以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光増幅器の模式的な構成図である。光パラメトリック増幅器である光増幅器100は、2本以上(本実施形態1では4本)の光増幅ファイバ110と、1つ以上(本実施形態1では3つ)の相対位相シフタ120と、ポンプ光源部130と、光合分波器140、150と、を備えている。
各々の相対位相シフタ120は、4本の光増幅ファイバ110の各々の間に挿入されている。ポンプ光源部130は、ポンプ光Pを出力する。光合分波器140は、被増幅光であるシグナル光S1と、ポンプ光Pとを合波し、紙面右側の光増幅ファイバ110に出力する。4本の光増幅ファイバ110は、各々の相対位相シフタ120を介して直列接続されており、シグナル光S1とポンプ光Pとを伝搬し、シグナル光S1を光パラメトリック増幅する。光合分波器150は、シグナル光S1が増幅されたものであるシグナル光S2と、光パラメトリック増幅に使用されなかった分のポンプ光である残留ポンプ光RPおよび後述するアイドラ光とを分波して出力する。光合分波器140、150は、たとえばWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラなどの公知の光カプラで構成されている。
各光増幅ファイバ110中では、ポンプ光Pとシグナル光S1との非線形効果によりアイドラ光が発生する。このアイドラ光の波長λidler[nm]は、ポンプ光Pの波長λpump[nm]とシグナル光S1の波長λsignal[nm]と次の式(1)で示される関係を有する。
1/λidler=2/λpump-1/λsignal ・・・ (1)
なお、本発明に係る光パラメトリック増幅器は、位相感応光増幅器(PSA:Phase Sensitive Amplifier)としても機能する。この場合、光増幅ファイバには、ポンプ光とシグナル光とともに、たとえばシグナル光に対して1/10倍〜10倍のパワーを持つアイドラ光を入力する。直列接続された光増幅ファイバからは、増幅されたシグナル光と増幅されたアイドラ光とが出力される。このアイドラ光の波長も(1)で示される関係を有する。
各々の相対位相シフタ120は、ポンプ光Pの波長およびその近傍の波長を有する光の位相をシフトさせ、光増幅器100の利得スペクトル波形を波長領域で平坦かつ広帯域にする機能を有する。相対位相φrelは、シグナル光の位相φsignal[radian]、アイドラ光の位相φidler[radian]、ポンプ光の位相φpump[radian]、各光の波数であるksignal、kidler、kpumpによって定義されるΔk=ksignal+kidler−2kpump、光増幅ファイバ110における各光の伝搬距離zを用いて、以下の式(2)で記述される量である。
φrel=Δkz+φsignal+φidler-2φpump[radian] ・・・ (2)
各々の相対位相シフタ120は、相対位相φrelを、入力するポンプ光Pのパワーや光増幅ファイバ110などの波長分散特性などに応じて、適切な量だけシフトさせる。光増幅ファイバ110の長さや波長分散は、必要とされる利得スペクトル波形に応じて適切に設定する。
各々の相対位相シフタ120の挿入により、挿入しない場合では得られない利得スペクトルの平坦性が実現する。また、同時に各々の相対位相シフタ120を挿入しない場合より低い雑音指数(NF:Noise Figure)が得られる。
ここで、相対位相シフタ120は、図2で示されるように、ファイバブラッググレーティング(FBG)である。すなわち、相対位相シフタ120は、コア部121と、コア部121の外周に形成されたクラッド部122とを備える光ファイバで構成されている。コア部121は、グレーティング部G1を備えている。グレーティング部G1は、複数の高屈折率層HRで構成されている。各々の高屈折率層HRは、光ファイバの光軸であるコア部121の中心軸に対して直交する平面状の形状を有しており、中心軸方向において互いに離間して周期的に配置されている。高屈折率層HRは、たとえば公知のFBGと同様に、コア部121に紫外光を照射して照射した部分の屈折率を高め、高屈折率層HRのパターンを書き込むことで形成することができる。
グレーティング部G1はブラッグ波長λg[nm]を規定する。高屈折率層HRの配置の周期をΛ[nm]とすると、λg=2nΛが成り立つ。ここで、nは相対位相シフタ120を構成する光ファイバの実効屈折率である。グレーティング部G1は、ブラッグ波長λgを中心とする所定の波長帯域において、コア部121に入力された入力光ILの一部を、入力光ILの波長における反射率で反射し、入力光ILの波長における透過率で透過する。透過光TLは入力光ILの進行方向と同じ方向に進行してコア部121を伝搬し、反射光RLは入力光ILの進行方向とは反対方向に戻るようにコア部121を伝搬する。
相対位相シフタ120のブラッグ波長λgは、ポンプ光Pの波長とは異なる波長であり、かつ相対位相シフタ120がポンプ光Pの位相を所定量だけシフトさせるように設定される。たとえば、ブラッグ波長λgは、ブラッグ波長λgを中心とする反射スペクトルの3dB波長帯域の外側の波長領域にポンプ光Pの波長が含まれるように設定される。
