JP2019179278A - スピーカー装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】スピーカー装置の忠実再生度を適切に評価可能にしたスピーカー装置の忠実再生度テスト方法を提供する。【解決手段】テスト用の音源として、人間の声、楽器などの自然の音を録音した音を用い、前記テスト用の音を音源として前記スピーカー装置で再生したときの音の波形と、前記音源の波形とを比較するために、一定の時間軸の範囲で前記両波形の時間軸及び音圧軸を比較可能なように揃えたうえで両波形のずれが最小になるようにして重ねたとき、前記両波形がずれた部分に形成される両波形に囲まれる領域の面積を不一致量とし、その不一致量の値が小さいほど一致度合いが高く、波形再現性が高いものとして忠実再生度が高いものとする。【選択図】図7
Description
本発明は、スピーカー装置の忠実再生度のテスト方法に関する。
スピーカー装置を用いたオーディオHiFi装置は、「CDなどの普通のソース(音の記録媒体)に普通に刻まれた音信号をスピーカー装置で再生したとき、その再生された音の波形が元のソースに刻まれた音の波形を忠実に再現したものとなる装置」であるというべきである。音はその波形で特定されるので、ソースの音波形が再現されていれば、ソースの音が忠実に再現されていることになるからである。
しかし、従来のスピーカー装置は、普通のソースに刻まれた複雑な音波形を変形せずに忠実に再現すること(波形再現)が困難であろうことは容易に想像される。すなわち、スピーカー装置の特性として「周波数特性」及び「群遅延特性」があり、理論的には、この二つの特性が良好であれば、良好な波形再現ができることになるが、現状ではこの二つの特性が理想からほど遠いものであることは周知の事実であるからである。
なお、ここで「周波数特性」とは、各周波数の音圧特性である。また、群遅延(τg)とは、ある信号処理系にある周波数の信号を入力した場合において、入力波形と出力波形との位相差をφとし、角周波数をωとしたとき、τg=dφ/dωで表されるものである。信号の伝送という視点でみた場合には、信号を入力してから出力されるまでにかかる時間(遅延時間)の周波数依存性を表したものであるということもできる。これが理想的でない(=一様でない)ということは、周波数ごとに遅延時間が異なるということである。
群遅延は、特に大口径のスピーカーの低音部において大きい値を有しており、このため、口径30cm内外のスピーカーでは、例えていえば、スピーカーに50Hzの音信号と500Hzの音信号とを同時に印加しても、スピーカーからは、500Hzの音が先に出てから数m秒程度遅れて50Hzの音が出てくるというようなことになる。
このような群遅延特性を有するスピーカーに対し、50Hzの波に500Hzの波が重畳された波形を有する音信号が加えられたとすると、先に500Hzの波の音が再生され、その後、数m秒程度遅れてから50Hzの波の音が再生されるというようなことになって、50Hzの波の上にある500Hzの波のピーク位置が数m秒の分だけ移動することになる。つまり、このようなスピーカーに周波数の異なる複数の波が重畳された波形の音信号を加えて再生すると、出てくる音の波形は、その重畳波形が大幅に変形された波形を有するものとなる。
ここで、特に、弦楽器の音などをはじめとする自然の生の音の波形は、単純繰り返し波形の波とは異質なものであり、いわば、非繰り返し波形もしくは非対称な波形ともいうべきもので、波長(=周波数)の異なる波どうしが多数複雑に重畳された複雑な形状をしているのが普通である。このような複雑な波形の音の場合には、群遅延があると、各波長の波のピーク位置(時間軸における位置関係)が変わることになる。そうすると、それだけ
で元の波形とは違った波形になってしまうことになる。その結果、再生される音自体が違ったものになるであろうことは明らかである。
で元の波形とは違った波形になってしまうことになる。その結果、再生される音自体が違ったものになるであろうことは明らかである。
また、周波数特性が理想的でないと、各波長の波のピーク高さが再現されないことにな
って、やはりそれだけでも波形が再現されないことになる。従来のスピーカーは「周波数特性」及び「群遅延特性」のいずれもが理想的からかなりかけ離れているので、必然的に波形再現性もかなり悪いであろうことが予想される。この点について、実際に、いくつかの音源、例えば、人間の歌声や弦楽器の音などについて、CDなどに記録されている元の音波形と、それをスピーカーで再生したときの音波形とを比較してみると、スピーカーで再生したときの音波形は、元の音波形と大幅に違った波形であることが確認された。
って、やはりそれだけでも波形が再現されないことになる。従来のスピーカーは「周波数特性」及び「群遅延特性」のいずれもが理想的からかなりかけ離れているので、必然的に波形再現性もかなり悪いであろうことが予想される。この点について、実際に、いくつかの音源、例えば、人間の歌声や弦楽器の音などについて、CDなどに記録されている元の音波形と、それをスピーカーで再生したときの音波形とを比較してみると、スピーカーで再生したときの音波形は、元の音波形と大幅に違った波形であることが確認された。
ところで、近年、FIRなどのデジタルフィルターが開発され、このデジタルフィルターを用いたいわゆる音場補正技術が開発されている(特許文献1参照)。この音場補正技術の中には、「周波数特性」及び「群遅延特性」の補正を行うものがある。したがって、従来のスピーカー装置にこのデジタルフィルターを用いた音場補正装置によって、「周波数特性」及び「群遅延特性」の補正を加えてこれらの特性を向上させることができれば、「波形再現性」も向上させることができるはずである。
ところが、本願発明者らの研究によれば、上述の従来のスピーカー装置に、デジタルフィルターを用いた音場補正装置を用いて、「周波数特性」及び「群遅延特性」の補正を加えても、理論上で予想される「波形再現性」の向上効果が、実際には十分に得られないことが判明した。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、スピーカー装置の忠実再生度合いを適切にテスト・評価できる方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1. スピーカー装置の忠実再生度のテスト方法であって、
テスト用の音源として、人間の声、楽器などの自然の音を録音した音を用い、
前記テスト用の音を前記スピーカー装置で再生したときの音の波形と、前記音源の波形とを比較するために、
一定の時間軸の範囲で前記両波形の時間軸及び音圧軸を比較可能なように揃えたうえで両波形のずれが最小になるようにして重ねたとき、
前記両波形がずれた部分に形成される両波形に囲まれる領域の面積Sを不一致量とし、
その不一致量の値が小さいほど一致度合いが高く、波形再現性が高いものとして、忠実再生度が高いと評価することを特徴とするスピーカー装置の忠実再生度のテスト方法。
