JP2019188655A - 付加製造法及びインク組成物 - Google Patents

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田林 勲
Isao Tabayashi
勲 田林
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Abstract

【課題】エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を得らえるような付加製造法を提供する。【解決手段】本付加製造法は、堆積層を一層ずつ積層して造形物Wを形成する付加製造法であり、エンジニアリングプラスチック粒子を含有するインク組成物をプリントヘッド32から吐出して少なくとも一層の堆積層を形成する堆積工程と、造形物Wを構成することとなる堆積層の少なくとも一部をエンジニアリングプラスチックのガラス転移点近傍の温度以上に加熱する加熱工程とを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、付加製造法及びインク組成物に関する。
付加製造法は、材料を積層などによりつなぎ合わせていくことで立体的な造形物を形成する方法である。近年の付加製造法の進展により、従来は旋盤加工や鋳造加工で作られていた耐熱高強度部品が付加製造法により作られるようになってきている。
例えば、特許文献1は、液体担体中にタングステンカーバイド(WC)及びコバルト(Co)の液体分散剤、及びタングステンカーバイド粒子およびコバルト(Co)粒子の分散のための液体溶媒を含む3D印刷のためのインク組成物を開示する。当該組成物によれば、金型に使用可能な高強度の造形物が得られる。
また、特許文献2は、熱溶解積層法(FDM)により高温で溶かしたエンジニアリングプラスチックで造形物の芯を形成し、当該芯の上にインクジェット法により紫外線硬化型インクを積層することを開示する。この方法によれば、機械的強度の高い造形物が形成される。
国際公開第2015/056231号 特開2017−154486号公報
特許文献1の組成物では、金属を主体とするため重量が極めて重く、また、異なる無機粒子(WC及びCo)を焼成して造形物を得るため、粒界が生じやすく、造形物がもろい。
一方、特許文献2のように、エンジニアリングプラスチックの高温流動物を材料とすれば軽量で耐熱高強度の造形物を製造できるものの、FDMでは高精度の造形物を製造することは困難であった。その上、流動状態のエンジニアリングプラスチックの粘性が余りにも高く、また流動性を維持するために高温を維持する必要があるため、他の付加製造法、特に、精密加工が可能な材料噴射法などでは、エンジニアリングプラスチックを材料に利用できなかった。特許文献2で、造形物の芯のみをエンジニアリングプラスチックから形成し、周囲の微細な加工は通常の紫外線硬化型インクで形成するのもこのためである。
以上のように、高耐熱性且つ高強度の造形物をエンジニアリングプラスチックを材料として形成することは困難であった。
そこで、本発明は、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を得らえるような、付加製造法及びインク組成物を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点に係る付加製造法は、
堆積層を一層ずつ積層して造形物を形成する材料噴射方式の付加製造法であって、
エンジニアリングプラスチックの粒子を含有するインク組成物をプリントヘッドから吐出して少なくとも一層の堆積層を形成する堆積工程と、
前記造形物を構成することとなる前記堆積層の少なくとも一部を前記エンジニアリングプラスチックのガラス転移点近傍の温度以上に加熱する加熱工程と、
を含む、
ことを特徴とする。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。特に、ガラス転移点未近傍の温度より低い温度で加熱する場合と比較して、造形物内のエンジニアリングプラスチックの粒子が、比較的によく密着し、造形物内で緊密に充填されると考えられる。
前記加熱工程において、前記堆積層の前記少なくとも一部を前記エンジニアリングプラスチックの前記ガラス転移点以上に加熱する、
ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。特に、ガラス転移点未満の温度で加熱する場合と比較して、造形物内のエンジニアリングプラスチックの粒子が互いに少なくとも部分的に固着するため、耐熱性及び強度がより一層高い造形物が得られる。
前記加熱工程において、前記堆積層の前記少なくとも一部を前記エンジニアリングプラスチックの融点以上に加熱する、
ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。特に、エンジニアリングプラスチックの粒子が互いに融着するので、耐熱性及び強度がより一層高い造形物が得られる。
前記インク組成物は、分散媒として、水、有機溶剤、又は放射線硬化性重合性化合物を含んでいる、
ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。
前記堆積工程では、前記堆積層を複数積層して前記造形物の少なくとも一部の形状を有する成形物を形成し、
前記加熱工程では、前記成形物を加熱する、
ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。
前記堆積工程で前記堆積層を一層積層する毎に、前記加熱工程を行い、
前記加熱工程では、前記堆積層のうち前記造形物を構成することとなる一領域を選択的に加熱する、
ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。
前記加熱工程では、
前記堆積層のうち前記一領域を除く部分は前記エンジニアリングプラスチックのガラス転移点未満の温度で加熱され、
前記堆積層のうち前記一領域は前記ガラス転移点以上の温度で加熱される、
ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。また、この付加製造法では、支持材組成物を省略できるので、経済的である。
前記インク組成物は、放射線硬化性重合性化合物をさらに含む放射線硬化性インク組成物であり、
前記加熱工程では、前記エンジニアリングプラスチックのガラス転移点以上、且つ、前記放射線硬化性重合性化合物の硬化物のガラス転移点以上の温度で、加熱を行う、
ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。また、この付加製造法では、エンジニアリングプラスチックと放射線硬化性重合性化合物の硬化物との密着性の改善が期待される。
本発明の第2の観点に係るインク組成物は、
第1の観点に係る付加製造法で用いられ、
エンジニアリングプラスチックの粒子を含有する
ことを特徴とする。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。
前記エンジニアリングプラスチックが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選択される少なくとも1種である、ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。
前記粒子の平均粒子径が500nm以下である、ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。
前記インク組成物は、分散媒として、水、有機溶媒、又は放射線硬化性重合性化合物を含む、ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。
前記インク組成物は、放射線硬化性インク組成物である、ことが好ましい。
以上の構成によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を形成できる。
本発明によれば、エンジニアリングプラスチックを材料として、高耐熱性且つ高強度の造形物を得られる。
第2の実施形態に係る付加製造法で用いる付加製造装置の模式図。 第2の実施形態に係る付加製造法における製造工程の模式図。 第3の実施形態に係る付加製造法で用いる付加製造装置の模式図。 第3の実施形態に係る付加製造法における製造工程の模式図。 第4の実施形態に係る付加製造法で用いる付加製造装置の模式図。 第4の実施形態に係る付加製造法における製造工程の模式図。
(用語の定義)
本願明細書において、「造形物」という用語は、任意の2次元又は3次元形状を有する物品を指す。この造形物は、最終製品でもよいし、最終製品を構成する部品であってもよい。
本願明細書において、「付加製造」という用語は、3次元モデルデータに基づき、材料をつなげていく(例えば、積層していく)ことで造形物を形成する技術を指し、ISO/ASTM 52900:2015に従う任意の付加製造技術を包含するが、これらのみに限定されるわけではない。
本願明細書において、「造形材組成物」という用語は、付加製造法において、造形物を形成するために使用される当該造形物の材料のことを指す。
本願明細書において、「支持材組成物」という用語は、付加製造法で中空形状等の複雑な形状を有する造形物を作成する場合などに、付加製造法の過程で造形材組成物を支えるためにその周囲に配置され、造形物の完成後はそれから除去される材料のことを指す。支持材組成物は、物理的剥離、又は、水若しくは有機溶剤を用いた洗浄などの除去工程により容易に造形物から取り除くことができるよう構成されている。
本願明細書において、「放射線」は、電離放射線及び非電離放射線の両方を含む広義の意味であり、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線などを包含する。
本願明細書において、組成物が「放射線硬化性」であるとは、上述の放射線の照射により当該組成物中の重合性化合物が重合して当該組成物が硬化する性質を意味する。また、こうした重合性化合物を、本願明細書では、「放射線硬化性重合性化合物」という。放射線硬化性組成物を硬化させるために照射する放射線は、当該組成物中で開始種を発生させ得るエネルギーを有するのであれば任意である。
本明細書において、平均粒子径は、動的光散乱法により求めた体積平均粒子径であり、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(Microtrac社製、Nanotrac UPA−EX150)を用いて測定できる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る付加製造法用造形材組成物について説明する。
本造形材組成物は、付加製造法を用いて造形物を製造するために用いられる。この付加製造法は任意であり、例えば、材料噴射、粉末床溶融結合、液槽光重合、結合剤噴射、シート積層、材料押出、指向エネルギー堆積のいずれでもよいが、後述する領域加熱工程を必ず備える。
(造形材組成物の主成分)
本造形材組成物は、エンジニアリングプラスチックの粒子を含む。「エンジニアリングプラスチック」とは、高強度及び/又は耐熱性のプラスチック樹脂の総称であり、本願明細書では、特に、100℃以上の温度環境に長時間暴露されても49MPa以上の引張強度と2.5GPa以上の曲げ弾性率を維持するプラスチック樹脂を指す。なお、耐熱性が特に高いエンジニアリングプラスチックがスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれることもあるが、こうしたスーパーエンジニアリングプラスチックも本願で用いることのできるエンジニアリングプラスチックに含まれる。
本願で用いるエンジニアリングプラスチックとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。
エンジニアリングプラスチックの粒子の平均粒子径は、用いる付加製造法に適用できるのであれば任意であり、例えば、1μm以下、500nm以下、400nm以下、又は300nm以下であることが好ましく、10nm以上、50nm以上、100nm以上、200nm以上であることが好ましく、特に、200nmから500nmであることが好ましい。