本実施形態1に係る光増幅器100では、相対位相シフタ120のλgにおける反射率が、60[%]以下という、FBGとしては低い反射率である。これにより、ポンプ光Pのスペクトル幅が広く、そのスペクトルの裾の一部が相対位相シフタ120の反射波長帯域と重なってしまった場合でも、発生する反射光のパワーは比較的小さいので、増幅されたシグナル光S2の品質の劣化が抑制される。λgにおける反射率は、所望の光増幅特性を実現するために必要なポンプ光の位相シフト量が得られ、かつ発生する反射光が実用上問題にならない程度に設定することが好ましい。たとえば、λgにおける反射率は、30[%]以下としてよく、15[%]以下としてもよいが、5[%]以上とすることが好ましい。
以下、光増幅器100の各構成要素について説明する。
ポンプ光源部130は、たとえば、レーザ光源と、位相変調器と、EDFAなどの光ファイバ増幅器とを備えている。レーザ光源は、TLS(Tunable Light Source)、DFB−LD(Distributed FeedBack-Laser Diode)、外部共振器型半導体LDなどであり、連続光(CW:Continuous Wave)のレーザ光を発生する。位相変調器は、レーザ光源から出力されたレーザ光を位相変調し、そのスペクトル幅を広げる。光ファイバ増幅器は、スペクトル幅を広げられたレーザ光を光増幅してポンプ光Pとして出力する。
光増幅ファイバ110は、非線形定数が、XPM法(Cross Phase Modulation Method)により測定された値で10[1/W/km]以上である高非線形光ファイバであると、所望の利得を得るための各々の光増幅ファイバ110の長さが短くなり、実装が容易となる。光増幅ファイバ110の波長分散特性については、ゼロ分散波長がポンプ光波長λpump[nm]の±10[nm]の範囲内にあり、分散スロープの絶対値が0.05[ps/nm2/km]以下であると、増幅帯域が広帯域になり、増幅器としての機能が高まる。または、光増幅ファイバ110の波長分散が、シグナル光S1が含まれる波長帯域(たとえばCバンド)において、0.0[ps/nm/km]±1.0[ps/nm/km]の範囲にある場合も、光増幅ファイバ110が前記波長分散特性の場合と同様に、増幅帯域が広帯域になり、光増幅器としての機能が高まる。シグナル光の波長がCバンドの波長帯域内にある場合、ポンプ光波長λpumpは、その帯域端に近い波長、たとえば1565[nm]に設定される。この場合、光増幅ファイバ110のゼロ分散波長は、1555[nm]〜1575[nm]の範囲内にあることが好ましく、1565[nm]であることがより好ましい。
相対位相シフタ120は、光増幅ファイバ110の各々の長手方向で相対位相が−0.4π以上で0.5πを含む0.9π以下の範囲に収まるように挿入されることが、平坦な利得スペクトルを得る上で好ましい(特許文献1)。
また、相対位相シフタ120を構成する光ファイバのゼロ分散波長が、光増幅ファイバ110のゼロ分散波長の±20[nm]の範囲内にあることが好ましく、光増幅ファイバ110のゼロ分散波長と一致することがより好ましい。相対位相シフタ120を構成する光ファイバのゼロ分散波長が、光増幅ファイバ110のゼロ分散波長と近いことによって、相対位相シフタ120を構成する光ファイバの波長分散が、光増幅器100の増幅特性に与える影響を抑制できる。たとえば、光増幅ファイバ110が、非線形定数が10[1/W/km]以上の高非線形光ファイバであり、相対位相シフタ120を構成する光ファイバが、非線形定数が5[1/W/km]以上の高非線形光ファイバであれば、両者のゼロ分散波長は近くなるので好ましい。
また、相対位相シフタ120を構成する光ファイバは、分散シフト光ファイバ(Dispersion Shifted fiber:DSF)でもよい。DSFとは、ITU−T(国際電気通信連合)G.653規格に準拠する、ゼロ分散波長が1500[nm]〜1600[nm]の範囲にある光ファイバであり、ゼロ分散波長は典型的には1550[nm]の近傍の波長である。したがって、相対位相シフタ120を構成する光ファイバをDSFとすれば、そのゼロ分散波長を光増幅ファイバ110のゼロ分散波長の±20[nm]の範囲内にすることが容易である。この場合、相対位相シフタ120を構成するDSFの長さが数メートル程度の長さであっても、その波長分散が光増幅器100の増幅特性に与える影響を抑制できる。
つぎに、相対位相シフタとして作製したFBGの例について説明する。作製例1、2、3のFBGは、高非線形光ファイバを用いて作製されたものである。この高非線形光ファイバは、非線形定数が10[1/W/km]程度であり、ゼロ分散波長が1565[nm]であり、長さが2mである。
図3は、作製例1のFBGの反射スペクトルを示す図であり、図4は、作製例1のFBGの透過スペクトルを示す図である。図3、4に示すように、作製例1のFBGは、反射率のピーク波長(ブラッグ波長に相当)が1564.9[nm]、ピーク波長における反射率が約5[%]、反射スペクトルの3dB帯域が4.1[nm]であった。
作製例1のFBGの群遅延を、市販の分散測定装置を用い、変調位相シフト法を用いて測定した。図5は、作製例1のFBGの群遅延スペクトルを示す図である。なお、図5は、測定によって得られたスペクトルデータに対して、適正量のオフセットを加算するとともに、フロア値の変動を補正したスペクトルを示す。図5に示すように、反射率のピーク波長において、約100[fs]の群遅延が確認された。
つづいて、図5に示す群遅延スペクトルのデータから、位相遅延スペクトルを算出した。位相遅延をτp、群遅延をτgとすると、それぞれは、以下の式(3)、(4)で表される。ここで、φは光の位相であり、ωは光の角周波数である。
