JP2019162585A - 重合性単量体の微小乳化物の製造方法及び微小樹脂乳化物の製造方法 - Google Patents

重合性単量体の微小乳化物の製造方法及び微小樹脂乳化物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019162585A
JP2019162585A JP2018051490A JP2018051490A JP2019162585A JP 2019162585 A JP2019162585 A JP 2019162585A JP 2018051490 A JP2018051490 A JP 2018051490A JP 2018051490 A JP2018051490 A JP 2018051490A JP 2019162585 A JP2019162585 A JP 2019162585A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
monomer
emulsion
fine
microemulsion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018051490A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6519032B1 (ja
Inventor
修一 金台
Shuichi Kanadai
修一 金台
雅晴 篠田
Masaharu Shinoda
雅晴 篠田
裕 徳田
Yutaka Tokuda
裕 徳田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Saiden Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Saiden Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Saiden Chemical Industry Co Ltd filed Critical Saiden Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP2018051490A priority Critical patent/JP6519032B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6519032B1 publication Critical patent/JP6519032B1/ja
Publication of JP2019162585A publication Critical patent/JP2019162585A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Colloid Chemistry (AREA)
  • Polymerisation Methods In General (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Cosmetics (AREA)

Abstract

【課題】亜超臨界水が油成分を溶解する特性を利用し、よりマイルドな条件でモノマーを水中に微細化、乳化し、粒子径が揃った状態の乳化物を得る「亜臨界乳化法」を確立し、モノマーの微小乳化物の製造方法を提供すること、及び、このモノマーの微小乳化物を樹脂粒子化する「亜臨界乳化重合法」の基礎技術を確立し、提供すること。【解決手段】重合性単量体を含む油成分からなる油滴が、水に微細に乳化してなる重合性単量体の微小乳化物の製造方法であって、前記油成分と水とを、前記油成分を溶解できる、水の沸点以上、水の臨界温度未満の状態で混合することで前記油成分を水に溶解させ、その後に乳化剤を添加しながら急冷して前記油滴の微小乳化物を得る際に、前記乳化剤として、曇点を有するノニオン系乳化剤を使用する重合性単量体の微小乳化物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、重合性単量体のナノサイズの微小乳化物の製造方法、及び、該製造方法で得られる微小乳化物から、ナノサイズの微小樹脂粒子の乳化物を得る微小樹脂乳化物(以下、微小樹脂乳化物とも呼ぶ)の製造方法に関する。さらに詳しくは、水の沸点以上、臨界点未満の状態の水を利用し、中間体として有用な、微細で粒子径の揃った重合性単量体の微小乳化物を得る製造方法、該微小乳化物に含有された重合性単量体(以下、モノマーとも呼ぶ)を重合させることで、微細で粒子径の揃った微小樹脂乳化物を得る製造方法を提供する技術に関する。
