JP2019206511A - 化合物、発光材料および有機発光素子 - Google Patents

化合物、発光材料および有機発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】発光材料として有用な化合物を見出すこと。【解決手段】下記一般式で表される化合物。D1はドナー性芳香環基、Aはアクセプター性芳香環基またはシアノ基、R2〜R8は各々独立に水素原子または置換基、R1およびR9は各々独立にアルキル基、mおよびnは0または1、r1およびr9は0〜4の整数を表す。【選択図】なし

Description

本発明は、化合物と、その化合物からなる発光材料、およびその化合物を用いた有機発光素子に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、正孔輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、熱活性化型の遅延蛍光材料を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究も見受けられる。
熱活性化型遅延蛍光材料とは、励起三重項状態に遷移したとき、熱エネルギーの吸収により励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を生じ、その励起一重項状態から基底状態へ戻る際に蛍光を放射する化合物である。こうした経路による蛍光は、逆項間交差を介さずに直接生じた励起一重項状態からの蛍光(通常の蛍光)よりも遅れて観測されるため、遅延蛍光と称されている。例えば、化合物の電流励起では、励起一重項状態と励起三重項状態の発生確率が25%:75%であるため、直接生じた励起一重項状態からの蛍光のみでは、発光効率の向上に限界がある。一方、熱活性型遅延蛍光材料では、75%の確率で発生する励起三重項状態のエネルギーも蛍光発光に有効利用できるため、より高い発光効率が望めることになる。
従来の典型的な熱活性化型遅延蛍光材料として、ドナー部位(D)とアクセプター部位(A)が結合した構造(D−A型構造)を含むものが知られている(例えば、非特許文献1〜4)。ドナー部位(D)とアクセプター部位(A)は、互いに構造的にねじれていることが高い発光効率を実現させるためには重要であると認識されている。
Nature. 2012, 492, 234 ChemCommun. 2012, 48, 11392 ChemCommun. 2013, 49, 10385 Nat. Photon. 2014, 8, 326
一方、ドナー部位(D)とアクセプター部位(A)が空間的に近い位置に存在しているものの、直接結合はしていない化合物については、その合成を含めてほとんど研究がなされていない。このため、そのような化合物の発光特性については未知の状態にある。そこで本発明者らは、新たな観点から発光材料の分子設計に取り組み、新しい発光材料を提供することを目的として鋭意検討を行った。
上記の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、以下に記載する新たな発明を完成するに至った。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
[一般式(1)において、Dはドナー性芳香環基を表し、Aはアクセプター性芳香環基またはシアノ基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子または置換基を表し、RおよびRは各々独立にアルキル基を表し、mおよびnは各々独立に0または1を表し、r1およびr9は各々独立に0〜4の整数を表す。]
[2] mとnが同一である、[1]に記載の化合物。
[3] R〜Rのうちの0〜7つが下記一般式(2)で表される基であり、その他のR〜Rが水素原子または下記一般式(2)で表される基以外の置換基である、[1]または[2]に記載の化合物。
[一般式(2)において、D1’はドナー性芳香環基を表し、R1’はアルキル基を表し、r1’は0〜4の整数を表し、n’は0または1を表す。]
[4] R、RまたはRが、前記一般式(2)で表される基である、[3]に記載の化合物。
[5] nとn’が同一であり、DとD1’が同一の構造を有するドナー性芳香環基である、[4]に記載の化合物。
[6] mとnとn’が同一である、[4]または[5]に記載の化合物。
[7] mとnとn’が1である、[6]に記載の化合物。
[8] 前記ドナー性芳香環基が、窒素原子で結合するドナー性芳香環基である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の化合物。
[9] 前記アクセプター性芳香環基が、炭素原子で結合するドナー性芳香環基である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の化合物。
[10] [1]〜[9]のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
[11] [1]〜[9]のいずれか1項に記載の化合物の遅延蛍光体としての使用。
[12] [1]〜[9]のいずれか1項に記載の化合物を含む有機発光素子。
[13] 前記素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である、[12]に記載の有機発光素子。
[14] 遅延蛍光を放射する、[12]または[13]に記載の有機発光素子。
有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。 化合物1の溶液の吸収スペクトルと蛍光スペクトルである。 化合物1の溶液の燐光スペクトルである。 化合物1の溶液の過渡減衰曲線である。 化合物1の薄膜の吸収および発光スペクトルである。 化合物1の薄膜の過渡減衰曲線と寿命の温度依存性を示すグラフである。 本発明を説明する図である。 本発明を説明する図である。 本発明を説明する図である。 本発明を説明する図である。 本発明を説明する図である。 本発明を説明する図である。 本発明を説明する図である。 本発明を説明する図である。 本発明を説明する図である。 化合物2の溶液の吸収スペクトルと蛍光スペクトル、燐光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)、エネルギー準位および化合物2の双極子モーメントμGS、μESを示す図である。 化合物2の溶液の過渡減衰曲線および発光寿命を示す図である。 化合物7の溶液の吸収スペクトルと蛍光スペクトル、燐光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)およびエネルギー準位を示す図である。 化合物7の溶液の過渡減衰曲線および発光寿命を示す図である。 化合物8の溶液の吸収スペクトルと蛍光スペクトル、燐光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)、エネルギー準位および化合物2の双極子モーメントμGS、μESを示す図である。 化合物8の溶液の過渡減衰曲線および発光寿命を示す図である。 化合物2の薄膜の吸収スペクトルと発光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を示す図である。 化合物2の薄膜の過渡減衰曲線および発光寿命τ〜τを示す図である。 化合物7の薄膜の吸収スペクトルと発光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を示す図である。 化合物7の薄膜の過渡減衰曲線および発光寿命τ〜τを示す図である。 化合物2を用いて作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトル、外部量子効率(EQE)−電流密度特性および電流密度−電圧−輝度特性を示す各グラフ、最大外部量子効率(Max(EQE))および最大輝度(Luminance Max)の各測定値を示す図である。 化合物2を用いて作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトル、外部量子効率(EQE)−電流密度特性および電流密度−電圧−輝度特性を示す各グラフ、最大外部量子効率(Max(EQE))および最大輝度(Luminance Max)の各測定値を示す図である。 化合物7を用いて作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトル、外部量子効率(EQE)−電流密度特性および電流密度−電圧−輝度特性を示す各グラフ、最大外部量子効率(Max(EQE))および最大輝度(Luminance Max)の各測定値を示す図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべてHであってもよいし、一部または全部がH(デューテリウムD)であってもよい。
[一般式(1)で表される化合物]
一般式(1)において、Dはドナー性芳香環基を表し、Aはアクセプター性芳香環基またはシアノ基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子または置換基を表し、RおよびRは各々独立にアルキル基を表し、mおよびnは各々独立に0または1を表し、r1およびr9は各々独立に0〜4の整数を表す。
