JP2019515190A - 非対称の上部燃焼表面を有するピストンおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

空洞なしのピストンおよび製造方法は、内燃機関の燃焼室に対する露出のための、ピストンが往復する長手方向中心軸の周りに延在する上部燃焼表面を有する、材料の単一片から鍛造されるピストン本体を提供する。上部燃焼表面は、ピンボア軸に対して概ね垂直の関係で中心長手方向軸に沿って延在する中心平面に対して非対称形状を有する。

Description

関連出願の相互参照
この出願は、2016年4月21日に提出された米国仮出願第62/325,704号および2017年4月20日に提出された米国特許出願第15/493,025号の利益を主張し、参照によりその内容全体がここに組み込まれる。
本発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して、内燃機関のためのピストンに、およびその製造方法に関する。
2.関連技術
エンジン製造者は、限定されないが、燃料経済を向上させること、オイル消費を低減すること、燃料システムを向上させること、圧縮負荷およびシリンダボア内の動作温度を上昇させること、ピストンを通した熱損失を低減すること、構成部品の潤滑を向上させること、エンジン重量を減らすこと、およびエンジンをよりコンパクトにすると同時に、製造に関わるコストを減らすことを含む、エンジンの効率および性能を向上させるという増加する要求に直面している。
シリンダ圧力および燃焼室内の動作温度を上昇させることは望ましいが、ピストンの温度を動作可能な範囲内に維持することは重要であり続ける。また、シリンダ圧力および動作温度の上昇を達成することは、これらの望ましい「上昇」がピストンのコンプレッションハイトおよびピストン全体の大きさおよび質量が減らされ得る程度を制限するという点において、トレードオフを伴う。これは、特に、ピストンの動作温度を低減するためにオイルが循環する、閉じられたまたは部分的に閉じられた冷却空洞を有する典型的なピストン構成で厄介である。結合継手に沿ってともに接合されて閉じられたまたは部分的に閉じられた冷却空洞を形成する上部および下部を有するピストンを製造するためのコストは、少なくとも部分的に、上部および下部をともに結合するのに用いられる接合プロセスによって一般に増加される。さらに、エンジン重量が低減され得る程度は、鋼鉄からの前述の「冷却空洞を含む」ピストンを作製する必要性によって与えられるため、それらは、ピストン上にかかる機械的および熱的な負荷の上昇に耐え得る。またさらに、ピストンが2つの片をともに溶接することによって形成されるとき、典型的には、上部燃焼表面は、ピストンが往復する長手方向中心軸に沿って延在する中心平面に対して対称的である必要がある。これは、中心長手方向軸に沿って延在する中心平面に対して非対称である場合には、さもなければ、摩擦溶接の間に2つの部品を互いに対して回転および停止させるという性質によって、上部燃焼表面が所望の向きに対して誤って位置合わせされることがあり得るためである。したがって、摩擦溶接されたピストンの上部燃焼表面の形状は、典型的には対称的である。
現在では、冷却空洞を有しない単一片の鋼鉄ピストンが開発されており、「空洞なしの」ピストンとも呼ばれ得る。このようなピストンは、低減された重量、低減された製造コスト、および低減されたコンプレッションハイトを提供し得る。空洞なしのピストンは、冷却オイルノズルによってスプレー冷却される、潤滑のためだけに軽くスプレーされる、またはオイルでスプレーされない。
冷却空洞がないことによって、空洞なしのピストンは、典型的には、従来の冷却空洞を有するピストンよりも高い温度を経験する。高い温度は、その後連続的なピストンクラッキングおよびエンジン不良を引き起こし得る、鋼鉄ピストンの上部燃焼表面の酸化または過熱を引き起こすことがある。高い温度は、冷却オイルまたは潤滑油がスプレーされる燃焼ボウルの下など、ピストンの下方クラウン領域に沿ってオイル劣化を引き起こすこともある。高い温度によって生じる別の起こり得る問題は、冷却オイルまたは潤滑油がピストンの下方クラウンに接触する領域において、冷却オイルが蓄積された炭素の層を形成し得るということである。この炭素層は、ピストンの過熱を引き起こすことがあり、これにより前述のクラッキングおよびエンジン不良をもたらす。
