JP2019215008A - 軸受装置、及び軸受部の診断方法 - Google Patents

軸受装置、及び軸受部の診断方法 Download PDF

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ボイコ ストイメノフ
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Abstract

【課題】軸受部における潤滑異常を従来よりも正確に検出する。【解決手段】内輪、外輪、及び複数の転動体を有する軸受部を対象として、潤滑状態を診断する方法である。外輪側の部材に設けられている取り付け部に取り付けられた振動センサ50が、外輪の振動を計測する(計測ステップ)。振動センサ50から得た波形データD2を処理する(処理ステップ)。処理ステップでは、波形データD2からn次共振ピーク(ただし、nは2以上の整数)を含む所定周波数帯の部分データD4を取得し、部分データD4から求めた尖度Kと閾値Qとを比較し、当該比較の結果に基づいて軸受部の潤滑状態を判定する。【選択図】 図5

Description

本発明は、軸受部と給油ユニットとを備えた軸受装置及び軸受部の診断方法に関する。
近年、各種の工作機械では、加工効率及び生産性の向上のために主軸の高速化が要求されている。主軸が高速で回転すると、これを支持する軸受部において特に潤滑性が問題となる。そこで、軸受部の軸方向隣りに設けられている間座に、給油ユニットを組み込んだ軸受装置が提案されている(特許文献1参照)。この給油ユニットは、内輪と外輪との間の環状空間に潤滑油を吐出するポンプ等を有する。
特許文献1に記載の軸受装置が備えている給油ユニットは、ポンプの他に、温度センサ及び処理部(マイコン)を有する。温度センサの信号が処理部に入力され、処理部はポンプによる軸受部への給油を制御する。
特開2014−219078号公報
軸受部において例えば潤滑油が消耗し貧潤滑状態になると温度が上昇する。そこで、温度上昇を温度センサが検出する。温度上昇が検知されると、ポンプから潤滑油が供給され、軸受部の温度上昇を抑えることが可能となる。
しかし、特許文献1に記載の軸受装置の場合、温度センサは、外輪間座に取り付けられた給油ユニットの処理部に含まれており、間座における温度を測定する。このため、軸受部における温度変化を温度センサが的確かつ迅速に捉えきれないことがある。よって、軸受部において潤滑油が不足して温度が上昇しているにも関わらず、この検知が遅れることがある。すると、軸受部において焼き付き等の不具合が発生する可能性がある。
軸受部において潤滑油が不足すると(貧潤滑状態になると)振動が大きくなることから、温度センサの代わりに振動センサを設ける構成が考えられる。この場合、軸受部が振動すると、この振動を振動センサが検知する。しかし、軸受部が設けられている機器(工作機械)が振動し、この機器の振動が軸受部に伝わる場合がある。この機器の振動は、軸受部が貧潤滑状態となることで発生する振動とは無関係である。これにもかかわらず、機器の振動が振動センサによって検出されてしまうと、潤滑油不足(潤滑異常)であると誤って判断される。この場合、ポンプが軸受部に対して潤滑油を追加的に供給し、潤滑油が無駄に消費されてしまうという問題点がある。
そこで、本発明は、軸受部における潤滑異常を従来よりも正確に検出することが可能となる軸受装置、及び軸受装置の診断方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、次の(1)(2)に着目し、本発明を完成させた。
(1)軸受装置が設けられる機器から発生する振動は、軸受部における潤滑異常(油膜の途切れ)が原因となって発生する振動よりも、低周波である。
(2)軸受部において、構成部材間の油膜が途切れ、構成部材同士が直接接触することで発生する振動は、所定周波数帯(例えば、超音波帯)の周波数を有する。
すなわち、本発明の軸受装置は、内輪、外輪、及び前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体を有し、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が回転輪であって他方が固定輪となる軸受部と、前記軸受部の軸方向隣りに設けられている給油ユニットと、を備え、前記給油ユニットは、前記固定輪の振動を検出するための振動センサと、前記軸受部に潤滑油を供給するためのポンプと、前記振動センサから得た波形データを処理する処理部と、を有し、前記振動センサは、前記固定輪側の部材に設けられている取り付け部に取り付けられていて、前記処理部は、前記波形データからn次共振ピーク(ただし、nは2以上の整数)を含む所定周波数帯の部分データを取得し、当該部分データから求めた尖度と閾値とを比較し、当該比較の結果に基づいて前記ポンプを動作させるための信号を生成する。