本明細書において「ドナー性芳香環基」とは、芳香環で結合する基であって、基全体のσp値が0より小さい値を示す基を意味する。ドナー性芳香環基は、例えばσp値が−0.15未満であるものの中や、−0.3未満であるものの中や、−0.45以下であるものの中や、−0.6以下であるものの中から採用してもよい。また、本明細書において「アクセプター性芳香環基」とは、芳香環で結合する基であって、基全体のσp値が0より大きい値を示す基を意味する。アクセプター性芳香環基は、例えばσp値が0.15超であるものの中や、0.3超であるものの中や、0.45超であるものの中や、0.6超であるものの中やから採用してもよい。
本明細書における「ハメットのσ 値」は、L.P.ハメットにより提唱されたものであり、パラ置換ベンゼン誘導体の反応速度または平衡に及ぼす置換基の影響を定量化したものである。具体的には、パラ置換ベンゼン誘導体における置換基と反応速度定数または平衡定数の間に成立する下記式:
における置換基に特有な定数(σp)である。上式において、kは置換基を持たないベンゼン誘導体の速度定数、kは置換基で置換されたベンゼン誘導体の速度定数、Kは置換基を持たないベンゼン誘導体の平衡定数、Kは置換基で置換されたベンゼン誘導体の平衡定数、ρは反応の種類と条件によって決まる反応定数を表す。ハメットのσp値に関する説明と各置換基の数値については、J.A.Dean編 ”Lange's Handbook of Chemistry 第13版“、1985年、3-132〜3-137頁、McGrow-Hill を参照することができる。
一般式(1)においてDが表すドナー性芳香環基は、いずれの原子で結合する基であってもよいが、好ましくは炭素原子またはヘテロ原子(例えば窒素原子)で結合する基であり、より好ましくは窒素原子で結合する基である。
ドナー性芳香環基を構成している結合に関与する芳香環は、単環であっても縮合環であってもよい。単環である場合は、環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環であってもよいし、炭素原子とヘテロ原子からなる環であってもよい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子を挙げることができ、少なくとも窒素原子を含むことが好ましい。縮合環である場合は、縮合環を構成する複数の環が、いずれも環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環であってもよいし、いずれも環骨格構成原子がヘテロ原子と炭素原子からなる環であってもよいし、環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環と環骨格構成原子が炭素原子とヘテロ原子からなる環を含むものであってもよい。好ましいのは、環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環と環骨格構成原子が炭素原子とヘテロ原子からなる環を含む縮合環である。なお、本明細書において、環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環は6員環であることが好ましく、環骨格構成原子が炭素原子とヘテロ原子からなる環は5〜7員環であることが好ましく、5または6員環であることがより好ましい。
が表すドナー性芳香環基の具体例として、カルバゾール−9−イル基を挙げることができる。
が表すドナー性芳香環基の芳香環は置換されていてもよい。そのような置換基は、σp値が0.2以下であるものの中から選択することが好ましく、0.1以下であるものの中から選択することがより好ましく、0未満であるものの中から選択することがさらに好ましい。具体的な置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数3〜40のヘテロアリールチオ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数3〜40のヘテロアリールチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基である。
一般式(1)においてAが表すアクセプター性芳香環基は、いずれの原子で結合する基であってもよいが、好ましくは炭素原子で結合する基である。
アクセプター性芳香環基を構成している結合に関与する芳香環は、単環であっても縮合環であってもよい。単環である場合は、環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環であってもよいし、炭素原子とヘテロ原子からなる環であってもよいが、ヘテロ原子からなる環である場合が好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子を挙げることができ、窒素原子を少なくとも含むことが好ましい。縮合環である場合は、縮合環を構成する複数の環が、いずれも環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環であってもよいし、いずれも環骨格構成原子がヘテロ原子と炭素原子からなる環であってもよいし、環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環と環骨格構成原子が炭素原子とヘテロ原子からなる環の縮合環であってもよい。好ましいのは、環骨格構成原子が炭素原子とヘテロ原子からなる環どうしの縮合環である場合と、環骨格構成原子が炭素原子のみからなる環と環骨格構成原子が炭素原子とヘテロ原子からなる環の縮合環である場合である。アクセプター性芳香環基を構成する、環骨格構成原子が炭素原子とヘテロ原子からなる環におけるヘテロ原子の数は、1〜4個であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましい。
Aが表すアクセプター性芳香環基の具体例として、1,3,5−トリアジン−2−イル基、ピリジン−4−イル基、4−ベンゾニトリル基、5−イソフタロニトリル基を挙げることができる。
Aが表すアクセプター性芳香環基の芳香環は置換されていてもよい。そのような置換基は、σp値が−0.2以上であるものの中から選択することが好ましく、−0.1以上であるものの中から選択することがより好ましく、0超であるものの中から選択することがさらに好ましい。具体的な置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、炭素数6〜40のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数3〜40のヘテロアリールチオ基、炭素数6〜40のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜20のアルキルアミド基、炭素数7〜21のアリールアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、シアノ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、シアノ基である。
一般式(1)におけるR〜Rは各々独立に水素原子または置換基を表す。R〜Rはすべてが水素原子であってもよい。また、R〜Rのうち置換基であるものの数は0〜6個のいずれであってもよいが、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であったり、0個であったりしてもよい。置換基の位置は特に制限されず、例えばRとR、RとR、RとRとRとRなどを例示することができる。
〜Rがとりうる置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、炭素数6〜40のアリールチオ基、炭素数6〜40のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数3〜40のヘテロアリールチオ基、炭素数6〜40のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、炭素数2〜20のアルキルアミド基、炭素数7〜21のアリールアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数12〜40のアリール置換アミノ基、シアノ基を挙げることができる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基である。
一般式(1)におけるRおよびRは各々独立にアルキル基を表す。アルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、好ましいのは直鎖状、分枝状である。アルキル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を挙げることができる。r1およびr9は0〜4のいずれかの整数であり、0であってもよい。r9が1〜4のいずれかの整数であるときの置換位置は、一般式(1)におけるカルバゾール環に結合する位置を1位とし、Dに結合する位置を4位としたとき、2位、3位、2位と5位、2位と3位、2位と5位、2位と6位、2位と3位と5位、2位と3位と6位、2位と3位と5位と6位のいずれであってもよい。好ましいのは、少なくとも2位が置換されている場合であり、より好ましくは2位と6位が置換されている場合である。
