JP2019165694A - 力測定方法、力測定装置、力測定システム、力測定プログラム及び記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】生きている細胞内のカーゴにかかる力を非侵襲的な方法で測定する技術を提供すること。【解決手段】本発明の一態様は、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータのうち単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得ステップと、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出する、ゆらぎ値算出ステップと、算出したゆらぎ値に基づいて、力を算出する力算出ステップと、を有する力測定方法である。【選択図】図2
Description
本発明は、力測定方法、力測定装置、力測定システム、力測定プログラム及び記録媒体に関する。
多くの真核細胞は発達した細胞内輸送システムを備えている。従来、神経細胞が細胞内輸送システムの研究対象として用いられてきた。神経細胞は、細胞体と細胞体から延びる長い突起(軸索)とを有する。神経細胞の形態は細胞骨格を構成するタンパク質群によって形成されており、軸索は主に微小管を構成するチューブリンによって形成されている。微小管は、細胞体と軸索の先端にあるシナプスとの間の物流システム(軸索輸送)の幹線として機能する。軸索輸送で運ばれるカーゴ(Cargo)の例として、脂質二重膜によって覆われた細胞内小器官(オルガネラ)や小胞(ベシクル)が知られている。細胞小器官の例としては、例えば、ミトコンドリアやエンドソームが知られている。小胞内には、軸索やシナプスの形成材料又は情報伝達物質としてのタンパク質、核酸高分子、低分子等が含まれている。カーゴの輸送には、細胞体から軸索先端側へ向かう順行性輸送と、その逆方向の逆行性輸送とがある。順行性輸送では、キネシンと呼ばれるモータータンパク質が、カーゴを背負って微小管の上を辿りながら移動することが知られている。同様に、逆行性輸送ではダイニンと呼ばれるモータータンパク質が、カーゴの輸送を担っている。モータータンパク質は、ATPの加水分解によって得たエネルギーを用いてカーゴを輸送する。軸索輸送の乱れは、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経性疾患の一因とも考えられており、軸索輸送の解析が神経性疾患の理解や治療に貢献すると期待されている。
ここまで、軸索輸送を具体例としてモータータンパク質によるカーゴの輸送を説明したが、モータータンパク質によるカーゴの輸送は、軸索輸送に限られない。神経細胞においても、軸索のみならず、樹状突起などの突起内あるいは細胞体におけるカーゴの輸送が行われる。その際、カーゴは必ずしも脂質二重膜に覆われているとは限らず、タンパク質複合体あるいはタンパク質・核酸複合体などの場合がある。また、モータータンパク質は、必ずしも微小管の上を辿って移動するキネシンあるいはダイニンだけが用いられるわけではなく、アクチン繊維上を移動するミオシンなど様々なモーター分子が用いられる場合がある。また、細胞内輸送は、神経細胞に限らず、全ての真核細胞で同様の機構により行われている。例えば皮膚のメラニン細胞(メラノサイト)では、メラニン色素を含む細胞内顆粒がカーゴとして輸送され、膵臓のインスリン分泌細胞では、インスリンを含む細胞内小胞がカーゴとして輸送される。すなわち、ここまで、神経細胞を具体例としてモータータンパク質によるカーゴの輸送を説明したが、モータータンパク質によるカーゴの輸送は、必ずしも神経細胞だけで行われるわけではなく、神経細胞以外の細胞であっても行われる。例えば、神経細胞以外の細胞では、モータータンパク質によるカーゴの輸送は、軸索の他、微小管の上をモータータンパク質が移動することで行われる。
ここまで、軸索輸送を具体例としてモータータンパク質によるカーゴの輸送を説明したが、モータータンパク質によるカーゴの輸送は、軸索輸送に限られない。神経細胞においても、軸索のみならず、樹状突起などの突起内あるいは細胞体におけるカーゴの輸送が行われる。その際、カーゴは必ずしも脂質二重膜に覆われているとは限らず、タンパク質複合体あるいはタンパク質・核酸複合体などの場合がある。また、モータータンパク質は、必ずしも微小管の上を辿って移動するキネシンあるいはダイニンだけが用いられるわけではなく、アクチン繊維上を移動するミオシンなど様々なモーター分子が用いられる場合がある。また、細胞内輸送は、神経細胞に限らず、全ての真核細胞で同様の機構により行われている。例えば皮膚のメラニン細胞(メラノサイト)では、メラニン色素を含む細胞内顆粒がカーゴとして輸送され、膵臓のインスリン分泌細胞では、インスリンを含む細胞内小胞がカーゴとして輸送される。すなわち、ここまで、神経細胞を具体例としてモータータンパク質によるカーゴの輸送を説明したが、モータータンパク質によるカーゴの輸送は、必ずしも神経細胞だけで行われるわけではなく、神経細胞以外の細胞であっても行われる。例えば、神経細胞以外の細胞では、モータータンパク質によるカーゴの輸送は、軸索の他、微小管の上をモータータンパク質が移動することで行われる。
従来、このようなカーゴの輸送を解析するため、生きている細胞内のカーゴにかかる力を測定することが行われていた。生きている細胞内のカーゴにかかる力を測定する方法としては、例えば、光ピンセットを用いた方法があった。光ピンセットを用いた方法は、光ピンセットによって観察対象のカーゴに力をくわえて、カーゴを引っ張ることでカーゴにかかる力を測定する方法であった。なお、カーゴにかかる力とは、例えば、モータータンパク質がカーゴにかける力である。
K. Hayashi, C.G. Pack, M.K. Sato, K. Mouri, K. Kaizu, K. Takahashi, and Y. Okada、"Viscosity and drag force involved in organelle transport: Investigation of the fluctuation dissipation theorem"、The European Physical Jounal E, 36: 136 (2013)
しかしながら、光ピンセットを用いた方法は、カーゴとその周囲の細胞質の屈折率差及びカーゴの大きさとレーザー光の強度が発生力を決めるため、油滴のような特定のカーゴ以外への適用が難しい。その結果、光ピンセットを用いた方法を油滴等以外のカーゴに適用しようとすると過大な強度のレーザー光が必要であり、細胞侵害・熱的ダメージを生じる場合があった。
このように、光ピンセットを用いた方法は、レーザー光を用いる侵襲的な方法であるため観察対象の細胞を傷つける可能性があるという問題があった。
このように、光ピンセットを用いた方法は、レーザー光を用いる侵襲的な方法であるため観察対象の細胞を傷つける可能性があるという問題があった。
上記事情に鑑み、本発明は、生きている細胞内のカーゴにかかる力を非侵襲的な方法で測定する技術を提供することを目的としている。
本発明の一態様は、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得ステップと、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出する、ゆらぎ値算出ステップと、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出ステップと、を有する力測定方法である。
本発明の一態様は、上記の力測定方法であって、前記第一取得ステップは、予め学習した、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性に基づいて、機械学習のアルゴリズムによって、前記第一のデータを取得する。
本発明の一態様は、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得ステップと、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出するゆらぎ値算出ステップと、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出ステップと、を有し、前記第一取得ステップは、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得する、力測定方法である。
本発明の一態様は、上記の力測定方法であって、前記所定の特徴量は、前記タイムコースデータのうちの第一の期間におけるタイムコースデータに対する線形近似曲線の傾きと、前記第一の期間におけるタイムコースデータを近似する関数であって、二つの一次関数の和で表される関数の二つの傾きの比と、前記線形近似曲線と前記関数との差の時間積分の値とである。
本発明の一態様は、上記の力測定方法であって、前記タイムコースデータが、前記軌跡の弧長を座標値とする座標系の座標値によって表される。
本発明の一態様は、上記の力測定方法であって、前記力算出ステップは、前記ゆらぎ値に対してクラスタリングを行うことで前記力を算出する。
本発明の一態様は、上記の力測定方法であって、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータのうち、前記第一のデータと、前記カーゴの位置が時間によらず略同一の位置である期間の前記カーゴの位置の時間変化を示す第二のデータとを含むタイムコースデータを取得する第二取得ステップと、前記力と前記ゆらぎ値との換算係数であるゆらぎ係数を前記第一及び第二のデータに基づいて算出するゆらぎ係数算出ステップとを有する。
本発明の一態様は、上記の力測定方法であって、前記ゆらぎ係数算出ステップは、前記第二のデータに基づいて、前記カーゴを囲む媒質の粘性係数を算出する。
本発明の一態様は、上記の力測定方法であって、前記ゆらぎ係数算出ステップは、前記第二取得ステップにおいて取得された前記第一のデータに基づいて、前記カーゴが移動する速さを算出する。
本発明の一態様は、上記の力測定方法であって、前記ゆらぎ係数算出ステップは、前記粘性係数と前記速さとに基づいて前記ゆらぎ係数を算出する。
