JP2019199106A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】ベルト層とベルト層を覆う部材とが剥離し難い空気入りタイヤを提供する。【解決手段】空気入りタイヤ10は、一対のビードコア12Aと、一対のビードコア12Aに跨って形成されたカーカス14と、カーカス14のタイヤ径方向外側において、コード(補強コード)をゴム(被覆ゴム)で被覆して形成された被覆コード(ゴム被覆コード)をタイヤ周方向に螺旋状に巻回して形成されたベルト層40と、ベルト層40のタイヤ径方向外側又は内側に配置された樹脂補強層50と、ベルト層40及び樹脂補強層50のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド60と、を備えている。【選択図】図1
Description
本発明は、ベルト層を備えた空気入りタイヤに関する。
下記特許文献1には、スチールコードを用いて形成された複数の補強ゴムストリップをタイヤ周方向に巻回して実働補強材が形成された自動車用タイヤが記載されている。
上記特許文献1の自動車用タイヤでは、実働補強材のタイヤ幅方向端部に、複数のスチールコードの端面が露出している。一般にスチールコードの端面はメッキが施されていないため、実働補強材においてスチールコードの端面が露出した場所と、トレッドを形成するゴムとは接着し難い。これにより、実働補強材(ベルト層)とトレッドを形成するゴムとが剥離し易くなる。
また、スチールコードは、スチールコードの延在方向に対して傾斜した方向に沿って切断されている。このため、このスチールコードの先端は、例えば延在方向に対して直交する方向に沿って切断されたスチールコードの先端と比較して、鋭利に形成される。このためトレッドを形成するゴムが損傷し易い。これにより、実働補強材(ベルト層)とトレッドを形成するゴムとがさらに剥離し易くなる。
本発明は上記事実を考慮して、ベルト層とベルト層を覆う部材とが剥離し難い空気入りタイヤを提供する事を目的とする。
請求項1の空気入りタイヤは、一対のビードコアと、前記一対のビードコアに跨って形成されたカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側において、コードをゴムで被覆して形成された被覆コードをタイヤ周方向に螺旋状に巻回して形成されたベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側又は内側に配置された樹脂補強層と、前記ベルト層及び前記樹脂補強層のタイヤ径方向外側に設けられたトレッドと、を備えている。
請求項1の空気入りタイヤによると、ベルト層のタイヤ径方向外側又は内側に樹脂補強層が配置されている。これにより、トレッドが樹脂補強層によって補強される。樹脂補強層によって補強されたトレッドは、補強されていないトレッドと比較して、リング剛性が高くなる。このため、トレッドはタイヤ周方向及びタイヤ幅方向に沿った環状面の面外へ変形し難くなり、空気入りタイヤの変形が抑制される。
また、樹脂補強層を配置する場合、樹脂補強層を配置しない場合と比較して、面内(タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に沿った環状面内)せん断剛性が高くなる。このため、例えば旋回走行時などにおいて、タイヤ幅方向に作用するせん断力に対して、トレッドが面内へ変形し難くなる。これにより交錯ベルト層を省略できるため、タイヤの重量が軽くなり内圧走行時の操縦安定性が高くなる。
さらに、ベルト層はコードをゴムで被覆して形成された被覆コードをタイヤ周方向に螺旋状に巻回して形成されている。このため、ベルト層のタイヤ幅方向端部にコードの端面が露出し難い。これにより、ベルト層と、ベルト層を覆うトレッド又は樹脂補強層とが剥離し難い。
これに対して、例えばタイヤ周方向に対して傾斜させたコードを複数本並べてベルト層を形成する場合、ベルト層のタイヤ幅方向端部には、コードの端面が露出し易い。コードの端面は、コードの外周面と比較してコード層の周囲の部材と接着し難いため、ベルト層と、ベルト層を覆うトレッド又は樹脂補強層とが剥離し易くなる。
請求項2の空気入りタイヤは、タイヤ赤道面において、タイヤ周方向に対する前記被覆コードの傾斜角度が10°以下とされている。
請求項2の空気入りタイヤによると、タイヤ赤道面において、タイヤ周方向に対する被覆コードの傾斜角度が10°より大きい場合と比較して、被覆コードの傾斜角度が周方向に近くなるため箍(たが)効果が高くなり、トレッドの面外変形抑制効果を高めることができる。
請求項3の空気入りタイヤは、前記樹脂補強層のタイヤ幅方向端部は、前記ベルト層のタイヤ幅方向端部よりタイヤ幅方向外側に配置されている。