溶媒に不溶性の物質を、該溶媒中に微細な状態にして混合させたエマルション(乳化物)を得る方法としては、ホモミキサー等による機械的撹拌が一般的である。例えば、油(オイル)を溶媒である水に混合する場合、水と油成分と乳化剤との混合物を、機械的に撹拌することにより、大きな油滴を微細化し、乳化物を得ることが行われている。しかし、近年、より微細でより均一な状態で水中に油滴が分散した水中油(O/W)型エマルションが求められているのに対して、従来の機械的な乳化方法で、エマルションの平均粒子径をナノサイズまで微細化するのは困難である。また、機械的な乳化方法によってナノサイズまで微細化を行った場合は、長時間の処理や膨大なエネルギーを必要とし、工業上有利な方法であると言い難く、エマルションの平均粒子径をナノサイズまで工業的に微細化できる方法があれば非常に有用である。
これに対し、近年、水の特性を利用した新しい乳化技術の検討がなされている。水の場合、臨界点(臨界温度は374℃、臨界圧力は22.1MPa)の近くでは、僅かな圧力変化により密度が連続的に大きく変化する。例えば、溶媒として「ものを溶かす」能力(溶解力)は、水の密度と密接に相関することから、同じ温度であっても、ほんの少し圧力を変えるだけで、溶解力を急激に変化させることができる。原理的には、圧力と温度だけを操作因子として、様々な水の物性を幅広くコントロールすることが可能である。特に、気体と液体の中間である超臨界状態の水、「超臨界水」は、有機物を溶かすことができるため、工業的にも重要な、従来のその利用が問題となっている有機溶媒に代替する新しい溶媒としても期待されている。また、何より、水自体、自然界に豊富に存在する無毒で安価な溶媒であり、今後は、環境調和型技術への指向がより一層強まっていくことが予想されることから、「超臨界水」を利用した技術は、極めて有用なものになり得る。高温高圧という特殊な環境であるとはいえ、「水」でありながら、固体、液体、気体とは全く異なる性格を発現する「超臨界水」は十分魅力的であり、持続的社会を実現するための基盤技術の一つとして大いに期待される。
上記した「超臨界水」を利用した技術として、例えば、水の気/液臨界点近傍の高温・高圧条件下で得られる、水と水不溶性物質の均一溶液を利用した乳化物の製造方法が提案されている(特許文献1)。この技術は、一般的なホモミキサー等による機械的撹拌を必要としない乳化技術で、極限下での水の特性を利用した従来にない新しい乳化技術であり、その利用が期待されている。
特許第5943455号公報
本発明者らは、上記の技術で開示された超臨界水が油滴を溶解する特性を利用し、モノマーを水中に微細化することができ、しかも、微細で且つ粒子径の揃った乳化物が安定して得られれば極めて有用であるとの認識をもった。先述したように、従来の機械的な乳化方法では容易に得ることができなかった、微細で且つ均一な粒子径の乳化物が容易に得られれば、その活用が期待される。例えば、従来機械的な乳化方法では、モノマー等の原料と水とを釜に仕込み、長時間かけて撹拌乳化後、撹拌しながら重合処理することで微細な水系樹脂粒子を製造していたが、上記技術を利用してモノマーを水中に均一な粒子径に微細化、乳化することができれば、釜も、撹拌機も不要になり、また、従来のような乳化にかかる撹拌時間も基本必要なくなる。さらに、連続フロー方式によって、一連の流れ作業で、モノマー等の原料の乳化工程、得られた複合油滴を重合処理する重合工程ができれば、短時間で微細な水系樹脂粒子を製造することが可能になると考えられる。
しかしながら、前記した特許文献1で実際に検討しているのは、水と、デカン、ドデカン、テトラデカンといった、炭素鎖長が10〜14の直鎖の飽和炭化水素で、耐熱性の比較的安定な物質であり、この「超臨界水」を利用した技術をラジカル重合性の不飽和基を有する物質であるモノマーにそのまま適用することはできない。例えば、特許文献1の技術では、水とデカン等の飽和炭化水素の処理温度が、水と飽和炭化水素が混合する点は440℃、水と飽和炭化水素と界面活性剤が混合する点は445℃で、極めて高温であり、このようなドデカン等に比して、耐熱性に劣り且つ反応性を有するモノマーのような物質では、分解等が生じると考えられる。換言すれば、上記した「超臨界水」を利用した新たな乳化技術を多くの種類の油溶性の有機化合物に適用するための検討はなされておらず、少なくとも、モノマーのような、ドデカンに比して耐熱性に劣る物質に適用するためには、より低い処理温度で、水中に微細化、乳化することを実現させるという課題がある。