本発明の概要
本発明の1つの局面は、向上された性能を達成することが可能な空洞なしのピストンを提供する。ピストンは、鋼鉄材料の単一片から鍛造され、内燃機関の燃焼室に対する露出のための上部燃焼表面を含む。上部燃焼表面は、ピストンの中心平面に対して非対称形状を含むように形成される。中心平面は、スラスト軸に概ね垂直な関係で、またはピンボア軸に対して概ね垂直な関係で、中心長手方向軸に沿って延在し得る。
本発明の別の局面に従えば、一対のピンボス間かつ直径方向に対向するスカートパネル間に延在する、上部燃焼表面を形成する上部燃焼壁の両側に位置する下方クラウン表面は、上部燃焼表面の非対称外形に沿うまたは実質的に沿うように鍛造され得る。このように、概ねまたは実質的に一定の厚さを有して、上部燃焼壁が鍛造され得、同様に強化された上部燃焼表面の冷却をもたらし、下方クラウン表面上のコークス化されたオイルの蓄積を潜在的に低減すると見込まれ、同時にピストンの大きさおよび重量を低減する。
本発明の別の局面に従えば、非対称形状は、傾斜したおよび/または波状の燃焼表面の大部分によって提供され得る。表面の各々は、ピンボア軸の両側に形成される。
本発明の別の局面に従えば、非対称形状は、スラスト軸の方向に沿って、概ね互いに位置合わせされる、傾斜したおよび/または波状の上部燃焼表面によって、提供され得る。
本発明の別の局面に従えば、一対のポケットは、上部燃焼壁の下側に鍛造され得る。ポケットの各々は、別個のピンボスから径方向外側に形成される。
ピストンが材料の単一片から鍛造される場合、本発明の1つの局面に従えば、ピンボア軸および所望の中心平面に対して特定的かつ正確な向きに、上部燃焼表面の非対称形状を形成することが可能にされる。したがって、非対称形状が単一片の鍛造されたピストン上に形成されるとき、限定されないがスクラップの低減を含む、それに関する製造時間およびコストは、互いに溶接されるいくつかの部品を有するピストンよりも低減され得る。さらに、鍛造は、過度の量の余分な材料を除去するために費用のかかる加工動作を行わなければならないことを省き、製造時間および材料廃棄をともに低減する。加えて、非対称形状の適切かつ正確な位置合わせは、向上された性能および増加されたエンジンの有効寿命にも大きく貢献する。
本発明の別の局面は、空洞なしのピストンを製造する方法を含む。当該方法は、鋼鉄材料の単一片を鍛造してピストンの本体の全体を形成することを含む。鍛造ステップの間、当該方法は、ピンボア軸およびピストンの中心平面に対して意図された向きに、非対称形状を含む上部燃焼表面を形成することを含む。中心平面は、スラスト軸に対して概ね垂直な関係でまたはピンボア軸に対して概ね垂直な関係で、ピストンが往復する中心長手方向軸に沿って延在し得る。
本発明の別の局面に従えば、当該方法は、同一のまたは実質的に同一の上部燃焼表面の外形を有する、一対のピンボス間かつ直径方向に対向するスカートパネル間に延在する、上部燃焼表面を形成する上部燃焼壁の反対側に位置する下方クラウン表面を形成することを含み得る。このように、当該方法は、概ねまたは実質的に均一な厚さを有する上部燃焼壁を鍛造することを含み得、同様に強化された上部燃焼壁の冷却をもたらし、さらにその下方クラウン表面上におけるコークス化されたオイルの低減された蓄積をもたらし得、同時にピストンの大きさおよび重量を低減する。
本発明の別の局面に従えば、当該方法は、スラスト軸に沿って位置合わせされる、少なくとも1つの傾斜したおよび/または波状の上部燃焼表面を有する非対称形状を鍛造することを含み得る。
本発明の別の局面に従えば、当該方法は、一対の傾斜したおよび/または波状の上部燃焼表面を有する非対称形状を鍛造することを含み得る。表面の各々は、ピンボア軸の両側に鍛造される。
本発明の別の局面に従えば、当該方法は、スラスト軸の方向に沿って、概ね互いに位置合わせされる、傾斜したおよび/または波状の上部燃焼表面を有する非対称形状を鍛造することを含み得る。
本発明の別の局面に従えば、当該方法は、上部燃焼壁の下側に一対のポケットを鍛造することを含み得る。ポケットの各々は、別個のピンボスから径方向外側に鍛造される。
本発明のこれらのおよび他の局面、特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明および添付の図面と結び付けて考慮されたとき、より容易に理解されるであろう。
