以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
無線通信では、上りリンクおよび下りリンクを区別する方式として、FDDおよびTDDが用いられている。FDDは、上りリンクおよび下りリンクで異なる周波数を用いる多重方式であり、上りリンクおよび下りリンクで同一の時間スロットの割り当てが可能である。一方、TDDは、上りリンクおよび下りリンクで同一の周波数を用いる。上りリンクおよび下りリンクは、異なる時間スロットを割り当てることにより区別される。
FDDは、上りリンクおよび下りリンクで異なる周波数帯域を使用する。従って、FDDでは、上りリンクおよび下りリンクの周波数帯域のセット、すなわちペアバンドが要求される。FDDでは、上りリンクおよび下りリンクで異なる周波数帯域を用いるため、上りリンクおよび下りリンクの送受信タイミングは、独立に設定できる。
FDDにおけるユーザ端末(UE:User Equipment)では、実装スペースの理由によって、一般に送受共用アンテナが用いられる。また、ユーザ端末における受信信号は、非常に低いレベルになる。そこで、ユーザ端末は、デュープレクサ(共用器)を備え、送信機から受信機に回り込む送信信号の自己干渉(SI:Self-Interference)を十分低いレベルに抑圧する。
FDDにおいても、同じユーザ端末に対して、送信と受信に異なる時間スロットを割り当て、送信と受信の時間スロットの重複を許容しないようにすれば、デュープレクサは不要になる。このようなデュープレクス方式を、Half duplex FDDと呼ぶ。
TDDは、上りリンクおよび下りリンクで、同一周波数帯域を使用する。上りリンクおよび下りリンクは、異なる時間スロットを割り当てることにより分離される。従って、TDDは、FDDと異なりペアバンドが不要である。また、TDDでは、下りリンクおよび上りリンクの時間スロットへの割り当て量を変えることにより、下りリンクおよび上りリンクのトラヒック(チャネル負荷)に応じた、柔軟なリソース割り当てが実現できる。
TDDをマルチセル構成のセルラシステムに適用した場合、近接している異なるユーザ端末が、異なる無線基地局と無線リンクを接続する場合がある。このような接続は、ユーザ端末の周辺の地物または建物等の環境により、シャドウイング変動または瞬時のフェージング変動等が異なり、ユーザ端末ごとの伝搬損失が異なるために生じる。この場合、一方のユーザ端末が、受信スロットで下りリンクのデータを受信しているときに、近接した他方のユーザ端末が、同じスロットタイミングで上りリンクのデータを送信すると、受信側のユーザ端末の受信データに干渉が生じ、受信品質が劣化する。従って、マルチセルが連続的に展開するエリアでは、無線基地局間でタイミング同期を確立し(基地局間同期運用モード)、上りリンクおよび下りリンクのスロット割り当てを同一にする。
セル間での上りリンクおよび下りリンクの送受信タイミングの同期の制約および時間スロット割り当ての制約は、ネットワークコストの増大を招く。従って、LTE(Long Term Evolution)までのセルラシステムでは、基地局間同期が不要なFDDが採用された。
第5世代(5G)移動通信方式では、スモールセルへの適用を想定したTDDが採用される。前述のように、TDDはペアバンドが不要であるため、周波数の割り当てに柔軟に対応できるメリットがある。さらに、TDDでは、上りリンクおよび下りリンクにおいて、同一の周波数帯域を用いるため、伝搬路のチャネルレシプロシティ(reciprocity)が利用できる。
提供するサービスの超高速・大容量化を実現する有効な手段としてMultiple-Input Multiple-Output(MIMO)多重が開発されている。一般にMIMO多重では、多重利得に加えて、指向性利得が得られるプリコーディングが適用される。LTEおよびLTE-Advancedでは、システムで予めプリコーディングベクトル、あるいはプリコーディング行列の候補を決めておき、受信機で最も指向性利得が大きく受信SNRを最大にできるプリコーディングベクトル、あるいはプリコーディング行列を選択する方法が用いられている。なお、プリコーディングベクトルあるいはプリコーディング行列のセットは、コードブックと呼ばれる。
5Gでは、4G LTEに比較して、適用されるアンテナ数の増大が想定されている。無線基地局は、ユーザ端末に比較してアンテナの設置スペースの制約が緩やかであり、キャリア周波数の高周波数化にともない、LTE-Advancedの8アンテナを超えるアンテナ数の適用が想定されている。
FDDにおける下りリンクのMIMO多重では、送信アンテナ固有のチャネル品質情報(CSI:Channel State Information)測定用の参照信号(RS:Reference Signal)を下り信号に多重する。そのため、送信アンテナ数の増大とともに、CSI-RSの挿入損失(オーバヘッド)が増大してしまう。一方、TDDでは、チャネルレシプロシティが利用できるため、上りリンクの無線基地局の受信アンテナで、対応する送信アンテナ(ユーザ端末のアンテナ)のCSIを測定できる。従って、TDDでは、下りリンクのCSI-RSのオーバヘッドを大幅に低減できる。
5G移動通信方式では、システム目標にMassive Machine Type Communications(MTC)およびUltra Reliable Low Latency Communications(URLLC)が規定されている。MTCおよびURLLCでは、低伝送遅延が要求される機械間通信をサポートしている。
図1Aは、下りリンクの往復伝送遅延を説明する図である。図1Aに示すように、下りリンクの往復伝送遅延(RTT:Round Trip Time)は、ユーザデータを多重するサブフレームを送信してから、確認非応答(Nack:Non-acknowledgement)情報の再送要求を受信して、再度、ユーザデータを多重するサブフレームを送信するまでの時間で定義される。ユーザデータを送信する時間単位であるサブフレームは、Transmission Time Interval(TTI)と呼ばれる。一般に、RTTは、TTI長の整数倍に設定される。
図1Bは、上りリンクの往復伝送遅延を説明する図である。図1Bに示すように、上りリンクのRTTは、無線基地局がユーザ端末に対してリソース割り当て情報(Grant情報)を送信してから、ユーザ端末が上りリンクデータを送信し、無線基地局が上りリンクデータを復調・復号して、復号結果に応じて、再送要求のNack情報を送信するまでの時間で定義される。
5Gのスモールセル展開を想定して、直交周波数分割多重アクセス(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を用いた場合の低伝送遅延を実現するTDDベースのサブフレーム構成が提案されている(例えば、非特許文献1)。
図2は、TDDベースのフレーム構成を示した図である。図2のフレーム構成では、サブフレーム長を0.25msにし、第1および第2のOFDMシンボルに、それぞれ下りリンクおよび上りリンクの制御情報を多重している。そして、図2のフレーム構成では、第3シンボル以降にデータシンボルを多重している。
データシンボルの先頭のOFDMシンボルには、復調用参照信号(DRS:Demodulation Reference Signal)が多重される。上りおよび下りのOFDMシンボル間には、ガード時間(GP:Guard Period)が設けられる。各サブフレームのデータシンボルには、下りリンクまたは上りリンクのユーザデータが割り当てられる。
図2のサブフレームは、ダイナミックなユーザ多重および割り当てられたリソース内での制御情報多重(in-resource control signaling)を特徴としている。例えば、図2のサブフレームは、低遅延トラヒックのユーザ端末またはカバレッジ重視のユーザ端末など、要求条件に応じて、サブフレーム長が変わる。また、図2のサブフレームは、制御情報を割り当てリソース内に多重することにより低遅延を実現する。さらに、非特許文献2では、Ack/Nack情報を同一のサブフレームに多重するSelf-containedなデータ多重法が提案されている。
Full Duplex(FD)について説明する。同一ユーザ端末に対する下りリンクおよび上りリンクは、受信信号が所要の誤り率を満たすように、一般に周波数あるいは時間で分離される。
しかし近年、同一のユーザ端末に対する下りリンクおよび上りリンクのリソースを、同一の周波数帯域および同一の時間スロットに割り当てるFDの送受信機構成が提案され、性能評価の検討が行われている。FDの送受信機構成では、周波数利用効率の一層の向上が見込まれる。以下では、ユーザ端末に対する時間領域のリソースの割り当て単位である時間スロットを、サブフレームと呼ぶことがある。
現在のセルラシステムにおけるトラヒックは、下りリンクに偏り、下りリンクと上りリンクとで一般に非対称となっている。従って、FDを適用しても周波数利用効率は、2倍にはならない。しかしながら、FDを実現できれば、ペアバンドの割り当てが不要になるため柔軟なリソース割り当てが可能になる。また、同一の時間スロットで、下りリンクおよび上りリンクの物理チャネルを多重でできるため、TDDに比較して、制御情報のフィードバック遅延を短縮できるメリットがある。
FDは、大きく2つに分類される。第1のFDは、無線基地局とユーザ端末とが、同一の周波数帯域の同一時間スロットのリソースを用いて、上りリンクおよび下りリンクのチャネル(信号)を送信する。このFDは、Bidirectional FDと呼ばれてもよい。
