以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る冷凍機油は、炭素/酸素モル比が2.5以上5.8以下である含酸素油の少なくとも1種を基油として含有し、トリフルオロエチレン冷媒と共に用いられる。
また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、炭素/酸素モル比が2.5以上5.8以下である含酸素油の少なくとも1種を基油として含有する冷凍機油と、トリフルオロエチレン冷媒と、を含有する。なお、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物には、本実施形態に係る冷凍機油と、トリフルオロエチレン冷媒と、を含有する態様が包含される。
本実施形態に係る基油は、炭素/酸素モル比が2.5以上5.8以下である含酸素油の少なくとも1種である。かかる含酸素油の炭素/酸素モル比は、冷媒との相溶性と安定性の観点から、好ましくは3.2以上5.0以下であり、より好ましくは4.0以上5.0以下である。なお、炭素/酸素モル比は、一般的な元素分析法により定量分析することができる。炭素を分析する方法としては、燃焼により二酸化炭素に変換した後の熱伝導度法やガスクロマトグラフィー法などによって分析する方法が挙げられる。酸素を分析する方法としては、当該酸素を炭素により一酸化炭素に変換した後に定量分析する炭素還元法が一般的であり、Shutze−Unterzaucher法が広く実用化されている。
上記の含酸素油としては、エステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコールカーボネート、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどが例示され、エステル、ポリビニルエーテル又はポリアルキレングリコールが好ましく、エステルがより好ましい。
エステルとしては、芳香族エステル、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、炭酸エステル及びこれらの混合物などが例示され、ポリオールエステルが好ましい。
芳香族エステルとしては、1〜6価、好ましくは1〜4価、より好ましくは1〜3価の芳香族カルボン酸と、炭素数1〜18、好ましくは1〜12の脂肪族アルコールと、のエステルなどが用いられる。1〜6価の芳香族カルボン酸としては、具体的には例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの混合物などが挙げられる。また、炭素数1〜18の脂肪族アルコールとしては、直鎖状のものでも分枝状のものであってもよく、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状又は分枝状のプロパノール、直鎖状又は分枝状のブタノール、直鎖状又は分枝状のペンタノール、直鎖状又は分枝状のヘキサノール、直鎖状又は分枝状のヘプタノール、直鎖状又は分枝状のオクタノール、直鎖状又は分枝状のノナノール、直鎖状又は分枝状のデカノール、直鎖状又は分枝状のウンデカノール、直鎖状又は分枝状のドデカノール、直鎖状又は分枝状のトリデカノール、直鎖状又は分枝状のテトラデカノール、直鎖状又は分枝状のペンタデカノール、直鎖状又は分枝状のヘキサデカノール、直鎖状又は分枝状のヘプタデカノール、直鎖状又は分枝状のオクタデカノール及びこれらの混合物などが挙げられる。なお、2価以上の芳香族カルボン酸を用いた場合、1種の脂肪族アルコールからなる単純エステルであってもよいし、2種以上の脂肪族アルコールからなる複合エステルであってもよい。
二塩基酸エステルとしては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数5〜10の二塩基酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどの直鎖又は分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコールとのエステル及びこれらの混合物が好ましく用いられる。
ポリオールエステルは、多価アルコールと脂肪酸とから合成されるエステルである。脂肪酸としては、飽和脂肪酸が好ましく用いられる。脂肪酸の炭素数は4〜9であることが好ましく、5〜9であることがより好ましい。ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであってもよく、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよく、また部分エステルと完全エステルとの混合物であってもよい。ポリオールエステルの水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以下、更に好ましくは3mgKOH/g以下である。
ポリオールエステルを構成する脂肪酸のうち、分岐脂肪酸の割合が20〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがより好ましく、70〜100モル%であることが更に好ましく、90〜100モル%であることが特に好ましい。特に、炭素数4〜9の分岐脂肪酸の割合が上記の範囲であることが好ましい。
炭素数4〜9の分岐脂肪酸としては、具体的には、分岐状のブタン酸、分岐状のペンタン酸、分岐状のヘキサン酸、分岐状のヘプタン酸、分岐状のオクタン酸、分岐状のノナン酸が挙げられる。さらに具体的には、α位及び/又はβ位に分岐を有する脂肪酸が好ましく、イソブタン酸、2−メチルブタン酸、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸などが好ましく、中でも2−エチルヘキサン酸及び/又は3,5,5−トリメチルヘキサン酸がより好ましい。
脂肪酸は、炭素数4〜9の分岐脂肪酸以外の脂肪酸を含んでいてもよい。炭素数4〜9の分岐脂肪酸以外の脂肪酸としては、例えば炭素数4〜9の直鎖脂肪酸(すなわち、n−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸)が好ましく用いられる。これらの中でも、ペンタン酸及び/又はヘプタン酸がより好ましい。
また、脂肪酸は、炭素数4〜9の脂肪酸以外の脂肪酸として、例えば炭素数10〜24の脂肪酸を含んでいてもよい。炭素数4〜9の脂肪酸以外の脂肪酸としては、具体的には、直鎖状又は分岐状のデカン酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン酸、直鎖状又は分岐状のドデカン酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のノナデカン酸、直鎖状又は分岐状のイコサン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコ酸、直鎖状又は分岐状のドコサン酸、直鎖状又は分岐状のトリコサン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコサン酸等が挙げられる。
ポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、水酸基を2〜6個有する多価アルコールが好ましく用いられる。多価アルコールの炭素数としては、4〜12が好ましく、5〜10がより好ましい。具体的には、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのヒンダードアルコールが好ましい。冷媒との相溶性及び加水分解安定性に特に優れることから、ペンタエリスリトール、又はペンタエリスリトールとジペンタエリスリトール)との混合エステルがより好ましい。
また、コンプレックスエステルとは、脂肪酸及び二塩基酸と、一価アルコール及びポリオールとのエステルのことであり、脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、二塩基酸エステル及びポリオールエステルに関する説明において例示したものと同様のものが使用できる。
また、炭酸エステルとは、分子内に下記式(A)で表される炭酸エステル構造を有する化合物である。なお、炭酸エステル構造は一分子内に1つでもよいし複数有していてもよい。
炭酸エステルを構成するアルコールとしては、前述の脂肪族アルコール、ポリオールなどが使用でき、またポリグリコールやポリオールにポリグリコールを付加させたものも使用できる。また、炭酸と脂肪酸及び/又は二塩基酸を用いたものを使用してもよい。
また、炭酸エステルの中でも、下記一般式(A−1)で表される構造のものが好ましい。
[上記式(A−1)中、X1は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は下記一般式(A−2):
Y2−(OA3)e− (A−2)
(上記式(A−2)中、Y2は水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、A3は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、eは1〜50の整数を示す)で表される基を示し、A1及びA2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を示し、Y1は水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を示し、Bは水酸基3〜20個を有する化合物の残基を示し、aは1〜20、bは0〜19でかつa+b=3〜20となる整数を示し、cは0〜50の整数、dは1〜50の整数をそれぞれ示す]
上記一般式(A−1)において、X1は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は上記一般式(A−2)で表される基を示す。ここでいう、アルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、直鎖のものであっても分枝のものであってもよい。
炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝ペンチル基、直鎖又は分枝ヘキシル基、直鎖又は分枝ヘプチル基、直鎖又は分枝オクチル基、直鎖又は分枝ノニル基、直鎖又は分枝デシル基、直鎖又は分枝ウンデシル基、直鎖又は分枝ドデシル基、直鎖又は分枝トリデシル基、直鎖又は分枝テトラデシル基、直鎖又は分枝ペンタデシル基、直鎖又は分枝ヘキサデシル基、直鎖又は分枝ヘプタデシル基、直鎖又は分枝オクタデシル基、直鎖又は分枝ノナデシル基、直鎖又は分枝イコシル基、直鎖又は分枝ヘンイコシル基、直鎖又は分枝ドコシル基、直鎖又は分枝トリコシル基、直鎖又は分枝テトラコシル基などが挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、具体的には例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
上記一般式(A−2)において、A3で表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基などが例示される。
また、上記一般式(A−2)におけるY2は、水素原子、アルキル基又はシクロアルキルキル基である。ここでいうアルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、直鎖のものであっても分枝のものであってもよい。炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には例えば、X1に関する説明において列挙した基が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、具体的には例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
これらの中でも、Y2としては、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基又はiso−ドデシル基の何れかであることがより好ましい。また、eは1〜50の整数を表す。
また、X1としては、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は一般式(2)で表される基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基、iso−ドデシル基又は一般式(2)で表される基の何れかであることがより好ましい。
Bを残基とする3〜20個の水酸基を有する化合物としては、具体的には、前述のポリオールが挙げられる。
また、A1及びA2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基を表す。具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基などが例示される。
また、Y1は、水素原子、アルキル基又はシクロアルキルキル基である。ここでいうアルキル基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜24、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12である。また、直鎖のものであっても分枝のものであってもよい。炭素数1〜24のアルキル基としては、具体的には例えば、X1に関する説明において列挙した基が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、具体的には例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられる。
これらの中でも、Y1としては、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基、n−ウンデシル基、iso−ウンデシル基、n−ドデシル基又はiso−ドデシル基の何れかであることがより好ましい。