2. 前記波形比較は、前記両波形を波形編集ソフトに取り込んで行うことを特徴とする(1)に記載のスピーカー装置の忠実再生度のテスト方法。
なお、本願発明に関連する事項として以下を付記する。
(1)スピーカーユニットの振動体の表の面を信号音発生部とし、前記信号音発生部を除くほかの部位を雑音発生部としたとき、前記雑音発生部から外部に放出される雑音の量が、以下に定義される許容レベル以下になるように、前記雑音発生部の構造及び材料を選定したことを特徴とするスピーカー装置である。
ただし、前記許容レベルとは、前記スピーカー装置に、デジタルフィルターを用いた周波数特性の補正と群遅延特性の補正とを施したときに、前記周波数特性の補正と群遅延特性の補正とを施さない場合に比較して、波形再現性が有意に向上するようになるレベルをいい、
また、前記波形再現性とは、周波数(波長)の異なる複数の波が重畳された波形を有するテスト用の音を音源として前記スピーカー装置で再生したときの音の波形と、前記音源の波形とを比較したときの両波形の一致度合いをいい、一定の時間軸の範囲でそれら両波形の時間軸及び音圧軸を比較可能なように揃えたうえで両波形のずれが最小になるように
して重ねたとき、両波形がずれた部分に形成される両波形に囲まれる領域の面積Sを不一致量とし、その不一致量の値が小さいほど一致度合いが高く、波形再現性が高いものとし、
さらに、前記波形再現性が有意に向上するようになるレベルとは、補正を施さない場合
の不一致量をS1とし、補正を施した場合の不一致量をS2とし、SK=(S1−S2)÷(S1)×100(%)の値を再現性向上率としたとき、再現性向上率SKが10(%)を超えるレベルをいう。
(2)
前記テスト用の音は、人間の声、楽器などの自然の音を録音した音であるものとし、
前記許容レベルは、前記再現性向上率SKが20%を超えるレベルであることを特徴とする(1)に記載のスピーカー装置である。
(3)
前記テスト用の音は、人間の声、楽器などの自然の音を録音した音であるものとし、
前記許容レベルは、前記再現性向上率SKが30%を超えるレベルであることを特徴とする(1)に記載のスピーカー装置である。
(4)
前記スピーカーユニットを構成するユニット構造部材が振動することによって発生する雑音、前記スピーカーユニットが取り付けられた取り付け構造部材及びこの取り付け構造部材に取り付けられた他の構造部材が振動することによって発生する雑音、及び、前記スピーカーユニットの振動体の裏の面から射出される雑音、がそれぞれ外部へ至る伝搬経路に、吸音部材、制振部材又は遮音部材を配置し、これらの部材の配置位置、構造又は配置量を選定し、前記雑音の外部への放出量が前記許容レベル以下になるようにしたことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載のスピーカー装置である。
(5)
単体では当該スピーカー装置が再生可能としている低音領域の再生をするには不十分な能力の小口径の単位スピーカーユニットを複数組み合わせて当該スピーカー装置の低音領域の再生ができるようにしたことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のスピーカー装置である。
(6)
音源からの音の信号を入力して必要な処理及び増幅をする増幅装置部と、前記増幅装置部に接続されたスピーカー装置部とを有するスピーカー装置であって、
前記増幅装置部には、前記スピーカー装置が有する群遅延特性及び周波数特性を補正する処理を行う補正処理装置が設けられ、
前記スピーカー装置部として、(1)ないし(5)のいずれかに記載のスピーカー装置が用いられることを特徴とするスピーカー装置である。
(7)
前記スピーカー装置の製造後、出荷前において、前記補正装置によって群遅延特性の補正及び周波数特性の補正が施されてから出荷されることを特徴とする(6)に記載のスピーカー装置である。
(8)
前記補正は、無響室で行われることを特徴とする(6)に記載のスピーカー装置である。
1. スピーカー装置の忠実再生度のテスト方法であって、
テスト用の音源として、人間の声、楽器などの自然の音を録音した音を用い、
前記テスト用の音を前記スピーカー装置で再生したときの音の波形と、前記音源の波形とを比較するために、
一定の時間軸の範囲で前記両波形の時間軸及び音圧軸を比較可能なように揃えたうえで両波形のずれが最小になるようにして重ねたとき、
前記両波形がずれた部分に形成される両波形に囲まれる領域の面積Sを不一致量とし、
その不一致量の値が小さいほど一致度合いが高く、波形再現性が高いものとして、忠実再生度が高いと評価することを特徴とするスピーカー装置の忠実再生度のテスト方法。
2. 前記波形比較は、前記両波形を波形編集ソフトに取り込んで行うことを特徴とする(1)に記載のスピーカー装置の忠実再生度のテスト方法。
なお、本願発明に関連する事項として以下を付記する。
(1)スピーカーユニットの振動体の表の面を信号音発生部とし、前記信号音発生部を除くほかの部位を雑音発生部としたとき、前記雑音発生部から外部に放出される雑音の量が、以下に定義される許容レベル以下になるように、前記雑音発生部の構造及び材料を選定したことを特徴とするスピーカー装置である。
ただし、前記許容レベルとは、前記スピーカー装置に、デジタルフィルターを用いた周波数特性の補正と群遅延特性の補正とを施したときに、前記周波数特性の補正と群遅延特性の補正とを施さない場合に比較して、波形再現性が有意に向上するようになるレベルをいい、
また、前記波形再現性とは、周波数(波長)の異なる複数の波が重畳された波形を有するテスト用の音を音源として前記スピーカー装置で再生したときの音の波形と、前記音源の波形とを比較したときの両波形の一致度合いをいい、一定の時間軸の範囲でそれら両波形の時間軸及び音圧軸を比較可能なように揃えたうえで両波形のずれが最小になるように
して重ねたとき、両波形がずれた部分に形成される両波形に囲まれる領域の面積Sを不一致量とし、その不一致量の値が小さいほど一致度合いが高く、波形再現性が高いものとし、
さらに、前記波形再現性が有意に向上するようになるレベルとは、補正を施さない場合
の不一致量をS1とし、補正を施した場合の不一致量をS2とし、SK=(S1−S2)÷(S1)×100(%)の値を再現性向上率としたとき、再現性向上率SKが10(%)を超えるレベルをいう。
(2)
前記テスト用の音は、人間の声、楽器などの自然の音を録音した音であるものとし、
前記許容レベルは、前記再現性向上率SKが20%を超えるレベルであることを特徴とする(1)に記載のスピーカー装置である。
(3)
前記テスト用の音は、人間の声、楽器などの自然の音を録音した音であるものとし、
前記許容レベルは、前記再現性向上率SKが30%を超えるレベルであることを特徴とする(1)に記載のスピーカー装置である。
(4)
