プレート上で細菌を選択した。コロニーを採取して、10μg/mLのクロラムフェニコールを含有する液体THB (Oxoid社, カタログ番号CM0189B) 3mL中で振とうしながら37℃にて一晩増殖させた。細菌をPBSで洗浄し、PBS中の15%グリセロール1mL中に再懸濁させて、−80℃で保存した。貪食実験のために、GFP標識Wood 46をTHB 3mL中において600rpmで振とうしながら37℃にて18時間増殖させ、新鮮なTHB 10mL中に1:50で希釈し、続いて600rpmで振とうしながら37℃で3時間培養した。細菌をPBSで2回洗浄し、0.05%HSA (Sanquin社; 静注用アルブミン200g/L)を補充した1×RPMI 1640培地+L-グルタミン+25mM HEPES (Gibco Life Technologies社; カタログ番号52400)中に5×108細胞/mLで再懸濁させた。3.75×107/mLのGFP標識Wood 46細菌20μLを、抗体濃度系列のIgG1-S4497、IgG1-S4497-E430GまたはIgG1-b12アイソタイプ対照(2倍希釈で0.005〜10μg/mL)10μL+0.4%NHS(最終血清濃度0.1%)または天然IgGおよびIgM抗体を欠く12%血清(最終血清濃度3%)のいずれか10μLと共に、振とう(600rpm)しながら37℃で15分間インキュベートすることによって、オプソニン化した。ヒト好中球を実施例3に記載したように分離した。6.5×106/mLの好中球10μLをオプソニン化された細菌に添加し、750rpmで振とうしながら37℃で15分間貪食を誘導した。この反応を冷パラホルムアルデヒドで停止させ、実施例3に記載したように、好中球の蛍光をフローサイトメトリーで解析した。
NHSのIgG/IgM枯渇のために、プールしたNHSにEDTA (水中の500mM原液)を添加して最終濃度を5mMとし、血清5mLを、20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5を用いて低温で、ヤギ抗Hu-IgMをカップリングさせた5mL HiTrap NHS-Sepharoseカラム(GE Healtcare社; カタログ番号17-0717-01)とタンデム配置の5mL HiTrap Protein Gカラム(GE Healthcare社; カタログ番号17-0405-01)にかけた。収集したピーク画分をプールし、10mM CaCl2+10mM MgCl2で再構成して、アリコートを−80℃で保存した。この手順は、氷冷緩衝液を含むフラクションコレクター(GE Healthcare Life Sciences社)とカラムを備えたAKTA FPLCで行った。NHS-Sepharoseカラムへの2mgのヤギ抗Hu-IgM (ThermoFisher Scientific社; カタログ番号31136)のカップリングは、GE Healthcare社(説明書71-7006-00 AX)によって提供された一般的なプロトコルに従って、過剰の反応性基の不活性化のために、0.5M NaClを含む0.5MエタノールアミンpH8.3と0.5M NaClを含む0.1M酢酸ナトリウムpH4を交互に用いて行った。
抗WTA mAbとのインキュベーションは、NHS中の天然抗体の存在下および非存在下の両方において、GFP標識した細菌の用量依存的な好中球媒介取り込みをもたらした(図5)。注目すべきことに、6量体化促進変異の導入は、IgG1-S4497と比較してIgG1-S4497-E430Gによって誘導された好中球媒介貪食取り込みの効力を増強させた。この増加は、天然抗体を欠く血清(図5D)と正常ヒト血清(図5E)の両方において観察された。データを上記のように解析すると、IgGおよびIgMを欠くNHSを用いて、IgG1-S4497については0.144±0.024μg/mLのEC50、IgG1-S4497-E430Gについては0.027±0.060μg/mLのEC50がそれぞれ得られた。完全なNHSの存在下では、それぞれ、IgG1-S4497のEC50は0.096±0.047μg/mLであり、IgG1-S4497-E430GのEC50は0.015±0.104μg/mLであった。
総合すると、これらのデータは、E430G変異の導入による細菌表面上での抗WTA IgG1-S4497の6量体化の促進が、補体沈着と、非プロテインA保有黄色ブドウ球菌Wood 46細菌の好中球媒介貪食取り込みを増強させ得ることを示している。