一般式(1)におけるR〜Rのうちの0〜7つは、下記一般式(2)で表される基であり、その他のR〜Rが水素原子または下記一般式(2)で表される基以外の置換基であることが好ましい。なかでも、R、RおよびRの0〜3つが下記一般式(2)で表される基であることが好ましく、さらには、R、RおよびRの0〜3つが下記一般式(2)で表される基であり、その他のR〜Rが水素原子または下記一般式(2)で表される基以外の置換基であることがより好ましい。例えば、R、RおよびRの1〜3つが下記一般式(2)で表される基であり、その他のR〜Rが水素原子または下記一般式(2)で表される基以外の置換基である態様を例示することができる。
一般式(2)において、D1’はドナー性芳香環基を表し、R1’はアルキル基を表し、r1’は0〜4の整数を表し、n’は0または1を表す。
一般式(1)においてD1’は、水素原子またはドナー性芳香環基を表す。
1’が水素原子であるとき、n’は0であっても1であってもよいが、0であることが好ましい。
1’が表すドナー性芳香環基は、いずれの原子で結合する基であってもよいが、好ましくは炭素原子またはヘテロ原子(例えば窒素原子)で結合する基であり、さらに好ましくは窒素原子で結合する基である。D1’がとりうるドナー性芳香環基の説明と好ましい範囲については、Dがとりうるドナー性芳香環基に関する上記の説明を参照することができる。
1’がドナー性芳香環基であるとき、その構造は、Dが表すドナー性芳香環基と同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。また、D1’が表すドナー性芳香環基が、Dが表すドナー性芳香環基と異なる場合は、DとD1’を構成する芳香環が共通していて、その芳香環に対する置換基が異なっている場合が好ましい。例えば、Dが無置換のカルバゾール−9−イル基であって、D1’が置換されたカルバゾール−9−イル基である場合を例示することができる。なお、ここでいうD1’のカルバゾール−9−イル基に対する置換基としては、Dの説明における置換基の記載を参照することができる。
また、一般式(2)におけるR1’とr1’の説明と好ましい範囲については、一般式(1)におけるRとr1の説明と好ましい範囲の記載を参照することができる。
一般式(1)および一般式(2)において、m、nおよびn’は、各々独立に0または1を表す。mとnはともに0であるか、ともに1である場合が好ましく、ともに1である場合がより好ましい。n’が0である場合は、mとnも0であることが好ましい。また、n’が1である場合は、mとnも1であることが好ましい。
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
一般式(1)で表される化合物は、mCBPにドープした状態での最低励起一重項エネルギー準位ES1と最低励起三重項エネルギー準位ET1の差ΔESTが0.4eV以下であることが好ましく、
0.2eV以下であることがより好ましく、0.1eV以下であることがより好ましく、0.05eV以下であることがより好ましい。
ΔESTは、下記の方法により測定することができる。
[トルエンまたはPMMA中での最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)の差ΔEST
トルエンまたはPMMA中での化合物の最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)の差ΔESTは、最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)を以下の方法で算出し、ΔEST=ES1−ET1により求めることができる。
(1)最低励起一重項エネルギー準位(ES1
測定対象化合物を含むトルエン溶液(濃度:1×10−5M)、またはシリコン基板上に形成した測定対象化合物を含むPMMA膜(化合物の濃度:0.1mol%、厚さ100nm)を測定試料として用意し、常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトルを測定する。具体的には、励起光入射直後から入射後100ナノ秒までの発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の蛍光スペクトルを得る。この発光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をES1とする。
換算式:ES1[eV]=1239.85/λedge
(2)最低励起三重項エネルギー準位(ET1
最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と同じ試料を5[K]に冷却し、励起光(337nm)を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定する。励起光入射後1ミリ秒から入射後10ミリ秒の発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の燐光スペクトルを得る。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をET1とする。
換算式:ET1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、試料がトルエン溶液のときは、77[K]で燐光測定装置により測定する。
[mCBP中での最低励起一重項エネルギー準位ES1と最低励起三重項エネルギー準位ET1との差ΔEST
mCBP中での化合物の最低励起一重項エネルギー準位ES1と最低励起三重項エネルギー準位ET1との差ΔESTは、ΔESTをアレニウスの式における活性化エネルギーEとして、実験により測定したT−1とln (kRISC)の相関図の傾きaから求める。
すなわち、下記式(1)で表されるアレニウスの式の両辺を自然対数に変換すると下記式(2)が得られる。
式(1)、(2)において、kは反応の速度定数を表し、Aは頻度因子を表し、Eは活性化エネルギーを表し、Rは気体定数を表し、Tは絶対温度を表す。ここで、1分子での気体定数Rは0.86173312×10−4(eVK−1)である。
式(2)から、T−1とln kは、−E/Rを傾きとする一次関数で表されることがわかる。したがって、T−1とln kの相関図の傾きをaとしたとき、活性化エネルギーEは下記式(4)で近似的に表される。
=−a×0.8617×10−4 ・・・・・(4)
ここで、励起一重項状態から励起三重項状態への逆項間交差では、ΔESTを活性化エネルギー(ポテンシャル障壁の高さ)と見ることができるため、式(4)のEをΔESTに置き換えた下記式(5)が成り立つ。
ΔEST=−a×0.8617×10−4 ・・・・・(5)
本実施例では、対象化合物とmCBPの共蒸着膜を対象化合物の濃度が3重量%となるように形成して、その発光の過渡減衰曲線を10〜300Kの範囲で温度を変えて測定し、T−1とln (kRISC)(kRISCは逆項間交差の速度定数である)の相関図を得る。この相関図の傾きaから式(5)を用いてΔESTを導く。
一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を放射しうる。したがって、本発明には、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と一般式(1)で表される化合物の遅延蛍光体としての使用方法も含まれる。
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)がとりうる最も小さい分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
また、一般式(1)で表される化合物は、一般式(1)で表されるモノマーを重合させた重合体であってもよい。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、有機発光素子の材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR〜R、A、D、D1’のいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を有機発光素子の材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを有機発光素子の材料として用いることも考えられる。
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(11)または(12)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