本発明の一態様は、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得部と、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出する、ゆらぎ値算出部と、算出した前記ゆらぎ値に基づいて、前記力を算出する力算出部と、を備える力測定装置である。
本発明の一態様は、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得部と、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出するゆらぎ値算出部と、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出部と、を備え、前記第一取得部は、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得する、力測定装置である。
本発明の一態様は、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得部と、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出する、ゆらぎ値算出部と、算出した前記ゆらぎ値に基づいて、前記力を算出する力算出部と、を備える力測定システムである。
非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得部と、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出するゆらぎ値算出部と、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出部と、を備え、前記第一取得部は、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得する、力測定システムである。
本発明の一態様は、コンピュータに、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得させ、前記コンピュータに、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出させ、前記コンピュータに、算出した前記ゆらぎ値に基づいて、前記力を算出するための力測定プログラムである。
本発明の一態様は、コンピュータに、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得させ、前記コンピュータに、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出させ、前記コンピュータに、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出させ、前記コンピュータに、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得させる、力測定プログラムである。
本発明の一態様は、コンピュータに、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得させ、前記コンピュータに、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出させ、前記コンピュータに、算出した前記ゆらぎ値に基づいて、前記力を算出するためのプログラムを記憶する、記録媒体である。
本発明の一態様は、コンピュータに、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得させ、前記コンピュータに、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出させ、前記コンピュータに、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出させ、前記コンピュータに、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得させる、記録媒体である。
本発明により、生きている細胞内のカーゴにかかる力を非侵襲的な方法で測定することが可能となる。
(原理)
本発明は、カーゴにかかる力に対してゆらぎの定理によって関係づけられた物理量を測定することでカーゴにかかる力を測定する。そこで、本発明の説明にあたって、まずはゆらぎの定理を説明した後、本発明によってカーゴにかかる力が測定される原理を説明する。
本発明は、カーゴにかかる力に対してゆらぎの定理によって関係づけられた物理量を測定することでカーゴにかかる力を測定する。そこで、本発明の説明にあたって、まずはゆらぎの定理を説明した後、本発明によってカーゴにかかる力が測定される原理を説明する。
ゆらぎの定理はD.J.Evansらによって1993年に発表された、物理学の1分野である非平衡統計力学の定理である。ゆらぎの定理は、熱力学的に非平衡な状態にある系における所定の物理量と、その所定の物理量を変化させる物理量とを関係づける定理である。熱力学的に非平衡な状態にある系とは、例えば、カーゴが移動する系であり、その場合、ゆらぎの定理は、その系におけるカーゴの位置と、カーゴにかかる力とを関係づける。その場合、移動するカーゴの位置とその移動するカーゴにかかる力とを関係づけるゆらぎの定理は、次の式で表わされることが知られている。
ΔXは、単位時間中のカーゴの変位量を表し、P(ΔX)は、カーゴの変位量がΔXである確率を表す。P(ΔX)は、以下の式(2)で表されるガウス関数である。
<>は、<>内の値の平均値を表す。例えば、<ΔX>は、ΔXの平均値を表す。なお、ΔXは、以下の式(3)で示される。
式(3)において、X(t)は、時刻tにおけるカーゴの位置である。式(3)において、X(t+Δt)は、時刻t+Δtにおけるカーゴの位置である。すなわち、ΔXは、カーゴの位置の変位量を表す。力Fc(式(1)ではFと表記)は、カーゴにかかる力の大きさを表す。Aは、式(1)の左辺が表す物理量と力Fcとの換算係数である。以下、式(1)の左辺が表す物理量をゆらぎ値χといい、Aをゆらぎ係数という。ゆらぎ係数Aは、カーゴとモータータンパク質との組み合わせに固有の値である。
カーゴの変位量が測定されれば、ゆらぎ値χが算出される。そのため、ゆらぎ係数Aが与えられれば、式(1)によりカーゴにかかる力Fcが算出され得る。
なお、カーゴの変位量は、カーゴの位置の変化量を表す。また、カーゴの位置とは、カーゴの部位の位置であればどのような位置であってもよく、例えば、カーゴの重心位置である。
なお、カーゴの変位量は、カーゴの位置の変化量を表す。また、カーゴの位置とは、カーゴの部位の位置であればどのような位置であってもよく、例えば、カーゴの重心位置である。
図1は、ゆらぎの定理が力Fcを反映することを説明する説明図である。図1において、図1(A)及び(B)は、どちらもカーゴに力がかかる場合におけるΔXの確率分布を表す。ただし、図1(A)は、カーゴにかかるノイズが大きい場合のΔXの確率分布を表す。
図1(A)及び(B)における確率分布は、例えば、どちらもガウス分布に従う確率分布である。図1(A)と(B)とを比較すると、図1(A)においては、カーゴにかかるノイズが小さいため、ΔXがとり得る値の範囲が図1(B)におけるΔXがとり得る値の範囲よりも狭い。
そのため、図1(A)における確率分布のピークの高さは、図1(A)における確率分布のピークの高さよりも低い。しかしながらP(ΔX)とP(-ΔX)の比はどちらも等しく、P(ΔX)そのものでなくP(ΔX)とP(-ΔX)の比が力Fcを反映していることを表す。
そのため、ゆらぎの定理は力Fcを反映する定理であると言える。
図1(A)及び(B)における確率分布は、例えば、どちらもガウス分布に従う確率分布である。図1(A)と(B)とを比較すると、図1(A)においては、カーゴにかかるノイズが小さいため、ΔXがとり得る値の範囲が図1(B)におけるΔXがとり得る値の範囲よりも狭い。
そのため、図1(A)における確率分布のピークの高さは、図1(A)における確率分布のピークの高さよりも低い。しかしながらP(ΔX)とP(-ΔX)の比はどちらも等しく、P(ΔX)そのものでなくP(ΔX)とP(-ΔX)の比が力Fcを反映していることを表す。
そのため、ゆらぎの定理は力Fcを反映する定理であると言える。
カーゴの変位が測定された場合には、式(1)の左辺の値だけでなくゆらぎ係数Aも算出され得る。このことを以下で説明する。粘性のある媒質中を速さVで定速移動するカーゴにおいては、モータータンパク質によってカーゴにくわえられる力と、媒質による粘性抵抗の力とが釣り合う。そのため、媒質の粘性係数Γがわかれば、モータータンパク質によってカーゴにくわえられる力Fcが算出され得る。具体的には、力Fcと粘性係数Γとは以下の式(4)の関係を満たす。
そのため、ゆらぎ値χと、粘性係数Γに基づいて算出された力Fcとに基づいて、ゆらぎ係数Aが算出される。なお、ゆらぎ係数Aは、ボルツマン定数kbと、非平衡状態における観察対象のカーゴを含む系の温度Teff(すなわち、一般に非平衡温度又は有効温度といわれる温度)との積である。非平衡状態は、カーゴが輸送されている状態である。モータータンパク質によるカーゴの輸送においては、Teffは一定値である。このことは実験的に検証済みである。
(実施形態)
図2は、実施形態の力測定装置1を用いて構成された力測定システム100の具体例を示す図である。力測定システム100は、非侵襲的な手段によって細胞中のカーゴを検出し、そのカーゴの動きを記録することで、そのカーゴにかかる力を測定するシステムである。力測定システム100は、力測定装置1、ゆらぎ係数算出装置2及び撮像装置9を備える。
図2は、実施形態の力測定装置1を用いて構成された力測定システム100の具体例を示す図である。力測定システム100は、非侵襲的な手段によって細胞中のカーゴを検出し、そのカーゴの動きを記録することで、そのカーゴにかかる力を測定するシステムである。力測定システム100は、力測定装置1、ゆらぎ係数算出装置2及び撮像装置9を備える。
