JP2019208347A - ロータコア、ロータ、回転電機、自動車用電動補機システム - Google Patents
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Abstract
【課題】回転電機におけるコギングトルクを十分に低減する。【解決手段】磁極部220は、周方向に複数設けられており、周方向に隣り合う一対の磁極部220の基部230の間には、第1空間部240が形成されている。周方向に隣り合う一対の磁極部220の中間に位置して第1空間部240に接するq軸外周部244は、基部230よりも内周側に設けられている。基部230は、第1空間部240に接する側面部241と、側面部241よりも外周側に設けられかつ側面部241に対して周方向にそれぞれ突出する第1突起部222aおよび第2突起部222bとを有する。基部230の第1突起部222aおよび第2突起部222bに挟まれた外周面は、半径が異なる複数の円弧221a、221、221bで構成されている。ブリッジ部242は、側面部241よりも内周側に配置されている。【選択図】図4
Description
本発明は、ロータコアと、これを用いたロータ、回転電機および自動車用電動補機システムとに関する。
近年の自動車は、油圧システムから電動システムへの移行や、ハイブリッド自動車、電気自動車の市場拡大の流れを受けて、電動パワーステアリング(以下、EPS)装置や電動ブレーキ装置の装着率が急速に増大している。また、アイドリングストップやブレーキなどの運転操作の一部を自動化した車の普及を背景に、運転快適性の向上とともに車室内の静音化が進展している。
車室内の振動、騒音に繋がる電気モータ起因の加振源としては、電気モータのトルク変動成分(コギングトルクやトルクリプル)と、電気モータのステータと回転子の間に発生する電磁加振力がある。これらのうちトルク変動成分による振動エネルギーは、電気モータの出力軸を介して車室内へ伝搬し、また、電磁加振力による振動エネルギーは、EPS装置の機械部品などを介して車室内へ伝搬する。これらの振動エネルギーが車室内へ伝搬することで、車室内の振動、騒音に繋がっている。
例えば、EPS装置では、電気モータがステアリングホイール操作をアシストすることから、運転者はステアリングホイールを介して、電気モータのコギングトルクやトルクリプルを手に感じることになる。これを抑制するため、EPS装置に用いる電気モータでは、一般にコギングトルクをアシストトルクの1/1000未満に、トルクリプルをアシストトルクの1/100未満に抑制することが求められる。また、電磁加振力の空間モードの最小次数が2以下でないことがよいとされる。
ここで、電気モータの価格は、磁石、巻線などの材料費用と、製造費用からなるが、磁石価格の比率が特に高いため、磁石コストの抑制が強く求められている。また、製造の容易化や、必要なマンパワー、製造装置の軽減も望まれている。このため、自動車用電動補機システムに用いられる電気モータも、これらの要望を満たす必要がある。
EPS装置に用いられる電気モータとしては、通常、小型化および信頼性の点から、永久磁石式のブラシレスモータ(以下、「永久磁石式回転電機」と称する)が使用される。永久磁石式回転電機には、大別して、出力密度で優れる表面磁石式(SPM)と、磁石コストで優れる埋め込み磁石式(IPM)とがあるが、何れの場合も、磁石コスト低減の点から、極数に応じた個数に分離された磁石が使用されることが多い。
例えば、埋め込み磁石式では、通常、磁石収納空間を持つ一体ロータコアを用いる。一体ロータコアはロータ磁極の製造精度が高いため、ロータ磁極とステータ間のエアギャップ長を短縮できる。磁石収納空間のブリッジ部からの磁束漏れにより、表面磁石式に対してトルクが低下するが、エアギャップ長の短縮によりトルク低下を抑制できる。また、矩形の磁石を使用できるため、磁石コストを低減できる。さらに、表面磁石式で必要となる磁石カバーが不要になることも利点である。
しかしながら、均一な磁化を持つ矩形磁石を周方向に配置するとき、一体ロータコアの外周を円環状にすると、磁束分布が正弦波状でなくなり、トルクリプルとコギングトルクを十分低減できないという問題が発生する。このため、磁極の外周側端部を突出させるなどの、磁極形状の工夫により、トルクリプルとコギングトルクを低減する必要が生じる。表面磁石式を採用する場合でも同様の問題が発生するため、同じく磁石の幅・外周曲率を工夫してトルクリプルとコギングトルクを低減する必要が生じる。ここで、巻線方式、極数、スロット数、磁石方式などが違うと磁束分布が違ってくるため、磁石の幅・外周曲率については、それぞれに異なる磁極形状となるが、磁極の突出は共通する特徴となる。
また、EPS装置では正逆の両方に回転するため、磁極周囲の磁束分布を両回転方向に対称にする必要があり、対称な形状の磁極が用いられる。
磁極形状を対称にしたブラシレスモータの先行技術として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載されたブラシレスモータ1は、ロータ3内にマグネット16を収容固定したIPM型となっている。ロータ3を形成するロータコア15は、ロータシャフト13に固定されたコアボディ31と、コアボディ31から径方向に突設された6個の磁極部32とを有する。磁極部32には、マグネット16が収容固定されるマグネット取付孔33が設けられ、隣接する磁極部32の間には溝状の凹部35が形成されている。磁極部32の周方向両端には、凹部35に臨んで切欠部39が設けられている。凹部35は、隣接する磁極部32の対向する側壁部36と、コアボディ31の外周面である底面部37から構成される。側壁部36の板幅Xはコアプレートの板厚tと略同一〜1.2倍未満となっている。
特許文献1に開示されたブラシレスモータは、トルクリプルとコギングトルクの低減に関して改良の余地が多く残されている。
本発明によるロータコアは、複数の積層板により構成されかつ磁石の収納空間を形成するものであって、前記複数の積層板のうち少なくとも2つは、前記収納空間よりも外周側に形成された基部を有する磁極部と、前記磁極部に接続されたブリッジ部と、を有し、前記磁極部は、周方向に複数設けられており、前記周方向に隣り合う一対の前記磁極部の前記基部の間には、第1空間部が形成されており、前記周方向に隣り合う一対の前記磁極部の中間に位置して前記第1空間部に接するq軸外周部は、前記基部よりも内周側に設けられており、前記基部は、前記第1空間部に接する側面部と、前記側面部よりも外周側に設けられかつ前記側面部に対して前記周方向にそれぞれ突出する2つの突起部と、を有し、前記基部の2つの前記突起部に挟まれた外周面は、半径が異なる複数の円弧で構成されており、前記ブリッジ部は、前記側面部よりも内周側に配置されている。
本発明によるロータは、上記のロータコアと、前記ロータコアに固定された回転シャフトと、前記収納空間に配置された永久磁石と、を備える。
本発明による回転電機は、上記のロータと、複数の巻線を有し、所定のエアギャップを介して前記ロータと対向して配置されたステータと、を備える。
本発明による自動車用電動補機システムは、上記の回転電機を備え、前記回転電機を用いて、電動パワーステアリングまたは電動ブレーキを行う。
本発明によるロータは、上記のロータコアと、前記ロータコアに固定された回転シャフトと、前記収納空間に配置された永久磁石と、を備える。
本発明による回転電機は、上記のロータと、複数の巻線を有し、所定のエアギャップを介して前記ロータと対向して配置されたステータと、を備える。
本発明による自動車用電動補機システムは、上記の回転電機を備え、前記回転電機を用いて、電動パワーステアリングまたは電動ブレーキを行う。
本発明によれば、コギングトルクを十分に低減することができる。
本発明の実施例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1から図4を用いて、本発明の第1の実施形態に係る回転子コアを備えた永久磁石式回転電機1の構成を説明する。図1は、第1の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の回転面内断面図である。図2は、第1の実施形態に係る回転子20の断面図である。図3は、第1の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の断面の磁極付近の拡大図であり、図1の点線で囲ったX部を拡大して示した図である。図4は、第1の実施形態に係る回転子の断面の磁極付近の拡大図であり、図3の回転子の磁極円弧を形成する円を明示した図である。
図1から図4を用いて、本発明の第1の実施形態に係る回転子コアを備えた永久磁石式回転電機1の構成を説明する。図1は、第1の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の回転面内断面図である。図2は、第1の実施形態に係る回転子20の断面図である。図3は、第1の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の断面の磁極付近の拡大図であり、図1の点線で囲ったX部を拡大して示した図である。図4は、第1の実施形態に係る回転子の断面の磁極付近の拡大図であり、図3の回転子の磁極円弧を形成する円を明示した図である。