この軸受装置によれば、振動センサは、固定輪側の部材の取り付け部に取り付けられていることから、固定輪の振動を感度よく計測することができる。そして、軸受部の潤滑異常を検出するために、処理部は、前記波形データからn次共振ピーク(ただし、nは2以上の整数)を含む所定周波数帯の部分データを取得する。このため、軸受部が設けられている機器から振動が発生し、この振動によって固定輪が振動していても、その影響を、軸受部の潤滑異常の検出に与えないで済む。この結果、軸受部における潤滑異常を従来よりも正確に検出することが可能となる。
また、前記(1)(2)に着目して得た、本発明の軸受部の診断方法は、内輪、外輪、及び前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体を有し、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が回転輪であって他方が固定輪となる軸受部を対象として、潤滑状態を診断する方法であって、前記固定輪側の部材に設けられている取り付け部に取り付けられた振動センサが、当該固定輪の振動を計測する計測ステップと、前記振動センサから得た波形データを処理する処理ステップと、を含み、前記処理ステップでは、前記波形データからn次共振ピーク(ただし、nは2以上の整数)を含む所定周波数帯の部分データを取得し、当該部分データから求めた尖度と閾値とを比較し、当該比較の結果に基づいて前記軸受部の潤滑状態を判定する。
この軸受部の診断方法では、振動センサは、固定輪側の部材の取り付け部に取り付けられていることから、固定輪の振動を感度よく計測することができる。そして、軸受部の潤滑異常を検出するために、処理ステップでは、前記波形データからn次共振ピーク(ただし、nは2以上の整数)を含む所定周波数帯の部分データを取得する。このため、軸受部が設けられている機器から振動が発生し、この振動によって固定輪が振動していても、その影響を、軸受部の潤滑異常の検出に与えないで済む。この結果、軸受部における潤滑異常を従来よりも正確に検出することが可能となる。
また、前記部分データには、一次共振ピークのデータは含まれず、所定周波数帯の二次共振ピークのデータが含まれるのが好ましい。これにより、軸受部の潤滑異常をより一層正確に検出することが可能となる。
本発明によれば、軸受部における潤滑異常を従来よりも正確に検出することが可能となる。
軸受装置の一例を示す断面図である。 給油ユニットを軸方向から見た図である。 軸受装置の断面図であり、図1とは異なる断面を示す。 処理部が有する機能部の説明図である。 センサから出力される信号及び処理部が取得及び処理する各データ、並びに、処理部が行なう処理のフローを説明する図である。
〔軸受装置の全体構成について〕
図1は、軸受装置の一例を示す断面図である。図1に示す軸受装置10は、工作機械が有する主軸装置の主軸(軸7)を回転可能に支持するものであり、主軸装置の軸受ハウジング8内に収容される。図1では、軸7及び軸受ハウジング8を2点鎖線で示している。なお、軸受装置10は工作機械以外においても適用可能である。以下の説明において、軸受装置10の中心軸Cに平行な方向を軸方向と呼び、中心軸Cに直交する方向を径方向と呼ぶ。
軸受装置10は、軸受部20と給油ユニット40とを備える。軸受部20は、内輪21、外輪22、及び複数の玉(転動体)23を有しており、軸受部20は玉軸受(転がり軸受)である。軸受部20は、環状の保持器24を更に有しており、複数の玉23は保持器24によって保持される。軸受装置10は、更に、円筒状である内輪間座17及び外輪間座18を備える。
給油ユニット40は、全体として円環状であり、軸受部20の軸方向隣りに設けられている。本実施形態の給油ユニット40は、外輪間座18の径方向内側に設けられ、内輪21と外輪22との間に形成されている環状空間11の軸方向隣りに位置している。給油ユニット40は、環状空間11に潤滑油を供給する機能を有する。給油ユニット40の構成及び機能については後に説明する。なお、図示しないが、給油ユニット40(後述の本体部41)と外輪間座18とを一体とし、給油ユニット40が外輪間座としての機能を有するようにしてもよい。
