以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
以下の実施形態では、所謂デュアルフューエル型のエンジンについて説明する。デュアルフューエル型のエンジンは、ガス運転モードとディーゼル運転モードのいずれかの運転モードを選択的に実行することができる。ガス運転モードは、気体燃料である燃料ガスを主に燃焼させる。ディーゼル運転モードは、液体燃料である燃料油を燃焼させる。また、1周期が2サイクル(ストローク)であって、シリンダ内部をガスが一方向に流れるユニフロー掃気式である場合について説明する。しかし、エンジンの種類は、デュアルフューエル型、2サイクル型、ユニフロー掃気式、クロスヘッド型に限られず、レシプロエンジンであればよい。
図1は、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン(クロスヘッド型エンジン)100の全体構成を示す説明図である。本実施形態のユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、例えば、船舶等に用いられる。具体的に、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、シリンダ110と、ピストン112と、クロスヘッド114と、連結棒116と、クランクシャフト118と、排気ポート120と、排気弁122と、掃気ポート124と、掃気溜126と、冷却器128と、掃気室130と、燃焼室132とを含んで構成される。
ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100では、ピストン112がシリンダ110内を往復移動する。ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100では、ピストン112の上昇行程および下降行程の2行程の間に、排気、吸気、圧縮、燃焼、膨張が行われる。ピストン112には、ピストンロッド112aの一端が固定されている。また、ピストンロッド112aの他端には、クロスヘッド114におけるクロスヘッドピン114aが連結されている。クロスヘッド114は、ピストン112と一体的に往復移動する。クロスヘッド114は、クロスヘッドシュー114bによって、ピストン112のストローク方向に垂直な方向(図1中、左右方向)の移動が規制されている。
クロスヘッドピン114aは、連結棒116の一端に設けられた孔に挿通されている。クロスヘッドピン114aは、連結棒116の一端を支持する。また、連結棒116の他端は、クランクシャフト118に連結されている。クランクシャフト118は、連結棒116に対して回転する構造となっている。その結果、ピストン112の往復移動に伴いクロスヘッド114が往復移動する。また、クロスヘッド114の往復移動に伴いクランクシャフト118が回転する。
排気ポート120は、ピストン112の上死点より上方のシリンダヘッド110aに設けられた開口部である。排気ポート120は、シリンダ110内で生じた燃焼後の排気ガスを排気するために開閉される。排気弁122は、不図示の排気弁駆動装置によって所定のタイミングで上下に摺動される。排気弁122は、上下に摺動されることで、排気ポート120を開閉する。排気ポート120を介して排気された排気ガスは、排気管120aに流入する。排気管120aに流入したガスは、過給機Cのタービン側に供給される。過給機Cのタービン側に供給されたガスは、外部に排気される。
掃気ポート124は、シリンダ110の下端側の内周面(シリンダライナ110bの内周面)から外周面まで貫通する孔である。掃気ポート124は、シリンダ110の全周囲に亘って、複数設けられている。掃気ポート124は、ピストン112の摺動動作に応じてシリンダ110内に活性ガスを吸入する。かかる活性ガスは、酸素、オゾン等の酸化剤、または、その混合気(例えば空気)を含む。
掃気溜126には、過給機Cのコンプレッサによって加圧された活性ガス(例えば空気)が封入されている。冷却器128は、加圧された活性ガスを冷却する。冷却された活性ガスは、掃気室130に圧入される。掃気室130は、シリンダジャケット110c内に形成される。冷却された活性ガスは、掃気室130とシリンダ110内の差圧をもって掃気ポート124からシリンダ110内に吸入される。
また、シリンダヘッド110aには、不図示のパイロット噴射弁が設けられる。ガス運転モードにおいては、エンジンサイクルにおける所定のタイミングで適量の燃料油がパイロット噴射弁から噴射される。かかる燃料油は、燃焼室132の熱で気化して燃料ガスとなる。燃焼室132は、シリンダヘッド110aと、シリンダライナ110bと、ピストン112とに囲繞される。燃焼室132の熱で気化した燃料ガスは、自然着火し、僅かな時間で燃焼して、燃焼室132の温度を極めて高くする。シリンダ110に流入した燃料ガスは、所定のタイミングで確実に燃焼される。ピストン112は、主に燃料ガスの燃焼による膨張圧によって往復移動する。
ここで、燃料ガスは、例えば、LNG(液化天然ガス)をガス化して生成されるものとする。また、燃料ガスは、LNGに限らず、例えば、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油等をガス化したものを適用することもできる。
一方、ディーゼル運転モードにおいては、ガス運転モードにおける燃料油の噴射量よりも多量の燃料油がパイロット噴射弁から噴射される。ピストン112は、燃料ガスではなく、燃料油の燃焼による膨張圧によって往復移動する。
このように、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、ガス運転モードとディーゼル運転モードのいずれかの運転モードを選択的に実行する。また、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100には、圧縮比可変機構Vが設けられている。圧縮比可変機構Vは、選択された運転モードに応じてピストン112の圧縮比を可変とする。以下、圧縮比可変機構Vについて詳述する。
図2Aは、図1の一点鎖線部分を抽出した拡大図であり、図2Bは、図2AのII(b)―II(b)線断面である。
図2A、図2Bに示すように、クロスヘッドピン114aには、ピストンロッド112aの端部が挿入される。クロスヘッドピン114aには、連結穴160が形成されている。連結穴160は、クロスヘッドピン114aの軸方向(図2B中、左右方向)と垂直する方向に延在する。連結穴160には、ピストンロッド112aの端部が挿入(進入)されている。連結穴160は、ピストンロッド112aの端部が挿入されることで後述する油圧室を形成する。連結穴160にピストンロッド112aの端部が挿入されることで、クロスヘッドピン114aと、ピストンロッド112aが連結される。
ピストンロッド112aには、大径部162aと、小径部162bが形成されている。大径部162aは、ピストンロッド112aの一端側よりも大きい外径を有する。小径部162bは、大径部162aよりも他端側に位置する。小径部162bは、大径部162aよりも小さい外径を有する。
連結穴160は、大径穴部164aと、小径穴部164bとを有している。大径穴部164aは、連結穴160におけるピストン112側に位置する。小径穴部164bは、大径穴部164aに対して連結棒116側に連続する。小径穴部164bは、大径穴部164aよりも小さい内径を有する。
ピストンロッド112aの小径部162bは、連結穴160の小径穴部164bに挿入可能な寸法となっている。ピストンロッド112aの大径部162aは、連結穴160の大径穴部164aに挿入可能な寸法関係となっている。小径穴部164bの内周面には、Oリングで構成される第1シール部材O1が配される。
ピストンロッド112aの大径部162aよりピストンロッド112aの一端側には、固定蓋166が固定されている。固定蓋166は、連結穴160よりも大きい外径を有する。固定蓋166は、環状部材である。固定蓋166には、ピストンロッド112aが挿通されている。固定蓋166の内周面には、Oリングで構成される第2シール部材O2が配される。
クロスヘッドピン114aの外周面には、クロスヘッドピン114aの径方向に窪んだ窪み114cが形成されている。固定蓋166は、窪み114cに当接する。
クロスヘッドピン114aの内部には、第1油圧室(油圧室)168aおよび第2油圧室168bが形成されている。第1油圧室168aおよび第2油圧室168bは、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aとの連結部分に形成される。
第1油圧室168aは、大径部162aと小径部162bの外径差による段差面と、大径穴部164aの内周面と、大径穴部164aと小径穴部164bの内径差による段差面によって囲繞される。
ピストンロッド112aの大径部162aと小径部162bの外径差による段差面は、クロスヘッドピン114aの大径穴部164aと小径穴部164bの内径差による段差面と対向する。以下、ピストンロッド112aの大径部162aと小径部162bの外径差による段差面を、単にピストンロッド112aの段差面という。また、クロスヘッドピン114aの大径穴部164aと小径穴部164bの内径差による段差面を、単にクロスヘッドピン114aの段差面という。
