以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
[第1実施形態]
(冷凍システム1の全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷凍システムの全体構成図である。図1に示すように、本実施形態の冷凍システム1は、蒸気圧縮式の冷凍機2と、複数台(本実施形態では2台)の冷却塔3A,3Bと、冷却塔3A,3Bと冷凍機2とを環状に接続する冷却回路4と、冷却回路4を循環する冷却水の流量調節手段5と、冷凍システム1の全体制御を行う制御部6と、を備える。冷凍システム1は、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の店舗に設置され、冷凍機2によってショーケース内を冷却する。なお、制御部6とシステム内の各制御対象機器とを電気的に接続する信号線の図示は省略した。この制御部6は、本発明の制御手段に対応する。
(冷凍機)
冷凍機2は、圧縮機21と、凝縮器22と、過冷却器23と、膨張弁24と、蒸発器25と、を備える。これら圧縮機21、凝縮器22、過冷却器23、膨張弁24及び蒸発器25は、内部を冷媒が流通可能な冷媒循環ラインL21〜L25により環状に接続されている。なお、以下の冷媒温度に関する記述は相対的なものであって、高温>準高温>準低温>低温の関係である。
圧縮機21は、低圧・低温の冷媒蒸気を加圧圧縮し、高圧・高温の冷媒蒸気を得る。圧縮機21で生成した高圧・高温の冷媒蒸気は、冷媒循環ラインL21を介して凝縮器22に送られる。
凝縮器22は、冷媒循環ラインL21を介して送られる高圧・高温の冷媒蒸気から放熱させ、高圧・準高温の冷媒液に相変化させる。凝縮器22で生成した高圧・準高温の冷媒液は、冷媒循環ラインL22を介して過冷却器23に送られる。なお、凝縮器22は、空冷式及び水冷式のいずれでもよいが、本実施形態の凝縮器22は、冷媒液を空冷するためのファン26が設けられた空冷式の凝縮器を例示している。ファン26は、ファンモータ261により回転する。ファンモータ261の駆動は制御部6により制御される。
過冷却器23は、冷媒循環ラインL22を介して送られる高圧・準高温の冷媒液を相変化させずに更に冷却し、高圧・準低温の冷媒液を得る。過冷却器23の冷媒冷却には、冷却回路4を循環する冷却水を用いる。過冷却器23で生成した高圧・準低温の冷媒液は、冷媒循環ラインL23を介して膨張弁24に送られる。
膨張弁24は、冷媒循環ラインL23を介して送られる高圧・準低温の冷媒液を減圧膨張させ、低圧・低温の冷媒液(及び冷媒蒸気)を得る。膨張弁24で生成した低圧・低温の冷媒液は、冷媒循環ラインL24を介して蒸発器25に送られる。
蒸発器25は、冷媒循環ラインL24を介して送られる低圧・低温の冷媒液に吸熱させ、低圧・低温の冷媒蒸気に相変化させる。このとき、周囲の熱が奪われることにより冷熱が取り出される。蒸発器25で生成した低圧・低温の冷媒蒸気は、冷媒循環ラインL25を介して圧縮機21に送られる。
圧縮機21の駆動により、冷凍機2の各機器において上記の動作が繰り返される。これにより、蒸発器25において冷熱の取り出しが継続的に行われる。なお、蒸発器25には、ショーケース内に冷熱を送風するためのファン27が設けられている。ファン27は、ファンモータ271により回転する。ファンモータ271の駆動は制御部6により制御される。
以上説明したように、本実施形態の冷凍機2は過冷却器23を備えており、冷媒の過冷却度を大きくすることができる。その結果、冷凍機2は冷媒の過冷却をしない場合に比べて高い冷凍効果を得ることができ、省エネルギー性が高く、経済性に優れたものとなる。
(冷却塔)
冷却塔3A,3Bは、いわゆる開放式冷却塔であり、それぞれ塔本体31と、散水管32と、充填材33と、貯留部34と、ファン35と、を備える。
塔本体31は、各冷却塔3A,3Bのケーシングを形成するものである。塔本体31の上部は開口部311を有する。塔本体31の内部は、開口部311を介して大気と連通している。ファン35は、開口部311に配置される。
散水管32は、塔本体31内の上部において、ファン35よりも下方に配置されている。散水管32は、複数のノズルを備え、各ノズルから塔本体31の内部に冷却水を散布する。冷却塔31Aの散水管32には、後述する冷却回路4の個別返送ラインL41aの一端側(冷却水の流出側)が接続されている。また、冷却塔31Bの散水管32には、後述する冷却回路4の個別返送ラインL41bの一端側(冷却水の流出側)が接続されている。各個別返送ラインL41a,L41bの他端側(冷却水の流入側)は、後述する冷却回路4の分岐部Lbにおいて、共通の冷却水返送ラインL41から分岐されている。
充填材33は、塔本体31の内部において、散水管32の下方に配置されている。散水管32から散布された冷却水は、この充填材33と接触しながら塔本体31内を流下する。充填材33は、散水管32から散布された冷却水を液滴状及び/又は液膜状にして冷却水と外気との接触面積及び接触時間を長くし、冷却水を効率的に冷却する。
貯留部34は、塔本体31の下部に設けられる。貯留部34は、散水管32から散布されて充填材33と接触しながら流下した冷却水を貯留する。冷却塔31Aの貯留部34の底部には、後述する冷却回路4の個別取出しラインL421aの一端側(冷却水の流入側)が接続されている。また、冷却塔31Bの貯留部34の底部には、後述する冷却回路4の個別取出しラインL421bの一端側(冷却水の流入側)が接続されている。各個別取出しラインL421a,L421bの他端側(冷却水の流出側)は、後述する冷却回路4の合流部Lcにおいて、共通の冷却水供給ラインL42に合流している。