請求項3の空気入りタイヤによると、樹脂補強層がベルト層より幅広に形成されるため、ベルト層が変形し難い。具体的には、樹脂補強層がベルト層よりタイヤ径方向内側にある場合は、ベルト層が外力を受けてタイヤ径方向内側に変形しようとしても、樹脂補強層によって補剛され、ベルト層の変形が抑制される。また、樹脂補強層がベルト層よりタイヤ径方向外側にある場合は、樹脂補強層によってベルト層への外力の入力が抑制されるため、ベルト層の変形が抑制される。これによりベルト層が破壊し難い。
本発明に係る空気入りタイヤによると、ベルト層と、ベルト層を覆う部材とが剥離し難い。
図1には、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、「タイヤ10」と称する。)のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿って切断した切断面(タイヤ周方向に沿った方向から見た断面)の片側が示されている。なお、図中矢印Wはタイヤ10の幅方向(タイヤ幅方向)を示し、矢印Rはタイヤ10の径方向(タイヤ径方向)を示す。ここでいうタイヤ幅方向とは、タイヤ10の回転軸と平行な方向を指している。また、タイヤ径方向とは、タイヤ10の回転軸と直交する方向をいう。また、符号CLはタイヤ10の赤道面(タイヤ赤道面)を示している。
また、本実施形態では、タイヤ径方向に沿ってタイヤ10の回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」、タイヤ径方向に沿ってタイヤ10の回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と記載する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。
(タイヤ)
図1は、標準リムであるリム30に組み付けて標準空気圧を充填したときのタイヤ10を示している。なお、ここでいう「標準リム」とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2017年版規定のリムを指す。また、上記標準空気圧とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2017年版の最大負荷能力に対応する空気圧である。
図1は、標準リムであるリム30に組み付けて標準空気圧を充填したときのタイヤ10を示している。なお、ここでいう「標準リム」とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2017年版規定のリムを指す。また、上記標準空気圧とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2017年版の最大負荷能力に対応する空気圧である。
図1に示されるように、タイヤ10は、一対のビード部12と、それぞれのビード部12に埋設されたビードコア12Aに跨り端部がビードコア12Aに係止されたカーカス14と、ビード部12に埋設されビードコア12Aからタイヤ径方向外側へカーカス14の外面に沿って伸びるビードフィラー12Bと、カーカス14のタイヤ径方向外側に設けられたベルト層40と、ベルト層40のタイヤ径方向外側に設けられた樹脂補強層50と、樹脂補強層50のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド60と、を備えている。なお、図1では、片側のビード部12のみが図示されている。
(ビード部)
一対のビード部12には、ワイヤ束であるビードコア12Aがそれぞれ埋設されている。これらのビードコア12Aには、カーカス14が跨っている。ビードコア12Aは、断面が円形や多角形状など、様々な構造を採用することができ、多角形としては例えば六角形を採用することができるが、本実施形態においては四角形とされている。
一対のビード部12には、ワイヤ束であるビードコア12Aがそれぞれ埋設されている。これらのビードコア12Aには、カーカス14が跨っている。ビードコア12Aは、断面が円形や多角形状など、様々な構造を採用することができ、多角形としては例えば六角形を採用することができるが、本実施形態においては四角形とされている。
ビード部12においてビードコア12Aに係止されたカーカス14で囲まれた領域には、ビードコア12Aからタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラー12Bが埋設されている。
(カーカス)