図1に示すように、本実施形態の永久磁石式回転電機1は、外周側に略環状の固定子10を配置し、内周側に略円柱状の回転子20を配置した、10極60スロット分布巻の永久磁石式回転電機である。固定子10と回転子20の間にはエアギャップ30が設けられている。固定子10は、固定子コア100、コアバック110および複数の巻線140を有しており、エアギャップ30を介して回転子20と対向して配置されている。
固定子10は、例えば次のようにして形成される。まず、電磁鋼板の一体打ち抜きコアを積層したステータコア積層体により、内周側に放射状のティース130を複数形成する。次に、各ティース130に巻線を設置して巻線140を形成した後、図示しないハウジングに焼嵌めまたは圧入して一体化する。このようにして、固定子10が形成される。なお、第1の実施形態では、スロットの周方向幅を外形側で広げて巻線の電線断面積を確保してスロット径方向長さを縮小することにより、固定子内径と回転子外径を大きくした構成になっている。
また、図2に示すように、本実施形態の回転子20は、電磁鋼板を積層した鉄心である回転子コア200と、回転軸となるシャフト300とを有する。回転子コア200の外周には、周方向に10極の磁極部220が設けられている。磁極部220の各々は、固定子10との対向面を形成する磁極外周面の両端に突起部222が設けられるとともに、永久磁石210が収納されるV字形の収納空間212が設けられている。収納空間212には、矩形の永久磁石210が各磁極部220について2個ずつ挿入されて配置されている。
図3に示すように、周方向に隣接する一対の磁極部220の間には、磁極外周面に対して窪んだ形状の第1空間部240が形成されている。第1空間部240と収納空間212の間には、ブリッジ部242が形成されている。なお図3では、収納空間212に収納される2個の永久磁石210の一方を第1永久磁石210a、他方を第2永久磁石210bとして示している。ブリッジ部242は、磁極部220に接続されると共に、第1空間部240の底に位置するq軸方向のコア最外周部244(以下、q軸外周部244と称する)にも接続されている。すなわち、ブリッジ部242は、磁極部220とq軸外周部244とを繋ぐように形成されている。
磁極部220は、収納空間212から外径側に向かって径方向に突出する基部230を有する。基部230は、前述のように、磁極外周面の両端に突起部222を有する。なお図3では、一方の突起部222を第1突起部222a、他方の突起部222を第2突起部222bとして示している。さらに基部230は、ブリッジ部242との接続部分である一対の接続部243と、第1空間部240に接する一対の側面部241とを有している。側面部241は、突起部222(第1突起部222a、第2突起部222b)よりも径方向で内周側にそれぞれ配置されている。すなわち、突起部222は側面部241よりも外周側に設けられており、側面部241に対して周方向に突出している。一方、ブリッジ部242とq軸外周部244は、側面部241よりも径方向で内周側に配置されている。第1空間部240は、突起部222、ブリッジ部242およびq軸外周部244に面している。
q軸外周部244は、周方向に隣接する一対の磁極部220の中間に位置しており、基部230よりも径方向で内周側に設けられている。q軸外周部244は、周方向に隣接する一対の磁極部220にそれぞれ接続されている2つのブリッジ部242の間に挟まれて配置されている。
第1突起部222aと第2突起部222bに挟まれた磁極部220(基部230)の外周面は、複数の円弧221a、221、221bを組み合わせて構成されている。図4に示すように、磁極中央部の円弧221を形成する円402の半径は、磁極両端部に位置する円弧221a、221bを形成する円403の半径よりも大きくなっている。円弧221は、磁極中心角401を有している。磁極部220のピッチ角、すなわち磁極部220の両側に位置するq軸外周部244間の角度を磁極ピッチ角400とすると、この磁極ピッチ角400に対する磁極中心角401の比は、例えば0.45である。この比で規定される範囲で、円弧221により中央側のギャップ磁束密度が形成されるが、端部側への影響を抑制するために、この比は0.5以下とすることが好ましい。
一般的に、回転電機において発生するトルクリプルは、磁石磁界と巻線磁界による回転力の脈動であるため、エアギャップにおける双方の磁界が正弦波状であれば生じない。エアギャップ長の短い埋め込み磁石式の回転電機では、ステータは表面磁石式と同様の構成であるので、巻線に正弦波電流を課した際に生じるステータからの磁界は、エアギャップにおいて正弦波状になる。一方、ロータについては、ステータに近い部分ほどロータコアに磁石磁束が通りやすいため、ロータコアの外周部における磁極形状によっては、ロータからの磁界が正弦波状から外れてしまうことがある。このような場合に、トルクリプルが大きくなりうると考えられる。
例えば、磁極形状が蒲鉾状である場合、磁極端部でパーミアンスが急激に変化し、磁極端部で磁界の通りにくさと通りやすさの変化が極端に生じる。そのため、磁極端部付近のエアギャップの磁界の変化が大きくなり、ロータからの磁界が正弦波状から外れ、トルクリプルが大きくなると考えられる。これは、特にエアギャップ長が短い場合に顕著である。また、磁極端部のブリッジがステータに近い場合にも、ブリッジを通って磁界がエアギャップに出るため、ロータからの磁界が正弦波状から外れ、トルクリプルが大きくなると考えられる。また、q軸方向のコア最外周部がステータに近い場合にも、そこに磁界が通ってしまうため、ロータからの磁界が正弦波状から外れ、トルクリプルが大きくなると考えられる。
ロータからの磁界を正弦波状に近づけるためには、適切な磁極形状を採用することが重要である。しかしながら、磁極円弧の半径や磁極幅は、コギングトルクの低減要求に応じて決まるために変更が難しい。また、高トルク化の要求に応じてエアギャップ長を短くすると、ロータ形状による磁界への影響が増加して、トルクリプルが増加しやすくなる。また、磁石がV字型に埋め込まれた埋め込み磁石式(VIPM)回転電機のように、磁石の極性を有する面の面積を大きく取れる構造の回転電機では、1つの磁極を通過する磁束量が多くなる。そのため、前述のような磁極形状による磁界への影響、すなわち、蒲鉾形状の磁極端部や、磁極端部のブリッジや、q軸方向のコア最外周部がステータに近いことによる磁界への影響が、大きくなると思われる。このため、ロータからの磁界を正弦波状に近づけるには、磁極端部付近および磁極間の空間における形状の工夫が重要と考えられる。
以上の検討から、永久磁石式回転電機におけるトルクリプルの低減には、次の構成の採用が有効であることが確認された。
(1)磁極端部のパーミアンスの急激な変化を抑制するため、磁極端部に突起部を形成する。これにより、突起部の磁気抵抗が大きいことを利用して、磁極端部付近のエアギャップの磁界の変化を緩やかにすることができる。
(2)ブリッジ部をステータから径方向内側に離す。これにより、ブリッジ部を通して磁界がエアギャップに出ることを防止することができる。
(3)q軸方向のコア最外周部をステータから径方向内側に離す。これにより、q軸方向のコア最外周部を通して磁界がエアギャップに出ることを防止することができる。
(4)突起部とブリッジ部の間に側面部を設け、ブリッジ部とq軸方向のコア最外周部を側面部より径方向内側として、これらを突起部から径方向内側に離す。これにより、突起部を通る磁界がブリッジ部とq軸方向のコア最外周部を経由して供給されることを防止することができる。
(1)磁極端部のパーミアンスの急激な変化を抑制するため、磁極端部に突起部を形成する。これにより、突起部の磁気抵抗が大きいことを利用して、磁極端部付近のエアギャップの磁界の変化を緩やかにすることができる。
(2)ブリッジ部をステータから径方向内側に離す。これにより、ブリッジ部を通して磁界がエアギャップに出ることを防止することができる。
(3)q軸方向のコア最外周部をステータから径方向内側に離す。これにより、q軸方向のコア最外周部を通して磁界がエアギャップに出ることを防止することができる。
(4)突起部とブリッジ部の間に側面部を設け、ブリッジ部とq軸方向のコア最外周部を側面部より径方向内側として、これらを突起部から径方向内側に離す。これにより、突起部を通る磁界がブリッジ部とq軸方向のコア最外周部を経由して供給されることを防止することができる。
なお、上記(4)の構成を採用しないと、ブリッジ部またはq軸方向のコア最外周部から突起部を経由した磁界がエアギャップに供給されやすくなる。すると、突起部を通る磁界がブリッジ部またはq軸方向のコア最外周部を通る磁界とともに変動し、ブリッジ部またはq軸方向のコア最外周部からの磁界がエアギャップに供給されるのと同様になるため、トルクリプル低減の障害になる。そのため、上記(4)の構成もトルクリプルの低減に必要となる。