本実施形態では、外輪22、外輪間座18、及び給油ユニット40が軸受ハウジング8に取り付けられていて、内輪21及び内輪間座17が軸7と共に回転する。したがって、外輪22が、回転しない固定輪となり、内輪21が、軸7と共に回転する回転輪となる。外輪間座18が、固定輪側の部材となる。内輪21、外輪22、玉23、内輪間座17、及び外輪間座18は金属製(鋼製)である。保持器24は金属製であってもよいが、本実施形態では樹脂製である。
内輪21は、軸7に外嵌する円筒状の部材であり、その外周に軌道(以下、内輪軌道25という。)が形成されている。本実施形態では、内輪21と内輪間座17とは別体であるが、図示しないが、これらは一体(一体不可分)であってもよい。外輪22は、軸受ハウジング8の内周面に取り付けられる円筒状の部材であり、その内周に軌道(以下、外輪軌道26という。)が形成されている。本実施形態では、外輪22と外輪間座18とは別体であるが、図示しないが、これらは一体(一体不可分)であってもよい。玉23は、内輪21と外輪22との間に介在していて、内輪21が回転すると内輪軌道25及び外輪軌道26を転動する。保持器24は、環状であり、周方向に沿ってポケット27が複数形成されている。玉23及び保持器24は前記環状空間11に設けられている。
保持器24は、全体として環状であり、玉23の軸方向一方側の環状部28aと、玉23の軸方向他方側の環状部28bと、これら環状部28a,28bを連結している複数の柱部29とを有している。環状部28a,28bの間であって周方向で隣り合う柱部29,29の間がポケット27となり、各ポケット27に一つの玉23が収容されている。軸方向一方側(給油ユニット40側)の環状部28aが外輪22の肩部30と摺接可能である。これにより、保持器24は外輪22によって径方向についての位置決めがされる。つまり、この軸受部20は、保持器24が外輪案内(軌道輪案内)される軸受となる。
図2は、給油ユニット40を軸方向から見た図である。給油ユニット40は、本体部41、タンク42、ポンプ43、電源部45、センサ50、及び処理部44を有する。
本体部41は、例えば樹脂製の環状部材であり、ポンプ43等を収容(保持)するフレームとしての機能も有する。本体部41には中空空間が形成されており、この中空空間にタンク42、ポンプ43、センサ50、処理部44、及び電源部45が設けられる。これにより、ポンプ43等を含む給油ユニット40は一体として構成される。タンク42は、潤滑油を溜めるものであり、潤滑油をポンプ43へ供給させるためにポンプ43と流路を通じて繋がっている。電源部45は、ポンプ43、センサ50、及び処理部44へ動作用の電力を供給する。なお、電源部45は、給油ユニット40の外部に位置していてもよい。
ポンプ43は、ポンプ内部に圧電素子55を有する。圧電素子55が動作することでポンプ43内の油室(内部空間)54の容積を変化させ、油室54の潤滑油を吐出口51から環状空間11(図1参照)に噴出させる。ポンプ43の一回の動作(吐出動作)で、数ピコリットル〜数ナノリットルの潤滑油が噴出される。ポンプ43は時間間隔をあけて所定量の潤滑油を吐出するように処理部44によって制御される。以上より、ポンプ43は軸受部20に潤滑油を絞って供給することができ、潤滑油の無駄な消費が抑えられる。
処理部44は、プログラミングされたマイコン及び演算回路(アナログ回路)等を含む基板により構成されている。処理部44は、センサ50から出力される信号を取得し、所定の処理を行なう。更に、処理部44は、動作信号を生成し、この動作信号をポンプ43に与える機能を有する。処理部44は、前記動作信号として、ポンプ43の圧電素子55(図2参照)に対して所定の駆動電力を与える。ポンプ43は動作信号(駆動電圧)を受けると、それに応じて一定量(微量)の潤滑油を吐出する。処理部44は、ポンプ43に対して動作信号を周期的に出力することで、ポンプ43は周期的に潤滑油を吐出する。
ポンプ43は、前記のとおり圧電素子55の動作によって油室54の容積を変化させ、潤滑油を環状空間11に噴出させる。このポンプ43の構成によれば、圧電素子55の動作量(変形量)を変化させることでポンプ43の一回あたりの吐出動作による潤滑油の吐出量を変化させることができる。例えば、圧電素子55の動作量を大きくすることで一回の吐出量を増加させることが可能となる。なお、圧電素子55の動作量(変形量)は、圧電素子55に印加する電圧の大きさによって変化する。そして、この電圧の大きさが処理部44によって調整される。つまり、処理部44が、圧電素子55に対して所定の値の電圧を印加させる動作信号を生成し出力することで、その電圧に応じた動作量について圧電素子55は動作し潤滑油の吐出が行われる。また、前記動作信号を出力するタイミングについても処理部44によって調整されており、ポンプ43は時間間隔を有して潤滑油を吐出する。つまり、処理部44は、ポンプ43からの潤滑油の吐出頻度(吐出の周期)を変化させることができる。
