JP2019500053A - 代謝性疾患におけるマイクロrna - Google Patents

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Abstract

本発明は、患者がメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を将来発現するかどうかを同定するための予測診断方法に関する。特に本発明は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定するための方法であって、下記を含む方法に関する:(a)被験対象から得た試料においてmiR−122の量を分析する(すなわち、決定する/測定する/定量する);そして(b)メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定する(すなわち、検出する);その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較して増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。本発明の他の側面は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための方法であって、下記を含む方法に関する:(a)被験対象から得た第1試料においてmiR−122の量を分析する(すなわち、決定する/測定する/定量する);その際、第1試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する前または途中に得られたものである;(b)その被験対象の第2試料においてmiR−122の量を分析する(すなわち、決定する/測定する/定量する);その際、第2試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する途中または後に得られたものである;そして(c)療法の成功を予測する(すなわち、療法の成功の有無を検出する);その際、第1試料と比較して第2試料におけるmiR−122の量の減少は療法の成功の指標となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、患者がメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を将来発現するかどうかを同定するための予測診断方法に関する。特に本発明は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定するための方法であって、下記を含む方法に関する:(a)被験対象から得た試料においてmiR−122の量を分析する(すなわち、決定する/測定する/定量する);そして(b)メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定する(すなわち、検出する);その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較して増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。本発明の他の側面は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための方法であって、下記を含む方法に関する:(a)被験対象から得た第1試料においてmiR−122の量を分析する(すなわち、決定する/測定する/定量する);その際、第1試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する前または途中に得られたものである;(b)その被験対象の第2試料においてmiR−122の量を分析する(すなわち、決定する/測定する/定量する);その際、第2試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する途中または後に得られたものである;そして(c)療法の成功を予測する(すなわち、療法の成功の有無を検出する);その際、第1試料と比較して第2試料におけるmiR−122の量の減少は療法の成功の指標となる。
マイクロRNA−122(miR−122)は肝臓におけるスモールノンコーディングRNAの最大70%を占め、脂質およびグルコースのホメオスタシス、ならびに肝臓インスリン抵抗性において中心的な役割を果たすと提唱されている(Fernandez-Hernando, Arterioscler Thromb Vasc Biol 2013, 33: 178-85; Shantikumar, Cardiovascular Research 2012, 93: 583-93)。マウス(Esau, Cell Metab 2006, 3: 87-98; Kruetzfeldt, Nature 2005, 438: 685-9)および非ヒト霊長類(Elmen, Nature 2008, 452: 896-9; Lanford, Science 2010, 327: 198-201)からの証拠は、miR−122の阻害が脂肪酸酸化を誘導し、脂質合成を低減し、それによって総コレステロールレベルの低下をもたらすことを示した。miR−122は幾つかの疾患の診断に有用な可能性がある幾つかのバイオマーカーのひとつであることが示唆された(WO 2011/110644 A1)。抗−miR−122の使用が種々の疾患の療法のために示唆された(WO 2009/109665 A1)。さらに、高脂肪食誘発肥満症ラットにおいてプロアントシアニディディス(proanthocyanididis)が肝臓mirR−122レベルを正常化したことが示された(Baselga-Escudero, Nutrition research 2015, 35: 337-345)。さらに、miR−122は非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(steatohepatitis)およびウイルス性肝炎を含めた種々の肝疾患に応答して増加し、それはおそらく組織損傷を反映しているのであろう(Szabo, Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2013, 10: 542-52; Bandiera, J Hepatol 2015, 62: 448-57)。
実験による証拠はmiR−122が有害な代謝作用をもち、心血管代謝性疾患の発現に関与する可能性があることを示唆しているが、ヒトにおける循環miR−122の長期的関連性はほとんど分かっていない。miR−122と心血管代謝形質(cardiomatabolic trait)との関係についてのヒト集団における研究は少なく、著しい制限がある。これまでの研究は主要脂質クラスとの相関性に注目していた(Gao, Lipids Health Dis 2012, 11: 55)が、脂質亜種へのブレイクダウンは解決策を加え、miR−122による脂質ホメオスタシスの調節の解釈を改善するであろう。また、研究は横断的であり、あるいは追跡期間が短かったが、長期間の前向き研究はmiR−122と疾患発生との時間的関係の確立を可能にし、バイアスの範囲を低減し、より有効な推論をなすことができるであろう。
メタボリックシンドロームは、アテローム硬化性心血管疾患および2型糖尿病のリスクを直接増大させる相互に関連した一群の生理学、生化学、臨床および代謝因子により定義される。メタボリックシンドロームおよび2型糖尿病の罹患率は、それぞれ約25%(国際糖尿病連盟(International Diabetes Federation))および約9%(WHO 2014)である。世界的に糖尿病患者の絶対数は35年間で5倍増加してほぼ50000万になった。食事の早期調節およびライフスタイル変更はこれらの疾患の発現および進行に対してかなりの効果をもつので、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病に対する素因を推定するためのバイオマーカーはきわめて重要である。
さらに、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病の発現後、患者の健康状態は適切な療法にかなり依存する。特に、選択した療法に患者が応答するかどうかの早期同定は回復の機会を増大させ、患者が無効な医薬の副作用を不必要に受けるのを防ぐ。
WO 2011/110644 A1 WO 2009/109665 A1
Fernandez-Hernando, Arterioscler Thromb Vasc Biol 2013, 33: 178-85 Shantikumar, Cardiovascular Research 2012, 93: 583-93 Esau, Cell Metab 2006, 3: 87-98 Kruetzfeldt, Nature 2005, 438: 685-9 Elmen, Nature 2008, 452: 896-9 Lanford, Science 2010, 327: 198-201 Baselga-Escudero, Nutrition research 2015, 35: 337-345 Szabo, Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2013, 10: 542-52 Bandiera, J Hepatol 2015, 62: 448-57 Gao, Lipids Health Dis 2012, 11: 55
よって、本発明の基礎となる技術的課題は、疾患(単数または複数)の発症前に、ライフスタイル介入が疾患(単数または複数)の発生および/または重症度を遅延または阻止できる時点および/または合併症を阻止できる時点で、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を早期診断するための手段および方法;ならびにメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための手段および方法を提供することである。
この技術的課題は特許請求の範囲に明記される態様の提供により解決される。
したがって、本発明は、無症候対象においてメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の素因を同定するための診断方法に関する。特に、本発明は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を疾患(単数または複数)の発症前に同定するための方法であって、下記を含む方法に関する:
(a)被験対象から得た試料においてmiR−122の量を分析する;そして
(b)メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定する;その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較して増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。
よって、前記の診断方法は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症前に、すなわち疾患(単数または複数)の臨床症状の発症前に、同定するために使用できる。たとえば、前記の診断方法を用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症の少なくとも1年前、たとえば少なくとも2年前、少なくとも3年前、少なくとも4年前、または少なくとも5年前に同定できる。たとえば、その診断方法を用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症の10年前から疾患(単数または複数)の発症の直前(たとえば、1か月前)までに同定できる。好ましくは、その診断方法を用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症の7.5年前から疾患(単数または複数)の発症の直前(たとえば、1か月前)までに同定できる。より好ましくは、その診断方法を用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症の5年前から疾患(単数または複数)の発症の直前(たとえば、1か月前)までに同定できる。“疾患(単数または複数)の発症”は、疾患(単数または複数)の発生、すなわち疾患(単数または複数)、特にメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の臨床発現を意味する。好ましくは、本発明において提供する診断方法で循環miR−122の量を分析する。“循環miR−122”は、血液により輸送されているmiR−122、すなわち血液、血漿または血清中に存在するmiR−122である。よって、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病は、本発明において提供する診断方法によりメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクが同定された後、10年以内、好ましくは7.5年以内、より好ましくは5年以内に発生する可能性がある。
以下および付随する例に記載するように、miR−122はメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病を発現するリスクを疾患(単数または複数)が発症するかなり前に同定する(すなわち診断する)ためのバイオマーカーであることが意外にも見出されたので、本発明は前記で確認した技術的課題を解決する。付随する実施例で、miR−122を810人の患者の血清試料において測定し(1995年)、5年後(2000年)に695人の患者の血清および血漿試料において再検査した。さらに、この再検査においては患者がメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現したかどうかを検査した。それらの結果は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病が発症する5年前の患者における強くかつ安定なmiR−122増加を確実に示す。よって、付随する実施例は、意外にもmiR−122レベルがメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病の発現の長期リスクと関連することを立証する。したがって、本発明はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の発現について高い確率(すなわち、高いリスク)をもつ無症候対象を同定するための診断方法に関する。
先行技術において、miR−122はメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病を含めた幾つかの疾患との関連で言及されている(Rotllan, Cholesterol 2012: 1-8; Kaur, World Journal of Diabetes, 2011, 2: 158-163; および“Nutritional Intervention in Metabolic Syndrome”, edited by Isaias Dichi, Andrea Name Colado Simao, CRC press, 2016)。しかし、miR−122をメタボリックシンドロームまたは2型糖尿病について疾患発症前のバイオマーカーとして用いることは決して示唆されていない。しかし、これらの疾患の発現についてのリスクを疾患の発現前に検出することは、罹患した者が発生の阻止または疾患の重症度の低減のために彼らのライフスタイルを変更できる(たとえば、彼らのウェスト−ヒップ比(weight-to-hip ratio)を低減する)という利点をもつ。
マイクロRNA(miRNA、mir−)は種々の疾患における重要なレギュレーターおよび有望なバイオマーカーとして明らかになりつつある。miRNAは、遺伝子発現の翻訳後レギュレーターとして機能するスモールノンコーディングRNAである。バイオマーカーとしてのmiRNA(たとえば、miR−122)の使用は幾つかの利点をもつ。たとえば、miRNAは細胞内および細胞外に存在し、体液中できわめて安定である。細胞外安定性のため、miRNAの分析を複雑な全身性疾患の診断に使用できる。
miR−122は、臓器特異性をもちかつ血清および血漿において測定できるごく少数のmiRNAのひとつである。よって、miR−122はルーティン理学的検査中に血液試料において容易に検出できる高特異性マーカーである。