実施例7:抗WTA IgG1-S4497の結合後の黄色ブドウ球菌上の補体沈着は、抗体6量体を形成するためにFc-Fc相互作用を必要とする
黄色ブドウ球菌上の補体沈着を誘導するためのIgG1-S4497による抗体6量体形成の必要性を分析するために、本発明者らは自己反発性(self-repulsing)変異K439EおよびS440Kを利用した(Diebolder et al., Science. 2014 Mar 14;343(6176):1260-3)。IgG1抗体中のK439EまたはS440Kのいずれかの存在によって導入される抗体間のFc反発は、6量体化の阻害をもたらす(WO2013/0044842)。K439EおよびS440K変異による反発は、各々が一方の変異および他方の変異を有する2つの抗体の混合物中で両方の変異を組み合わせることによって中和され、結果的にFc-Fc相互作用および6量体形成が復元される。
最初に、黄色ブドウ球菌株Wood 46およびUSA300へのIgG1-S4497-K439Eの結合を、実施例5に記載されるFACS結合アッセイでWT IgG1-S4497の結合と比較した。図6Aは、Wood 46およびUSA300へのIgG1-S4497の結合が、K439E変異の導入によって影響を受けなかったことを示す。
次に、Wood 46上にC4bおよびC3bを沈着させるIgG1-S4497-K439E、IgG1-S4497-S440Kおよびこれら2つの抗体の組み合わせの能力を、実施例6に記載されるように、精製された古典的経路系において試験した。阻害性変異体K439EおよびS440Kの場合、WT IgG1-S4497と比較して、C4b(図6B)およびC3b(図6C)沈着の減少が観察された。しかし、各々が相補的変異K439EおよびS440Kの1つを有する2つの抗体を組み合わせて反発を中和した場合には、C4b(図6B)およびC3b(図6C)沈着がWTレベルに回復した。実施例6に記載したようにEC50値を計算した。C4b沈着の場合、EC50値は、WT IgG1-S4497について0.886±0.040μg/mL、IgG1-S4497-K439Eについて1.490±0.028μg/mL、IgG1-S4497-S440Kについて1.354±0.033μg/mL、これらの組み合わせIgG1-S4497-K439E+IgG1-S4497-S440Kについて1.034±0.033μg/mLであった。C3b沈着の場合、EC50値は、WT IgG1-S4497について0.668±0.031μg/mL、IgG1-S4497-K439Eについて1.035±0.031μg/mL、IgG1-S4497-S440Kについて0.899±0.036μg/mL、これらの組み合わせIgG1-S4497-K439E+IgG1-S4497-S440Kについて0.657±0.025μg/mLであった。
これらのデータは、Fc-Fc相互作用による抗体の6量体形成が、抗WTA IgG1-S4497による黄色ブドウ球菌Wood 46上へのC4bおよびC3b沈着を改善し得ることを示している。
実施例8:黄色ブドウ球菌抗原WTAに対するIgG2-S4497は、ヒト好中球による補体依存的貪食取り込みを誘導し、これは6量体化促進変異E430Gの導入によって増強され得る
黄色ブドウ球菌抗原WTAに対する天然に存在する抗体は主にIgG2を含むので(Jung et al., J Immunol. 2012 Nov 15;189(10):4951-9)、本発明者らはまた、実施例6に記載されるように、新鮮分離したヒト好中球によるGFP標識Wood 46細菌の貪食取り込みを誘導するIgG2骨格の抗WTA抗体の能力をも試験した。IgG2-S4497およびIgG2-S4497-E430Gは、実施例1に記載のように作製した。IgG2-S4497に6量体化促進変異E430Gを導入することが貪食取り込みに及ぼす影響を、血清の存在下で試験した。さらに、貪食取り込みを誘導するWT IgG2-S4497の能力を、血清それゆえに補体の存在下および非存在下の両方において、IgG1-S4497と比較した。データをGraphPad Prismで解析し、実施例6に記載したようにEC50値を計算した。
図7は、血清の非存在下で、WT IgG1-S4497抗体がWT IgG2-S4497抗体よりも強力な貪食取り込みを誘導できたことを示す(それぞれのEC50は3.303±0.04μg/mLおよび16±0.038μg/mL)。注目すべきことに、血清それゆえに補体の添加は、WT IgG1-S4497とWT IgG2-S4497の両方に強い影響を与えた(それぞれのEC50は0.130±0.039μg/mLおよび0.331±0.061μg/mL);このことは、IgG2サブクラスが補体活性化において非効率的であるという仮説を支持しない。