センサ50は、外輪22の振動を検出する振動センサであり、本実施形態では、超音波帯域の振動(つまり、20kHz以上の帯域の振動)を検出可能な超音波振動センサである。なお、センサ(振動センサ)50は、超音波帯以外の範囲の振動を検出可能であってもよい。センサ50は振動の大きさに応じたレベルの信号を出力する。図3は、軸受装置10の断面図であり、図1とは異なる断面を示す。前記のとおり外輪22は鋼製であり、この外輪22に密着して鋼製である外輪間座18が隣接して設けられている。外輪間座18に取り付け部19が設けられていて、この取り付け部19にセンサ50が取り付けられている。取り付け部19は、外輪間座18と別体である金属製の部材により構成されている。取り付け部19は、止めネジ等の固定部材によって外輪間座18に固定されている。このため、外輪22における振動は、外輪間座18及び取り付け部19を介してセンサ50に伝達し、センサ50は外輪22の振動を検出することができる。なお、外輪間座18及び取り付け部19は、振動の内部減衰が低い材料により構成されているのが好ましく、金属製以外として、セラミック製であってもよい。
図4は、処理部44が有する機能部の説明図である。処理部44は、前記マイコンによる機能部として、フーリエ変換部31、データ抽出部32、尖度算出部33、判定部34、及び信号生成部35を有する。図5は、センサ50から出力される信号(センサ信号D1)及び処理部44が取得及び処理する各データ、並びに、処理部44が行なう処理のフローを説明する図である。
フーリエ変換部31は、センサ信号D1に基づく波形データD2を高速フーリエ変換して周波数データD3を生成する機能を有する。データ抽出部32は、周波数データD3から所定の周波数帯のデータを抽出する機能を有する。抽出された所定の周波数帯のデータを部分データD4と称する。尖度算出部33は、部分データD4の尖度Kを算出する機能を有する。判定部34は、算出された尖度Kと予め設定されている閾値Qとの比較を行う機能を有する。信号生成部35は、前記比較の結果に基づいて、前記動作信号を生成しポンプ43に出力する機能を有する。これら機能部が有する機能の具体例については、後に説明する。なお、処理部44が備える機能部の一部は、マイコンによる機能ではなく、演算回路(アナログ回路)によって構成されていてもよい。
〔軸受部20の診断方法について〕
前記構成を備えた給油ユニット40が行なう軸受部20の診断方法について、主に図4及び図5を参照することにより説明する。外輪間座18(図3参照)の取り付け部19に取り付けられたセンサ50(超音波振動センサ50)が、外輪22の振動を計測する(図5のステップS0)。センサ50から出力される信号がセンサ信号D1である。センサ50のサンプリング周波数は、100kHz以上であり、本実施形態では、200kHzである。処理部44は、センサ50から第一時間毎に、第二時間の信号を取得する。センサ50から取得した第二時間の信号が波形データD2である(図5のステップS1)。第二時間は第一時間よりも短い。例えば、第一時間は1分間であり、第二時間は第一時間のうちの始めの一部の時間であり、10秒である。この場合、処理部44は、1分毎に10秒のセンサ信号D1を取得する。そして、残りの50秒の時間に、処理部44の各機能部が各種処理を行なう。処理部44は、波形データD2を取得する毎に、次に各処理を行なう。本実施形態の診断方法は、センサ50を用いたフィードバック制御を伴う方法となる。
フーリエ変換部31は、波形データD2を高速フーリエ変換し、周波数領域で表現する周波数データD3を生成する(図5のステップS2)。周波数データD3には、周波数が小さい方から順に、一次ピークの共振周波数である一次共振ピークp1と、二次ピークの共振周波数である二次共振ピークp2とが含まれる。
データ抽出部32は、周波数データD3から二次共振ピークp2を含む超音波帯(所定周波数帯)の部分データD4を抽出する(図5のステップS3)。