ピストンロッド112aの段差面とクロスヘッドピン114aの段差面は、互いに対向する対向部を構成する。ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの対向部は、第1油圧室168aを形成する。
第2油圧室168bは、大径部162aのうち、ピストンロッド112aの一端側の端面と、大径穴部164aの内周面と、固定蓋166によって囲繞される。大径穴部164aは、ピストンロッド112aの大径部162aによって、ピストンロッド112aの一端側と他端側とに区画される。
つまり、大径部162aよりも他端側に区画された大径穴部164aによって第1油圧室168aが形成される。また、大径部162aよりも一端側に区画された大径穴部164aによって第2油圧室168bが形成される。
第1油圧室168aには、第1油圧室供給油路170aおよび第1油圧室排出油路170bが連通している。第1油圧室供給油路170aは、一端が大径穴部164aの内周面(第1油圧室168a)に開口し、他端が後述する増圧機構を介して油圧ポンプに連通している。第1油圧室排出油路170bは、一端が大径穴部164aの内周面に開口し、他端が後述する排油機構を介してタンクに連通している。
第2油圧室168bには、固定蓋166の壁面に開口する補助油路170cが連通している。補助油路170cは、固定蓋166とクロスヘッドピン114aとの当接部分を介してクロスヘッドピン114aの内部を通り、油圧ポンプに連通している。
図3Aは、ピストンロッド112aが連結穴160に浅く進入した状態を示す図である。図3Bは、ピストンロッド112aが連結穴160に深く進入した状態を示す図である。
第1油圧室168aは、ピストン112のストローク方向の長さが可変となっている。第1油圧室168aは、増圧機構により第1油圧室供給油路170aを介して油圧ポンプから作動油が供給可能である。
第1油圧室168aに作動油が供給されると、図3Aに示すように、第1油圧室168aのピストン112のストローク方向の長さが長くなる。一方、第2油圧室168bは、ピストン112のストローク方向の長さが短くなる。作動油は、非圧縮性である。そのため、第1油圧室168aに作動油を供給した状態で第1油圧室168aを密閉すると、図3Aの状態を維持することができる。
また、第1油圧室168aは、排油機構により第1油圧室排出油路170bを介してタンクに作動油を排出可能である。第1油圧室168aから作動油が排出されると、図3Bに示すように、第1油圧室168aのピストン112のストローク方向の長さが短くなる。一方、第2油圧室168bは、ピストン112のストローク方向の長さが長くなる。
このように、ピストンロッド112aおよびクロスヘッドピン114aは、ストローク方向の全長を可変とする。ピストンロッド112aおよびクロスヘッドピン114aを含むピストン112のストローク方向の全長は、ピストンロッド112aの段差面およびクロスヘッドピン114aの段差面のストローク方向の離隔距離に応じて変化する。
第1油圧室168aおよび第2油圧室168bのピストン112のストローク方向の長さが変更された分、ピストンロッド112aがクロスヘッドピン114aの連結穴(油圧室)160に進入する進入位置(進入深さ)が変化する。このように、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置を変化させることで、ピストン112の上死点および下死点の位置を可変としている。
ところで、クロスヘッドピン114aは、連結棒116に対してピストン112のストローク方向の相対位置が固定されている。一方、ピストンロッド112aは、クロスヘッドピン114aに連結されている。しかし、図3Bに示す状態では、ピストンロッド112aは、第2油圧室168bの分だけ遊びが生じている。
そのため、図3Bに示す状態でピストン112が上死点に到達したとき、ピストンロッド112aの慣性力により、ピストンロッド112aがピストン112側に移動しすぎてしまう場合がある。上死点位置のずれが生じないように、第2油圧室168bには、補助油路170cを介して油圧ポンプからの油圧が供給されている。第2油圧室168bに油圧が供給されることで、ピストンロッド112aのピストン112側への移動が抑えられる。
ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、比較的低速の回転数で用いられる。そのため、ピストンロッド112aに加わる慣性力も比較的小さいものとなる。したがって、第2油圧室168bに供給する油圧が低くても、ピストン112の上死点位置のずれを抑えることができる。
ピストンロッド112aには、ピストンロッド112aの外周面から径方向内側に向かう流路穴172が設けられている。クロスヘッドピン114aには、クロスヘッドピン114aの外周面側から連結穴160まで貫通する貫通孔174が設けられている。貫通孔174は、油圧ポンプと連通している。
流路穴172と貫通孔174は、ピストンロッド112aの径方向に対向している。流路穴172は、貫通孔174と連通している。流路穴172の外周面側の端部は、流路穴172の他の部位よりも、ピストン112のストローク方向(図3中、上下方向)の流路幅が広く形成されている。したがって、図3A、Bに示すように、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置が変わっても、流路穴172と貫通孔174の連通状態が維持される。
ピストンロッド112aの外周面には、流路穴172の外周面側の端部をピストンロッド112aの軸方向に挟んで、Oリングで構成される第3シール部材O3、第4シール部材O4が配される。
大径部162aは、流路穴172の分だけ、大径穴部164aの内周面に対向する面積が小さくなる。そのため、大径部162aは、大径穴部164aに対して傾き易くなる。ここでは、小径部162bが小径穴部164bにガイドされることで、ピストンロッド112aのストローク方向に対する傾きが抑えられている。
ピストンロッド112aの内部には、ピストン112のストローク方向に延在する冷却油路176が形成されている。冷却油路176には、ピストン112およびピストンロッド112aを冷却する冷却油が流通する。冷却油路176は、内部に冷却管178が配されている。冷却油路176は、冷却管178によってピストンロッド112aの径方向外側の往路176aと内側の復路176bに分けられている。流路穴172は、冷却油路176のうちの往路176aに開口している。
油圧ポンプから供給された冷却油は、貫通孔174、流路穴172を介して冷却油路176の往路176aに流入する。往路176aと復路176bは、ピストン112の内部で連通している。往路176aを流れた冷却油は、ピストン112の内壁に到達すると復路176bを通って、小径部162b側に戻る。冷却油路176の内壁およびピストン112の内壁に冷却油が接触することで、ピストン112が冷却される。
クロスヘッドピン114aには、クロスヘッドピン114aの軸方向に延在する出口孔180が形成されている。小径穴部164bは、出口孔180に連通している。冷却油は、ピストン112を冷却した後に、冷却油路176から小径穴部164bに流入する。小径穴部164bに流入した冷却油は、出口孔180を通って、クロスヘッドピン114a外に排出され、タンクに還流する。
第1油圧室168aおよび第2油圧室168bに供給される作動油と、冷却油路176に供給される冷却油は、いずれも同じタンクに還流して同じ油圧ポンプで昇圧される。そのため、油圧を作用させる作動油の供給と、冷却用の冷却油の供給を、1つの油圧ポンプで遂行でき、コストを低減することが可能となる。
ピストン112の圧縮比を可変とする圧縮比可変機構Vは、第1油圧室168aの油量を調整する油量調整機構を含んで構成される。続いて、油量調整機構について詳述する。油量調整機構は、第1切換機構182と、第2切換機構184と、駆動機構Dとを含んで構成される。
図4は、第1切換機構182、第2切換機構184、および、駆動機構Dの配置を説明するための説明図である。図4は、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100のうち、クロスヘッド114近傍の外観および部分断面を示す。第1切換機構182および第2切換機構184は、それぞれ、クロスヘッドピン114aに取り付けられている。
第1切換機構182および第2切換機構184それぞれの下方には、機関架橋186bが配されている。機関架橋186bは、クロスヘッド114の往復移動をガイドする2つのガイド板186aに両端が固定され、両ガイド板186aを支持する。機関架橋186bは、クロスヘッドピン114aから離間した位置に配される。
機関架橋186bには、駆動機構Dが載置されている。駆動機構Dは、複数のアクチュエータから構成される。具体的に、機関架橋186bには、第1油圧シリンダ188と、第2油圧シリンダ190と、第3油圧シリンダ192と、第4油圧シリンダ194とが載置されている。第1油圧シリンダ188、第2油圧シリンダ190、第3油圧シリンダ192、および、第4油圧シリンダ194は、それぞれ、内部のピストンが図4中、上下方向に移動可能である。