τpはτgから以下の式(5)を用いて表される。なお、λは光の波長であり、cは光速度である。
図6は、作製例1のFBGの位相遅延スペクトルを示す図である。図6に示すように、作製例1のFBGでは、変化点PO1と変化点PO2との間で位相が大きく変化しており、その位相差は約0.3[radian]である。変化点PO1の波長と変化点PO2の波長の中間の波長は1564.9[nm]であり、反射率のピーク波長に相当する。
このような作製例1のFBGを相対位相シフタとして用いる場合は、変化点PO1の波長と変化点PO2の波長の間の波長であって、かつ変化点PO1または変化点PO2に近い波長をポンプ光の波長に設定することによって、ポンプ光の位相シフト量を大きくすることができる。
図7は、作製例2のFBGの反射スペクトルを示す図であり、図8は、作製例2のFBGの透過スペクトルを示す図である。図7、8に示すように、作製例2のFBGは、反射率のピーク波長が1565.0[nm]、ピーク波長における反射率が約10[%]、反射スペクトルの3dB帯域が4.9[nm]であった。
図9は、作製例2のFBGの群遅延スペクトルを示す図である。なお、図9も、測定によって得られたスペクトルデータに対して、加算や補正を行ったものである。図9に示すように、反射率のピーク波長において、約200[fs]の群遅延が確認された。
つづいて、図9に示す群遅延スペクトルのデータから、位相遅延スペクトルを算出した。図10は、作製例2のFBGの位相遅延スペクトルを示す図である。図10に示すように、作製例2のFBGでは、変化点PO3と変化点PO4との間で位相が大きく変化しており、その位相差は約0.6[radian]である。変化点PO1の波長と変化点PO2の波長の中間の波長は1565[nm]であり、反射率のピーク波長に相当する。
このような作製例2のFBGを相対位相シフタとして用いる場合は、変化点PO3の波長と変化点PO4の波長の間の波長であって、かつ変化点PO3または変化点PO4に近い波長をポンプ光の波長に設定することによって、ポンプ光の位相シフト量を大きくすることができる。
図11は、作製例3のFBGの反射スペクトルを示す図であり、図12は、作製例3のFBGの透過スペクトルを示す図である。図11、12に示すように、作製例3のFBGは、反射率のピーク波長が1565.0[nm]、ピーク波長における反射率が約15[%]、反射スペクトルの3dB帯域が4.3[nm]であった。
図13は、作製例2のFBGの群遅延スペクトルを示す図である。なお、図13も、測定によって得られたスペクトルデータに対して、加算や補正を行ったものである。図13に示すように、反射率のピーク波長において、約300[fs]の群遅延が確認された。
つづいて、図13に示す群遅延スペクトルのデータから、位相遅延スペクトルを算出した。図14は、作製例3のFBGの位相遅延スペクトルを示す図である。図14に示すように、作製例3のFBGでは、変化点PO5と変化点PO6との間で位相が大きく変化しており、その位相差は約1[radian]である。変化点PO5の波長と変化点PO6の波長の中間の波長は1565[nm]であり、反射率のピーク波長に相当する。
このような作製例3のFBGを相対位相シフタとして用いる場合は、変化点PO5の波長と変化点PO6の波長の間の波長であって、かつ変化点PO5または変化点PO6に近い波長をポンプ光の波長に設定することによって、ポンプ光の位相シフト量を大きくすることができる。
作製例1〜3のFBGの特性から、ピーク波長における反射率と、群遅延および位相差とは、略比例関係にあることがわかった。
なお、作製例1〜3のいずれのFBGについても、相対位相シフタとして用いる場合は、ポンプ光の波長をそのブラッグ波長よりも長波長側に設定すると、利得スペクトルの平坦性を向上させる観点から好ましい(特許文献1)。
(相対位相シフタの他の態様)
光増幅器100における相対位相シフタ120においては、図2に示すように、グレーティング部G1を構成する複数の高屈折率部HRは、コア部121の中心軸に対して直交する平面状の形状を有している。しかしながら、光増幅器100において使用できる相対位相シフタは、相対位相シフタ120に限られず、いわゆるスラント型のFBGであってもよい。
図15は、相対位相シフタであるスラントFBGの模式的な構成図である。この相対位相シフタ160は、コア部161と、コア部161の外周に形成されたクラッド部162とを備える光ファイバで構成されている。コア部161は、グレーティング部G2を備えている。グレーティング部G2は、複数の高屈折率層HRで構成されている。各々の高屈折率層HRは、光ファイバの光軸であるコア部161の中心軸Xに対して傾斜する平面状の形状を有しており、中心軸方向において互いに離間して周期的に配置されている。ここで、コア部161の中心軸Xに対して直交する平面と、高屈折率層HRとの成す角をスラント角θとする。このような傾斜した高屈折率層HRは、コア部161に紫外光を照射して高屈折率層HRのパターンを書き込む際に、パターンが傾斜するように書き込みを行うことで形成することができる。
グレーティング部G2は、相対位相シフタ120のグレーティング部G1と同様に、ブラッグ波長λg[nm]を規定する。コア部161の中心軸Xの方向における高屈折率層HRの配置の周期をΛ[nm]とすると、λg=2nΛが成り立つ。ここで、nは相対位相シフタ160を構成する光ファイバの実効屈折率である。グレーティング部G2は、ブラッグ波長λgを中心とする所定の波長帯域において、コア部161に入力された入力光ILの一部を、入力光ILの波長における反射率で反射し、入力光ILの波長における透過率で透過する。ここで、相対位相シフタ120の場合と同様に、透過光TLは入力光ILの進行方向と同じ方向に進行してコア部161伝搬する。一方、反射光に含まれる成分である反射光RL1、RL2は、中心軸Xに対して傾斜した方向に進行する。