以上の構成により、磁極端部からエアギャップへ通る磁界を、ほぼ基部から突起部を経由する磁界のみとすることができる。その結果、突起部の磁気抵抗が大きいために、磁極端部付近のエアギャップにおけるロータからの磁界がなだらかになり、正弦波状に近づけることが可能になると考えられる。
ここで、ステータの作る磁束密度分布が正弦波からずれている場合、ロータの1磁極が作る磁束密度分布でも、正弦波からずれた状態でトルクリプルが小さい適正分布とすることができる。具体的には、上記(1)〜(4)のような構成を採用して磁極端部形状を工夫することにより、特に磁極端部付近において、エアギャップにおける周方向の磁束密度分布を適正分布に近づけることができると考えられる。
また、磁石磁束量が変わらずに磁極幅が大きくなると、エアギャップにおける磁束密度分布の広がりが周方向に増加する傾向がある。反対に、磁極幅が小さくなると、エアギャップにおける磁束密度分布の広がりが周方向に低減する傾向がある。一方、磁極幅を変えずに磁極円弧の半径が大きくなると、磁極の端部側とステータとの距離が近づくため、エアギャップにおいて磁極中央側の磁束密度分布が周方向に広がり、磁極中心からステータを見込む角度が小さくなる。そのため、磁極端部側の磁束密度分布が周方向に減少する。反対に、磁極円弧の半径が小さくなると、エアギャップにおいて磁極端部側の磁束密度分布が周方向に増加する。このため、磁極幅・磁極円弧半径と上記(1)〜(4)の磁極端部形状について工夫することは、磁極の中央側と端部側のそれぞれにおいてエアギャップの磁束密度分布を適正分布に近づけるために有効であることが分かる。
一方、回転電機において要求されるコギングトルクの大きさは、一般に最大電流時のトルクリプルよりも1桁小さい。このため、磁極幅・磁極円弧半径と上記(1)〜(4)の磁極端部形状においては、突起部を経由する磁束が少ないため、トルクリプルは突起形状の影響を受けにくいが、コギングトルクは突起形状の影響を受けやすい。したがって、磁極幅・磁極円弧半径と上記(1)〜(4)の磁極端部形状について工夫することにより、トルクリプルとコギングトルクの双方の低減が可能であることが分かる。
回転電機では前述のように磁石コストの低減化が必要であり、磁石使用量を削減するためにエアギャップ長を短く制限することが求められる。そのため、磁極端部形状の工夫のみではエアギャップにおける磁束密度の分布が適正分布に近づかない。以下では、こうした場合でもエアギャップの磁束密度の分布を適正分布に近づける工夫について、図5と図6を用いて説明する。
図5は、トルクリプルとコギングトルクの磁石磁束密度による変化を説明する図である。図5では、磁極外周面が1つの円弧で構成される場合における磁場解析結果を示しており、横軸は磁石磁束密度を、縦軸はトルクリプルとコギングトルクの大きさを表している。なお図5では、磁場解析結果で得られたトルク波形の両振幅値をコギングトルクの値としている。このコギングトルクの正負は、ロータの回転開始後にトルク波形が振れる方向に合わせている。すなわち、図5に示すコギングトルクの絶対値により、コギングトルクの大きさが表される。また、図5の磁場解析結果において、磁極外周面の円弧の半径は、図4の円402と円403の半径の平均値としている。
図6は、規格化ギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図6では、図5と同様に磁極外周面が1つの円弧で構成される場合において、ステータの巻線に流れる電流を0として磁石磁束密度を1.2T,1.41T,1.48T,1.6Tと変化させたときのエアギャップにおける磁束密度の解析結果をそれぞれ示しており、横軸はロータの回転角(機械角)を、縦軸は規格化ギャップ磁束密度を表している。なお、図6における横軸の原点は、ロータの磁極ピッチの端線がステータのティース中央を通る場合に対応している。すなわち、前述の図3は、ロータ中心点とq軸外周部244を結ぶ直線がティース130の中央を通っているため、図6の回転角=0に対応している。また、規格化ギャップ磁束密度とは、エアギャップの磁束密度(ギャップ磁束密度)をそのピーク値を1として規格化した値である。これにより、図6では、磁極ピッチに対応する回転角の範囲内について、回転角ごとの規格化ギャップ磁束密度の周方向分布を表している。
図6では、固定子のスロット開口部でのパーミアンス低下によってぎざぎざの高調波成分が重畳されているものの、規格化ギャップ磁束密度の周方向分布は全体として、ほぼ破線に示すSIN関数分布に沿った分布となっている。これにより、磁極形状が変わらずに、磁石磁界の強さ、すなわち磁石磁束量が増加すると、エアギャップにおける磁束密度が増加し、それと同時に、周方向の磁束分布の広がりが増加する傾向があることが分かる。また反対に、磁石磁束量が減少すると、エアギャップにおける磁束密度と周方向の磁束分布の広がりがともに減少する傾向があることが分かる。
一方図5では、磁石磁束密度が1.48Tのときに、トルクリプルとコギングトルクの双方が小さくなることを示している。ここで、ある磁石磁束量と磁極形状において、トルクリプルとコギングトルクの双方が小さいとすると、このときのエアギャップの磁束密度分布(ギャップ磁束密度分布)は固定子に対応する適正分布になっていると考えられる。しかし、磁石磁束量の値が変化すると、ギャップ磁束密度分布が適正分布から外れてしまい、コギングトルクとトルクリプルが大きくなると考えられる。さらに、適正分布の状態から磁石磁束量のずれが大きくなると、磁極幅・磁極円弧半径と磁極端部形状の工夫のみでは、ギャップ磁束密度分布を適正分布に近づけにくくなるため、トルクリプルとコギングトルク双方を小さくできないことが考えられる。
また図6では、磁極形状と磁石磁束量が変わらずにエアギャップの長さが減少すると、ギャップ磁束密度が増加するとともに、ギャップ磁束密度分布の周方向の広がりも変化する。ここで、磁極円弧半径がロータの半径に近く、磁極中央側と磁極端側のエアギャップ長の差が小さいときには、図6に示される現象から類推して、ギャップ磁束密度分布は周方向に広がる傾向になると考えられる。一方、磁極円弧半径がロータの半径よりも大幅に小さく、磁極中央側に対して磁極端側のエアギャップ長の差が大きいときには、ギャップ磁束密度分布は周方向に広がりにくく、磁極中央付近に集まる傾向になると考えられる。
以上説明したように、磁石磁束量とエアギャップ長を適切に選ぶことは、ギャップ磁束密度分布の適正化において有効である。しかし、前述のように磁石使用量を削減して低コスト化を図るために、エアギャップ長を短く制限して磁石磁界の強さを限定することが求められる場合がある。このときには、ギャップ磁束密度分布が適正分布から大きく離れている場合が考えられる。具体的には、磁極端側における周方向のギャップ磁束密度分布については、前述の(1)〜(4)で説明した磁極端部形状の工夫によって適正分布に近づくと思われるが、磁極中央側においては、磁極幅と磁極円弧半径を調節したとしても、周方向のギャップ磁束密度分布が適正分布に十分に近づかないことが考えられる。このため、磁極中央側におけるギャップ磁束密度分布を適切に変化させて適正分布に近づける工夫が必要になる。
以上の検討から、永久磁石式回転電機におけるトルクリプルとコギングトルク双方の低減には、前述の(1)〜(4)に加えて、次の構成(5)の採用が有効であることが確認された。
(5)磁極両端部の突起部に挟まれた磁極部の外周面は、半径が異なる複数の円弧で構成される。
(5)磁極両端部の突起部に挟まれた磁極部の外周面は、半径が異なる複数の円弧で構成される。
例えば、磁極中央側の外周面では単一円弧の場合よりも大半径の円弧を使用し、磁極端側の外周面では小半径の円弧を使用することが考えられる。この場合、磁極中央部の周囲でエアギャップ長が減少するため、ギャップ磁束密度は磁極中央部の周囲で増加する。これにより、エアギャップ全体の磁石磁束量が変化しない場合、すなわち実効的に1磁極当たりのエアギャップ長に変化が無い場合は、磁極端部と磁極中央部の磁束がともに減少する。その結果、図6に示した規格化ギャップ磁束密度分布は、磁極中央部の周囲で増加することになる。一方、実効的エアギャップ長が変化する場合は、それによってエアギャップの磁石磁束量が変化することで、対応する規格化ギャップ磁束密度分布が図6に示されるように重畳される。このようなギャップ磁束密度分布の変化は、ギャップ磁束密度分布を適正化する際に利用できると考えられる。