前記スピーカーユニットを構成するユニット構造部材が振動することによって発生する雑音、前記スピーカーユニットが取り付けられた取り付け構造部材及びこの取り付け構造部材に取り付けられた他の構造部材が振動することによって発生する雑音、及び、前記スピーカーユニットの振動体の裏の面から射出される雑音、がそれぞれ外部へ至る伝搬経路に、吸音部材、制振部材又は遮音部材を配置し、これらの部材の配置位置、構造又は配置量を選定し、前記雑音の外部への放出量が前記許容レベル以下になるようにしたことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載のスピーカー装置である。
(5)
単体では当該スピーカー装置が再生可能としている低音領域の再生をするには不十分な能力の小口径の単位スピーカーユニットを複数組み合わせて当該スピーカー装置の低音領域の再生ができるようにしたことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のスピーカー装置である。
(6)
音源からの音の信号を入力して必要な処理及び増幅をする増幅装置部と、前記増幅装置部に接続されたスピーカー装置部とを有するスピーカー装置であって、
前記増幅装置部には、前記スピーカー装置が有する群遅延特性及び周波数特性を補正する処理を行う補正処理装置が設けられ、
前記スピーカー装置部として、(1)ないし(5)のいずれかに記載のスピーカー装置が用いられることを特徴とするスピーカー装置である。
(7)
前記スピーカー装置の製造後、出荷前において、前記補正装置によって群遅延特性の補正及び周波数特性の補正が施されてから出荷されることを特徴とする(6)に記載のスピーカー装置である。
(8)
前記補正は、無響室で行われることを特徴とする(6)に記載のスピーカー装置である。
上述の1〜2の手段によれば、スピーカー装置の忠実再生度合いを適切にテスト・評価できるようになった。
このような作用効果が得られるのは、従来は全く認識されていなかった事実であって本願発明者がはじめて解明した以下の事実による。
a.従来のスピーカー装置にデジタルフィルターによる「周波数特性」及び「群遅延特性」の補正をかけても理論上期待できる「波形再現性」向上効果を得ることができないという事実。
b.その原因は、従来のスピーカーでは、デジタルフィルターによる「周波数特性」及び
「群遅延特性」の補正が有効にかからないためであるという事実。
b1.従来のスピーカー装置でデジタルフィルターによる「周波数特性」及び「群遅延特性」が有効にかからないのは、従来のスピーカー装置では、スピーカーユニットの振動体の表の面、つまり、コーン紙の表の面から射出される音を信号音とし、このコーン紙の表の面以外から射出される音を雑音とすると、この信号音に対して雑音が無視できないほど多いためであるという事実。
a.従来のスピーカー装置にデジタルフィルターによる「周波数特性」及び「群遅延特性」の補正をかけても理論上期待できる「波形再現性」向上効果を得ることができないという事実。
b.その原因は、従来のスピーカーでは、デジタルフィルターによる「周波数特性」及び
「群遅延特性」の補正が有効にかからないためであるという事実。
b1.従来のスピーカー装置でデジタルフィルターによる「周波数特性」及び「群遅延特性」が有効にかからないのは、従来のスピーカー装置では、スピーカーユニットの振動体の表の面、つまり、コーン紙の表の面から射出される音を信号音とし、このコーン紙の表の面以外から射出される音を雑音とすると、この信号音に対して雑音が無視できないほど多いためであるという事実。
ここで、「コーン紙の表の面以外から射出される雑音」とは、例えば、前記スピーカーユニットを構成するユニット構造部材が振動することによって生じた音が何らかの経路を通じて外部に放出されることによって発生する雑音、前記スピーカーユニットが取り付けられた取り付け構造部材及びこの取り付け構造部材に取り付けられた他の構造部材が振動することによって生じた音が何らかの経路を通じて外部に放出されることによって発生する雑音、及び、前記スピーカーユニットの振動体の裏の面からスピーカーボックス内部に向けて射出された音が種々の経路を通じて外部に放出されることで発生する雑音、などである。
c.本発明者の考察によれば、上記雑音が多いと、補正が有効にかからなくなるのは、以下の理由からであると推察された。
c1.補正装置は、簡単に言えば、スピーカー装置の「周波数特性」及び「群遅延特性」を測定し、デジタルフィルターなどを備えたデジタル処理装置を用いて、この測定した「周波数特性」及び「群遅延特性」と丁度逆の特性を有する逆補正関数を作成しておき、CDなどのソースの楽音などをスピーカー装置で再生するときに、ソースとスピーカー装置との間にこのデジタル処理装置を介在させ、ソースからの信号に逆補正関数を適用させてからスピーカー装置を駆動するようにしたものである。これにより、フラットな「周波数特性」及び「群遅延特性」を得ようとするものである。
具体的には、「周波数特性」及び「群遅延特性」を計測するための計測用信号をスピーカー装置で再生し、その音をマイクで検知してデジタルフィルター等を備えたデジタル処理装置に入力し、スピーカー装置の「周波数特性」及び「群遅延特性」を計測してその逆補正の関数(補正関数)を作成し、その補正関数を用いて入力された音信号を補正するものである。
c1.補正装置は、簡単に言えば、スピーカー装置の「周波数特性」及び「群遅延特性」を測定し、デジタルフィルターなどを備えたデジタル処理装置を用いて、この測定した「周波数特性」及び「群遅延特性」と丁度逆の特性を有する逆補正関数を作成しておき、CDなどのソースの楽音などをスピーカー装置で再生するときに、ソースとスピーカー装置との間にこのデジタル処理装置を介在させ、ソースからの信号に逆補正関数を適用させてからスピーカー装置を駆動するようにしたものである。これにより、フラットな「周波数特性」及び「群遅延特性」を得ようとするものである。
具体的には、「周波数特性」及び「群遅延特性」を計測するための計測用信号をスピーカー装置で再生し、その音をマイクで検知してデジタルフィルター等を備えたデジタル処理装置に入力し、スピーカー装置の「周波数特性」及び「群遅延特性」を計測してその逆補正の関数(補正関数)を作成し、その補正関数を用いて入力された音信号を補正するものである。
c2.ここで、この補正は、あくまでもスピーカーの「コーン紙」に対してなされる補正である(振動して音を射出するのはコーン紙であるが、このコーン紙を振動させるのはボイスコイルであり、音信号はこのボイスコイルに加えられるのであるから、厳密には正確な表現ではないが、ここでは、ボイスコイルの振動とコーン紙の振動とは1対1の関係にあるものと仮定する)。つまり、この補正は、あくまでも、印加される音信号にそのまま依存して振動するスピーカーの「コーン紙」の「周波数特性」及び「群遅延特性」を計測してその逆補正の関数(補正関数)を作成し、その「コーン紙」の「周波数特性」及び「群遅延特性」を補正することが前提となっている。
c3.換言すると、「周波数特性」及び「群遅延特性」を計測する際に計測用信号をスピーカー装置で再生して「計測用信号音」を射出させるが、この「計測用信号音」は、「コーン紙」だけから射出されたものであることが前提となっている。