図3Aは、Bidirectional FDの一例を説明する図である。Bidirectional FDでは、無線基地局1およびユーザ端末2ともに、同一時間スロットの同一周波数帯域を用いて、送信と受信とを同時に行う。そのため、電力の大きな送信信号が、受信電力の低い受信機に回り込む自己干渉(SI)が生じる。
1つの装置の中で、送信機から受信機に同一チャネル干渉が回り込むため、受信機に入力する自己干渉電力は非常に高く、復調器入力端で100dB程度、自己干渉を抑圧することが求められる。一方、Bidirectional FDでは、自己干渉は、自チャネルの送信信号であるため、送信ビット、あるいは送信シンボルは、受信機で既知である。従って、受信機は、受信信号から自己干渉成分をキャンセルすることが可能である。
第2のFDでは、無線基地局は、同一周波数帯域の同一サブフレームにおいて、第1のユーザ端末と下りリンクの通信を行い、第2のユーザ端末と上りリンクの通信を行う。このFDは、無線基地局だけがFDを行うため、BS FDと呼ばれる。
図3Bは、BS FDの一例を説明する図である。無線基地局1は、FDを行う。そのため、無線基地局1では、ユーザ端末2aに対する送信信号が、ユーザ端末2bの受信信号に自己干渉(SI)として回り込む。しかしながら、無線基地局1は、自己干渉となる送信ビット、あるいは送信シンボル(ユーザ端末2aに送信する送信ビット、あるいは送信シンボル)が既知である。従って、無線基地局1は、受信信号から自己干渉成分をキャンセルすることが可能である。
ユーザ端末2aに着目すると、他のユーザ端末2bの送信信号が同一チャネル干渉として受信信号に回り込む。ユーザ端末2a,2b間の距離が離れている場合には、ユーザ端末2aの受信機に入り込む同一チャネル干渉電力は、Bidirectional FDの自己干渉に比べ、低いレベルになる。
一方、Bidirectional FDの自己干渉と異なり、BS FDでは、ユーザ端末2aの受信機に入力される同一チャネル干渉の送信ビット、あるいは送信シンボル(ユーザ端末2bの送信ビット、あるいは送信シンボル)は既知ではない。そのため、BS FDにおける非線形型の干渉キャンセラでは、同一チャネル干渉の送信ビット、あるいは送信シンボルを推定する。
FDの自己干渉キャンセラについて説明する。FDを実現するためには、送信機から受信機に回り込むSIを、受信信号が所要の誤り率を満たすレベルまで抑圧する。
図4は、FDを適用する送受信機の構成例を示した図である。図4に示すように、送受信機10は、ASIC(Analog Self-Interference Canceller)11と、Low noise amp12と、Frequency synthesizer13と、Quadrature detector14と、LPF(Low Pass Filter)15,21と、AGC(Auto Gain Control) amp16と、ADC(Analog-to-Digital converter)17と、加算器18と、DSIC(Digital Self-Interference Canceller)19と、DAC(Digital-to-Analog converter)20と、Quadrature modulator22と、Power amp23と、を有している。
ASIC11は、アナログ信号処理により、受信信号に含まれる自己干渉成分を抑圧する。Low noise amp12は、ASIC11から出力される信号を増幅する。Quadrature detector14は、Low noise amp12から出力される信号を検波する。Frequency synthesizer13は、受信信号をダウンコンバートし、送信信号をアップコンバートするための基準信号をQuadrature detector14およびQuadrature modulator22に出力する。LPF15は、Quadrature detector14から出力される信号の低域周波数帯の信号を抑圧する。AGC amp16は、LPF15から出力される信号を増幅する。ADC17は、AGC amp16から出力される信号をディジタル信号に変換する。加算器18は、ADC17から出力される信号から、DSIC19から出力される自己干渉成分を減算する(なお、正の値と負の値との加算により減算となる。以下、同じ)。DSIC19は、ディジタル信号処理により、自己干渉成分または同一チャネル干渉成分を算出する。
DAC20は、送信信号をアナログ信号に変換する。LPF21は、DAC20から出力される低域周波数帯の信号を抑圧する。Quadrature modulator22は、LPF21から出力される信号を変調する。Power amp23は、Quadrature modulator22から出力される信号を増幅する。Power amp23で増幅された信号は、ASIC11を介して、送信アンテナに出力される。
FDの送受信機では、ADC17によって、受信信号をディジタル信号に変換する前に、一般に60-70dB程度の線形増幅を行う。そのため、大きな電力のSIが受信機に回り込むと、受信機の初段に位置するLow noise amp12が飽和し、信号帯域内に歪みが生じる。
そこで、送受信機は、信号の送信および受信において、独立したアンテナを用いることによるisolationと、Low noise amp12の前段に位置するASIC11とにより、受信機が飽和しないように、線形増幅できるレベルまでSIを抑圧する。
HD(Half Duplex)-FDDでは、一般に送受信共用アンテナを用いているため、図4の送受信機ではアンテナ素子数は2倍になる。しかし、図4の送受信機では、送信および受信で異なる偏波アンテナを用いることにより、50dB程度のアンテナisolationによるSIの抑圧が可能である。
ASIC11の出力信号は、Low noise amp12で増幅される。直接変換受信機では、直交検波後の同相および直交成分の信号を、AGC amp16で所要の受信レベルまで増幅し、ADC17でディジタル信号に変換する。ADC17から出力されるディジタル信号は、DSIC19により、所要の誤り率を満たすレベルまでSIが抑圧される。
ASIC11の一例として、アナログトランスバーサルフィルタによってSIを抑圧する方法(例えば、非特許文献3)、またはバランキャンセラによって実現する方法(例えば、非特許文献4)などが提案されている。
図5Aは、アナログトランスバーサルフィルタで構成されたASIC11の一例を示した図である。図5Aにおいて図4と同じものには同じ符号が付してある。ASIC11は、Control for phase shift 1…Control for phase shift Nと、Control for attenuation 1…Control for attenuation Nと、Fixed delay 1…Fixed delay Nと、を有するアナログトランスバーサルフィルタによって構成されている。非特許文献3によれば、アナログトランスバーサルフィルタによって、42dB程度のSIの抑圧が実現されている。
図5Bは、バランキャンセラで構成されたASIC11の一例を示した図である。図5Bにおいて図4と同じものには同じ符号が付してある。ASIC11は、Residual signal measurementと、Attenuation & delayと、Blaunと、を有するバランキャンセラによって構成されている。非特許文献4によれば、バランキャンセラによって、45dB程度のSIの抑圧が実現されている。
DSIC19について説明する。図6は、Bidirectional FDにおけるDSIC19のブロック構成例を示した図である。図6において、図4と同じものには同じ符号が付してある。図6に示すRF Rx circuitry31およびRF Tx circuitry32は、図4に示したASIC11、Low noise amp12、Frequency synthesizer13、Quadrature detector14、およびPower amp23に対応する。
送信機から回り込む自己干渉(SI)の送信ビット(送信シンボル)は既知であるので、DSIC19は、送信シンボルを参照信号(RS:Reference Signal)として用いることができる。アンテナアイソレーションおよびASIC11で除去された後の残留SIのレベルは、下りリンクの受信信号のレベルに比較して数十デシベル高い。そこで、DSIC19は、まずRF Rx circuitry31およびRF Tx circuitry32の振幅および位相変動に相当するRF回路応答を推定する。DSIC19は、SIを含む受信信号に、送信シンボルの複素共役を乗算し、RF回路応答を算出する。
各サブキャリアの、各OFDMシンボルから構成されるリソースエレメント単位のRF回路応答には、受信信号成分、雑音成分、および他セルからの同一チャネル干渉成分が含まれている。DSIC19は、各リソースエレメント単位のRF回路応答を、時間および周波数領域で平均化し、RF回路応答に含まれる受信信号成分、雑音成分、および他セルからの同一チャネル干渉成分を低減する。
Power Amp23を含むRF Tx circuitry32およびLow noise amp12を含むRF Rx circuitry31には、帯域通過フィルタおよび低域通過フィルタなどの各種フィルタが含まれる。従って、RF回路応答には、周波数選択性が含まれている。DSIC19は、周波数領域の振幅および位相変動がほぼ一定と見做せる範囲のサブキャリア間で、RF回路応答の平均化を行う。