一般式(11)または(12)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、LおよびLは連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X11−L11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(11)または(12)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
およびLで表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のR〜R、A、D、D1’のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(13)〜(16)で表される構造を挙げることができる。
これらの式(13)〜(16)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のR〜R、A、D、D1’のいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物の合成法は特に制限されない。例えば、一般式(1)のDとD1’が同じドナー性芳香環基であって、r1とr9が0である場合は、下記のスキームにしたがって合成することが可能である。
上式において、Dはドナー性芳香環基を表し、Aはアクセプター性芳香環基またはシアノ基を表し、XおよびXは各々独立にハロゲン原子を表し、R〜Rは各々独立に水素原子または置換基を表し、m、nは各々独立に0または1を表す。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子または臭素原子を採用することが好ましい。上記反応は、PdCl(PPh等の触媒存在下で行うことが可能であり、反応の詳細については後述の実施例を参考にすることができる。なお、本明細書においてPhはフェニル基を表す。
一般式(1)のXが水素原子または置換基である化合物の合成は、出発物質のXが水素原子または置換基である化合物を用いることにより、上記反応式にしたがって合成することが可能である。
一般式(1)のDとD1’が異なるドナー性芳香環基である化合物の合成は、Xを保護した出発物質を用いて、Xの位置にDを含む基をまず導入し、次いで、Xをハロゲン原子に置換した後にDと同様の反応にしたがってD1’を含む基をXの位置に導入することにより合成することが可能である。
また、一般式(1)のRが一般式(2)で表される基で置換された化合物を合成する場合は、上式の出発物質としてRがハロゲン原子である化合物を用いれば合成することが可能である。同様に、一般式(1)のRが一般式(2)で表される基で置換された化合物を合成する場合は、上式の出発物質としてRがハロゲン原子である化合物を用いれば合成することが可能である。
一般式(1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
例えば、一般式(1)のカルバゾール環9位の窒素原子に水素原子が結合した化合物を出発物質として、ドナー性基を有するハロゲン化物と反応させることにより、一般式(1)で表される化合物を合成することも可能である。
[有機発光素子]
本発明の有機発光素子は、一般式(1)で表される化合物を含む。一般式(1)で表される化合物は発光層の発光物質として用いてもよいし、発光層またはそれに隣接する層において、ホストまたはアシストドーパントとして用いることもできる。また、一般式(1)で表される化合物は発光層のホストとして用いたり、発光層以外の層に用いたりしてもよい。
例えば、遅延蛍光を放射する一般式(1)で表される化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、この化合物が遅延蛍光材料として機能することにより、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光である燐光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般に燐光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、外気の熱やデバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料として、一般式(1)で表される化合物を用いることが可能である。特に、遅延蛍光を放射する一般式(1)で表される化合物を用いれば、高い発光効率を実現することが可能になるため好ましい。高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含んでいてもよい。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%未満であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。本発明の有機発光素子には、一般式(1)で表される化合物をホスト材料として採用し、一般式(1)以外の化合物を発光材料として採用してもよい。一般式(1)で表される化合物をホスト材料として採用する場合の発光層中における含有量は、30重量%以上であることが好ましく、50重量%超であることがより好ましい。
発光層には、ホスト材料と発光材料の他に、いわゆるアシストドーパントを採用してもよい。一般式(1)で表される化合物は、そのようなアシストドーパントとして用いてもよい。アシストドーパントとして用いる場合の発光層中における含有量は、発光材料の含有量よりも多く、ホストの含有量よりも少なくすることが好ましい。通常は、0.5重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%未満であることが好ましく、30重量%未満であることがより好ましく、15重量%未満であることがさらに好ましい。
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、各層に含まれる一般式(1)で表される化合物は、発光層に用いるものと、発光層以外の層に用いるものとで、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも、一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、燐光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、燐光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、一般式(1)で表される化合物を発光層に含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
また、本発明の有機発光素子は、有機発光トランジスタであってもよい。有機発光トランジスタは、例えば発光層を兼ねる活性層に、ゲート絶縁層を介してゲート電極が積層されるとともに、該活性層にソース電極およびドレイン電極が接続された構造を有する。こうした有機発光トランジスタの活性層に一般式(1)で表される化合物を用いることにより、キャリア移動度および発光特性のいずれにも優れた有機発光トランジスタを実現することができる。
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、紫外可視近赤外分光光度計(パーキンエルマー社製:Lambda950−PKA)、蛍光分光光度計(HORIBA社製:FluoroMax−4)、マルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製:PMA−12C10027−01)、光励起絶対発光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製:C9920PMA−11)、蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製:C11367−25)、およびストリークカメラ(浜松ホトニクス社製:U8167−1)を用いて行った。
(実施例1)化合物1の合成
化合物1を下記のスキームにしたがって合成した。
(1)CzPhBrの合成
1−ブロモ−4−フルオロベンゼン(3.6g、20.48mmol)、3,6−ジメチル−9H−カルバゾール(1.00g、5.1mmol)および炭酸セシウム(6.6g、20.48mmol)の混合物を、ジメチルホルムアミド(50mL)中でアルゴン雰囲気下にて反応させた。 反応混合物を150℃で5時間加熱し、反応終了後に混合物をブラインに入れ、ジクロロメタン/ヘキサン(1:1)で抽出した。有機相を合わせて、シリカプラグで濾過して、CzPhBrを白色粉末として得た(収量1.7g、収率94%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm) 7.90 (d, J = 0.7 Hz, 2HCz), 7.70 (d, J = 8.7 Hz, 2HPh), 7.43 (d, J = 8.7 Hz, 2HPh), 7.27 (d, J = 8.4 Hz, 2HCz), 7.21 (dd, J = 8.4 Hz, J = 0.7 Hz, 2HCz).