なお、本発明が観察対象とする細胞は、カーゴ及びモータータンパク質を有し、細胞内でモータータンパク質がカーゴを輸送する細胞であれば、どのような細胞であってもよい。一般的に知られる真核細胞の多くはこのようなカーゴ及びモータータンパク質を有する。細胞内におけるカーゴの輸送を観察し易いことから、観察対象は神経細胞であることが好ましい。神経細胞以外で観察対象として好適な細胞としては、例えばグリア細胞、血管内皮細胞、皮膚などの繊維芽細胞、メラニン細胞、一般的に用いられる株化された動物細胞、卵細胞等が挙げられる。
本発明が観察対象とする神経細胞の種類は特に限定されず、例えば、神経細胞内の動画撮影が容易である観点からin vitroで培養可能な神経細胞が好ましい。また、神経細胞を補助する細胞あるいはその他の細胞を併存させた細胞であってもよい。このような細胞として、例えば、アストロサイト(星状膠細胞)、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞などのグリア細胞、血管上皮細胞などの血管系細胞など、繊維芽細胞などの間葉系細胞などが挙げられる。また、このような神経細胞の例として、アミノ酸系神経伝達物質を分泌する神経細胞、ペプチド系神経伝達物質を分泌する神経細胞、モノアミン類やアセチルコリンを分泌する神経細胞等が挙げられる。神経細胞を培養する際には、生体内環境に近づける目的で、神経細胞を補助する細胞を併存させてもよい。このような補助細胞として、例えば、アストロサイト(星状膠細胞)、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞等のグリア細胞等が挙げられる。
また、本発明が観察対象とする細胞内で輸送されるカーゴの種類は特に限定されず、光学機器によってゆらぎを測定可能なカーゴであればよい。ゆらぎを測定する際のカーゴの蛍光標識の有無は限定されない。カーゴが脂質二重膜で包まれた小胞又は細胞小器官である場合、例えば、DiD、DiI、DiO、DiR等のカルボシアニン色素によって蛍光標識することができる。あるいは、カーゴに含まれるタンパク質をGFPなどの蛍光タンパク質によって蛍光標識することができる。その他、蛍光色素を用いた染色、ビオチン・アビジン、抗体などを用いた公知の標識方法も適用可能である。観察するカーゴの輸送経路は特に限定されず、軸索輸送でもよいし、その他の細胞内輸送であってもよく、解析の目的に応じて適宜選択することができる。
力測定装置1は、観察対象のカーゴの動きを示す画像のデータ群に基づいて、観察対象のカーゴにかかる力Fcを算出する。以下、観察対象のカーゴの動きを示す画像のデータ群を、観察データという。観察対象のカーゴの動きを示す画像は、例えば、二次元画像であってもよい。また、観察データは、例えば動画であってもよい。
ゆらぎ係数算出装置2は、観察データに基づいて、観察対象のカーゴのゆらぎ係数Aを算出する。ゆらぎ係数算出装置2は、算出したゆらぎ係数Aを力測定装置1に出力する。
撮像装置9は、非侵襲的な手段によって、観察対象のカーゴを撮影し、そのカーゴの動きを記録した観察データを生成する。非侵襲的な手段とは、例えば、可視光で観察対象に関する情報を取得する手段であってもよい。観察対象に関する情報とは、例えば、観察対象の重心位置を示す信号である。また、非侵襲的な手段とは、例えば、観察対象を蛍光標識しその蛍光によって観察対象に関する情報を取得する手段であってもよい。これらの非侵襲的な手段は、蛍光顕微鏡や、微分干渉顕微鏡等の顕微鏡を用いて実現されてもよい。また、非侵襲的な手段とは、観察対象への影響が少ない強度の磁場によって観察対象に関する情報を取得する手段であってもよい。なお、侵襲的な手段とは、例えば、光ピンセットのような、観察対象へレーザーを照射することで観察対象に関する情報を取得する手段である。
なお、カーゴの動きを記録した観察データを生成する方法は特に限定されず、例えば、市販の細胞動態観察用デジタルビデオカメラを備えた共焦点レーザー顕微鏡などを用いる公知方法が挙げられる。撮影のフレームレートとしては、カーゴの軸索輸送の速度等の観点から、10〜100フレーム/秒程度またはそれ以上が好ましく、100フレーム/秒が特に好ましい。
また、撮影した画像フレーム中の軸索領域を抽出する工程又は手段では、種々の方法を適用することが可能であるが、例えば、目視によって軸索領域を判断する方法が行われる。
また、撮影した画像フレーム中の軸索領域を抽出する工程又は手段では、種々の方法を適用することが可能であるが、例えば、目視によって軸索領域を判断する方法が行われる。
図3は、実施形態における観察データの具体例を示す図である。
図3は、ある時刻tにおける二次元の静止画像である。図3の静止画像における点線で囲まれた領域は神経細胞を表す。図3において、線で囲まれた領域101内の発光する点は、観察対象のカーゴである。
図3は、ある時刻tにおける二次元の静止画像である。図3の静止画像における点線で囲まれた領域は神経細胞を表す。図3において、線で囲まれた領域101内の発光する点は、観察対象のカーゴである。
図4は、実施形態における複数の観察データが観察対象の移動を示すことを説明する説明図である。
図4において、画像102は、時刻t=0sにおける観察対象のカーゴの位置を示す。なお、ここで観察対象のカーゴは、図3における領域101内の観察対象のカーゴである。図4において、画像103は、0sより後であって1.8sより前の時刻における観察対象のカーゴの位置を示す。図4において、画像104は、時刻t=1.8sにおける観察対象のカーゴの位置を示す。
図4において、画像102は、時刻t=0sにおける観察対象のカーゴの位置を示す。なお、ここで観察対象のカーゴは、図3における領域101内の観察対象のカーゴである。図4において、画像103は、0sより後であって1.8sより前の時刻における観察対象のカーゴの位置を示す。図4において、画像104は、時刻t=1.8sにおける観察対象のカーゴの位置を示す。
観察データは、図3に示される二次元の静止画像を、時刻を変えて複数備えたデータ群である。そのため、観察データは、自身が備える異なる時刻における静止画像のデータによって、図4に示すような観察対象のカーゴの移動を示す。
図5は、実施形態における力測定装置1の機能構成の具体例を示す図である。力測定装置1は、軌跡データ取得部10、第一部分軌跡データ取得部11、ゆらぎ値算出部12、繰り返し制御部13、クラスタリング部14、ゆらぎ係数記憶部15及び力算出部16を備える。
軌跡データ取得部10は、観察データに基づいて、タイムコースデータを取得する。タイムコースデータは、時間に対する観察対象のカーゴの位置を示すデータである。具体的には、タイムコースデータは、時刻tと時刻tにおけるカーゴの位置Xとの二つの値を有するデータの集合である。カーゴの位置Xは、軌跡座標によって表される。軌跡座標とは、カーゴの軌跡上の所定の位置を原点とした座標系であって、座標値が、原点から座標値が示す箇所までの弧長である座標系である。カーゴの軌跡とは、カーゴの移動の軌跡である。軌跡上の所定の位置は、例えば、時刻tにおけるカーゴの位置である。
軌跡データ取得部10は、タイムコースデータをどのように取得してもよい。例えば、軌跡データ取得部10は、軌跡データ取得処理を実行することでタイムコースデータを取得してもよい。軌跡データ取得処理は、射影処理、軌跡取得処理及び軌跡座標値取得処理含む処理である。射影処理では、まず、二次元画像座標系によって表されるカーゴの位置の座標が各時刻tの画像ごとに取得される。二次元画像座標系とは、撮像装置9によって撮像された画像に対して定められた二次元座標系である。二次元座標系は、例えば、画像の横軸をx軸、縦軸をy軸とする二次元の直交座標系である。射影処理では、次に、カーゴの三次元時空間座標値が取得され、取得された全ての三次元時空間座標値が表す点(以下「三次元時空点」という。)がひとつの二次元空間面に射影される。カーゴの三次元時空間座標値とは、カーゴの三次元時空間座標系における座標値である。カーゴの三次元時空間座標系とは、1軸が時間軸であり、2軸が空間座標を表す軸である座標系である。カーゴの三次元時空間座標系は、時間軸の座標は画像が撮像された時刻tを表し、空間軸の座標は時刻tにおける二次元画像座標系の座標値を表す。二次元空間面は、例えば、カーゴの三次元時空間座標系において、時間座標が0の二次元面である。
具体的には、時刻t1におけるカーゴの位置の二次元画像座標系における座標値が(x1、y1)である場合には、カーゴの三次元時空間座標値は(x1、y1、t1)である。
具体的には、時刻t1におけるカーゴの位置の二次元画像座標系における座標値が(x1、y1)である場合には、カーゴの三次元時空間座標値は(x1、y1、t1)である。
軌跡データ取得部10は、射影処理を実行することで、射影先情報を取得する。射影先情報は、三次元時空点の、射影先の二次元空間面における座標値を表す情報である。具体的には、三次元空間座標値が(x1、y1、t1)である三次元時空点の射影先情報は、(x1、y1)である。
軌跡データ取得部10は、射影処理を実行した後、軌跡取得処理を実行することで、カーゴの軌跡を取得する。軌跡取得処理は、射影処理によって取得された射影先情報に基づいて、カーゴの軌跡を表す近似曲線(以下「軌跡近似曲線」という。)を取得する処理である。具体的には、軌跡データ取得部10は、射影先情報が表す点の補間曲線を区分多項式によるフィッティングによって取得する。取得された補間曲線が軌跡近似曲線である。
区分多項式によるフィッティングは、例えば、Bスプラインフィッティングである。
区分多項式によるフィッティングは、例えば、Bスプラインフィッティングである。
軌跡データ取得部10は、軌跡取得処理を実行した後、軌跡座標値取得処理を実行することで軌跡座標における座標値を取得する。軌跡座標値取得処理は、具体的には、二次元空間面内のカーゴの位置を示す点から、軌跡取得処理によって取得した軌跡近似曲線に垂線を下し、垂線の足と軌跡近似曲線上の原点との間の弧長を、二次元空間面内のカーゴの位置を示す点ごとに算出する処理である。上述したように、二次元空間面内のカーゴの位置を示す点は、時刻tの情報を含む三次元時空間座標値が表す点、の二次元空間面内への射影である。そのため、軌跡座標値取得処理によって時刻tに対応付けられた弧長が取得される。なお、原点は、軌跡近似曲線の端の点である。
軌跡データ取得部10は、このような軌跡データ取得処理(すなわち、射影処理、軌跡取得処理及び軌跡座標値取得処理)を実行することでタイムコースデータを取得する。