図1:ブルーニコ試験(Bruneck Study)における血清miR−122レベルと脂質亜種レベルとの横断的相関性(A)、およびマウスにおけるアンタゴmiR−122注射の結果(グループ当たりn=5):ノーザンブロッティングにより評価した肝臓miR−122の低減を含む(B)、リポタンパク質代謝を調節する他の肝臓miRNAの発現にアンタゴmiR−122が及ぼす影響:miR−33の低減を含む(C)、アンタゴmiR−122処置に際しての血清コレステロール濃度の低減(D)、ならびにコレステロールおよび脂質の代謝における関与が示唆されている遺伝子の発現(E)。 図1:ブルーニコ試験(Bruneck Study)における血清miR−122レベルと脂質亜種レベルとの横断的相関性(A)、およびマウスにおけるアンタゴmiR−122注射の結果(グループ当たりn=5):ノーザンブロッティングにより評価した肝臓miR−122の低減を含む(B)、リポタンパク質代謝を調節する他の肝臓miRNAの発現にアンタゴmiR−122が及ぼす影響:miR−33の低減を含む(C)、アンタゴmiR−122処置に際しての血清コレステロール濃度の低減(D)、ならびにコレステロールおよび脂質の代謝における関与が示唆されている遺伝子の発現(E)。 図1:ブルーニコ試験(Bruneck Study)における血清miR−122レベルと脂質亜種レベルとの横断的相関性(A)、およびマウスにおけるアンタゴmiR−122注射の結果(グループ当たりn=5):ノーザンブロッティングにより評価した肝臓miR−122の低減を含む(B)、リポタンパク質代謝を調節する他の肝臓miRNAの発現にアンタゴmiR−122が及ぼす影響:miR−33の低減を含む(C)、アンタゴmiR−122処置に際しての血清コレステロール濃度の低減(D)、ならびにコレステロールおよび脂質の代謝における関与が示唆されている遺伝子の発現(E)。 図2:アトルバスタチン(atorvastatin)による処置は、ASCOT試験の参加者における総コレステロール、LDLコレステロール、および血清miR−122における一致した低減(A)、マウスにおける血清miR−122の低減(B)、ならびに初代肝細胞からのmiR−122分泌の低減(C)をもたらした。 図3:ブルーニコ試験における、血清miR−122レベルと、アポリポタンパク質および脂質代謝に関係する他の選択されたタンパク質の循環レベルとの相関性。 図4:ブルーニコ試験におけるmiR−122と心血管代謝性疾患罹患との関連性。 図5:循環中の肝臓miR−122のためのビヒクルとしてのエクソソーム。 図6:ブルーニコ試験におけるmiR−122の経時相関性および血清−対−血漿相関性。比較のためにマイクロRNA値を対数変換した。 図7:マウス肝臓においてアンタゴmiR−122注射がmiRNA発現に及ぼした結果を定量PCRにより評価したもの;図1と関連。データは平均(標準偏差)である。アンタゴmiR−122グループにおける相対的miR−122量は0.13%±0.06%(P=6×10−4)であった。P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。 図8:ブルーニコ試験における血清miR−122とタンパク質の循環レベルとの相関性。 図9:ブルーニコ試験における臨床関連サブグループにわたるmiR−122と心血管代謝性疾患との関連性。年齢、性、社会経済的状態、喫煙、身体活動および、アルコール摂取について調整した。
よって、本発明は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを同定するための方法であって、下記を含む方法に関する:
(a)試料においてmiR−122の量を分析する(すなわち、決定する/定量する/測定する);そして
(b)メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを同定する(すなわち、検出する/決定する/評価する);その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較してその試料において増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。
本発明方法において、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクは被験対象(好ましくは、人類)において同定される(すなわち、診断される)。miR−122の量を分析する(すなわち、決定する/定量する/測定する)試料はその被験対象から得られる。
したがって、本発明は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定するための方法であって、下記を含む方法に関する:
(a)被験対象から得た試料においてmiR−122の量を分析する;そして
(b)メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定する;その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較して増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。
好ましくは、本明細書に記載した方法においては循環miR−122の量を分析する。
前記のように、本発明によれば、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを同定する(すなわち、診断する)ためのバイオマーカーとしてmiR−122、特に循環miR−122を使用できる。したがって、本発明は予測バイオマーカーを提供する。より具体的には、本発明はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの同定に使用するための予測バイオマーカーとしてのmiR−122を提供する;その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較してその試料において増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。前記に述べたように、miR−122はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを疾患(単数または複数)の発症前に診断するために使用できるという利点をもつ。したがって、本発明は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを疾患(単数または複数)の発症前に診断するのに使用するための予測バイオマーカーとしてのmiR−122に関する;その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較してその試料において増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。本明細書に記載するバイオマーカーとして用いるmiR−122は好ましくは循環miR−122である。
患者がメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病の両方の疾患を発症することはきわめて一般的である。通常はメタボリックシンドロームが最初に発現し、その後、同じ対象に2型糖尿病が発現する。しかし、時にはメタボリックシンドロームを伴う患者が既に2型糖尿病の基準を満たしている。逆に、ほとんどすべての2型糖尿病患者がメタボリックシンドロームの基準を満たしている。よって、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーは、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病のいずれかを発現するリスクを同定するために、あるいはメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病の両方を発現するリスクを同定するために、使用できる。たとえば、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーは、2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を同定するために使用できる。あるいは、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーは、メタボリックシンドロームを発現するリスクを同定するために使用できる。
本発明において提供する診断方法で、あるいは本明細書に記載するバイオマーカーの使用により、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをこれらの臨床発現のかなり前に、たとえばメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の臨床発現の10年前からその疾患の臨床発現までに同定できる。メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを、それぞれメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の臨床発現の少なくとも1年前に同定することが好ましい。たとえば、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーを用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症の少なくとも1年前、少なくとも2年前、少なくとも3年前、少なくとも4年前、または少なくとも5年前に同定できる。したがって、この診断方法を用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症の10年前から疾患(単数または複数)の発症の直前(たとえば、1か月前)までに同定できる。好ましくは、その診断方法を用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症の7.5年前から疾患(単数または複数)の発症の直前(たとえば、1か月前)までに同定できる。より好ましくは、その診断方法を用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を、疾患(単数または複数)の発症の5年前から疾患(単数または複数)の発症の直前(たとえば、1か月前)までに同定できる。よって、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病は、本発明において提供する診断方法によりまたは本発明において提供するバイオマーカーを用いてメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクが同定された後、10年以内、好ましくは7.5年以内、より好ましくは5年以内に発生する可能性がある。
通常、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病のための薬物療法は疾患が診断されるまで開始されないであろう。よって、本発明において提供する診断方法を適用すると、または本明細書に記載するバイオマーカーを適用すると、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病のための薬物療法を受けていない被験対象において、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを同定することができる。
メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の表明は標準診断基準に従って行なうことができる。たとえば、下記の5つの特徴のうちの3つが存在すればメタボリックシンドロームを診断することができる(Alberti, Circulation 2009, 120: 1640-5):(i)ウェスト周囲:男性≧102cmまたは女性≧88cm;(ii)空腹時トリグリセリド値≧150mg/dl、または高トリグリセリドのための薬物治療中である(たとえば、フィブレート類およびニコチン酸類で);(iii)HDLコレステロール:男性<40および女性<50mg/dl、または低いHDLコレステロールのための薬物治療中である(たとえば、フィブレート類およびニコチン酸類で);(iv)血圧≧130/≧85mmHg、または高血圧症の病歴をもつ患者において抗高血圧症薬治療中である;ならびに(v)空腹時血糖値≧100mg/dl、または高血糖のための薬物治療中である。2型糖尿病は1997年米国糖尿病学会基準(1997 American Diabetes Association criteria)、その最近の改定、WHO基準その他に従って診断できる。
本発明において提供する手段および方法により検出できるメタボリックシンドロームまたは2型糖尿病を発現するリスクは、具体的なリスク比を提示することにより定量できる。これらのリスク比はmiR−122レベルと疾患発現の関連性の強さの尺度である。特に、付随する実施例は、増大したmiR−122レベルは約1.8〜4.6のリスク比でメタボリックシンドロームを発現するリスクの指標となることを示す。より具体的には、付随する実施例は、miR−122レベルの上3分の1(すなわち、>66パーセンタイル)をmiR−122レベルの下3分の1(すなわち、<33パーセンタイル)と比較して、1.8〜4.6がメタボリックシンドロームについてのリスク比の95%信頼区間であることを示す。よって、メタボリックシンドロームについて、1.8〜4.6の範囲は95%信頼区間である。これは、増大したmiR−122レベルとメタボリックシンドローム発現の間に“真の”関連性がある− 95%信頼度で −範囲である。よって、本発明は、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーに関するものであって、その方法またはバイオマーカーはメタボリックシンドロームを発現するリスクをもつ対象を同定するためのものであり、その際、リスク比は1.8〜4.6である。
付随する実施例は、増大したmiR−122レベルが1.3〜6.4のリスク比で2型糖尿病を発現するリスクの指標となることも示す。この範囲1.3〜6.4は、miR−122レベルの上3分の1(すなわち、>66パーセンタイル)をmiR−122レベルの下3分の1(すなわち、<33パーセンタイル)と比較した、2型糖尿病についてのリスク比の95%信頼区間である。よって、本発明は、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーに関するものであって、その方法または使用は2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を同定するためのものであり、その際、リスク比は1.3〜6.4である。
本発明に関して、リスク比は好ましくは年齢および性について調整されており、これはそれらが年齢または性がもつ可能性のある何らかの影響について補正されている(すなわち、増大したmiR−122レベルとメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の発現との関連性は年齢および性とは“無関係”である)ことを意味する。
本発明は本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーに関するものであり、その際、miR−122は下記のポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチドである:
(i)SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド;
(ii)SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一でありかつ機能性であるポリヌクレオチド;その機能はmiR−122のターゲット遺伝子(たとえば、マウス遺伝子Acaca、Acly、Fasn、Scd1、Srebf1)の翻訳を抑制する活性を含む;および
(iii)(ii)によるポリヌクレオチドであって、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を含むもの。
前記の項目(ii)は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、よりさらに好ましくは少なくとも98%、よりさらに好ましくは少なくとも99%同一でありかつ機能性であるポリヌクレオチドを表わす;その機能はmiR−122のターゲット遺伝子(たとえば、マウス遺伝子Acaca、Acly、Fasn、Scd1、Srebf1)の翻訳を抑制する活性を含む。好ましくは、本発明に関して、miR−122は前記の(i)または(iii)に記載したポリヌクレオチドである。より好ましくは、miR−122は前記の(i)に記載したもの(すなわち、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド)である。最も好ましくは、miR−122はSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである。
miR−122は、それのターゲットmRNAの3’側非翻訳領域(3’−UTR)に結合してそれによってそれらの翻訳を抑制することにより、またはmRNA分解を誘導することにより、それの生物活性を発揮する(Huntzinger Nat Rev Genet 2011;12(2):99-110)。マウスにおいて、miR−122の阻害は未知のメカニズムによるターゲット遺伝子のアップレギュレーションをもたらし、こうして肝臓における脂質代謝を制御する。miR−122のターゲット遺伝子には、遺伝子Acaca、Acly、Fasn、Scd1、Srebf1(マウス遺伝子名)が含まれる(Tsai, J Clin Invest 2012; 122: 2884-97; Esau, Cell Metab 2006; 3: 87-98; Elmen, Nucleic Acids Res 2008; 36: 1153-62)。これらの遺伝子の(すなわち、マウス遺伝子Acaca、Acly、Fasn、Scd1、Srebf1の)発現分析を用いてmiR−122活性をアッセイすることができた。miR−122は、HCV RNAの5’−UTRを結合することによりC型肝炎ウイルス(HCV)の複製も増大させる(Roberts, Nucleic Acids Res 2011; 39: 7716-29)。miR−122の阻害はHCV RNAレベルを低下させる(Janssen, N Engl J Med 2013; 368: 1685-94)。
メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを同定するための本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーの使用において、健康な基準集団は好ましくは少なくとも20の健康な対象(たとえば、20〜1000人の健康な人類)からなる。
本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーがメタボリックシンドロームを発現するリスクを同定するためのものであれば、健康な基準集団(それは好ましくは健康な人類からなる)はメタボリックシンドロームを伴わず、かつメタボリックシンドロームを発現するリスクをもたない。よって、本発明の一側面は本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーに関するものであって、その方法またはバイオマーカーはメタボリックシンドロームを発現するリスクをもつ対象を同定するためのものであり、健康な基準集団はメタボリックシンドロームを伴わず、かつ下記の基準(i)および(ii)のうち少なくとも1つを満たす:
(i)下記のものから選択されるいずれかの特徴をもたない:
(a)ウェスト周囲:男性≧102cmまたは女性≧88cm;
(b)空腹時トリグリセリド値≧150mg/dl、または高トリグリセリドのための薬物治療中(たとえば、フィブレート類およびニコチン酸類による薬物治療中)である;
(c)HDLコレステロール:男性<40および女性<50mg/dl、または低いHDLコレステロールのための薬物治療中(たとえば、フィブレート類およびニコチン酸類による薬物治療中)である;
(d)血圧≧130/≧85mmHg、または抗高血圧症薬治療中であり、高血圧症の病歴をもつ;ならびに
(e)空腹時血糖値≧100mg/dl、または高血糖のための薬物治療中である;
(ii)集団健常値(population normative value)の33パーセンタイルより低いmiR−122レベルをもたない;
集団健常値の33パーセンタイル未満のmiR−122レベルは、集団においてmiR−122の量(すなわち、miR−122レベル)を測定してmiR−122分布を同定することにより決定できる。miR−122レベル分布を増大順に配置すると33%の数値がこの数値より下にあり、残り(すなわち、66%)がそれより上にある。その集団は少なくとも100人の集団、たとえば100〜1000人のランダム集団であってもよい。
本発明に関して、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病を発現するリスクをもたない者は0.65の中央miR−122値(四分位範囲(interquartile range):0.34〜1.12)をもつことが見出された。
本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーが2型糖尿病を発現するリスクを同定するためのものであれば、健康な基準集団(それは、好ましくは健康な人類からなる)は2型糖尿病を伴わず、かつ2型糖尿病を発現するリスクをもたない。よって、本発明の一側面は本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーに関するものであって、その方法またはバイオマーカーは2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を同定するためのものであり、その際、健康な基準集団は2型糖尿病を伴わず、かつ集団健常値の33パーセンタイルより低いmiR−122レベルをもたない。たとえば、付随する実施例において、<0.500のmiR−122値は集団健常値の33パーセンタイルより低いことが示された。前記に述べたように、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病を発現するリスクをもたない者は0.65の中央miR−122(四分位範囲:0.34〜1.12)をもつ。さらに、またはその代りに、その健康な基準集団は≧126mg/dLの空腹時血糖値を伴わないであろう。
付随する実施例において、miR−122の量は平均および四分位範囲として決定された。特に、メタボリックシンドロームを発現するリスクをもつ者は1.05の中央miR−122値(四分位範囲:0.65〜2.93)をもつことが示された。同様に、2型糖尿病を発現するリスクをもつ者は0.94の中央miR−122値(四分位範囲:0.55〜1.66)をもつ。これに対し、これら2つのいずれの疾患についてもリスクをもたない者は0.65の中央miR−122値(四分位範囲:0.34〜1.12)をもつ。これらの数値は定量ポリメラーゼ連鎖反応(相対定量のみが可能)で得られたので無単位である。特に、これらの数値は基準の量に対比した(特に、U6およびCel−miR−39の量に対比した)miR−122量を反映する。よって、1の中央miR−122値はmiR−122の量と基準の量が同一であることを意味するであろう。したがって、本発明に関して、miR−122の量を分析するためにU6および外来C.エレガンス(C. elegans)スパイク−イン対照(Cel−miR−39)を正規化の目的で使用できる。
しかし、miR−122の量(すなわち、レベル)の絶対定量も本発明に関して実施できる。たとえば、標準曲線の使用により絶対定量が可能であろう(マイクロRNA試料への既知濃度の基準のスパイク−イン、標準曲線の作成、患者試料における絶対濃度の推論を伴う)。
用語“四分位範囲”は、25パーセンタイルと75パーセンタイルの間の範囲を表わす。“四分位範囲”は、集団においてmiR−122の量(すなわち、miR−122レベル)を測定してmiR−122分布を確認することにより決定できる。miR−122レベル分布を増大順に配置すると、25%の数値が四分位範囲より下にあり、25%がそれより上にある。その集団は少なくとも100人の集団、たとえば100〜1000人のランダム集団であってもよい。
本発明に関して、メタボリックシンドロームが発現している者においてmiR−122の量が健康な基準集団と比較して160%増加している(すなわち、260%の数値に)ことが見出された。同様に、2型糖尿病が発現している者においてmiR−122の量が健康な基準集団と比較して214%増加している(すなわち、314%の数値に)。意外にも、罹患している者は、これらの疾患が発現する5年前に既に増大したmiR−122レベルを示した。特に、メタボリックシンドローム発現の5年前にmiR−122の量は健康な基準集団と比較して既に104%増加していた(すなわち、204%の数値に)。同様に、2型糖尿病発現の5年前にmiR−122の量は健康な基準集団と比較して既に49%増加していた(すなわち、149%の数値に)。
よって、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーの一側面において、健康な基準集団のmiR−122量の少なくとも110%(好ましくは少なくとも120%、より好ましくは少なくとも125%、よりさらに好ましくは少なくとも130%、よりさらに好ましくは少なくとも135%)である被験対象のmiR−122量は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。たとえば、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーがメタボリックシンドロームを発現するリスクを同定するためのものであれば、健康な基準集団のmiR−122量の少なくとも110%(好ましくは少なくとも120%、より好ましくは少なくとも130%、よりさらに好ましくは少なくとも140%、よりさらに好ましくは少なくとも150%、よりさらに好ましくは少なくとも160%、よりさらに好ましくは少なくとも170%、よりさらに好ましくは少なくとも180%、またはよりさらに好ましくは少なくとも190%)である被験対象のmiR−122量は、メタボリックシンドロームを発現するリスクの指標となる。さらに、またはその代りに、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーが2型糖尿病を発現するリスクを同定するためのものであれば、健康な基準集団のmiR−122量の少なくとも110%(好ましくは少なくとも120%、より好ましくは少なくとも125%、よりさらに好ましくは少なくとも130%、よりさらに好ましくは少なくとも135%、またはよりさらに好ましくは少なくとも140%)である被験対象のmiR−122量は、2型糖尿病を発現するリスクの指標となる。
本発明において提供する診断方法を用いて、または本発明において提供するバイオマーカーを用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクが予測されれば、その被験対象がメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病についての一般的リスク因子をもつかどうかを分析する(すなわち、決定する/測定する)こともできる。よって、本発明の一側面は、さらにその被験対象が下記のものから選択される少なくとも1つのリスク因子をもつかどうかを同定することを含む、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーに関する:過体重(BMI≧25)、肥満(BMI≧30)、中心性肥満(ウェスト周囲:男性において≧102cm、または女性において≧88cm)、高血圧(血圧≧140/90)、低いHDLコレステロール(HDLコレステロール:男性において<40、女性において<50mg/dl)、および高いトリグリセリドレベル(≧150mg/dL)。これらの特徴はメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病の両疾患についてのリスク因子である。
本発明において提供する診断方法および本明細書に記載するバイオマーカーとしてのmiR−122は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをきわめて初期に、すなわち疾患(単数または複数)が発症するかなり前に検出できるという利点をもつ。よって、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつと同定された患者は、たとえばライフスタイル介入あるいはメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法により、疾患の発生を遅延または阻止する可能性をもつ。よって、本発明のさらなる側面は、本発明において提供する診断方法または本発明において提供するバイオマーカーに関するものであり、その際、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつと同定された被験対象に投与されるべきであり;ならびに/あるいはライフスタイル介入はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつと同定された被験対象に推奨される。メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつと同定された被験対象には、リスクをもつ対象の疾患状態をモニターするための追跡を施すこともできる。
薬物療法は、標準ガイドラインに従ったメタボリックシンドロームまたは2型糖尿病の医薬を含むか、またはそれらからなることができる。たとえば2型糖尿病のための薬物療法は、メトホルミン(metformin)処置を含むか、またはそれらからなることができる。メタボリックシンドロームのための薬物療法は、スタチン(statin)(たとえば、アトルバスタチン(atorvastatin))処置を含むか、またはそれらからなることができる。よって、メタボリックシンドロームを発現するリスクをもつと同定された被験対象(すなわち、患者)をスタチン(たとえば、アトルバスタチン)で処置することができる。メタボリックシンドロームについてのその薬物療法はアンタゴmiR−122(antagomiR-122)処置であってもよい。
よって、本発明の一側面は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法による処置を必要とする対象を疾患(単数または複数)の発生前に処置する方法に関するものであり、その対象はそれぞれメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつと同定されており、その処置方法はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法を対象に施すことを含む。その薬物療法はmiR−122阻害薬、たとえばmiR−122に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。たとえば、そのmiR−122阻害薬はアンタゴmiR−122であってもよい。そのような処置を必要とする対象は、本発明の診断方法またはバイオマーカーを用いて、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつと同定されているものとする。
ライフスタイル介入(それはリスクをもつ対象に推奨される)は、たとえば身体活動の増強および/または1日当たり摂取するカロリー量の低減および/または他の標準的な食事推奨事項であってもよい。これらの介入の結果、ウェスト−ヒップ比が低減して、メタボリックシンドロームおよび2型糖尿病の発現および重症度が抑えられる可能性がある。
本発明において提供する診断方法には、または本明細書に記載するバイオマーカーを用いる際には、miR−122の量(すなわち、レベル)を測定するために幾つかの異なる試料を使用できる。本発明の一側面において、その試料は血液、血漿、血清、尿または肝臓組織試料である。好ましくは、試料は血清または血漿である。最も好ましくは、試料は血清である。本発明に関して、miR−122の量は定量PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により分析できる。
より具体的には、miR−122の量(すなわち、レベル)は先の記載に従って測定できる(Willeit, Circ Res 2013, 112: 595-600; Zampetaki, Circ Res 2010, 107: 810-7)。要約すると、miRNAをたとえばmiRNeasyキット(Qiagen,ドイツ、ヒルデン)の使用により抽出することができる。血漿または血清試料については、25μlのRNA溶出液のうち固定体積3μlを逆転写(RT)反応のための装入材料として使用できる。細胞または組織からのRNAについては、100ngの装入材料をRTのために使用できる。Megaplex Primer Pools(Human Pools A version 2.1またはRodent Pool A、Life Technologies,ドイツ、ダルムシュタット)を用いてmiRNAを逆転写し、Megaplex PreAmp Primers(Primers A v2.1)を用いて生成物をさらに増幅することができる。RTおよびPreAmpの生成物は両方とも−20℃で保存することができる。Taqman miRNA assayを用いてmiR−122の発現を査定することができる。希釈した予備増幅生成物(0.5μl)またはRT生成物(0.45ngの装入量に対応する)を0.25μlのTaqman microRNA assay(20×)(Life Technologies)および2.5μlのTaqman Universal PCR Master Mix No AmpErase UNG(2×)と混和して、5μlの最終体積にすることができる。qRT−PCRは、Applied Biosystems 7900HTサーモサイクラーにより、95℃で10分、続いて95℃で15秒および60℃で1分を40サイクル、実施することができる。すべての試料を二重に試験することができる。相対定量は、ソフトウェアSDS2.2(Life Technologies)を用いて実施できる。U6および外来C.エレガンス スパイク−イン対照(Cel−miR−39)を正規化のために使用できる。