(2)CzPhB(OH)の合成
アルゴン雰囲気下にて、CzPhBr(2.0g、5.7mmol)をテトラヒドロフラン(50ml)中で−78℃にて撹拌し、次いでnBuLi(2.4mL、6.0mmol)を滴下した。 30分間撹拌した後、B(OMe)(0.9g、8.6mmol)を滴下し、溶液を室温まで温めた。一晩攪拌した後、反応を水でクエンチして、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、得られた溶液を、酢酸エチル溶出液を用いてシリカプラグで濾過して、CzPhB(OH)を白色粉末として回収し、これをさらに精製することなく次の工程で使用した(収量1.57g、収率87%)。
(3)TRZPhFの合成
(4−フルオロフェニル)ボロン酸(1.4g、10.0mmol)、2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(2.3g、8.6mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド(0.3g、0.4mmol)からなる気泡ジオキサン(30mL)中の混合物に対して、気泡水(10mL)中の炭酸カリウム(2.4g、17.2mmol)を加え、アルゴン下で110℃で12時間加熱して反応させた。室温に冷却後、混合物をクロロホルムで希釈し、水で洗浄した。有機抽出物を合わせて、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をジクロロメタンで希釈し、シリカゲルプラグで濾過して、TRZPhFを白色固体として得た(収量2.8g)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.91-8.75 (m, 6H), 7.64-7.56 (m, 6H), 7.27-7.23 (m, 2H).
(4)TRZPhCzの合成
3,6−ジメチル−カルバゾール(1.4g、7.2mmol)、炭酸セシウム(4.0g、7.2mmol)および2−(4−フルオロフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(2.0g、6.2mmol)の混合物を、ジメチルホルムアミド(40ml)中でアルゴン雰囲気下にて150℃で12時間反応させた。次いで、得られた黒色混合物を水で希釈し、粗生成物をクロロホルムで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、得られた溶液を真空下で濃縮して生成物を沈殿させた。次いで、混合物を濾過して、TRZPhCzを淡黄色固体として得た(収量2.3g、収率75%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm): 9.03 (d, J = 8.5 Hz, 2H) 8.86 (d, J = 8.5 Hz, 4H) 7.95 (s, 1H) 7.83 (d, J = 8.5 Hz, 2H) 7.68-7.61 (m, 6H) 7.50 (d, J = 8.5 Hz, 2H) 7.28 (d, J = 8.5 Hz, 2H) 2.58 (s, 6H).
(5)TRZPhCzBrの合成
3,6−ジメチル−9H−カルバゾール(2.0g、4.0mmol)とN−ブロモスクシンイミド(1.8g、10.0mmol)の混合物を150mLのクロロホルムに溶解した。20gのシリカゲルを加えた後、アルゴン雰囲気下にて還流下で反応物を18時間撹拌した。次いで、得られた溶液をろ過し、水酸化ナトリウム水溶液および水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、再びろ過した。溶媒を真空下で除去し、残渣をジクロロメタン濃縮溶液からヘキサンで沈殿させて、TRZPhCzBrを白色粉末として得た(収量2.60g、収率98%)。
(6)化合物1の合成
アルゴン雰囲気下で、TRZPhCzBr(1.5g、2.3mmol)、CzPhB(OH)(2.2g、6.8mmol)およびPdCl(PPh(160mg、0.23mmol)のジオキサン(100mL)溶液に、KCO(1.3g、9.2mmol)を水(10ml)に溶解した溶液を添加し、反応物を一晩還流させた。次いで、得られた混合物をクロロホルムで抽出し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘキサン=1:3)により精製した。得られた白色粉末を次にジクロロメタン中の濃縮溶液からヘキサンで再結晶させて化合物1を白色粉末として得た(収量540mg、収率23%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.66 (m, 6H), 7.99 (s, 2H), 7.86-7.78 (m, 2H), 7.75-7.69 (m, 2H), 7.65-7.50 (m, 10H), 7.43-7.34 (m, 6H), 7.32 (dd, J=8.3Hz, 2H), 7.27 (d, J=1.1Hz), 1H), 7.24-7.20(m, 2H), 7.00 (d, J=8.3Hz, 2H), 6.76 (dd, J=11.6Hz, 4.2H, 3H), 2.61 (s, 6H), 2.40 (s, 3H), 2.46 (s, 3H), 2.20 (s, 6H).
(実施例2)化合物2の合成
(1)中間体aの合成
ジクロロメタン(160mL)中の3,6−ジメチルカルバゾール(2g、10.2mmol)およびSiO(10g)の0℃の混合物に、N−ブロモスクシンイミド(2.0g、11.2mmol)のジクロロメタン(160mL)溶液を滴下した。室温で2時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、水酸化ナトリウム水溶液(1M)で3回洗浄した。得られた溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去し、中間体aを白色粉末として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm) 8.03 (s, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.36 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.25 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 2.52 (s, 3H), 2.52 (s, 3H).
(2)中間体bの合成
4−(3,6−ジメチルカルバゾリル)フェニルボロン酸(1.07g、3.4mmol)、中間体a(1.00g、2.8mmol)、およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(0.10g、0.14mmol)の脱気ジオキサン(95mL)中の混合物へ、脱気水(5mL)中の炭酸カリウム(0.58g、4.2mmol)を加え、反応混合物をアルゴン下で110℃で18時間加熱した。室温に冷却した後、混合物を水中に注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で濃縮した。粗生成物をジクロロメタン濃縮溶液から沈殿させて、中間体bを白色粉末として得た(収量1.19g、収率91%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.50 (s, 1H), 7.95 (s, 2H), 7.91 (d, 4H), 7.89 (s, 4H), 7.72 (d, 4H), 7.40 (s, 2H), 7.37 (d, 4H), 7.11 (d, 4H).