本発明の1つの局面に従って製造される空洞なしのピストンの側面図である。 本発明の別の局面に従う非対称の燃焼ボウルを示す、図1のピストンの頂部平面図である。 図1のピストンのピンボア軸と一致する、図2の線2−2に概ね沿った断面図である。 図2の線4−4に概ね沿った図1のピストンの断面斜視図である。 図1の空洞なしのピストンのピンボア軸に概ね沿った断面底面図である。
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、図1〜5は、たとえば現代のコンパクトな高性能車両エンジンなどの内燃機関のシリンダボアまたはチャンバ(図示せず)における往復運動のための、例示の実施形態に従って構築される空洞なしのピストン10の図を示す。「空洞なし」であるピストン10は、冷却空洞床またはピストンクラウン16の領域14にオイルを留める傾向にあり得る他の冷却空洞構成を有さず、したがって、冷却空洞を形成するために必要とされ得る追加の材料を有さず、ピストン10は、相対的に低減された大きさおよび重量を有し、相対的に低減された温度で動作し、向上された熱効率、燃料消費、およびエンジンの運転性能に貢献する。
図に示されるように、ピストン10は、アルミニウム、チタンまたは他の構造的金属などの他の材料が用いられてもよいことが考えられるが、鋼鉄などの金属材料の単一片から鍛造される、以下、本体11とも呼ばれる、一体のピストン本体を有する。したがって、ピストン10は、冷却空洞床によって画定されるまたは部分的に画定される囲まれたまたは部分的に囲まれた冷却空洞を有するピストンでは当たり前である、互いに接合される上部および下部などの、ともに接合される複数の部品を有しない。
鋼鉄または別の金属で作製される本体11は、高性能要求、すなわち現代の高性能内燃機関の上昇した温度およびコンプレッションハイトを満たすために、強固かつ丈夫である。本体を構築するために用いられる鋼鉄材料は、特定のエンジン用途におけるピストン10の要求に応じて、SAE4140級などまたはそれと異なる合金であってもよい。ピストン10が空洞なしであることによって、ピストン10の重量およびコンプレッションハイトは、冷却空洞を有するピストンに対して大いに低減されることができ、これによりピストン10が用いられるエンジンが低減された重量を実現し、よりコンパクトにされることを可能にすることから、エンジンの外側の大きさ全体が低減されることを可能にする。またさらに、ピストン10が空洞なしであったとしても、ピストン10は、以下に述べられる構造的および製造方法の進歩により、使用の間に十分に冷却されて最も過酷な動作温度に耐えることができ、これにより、少なくとも部分的に、下方クラウン表面13上に堆積される炭素に抵抗するというピストンの能力のために、したがって、ピストン10およびエンジンの性能をさらに高める。
ピストン10の本体11は、ピストンが往復する長手方向中心軸Aの周りに延在する、上部燃焼表面16とも呼ばれる、上部クラウンまたは単にクラウン16を有する。上部燃焼表面16は、燃焼ボウル12およびエンジンの燃焼室内の燃焼ガスに対する最適な露出、ならびに燃焼ガスの循環/混合のために、本発明の1つの局面に従って構成される。上部燃焼表面16は、第1部分および第2部分を有する。第1部分17は、上部燃焼表面16の外周に隣接して平面または概ね平面の形態で環状に延在し、第2部分は、第1部分17から垂下する燃焼ボウル12を形成する。燃焼ボウル12は、ピストンの中心平面に対して非対称形状を有するように鍛造される。図4に最もよく示されるように、中心平面は、スラスト軸TAに対して概ね垂直に、かつピンボア軸PAに沿ってもしくはピンボア軸PAと平行な関係で、中心長手方向軸Aに沿って延在する、中心平面CP−1であり得、および/または、中心平面は、中心長手方向軸Aに沿って、かつピンボア軸PAに対して概ね垂直な関係で、かつ概ねスラスト軸TAに沿ってもしくはスラスト軸TAと平行な関係で延在する、中心平面CP−2であり得る。上部燃焼表面16およびそこに垂下する燃焼ボウル12の非対称形状によって、領域14のあるエリアは、ピストン10の性能を改良するための他のエリアよりも、表面積および体積において、より多くの材料を含み得る。たとえば、最も摩耗しがちである上部燃焼表面16のエリアは、スラスト軸TAの領域に概ね沿うようなより摩耗しにくい他のエリアよりも、より多くの材料を含み得る。