また、溶液中にエンジニアリングプラスチックの粒子を分散させる場合など、凝集による二次粒子径の増大が見込まれる場合は、フィルター濾過や分散助剤の添加などにより二次粒子径を減少させることが好ましい。例えば、200nmから500nmの平均粒子径のエンジニアリングプラスチックの粒子を溶液中に分散させる場合、分散液を1μmの目開きのフィルターで濾過することが好ましい。
(造形材組成物の形態)
本造形材組成物は、用いる付加製造法に応じた形態で調整される。例えば、材料噴射や液槽光重合に用いられる場合、本造形材組成物は液体の形態であることが好ましい。また、粉末床溶融結合、結合剤噴射、材料押出、指向エネルギー堆積に用いられる場合、本造形材組成物は粉末の形態であることが好ましい。さらに、シート積層に用いられる場合、本造形材組成物はシートの形態であることが好ましい。
(造形材組成物の追加成分)
本造形材組成物は、上述の形態又は用いる付加製造法に応じた追加の成分を含んでもよい。例えば、本造形材組成物を液体の形態で調整する場合、本造形材組成物は、溶剤をさらに含有し、この溶剤中にエンジニアリングプラスチックの粒子が分散されていることが好ましい。また、例えば、材料噴射や液槽光重合で紫外線などの放射線により造形材組成物を硬化させる系を用いる場合、本造形材組成物は、この放射線により硬化する重合性化合物、例えば、紫外線硬化樹脂を含むことが好ましい。
(領域加熱工程)
領域加熱工程では、付加製造法の過程において、本造形材組成物から形成されている一領域をエンジニアリングプラスチックのガラス転移点以上の温度で加熱する。加熱により、当該一領域中のエンジニアリングプラスチックの複数の粒子が互いに少なくとも部分的にゴム状態となり結合し、より好ましくは、一領域中で当該粒子全体がゴム状態となり結合して一体化すると考えられる。いずれにせよ、その後、自然冷却又は冷却装置を用いた強制冷却により、加熱したエンジニアリングプラスチックを硬化させると、粒子同士は固着する。なお、エンジニアリングプラスチックが結晶性エンジニアリングプラスチックである場合、ガラス転移点以上且つ融点未満の温度で加熱することが好ましい。
領域加熱工程は、付加製造法の他の工程を阻害しない限り、付加製造法中の任意のタイミングで行うことができる。例えば、造形物を構成する一層又は当該一層の一部を堆積する毎に領域加熱工程を行ってもよいし、造形物全体の成形が完了した後にまとめて領域加熱工程を行ってもよい。
加熱対象の一領域は、造形物の少なくとも一部の形状を象って予め形成されていてもよいし、そうでなくともよい。
領域加熱工程での加熱は、一領域を選択的に加熱することで行ってもよいし、全体的に加熱することで、例えば、一領域とその周辺領域とをまとめて加熱することで、行ってもよい。
(本造形材組成物による効果)
従来、エンジニアリングプラスチックは加熱して流動状態で付加造形法に用いられてきたが、流動状態のエンジニアリングプラスチックの粘性が余りにも高く、また流動性を維持するために高温を維持する必要があるため、エンジニアリングプラスチックを利用できる付加製造法は限られていた。
一方、第1の実施形態に係る造形材組成物は、エンジニアリングプラスチックが加熱により最終的に互いに固着できる粉末状であるため、従来はエンジニアリングプラスチックを利用できなかった付加製造法、例えば、材料噴射法や粉末床溶融結合法などにも適用可能である。従って、本造形材組成物によれば、高耐熱性且つ高強度の造形物を得られる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係る造形材組成物を用いて造形材組成物を形成する、本発明の第2の実施形態に係る付加製造法を図面を参照して説明する。本付加製造法は、材料噴射法である。本付加製造法では、上述の領域加熱工程を、後述の成形物準備工程S1及び成形物加熱工程S2により行い、この工程を繰り返すことで第1の実施形態に係る造形材組成物から造形物を製造する。
(造形材組成物)
本実施形態で用いる造形材組成物Mは、第1の実施形態に記載の任意のエンジニアリングプラスチックの粒子を含むインク組成物である。このインク組成物は、分散媒を含んでおり、この分散媒中に前述のエンジニアリングプラスチックの粒子が分散されている。
後述するプリントヘッド32のノズルから吐出できるのであれば、エンジニアリングプラスチックの粒子の平均粒子径は、任意であり、例えば、1μm以下、500nm以下、400nm以下、又は300nm以下であることが好ましく、10nm以上、50nm以上、100nm以上、200nm以上であることが好ましく、特に、200nmから500nmであることが好ましい。
また、ノズルの通過性を改善するために、インク組成物の原液をフィルター濾過してもよい。例えば、200nmから500nmの平均粒子径のエンジニアリングプラスチックの粒子を溶液中に分散させる場合、当該原液を1μmの目開きのフィルターで濾過することが好ましい。
ノズルから吐出できるのであれば、分散媒に対するエンジニアリングプラスチックの粒子の割合は、任意であり、例えば、分散媒に対して5重量%から40重量%、特に、10重量%から30重量%の範囲であることが好ましい。
分散媒は、任意であり、水又は有機溶剤などが挙げられる。分散媒は、造形材組成物Mをエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上で加熱する際に、蒸発して減量する又は完全になくなるものが好ましい。分散媒に適した有機溶剤としては、イソプロピルアルコール(IPA)、N−メチルピロリドン(NMP)などが挙げられる。
また、造形材組成物Mは、材料噴射法で造形材組成物に通常配合される任意の成分を含んでもよい。
(支持材組成物)
本実施形態で用いる支持材組成物Sは、分散媒と、当該分散媒中に分散されている固体粒子を含むインク組成物である。