このとき、反射光RL1はコア部161とクラッド部162との界面で全反射されてコア部161に結合して伝搬するが、反射光RL2はコア部161に結合せずにクラッド部162へと通過していく。その結果、相対位相シフタ160は、増幅されたシグナル光の品質を劣化させるような、コア部161に結合して伝搬する反射光を低減できる。特に、スラント角θを大きくすることで、コア部161に結合しない反射光RL2の割合を高くすることができる。そこで、増幅されたシグナル光の品質を劣化させる反射光が、実用上問題にならないレベルとなるように、スラント角θを設定することが好ましい。
一般に、光ファイバのコア部とクラッド部との界面での全反射角は、その光ファイバの開口数(NA)と対応しており、光ファイバのNAが大きい程、反射光の入射角を全反射角以上にするためのスラント角θは大きくなる。ここで、高非線形光ファイバは一般的にNAが大きいので、スラント型のFBGを構成する場合には、スラント角θを大きくする必要がある。一方、DSFは、高非線形光ファイバよりもNAが小さいため、高非線形光ファイバによってスラント型のFBGを構成する場合よりもスラント角θを小さくできる。
つぎに、相対位相シフタとして作製したスラント型のFBGの例について説明する。作製例4のFBGは、DSFを用いて作製されたものである。このDSFは、ゼロ分散波長が1550[nm]であり、長さが3mである。また、スラント角θは6度とし、ブラッグ波長を1565.5[nm]とし、ブラッグ波長における透過率が95[%]になるようにグレーティング部を設計した。
図16は、作製例4のFBGの反射スペクトルを示す図であり、図17は、作製例4のFBGの透過スペクトルを示す図である。図16、17に示すように、作製例4のFBGは、ブラッグ波長である1565.5[nm]における反射が殆どなかった。
図18は、作製例4のFBGの群遅延スペクトルを示す図である。なお、図18も、測定によって得られたスペクトルデータに対して、加算や補正を行ったものである。図18に示すように、反射率のピーク波長において、約260[fs]の群遅延が確認された。
つづいて、図18に示す群遅延スペクトルのデータから、位相遅延スペクトルを算出した。図19は、作製例4のFBGの位相遅延スペクトルを示す図である。図19に示すように、作製例4のFBGでは、変化点PO7と変化点PO8との間で位相が大きく変化しており、その位相差は約0.03[radian]である。変化点PO7の波長と変化点PO8の波長の中間の波長は約1565.5[nm]であり、設計したブラッグ波長に相当する。
このような作製例4のFBGを相対位相シフタとして用いる場合も、変化点PO7の波長と変化点PO8の波長の間の波長であって、かつ変化点PO7または変化点PO8に近い波長をポンプ光の波長に設定することによって、ポンプ光の位相シフト量を大きくすることができる。
(実施形態2)
図20は、実施形態2に係る光増幅器の模式的な構成図である。この光増幅器200は、光増幅部210と、ポンプ光源部220と、光合分波器230とを備えている。
光合分波器230には、波長可変レーザ装置からなるシグナル光源41が、偏波コントローラ42を介して接続されている。また、光増幅部210には、スペクトル、利得、およびNFの測定のための光スペクトラムアナライザ(OSA)44が、光減衰器(ATT)43を介して接続されている。
ポンプ光源部220は、ポンプ光源221と、位相変調器222と、光ファイバ増幅器223と、光バンドパスフィルタ(BPF)224と、白色雑音源225と、広帯域RF増幅器226とを備えている。ポンプ光源221、位相変調器222、光ファイバ増幅器223、および光バンドパスフィルタ224は光ファイバで接続されている。この接続に使用する光ファイバは、偏波保持光ファイバであることが好ましい。
ポンプ光源221は、光増幅部210に供給すべき所定の波長のポンプ光を出力する。ポンプ光源221は、たとえばTLSで構成されるが、DFBレーザや、ファブリペロー(FP)レーザや、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)で構成されてもよい。白色雑音源225は、電気信号として、1.2GHz広帯域の白色雑音信号を出力する。なお、白色雑音源225は、2GHzの白色雑音信号を出力するものでもよいし、互いに異なる周波数の複数の正弦波を白色雑音信号として出力するものでもよい。広帯域RF増幅器226は、白色雑音源225が出力する白色雑音信号を増幅して位相変調器222に出力する。位相変調器222は、ポンプ光と、増幅された白色雑音信号とが入力され、増幅された白色雑音信号でポンプ光を所定の位相変調度で位相変調し、光ファイバ増幅器223に出力する。なお、ポンプ光を位相変調することによって、ポンプ光のスペクトル幅が広がるので、光増幅部210内でのSBSの発生またはその強度を抑制できる。なお、ポンプ光源221が、スペクトル幅が広いFPレーザやVCSELを用いたものである場合には、DFBレーザを用いた場合よりも、位相変調度が低くてもよい場合がある。