1つの例示の実施形態では、図2〜図4に示されるように、上部燃焼表面16は、中心軸Aおよび燃焼ボウル12を取り囲む、以下、外側リム18とも呼ばれる、環状の外側燃焼ボウルリムを含む。燃焼ボウル12は、外側リム18から垂下し、外側リム18から径方向内側に中心軸Aまで延在する。燃焼ボウル12内の上部燃焼表面16は、上部燃焼表面16の非対称性を形成し、低減された大きさ、重量および上昇した温度および燃焼力に耐えることを含む向上された性能を獲得するというピストン10の能力を与え、さらにピストン10上の堆積物の蓄積を抑制することによるなどして増加された有効寿命を与える、少なくとも1つの、例示であって限定ではないが一対のものとして示される、形体22も含む。形体22は、例示であって限定ではないが、燃焼ボウル12の床20から外側リム18(との滑らかな遷移へ)まで、もしくは概ね外側リム18(に対する近接)まで上方向に延在する、以下、単に傾斜路22とも呼ばれる、傾けられた傾斜路状の領域などの、傾斜面(傾斜とは、面が中心長手方向軸Aに対して横方向に延在する平面に対して斜めの関係で延在することとなることが意図される)、および/または、波状面(波状とは、面が平坦または平面以外であり得ることとなることが意図される)として示される。傾斜路22は、弓状の経路にわたって延在し、外側リム18(からの滑らかな遷移)から、または実質的に外側リム18(からのわずかな軸方向のオフセット)からボウル12の床20まで、滑らかな(段差のない)下向きの態様で、中心長手方向軸Aの周りに少なくとも部分的に周方向に延在するように示されるが、これは例示であって限定ではない。傾斜路22は、非対称形状を有する上部燃焼表面16を提供するため、傾斜路22がない場合、上部燃焼表面は、中心平面CP−1,CP−2に対して対称的であり得、おそらく上記およびさらに以下で説明される性能の利益をもたらし得ない。非対称形状およびこれにより提供される性能向上を達成するために、示される以外の形体22の構成が用いられてもよいことが理解されるべきである。たとえば、ピストン10は、そこに開示される燃焼ボウルの構成に関して参照により本願に組み込まれる、米国特許第9,243,582号に開示される燃焼ボウル設計のいずれかを含んでもよい。しかしながら、組み込まれる‘582号特許のピストンと異なり、本発明に係るピストン10は、材料の単一片から鍛造され、溶接されず、下方クラウン表面13は、鍛造され、加工されない。加えて、上述されたように、本発明のピストン10は、閉じられたまたは部分的に閉じられた冷却空洞を含まない。
例示の実施形態に示されるように、ピストン10は、上部燃焼表面16から垂下しピストン10の外径に沿って周方向に延在するリングベルト領域24も含む。リングベルト領域24は、リング溝28によって互いに分離される複数のランド26を含む。ピストン10は、3つのリング溝28を有して示されるが、代替的には、本発明に従って製造されるピストン10は、より少ないまたはより多いリング溝28を含んでもよい。
ピストン10は、リングベルト領域24の径方向内側に概ね下方クラウン表面13から垂下する一対のピンボス30をさらに含む。ピンボス30は、下方クラウン表面13から垂直方向に離間されピンボア軸PAに沿って互いに同軸上に位置合わせされる、横方向に離間された一対のピンボア32を提供する。ピストン10は、リングベルト領域24から垂下しピンボア軸PAの両側に沿って互いに直径方向に対向して延在する一対のスカートパネル36も含む。
図5に最もよく示されるように、図2の例示のピストン10の下方クラウン表面13は、クラウン16の正反対かつリングベルト領域24の径方向内側に、クラウン16の上部燃焼壁34の下側に形成される。上部燃焼壁34の厚さ(t)は燃焼力に耐えるのに十分であるべきであることが理解されるが、冷却の目的のために、下方クラウン表面13は、好ましくは燃焼ボウル12から最小距離に離間され、実質的に燃焼ボウル12から上部燃焼壁34の正反対側の表面である。したがって、上部燃焼壁34の厚さ(t)は、鍛造プロセスで、燃焼ボウル12と下方クラウン表面13との間において、最小だが、十分な概ね一定のまたは実質的に一定の厚さ(t)を提供するように最適化され得る(概ねおよび実質的にとは、概ねおよび実質的に一定の厚さ領域にわたる厚さにおいて、約0〜10%の間、より好ましくは約0〜5%の間、さらにより好ましくは約0〜2%の間の分散などの、当業者によって理解され得るようなわずかな厚さの分散が考えられることとなることが意図される)。