c4.そして、その「コーン紙」だけから射出された計測情報に基づいてその逆補正関数を作成し、その「コーン紙」だけに対して補正を適用することが前提である。
c5.しかるに、もし、上記「周波数特性」及び「群遅延特性」を計測する「計測用信号
音」に、「コーン紙」から射出される計測用信号音以外の音、つまりは「雑音」が含まれていたとすると、計測された「周波数特性」及び「群遅延特性」は、「コーン紙」の「周波数特性」及び「群遅延特性」ではなく、「コーン紙」から射出された信号音と雑音とが合成された音の「周波数特性」及び「群遅延特性」になってしまう。
c6.その結果、「コーン紙」に対して、この「コーン紙」からの信号音と「コーン紙」以外からの雑音とが合成された音に基づいて作成された逆補正関数によって補正が施されることになって、その雑音が付加されたことによる補正誤差が生ずることになる。
c4.そして、その「コーン紙」だけから射出された計測情報に基づいてその逆補正関数を作成し、その「コーン紙」だけに対して補正を適用することが前提である。
c5.しかるに、もし、上記「周波数特性」及び「群遅延特性」を計測する「計測用信号
音」に、「コーン紙」から射出される計測用信号音以外の音、つまりは「雑音」が含まれていたとすると、計測された「周波数特性」及び「群遅延特性」は、「コーン紙」の「周波数特性」及び「群遅延特性」ではなく、「コーン紙」から射出された信号音と雑音とが合成された音の「周波数特性」及び「群遅延特性」になってしまう。
c6.その結果、「コーン紙」に対して、この「コーン紙」からの信号音と「コーン紙」以外からの雑音とが合成された音に基づいて作成された逆補正関数によって補正が施されることになって、その雑音が付加されたことによる補正誤差が生ずることになる。
c7.本願発明者の考察によれば、従来のスピーカー装置に補正をかけても波形再現性がほとんど向上しないのは、従来のスピーカー装置では、上記「コーン紙」以外から発生する「雑音」が非常に多いので、上記補正誤差が非常に大きくなって、ほとんど補正による効果が得られなくなっているものと推察された。
c8.すなわち、従来のスピーカーは、可能な限り剛性の高い材料で構成されたスピーカーボックスにスピーカーユニットを取り付けたものである。そして、所望の低音領域の再生を可能にするために、いわゆるバスレフ方式やバックロードホーン方式にしたり、あるいは、必要な容積を確保した密閉箱方式にしたりしている。
c8.すなわち、従来のスピーカーは、可能な限り剛性の高い材料で構成されたスピーカーボックスにスピーカーユニットを取り付けたものである。そして、所望の低音領域の再生を可能にするために、いわゆるバスレフ方式やバックロードホーン方式にしたり、あるいは、必要な容積を確保した密閉箱方式にしたりしている。
c9.このような従来のスピーカー装置にあっては、スピーカー装置のスピーカーユニットに音信号を加えて「コーン紙」を振動させた場合、「コーン紙」だけが振動するのではなく、スピーカーユニットを構成するユニット構造部材もこのコーン紙の振動に伴って振動することは明らかである。
c10.この スピーカーユニットを構成するユニット構造部材が振動すると、このスピ
ーカーユニットが取り付けられた取り付け構造部材及びこの取り付け構造部材に取り付けられた他の構造部材も振動することになることも明白である。そしてこれらの構造部材はスピーカーボックスに機械的に接続されているので、スピーカーボックスを振動させる。その結果、スピーカーボックス表面から音が発生する。この音は、スピーカーのコーン紙の振動による音(信号音)以外の音であって一種の雑音である。この点については、スピーカーボックスをいかに剛性の高い材料で構成しようとも、発生する音の周波数成分を異ならせるだけで音が発生することを防ぐことはできない。このことは、オルゴールユニットを剛性の高い材料に接触させてみればすぐにわかるが、たとえ、いかに剛性の高い材料であってもその材料をいとも簡単に振動させて盛大な音を発生させる。
c10.この スピーカーユニットを構成するユニット構造部材が振動すると、このスピ
ーカーユニットが取り付けられた取り付け構造部材及びこの取り付け構造部材に取り付けられた他の構造部材も振動することになることも明白である。そしてこれらの構造部材はスピーカーボックスに機械的に接続されているので、スピーカーボックスを振動させる。その結果、スピーカーボックス表面から音が発生する。この音は、スピーカーのコーン紙の振動による音(信号音)以外の音であって一種の雑音である。この点については、スピーカーボックスをいかに剛性の高い材料で構成しようとも、発生する音の周波数成分を異ならせるだけで音が発生することを防ぐことはできない。このことは、オルゴールユニットを剛性の高い材料に接触させてみればすぐにわかるが、たとえ、いかに剛性の高い材料であってもその材料をいとも簡単に振動させて盛大な音を発生させる。
c11.さらに、スピーカーユニットのコーン紙の裏の面からスピーカーボックス内部に射出された音は、スピーカーボックス内部で反射し、一部はコーン紙を突き抜けて外部に射出される。これは、コーン紙の振動による音以外の音であるので、一種の雑音である。また、この雑音がコーン紙を突き抜ける際にコーン紙を振動させ、これによってもコーン紙から信号音以外の一種の雑音を発生させる。
c12.スピーカー装置が、バスレフ方式やバックロードホーン方式の場合には、以上の雑音に加えてさらにバスレフポートやバックロードホーンから射出される音が加わる。これらの音も、「コーン紙」から直接射出される音ではなく、「コーン紙」から射出される音から所定時間遅れて射出される音であるので、これも一種の雑音である。
c13.以上の通り、従来のスピーカー装置では、上記「コーン紙」以外から発生する各種の「雑音」が合算されることにより、結果的に非常に大きな雑音になってしまうものと考えられる。
c12.スピーカー装置が、バスレフ方式やバックロードホーン方式の場合には、以上の雑音に加えてさらにバスレフポートやバックロードホーンから射出される音が加わる。これらの音も、「コーン紙」から直接射出される音ではなく、「コーン紙」から射出される音から所定時間遅れて射出される音であるので、これも一種の雑音である。
c13.以上の通り、従来のスピーカー装置では、上記「コーン紙」以外から発生する各種の「雑音」が合算されることにより、結果的に非常に大きな雑音になってしまうものと考えられる。
d.そこで、本願発明者は、上記「コーン紙」以外からの「雑音」が極力発生しない構造のスピーカーを考えて試作実験をした。
d1.すなわち、まず、スピーカーユニットを剛性の高いスピーカーボックスに取り付けるのを止めて、振動が伝えられても音をほとんど発生しない吸音性の部材でスピーカーユニットを支えるようにした。
d2.また、コーン紙の裏の面から射出される音を可能な限り吸音すべく、コーン紙の裏側の領域に可能な限り厚い吸音部材の層を設けるようにした。