ファン35は、塔本体31の開口部311に配置されている。ファン35は、上方に配置されるファンモータ351により予め設定された速度で回転し、塔本体31内の空気を開口部311から外部に排出させるように気流を発生させる。塔本体31の下方側部には、図示しないルーバが形成されており、このルーバから塔本体31内に外気を流入させるようになっている。ファン35の回転によりルーバから塔本体31内の下部に流入した空気は、塔本体31内を上昇する過程で、充填材33と接触しながら流下する冷却水から蒸発潜熱を奪って冷却する。各冷却塔31A,31Bは、ファンモータ351の駆動により稼働状態となり、ファンモータ351の停止により停止状態となる。ファンモータ351の駆動及び停止は、制御部6により制御される。
(冷却回路)
冷却回路4は、冷却水返送ラインL41と、冷却水供給ラインL42と、を備える。冷却回路4は、これら冷却水返送ラインL41及び冷却水供給ラインL42により、冷却塔3A,3Bと冷凍機2の過冷却器23とを環状に接続し、冷却塔3A,3Bと過冷却器23との間で冷却水を循環させる。以下、冷却塔3A,3Bで冷却された後の過冷却器23へ供給される冷却水を「冷却水W1」とし、過冷却器23で熱交換された後の冷却塔3A,3Bに返送される冷却水を「冷却水W2」とする。
冷却水返送ラインL41は、過冷却器23の冷却水出口と冷却塔3A,3Bの冷却水入口とを接続する。冷却水返送ラインL41の下流側は、分岐部Lbにおいて2つの個別返送ラインL41a,L41bに分岐され、それぞれ冷却塔3A,3Bの散水管32に接続される。
冷却水供給ラインL42は、冷却塔3A,3Bの冷却水出口と過冷却器23の冷却水入口とを接続する。冷却水供給ラインL42の上流側は、冷却塔3A,3Bの各貯留部34,34にそれぞれ接続される個別取出しラインL421a,L421bに分岐している。各貯留部34,34からそれぞれ個別取出しラインL421a,L421bに流入した冷却水W1は、合流部Lcにおいて合流する。従って、冷却水供給ラインL42を通って過冷却器23に供給される冷却水W1は、冷却塔3A,3Bからそれぞれ取り出される冷却水が混合された後のものである。
(流量調節手段)
流量調節手段5は、過冷却器23に供給する冷却水W1の流量を調節する。流量調節手段5は、冷却水ポンプ51と、インバータ52と、を備える。
冷却水ポンプ51は、冷却塔3A,3Bの冷却水取出側に設けられる。具体的には、冷却水ポンプ51は、冷却水供給ラインL42の合流部Lcよりも下流側に設けられる。冷却水ポンプ51は、後述するインバータ52から入力される駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。冷却水ポンプ51の回転速度を増減させると、過冷却器23に供給される冷却水W1の流量が増減する。
冷却水ポンプ51の吸入側の冷却水供給ラインL42は、吸入側ラインL421とされ、合流部Lcと接続される。また、冷却水ポンプ51の吐出側の冷却水供給ラインL42は、吐出側ラインL422とされ、過冷却器23と接続される。吐出側ラインL422には、逆止弁53が設けられる。
インバータ52は、冷却水ポンプ51及び制御部6と電気的に接続される。インバータ52は、制御部6から入力される周波数指定信号に対応する駆動周波数を冷却水ポンプ51に出力し、冷却水ポンプ51を駆動周波数に応じた回転速度で駆動させる。
なお、冷凍機2の過冷却器23の位置が冷却塔3A,3Bよりも高い場合、冷却水ポンプ51の停止時に冷却水返送ラインL41内の冷却水W2が各冷却塔3A、3B内に抜け落ち、各冷却塔3A,3B内からのオーバーフローで消費されるおそれがある。従って、このような場合には、冷却水返送ラインL41(個別返送ラインL41a,L41b)に、制御部6により開閉制御される電磁弁(図示せず)を設けておき、冷却水ポンプ51の停止時に電磁弁を閉弁するように構成されることが望ましい。
以上のように構成される冷凍システム1では、インバータ52から入力された駆動周波数に応じた回転速度で冷却水ポンプ51が駆動されることにより、その回転速度に応じた流量の冷却水W1が、冷却塔3A,3Bから過冷却器23に向けて供給される。これにより、凝縮器22で得られた高圧で準高温の冷媒液は、後段の過冷却器23において過冷却される。過冷却器23で冷媒液と熱交換された後の冷却水W2は、冷却水返送ラインL41から各個別返送ラインL41a,L41bを通って冷却塔3A,3Bにそれぞれ返送されて冷却される。各冷却塔3A,3Bで冷却された後の冷却水W1は、個別取出しラインL421a,L421bから合流部Lcにおいて合流し、冷却水供給ラインL42を通って過冷却器23に供給される。
このように冷却塔3A,3Bと過冷却器23との間で冷却水を循環させる冷凍システム1は、追加の冷凍サイクル回路によって冷媒の過冷却を行う場合に比べて、低コストで効率の良い冷媒の過冷却が可能である。特に、店舗が入居する建築物に空調システム用の冷却塔が設置されている場合には、この冷却塔で製造した冷却水を利用できることから、設備費が格段に安くなる。従って、この冷凍システム1によれば、過冷却器23において冷媒を効率良く過冷却できるうえ、経済性にも優れることから、短期間での設備費償却が期待できる。
また、この冷凍システム1では、冷凍機2をシンプルな単段の冷凍サイクル回路で構成し、ショーケースの冷却専用にしている。冷凍システム1では温水製造を行わないので、温水需要のある店舗に燃料電池システムを併設する場合には、オフガスの熱回収により製造した温水を優先的に利用し、燃料電池システムの水自立運転を図ることができる。
(冷凍システム1における冷却水の流量制御)
次に、冷凍システム1における冷却水の流量制御について説明する。
コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の店舗に設置されるショーケース用の冷凍機2は、冬季には冷凍負荷が小さくなる。冷却塔の容量は、外気湿球温度が高い夏季において、冷凍機2の標準的な冷凍負荷に対して、1台で冷媒液の過冷却に必要な冷却能力を発揮するように選定される。そのため、冬季には、冷凍機2の冷凍負荷が小さくなることに加えて外気湿球温度が低くなることで、冷却塔の冷却能力が過大になりやすい。一方、夏季であっても、標準的な冷凍負荷を超えるような場合には、冷却塔は冷媒液の過冷却に必要な冷却能力を発揮できなくなることがある。
そこで、本実施形態の冷凍システム1は、冷凍機2の冷凍負荷に対して過冷却器23への冷熱入力を追従させる。具体的には、冷凍負荷に対して冷熱入力の過不足が生じないように、冷却水W1の流量をフィードバック制御によって調節すると共に、冷却塔3A,3Bの稼働台数を増減する。
冷凍機2の冷凍負荷に対する過冷却器23への冷熱入力の過不足の程度は、過冷却器23の熱交換率によって監視することが可能である。過冷却器23の熱交換率は、過冷却器23の「冷媒出口温度−冷却水入口温度」で測定することができる。冷媒出口温度と冷却水入口温度の差は、近寄り温度差(Approach Temperature Difference:ATD)と呼ばれる。冷凍機2は、ATDの測定のため、図1に示すように、過冷却器23から流出する冷媒液の温度を検出する第1温度センサS1と、過冷却器23に流入する冷却水W1の温度を検出する第2温度センサS2と、を備える。
第1温度センサS1は、冷媒循環ラインL23に設けられる。第1温度センサS1の検出値は、制御部6に出力される。この第1温度センサS1は、本発明の第1温度検出手段に対応する。
第2温度センサS2は、冷却水供給ラインL42の冷凍機2内の配設部分に設けられる。第2温度センサS2の検出値は、制御部6に出力される。この第2温度センサS2は、本発明の第2温度検出手段に対応する。
制御部6は、それぞれ入力された第1温度センサS1の検出値(第1温度値T1)と第2温度センサS2の検出値(第2温度値T2)との差分値(ATD実測値ΔT)を求める。制御部6のメモリ(図示せず)には、この差分値の目標値(ATD目標値ΔT0)が予め設定されている。目標値は、冷凍機2の冷凍負荷に対して過冷却器23への冷熱入力が良好に追従しているときの差分値の理想値である。制御部6は、差分値が目標値に収束するように、流量調節手段5を制御して過冷却器23に供給される冷却水W1の流量を調節する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る冷凍システム1の制御フロー図である。図2を用いて具体的な冷却水の流量制御について説明する。以下の制御フローの処理は、制御部6により所定の制御周期(例えば、100ms)で実行される。
冷凍機2が稼働開始すると、先ず、ステップST1において、制御部6は、メモリに記憶された設定値であるLTD目標値ΔT0を読み出す。本実施形態では、このLTD目標値ΔT0は5℃に設定されているものとする。また、制御部6は、第1温度センサS1の検出値である第1温度値T1と、第2温度センサS2の検出値である第2温度値T2と、を取得する。更に、制御部6は、メモリに記憶された設定値である第1下限温度T1´を読み出す。第1下限温度T1´は、ショーケースを冷やし過ぎから保護するための冷媒出口温度の制限値である。
また、制御部6は、冷却塔の設置台数N0を読み出すと共に、冷却塔の稼働台数Nを読み出す。冷却塔の設置台数N0は、予め制御部6のメモリに記憶された設定値である。本実施形態では、設置台数は冷却塔3A,3Bの2台(N0=2)である。冷却塔の稼働台数Nは、複数の冷却塔3A,3Bのうちの稼働している冷却塔の台数であり、制御部6により制御されるファンモータ351の駆動の有無の情報により取得される。ここでは、いずれの冷却塔3A,3Bも稼働しておらず、稼働台数は0台(N=0)であるものとする。
制御部6は、第1温度値T1と第2温度値T2とを取得した後、第1温度値T1と第2温度値T2の差分値(T1−T2)であるATD実測値ΔTを算出する。また、制御部6は、ATD目標値ΔT0とATD実測値ΔTとの差分値(ΔT0−ΔT)であるATD偏差Eを算出する。このATD偏差Eは、後述するステップST61の演算で使用される。
次に、処理はステップST2に移行する。ステップST2において、制御部6は、冷却塔3A,3Bの稼働台数Nについて、N=0であるか否かを判断する。ここではN=0である(ステップST2:YES)ため、処理はステップST3に移行する。
ステップST3において、制御部6は、1台目の冷却塔を稼働させる。本実施形態では、2台の冷却塔3A,3Bについて、冷却塔3Aを第1冷却塔とし、冷却塔3Bを第2冷却塔としている。制御部6は、冷却塔を稼働させるときには、第1冷却塔、第2冷却塔の順で稼働させ、冷却塔を停止させるときには、第2冷却塔、第1冷却塔の順で停止させる。従って、ここでは、制御部6は、冷却塔3Aのみを稼働させる。即ち、制御部6は、冷却塔3Aのファンモータ351を駆動させることにより、冷却塔3Aを稼働状態とする。
また、これと同時に、制御部6は、インバータ52に周波数指定信号を出力し、その周波数指定信号に対応する駆動周波数で冷却水ポンプ51を起動させる。これにより、過冷却器23に向けた冷却水W1の供給が開始される。冷却水ポンプ51の起動時の冷却水ポンプ51の駆動周波数は、例えば定格駆動周波数の50%(定格60Hzであれば30Hz)とし、制御部6は、この駆動周波数に対応する周波数指定信号をインバータ52に出力する。
冷却水ポンプ51を起動させた後、処理はステップST4に移行する。ステップST4において、制御部6は、第1温度値T1が第1下限温度T1´以下であるか否かを判断する。第1温度値T1が第1下限温度T1´以下である(即ち、液冷媒が冷え過ぎである)と判断された場合(ステップST4:YES)には、処理はステップST5の流量調節制御をスキップして、ステップST1にリターンする。これにより、膨張弁24に送られる液冷媒が冷え過ぎであるときには、冷却水W1の流量を増やさないようにする。一方、第1温度値T1が第1下限温度T1´以下でないと判断された場合(ステップST4:NO)には、処理はステップST5に移行する。