本実施形態では、部分データD4の抽出のために、次に説明する予備試験が予め行われ、軸受部20の振動に関する共振ピークの周波数が取得される。つまり、軸受部20を回転させ、潤滑が良好な状態から潤滑油が不足した状態に変化するまでの間、センサ50によって外輪22の振動がセンサ50によって測定され、基準とする波形データ(以下、基準波形データと称する。)を取得する。軸受部20が潤滑油不足の傾向になると、例えば(図3参照)保持器24の環状部28aと外輪22の肩部30との間に形成されていた油膜が途切れ、これらが直接的に接触する。すると、外輪22において振動が発生する。この振動がセンサ50により計測され、この振動のデータが基準波形データに含まれる。そこで、取得した基準波形データを対象として高速フーリエ変換による周波数分析が行われ、外輪22に発生した振動の共振ピークが求められる。共振ピークとして、最も周波数が低い共振ピーク(一次共振ピーク)を求めることができる他に、一次共振ピークの2倍となる二次共振ピークを求めることができる。更には、三次共振ピークを求めることもできる場合がある。このような予備試験を行なうことで、軸受部20が潤滑油不足の傾向となった場合に発生する振動の二次共振ピークの値(周波数)が得られる。二次共振ピークの値が得られると、この値をほぼ中央とする所定幅の周波数帯が「抽出対象周波数帯」として設定される。例えば、図5のステップS2に示される周波数データD3において、一次共振ピークp1と二次共振ピークp2との間の変曲点p11と、二次共振ピークp2と(図外の)三次共振ピークとの間の変曲点との間の範囲に、抽出対象周波数帯が設定される。ただし、抽出対象周波数帯は、超音波帯(20kHz以上)である必要がある。本実施形態では、二次共振ピークが53kHzであり、抽出対象周波数帯が47〜57kHzに設定される。
そこで、データ抽出部32は、周波数データD3から、前記抽出対象周波数帯以外の周波数帯のデータを除去する。つまり、周波数データD3から、前記抽出対象周波数帯のデータを抽出する。以上より、周波数データD3から、二次共振ピークp2を含む超音波帯(所定周波数帯)の部分データD4が抽出される。この抽出の処理によれば、部分データD4には、一次共振ピークp1のデータは含まれない。また、部分データD4には、超音波帯(所定周波数帯)の二次共振ピークp2のデータが含まれる。
尖度算出部33は、部分データD4の尖度K(Kurtosis)を算出する(図5のステップS4)。尖度Kの算出式の一例は次のとおりである。すなわち、部分データD4に含まれているデータ数(サンプルサイズ)をnとし、部分データD4に含まれている各データをxi(i=1,2,3・・・)とし、xiの平均値をxaとすると、尖度Kは、次の式〔1〕によって算出される。
判定部34は、前記式(1)によって算出された尖度Kと、予め設定されている閾値Qとの比較を行う(図5のステップS5)。閾値Qは任意の値とされる。なお、前記式〔1〕によれば、部分データD4が正規分布を有する場合、尖度Kは「3」となる。閾値Qは「3」よりも大きい値に設定され、本実施形態の閾値Qは「5」である。
判定部34による尖度Kと閾値Qとの比較の結果、尖度Kが閾値Qよりも大きい場合(図5のステップS5で「Yes」の場合)、判定部34は、軸受部20の潤滑状態は不良であると判定する。そこで、尖度Kが閾値Qよりも大きい場合、信号生成部35は、ポンプ43による給油を増加させるための動作信号を生成する(図5のステップS6)。例えば、動作信号として、ポンプ43による給油を行なうと共に、給油の頻度(間隔)を短くする動作信号を生成する。生成された動作信号は、ポンプ43に与えられ、ポンプ43は動作信号に応じた給油動作を行なう。
ここで、給油量の変化について尖度Kを指標として採用することの意義について説明する。つまり、軸受部20において潤滑油不足となり、軸受部20の構成部材間の油膜が途切れると、これら構成部材同士が直接的に接触し、超音波帯域の周波数の振動が発生する。この場合、センサ50によって得られる波形データD2には、共振ピークの尖度Kが高くなるデータが含まれる。そこで、本実施形態の診断方法では、前記のようにして求められた尖度Kを閾値Qと比較する。尖度Kが閾値Qよりも高い場合、軸受部20において潤滑油不足となる傾向があると診断される。このように、尖度K(尖度Kの変化)は、軸受部20の潤滑状態の変化を検出するための指標として用いられる。