この固体粒子は、付加造形法の過程で造形材組成物Mを支え、造形物Wが形成された後に、この造形物Wから分離可能な任意の粒子である。こうした固体粒子としては、造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子よりガラス転移点及び/又は融点が高い任意の粒子(当該エンジニアリングプラスチックとは異なる別のエンジニアリングプラスチックを含む)を利用できる。
この固体粒子の粒子径及び配合量並びに支持材組成物Sの分散媒の種類は、上述の造形材組成物Mと同様に調整できる。これらは、造形材組成物Mのエンジニアリングプラスチックの粒子の粒子径及び配合量並びに造形材組成物Mの分散媒の種類と同じであることが好ましい。しかし、成形物加熱工程S2での加熱による支持材組成物Sの収縮率が、成形物加熱工程S2での加熱による造形材組成物Mの収縮率と同程度であれば、例えば、造形材組成物Mの収縮率に対する支持材組成物Sの収縮率の割合が±20%、±10%、±5%の範囲であれば、支持材組成物Sの固体粒子の粒子径及び配合量並びに分散媒の種類は任意である。
また、支持材組成物Sは、材料噴射法で支持材組成物に通常配合される任意の成分、例えば、粘度調節剤を含んでもよい。
支持材組成物Sとしては、例えば、国際公開第2015/056232号パンフレットに開示の支持材組成物が使用できる。
(材料噴射法用付加製造装置)
本付加製造法は、用いる造形材組成物とそれに付随する条件(例えば、加熱条件など)を除いては、材料噴射法を用いて造形物を製造する任意の装置により行える。図1に、こうした装置の一例として、付加製造装置10を示す。付加製造装置10は、製造途中の造形物Wを載せる支持台20と、支持台20上に造形材組成物Mを堆積する堆積装置30と、堆積させた造形材組成物Mを加熱する加熱装置40とを備える。
支持台20は、造形物Wを載せる面がZ軸に沿って上下に移動する可動台である。
堆積装置30は、インクジェットプリンタであり、X軸及びY軸に沿って前後左右に走査可能なキャリッジ31と、当該キャリッジ上に設けられているプリントヘッド32とを備える。プリントヘッド32は、支持台20に向けて造形材組成物M及び支持材組成物Sを吐出する。なお、図1及び2中で、一点鎖線矢印は吐出中の造形材組成物M及び支持材組成物Sを示す。
加熱装置40は、X軸及びY軸に沿って前後左右に走査可能な任意の加熱器であり、成形物Fを造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上に加熱する。こうした加熱器としては、例えば、ハロゲンヒーターなどの輻射加熱器、温風機などが挙げられる。なお、図1及び2中で、破線矢印は熱を示す。
(成形物準備工程S1)
成形物準備工程S1では、前述の造形材組成物Mから形成されており且つ造形物Wの少なくとも一部の形状を有する成形物Fを準備する。具体的には、まず、図2(a)に示すように、支持台20と堆積層Lの厚さに応じて一層分下げる。その後、プリントヘッド32を硬化処理済みの堆積層L’上で前後左右に走査する。この走査過程で、図2(b)及び(c)にそれぞれ示すように、プリントヘッド32から、硬化処理済みの堆積層L上に、造形物Wを形成する場所(即ち成形物Fを形成する場所)には造形材組成物Mを、その他の場所には支持材組成物Sをそれぞれ吐出する。こうして新たな堆積層Lが形成される。
(成形物加熱工程S2)
成形物加熱工程S2では、加熱装置40を前後左右に走査して、堆積層L全体を加熱装置40により造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上に加熱することで、成形物F中の造形材組成物M内のエンジニアリングプラスチックの粒子同士を固着させる。
(その他の工程)
成形物加熱工程S2でのエンジニアリングプラスチックの粒子の溶融を迅速に行うため、成形物準備工程S1で用いる造形材組成物Mを、そのガラス転移点未満の、造形材組成物Mの溶融しない温度まで、例えば、当該ガラス転移点より10℃低い温度まで、保存タンク内で予熱する予熱工程を行うことが好ましい。
また、成形物加熱工程S2後は、造形物を自然冷却又は強制冷却により室温(25℃)まで冷却する冷却工程を行うことが好ましい。
造形物Wの完成後、造形物Wの周囲の支持材組成物Sを除去する除去工程を行うことが好ましい。こうした除去工程としては、公知の支持材組成物の除去方法、例えば、エアブラシングなどによる物理的剥離や水又は有機溶剤による洗浄などが挙げられる。
(本付加製造法による効果)
従来、エンジニアリングプラスチックは加熱して流動状態で付加造形法に用いられてきたが、流動状態のエンジニアリングプラスチックの粘性が余りにも高く、また流動性を維持するために高温を維持する必要があるため、微細なノズルを用いた精密加工が可能な付加造形法、例えば、材料噴射法では、ノズルの目詰まりの危険があるため、エンジニアリングプラスチックを造形材組成物として利用できなかった。
一方、第2の実施形態に係る付加製造法によれば、エンジニアリングプラスチックをノズルを通過する粒子状とし、この粒子をノズルから吐出した後に加熱して固着するため、ノズルが目詰りする心配はない。従って、本付加製造法によれば、耐熱、高強度、且つ高精度の造形物が得られる。
(第3の実施形態)
第1の実施形態に係る造形材組成物を用いて造形材組成物を形成する、本発明の第3の実施形態に係る付加製造法を図面を参照して説明する。本付加製造法は、材料噴射法である。本付加製造法では、上述の領域加熱工程を、後述の堆積層準備工程S3及び堆積層加熱工程S4により行い、この工程を繰り返すことで第1の実施形態に係る造形材組成物から造形物を製造する。
(造形材組成物)
本実施形態で用いる造形材組成物Mは、第2の実施形態で用いる造形材組成物Mと同様である。
(材料噴射法用付加製造装置)
本付加製造法は、用いる造形材組成物とそれに付随する条件(例えば、加熱条件など)を除いては、材料噴射法を用いて造形物を製造する任意の装置により行える。図3に、こうした装置の一例として、付加製造装置11を示す。付加製造装置11は、製造途中の造形物Wを載せる支持台20と、支持台20上に造形材組成物Mを堆積する堆積装置30と、堆積させた造形材組成物Mを加熱する加熱装置40とを備える。
支持台20は、造形物Wを載せる面がZ軸に沿って上下に移動する可動台である。