光ファイバ増幅器223は、たとえばEDFAまたはEYDFA(Erbium Ytterbium Doped Fiber Amplifier)であって、位相変調器222によって位相変調されたポンプ光を光増幅して光バンドパスフィルタ224に出力する。光バンドパスフィルタ224は、透過中心波長がポンプ光波長と一致しており、光ファイバ増幅器223によって増幅されたポンプ光から、光ファイバ増幅器223で発生したASE(Amplified Spontaneous Emission)成分を除去し、ポンプ光Pとして出力する。光バンドパスフィルタ224の透過波長帯域はたとえば1nm以下と狭いことが好ましい。
なお、ポンプ光源部220において、ポンプ光源221から先の任意の位置に、光アイソレータを挿入してもよい。
つぎに、光増幅部210について説明する。光増幅部210は、2本の光増幅ファイバ211と、2本の光増幅ファイバ211の間に挿入された1つの相対位相シフタ212とを備えている2段構成の光増幅部である。2本の光増幅ファイバ211は、実施形態1に係る光増幅器100における光増幅ファイバ110と同じ特性を有する。相対位相シフタ212は、光増幅器100における相対位相シフタ120と同じ特性を有していてもよいし、図15に示すスラント型のFBGである相対位相シフタ160と同じ特性を有していてもよい。
光合分波器230は、ポンプ光源部220と光増幅部210とシグナル光源41とを接続している。光合分波器230はポンプ光とシグナル光とを合波する機能を有する。光合分波器230は、たとえば20dB光カプラや光バンドパスフィルタであるが、特に限定はされない。光合分波器230が20dB光カプラである場合は、ポンプ光源部220と光増幅部210とは低光損失で接続され、光増幅部210とシグナル光源41とは20dB程度の光損失で接続される。
この光増幅器200は、実施形態1に係る光増幅器100と同様の動作原理によって、シグナル光源41から入力されたシグナル光S1を光パラメトリック増幅し、増幅されたシグナル光S2として出力する。光増幅器200は、光増幅器100と同様の作用効果を奏する。すなわち、光増幅器200では、ポンプ光Pのスペクトル幅が広く、そのスペクトルの裾の一部が相対位相シフタ212の反射波長帯域と重なってしまった場合でも、発生する反射光は小さいので、増幅されたシグナル光S2の品質の劣化が抑制される。
(実施形態3)
図21は、実施形態3に係る光増幅器の模式的な構成図である。この光増幅器300は、偏波無依存の光パラメトリック増幅器として構成されており、ポンプ光源部320と、偏波合分波器(PBS)330と、光合分波器であるWDMカプラ341、342と、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350と、第二偏波依存型光増幅ファイバ部360と、光排出部370と、光サーキュレータ380と、光熱変換モジュール391、392とを備える。なお、図21中、太線または二重線は偏波保持光ファイバを示し、細線は偏波保持ではない光ファイバを示している。
ポンプ光源部320は、ポンプ光源としてのTLS321と、位相変調器322と、信号発生器323と、偏波保持3dBカプラ324と、偏波保持光増幅器325、326と、バンドパスフィルタ(BPF)327、328とを備えている。ポンプ光源部320は、後述する位相変調されたポンプ光P1、P2を出力する。
PBS330は、第一ポート331、偏波依存型光ファイバからなる第二ポート332および第三ポート333を有し、第一ポート331から入力された光を互いに直交する偏波成分に分離して第二ポート332および第三ポート333のそれぞれから出力する。
第一偏波依存型光増幅ファイバ部350は、PM−HNLF(偏波保持型高非線形光ファイバ)である2本の偏波保持型光増幅ファイバ351と、2本の偏波保持型高増幅ファイバ351の間に挿入された偏波保持型相対位相シフタ352とを備える。第二偏波依存型光増幅ファイバ部360は、PM−HNLFである2本の偏波保持型光増幅ファイバ361と、2本の偏波保持型光増幅ファイバ361の間に挿入された偏波保持型相対位相シフタ362とを備える。
2本の偏波保持型光増幅ファイバ351、2本の偏波保持型光増幅ファイバ361は、偏波保持型である以外は、実施形態1に係る光増幅器100における光増幅ファイバ110と同じ特性を有する。偏波保持型相対位相シフタ352、362は、これらを構成する光ファイバが偏波保持型である以外は、それぞれ、FBGである相対位相シフタ120と同じ特性を有していてもよいし、スラント型のFBGである相対位相シフタ160と同じ特性を有していてもよい。
WDMカプラ341、342は、それぞれ、PBS330と第一偏波依存型光増幅ファイバ部350、第二偏波依存型光増幅ファイバ部360との間に配置されている。WDMカプラ341、342は、ポンプ光P1、P2を第一偏波依存型光増幅ファイバ部350と第二偏波依存型光増幅ファイバ部360とにそれぞれ入力させるように接続されている。
光排出部370は、WDMカプラ371、372を備えている。光排出部370は、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350と第二偏波依存型光増幅ファイバ部360との間に接続されて、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350と第二偏波依存型光増幅ファイバ部360とともに光ループ311を構成している。光排出部370は、後述するように、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350と第二偏波依存型光増幅ファイバ部360のそれぞれを伝搬してきたポンプ光P1、P2を光ループ311の外部に排出する機能を有する。