しかし、miR−122の量はmiR−122に特異的に結合する結合分子を用いて分析(すなわち、決定)することもできる。miR−122に特異的に結合する結合分子は、オリゴヌクレオチド(すなわち、プローブまたはプライマー)であってもよい。そのようなオリゴヌクレオチドの製造は当技術分野で一般に知られている。本発明に関してメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を同定するために用いる結合分子はキットの一部であってもよく、それを用いてメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを疾患(単数または複数)の発症前に診断できる。よって、本発明は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を疾患(単数または複数)の発症前に同定するためのキットの使用に関するものであり、そのキットは本明細書において前記に定めた結合分子を含む。本明細書において提供する本発明の診断方法は、このキットを用いて実現できる。有利には、本発明のキットはさらに、場合により(a)反応緩衝液(単数または複数)、保存溶液、洗浄溶液、および/または本明細書に記載するアッセイの実施に必要な残りの試薬もしくは材料を含む。さらに、本発明のキットの部品は、個別にバイアルもしくはボトルに、または組み合わせて容器もしくはマルチコンテナ(multicontainer)ユニット内にパッケージすることができる。これらのバイアル/ボトル/容器またはマルチコンテナは、本明細書に記載する結合分子のほかに保存のための保存剤または緩衝液を含むことができる。さらに、キットは使用のための指示を含むことができる。本発明のキットの製造は好ましくは当業者に既知の標準法に従う。前記に述べたように、本発明において提供するキットはメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を疾患(単数または複数)の発症前に同定するために用いられる。
付随する実施例は、メタボリックシンドロームのための確立された薬物療法(特に、スタチン処置)が循環miR−122レベルを低減することを示す。類似のスタチン応答がマウスおよび培養肝細胞においても観察された。よって、付随する実施例は、miR−122がmiR−122レベルの増大に付随する疾患の処置の成功の指標となる分子マーカーであることを立証する。したがって、miR−122のレベルの測定は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法が療法の成功をもたらすかどうかを同定するために使用できる。よって、本発明は、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための方法に関するものであり、その方法は下記を含む:
(a)被験対象から得た第1試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第1試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する前または途中に得られたものである;
(b)被験対象から得た第2試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第2試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する途中または後に得られたものである;そして
(c)療法の成功を予測する;その際、第1試料と比較して第2試料におけるmiR−122の量の減少は療法の成功の指標となる。
もちろん、上記のモニタリング方法において第2試料は第1試料後に得られたものである。
本発明には、被験対象のmiR−122の量を基準データと比較するモニタリング方法も含まれる。特に、本発明の一側面はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための方法に関するものであり、その方法は下記を含む:
(a)メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法を受けたかまたは受ける被験対象から得た試料においてmiR−122の量の量を分析する;
(b)その量を、基準集団のmiR−122の量に対応する基準データと比較する;そして
(c)工程(b)の比較に基づいて療法の成功を予測する。
基準集団が健康な対象(すなわち、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病を伴わない者)からなるならば、試料の、基準データと同一または類似するmiR−122量は療法の成功の指標となる。同様に、基準集団が罹患した対象(すなわち、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を伴う者)からなり、ただしその疾患のための薬物療法を受けていれば、試料の、基準データと同一または類似するmiR−122量は療法の成功の指標となる。基準集団が罹患した対象(すなわち、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を伴う者)からなるならば、基準データより低い試料のmiR−122量は療法の成功の指標となる。
上記のモニタリング方法において、“同一または類似するmiR−122量”は、被験対象の試料(たとえば、血漿または血清試料)中のmiR−122の量が基準集団のmiR−122の量の60〜140%、好ましくは70〜130%、より好ましくは80〜120%、よりさらに好ましくは90〜110%であることを意味する。
上記のモニタリング方法は、両方(メタボリックシンドロームおよび2型糖尿病)の処置における療法の成功を一緒にモニタリングするために使用できる。上記のモニタリング方法は、これらの疾患のうちのいずれか一方、すなわちメタボリックシンドロームまたは2型糖尿病のいずれかの処置における療法の成功をモニタリングするためにも使用できる。よって、本発明の一側面はメタボリックシンドロームの処置に際して療法の成功をモニタリングするための方法に関するものであり、その方法は下記を含む:
(a)被験対象から得た第1試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第1試料はメタボリックシンドロームのための薬物療法で被験対象を処置する前または途中に得られたものである;
(b)被験対象から得た第2試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第2試料はメタボリックシンドロームのための薬物療法で被験対象を処置する途中または後に得られたものである;そして
(c)療法の成功を予測する;その際、第1試料と比較して第2試料におけるmiR−122の量の減少は療法の成功の指標となる。
本発明において提供するモニタリング方法を、2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするために使用することが好ましい。よって、本発明の他の側面は2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための方法に関するものであり、その方法は下記を含む:
(a)被験対象から得た第1試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第1試料は2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する前または途中に得られたものである;
(b)被験対象から得た第2試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第2試料は2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する途中または後に得られたものである;そして
(c)療法の成功を予測する;その際、第1試料と比較して第2試料におけるmiR−122の量の減少は療法の成功の指標となる。
上記モニタリング方法における試料は血清または血漿試料、好ましくは血清試料であってもよい。
本発明において提供するモニタリング方法は、さらなるマーカーの量(すなわち、レベル)を分析することをも含み、その際、変化した(すなわち、減少または増加した)そのマーカーの量は、さらにメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の処置における療法の成功の指標となる。本発明において提供するモニタリング方法に使用できるさらなるマーカーは、たとえば空腹時血糖値および/またはHbA1cである。特に、工程(c)において第1試料と比較して第2試料における空腹時血糖値および/またはHbA1cの量の減少は療法の成功の指標となる。
本発明の診断方法(すなわち、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクをもつ対象を同定するための方法)に関連して本明細書に開示する定義(特に、miR−122の量の分析に関するもの)は、必要な変更を加えて上記のモニタリング方法に適用される。
付随する実施例においては、循環miR−122の量を分析した。よって、本発明において提供する診断方法、本発明において提供するバイオマーカー、または本発明において提供するモニタリング方法に関して、そのmiR−122は好ましくは循環miR−122である。
よって、本発明は下記の項目に関する:
1.メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を疾患の発症前に同定するための方法であって、
(a)被験対象から得た試料においてmiR−122の量を分析する;そして
(b)メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定する;その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較して増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる
ことを含む方法。
2.健康な基準集団のmiR−122の量と比較して増加したmiR−122の量がメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを疾患の発症前に同定する際に使用するための予測バイオマーカーとしてのmiR−122。
3.メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを、それぞれメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の臨床発現の少なくとも1年前に同定する、項目1に記載の方法または項目2の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
4.方法またはバイオマーカーがメタボリックシンドロームを発現するリスクを有する対象を同定するためのものであり、リスク比が1.8〜4.6である、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法または項目2もしくは3の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
5.方法またはバイオマーカーが2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定するためのものであり、リスク比が1.3〜6.4である、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法または項目2もしくは3の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
6.miR−122が下記のポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチドである:
(i)SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド;
(ii)SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一でありかつ機能性であるポリヌクレオチド;その機能はmiR−122のターゲット遺伝子の翻訳を抑制する活性を含む;および
(iii)(ii)によるポリヌクレオチドであって、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を含むもの;
項目1〜5のいずれか1項に記載の方法または項目2〜5のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
7.方法またはバイオマーカーがメタボリックシンドロームを発現するリスクを有する対象を同定するためのものであり、健康な基準集団がメタボリックシンドロームを伴っておらず、下記の基準(i)および(ii)のうちの少なくとも1つを満たす:
(i)下記のものから選択されるいずれかの特徴をもたない:
(a)ウェスト周囲:男性≧102cmまたは女性≧88cm;
(b)空腹時トリグリセリド値≧150mg/dl、または高トリグリセリドのための薬物治療中である;
(c)HDLコレステロール:男性<40および女性<50mg/dl、または低いHDLコレステロールのための薬物治療中である;
(d)血圧≧130/≧85mmHg、または抗高血圧症薬治療中であり、高血圧症の病歴をもつ;ならびに
(e)空腹時血糖値≧100mg/dl、または高血糖のための薬物治療中である;あるいは
(ii)集団健常値の33パーセンタイルより低いmiR−122レベルをもたない;
項目1〜4および6のいずれか1項に記載の方法または項目2〜4および6のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
8.方法またはバイオマーカーが2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定するためのものであり、健康な基準集団が2型糖尿病を伴っておらず、集団健常値の33パーセンタイルより低いmiR−122レベルをもたない、項目1〜3、5および6のいずれか1項に記載の方法または項目2、3、5および6のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
9.健康な基準集団のmiR−122の量の少なくとも110%である被験対象のmiR−122がメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる、項目1〜8のいずれか1項に記載の方法または項目2〜8のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
10.さらに、過体重、肥満、中心性肥満、高血圧、低いHDLコレステロールレベルまたは高いトリグリセリドレベルから選択されるリスク因子のうち少なくとも1つを有するかどうかを同定することを含む、、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法または項目1〜10のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
11.メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有すると同定された被験対象にメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法を施すべきである;ならびに/あるいは
メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有すると同定された被験対象にライフスタイル介入を推奨する;
項目1〜10のいずれか1項に記載の方法または項目2〜10のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
12.試料が血液、血漿、血清、尿または肝臓組織試料である、項目1〜11のいずれか1項に記載の方法。
13.miR−122の量を定量PCRにより分析する、項目1〜12のいずれか1項に記載の方法または項目2〜12のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
14.メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための方法であって、
(a)被験対象から得た第1試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第1試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する前または途中に得られたものである;
(b)被験対象から得た第2試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第2試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する途中または後に得られたものである;そして
(c)療法の成功を予測する;その際、第1試料と比較して第2試料におけるmiR−122の量の減少は療法の成功の指標となる;
ことを含む方法。
15.2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための、項目14に記載のモニタリング方法。
16.試料が血清または血液の試料である、項目14または15に記載のモニタリング方法。
17.miR−122が循環miR−122である、項目1〜13のいずれか1項に記載の方法または項目2〜13のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカーまたは項目14〜16のいずれか1項に記載のモニタリング方法。