これにより、使用の間に下方クラウン表面13上に飛散するオイルからの上部燃焼壁34の冷却効果が高まるとともに、高性能の燃焼力に耐え、ピストン10の重量を最小化することが可能になる。このように、下方クラウン表面13は、‘582号特許に開示される下方クラウン表面のような、上部燃焼表面16の非対称形状に対応する(沿う)外形の非対称形状を有して鍛造され得る。しかしながら、下方クラウン表面13の外形は、機械加工を必要とする‘582号特許とは異なり、上部燃焼表面16に沿った鍛造プロセスにおいてネット形状(仕上げの使用形状)に形成される。下方クラウン表面13は、ここで、図5に示されるように、底部から真っ直ぐにピストン10を観察したときピンボア32を除いて見える表面であると考えられる。下方クラウン表面13は、また、ピストン10の下側から見たとき、開かれて露出しており、囲まれたもしくは部分的に囲まれた冷却空洞、または下方クラウン表面13付近にオイルもしくは冷却流体を留めやすい他の構成によって画定されない。下方クラウン表面13は、非対称の上部燃焼表面について同様に述べられるように、本願の図に開示されるもの以外の様々な構成を有して形成されてもよい。
例示の実施形態によれば、ピストン10の下方クラウン表面13は、閉じられたまたは部分的に閉じられた冷却空洞を有する比較対象のピストンよりも、より大きな総表面エリア(表面の外形に沿う3次元エリア)およびより大きな投影された表面エリア(平面図で見られるような、2次元エリア、平面)を有する。ピストン10の下側に沿ったこの開いた領域は、「鍛造されたままの」非対称の下方クラウン表面13の真上へクランク室内から吹きかけられるまたはスプレーされることになるオイルのための直接のアクセスを提供し、これにより下方クラウン表面13全体がクランク室内からのオイルによって直接吹きかけられることを可能にするとともに、オイルがリストピン(図示せず)の周りに自由に飛散することを可能にし、さらに、ピストン10の重量を大幅に低減する。したがって、典型的な閉じられたまたは部分的に閉じられた冷却空洞を有しないが、空洞なしのピストン10の、概ね開いた構成、およびピンボス30の真上以外の、上部燃焼壁34の低減された概ね一定の壁厚(t)は、下方クラウン表面13の最適な冷却およびピンボア32内のリストピン接合に対する潤滑を可能にすると同時に、燃焼ボウル12付近の表面上のオイル残留時間(ある体積のオイルが表面上に残留する時間)を大いに低減する。低減された残留時間は、閉じられたまたは実質的に閉じられた冷却空洞を有するピストンにおいて生じることがあるような、コークス化されたオイルの望ましくない蓄積を低減し得る。このように、ピストン10は、延長された使用にわたって「きれい」なままであることができ、これにより実質的にコークス堆積がないままであることを可能にすることから、最大の冷却効率を維持する。
図4および図5に示されるピストン10の下方クラウン表面13は、内側下方クラウン領域38および外側ポケット40を含む、いくつかの領域によって提供される。中心軸Aにおよび中心軸Aにすぐ隣接して位置する下方クラウン表面13の第1部分は、内側下方クラウン領域38によって提供される。内側下方クラウン領域38は、ピンボス30とスカートパネル36とストラット42との間に延在し、ピンボス30、スカートパネル36およびストラット42に取り囲まれる。内側下方クラウン領域38によって提供される下方クラウン表面13の2次元表面エリアおよび3次元表面エリアは、典型的には燃焼ボウル12の非対称性に沿うその非対称性によって最大化されるため、露出した内側下方クラウン領域38に対するクランク室から上方向に飛散するまたはスプレーされるオイルによって生じる冷却が強化され得、これによりピストン10の優れた冷却を与える。示される例示の実施形態では、下方クラウン表面13の内側下方クラウン領域38は、底部から見たときに凹状であるため、オイルは、ピストン10の片側からピストン10の反対側までのピストン10の往復の間に流されることができ、これによりピストン10の冷却をさらに高めるようにはたらく。
下方クラウン表面13の第2領域は、ピンボス30の径方向外側に位置する外側ポケット40によって提供される。各外側ポケット40は、ピンボス30のうちの1つ、スカートパネル36をピンボス30に接続するストラット42の一部、およびリングベルト領域24の一部に取り囲まれる。