光サーキュレータ380は、光ファイバからなる第一ポート381、第二ポート382および第三ポート383を有する。第二ポート382はPBS330の第一ポート331に接続されている。また、第一ポート381からシグナル光S1が入力されると、光サーキュレータ380はシグナル光S1を第二ポート382からPBS330に出力する。また、後に詳述するように、シグナル光S1が増幅されたものであるシグナル光S2がPBS330の第一ポート331から光サーキュレータ380の第二ポート382に出力されると、シグナル光S2を第三ポート383から出力する。なお、光サーキュレータ380とPBS330と光ループ311とにより偏波ダイバーシティー構成312が構成されている。
光熱変換モジュール391、392は、光排出部370に接続されており、光排出部370から排出されたポンプ光P1、P2を熱に変換して放熱するためのモジュールである。
つぎに、ポンプ光源部220について具体的に説明する。ポンプ光P1、P2は、次のように発生し、出力される。TLS321が出力する直線偏波のCW光は、信号発生器323から出力されるRF信号により駆動された位相変調器322にて位相変調を受ける。その後、CW光は、偏波保持3dBカプラ324でパワーを2分岐後、偏波保持光増幅器325、326にてそれぞれ増幅され、偏波保持光増幅器325、326にて発生した不要なASE光をBPF327、328で取り除かれ、位相変調されたポンプ光P1、P2として出力される。
偏波保持3dBカプラ324の設置位置は、偏波保持光増幅器325、326とTLS321の間であればどの位置に設置してもよい。ただし、位相変調器322の前段に設置した場合は、分岐したCW光それぞれを位相変調できるように二つの位相変調器322を用いる。位相変調器322を二つ用いる場合、駆動するRF信号は、必ずしも同一である必要はなく、逆位相など任意の異なる位相関係で駆動したり、異なる周波数の正弦波を用いたり、白色雑音の帯域や周波数領域を変えたものでも良い。偏波保持光増幅器325、326は、CW光の偏波を保持したまま増幅できるのであれば、PM−EDFAであってもPM−EYDFAであっても、PMラマン増幅器であっても良い。偏波保持3dBカプラ324は、必ずしもその分岐比が1:1である必要はなく、例えば10:1などの異なる分岐比をもつ偏波保持カプラに置き換えても良い。ただし、二つの偏波保持光増幅器325、326が出力するポンプ光の品質を同等にするには、各偏波保持光増幅器325、326に入力する光パワーは同等であることが望ましい。BPF327、328は、透過帯域が、CW光のスペクトル帯域よりも大きい限りは、できる限り帯域が狭い方が不要なASE光をより多く取り除けるため好ましい。また、BPF327、328は、誘電体多層膜フィルタのほかに、偏波保持サーキュレータと偏波保持FBGの組み合わせや、AWGなどがその候補として挙げられる。BPF327、328とTLS321との間であれば、光部品の損失の補償や偏波保持光増幅器325、326のNFの改善などの必要に応じて、プリアンプとして偏波保持光増幅器をどの位置に設置しても良い。
光増幅器300の動作について説明する。光サーキュレータ380は第一ポート381から入力されたシグナル光S1を第二ポート382からPBS330に出力する。PBS3は入力されたシグナル光S1を、互いに直交する偏波成分のシグナル光S11、S12に分離して第二ポート332および第三ポート333のそれぞれから出力する。
つぎに、WDMカプラ341は、ポンプ光P1とシグナル光S11との偏波を一致させたまま合波し、WDMカプラ342は、ポンプ光P2とシグナル光S12との偏波を一致させたまま合波し、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350と第二偏波依存型光増幅ファイバ部360とにそれぞれ入力させる。シグナル光S11、S12は、光ループ311をそれぞれ時計回り(Clockwise)と反時計回り(Counter-Clockwise)に伝搬する。この時、伝搬方向が逆の光は、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350、第二偏波依存型光増幅ファイバ部360の同一の偏波軸(たとえばslow軸)を伝搬する。これにより、シグナル光S11、S12の伝搬する光学的な伝搬距離が時計回り方向と反時計回り方向とで同一となり、これらの光が再びPBS330中で偏波合成された際には、互いに位相差は発生しない。
また、シグナル光S11は、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350を通過する際にパラメトリック効果により増幅され、シグナル光S12は、第二偏波依存型光増幅ファイバ部360を通過する際にパラメトリック効果により増幅される。なお、各偏波依存型光増幅ファイバ部350、360中では、ポンプ光とシグナル光とから、各偏波依存型光増幅ファイバ部350、360の非線形光学効果によりアイドラ光が発生する。