堆積装置30は、インクジェットプリンタであり、X軸及びY軸に沿って前後左右に走査可能なキャリッジ31と、当該キャリッジ31上に設けられているプリントヘッド32とを備える。プリントヘッド32は、支持台20に向けて造形材組成物Mを吐出する。第2の実施形態とは異なり、プリントヘッド32は、支持材組成物Sを吐出しない。なお、図3中で、一点鎖線矢印は吐出中の造形材組成物Mを示す。
加熱装置40は、ヒートモードレーザーを発生するレーザー照射装置41と、このレーザーをX軸及びY軸に沿って走査しつつ支持台20上に照射する可動式反射鏡42とから構成されている。図3及び図4中で、破線矢印はレーザーを示す。レーザー照射装置41としては、半導体レーザー照射装置やNd:YAGレーザー照射装置が挙げられる。
(堆積層準備工程S3)
堆積層準備工程S3では、前述の造形材組成物Mから形成されており且つ造形物Wの少なくとも一部を構成する領域Rを包含する堆積層Lを準備する。具体的には、まず、図4(a)に示すように、支持台20を堆積層Lの厚さに応じて一層分下げる。その後、プリントヘッド32を硬化処理済みの堆積層L’上で前後左右に走査する。この走査過程で、プリントヘッド32から、硬化処理済みの堆積層L上に、造形材組成物Mを、吐出する。こうして、図4(b)に示すように、堆積層Lが形成される。
(堆積層加熱工程S4)
堆積層加熱工程S4では、堆積層Lのうち領域Rを選択的に加熱して、領域R中の造形材組成物M内のエンジニアリングプラスチックの粒子同士を固着させる。具体的には、レーザー照射装置41からヒートモードレーザーを可動式反射鏡42に向けて照射し、このレーザーを可動式反射鏡42で反射させることにより領域Rに当てる。このとき、図4(c)及び(d)に示すように、可動式反射鏡42の向きを調節することで、領域R内を埋め尽くすようにレーザーを走査する。この過程で、レーザーの温度を、領域R内に照射するときはエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上の温度に、領域R外に照射するときは造形材組成物Mが溶融しない当該ガラス転移点未満の温度に、好ましくは、当該ガラス転移点より10℃以上低い温度に調節する。
なお、領域Rが離散的な2つ以上の領域からなる場合、一領域から他領域へレーザーを走査する間に領域R外にレーザーが当たることを防ぐために、一領域から他領域へレーザーを走査する間はレーザー照射装置41からのレーザーの照射を停止することが好ましい。
(その他の工程)
以上のように造形物Wを形成した後、造形物Wの周囲の未硬化の造形材組成物Mは、粒子状態に維持されているので、造形物Wから簡単に除去することができる。例えば、造形物Wの周囲の未硬化な造形材組成物Mを水や有機溶剤により洗浄する洗浄工程を行うことが好ましい。洗い落とした造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子を再利用する場合、再利用の処理を簡便にするため、洗浄液として造形材組成物M中の分散媒に含まれる水又は有機溶剤を使用することが好ましい。また、この洗浄工程の代わりに、公知の支持材組成物の除去方法、例えば、エアブラシングなどによる物理的剥離を行ってもよい。
堆積層加熱工程S4でのエンジニアリングプラスチックの粒子の溶融を迅速に行うため、堆積層準備工程S3で用いる造形材組成物Mを、そのガラス転移点未満の、造形材組成物Mの溶融しない温度まで、例えば、当該ガラス転移点より10℃低い温度まで、保存タンク内で予熱する予熱工程を行うことが好ましい。
また、造形物全体の成形が終了した後は、造形物を自然冷却又は強制冷却により室温(25℃)まで冷却する冷却工程を行うことが好ましい。
(本付加製造法による効果)
従来、エンジニアリングプラスチックは加熱して流動状態で付加造形法に用いられてきたが、流動状態のエンジニアリングプラスチックの粘性が余りにも高く、また流動性を維持するために高温を維持する必要があるため、微細なノズルを用いた精密加工が可能な付加造形法、例えば、材料噴射法では、ノズルの目詰まりの危険があるため、エンジニアリングプラスチックを造形材組成物として利用できなかった。
一方、第3の実施形態に係る付加製造法によれば、エンジニアリングプラスチックをノズルを通過する粒子状とし、この粒子をノズルから吐出した後に加熱して固着させるため、ノズルが目詰りする心配はない。従って、本付加製造法によれば、耐熱、高強度、且つ高精度の造形物が得られる。
また、本付加製造法は、支持材組成物Sを省略でき、また、洗い落とした造形材組成物Mの再利用も容易なので、経済的である。
(変形例1)
第2及び第3の実施形態において、放射線硬化系を併用してもよい。
具体的には、第2及び第3の実施形態において、造形材組成物Mの分散媒を、放射線硬化性重合性化合物(紫外線硬化性樹脂など)又はそれを水又は有機溶剤で希釈したものとすることで、造形材組成物Mを放射線硬化性インク組成物とする。第2の実施形態では、さらに、支持材組成物Sの分散媒を、放射線硬化性重合性化合物又はそれを水又は有機溶剤で希釈したものとすることで、支持材組成物Sを放射線硬化性インク組成物とする。あるいは、支持材組成物Sとして、第1の実施形態で用いた支持材組成物Sの代わりに、放射線硬化性インク組成物を造形材組成物として用いる従来の材料噴射法における公知の支持材組成物を用いてもよい。例えば、こうした支持材組成物としては、特開2017−165804号公報、特開2017−031249号公報などに開示の支持材組成物が挙げられる。
そして、第2の実施形態では、成形物準備工程S1と並行して、又は、成形物準備工程S1から成形物加熱工程S2の間に、放射線(紫外線など)を照射して成形物Fを硬化させる。
同様に、第3の実施形態では、堆積層準備工程S3と並行して、又は、堆積層準備工程S3から堆積層加熱工程S4の間に、放射線(紫外線など)を照射して堆積層Lを硬化させる。
放射線照射は、キャリッジ31にプリントヘッド32と共に設けた放射線照射装置(紫外線ランプなど)により、プリントヘッド32からの造形材組成物Mの吐出に追従して行うことが好ましい。しかし、プリントヘッド32とは独立してX軸及びY軸に沿って前後左右に走査可能な放射線照射装置により、成形物F全体又は堆積層L全体が形成された後にまとめて放射線を照射してもよい。