判定部34による尖度Kと閾値Qとの比較の結果、尖度Kが閾値Q以下である場合(図5のステップS5で「No」の場合)、判定部34は、軸受部20の潤滑状態は良好であると判定する。そこで、尖度Kが閾値Q以下である場合、ポンプ43による給油はそのままの状態で維持される(図5のステップS7)。つまり、ポンプ43による給油を増加させるための動作信号は生成されない。このように、信号生成部35は、尖度Kと閾値Qとの比較の結果に基づいて、前記動作信号を生成しポンプ43に出力する機能を有する。
以上の各処理(図5のステップS1〜S5、S6、S7)が、波形データD2を取得する毎に実行される。本実施形態では、前記のとおり、処理部44は、第一時間毎にセンサ信号D1を取得する。よって、前記各処理は、第一時間毎に実行される。前記のとおり、尖度Kが閾値Qよりも大きい場合(図5のステップS5で「Yes」の場合)、信号生成部35は、ポンプ43による給油を増加させるための動作信号を生成し(図5のステップS6)、ポンプ43は動作信号に応じた給油動作を行なう。この後も、第一時間毎に、前記各処理が繰り返し実行される。給油を増加させることにより、潤滑油不足が解消されると、軸受部20の構成部材間の直接的な接触に起因する振動が解消され、尖度Kが閾値Q以下となる。この場合、図5のステップS5で「No」の判定がされる。すると、ポンプ43による給油を、前の状態(給油を増加させる前の状態)に復帰させる動作信号が、信号生成部35によって生成されてもよい。
本実施形態の診断方法では、前記尖度Kとして、一次共振ピークp1のデータではなく、超音波帯の二次共振ピークp2のデータが採用されている。その理由は、軸受部20の潤滑状態の診断において、軸受部20が設けられる機器(工作機械)の振動を除外するためである。つまり、一次共振ピークp1のデータには、工作機械の振動によるものが含まれる可能性がある。これに対して、二次共振ピークp2の振動には、工作機械の振動が含まれない。そして、軸受部20において、構成部材間の油膜が途切れ、構成部材同士が直接接触することで発生する振動は、超音波帯の周波数を有する。よって、本実施形態の診断方法では、二次共振ピークp2であって超音波帯(20kHz以上)の振動に基づくデータの尖度Kを指標として用いて、軸受部20の異常(潤滑異常)が診断される。
なお、尖度Kを求める対象とするデータに、一次共振ピークp1の帯域が含まれていなければよいことから、尖度Kは、二次共振ピークp2であって超音波帯のデータのみならず、三次共振ピークであって超音波帯のデータから尖度Kを求めてもよい。つまり、処理部44は、波形データD2からn次共振ピーク(ただし、nは2以上の整数)を含む超音波帯の部分データD4を取得し、部分データD4から求めた尖度Kと閾値Qとを比較し、この比較の結果に基づいてポンプ43を動作させるための信号を生成するように構成されていればよい。
以上のように、軸受部20を対象として潤滑状態を診断する本実施形態の診断方法は、次のとおりである。すなわち、診断方法には、計測ステップ(図5のステップS0)と、処理ステップ(図5のステップS1〜)とが含まれる。計測ステップでは、図3に示されるように、外輪22側の部材である外輪間座18の取り付け部19に取り付けられたセンサ50(振動センサ50)が、外輪22の振動を計測する。処理ステップでは、センサ50から得た波形データD2を処理する。つまり、処理ステップでは、波形データD2から二次共振ピークp2を含む超音波帯(所定周波数帯)の部分データD4を取得し、部分データ4から求めた尖度Kと閾値Qとを比較する。この比較の結果に基づいて、軸受部20の潤滑状態を判定する。本実施形態では、前記比較の結果に基づいてポンプ43を動作させるための信号が生成される。
この診断方法によれば、軸受部20が設けられている工作機械から振動が発生し、この振動によって外輪22が振動していても、その影響を、軸受部20の潤滑異常の検出に与えないで済む。この結果、軸受部20における潤滑異常を正確に検出することが可能となる。また、本実施形態では(図3参照)、センサ50(振動センサ50)は、外輪22と並んで設けられた外輪間座18に設けられた取り付け部19に取り付けられている。このため、センサ50は、外輪22の振動を感度よく計測することができる。この結果、軸受部20において潤滑異常(つまり、潤滑油不足の傾向)が発生した場合、迅速にその発生を検出することができ、ポンプ43による給油を増加させることで、潤滑異常を解消することが可能となる。
また、軸受部20における潤滑異常を正確に検出することが可能であることから、誤検出による潤滑油の吐出が抑制され、無駄に潤滑油の消費がされない。このため、給油ユニット40(図2参照)のタンク42の容量は制限されているが、潤滑油が無駄に消費されないため、長期にわたって給油ユニット40を機能させることができる。