本発明の別の局面は、非対称の燃焼ボウル12を有する空洞なしのピストン10を製造する方法を提供する。ピストン10の本体部分は、鋼鉄材料の単一片を鍛造することによって形成される。鍛造ステップは、上部燃焼壁34を、燃焼ボウル12の選択領域において非対称形状を有する上部燃焼表面16を含むように形成することを含む。言い換えれば、ピストン10は、後続の加工の必要なく、鍛造プロセスにおいて燃焼ボウル12内に形成される非対称形状とともに予め形成される。鍛造ステップは、上述されるように、リングベルト領域24と、ピンボス30と、スカートパネル36と、内側下方クラウン領域38と、外側ポケット40とを含むピストン10の他の構成を形成することを含んでもよい。鍛造ステップは、材料の2つの片を溶接するよりも単純で効率的である。鋼鉄材料の単一片を鍛造した後、当該方法は、典型的には、リングベルト領域24、ピンボス30、およびスカートパネル36を仕上げ加工することを含む。当該方法は、任意で、燃焼ボウル12を仕上げ加工することをさらに含んでもよいが、好ましくは、燃焼ボウル12は鍛造ステップの間にネット形状に完全に形成され、仕上げ加工が要求されない。
上部燃焼表面16上の非対称形状を有する単一片の鍛造されたピストン10は、溶接されたピストンを超える利点を提供する。典型的には、上部燃焼表面16上の波状/傾斜領域22によって提供される非対称形状を、ピンボア軸34および中心平面CP−1,CP−2に対して特定の位置に位置合わせすることが重要である。特定の位置は、ピストン10が用いられるエンジンの設計に応じて異なる。ピストンが2つの片をともに溶接することによって形成されるものである場合には、上部燃焼表面の非対称形状を中心平面に対して所望の位置に位置合わせすることは、最善でも困難であり、おそらく不可能である。しかしながら、本開示に従ってピストン10が材料の単一片から鍛造されるときは、上部燃焼表面上の形体の非対称形状を中心平面CP−1,CP−2に対して正確な位置に位置合わせすることは、可能であるだけでなく、比較的容易でもある。したがって、非対称形状が単一片の鍛造されたピストン10上に提供されるとき、可能である場合の溶接されたピストンと比較して、製造時間およびコストは大いに低減される。本願における開示によって提供される時間およびコストの削減に加えて、これにより得られる非対称形状の適切な位置合わせは、エンジンの重量および大きさの低減、およびエンジンの向上された性能にも大いに貢献する。
本発明の多くの修正および変形が、上記の教示に照らして可能であり、請求の範囲内に残る特定的に記載される以外の方法で実施され得る。すべての請求項のおよびすべての実施形態のすべての構成は、そのような組み合わせが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせられ得ることが理解されるべきである。

Claims (19)

  1. 内燃機関のための空洞なしのピストンであって、
    内燃機関のシリンダボアにおいて前記ピストンが往復する中心長手方向軸に沿って延在する一体のピストン本体を備え、前記ピストン本体は、上部燃焼表面を形成する上部燃焼壁を有し、環状のリングベルト領域が少なくとも1つのピストンリングの受容のために前記上部燃焼表面から垂下し、前記ピストンはさらに、
    前記リングベルト領域から垂下して前記ピストンをシリンダボア内に案内することを容易にし、リストピンの受容のためにピンボア軸に沿って位置合わせされる横方向に離間された一対のピンボアを提供する一対のピンボスを有する、一対のスカートパネルを備え、
    前記上部燃焼表面は、第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分は、前記上部壁の外周に沿って環状に延在し、前記第2部分は、前記第1部分から垂下する燃焼ボウルを形成し、
    前記上部燃焼壁は、前記上部燃焼表面の前記第2部分の正反対の前記燃焼ボウルの下側に形成される下方クラウン表面を有し、前記上部燃焼表面の前記第2部分は、前記中心長手方向軸に沿ってかつ前記ピンボア軸に横方向に延在する中心平面に対して非対称形状を有する、ピストン。
  2. 前記下方クラウン表面は、前記中心平面に対して非対称形状を有する、請求項1に記載のピストン。