一方、RF回路応答の時間領域の変動は、例えば、LTEの無線フレーム長である10ms長に対して長周期であり、緩慢な変動である。従って、DSIC19は、時間領域では、数〜数十無線フレーム間のOFDMシンボルのRF回路応答を平均化する。
DSIC19は、送信シンボルに平均化後のRF回路応答を乗算することにより、送信シンボルの自己干渉の推定値を生成する。送受信機10は、自己干渉を含む受信信号から、自己干渉の推定値を減算することにより、受信信号成分を抽出し、復調・復号処理を行う。
FDを用いることにより、従来のFDDあるいはTDDに比較して周波数利用効率を2倍に増大することが目標として提案されている。しかしながら、実際には、FDは、次の要因により、HD-FDDおよびHD-TDDに比較して、2倍のユーザスループットおよびシステム容量の増大を実現することは困難である。
第1に、前述のように、アンテナアイソレーション、ASIC11、およびDSIC19で受信機に回り込むSIを完全に抑圧することは困難である。従って、残留SIにより、復調器入力端の受信SINRが低減し、その結果、ユーザスループットが減少してしまう。
第2に、上りリンクおよび下りリンクのトラヒックの対称性(トラヒック分布)が、FDを用いた場合のユーザスループットの改善効果に影響を与える。上りリンクおよび下りリンクのトラヒック分布が対称な場合に、FDのユーザスループットの最大の改善効果が得られる。しかし、上りリンクおよび下りリンクのトラヒック分布が非対称な場合には、FDを適用することによるFDDあるいはTDDからのユーザスループットの改善効果は、低減してしまう。
図7は、TDDの無線フレームにFDを適用した場合のリソース割り当ての例を示した図である。図7では、1無線フレームは、10サブフレームから構成されると仮定する。セルラシステムを想定して、HD-TDDにおける上りリンクおよび下りリンクのサブフレームのリソース割り当てをNUL/NDL=1/9とした。
FDを適用する場合には、無線基地局は、10サブフレームの全てにおいて、上りリンクおよび下りリンクのリソースを割り当てる。従って、上りリンクはFDを用いることにより、HD-TDDと比較してリソースの割り当ては10倍になるものの、下りリンクは高々、10/9倍にしかならない。
上りリンクに対し、トラヒックが大きい下りリンクのスループットをより改善したいにも関わらず、FDを適用することによるユーザスループットの改善効果はむしろ上りリンクに比較して低くなってしまう。HD-TDDベースのサブフレーム構成に、FDを適用した場合のシステムレベルシミュレーションでの評価が行われている(非特許文献5)。下りリンクのトラヒックが、上りリンクに比較して大きい場合、FDのHD-TDDに対するスループットおよび伝送遅延の改善効果は低いことが報告されている。従って、FDでは、自己干渉を抑制することが重要となる。
図8は、第1の実施の形態に係るFDにおけるチャネル多重法の原理を説明する図である。上りリンクと下りリンクのトラヒック分布を「RUL:RDL」とする。現在のセルラシステムでは、「RUL<RDL」であり、以下、これを前提として説明する。
HD-TDDにおいては、上りリンクと下りリンクのトラヒック分布「RUL:RDL」は、無線フレーム内の上りリンクおよび下りリンクのサブフレームの割り当て数の比率「NUL:NDL」にほぼ等しい。例えば、図8の矢印A1の無線フレームに示すように、上りリンクおよび下りリンクのサブフレームの割り当て数の比率「NUL:NDL」が「1:9」の場合、トラヒック分布「RUL:RDL」もほぼ「1:9」となる。
本実施の形態のFDにおけるチャネル多重法では、トラフィック量の少ない上りリンクにおいて、符号化後の送信ビットがマッピングされたシンボル(ULのサブフレーム)を、無線フレーム内の全サブフレームわたり繰り返し多重する。繰り返し回数は、「NSBF/NUL」で表される。ここで、NSBFは、1無線フレーム内のサブフレーム数を示し、NULは、HD-TDDにおける上りリンクに割り当てられるサブフレーム数を示す。図8の例では、「NSBF=10」であり、「NUL=1」である。
例えば、図8の矢印A1の無線フレームに示すように、HD-TDDでは、上りリンクの送信シンボルは、無線フレーム内の1サブフレームに割り当てられる。本実施の形態のFDにおけるチャネル多重法では、この1サブフレームに割り当てられる送信シンボルを、矢印A2の無線フレームに示すように、無線フレームの全てのサブフレームに繰り返しコピーする。
より具体的には、「NSBF=10」であり、「NUL=1」であるので、矢印A1に示すサブフレームの繰り返し回数「NSBF/NUL」は、10となる。つまり、1サブフレームの上りリンクは、1無線フレームを構成する10サブフレームにわたり繰り返しコピーされる。なお、図8に示す「d(1)」は、1シンボル目に割り当てられた送信ビットを示し、「d(2)」は、2シンボル目に割り当てられた送信ビットを示し、「d(Nsym)」は、Nsymシンボル目に割り当てられた送信ビットを示す。
図8の矢印A2に示す無線フレームの、全サブフレームにわたる上りリンクのシンボル電力は、1サブフレームの上りリンクのシンボル電力に対し、「NSBF/NUL」倍に増大する。従って、シンボル繰り返しを行った各シンボルのシンボル当たりの送信電力は、繰り返しを行わない1サブフレームの送信シンボルと同じ受信SNRを満たすのに、「(NSBF/NUL)分の1」に低減できる。
例えば、繰り返しを行わない1サブフレームの送信シンボルのシンボル電力を「X」とし、このときの受信SNRを「Y」とする。図8の矢印A2に示すように、1サブフレームの送信シンボルを10回繰り返す場合、送信シンボルの受信電力を「X/10」にしても、受信SNR「Y」を満たすことができる。
このように、本実施の形態のFDにおけるチャネル多重法では、下りリンクの受信機に回り込む自己干渉(SI)の電力を、「(NSBF/NUL)分の1」に低減できる。つまり、本実施の形態のFDにおけるチャネル多重法では、受信信号に含まれる自己干渉をより低減できる。なお、送信シンボルの電力制御は、例えば、図4に示したPower amp23で行われてもよい。
図9は、本実施の形態のFDにおけるチャネル多重法でのSINRの改善例を説明する図である。図9の矢印A11に示す図は、サブフレームの繰り返し(コピー)を行わなかったときのSINRを示した図である。図9の矢印A12に示す図は、本実施の形態のサブフレームの繰り返しを行い、送信シンボルの電力を「1/繰り返し数」低減したときの、SINRを示した図である。図9に示すように、本実施の形態のFDにおけるチャネル多重法では、自己干渉(SI)が、サブフレームの繰り返しを行わない場合に対し、低減される。
アンテナアイソレーションによる自己干渉の抑圧度は、キャリア周波数、アンテナ間隔、および指向性等を考慮した実装の複雑度に依存する。ASICによる自己干渉の抑圧度は、回路規模等に依存する。DSICによる自己干渉の抑圧度は、AD変換器の量子化ビット数およびDSICの回路規模等に依存する。FDでは、一般に自己干渉が支配的な干渉成分であるため、図9に示すように、自己干渉が低減した分、受信SINRは高くなる。
ユーザ端末は、LTEと同様に、本実施の形態のFDにおけるチャネル多重法においても、例えば、サブフレーム(TTI)単位で、参照信号を用いて受信SINRを推定し、推定した受信SINRに基づいて変調多値数、チャネル符号化の符号化率、および送信ストリーム数等を決定してもよい。ユーザ端末は、決定したパラメータを、上りリンクの制御情報で無線基地局に通知する。無線基地局は、ユーザ端末から通知された制御情報に従って、変調多値数、チャネル符号化の符号化率、および送信ストリーム数等を制御する。残留自己干渉が低減した分、ユーザ端末の受信SINRは向上し、変調多値数またはチャネル符号化等を増大することにより、下りリンクの情報レートを増大できる。その結果、下りリンクのユーザスループットを増大できる。
図10は、ユーザ端末の動作例を示したフローチャートである。ユーザ端末は、上りリンクのシンボルを、1無線フレーム内において「NSBF/NUL」回繰り返してマッピングする(ステップS1)。
ユーザ端末は、上りリンクのシンボル当たりの送信電力を「1/(NSBF/NUL)」に低減する(ステップS2)。
以上の処理により、下りリンクの受信機に回り込む自己干渉(SI)の電力を、「(NSBF/NUL)分の1」に低減できる。そして、自己干渉電力の低減に伴い、下りリンクの復調器入力端の受信SINRを向上できる。また、下りリンクの復調器入力端の受信SINRの向上に伴い、変調多値数またはチャネル符号化率を大きくでき、下りリンクのスループットを向上できる。
図11は、ユーザ端末のブロック構成例を示した図である。図11に示すように、ユーザ端末200は、通信部201と、制御部202と、を有している。
通信部201は、上りリンクおよび下りリンクにおいて、同一周波数帯域および同一時間スロットを用いて全二重通信を行う。通信部201は、上りリンクに送信信号を送信する。送信信号は、送信ビットが割り当てられた送信シンボルであってもよい。
制御部202は、通信部201に対して、送信信号を所定の時間単位で繰り返し送信させる制御を行う。制御部202は、通信部201に対し、下りリンクの信号品質が所定の品質を満たす電力で、送信信号を送信させる制御を行う。所定の時間単位は、例えば、無線フレームを構成するサブフレームであってもよい。