軌跡データ取得部10は、軌跡データ取得処理の実行の前に、観察データに対してフィルタ処理を行ってもよい。フィルタ処理は、観察データに対して画像処理を行うことで、観察データのノイズを軽減する処理である。フィルタ処理において実行される画像処理は、観察データの雑音を軽減可能な処理であればどのような処理であってもよい。フィルタ処理において実行される処理は、例えば、観察データに対してSmoothフィルタの処理であってもよいし、Medianフィルタの処理であってもよいし、Lowpassフィルタの処理であってもよい。
第一部分軌跡データ取得部11は、軌跡データ取得部10が取得したタイムコースデータから、定速移動データを含む所望のタイムコースデータ(以下「第一部分タイムコースデータ」という。)を取得する。定速移動データは、タイムコースデータに含まれるデータであって、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間(以下「定速期間」という。)におけるカーゴの位置の時間変化を示すデータである。すなわち、定速移動データは、カーゴが概ね一定の速度で移動する期間のカーゴの位置の時間変化を示すデータである。定速移動データもまた、時刻tとカーゴの位置Xとの二つの値を有するデータの集合である。
図6は、実施形態におけるタイムコースデータ、定速移動データ及び定速期間の具体例を示す図である。
図6のグラフは、時刻t=0sからt=10sまでの時間におけるカーゴの位置Xを示すタイムコースデータである。図8において、横軸は時刻を表し、縦軸はカーゴの位置Xを表す。図6において縦軸のXは、位置Xが時刻tに依存することを明記するためにX(t)と表されている。図6において、時刻0から時刻ts1までの期間のデータは、観察対象のカーゴが概ね一定の速度で移動することを示すデータであり、定速移動データの具体例である。また、時刻0から時刻ts1までの期間は、定速期間の具体例である。図6には、定速移動データを示すグラフの一部分の拡大図も示されている。拡大図の直線は、定速移動データに対する回帰直線である。回帰直線は、Xの値が大きくなる方向に一定の速さでカーゴが移動することを示す。拡大図は、50ms以下の短時間ではカーゴの移動の速さは一定ではなく、50msで200nm以下の位置のゆらぎを有する速さで移動することを示す。
図6のグラフは、時刻t=0sからt=10sまでの時間におけるカーゴの位置Xを示すタイムコースデータである。図8において、横軸は時刻を表し、縦軸はカーゴの位置Xを表す。図6において縦軸のXは、位置Xが時刻tに依存することを明記するためにX(t)と表されている。図6において、時刻0から時刻ts1までの期間のデータは、観察対象のカーゴが概ね一定の速度で移動することを示すデータであり、定速移動データの具体例である。また、時刻0から時刻ts1までの期間は、定速期間の具体例である。図6には、定速移動データを示すグラフの一部分の拡大図も示されている。拡大図の直線は、定速移動データに対する回帰直線である。回帰直線は、Xの値が大きくなる方向に一定の速さでカーゴが移動することを示す。拡大図は、50ms以下の短時間ではカーゴの移動の速さは一定ではなく、50msで200nm以下の位置のゆらぎを有する速さで移動することを示す。
図5の説明に戻る。第一部分軌跡データ取得部11は、具体的には、予め機械学習によって学習した、所定の特徴量ベクトルと第一部分タイムコースデータとの関係性に基づいて、所望の第一部分タイムコースデータを取得する。第一部分軌跡データ取得部11が用いる機械学習のアルゴリズムは、どのような機械学習のアルゴリズムであってもよい。第一部分軌跡データ取得部11が用いる機械学習のアルゴリズムは、例えば、ランダムフォレストであってもよい。
所定の特徴量ベクトルは、第一部分軌跡データ取得部11が用いる機械学習のアルゴリズムに適用可能な特徴量ベクトルであればどのような特徴量ベクトルであってもよい。例えば、以下の3つの値をもつ特徴量ベクトルであってもよい。第一の値は、軌跡データ取得部10が取得したタイムコースデータのうち、所定の期間におけるタイムコースデータに対する線形近似曲線の傾きである。第二の値は、1つ目の値の算出に用いられたタイムコースデータを、二つの一次関数の和で表される関数によって近似した時の、一次関数の傾き同士の比である。より具体的には、第二の値は、近似に用いられた二つの一次関数の傾きをそれぞれa1及びa2とした場合における、a1/a2である。第三の値は、第一の値の算出に用いられた線形近似曲線と、第二の値の算出に用いられた一次関数の和で表される関数との差の時間積分の値である。特徴量ベクトルは、必ずしも、これら3つの値全部をもつ必要はない。特徴量ベクトルは、これら3つの値のうちの一部(すなわち、2つ又は1つ)だけをもってもよい。
図7は、実施形態における特徴量ベクトルを説明するための説明図である。
図7において、縦軸は、カーゴの位置X(t)である。図7において、横軸は、時刻tである。図7の線L101は、特徴量ベクトルの第二の値の算出に用いられる二つの一次関数のひとつである。図7の線L102は、特徴量ベクトルの第二の値の算出に用いられる二つの一次関数のもうひとつである。線L101は、Window1で示される期間の実験データ(以下「第一の実験データ」という。)によくフィッティングされた一次関数である。線L102は、図7においてWindow2で示される期間の実験データ(以下「第二の実験データ」という。)によくフィッティングされた一次関数である。図7の線L100は、特徴量ベクトルの第一の値の算出に用いられる線形近似曲線である。線L100は、第一の実験データと第二の実験データとによくフィッティングされた関数である。
第一部分軌跡データ取得部11は、このような近似曲線を決定した後、決定した近似曲線に基づいて特徴量ベクトルを取得する。
図7において、縦軸は、カーゴの位置X(t)である。図7において、横軸は、時刻tである。図7の線L101は、特徴量ベクトルの第二の値の算出に用いられる二つの一次関数のひとつである。図7の線L102は、特徴量ベクトルの第二の値の算出に用いられる二つの一次関数のもうひとつである。線L101は、Window1で示される期間の実験データ(以下「第一の実験データ」という。)によくフィッティングされた一次関数である。線L102は、図7においてWindow2で示される期間の実験データ(以下「第二の実験データ」という。)によくフィッティングされた一次関数である。図7の線L100は、特徴量ベクトルの第一の値の算出に用いられる線形近似曲線である。線L100は、第一の実験データと第二の実験データとによくフィッティングされた関数である。
第一部分軌跡データ取得部11は、このような近似曲線を決定した後、決定した近似曲線に基づいて特徴量ベクトルを取得する。
図8は、実施形態における第一部分軌跡データ取得部11が機械学習のアルゴリズムによって決定した第一部分タイムコースデータと、教師データとを示す図である。
図8において、期間S1、S2及びS3のタイムコースデータは、学習後の第一部分軌跡データ取得部11が機械学習のアルゴリズムによって決定した第一部分タイムコースデータである。図8において、期間K1、K2及びK3のタイムコースデータは、教師データの第一部分タイムコースデータである。
図8において、第一部分軌跡データ取得部11が機械学習のアルゴリズムによって決定した第一部分タイムコースデータと、教師データの第一部分タイムコースデータとは、75%以上のよい一致を示す。
図8において、期間S1、S2及びS3のタイムコースデータは、学習後の第一部分軌跡データ取得部11が機械学習のアルゴリズムによって決定した第一部分タイムコースデータである。図8において、期間K1、K2及びK3のタイムコースデータは、教師データの第一部分タイムコースデータである。
図8において、第一部分軌跡データ取得部11が機械学習のアルゴリズムによって決定した第一部分タイムコースデータと、教師データの第一部分タイムコースデータとは、75%以上のよい一致を示す。
このように第一部分軌跡データ取得部11は、予め機械学習によって学習した所定の特徴量ベクトルと第一部分タイムコースデータとの関係性に基づいて、所望の第一部分タイムコースデータを取得する。そのため、このような第一部分軌跡データ取得部11は、第一部分タイムコースデータを取得するユーザの負担を軽減することができる。
図5の説明に戻る。ゆらぎ値算出部12は、定速移動データに基づいてゆらぎ値χを算出する。具体的にはゆらぎ値算出部12は、変位量取得処理を実行した後にゆらぎ値算出処理を実行することで、ゆらぎ値を算出する。以下、変位量取得処理とゆらぎ値算出処理の具体的な処理内容を説明する。まず、変位量取得処理を説明する。
変位量取得処理は、ひとつの定速移動データに基づいて定速期間中の単位時間Δtにおけるカーゴの位置の変位量ΔXを算出する処理である。具体的には、変位量取得処理では、まず、定速移動データにおける時間原点をt0とし、時間原点t0におけるカーゴの位置をX0とし、時刻t0+n×Δt(nは整数)におけるカーゴの位置をXnとした場合の、カーゴの位置の変位量ΔXn=Xn−X(n−1)がさまざまなnに対して取得される。
図9は、実施形態における変位量取得処理の具体的な手順を説明する説明図である。
図9のグラフは、図6におけるタイムコースデータの一部分の拡大図におけるグラフである。図9において、ゆらぎ値算出部12は、まず、変位量取得処理を実行することで、所定の単位時間Δtごとに時刻t0から時刻tmまでのカーゴの位置(すなわち、X0、X1、X2、・・・Xm)を取得する。次に、ゆらぎ値算出部12は、変位量取得処理を実行することで、カーゴの位置の変位量を算出する。すなわち、ΔX1=X1−X0、ΔX2=X2−X1、ΔX3=X3−X2、・・・ΔXm=Xm−Xm−1を算出する。このようにして、ゆらぎ値算出部12は、所定の単位時間Δtごとに時刻t0から時刻tmまでのカーゴの変位量を取得する。
図9のグラフは、図6におけるタイムコースデータの一部分の拡大図におけるグラフである。図9において、ゆらぎ値算出部12は、まず、変位量取得処理を実行することで、所定の単位時間Δtごとに時刻t0から時刻tmまでのカーゴの位置(すなわち、X0、X1、X2、・・・Xm)を取得する。次に、ゆらぎ値算出部12は、変位量取得処理を実行することで、カーゴの位置の変位量を算出する。すなわち、ΔX1=X1−X0、ΔX2=X2−X1、ΔX3=X3−X2、・・・ΔXm=Xm−Xm−1を算出する。このようにして、ゆらぎ値算出部12は、所定の単位時間Δtごとに時刻t0から時刻tmまでのカーゴの変位量を取得する。