(3)化合物2の合成
2−(4−フルオロフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5?トリアジン(2.1g、6.46mmol)、中間体b(3.00g、6.46mmol)および炭酸セシウム(8.4g、25.80mmol)のDMF(100mL)中の混合物をアルゴン下で反応させた。反応混合物を一晩加熱還流した。反応終了後に混合物を水に注ぎ入れ、ジクロロメタンで抽出して、有機相をシリカで濾過した。次いで粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン1:1)により精製し、エタノールをジクロロメタン濃縮溶液に添加することにより沈殿させて、化合物2を白色固体として得た(収率60%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm) 8.71 (d, J = 8.2 Hz, 4H), 8.66 (d, J= 8.5 Hz, 2H), 8.01 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.60 (m, 4H), 7.53 (m, 4H), 7.39 (2, J = 8.4 Hz, 2H), 7.36 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.33 (s, 1H), 7.30 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.25 (m, 3H), 6.99 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 6.74 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 2.66 (s, 3H), 2.58 (s, 3H), 2.20 (s, 6H).
13C NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm) 171.73, 170.87, 143.21, 141.00, 139.12, 138.05, 136.62, 136.53, 136.33, 134.43, 132.60, 130.53, 130.19, 130.12, 130.06, 129.47, 129.13, 128.86, 128.73, 127.81, 126.97, 125.99, 125.92, 125.80, 123.86, 123.28, 120.28, 119.89, 119.82, 110.05, 109.30, 21.54, 21.46, 21.12.
(実施例3)化合物7の合成
中間体b(200mg、0.45mmol)の0℃の乾燥THF(10mL)溶液に、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(0.3mL、1.6M、0.47mmol)を滴下した。反応物を室温まで昇温させ、Pd(PPh(50mg、0.05mmol)および2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(140mg、0.50mmol)の溶液を添加した。NaHCOの無水THF(10mL)溶液を加えて一晩還流した後、反応混合物を水に注ぎ入れ、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン1:3)で精製し、3回再結晶して、化合物7を黄色結晶として得た(収率50%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm) 8.56 (d, J = 7.2 Hz, 4H), 8.48 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.93 (s, 2H), 7.79 (s, 2H), 7.59 (m, 4H), 7.51 (m, 4H), 7.45 (s, 1H), 7.35 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 8.3 Hz, 4H), 6.73 (s, 2H), 2.67 (s, 3H), 2.58 (s, 3H), 2.50 (s, 6H).
13C NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm) 171.66, 164.76, 139.77, 139.16, 139.01, 136.28, 135.21, 135.03, 132.98, 132.77, 132.46, 129.90, 129.33, 129.02, 128.77, 128.42, 128.29, 128.27, 126.92, 126.29, 126.09, 135.15, 120.09, 119.88, 119.34, 120.09, 119.88, 119.34. 113.56, 109.36, 21.47, 21.43, 21.38.
(実施例4)化合物8の合成
4?フルオロベンゾニトリル(3.1g、25.3mmol)、中間体b(2.9g、6.3mmol)および炭酸セシウム(8.2g、25.3mmol)のDMF(115mL)中の混合物をアルゴン下で反応させた。 反応混合物を一晩加熱還流した。 反応終了後に混合物を水に注ぎ入れ、ジクロロメタンで抽出した。有機相をシリカで濾過し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン1:1)により精製し、エタノールをジクロロメタン濃縮溶液に添加することにより沈殿させて、化合物8を白色固体として得た(収率45%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm) 7.98 (d, J = 11.6 Hz, 2H), 7.89 (s, 2H), 7.55 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.34 (d, J= 8.2 Hz, 2H), 7.31-7.23 (m, 9H), 7.11 (d,J = 8.3 Hz, 2H), 2.64 (s, 3H), 2.57 (s, 3H), 2.56 (s, 6H).
13C NMR (500 MHz, CDCl3) δ (ppm) 143.62, 140.37, 139.49, 138.11, 136.89, 135.92, 132.61, 130.87, 130.77, 130.51, 130.42, 129.35, 128.13, 127.97, 127.56, 126.51, 126.22, 125.46, 124.13, 123.52, 120.47, 120.36, 120.00, 118.30, 110.10, 109.61, 109.20, 21.57, 21.50, 21.42.
(実施例5)化合物1の溶液
Ar雰囲気のグローブボックス中で、四塩化炭素(CCl4)、シクロヘキサン(CycloH)、トルエン(Tol)、ジクロロメタン(DCM)およびアセトニトリル(ACN)の各溶媒に、実施例1で合成した化合物1を濃度が1.0×10−5mol/Lとなるように溶解させて、5種類の溶液を調製した。各溶液の吸収スペクトルと蛍光スペクトルを図2に示し、77Kで測定した燐光スペクトルを図3に示す。
各溶液の吸収スペクトルは似ており、紫外領域で吸収を示した。一方、蛍光極大波長は、四塩化炭素やシクロヘキサンのような無極性溶媒中では430nmであったのに対して、アセトニトリルのような極性溶媒中では530nmへと長波長側へシフトし、第一励起一重項状態の電荷移動性(CT)が確認された。77Kにおける燐光スペクトルも、溶媒の極性に依存した発光を示し、トルエン中で局部的に励起された三重項状態(LE)が観測され、ジクロロメタン中では電荷移動状態(CT)が観測された。このことは、2つの第一励起三重項状態(CTおよびLE)のエネルギーが非常に近く、溶媒の極性のわずかな変化によって状態が逆転することを示している。