IgG2-S4497-E430Gは、WT IgG2-S4497と比較して増強された貪食取り込みを誘導し(それぞれのEC50は0.107±0.073μg/mLおよび0.331±0.061μg/mL)、抗WTA IgG2抗体への6量体化促進変異の導入が補体の存在下での好中球媒介貪食の誘導を高めたことが示された。血清の存在下では、IgG2-S4497-E430Gの貪食取り込みのレベルはWT IgG1-S4497に匹敵した(それぞれのEC50は0.107±0.073μg/mLおよび0.130±0.039μg/mL)。
実施例9:抗CP5モノクローナルIgG1抗体への6量体化促進変異E430Gの導入は、補体沈着および貪食取り込みの増強をもたらす
WTAなどの黄色ブドウ球菌表面分子は、多糖体(PS)莢膜の発現により抗体による認識から遮蔽されることがある。そのため、莢膜多糖体5型(CP5)に対するモノクローナル抗体を、実施例1に記載されるようにWT IgG1-CP5およびIgG1-CP5-E430Gとして作製して、黄色ブドウ球菌への結合および補体活性化について試験した。
CP5莢膜を持ついくつかの黄色ブドウ球菌株へのWT IgG1-CP5の結合を、実施例5に記載されるFACS結合アッセイで試験した。結合は、Reynolds CP5 (Jeane Lee博士から入手, Brigham and Women's Hospital, Boston)、Reynolds CP−(Jeane Lee博士から入手, Brigham and Women's Hospital, Boston)、COL (Andreas Peschel教授から入手, University Tubingen)およびNewman−/−(Tim Foster教授から入手, Trinity College, Dublin)で試験した。IgG1-CP5は、高レベルのCP5を発現することが知られているReynolds CP5株への強い結合を示した(図8A)。Reynolds CP5をさらなる分析に使用した。最初に、IgG1-CP5へのE430G変異の導入は、IgG1-CP5のReynolds CP5への結合に影響しないことが示された(図8B)。
黄色ブドウ球菌に対する補体活性化を誘導するIgG1-CP5-E430Gの能力を、WT IgG1-CP5の能力と比較した。健康な個体の血清は、莢膜多糖体に対する天然の抗体を高濃度で含まないので、全ての実験はNHSの存在下で行った。
最初に、細菌上にC4bおよびC3bを沈着させるIgG1-CP5の能力に及ぼすE430G変異の影響を分析した。Reynolds CP5細菌を実施例2に記載したように増殖させて回収した。オプソニン化のために、洗浄した細菌(5×107/mL)50μLを、1%のプールしたNHS中の抗体濃度系列(2倍希釈で最終濃度0.08〜10μg/mL)のIgG1-CP5またはIgG1-CP5-E430G 50μLに添加して、600rpmで振とうしながら37℃で20分間インキュベートした。細菌をPBSAで2回洗浄し、沈着したC4dおよびC3bを染色し、実施例2に記載したようにFACSで解析した。抗CP5 mAbとのインキュベーションは、IgG1-CP5およびIgG1-CP5-E430Gの両方について用量依存的なC4bおよびC3b沈着をもたらした。WT IgG1-CP5抗体と比較して、E430G変異体IgG1-CP5-E430GではC4b(図8C)およびC3b(図8D)沈着の両方が増強された。
次に、好中球媒介貪食取り込みを誘導するIgG1-CP5の能力に及ぼす6量体化促進E430G変異の影響を分析した。Reynolds CP5細菌をGFP標識し、実施例6に記載したように、プールしたNHS血清中のWT IgG1-CP5およびIgG1-CP5-E430Gと共にインキュベートした。3.75×107/mLのGFP標識Reynolds CP5細菌20μLを、NHS(最終濃度3%)中の抗体濃度系列(2倍希釈で最終濃度0.005〜10μg/mL)のIgG1-CP5またはIgG1-CP5-E430G 20μLと共に600rpmで振とうしながら37℃で15分間インキュベートすることによりオプソニン化した。次に、オプソニン化された細菌に7.5×106/mLの好中球10μLを添加して、貪食取り込みを750rpmで振とうしながら37℃で15分間誘導した。この反応を冷パラホルムアルデヒドで停止させ、実施例3に記載したように、好中球の蛍光をフローサイトメトリーで解析した。