図5の説明に戻る。ゆらぎ値算出部12が実行するゆらぎ値算出処理を説明する。ゆらぎ値算出部12は、ゆらぎ値算出処理によって、数学的に式(1)と等価な式(5)に基づいてゆらぎ値χを算出する。式(5)は、式(2)を用いて式(1)を式変形した式である。ゆらぎ値χは上述したように、式(1)の左辺が表す物理量である。
一般に、P(ΔX)は、カーゴの位置の変位量の分布に対するフィッティングと、式(2)とのいずれか一方によって算出される。そのため、ゆらぎ値算出部12は、フィッティングの処理によって算出されたP(ΔX)と式(1)とを用いてゆらぎ値χを算出してもよいし、式(5)を用いてゆらぎ値χを算出してもよい。しかしながら、式(5)を用いる場合には、フィッティングの処理によって算出されたP(ΔX)と式(1)とを用いる場合と異なり、フィッティングの処理を必要としない。そのため、式(5)を用いる場合には、ゆらぎ値算出部12は、フィッティングの処理によって算出されたP(ΔX)と式(1)とを用いる場合よりも少ない計算量でゆらぎ値χを算出可能である。また、一般に、フィッティングの処理には、フィッティング結果の良し悪しを判定する処理が必要である。式(5)を用いる場合には、フィッティングの処理を必要としないため、フィッティング結果の良し悪しを判定する処理を必要としない。そのため、式(5)を用いる場合には、ゆらぎ値算出部12は、フィッティングの処理によって算出されたP(ΔX)と式(1)とを用いる場合よりも客観性の高いゆらぎ値χを算出可能である。
繰り返し制御部13は、複数のゆらぎ値χを算出するようにゆらぎ値算出部12を制御する。具体的には、繰り返し制御部13は、まず、ひとつの定速移動データ対して、最短単位時間から最長単位時間までの所定の複数の単位時間Δtにおけるゆらぎ値χを算出するようにゆらぎ値算出部12を制御する。以下、この制御を単位時間変更繰り返し制御という。最長単位時間は、ユーザによって予め定められた所定の時間であって、単位時間Δtがとり得る時間のうち、最短の時間である。最長単位時間は、ユーザによって予め定められた所定の時間であって、単位時間Δtがとり得る時間のうち、最長の時間である。最短単位時間は例えば、10msであってもよい。最長単位時間は例えば、100msであってもよい。また、単位時間は例えば、50msであってもよい。さらに、繰り返し制御部13は、単位時間変更繰り返し制御を、第一部分軌跡データ取得部11が取得した第一部分タイムコースデータのそれぞれに対して行う。
なお、単位時間変更繰り返し制御は、例えば、最短単位時間から最長単位時間まで、時間の短い方の単位時間Δtから順番に各Δtにおける、ゆらぎ値χを算出するようにゆらぎ値算出部12を制御する制御であってもよい。
なお、単位時間変更繰り返し制御は、例えば、最短単位時間から最長単位時間まで、時間の短い方の単位時間Δtから順番に各Δtにおける、ゆらぎ値χを算出するようにゆらぎ値算出部12を制御する制御であってもよい。
図10によって、ゆらぎ値算出部12及び繰り返し制御部13によって算出されたゆらぎ値χの具体例を示す。
図10は、実施形態におけるゆらぎ値χの具体的な算出結果を示す図である。より具体的には、図10は、ひとつのタイムコースデータに対する複数の単位時間Δtごとのχの値を示すグラフである。図10は、単位時間Δtが大きくなるにつれてゆらぎ値χが一定値に収束することを示す。Δtが大きくなるにつれてゆらぎ値χが一定の値に収束する結果は、系が緩和することが反映された結果である。系が緩和するとは、観察対象のカーゴを含む系が平衡状態に緩和することを意味する。緩和は、系に含まれる物質のミクロな運動や、その系内のモータータンパク質のATP加水分解等によって引き起こされる。
図5の説明に戻る。クラスタリング部14は、ゆらぎ値算出部12が算出した複数のゆらぎ値χを対象としてクラスタリングを実行し、測定に関するばらつきを減らしたχの値を出力する。なお、測定に関するばらつきとは、例えば、測定時の観察対象を含む系の温度や湿度等の変化や測定装置の振動等によって引き起こされる取得データのばらつきである。具体的には、クラスタリング部14はまず、繰り返し制御部13の制御によってゆらぎ値算出部12が算出した複数のゆらぎ値χに対してクラスタリングを実行しゆらぎ値χを分類する。クラスタリングは、クラスタ数を自動推定するための基準値を有するクラスタリング方法であればどのような方法で行われてもよい。例えば、基準値であるAIC(Akaike's Information Criterion)の算出を伴ったk-means methodであってもよい。クラスタ数を自動推定するための基準値はAICに限らず、例えばBIC(Bayesian Information Criterion)や、MDL(Minimum Description Length)等の基準値であってもよい。クラスタリングする方法はk-means methodに限らず、例えば、k-means++ methodであってもよい。
次にクラスタリング部14は、クラスタリングした結果の代表値を、測定に関するばらつきを減らしたχとして出力する。なお、代表値はクラスタリングの方法ごとにクラスタを代表する値であればどのような値であってもよく、例えば、平均値であってもよいし、中央値であってもよい。
次にクラスタリング部14は、クラスタリングした結果の代表値を、測定に関するばらつきを減らしたχとして出力する。なお、代表値はクラスタリングの方法ごとにクラスタを代表する値であればどのような値であってもよく、例えば、平均値であってもよいし、中央値であってもよい。
図11は、実施形態におけるクラスタリング部14によってクラスタリングされたゆらぎ値χを示す図である。図11は、代表値が離散化された3つのクラスタ(すなわち、第1〜3のクラスタ)を表す。第1のクラスタに属するゆらぎ値χの大きさは、Δt=100msにおいて、0以上0.2以下の値である。第2のクラスタに属するゆらぎ値χの大きさは、Δt=100msにおいて、0.1以上0.2以下の値である。第3のクラスタに属するゆらぎ値χの大きさは、Δt=100msにおいて、0.3以上0.6以下の値である。なお、図11における代表値は平均値である。第1〜3のクラスタの代表値の値は、小さな順に、第1のクラスタの代表値、第2のクラスタの代表値、第3のクラスタの代表値である。また、第2のクラスタの代表値及び第3のクラスタの代表値は、それぞれ第1のクラスタの代表値の整数倍である。
ゆらぎ係数記憶部15は、ゆらぎ係数算出装置2が算出したゆらぎ係数Aを記憶する。ゆらぎ係数記憶部15は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
力算出部16は、ゆらぎ値χとゆらぎ係数Aとに基づいて、観察対象のカーゴにかかる力Fcを算出する。具体的には、式(1)と式(1)の右辺がχであることを用いて、Fcを算出する。
図12は、実施形態におけるゆらぎ係数算出装置2の機能構成の具体例を示す図である。ゆらぎ係数算出装置2は、第二部分軌跡データ取得部21、粘性係数算出部22及びゆらぎ係数算出部23を備える。
第二部分軌跡データ取得部21は、軌跡データ取得部10が取得したタイムコースデータを取得して、定速移動データ及び静止データを含むタイムコースデータ(以下「第二部分タイムコースデータ」という。)を取得する。静止データは、タイムコースに含まれるデータであって、カーゴの位置が時間によらず略同一の位置である期間(以下「静止期間」という。)のカーゴの位置の時間変化を示すデータである。すなわち、静止データは、カーゴが時刻によらず同じ位置にとどまっている期間のカーゴの位置の時間変化を示すデータである。静止データもまたタイムコースデータと同様に、時刻tとカーゴの位置Xとの二つの値を有するデータの集合である。なお、定速移動データを含むタイムコースデータのうち、定速移動データだけではなく、さらに静止データをも含むタイムコースデータ(すなわち第二部分タイムコースデータ)の割合は、1割程度である。
第二部分軌跡データ取得部21は、具体的には、予め機械学習によって学習した、所定の特徴量ベクトルと第二部分タイムコースデータとの関係性に基づいて、所望の第二部分タイムコースデータを取得する。第二部分軌跡データ取得部21が用いる機械学習のアルゴリズムは、どのような機械学習のアルゴリズムであってもよい。第二部分軌跡データ取得部21が用いる機械学習のアルゴリズムは、例えば、ランダムフォレストであってもよい。
所定の特徴量ベクトルは、第二部分軌跡データ取得部21が用いる機械学習のアルゴリズムに適用可能な特徴量ベクトルであればどのような特徴量ベクトルであってもよい。所定の特徴量ベクトルは、例えば、第一部分軌跡データ取得部11において用いられた特徴量ベクトルであってもよい。
第二部分軌跡データ取得部21は、具体的には、予め機械学習によって学習した、所定の特徴量ベクトルと第二部分タイムコースデータとの関係性に基づいて、所望の第二部分タイムコースデータを取得する。第二部分軌跡データ取得部21が用いる機械学習のアルゴリズムは、どのような機械学習のアルゴリズムであってもよい。第二部分軌跡データ取得部21が用いる機械学習のアルゴリズムは、例えば、ランダムフォレストであってもよい。
所定の特徴量ベクトルは、第二部分軌跡データ取得部21が用いる機械学習のアルゴリズムに適用可能な特徴量ベクトルであればどのような特徴量ベクトルであってもよい。所定の特徴量ベクトルは、例えば、第一部分軌跡データ取得部11において用いられた特徴量ベクトルであってもよい。
図13は、実施形態における静止データ及び定速移動データを含むタイムコースデータの具体例を示す図である。
図13のグラフは、図6のグラフと同様のグラフであり、時刻t=0sからt=10sまでの期間におけるカーゴの位置Xを示すタイムコースデータを示すグラフである。図13において、横軸は時刻を表し、縦軸はカーゴの位置Xを表す。図13においても、図6と同様に縦軸のXは、位置Xが時刻tに依存することを明記するためにX(t)と表されている。図13において、時刻ts1から時刻ts2までの期間のデータは、観察対象のカーゴが時刻によらず同じ位置にとどまっていることを示すデータである。すなわち、図13における時刻ts1から時刻ts2までの期間のデータは、静止データの具体例である。また、時刻ts1から時刻ts2までの期間は、静止期間の具体例である。なお、時刻0から時刻ts1までの期間のデータは、図6と同様の定速移動データの具体例である。