本明細書において用語“分析する”は、“決定する”、“定量する”または“測定する”を意味する。たとえば、本発明において用語“試料においてmiR−122の量を分析する”は、“試料においてmiR−122の量を決定、定量、または測定する”ことを意味する。miR−122の量は、たとえば定量PCRを用いて分析する(すなわち、定量する)ことができる。
本発明の目的について、“対象”(または“患者”)は、最も好ましくは人類である。しかし、本発明において提供する診断方法、バイオマーカーまたはモニタリング方法は獣医科用としても適用できる。したがって、それらの対象は動物、たとえばマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、モルモット、フェレット、ネコ、イヌ、ニワトリ、ヒツジ、ウシ類、ウマ、ラクダ、または霊長類であってもよい。好ましくは、対象は哺乳類である。より好ましくは、対象はヒトである。さらに、被験対象は好ましくは中等度に高いCVDリスクをもつ。中等度に高いCVDリスクは、その被験対象が下記のものから選択される少なくとも1つのリスク因子をもつことを意味する:過体重(BMI≧25)、肥満(BMI≧30)、中心性肥満(ウェスト周囲:男性≧102cm、または女性≧88cm)、高血圧(血圧≧140/90)、低いHDLコレステロール(HDLコレステロール:男性<40、および女性<50mg/dl)、および高いトリグリセリドレベル(≧150mg/dL)。付随する実施例中で概説する実験は白人集団を用いて実施された。したがって、“被験対象”および“基準集団”は白人の可能性がある。
“マイクロRNA”(“microRNA”、“mir−”、“miR−”または“miRNA”とも呼ばれる)は、植物、動物、およびある種のウイルス中にみられるスモールノンコーディングRNA分子(約22個のヌクレオチドを含む)であり、それはRNAサイレンシングおよび遺伝子発現の翻訳後調節において機能する。miRNAはmRNA分子内の相補配列との塩基対合により機能する。その結果、これらのmRNA分子は下記のプロセスのうち1以上によってサイレンシングされる:1)mRNA鎖を開裂して2つの断片にする、2)mRNAをそれのポリ(A)テイルの短縮によって不安定化する、および3)リボソームによるmRNAからタンパク質への翻訳の効率を低下させる。miRNAは植物および動物の両方において良好に保存されており、重要な進化的に古い遺伝子調節成分であると考えられる。本明細書において用語“miR−”(特に、miR−122)は成熟miRNAを表わす。たとえば、miR−122はpre−miR−122に由来する成熟miRNA配列を表わす。miR−122の配列を本明細書においてSEQ ID NO:1として示す。
疾患“メタボリックシンドローム”は、“メタボリックシンドロームX”、“心メタボリックシンドローム(cardiometabolic syndrome)”、“シンドロームX”、“インスリン抵抗性症候群”、“リーベン症候群(Reaven’s syndrome)”、および“CHAOS”とも呼ばれる。メタボリックシンドロームは下記の5つの特徴のうち少なくとも3つが集積したものを特徴とする疾患である:腹部肥満、高血圧、脂質異常症(高い血清トリグリセリドレベルおよび低い高密度リポタンパク質(HDL)レベル)、高い空腹時血漿血糖値、およびインスリン抵抗性。本発明によれば、用語“メタボリックシンドローム”は疾患“メタボリックシンドローム”の他の標準的なすべての定義、たとえば世界保健機構(World Health Organization)(WHO)または国際糖尿病連合(International Diabetes Federation)(IDF)が提示する定義をも表わす。
糖尿病(diabetes mellitus)(一般に“diabetes”と呼ばれる)は長期間にわたる高い血糖値を伴う一群の代謝性疾患である。高血糖の症状には、頻尿、口渇亢進、および空腹感亢進が含まれる。未処置のまま放置すると、糖尿病は多数の合併症、たとえば糖尿病性ケトアシドーシスおよび非ケトン性高浸透圧性昏睡を引き起こす可能性がある。重篤な長期合併症には心血管疾患、卒中、慢性腎不全、足潰瘍、および眼の障害が含まれる。糖尿病は、膵臓が十分なインスリンを産生しないこと、または産生されたインスリンに対して身体の細胞が適正に応答しないことのいずれかによるものである。3つの主なタイプの糖尿病、“1型糖尿病”、“2型糖尿病”および“妊娠糖尿病”がある。2型糖尿病(type-2 diabetes) (type-2 diabetes mellitusとも呼ばれる)はインスリン抵抗性、すなわち細胞がインスリンに適正に応答できない状態から開始する。疾患が進行するのに伴って、インスリン欠乏も発現する可能性がある。時に、“2型糖尿病”は“非インスリン依存性糖尿病”(NIDDM)または“成人発症型糖尿病”とも呼ばれる。2型糖尿病の現在の標準的定義は空腹時血糖値≧126mg/dLである。しかし、本発明によれば、用語“2型糖尿病”は他のすべての標準的定義の疾患“2型糖尿病”をも表わす。主因は過体重および運動不足である。2014年の時点において、世界中で推定38700万人が糖尿病を伴っており、2型糖尿病が症例の約90%を占めている。
本発明に関して、“リスク比”を決定する。リスク因子およびリスク比は当技術分野で一般に知られており、先に記載されたように検証済みの標準法により確認できる(Willeit, Arterioscler Thromb Vasc Biol 2010, 30: 1649-56; Kiechl, N Engl J Med 2002, 347: 185-92)。
用語“リスク比(risk ratio)”(“相対リスク(relative risk)”または“RR”とも呼ばれる)は当技術分野で一般に知られており、曝露グループにおいてある事象が起きる(たとえば、疾患が発現する)確率と、比較する非曝露グループにおいてその事象が起きる確率との比を表わす。たとえば、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病の発現についてのリスク比は、次式を用いて計算することができる:
式中:
“a”は、増大したmiR−122レベルを伴う者がメタボリックシンドローム/2型糖尿病を発現する確率であり;“a+b=100”である;
“c”は、正常な増大していないmiR−122を伴う者がメタボリックシンドローム/2型糖尿病を発現する確率であり;“c+d=100”である。
本発明に関して、メタボリックシンドロームについてのリスク比はロジスティック回帰を用いて計算することができる;糖尿病についてのリスク比はCox回帰(Cox regression)を用いて計算することができる。より特別には、miR−122値を解析前に対数変換することができる。miR−122レベルと他の関係特徴との横断的関連性(cross-sectional association)を、年齢および性について調整したスピアマン相関係数(spearman correlation coefficient)および線形回帰モデルを用いて数量化することができる。前向き解析は、2型糖尿病についての最新の共変量およびメタボリックシンドロームについてのプールしたロジスティック回帰(D’Agostino, Stat Med 1990, 9: 1501-15)によるコックス比例ハザード回帰(Cox proportional hazard regression)を用いる。ハザード比とオッズ比は同じ相対リスク尺度を表わすと推定することができ、まとめてリスク比と記載される。罹患疾患(prevalent disease)を伴う参加者をそれぞれの解析から除外することができる。モデルを、年齢および性に加えて、社会経済的状態(低、中、高)、喫煙(有、無)、身体活動およびアルコール摂取について調整することが好ましい(“多変量モデル”)。潜在的な仲介因子/交絡因子(mediators/confounders)である肥満度指数およびウェスト−ヒップ比について調整するために、さらに感度分析を使用できる。2型糖尿病についての比例ハザード推定(proportional hazarsds assumption)は、シェーンフィールド残基(Schoenfeld residuals)を用いて検定することができる。さらに、年齢(<60歳、60〜70歳、>70歳)、性、スタチン摂取、および肥満症(肥満度指数:<25、25〜30、>30)により規定したグループ間の交互作用について、フォーマルテストにより効果修飾(effect modification)を調べることができる。主成分分析(principal analyses)には、両側有意水準(significance levels of two-sided)P<0.05を使用できる。
本発明に関して、“同一性”、“同一性パーセント”または“X%同一”は、そのヌクレオチド配列が本明細書に示す配列、たとえばSEQ ID NO:1の配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性をもつことを意味し、その際、より高い同一性数値の方がより低いものより好ましい。本発明によれば、2以上の核酸配列に関して、用語“同一性(identity/identities)”または“同一性パーセント(percent identity/identities)”は、比較ウインドウまたは指定した領域にわたって比較して最大一致が得られるようにアラインした際に、当技術分野で既知の配列比較アルゴリズムを用いるかまたは手動アラインメントおよび目視検査により測定して、同じであるかまたは明記したパーセントの同じヌクレオチドをもつ、2以上の配列を表わす(たとえば、SEQ ID NO:1の核酸配列と少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、よりさらに好ましくは97%、よりさらに好ましくは少なくとも98%、またはよりさらに好ましくは少なくとも99%の同一性をもち、かつ機能性である;その際、機能はmiR−122のターゲット遺伝子の翻訳を抑制する活性(すなわち、能力)を含む)。
好ましくは、記載した同一性は、SEQ ID NO:1の少なくとも約10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、最も好ましくは全ヌクレオチドの長さの領域にわたって存在する。たとえば当技術分野で既知のCLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson, 1994, Nucl Acids Res, 2: 4673-4680)またはFASTDB(Brutlag, 1990, Comp App Biosci, 6: 237-245)に基づくアルゴリズムを用いて配列間の同一性を決定する方法が当業者に既知であろう。BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズム(Altschul, 1997, Nucl Acids Res 25: 3389-3402; Altschul, 1993, J Mol Evol, 36: 290-300; Altschul, 1990, J Mol Biol 215: 403-410)も当業者が利用できる。たとえば、BLAST 2.0(Basic Local Alignment Search Tool BLASTを表わす)(Altschul, 1997, 前掲; Altschul, 1993, 前掲; Altschul, 1990, 前掲)を用いて局所配列アラインメントを検索できる。上記に述べたBLASTは、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の両方のアラインメントを作成して配列類似性を決定する。アラインメントの局所性のため、BLASTは厳密な一致を決定する際または類似配列を同定する際に特に有用である。BLASTを用いる同様なコンピューター手法(Altschul, 1997, 前掲; Altschul, 1993, 前掲; Altschul, 1990, 前掲)を用いて、GenBankまたはEMBLなどのヌクレオチドデータベース中の同一分子または関連分子を検索することができる。
以下の図面および実施例を参照することにより本発明をさらに記載する。
図面は下記を示す:
図1:ブルーニコ試験(Bruneck Study)における血清miR−122レベルと脂質亜種レベルとの横断的相関性(A)、ならびにマウスにおけるアンタゴmiR−122注射の結果(グループ当たりn=5):ノーザンブロッティングにより評価した肝臓miR−122の低減を含む(B)、リポタンパク質代謝を調節する他の肝臓miRNAの発現にアンタゴmiR−122が及ぼす影響:miR−33の低減を含む(C)、アンタゴmiR−122処置に際しての血清コレステロール濃度の低減(D)、ならびにコレステロールおよび脂質の代謝における関与が示唆されている遺伝子の発現(E)。パネルAにおいて、数字は質量分析により決定した複合脂質の脂肪酸(FA)組成を示す(炭素鎖長:二重結合の数);菱形およびラベルは、多重試験についてのボンフェロニ補正(Bonferroni-correction)後に有意である相関係数を示す。マーカーラベルは炭素鎖長および二重結合数を示す。略号:ACC1,アセチル−CoAカルボキシラーゼ(細胞質ゾル性);Acly,ATPクエン酸リアーゼ;ALDO,アルドラーゼ;AMPK,5’AMP活性化プロテインキナーゼ;CE,コレステリルエステル;CPT1,カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1;FAS,脂肪酸シンターゼ;HMGCR,HMG−CoAレダクターゼ;LDLR,LDL受容体;LPC,リゾホスファチジルコリン;LPE,リゾホスファチジルエタノールアミン;PC,ホスファチジルコリン;PE,ホスファチジルエタノールアミン;PS,ホスファチジルセリン;MTTP,ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質;SCD1,ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1;SM,スフィンゴミエリン;SREBP,ステロール調節エレメント結合タンパク質;およびTAG,トリアシルグリセロール。P<0.05。
図2:アトルバスタチンによる処置は、ASCOT試験の参加者における総コレステロール、LDLコレステロール、および血清miR−122における一致した低減(A)、マウスにおける血清miR−122の低減(B)、ならびに初代肝細胞からのmiR−122分泌の低減(C)をもたらした。
図3:ブルーニコ試験における、血清miR−122レベルと、アポリポタンパク質および脂質代謝に関係する他の選択されたタンパク質の循環レベルとの相関性。略号:AFAM,アファミン(アルファ−アルブミン);CFAH,補体因子H;ZA2G,亜鉛−アルファ−2−糖タンパク質。スピアマン相関係数(Spearman correlation coefficient)を年齢および性について調整した。太字のP値は、多重試験についてのボンフェロニ補正後に有意であった(タンパク質の完全パネルを図8に示す)。他のタンパク質は、脂質代謝におけるそれらの役割、およびそれらと循環miR−122との強い相関性という理由で選択された。
図4:ブルーニコ試験におけるmiR−122と心血管代謝性疾患発生との関連性。多変量モデルは年齢、性、社会経済的状態、喫煙、身体活動および、アルコール摂取について調整された。星印は有意水準を示す:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。
図5:循環中の肝臓miR−122のためのビヒクルとしてのエクソソーム。
図6:ブルーニコ試験におけるmiR−122の経時相関性および血清−対−血漿相関性。比較のためにマイクロRNA値を対数変換した。
図7:マウス肝臓においてアンタゴmiR−122注射がmiRNA発現に及ぼした結果を定量PCRにより評価したもの;図1と関連。データは平均(標準偏差)である。アンタゴmiR−122グループにおけるmiR−122相対量は0.13%±0.06%(P=6×10−4)であった。P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。