ステップST5において、制御部6は、図3に示す流量調節制御を実行する。この流量調節制御には、フィードバック制御が採用されている。
ステップST51において、制御部6は、ATD実測値ΔTをATD目標値ΔT0に収束させるため、即ち、ATD偏差E=0にするため、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いて、操作量MVn(冷却水ポンプ51の出力%)を演算する。速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期毎に、ステップST1で算出したATD偏差Eの比例要素、積分要素及び微分要素の3つを組み合わせて、操作量の変化分ΔMVnを演算する。制御部6は、演算された操作量の変化分ΔMVnを、前回の制御周期時点の操作量MVn−1に加算することで、今回の制御周期時点の操作量MVnを決定する。
ステップST52において、制御部6は、ステップST51で演算された操作量MVn(0〜100%出力)に対応する冷却水ポンプ51の駆動周波数を演算する。冷却水ポンプ51の駆動周波数は、例えばLTD偏差E=0のときに50%出力相当となり、且つATD偏差Eに比例するように決定される。具体的に例示すると次の通りである。
E≧−5℃(ΔT≧10℃)のとき、操作量MVnは95%出力(上限駆動周波数57Hz)
E=0℃(ΔT=5℃)のとき、操作量MVnは50%出力(中央駆動周波数30Hz)
E=5℃(ΔT=0℃)のとき、操作量MVnは5%出力(下限駆動周波数3Hz)
ステップST53において、制御部6は、駆動周波数の演算値を周波数指定信号に変換し、インバータ52に出力する。これにより、冷却水ポンプ51は、周波数指定信号で指定された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。周波数指定信号が、例えば4〜20mAの電流値信号とされる場合、下限駆動周波数3Hzのときに4mA出力、上限駆動周波数57Hzのときに20mA出力となるように、指定する周波数と出力する電流値とは比例関係とされる。周波数指定信号が、例えば1〜5Vの電圧値信号とされる場合、下限駆動周波数3Hzのときに1V出力、上限駆動周波数57Hzのときに5V出力となるように、指定する周波数と出力する電流値とは比例関係とされる。
冷却水ポンプ51の駆動周波数を調整した後は、処理はリターンし、ステップST1からの処理が繰り返される。以上のステップST51〜ステップST53の処理では、ATD実測値ΔTがATD目標値ΔT0に収束するように冷却水ポンプ51の駆動周波数が調整される。これにより、冷凍機2の冷凍負荷に追従して過冷却器23へ供給される冷却水W1の流量が調節される。
即ち、例えば夏季のように、冷凍機2の冷凍負荷が大きく、ΔT>ΔT0(E>0)となる状態では、過冷却器23における冷媒液の冷却不足であると検出される。このため、制御部6は、冷却水ポンプ51の出力%を上げ、冷却水W1,W2の循環流量を増加させる操作を行う。これにより、過冷却器73の冷熱入力が増え、冷媒液の過冷却度が増加する。一方、例えば冬季のように、冷凍機2の冷凍負荷が小さく、ΔT<ΔT0(E<0)となる状態では、過冷却器23における冷媒液の冷却過剰であると検出される。このため、制御部6は、冷却水ポンプ51の出力%を下げ、冷却水W1,W2の循環流量を減少させる操作を行う。これにより、過冷却器73の冷熱入力が減り、冷媒液の過冷却度が減少する。従って、この冷凍システム1は、冷凍機2の冷凍負荷に相応する冷熱入力を過冷却器23に対して行うので、効率的な冷媒液の過冷却を行うことができる。また、冷却水ポンプ51をインバータ52により制御して冷却水W1の流量を調節するため、ポンプ動力の省エネルギー化を図ることもできる。
次に、リターン後の処理について説明する。リターン後のステップST2において、1台の冷却塔3Aが稼働されたことにより、稼働台数Nについて、N=0ではない(ステップST2:NO)となるため、処理はステップST6に移行する。ステップST6において、稼働台数NはN=1であるかどうかが判断される。ここでは、N=1である(ステップST6:YES)ため、処理はステップST7に移行する。
ステップST7では、冷却塔の増台判断が行われる。即ち、制御部6は、ATD実測値ΔTについて、ATD目標値ΔT0(5℃)に所定温度αを加算した値以上(ΔT≧ΔT0+α)の状態が所定時間継続したかどうかを判断する。ΔT≧ΔT0+αの状態が所定時間継続したと判断された場合(ステップST7:YES)には、処理は、ステップST8に移行する。例えば、ATD実測値ΔTが6℃(α=1℃)以上となるプラス側の離散状態が5分間継続した場合、制御部6は、過冷却器23の冷却不足であると判断して処理をステップST8に移行させる。
ステップST8において、制御部6は、冷却塔を増台させて過冷却器23の冷却不足を補うため、停止状態にある冷却塔3B(第2冷却塔)を稼働させる。即ち、制御部6は、冷却塔3Bのファンモータ351を駆動させることにより、冷却塔3Bを稼働状態とする。冷却塔3Bが稼働して冷却水が冷却塔3Bにおいても冷却されることにより、冷却塔3Bの冷却水出口温度が下降する。このため、冷却塔3Aからの冷却水と冷却塔3Bからの冷却水との混合後の冷却水W1の温度も下降する。この混合後の冷却水W1が冷却水供給ラインL42を通って過冷却器23に供給されることにより、過冷却器23の冷却水入口温度は一気に下降し、冷媒液の冷却不足は解消される。