第1切換機構182および第2切換機構184は、ピストン112のストローク方向にクロスヘッドピン114aと一体に往復移動する。一方、第1油圧シリンダ188、第2油圧シリンダ190、第3油圧シリンダ192、および、第4油圧シリンダ194は、機関架橋186b上にあって、機関架橋186bに対してピストン112のストローク方向には移動しない。
図5は、油量調整機構の構成を説明するための説明図である。図5に示すように、油量調整機構は、第1切換機構182と、第2切換機構184と、第1油圧シリンダ188と、第2油圧シリンダ190と、第3油圧シリンダ192と、第4油圧シリンダ194と、増圧機構196と、排油機構198とを含んで構成される。
また、油量調整機構は、第1レバー切換弁200と、第2レバー切換弁202と、位置センサ204と、油量制御部206と、油圧ポンプPと、タンクTとを含んで構成される。油圧ポンプPは、供給油路208に作動油を供給する。供給油路208は、第1油圧室168aまたは第2油圧室168bに作動油を供給する。
油圧ポンプPは、冷却油路176に冷却油を供給する。また、油圧ポンプPは、駆動機構Dに作動油を供給する。すなわち、油圧ポンプPは、第1油圧シリンダ188と、第2油圧シリンダ190と、第3油圧シリンダ192と、第4油圧シリンダ194と、に作動油を供給する。
増圧機構196は、クロスヘッドピン114aの内部に設けられる。増圧機構196は、第1油圧室168aと油圧ポンプP(供給油路208)との間に設けられる。増圧機構196は、第1油圧室供給油路170aと、供給油路208とに接続される。増圧機構196は、油圧ポンプPから送出される作動油を増圧して第1油圧室168aに供給する。
増圧機構196は、後述する第1切換機構182により供給油路208と増圧機構196が連通する連通状態となるとき、第1油圧室168aに作動油を供給する。増圧機構196は、第1切換機構182により供給油路208と増圧機構196が連通しない非連通状態となるとき、第1油圧室168aへの作動油の供給を停止する。増圧機構196の詳細な構成については後述する。
排油機構198は、クロスヘッドピン114aの内部に設けられる。排油機構198は、第1油圧室168aとタンクTとの間に設けられる。排油機構198は、第1油圧室排出油路(排出油路)170bと、供給油路208と、第1油圧室排出油路170bおよびタンクTを連通する不図示のタンク排出油路とに接続される。排油機構198は、供給油路208から供給される作動油の油圧により、第1油圧室168a内の作動油を第1油圧室排出油路170bおよび不図示のタンク排出油路を介して排出させる。
排油機構198は、後述する第2切換機構184により供給油路208と排油機構198が連通する連通状態となるとき、第1油圧室168a内の作動油を排出させる。排油機構198は、第2切換機構184により供給油路208と排油機構198が連通しない非連通状態となるとき、第1油圧室168a内の作動油の排出を停止させる。排油機構198の詳細な構成については後述する。
第1切換機構182は、第1切換弁182aと、第1レバー部材(第1回転部材)182bとを含んで構成される。第1切換弁182aは、本体部182aaと、ロッド部182abとを含んで構成される。本体部182aaは、クロスヘッドピン114aに取り付けられる。ロッド部182abは、本体部182aa内を移動可能に構成される。ロッド部182abは、ストローク方向(図5中、上下方向)に移動可能に構成される。
第1切換弁182aは、本体部182aaに対しロッド部182abが移動することで、供給油路208(油圧ポンプP)と増圧機構196との連通状態を切り換える。第1切換弁182aは、供給油路208と増圧機構196とを連通する連通状態と、供給油路208と増圧機構196とを連通しない非連通状態と、に切り換わる。
第1レバー部材182bは、回転中心軸182baと、本体部182bbと、貫通孔182bcとを含んで構成される。回転中心軸182baは、クロスヘッドピン114aに取り付けられる。
本体部182bbは、回転中心軸182ba(クロスヘッドピン114a)の回転軸周りに回転可能に構成される。本体部182bbは、一端側に第1油圧シリンダ188と当接可能な第1当接部を有し、他端側に第2油圧シリンダ190と当接可能な第2当接部を有する。
貫通孔182bcは、本体部182bbに設けられる。貫通孔182bcには、第1切換弁182aのロッド部182abの一部が挿入される。貫通孔182bcにロッド部182abの一部が挿入されることで、第1レバー部材182bは、第1切換弁182aと係合(連結)する。
第1油圧シリンダ188は、第1レバー切換弁200を介して供給される作動油の油圧によって作動する。第1油圧シリンダ188は、内部にピストンが設けられている。第1油圧シリンダ188は、作動油の油圧により内部に設けられたピストンをストローク方向(図5中、上下方向)に移動させる。
第2油圧シリンダ190は、第1レバー切換弁200を介して供給される作動油の油圧によって作動する。第2油圧シリンダ190は、内部にピストンが設けられている。第2油圧シリンダ190は、作動油の油圧により内部に設けられたピストンをストローク方向(図5中、上下方向)に移動させる。
第1レバー切換弁200が切り換えられたとき、第1油圧シリンダ188のピストンは、第2油圧シリンダ190のピストンの移動方向と反対方向に移動する。例えば、第1レバー切換弁200が切り換えられ、第2油圧シリンダ190のピストンが図5中、下方向に移動するとき、第1油圧シリンダ188のピストンは、図5中、上方向に移動する。また、第1レバー切換弁200が切り換えられ、第2油圧シリンダ190のピストンが図5中、上方向に移動するとき、第1油圧シリンダ188のピストンは、図5中、下方向に移動する。
第1レバー部材182bは、ピストン112が下死点近傍に位置するとき、第1油圧シリンダ188のピストンまたは第2油圧シリンダ190のピストンと当接(接触)する。第1レバー部材182bは、第1油圧シリンダ188のピストンと当接するとき、回転中心軸182baを中心に、図5中、反時計回り(第1回転方向)に回転する。このように、第1油圧シリンダ188は、第1レバー部材182bを第1回転方向に回転させることができる。
第1レバー部材182bが図5中、反時計回りに回転すると、貫通孔182bcを介して連結されるロッド部182abは、図5中、上方向に移動する。ロッド部182abが図5中、上方向に移動すると、第1切換弁182aは、供給油路208と増圧機構196とを連通する連通状態に切り換わる。
第1レバー部材182bは、第2油圧シリンダ190のピストンと当接するとき、回転中心軸182baを中心に、図5中、時計回り(第2回転方向)に回転する。このように、第2油圧シリンダ190は、第1レバー部材182bを第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させることができる。
第1レバー部材182bが図5中、時計回りに回転すると、貫通孔182bcを介して連結されるロッド部182abは、図5中、下方向に移動する。ロッド部182abが図5中、下方向に移動すると、第1切換弁182aは、供給油路208と増圧機構196とを連通しない非連通状態に切り換わる。
このように、第1油圧シリンダ188および第2油圧シリンダ190(すなわち、駆動機構D)は、第1レバー部材182bの回転角度を変更することができる。第1レバー部材182bの回転角度が変更されると、第1切換機構182は、供給油路208と増圧機構196との連通状態を変更することができる。
第2切換機構184は、第2切換弁184aと、第2レバー部材(第2回転部材)184bとを含んで構成される。第2切換弁184aは、本体部184aaと、ロッド部184abとを含んで構成される。本体部184aaは、クロスヘッドピン114aに取り付けられる。ロッド部184abは、本体部184aa内を移動可能に構成される。ロッド部184abは、ストローク方向(図5中、上下方向)に移動可能に構成される。
第2切換弁184aは、本体部184aaに対しロッド部184abが移動することで、供給油路208(油圧ポンプP)と排油機構198との連通状態を切り換える。第2切換弁184aは、供給油路208と排油機構198とを連通する連通状態と、供給油路208と排油機構198とを連通しない非連通状態と、に切り換わる。
第2レバー部材184bは、回転中心軸184baと、本体部184bbと、貫通孔184bcとを含んで構成される。回転中心軸184baは、クロスヘッドピン114aに取り付けられる。
本体部184bbは、回転中心軸184ba(クロスヘッドピン114a)の回転軸周りに回転可能に構成される。本体部184bbは、一端側に第3油圧シリンダ192と当接可能な第3当接部を有し、他端側に第4油圧シリンダ194と当接可能な第4当接部を有する。
貫通孔184bcは、本体部184bbに設けられる。貫通孔184bcには、第2切換弁184aのロッド部184abの一部が挿入される。貫通孔184bcにロッド部184abの一部が挿入されることで、第2レバー部材184bは、第2切換弁184aと係合(連結)する。
第3油圧シリンダ192は、第2レバー切換弁202を介して供給される作動油の油圧によって作動する。第3油圧シリンダ192は、内部にピストンが設けられている。第3油圧シリンダ192は、作動油の油圧により内部に設けられたピストンをストローク方向(図5中、上下方向)に移動させる。