ここで、光排出部370のWDMカプラ371は、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350を伝搬してきたシグナル光S11、ポンプ光P1、アイドラ光のうち、ポンプ光P1を光ループ311の外部に排出する機能を有する。具体的には、WDMカプラ371は、光ファイバからなる3つのポートを有し、それぞれ第一偏波依存型光増幅ファイバ部350、WDMカプラ372、光熱変換モジュール391に接続されている。WDMカプラ371は、第一偏波依存型光増幅ファイバ部350を伝搬してきたシグナル光S11、ポンプ光P1、アイドラ光のうち、シグナル光S11とアイドラ光とをWDM372に透過させ、ポンプ光P1を光ループ311の外部の光熱変換モジュール391に出力する波長特性を有する。
同様に、光排出部370のWDMカプラ372は、第二偏波依存型光増幅ファイバ部360を伝搬してきたシグナル光S12、ポンプ光P2、アイドラ光のうち、ポンプ光P2を光ループ311の外部に排出する機能を有する。具体的には、WDMカプラ372は、光ファイバからなる3つのポートを有し、それぞれ第二偏波依存型光増幅ファイバ部360、WDMカプラ371、光熱変換モジュール392に接続されている。WDMカプラ372は、第二偏波依存型光増幅ファイバ部360を伝搬してきたシグナル光S12、ポンプ光P2、アイドラ光のうち、シグナル光S12とアイドラ光とをWDMカプラ371に透過させ、ポンプ光P2を光ループ311の外部の光熱変換モジュール392に出力する波長特性を有する。
その結果、PBS330は、光ループ311を一周した、増幅されたシグナル光S11、S12を偏波合成して生成された増幅されたシグナル光S2を光サーキュレータ380に出力し、光サーキュレータ380はその第三ポート383からシグナル光S2を出力する。
すなわち、光増幅器300では、SBSならびに高次のSBSを発生させないために、各偏波依存型光増幅ファイバ部350、360のそれぞれを、ポンプ光P1、P2のそれぞれが一方光のみに伝搬し、光ループ311の途中で外部に排出させる。なお、たとえば一部のポンプ光P1は、パワーが著しく小さいながらも、WDMカプラ371をシグナル光S11と伴に通過する。しかし、二つ目のWDMカプラ372にて、そのパワーのほとんどが光ループ311外に排出される。
ここで、位相変調によるスペクトル拡大を受けているポンプ光が、光増幅ファイバ中を双方向に伝搬する場合、熱的に励起された縦波音響波(Longitudinal Acoustic-mode:LA)が反射するよりも数桁大きなポンプ光が逆方向に伝搬している状況である。そのため、双方向に伝搬するポンプ光が干渉することで、誘導的にLAを励起するため、SBSが、一方向だけポンプ光を伝搬させるときに比較し、著しく小さな光パワーでも発生する。そのため、SBSにより反射された光が元となるSBSという高次のSBSが容易に発生し、ポンプ光のスペクトル幅が大きく拡大する。そして、スペクトル幅の大きなポンプ光によりパラメトリック増幅されたシグナル光のスペクトル幅も拡大し、光通信を行う上での情報品質を劣化させる。(特許文献4)。
これに対して、光増幅器300では、光排出部370の機能により、一方のポンプ光に対向して伝搬するポンプ光の強度が著しく低下するので、ポンプ光のスペクトル幅や増幅したシグナル光のスペクトル幅の拡大が抑制される。
さらに、光増幅器300では、光増幅器100と同様の作用効果によって、ポンプ光P1、P2のスペクトルの裾の一部が偏波保持型相対位相シフタ352または362の反射波長帯域と重なってしまった場合でも、発生する反射光は小さいので、増幅されたシグナル光S2の品質の劣化が抑制される。
光排出部370についてさらに具体的に説明する。光排出部370を構成するデバイスであるWDMカプラ371、372は、BPFを用いたタイプのものや、SPF(Short Pass Filter)やLPF(Long Pass Filter)を用いたタイプのものなど、ポンプ光とシグナル光とを分離できるデバイスであれば、どのようなデバイスを用いても良い。ポンプ光を排出する光ファイバは、温度変化によるデバイス内の軸ずれに依らずポンプ光の排出特性を維持できるように、コア径の大きなマルチモード光ファイバを用いても良い。
つぎに、光熱変換モジュール391、392について説明する。排出するポンプ光は、WDMカプラ371、372においてポンプ光に結合された光ファイバポートより出力される。安全かつ安定に光増幅器300を動作させるためには、排出されるポンプ光を光熱変換モジュール391、392にて安全な方法で熱に変換する必要がある。光熱変換モジュール391、392は、光を熱に変換する方法として、ポンプ光を吸収する加工をした金属または非金属に光を当て、その金属または非金属をヒートシンクに熱接触させるか金属または非金属自体をヒートシンクとする構成を有することが好ましい。用いる金属の候補には、黒色アルマイト(アルマイト処理したアルミニウム:anodized aluminum)や、黒色セラミックをコーティングしたアルミニウムや銅、鉄、がある。非金属での候補としては、グラファイトなどがある。
また、排出するポンプ光を伝搬させる光ファイバの端面からの反射が光増幅器300の動作に不安定にしたり、利得特性を変動させたりし、悪影響を与える可能性がある。それを避ける方法として、以下の方法が適用できる。