  3. 前記下方クラウン表面は、前記燃焼ボウルの外形に沿う、請求項2に記載のピストン。
  4. 前記上部燃焼壁は、実質的に一定の厚さを有する、請求項1に記載のピストン。
  5. 前記非対称形状は、前記ピンボア軸の両側に形成される一対の傾斜した上部燃焼表面を含む、請求項1に記載のピストン。
  6. 前記傾斜した上部燃焼表面は、前記ピンボア軸に対して横方向に延在するスラスト軸の方向に沿って、概ね互いに位置合わせされる、請求項5に記載のピストン。
  7. 前記傾斜した上部燃焼表面は、前記燃焼ボウルの床から前記上部燃焼表面の前記第1部分まで上方向に延在する、請求項5に記載のピストン。
  8. 前記傾斜した上部燃焼表面は、前記中心長手方向軸に対して周方向に延在する、請求項7に記載のピストン。
  9. 一対の前記傾斜した上部燃焼表面は、前記中心長手方向軸に対して時計回り方向または反時計回り方向のうちの1つに、前記床から上昇する、請求項8に記載のピストン。
  10. 内燃機関のための空洞なしのピストンを製造する方法であって、
    内燃機関のシリンダボアにおいて前記ピストンが往復する中心長手方向軸を有する一体のピストン本体を鍛造することを備え、
    燃焼ガスに対する直接の露出のために構成される上部クラウンと、前記上部クラウンの反対側の下方クラウン表面とを形成する上部燃焼壁と、
    前記上部燃焼壁から垂下する一対のスカートパネルと、
    リストピンの受容のためのピンボア軸に沿って位置合わせされる横方向に離間された一対のピンボアを有する一対のピンボスと
    を有する前記一体のピストン本体を鍛造することをさらに含み、前記方法はさらに、
    第1部分と第2部分とを有する前記上部クラウンを鍛造することを備え、前記第1部分は、前記上部燃焼壁の外周に隣接して環状に延在し、前記第2部分は、前記第1部分から垂下する燃焼ボウルを形成し、前記第2部分は、前記中心長手方向軸に沿ってかつ前記ピンボア軸に対して横方向に延在する中心平面に対して非対称形状を有して鍛造される、方法。
  11. 前記下方クラウン表面を、前記中心平面に対して非対称形状を有するように鍛造することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記下方クラウン表面を、前記燃焼ボウルの外形に沿うように鍛造することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記上部燃焼壁を、実質的に一定の厚さを有するように鍛造することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
  14. 前記非対称形状を、少なくとも1つの傾斜した上部燃焼表面を含むように鍛造することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
  15. 前記少なくとも1つの傾斜した上部燃焼表面を、前記ピンボア軸の両側に形成される一対の傾斜した上部燃焼表面を含むように鍛造することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記傾斜した上部燃焼表面を、前記ピンボア軸に対して横方向に延在するスラスト軸の方向に沿って、概ね互いに位置合わせされるように鍛造することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記少なくとも1つの傾斜した上部燃焼表面を、前記燃焼ボウルの床から前記上部燃焼表面に前記第1部分まで上方向に延在するように鍛造することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
  18. 前記少なくとも1つの傾斜した上部燃焼表面を、前記中心長手方向軸の周りに少なくとも部分的に延在するように鍛造することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記少なくとも1つの傾斜した上部燃焼表面を、前記中心長手方向軸に対して時計回り方向または反時計回り方向のうちの1つに、前記床から上昇するように鍛造することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
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