図13のグラフは、図6のグラフと同様のグラフであり、時刻t=0sからt=10sまでの期間におけるカーゴの位置Xを示すタイムコースデータを示すグラフである。図13において、横軸は時刻を表し、縦軸はカーゴの位置Xを表す。図13においても、図6と同様に縦軸のXは、位置Xが時刻tに依存することを明記するためにX(t)と表されている。図13において、時刻ts1から時刻ts2までの期間のデータは、観察対象のカーゴが時刻によらず同じ位置にとどまっていることを示すデータである。すなわち、図13における時刻ts1から時刻ts2までの期間のデータは、静止データの具体例である。また、時刻ts1から時刻ts2までの期間は、静止期間の具体例である。なお、時刻0から時刻ts1までの期間のデータは、図6と同様の定速移動データの具体例である。
図12の説明に戻る。粘性係数算出部22は、静止データに基づいて、粘性係数を算出する。具体的には、粘性係数算出部22は、確率分布算出処理、分布係数算出処理、パワースペクトル算出処理、パワー係数算出処理及び粘性係数算出処理を順次実行することで、粘性係数を算出する。
確率分布算出処理は、ひとつの静止データに基づいて静止期間中の時刻tにおけるカーゴの位置Xの確率分布(以下「位置確率分布」という。)を算出する処理である。位置確率分布は、ボルツマン分布にしたがう分布である。
分布係数算出処理は、確率分布算出処理によって算出された位置確率分布に対して、フィッティングパラメータとしてKを含む関数であるボルツマン関数PB(X)によるフィッティングを行い、フィッティングパラメータKの値を算出する。ボルツマン関数PB(X)の具体的な関数形は、式(6)で表される関数形である。以下、フィッティングパラメータKを分布係数という。なお、フィッティングは、どのようなフィッティング方法で行われてもよく、例えば、最小二乗法によって行われてもよい。
PB(X)は、カーゴの位置がXである確率を表す。Z及びTはそれぞれ、分配関数及び環境の温度を表す。環境の温度とは、観察対象のカーゴを取り囲む媒質の温度である。
パワースペクトル算出処理は、位置確率分布を周波数νによってフーリエ変換し、パワースペクトルを算出する処理である。
パワー係数算出処理は、フィッティングパラメータとしてAp及びBpを含むローレンチアン型の関数g(ν)によってパワースペクトルをフィッティングし、フィッティングパラメータBpを算出処理である。関数g(ν)の具体的な関数形は式(7)で表される関数形である。以下、フィッティングパラメータBpをパワー係数という。フィッティングは、どのようなフィッティング方法で行われてもよく、例えば、最小二乗法によって行われてもよい。
粘性係数算出処理は、分布係数Kとパワー係数Bpとを用いて、以下の式(8)によって表される粘性係数Γを算出する処理である。
ゆらぎ係数算出部23は、粘性係数Γとゆらぎ値χとに基づいて、ゆらぎ係数Aを算出する。粘性係数算出部は、速さ算出処理及びゆらぎ係数算出処理を順次実行することで、ゆらぎ係数Aを算出する。
速さ算出処理は、第二部分タイムコースデータの定速移動データを用いて、定速移動期間におけるカーゴの時間平均の速さVを算出する処理である。具体的には、速さ算出処理は、横軸を時刻とし縦軸をカーゴの位置とするグラフにおける定速移動データの回帰直線の傾きを算出する処理である。
ゆらぎ係数算出処理は、速さV、粘性係数Γ及びゆらぎ値χによって、ゆらぎ係数Aを算出する処理である。ゆらぎ係数算出処理において、ゆらぎ係数算出部23はまず、式(4)によって算出される力Fcとゆらぎ値算出部12によって算出されたゆらぎ値χとの二つの値を有するデータ(以下「力ゆらぎ値対応データ」という。)を、複数の第二部分タイムコースデータについて取得する。次に、ゆらぎ係数算出処理においてゆらぎ係数算出部23は、取得した複数の力ゆらぎ値対応データを、フィッティングパラメータA1を含む以下の式(9)に示す一次関数によってフィッティングする。
A1はフィッティングパラメータであり、フィッティングによって得られたA1の値はゆらぎ係数Aである。フィッティングによって得られたA1の値がゆらぎ係数Aであることは式(5)及び式(8)によって明らかである。
図14は、実施形態における力測定装置1がモータータンパク質にかかる力を算出する具体的な処理の流れを示すフローチャートである。
撮像装置9は、観察対象のカーゴの観察データを生成する(ステップS101)。軌跡データ取得部10は、撮像装置9が取得した観察データに基づいてタイムコースデータを取得する(ステップS102)。第一部分軌跡データ取得部11は、軌跡データ取得部10が取得したタイムコースデータに基づいて第一部分タイムコースデータを取得する(ステップS103)。繰り返し制御部13は、第一部分タイムコースデータのうちのひとつに対して(以下「算出対象データ」という。)、所定の複数の単位時間Δtにおける単位時間繰り返し制御を実行することで、複数の単位時間Δtにおけるゆらぎ値χを算出する(ステップS104)。繰り返し制御部13は、第一部分軌跡データ取得部11が取得した第一部分タイムコースデータのうち、変位量取得処理が行われていない第一部分タイムコースデータがあるか否かを判定する(ステップS105)。変位量取得処理が行われていない第一部分タイムコースデータがない場合(ステップS105:No)、クラスタリング部14は、ゆらぎ値χに対してクラスタリングを実行し、測定に関するばらつきを減らしたゆらぎ値χを算出する(ステップS106)。
撮像装置9は、観察対象のカーゴの観察データを生成する(ステップS101)。軌跡データ取得部10は、撮像装置9が取得した観察データに基づいてタイムコースデータを取得する(ステップS102)。第一部分軌跡データ取得部11は、軌跡データ取得部10が取得したタイムコースデータに基づいて第一部分タイムコースデータを取得する(ステップS103)。繰り返し制御部13は、第一部分タイムコースデータのうちのひとつに対して(以下「算出対象データ」という。)、所定の複数の単位時間Δtにおける単位時間繰り返し制御を実行することで、複数の単位時間Δtにおけるゆらぎ値χを算出する(ステップS104)。繰り返し制御部13は、第一部分軌跡データ取得部11が取得した第一部分タイムコースデータのうち、変位量取得処理が行われていない第一部分タイムコースデータがあるか否かを判定する(ステップS105)。変位量取得処理が行われていない第一部分タイムコースデータがない場合(ステップS105:No)、クラスタリング部14は、ゆらぎ値χに対してクラスタリングを実行し、測定に関するばらつきを減らしたゆらぎ値χを算出する(ステップS106)。
クラスタリング部14が測定に関するばらつきを減らしたゆらぎ値χを算出した後、第二部分軌跡データ取得部21は、第二部分タイムコースデータを取得する(ステップS107)。第二部分軌跡データ取得部21が第二部分タイムコースデータを取得した後、粘性係数算出部22は、確率分布算出処理を実行することで、第二部分軌跡データ取得部21が取得した静止データに基づいて位置確率分布を算出する(ステップS108)。粘性係数算出部22は、位置確率分布を算出した後、位置確率分布に対して分布係数算出処理を実行し、式(6)で表されるボルツマン関数PB(X)における分布係数Kの値を算出する(ステップS109)。分布係数Kを算出した、粘性係数算出部22は、位置確率分布に対してパワースペクトル算出処理を実行し、パワースペクトルを算出する(ステップS110)。パワースペクトルを算出した粘性係数算出部22は、粘性係数算出処理を実行し粘性係数Γを算出する(ステップS111)。
粘性係数算出部22が粘性係数Γを算出した後、ゆらぎ係数算出部23は、ゆらぎ係数算出処理を実行し、ゆらぎ係数Aを算出する(ステップS112)。ゆらぎ係数Aが算出された後、力算出部16は、ステップS106において算出されたχとステップS112において算出されたゆらぎ係数Aとに基づいて、カーゴにかかる力Fcを算出する(ステップS113)。
一方、ステップS105において、変位量取得処理が行われていない第一部分タイムコースデータがある場合(ステップS105:Yes)、繰り返し制御部13は、その第一部分タイムコースデータを新たな算出対象データとする(ステップS114)。繰り返し制御部13は、新たな算出対象データに対して、単位時間繰り返し制御を実行する(ステップS104)。
なお、ステップS107〜S111は必ずしも、ステップS106の後に実行される必要はなく、ステップS103〜S106と並列して実行されてもよいし、ステップS103〜S106よりも先に実行されてもよい。
図15は、実施形態における単位時間繰り返し制御(ステップS104)の具体的な処理の流れを示すフローチャートである。ゆらぎ値算出部12は、第一部分軌跡データ取得部11が取得した第一部分タイムコースデータを取得し、変位量取得処理を実行する(ステップS201)。ゆらぎ値算出部12は、変位量取得処理を実行することで、変位量を算出する。変位量を算出したゆらぎ値算出部12は、ゆらぎ値算出処理を実行することによって、ゆらぎ値χを算出する(ステップS202)。
このように構成された実施形態の力測定装置1によれば、カーゴの動きを示す二次元画像のデータ群に基づいて観察対象のカーゴにかかる力Fcに比例する値χを算出するゆらぎ値算出部12を備えるため、ユーザは生きている細胞内のカーゴにかかる力を非侵襲的な方法で測定することができる。
(神経細胞の培養方法(例))
3週齢ICRマウス(オス)から上頚神経節を採取し、0.5%トリプシンと0.5%コラゲナーゼなどの酵素で処理した。個々に分かれた神経細胞を10%非働化牛血清入りDMEM/F12培地でリンスした後、マトリゲルコートされたガラスボトムディッシュに撒いた。この神経細胞を37℃、CO2 5%のインキュベータ内で10%非働化牛血清と200ng/ml 2.5S神経成長因子入りDMEM/F12培地にて2〜4日培養し、力測定装置1を用いた実験に用いた。
3週齢ICRマウス(オス)から上頚神経節を採取し、0.5%トリプシンと0.5%コラゲナーゼなどの酵素で処理した。個々に分かれた神経細胞を10%非働化牛血清入りDMEM/F12培地でリンスした後、マトリゲルコートされたガラスボトムディッシュに撒いた。この神経細胞を37℃、CO2 5%のインキュベータ内で10%非働化牛血清と200ng/ml 2.5S神経成長因子入りDMEM/F12培地にて2〜4日培養し、力測定装置1を用いた実験に用いた。