図8:ブルーニコ試験における血清miR−122とタンパク質の循環レベルとの相関性。スピアマン相関係数を年齢および性についての調整した。太字のタンパク質は、多重試験についてのボンフェロニ補正後に有意であった。略号:A1AG1,アルファ−1−酸 糖タンパク質1;A1AG2,アルファ−1−酸 糖タンパク質2;A1AT,アルファ−1−アンチトリプシン;A1BG,アルファ−1B−糖タンパク質;A2AP,アルファ−2−アンチプラスミン;A2GL,ロイシンリッチ アルファ−2−糖タンパク質;A2MG,アルファ−2−マクログロブリン;AACT,アルファ−1−アンチキモトリプシン;AFAM,アファミン;ALBU,アルブミン;AMBP,アルファ−1−ミクログロブリン;ANGT,アンギオテンシノーゲン;ANT3,アンチトロンビン−III;apo(a),アポリポタンパク質(a);APOA1,アポリポタンパク質A−I;APOA2,アポリポタンパク質A−II;APOA4,アポリポタンパク質A−IV;APOB,アポリポタンパク質B−100;APOC1,アポリポタンパク質C−I;APOC2,アポリポタンパク質C−II;APOC3,アポリポタンパク質C−III;APOD,アポリポタンパク質D;APOE,アポリポタンパク質E;APOH,アポリポタンパク質H;APOL1,アポリポタンパク質L1;APOM,アポリポタンパク質M;C1QB,補体C1qサブコンポーネントサブユニットB;C1QC,補体C1qサブコンポーネントサブユニットC;C1R,補体C1rサブコンポーネント;C1S,補体C1sサブコンポーネント;C4BPA,C4b結合タンパク質アルファ鎖;CBG,コルチコステロイド結合グロブリン;CD5L,CD5抗原様;CERU,セルロプラスミン;CFAB,補体因子B;CFAH,補体因子H;CFAI,補体因子I;CLUS,クラステリン;CO2,補体C2;CO3,補体C3;CO5,補体C5;CO6,補体C6;CO7,補体C7;CO8A,補体C8 アルファ鎖;CO9,補体C9;CPN2,カルボキシペプチダーゼN サブユニット2;F13A,凝固因子XIII A鎖;FBLN1,フィブリン−1;FCN3,フィコリン−3;FETUA,フェチュインA;FIBA,フィブリノーゲン アルファ鎖;FINC,フィブロネクチン;GELS,ゲルソリン;GPX3,グルタチオンペルオキシダーゼ3;HBA,ヘモグロビンサブユニットアルファ;HBD,ヘモグロビンサブユニットデルタ;HEMO,ヘモペキシン;HEP2,ヘパリンコファクター2;HPT,ハプトグロビン;HPTR,ハプトグロビン関連タンパク質;HRG,ヒスチジンリッチ糖タンパク質;IC1,血漿プロテアーゼC1インヒビター;IGHA1,免疫グロブリン アルファ1;IGHA2,免疫グロブリン アルファ2;IGHG,免疫グロブリン ガンマ;IGHG1,免疫グロブリン ガンマ1;IGHG2,免疫グロブリン ガンマ2;IGHG3,免疫グロブリン ガンマ3;IGHG4,免疫グロブリン ガンマ4;IGHM,免疫グロブリン ミュー;IGJ,免疫グロブリンJ;ITIH1,インター−アルファ−トリプシンインヒビター重鎖1;ITIH2,インター−アルファ−トリプシンインヒビター重鎖2;ITIH4,インター−アルファ−トリプシンインヒビター重鎖4;KLKB1,カリクレイン;KNG1,キニノーゲン−1;MBL2,マンノース結合タンパク質C;PEDF,色素上皮由来因子;PGRP2,N−アセチルムラモイル−L−アラニンアミダーゼ;PLF4,血小板因子4;PLMN,プラスミノーゲン;RET4,レチノール結合タンパク質4;SAA4,血清アミロイドA−4タンパク質;SEPP1,セレノプロテイン;SHBG,性ホルモン結合グロブリン;TETN,テトラネクチン;THBG,チロキシン結合グロブリン;THRB,プロトロンビン;TRFE,セロトランスフェリン;TTHY,トランスチレチン;VTDB,ビタミンD結合タンパク質;VTNC,ビトロネクチン;ZA2G,亜鉛−アルファ−2−糖タンパク質。
図9:ブルーニコ試験における臨床関連サブグループにわたるmiR−122と心血管代謝性疾患との関連性。年齢、性、社会経済的状態、喫煙、身体活動および、アルコール摂取について調整した。
実施例により本発明を説明する。
実施例1:材料および方法
ブルーニコ試験
ブルーニコ試験は前向き集団ベース試験である(Stegemann, Circulation 2014, 129: 1821-31; Kiechl, Nat Med 2013, 19: 358-63)。1990年に、ブルーニコ住民のランダムサンプルとして年齢40〜79歳の1,000人の個体を動員し、それ以来5年毎に再検査した;すべての調査において参加率は90%を超えた。今回の試験は1995年の調査をベースラインとして用いた。1995〜2010年(メタボリックシンドロームについては1995〜2005年)に行なわれた臨床エンドポイントについては、その後の評価に参加しなかった者または追跡期間中に死亡したものを含めて、すべての個体に関して完全な医療記録を入手できる(臨床エンドポイントについて100%の追跡)。下記の5つの特徴のうち3つが存在すればメタボリックシンドロームと診断された(Alberti, Circulation 2009, 120: 1640-5):(i)ウェスト周囲:男性≧102cmまたは女性≧88cm;(ii)空腹時トリグリセリド値≧150mg/dl、または高トリグリセリドのための薬物治療中である(フィブレート類およびニコチン酸類);(iii)HDLコレステロール:男性<40および女性<50mg/dl、または低いHDLコレステロールのための薬物治療中である(フィブレート類およびニコチン酸類);(iv)血圧≧130/≧85mmHg、または高血圧症の病歴をもつ患者において抗高血圧症薬治療中である;ならびに(v)空腹時血糖値≧100mg/dl、または高血糖のための薬物治療中である。T2DMは、1997年米国糖尿病学会基準に従って、または参加者がT2DMの臨床診断を受けており、抗糖尿病処置を受けていれば、診断された。CVDは、心筋梗塞、卒中、または血管死として定義された(Willeit, Arterioscler Thromb Vasc Biol 2010, 30: 1649-56)。致命的および非致命的な心筋梗塞は、明確な疾患状態についての世界保健機構基準を満たした場合に確定されたと判断した。虚血性発作および一過性虚血性発作は、脳卒中の全国調査(National Survey of Stroke)に従って分類された。一般開業医およびBruneck Hospitalの参加者医療記録を精査することにより、疾患の自己報告書を常に確認した。ブルーニコ試験プロトコルはボルツァーノ(Bolzano)およびヴェローナ(Verona)の倫理委員会により承認され、すべての試験参加者が参加前に書面によるインフォームドコンセントを提出した。リスク因子を、先に記載された検証済みの標準法により確認した(Willeit, Arterioscler Thromb Vasc Biol 2010, 30: 1649-56; Kiechl, N Engl J Med 2002, 347: 185-92)。世帯で最高の収入をもつ者の職業状態および教育レベルに関する情報に基づいて、社会経済的状態を3カテゴリー尺度(低、中、高)で定義した。参加者に≧12年の教育または平均月収≧$2,000(課税前の基本給)を伴う職業があれば高い社会経済的状態と推定した。低い社会経済的状態を≦8年の教育または平均月収≦$1,000により定義した。身体活動は、検証済みのベックスコア(Baecke Score)を用いて査定された(Baecke, Am J Clin Nutr 1982, 36: 936-42)。ウェスト周囲およびヒップ周囲は、プラスチックテープメジャーを用いて、それぞれ臍および大転子(greater trochanter)の高さで査定された。血液試料は一夜絶食後に採取された。リピドミクスプロファイリングは質量分析により実施され、それにより135の別個の脂質種の定量が可能であった(Stegemann, Circulation 2014, 129: 1821-31; Shah, Circulation 2012, 126: 1110-20)。HbA1cは、高速液体クロマトグラフィー(DCCTに整合したアッセイ)を用いて定量された。ホメオスタシスモデル査定によるインスリン抵抗性(insulin resistance by homeostasis model assessment)(HOMA−IR)の程度は、式:空腹時血漿血糖値mmol/l × 空腹時血清インスリンmU/l ÷ 22.5(Bonora, Int J Obes Relat Metab Disord 2003, 27: 1283-9)を用いて推定され、より高いHOMA−IR値はより高いインスリン抵抗性の指標となる。miR−122は1995年の試験で採取された血清(n=810)ならびに2000年の試験で採取された血清および血漿(n=695)において測定された。
血漿タンパク質についての多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring)(MRM)
PlasmaDiveキット(Biognosys AG)を用いてブルーニコ試験の血漿タンパク質をプロファイリングした。血漿試料を製造業者の指示に従って処理した;唯一の例外:トリプシン消化およびC18クリーンアップの後ではなくその前にペプチド標準品をスパイクした。要約すると、10μlの血漿試料を変性させ、還元し、アルキル化した。20μgのタンパク質に100種類の真正な重ペプチド(heavy peptide)標準品をスパイクした。7種類のタンパク質は検出限界未満であった。溶液内消化(in-solution digestion)を一夜実施した。固相をC18スピンカラム(96ウェルフォーマット,Harvard装置)で抽出した後、溶出ペプチドをSpeedVac(Thermo)により乾燥させ、40μlの液体クロマトグラフィー(LC)溶液に再懸濁した。Agilent 6495 Triple Quadrupole MSに接続したAgilent 1290 LCシステムで試料を分析した。10μlの試料を25cmカラム(AdvanceBio Peptide Map 2.1×250mm)に直接注入し、勾配300μl/分で23分間にわたって分離した。Skylineソフトウェア version 3.1(MacCross Lab)を用いてデータを解析し、重/軽(heavy/light)(H/L)比を用いてタンパク質濃度を計算した。2週間にわたる連続操作に際して、日間の相対標準偏差(relative standard deviation)(RSD)は、新生標準ペプチドのピーク面積について調整した場合と調整しなかった場合でそれぞれ<20%および<5%であった。
ASCOT試験
アングロスカンジナビアンにおける心臓予後試験(Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial)(ASCOT)試験は、血圧降下処置と脂質低下処置の二重盲検ランダム化2×2要因試験(factorial study)である(Sever, Lancet 2003, 361: 1149-58; Poulter, Lancet 2005, 366: 907-13)。合計14,412人の患者(年齢40〜79歳)を、1998〜2000年に、コンピューター作成した最適割当てメカニズムを用いて試験実施に関与するすべての者に隠した状態でASCOTにランダム化した。脂質低下アームにランダム化された患者は低ないし中等度のコレステロールレベル(血清総コレステロール≦6.5mmol/l)をもち、アトルバスタチン(10mg/日)またはプラセボに割り当てられた。ASCOTの高血圧症関連−心血管疾患(hypertention-associated cardiovascular disease)(HACVD)サブスタダィーに参加した、T2DMを伴わない欧州人種のランダム化個体(n=155:73人は介入グループ、82人はプラセボグループ)において、血清miR−122レベルをベースラインおよびスタチン処置開始の1年(中央値13[範囲12〜16]か月)後に測定した(Stanton, J Hum Hypertens 2001, 15 Suppl 1: S13-8)。
マウスのアンタゴmiR処理
マウスにアンタゴmiR−122および対照アンタゴmiR類(65mg/kg)を、先の記載に従って3日連続して腹腔内注射した(Zampetaki, Circ Res 2014, 115: 857-66)。アンタゴmiR類はFidelity Systemsから下記の配列をもつものを購入した:アンタゴmiR−122 − CAACACCAUUGUCACACUChol−T;対照 − AGGCAAGCUGACCUGAAChol−T。マウスを7日目にと殺した。肝臓および血清試料を分析用に採集した。
ノーザンブロット分析
miRNA発現を先の記載に従ってノーザンブロット分析により査定した(Suarez, Circ Res 2007, 100: 1164-73)。要約すると、総RNA(5μg)を15%アクリルアミドTBE 8Mウレアゲル上で分離し、Hybond N ナイロンフィルター(Amersham Biosciences)上へブロットした。成熟miR−122に相補的なDNAオリゴヌクレオチド(5’−AAACACCATTGTCACACTCCA−3’)を[α−32P]ATPおよびTポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs)で末端標識して、高特異的活性プローブを作成した。ExpressHyb(Clontech)プロトコルに従ってハイブリダイゼーションを実施した。特異的放射性標識プローブとの一夜のメンブレンハイブリダイゼーションの後、メンブレンを42℃で30分間、4×SSC/0.5% SDS中において1回洗浄し、オートラジオグラフィーを施した。同等な装填が得られるように制御するために、ブロットを5S rRNAについて再検査した:5’−CAGGCCCGACCCTGCTTAGCTTCCGAGAGATCAGACGAGAT−3’。
RNA単離および定量リアルタイムPCR(qRT−PCR)
総RNAは、肝臓および肝細胞からTRIzol試薬(Invitrogen)を製造業者のプロトコルに従って用いて単離された。mRNA定量のために、iScript RT Supermix(Bio−Rad)を用いて製造業者のプロトコルに従ってcDNAを合成した。iQ SYBR green Supermix(BioRad)をiCycler Real−Time Detection System(Eppendorf)に用いて、qRT−PCR分析を三重に実施した。mRNAレベルをハウスキーピング遺伝子としてのGAPDHまたは18Sに対して正規化した(表2のプライマー配列を参照)。miRNA定量のために、miScript II RT Kit(Qiagen)を用いて総RNAを逆転写した。マウスmiR−122、miR−27b、miR148aおよびmiR−33aに対して特異的なプライマー(Qiagen)を用い、数値をSNORD68(Qiagen)に対して正規化した。マウス組織について、Bullet Blender Homogenizer(Next Advance)を用いて、HFDを給餌した野生型マウスからの総肝臓RNAをTRIzol中に単離した。前記に従って1μgの総RNAを逆転写し、遺伝子/miRNA発現を査定した。
マウスにおける総およびHDLコレステロールの測定
脂質分析のために、12時間の一夜絶食後に眼窩後静脈穿刺により血液試料を採集した。遠心により血漿を分離し、4℃で保存した。T−Cholesterol and HDL−C Assay Kits(Wako Diagnostics)を用いて各試料中の総コレステロールおよびHDLコレステロールを酵素測定した。
マウスのスタチン処理
6週齢の雌C57Bl/6マウスをHarlan Laboratories(San Pietro al Natisone,イタリア)から購入し、22℃において12時間の明/暗サイクルで特別な無病原体条件下に固形試料と水を任意に摂取できる状態で収容した。マウスに1日1回、20mg/kgのアトルバスタチン(Sigma Aldrich,ドイツ、タウフキルヘン)を5日間、腹腔内注射した。5日目にマウスをと殺した。心臓穿刺により血清を採集した。肝臓に氷冷リン酸緩衝化生理食塩水を潅流し、さらなる処理まで左下葉からの組織検体を瞬間凍結するか、またはRNAlater(Qiagen,ドイツ、ヒルデン)に入れておいた。
初代肝細胞のスタチン処理
インビトロ実験のために、初代マウス肝細胞を先の記載に従って単離した(Moschen, Hepatology 2011, 54: 675-86)。要約すると、マウスを麻酔処理し、腹部を切開し、肝臓、大静脈、および門脈を準備した。肝臓を腹部大静脈から肝静脈を経て(肝静脈の近くの大静脈をマイクロクランプで咬合した)門脈まで、ペリスタルティックポンプ(Bio−Rad,カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いて逆行潅流した。肝臓をまず、0.1mM EGTAを補足した肝臓潅流媒体1を用いて7ml/分の流速で10分間潅流した。その後、30μg/mlのLiberase(商標)(Roche,ドイツ、マンハイム)を含有する肝臓潅流媒体2を3.5ml/分の流速でさらに10分間用いた。肝臓を慎重に摘出し、L−15培地(Gibco,カリフォルニア州カールスバッド)を入れたペトリ皿に移した。被膜を切開し、得られた細胞懸濁液を100μmの細胞ストレーナー(cell strainer)に通した。30×gで3分間の低速遠心により肝細胞を沈降させた。等密度パーコール(Percoll)遠心の後、純度および生存率は>90%であった。1.3×10/cmの肝細胞を、コラーゲンコートした6ウェルプレート上の10% FCSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補足したウイリアムE培地(William’s E medium)に播種した。細胞を一夜静置した後、肝細胞を0.1、10および25μMのアトルバスタチンに24時間曝露した。上清を採集し、緩衝液RLT中で細胞を溶解した。両方ともさらなる仕上げ処理まで−80℃で保存した。
qRT−PCRによるmiRNA−122測定