一つは、光ファイバの端面を斜めにカットする、もしくはAPC(Angled Physical Contact)コネクタを接続する方法である。もう一つは、光ファイバを曲げによる損失が発生する直径よりも小さな直径で複数回巻き、ポンプ光を光ファイバの長手方向で放出する方法である。後者では、ポンプ光は被覆樹脂を通過して光ファイバから放出されるため、光ファイバの被覆樹脂には熱に強いポリイミド樹脂を用いることも好ましい。また、光ファイバをヒートシンクにグリースなど接触断面積を増やす材料を用いて熱接触させ冷やすなどの処置をとることが好ましい。上記の二つの方法の片方もしくは両方を用いることで、排出したポンプ光が光ファイバの端面で反射され、逆方向に伝搬することを緩和することができる。
また、光増幅器300の光学系路が光ファイバで構成される場合は、できる限り融着接続もしくは、偏波保持融着接続を用いて光ファイバを接続して構成した方が、光損失、偏波軸ずれを抑制できるため好ましい。ただし、製造の都合上、光コネクタを用いて光ファイバを接続する方が効率的である場合は、それに及ばない。光コネクタをハイパワーのポンプ光が伝搬する場所に適用する場合、APCコネクタを用いることが、端面反射を防いだり、接続面での熱損傷などを抑制したりするうえで好ましい。
なお、QPMを実現する際に、できる限りSBSの影響を抑えるには、相対位相シフタを介して接続する偏波保持型光増幅ファイバ同士(たとえば、偏波保持型光増幅ファイバ351同士)で互いにコア部の屈折率もしくはコアの屈折率を強く反映する特性である非線形定数が異なるようにすると、コア部の屈折率もしくは非線形定数が同一の偏波保持型光増幅ファイバを接続した際に比較し、SBSを抑圧することができる。これは、コア部の屈折率が異なる場合、LAの振動数も異なるため、SBSの発生が各偏波保持型光増幅ファイバで独立となり、SBSの影響を抑制することができるからである。
なお、上記実施形態において、相対位相シフタは主にポンプ光の位相をずらす相対位相シフタである。そこで、光増幅器が平坦かつ広帯域な利得スペクトル特性を持つには、光増幅ファイバのゼロ分散波長と、ポンプ光の波長と、ポンプ光の位相をシフトさせる相対位相シフタの波長(たとえば、位相シフトの波長変化率が最大となる波長)が、±1nm程度の範囲で一致することが望ましい。
より具体的には、光増幅ファイバについては、温度調節や張力調節によりゼロ分散波長を調節できる。ポンプ光源がDFBレーザやFPレーザやVCSELなどの半導体レーザ素子で構成される場合、半導体レーザ素子の温度調節や駆動電流の調節によりその発振波長を調節することができる。また、相対位相シフタがFBGであるので、そのブラッグ波長を温度調節や張力調節により調節することができる。これらの3つの特性波長(ゼロ分散波長、発振波長、ブラッグ波長)の1つから3つを、任意に組み合わせて調節することにより、光増幅器において、一層平坦かつ広帯域な利得スペクトルを得ることができる。したがって、光増幅器は、光増幅ファイバに掛かる張力を調整する張力調整機構、半導体レーザ素子の温度を調整する温度調整機構または半導体レーザ素子の駆動電流を調整する駆動電流調整機構、または相対位相シフタの温度を調整する温度調整機構および相対位相シフタに掛かる張力を調整する張力調整機構の少なくとも一方、を備えることが好ましい。
たとえば、相対位相シフタとして、反射波長の温度依存性をキャンセルしたアサーマルFBGを用いる場合は、上記機構により、該FBGのブラッグ波長に対して、光増幅ファイバのゼロ分散波長と、半導体レーザ素子の発振波長とを適正にするように調節することができる。また、光増幅ファイバのゼロ分散波長を固定した場合は、上記機構により、相対位相シフタのブラッグ波長と半導体レーザ素子の発振波長とを調節して、ゼロ分散波長に対して適正に合わせるようにすることができる。
なお、ここで、相対位相シフタは、温度調整機構としてのペルチェ素子やヒータなどの上に、銅、アルミ、セラミックなどからなるヒートシンクを介して配置し、ペルチェ素子やヒータなどに熱的に接触するように固定することで、温度調節することができる。また、サーミスタなどの温度センサをヒートシンク上に設け、温度をモニタしながら温度調節をすることで、より精密に温度調節を行うことができる。
(実施形態4)
図22は、実施形態4に係る光通信システムの模式的な構成図である。光通信システム1000は、光送信器1001と、光受信器1002と、光送信器1001と光受信器1002とを接続する光伝送ファイバ1003、1004と、実施形態1に係る光増幅器100とを備えている。
光送信器1001は、WDMシグナル光であるシグナル光S1を光伝送ファイバ1003に出力する。光伝送ファイバ1003は、シグナル光S1を伝送し、光増幅器100に入力させる。光増幅器100は、シグナル光S1をパラメトリック増幅してシグナル光S2として出力する。光伝送ファイバ1004は、シグナル光S2を伝送し、光受信器1002に入力させる。光受信器1002は、シグナル光S2を受信する。光通信システム1000は、光増幅器100を備えているので、高品質の信号伝送が可能となる。
なお、光通信システム1000では、光増幅器として光増幅器100を備えているが、光増幅器100に代えて上記各実施形態に係る光増幅器のいずれを備えるようにしてもよい。
また、上記実施形態に係る光増幅器は、波長変換器として動作させることもできる。
また、上記実施形態に係る光増幅器を、EDFAの前段やラマン効果を利用した光増幅システムの後段に設置して、光増幅システムを構成してもよい。
また、上記実施形態に係る光増幅器は、PSAとしても使用できる。
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。