JP2019187224A - 電力系統の監視制御システム、及び、無効電力補償装置の制御定数設定支援システム - Google Patents
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Abstract
Description
これらの分散電源は自然条件によって発電量が急峻に変化して系統電圧を変動させるため、その対策として、SVCにより配電系統に無効電力を注入して電圧変動を抑制する方法が知られている。
このような高速の制御においては、個々のSVCが個別に動作する場合でも、各SVCが相互干渉しないように制御定数を設計する必要がある。
図9において、100は電力系統、101は交流電源、110,120は電力系統100に接続されたSVCである。
また、SVC110の系統特性算出部115及び系統特性判定部116は、系統インピーダンス測定モードにおいて、電圧偏差ΔV及び無効電力偏差ΔQから算出した系統インピーダンスX(Zs)のばらつきに応じて制御パラメータ指令値を生成し、この制御パラメータ指令値に従って無効電力指令Q*を演算する。これと同時に、SVC110は自己が系統インピーダンス測定モードである旨を動作モード情報として通信装置114から他方のSVC120の通信装置124に送信する。
これにより、SVC120から出力される無効電力Qoによって電圧偏差ΔVが変動するのを防ぎ、SVC110は、正確に測定した系統インピーダンスXに基づいて適切な大きさの無効電力Qを電力系統100に注入することができる。すなわち、SVC110は、SVC120による干渉を受けずに無効電力補償を行うことが可能である。
また、配電系統は、その地域の自然環境や特徴的な需要家に合わせてケースバイケースで構成されることが多く、計算装置を用いた監視制御システム上に系統構成等の情報が完全に集約されているとは限らない。
更に、非特許文献1では、SVCの追加等により系統構成が変更された場合の相互干渉については考慮されていない。
前記計算機システムは、
前記n通りの系統構成について、前記無効電力補償装置の制御が安定となる制御定数の安定性限界値と、系統電圧を所定値に維持する制御定数の電圧維持限界値と、に基づく候補領域をそれぞれ計算する手段と、
計算したn個の前記候補領域の重複領域から前記制御定数の設定可能領域を抽出する手段と、
前記設定可能領域を、マン・マシンインターフェースを介して出力する手段と、
を備えたことを特徴とする。
前記計算機システムは、
前記n通りの系統構成について、前記無効電力補償装置の制御が安定となる制御定数の安定性限界値と、系統電圧を所定値に維持する制御定数の電圧維持限界値と、に基づく候補領域をそれぞれ計算する手段と、
計算したn個の前記候補領域の重複領域から前記制御定数の設定可能領域を抽出する手段と、
前記設定可能領域を、マン・マシンインターフェースを介して出力する手段と、
を備えたことを特徴とする。
また、SVC相互間の通信も不要であるため、特に多数のSVCが接続される電力系統における通信回路等のハードウェアやソフトウェアの負担も少なく、システム全体の低コスト化に寄与する。
なお、以下の実施形態では、本発明を「配電系統」(一般に、配電用変電所から需要家に至る線路)に適用した場合について説明するが、本発明は、発電所から需要家に至る送配電系統(電力系統)の全般に適用可能である。
図1(a)において、電力会社等に設置されたサーバーやワークステーション等の計算装置10には、系統運用者Mによって操作されるパソコン等の端末11が接続されている。ここで、計算装置10及び端末11は、請求項における計算機システム12を構成する。
図1(b)における監視制御システム50は、図1(a)の計算装置10、端末11及びネットワーク20を含み、配電系統30内の各部との間で制御信号や動作情報を送受信可能である。
このため、監視制御システム50は、系統電圧のハンチングを招くことなく、しかもSVC321,322の所定の電圧制御性能を維持するように、SVC321,322のスロープリアクタンスXsを適切に設定することが求められる。
本実施形態では、計算装置10及び端末11からなる計算システム12が、系統運用者MによるスロープリアクタンスXsの設定支援を行う。
この電圧制御部330は、比例制御型スロープリアクタンス制御方式に基づくもので、制御点の電圧実効値と電圧目標値との偏差を減算器330aにより算出し、この偏差をゲイン乗算器330bに入力して制御ゲイン(比例ゲイン)Gを乗算した後、リミッタ330cに通してSVC321,322に対する無効電流指令をそれぞれ生成する。
なお、前述したように、制御ゲインGはスロープリアクタンスXsの逆数である。
そして、系統運用者Mは、各パターンの候補領域が重複する重複領域内で、対象とするSVCの位置(配電用変圧器からの距離)に応じた設定可能領域を確認し、その設定可能領域に含まれるスロープリアクタンスXsを当該SVCに設定する。
なお、この実施形態では電圧制御部330が比例制御型であり、電圧制御部330の制御ゲインがゲイン乗算器330b(比例ゲイン)の例であるが、電圧制御部330が積分器または微分器を含む場合であっても良いし、電圧制御部330の制御ゲインが積分器または微分器に入力される制御ゲインであっても良い。