なお、上記一般式(A−1)及び(A−2)においてc、d及びeはポリオキシアルキレン部分の重合度を表すが、このポリオキシアルキレン部分としては、分子中同じでも異なっていてもよく、複数の異なるポリオキシアルキレン部分を有する場合、オキシアルキレン基の重合形式に特に制限はなく、ランダム共重合していてもブロック共重合していてもよい。
本実施形態において好ましく用いられるポリビニルエーテルは、下記一般式(1)で表される構造単位をする。
[式中、R1、R2及びR3は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭化水素基を示し、R4は二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R5は炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示す。mが2以上である場合には、複数のR4は互いに同一でも異なっていてもよい。]
一般式(1)におけるR1、R2及びR3で示される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜7、更に好ましくは3〜6である。また、一般式(1)におけるR1、R2及びR3は、少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、全てが水素原子であることがより好ましい。
一般式(1)におけるR4で示される二価の炭化水素基及びエーテル結合酸素含有炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8、更に好ましくは3〜6である。また、一般式(1)におけるR4で示される二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基は、例えばエーテル結合を形成する酸素を側鎖に有する炭化水素基であってもよい。
一般式(1)におけるR5は、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。
一般式(1)におけるmは、0〜20であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、2〜16であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテルを構成する全構造単位におけるmの平均値が、0〜10となることが好ましい。
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、一般式(1)で表される構造単位から選ばれる1種で構成される単独重合体であってもよく、一般式(1)で表される構造単位から選ばれる2種以上で構成される共重合体であってもよく、一般式(1)で表される構造単位と他の構造単位とで構成される共重合体であってもよい。ポリビニルエーテルを共重合体とすることにより、冷凍機油の冷媒との相溶性を満足しつつ、潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類、共重合体における構造単位の比率等を適宜選択することにより、上記の冷凍機油の諸特性を所望のものとすることが可能となる。したがって、冷凍システム又は空調システムにおけるコンプレッサーの型式、潤滑部の材質、冷凍能力、冷媒の種類等により異なる潤滑性、相溶性等の要求に応じた冷凍機油を自在に得ることができる。共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
本実施形態に係るポリビニルエーテルが共重合体である場合、当該共重合体は、上記一般式(1)で表され且つR5が炭素数1〜3のアルキル基である構造単位(1−1)と、上記一般式(1)で表され且つR5が炭素数3〜20、好ましくは3〜10、更に好ましくは3〜8のアルキル基である構造単位(1−2)と、を含むことが好ましい。構造単位(1−1)におけるR5としてはエチル基が特に好ましく、また、構造単位(1−2)におけるR5としてはイソブチル基が特に好ましい。さらに、本実施形態に係るポリビニルエーテルが上記の構造単位(1−1)及び(1−2)を含む共重合体である場合、構造単位(1−1)と構造単位(1−2)とのモル比は、5:95〜95:5であることが好ましく、20:80〜90:10であることがより好ましく、70:30〜90:10であることが更に好ましい。当該モル比が上記範囲内であると、冷媒との相溶性をより向上させることができ、また、吸湿性を低くすることができる傾向にある。
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位を更に含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
[式中、R6〜R9は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、一般式(1)に対応するビニルエーテル系モノマーの重合、又は、一般式(1)に対応するビニルエーテル系モノマーと一般式(2)に対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合により製造することができる。一般式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーとしては、下記一般式(3)で表されるモノマーが好適である。
[式中、R1、R2、R3、R4、R5及びmは、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5及びmと同一の定義内容を示す。]
本実施形態に係るポリビニルエーテルとしては、以下の末端構造(A)又は(B)を有するものが好適である。
(A)一方の末端が、一般式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(6)又は(7)で表される構造を有するもの。
[式中、R11、R21及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R41は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R51は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは一般式(1)中のmと同一の定義内容を示す。mが2以上の場合には、複数のR41は互いに同一でも異なっていてもよい。]
[式中、R61、R71、R81及びR91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