各溶液のフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を、酸素でバブリングした状態(O)、バブリングしない状態(Air)、窒素でバブリングした状態(N)の各状態で測定した。結果を表1に示す。いずれの溶液においても、酸素が存在しない状態において、フォトルミネッセンス量子収率が高くなる傾向が確認された。
次に、シクロヘキサン、トルエン、ジクロロメタンおよびアセトニトリルの各溶媒中における化合物1の発光寿命を評価した。図4に過渡減衰曲線を示す。測定は、酸素でバブリングした状態、バブリングしない状態、窒素でバブリングした状態の各状態で試みた。
その結果、図4(a)に示すようなマイクロ秒スケールの測定では、窒素でバブリングした状態の極性溶媒(ジクロロメタンおよびアセトニトリル)中でのみ遅延したマイクロ秒オーダーの蛍光が観測された。観測された遅延したマイクロ秒オーダーの蛍光の寿命は、ジクロロメタン中で2.7μsであり、アセトニトリル中で1.3μsであった。これに対して、無極性溶媒(シクロヘキサン、トルエン)中では遅延したマイクロ秒オーダーの蛍光は観測されなかった。
一方、無極性溶媒中では、図4(b)に示すようなナノ秒スケールの測定において、長めの即時蛍光が観測された。このような長めの即時蛍光は、極性溶媒中でも観測された。即時蛍光の寿命を表2にまとめて示す。いずれの溶媒中においても、酸素が存在しない状態において、フォトルミネッセンス量子収率が高くなる傾向が確認された。また、酸素でバブリングした状態よりも、窒素でバブリングした状態の方が、寿命が約6倍長くなることも確認された。このことから、1つの三重項状態が発光に関与しており、それが非常に速い遅延発光を可能にしていると考えることができる。
(実施例6)化合物1の薄膜
石英基板上にスピンコート法にて、化合物1からなる薄膜(単独膜)を100nmの厚さで形成した。この薄膜の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを図5に示す。薄膜における化合物1の吸収および発光スペクトルは、トルエン中における吸収および発光スペクトルと非常に似ており、極大発光波長は455nmであった。フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は、窒素雰囲気下で24%、大気中で20%未満であった。
石英基板上にスピンコート法にて、化合物1からなる薄膜(単独膜)を100nmの厚さで形成した。この薄膜に対して、ストリークカメラ装置を用いて温度を変えて時間分解測定を行った結果を図6(a)に示し、寿命の温度依存性を図6(b)に示す。減衰曲線に温度依存性が認められ、また、図6(b)に示すような異なる発光成分(即時蛍光PF、第1遅延成分DL1、第2遅延成分DL2)の寿命を抽出することができた。第2遅延成分は、200K以上の高温領域で一般的な熱活性型遅延蛍光(TADF)が優勢となり、200K未満の低温領域では燐光が優勢になっていることが考えられる。
(実施例7)化合物2の溶液
化合物1の代わりに化合物2を用いること以外は、実施例5と同様にして化合物2の溶液を調製し、発光特性を測定した。ここで、溶液の溶媒には、シクロヘキサン(CycloH)、トルエン(Tol)、クロロホルム(CHL)、酢酸エチル(EA)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、ピバロニトリル(BuCN)およびアセトニトリル(ACN)の8種類を使用した。
各溶液の吸収スペクトルと蛍光スペクトル、77Kで測定した燐光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)、電荷移動型の励起一重項状態1CTおよび局所励起三重項状態3LEの各エネルギー準位、並びに、化合物2の双極子モーメントμGS、μESを図16に示し、各溶液の過渡減衰曲線および発光寿命を図17に示す。なお、図16に示す吸収スペクトルは、各溶液でほぼ一致していた。また、エネルギー準位図において、左側の数値は、各溶液の1CT準位の値を示し、その右側の線分は、それらの1CT準位およびCHL溶液の3LE準位をプロットしたものである。この表示については、以下の図18、20のエネルギー準位図においても同様である。
(実施例8)化合物7の溶液
化合物1の代わりに化合物7を用いること以外は、実施例5と同様にして化合物7の溶液を調製し、発光特性を測定した。ここで、溶液の溶媒には、実施例7と同じ種類のものを使用した。
各溶液の吸収スペクトルと蛍光スペクトル、77Kで測定した燐光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)、電荷移動型の励起一重項状態1CTおよび局所励起三重項状態3LEの各エネルギー準位を図18に示し、各溶液の過渡減衰曲線および発光寿命を図19に示す。なお、図18の吸収スペクトルおよび図19の10000μsオーダーでの過渡減衰曲線は、各溶液でほぼ一致していた。
(実施例9)化合物8の溶液
化合物1の代わりに化合物8を用いること以外は、実施例5と同様にして化合物8の溶液を調製し、発光特性を測定した。ここで、溶液の溶媒には、実施例7と同じ種類のものを使用した。
各溶液の吸収スペクトルと蛍光スペクトル、77Kで測定した燐光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)、電荷移動型の励起一重項状態1CTおよび局所励起三重項状態3LEの各エネルギー準位、並びに、化合物8の双極子モーメントμGS、μESを図20に示し、各溶液の過渡減衰曲線および発光寿命を図21に示す。なお、図20に示す吸収スペクトルは、各溶液でほぼ一致していた。
以上の実施例7〜9で測定した過渡減衰曲線から、化合物7、8と比較して、化合物2の溶液で、よりはっきりと遅延蛍光を確認することができた。
(実施例10)化合物2を含む薄膜
真空蒸着法を用い、真空度10−4Pa以下の条件で、石英基板上に化合物2からなる薄膜(単独膜)を形成した。
また、これとは別に、真空度10−4Pa以下の条件で、石英基板上に化合物2とホスト化合物を共蒸着することにより、薄膜(共蒸着膜)を形成した。ここで、ホスト化合物には、PPT、DPEPOまたはmCBPを使用し、化合物2の濃度を5〜80重量%の範囲で変えて、化合物2の濃度が異なる各種共蒸着膜を形成した。
作製した単独膜および各共蒸着膜について、実施例6と同様にして発光特性を測定した。各薄膜の吸収スペクトルと発光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を図22に示し、温度を変えて測定した過渡減衰曲線および発光寿命τ〜τを図23に示す。図22に示す吸収スペクトルおよび発光スペクトルにおいて、「5」、「10」、「15」、「20」、「40」、「60」および「80」は、その濃度(重量%)で化合物2を含有する共蒸着膜を示し、「100」は、化合物2の単独膜を示す。図23において、「DPEPO」は、ホスト化合物としてDPEPOを用い、化合物2の濃度が5重量%である共蒸着膜を示し、「mCBP」は、ホスト化合物としてmCBPを用い、化合物2の濃度が5重量%である共蒸着膜を示し、「PPT」は、ホスト化合物としてPPTを用い、化合物2の濃度が5重量%である共蒸着膜を示す。各グラフに示す複数の過渡減衰曲線は、上から順に300K、250K、200K、150K、100K、50Kで測定したものである。τは即時蛍光の発光寿命を示し、τ〜τは、それぞれ第1遅延成分〜第3遅延成分の発光寿命を示す。τとτの欄に跨って示した発光寿命は、第2遅延成分と第3遅延成分との合成成分の発光寿命である。
(実施例11)化合物7を含む薄膜
化合物2の代わりに化合物7を用いること以外は、実施例10と同様にして、石英基板上に化合物7の単独膜および共蒸着膜を形成し、発光特性を測定した。化合物7の単独膜および各共蒸着膜の吸収スペクトルと発光スペクトル、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を図24に示し、温度を変えて測定した過渡減衰曲線および発光寿命τ〜τを図25に示す。