カーカス14は、複数本のコードを被覆ゴムで被覆して形成されたタイヤ骨格部材である。カーカス14は、一方のビードコア12Aから他方のビードコア12Aへトロイド状に延びてタイヤの骨格を構成している。また、カーカス14の端部側は、ビードコア12Aに係止されている。具体的には、カーカス14は、端部側がビードコア12A周りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ折り返されて係止されている。
カーカス14は、複数本のコードを被覆ゴムで被覆して形成されたタイヤ骨格部材である。カーカス14は、一方のビードコア12Aから他方のビードコア12Aへトロイド状に延びてタイヤの骨格を構成している。また、カーカス14の端部側は、ビードコア12Aに係止されている。具体的には、カーカス14は、端部側がビードコア12A周りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ折り返されて係止されている。
なお、本実施形態においてカーカス14はラジアルカーカスとされている。また、カーカス14の材質は特に限定されず、レーヨン、ナイロン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、ガラス繊維、カーボン繊維、スチール等が採用できる。なお、軽量化の点からは、有機繊維コードが好ましい。また、カーカスの打ち込み数は20〜60本/50mmの範囲とされているが、この範囲に限定されるのもではない。
カーカス14のタイヤ幅方向外側には、サイドゴム16が設けられている。サイドゴム16は、ビード部12からタイヤ径方向外側へ延びてタイヤ10のサイド部10Aを形成し、トレッド60と接合されている。また、サイドゴム16は、ショルダー部10Bにおいて厚みが漸減するように形成され、サイドゴム16の端部16Eは、後述するベルト層40のタイヤ径方向内側であって、ベルト層40のタイヤ幅方向端部40EW及び樹脂補強層50のタイヤ幅方向端部50EWよりタイヤ幅方向内側に配置されている。
なお、サイドゴム16の端部16Eは、ベルト層40のタイヤ幅方向端部40EWより外側に配置してもよい。この場合、ベルト層40のタイヤ幅方向端部40EWは、サイドゴム16ではなくカーカス14の外周面に接するように配置される。
(ベルト層)
カーカス14のタイヤ径方向外側には、ベルト層40が配設されている。図2に示すように、ベルト層40は、1本のゴム被覆コード42がカーカス14の外周面に対してタイヤ周方向に螺旋状に巻かれて形成されたリング状の箍(たが)である。ゴム被覆コード42の両端部42E1、42E2は、タイヤ周方向において異なる位置に配置されている。なお、「螺旋状」とは、1本のゴム被覆コード42がカーカス14の周囲において少なくとも1周以上巻回されている状態を示す。
カーカス14のタイヤ径方向外側には、ベルト層40が配設されている。図2に示すように、ベルト層40は、1本のゴム被覆コード42がカーカス14の外周面に対してタイヤ周方向に螺旋状に巻かれて形成されたリング状の箍(たが)である。ゴム被覆コード42の両端部42E1、42E2は、タイヤ周方向において異なる位置に配置されている。なお、「螺旋状」とは、1本のゴム被覆コード42がカーカス14の周囲において少なくとも1周以上巻回されている状態を示す。
図3(A)に示すように、ゴム被覆コード42は、補強コード42Cを被覆ゴム42Sで被覆して構成されており、断面が略正方形状とされている。被覆ゴム42Sは、タイヤ径方向内側に配置されたカーカス14及びサイドゴム16の外周面にゴムや接着剤を介して接合されている。
また、タイヤ幅方向に互いに隣接する被覆ゴム42S同士は、タイヤ加硫時にゴム同士が接合されている。これにより、補強コード42Cが被覆ゴム42Sによって被覆されたベルト層40(ゴム被覆ベルト層)が形成される。図2に示すように、ゴム被覆コード42の端部42E1、42E2においては、補強コード42Cの端面が露出している。なお、ゴム被覆コード42の端部42E1、42E2は、ゴム被覆コードの長手方向に対して略直角に形成されている。
図4には、ベルト層40をタイヤ径方向に沿った方向からみた部分拡大図が示されている。図4に示すように、ゴム被覆コード42は、タイヤ赤道面において、タイヤ周方向(図4において矢印Sで示す方向)に対して角度θ1で傾斜して巻回されている。角度θ1は、本実施形態においては10°以下とされているが、2°以下とすると更に好適である。
また、本実施形態のベルト層40における補強コード42Cは、外周面がコバルトでメッキされたスチールコードとされている。このスチールコードは、スチールを主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含むことができる。また、メッキ材料はコバルトに限定されず、ニッケル等を用いる事ができる。なお、補強コード42Cの端面は非メッキとされ、無垢のスチールが露出している。