[式中、R12,R22及びR32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R42は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R52は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは一般式(1)中のmと同一の定義内容を示す。mが2以上の場合には、複数のR41は同一でも異なっていてもよい。]
[式中、R62、R72、R82及びR92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
(B)一方の末端が上記一般式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が下記一般式(8)で表される構造を有するもの。
[式中、R13、R23及びR33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
このようなポリビニルエーテル系化合物の中で、以下に挙げる(a),(b),(c),(d)及び(e)のものが本実施形態に係る冷凍機油の主成分として特に好適である。
(a)一方の末端が一般式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(6)又は(7)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(b)一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が一般式(4)で表され、かつ他方の末端が一般式(6)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(c)一方の末端が一般式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(8)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(d)一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が一般式(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(8)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR1、R2及びR3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(e)上記(a),(b),(c)及び(d)のいずれかであって、一般式(1)におけるR5が炭素数1〜3の炭化水素基である構造単位と該R5が炭素数3〜20の炭化水素基である構造単位とを有するもの。
本実施形態に係るポリビニルエーテルの製造工程において、副反応を起こして分子中にアリール基などの不飽和基が形成される場合があるが、ポリビニルエーテル自体の熱安定性の向上、重合物の生成によるスラッジの発生の抑制、抗酸化性(酸化防止性)の低下による過酸化物の生成の抑制といった観点から、本実施形態に係るポリビニルエーテルとしては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましい。ポリビニルエーテルの不飽和度は、0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテルの過酸化物価は、10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテルのカルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテルの水酸基価は、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
なお、本発明における不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価とは、それぞれ日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により測定した値をいう。すなわち、本発明における不飽和度とは、試料にウィス液(ICl−酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算した値(meq/g)をいう。また、本発明における過酸化物価とは、試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算した値(meq/kg)をいう。また、本発明におけるカルボニル価とは、試料に2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性あるキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算した値(重量ppm)をいう。
ポリアルキレングリコールは種々の化学構造のものがあるが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが基本化合物で、単位構造はオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレンであり、それぞれモノマーであるエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを原料として、開環重合により得ることができる。
ポリアルキレングリコールとしては、例えば下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
Rα−[(ORβ)f−ORγ]g (9)
[式(1)中、Rαは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基又は水酸基を2〜8個有する化合物の残基を表し、Rβは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、Rγは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアシル基を表し、fは1〜80の整数を表し、gは1〜8の整数を表す。]
上記一般式(9)において、Rα、Rγで表されるアルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。当該アルキル基の炭素数は好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜6である。アルキル基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下する傾向にある。
また、Rα、Rγで表されるアシル基のアルキル基部分は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アシル基の炭素数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜6である。当該アシル基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。