第4油圧シリンダ194は、第2レバー切換弁202を介して供給される作動油の油圧によって作動する。第4油圧シリンダ194は、内部にピストンが設けられている。第4油圧シリンダ194は、作動油の油圧により内部に設けられたピストンをストローク方向(図5中、上下方向)に移動させる。
第2レバー切換弁202が切り換えられたとき、第3油圧シリンダ192のピストンは、第4油圧シリンダ194のピストンの移動方向と反対方向に移動する。例えば、第2レバー切換弁202が切り換えられ、第4油圧シリンダ194のピストンが図5中、下方向に移動するとき、第3油圧シリンダ192のピストンは、図5中、上方向に移動する。また、第2レバー切換弁202が切り換えられ、第4油圧シリンダ194のピストンが図5中、上方向に移動するとき、第3油圧シリンダ192のピストンは、図5中、下方向に移動する。
第2レバー部材184bは、ピストン112が下死点近傍に位置するとき、第3油圧シリンダ192のピストンまたは第4油圧シリンダ194のピストンと当接(接触)する。第2レバー部材184bは、第3油圧シリンダ192のピストンと当接するとき、回転中心軸184baを中心に、図5中、反時計回り(第1回転方向)に回転する。このように、第3油圧シリンダ192は、第2レバー部材184bを第1回転方向に回転させることができる。
第2レバー部材184bが図5中、反時計回りに回転すると、貫通孔184bcを介して連結されるロッド部184abは、図5中、上方向に移動する。ロッド部184abが図5中、上方向に移動すると、第2切換弁184aは、供給油路208と排油機構198とを連通する連通状態に切り換わる。
第2レバー部材184bは、第4油圧シリンダ194のピストンと当接するとき、回転中心軸184baを中心に、図5中、時計回り(第2回転方向)に回転する。このように、第4油圧シリンダ194は、第2レバー部材184bを第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転させることができる。
第2レバー部材184bが図5中、時計回りに回転すると、貫通孔184bcを介して連結されるロッド部184abは、図5中、下方向に移動する。ロッド部184abが図5中、下方向に移動すると、第2切換弁184aは、供給油路208と排油機構198とを連通しない非連通状態に切り換わる。
このように、第3油圧シリンダ192および第4油圧シリンダ194(すなわち、駆動機構D)は、第2レバー部材184bの回転角度を変更することができる。第2レバー部材184bの回転角度が変更されると、第2切換機構184は、供給油路208と排油機構198との連通状態を変更することができる。
位置センサ204は、ピストンロッド112aのストローク方向の位置を検知する。位置センサ204は、検知したピストンロッド112aのストローク方向の位置を示す信号を出力する。
油量制御部206は、位置センサ204からの信号を取得する。油量制御部206は、位置センサ204から取得される信号に基づいて、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置を特定する。
また、油量制御部206は、第1レバー切換弁200および第2レバー切換弁202を制御する。油量制御部206は、第1レバー切換弁200および第2レバー切換弁202を制御することで、第1油圧シリンダ188、第2油圧シリンダ190、第3油圧シリンダ192、および、第4油圧シリンダ194の駆動を制御することができる。
油量制御部206は、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置が設定位置となるように、各油圧シリンダの駆動を制御する。油量制御部206は、各油圧シリンダの駆動を制御することで、第1油圧室168a内の作動油の油量を調整することができる。
このように、油量調整機構は、第1油圧室168aに作動油を供給する。また、油量調整機構は、第1油圧室168aから作動油を排出する。
図6Aは、第1油圧室168aから作動油を排出する際の圧縮比可変機構Vの動作を説明する図である。図6Aでは、第1レバー部材182bと第2油圧シリンダ190のピストンが接触するように第1レバー切換弁200が制御されている。また、第2レバー部材184bと第3油圧シリンダ192のピストンが接触するように第2レバー切換弁202が制御されている。
第2レバー部材184bが第3油圧シリンダ192のピストンと接触すると、排油機構198は、供給油路208と排油機構198とを連通する連通状態となる。排油機構198は、連通状態となると、第1油圧室168a内の作動油を排出させる。
図6Aに示す状態では、ピストン112の上死点は徐々に低くなっている(クロスヘッドピン114a側に近くなっている)。すなわち、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の圧縮比は小さくなっている。
油量制御部206は、ECU(Engine Control Unit)などの上位の制御部からユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の圧縮比を大きくする指示を受けると、第2レバー切換弁202を切り換える制御を行う。
図6Bは、第1油圧室168a内の作動油の排出を停止する際の圧縮比可変機構Vの動作を説明する図である。具体的に、油量制御部206は、図6Bに示すように、第1レバー部材182bと第2油圧シリンダ190のピストンが接触するように第1レバー切換弁200を制御する。また、油量制御部206は、第2レバー部材184bと第4油圧シリンダ194のピストンが接触するように第2レバー切換弁202を制御する。
第2レバー部材184bが第4油圧シリンダ194のピストンと接触すると、排油機構198は、供給油路208と排油機構198とが連通しない非連通状態となる。排油機構198は、非連通状態となると、第1油圧室168a内の作動油の排出を停止させる。
図6Cは、第1油圧室168aに作動油を供給する際の圧縮比可変機構Vの動作を説明する図である。油量制御部206は、図6Cに示すように、第1レバー部材182bと第1油圧シリンダ188のピストンが接触するように第1レバー切換弁200を制御する。
第1レバー部材182bが第1油圧シリンダ188のピストンと接触すると、増圧機構196は、供給油路208と増圧機構196とが連通する連通状態となる。増圧機構196は、連通状態となると、第1油圧室168aに作動油を供給する。
第1油圧室168aに作動油が供給されると、図6Cに示すように、ピストンロッド112aが押し上げられる。換言すれば、ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置が変位する。その結果、ピストン112の上死点が高くなる(クロスヘッドピン114a側から遠くなる)。すなわち、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の圧縮比は大きくなる。
図6Dは、第1油圧室168aへの作動油の供給を停止する際の圧縮比可変機構Vの動作を説明する図である。ピストンロッド112aとクロスヘッドピン114aの相対的な位置が所望の位置となると、油量制御部206は、第1レバー切換弁200を切り換える制御を行う。具体的に、油量制御部206は、図6Dに示すように、第1レバー部材182bと第2油圧シリンダ190のピストンが接触するように第1レバー切換弁200を制御する。
第1レバー部材182bが第2油圧シリンダ190のピストンと接触すると、増圧機構196は、供給油路208と増圧機構196とが連通しない非連通状態となる。増圧機構196は、非連通状態となると、第1油圧室168aに対し、作動油の供給を停止する。
このように、油量調整機構は、第1油圧室168aに対するストローク方向のピストンロッド112aの進入位置を調整する。圧縮比可変機構Vは、油量調整機構によって第1油圧室168aの油量を調整する。
油量調整機構は、第1油圧室168aの油量を調整することで、ピストンロッド112aおよびクロスヘッド114のストローク方向の相対的な位置を変更する。換言すれば、油量調整機構は、第1油圧室168aの油量を調整することで、ピストン112の上死点および下死点の位置を可変とする。
つぎに、増圧機構196の具体的な構成について説明する。図7Aは、増圧機構196を作動させる前の状態を表す図である。図7Bは、増圧機構196の作動開始時の状態を表す図である。図7Cは、増圧機構196から第1油圧室168aに作動油を供給している状態を表す図である。増圧機構196は、増圧弁210と、油圧回路212とを含んで構成される。増圧弁210は、シリンダ214と、ピストン216とを含んで構成される。
シリンダ214は、ピストン216を収容する。シリンダ214は、第1シリンダ部214aと、第2シリンダ部214bとを有する。第1シリンダ部214aおよび第2シリンダ部214bは、略中空円筒形状である。第1シリンダ部214aの内部空間の径方向の断面積は、第2シリンダ部214bの内部空間の径方向の断面積より小さい。
つまり、第1シリンダ部214aの内径は、第2シリンダ部214bの内径より小さい。そのため、第1シリンダ部214aと第2シリンダ部214bとの間には、段差部が形成される。