変形例1によれば、製造過程での造形物W及びその周辺の支持構造の強度を高めることができるため、造形物Wの製造精度が高まる。
(変形例2)
第2の実施形態の変形例1では、成形物Fを一層分形成する毎に成形物加熱工程S2を行うが、成形物Fを複数層積層して造形物Wの形状を得た後に、この複数の成形物Fをまとめて加熱してもよい。加熱装置40は、複数の成形物Fをまとめて上述のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上に加熱できる任意の加熱器であればよい。こうした加熱器としては、例えば、ヒーター、オーブン、温風機、輻射加熱器などが挙げられる。この加熱を行う前に、洗浄工程を行い、複数の成形物Fの周囲の支持材組成物Sを洗い落とすことが好ましい。変形例2によれば、成形物加熱工程S2全体に掛かる時間を短縮できる。
(変形例3)
変形例1及び2において、成形物加熱工程S2の加熱温度は、造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点並びに造形材組成物M中の放射線硬化性重合性化合物の硬化物のガラス転移点及び/又は融点よりも高いことが好ましい。変形例3によれば、エンジニアリングプラスチックと放射線硬化性重合性化合物の硬化物との間の密着性が高まり、全体として強固な造形物Wが得られる。
(変形例4)
変形例2では、付加製造法として材料噴射法を用いて、造形物Wの全体を成形物加熱工程S2で形成してから、造形物W全体を成形物加熱工程S2でまとめて加熱することを示したが、付加製造法は、材料噴射法に限定されず、他の方法を用いてもよい。
例えば、付加製造法として、結合剤噴射法を用いてもよい。この場合、付加製造装置として結合剤噴射法用の付加造形装置を用いる。そして、成形物準備工程S1では、造形材組成物としてエンジニアリングプラスチックの粒子からなる粉体組成物を用い、通常通り、結合噴射法で造形物Wを形成する。この造形物Wが成形物Fに相当する。その後、成形物加熱工程S2では、造形物W全体をヒーターやオーブンなどの加熱装置40により造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上に加熱して、当該粒子を互いに固着させる。
また、例えば、付加製造法として、シート積層法を用いてもよい。この場合、付加製造装置としてシート積層法用の付加造形装置を用い、造形材組成物Mとして、エンジニアリングプラスチックの粒子を含むシート材を用いる。こうしたシート材は、シート積層法で通常用いるシート材の表面に当該粒子を付着させたものでもよいし、当該粒子を配合した材料(例えば、樹脂など)から形成したシート材でもよい。特に、シート材として、エンジニアリングプラスチックの粒子を配合したシート材を用いることが好ましい。そして、成形物準備工程S1では、上述の造形材組成物Mを用い、通常通り、シート積層法で造形物Wを形成する。この造形物Wが成形物Fに相当する。その後、成形物加熱工程S2では、造形物W全体をヒーターやオーブンなどの加熱装置40により造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上に加熱して、当該粒子を互いに固着させる。
さらに、例えば、付加製造法として、液槽光重合法を用いてもよい。この場合、付加製造装置として液槽光重合法用の付加造形装置を用い、造形材組成物Mとして、エンジニアリングプラスチックの粒子を分散させた放射線重合性液体組成物を用いる。そして、成形物準備工程S1では、上述の造形材組成物Mを用い、通常通り、液槽光重合法で造形物Wを形成する。この造形物Wが成形物Fに相当する。その後、成形物加熱工程S2では、造形物W全体をヒーターやオーブンなどの加熱装置40により造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上に加熱して、当該粒子を互いに固着させる。なお、液槽光重合法では、通常、放射線重合性液体組成物として、紫外線硬化性樹脂を用いるが、これに限定されず、任意の放射線重合性化合物を主成分とする液体組成物と対応する放射線を用いて液槽光重合法を行ってもよい。
(第4の実施形態)
第1の実施形態に係る造形材組成物を用いて造形材組成物を形成する、本発明の第4の実施形態に係る付加製造法を図面を参照して説明する。本付加製造法は、粉末床溶融結合法である。本付加製造法では、上述の領域加熱工程を、後述の堆積層準備工程S5及び堆積層加熱工程S6により行い、この工程を繰り返すことで第1の実施形態に係る造形材組成物から造形物を製造する。
(造形材組成物)
本実施形態で用いる造形材組成物Mは、第1の実施形態に記載の任意のエンジニアリングプラスチックの粒子を含む粉体組成物である。この粉体組成物は、当該エンジニアリングプラスチックの粒子のみからなるものでもよい。また、この粉体組成物は、粉末床溶融結合法で造形材組成物に通常配合される任意の成分を含んでもよい。
(粉末床溶融結合法用付加製造装置)
本付加製造法は、用いる造形材組成物とそれに付随する条件(例えば、加熱条件など)を除いては、粉末床溶融結合法を用いて造形物を製造する任意の装置により行える。図5に、こうした装置の一例として、付加製造装置12を示す。付加製造装置12は、製造途中の造形物Wを載せる支持台20と、支持台20上に造形材組成物Mを堆積する堆積装置30と、堆積させた造形材組成物Mを加熱する加熱装置40とを備える。
支持台20は、造形物Wを載せる面がZ軸に沿って上下に移動する可動台であり、当該面上に載っている未硬化の造形材組成物Mの粉末がこぼれないように、その側面が壁により囲まれている。
堆積装置30は、造形材組成物Mを供給する供給装置34と、供給された造形材組成物Mを支持台20上に送り込むローラー35とから構成されている。供給装置34は、造形材組成物Mの粉末を乗せる面が上下に移動する可動台であり、当該面上に載っている造形材組成物Mの粉末がこぼれないように、その側面が壁により囲まれている。