図3において、候補領域Aは安定性限界値Aと電圧維持限界値Aとによって区画されるパターンAの領域であり、候補領域Bは同様に安定性限界値Bと電圧維持限界値Bとによって区画されるパターンBの領域である。ここで、二通りのパターンA,Bは、例えば図1(b)において1台のSVC321のみが接続される系統構成と、2台のSVC321,322が接続される系統構成とに相当する。すなわち、複数の候補領域A,Bは、配電系統30内の区分開閉器340の動作によって形成され得る複数通りの系統構成(複数通りの無効電力注入経路)に対応している。
他方のSVC322のスロープリアクタンスXsについても、同様にして設定すれば良い。
一例として、安定性限界値をシミュレーションにより求める例を説明する。
図4は、シミュレーションに用いた簡易配電系統モデルを示しており、交流電源300、配電線303、負荷313,314、SVC323,324、開閉器341〜344、変圧器351,352によって構成されている。
上記の系統モデルを対象として、SVC323,324の一台連系時、二台連系時の各パターンについて、電力系統シミュレーションソフトウェア(例えば、EMTP:Electro Magnetic Transients Program)を実行することにより、配電線亘長(SVCの位置)に対する安定性限界値を算出する。
スロープリアクタンスXsがXs≦X2lim(L)以下の領域は不安定領域であり、ハンチングの可能性が大きいのに対し、Xs>X2lim(L)の領域は、理論的には安定領域であると言える。
従って、図3に示した安定性限界値AまたはBは、図5における整定目安:X2tol(L+Lα)または許容値:X2tol(L)に相当するものと考えても良い。
なお、マージンは配電線亘長方向に設定する以外に、スロープリアクタンスXs方向に直接設定しても良い。具体的には、マージンを0.02などに設定し、スロープリアクタンスの安定領域をXs≧X2lim(L)+0.02としても良い。
これらの電圧維持限界値A,Bについても、図1の計算機システム12が、以下のような公知技術を利用してシミュレーションにより求めることができる。
SVCの制御ゲインを大きくするとSVCの接続点及び近傍における配電線電圧を目標値(通常は定格電圧付近)に近付けようとする作用が強くなるため、配電線電圧が規定範囲内に収束し易くなる。配電系統のとり得る負荷や分散電源、SVCの配置、及び制御ゲインを加味したシミュレーションを実施することにより、配電線の電圧を所定値に維持する観点から、マージンを含めた制御ゲインのとり得る範囲を決定することは容易である。
なお、配電線の電圧を計算する方法は、配電系統を定式化する方法を用いても良い。例えば、清水慶一ほかによる論文「配電系統用SVCの安定性評価に関する検討」(電気学会論文誌B,125巻5号,2005年)に記載されている方法を用いることができる。
計算装置10は、上記の各領域を示す表示データを生成し、端末11のディスプレイ上に表示させる。
特性表示部11aには、図3と同様の候補領域A,B、重複領域C、及び設定可能領域C’が、スロープリアクタンスXsの数値目盛と共に表示されている。
また、特性表示部11aの上方には、例えば配電系統にSVCが3台(SVC1〜SVC3)存在する場合に、特性表示部11aに表示されている特性がどのSVCに関するものであるかを表示する選択表示部11dが設けられている。選択表示部11d及び特性表示部11aに表示されるSVC(及びその特性図)は、スクロールボタン11fにより切替可能である。
なお、図6では、SVC1のスロープリアクタンスXsの設定可能領域C’を表示させて所定値(例えば0.025)を設定する場合を例示してあり、この場合、他のSVC2,SVC3のスロープリアクタンスXsは既に設定済み(例えば0.040)であるものとしている。
系統運用者MによるスロープリアクタンスXsの入力手段(設定手段)としては、上記のスライダー11bに限らず、キーボードから数値を直接入力しても構わない。
また、図6に示した表示画面は、端末11以外の操作卓などに設置されたディスプレイに表示させても良い。更には、必要に応じて、設定可能領域C’の上下限値を音声出力によって系統運用者Mに伝えても良い。
なお、上記実施形態においてはSVCを例に説明したが、SVCと同様の電圧制御機能を備えた配電系統に接続するインバータ(太陽光発電用パワーコンディショナ・風力発電用パワーコンディショナ・蓄電池用パワーコンディショナ・静止型同期直列補償装置)であっても良い。例えば、太陽光発電用パワーコンディショナの場合には、発電有効電力を配電系統に供給するだけではなく、無効電力注入による電圧上昇抑制機能を備えている場合があるが、この場合にはスロープリアクタンスXsの代わりにその制御ゲインを対象として設定可能とすれば良い。
図3等を用いて説明したように、計算機システム12は、系統構成の二つのパターンA,Bについて、スロープリアクタンスにマージンを持たせて安定性限界値A,Bをそれぞれ計算し、これらの安定性限界値A,Bと電圧維持限界値A,Bとによって区画される候補領域A,Bの重複領域C内で最適なスロープリアクタンスを設定可能としている。ここで、上記のマージンは、例えば配電線亘長や線路インピーダンスを考慮して設定されるものであるが、計算機システム12に固定値として保持されるか、あるいは、操作員がマン・マシンインターフェースを介してその都度、設定する等の方法が採られている。