(細胞小器官(例:エンドソーム)の染色方法)
培養中の神経細胞の培地に最終濃度100nMとなるように蛍光色素DiIを添加し、10分間染色した後、蛍光観察に用いた。
培養中の神経細胞の培地に最終濃度100nMとなるように蛍光色素DiIを添加し、10分間染色した後、蛍光観察に用いた。
(蛍光観察の方法(例))
染色後のディッシュをヒーティングプレート(CU-201, Live Cell Instrument)上に設置し、37℃で保温しながら、メラニン細胞内の染色されたメラニン色素小胞を暗視野顕微鏡(IX71, Olympus)で観察した。100倍の対物レンズ(UPlanFL 100x/1.3, Plympus)で98 frames per secondでEMCCDカメラ(LucaS (Andor))を用いて動画を撮影した。動画からImageJ(Rasband, 1997)を用いて、メラニン色素小胞の重心位置のタイムコースデータを計算した。
染色後のディッシュをヒーティングプレート(CU-201, Live Cell Instrument)上に設置し、37℃で保温しながら、メラニン細胞内の染色されたメラニン色素小胞を暗視野顕微鏡(IX71, Olympus)で観察した。100倍の対物レンズ(UPlanFL 100x/1.3, Plympus)で98 frames per secondでEMCCDカメラ(LucaS (Andor))を用いて動画を撮影した。動画からImageJ(Rasband, 1997)を用いて、メラニン色素小胞の重心位置のタイムコースデータを計算した。
図16は、モータータンパク質の機能を阻害する試薬であるCiliobrevinのメラニン細胞への添加によってゆらぎ値χの度数分布が変化することが、実施形態の力測定装置1を用いたχの測定によって明らかになったことを示す具体的な結果を示す図である。
図16(A)はCiliobrevinが細胞に添加されていない場合に力測定装置1によって測定されたゆらぎ値χの度数分布を示す図である。図16(A)において、χは、データの分布が4つのクラスタ(クラスタ114〜117)に分類される。
図16(B)は細胞培養培地中のCiliobrevin濃度が20μMである場合に力測定装置1によって測定されたゆらぎ値χの度数分布を示す図である。図16(B)において、χは、データの分布が2つのクラスタ(クラスタ118及び119)に分類される。
図16(C)は細胞培養培地中のCiliobrevin濃度が40μMである場合に力測定装置1によって測定されたゆらぎ値χの度数分布を示す図である。図16(C)において、χは、データの分布が一つのクラスタ120に分類される。
図16(B)は細胞培養培地中のCiliobrevin濃度が20μMである場合に力測定装置1によって測定されたゆらぎ値χの度数分布を示す図である。図16(B)において、χは、データの分布が2つのクラスタ(クラスタ118及び119)に分類される。
図16(C)は細胞培養培地中のCiliobrevin濃度が40μMである場合に力測定装置1によって測定されたゆらぎ値χの度数分布を示す図である。図16(C)において、χは、データの分布が一つのクラスタ120に分類される。
図16(A)〜(C)の比較によって、Ciliobrevinの添加量が増加するとクラスタの数が減少することが示される。
図17は、エンドソームが細胞中心と細胞膜との間をキネシン又はダイニンによって輸送されることを説明する説明図である。
図17(A)は、エンドソーム201が自身に結合するキネシン202によって、細胞中心から細胞膜まで微小管にそって輸送されることを示す。
図17(B)は、エンドソーム201が自身に結合するダイニン203によって、細胞膜から細胞中心まで微小管にそって輸送されることを示す。
図17(A)は、エンドソーム201が自身に結合するキネシン202によって、細胞中心から細胞膜まで微小管にそって輸送されることを示す。
図17(B)は、エンドソーム201が自身に結合するダイニン203によって、細胞膜から細胞中心まで微小管にそって輸送されることを示す。
図18は、エンドソームがキネシンによって輸送場合とダイニンによって輸送される場合とのゆらぎ値χの度数分布の違いが実施形態の力測定装置1を用いた測定で明らかになったことを示す図である。
図18(A)は、図17(A)に示すキネシン202によってエンドソーム201が輸送された場合のχの分布を示す図である。図18(A)において、ゆらぎ値χは、データの分布が4つのクラスタ(クラスタ121〜124)に分類される。クラスタ化はクラスタリング解析の結果である。
図18(B)は、図17(B)に示すダイニン203によってエンドソーム201が輸送された場合のχの分布を示す図である。図18(B)において、ゆらぎ値χは、データの分布が3つのクラスタ(クラスタ125〜127)に分類される。
図18(A)と(B)との比較によって、エンドソーム201の輸送は、細胞中心から細胞膜に向かう場合と、細胞膜から細胞中心に向かう場合とでゆらぎ値χの度数分布が異なることが示される。
図18(B)は、図17(B)に示すダイニン203によってエンドソーム201が輸送された場合のχの分布を示す図である。図18(B)において、ゆらぎ値χは、データの分布が3つのクラスタ(クラスタ125〜127)に分類される。
図18(A)と(B)との比較によって、エンドソーム201の輸送は、細胞中心から細胞膜に向かう場合と、細胞膜から細胞中心に向かう場合とでゆらぎ値χの度数分布が異なることが示される。
(変形例)
力測定装置1及びゆらぎ係数算出装置2の機能部は必ずしも異なる筐体によって実装されなくてもよく、ひとつの筐体に実装されてもよい。
力測定装置1及びゆらぎ係数算出装置2の機能部は必ずしも異なる筐体によって実装されなくてもよく、ひとつの筐体に実装されてもよい。
なお、第二部分軌跡データ取得部21は、必ずしも、軌跡データ取得部10が取得したタイムコースデータに基づいて、第二部分タイムコースデータを取得する必要はなく、第一部分軌跡データ取得部11が取得した第一部分タイムコースデータを取得し、取得した第一部分タイムコースデータのうち定速移動データ及び静止データを含むタイムコースデータを第二部分タイムコースデータとして取得してもよい。
なお、画像のデータ群と、観察データとは必ずしも二次元のデータでなくてもよく、三次元又は一次元のデータであってもよい。
上述した実施形態における力測定装置1及びゆらぎ係数算出装置2をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
上述した各実施形態では、本発明を力測定装置として表現したが、本発明は、力測定方法として表現することもできる。この場合、実施形態における力測定装置に対応した本発明による力測定方法は、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得ステップと、第一のデータに基づいて、カーゴを輸送するモータータンパク質がカーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、カーゴの位置の変化量をΔXとし、カーゴの位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、ΔXと<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出するゆらぎ値算出ステップと、算出した前記ゆらぎ値に基づいて、前記力を算出する力算出ステップと、を有する力測定方法として表現することができる。
上記の実施形態における力測定装置に対応した力測定方法において、第一取得ステップは、実施形態における第一部分軌跡データ取得部11の動作または処理に相当し、ゆらぎ値算出ステップは、実施形態におけるゆらぎ値算出部12及び繰り返し制御部13の動作または処理に相当する。また、力算出ステップは、実施形態における力算出部16の動作または処理に相当する。
なお、実施形態における第二部分軌跡データ取得部21の動作または処理は、第二取得ステップの一例であり、実施形態におけるゆらぎ係数算出部23の動作または処理はゆらぎ係数算出ステップの一例である。
なお、軌跡データ取得部10及び第一部分軌跡データ取得部11は、第一取得部の一例である。なお、第二部分軌跡データ取得部21は、第二取得部の一例である。なお、定速移動データは第一のデータの一例である。なお、静止データは第二のデータの一例である。
なお、予め機械学習によって学習した所定の特徴量ベクトルと第一部分タイムコースデータとの関係性と、予め機械学習によって学習した、所定の特徴量ベクトルと第二部分タイムコースデータとの関係性とは、学習結果の一例である。Window1で示される期間とWindow2で示される期間との合計の期間は第一の期間の一例である。
なお、軌跡データ取得部10及び第一部分軌跡データ取得部11は、第一取得部の一例である。なお、第二部分軌跡データ取得部21は、第二取得部の一例である。なお、定速移動データは第一のデータの一例である。なお、静止データは第二のデータの一例である。
なお、予め機械学習によって学習した所定の特徴量ベクトルと第一部分タイムコースデータとの関係性と、予め機械学習によって学習した、所定の特徴量ベクトルと第二部分タイムコースデータとの関係性とは、学習結果の一例である。Window1で示される期間とWindow2で示される期間との合計の期間は第一の期間の一例である。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
1…力測定装置、 2…ゆらぎ係数算出装置、 10…軌跡データ取得部、11…第一部分軌跡データ取得部、 12…ゆらぎ値算出部、 13…繰り返し制御部、 14…クラスタリング部、 15…ゆらぎ係数記憶部、 16…力算出部、 21…第二部分軌跡データ取得部、 22…粘性係数算出部、 23…ゆらぎ係数算出部、 100…力測定システム
Claims (18)
- 非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得ステップと、