ピストン216は、第1ピストン部216aと、連結部216bと、第2ピストン部216cとを有する。第1ピストン部216a、連結部216b、および、第2ピストン部216cは、略円柱形状である。連結部216bは、第1ピストン部216aと第2ピストン部216cを連結する。第1ピストン部216aの径方向の断面積は、第2ピストン部216cの径方向の断面積より小さい。なお、連結部216bの径方向の断面積は、第1ピストン部216aの径方向の断面積より小さい。
つまり、第1ピストン部216aの外径は、第2ピストン部216cの外径より小さく、連結部216bの外径より大きい。また、第2ピストン部216cの外径は、第1ピストン部216aおよび連結部216bの外径より大きい。そのため、第1ピストン部216aと連結部216bとの間には、段差部が形成される。また、第2ピストン部216cと連結部216bとの間には、段差部が形成される。
第1ピストン部216aは、連結部216bと接続される面とは反対側の面(以下、ピストン216の正面S1という)が第1シリンダ部214aに収容される。第1ピストン部216aの径方向の断面積は、第1シリンダ部214aの内部空間の径方向の断面積と大凡等しい。第1シリンダ部214aの内部には、ピストン216の正面S1と第1シリンダ部214aにより囲繞された第1シリンダ室Saが形成される。
第2ピストン部216cは、第2シリンダ部214bに収容される。第2ピストン部216cの径方向の断面積は、第2シリンダ部214bの内部空間の径方向の断面積と大凡等しい。第2ピストン部216cは、連結部216bと接続される面とは反対側の面(以下、ピストン216の背面S2という)を有する。第2シリンダ部214bの内部には、ピストン216の背面S2と第2シリンダ部214bにより囲繞された第2シリンダ室Sbが形成される。
連結部216bは、第1シリンダ部214aおよび第2シリンダ部214bのうち少なくとも一方に収容される。第1シリンダ部214aおよび第2シリンダ部214bの内部には、第1シリンダ部214aおよび第2シリンダ部214bと、連結部216bの外周面により囲繞された第3シリンダ室Scが形成される。
油圧回路212は、第1シリンダ室連通油路218と、分岐油路220と、パイロット油路222と、第2シリンダ室連通油路224と、第1ピストン切換弁連通油路226と、第2ピストン切換弁連通油路228と、ピストン切換弁230と、第3シリンダ室連通油路232とを含んで構成される。
第1シリンダ室連通油路218は、第1切換弁182aのロッド部182abを介して、供給油路208と一端が接続され、他端が第1シリンダ室Saに接続される。第1シリンダ室連通油路218には、第1逆止弁234が配される。第1逆止弁234は、作動油が油圧ポンプPから第1シリンダ室Saに向かって流れる際に開弁する。第1逆止弁234は、第1シリンダ室Saから油圧ポンプPへ向かう作動油の流れを制限(閉弁)する。
分岐油路220は、第1シリンダ室連通油路218のうち、第1切換弁182aと第1逆止弁234との間から分岐する。分岐油路220は、第1シリンダ室連通油路218と、ピストン切換弁230とに接続される。パイロット油路222は、分岐油路220から分岐する。パイロット油路222は、分岐油路220の油圧を、ピストン切換弁230の一端に作用させる。
第2シリンダ室連通油路224は、ピストン切換弁230と、第2シリンダ室Sbとに接続される。第1ピストン切換弁連通油路226は、ピストン切換弁230のうち、パイロット油路222と反対側の端部と、第1シリンダ室Saとに接続される。第2ピストン切換弁連通油路228は、ピストン切換弁230と、第3シリンダ室Scとに接続される。
ピストン切換弁230は、第2シリンダ室連通油路224の連通先を切り換える。ピストン切換弁230は、分岐油路220と第2シリンダ室連通油路224とを連通する第1連通位置と、第2シリンダ室連通油路224と第3シリンダ室Sc(第3シリンダ室連通油路232)とを連通する第2連通位置とに切り換わる。
ピストン切換弁230は、第1ピストン切換弁連通油路226から供給される作動油の油圧により、第2連通位置から第1連通位置に切り換わる。このとき、ピストン切換弁230は、分岐油路220と、第2シリンダ室連通油路224とを接続(連通)させる。また、ピストン切換弁230は、第2ピストン切換弁連通油路228と、第2シリンダ室連通油路224との接続(連通)を遮断させる。
ピストン切換弁230は、パイロット油路222から供給される作動油の油圧により、第1連通状態から第2連通位置に切り換わる。このとき、ピストン切換弁230は、分岐油路220と、第2シリンダ室連通油路224との接続を遮断させる。また、ピストン切換弁230は、第2連通位置に切り換わると、第2ピストン切換弁連通油路228と、第2シリンダ室連通油路224とを接続(連通)させる。
なお、ピストン切換弁230は、パイロット油路222と接続される接続面の受圧面積と、第1ピストン切換弁連通油路226と接続される接続面の受圧面積が異なる。ピストン切換弁230が第1ピストン切換弁連通油路226と接続される接続面の受圧面積は、ピストン切換弁230がパイロット油路222と接続される接続面の受圧面積よりも大きい。そのため、ピストン切換弁230は、パイロット油路222および第1ピストン切換弁連通油路226から作動油が供給されると、第2連通位置から第1連通位置に切り換わる。
第3シリンダ室連通油路232は、第1切換弁182aのロッド部182abを介して、第3シリンダ室Scと、タンク排出油路236とに接続される。なお、ロッド部182abには、第1切り欠き部182acおよび第2切り欠き部182adが形成されている。
第1切り欠き部182acおよび第2切り欠き部182adは、係合部材238と係合可能に構成される。第1切り欠き部182acは、第1切換弁182aが非連通状態に制御されるとき、係合部材238と係合する。ロッド部182abは、第1切り欠き部182acと係合部材238との係合により移動(例えば、図7A中、上方向への移動)が制限される。これにより、第1切換弁182aは、非連通状態を維持することができる。
第2切り欠き部182adは、図7Bに示すように第1切換弁182aが連通状態に制御されるとき、係合部材238と係合する。ロッド部182abは、第2切り欠き部182adと係合部材238との係合により移動(例えば、図7B中、下方向への移動)が制限される。これにより、第1切換弁182aは、連通状態を維持することができる。
また、第1シリンダ室Saには、第1油圧室供給油路170aが接続されている。第1油圧室供給油路170aには、第2逆止弁240が設けられている。第2逆止弁240は、作動油が第1シリンダ室Saから第1油圧室168aに向かって流れる際に開弁する。第2逆止弁240は、第1油圧室168aから第1シリンダ室Saへ向かう作動油の流れを制限(閉弁)する。
以下、本実施形態の増圧機構196の動作について説明する。第1切換弁182aが非連通状態に制御されるとき、ロッド部182abの第1切り欠き部182acは、図7Aに示すように、係合部材238と係合する。ロッド部182abは、第1切り欠き部182acが係合部材238と係合している間、供給油路208と、第1シリンダ室連通油路218との接続(連通)を遮断する。
ロッド部182abは、第1切り欠き部182acが係合部材238と係合している間、第1シリンダ室連通油路218および第3シリンダ室連通油路232と、タンク排出油路236とを接続(連通)する。
これにより、第1シリンダ室連通油路218内の作動油は、ロッド部182abを介して、タンク排出油路236からタンクTに排出される。また、第3シリンダ室Sc内の作動油は、第3シリンダ室連通油路232およびロッド部182abを介して、タンク排出油路236からタンクTに排出される。
このように、ロッド部182abは、係合部材238と係合している間、供給油路208(油圧ポンプP)から増圧機構196(増圧弁210)への作動油の供給を停止する。増圧機構196(増圧弁210)は、作動油の供給が停止される間、駆動を停止する。
一方、第1切換弁182aが連通状態に制御されるとき、ロッド部182abの第2切り欠き部182adは、図7Bに示すように、係合部材238と係合する。ロッド部182abは、第2切り欠き部182adが係合部材238と係合している間、供給油路208と、第1シリンダ室連通油路218とを接続(連通)する。
また、ロッド部182abは、第2切り欠き部182adが係合部材238と係合している間、第3シリンダ室連通油路232と、タンク排出油路236とを接続(連通)する。供給油路208は、第1シリンダ室連通油路218と接続されると、油圧ポンプPから送出される作動油を第1シリンダ室連通油路218に供給する。タンク排出油路236は、第3シリンダ室連通油路232と接続されると、第3シリンダ室Sc内の作動油をタンクTに排出させる。
第1シリンダ室連通油路218に供給された作動油は、第1逆止弁234を通過し、第1シリンダ室Saに供給される。第1シリンダ室Saに供給された作動油は、第1ピストン部216a(ピストン216の正面S1)を押圧する。上述したように、第2シリンダ室Sbおよび第3シリンダ室Sc内の作動油は、タンクTに排出されている。そのため、第1シリンダ室Sa内の作動油の油圧は、第2シリンダ室Sbおよび第3シリンダ室Sc内の作動油の油圧より大きい。