さらに、上記の超臨界水を利用した技術を工業的に利用可能にするためには、上記技術によって得られた、微細で且つ粒子径が揃った微小乳化物の特性が維持され、その後の利用や処理を、上記した良好な微小乳化物の状態で行うことができるようにすることが必要になってくる。これに対し、本発明者らの検討によれば、微細で且つ粒子径が揃った微小乳化物が得られても、その後に粒子が合一になり易く、良好な状態に保てないという課題があり、微細で且つ粒子径が揃った微小乳化物の状態をできるだけ長く保つことを可能にする技術開発が必要であり、この点を解決することが超臨界水を利用した新たな技術の進展には欠かせないとの認識をもった。
したがって、本発明の目的は、超臨界水よりもマイルドな条件でモノマーを水中に微細化、乳化し、粒子径が揃った状態の乳化物を得ることができる新たな技術を確立して、より多くの種類の油溶性の有機化合物に適用できるモノマーの微小乳化物の製造方法を提供することである。具体的には、水の沸点以上、臨界温度未満の、モノマーを含む油成分を溶解できる状態の水(本発明では、この状態の水を「亜臨界状態の水」又は「亜臨界水」と呼ぶ)を利用することで、「超臨界水」を利用した技術よりも低い処理温度条件で、モノマーの微小乳化物を製造することができる亜臨界水を利用した新たな乳化法を確立することにある。また、本発明の目的は、上記した新たな乳化法を確立することで、従来の技術では困難であった、微細でしかも粒子径が揃ったモノマーの微小乳化物の実現、さらに、その後の重合工程で利用可能な濃度のモノマーを含む油滴で、微細で且つ粒子径が揃った油滴の状態を長く保つことが実現できる、モノマーの微小乳化物の提供を可能にし、微細な水系樹脂粒子を製造するための基礎技術を確立することにある。本発明のさらなる目的は、上記した優れたモノマーの微小乳化物の提供を可能にできる新たな乳化法を開発することによって、工業的な利用可能性を高め、新たな乳化法で作製した微小乳化物から、ナノサイズの微小樹脂粒子の乳化物を得ることを可能にするための基礎的な技術を見出すことにある。
上記した課題は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、
[1]重合性単量体を含む油成分からなる油滴が、水に微細に乳化してなる重合性単量体の微小乳化物の製造方法であって、
前記油成分と水とを、前記油成分を溶解できる、水の沸点以上、水の臨界温度未満の状態で混合することで前記油成分を水に溶解させ、その後に乳化剤を添加しながら急冷して前記油滴の微小乳化物を得る際に、前記乳化剤として、曇点を有するノニオン系乳化剤を使用することを特徴とする重合性単量体の微小乳化物の製造方法を提供する。
本発明の重合性単量体の微小乳化物の製造方法の好ましい形態としては、下記のことが挙げられる。
[2]前記曇点を有するノニオン系乳化剤の添加を、その曇点以上の温度条件下で行う前記[1]に記載の製造方法。
[3]前記曇点を有するノニオン系乳化剤が、曇点が異なる2種以上のノニオン系乳化剤を含む前記[1]又は[2]の製造方法。
[4]前記重合性単量体がアクリル系単量体であり、前記油成分のSP値が8.0〜10.0である前記[1]〜[3]のいずれかの製造方法。
[5]前記アクリル系単量体中に、親水性官能基を有するアクリル系単量体を0.1質量%以上含有する[4]の製造方法。
[6]前記親水性官能基が、カルボキシ基又はヒドロキシ基である[5]の製造方法。
[7]前記微小乳化物の粒子径が、20nm〜400nmである前記[1]〜[6]のいずれかの製造方法。
本発明は別の実施形態として、微小樹脂粒子の乳化物を得る製造方法であって、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の重合性単量体の微小乳化物の製造方法(以下、「亜臨界乳化法」とも呼ぶ)で得た重合性単量体の微小乳化物から、該微小乳化物に含有されている重合性単量体を重合することで微小樹脂粒子の乳化物を得る(以下、「亜臨界乳化重合法」とも呼ぶ)ことを特徴とする微小樹脂乳化物の製造方法を提供する。その好ましい形態としては、前記重合の際に、前記ノニオン系乳化剤の前記曇点以下の温度で、重合する前記[8]の微小樹脂乳化物の製造方法が挙げられる。