なお、制御部202は、上りリンクと下りリンクとのトラヒックの比に応じて、送信信号の所定の時間単位の繰り返し数を制御してもよい。例えば、制御部202は、上りリンクのトラフィックが、下りリンクのトラフィックに近づくに従って、または、下りリンクのトラフィックより大きくなるに従って、繰り返し数を減少させる。繰り返し数を減少させることにより、ユーザ端末は、多くの上りリンクデータを無線基地局に送信できる。ユーザ端末200は、上りリンクと下りリンクとのトラヒックを計測する計測部を備えてもよい。
また、制御部202は、送信ビットの遅延要求に応じて、送信信号の所定の時間単位の繰り返し数を制御してもよい。例えば、制御部202は、遅延要求の厳しい送信ビットにおいては、繰り返し数を減少させる。繰り返し数を減少させることにより、送信ビットの送信時間を短縮できる。遅延要求は、例えば、アプリケーションから行われてもよい。
また、通信部201は、無線基地局によって決定された、所定の時間単位の繰り返し数を、無線基地局から受信してもよい。無線基地局は、例えば、上りリンクと下りリンクとのトラヒック分布に応じて、所定の時間単位の繰り返し数を決定してもよい。また、無線基地局は、例えば、上り信号の遅延要求に応じて、所定の時間単位の繰り返し数を決定してもよい。
図12は、無線基地局のブロック構成例を示した図である。図12に示すように、無線基地局300は、通信部301と、制御部302と、を有している。
通信部301は、上りリンクおよび下りリンクにおいて、同一周波数帯域および同一時間スロットを用いて全二重通信を行う。通信部301は、上りリンクで送信される、所定の時間単位で繰り返された信号を受信する。所定の時間単位は、例えば、無線フレームを構成するサブフレームであってもよい。
ユーザ端末から送信される信号は、所定の時間単位で繰り返されている。また、所定の時間単位で繰り返し送信される信号の電力は、1つの時間単位で送信される場合の信号の電力より、低減されている。制御部302は、通信部301が受信した信号を累積し、累積した信号から、受信信号を復元する。
図13は、1無線フレームの下りリンクに複数のユーザ端末を割り当て、上りリンクに1つのユーザ端末を割り当てた例を示した図である。図13において、矢印A22に示す無線フレームの下りリンクのサブフレームのハッチングの違いは、サブフレームに割り当てられたユーザ端末の違いを示す。
ユーザ端末Aの上りリンクは、矢印A22の無線フレームに示すように、1無線フレームにわたるサブフレームに割り当てられたとする。また、ユーザ端末Aの下りリンクは、矢印A22の無線フレームに示すように、一点鎖線で示すサブフレームに割り当てられたとする。つまり、ユーザ端末Aは、上りリンクおよび下りリンクがBidirectional FDで多重されている。なお、HD-TDDの場合、ユーザ端末Aの上りリンクは、図13の矢印A21に示す無線フレームのように、1サブフレームに割り当てられ、送信シンボルの電力も、FDの場合に対し、大きくなる。
一方、下りリンクのサブフレームが割り当てられている他のユーザ端末は、上りリンクのサブフレームが割り当てられておらず、送信信号の受信機への回り込み、すなわち自己干渉はない。つまり、他のユーザ端末では、BS FDが行われている。この場合、他のユーザ端末は、上りリンクのサブフレームを送信しているユーザ端末Aによる同一チャネル干渉を受ける。
従って、本実施の形態のシンボル繰り返しを用いた場合には、同一無線フレームに、Bidirectional FDとBS FDとを行うユーザ端末が混在する。各ユーザ端末は、無線基地局から、リソース割り当て情報を受信するため、Bidirectional FD(Bidirectional FDモード)か、BS FD(BS FDモード)かは既知である。
図13のユーザ端末Aのように、下りリンクおよび上りリンクのユーザ情報が多重されているサブフレームにおいて、Bidirectional FDが行われる。本実施の形態のシンボル繰り返しを用いた、Bidirectional FDのユーザ端末の受信機は、送受信独立のアンテナを用いるアンテナアイソレーション、ASIC、およびDSICにより、自己干渉を抑圧する。そして、ユーザ端末の受信機は、本実施の形態のサブフレーム単位のシンボル繰り返しを適用することにより、自己干渉の電力レベルをより低減できる。
なお、アンテナアイソレーションおよびASICは、Low noise ampが受信信号を増幅する過程で、受信信号に歪みが生じないレベルにSIを抑圧する。ASICは、前述の図5Aに示したアナログトランスバーサルフィルタまたは図5Bに示したバランキャンセラ等によって実現できる。DSICは、残留のSIを抑圧する。
Bidirectional FDモードにおけるDSICは、トランスバーサルフィルタを用いるディジタル線形キャンセラまたは自己干渉(SI)レプリカを推定して、受信信号から差し引く処理を行う非線形キャンセラ(例えば、図6で説明したDSIC19)によって実現できる。
OFDMにおけるBidirectional FDモードでのDSICの構成例について説明する。図14は、OFDMにおけるBidirectional FDモードでのユーザ端末のDSIC40のブロック構成例を示した図である。図14に示すように、DSIC40は、Turbo encoder41と、Inter Leaver42,50と、Estimate amplitude and phase of SI43,58と、FFT44,46,57と、IFFT45,52,54,56,59と、LLR comp47と、De-inter leaver48と、Max-Log-MAP decoder49,60と、Generation of soft-symbol estimates51と、Channel estimation53と、Estimate ISI55と、乗算器40a,40c,40f,40hと、加算器40b,40d,40e,40g,40iと、を有している。
図14に示すDSIC40は、図6で説明したDSIC19の構成と同様に、Estimate amplitude and phase of SI43において、無線基地局に送信する送信シンボルを参照信号として、RF送信回路およびRF受信回路(図6に示したRF Rx circuitry31およびRF Tx circuitry32)に起因する振幅および位相変動(RF回路応答)を推定する。本実施の形態では、サブフレーム単位のシンボル繰り返しを適用するため、1サブフレームの送信シンボルで、自己干渉の振幅および位相変動を推定できる。なお、図13の例では、送信シンボルの1シンボル当たりの送信電力は、HD-TDDの場合の送信電力に対し、1/10にできるため、自己干渉のレベルも1/10に低減できるものの、下りリンクの受信電力レベルと比較すれば、高いレベルにある。
無線フレーム長を、LTEと同じ10msを仮定した場合、RF送信回路およびRF受信回路に起因する振幅および位相変動は、10ms区間ではほぼ一定と見做すことができる。1無線フレーム中の複数のサブフレームに、下りリンクのリソースが多重されている場合には、さらに、時間領域の複数無線フレーム区間および周波数領域の複数サブキャリア区間のシンボルの自己干渉を積分することにより、RF回路応答の推定精度を向上することができる。
DSIC40は、乗算器40aにおいて、上りリンクの送信シンボルに、Estimate amplitude and phase of SI43で推定したRF回路応答を乗算することにより、自己干渉レプリカの推定値を生成する。次に、DSIC40は、加算器40bにおいて、自己干渉を含む受信信号から、自己干渉の推定値を差し引くことにより、下りリンクの受信信号成分を取り出す。下りリンクの受信信号成分は、FFT46を介して、Channel estimation53に入力される。
DSIC40は、Channel estimation53において、下りリンクのサブフレームに多重されている参照信号(RS:reference Signal)を用いて、下りリンクの各リソースエレメントのチャネル応答を推定し、加算器52において、受信アンテナブランチの情報シンボルを同相合成する。
OFDMを適用する場合、RSは、LTEの下りリンクの復調用参照信号(DRS:Demodulation Reference Signal)と同様に、周波数領域の特定のサブキャリアおよび時間領域の特定のOFDMシンボルに多重されている。従って、Channel estimation53は、各情報シンボル(リソースエレメント)位置のチャネル応答を、補間処理によって求めることができる。
DSIC40は、LLR comp47において、同相合成された信号から、各情報ビットの対数尤度比(LLR:Log-Likelihood Ratio)を計算する。対数尤度比が算出された各情報ビットは、デインタリーブ後、誤り訂正復号器(Max-Log-Map decoder49)に入力される。さらに、DSIC40は、Generation of soft-symbol estimates51において、誤り訂正復号器出力の事後LLRから、情報シンボル推定値を生成する。DSIC40は、Estimate ISI55において、Generation of soft-symbol estimates51で生成された情報シンボル推定値と、Channel estimation53で推定されたチャネル応答とから、受信シンボルを推定する。
DSIC40は、加算器40iにおいて、自己干渉を含む受信信号から、Estimate ISI55で推定した受信シンボルを差し引くことにより、自己干渉(ただし、雑音成分を含む)を抽出できる。以上の処理を複数繰り返すことにより、自己干渉のRF回路応答および下りリンクの復調および復号精度を向上できる。図14に示すNDSICは、DSICの繰り返し回数を示す。DSIC40で抽出された自己干渉は、例えば、図6の加算器18に出力される。