したがって、ピストン216は、第1シリンダ室Sa内の作動油の油圧により、第1シリンダ部214aから第2シリンダ部214bに向かって(図7B中、左方向に向かって)移動する。第1シリンダ室Saは、ピストン216が第1シリンダ部214aから第2シリンダ部214bに向かって移動することで拡大していく。
ピストン216は、第1ピストン切換弁連通油路226が第1シリンダ室Saと連通するまで、第1シリンダ部214aから第2シリンダ部214bに向かって移動する。第1ピストン切換弁連通油路226が第1シリンダ室Saと連通すると、第1シリンダ室Sa内の作動油は、第1ピストン切換弁連通油路226に流入する。
第1ピストン切換弁連通油路226の油圧は、ピストン切換弁230の端部に作用する。ここで、第1シリンダ室連通油路218に供給された作動油は、分岐油路220を介してパイロット油路222にも流入する。パイロット油路222の油圧は、ピストン切換弁230のうち、第1ピストン切換弁連通油路226とは反対側の端部に作用する。
このとき、ピストン切換弁230は、パイロット油路222と接続される接続面と、第1ピストン切換弁連通油路226と接続される接続面の受圧面積差により、図7Aに示す第2連通位置から図7Bに示す第1連通位置に駆動される。これにより、ピストン切換弁230は、第2シリンダ室連通油路224と、分岐油路220とを接続(連通)する。
第2シリンダ室連通油路224と分岐油路220とが接続されると、分岐油路220を流通する作動油は、第2シリンダ室連通油路224を介して第2シリンダ室Sbに供給される。第2シリンダ室Sbに供給された作動油は、第2ピストン部216c(ピストン216の背面S2)を押圧する。
ここで、ピストン216の背面S2の受圧面積は、ピストン216の正面S1の受圧面積より大きい。具体的に、ピストン216の背面S2の受圧面積は、ピストン216の正面S1の受圧面積の11倍以上である。本実施形態では、ピストン216の正面S1と背面S2の受圧面積比を11倍としている。ただし、これに限定されず、ピストン216の正面S1と背面S2の受圧面積比は11倍未満であってもよい。
このとき、増圧弁210は、第1シリンダ室Sa内の作動油の油圧を、第2シリンダ室Sb内の作動油の油圧の11倍に増圧することができる。ここで、第2シリンダ室Sbに供給される作動油の油圧(すなわち、油圧ポンプPから送出される作動油の油圧)をP1とする。また、ピストン216の背面S2の受圧面積をA1とし、ピストン216の正面S1の受圧面積をA2とし、第1シリンダ室Sa内の作動油の油圧P2とする。
すると、第1シリンダ室Sa内の作動油の油圧P2は、P1×A1=P2×A2の関係式から、P2=P1×A1/A2となる。A1/A2が11倍であるため、第1シリンダ室Sa内の作動油の油圧P2は、第2シリンダ室Sb内の作動油の油圧P1の11倍まで増圧される。
増圧弁210により増圧されると、第1シリンダ室Sa内の作動油は、第1シリンダ室連通油路218を逆流しようとする。しかし、第1シリンダ室連通油路218には、第1逆止弁234が設けられている。そのため、第1シリンダ室Saから供給油路208へ向かう作動油の流れは制限される。
また、第1シリンダ室Sa内の作動油の油圧は、増圧弁210により増圧されると、第1油圧室168a内の作動油の油圧よりも大きくなる場合がある。第1シリンダ室Sa内の作動油は、第1油圧室168a内の作動油の油圧より大きくなったとき、第2逆止弁240を開弁させる。第1シリンダ室Sa内の作動油は、第2逆止弁240が開弁すると、第1油圧室供給油路170aを介して第1油圧室168a内に供給される。
一方、第2逆止弁240は、第1シリンダ室Sa内の作動油が第1油圧室168a内の作動油の油圧より小さいとき、閉弁状態を維持する。第1油圧室供給油路170aは、第2逆止弁240が閉弁状態を維持する間、第1シリンダ室Saと第1油圧室168aとの接続(連通)が遮断される。
図8は、第1油圧室168a内の作動油の油圧と、第1シリンダ室Sa内の作動油の増圧後の油圧と、油圧ポンプPから送出される作動油の油圧との関係を表す図である。図8では、第1油圧室168a内の作動油の油圧を実線で示す。図8では、第1シリンダ室Sa内の作動油の増圧後の油圧を破線で示す。図8では、油圧ポンプPから送出される作動油の油圧を一点鎖線で示す。図8において、縦軸は、油圧(圧力)であり、横軸は、時間である。
図8に示すように、第1油圧室168a内の作動油の油圧は、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の各エンジンサイクル内で変化している。一方、第1シリンダ室Sa内の作動油の増圧後の油圧および油圧ポンプPから送出される作動油の油圧は、各エンジンサイクルに関わらず、大凡一定である。
第1油圧室168a内の作動油の油圧は、各エンジンサイクル内において、ピストン112の上死点位置近傍で最も高い油圧となる。第1油圧室168a内の作動油の油圧は、ピストン112の上死点位置から下死点位置に向かうに従って低下していく。
そして、第1油圧室168a内の作動油の油圧は、ピストン112が下死点位置に到達する手前の下死点位置近傍において、第1シリンダ室Sa内の作動油の増圧後の油圧を下回る。
第1油圧室168a内の作動油の油圧は、ピストン112が下死点位置近傍を離れ、ピストン112の上昇行程の途中で、第1シリンダ室Sa内の作動油の増圧後の油圧を上回る。
この第1油圧室168a内の作動油の油圧が第1シリンダ室Sa内の作動油の増圧後の油圧を下回ってから上回るまでの期間をT1とする。増圧機構196(増圧弁210)は、期間T1において、第1シリンダ室Sa内の作動油を第1油圧室168aに供給する。
一方、第1油圧室168a内の作動油の油圧が第1シリンダ室Sa内の作動油の増圧後の油圧を上回ってから下回るまでの期間をT2とする。増圧機構196(増圧弁210)は、期間T2において、第1シリンダ室Saから第1油圧室168aへの作動油の供給を停止する。
図7Bに戻り、ピストン216は、期間T1の開始時において第1シリンダ室Sa内の作動油が第1油圧室168aに供給されると、第2シリンダ部214bから第1シリンダ部214aに向かって(図7B中、右方向に向かって)移動する。第2シリンダ室Sbは、ピストン216が第2シリンダ部214bから第1シリンダ部214aに向かって移動することで拡大していく。
ピストン216が図7B中、右方向に移動すると、第1ピストン切換弁連通油路226は、第1ピストン部216aにより閉鎖される。第1ピストン切換弁連通油路226は、第1ピストン部216aにより閉鎖されると、第1ピストン切換弁連通油路226内の油圧を保持する。ピストン切換弁230は、第1ピストン切換弁連通油路226内の油圧が保持されることで、第1連通位置が維持される。
第1連通位置が維持されることで、第2シリンダ室Sbには、第2シリンダ室連通油路224から作動油が供給され続ける。ピストン216は、第2シリンダ室Sbの油圧により背面S2が押圧され、図7B中、右方向に移動し続ける。これにより、増圧された第1シリンダ室Sa内の作動油が第1油圧室168aに供給され続ける。
ピストン216が図7B中、右方向に移動し続けると、第1ピストン切換弁連通油路226は、図7Cに示すように、第3シリンダ室Scと連通する。
上述したように、第3シリンダ室Scは、第3シリンダ室連通油路232およびタンク排出油路236を介してタンクTと連通している。したがって、第1ピストン切換弁連通油路226内の作動油は、第3シリンダ室Sc、第3シリンダ室連通油路232、および、タンク排出油路236を介してタンクTに排出される。
これにより、第1ピストン切換弁連通油路226がピストン切換弁230の端部に作用させる油圧よりも、パイロット油路222がピストン切換弁230の端部に作用させる油圧の方が大きくなる。
そのため、ピストン切換弁230は、図7Bに示す第1連通位置から図7Cに示す第2連通位置に駆動される。これにより、第2シリンダ室連通油路224から第2シリンダ室Sbへの作動油の供給が停止される。また、第2シリンダ室Sb内の作動油は、第3シリンダ室Sc、第3シリンダ室連通油路232、および、タンク排出油路236を介してタンクTに排出される。
さらに、第1シリンダ室連通油路218に供給された作動油は、第1シリンダ室Saに供給され、第1ピストン部216a(ピストン216の正面S1)を押圧する。ピストン216は、第1シリンダ室Sa内の作動油の油圧により、第1シリンダ部214aから第2シリンダ部214bに向かって(図7C中、左方向に向かって)移動する。
ピストン216が図7Cに示す位置から図7Aに示す位置まで移動すると、第1ピストン切換弁連通油路226内に作動油が流入してピストン切換弁230を作用させる。以後、上記の動作を繰り返す。この一連の動作は、第1切換弁182aが連通状態から非連通状態に切り換わるまで繰り返し行われる。
つぎに、排油機構198の具体的な構成について説明する。図9Aは、排油機構198を作動させる前の状態を表す図である。図9Bは、排油機構198が第1油圧室168a内の作動油を排出しているときの状態を表す図である。排油機構198は、本体242と、ポペット(逆止弁)244と、ピストン(押圧部材)246と、給排油路248とを含んで構成される。