Rα、Rγで表される基が、ともにアルキル基である場合、あるいはともにアシル基である場合、Rα、Rγで表される基は同一でも異なっていてもよい。さらに、gが2以上の場合は、同一分子中の複数のRα、Rγで表される基は同一でも異なっていてもよい。
Rαで表される基が水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、この化合物は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。
上記一般式(9)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、Rα、Rγのうちの少なくとも1つがアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、特にメチル基であることが作動媒体との相溶性の点から好ましい。
さらには、熱・化学安定性の点から、RαとRγとの双方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、とりわけ双方がメチル基であることが好ましい。
製造容易性及びコストの点から、Rα又はRγのいずれか一方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であり、他方が水素原子であることが好ましく、とりわけ一方がメチル基であり、他方が水素原子であることが好ましい。また、潤滑性およびスラッジ溶解性の点からは、Rα及びRγの双方が水素原子であることが好ましい。
上記一般式(9)中のRβは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、このようなアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、ORβで表される繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。同一分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよく、また、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよい。
上記一般式(9)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、作動媒体との相溶性及び粘度−温度特性の観点からは、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とを含む共重合体が好ましく、このような場合、焼付荷重、粘度−温度特性の点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との総和に占めるオキシエチレン基の割合(EO/(PO+EO))が0.1〜0.8の範囲にあることが好ましく、0.3〜0.6の範囲にあることがより好ましい。
また、吸湿性や熱・酸化安定性の点ではEO/(PO+EO)の値が0〜0.5の範囲にあることが好ましく、0〜0.2の範囲にあることがより好ましく、0(すなわちプロピレンオキサイド単独重合体)であることが最も好ましい。
上記一般式(9)中のfは、オキシアルキレン基ORβの繰り返し数(重合度)を表し、1〜80の整数である。また、gは1〜8の整数である。例えばRαがアルキル基またはアシル基である場合、gは1である。Rαが水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、gは当該化合物が有する水酸基の数となる。
また、fとgとの積(f×g)については特に制限されないが、前記した冷凍機用潤滑油としての要求性能をバランスよく満たすためには、f×gの平均値が6〜80となるようにすることが好ましい。
一般式(9)で表されるポリアルキレングリコールの数平均分子量は好ましくは500〜3000、さらに好ましくは600〜2000、より好ましくは600〜1500であり、nは当該ポリアルキレングリコールの数平均分子量が上記の条件を満たすような数であることが好ましい。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が低すぎる場合には冷媒共存下での潤滑性が不十分となる。他方、数平均分子量が高すぎる場合には、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる。
ポリアルキレングリコールの水酸基価は特に限定されないが、100mgKOH/g以下、好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下、最も好ましくは10mgKOH/g以下であるのが望ましい。
本実施形態に係るポリアルキレングリコールは、公知の方法を用いて合成することができる(「アルキレンオキシド重合体」、柴田満太他、海文堂、平成2年11月20日発行)。例えば、アルコール(RαOH;Rαは上記一般式(9)中のRαと同一の定義内容を表す)に所定のアルキレンオキサイドの1種以上を付加重合させ、さらに末端水酸基をエーテル化もしくはエステル化することによって、上記一般式(9)で表されるポリアルキレングリコールが得られる。なお、上記の製造工程において異なる2種以上のアルキレンオキサイドを使用する場合、得られるポリアルキレングリコールはランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、より酸化安定性及び潤滑性に優れる傾向にあることからブロック共重合体であることが好ましく、より低温流動性に優れる傾向にあることからランダム共重合体であることが好ましい。
本実施形態に係るポリアルキレングリコールの100℃における動粘度は5〜20mm2/sであることが好ましく、好ましくは6〜18mm2/s、より好ましくは7〜16mm2/s、さらに好ましくは8〜15mm2/s、最も好ましくは10〜15mm2/sである。100℃における動粘度が前記下限値未満であると冷媒共存下での潤滑性が不十分となり、他方、前記上限値を超えると、冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる。また、当該ポリアルキレングリコールの40℃における動粘度は、40℃における動粘度が10〜200mm2/sであることが好ましく、20〜150mm2/sであることがより好ましい。40℃における動粘度が10mm2/s未満であると潤滑性や圧縮機の密閉性が低下するという傾向にあり、また、200mm2/sを超えると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる傾向にある。
また、上記一般式(9)で表されるポリアルキレングリコールの流動点は−10℃以下であることが好ましく、−20〜−50℃であることがより好ましい。流動点が−10℃以上のポリアルキレングリコールを用いると、低温時に冷媒循環システム内で冷凍機油が固化しやすくなる傾向にある。