なお、本発明の実施形態はこれに限らず、ベルト層40における補強コード42Cとしては、スチールコードに代えて、モノフィラメントコードや、複数のフィラメントを撚り合せたコードを用いることができる。また、アラミド等の有機繊維、カーボンなどを用いてもよい。撚り構造も種々の設計が採用可能であり、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するフィラメント同士の距離も様々なものが使用できる。更には異なる材質のフィラメントを縒り合せたコードを採用することもでき、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。
(樹脂補強層)
図1に示すように、ベルト層40のタイヤ径方向外側には、樹脂補強層50が配設されている。樹脂補強層50は、タイヤ10における剛性付与部材である。樹脂補強層50の幅方向端部50EWは、ベルト層40の幅方向端部40EWよりタイヤ幅方向内側に配置されている。このため、ゴム被覆コード42の両端部42E1、42E2(図2参照)は樹脂補強層50によって被覆されず、トレッド60を形成するトレッドゴム60Gによって被覆されている。
図1に示すように、ベルト層40のタイヤ径方向外側には、樹脂補強層50が配設されている。樹脂補強層50は、タイヤ10における剛性付与部材である。樹脂補強層50の幅方向端部50EWは、ベルト層40の幅方向端部40EWよりタイヤ幅方向内側に配置されている。このため、ゴム被覆コード42の両端部42E1、42E2(図2参照)は樹脂補強層50によって被覆されず、トレッド60を形成するトレッドゴム60Gによって被覆されている。
なお、ベルト層40と樹脂補強層50及び樹脂補強層50とトレッド60とは、接着剤又はゴムで接着されている。
樹脂補強層50に用いられる樹脂材料は、熱可塑性樹脂とされている。但し本発明の実施形態はこれに限らず、例えば樹脂材料として、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、及び(メタ)アクリル系樹脂、EVA樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の汎用樹脂のほか、エンジニアリングプラスチック(スーパーエンジニアリングプラスチックを含む)等を用いることができる。なお、ここでの樹脂材料には、加硫ゴムは含まれない。
熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)とは、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になる高分子化合物をいう。本明細書では、このうち、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有する高分子化合物を熱可塑性エラストマーとし、温度上昇と共に材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有しない高分子化合物をエラストマーでない熱可塑性樹脂として、区別する。
熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、及び、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)、ならびに、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、及び、ポリエステル系熱可塑性樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂とは、温度上昇と共に3次元的網目構造を形成し、硬化する高分子化合物をいい、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
(トレッド)
樹脂補強層50のタイヤ径方向外側には、トレッド60が設けられている。トレッド60は、走行中に路面に接地する部位であり、トレッド60の踏面には、タイヤ周方向に延びる周方向溝62が複数本形成されている。周方向溝62の形状や本数は、タイヤ10に要求される排水性や操縦安定性等の性能に応じて適宜設定される。
樹脂補強層50のタイヤ径方向外側には、トレッド60が設けられている。トレッド60は、走行中に路面に接地する部位であり、トレッド60の踏面には、タイヤ周方向に延びる周方向溝62が複数本形成されている。周方向溝62の形状や本数は、タイヤ10に要求される排水性や操縦安定性等の性能に応じて適宜設定される。