本体242は、ポペット244と、ピストン246を収容する。本体242には、ポペット収容室242aと、ピストン収容室242bと、連結室242cとが形成されている。ポペット収容室242aは、ポペット244を収容する。ピストン収容室242bは、ピストン246を収容する。連結室242cは、ポペット収容室242aと、ピストン収容室242bとを連結(接続)する。
ポペット収容室242aは、第1油圧室排出油路170bに接続(連通)される。ピストン収容室242bは、給排油路248に接続(連通)される。連結室242cは、タンク排出油路236に接続(連通)される。
ポペット244は、ポペット収容室242aから連結室242cへ向かう作動油の流れを制限(閉弁)する。ピストン246は、ポペット244を押圧可能に構成される。ピストン246は、給排油路248からピストン収容室242bに作動油が供給される間、ポペット244を押圧する。ピストン246は、給排油路248からピストン収容室242bに作動油が供給されない場合、ポペット244から離間する。
給排油路248は、ロッド部184abを介して供給油路208またはタンク排出油路236に接続(連通)される。
ロッド部184abには、第1切り欠き部184acおよび第2切り欠き部184adが形成されている。第1切り欠き部184acおよび第2切り欠き部184adは、係合部材250と係合可能に構成される。
第1切り欠き部184acは、第2切換弁184aが非連通状態に制御されるとき、係合部材250と係合する。ロッド部184abは、第1切り欠き部184acと係合部材250との係合により移動(例えば、図9中、上方向への移動)が制限される。これにより、第2切換弁184aは、非連通状態を維持することができる。
第2切り欠き部184adは、第2切換弁184aが連通状態に制御されるとき、係合部材250と係合する。ロッド部184abは、第2切り欠き部184adと係合部材250との係合により移動(例えば、図9中、下方向への移動)が制限される。これにより、第2切換弁184aは、連通状態を維持することができる。
以下、本実施形態の排油機構198の動作について説明する。第2切換弁184aが非連通状態に制御されるとき、ロッド部184abの第1切り欠き部184acは、図9Aに示すように、係合部材250と係合する。
ロッド部184abは、第1切り欠き部184acが係合部材250と係合している間、供給油路208と、給排油路248との接続(連通)を遮断する。また、ロッド部184abは、第1切り欠き部184acが係合部材250と係合している間、タンク排出油路236と、給排油路248とを接続(連通)する。
タンク排出油路236と給排油路248が接続されると、ピストン収容室242b内の作動油は、タンクTに排出される。ピストン収容室242b内の作動油がタンクTに排出されると、ピストン246は、ポペット244から離間する方向に移動する。その結果、ピストン246は、ポペット244から離間する。
ポペット収容室242aには、第1油圧室排出油路170bを介して第1油圧室168a内の作動油が流入している。ポペット244は、第1油圧室168aから流入する作動油の油圧により、ピストン246と近接する方向に押圧される。ポペット244は、第1油圧室168aから流入する作動油の油圧により押圧されることで、ポペット収容室242aと連結室242cとの接続部を閉鎖(閉弁)する。
これにより、ポペット収容室242aは、連結室242cとの連通が遮断される。したがって、ポペット収容室242a内の作動油は、ポペット収容室242aから連結室242cへの流れが制限される。
一方、第2切換弁184aが連通状態に制御されるとき、ロッド部184abの第2切り欠き部184adは、図9Bに示すように、係合部材250と係合する。ロッド部184abは、第2切り欠き部184adが係合部材250と係合している間、タンク排出油路236と、給排油路248との接続(連通)を遮断する。また、ロッド部184abは、第2切り欠き部184adが係合部材250と係合している間、供給油路208と、給排油路248とを接続(連通)する。
供給油路208は、供給油路208と給排油路248が接続されると、油圧ポンプPから送出される作動油を給排油路248に供給する。給排油路248は、供給油路208から作動油が供給されると、ピストン収容室242bに作動油を供給する。
ピストン収容室242bに作動油が供給されると、ピストン246は、ピストン収容室242b内の作動油の油圧により、ピストン246の背面246aが押圧される。ピストン246の背面246aが押圧されると、ピストン246は、ポペット244と近接する方向に移動する。
ピストン246がポペット244と近接する方向に移動すると、ピストン246は、ポペット244と当接し、ポペット244をポペット収容室242aと連結室242cとの接続部から離間する方向に押圧する。
ここで、ピストン収容室242bに供給される作動油の油圧(すなわち、油圧ポンプPから送出される作動油の油圧)をP3とし、ピストン246の背面246aの受圧面積をA3とする。また、ポペット収容室242aに供給される作動油の油圧(すなわち、第1油圧室168aから流入する作動油の油圧)をP4とし、ポペット244の背面244aの受圧面積をA4とする。また、ポペット244の背面244aに付与されるスプリングの付勢力をF1とする。
ピストン246の背面246aに作用する力は、P3×A3となる。ポペット244の背面244aに作用する力は、P4×A4+F1となる。ピストン246の背面246aに作用する力がポペット244の背面244aに作用する力より小さいとき、ポペット244は、閉弁状態を維持する。
一方、ピストン246の背面246aに作用する力がポペット244の背面244aに作用する力より大きいとき、ピストン246は、ポペット244をポペット収容室242aと連結室242cとの接続部から離間する方向に移動(開弁)させる。
ポペット244が開弁すると、ポペット収容室242aは、連結室242cと連通する。ポペット収容室242aと連結室242cが連通すると、ポペット収容室242a内の作動油は、連結室242cを介してタンク排出油路236に排出される。タンク排出油路236に排出された作動油は、タンクTに排出される。
これにより、排油機構198は、ポペット244が開弁している間、第1油圧室168a内の作動油をタンクTに排出させることができる。
以上、本実施形態によれば、圧縮比可変機構Vは、圧縮比を大きくする場合、第1切換機構182を一度作動させる。第1切換機構182を一度作動させると、増圧機構196には、常時油圧ポンプPから作動油が供給される。
増圧機構196は、油圧ポンプPから常時供給される作動油を増圧する。増圧機構196は、作動油の増圧後の油圧が第1油圧室168a内の作動油の油圧を上回るタイミングで、作動油を第1油圧室168aに供給する。したがって、圧縮比可変機構Vは、圧縮比を大きくする場合、第1切換機構182を第1油圧シリンダ188と一度当接(接触)させるだけでよい。すなわち、第1油圧シリンダ188は、第1切換機構182を一度押圧するだけでよい。
また、圧縮比可変機構Vは、圧縮比を小さくする場合、第2切換機構184を一度作動させる。第2切換機構184を一度作動させると、排油機構198には、常時油圧ポンプPから作動油が供給される。
排油機構198は、ピストン246の背面246aに作用する力がポペット244の背面244aに作用する力を上回るタイミングで、第1油圧室168a内の作動油を排出させる。したがって、圧縮比可変機構Vは、圧縮比を小さくする場合、第2切換機構184を第3油圧シリンダ192と一度当接(接触)させるだけでよい。すなわち、第3油圧シリンダ192は、第2切換機構184を一度押圧するだけでよい。
また、圧縮比可変機構Vは、圧縮比を維持する場合、第1切換機構182、または、第2切換機構184を一度作動させる。第1切換機構182、または、第2切換機構184を一度作動させると、増圧機構196または排油機構198には、作動油の供給が停止される。
作動油の供給が停止されると、増圧機構196または排油機構198は、駆動を停止する。したがって、圧縮比可変機構Vは、圧縮比を維持する場合、第1切換機構182を第2油圧シリンダ190と一度当接(接触)させる、または、第2切換機構184を第4油圧シリンダ194と一度当接(接触)させるだけでよい。すなわち、第2油圧シリンダ190は、第1切換機構182を一度押圧する、または、第4油圧シリンダ194は、第2切換機構184を一度押圧するだけでよい。
このように、本実施形態の圧縮比可変機構Vは、増圧機構196および排油機構198を備えることにより、各エンジンサイクルにおいて、第1切換機構182または第2切換機構184を毎回作動させる必要性はない。換言すれば、本実施形態の圧縮比可変機構Vは、増圧機構196および排油機構198を備えることで、第1切換機構182または第2切換機構184が駆動機構Dにより押圧される押圧回数を低減することができる。したがって、本実施形態の圧縮比可変機構Vは、耐久性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の圧縮比可変機構Vは、増圧機構196により増圧された油圧が第1油圧室168a内の油圧より大きくなるタイミング(期間T1)で、作動油を第1油圧室168aに供給することができる。また、圧縮比可変機構Vは、期間T1の全区間において作動油を第1油圧室168aに供給することができる。そのため、本実施形態の圧縮比可変機構Vは、早期的に所定の圧縮比に制御することができる。