抗CP5 mAbとのインキュベーションは、GFP標識細菌の用量依存的な好中球媒介取り込みをもたらし、抗CP5抗体の添加が莢膜の抗貪食活性を中和できたことが示された(図8E)。注目すべきことに、貪食取り込みの増加は、WT IgG1-CP5と比較して、IgG1-CP5-E430Gで観察された。別の貪食取り込み実験では、血清中の抗体濃度系列を、Fc-IIIペプチドまたはFc-IIIスクランブル1ペプチドと共に室温で10分間プレインキュベートした(2倍希釈で0.02〜40μg/mLの抗体濃度系列10μL+40μg/mLのペプチドを含む12%血清10μL)。Fc-IIIペプチドは、抗CP5抗体のWTおよびE430G変異体の両方による貪食取り込みを強力に阻害することができた(図8F)。
総合すると、これらのデータは、試験した抗CP5抗体が、莢膜を持つ黄色ブドウ球菌株Reynolds CP5の6量体化依存的な補体媒介貪食取り込みを誘導することができ、この貪食取り込みを6量体化促進変異E430Gによって増強することができたことを示している。
実施例10:抗WTA抗体IgG1-S4497への6量体化促進変異E430Gの導入は、黄色ブドウ球菌の貪食殺傷を増強させる
Wood 46黄色ブドウ球菌の貪食殺傷を誘導するIgG1-S4497-E430Gの能力を、WT IgG1-S4497の能力と比較した。Wood 46細菌を、酵母エキス(Oxoid社, カタログ番号LP0021)を含むTodd Hewittブロス(THB, Oxoid社, カタログ番号CMO189) 3mL中で、600rpmで振とうしながら37℃で18時間増殖させ、新鮮なTHBで1/100に希釈して、約0.50のOD660まで増殖させた。細菌をハンクス平衡塩溶液(HBSS, フェノールレッド不含; Lonza社, カタログ番号BE10-527F)で2回洗浄し、HBSS+0.1%HSA中の1.7×108細菌/mLの濃度に調整した。1.7×108/mLのWood 46細菌20μLを、抗体濃度系列のIgG1-S4497またはIgG1-S4497-E430G (3または2倍希釈で3または1μg/mLから開始)10μL+IgG枯渇血清(最終血清濃度1%)10μLと共に、振とう(700rpm)しながら37℃で5分間インキュベートすることによりオプソニン化した。NHSのIgG枯渇は実施例6に記載したように行った。ヒト好中球を、実施例3に記載したように無菌条件下で新たに分離し、HBSS+0.1%HSA中の1×107細胞/mLの濃度に調整した。1×107/mLの好中球85μLを、シリコン処理した滅菌2mLチューブ(Sigma-Aldrich社, カタログ番号T3531)中のオプソニン化細菌15μLに加え、振とうプラットフォーム(750rpm)上のCO2インキュベーター内で37℃にて90分間貪食を誘導した。細菌と好中球の最終比は、1%血清を用いて1:1とした。この反応を水中の0.3%サポニン(Sigma-Aldrich社, カタログ番号47036)900μLで停止させ、ボルテックスし、氷上で10分間インキュベートした。PBS中の適切な希釈液を調製し、25μLの液滴をTodd Hewitt寒天プレート上に2つ組で置き、37℃で一晩インキュベートした。コロニー形成単位(CFU)を計数し、抗体または好中球を含まない細菌のみのサンプルに対して相対的に表した。
抗WTA mAbとのインキュベーションは、用量依存的な好中球媒介細菌殺傷をもたらした(図9)。注目すべきことに、6量体化促進変異の導入は、IgG1-S4497と比較して、IgG1-S4497-E430Gによって誘導された好中球媒介殺傷の効力を増強させた。EC50は、それぞれ、IgG1-S4497について0.037±0.074μg/mL、IgG1-S4497-E430Gについて0.013±0.071μg/mLであった。
実施例11:抗WTA抗体IgG1-S4497への6量体化促進変異E430Gの導入は、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)の貪食取り込みを増強させる