また、磁極中央側の外周面では単一円弧の場合よりも小半径の円弧を使用し、磁極端側の外周面では大半径の円弧を使用することも考えられる。この場合、磁極中央部の周囲でエアギャップ長が増加するため、ギャップ磁束密度は磁極中央部の周囲で減少する。これにより、エアギャップ全体の磁石磁束量が変化しない場合、すなわち実効的に1磁極当たりのエアギャップ長に変化が無い場合は、磁極端部あるいは磁極中央部の磁束が増加する。その結果、図6に示した規格化ギャップ磁束密度分布は、磁極中央部の周囲で減少することになる。一方、実効的エアギャップ長が変化する場合は、それによってエアギャップの磁石磁束量が変化することで、対応する規格化磁束密度分布が図6に示されるように重畳される。このようなギャップ磁束密度分布の変化は、ギャップ磁束密度分布を適正化する際に利用できると考えられる。
なお、上記のようなギャップ磁束密度分布の変化は、磁極全体における中央側の磁極円弧の占有率、すなわち磁極ピッチ角と磁極中央側の外周面を構成する円弧のなす角との比に影響される。この占有率が約50%以下であることは、端部側の磁極円弧の影響力を確保して、ギャップ磁束密度分布を適正化する際に重要である。
図1〜図4で説明した本実施形態の永久磁石式回転電機1の構成は、以上の検討結果を踏まえて決定されたものである。すなわち、側面部241の存在により、ブリッジ部242とq軸外周部244が突起部222(第1突起部222a、第2突起部222b)に近づかないように配置されている。これにより、永久磁石210(第1永久磁石210a、第2永久磁石210b)により生じた磁界がブリッジ部242もしくはq軸外周部244を経由して突起部222に供給されにくくなっている。その結果、磁極部220からエアギャップ30へ通る磁界は、ほぼ基部230から突起部222を経由する磁界のみとなる。したがって、突起部222の磁気抵抗が大きいために、磁極部220付近のエアギャップ30における回転子20からの磁束密度分布がなだらかになり、ギャップ磁束密度分布を適正分布に近づけることが可能になる。また、第1突起部222aと第2突起部222bに挟まれた磁極部220の外周面は、複数の円弧221a、221、221bで構成されている。これにより、エアギャップ30における磁束を磁極部220の中央部周囲で増加させ、ギャップ磁束密度分布を適正分布に近づけることが可能になる。
磁極中央部の円弧221は、磁極中心角401を有している。この磁極中心角401の磁極ピッチ角400に対する比、すなわち前述の占有率は、本実施形態では0.45とした。この比で規定される範囲内で、磁極部220の中央部分の外周面を円弧221で構成することにより、磁極部220の中央側のエアギャップ30において適正なギャップ磁束密度分布が形成される。なお、円弧221a、221bによるギャップ磁束密度分布への影響を確保するために、この比は0.5以下とすることが好ましい。一方、磁極部220の外周面のうち円弧221以外の部分を、円弧221とは異なる半径の円弧221a、221bでそれぞれ構成することにより、磁極部220の端部側のエアギャップ30においても適正なギャップ磁束密度分布が形成される。すなわち、円弧221を構成する円402の半径は、円弧221a、221bを構成する円403の半径よりも大きくなっており、磁極部220の中央部の周囲において磁束を増加する効果を有する。これにより、ギャップ磁束密度分布を全体的に適正化している。
上記のような構成は、エアギャップ長を短縮できるIPM回転電機において好適である。特に、本実施形態の永久磁石式回転電機1のように、1つの磁極を通過する磁束量を多くできるVIPM構造の回転電機において好適である。
以上で説明したような形状の磁極部220および第1空間部240を用いることにより、トルクリプルの低減に優れたロータコアである回転子コア200と、それを用いた回転子20および永久磁石式回転電機1とを得ることができる。
本実施形態の永久磁石式回転電機1の特性を、図7、図8および図9を用いて以下に説明する。本実施形態では、エアギャップ長を0.5mmとし、磁石磁束密度を1.41Tとした場合に、図1から図4で説明した複数円弧の磁極形状によるギャップ磁束密度分布を適正分布とする例を説明する。なお、従来例のように単一円弧の磁極形状とした場合には、前述の図5で示した磁場解析結果のように、磁石磁束密度が1.48Tのときにギャップ磁束密度分布が適正分布となる。一方、磁石磁束密度が1.41Tのときには、トルクリプルが1%程度、コギングトルクの絶対値が30mNm以上と大きく、ギャップ磁束密度分布が適正分布とはならない。
図7は、本発明の第1の実施形態に係るギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図7では、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.48Tの場合(黒色破線)および1.41Tの場合(灰色実線)と、図1から図4で説明した複数円弧による磁極形状の本実施形態において磁石磁束密度が1.41Tの場合(黒色実線)とについて、エアギャップ30における磁束密度の解析結果をそれぞれ示している。
図8は、本発明の第1の実施形態に係る規格化ギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図8では、図7と同じ各場合について、規格化ギャップ磁束密度分布をSIN関数で除した曲線を示している。これにより、規格化ギャップ磁束密度分布の周方向における増減が明示される。
図7および図8において灰色実線でそれぞれ示したように、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.41Tの場合には、黒色破線で示した磁石磁束密度が1.48Tである適正分布の場合と比べて、ギャップ磁束密度の値が全体的に小さくなっている。こうした傾向は、図8から分かるように、特に磁極端部側において顕著である。また、周方向のギャップ磁束密度の分布幅が相対的に狭くなっている。一方、図7において黒色実線で示したように、複数円弧による磁極形状の本実施形態におけるギャップ磁束密度の値は、灰色実線で示した従来例の磁石磁束密度が1.41Tの場合と比べて、磁極中央部、すなわち回転角が18°の付近では小さくなっており、磁極中央部の周囲、すなわち回転角が6-15°の範囲では大きくなっている。これは、本実施形態では前述のように、磁極中央側の外周面を形成する円弧半径、すなわち円402の半径が従来例よりも大きいために、磁極中央部の周囲でエアギャップ長が減少し、その部分のギャップ磁束密度が増加したためである。また、磁極端部、すなわち回転角が0-6°の範囲では、本実施形態によるギャップ磁束密度の値が小さくなっている。これは、磁極端部側の外周面を形成する円弧半径、すなわち円403の半径が従来例よりも小さいために、この部分でのエアギャップ長が有意に減少することはなく、エアギャップ長が減少した磁極中央部の周囲に磁束が移るためである。その結果、図8に示すように、本実施形態による規格化ギャップ磁束密度は、回転角が8-18°の範囲では適正分布よりも大きく、回転角が0-6°の範囲では従来例の磁石磁束密度が1.41Tの場合よりもやや小さくなっている。このように、ギャップ磁束密度が適正分布よりも大きい角度範囲と適正分布よりも小さい角度範囲とを形成することによって、ギャップ磁束密度分布を全体として適正分布に近づけることができ、その結果、トルクリプルとコギングトルクを低減できると考えられる。
なお、本実施形態では、製造の容易さに鑑みて、できるだけ少数の円弧により磁極部の外周面を構成してギャップ磁束密度分布を適正分布に近づける例を説明したが、同様の効果を得られるのであれば、磁極部の外周面を構成する円弧の数はこれに限定されない。例えば、ギャップ磁束密度分布をより一層適正分布に近づけるために、半径が異なる3種類以上の円弧を用いて磁極部の外周面を構成することも可能である。すなわち、磁極両端部の突起部に挟まれた磁極部の外周面を、それぞれ半径が異なる任意の種類の円弧を用いて構成することにより、ギャップ磁束密度分布を適正分布に近づけることができる。
図9は、本発明の第1の実施形態に係るトルクリプルとコギングトルクを説明する図である。図9では、図7および図8でそれぞれ示した各場合、すなわち、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.48Tの場合(適正分布例1)および1.41Tの場合(比較例1)と、複数円弧による磁極形状の本実施形態において磁石磁束密度が1.41Tの場合(実施例1)について、磁場解析結果から求めたコギングトルク、トルクリプルおよびトルク比をそれぞれ示している。図9に示すように、本実施形態では複数円弧による磁極形状とすることで、磁石磁束密度が同じ1.41Tである比較例1と比べて、トルクを減少せずにトルクリプルを0.97%から0.9%に減少でき、さらに、コギングトルクを31mNmから0.5mNmに大きく低減できることが分かる。その結果、ギャップ磁束密度分布が適正分布である適正分布例1と比べても、トルクリプルの増加を抑えつつ、コギングトルクを低減できることが分かる。
これにより、本実施形態の構成によれば、トルクリプルとコギングトルクを十分に小さくできることが分かる。