d1.すなわち、まず、スピーカーユニットを剛性の高いスピーカーボックスに取り付けるのを止めて、振動が伝えられても音をほとんど発生しない吸音性の部材でスピーカーユニットを支えるようにした。
d2.また、コーン紙の裏の面から射出される音を可能な限り吸音すべく、コーン紙の裏側の領域に可能な限り厚い吸音部材の層を設けるようにした。
d3.このように、スピーカーユニットの裏側の領域を可能な限り分厚い吸音性の部材で
覆い、同時に、この吸音性の部材でスピーカーユニット自体も支える、構造の実験機を製作した。具体的には、スピーカーユニットの円形フレームに設けられた複数の取り付孔に長めのビスを固定し、これらのビスで囲まれる円形領域に木製や紙製などの断面が円形状などの筒状体の外周部を内接させながらその筒状体の一方の開口端部を、スピーカーユニットの円形フレームの裏側部に押し当ててビスと筒状体とをビニールテープなどで固定するなどして、コーン紙の表面側と裏面側との間に遮音性の壁を形成した。その上で、円筒の内側を吸音材で満たすとともに、円筒の外側に吸音材の層を可能な限り分厚く形成させるとともに、スピーカーユニットの円形フレームの表面も吸音材で覆ったものである。なお、再生周波数帯域を確保するために、必要に応じて、8〜13cmの小口径のユニットを複数個用いてウーハーや中音用とし、さらにツイターを用いて、デジタルチャンネルデバイダーと複数のアンプを用いたマルチアンプ方式で駆動するものとした。
覆い、同時に、この吸音性の部材でスピーカーユニット自体も支える、構造の実験機を製作した。具体的には、スピーカーユニットの円形フレームに設けられた複数の取り付孔に長めのビスを固定し、これらのビスで囲まれる円形領域に木製や紙製などの断面が円形状などの筒状体の外周部を内接させながらその筒状体の一方の開口端部を、スピーカーユニットの円形フレームの裏側部に押し当ててビスと筒状体とをビニールテープなどで固定するなどして、コーン紙の表面側と裏面側との間に遮音性の壁を形成した。その上で、円筒の内側を吸音材で満たすとともに、円筒の外側に吸音材の層を可能な限り分厚く形成させるとともに、スピーカーユニットの円形フレームの表面も吸音材で覆ったものである。なお、再生周波数帯域を確保するために、必要に応じて、8〜13cmの小口径のユニットを複数個用いてウーハーや中音用とし、さらにツイターを用いて、デジタルチャンネルデバイダーと複数のアンプを用いたマルチアンプ方式で駆動するものとした。
e.上記実験機は、上記「雑音」の発生が十分に小さいものであることは容易に推察される。上記実験機を用いて、上記「周波数特性」及び「群遅延特性」の補正をかけない場合と、これらの補正をかけた場合との波形再現性の測定を行った。その結果、補正をかけた場合が補正をかけない場合に比較して波形再現性が明らかに大幅に向上し、元の波形とかなり近いものとなることが判明した。
f.これに対して、従来のスピーカー装置では、補正をかけた場合が補正をかけない場合に比較して波形再現性が有意に向上したとは認められず、いずれも元の波形とはかなり違う波形であった。
f.これに対して、従来のスピーカー装置では、補正をかけた場合が補正をかけない場合に比較して波形再現性が有意に向上したとは認められず、いずれも元の波形とはかなり違う波形であった。
g.上記実験の結果は、補正が有効にかかるか否かは雑音の有無によるものであることを実証するものである。つまり、雑音を有効に除去できさえすれば、補正が有効にかかることを示すものである。したがって、雑音を除去できさえすれば、上記実験機とは異なる方法によってもよいことは勿論である。例えば、従来のように剛性の高いボックス(コアボックスという)にスピーカーユニットを取り付け、そのコアボックスをこのコアボックスより少し大きいボックス(シェルボックスという)に収納し、両ボックス間の振動伝達を遮断するようにしたものでもよい。さらには、ボックスの表面をゴム部材などで被覆したもので構成してもよい。要は、雑音を効果的に少なくするような構造であればどんなものでもよいことは勿論である。
本発明にかかるスピーカー装置に「周波数補正」及び「群遅延補正」を施したうえでの再生音は、ソースの音の波形を非常に忠実に再現した波形を有する音であり、いわば、正しい再生音というべきものである。その結果、弦楽器の音に代表される倍音成分の多いと思われる自然音が、非常に生々しく自然に聞こえるようになり、いわば、メッキを全部剥がした地金の輝きを放つ本物の音ともいうべき音になった。しかも、それが、特別に選ばれたソースだけではなく、まともに録音されたと思われる多くのソースについて言えるようになった。
映像であれば、目にした映像に色ずれや像の歪みなどがあれば直ちにそれが正しい映像でないことを誰でも明確に判別できるが、音の場合には、音を聴いただけでは、その音が正しい音か否かなどについては皆目わからないのが普通である。そもそも「正しい音」の定義すら定まっていないのが現状と思われる。また、現場などをそのまま写し取る写真映像には特有の生々しさがあり、それを我々が普通に味わうことができるのは、写真映像の場合には、記録された映像をほとんど変形せずに目にできることが当たり前になっているからでもあると考えられる。同じように、音の場合にも、もし、記録された音波形を変形
せずに耳にすることができれば、特有の生々しさを味わうことができるはずである。本発明にかかるスピーカー装置に「周波数補正」及び「群遅延補正」を施してソースの波形を再現した再生音は、まさにそのこと実証するものでもある。
せずに耳にすることができれば、特有の生々しさを味わうことができるはずである。本発明にかかるスピーカー装置に「周波数補正」及び「群遅延補正」を施してソースの波形を再現した再生音は、まさにそのこと実証するものでもある。
なお、本願発明は、「雑音除去」によって「波形再現性」が向上するという新規事実の発見に基づいたものであるが、本願においては、発明を、「雑音の量」が「波形再現性が有意に向上するようになるレベル以下の量」と規定して、その雑音の量自体を直接規定するなどの方法を採用していない。これは、スピーカー装置から放出される音のなかから「雑音」のみを分離して測定することは現状ではほぼ不可能であるので、雑音の量を定量的に把握することができないなどの理由からである。換言すると、本願で規定したような間接的な特定の方法以外に本願発明を適切に特定する方法が見当たらなかったからである。なお、例えば、スピーカーの構造などを特定する方法も考えられるが、そのような構造は無数に考えられるので、そのような構造を特定するという方法でこの発明を適切に特定することも不可能である。さらには、発生する雑音の性質や発生の程度などは、スピーカーユニットの性能やボックスの材料や構造などによって様々であるので、「波形再現性」の良し悪しのみで特定する方法も適切でないことは明らかである。以上の背景から、本願では、「波形再現性」及び「波形再現性向上率」という新規に定義した概念を導入することによってしか発明を適切に特定することができないという結論に至らざるを得なかったのである。この特定方法によれば、使用するスピーカーユニットの性能やそのユニットを収納するボックス等の収納体の材料や構造などによって、「波形再現性」自体がかなり異なる場合であっても、「波形再現性向上率」で規定することによってその影響を大幅に軽減し、本願発明の本質をより適切に特定できると考えられる。