また、上記一般式(9)で表されるポリアルキレングリコールの製造工程において、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが副反応を起こして分子中にアリール基などの不飽和基が形成される場合がある。ポリアルキレングリコール分子中に不飽和基が形成されると、ポリアルキレングリコール自体の熱安定性が低下する、重合物を生成してスラッジを生成する、あるいは抗酸化性(酸化防止性)が低下して過酸化物を生成するといった現象が起こりやすくなる。特に、過酸化物が生成すると、分解してカルボニル基を有する化合物を生成し、さらにカルボニル基を有する化合物がスラッジを生成してキャピラリ詰まりが起こりやすくなる。
したがって、本実施形態に係るポリアルキレングリコールとしては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましく、具体的には0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが最も好ましい。また、過酸化物価は10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが最も好ましい。さらに、カルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが最も好ましい。
本実施形態において、不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価の低いポリアルキレングリコールを得るためには、プロピレンオキサイドを反応させる際の反応温度を120℃以下(より好ましくは110℃以下)とすることが好ましい。また、製造に際してアルカリ触媒を使用することがあれば、これを除去するために無機系の吸着剤、例えば、活性炭、活性白土、ベントナイト、ドロマイト、アルミノシリケート等を使用すると、不飽和度を減ずることができる。また、当該ポリアルキレングリコールを製造又は使用する際に酸素との接触を極力避けたり、酸化防止剤を添加することによっても過酸化物価又はカルボニル価の上昇を防ぐことができる。
本実施形態に係るポリアルキレングリコールは、炭素/酸素モル比が所定の範囲であることが必要であるが、原料モノマーのタイプ、混合比を選定、調節することにより、該モル比が前記範囲にある重合体を製造することができる。
本実施形態に係る基油は、上記の含酸素油に加えて、例えば鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油を更に含有していてもよい。上記の含酸素油の含有量は、基油全量基準として、5質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
本実施形態に係る冷凍機油は、必要に応じて更に各種添加剤を含有していてもよい。係る添加剤としては、酸捕捉剤、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤などが挙げられる。なお、添加剤の含有量は、冷凍機油全量基準で、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
冷凍機油は、上記の添加剤の中でも、熱・化学的安定性をより向上させる観点から、酸捕捉剤を更に含有することが好ましい。酸捕捉剤としては、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物が例示される。
エポキシ化合物としては、特に制限されないが、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、オキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化植物油などが挙げられる。これらのエポキシ化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、n−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロルプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルを挙げることができる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、グリシジルベンゾエート、グリシジルネオデカノエート、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートを挙げることができる。
脂環式エポキシ化合物とは、下記一般式(10)で表される、エポキシ基を構成する炭素原子が直接脂環式環を構成している部分構造を有する化合物である。
脂環式エポキシ化合物としては、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンを挙げることができる。
アリルオキシラン化合物としては、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンを挙げることができる。
アルキルオキシラン化合物としては、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンを挙げることができる。
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と、炭素数1〜8のアルコール又はフェノールもしくはアルキルフェノールとのエステルを挙げることができる。エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、エポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
エポキシ化植物油としては、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物を挙げることができる。
カルボジイミド化合物としては、特に制限されないが、例えばジアルキルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ビス(アルキルフェニル)カルボジイミドを用いることができる。ジアルキルカルボジイミドとしては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド等を挙げることができる。ビス(アルキルフェニル)カルボジイミドとしては、ジトリルカルボジイミド、ビス(イソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(ブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(ジブチルフェニル)カルボジイミド、ビス(ノニルフェニル)カルボジイミド等を挙げることができる。