ステップST8において冷却塔3Bが稼働したら、処理はステップST4に移行し、ステップST4からの処理が繰り返される。ここで、2台の冷却塔3A,3Bが稼働状態とされ、冷却能力がアップしたことにより冷却過剰となってしまい、ATD実測値ΔTがATD目標値ΔT0を下回った場合には、制御部6は、上述したステップST5の流量調節制御によって冷却水ポンプ51の駆動周波数を下げるように調整し、冷却水の流量を減らす操作を行う。
一方、ステップST7において、ΔT≧ΔT0+αの状態が所定時間継続していないと判断された場合(ステップST7:NO)には、処理は、ステップST4に移行する。つまり、プラス側の離散状態が5分間継続しない場合、即ち、5分間が経過する前にATD実測値ΔTがATD目標値ΔT0に収束する場合、制御部6は、過冷却器23における冷媒液の冷却が良好であると判断する。従って、冷却塔は増台されずに1台の冷却塔3Aのみが稼働した状態で、ステップST5の流量調節制御が継続される。
2台の冷却塔3A,3Bが稼働状態とされた後は、ステップST6において、稼働台数NはN=1ではない(ステップST6:NO)と判断されるため(N>1の場合)、処理はステップST9に移行する。ステップST9では、制御部6は、冷却塔の稼働台数Nについて、2台以上且つ設置台数N0未満(2≦N<N0)であるかどうかを判断する。ここで、2台以上且つ設置台数N0未満であると判断された場合(ステップST9:YES)には、処理はステップST10に移行する。一方、ステップST9において、2台以上且つ設置台数N0未満(2≦N<N0)ではないと判断された場合(ステップST9:NO)には、処理はステップST11に移行する。
ステップST10では、ステップST7と同じく、冷却塔の増台判断が行われる。即ち、制御部6は、ATD実測値ΔTについて、ATD目標値ΔT0(5℃)に所定温度αを加算した値以上(ΔT≧ΔT0+α)の状態が所定時間継続したかどうかを判断する。ΔT≧ΔT0+αの状態が所定時間継続したと判断された場合(ステップST10:YES)には、処理は、ステップST8に移行する。例えば、ATD実測値ΔTが6℃(α=1℃)以上となるプラス側の離散状態が5分間継続した場合、制御部6は、過冷却器23の冷却不足であると判断して処理をステップST8に移行させて、冷却塔を更に1台稼働させる。
一方、ステップST10において、ΔT≧ΔT0+αの状態が所定時間継続していないと判断された場合(ステップST10:NO)には、処理は、ステップST11に移行する。つまり、プラス側の離散状態が5分間継続しない場合、即ち、5分間が経過する前にATD実測値ΔTがATD目標値ΔT0に収束する場合、制御部6は、処理をステップST11に移行させて、マイナス側の離散状態の発生の有無を判断する。
ステップST11では、冷却塔の減台判断が行われる。本実施形態では、冷却塔の設置台数N0は、冷却塔3A,3Bの2台(N0=2)であるため、ステップST9では必ずNOとなる。従って、処理は、ステップST9から直接ステップST11に移行する。即ち、ステップST11において、制御部6は、ATD実測値ΔTについて、ATD目標値ΔT0(5℃)から所定温度βを減算した値以下(ΔT≦ΔT0−β)の状態が所定時間継続したかどうかを判断する。ΔT≦ΔT0−βの状態が所定時間継続したと判断された場合(ステップST11:YES)には、処理は、ステップST13に移行する。例えば、ATD実測値ΔTが4℃(β=1℃)以上となるマイナス側の離散状態が5分間継続した場合、制御部6は、過冷却器23の冷却過剰であると判断して、処理をステップST12に移行させる。
ステップST12において、制御部6は、冷却塔を減台させて過冷却器23の冷却過剰を解消するため、稼働中の冷却塔3B(第2冷却塔)を停止させる。即ち、制御部6は、冷却塔3Bのファンモータ351を停止させることにより、冷却塔3Bを停止状態とする。冷却塔3Bが停止することにより、冷却塔3Bの冷却水出口温度が上昇する。このため、冷却塔3Aからの冷却水と冷却塔3Bからの冷却水との混合後の冷却水W1の温度も上昇する。この混合後の冷却水W1が冷却水供給ラインL42を通って過冷却器23に供給されることにより、過冷却器23の冷却水入口温度は一気に上昇し、冷却過剰状態は解消される。
ステップST12において冷却塔3Bが停止したら、処理はステップST4に移行し、ステップST4からの処理が繰り返される。ここで、稼働状態の冷却塔が冷却塔3Aのみとなり、冷却能力がダウンしたことにより冷却不足となってしまい、LTD実測値ΔTがLTD目標値ΔT0を上回った場合には、制御部6は、上述したステップST5の流量調節制御によって冷却水ポンプ51の駆動周波数を上げるように調整し、冷却水W1の流量を増加させる操作を行う。
一方、ステップST11において、ΔT≦ΔT0−βの状態が所定時間継続していないと判断された場合(ステップST11:NO)には、処理は、ステップST4に移行する。つまり、マイナス側の離散状態が5分間継続しない場合、即ち、5分間が経過する前にLTD実測値ΔTがLTD目標値ΔT0に収束する場合、制御部6は、過冷却器23による冷却が良好であると判断する。従って、冷却塔は減台されずに2台の冷却塔3A、3Bが稼働した状態で、ステップST5の流量調節制御が継続される。
以上のように、この冷凍システム1は、冷凍機2の冷凍負荷に応じて冷却塔3A,3Bの稼働台数を増減させることができるため、幅広い冷凍負荷に対応して過冷却器23における冷媒液の過冷却を行うことが可能となり、冷凍機2による冷凍能力の更なる向上を図ることができる。また、冷却過剰となる場合には、冷却塔3A,3Bの稼働台数を減少させるので、空冷のためのファン動力の省エネルギー化を図ることもできる。