miR−122を先の記載に従って測定した(Willeit, Circ Res 2013, 112: 595-600; Zampetaki, Circ Res 2010, 107: 810-7)。要約すると、miRNeasyキット(Qiagen,ドイツ、ヒルデン)を用いてmiRNAを抽出した。血漿、血清、または細胞培養上清について、25μlのRNA溶出液のうち固定体積3μlを逆転写(RT)反応のための装入材料として用いた。細胞または組織からのRNAについては、100ngの装入材料をRTのために用いた。Megaplex Primer Pools(Human Pools A version 2.1またはRodent Pool A,Life Technologies,ドイツ、ダルムシュタット)を用いてmiRNAを逆転写し、Megaplex PreAmp Primers(Primers A v2.1)を用いて生成物をさらに増幅した。RTおよびPreAmp両方の生成物を−20℃で保存した。Taqman miRNA assayを用いて個々のmiRNAの発現を査定した。希釈した増幅前生成物(0.5μl)またはRT生成物(0.45ngの装入量に相当する)を0.25μlのTaqman microRNA assay(20×)(Life Technologies)および2.5μlのTaqman Universal PCR Master Mix No AmpErase UNG(2×)と混和して、5μlの最終体積にした。qRT−PCRをApplied Biosystems 7900HTサーモサイクラーにより、95℃で10分、続いて95℃で15秒および60℃で1分を40サイクル、実施した。すべての試料を二重に試験した。実験室技術者に参加者の疾患状態が分からないようにした。ソフトウェアSDS2.2(Life Technologies)を用いて相対定量を実施した。U6および外来C.エレガンス スパイク−イン対照(Cel−miR−39)を正規化の目的で用いた。
qRT−PCRによる遺伝子発現分析
高性能cDNA RTキット(Life Technologies)を用いて総RNAを逆転写した。RT生成物(6.75ngの装入RNAに相当する)、0.25μlのTaqman gene expression assayおよび2.5μlのTaqman Universal PCR Master Mix No AmpErase UNG(2×)を5μlの総体積で混和した。サイクリング条件はmiRNA分析と同一であった。GAPDHを正規化対照として用いた。
統計
予め特定した解析計画に従って統計解析を実施した。miR−122値を解析のために対数変換した。スピアマン相関係数ならびに年齢および性について調整した線形回帰モデルを用いて、miR−122レベルと他の参加者特徴との横断的関連性を定量した。前向き解析には、CVDおよびT2DMについての更新した共変量によるコックス比例ハザード回帰、およびメタボリックシンドロームについてのプールしたロジスティック回帰(D’Agostino, Stat Med 1990, 9: 1501-15)を用いた。両方法とも、1995年および2000年の試験で得られたmiR−122の反復測定値を十分に利用した。ハザード比とオッズ比は同じ尺度の相対リスクを表わすと推定して、リスク比(RR)としてまとめて記載する。罹患疾患を伴う参加者をそれぞれの解析から除外した。モデルを年齢および性に加えて、社会経済的状態(低、中、高)、喫煙(有、無)、身体活動およびアルコール摂取について調整した(“多変量モデル”)。感度分析をさらに潜在的な仲介因子/交絡因子である肥満度指数およびウェスト−ヒップ比について調整した。シェーンフィールド残基を用いてCVDおよびT2DMについての比例ハザード推定を検定し、集合させた。年齢(<60歳、60〜70歳、>70歳)、性、スタチン摂取、および肥満症(肥満度指数:<25、25〜30、>30)により規定したグループ間の交互作用について、フォーマルテストにより効果修飾(effect modification)を調べた。主成分分析には、両側有意水準P<0.05を用いた。探索的解析には、偽陽性結果のリスクを制限するために、ボンフェローニ補正したP値を用いた(すなわち、脂質亜種の解析には0.00037;タンパク質には0.00054;交互作用検定には0.0042)。Stataソフトウェア,version 12.1を用いて解析を実施した。試験方法および所見をSTROBEガイドラインに従ってレポートした。
試験の承認
ブルーニコ試験プロトコルはボルツァーノの地域倫理委員会により承認された(‘Comitato etico del comprensorio sanitario di Bolzano’;承認番号28−2010)。ASCOT試験プロトコルは英国の中央および地域倫理委員会審査委員会ならびにアイルランドおよびノルディックカントリーの国立倫理委員会および国策機関により承認された。動物実験はオーストリア関係当局により承認され(A. R. Moschenに対して許可 No BMWF-66.011/0040-II/10b/2009)、英国関係当局により承認された(Q. Xuに対して許可 No. PPL70/7266)。書面によるインフォームドコンセントをブルーニコおよびASCOT参加者から試験参加前に受け取った。
実施例2:循環マイクロRNA−122はメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病の発生と関連する
実施例のまとめ
前向き集団ベースのブルーニコ試験において、循環miR−122とインスリン抵抗性、肥満症、メタボリックシンドローム、糖尿病、および有害な脂質プロフィールとの関連性を調べた。質量スペクトルを用いて、135の脂質亜種および93の血漿タンパク質を定量した。miR−122は、アファミン、亜鉛−アルファ−2−糖タンパク質、補体因子H、ならびに幾つかのアポリポタンパク質、特にapoB、apoC2、apoC3およびapoEのレベルと密接に関係していた。アングロスカンジナビアンにおける心臓予後試験(ASCOT,n=155)において、アトルバスタチン処置は循環miR−122レベルを低減した。類似のスタチン応答がマウスおよび培養肝細胞にみられた。ブルーニコ試験において、最大15年間の追跡(1995−2010)にわたって心血管代謝性疾患の発生を記録した(臨床事象についての追跡率:100%)。1−SD高いlog miR−122当たりの、年齢、性、社会経済的状態、喫煙、身体活動および、アルコール摂取について調整したリスク比は下記のとおりであった:1.60(1.30〜1.96;P<0.001):メタボリックシンドロームについて、1.37(1.03〜1.82;P=0.021):2型糖尿病について、および1.10(0.90〜1.33;P=0.330):心血管疾患について。
結論:循環miR−122レベルは、一般集団において肝代謝ならびにメタボリックシンドロームおよび糖尿病の発生のリスクと強く関連する。
詳細な結果
ブルーニコ試験におけるmiR−122の相関性
ブルーニコ試験の参加者826人中の810人においてmiR−122の定量に成功した;彼らのベースライン特徴を表1にまとめる。試験参加者の平均年齢は63歳(SD,11)であり、半数は女性であった。5年離して行なったmiR−122の反復測定の解析で、個人内相関性(within-person correlation)は0.24(95%信頼区間:0.17〜0.31;図6)であった。血漿中と血清中のmiR−122レベルの相関係数は0.86(0.84〜0.88;図6)であった。年齢および性につき調整した解析において、miR−122レベルは肝酵素のレベル、インスリン感受性、脂肪症(adiposity)、主要脂質(トリグリセリド、LDL−およびHDL−C)、ならびにT2DMおよびメタボリックシンドロームの有病率と関連していた(表1)。彼らの健康なカウンターパートと比較して、循環miR−122はT2DMを伴う参加者において214%高く(70〜481%)、メタボリックシンドロームを伴う参加者において160%高かった(76〜285%)。
特に、miR−122の量を平均および四分位範囲として決定した。メタボリックシンドロームを発現するリスクを伴う者は中央miR−122値1.05(四分位範囲:0.65〜2.93)をもつことが示された。同様に、2型糖尿病を発現するリスクを伴う者は中央miR−122値0.94(四分位範囲:0.55〜1.66)をもつ。これに対し、これら2疾患のいずれに対するリスクも伴わない者は中央miR−122値0.65(四分位範囲:0.34〜1.12)をもつ。
さらに、メタボリックシンドロームが発現した者において健康な基準集団と比較してmiR−122の量が160%増加する(すなわち、260%の数値になる)ことが見出された。同様に、2型糖尿病が発現した者において健康な基準集団と比較してmiR−122の量が214%増加する(すなわち、314%の数値になる)。意外にも、罹患した者はこれらの疾患が発現する5年前に既に増大したmiR−122レベルを示した。特に、メタボリックシンドロームが発現する5年前に、miR−122の量は健康な基準集団と比較して既に104%増加していた(すなわち、204%の数値になっていた)。同様に、2型糖尿病が発現する5年前に、miR−122レベルは健康な基準集団と比較して既に49%増加していた(すなわち、149%の数値になっていた)。
miR−122レベルはトリグリセリドと正の関連性をもち、肥満度指数およびウェスト−ヒップ比とはより弱い関連性をもち、HDL−コレステロールとは逆の関連性をもっていた。
miR−122とリピドームプロフィール
miR−122は、ブルーニコ試験で測定した135の脂質亜種のうち、肝臓デノボ−リポジェネシスに由来する可能性のある飽和およびモノ不飽和脂肪酸を含む脂質亜種との特異的関連性を示した(図1A)。一般集団におけるこの所見は、マウスへのアンタゴmiR−122注射を用いた実験により立証されたように、肝代謝の調節におけるmiR−122の役割により支持される。本発明者らはmiR−122発現のほぼ完全な阻害を達成した(図1Bおよび図8)。興味深いことに、miR−33、すなわち脂質代謝に関与する多数の遺伝子の発現を制御するmiRNAの肝臓発現が、アンタゴmiR−122で処理したマウスにおいて減弱した。miR−27bおよびmiR−148aを含めた脂質代謝と関連する他のmiRNAの発現は、両グループのマウスにおいて類似していた(図1C)。先のレポート(Esau, Cell Metab 2006, 3: 87-98; Kruetzfeldt, Nature 2005, 438: 685-9; Elmen, Nature 2008, 452: 896-9; Lanford, Science 2010, 327: 198-201)と一致して、アンタゴmiR−122による処理の結果、コレステロールレベルが低下した(図1D)。さらに、本発明者らは、脂質代謝、特にデノボ−リポジェネシスおよびリポタンパク質アセンブリーに関与することが示唆されているある範囲の遺伝子(ACC1、CTP1、FAS、SCD1、MTTP、SREBP1;図1E)のダウンレギュレーションを観察した。
miR−122とプロテオームプロフィール
ブルーニコ試験におけるリピドミクス測定を4桁を超える多数の血漿タンパク質のMSによる査定によって補足した。このタンパク質パネルは、脂質代謝に対するmiR−122の作用がどのようにして心血管代謝リスクを仲介できるかの洞察を得るために、広範なアポリポタンパク質、補体および凝固因子をカバーしている。miR−122は、アファミン(年齢および性につき調整した相関係数:+0.42 P=4×10−30)および亜鉛−アルファ−2−糖タンパク質(−0.28;P=10−13)と最も強く関連していた(図3)。アポリポタンパク質に注目した解析により、APOB、APOC2、APOC3およびAPOEとの有意の正の相関性、ならびにAPOA4およびAPODとの有意の逆相関性が明らかになった(図3)。すべてのタンパク質についての相関性を図8に提示する。
スタチン類がmiR−122レベルに及ぼす影響
肝臓脂質代謝と循環miR−122レベルの相互作用をさらに査定するために、ASCOT試験の高血圧症関連−心血管疾患(HACVD)サブスタディーからの試料を用いた。アトルバスタチンによる処理は、総コレステロール、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の濃度、および血清miR−122レベルの低下をもたらした(図2A)(すべてP<0.001)が、同じ試料において定量した他のmiRNAのレベルは低下させなかった(データを示していない)。類似の影響が、アトルバスタチンで処理したマウスの血清、ならびに10および25μMのアトルバスタチンと共にインキュベートした初代肝細胞の培地において観察された(図2Bおよび2C)。
ブルーニコ試験におけるmiR−122および心血管代謝性疾患の発生
ブルーニコ試験において、本発明者らは136のメタボリックシンドローム発生事象、
57のT2DM事象、および108のCVD事象を記録した。上3分の1と下3分の1のmiR−122レベルを比較した年齢および性につき調整したリスク比は下記のとおりであった:2.85(1.78〜4.56;P<0.001):メタボリックシンドロームについて,2.92(1.34〜6.35;P=0.007):T2DMについて,および1.25(0.78〜2.00;P=0.347):CVDについて(図4)。1−SD高いlog miR−122当たりのリスク比は下記のとおりであった:1.60(1.30〜1.96;P<0.001):メタボリックシンドロームについて,1.37(1.03〜1.82;P=0.021):T2DMについて,および1.10(0.90〜1.33;P=0.330):CVDについて(図4)。社会経済的状態、喫煙、身体活動およびアルコール摂取についてさらに調整した際にリスク比は実質的に同一のままであったが、肥満度指数およびウェスト−ヒップ比ならびにln HOMA−IRについてさらに調整した際には若干減弱した(図4)。本発明者らは女性と男性、スタチン摂取、および脂肪症の臨床カテゴリーにつき概して類似の結果を観察したが、おそらく<60歳の参加者においてはより高齢の彼らのカウンターパートと比較してCVD発生とのより強い関連性がみられるであろう(P=0.006)(図9)。
考察
この試験において、本発明者らはmiR−122関連の代謝シグネチャーを同定するための集団ベースの試験に多次元‘オミックス法(リピドミクスおよびプロテオミクス)を用いる。メカニズム状況を提示するための実験追跡と組み合わせた、>3000のヒト血液試料におけるmiRNA測定に基づく多数の重要な全く新しい結果をレポートする。第1に、循環miR−122レベルは心血管代謝性疾患に罹患している者において増大しており、肝臓デノボ−リポジェネシスにより産生される可能性がある脂質種と強く相関する。前向き設定で、血清miR−122レベルの増大はメタボリックシンドロームおよびT2DMの発現に先立って起きるが、CVDについてはそうではない。第2に、血清miR−122レベルは一般集団において主要脂質(トリグリセリド、LDL−およびHDL−C)と正の相関性をもち、スタチン療法(アトルバスタチン10mg)によるコレステロール低減に伴って実質的に低下する。本発明者らはこの所見を、アトルバスタチン攻撃したヒト肝細胞の上清およびアトルバスタチン処理した野生型マウスの血清においてmiR−122の低減を立証するインビトロおよびインビボ実験によってさらに確証し、肝臓における脂質代謝に関与する酵素に対するmiR−122の作用を確認した。全体として、本発明者らは循環miR−122が肝臓における脂質およびグルコース代謝のマーカーであることについての強い証拠を提示する。
循環miR−122のシステム全体的関係
主に肝臓に発現するmiR−122(Lagos-Quintana, Curr Biol 2002, 12: 735-9)は、コレステロールおよび脂肪酸の代謝に関連する種々の遺伝子の発現を調節することが示唆されている(Rottiers, Nat Rev Mol Cell Biol 2012, 13: 239-50)。マウスにおいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびアンタゴmiRを用いたmiR−122の阻害は、血漿コレステロールレベルの顕著な低下をもたらし、肝臓脂質合成を停止させ、肝臓脂肪酸酸化を増大させた(Esau, Cell Metab 2006, 3: 87-98; Kruetzfeldt, Nature 2005, 438: 685-9)。非ヒト霊長類における2つの試験によって類似のコレステロール低減がレポートされている(Elmen, Nature 2008, 452: 896-9; Lanford, Science 2010, 327: 198-201)。これらのレポートと一致して、本発明者らの試験は、アンタゴmiR−122を用いたmiR−122の選択的阻害(miR−33との若干の相互干渉を伴う)が脂質代謝における関与を示唆されている酵素のダウンレギュレーションをもたらすことを示した。さらに、ブルーニコ試験において、循環中の高い循環miR−122レベルは一般に有害な脂質プロフィールと関連していた;これはCVD(Stegemann, Circulation 2014, 129: 1821-31)およびT2DM発症(Rhee, J Clin Invest 2011, 121: 1402-11)に関係していることを本発明者らおよび他の者が以前に示した(コレステリルエステルおよびトリアシルグリセロールとの強い正の相関性、リゾホスファチジルコリンとの強い逆相関性)。miR−122と短い炭素鎖長をもつ飽和およびモノ不飽和脂肪酸を含む脂質との正の相関性、ならびに超低密度リポタンパク質(VLDL)(apoB100、apoC1、apoC2、apoE)上にみられるアポリポタンパク質との正の相関性は、miR−122と肝臓デノボ−リポジェネシスまたはVLDL分泌との関連性を支持する。これは、miR−122ノックアウトマウスが発現するミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTTP)、すなわちリポタンパク質のバイオジェネシスを調節する必須酵素がより少ないという概念によってさらに確証される(Wen, J Clin Invest 2012, 122: 2773-6)。これに対し、循環miR−122は血漿ApoD(主にHDLに存在する)およびapoA4(HDLおよびカイロミクロンの主成分)との逆相関性を示した。さらに、本発明者らによる血漿タンパク質の網羅的査定は、以前にメタボリックシンドロームおよびそれのすべての構成要素の罹患および発生と関連づけられていたアファミンとの正の相関性(Kronenberg, Circ Cardiovasc Genet 2014, 7: 822-9)、マロンジアルデヒドエピトープを結合して酸化的ストレスから保護するタンパク質である補体因子Hとの正の相関性(Weismann, Nature 2011, 478: 76-81)、ならびに脂肪細胞において脂質分解およびより高いインスリン感受性をもたらすアディポカインである亜鉛−アルファ−2−糖タンパク質との逆相関性(Garrido-Sanchez, PLoS One 2012, 7: e33264; Yang, Diabetes Care 2013, 36: 1074-82)を回復した。