(作用・効果)
本実施形態に係るタイヤ10によると、ベルト層40のタイヤ径方向外側に樹脂補強層50が配置されている。これにより、トレッド60が樹脂補強層50によって補強される。樹脂補強層50によって補強されたトレッド60は、補強されていないトレッドと比較して、リング剛性が高くなる。このため、トレッド60は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に沿った環状面の面外へ変形し難くなり、タイヤ10の変形が抑制される。
本実施形態に係るタイヤ10によると、ベルト層40のタイヤ径方向外側に樹脂補強層50が配置されている。これにより、トレッド60が樹脂補強層50によって補強される。樹脂補強層50によって補強されたトレッド60は、補強されていないトレッドと比較して、リング剛性が高くなる。このため、トレッド60は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に沿った環状面の面外へ変形し難くなり、タイヤ10の変形が抑制される。
また、タイヤ10は、樹脂補強層50を配置しない場合と比較して、トレッド60の面内(タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に沿った環状面内)せん断剛性が高くなる。このため、例えば旋回走行時などにおいて、タイヤ幅方向に作用するせん断力に対して、トレッド60が面内へ変形し難くなる。これにより交錯ベルト層を省略できるため、タイヤの重量が軽くなり内圧走行時の操縦安定性が高くなる。
さらに、ベルト層40は、補強コード42Cを被覆ゴム42Sで被覆して形成された1本のゴム被覆コード42をタイヤ周方向に螺旋状に巻回して形成されている。このため、ベルト層40のタイヤ幅方向端部40EWには、1本のゴム被覆コード42の両端部42E1、42E2の2箇所のみにおいて、補強コード42Cの端面が露出する。これにより、ベルト層40と、ベルト層40を覆うトレッドゴム60Gとが剥離し難い。
これに対して、図8(A)に示す比較例に係るベルト層400は、周方向(図8(A)において矢印Sで示す方向)に対して角度θ2で傾斜させたゴム被覆コード420を複数本並べて形成されている。図8(A)においては、ベルト層400を展開した平面図が示されており、ベルト層400がタイヤに巻き付けられた状態においては、図8(A)の最下部に示されたゴム被覆コード420の側面420Aと、最上部に示されたゴム被覆コード420の側面420Bとが互いに接着される。
また、それぞれのゴム被覆コード420は、ベルト層400のタイヤ幅方向両端部400EW間に亘って敷設されている。図8(B)に示すように、それぞれのゴム被覆コード420は、補強コード420Cを被覆ゴム420Sで被覆して形成されている。このため、ベルト層400のタイヤ幅方向端部400EWには、補強コード420Cの端面が露出する。
補強コード420Cは、補強コード42Cと同様に、外周面がコバルトでメッキされている。補強コード42Cの端面は非メッキとされ、スチールが無垢の状態で露出している。このため、補強コード42Cの端面は、外周面と比較してベルト層400を覆うトレッドゴムと接着し難い。このため、ベルト層400と、ベルト層400を覆うトレッドゴムとが剥離し易くなる。
すなわち、本実施形態に係るタイヤ10におけるベルト層40は、比較例におけるベルト層400と比較して、トレッドゴム60Gとの剥離の基点になる箇所が少ない。
また、本実施形態に係るタイヤ10は、タイヤ赤道面において、タイヤ周方向に対するゴム被覆コード42の傾斜角度が10°以下とされている。このため、例えばタイヤ周方向に対する被覆コードの傾斜角度が10°より大きい場合と比較して、被覆コードの傾斜角度が周方向に近くなるため箍(たが)効果が高くなり、トレッド60の面外変形抑制効果を高めることができる。
また、本実施形態においては、ゴム被覆コード42の両端部42E1、42E2は、タイヤ周方向において異なる位置に配置されている。このため、ゴム被覆コード42の両端部42E1、42E2がタイヤ周方向において等しい位置に配置されている場合と比較して、タイヤ周方向においてトレッドゴム60Gとの剥離の基点になる箇所を分散できる。
なお、本実施形態において、樹脂補強層50の幅方向端部50EWは、ベルト層40の幅方向端部40EWよりタイヤ幅方向内側に配置されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図5に示すように、樹脂補強層50の幅方向端部50EWを、ベルト層40の幅方向端部40EWよりタイヤ幅方向外側に配置してもよい。本実施形態においては、樹脂補強層50が熱可塑性樹脂で形成されているため、タイヤ10の成形における加硫工程で、樹脂補強層50がベルト層40の幅方向端部40EWに密着するように形成される。