そこで、本発明の第2実施形態では、実際のSVCの出力特性が、設定された制御ゲイン(スロープリアクタンスXsの逆数)により想定される出力特性となるように制御ゲインを計算機システム12にて調整することにより、系統運用者の負担を軽減させるようにした。
計算機システム12に設定された目標制御ゲイン(理論上の制御ゲイン)に、加算手段12bによって制御ゲイン調整値が加算される。本実施形態では、この制御ゲイン調整値を、電圧波形または電流波形の実測値が理論値に追従するように構成されたフィードバック制御系を用いて最適値に調整する。
図8とは逆に、波形(理論値)は減衰時定数が大きく、波形(実測値)は減衰時定数が小さい場合には、目標制御ゲインよりも小さい制御ゲインに調整することによって実測値を理論値に近付けることができる。
この第2実施形態では、SVCから出力される電圧波形または電流波形の実測値が、目標制御ゲインのもとでSVCから出力される電圧波形または電流波形の理論値に追従するようにフィードバック制御を行うことにより、適正な減衰時定数となるように制御ゲインが調整されることになる。
11:端末
11a:特性表示部
11b:スライダー
11c:数値表示部
11d:選択表示部
11e:連動設定ボタン
11f:スクロールボタン
12:計算機システム
12a:PI制御手段
12b:加算手段
12c:シミュレータ
12d,12e: 減衰時定数抽出手段
12f:減算手段
20:ネットワーク
30:配電系統
300:交流電源(配電用変圧器)
301,302,303:配電線
311,312,313,314:負荷
321,322,323,324:SVC
330:電圧制御部
330a:減算器
330b:ゲイン乗算器
330c:リミッタ
331,332:制御回路
340:区分開閉器
341,342,343,344:開閉器
351,352:変圧器
50:監視制御システム
M:系統運用者
Claims (9)
- 開閉器の動作に応じて無効電力補償装置を含むn(nは複数)通りの系統構成が存在し得る電力系統を対象として、計算機システムが監視・制御を行う監視制御システムにおいて、
前記計算機システムは、
前記n通りの系統構成について、前記無効電力補償装置の制御が安定となる制御定数の安定性限界値と、系統電圧を所定値に維持する制御定数の電圧維持限界値と、に基づく候補領域をそれぞれ計算する手段と、
計算したn個の前記候補領域の重複領域から前記制御定数の設定可能領域を抽出する手段と、
前記設定可能領域を、マン・マシンインターフェースを介して出力する手段と、
を備えたことを特徴とする電力系統の監視制御システム。 - 前記計算機システムは、
前記電力系統の線路上の前記無効電力補償装置の位置または前記制御定数またはその両方にマージンを持たせて、前記候補領域を計算することを特徴とした、請求項1に記載の電力系統の監視制御システム。 - 前記計算機システムが、ネットワークを介して前記電力系統と通信可能であることを特徴とした、請求項1または2に記載の電力系統の監視制御システム。
- 前記計算機システムは、
前記設定可能領域に含まれる前記制御定数であって、前記マン・マシンインターフェースを介して外部から入力された制御定数を、前記ネットワークを介して前記無効電力補償装置に設定可能であることを特徴とした、請求項3に記載の電力系統の監視制御システム。 - 前記計算機システムは、
前記制御定数の逆数を制御ゲインとして前記無効電力補償装置に設定し、
前記無効電力補償装置を前記電力系統に投入して制御を開始した時の実測電圧または実測電流の過渡的波形から算出される減衰時定数実測値に基づいて、前記無効電力補償装置に設定された前記制御ゲインを自動的に調整することを特徴とした、請求項4に記載の電力系統の制御監視システム。 - 前記制御ゲインを、前記計算機システムが算出した減衰時定数理論値と前記減衰時定数実測値との偏差に基づいて自動的に調整することを特徴とした、請求項5に記載の電力系統の監視制御システム。
- 前記マン・マシンインターフェースは、
前記設定可能領域を表示する表示手段を少なくとも備えることを特徴とした、請求項1〜6の何れか一項に記載の電力系統の監視制御システム。 - 前記制御定数が、前記無効電力補償装置のスロープリアクタンスまたは制御ゲインであることを特徴とした、請求項1〜7の何れか一項に記載の電力系統の監視制御システム。
- 開閉器の動作に応じて無効電力補償装置を含むn(nは複数)通りの系統構成が存在し得る電力系統を対象として、計算機システムが前記無効電力補償装置の制御定数の設定を支援する制御定数設定支援システムにおいて、
前記計算機システムは、
前記n通りの系統構成について、前記無効電力補償装置の制御が安定となる制御定数の安定性限界値と、系統電圧を所定値に維持する制御定数の電圧維持限界値と、に基づく候補領域をそれぞれ計算する手段と、
計算したn個の前記候補領域の重複領域から前記制御定数の設定可能領域を抽出する手段と、
前記設定可能領域を、マン・マシンインターフェースを介して出力する手段と、
を備えたことを特徴とする、無効電力補償装置の制御定数設定支援システム。
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