図24に示す吸収スペクトルおよび発光スペクトルにおいて、「5」、「10」、「15」、「20」、「40」、「60」および「80」は、その濃度(重量%)で化合物7を含有する共蒸着膜を示し、「100」は、化合物7の単独膜を示す。なお、図24に示すDPEPO系の発光スペクトルは、各蒸着膜でほぼ一致していた。図25に示す過渡減衰曲線および発光寿命は、ホスト化合物としてPPTを用い、化合物7の濃度が5重量%である共蒸着膜について測定したものである。各グラフに示す複数の過渡減衰曲線は、上から順に300K、250K、200K、150K、100K、50Kで測定したものである。
(実施例12)化合物2を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
インジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10−4Paで積層した。まず、ITO上にHATCNを蒸着してHATCN層を形成し、その上に、α−NPDを蒸着してα−NPD層を形成した。続いて、α−NPD層の上に、mCPを蒸着してmCP層を形成した。次に、mCP層の上に、化合物2とDPEPOを異なる蒸着源から共蒸着して発光層を形成した。この時、化合物2の濃度は10重量%とした。次に、発光層の上に、DPEPOを蒸着してDPEPO層を形成し、その上に、TPBiを蒸着してTPBi層を形成した。さらにフッ化リチウム(LiF)を蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子(素子b2)とした。また、同様の工程で、さらに4個の有機エレクトロルミネッセンス素子(素子b3〜d1)を作製した。
作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトル(EL)、外部量子効率(EQE)−電流密度特性および電流密度−電圧−輝度特性を示す各グラフ、並びに、最大外部量子効率(Max(EQE))および最大輝度(Luminance Max)の各測定値を図26に示す。また、実施例10で作製した、化合物2(10重量%)とDPEPOの共蒸着膜(DPEPO−10%)の発光スペクトル(PL)およびフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を図26に併せて示す。
(実施例13〜15)化合物2を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の他の作製例
層構成を表3に示すように変えたこと以外は、実施例12と同様の方法を用いて各種有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。ここで、実施例13では、同じ層構成で15個の有機エレクトロルミネッセンス素子(素子a2〜d4)を作製し、実施例14では、同じ層構成で14個の有機エレクトロルミネッセンス素子(素子a2〜e4)を作製し、実施例15では、同じ層構成で8個の有機エレクトロルミネッセンス素子(素子a2〜c3)を作製した。
作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトル(EL)、外部量子効率(EQE)−電流密度特性および電流密度−電圧−輝度特性を示す各グラフ、並びに、最大外部量子効率(Max(EQE))および最大輝度(Luminance Max)の各測定値を図26、27に示す。また、実施例10で作製した各共蒸着膜の発光スペクトル(PL)およびフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)も図26、27に併せて示す。図26、27において、DPEPO−10%、mCBP−5%、PPT−10%、PPT−80%は、それぞれ、DPEPO、mCBPまたはPPTをホスト化合物に用い、化合物2の濃度が10重量%、5重量%、10重量%または80重量%である共蒸着膜を示す。
実施例12、14、15で作製した有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層に使用している薄膜のPLQYは高いが(51〜53%)、外部量子効率はそれ程高いものではなかった(Max(EQE):8.6〜10.2%)。これは、化合物2の三重項−一重項の逆項間交差効率が比較的低いためであると考えられる。
(実施例16)化合物7を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
層構成を表3に示すように変えたこと以外は、実施例12と同様の方法を用いて、10個の有機エレクトロルミネッセンス素子(素子a1〜e3)を作製した。
作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトル(EL)、外部量子効率(EQE)−電流密度特性および電流密度−電圧−輝度特性を示す各グラフ、並びに、最大外部量子効率(Max(EQE))および最大輝度(Luminance Max)の各測定値を図28に示す。また、実施例11で作製した、化合物7(10重量%)とPPTの共蒸着膜(PPT−10%)の発光スペクトル(PL)およびフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)を図28に併せて示す。
実施例16で作製した有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層に使用している薄膜(化合物7を含む共蒸着膜)のPLQY(38%)が、実施例14で使用している薄膜(化合物2を含む共蒸着膜)のPLQY(51%)よりも低いが、実施例14の有機エレクトロルミネッセンス素子と同等の外部量子効率が得られた。これは、化合物7の三重項−一重項の逆項間交差効率が、化合物2のそれよりも高いためであると考えられる。

Claims (14)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物。
    [一般式(1)において、Dはドナー性芳香環基を表し、Aはアクセプター性芳香環基またはシアノ基を表し、R〜Rは各々独立に水素原子または置換基を表し、RおよびRは各々独立にアルキル基を表し、mおよびnは各々独立に0または1を表し、r1およびr9は各々独立に0〜4の整数を表す。]
  2. mとnが同一である、請求項1に記載の化合物。
  3. 〜Rのうちの0〜7つが下記一般式(2)で表される基であり、その他のR〜Rが水素原子または下記一般式(2)で表される基以外の置換基である、請求項1または2に記載の化合物。
    [一般式(2)において、D1’はドナー性芳香環基を表し、R1’はアルキル基を表し、r1’は0〜4の整数を表し、n’は0または1を表す。]
  4. 、RまたはRが、前記一般式(2)で表される基である、請求項3に記載の化合物。
  5. nとn’が同一であり、DとD1’が同一の構造を有するドナー性芳香環基である、請求項4に記載の化合物。
  6. mとnとn’が同一である、請求項4または5に記載の化合物。
  7. mとnとn’が1である、請求項6に記載の化合物。
  8. 前記ドナー性芳香環基が、窒素原子で結合するドナー性芳香環基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
  9. 前記アクセプター性芳香環基が、炭素原子で結合するドナー性芳香環基である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物の遅延蛍光体としての使用。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物を含む有機発光素子。
  13. 前記素子が有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項12に記載の有機発光素子。
  14. 遅延蛍光を放射する、請求項12または13に記載の有機発光素子。
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