なお、冷凍システム1に設置される全ての冷却塔3A,3Bが稼働状態である場合には、増台判断は行われない。このため、冷凍機2の冷凍負荷の増大に伴って、冷却水ポンプ51の駆動周波数を最大にして冷却水W1の流量を最大まで調節しても、過冷却器23の冷却不足が解消しない場合には、冷却不足を許容して冷媒液の過冷却を継続させることとなる。一方、冷凍システム1に設置される複数の冷却塔3A,3Bのうちの1台のみが稼働状態である場合には、減台判断は行われない。このため、冷凍機2の冷凍負荷の減少に伴って、冷却水ポンプ51の駆動周波数を最小にして冷却水W1の流量を最小まで調節しても、過冷却器23の冷却過剰が解消しない場合には、冷却過剰を許容して冷媒液の過冷却を継続させることとなる。冷却塔全台稼働時の冷却不足や1台のみ稼働時の冷却過剰が頻発する場合には、冷却塔の増設や冷却塔の風量調整等が必要となるため、例えばランプの点灯や画面表示等による警告を行い、設備管理者に注意を促すようにしてもよい。
[第2実施形態]
(冷凍システム1Aの全体構成)
図4は、本発明の第2実施形態に係る冷凍システムの全体構成図である。図1と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、それらの詳細な説明については第1実施形態における説明を援用し、ここでは省略する。
第2実施形態の冷凍システム1Aでは、流量調節手段5Aが比例制御弁54を備える点で、第1実施形態の冷凍システム1の流量調節手段5と相違し、その他の構成は第1実施形態の冷凍システム1と同一である。従って、この冷凍システム1Aも、冷凍システム1と同様に、追加の冷凍サイクル回路によって冷媒の過冷却を行う場合に比べて、低コストで効率の良い冷媒の過冷却が可能であり、経済性にも優れることから、短期間での設備費償却が期待できる。
比例制御弁54は、冷却水供給ラインL42上に設けられる。本実施形態の比例制御弁54は、吐出側ラインL422において、逆止弁53の下流側に設けられている。なお、比例制御弁54は、逆止弁53の上流側に設けられてもよく、また、吸入側ラインL421に設けられてもよい。この比例制御弁54は、制御部6から入力される開度指定信号に対応する開度で作動される弁機構である。即ち、比例制御弁54は、開度を調整するアクチュエータ回路(図示せず)を備え、このアクチュエータ回路に0〜100%の開度指定信号が入力されることにより、開度指定信号に対応して開度が調節される。これにより、比例制御弁54は、過冷却器23に供給する冷却水W1の流量を調節する。
本実施形態の冷却水ポンプ51は、インバータを使用しない商用電源駆動とされ、予め設定された駆動周波数(50Hz又は60Hzの定格駆動周波数)に応じた一定の回転速度で駆動される。
(冷凍システム1Aにおける冷却水の流量制御)
次に、冷凍システム1Aにおける冷却水の流量制御について説明する。
冷凍システム1Aにおいても、冷凍システム1と同様に、冷凍負荷に対して冷熱入力の過不足が生じないように、冷却水W1の流量をフィードバック制御によって調節すると共に、冷却塔3A,3Bの稼働台数を増減する。
図5及び図6は、本発明の第2実施形態に係る冷凍システム1Aの制御フロー図である。図5及び図6に示す制御フローにおいて、図2及び図3に示す制御フローのステップST3及びステップST5(ステップST51〜ST53)以外の処理(冷却塔の増台処理、減台処理)は同じである。図5及び図6では、図2及び図3と相違する処理を、ステップST3′及びステップST5′(ステップST51´〜ST53´)としている。以下、図5及び図6において、図2及び図3に示す制御フローと相違する処理について説明する。
先ず、冷凍システム1Aにおける冷却塔の稼働台数Nは0台(N=0)とされている。ステップST3′において、制御部6は、1台目の冷却塔3A(第1冷却塔)を稼働させる。即ち、制御部6は、冷却塔3Aのファンモータ351を駆動させることにより、冷却塔3Aを稼働状態とする。
これと同時に、制御部6は、比例制御弁54を作動させ、初期開度に移行させる。初期開度は、例えば0〜100%の開度制御範囲に対応して50%とし、制御部6は、この初期開度50%に対応する開度指定信号を比例制御弁54のアクチュエータ回路に出力する。また、制御部6は、冷却水ポンプ51を駆動させる。
比例制御弁54が初期開度に移行した後、ステップST4を経て、処理はステップST5′の流量調節制御に移行する。ステップST51′において、制御部6は、ATD実測値ΔTをATD目標値ΔT0に収束させるため、即ち、ATD偏差E=0にするため、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いて、操作量MVn(比例制御弁54の出力%)を演算する。速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期毎に、ステップST1で算出したATD偏差Eの比例要素、積分要素及び微分要素の3つを組み合わせて、操作量の変化分ΔMVnを演算する。制御部6は、演算された操作量の変化分ΔMVnを、前回の制御周期時点の操作量MVn−1に加算することで、今回の制御周期時点の操作量MVnを決定する。
ステップST52′において、制御部6は、ステップST51′で演算された操作量MVn(0〜100%出力)に対応する比例制御弁54の開度を演算する。比例制御弁54の開度は、例えばATD偏差E=0のときに50%出力相当となり、且つATD偏差Eに比例するように決定される。具体的に例示すると次の通りである。
E≧−5℃(ΔT≧10℃)のとき、操作量MVnは95%出力(上限開度95%)
E=0℃(ΔT=5℃)のとき、操作量MVnは50%出力(中央開度50%)
E=5℃(ΔT=0℃)のとき、操作量MVnは5%出力(下限開度5%)