(変形例)
以下、変形例の増圧機構196Aの具体的な構成について説明する。図10Aは、変形例の増圧機構196Aを作動させる前の状態を表す図である。図10Bは、変形例の増圧機構196Aから第1油圧室168aに作動油を供給している状態を表す図である。本変形例の圧縮比可変機構Vaは、上記実施形態の増圧機構196と異なる増圧機構196Aを備える。上記実施形態と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
増圧機構196Aは、油圧モータ連通油路300と、油圧ポンプ分岐油路302と、油圧モータ304と、連結部306と、油圧ポンプ308とを含んで構成される。
油圧モータ連通油路300は、第1切換弁182aのロッド部182abを介して、供給油路208と、油圧モータ304とに接続される。油圧ポンプ分岐油路302は、油圧モータ連通油路300から分岐する。油圧ポンプ分岐油路302は、油圧モータ連通油路300と、油圧ポンプ308とに接続される。
油圧モータ304は、油圧モータ連通油路300から作動油が供給される間、回転(駆動)する。油圧モータ304は、タンク排出油路236と接続される。油圧モータ304に供給された作動油は、タンク排出油路236を介してタンクTに排出される。
連結部306は、油圧モータ304と、油圧ポンプ308とを連結(接続)する。連結部306は、油圧モータ304および油圧ポンプ308を一体的に回転させる。油圧ポンプ308は、油圧モータ304が回転すると、連結部306により油圧モータ304と連動して回転(駆動)される。
ここで、油圧ポンプ308の容量は、油圧モータ304の容量よりも小さい。そのため、油圧ポンプ308から送出される作動油の油圧は、油圧モータ304に供給される作動油の油圧(すなわち、供給油路208から供給される作動油の油圧)よりも高くなる。
具体的に、油圧ポンプ308の容量は、油圧モータ304の容量の11倍以上である。本変形例では、油圧ポンプ308と油圧モータ304の容量比を11倍としている。したがって、油圧ポンプ308から送出される作動油の油圧は、油圧モータ304に供給される作動油の油圧の11倍まで増圧される。ただし、これに限定されず、油圧ポンプ308と油圧モータ304の容量比は11倍未満であってもよい。
以下、本変形例の増圧機構196Aの動作について説明する。第1切換弁182aが非連通状態に制御されるとき、ロッド部182abの第1切り欠き部182acは、図10Aに示すように、係合部材238と係合する。ロッド部182abは、第1切り欠き部182acが係合部材238と係合している間、供給油路208と、油圧モータ連通油路300との接続(連通)を遮断する。
ロッド部182abは、第1切り欠き部182acが係合部材238と係合している間、油圧モータ連通油路300と、タンク排出油路236とを接続(連通)する。これにより、油圧モータ連通油路300内の作動油は、ロッド部182abを介して、タンク排出油路236からタンクTに排出される。また、油圧ポンプ分岐油路302内の作動油は、ロッド部182abを介して、タンク排出油路236からタンクTに排出される。
このように、ロッド部182abは、係合部材238と係合している間、供給油路208(油圧ポンプP)から増圧機構196Aへの作動油の供給を停止する。増圧機構196Aは、作動油の供給が停止される間、駆動を停止する。
一方、第1切換弁182aが連通状態に制御されるとき、ロッド部182abの第2切り欠き部182adは、図10Bに示すように、係合部材238と係合する。ロッド部182abは、第2切り欠き部182adが係合部材238と係合している間、供給油路208と、油圧モータ連通油路300とを接続(連通)する。
供給油路208は、油圧モータ連通油路300と接続されると、油圧ポンプPから送出される作動油を油圧モータ連通油路300に供給する。油圧モータ連通油路300に供給された作動油は、油圧モータ連通油路300と油圧ポンプ分岐油路302との接続部で分岐する。
油圧ポンプ分岐油路302を流通する作動油は、油圧ポンプ308に供給される。一方、油圧モータ連通油路300を流通する作動油は、油圧モータ304に供給される。油圧モータ304に供給された作動油は、油圧モータ304を回転(駆動)させる。
油圧モータ304を回転させた作動油は、タンク排出油路236を介してタンクTに排出される。油圧モータ304が回転すると、連結部306は、油圧ポンプ308を回転(駆動)させる。
上述したように、油圧ポンプ308の容量は、油圧モータ304の容量よりも小さい。そのため、油圧ポンプ308は、油圧モータ304に供給される作動油の油圧より高い油圧となる作動油を排出する。本変形例では、油圧ポンプ308から排出される作動油の油圧は、油圧モータ304に供給される作動油の油圧の大凡11倍となる。
油圧ポンプ308により増圧された作動油は、第1油圧室168a内の作動油の油圧より大きくなったとき、第2逆止弁240を開弁させる。油圧ポンプ308により増圧された作動油は、第2逆止弁240が開弁すると、第1油圧室供給油路170aを介して第1油圧室168a内に供給される。
一方、第2逆止弁240は、油圧ポンプ308により増圧された作動油が第1油圧室168a内の作動油の油圧より小さいとき、閉弁状態を維持する。第1油圧室供給油路170aは、第2逆止弁240が閉弁状態を維持する間、油圧ポンプ308と第1油圧室168aとの接続(連通)が遮断される。
例えば、増圧機構196Aは、図8の期間T1において、油圧ポンプ308により増圧された作動油を第1油圧室168aに供給する。また、増圧機構196Aは、期間T2において、油圧ポンプ308から第1油圧室168aへの作動油の供給を停止する。
以上、本変形例によれば、圧縮比可変機構Vaは、圧縮比を大きくする場合、第1切換機構182を一度作動させる。第1切換機構182を一度作動させると、増圧機構196Aには、常時油圧ポンプPから作動油が供給される。
増圧機構196Aは、油圧ポンプPから常時供給される作動油を増圧する。増圧機構196Aは、作動油の増圧後の油圧が第1油圧室168a内の作動油の油圧を上回るタイミングで、作動油を第1油圧室168aに供給する。したがって、圧縮比可変機構Vaは、圧縮比を大きくする場合、第1切換機構182を第1油圧シリンダ188と一度当接(接触)させるだけでよい。すなわち、第1油圧シリンダ188は、第1切換機構182を一度押圧するだけでよい。
また、圧縮比可変機構Vaは、圧縮比を維持する場合、第1切換機構182を一度作動させる。第1切換機構182を一度作動させると、増圧機構196Aには、作動油の供給が停止される。
作動油の供給が停止されると、増圧機構196Aは、駆動を停止する。したがって、圧縮比可変機構Vaは、圧縮比を維持する場合、第1切換機構182を第2油圧シリンダ190と一度当接(接触)させるだけでよい。すなわち、第2油圧シリンダ190は、第1切換機構182を一度押圧するだけでよい。
このように、本変形例の圧縮比可変機構Vaは、増圧機構196Aを備えることにより、各エンジンサイクルにおいて、第1切換機構182を毎回作動させる必要性はない。換言すれば、本変形例の圧縮比可変機構Vaは、増圧機構196Aを備えることで、第1切換機構182が駆動機構Dにより押圧される押圧回数を低減することができる。したがって、本変形例の圧縮比可変機構Vaは、耐久性の低下を抑制することができる。
また、本変形例の圧縮比可変機構Vaは、増圧機構196Aにより増圧された油圧が第1油圧室168a内の油圧より大きくなるタイミング(期間T1)で、作動油を第1油圧室168aに供給することができる。また、圧縮比可変機構Vaは、期間T1の全区間において作動油を第1油圧室168aに供給することができる。そのため、本変形例の圧縮比可変機構Vaは、早期的に所定の圧縮比に制御することができる。
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
上述した圧縮比可変機構V、Vaでは、ピストンロッド112aの段差面と、クロスヘッドピン114aの段差面との間に油圧室を形成する場合について説明した。しかし、油圧室は、ピストン112と、ピストンロッド112aとの間に油圧室を形成してもよい。
また、上述した圧縮比可変機構V、Vaでは、第1切換機構182および第2切換機構184を設ける例について説明した。しかし、第1切換機構182および第2切換機構184は必須の構成ではない。したがって、圧縮比可変機構V、Vaには、第1切換機構182および第2切換機構184が設けられていなくともよい。例えば、圧縮比可変機構V、Vaは、第1切換機構182および第2切換機構184が設けられていない場合、油圧ポンプPにより直接駆動されてもよい。具体的に、増圧機構196、196Aは、第1の油圧ポンプPにより駆動され、排油機構198は、第2の油圧ポンプPにより駆動されてもよい。
また、上述した圧縮比可変機構V、Vaでは、排油機構198を設ける例について説明した。しかし、排油機構198は必須の構成ではない。したがって、圧縮比可変機構V、Vaには、排油機構198が設けられていなくともよい。例えば、圧縮比可変機構V、Vaは、排油機構198の代わりに、スピル弁が設けられていてもよい。