上述の手段(5)によれば、低音領域を再生するスピーカーとして、単体では低音領域の再生をするには不十分な能力の小口径の単位スピーカーユニットを複数組み合わせて低音領域の再生を行うようにしたことにより、低音領域再生用スピーカーの群遅延の値を小さくでき、群遅延の補正量を小さくすることができる。つまり、スピーカーユニットの群遅延の値は口径が大きくなればなるほど大きくなるので、補正量を大きくしなければならなくなるが、小口径のスピーカーユニットを用いることによってその補正量を小さく抑えることが可能となる。これにより、補正の精度をより高めることが可能となる。
上述の手段(6)〜(8)によれば、ユーザーが購入後に何の操作をする必要もなく、スピーカー装置を購入しただけで手軽に「周波数補正」及び「群遅延補正」を施してソースの波形を良好に再現した後の再生音を楽しむことが可能になる。
ここで、音場補正装置による群遅延補正及び周波数補正は、周知のFIRフィルターなどのデジタルフィルターを用いたもので行う。これによれば、位相の乱れなどをきたすことがなく比較的容易に補正を行うことができる。これらの補正は、周知のAVアンプなどで一般的に用いられているように、群遅延特性や周波数特性等を測定するための測定用信号をオーディ装置で再生し、それをマイクで受けて分析し、得られた群遅延特性や周波数特性等からその逆補正をする音響伝達圧関数を作成し、それを用いて補正を行うものである。FIRフィルターを用いた補正装置は、フィルターのタップ数が多ければ多いほど精密な補正ができるので、少なくとも数千タップ以上、可能であれば数万タップ以上備えたものとすることが望ましい。かつ処理周波数も192KHz、24bit以上とすることが望ましい。
(実施例1)
図1は本願発明の実施例1にかかるスピーカー装置10の全体構成を示す図、図2は低音用スピーカー11の構成を示す断面図である。図1に示されるように、実施例1にかかるスピーカー装置10は、低音領域を再生するための4個の低音用スピーカー11、12、13、14と、中高音領域を再生するための1個の同軸型スピーカー21とを備えたものである。
図1は本願発明の実施例1にかかるスピーカー装置10の全体構成を示す図、図2は低音用スピーカー11の構成を示す断面図である。図1に示されるように、実施例1にかかるスピーカー装置10は、低音領域を再生するための4個の低音用スピーカー11、12、13、14と、中高音領域を再生するための1個の同軸型スピーカー21とを備えたものである。
図2に示されるように、低音用スピーカー11は、ともに厚さ1〜3cm程度の木製の板材などで形成された内側の箱11aと、その内側の箱11aを収納する外側の箱11bとを有する。内側の箱11aは、外形が直方体形状をなし箱状体であり、長手方向の一方の端面である正面11cに、スピーカー取り付け孔11dが形成されており、他方の端面である裏面11eは閉鎖面とされて、スピーカー端子11fが設けられている。そして、前記取り付け孔11dに低音用スピーカーユニット11gが取り付けられている。この場合、低音用スピーカーユニット11gの取り付けは、図示しない固定用ビス・ナットなどを用いて内側の箱11aに固定するものであるが、この固定用ビス・ナットと低音用スピーカーユニット11g及び内側の箱11aとの間に振動遮断部材を介在させて低音用スピーカーユニット11gの振動が内側の箱11aに伝わらないようにしてある。なお、内側の箱11aの縦断面の寸法は、低音用スピーカーユニット11gが取り付けられる大きさで、長手方向の長さは、低音用スピーカーユニット11gの口径の数倍以上とする。
外側の箱11bは、内側の箱11aと相似形で、内側の箱11aの外形寸法よりその内形寸法がわずかに大きく、内側の箱11aの外壁11hと外側の箱11bの内壁11iとの間に僅かな隙間11jが形成されるようにして内側の箱11aを収納できるようになっている。そして、隙間11iにはゲル状の振動遮断部材11kが適宜の位置に設けられ、外側の箱11bに収納された内側の箱11aを支持されるようになっている。さらに、内側の箱11a内には、吸音材11mが適宜充填される。なお、他の低音用スピーカー12、13、14は、上記低音用スピーカー11と同じ構成を有するので、その詳細説明は省略する。
また、同軸型スピーカー21は、低音用スピーカー11における低音用スピーカーユニット11gの代わりに、同軸型スピーカーユニット21gを用いたほかは基本的に同じ構成を有するので、その詳細説明は省略する。なお、低音用スピーカーユニット11gとしては、口径10〜13cm程度の低音用スピーカーユニット(ウーハー)を用いることができる。また、同軸型スピーカーユニット21gは、口径10〜13cm程度の通常のスピーカーと同様のコーン紙からなる中音部21g1を備えたうえで、そのコーン紙の手前中央部にツイターなどの高音部21g2を備えたものである。
また、低音用スピーカーとしては、口径がなるべく小さいものをなるべく多数用いたほうがよいが、市販のスピーカーを用いる場合には、1インチ〜6インチ程度のものが好ま
しい。これは一般に群遅延特性が小口径のほうが良好なので、補正量が少なくて済み、補正の効果がより有効であると考えられるからである。したがって、口径が大きくても群遅延が小さいスピーカーがあればそれでもよく、また、補正装置の性能が高ければ特に口径にこだわることもない。なお、口径が小さければ小さいほど多数のスピーカーを用いるべきは当然のことである。
しい。これは一般に群遅延特性が小口径のほうが良好なので、補正量が少なくて済み、補正の効果がより有効であると考えられるからである。したがって、口径が大きくても群遅延が小さいスピーカーがあればそれでもよく、また、補正装置の性能が高ければ特に口径にこだわることもない。なお、口径が小さければ小さいほど多数のスピーカーを用いるべきは当然のことである。
図3はスピーカー装置10を含むオーディオシステムの例を示す図である。このオーディオシステムは、低音用スピーカー11、12、13、14を駆動する低音用アンプ51と、同軸型スピーカー21の中音部21g1を駆動する中音用アンプ52と、高音部21g2を駆動する高音用アンプ53と、これらのアンプに低音用信号、中音用信号及び高音用信号を送るデジタルチャンネルデバイダー6と、このデジタルチャンネルデバイダー6に音信号を送る音場補正機能付プリアンプ7と、音場補正機能付プリアンプ7に音信号を送る音源装置8とで構成される。なお、低音用スピーカーユニット11g、12g、13g、14gは、2個のボイスコイルが直列に接続されて一組を構成し、これら直列接続された2組が並列に接続されて低音用アンプ51の出力に接続される。