なお、本実施形態の永久磁石式回転電機1をEPS装置に用いることで、車室内に伝搬する振動や騒音を抑制できる。また、その他の自動車用電動補機装置、たとえば電動ブレーキを行う自動車用電動補機装置に適用することでも、振動や騒音を抑制することが可能である。さらには、本実施形態の永久磁石式回転電機1の採用は自動車分野に限定されず、低振動化が好ましい産業用の永久磁石式回転電機全般にも適用可能である。
(第2の実施形態)
次に、図10から図13を用いて、本発明の第2の実施形態に係る回転子コアを備えた永久磁石式回転電機1の構成を説明する。図10は、第2の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の回転面内断面図であり、第1の実施形態で説明した図1と対応している。図11は、第2の実施形態に係る回転子20の断面図であり、第1の実施形態で説明した図2と対応している。図12は、第2の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の断面の磁極付近の拡大図であり、図10の点線で囲ったX部を拡大して示した図である。図12は、第1の実施形態で説明した図3と対応している。図13は、第2の実施形態に係る回転子の断面の磁極付近の拡大図であり、図12の回転子の磁極円弧を構成する円を明示した図である。図13は、第1の実施形態で説明した図4と対応している。なお、第1の実施形態と共通の部分は説明を一部省略する。
次に、図10から図13を用いて、本発明の第2の実施形態に係る回転子コアを備えた永久磁石式回転電機1の構成を説明する。図10は、第2の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の回転面内断面図であり、第1の実施形態で説明した図1と対応している。図11は、第2の実施形態に係る回転子20の断面図であり、第1の実施形態で説明した図2と対応している。図12は、第2の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の断面の磁極付近の拡大図であり、図10の点線で囲ったX部を拡大して示した図である。図12は、第1の実施形態で説明した図3と対応している。図13は、第2の実施形態に係る回転子の断面の磁極付近の拡大図であり、図12の回転子の磁極円弧を構成する円を明示した図である。図13は、第1の実施形態で説明した図4と対応している。なお、第1の実施形態と共通の部分は説明を一部省略する。
本実施形態の永久磁石式回転電機1における磁極部220は、図10から図13に示すような構造を有している。なお、本実施形態では、断面が略矩形の電線が巻線140として各スロットに配置される。そのため、各スロットは略矩形で径方向に細長い形状を有しており、固定子10の内径と回転子20の外径が第1の実施形態よりも小さい構造となっている。また、第1の実施形態と比べて、磁石量は増加している。
本実施形態の構造においても、第1の実施形態と同様に、第1突起部222aと第2突起部222bに挟まれた磁極部220(基部230)の外周面は、複数の円弧221a、221、221bを組み合わせて構成されている。ただし、これらの形状が第1の実施形態とは異なっている。具体的には、図13に示すように、磁極中央部の円弧221を形成する円402の半径は、磁極両端部に位置する円弧221a、221bを形成する円403の半径よりも小さくなっている。すなわち、円402と円403の半径は、第1の実施形態とは逆の大小関係になっている。このような磁極形状は、磁極中央部の周囲で磁束を減らす効果を有する。
図14は、トルクリプルとコギングトルクの磁石磁束密度による変化を説明する図である。図14では、磁極外周面が1つの円弧で構成される場合における磁場解析結果を示しており、横軸は磁石磁束密度を、縦軸はトルクリプルとコギングトルクの大きさを表している。なお図14では、磁場解析結果で得られたトルク波形の両振幅値をコギングトルクの値としている。このコギングトルクの正負は、第1の実施形態で説明した図5と同様に、ロータの回転開始後にトルク波形が振れる方向に合わせている。すなわち、図14に示すコギングトルクの絶対値により、コギングトルクの大きさが表される。また、図14の磁場解析結果において、磁極外周面の円弧の半径は、図13の円402と円403の半径の平均値としている。
図15は、規格化ギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図15では、図14と同様に磁極外周面が1つの円弧で構成される場合において、ステータの巻線に流れる電流を0として磁石磁束密度を1.2T,1.38T,1.6Tと変化させたときのエアギャップにおける磁束密度の解析結果をそれぞれ示しており、横軸はロータの回転角(機械角)を、縦軸は規格化ギャップ磁束密度を表している。なお、図15における横軸の原点は、第1の実施形態で説明した図6と同様に、ロータの磁極ピッチの端線がステータのティース中央を通る場合に対応している。すなわち、前述の図12は、ロータ中心点とq軸外周部244を結ぶ直線がティース130の中央を通っているため、図15の回転角=0に対応している。
図15では、第1の実施形態で説明した図6と同様に、磁極形状が変わらずに、磁石磁界の強さ、すなわち磁石磁束量が増加すると、周方向の磁束分布の広がりが増加する傾向があることが分かる。一方図14では、磁石磁束密度が1.38Tのときに、トルクリプルとコギングトルクの双方が小さくなることを示している。したがって、図15において、磁石磁束密度が1.38Tのときの規格化ギャップ磁束密度分布が適正分布になっていると考えられる。
本実施形態の永久磁石式回転電機1の特性を、図16、図17および図18を用いて以下に説明する。本実施形態では、エアギャップ長を0.5mmとし、磁石磁束密度を1.5Tとした場合に、図10から図13で説明した複数円弧の磁極形状によるギャップ磁束密度分布を適正分布とする例を説明する。なお、従来例のように単一円弧の磁極形状とした場合には、前述の図14で示した磁場解析結果のように、磁石磁束密度が1.38Tのときにギャップ磁束密度分布が適正分布となる。一方、磁石磁束密度が1.5Tのときには、トルクリプルが1%程度、コギングトルクの絶対値が45mNm以上と大きく、ギャップ磁束密度分布が適正分布とはならない。
図16は、本発明の第2の実施形態に係るギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図16では、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.38Tの場合(黒色破線)および1.5Tの場合(灰色実線)と、図10から図13で説明した複数円弧による磁極形状の本実施形態において磁石磁束密度が1.5Tの場合(黒色実線)とについて、エアギャップ30における磁束密度の解析結果をそれぞれ示している。
図17は、本発明の第2の実施形態に係る規格化ギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図17では、図16と同じ各場合について、規格化ギャップ磁束密度分布をSIN関数で除した曲線を示している。これにより、規格化ギャップ磁束密度分布の周方向における増減が明示される。
図16および図17において灰色実線でそれぞれ示したように、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.5Tの場合には、黒色破線で示した磁石磁束密度が1.38Tである適正分布の場合と比べて、ギャップ磁束密度の値が全体的に大きくなっている。こうした傾向は、図17から分かるように、特に磁極端部側において顕著である。また、周方向のギャップ磁束密度の分布幅が相対的に広くなっている。一方、図16において黒色実線で示したように、複数円弧による磁極形状の本実施形態におけるギャップ磁束密度の値は、灰色実線で示した従来例の磁石磁束密度が1.5Tの場合と比べて、磁極中央部およびその周囲、すなわち回転角が1.5-18°の範囲では小さくなっている。これは、本実施形態では前述のように、磁極中央側の外周面を形成する円弧半径、すなわち円402の半径が従来例よりも小さいために、磁極中央部の周囲でエアギャップ長が増加し、その部分のギャップ磁束密度が減少したためである。また、磁極端部、すなわち回転角が0-1.5°の範囲では、本実施形態によるギャップ磁束密度の値が大きくなっている。これは、磁極端部側の外周面を形成する円弧半径、すなわち円403の半径が従来例よりも大きいために、磁極端部でエアギャップ長が減少し、その部分のギャップ磁束密度が増加したためである。その結果、図17に示すように、本実施形態による規格化ギャップ磁束密度は、回転角が15-18°の範囲では適正分布よりも小さく、回転角が13-15°の範囲では適正分布よりも大きく、回転角が9-13°の範囲では適正分布よりも小さく、回転角が6-9°の範囲では適正分布よりも大きく、回転角が3-6°の範囲では適正分布よりも小さく、回転角が0-3°の範囲では適正分布よりも大きくなっている。このように、ギャップ磁束密度が適正分布よりも大きい角度範囲と適正分布よりも小さい角度範囲とを形成することによって、ギャップ磁束密度分布を全体として適正分布に近づけることができ、その結果、トルクリプルとコギングトルクを低減できると考えられる。