なお、Estimate amplitude and phase of SI43は、無線基地局に送信する送信シンボルを用いて、RF送信回路およびRF受信回路に起因する振幅および位相変動(RF回路応答)を推定し、推定したRF回路応答から送信信号を生成する。加算器40bは、自己干渉を含む受信信号から、Estimate amplitude and phase of SI43が生成した送信信号、すなわち自己干渉を減算する。
Channel estimation53は、自己干渉が減算された受信信号に多重されている参照信号を用いて、下りリンクのチャネル応答を推定する。乗算器40cは、自己干渉が減算された受信信号と、Channel estimation53で推定されたチャネル応答の複素共役とを乗算する。LLR comp47は、乗算器40cの乗算後の信号から、各ビットの対数尤度比を算出する。
Max-Log-Map decoder49は、デインタリーブされた各ビットの対数尤度比を、誤り訂正復号する。Generation of soft-Symbol estimates51は、誤り訂正復号された各ビットの対数尤度比から、シンボル推定値を生成する。Estimate ISI55は、Generation of soft-Symbol estimates51で生成されたシンボル推定値と、Channel estimation53で推定されたチャネル応答の推定値とから、受信シンボル推定値を生成する。加算器40iは、Channel estimation53で推定された受信シンボル推定値を、受信信号から減算する。これにより、自己干渉が求まる。
図15は、DSIC40における自己干渉のRF回路応答の推定と自己干渉の低減とのタイミング関係を示した図である。無線フレーム長を10msと仮定した場合、RF回路応答の変動は、無線フレーム長と比較して非常に長い周期の変動である。従って、DSIC40は、図15に示すように、着目する無線フレームNに対して、過去の無線フレームの送信シンボルで推定したRF回路応答を、無線フレームNの自己干渉の推定値の生成に用いることができる。
BS FDモードにおけるユーザ端末の送受信機について説明する。図13で説明したように、1無線フレームにおいて、上りリンクのリソースが割り当てられず、下りリンクのリソースが割り当てられているユーザ端末は、BS FDモードになる。BS FDモードの場合、割り当てられたサブフレームで下りリンクの信号を受信しているユーザ端末は、同一のサブフレームを用いて上りリンクの信号を送信している他のユーザ端末の送信信号が同一チャネル干渉として受信機に回り込む。
下りリンクの信号を受信するユーザ端末と、上りリンクの信号を送信するユーザ端末との距離が離れている場合には、同一干渉のレベルは、伝搬損失またはシャドウイング変動に起因して、Bidirectional FDの自己干渉レベルと比較して低くなる。さらに、本実施の形態のシンボル繰り返しを用いることにより、同一チャネル干渉を与えるシンボル当たりの電力は低減するため、同一チャネル干渉電力を低減することができる。一方、BS FDモードでは、Bidirectional FDモードの自己干渉とは異なり、受信機に入力される干渉信号のシンボルは一般にはUnknownである。
図16は、BS FDモードにおけるユーザ端末の送受信機の構成例を示した図である。図16において、図4と同じものには同じ符号が付してある。図16に示す送受信機70は、SINR measurement71と、DCCIC(Digital Co-Channel Interference Canceller)72と、Coherent detection73と、を有している。
送受信機70では、送信および受信で独立なアンテナを用いるアンテナアイソレーションとASIC11とにより、70−80dB程度の同一チャネル干渉の抑圧効果が得られる。従って、受信機に入力する同一チャネル干渉のレベルが低い場合は、アンテナアイソレーションおよびASIC11を用いることにより、目標の受信品質(ブロック誤り率等)を満たすレベルまで、同一チャネル干渉を抑圧できる。
図16に示すように、送受信機70のSINR measurement71は、ADC17でディジタル信号に変換された後の参照信号を用いて、受信SINRを測定する。送受信機70は、受信SINRの測定値が、予め設定されたSINR値よりも高い場合には、DCCIC72による同一チャネル干渉のキャンセル処理を行わずに、Coherent detection73による同期検波復調を行う。一方、受信SINR値が、設定されたSINR値よりも低い場合には、送受信機70は、DCCIC72による同一チャネル干渉のキャンセル処理を行う。
図17は、OFDMにおけるBS FDモードでのユーザ端末のDSIC80のブロック構成例を示した図である。図17に示すように、DSIC80は、FFT81,89,100と、Channel estimation82,90,101と、LLR comp83,91,102と、De-inter leaver84,92,103と、Max-Log-MAP decoder85,93,104,108と、Inter Leaver86,94,105と、Generation of soft-symbol estimates87,95,106と、IFFT88,96,97,99,107と、Estimate ISI98と、乗算器80a,80c,80e,80g,80i,80lと、加算器80b,80d,80f,80h,80j,80k,80mと、を有している。図17に示す回路ブロックBL1は、同一チャネル干渉のシンボルレプリカを生成する。回路ブロックBL2は、下りリンクデータチャネルのシンボルレプリカを生成する。
図17に示すように、DSIC80は、回路ブロックBL1において、同一チャネル干渉を与える他のユーザ端末の参照信号を用いて、各リソースエレメント位置のチャネル応答を推定する。DSIC80は、受信アンテナブランチの情報シンボルに、Channel estimation82において推定されたチャネル応答の複素共役を、乗算器80aにおいて乗算し、加算器80bにおいて同相合成する。LLR comp83は、同相合成されたシンボルから、各ビットのLLRを推定する。DSIC80は、De-inter leaver84において、LLRをデインタリーブした後、誤り訂正復号器(Max-Log-MAP decoder85)に入力する。DSIC80は、Generation of soft-symbol estimates87において、誤り訂正復号器出力の各ビットのLLRから、同一チャネル干渉の軟判定シンボル推定値を生成する。
DSIC80は、加算器80dにおいて、受信信号から、同一チャネル干渉の軟判定シンボル推定値を差し引く。DSIC80は、回路ブロックBL2において、下りリンクデータチャネルの希望波信号の復調および復号を行う。下りリンクデータチャネルの希望波信号の復調および復号は、図14で説明したBidirectional FDと同様である。
同一チャネル干渉のレプリカを生成して、受信信号から差し引く非線形DSIC80では、演算量が大きくなるとともに、同一チャネル干渉信号の情報ビットの復号誤りに起因して、情報シンボルの推定誤差を生じる。従って、DSIC80では、ディジタル処理のトランスバーサルフィルタを用いて、残留している他のユーザ端末の干渉が最小になるようにウエイトを制御する線形ディジタル干渉キャンセラを用いるのが望ましい。
なお、Channel estimation82は、他のユーザ端末の上りリンクの参照信号を用いて、チャネル応答を推定する。乗算器80aは、受信された情報シンボルに、Channel estimation82で推定されたチャネル応答の複素共役を乗算し、LLR comp83は、チャネル応答の複素共役が乗算された情報シンボルから、各ビットの対数尤度比を計算する。
Max-Log-MAP decoder85は、デインタリーブされた各ビットの対数尤度比を、誤り訂正復号する。Generation of soft-symbol estimates87は、誤り訂正復号された各ビットの対数尤度比から、他のユーザ端末のシンボル推定値を生成する。IFFT88は、シンボル推定値とチャネル応答の推定値とから、他のユーザ端末の受信シンボル推定値を生成する。
加算器80dは、受信信号から、IFFT88から出力される受信シンボル推定値、すなわち同一チャネル干渉を減算する。Channel estimation90は、同一チャネル干渉が減算された受信信号に多重されている参照信号を用いて、下りリンクのチャネル応答を推定する。
乗算器80eは、同一チャネル干渉が減算された受信シンボルに、参照信号を用いて推定されたチャネル応答の複素共役を乗算後のシンボルを乗算し、LLR comp91は、チャネル応答の複素共役が乗算された受信シンボルから、各ビットの対数尤度比を計算する。
Max-Log Map decoder93は、デインタリーブされた各ビットの対数尤度比を、誤り訂正復号する。Generation of soft-symbol estimates95は、誤り訂正復号された各ビットの対数尤度比から、シンボル推定値を生成する。Estimate ISI98は、シンボル推定値と、チャネル応答の推定値とから、受信シンボル推定値を生成する。加算器80mは、受信信号から、受信シンボル推定値を減算する。これにより、他のユーザ端末の上りリンクの信号による同一チャネル干渉が求まる。