S.ワーネリ株K64およびKV144(いずれもUniversity Medical Center Utrecht (UMCU)の医療微生物学部からの臨床分離株)の細菌を、実施例3に記載したようにFITC標識した。3.75×107/mLのFITC標識したS.ワーネリK64およびKV144細菌20μLを、抗体濃度系列のIgG1-S4497またはIgG1-S4497-E430G (2倍希釈で0.002〜5μg/mL)10μL+4%NHS(最終血清濃度1%)10μLと共に、振とう(600rpm)しながら37℃で15分間インキュベートすることによりオプソニン化した。ヒト好中球を実施例3に記載したように分離した。6.5×106/mLの好中球10μLをオプソニン化細菌に加えて、750rpmで振とうしながら37℃で15分間貪食を誘導した。この反応を冷パラホルムアルデヒドで停止させ、実施例3に記載したように、好中球の蛍光をフローサイトメトリーにより解析した。
抗WTA抗体IgG1-S4497とのインキュベーションは、FITC標識したS.ワーネリ細菌の用量依存的な好中球媒介取り込みをもたらした(図10)。注目すべきことに、6量体化促進変異E430Gの導入は、IgG1-S4497と比較して、IgG1-S4497-E430Gによって誘導された好中球媒介貪食取り込みの効力を増強させた。S.ワーネリ株K64に対するEC50値は、それぞれ、IgG1-S4497について0.126±0.096μg/mL、IgG1-S4497-E430Gについて0.016±0.395μg/mLであった。
実施例12:抗WTA抗体IgG1-6297への6量体化促進変異E430Gの導入は、補体沈着の増強をもたらす
EUナンバリングに従う6量体化促進変異E430Gを抗WTA抗体IgG1-6297に導入した。黄色ブドウ球菌に対する補体活性化を誘導するIgG1-6297-E430Gの能力を、WT IgG1-6297の能力と比較した。細菌上にC1qおよびC4bを沈着させるIgG1抗体の能力を分析した。黄色ブドウ球菌COL細菌を、GFPを発現するように遺伝子改変し、実施例6に記載したように増殖させて回収した。細菌をヒツジ血液寒天(Sheep Blood Agar)プレート上で一晩増殖させ、実施例5に記載したようにPBS中に回収した。オプソニン化のために、RPMI/HSA緩衝液中の洗浄した細菌(5×107/mL)20μLを、1%のプールしたIgG/IgM枯渇血清中の抗体濃度系列のIgG1-6297またはIgG1-6297-E430G 20μLに添加し、750rpmで振とうしながら37℃で30分間インキュベートした。細菌をRPMI/HSAで2回洗浄し、沈着したC4bを、1μg/mLのマウス抗ヒトC4d抗体(Quidel社, カタログ番号A213)およびアロフィコシアニン(APC)結合ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体(1:350希釈; BD Pharmingen社, カタログ番号550826)で、本質的に実施例2に記載したように検出した。C1q検出のために、FITC結合ウサギ抗C1q抗体(1:350希釈, Dako社, カタログ番号F0254)およびAPC結合ヤギF(ab')2抗ウサギIgG(H+L)(1:350希釈, Jackson Immunoresearch社, カタログ番号111-136-144)を用いて抗体インキュベーションを行った。蛍光をフローサイトメトリーで測定した。
IgG1-6297およびIgG1-6297-E430Gによる黄色ブドウ球菌の貪食取り込みを分析するために、3.75×107/mLのGFPを発現するCOL細菌またはFITC標識したWood 46細菌20μLを、抗体濃度系列のIgG1-6297またはIgG1-6297-E430G (2倍希釈で0.002〜5μg/mL)10μL+4%IgG枯渇NHS(最終血清濃度1%)10μLと共に、振とう(750rpm)しながら37℃で15分間インキュベートすることによりオプソニン化した。ヒト好中球を実施例3に記載したように分離した。6.5×106/mLの好中球10μLをオプソニン化細菌に加えて、750rpmで振とうしながら37℃で15分間貪食を誘導した。この反応を冷パラホルムアルデヒドで停止させ、実施例3に記載したように、好中球の蛍光をフローサイトメトリーで解析した。
図11は、6297 mAbとのインキュベーションが、IgG1-6297およびIgG1-6297-E430Gの両方について、用量依存的なC1qおよびC4b沈着をもたらしたことを示す。C1q(図11A)およびC4b(図11B)沈着はいずれも、WT IgG1-6297抗体と比較して、E430G変異体IgG1-6297-E430Gにより増強された。また、IgG1-6297-E430Gによる好中球媒介貪食取り込みは、WT IgG1-6297と比較して、GFP標識COL(図11C)およびFITC標識Wood 46(図11D)細胞に対して増強された。