このようにすることで、ベルト層40のタイヤ径方向外側が樹脂補強層50によって覆われるため、ベルト層40が変形し難い。すなわち、樹脂補強層50によってベルト層40への外力の入力が抑制されるため、ベルト層40の変形が抑制される。特に、ベルト層40におけるゴム被覆コード42の両端部42E1、42E2が樹脂補強層50によって覆われるため、両端部42E1、42E2が、ベルト層40と樹脂補強層50及びトレッドゴム60Gとの剥離の基点になることを抑制できる。
また、本実施形態において、樹脂補強層50は、ベルト層40のタイヤ径方向外側に配置されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図6に示すように、樹脂補強層50を、ベルト層40のタイヤ径方向内側に配置してもよい。この場合、樹脂補強層50の幅方向端部50EWは、ベルト層40の幅方向端部40EWよりタイヤ幅方向外側に配置することが好適である。このようにすることで、ベルト層40が外力を受けてタイヤ径方向内側に変形しようとしても、樹脂補強層50によって補剛され、変形が抑制される。
また、本実施形態においてベルト層40は、1本の補強コード42Cを被覆ゴム42Sで被覆して形成された略正方形状のゴム被覆コード42を、カーカス14の外周面に巻いて形成したが、本発明の実施形態はこれに限らない。
例えば図3(B)に示すように、複数本(例えば6本)の補強コード44Cを被覆ゴム44Sで被覆して形成された、断面が略平行四辺形状のゴム被覆コード44を、カーカス14の外周面に巻いて形成してもよい。
また、ゴム被覆コード42はカーカス14の周囲において少なくとも1周以上巻回されていれば(螺旋状に巻回されていれば)、ゴム被覆コード42は1本だけではなく、例えば2本以上用いてもよい。
なお、図2に示すように、ベルト層40の幅を(W1)、カーカス14のタイヤ赤道面における周長を(L1)とした場合、ゴム被覆コード42をカーカス14の周囲において1周以上巻回するためには、図7(A)に示すように、ゴム被覆コード42のタイヤ周方向に対する角度θ1(図4参照)は(θ1≦tan−1(W1/L1))とすればよい。
また、1本のゴム被覆コード42でベルト層40を形成するためには、ゴム被覆コード42の幅を(W2)とした場合、図7(B)に示すように、ゴム被覆コード42のタイヤ周方向に対する角度θ1(図4参照)は(θ1≦tan−1(W2/L1))とすればよい。このように、本発明は様々な態様で実施することができる。
10…タイヤ(空気入りタイヤ)、 14…カーカス、 12A…ビードコア、
40…ベルト層、 42…ゴム被覆コード(被覆コード)、
42C…補強コード(コード)、 42S…被覆ゴム(ゴム)、 50…樹脂補強層、
60…トレッド
40…ベルト層、 42…ゴム被覆コード(被覆コード)、
42C…補強コード(コード)、 42S…被覆ゴム(ゴム)、 50…樹脂補強層、
60…トレッド
Claims (3)
- 一対のビードコアと、
前記一対のビードコアに跨って形成されたカーカスと、
前記カーカスのタイヤ径方向外側において、コードをゴムで被覆して形成された被覆コードをタイヤ周方向に螺旋状に巻回して形成されたベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ径方向外側又は内側に配置された樹脂補強層と、
前記ベルト層及び前記樹脂補強層のタイヤ径方向外側に設けられたトレッドと、
を備えた空気入りタイヤ。 - タイヤ赤道面において、タイヤ周方向に対する前記被覆コードの傾斜角度が10°以下とされている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記樹脂補強層のタイヤ幅方向端部は、前記ベルト層のタイヤ幅方向端部よりタイヤ幅方向外側に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018093000A JP2019199106A (ja) | 2018-05-14 | 2018-05-14 | 空気入りタイヤ |
PCT/JP2019/017257 WO2019220889A1 (ja) | 2018-05-14 | 2019-04-23 | 空気入りタイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
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