無線基地局におけるDSICについて説明する。無線基地局においても、アンテナアイソレーション、ASIC、およびDSICを用いて、自己干渉を抑圧する。無線基地局が受信する上りリンクの信号には、サブフレーム間にわたりシンボル繰り返しが適用されている。ASICの構成は、上述したアナログトランスバーサルフィルタまたはバラン干渉キャンセラ等によって実現してもよい。
図18は、シンボル繰り返しに対応した無線基地局のDSICのブロック構成例を示した図である。図18に示すように、DSIC120は、Turbo encoder121と、Inter Leaver122,132と、Symbol mapping123,142と、Estimate amplitude and phase of SI124,141と、FFT125,127,140,143と、IFFT126,135,137,139と、Symbol accumulation128と、LLR comp129と、De-inter leaver130と、Max-Log-MAP decoder131,144と、Generation of soft-symbol estimates133と、Symbol repetition & symbol mapping134と、Channel estimation136と、Estimate ISI138と、乗算器120a,120c,120f,120hと、加算器120b,120d,120e,120g,120iと、を有している。
図18に示すDSIC120は、図6で説明したDSIC19の構成と同様に、Estimate amplitude and phase of SI124において、ユーザ端末に送信する送信シンボルを参照信号として、RF送信回路およびRF受信回路(図6に示したRF Rx circuitry31およびRF Tx circuitry32)に起因する振幅および位相変動を推定する。
無線基地局では、下りリンクの送信シンボルは既知である。従って、DSIC120は、推定したRF回路応答から、SIレプリカを生成し、受信信号から差し引く。次に、DSIC120は、上りリンクのデータチャネルを復調・復号する。上りリンクの情報シンボルは、1無線フレーム間のサブフレームにおいて繰り返されている。DSIC120は、Channel estimation136において、サブフレーム毎の参照信号(RS:Reference Signal)を用いて、各サブキャリアおよび各OFDMシンボルで構成されるリソースエレメントのチャネル応答を推定する。
DSIC120は、乗算器120cにおいて、受信シンボルに、Channel estimation136で推定されたチャネル応答の複素共役を乗算し、伝搬路で受けた位相変動を補償する。Symbol accumulation128は、位相変動を補償した後の情報シンボルを、1無線フレーム内の複数サブフレームにわたり、繰り返しシンボル数分、同相(I)成分および直交(Q)成分のそれぞれにおいて独立に加算する。DSIC120は、LLR comp12において、加算後の再生した情報シンボルの値から、各ビットのLLRを生成し、Generation of soft-symbol estimates133において、推定された各ビットのLLRを用いて、上りリンクのシンボルレプリカの推定値を生成する。
DSIC120は、加算器120eにおいて、受信信号から、上りリンクのシンボルレプリカの推定値を減算し、Estimate amplitude and phase of SI141において、下りリンクの送信信号の自己干渉のRF回路応答を推定する。DSIC120は、以降の自己干渉のRF回路応答の推定、上りリンクの復調、復号、およびシンボル推定値の推定の処理を交互に行い、自己干渉の推定精度を向上する。
なお、Estimate amplitude and phase of SI124は、ユーザ端末に送信する送信シンボルを用いて、RF送信回路およびRF受信回路に起因する振幅および位相変動(RF回路応答)を推定し、推定したRF回路応答から送信信号を生成する。加算器120bは、自己干渉を含む受信信号から、Estimate amplitude and phase of SI124が生成した送信信号を減算する。
Channel estimation136は、自己干渉が減算された受信信号に多重されている参照信号を用いて、上りリンクのチャネル応答を推定する。乗算器120cは、自己干渉が減算された受信信号と、Channel estimation136で推定されたチャネル応答の複素共役とを乗算する。Symbol accumulation128は、乗算器120cの乗算後のシンボルを、ユーザ端末において行われるシンボルの繰り返し数分(ユーザ端末が繰り返し送信を行うサブフレーム数)、積分する。
LLR comp129は、Symbol accumulation128の積分後の情報シンボルから、各ビットの対数尤度比を計算する。Max-Log-Map decoder131は、デインタリーブされた各ビットの対数尤度比を、誤り訂正復号する。Generation of soft-Symbol estimates133は、誤り訂正復号された各ビットの対数尤度比から、シンボル推定値を生成する。Symbol repetition & symbol mapping134は、生成されたシンボル推定値を、ユーザ端末で行われたシンボルの繰り返し数分、繰り返す。Estimate ISI138は、Symbol repetition & symbol mapping134で繰り返されたシンボル推定値と、Channel estimation136で推定されたチャネル応答の推定値とから、受信シンボル推定値を生成する。加算器120iは、Estimate ISI138で推定された受信シンボル推定値を、受信信号から減算する。これにより、自己干渉が求まる。求まった自己干渉は、例えば、図6の加算器18に出力される。
以上説明したように、ユーザ端末200は、同一周波数帯域および同一時間スロットを用いた全二重通信における上りリンクに送信信号を送信する通信部201と、通信部201に対して、送信信号を所定の時間単位で繰り返し送信させる制御を行う制御部202と、を有する。これにより、ユーザ端末は、FDにおいて、受信信号に含まれる自己干渉をより低減できる。
また、無線基地局300は、上りリンクおよび下りリンクにおいて、同一周波数帯域および同一時間スロットを用いて全二重通信を行う場合の、上りリンクで送信される、所定の時間単位で繰り返された信号を受信する通信部301と、信号を累積し、累積した信号から、受信信号を推定する制御部302と、を有する。これにより、ユーザ端末は、FDにおいて、受信信号に含まれる自己干渉をより低減できる。
[第2の実施の形態]
同一の周波数帯域を用いる周辺セルの干渉がFDのユーザスループットの改善効果に影響を与える。周辺セルの干渉が、受信SINRの決定に影響を与える電力にまで大きくなると、ユーザスループットは、SIの抑圧レベルに関係なく、制限されてしまう。また、周辺セルの干渉レベルが高くなると、ASIC11およびDSIC19でのSIの推定精度が劣化し、残留SIレベルが高くなってしまう。そこで、第2の実施の形態では、セル間干渉コーディネーション(ICIC: Inter-Cell Interference Coordination)を適用し、周辺セルの干渉の影響を低減する。
図19は、第2の実施の形態に係るセル間干渉コーディネーションを説明する図である。下りリンクまたは上りリンクの参照信号が多重されているリソースエレメントは、時間または周波数で下りリンクと上りリンクとを区別するHDが適用される。従って、例えば、下りリンクの参照信号には、上りリンクの物理チャネルは多重されていない。
ユーザ端末は、参照信号を用いて、下りリンクの干渉および雑音電力を測定する。一般に、干渉電力は、雑音電力レベルよりも高いため、干渉および雑音電力の総和は、周辺セルからの同一チャネル干渉電力と考えることができる。干渉および雑音電力の測定値が予め設定された干渉および雑音電力の値よりも大きい場合には、ユーザ端末は、上りリンクの制御情報を用いて、無線基地局に干渉電力のオーバロード情報を通知する。
ユーザ端末は、周辺セルサーチで、現在無線リンクを接続している無線基地局以外の周辺無線基地局から参照信号を受信する。ユーザ端末は、受信した参照信号の受信電力(あるいは伝搬損失)を定期的に無線基地局に報告する。従って、無線基地局は、ユーザ端末に対して大きな同一チャネル干渉を与えている無線基地局を認識できる。
例えば、ユーザ端末151は、現在無線リンクを接続している無線基地局152aとは異なる周辺無線基地局152bから参照信号を受信する。ユーザ端末151は、受信した参照信号の受信電力(あるいは伝搬損失)を定期的に無線基地局152aに報告する。この処理により、無線基地局152aは、ユーザ端末151に対して、大きな同一チャネル干渉を与えている無線基地局152bを認識できる。
無線基地局は、大きな干渉を与えている1つあるいは複数の無線基地局に対して、使用している周波数帯域における無線フレーム単位のデータチャネルの多重および送信を行わないように通知する。通知を受けた無線基地局は、通知元の無線基地局が使用している周波数帯域の無線フレームの送信をミューティングする。このように、セル間で協調して、特定の無線フレームでICICを適用することにより、特定のリソースブロックに対する周辺セル干渉を低減することができる。
図20は、ユーザ端末のブロック構成例を示した図である。図20に示すように、ユーザ端末400は、受信部401と、制御部402と、送信部403と、を有している。
受信部401は、周辺セルサーチにより、周辺無線基地局から送信される参照信号を受信する。