前記実施形態では、図5のステップS2からS3において、波形データD2から二次共振ピークを含む超音波帯(所定周波数帯)の部分データD4が取得され、その手段として、波形データD2を周波数領域に変換した周波数データD3の一部(部分データD4以外のデータ)を除外している。
部分データD4を取得する別の手段として、処理部44がバンドパスフィルタを有しており、このバンドパスフィルタによって、センサ50からのセンサ信号D1から所定の周波数帯以外の信号を除去してもよい。前記所定の周波数帯が、二次共振ピークを含む超音波帯である。そして、この部分データD4が周波数分析され、前記実施形態と同様に、二次共振ピークを含む超音波帯の部分データD4の尖度Kが求められてもよい。
本実施形態では、センサ50として振動センサが用いられている。AEセンサの場合と比較して振動センサは信号特性が良好であり、感度の高い検出が可能となる。
前記実施形態では(図1参照)、処理部44を給油ユニット40が備えている場合について説明したが、この処理部44については軸受装置10の外部に設置されていてもよい。つまり、軸受装置10以外の機器(例えば、本実施形態の場合、工作機械の制御装置)が処理部44を備えていてもよく、この機器の制御部の一部の機能によって前記処理部44が構成されていてもよい。
図1に示す軸受部20はアンギュラ玉軸受であるが、軸受の形式はこれに限らず、深溝玉軸受であってもよく、また、軸受部20は、転動体としてころを有している円すいころ軸受や円筒ころ軸受等であってよい。
前記実施形態では、外輪22が固定輪であるが、内輪21が固定輪であってもよい。この場合、外輪22が回転輪であり、内輪間座17に給油ユニット40が設けられる。すなわち、軸受部20では、内輪21と外輪22とのうちの一方が回転輪であって他方が固定輪となっていればよい。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
10:軸受装置 18:外輪間座(固定輪側の部材)
19:取り付け部 20:軸受部
21:内輪 22:外輪
23:玉(転動体) 40:給油ユニット
43:ポンプ 44:処理部
50:センサ(超音波振動センサ) D2:波形データ
D4:部分データ K:尖度
Q:閾値

Claims (3)

  1. 内輪、外輪、及び前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体を有し、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が回転輪であって他方が固定輪となる軸受部を対象として、潤滑状態を診断する方法であって、
    前記固定輪側の部材に設けられている取り付け部に取り付けられた振動センサが、当該固定輪の振動を計測する計測ステップと、
    前記振動センサから得た波形データを処理する処理ステップと、を含み、
    前記処理ステップでは、前記波形データからn次共振ピーク(ただし、nは2以上の整数)を含む所定周波数帯の部分データを取得し、当該部分データから求めた尖度と閾値とを比較し、当該比較の結果に基づいて前記軸受部の潤滑状態を判定する、軸受部の診断方法。
  2. 前記部分データには、一次共振ピークのデータは含まれず、所定周波数帯の二次共振ピークのデータが含まれる、請求項1に記載の軸受部の診断方法。
  3. 内輪、外輪、及び前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体を有し、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が回転輪であって他方が固定輪となる軸受部と、
    前記軸受部の軸方向隣りに設けられている給油ユニットと、を備え、
    前記給油ユニットは、前記固定輪の振動を検出するための振動センサと、前記軸受部に潤滑油を供給するためのポンプと、前記振動センサから得た波形データを処理する処理部と、を有し、
    前記振動センサは、前記固定輪側の部材に設けられている取り付け部に取り付けられていて、
    前記処理部は、前記波形データからn次共振ピーク(ただし、nは2以上の整数)を含む所定周波数帯の部分データを取得し、当該部分データから求めた尖度と閾値とを比較し、当該比較の結果に基づいて前記ポンプを動作させるための信号を生成する、軸受装置。
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