前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出する、ゆらぎ値算出ステップと、
算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出ステップと、
を有する力測定方法。 - 前記第一取得ステップは、予め学習した、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性に基づいて、機械学習のアルゴリズムによって、前記第一のデータを取得する、
請求項1に記載の力測定方法。 - 非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得ステップと、
前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出するゆらぎ値算出ステップと、
算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出ステップと、
を有し、
前記第一取得ステップでは、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得する
力測定方法。 - 前記所定の特徴量は、前記タイムコースデータのうちの第一の期間におけるタイムコースデータに対する線形近似曲線の傾きと、前記第一の期間におけるタイムコースデータを近似する関数であって、二つの一次関数の和で表される関数の二つの傾きの比と、前記線形近似曲線と前記関数との差の時間積分の値との一部又は全部である、
請求項2又は3のいずれか一項に記載の力測定方法。 - 前記タイムコースデータが、前記軌跡の弧長を座標値とする座標系の座標値によって表される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の力測定方法。 - 前記力算出ステップは、前記ゆらぎ値に対してクラスタリングを行うことで前記力を算出する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の力測定方法。 - 非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータのうち、前記第一のデータと、前記カーゴの位置が時間によらず略同一の位置である期間の前記カーゴの位置の時間変化を示す第二のデータとを含むタイムコースデータを取得する第二取得ステップと、
前記力と前記ゆらぎ値との換算係数であるゆらぎ係数を前記第一及び第二のデータに基づいて算出するゆらぎ係数算出ステップと、
を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の力測定方法。 - 前記ゆらぎ係数算出ステップは、前記第二のデータに基づいて、前記カーゴを囲む媒質の粘性係数を算出する、
請求項7に記載の力測定方法。 - 前記ゆらぎ係数算出ステップは、前記第二取得ステップにおいて取得された前記第一のデータに基づいて、前記カーゴが移動する速さを算出する、
請求項8に記載の力測定方法。 - 前記ゆらぎ係数算出ステップは、前記粘性係数と前記速さとに基づいて前記ゆらぎ係数を算出する、
請求項9に記載の力測定方法。 - 非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得部と、
前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出する、ゆらぎ値算出部と、
算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出部と、
を備える力測定装置。 - 非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得部と、
前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出するゆらぎ値算出部と、
算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出部と、
を備え、
前記第一取得部は、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得する、
力測定装置。 - 非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得部と、
前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出する、ゆらぎ値算出部と、
算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出部と、
を備える力測定システム。 - 非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得する第一取得部と、
前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出するゆらぎ値算出部と、
算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出する力算出部と、
を備え、
前記第一取得部は、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得する、
力測定システム。 - コンピュータに、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得させ、
前記コンピュータに、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出させ、
前記コンピュータに、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出するための力測定プログラム。 - コンピュータに、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得させ、
前記コンピュータに、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出させ、
前記コンピュータに、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出させ、
前記コンピュータに、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得させる、
力測定プログラム。 - コンピュータに、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得させ、
前記コンピュータに、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを、前記位置の変化量をΔXとし、前記位置の変化量ΔXの平均値を<ΔX>とし、前記ΔXと前記<ΔX>との差の平均値を<ΔX−<ΔX>>とし、nのm乗をn^mとした場合に、(<ΔX>/<ΔX−<ΔX>>^2)の式によって算出させ、
前記コンピュータに、算出した前記ゆらぎ値に基づいて、前記力を算出するためのプログラムを記憶する、
記録媒体。 - コンピュータに、非侵襲的な手段によって取得したカーゴの移動の軌跡を示すタイムコースデータに含まれるデータのうち、カーゴの単位時間の変位が略一定である期間におけるカーゴの位置の時間変化を示す第一のデータを取得させ、
前記コンピュータに、前記第一のデータに基づいて、前記カーゴを輸送するモータータンパク質が前記カーゴにくわえる力に比例するゆらぎ値χを算出させ、
前記コンピュータに、算出した前記ゆらぎ値χに基づいて、前記力を算出させ、
前記コンピュータに、前記タイムコースデータに関する所定の特徴量と前記第一のデータとの関係性について、機械学習を行うことによって得られる学習結果に基づいて、前記第一のデータを取得させる、
記録媒体。
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JP2018057272A Pending JP2019165694A (ja) | 2018-03-23 | 2018-03-23 | 力測定方法、力測定装置、力測定システム、力測定プログラム及び記録媒体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019165694A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11448563B2 (en) | 2017-10-31 | 2022-09-20 | Tohoku University | Force measurement method, force measurement device, force measurement system, force measurement program, and recording medium |
US11968985B2 (en) | 2020-12-28 | 2024-04-30 | Tosei Kogyo Co., Ltd. | Wrap off-cuts returning mechanism in gyoza forming machine |
-
2018
- 2018-03-23 JP JP2018057272A patent/JP2019165694A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11448563B2 (en) | 2017-10-31 | 2022-09-20 | Tohoku University | Force measurement method, force measurement device, force measurement system, force measurement program, and recording medium |
US11968985B2 (en) | 2020-12-28 | 2024-04-30 | Tosei Kogyo Co., Ltd. | Wrap off-cuts returning mechanism in gyoza forming machine |
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