加熱装置40は、ヒートモードレーザーを発生するレーザー照射装置41と、このレーザーをX軸及びY軸に沿って走査しつつ支持台20上に照射する可動式反射鏡42とから構成されている。図5及び図6中で、破線矢印はレーザーを示す。レーザー照射装置41としては、半導体レーザー照射装置やNd:YAGレーザー照射装置が挙げられる。レーザー照射装置41による加熱温度は、造形材組成物M中のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上であればよい。
(堆積層準備工程S5)
堆積層準備工程S5では、前述の造形材組成物Mから形成されており且つ造形物Wの少なくとも一部を構成する領域Rを包含する堆積層Lを準備する。具体的には、まず、図6(a)に示すように、支持台20を堆積層Lの厚さに応じて一層分下げ、供給装置34の台面を堆積層Lの体積に応じて一層分上げる。そして、供給装置34の台面から支持台20に向けてローラー35を転がすことで、供給装置34の台面上の造形材組成物Mの粉末を支持台20上に移動させる。これにより、図6(b)に示すように、加熱処理済みの造形材組成物の堆積層L’上に領域Rを包含する新たな造形材組成物の堆積層Lが形成される。
(堆積層加熱工程S6)
堆積層加熱工程S6では、堆積層Lのうち領域Rを選択的に加熱して、領域R中の造形材組成物M内のエンジニアリングプラスチックの粒子同士を固着させる。具体的には、レーザー照射装置41からヒートモードレーザーを可動式反射鏡42に向けて照射し、このレーザーを可動式反射鏡42で反射させることにより領域Rに当てる。このとき、図6(c)及び(d)に示すように、可動式反射鏡42の向きを調節することで、領域R内を埋め尽くすようにレーザーを走査する。なお、領域Rが離散的な2つ以上の領域からなる場合、一領域から他領域へレーザーを走査する間に領域R外にレーザーが当たることを防ぐために、一領域から他領域へレーザーを走査する間はレーザー照射装置41からのレーザーの照射を停止することが好ましい。
(その他の工程)
堆積層加熱工程S6でのエンジニアリングプラスチックの粒子の溶融を迅速に行うため、堆積層準備工程S5の前に、造形材組成物Mを、そのガラス転移点未満の、造形材組成物Mの溶融しない温度まで、例えば、当該ガラス転移点より10℃低い温度まで、予熱する予熱工程を行うことが好ましい。
また、造形物全体の成型が終了した後は、造形物Wを自然冷却又は強制冷却により室温(25℃)まで冷却する冷却工程を行うことが好ましい。
完成後の造形物Wの周囲にある未硬化の造形材組成物Mは、粉末状なので、特別な除去工程を行わずとも、造形物Wを取り出す際に大部分が剥がれ落ちる。取り出した造形物Wの表面に残存する粉末状の造形材組成物Mをエアブラシング又は水若しくは有機溶剤による洗浄などにより除去する除去工程を行うことが好ましい。
(本付加製造法による効果)
従来、エンジニアリングプラスチックは加熱して流動状態で付加造形法に用いられてきたが、粉末を利用する付加製造法、例えば、粉末床溶融結合法には利用できなかった。
一方、第4の実施形態に係る付加製造法では、エンジニアリングプラスチックが加熱により最終的に互いに固着できる粉末状であるため、耐熱性及び強度に優れたエンジニアリングプラスチックからなる造形物を粉末床溶融結合法により製造できる。従って、本造形材組成物によれば、高耐熱性且つ高強度の造形物が得られる。
(変形例5)
第2から第4の実施形態及び変形例1から4では、第1の実施形態に係る造形材組成物を使用する際に必要な領域加熱工程を既存の付加製造法に適合させる方法について具体的に説明したが、第1の実施形態に係る造形材組成物を使用できる付加製造法は前述の実施形態及び変形例に限定されず、第1の実施形態で述べた領域加熱工程を組み合わせることができるのであれば任意の付加製造法で第1の実施形態に係る造形材組成物を使用できる。
特に、第1の実施形態に係る造形材組成物は、材料噴射法との相性がよく、例えば、インク組成物の形態の当該造形材組成物をプリントヘッドから吐出して少なくとも一層の堆積層を形成する堆積工程と、造形物を最終的に構成することとなる堆積層の少なくとも一部(例えば、第2の実施形態の成形物F、第3の実施形態の領域Rなど)をガラス転移点点以上に加熱する加熱工程とを備えた材料噴射法に好適に使用できる。
(変形例6)
以上の実施形態及び変形例では、エンジニアリングプラスチックの粒子を固着させるために、これらの粒子をエンジニアリングプラスチックのガラス転移点以上の温度に加熱したが、エンジニアリングプラスチックが結晶性エンジニアリングプラスチックである場合、代わりに、エンジニアリングプラスチックの融点以上の温度に加熱することとしてもよい。
例えば、第2及び第3の実施形態では、エンジニアリングプラスチック粒子を含有するインク組成物をプリントヘッドから吐出して少なくとも一層の堆積層を形成し、その後、造形物を構成することとなる堆積層の少なくとも一部(成形物F又は堆積層L内の領域R)をガラス転移点以上に加熱するが、この加熱温度をエンジニアリングプラスチックの融点以上としてもよい。
本変形例によれば、エンジニアリングプラスチックの粒子同士が融着するので、耐熱性及び強度がより一層高い造形物が得られる。
(変形例7)
以上の実施形態及び変形例では、エンジニアリングプラスチックの粒子を固着するために、これらの粒子をエンジニアリングプラスチックのガラス転移点以上の温度に加熱したが、代わりに、エンジニアリングプラスチック粒子のガラス転移点近傍の温度、より具体的には、当該ガラス転移点から20℃、10℃、又は5℃低い温度以上且つガラス転移点未満の温度で、加熱することとしてもよい。
例えば、変形例1では、エンジニアリングプラスチック粒子を含有する放射線硬化性インク組成物をプリントヘッドから吐出した後に放射線を照射することで少なくとも一層の堆積層を形成し、その後、造形物を構成することとなる堆積層の少なくとも一部(成形物F又は堆積層L内の領域R)をガラス転移点以上に加熱するが、この加熱温度をガラス転移点−20℃以上でガラス転移点未満の任意の温度としてもよい。