低音用アンプ51、中音用アンプ52及び高音用アンプ53は、それぞれ電力増幅用のアンプであり、デジタルチャンネルデバイダー6からの音信号を電力増幅して低音用スピーカーユニット11g〜14g、中音用スピーカー21g1及び高音用スピーカー21g2を駆動するものである。これらのアンプはフルデジタルアンプを用いるのが望ましい。デジタルアンプはアンプ内で群遅延を生じさせる虞が少ないからである。また、音信号が通過する経路は、可能な限り群遅延の少ないデジタル処理をすることが望ましい。その場合、サンプリング周波数やデジタル処理のフォーマットは、例えば、192KHz,24bit等の可能な限り高いものを用いることが望ましい。
デジタルチャンネルデバイダー6は、音場補正機能付プリアンプ7から送られた音信号を低音、中音及び高音の周波数領域の音信号に分割してそれぞれ低音用アンプ51、中音用アンプ52及び高音用アンプ53に送るものである。デジタルチャンネルデバイダー6は、FIRフィルター又はIIRフィルターなどのデジタルフィルターを多数用いたもので構成する。抵抗やコンデンサーなどを用いたアナログ式のチャンネルデバイダーでは、このチャンネルデバイダーによって波形再現に有害な群遅延を生じさせるので好ましくないからである。FIRフィルター又はIIRフィルターなどのデジタルフィルターを多数用いたチャンネルデバイダーは、FIRフィルター又はIIRフィルターなどのデジタルフィルターが多数動作してチャンネルデバイダーとして動作するようにプログラムされたコンピューター装置を用いることで構成できる。なお、可能であれば位相特性のよいFIRフィルターを用いたもので構成するのが望ましい。フィルターのタップ数は、数千以上とし、可能であれば十万程度とする。
音場補正機能付プリアンプ7は、音源8から送られた音信号を増幅するアンプを備えるとともに音場補正処理を実行するコンピューター装置などを備えたものである。ここで、音場補正とは、群遅延特性の補正、周波数特性の補正及びルーム特性の補正(主として部屋の反射音などによる歪補正)を全部行う補正である。群遅延補正、周波数補正及びルーム補正は、周知のFIRフィルターなどのデジタルフィルターを用いたもので行う。これによれば、位相の乱れなどをきたすことがなく比較的容易に補正を行うことができる。ここでもフィルターのタップ数は、数千以上とし、可能であれば数万程度とする。
これらの補正は、周知のAVアンプなどで一般的に用いられているように、群遅延特性
、周波数特性及びルーム特性を測定するための測定用信号をオーディオ装置で再生し、それをマイクで受けて分析し、得られた群遅延特性や周波数特性等からその逆補正をする音響伝達圧関数を作成し、それを用いて補正を行うものであり、それらの処理を行うように
プログラムされたコンピューター装置を音場補正機能付プリアンプ7に内蔵させることで実現できる。音信号を送る音源装置8は、周知のCDプレーヤーやレコードプレーヤーなどのデジタルもしくはアナログの音信号が記録された記録媒体の音信号を読みだして所定の信号に変換して音場補正機能付プリアンプ7に送る装置である。
、周波数特性及びルーム特性を測定するための測定用信号をオーディオ装置で再生し、それをマイクで受けて分析し、得られた群遅延特性や周波数特性等からその逆補正をする音響伝達圧関数を作成し、それを用いて補正を行うものであり、それらの処理を行うように
プログラムされたコンピューター装置を音場補正機能付プリアンプ7に内蔵させることで実現できる。音信号を送る音源装置8は、周知のCDプレーヤーやレコードプレーヤーなどのデジタルもしくはアナログの音信号が記録された記録媒体の音信号を読みだして所定の信号に変換して音場補正機能付プリアンプ7に送る装置である。
なお、図示しないが、上述のスピーカー装置10と、低音用アンプ51、中音用アンプ52、高音用アンプ53、デジタルチャンネルデバイダー6、並びに音場補正機能付プリアンプ7とを、一つの筐体に収納して一体に構成し、いわゆる音場補正装置内蔵のパワードスピーカーとして構成してもよい。
その場合、音場補正装置内蔵のパワードスピーカー装置の製造後、出荷前において、前記音場補正装置によって群遅延特性の補正及び周波数特性の補正が施されてから出荷されるようにしてもよい。なお、その場合の補正は、無響室で行われることが望ましい。これによれば、ユーザーは自ら補正操作を行うことなく、工場で理想的な補正を行われた状態の音を購入後にすぐに聴きことができる。なお、勿論、ユーザーの部屋の音響特性を加味するルーム補正をその後に行うことができるようにしておくことが望ましいのは勿論である。
図4〜図7は、音源に刻まれている音波形と、その音源の音信号を実施例1にかかるスピーカー装置を用いた上述のオーディオシステムによって再生した音をマイクで検知した場合の音波形とを重ねて表示した波形比較図である。図の実線が音源に刻まれている音波形であり、図の破線がマイクで検知した音波形である。これらの図においては、音源に刻まれている音波形とマイクで検知した音波形とについて、一定の時間軸の範囲で時間軸及び音圧軸を比較可能なように揃えたうえで、元の波形とマイクによる検知波形とのずれが最小になるようにして重ねたものである。そして、両波形がずれた部分に形成される両波形に囲まれる領域の面積Sを不一致量と定義し、その面積Sの大きさを一点鎖線で示している。すなわち、チャートの基線と一点鎖線とで囲まれる面積が不一致量Sである。これらの図において、実線の波形に対して破線の波形が近ければ近いほど不一致量たる面積Sが小さくなり、波形再現性に優れるものである。なお、用いた音波形は、女性ヴォーカルの一部を波形編集ソフトに取り込んで時間軸を拡大し、時間軸を一致させて重ねたものである。
図4は従来型スピーカーで音場補正なしの場合、図5は従来型スピーカーで音場補正ありの場合、図6は実施例1のスピーカーで音場補正なしの場合、図7は実施例1のスピーカーで音場補正ありの場合である。なお、上述の波形比較においては、音場補正装置は同じものを用い、通常のリスニングルームで測定した。また、測定用マイクをスピーカーから約100cmの位置に配置して測定した。なお、従来型スピーカー装置としては、16.5cm口径のウーハーと、2.5cm口径のツイターとを備え、ネットワークを用いた2ウエイバスレフ方式の市販の高級スピーカー装置を用いた。
図4〜図7に示された結果から、従来型のスピーカー装置では、音場補正なしの場合は勿論であるが、音場補正ありの場合でも、音源の波形とスピーカーによる波形とが大きく異なっていることが明らかである。これに対し、実施例1のスピーカー装置では、音場補正なしの場合には音源の波形とスピーカーによる波形とが大きく異なっているが、音場補正ありの場合では、音源の波形とスピーカーによる波形とが明らかに非常によく一致してきていることが見て取れる。つまり、従来型のスピーカーでは、波形再現という観点からは音場補正がほとんど有効でないのに対し、実施例1のスピーカー装置では、音場補正が
非常に有効に効いていることがわかる。ここで、補正を施さない場合の不一致量をS1とし、補正を施した場合の不一致量をS2として、SK=(S1−S2)÷(S1)×100(%)の値を再現性向上率と定義する。