なお、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、製造の容易さに鑑みて、できるだけ少数の円弧により磁極部の外周面を構成してギャップ磁束密度分布を適正分布に近づける例を説明したが、同様の効果を得られるのであれば、磁極部の外周面を構成する円弧の数はこれに限定されない。例えば、ギャップ磁束密度分布をより一層適正分布に近づけるために、半径が異なる3種類以上の円弧を用いて磁極部の外周面を構成することも可能である。すなわち、磁極両端部の突起部に挟まれた磁極部の外周面を、それぞれ半径が異なる任意の種類の円弧を用いて構成することにより、ギャップ磁束密度分布を適正分布に近づけることができる。
図18は、本発明の第2の実施形態に係るトルクリプルとコギングトルクを説明する図である。図18では、図16および図17でそれぞれ示した各場合、すなわち、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.38Tの場合(適正分布例2)および1.5Tの場合(比較例2)と、複数円弧による磁極形状の本実施形態において磁石磁束密度が1.5Tの場合(実施例2)について、磁場解析結果から求めたコギングトルク、トルクリプルおよびトルク比をそれぞれ示している。図18に示すように、本実施形態では複数円弧による磁極形状とすることで、磁石磁束密度が同じ1.5Tである比較例2と比べて、トルクを減少せずにトルクリプルを同様の1%程度に抑えることができ、さらに、コギングトルクを46mNmから2mNmに大きく低減できることが分かる。その結果、ギャップ磁束密度分布が適正分布である適正分布例2と比べても、トルクリプルの増加を抑えつつ、コギングトルクを低減できることが分かる。
これにより、本実施形態の構成によれば、トルクリプルとコギングトルクを十分に小さくできることが分かる。
なお、本実施形態についても第1の実施形態と同様に、本実施形態の永久磁石式回転電機1をEPS装置に用いることで、車室内に伝搬する振動や騒音を抑制できる。また、その他の自動車用電動補機装置、たとえば電動ブレーキを行う自動車用電動補機装置に適用することでも、振動や騒音を抑制することが可能である。さらには、本実施形態の永久磁石式回転電機1の採用は自動車分野に限定されず、低振動化が好ましい産業用の永久磁石式回転電機全般にも適用可能である。
(第3の実施形態)
次に、図19から図22を用いて、本発明の第3の実施形態に係る回転子コアを備えた永久磁石式回転電機1の構成を説明する。図19は、第3の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の回転面内断面図であり、第1の実施形態で説明した図1と対応している。図20は、第3の実施形態に係る回転子20の断面図であり、第1の実施形態で説明した図2と対応している。図21は、第3の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の断面の磁極付近の拡大図であり、図19の点線で囲ったX部を拡大して示した図である。図21は、第1の実施形態で説明した図3と対応している。図22は、第3の実施形態に係る回転子の断面の磁極付近の拡大図であり、図21の回転子の磁極円弧を構成する円を明示した図である。図22は、第1の実施形態で説明した図4と対応している。なお、第1の実施形態と共通の部分は説明を一部省略する。
次に、図19から図22を用いて、本発明の第3の実施形態に係る回転子コアを備えた永久磁石式回転電機1の構成を説明する。図19は、第3の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の回転面内断面図であり、第1の実施形態で説明した図1と対応している。図20は、第3の実施形態に係る回転子20の断面図であり、第1の実施形態で説明した図2と対応している。図21は、第3の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の断面の磁極付近の拡大図であり、図19の点線で囲ったX部を拡大して示した図である。図21は、第1の実施形態で説明した図3と対応している。図22は、第3の実施形態に係る回転子の断面の磁極付近の拡大図であり、図21の回転子の磁極円弧を構成する円を明示した図である。図22は、第1の実施形態で説明した図4と対応している。なお、第1の実施形態と共通の部分は説明を一部省略する。
本実施形態の永久磁石式回転電機1における磁極部220は、図19から図22に示すような構造を有している。なお、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、固定子10の内径と回転子20の外径が第1の実施形態よりも小さい構造となっており、第1の実施形態と比べて磁石量は増加している。ただし本実施形態では、第2の実施形態と比べて、回転子20における磁極部220の形状が細部で異なっている。具体的には、図21および図22に示すように、本実施形態では磁極外周面の両端にある第1突起部222aおよび第2突起部222bの角部がいずれもR形状になっている。
本実施形態の構造においても、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、第1突起部222aと第2突起部222bに挟まれた磁極部220(基部230)の外周面は、複数の円弧221a、221、221bを組み合わせて構成されている。図22に示すように、磁極中央部の円弧221を形成する円402の半径は、磁極両端部に位置する円弧221a、221bを形成する円403の半径よりも大きくなっている。すなわち、円402と円403の半径は、第1の実施形態とは同じで第2の実施形態とは逆の大小関係になっている。このような磁極形状は、磁極端部では磁束を減らし、磁束中央部では磁束を増加する効果を有する。
図23は、トルクリプルとコギングトルクの磁石磁束密度による変化を説明する図である。図23では、磁極外周面が1つの円弧で構成される場合における磁場解析結果を示しており、横軸は磁石磁束密度を、縦軸はトルクリプルとコギングトルクの大きさを表している。なお図23では、磁場解析結果で得られたトルク波形の両振幅値をコギングトルクの値としている。このコギングトルクの正負は、第1の実施形態で説明した図5と同様に、ロータの回転開始後にトルク波形が振れる方向に合わせている。すなわち、図23に示すコギングトルクの絶対値により、コギングトルクの大きさが表される。また、図23の磁場解析結果において、磁極外周面の円弧の半径は、図22の円402と円403の半径の平均値としている。ここで、本実施形態の固定子10を製造する際には、電磁鋼板の打抜きやハウジングへの焼嵌め等が行われることにより、固定子コア100を形成する電磁鋼板の一部において磁気特性が劣化し、これに応じて固定子10に磁気特性劣化が生じる。図23では、磁場解析の際に、打抜き辺とコアバックに相当する部分に劣化BH曲線を用いることで、こうした磁気特性劣化の影響を反映させている。
図24は、規格化ギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図24では、図23と同様に磁極外周面が1つの円弧で構成される場合において、ステータの巻線に流れる電流を0として磁石磁束密度を1.2T,1.37T,1.43T,1.6Tと変化させたときのエアギャップにおける磁束密度の解析結果をそれぞれ示しており、横軸はロータの回転角(機械角)を、縦軸は規格化ギャップ磁束密度を表している。なお、図24における横軸の原点は、第1の実施形態で説明した図6と同様に、ロータの磁極ピッチの端線がステータのティース中央を通る場合に対応している。すなわち、前述の図21は、ロータ中心点とq軸外周部244を結ぶ直線がティース130の中央を通っているため、図24の回転角=0に対応している。
図24では、第1の実施形態で説明した図6と同様に、磁極形状が変わらずに、磁石磁界の強さ、すなわち磁石磁束量が増加すると、周方向の磁束分布の広がりが増加する傾向があることが分かる。一方図25では、磁石磁束密度が1.43Tのときにはコギングトルクが小さくなるが、トルクリプルは1%を少し超える程度であることを示している。このトルクリプルの増加は、前述のような固定子の磁気特性劣化による磁気飽和が原因と思われるため、磁石磁束が減少することで改善されると予想される。したがって、図24において、磁石磁束密度が1.43Tのときの規格化ギャップ磁束密度分布が適正分布になっていると考えられる。