ステップST53′において、制御部6は、開度の演算値を開度指定信号に変換し、比例制御弁54のアクチュエータ回路に出力する。これにより、比例制御弁54は、開度指定信号で指定された開度に移行する。開度指定信号が、例えば4〜20mAの電流値信号とされる場合、下限開度5%のときに4mA出力、上限開度95%のときに20mA出力となるように、指定する開度と出力する電流値とは比例関係とされる。開度指定信号が、例えば1〜5Vの電圧値信号とされる場合、下限開度5%のときに1V出力、上限開度95%のときに5V出力となるように、指定する開度と出力する電流値とは比例関係とされる。
比例制御弁54の開度を調整した後は、処理はリターンし、ステップST1からの処理が繰り返される。以上のステップST51′〜ステップST53′の処理では、ATD実測値(差分値)ΔTがATD目標値(設定値)ΔT0に収束するように比例制御弁54の開度が調整される。これにより、冷凍機2の冷凍負荷に追従して過冷却器23へ供給される冷却水W1の流量が調節される。
即ち、例えば夏季のように、冷凍機2の冷凍負荷が大きく、ΔT>ΔT0(E>0)となる状態では、過冷却器23における冷媒液の冷却不足であると検出される。このため、制御部6は、比例制御弁54の開度%を上げ、冷却水W1,W2の循環流量を増加させる操作を行う。これにより、過冷却器73の冷熱入力が増え、冷媒液の過冷却度が増加する。一方、例えば冬季のように、冷凍機2の冷凍負荷が小さく、ΔT<ΔT0(E<0)となる状態では、過冷却器23における冷媒液の冷却過剰であると検出される。このため、制御部6は、比例制御弁54の開度%を下げ、冷却水W1,W2の循環流量を減少させる操作を行う。これにより、過冷却器73の冷熱入力が減り、冷媒液の過冷却度が減少する。従って、この冷凍システム1Aにおいても、冷凍機2の冷凍負荷に相応する冷熱入力を過冷却器23に対して行うので、効率的な冷媒液の過冷却を行うことができる。
また、この冷凍システム1Aも、冷凍機2の冷凍負荷に応じて冷却塔3A,3Bの稼働台数を増減させることができるため、幅広い冷凍負荷に対応して過冷却器23における冷媒液の過冷却を行うことが可能となり、冷凍機2による冷凍能力の更なる向上を図ることができる。しかも、冷却過剰となる場合には、冷却塔3A,3Bの稼働台数を減少させるので、空冷のためのファン動力の省エネルギー化を図ることもできる。
[第3実施形態]
(冷凍システム1Bの全体構成)
図7は、本発明の第3実施形態に係る冷凍システムの全体構成図である。図1と同一符号の部位は同一構成の部位であるため、それらの詳細な説明については第1実施形態における説明を援用し、ここでは省略する。
第3実施形態の冷凍システム1Bでは、流量調節手段5Bが、バイパスラインL43と、三方弁55と、を備える点で、第1実施形態の冷凍システム1の流量調節手段5と相違し、その他の構成は第1実施形態の冷凍システム1と同一である。従って、この冷凍システム1Bも、冷凍システム1と同様に、追加の冷凍サイクル回路によって冷媒の過冷却を行う場合に比べて、低コストで効率の良い冷媒の過冷却が可能であり、経済性にも優れることから、短期間での設備費償却が期待できる。
バイパスラインL43は、吐出側ラインL422と冷却水返送ラインL41とを接続するバイパス路を構成する。即ち、バイパスラインL43の一端側(冷却水の流入側)は、後述する三方弁55を介して、吐出側ラインL422の途中に接続される。また、バイパスラインL43の他端側(冷却水の流出側)は、冷却水返送ラインL41の分岐部Lbよりも冷却水の流通方向の上流側(過冷却器23側)の途中に接続される。
三方弁55は、吐出側ラインL422上において、逆止弁53の下流側に配置され、吐出側ラインL422とバイパスラインL43との分岐部位に設けられる。これにより、吐出側ラインL422は、三方弁55を境にして上流側(冷却水ポンプ51側)の第1吐出側ラインL422aと、下流側(過冷却器23側)の第2吐出側ラインL422bと、に分けられる。なお、三方弁55の3つのポートのうち、第1吐出側ラインL422aの接続ポートを入口ポート、第2吐出側ラインL422bの接続ポートを第1出口ポート、バイパスラインL43の接続ポートを第2出口ポートとする。
三方弁55は、制御部6から入力される開度指定信号に対応する開度で作動される弁機構(三方型比例制御弁)である。この三方弁55は、第1出口ポートを出て過冷却器23に向かう冷却水W1の分流と、第2出口ポートを出てバイパス路に向かう冷却水W1の分流との流量比を調整可能である。即ち、三方弁55は、開度を調整するアクチュエータ回路(図示せず)を備え、このアクチュエータ回路に0〜100%の開度指定信号が入力されることにより、第1出口ポート側の開度と第2出口ポート側の開度とが調節される。但し、第1出口ポート側及び第2出口ポート側の流量比の合計は常に100%である。これにより、冷却水ポンプ51から吐出される冷却水W1の一部又は全部を冷却塔3A,3Bに返送可能となる。冷却塔3A,3Bに返送される冷却水W1の流量を調節すると、過冷却器23に供給される冷却水W1の流量が調節される。
本実施形態の冷却水ポンプ51も、インバータを使用しない商用電源駆動とされ、予め設定された駆動周波数(50Hz又は60Hzの定格駆動周波数)に応じた一定の回転速度で駆動される。
(冷凍システム1Bにおける冷却水の流量制御)
次に、冷凍システム1Bにおける冷却水の流量制御について説明する。
冷凍システム1Bにおいても、冷凍システム1と同様、冷凍負荷に対して冷熱入力の過不足が生じないように、冷却水W1の流量をフィードバック制御によって調節すると共に、冷却塔3A,3Bの稼働台数を増減する。
また、冷凍システム1Bの制御フローは、図5及び図6に示した制御フローと同一である。従って、図5及び図6を用いて、冷凍システム1BにおけるステップST3′及びステップST5′の処理について説明する。