制御部402は、受信部401が受信した参照信号に基づいて、干渉および雑音電力を算出する。制御部402は、算出した干渉および雑音電力の測定値が、予め設定した干渉および雑音電力よりも大きいと判定した場合、干渉電力のオーバロード情報を生成する。
送信部403は、制御部402で生成された干渉電力のオーバロード情報を、現在接続している無線基地局に送信する。
図21は、無線基地局のブロック構成例を示した図である。図21に示すように、無線基地局500は、受信部501と、基地局間通信部502と、制御部503と、を有している。
受信部501は、ユーザ端末から送信されるオーバロード情報を受信する。
基地局間通信部502は、受信部501が受信したオーバロード情報を周辺無線基地局に送信する。基地局間通信部502は、オーバロード情報に含まれている周辺無線基地局の情報に基づいて、オーバロード情報を送信すべき周辺無線基地局を判定できる。
また、基地局間通信部502は、周辺無線基地局から送信されるオーバロード情報を受信する。
制御部503は、基地局間通信部502が周辺無線基地局からオーバロード情報を受信した場合、無線フレームの送信をミュートする。
以上説明したように、無線基地局は、セル間干渉コーディネーションを適用し、周辺セルの干渉の影響を低減する。これにより、ユーザ端末は、受信信号に含まれる自己干渉をより低減できる。
なお、ユーザ端末は、送信シンボルをサブフレーム単位で繰り返し送信する機能を備えていてもよい。また、ユーザ端末は、送信シンボルをサブフレーム単位で繰り返し送信する機能を備えていなくてもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明した。
(ハードウェア構成)
なお、上記実施の形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現手段は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的及び/又は論理的に結合した1つの装置により実現されてもよいし、物理的及び/又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的及び/又は間接的に(例えば、有線及び/又は無線)で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。
例えば、本発明の一実施の形態における無線基地局、ユーザ端末などは、本発明の無線通信方法の処理を行うコンピュータとして機能してもよい。図22は、本発明の一実施の形態に係る無線基地局及びユーザ端末のハードウェア構成の一例を示す図である。上述の無線基地局及びユーザ端末は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。無線基地局及びユーザ端末のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
例えば、プロセッサ1001は1つだけ図示されているが、複数のプロセッサがあってもよい。また、処理は、1のプロセッサで実行されてもよいし、処理が同時に、逐次に、又はその他の手法で、一以上のプロセッサで実行されてもよい。なお、プロセッサ1001は、一以上のチップによって実装されてもよい。
無線基地局及びユーザ端末における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信、又は、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することによって実現される。
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。例えば、上述の制御部202,302,402,503などは、プロセッサ1001によって実現されてもよい。
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール又はデータを、ストレージ1003及び/又は通信装置1004からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されてもよい。
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本発明の一実施の形態に係る無線通信方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD−ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu−ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002及び/又はストレージ1003を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
通信装置1004は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。例えば、上述の通信部201,301、受信部401,501、送信部403、および基地局間通信部502などは、通信装置1004によって実現されてもよい。また、送受信機10,70は、通信装置1004によって実現されてもよい。
制御部202は、例えば、図4のDAC20より前の段に配置されてもよい。通信部201,301は、例えば、図6のRF Rx circuitry31およびRF Tx circuitry32によって実現されてもよい。制御部302は、図4のDSIC19、図14のDSIC40、図17のDSIC80、図18のDSIC120によって実現されてもよい。
受信部401は、例えば、図4のReceive antennaまたは図6のRF Rx circuitry31によって実現されてもよい。制御部402は、例えば、図4のADC17より後の段に配置されてもよい。送信部403は、例えば、図6のRF Rx circuitry31およびRF Tx circuitry32によって実現されてもよい。受信部501は、図6のRF Rx circuitry31およびRF Tx circuitry32によって実現されてもよい。
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
また、プロセッサ1001及びメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
また、無線基地局及びユーザ端末は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
(情報の通知、シグナリング)
また、情報の通知は、本明細書で説明した態様/実施形態に限られず、他の方法で行われてもよい。例えば、情報の通知は、物理レイヤシグナリング(例えば、DCI(Downlink Control Information)、UCI(Uplink Control Information))、上位レイヤシグナリング(例えば、RRC(Radio Resource Control)シグナリング、MAC(Medium Access Control)シグナリング、報知情報(MIB(Master Information Block)、SIB(System Information Block)))、その他の信号又はこれらの組み合わせによって実施されてもよい。また、RRCシグナリングは、RRCメッセージと呼ばれてもよく、例えば、RRC接続セットアップ(RRC Connection Setup)メッセージ、RRC接続再構成(RRC Connection Reconfiguration)メッセージなどであってもよい。
(適応システム)
本明細書で説明した各態様/実施形態は、LTE(Long Term Evolution)、LTE−A(LTE-Advanced)、SUPER 3G、IMT−Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W−CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi−Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB(Ultra-WideBand)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及び/又はこれらに基づいて拡張された次世代システムに適用されてもよい。
(処理手順等)
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
(基地局の操作)
本明細書において基地局(無線基地局)によって行われるとした特定動作は、場合によってはその上位ノード(upper node)によって行われることもある。基地局を有する1つまたは複数のネットワークノード(network nodes)からなるネットワークにおいて、端末との通信のために行われる様々な動作は、基地局および/または基地局以外の他のネットワークノード(例えば、MME(Mobility Management Entity)またはS−GW(Serving Gateway)などが考えられるが、これらに限られない)によって行われ得ることは明らかである。上記において基地局以外の他のネットワークノードが1つである場合を例示したが、複数の他のネットワークノードの組み合わせ(例えば、MMEおよびS−GW)であってもよい。
(入出力の方向)
情報及び信号等は、上位レイヤ(または下位レイヤ)から下位レイヤ(または上位レイヤ)に出力され得る。複数のネットワークノードを介して入出力されてもよい。