本実施形態の永久磁石式回転電機1の特性を、図25、図26および図27を用いて以下に説明する。本実施形態では、エアギャップ長を0.5mmとし、磁石磁束密度を1.37Tとした場合に、図19から図22で説明した複数円弧の磁極形状によるギャップ磁束密度分布を適正分布とする例を説明する。なお、従来例のように単一円弧の磁極形状とした場合には、前述の図23で示した磁場解析結果のように、磁石磁束密度が1.43Tのときにギャップ磁束密度分布が適正分布となる。一方、磁石磁束密度が1.37Tのときには、トルクリプルが1%程度、コギングトルクの絶対値が14mNm以上と大きく、ギャップ磁束密度分布が適正分布とはならない。
図25は、本発明の第3の実施形態に係るギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図25では、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.43Tの場合(黒色破線)および1.37Tの場合(灰色実線)と、図19から図22で説明した複数円弧による磁極形状の本実施形態において磁石磁束密度が1.37Tの場合(黒色実線)とについて、エアギャップ30における磁束密度の解析結果をそれぞれ示している。
図26は、本発明の第3の実施形態に係る規格化ギャップ磁束密度分布の変化を説明する図である。図26では、図25と同じ各場合について、規格化ギャップ磁束密度分布をSIN関数で除した曲線を示している。これにより、規格化ギャップ磁束密度分布の周方向における増減が明示される。
図25および図26において灰色実線でそれぞれ示したように、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.37Tの場合には、黒色破線で示した磁石磁束密度が1.43Tである適正分布の場合と比べて、ギャップ磁束密度の値が全体的に小さくなっている。こうした傾向は、図26から分かるように、特に磁極端部側において顕著である。また、周方向のギャップ磁束密度の分布幅が相対的に狭くなっている。一方、図25において黒色実線で示したように、複数円弧による磁極形状の本実施形態におけるギャップ磁束密度の値は、灰色実線で示した従来例の磁石磁束密度が1.37Tの場合と比べて、磁極中央部、すなわち回転角が13.8-18°の範囲では小さくなっており、磁極中央部の周囲、すなわち回転角が5-13.8°の範囲では大きくなっている。これは、本実施形態では前述のように、磁極中央側の外周面を形成する円弧半径、すなわち円402の半径が従来例よりも大きいために、磁極中央部の周囲でエアギャップ長が減少し、その部分のギャップ磁束密度が増加したためである。また、磁極端部、すなわち回転角が2-5°の範囲では、本実施形態によるギャップ磁束密度の値が小さくなっている。これは、磁極端部側の外周面を形成する円弧半径、すなわち円403の半径が従来例よりも小さいために、この部分でのエアギャップ長が有意に減少することはなく、エアギャップ長が減少した磁極中央部の周囲に磁束が移るためである。その結果、図26に示すように、本実施形態による規格化ギャップ磁束密度は、回転角が15-18°の範囲では適正分布よりもやや大きく、回転角が13-15°の範囲では適正分布よりもやや小さく、回転角が8.7-13°の範囲では適正分布よりも大きく、回転角が0-8.7°の範囲では適正分布よりも小さくなっている。このように、ギャップ磁束密度が適正分布よりも大きい角度範囲と適正分布よりも小さい角度範囲とを形成することによって、ギャップ磁束密度分布を全体として適正分布に近づけることができ、その結果、トルクリプルとコギングトルクを低減できると考えられる。
なお、本実施形態でも第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、製造の容易さに鑑みて、できるだけ少数の円弧により磁極部の外周面を構成してギャップ磁束密度分布を適正分布に近づける例を説明したが、同様の効果を得られるのであれば、磁極部の外周面を構成する円弧の数はこれに限定されない。例えば、ギャップ磁束密度分布をより一層適正分布に近づけるために、半径が異なる3種類以上の円弧を用いて磁極部の外周面を構成することも可能である。すなわち、磁極両端部の突起部に挟まれた磁極部の外周面を、それぞれ半径が異なる任意の種類の円弧を用いて構成することにより、ギャップ磁束密度分布を適正分布に近づけることができる。
図27は、本発明の第3の実施形態に係るトルクリプルとコギングトルクを説明する図である。図27では、図25および図26でそれぞれ示した各場合、すなわち、単一円弧による磁極形状の従来例において磁石磁束密度が1.43Tの場合(適正分布例3)および1.37Tの場合(比較例3)と、複数円弧による磁極形状の本実施形態において磁石磁束密度が1.37Tの場合(実施例3)について、磁場解析結果から求めたコギングトルク、トルクリプルおよびトルク比をそれぞれ示している。図27に示すように、本実施形態では複数円弧による磁極形状とすることで、磁石磁束密度が同じ1.37Tである比較例3と比べて、トルクを減少せずにトルクリプルを1.09%から0.98%に減少でき、さらに、コギングトルクを14mNmから2.3mNmに大きく低減できることが分かる。その結果、ギャップ磁束密度分布が適正分布である適正分布例3と比べても、コギングトルクの増加を抑えつつ、トルクリプルを低減できることが分かる。
これにより、本実施形態の構成によれば、トルクリプルとコギングトルクを十分に小さくできることが分かる。
なお、本実施形態についても第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、本実施形態の永久磁石式回転電機1をEPS装置に用いることで、車室内に伝搬する振動や騒音を抑制できる。また、その他の自動車用電動補機装置、たとえば電動ブレーキを行う自動車用電動補機装置に適用することでも、振動や騒音を抑制することが可能である。さらには、本実施形態の永久磁石式回転電機1の採用は自動車分野に限定されず、低振動化が好ましい産業用の永久磁石式回転電機全般にも適用可能である。
以上説明したように、本発明の各実施形態による回転子コア200の構成は、従来の構成と比較して、トルクリプル、コギングトルクの何れの面でも優れており、効果のあることが示された。すなわち、各実施形態で説明した永久磁石式回転電機1の構造は、トルクリプルとコギングトルクの低減に有効な構造である。
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)回転子コア200は、複数の積層板により構成されかつ永久磁石210の収納空間212を形成する。回転子コア200における複数の積層板のうち少なくとも2つは、収納空間212よりも外周側に形成された基部230を有する磁極部220と、磁極部220に接続されたブリッジ部242または242bとを有する。磁極部220は、周方向に複数設けられており、周方向に隣り合う一対の磁極部220の基部230の間には、第1空間部240が形成されている。周方向に隣り合う一対の磁極部220の中間に位置して第1空間部240に接するq軸外周部244は、基部230よりも内周側に設けられている。基部230は、第1空間部240に接する側面部241と、側面部241よりも外周側に設けられかつ側面部241に対して周方向にそれぞれ突出する2つの突起部222、すなわち第1突起部222aおよび第2突起部222bとを有する。基部230の第1突起部222aおよび第2突起部222bに挟まれた外周面は、半径が異なる複数の円弧221a、221、221bで構成されている。ブリッジ部242、242bは、側面部241よりも内周側に配置されている。このようにしたので、コギングトルクを十分に低減することができる。
(2)第1、第3の実施形態では、基部230の外周面を構成する複数の円弧は、外周面の周方向中央側を構成する円弧221と、外周面の周方向端部側を構成する円弧221aおよび221bとを含み、円弧221の半径は、円弧221aおよび221bの半径よりも大きい。このようにしたので、磁極部220の中央部の周囲において磁束を増加させ、ギャップ磁束密度分布を全体的に適正化できるため、コギングトルクを低減することが可能である。
(3)第2の実施形態では、基部230の外周面を構成する複数の円弧は、外周面の周方向中央側を構成する円弧221と、外周面の周方向端部側を構成する円弧221aおよび221bとを含み、円弧221の半径は、円弧221aおよび221bの半径よりも小さい。このようにしたので、磁極部220の中央部の周囲において磁束を減少させ、ギャップ磁束密度分布を全体的に適正化できるため、コギングトルクを低減することが可能である。
(4)回転子20は、第1〜第3のいずれかの実施形態による回転子コア200と、この回転子コア200に固定されたシャフト300と、収納空間212に配置された永久磁石210とを備えて構成される。また、永久磁石式回転電機1は、この回転子20と、複数の巻線140を有して所定のエアギャップ30を介して回転子20と対向して配置された固定子10とを備えて構成される。このようにしたので、コギングトルクを十分に低減した回転電機と、この回転電機に用いられるロータとを実現できる。