先ず、冷凍システム1Bにおける冷却塔の稼働台数Nは0台(N=0)とされている。ステップST3′において、制御部6は、1台目の冷却塔3A(第1冷却塔)を稼働させる。制御部6は、冷却塔3Aのファンモータ351を駆動させ、ファン35を所定の速度で回転させることにより、冷却塔3Aを稼働状態とする。
これと同時に、制御部6は、三方弁55を作動させ、初期開度に移行させる。三方弁55の開度は、第1出口ポート側の開度を基準とする。即ち、第1出口ポート側の開度が、0%→25%→50%→75%→100%となる場合、第2出口ポート側の開度は、100%→75%→50%→25%→0%となる。初期開度は、例えば開度制御範囲の中央値である50%とし、制御部6は、この初期開度50%に対応する開度指定信号を三方弁55のアクチュエータ回路に出力する。また、制御部6は、冷却水ポンプ51を駆動させる。
三方弁55が初期開度に移行した後、ステップST4を経て、処理はステップST5′の流量調節制御に移行する。ステップST51′において、制御部6は、ATD実測値ΔTをATD目標値ΔT0に収束させるため、即ち、ATD偏差E=0にするため、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いて、操作量MVn(三方弁55の出力%)を演算する。速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期毎に、ステップST1で算出したATD偏差Eの比例要素、積分要素及び微分要素の3つを組み合わせて、操作量の変化分ΔMVnを演算する。制御部6は、演算された操作量の変化分ΔMVnを、前回の制御周期時点の操作量MVn−1に加算することで、今回の制御周期時点の操作量MVnを決定する。
ステップST52′において、制御部6は、ステップST61′で演算された操作量MVn(0〜100%出力)に対応する三方弁55の開度を演算する。三方弁55の開度は、例えばATD偏差E=0のときに50%出力相当となり、且つATD偏差Eに比例するように決定される。具体的に例示すると次の通りである。
E≧−5℃(ΔT≧10℃)のとき、操作量MVnは95%出力(第1出口ポート側は上限開度95%)
E=0℃(ΔT=5℃)のとき、操作量MVnは50%出力(第1出口ポート側は中央開度50%)
E=5℃(ΔT=0℃)のとき、操作量MVnは5%出力(第1出口ポート側は下限開度5%)
ステップST53′において、制御部6は、開度の演算値を開度指定信号に変換し、三方弁55のアクチュエータ回路に出力する。これにより、三方弁55は、開度指定信号で指定された開度に移行する。開度指定信号が、例えば4〜20mAの電流値信号とされる場合、下限開度5%のときに4mA出力、上限開度95%のときに20mA出力となるように、指定する開度と出力する電流値とは比例関係とされる。開度指定信号が、例えば1〜5Vの電圧値信号とされる場合、下限開度5%のときに1V出力、上限開度95%のときに5V出力となるように、指定する開度と出力する電流値とは比例関係とされる。
ステップST53′において三方弁55の開度を調整した後は、処理はリターンし、ステップST1からの処理が繰り返される。以上のステップST51′〜ステップST53′の処理では、ATD実測値(差分値)ΔTがATD目標値(設定値)ΔT0に収束するように三方弁55の開度が調整され、第2吐出側ラインL422bを通って過冷却器23に向かう冷却水W1の分流と、バイパスラインL43を通って冷却塔3A,3Bに向かう冷却水W1の分流との流量比が調整される。これにより、冷凍機2の冷凍負荷に追従して過冷却器23へ供給される冷却水W1の流量が調節される。
即ち、例えば夏季のように、冷凍機2の冷凍負荷が大きく、ΔT>ΔT0(E>0)となる状態では、過冷却器23における冷媒液の冷却不足であると検出される。このため、制御部6は、三方弁55の開度%を上げ、冷却水W1,W2の循環流量を増加させる操作を行う。これにより、過冷却器73の冷熱入力が増え、冷媒液の過冷却度が増加する。一方、例えば冬季のように、冷凍機2の冷凍負荷が小さく、ΔT<ΔT0(E<0)となる状態では、過冷却器23における冷媒液の冷却過剰であると検出される。このため、制御部6は、三方弁55の開度%を下げ、冷却水W1,W2の循環流量を減少させる操作を行う。これにより、過冷却器73の冷熱入力が減り、冷媒液の過冷却度が減少する。従って、この冷凍システム1Bにおいても、冷凍機2の冷凍負荷に相応する冷熱入力を過冷却器23に対して行うので、効率的な冷媒液の過冷却を行うことができる。
また、この冷凍システム1Bも、冷凍機2の冷凍負荷に応じて冷却塔3A,3Bの稼働台数を増減させることができるため、幅広い冷凍負荷に対応して過冷却器23における冷媒液の過冷却を行うことが可能となり、冷凍機2による冷凍能力の更なる向上を図ることができる。しかも、冷却過剰となる場合には、冷却塔3A,3Bの稼働台数を減少させるので、空冷のためのファン動力の省エネルギー化を図ることもできる。
[その他の実施形態]
冷却塔の設置台数は、前記の各実施形態では冷却塔3A,3Bの2台であるが、これに制限されず、3台以上であってもよい。また、1台の冷却塔の容量が、冷凍機2の冷凍負荷に対して十分な冷却能力を有するように選定されたものである場合には、冷却塔の設置台数は1台のみであってもよい。冷却塔の設置台数が1台のみである場合には、各冷凍システム1,1A,1Bにおいて、流量調節手段5,5A,5Bによる冷却水W1の流量調節のみが行われる。
冷却塔は、開放式に制限されず、密閉式でもよい。密閉式の冷却塔とする場合、冷却水ポンプ51は、冷却回路4において、冷凍機2から冷却塔に冷却水W2が返送される冷却水返送ラインL41に設けられてもよい。
また、以上の各実施形態では、PIDアルゴリズムを用いてフィードバック制御を行うように構成されているが、これに制限されず、PIアルゴリズム又はPアルゴリズムを用いるように構成されてもよい。