(入出力された情報等の扱い)
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、または追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置に送信されてもよい。
(判定方法)
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:trueまたはfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
(ソフトウェア)
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
また、ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
(情報、信号)
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
なお、本明細書で説明した用語及び/又は本明細書の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。例えば、チャネル及び/又はシンボルは信号(シグナル)であってもよい。また、信号はメッセージであってもよい。また、コンポーネントキャリア(CC)は、キャリア周波数、セルなどと呼ばれてもよい。
(「システム」、「ネットワーク」)
本明細書で使用する「システム」および「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
(パラメータ、チャネルの名称)
また、本明細書で説明した情報、パラメータなどは、絶対値で表されてもよいし、所定の値からの相対値で表されてもよいし、対応する別の情報で表されてもよい。例えば、無線リソースはインデックスで指示されるものであってもよい。
上述したパラメータに使用する名称はいかなる点においても限定的なものではない。さらに、これらのパラメータを使用する数式等は、本明細書で明示的に開示したものと異なる場合もある。様々なチャネル(例えば、PUCCH、PDCCHなど)及び情報要素(例えば、TPCなど)は、あらゆる好適な名称によって識別できるので、これらの様々なチャネル及び情報要素に割り当てている様々な名称は、いかなる点においても限定的なものではない。
(基地局)
基地局(無線基地局)は、1つまたは複数(例えば、3つ)の(セクタとも呼ばれる)セルを収容することができる。基地局が複数のセルを収容する場合、基地局のカバレッジエリア全体は複数のより小さいエリアに区分でき、各々のより小さいエリアは、基地局サブシステム(例えば、屋内用の小型基地局RRH:Remote Radio Head)によって通信サービスを提供することもできる。「セル」または「セクタ」という用語は、このカバレッジにおいて通信サービスを行う基地局、および/または基地局サブシステムのカバレッジエリアの一部または全体を指す。さらに、「基地局」、「eNB」、「gNB」、「セル」、および「セクタ」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。基地局は、固定局(fixed station)、NodeB、eNodeB(eNB)、gNodeB(gNB)アクセスポイント(access point)、フェムトセル、スモールセルなどの用語で呼ばれる場合もある。
(端末)
ユーザ端末は、当業者によって、移動局、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、UE(User Equipment)、またはいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。
(用語の意味、解釈)
本明細書で使用する「判断(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判断」、「決定」は、例えば、判定(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up)(例えば、テーブル、データベースまたは別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判断」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判断」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判断」「決定」は、何らかの動作を「判断」「決定」したとみなす事を含み得る。
「接続された(connected)」、「結合された(coupled)」という用語、又はこれらのあらゆる変形は、2又はそれ以上の要素間の直接的又は間接的なあらゆる接続又は結合を意味し、互いに「接続」又は「結合」された2つの要素間に1又はそれ以上の中間要素が存在することを含むことができる。要素間の結合又は接続は、物理的なものであっても、論理的なものであっても、或いはこれらの組み合わせであってもよい。本明細書で使用する場合、2つの要素は、1又はそれ以上の電線、ケーブル及び/又はプリント電気接続を使用することにより、並びにいくつかの非限定的かつ非包括的な例として、無線周波数領域、マイクロ波領域及び光(可視及び不可視の両方)領域の波長を有する電磁エネルギーなどの電磁エネルギーを使用することにより、互いに「接続」又は「結合」されると考えることができる。
参照信号は、RS(Reference Signal)と略称することもでき、適用される標準によってパイロット(Pilot)と呼ばれてもよい。また、DMRSは、対応する別の呼び方、例えば、復調用RSまたはDM−RSなどであってもよい。
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
上記の各装置の構成における「部」を、「手段」、「回路」、「デバイス」等に置き換えてもよい。
「含む(including)」、「含んでいる(comprising)」、およびそれらの変形が、本明細書あるいは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書あるいは特許請求の範囲において使用されている用語「または(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
無線フレームは時間領域において1つまたは複数のフレームで構成されてもよい。時間領域において1つまたは複数の各フレームはサブフレーム、タイムユニット等と呼ばれてもよい。サブフレームは更に時間領域において1つまたは複数のスロットで構成されてもよい。スロットはさらに時間領域において1つまたは複数のシンボル(OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シンボル、SC-FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)シンボル等)で構成されてもよい。
無線フレーム、サブフレーム、スロット、ミニスロット、およびシンボルは、いずれも信号を伝送する際の時間単位を表す。無線フレーム、サブフレーム、スロット、ミニスロット、およびシンボルは、それぞれに対応する別の呼び方であってもよい。
例えば、LTEシステムでは、基地局が各移動局に無線リソース(各移動局において使用することが可能な周波数帯域幅、送信電力等)を割り当てるスケジューリングを行う。スケジューリングの最小時間単位をTTI(Transmission Time Interval)と呼んでもよい。
例えば、1サブフレームをTTIと呼んでもよいし、複数の連続したサブフレームをTTIと呼んでもよいし、1スロットをTTIと呼んでもよいし、1ミニスロットをTTIと呼んでもよい。
リソースユニットは、時間領域および周波数領域のリソース割当単位であり、周波数領域では1つまたは複数個の連続した副搬送波(subcarrier)を含んでもよい。また、リソースユニットの時間領域では、1つまたは複数個のシンボルを含んでもよく、1スロット、1ミニスロット、1サブフレーム、または1TTIの長さであってもよい。1TTI、1サブフレームは、それぞれ1つまたは複数のリソースユニットで構成されてもよい。また、リソースユニットは、リソースブロック(RB:Resource Block)、物理リソースブロック(PRB:Physical RB)、PRBペア、RBペア、スケジューリングユニット、周波数ユニット、サブバンドと呼ばれてもよい。また、リソースユニットは、1つ又は複数のREで構成されてもよい。例えば、1REは、リソース割当単位となるリソースユニットより小さい単位のリソース(例えば、最小のリソース単位)であればよく、REという呼称に限定されない。
上述した無線フレームの構造は例示に過ぎず、無線フレームに含まれるサブフレームの数、サブフレームに含まれるスロットの数、サブフレームに含まれるミニスロットの数、スロットに含まれるシンボルおよびリソースブロックの数、および、リソースブロックに含まれるサブキャリアの数は様々に変更することができる。
本開示の全体において、例えば、英語でのa, an, 及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
(態様のバリエーション等)
本明細書で説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
以上、本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。