本変形例によれば、エンジニアリングプラスチックの粒子は、軟化しているので、互いに良く密着し、造形物内で緊密に充填されることになると考えられる。このため、本変形例では、ガラス転移点近傍未満の温度でエンジニアリングプラスチックの粒子を加熱して造形物を製造する場合に比べ、耐熱性及び強度が高い造形物が得られる。
(実施例)
(実施例1)
ポリアミドイミド(トレパールPAI、東レ社製、ガラス転移点285℃、平均粒子系200−500nm)を水中に分散し、20重量%のポリアミドイミドの分散液を得た。その後、これを1μmの目開きのフィルターで濾過した。
(実施例2)
ポリフェニレンサルファイド(トレパールPPS、東レ社製、ガラス転移点85℃、平均粒子系200−500nm)をイソプロピルアルコール中に分散し、30重量%のポリフェニレンサルファイドの分散液を得た。その後、これを1μmの目開きのフィルターで濾過した。
(実施例3)
ポリフッ化ビニリデン(トレパールPVDF、東レ社製、ガラス転移点34℃、平均粒子系200−500nm)をN−メチルピロリドン中に分散し、10重量%のポリフッ化ビニリデンの分散液を得た。その後、これを1μmの目開きのフィルターで濾過した。
(実施例4)
ポリブチレンテレフタレート(トレパールPBT、東レ社製、ガラス転移点35℃、平均粒子系200−500nm)をフェノキシアクリレート中に分散し、紫外線光開始剤を添加し、10重量%のポリブチレンテレフタレートの分散液を得た。その後、これを1μmの目開きのフィルターで濾過した。
(実施例5)
実施例1−4の分散液をインクジェットプリンタ(3Dプリンタ3DUJ−553、ミマキエンジニアリング社製)でメディア上に印刷した。いずれの分散液もインクジェットプリンタのプリントヘッドのノズルから好適に射出できた。そして、これらの印刷物を分散液中のエンジニアリングプラスチックの粒子のガラス転移点以上に加熱すると、メディア上で粒子同士の固着が観察された。
(実施例6)
実施例4の分散液をインクジェット光造形装置(3Dプリンタ3DUJ−553、ミマキエンジニアリング社製)で積層して、5cm×5cm×5cmの立方体を作成した。その後、この立方体をオーブン中40℃で8時間加熱した。加熱後の立方体を切断し、断面を観察すると、ポリブチレンテレフタレートの粒子の固着が観察された。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
10、11、12 付加製造装置
20 支持台
30 堆積装置
31 キャリッジ
32 プリントヘッド
34 供給装置
35 ローラー
40 加熱装置
41 レーザー照射装置
42 可動式反射鏡
W 造形物
M 造形材組成物
S 支持材組成物
R 領域
F 成形物

Claims (13)

  1. 堆積層を一層ずつ積層して造形物を形成する材料噴射方式の付加製造法であって、
    エンジニアリングプラスチックの粒子を含有するインク組成物をプリントヘッドから吐出して少なくとも一層の堆積層を形成する堆積工程と、
    前記造形物を構成することとなる前記堆積層の少なくとも一部を前記エンジニアリングプラスチックのガラス転移点近傍の温度以上に加熱する加熱工程と、
    を含む、
    付加製造法。
  2. 前記加熱工程において、前記堆積層の前記少なくとも一部を前記エンジニアリングプラスチックの前記ガラス転移点以上に加熱する、請求項1に記載の付加製造法。
  3. 前記加熱工程において、前記堆積層の前記少なくとも一部を前記エンジニアリングプラスチックの融点以上に加熱する、請求項1に記載の付加製造法。
  4. 前記インク組成物は、分散媒として、水、有機溶剤、又は放射線硬化性重合性化合物を含んでいる、請求項1から3のいずれか1項に記載の付加製造法。
  5. 前記堆積工程では、前記堆積層を複数積層して前記造形物の少なくとも一部の形状を有する成形物を形成し、
    前記加熱工程では、前記成形物を加熱する、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の付加製造法。
  6. 前記堆積工程で前記堆積層を一層積層する毎に、前記加熱工程を行い、
    前記加熱工程では、前記堆積層のうち前記造形物を構成することとなる一領域を選択的に加熱する、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の付加製造法。
  7. 前記加熱工程では、
    前記堆積層のうち前記一領域を除く部分は前記エンジニアリングプラスチックのガラス転移点未満の温度で加熱され、
    前記堆積層のうち前記一領域は前記ガラス転移点以上の温度で加熱される、
    請求項6に記載の付加製造法。
  8. 前記インク組成物は、放射線硬化性重合性化合物をさらに含む放射線硬化性インク組成物であり、
    前記加熱工程では、前記エンジニアリングプラスチックのガラス転移点以上、且つ、前記放射線硬化性重合性化合物の硬化物のガラス転移点以上の温度で、加熱を行う、
    請求項1から7のいずれか1項に記載の付加製造法。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の付加製造法で用いられる、エンジニアリングプラスチックの粒子を含有するインク組成物。
  10. 前記エンジニアリングプラスチックが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載のインク組成物。
  11. 前記粒子の平均粒子径が500nm以下である、請求項9又は10に記載のインク組成物。
  12. 前記インク組成物は、分散媒として、水、有機溶媒、又は放射線硬化性重合性化合物を含む、請求項9から11のいずれか1項に記載のインク組成物。
  13. 前記インク組成物は、放射線硬化性インク組成物である、請求項9から12のいずれか1項に記載のインク組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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