新規バイオマーカーとしての循環miR−122
miR−122および心血管代謝状態について得られる疫学的証拠は少ない。Gaoら(Gao, Lipids Health Dis 2012, 11: 55)は、高脂血症を伴う患者においてmiR−122がより高く、総コレステロール、トリグリセリド、LDL−C、および冠動脈疾患の存在と正の相関性をもつことをレポートした。外科処置誘発性の体重減少はmiR−122の顕著な低減を生じた(Ortega, Clin Chem 2013, 59: 781-92)。今回の試験で、本発明者らが −初めて− miR−122のベースラインレベルはメタボリックシンドロームの発現と関連し、より弱くではあるがT2DMと関連することを示す。これに対し、miR−122とCVD発生には関連性がなかった;ただし、リスク比推定値の信頼区間が広く、心血管系に対する有害な代謝状態の長期予後を完全に捕らえるためにはより長い追跡時間が必要であった可能性はある。さらに、60歳より若い個体においてmiR−122とCVDの間の正の関連性を方向づけるシグナルがサブグループ解析によって解明された。明らかに、心血管代謝リスクの強い決定因子である脂肪症の程度によって関連性が変動することはなかった(Wuertz, PLoS Med 2014, 11: e1001765; Fall, PLoS Med 2013, 10: e1001474)。
スタチン処置は肝臓からのリポタンパク質とmiR−122両方の放出を低減した。miR−122はVLDLおよびHDLを含めたリポタンパク質には存在しない(表3)か、またはきわめて低いレベルで、すなわちLDLに存在するにすぎない(Vickers, Nat Cell Biol 2011, 13: 423-33)ので、スタチン類が循環miR−122レベルに及ぼす顕著な作用を血漿リポタンパク質に対する作用によって説明することはできない。そうではなく、それはmiR−122が多量に局在していた肝エクソソームの分泌低減(図5)によって起きる可能性が最も大きい(Huang, BMC Genomics 2013, 14: 319; Gallo, PLoS One 2012, 7: e30679)。循環miR−122はエクソソーム枯渇した血清中には検出できない(Gallo, PLoS One 2012, 7: e30679)。スタチン類は、コレステロール合成を阻害することによりタンパク質のプレニル化(prenylation)をも調節する(Wang, Dev Cell 2008, 15: 261-71)。この翻訳後修飾はタンパク質、特に、エクソソーム分泌の種々の段階を制御するRab27タンパク質の、膜局在化を促進する(Jae, FEBS Lett 2015, 589: 3182-8; Ostrowski, Nat Cell Biol 2010, 12: 19-30)。スタチン類は、Rabタンパク質プレニル化および肝エクソソーム分泌を阻害することにより循環miR−122レベルを低減する可能性がある。後者はスタチン薬物療法の有益な多面的効果の新規部分を構成している可能性がある。
臨床実施におけるmiR−122のトランスレーショナルな潜在能力
miR−122は、代謝作用のほかに、非アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、およびウイルス性肝炎、ならびに肝疾患を含めた、種々の肝疾患と関連づけられている(Laterza, Biomark Med 2013, 7: 205-10; Zhang, Clin Chem 2010, 56: 1830-38)。miR−122は、C型肝炎ウイルスの複製、翻訳およびパッケージングを容易にし、それによりウイルスの慢性感染を促進する(Lanford, Science 2010, 327: 198-201; Rottiers, Nat Rev Mol Cell Biol 2012, 13: 239-50)。この特定の状態について、miR−122をターゲティングするアンチセンスベースの薬物が開発中である(Baek, Arch Pharm Res 2014, 37: 299-305; Lindow, J Cell Biol 2012, 199: 407-12)。慢性C型肝炎遺伝子型1感染症を伴う36人の患者における最近の第2a相試験において、アンチセンスオリゴヌクレオチド‘ミラビルセン(miravirsen)’による処置がC型肝炎ウイルスRNAレベルを用量依存性様式で低下させた(Janssen, N Engl J Med 2013, 368: 1685-94)。他の2つの進行中の第2相臨床試験には、ペグインターフェロンαおよびリバビリン(ribavirin)による処置に応答しなかった患者が含まれていた(NCT01872936,NCT02031133)。miR−122の療法用阻害薬を入手できれば、心血管代謝仲介による形質および疾患にmiR−122介入が及ぼす効果を患者において試験する機会が得られる(進行中の試験における二次エンドポイントとして、または一次エンドポイントとして)。
長所と限界
本発明者らの試験には幾つかの長所と限界があった。前向きブルーニココホートは、100%の追跡ならびに臨床エンドポイントおよび潜在交絡因子の高度の確認で、きわめて良好に解明されている。独立した関連性の同定を補助するために、本発明者らは、喫煙、社会的階級、身体活動および脂肪症尺度を含めた大パネルの潜在交絡因子について調整した。本発明者らの統計モデルにはmiR−122の反復測定を採用した;それは、miR−122の個体内変動性が高かったことを考慮すると(5年にわたる相関係数:0.24)特に重要である。糖尿病患者において低減する血小板関連miRNA(Willeit, Circ Res 2013, 112: 595-600; Elgheznawy, Circ Res 2015; 117: 157-65)と対照的に、miR−122レベルはメタボリックシンドロームおよびT2DMとの正の関連性を示し、血清および血漿中において相関性が高かった。本発明者の試験の潜在的限界は、ブルーニコ試験集団がすべて白人だったことである。ASCOT試験は、中等度に高いCVDリスクをもつ高血圧症の個体を伴っており、ある程度の選抜集団であった。最後に、miR−122は血清および血漿中において測定された。肝臓における発現データはより直接的な尺度であろうが、明らかにこれは集団試験には適さない。
結論
高い循環miR−122レベルは、肝臓デノボ−リポジェネシスおよび有害な代謝プロフィールに由来する可能性がある飽和およびモノ不飽和脂肪酸を含有する複雑な脂質と相関しており、アトルバスタチンによるHMG−CoAレダクターゼの阻害はmiR−122放出を低減し、一般集団において循環miR−122レベルは将来のメタボリックシンドロームおよびT2DMの発現と関連する。
本発明は下記のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列について述べる:
SEQ ID NO:1:成熟ヒトmiR−122のヌクレオチド配列
5’ uggagugugacaaugguguuug 3’
SEQ ID NO:2:シード配列ヒトmiR−122のヌクレオチド配列
5’ ggagugu 3’

Claims (15)

  1. メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を疾患の発症前に同定するための方法であって、
    (a)被験対象から得た試料においてmiR−122の量を分析する;そして
    (b)メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定する;その際、健康な基準集団のmiR−122の量と比較して増加したmiR−122の量はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる;
    ことを含む方法。
  2. 健康な基準集団のmiR−122の量と比較して増加したmiR−122の量がメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる、メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを疾患の発症前に同定する際に使用するための予測バイオマーカーとしてのmiR−122。
  3. メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを、それぞれメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の臨床発現の少なくとも1年前に同定する、請求項1に記載の方法または請求項2の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  4. 方法またはバイオマーカーがメタボリックシンドロームを発現するリスクを有する対象を同定するためのものであり、リスク比が1.8〜4.6である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法または請求項2もしくは3の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  5. 方法またはバイオマーカーが2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定するためのものであり、リスク比が1.3〜6.4である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法または請求項2もしくは3の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  6. miR−122が下記のポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチドである:
    (i)SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド;
    (ii)SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一でありかつ機能性であるポリヌクレオチド;その機能はmiR−122のターゲット遺伝子の翻訳を抑制する活性を含む;および
    (iii)(ii)によるポリヌクレオチドであって、SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列を含むもの;
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法または請求項2〜5のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  7. 方法またはバイオマーカーがメタボリックシンドロームを発現するリスクを有する対象を同定するためのものであり、健康な基準集団がメタボリックシンドロームを伴っておらず、下記の基準(i)および(ii)のうちの少なくとも1つを満たす:
    (i)下記のものから選択されるいずれかの特徴をもたない:
    (a)ウェスト周囲:男性≧102cmまたは女性≧88cm;
    (b)空腹時トリグリセリド値≧150mg/dl、または高トリグリセリドのための薬物治療中である;
    (c)HDLコレステロール:男性<40および女性<50mg/dl、または低いHDLコレステロールのための薬物治療中である;
    (d)血圧≧130/≧85mmHg、または抗高血圧症薬治療中であり、高血圧症の病歴をもつ;ならびに
    (e)空腹時血糖値≧100mg/dl、または高血糖のための薬物治療中である;あるいは
    (ii)集団健常値の33パーセンタイルより低いmiR−122レベルをもたない;
    請求項1〜4および6のいずれか1項に記載の方法または請求項2〜4および6のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  8. 方法またはバイオマーカーが2型糖尿病を発現するリスクを有する対象を同定するためのものであり、健康な基準集団が2型糖尿病を伴っておらず、集団健常値の33パーセンタイルより低いmiR−122レベルをもたない、請求項1〜3、5および6のいずれか1項に記載の方法または請求項2、3、5および6のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  9. 健康な基準集団のmiR−122の量の少なくとも110%である被験対象のmiR−122がメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクの指標となる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法または請求項2〜8のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  10. さらに、被験対象が過体重、肥満、中心性肥満、高血圧、低いHDLコレステロールレベルまたは高いトリグリセリドレベルから選択されるリスク因子のうち少なくとも1つを有するかどうかを同定することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法または請求項1〜10のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  11. メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有すると同定された被験対象にメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法を施すべきである;ならびに/あるいは
    メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病を発現するリスクを有すると同定された被験対象にライフスタイル介入を推奨する;
    請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法または請求項2〜10のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  12. 試料が血液、血漿、血清、尿または肝臓組織試料である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. miR−122の量を定量PCRにより分析する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法または請求項2〜12のいずれか1項の記載に従って使用するためのバイオマーカー。
  14. メタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための方法であって、
    (a)被験対象から得た第1試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第1試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する前または途中に得られたものである;
    (b)その被験対象の第2試料においてmiR−122の量を分析する;その際、第2試料はメタボリックシンドロームおよび/または2型糖尿病のための薬物療法で被験対象を処置する途中または後に得られたものである;そして
    (c)療法の成功を予測する;その際、第1試料と比較して第2試料におけるmiR−122の量の減少は療法の成功の指標となる;
    ことを含む方法。
  15. 2型糖尿病の処置に際して療法の成功をモニタリングするための、請求項14に記載のモニタリング方法。
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