冷凍機油中の基油の含有量は、潤滑性、相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性など冷凍機油に要求される特性に優れるためには、冷凍機油全量基準で80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは3〜1000mm2/s、より好ましくは4〜500mm2/s、最も好ましくは5〜400mm2/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm2/s、より好ましくは2〜50mm2/sとすることができる。
冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×109Ω・m以上、より好ましくは1.0×1010Ω・m以上、最も好ましくは1.0×1011Ω・m以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、本発明において、体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機又は配管に用いられている金属への腐食を防止するため、及び本実施形態に係る冷凍機油に含有されるエステルの分解を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本実施形態に係る冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油及び石油製品の灰分ならびに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
本実施形態に係る冷凍機油は、トリフルオロエチレン(HFO−1123)冷媒と共に用いられる。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、トリフルオロエチレン(HFO−1123)冷媒を含有する。
本実施形態に係る冷凍機油と共に用いる冷媒、及び本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物が含有する冷媒は、トリフルオロエチレン(HFO−1123)に加えて、飽和フッ化炭化水素冷媒、不飽和フッ化炭化水素冷媒などの公知の冷媒を更に含有していてもよい。トリフルオロエチレン(HFO−1123)の含有量は、冷媒雰囲気下における冷凍機油の安定性の観点からは、冷媒全量基準で、90質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることが特に好ましく、20質量%以下であることが最も好ましい。また、トリフルオロエチレン(HFO−1123)の含有量は、GWP低減の観点からは、冷媒全量基準で、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物が例示される。これらの中でも、冷媒雰囲気下における冷凍機油の安定性及びGWP低減の観点から、ジフルオロメタン(HFC−32)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)が好ましい。
不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ye)、及び3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物が例示される。これらの中でも、冷媒雰囲気下における冷凍機油の安定性及びGWP低減の観点から、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)が好ましい。
冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は、特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部とすることができる。
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するルームエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型又は密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物及び冷凍機油は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物及び冷凍機油は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
基油1〜6として、表1に示す組成の脂肪酸と多価アルコールとのポリオールエステルを調製した。なお、表中の略称は以下の化合物を表す。
iC4:2−メチルプロパン酸
nC5:n−ペンタン酸
iC8:2−エチルヘキサン酸
iC9:3,5,5−トリメチルヘキサン酸
nC10:n−デカン酸
iC18:2−エチルヘキサデカン酸
PET:ペンタエリスリトール
基油1〜6と以下に示す添加剤とを用いて、表2に示す組成の供試油1〜7を調製した。
添加剤1:グリシジルネオデカノエート
添加剤2:2−エチルヘキシルグリシジルエーテル
添加剤3:ビス(ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド
添加剤4:ジイソプロピルカルボジイミド
各供試油について、以下に示す安定性試験を行った。結果を表2に示す。
(安定性試験)
安定性試験は、JIS K2211−09(オートクレーブテスト)に準拠して行った。具体的には、含有水分量を100ppmに調整した供試油80gをオートクレーブに秤取し、触媒(鉄、銅、アルミの線、いずれも外径1.6mm×長さ50mm)、及び、下記混合冷媒A〜Cから選ばれるいずれかの混合冷媒20gを封入した後、140℃に加熱し、150時間後の供試油の酸価(JIS C2101)を測定した。
混合冷媒A:2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)とトリフルオロエチレン(HFO−1123)との混合冷媒(質量比(HFO−1234yf/HFO−1123)=80/20)
混合冷媒B:ジフルオロメタン(HFC−32)とトリフルオロエチレン(HFO−1123)との混合冷媒(質量比(HFC−32/HFO−1123)=40/60)
混合冷媒C:1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)とトリフルオロエチレン(HFO−1123)との混合冷媒(質量比(HFC−134a/HFO−1123)=20/80)
また、供試油1〜5について、以下に示す冷媒相溶性試験を行ったところ、いずれの供試油も冷媒と相溶することを確認した。
(冷媒相溶性試験)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、前記混合冷媒A〜Cのそれぞれ10gに対して供試油を10g配合し、冷媒と冷凍機油とが0℃において相互に溶解しているかを観察した。