(5)回転子コア200における基部230の外周面の形状は、外周面を単一円弧とした場合にエアギャップ30におけるギャップ磁束密度分布が適正分布となる永久磁石210の磁束密度と、外周面を複数の円弧で構成した場合にエアギャップ30におけるギャップ磁束密度分布が適正分布となる永久磁石210の磁束密度との大小関係に応じて決定される。すなわち、第1、第3の実施形態で説明したように、外周面を単一円弧とした場合にギャップ磁束密度分布が適正分布となる磁石磁束密度が1.48T(第1の実施形態)、1.43T(第3の実施形態)であり、外周面を複数の円弧で構成した場合にギャップ磁束密度分布が適正分布となる磁石磁束密度がそれよりも小さい1.41T(第1の実施形態)、1.37T(第3の実施形態)のときには、外周面の周方向中央側を構成する円弧221の半径が、外周面の周方向端部側を構成する円弧221aおよび221bの半径よりも大きくなるように、基部230の外周面の形状が決定される。また反対に、第2の実施形態で説明したように、外周面を単一円弧とした場合にギャップ磁束密度分布が適正分布となる磁石磁束密度が1.38Tであり、外周面を複数の円弧で構成した場合にギャップ磁束密度分布が適正分布となる磁石磁束密度がそれよりも大きい1.5Tのときには、外周面の周方向中央側を構成する円弧221の半径が、外周面の周方向端部側を構成する円弧221aおよび221bの半径よりも小さくなるように、基部230の外周面の形状が決定される。このようにしたので、外周面を単一円弧としたときの適正分布よりも磁石磁束密度が大きい場合と小さい場合のいずれについても、回転子コア200においてコギングトルクを低減するのに適切な基部230の外周面形状を得ることができる。
(6)永久磁石式回転電機1は、たとえば自動車の電動パワーステアリング用モータとすることができる。したがって、様々な形態の回転電機において本発明を適用可能である。
(7)上記のような永久磁石式回転電機1を備え、この永久磁石式回転電機1を用いて、電動パワーステアリングまたは電動ブレーキを行う自動車用電動補機システムを構成してもよい。このようにすれば、振動や騒音を抑制した自動車用電動補機システムを実現できる。
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
1 永久磁石式回転電機
10 固定子
20 回転子
30 エアギャップ
100 固定子コア
110 コアバック
130 ティース
140 巻線
200 回転子コア
210 永久磁石
210a 第1永久磁石
210b 第2永久磁石
212 収納空間
220 磁極部
221 磁極中央部の円弧
221a、221b 磁極端部の円弧
222 突起部
222a 第1突起部
222b 第2突起部
230 基部
240 第1空間部
241 側面部
242、242b ブリッジ部
243 接続部
244 q軸方向のコア最外周部
300 シャフト
400 磁極ピッチ角
401 磁極中央部の円弧が有する磁極中心角
402 磁極中央部の円弧を形成する円
403 磁極端部の円弧を形成する円
10 固定子
20 回転子
30 エアギャップ
100 固定子コア
110 コアバック
130 ティース
140 巻線
200 回転子コア
210 永久磁石
210a 第1永久磁石
210b 第2永久磁石
212 収納空間
220 磁極部
221 磁極中央部の円弧
221a、221b 磁極端部の円弧
222 突起部
222a 第1突起部
222b 第2突起部
230 基部
240 第1空間部
241 側面部
242、242b ブリッジ部
243 接続部
244 q軸方向のコア最外周部
300 シャフト
400 磁極ピッチ角
401 磁極中央部の円弧が有する磁極中心角
402 磁極中央部の円弧を形成する円
403 磁極端部の円弧を形成する円
Claims (8)
- 複数の積層板により構成されかつ磁石の収納空間を形成するロータコアであって、
前記複数の積層板のうち少なくとも2つは、前記収納空間よりも外周側に形成された基部を有する磁極部と、前記磁極部に接続されたブリッジ部と、を有し、
前記磁極部は、周方向に複数設けられており、
前記周方向に隣り合う一対の前記磁極部の前記基部の間には、第1空間部が形成されており、
前記周方向に隣り合う一対の前記磁極部の中間に位置して前記第1空間部に接するq軸外周部は、前記基部よりも内周側に設けられており、
前記基部は、前記第1空間部に接する側面部と、前記側面部よりも外周側に設けられかつ前記側面部に対して前記周方向にそれぞれ突出する2つの突起部と、を有し、
前記基部の2つの前記突起部に挟まれた外周面は、半径が異なる複数の円弧で構成されており、
前記ブリッジ部は、前記側面部よりも内周側に配置されているロータコア。 - 請求項1に記載のロータコアにおいて、
前記複数の円弧は、前記外周面の周方向中央側を構成する第1円弧と、前記外周面の周方向端部側を構成する第2円弧と、を含み、
前記第1円弧の半径は、前記第2円弧の半径よりも大きいロータコア。 - 請求項1に記載のロータコアにおいて、
前記複数の円弧は、前記外周面の周方向中央側を構成する第1円弧と、前記外周面の周方向端部側を構成する第2円弧と、を含み、
前記第1円弧の半径は、前記第2円弧の半径よりも小さいロータコア。 - 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のロータコアと、
前記ロータコアに固定された回転シャフトと、
前記収納空間に配置された永久磁石と、を備えるロータ。 - 請求項4に記載のロータと、
複数の巻線を有し、所定のエアギャップを介して前記ロータと対向して配置されたステータと、を備える回転電機。 - 請求項5に記載の回転電機において、
前記外周面の形状は、前記外周面を単一円弧とした場合に前記エアギャップにおけるギャップ磁束密度分布が適正分布となる前記永久磁石の磁束密度と、前記外周面を前記複数の円弧で構成した場合に前記エアギャップにおけるギャップ磁束密度分布が適正分布となる前記永久磁石の磁束密度との大小関係に応じて決定される回転電機。 - 請求項5または請求項6に記載の回転電機において、
前記回転電機は、自動車の電動パワーステアリング用モータである回転電機。 - 請求項7に記載の回転電機を備え、
前記回転電機を用いて、電動パワーステアリングまたは電動ブレーキを行う自動車用電動補機システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018104036A JP2019208347A (ja) | 2018-05-30 | 2018-05-30 | ロータコア、ロータ、回転電機、自動車用電動補機システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018104036A JP2019208347A (ja) | 2018-05-30 | 2018-05-30 | ロータコア、ロータ、回転電機、自動車用電動補機システム |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2019208347A true JP2019208347A (ja) | 2019-12-05 |
Family
ID=68767896
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2018104036A Pending JP2019208347A (ja) | 2018-05-30 | 2018-05-30 | ロータコア、ロータ、回転電機、自動車用電動補機システム |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019208347A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP4187759A4 (en) * | 2020-07-22 | 2024-01-03 | Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. | ELECTRIC MOTOR |
-
2018
- 2018-05-30 JP JP2018104036A patent/JP2019208347A/ja active Pending
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EP4187759A4 (en) * | 2020-07-22 | 2024-01-03 | Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. | ELECTRIC MOTOR |
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