非常に有効に効いていることがわかる。ここで、補正を施さない場合の不一致量をS1とし、補正を施した場合の不一致量をS2として、SK=(S1−S2)÷(S1)×100(%)の値を再現性向上率と定義する。
そうすると、従来型のスピーカー装置を用いた場合では、S1=88.7、S2=81.6であり、SK=(S1−S2)×100=8.0(%)であった。これに対して、実施例1のスピーカー装置を用いた場合には、S1=80.1、S2=44.6であり、SK=(S1−S2)÷(S1)×100(%)=44.3(%)であった。すなわち、上記定義による波形再現性向上率が、従来型スピーカー装置の場合は10%以下であるのに対し、実施例1のスピーカー装置の場合には44.6%であり、非常に高いものであった。
なお、上述の波形測定は、通常のリスニングルームでの測定であるので、反射音の影響などが考えられ、必ずしも正確な補正ないしは測定であるとは言い難い。しかしながら、上述の測定結果を検討すると、ある程度の誤差はあるとしても、本願発明の効果を確認するには十分な程度の情報は得られているものと推察される。したがってもし、無響室で測定・補正等を行えば、より良好な結果が得られることは容易に推察される。また、測定に用いる音の種類によって波形再現性が異なることも考えられるので、多数の種類の音を用いなければ十分でないとも考えられる。しかしながら、上記測定音源として用いた音は、音源として頻繁に用いられる代表的な音の一つである楽器伴奏のある人間の歌声であり、さまざまな波長成分を含む複雑な波形を有する他の種々の音の代表例としての意味を有するとともに、上述の測定結果を検討すると、ある程度の誤差はあるとしても、本願発明の効果を確認するには十分な程度の情報は得られているものと推察される。さらに、従来のスピーカー装置は、その機種によって波形再現性向上率がかなり違う場合があり、従来のスピーカー装置の再現性向上率を一律に、何%であるということはできない。しかし、本願発明者らの調査によれば、かなり良質であるという定評のあるスピーカー装置の中から無作為に選定した数機種についてその波形再現性向上率を調べた結果、10%を超えるものはなかった。勿論、これで従来の全てのスピーカー装置の波形再現性向上率が10%以下であるということにはならないが、一応の推定は可能である。上記実施例1の波形再現性向上率は、10%をはるかに超えるものである。
波形再現性向上率が、10%を超えると、肉眼による波形比較でも一致度合いが向上していることをほとんどの人が感覚的に認識でき、また、聴感上においても、特に弦の音などについて、生々しさが向上していることをほとんどの人が認識できるようになることが確認されている。また、波形再現性向上率が、20%を超えると、肉眼による波形一致度合いの向上や聴感上の生々しさがよりはっきりしたものになり、30%を超えると、肉眼による波形一致度合いもより顕著になり、聴感上の生々しさも著しく顕著なものとなることが確認されている。
上述の実施例にかかるオーディオ装置によれば、弦楽器の音のように複雑な倍音を含む音の波形が刻まれたソースの音信号の波形を忠実に再現した音にして再生可能となり、弦楽器などの音も極めて生々しく再現することがはじめて可能になる。すなわち、群遅延特性及び周波数特性の補正することにより、少なくともスピーカー表面から出てくる音を、ソースに刻まれた音の波形が忠実に再現されたものとすることができる。そして、スピーカー表面以外から出る音を極力少なくしたうえでルーム特性の補正を施すことにより、スピーカー表面から出た音の波形が変形されることを防止できるので、ソースに刻まれた音の波形を忠実に再現した音を聴くことを可能にしている。このことは、本実施例にかかるオーディオ装置の音と、従来のさまざまなオーディオ装置の音とを比較することで本来の正しい音がいかなるものなのか、そして従来のオーディオ装置の音は、いかに変形された音であるのかを一聴して誰でもがただちに実感できるものである。
さらには、本実施の形態にかかるオーディオ装置では、低音部を担当するスピーカー装置を、多数の小口径のスピーカーによって構成したことにより、従来に比較してスピーカ
ーボックスを非常に小型に形成できることがわかった。すなわち、従来の大口径のスピーカーで低音を再生するためには大きなボックスが必須であった。これは、大きな面積の1枚のコーン紙全体を震わして低音を出すためにはコーン紙の裏面に大きな空間が必要とされていたからである。
ーボックスを非常に小型に形成できることがわかった。すなわち、従来の大口径のスピーカーで低音を再生するためには大きなボックスが必須であった。これは、大きな面積の1枚のコーン紙全体を震わして低音を出すためにはコーン紙の裏面に大きな空間が必要とされていたからである。
しかるに、本発明では、小口径のスピーカー1個に必要な背面空間は非常にわずかで済み、その空間を全部合計しても従来に比較して非常に小さいもので十分であることがわかった。それゆえ、非常に小型であるにもかかわらず、十分な低音を出すことができ、かつ振動のレスポンス非常に速いので低音部においても群遅延が非常に小さいので、むしろ迫力のある生々しい低音の再生が可能になったものである。さらには、製作コストも非常に安くできることがわかった。すなわち、小口径スピーカーは非常に廉価に得られるので、それを多数用いても1個の大口径スピーカーより十分に安価にでき、かつ、スピーカーボックスを非常に小型にでき、しかも、特別高価な材料を用いる必要がないことから、従来のスピーカー装置より十分安価に構成できることが分かった。
11、12、13、14 低音用スピーカー
21 中高音用同軸型スピーカー
51 低音用アンプ
52 中音用アンプ
53 高音用アンプ
6 デジタルチャンネルデバイダー
7 音場補正機能付プリアンプ
8 音源(音源装置)
21 中高音用同軸型スピーカー
51 低音用アンプ
52 中音用アンプ
53 高音用アンプ
6 デジタルチャンネルデバイダー
7 音場補正機能付プリアンプ
8 音源(音源装置)
Claims (2)
- スピーカー装置の忠実再生度のテスト方法であって、
テスト用の音源として、人間の声、楽器などの自然の音を録音した音を用い、
前記テスト用の音を音源として前記スピーカー装置で再生したときの音の波形と、前記音源の波形とを比較するために、
一定の時間軸の範囲で前記両波形の時間軸及び音圧軸を比較可能なように揃えたうえで両波形のずれが最小になるようにして重ねたとき、
前記両波形がずれた部分に形成される両波形に囲まれる領域の面積Sを不一致量とし、
その不一致量の値が小さいほど一致度合いが高く、波形再現性が高いものとして、忠実再生度が高いと評価することを特徴とするスピーカー装置の忠実再生度のテスト方法。 - 前記波形比較は、前記両波形を波形編集ソフトに取り込んで行うことを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置の忠実再生度のテスト方法。
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