本発明によれば、溶媒不溶性の物質であるモノマー等の油成分を、該溶媒中に微細な状態にして混合させて乳化物を得る際に、機械的な撹拌を必要とする従来技術で用いていた釜や撹拌機が不要になり、乳化操作にかかっていた長い撹拌時間も必要がなくなる、亜臨界水の特性を効果的に利用した、モノマーを簡便に短時間で水中に微細化、乳化するモノマーの微小乳化物の製造方法が提供される。また、本発明によって、モノマーの微小乳化物を得る際に、モノマー種の適用範囲を拡げるために重要になる、より低い温度で、モノマーを水中に微細化、乳化処理することや、本発明の効果を実現するために重要となるモノマーの微小乳化物を得るのに最適なモノマーの選出手法が確立される。さらに、本発明の製造方法によれば、形成されたモノマーの微小乳化物が、その後にモノマーを重合する工程で利用可能な濃度の油滴であり、乳化後に生じる油滴粒子の合一が効果的に抑制された、比較的長い間、微細で且つ粒子径が揃った油滴の状態を保つことができるモノマーの微小乳化物の提供が可能になる。より具体的には、本発明によれば、例えば、塗料・接着剤等の原料であるアクリル系モノマーを、よりマイルドな条件下で処理することで、モノマーの微小乳化物が迅速に得られ、油滴粒子の合一が効果的に抑制されるので、さらに、得られた微小乳化物中のモノマーを重合することで微小樹脂乳化物が得られる新たな技術の実現が可能になる。すなわち、本発明によれば、亜臨界水を効果的に利用することで得られる、微細で且つ粒子径が揃ったモノマーの微小乳化物、及び、その重合物からなる微小樹脂乳化物において、モノマーの微小乳化物で実現される特性を維持するための基礎技術が提供される。
水の状態図である。 本発明で使用した亜臨界乳化法を実施するための装置の模式図である。 従来の機械的な撹拌・乳化(ミキサー乳化)で得たアクリル系モノマーのミクロサイズの粒子の粒度分布と、本発明の製造方法を実施して得た、アクリル系モノマーの乳化物の粒度分布の違いを示す図である。 実施例1で得られた2エチルヘキシルアクリレート(2EHA)モノマーの微小乳化物の、処理温度と平均粒径との関係を示す図である。 実施例2で得られたブチルアクリレート(BA)モノマーの微小乳化物の、処理温度と平均粒径との関係を示す図である。 実施例3で得られた、2EHAとBAとの2種モノマーの微小乳化物の、処理温度と平均粒径との関係を示す図である。 実施例4で得られた、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)と2EHAとの2種モノマーの微小乳化物の、処理温度と平均粒径との関係を示す図である。 実施例5で得られた、CHMAとBAとの2種モノマーの微小乳化物の、処理温度と平均粒径との関係を示す図である。 実施例6で得られた、CHMAと2EHAとメタクリル酸(mAAc)との3種モノマーの微小乳化物の、処理温度と平均粒径との関係を示す図である。 実施例7で得られた、BAとエチルアクリレート(EA)とスチレン(ST)との3種モノマーの微小乳化物の、処理温度と平均粒径との関係を示す図である。 本発明の製造方法を実施して得た、各原料モノマーのSP値と、その最適な処理温度の関係をまとめて示す図である。
(亜臨界水)
次に、発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。まず、本発明で「亜臨界状態の水又は亜臨界水」と呼ぶ、本発明で利用する「重合性単量体(モノマー)を含む油成分を溶解できる、水の沸点以上、水の臨界温度未満の状態の水」について説明する。亜臨界水とは、図1の水の状態図に示したように、常圧での沸点(100℃)から、超臨界水となる臨界温度(374℃)手前までの温度領域の液体であり、水を高温高圧処理することで実現する、外見は液体を保っているが、通常の液体の水分子よりも極めて高いエネルギーが付与されている水の状態を指す。亜臨界水は、比誘電率が低く、イオン積が大きい等、通常の液体の水の状態とは全く異なる性質を示す。図1中に示されているように、気液共存線の終点が臨界点(374℃、22.1MPa)であり、この臨界点近傍の、温度が比較的低い領域にある熱水が「亜臨界水」である。この「亜臨界水」は、超臨界水と同様に、無極性の有機化合物を溶解したり、加水分解するなど、普通の水にはない特性をもっている。
本発明者らは、例えば、水を、20MPa以上、好ましくは22MPa以上で、水の沸点以上、好ましくは200℃以上、臨界温度(374℃)未満の状態にすると、モノマーを含む油成分を「亜臨界水」に溶解させることができ、その後に特定の乳化剤を添加しながら急冷するという極めて簡便な操作で、本発明が目的としている、機械的手段を用いることなく、より低い乳化処理温度で、モノマーを水中に、粒子径が揃った油滴の状態で微細化、乳化させることができ、しかも、微細化した粒子が短時間で合一して大きな粒子ができてしまうことが抑制される効果が得られることを見出した。このように粒子の合一を効果的に抑制できるため、例えば、製造したモノマーの微小乳化物を次の工程で重合させた場合、得られる重合物を、良好に微細化した状態を保ったものにすることが可能になる。
本発明は、前記した「亜臨界水」の性質を利用し、従来にない方法で、モノマーを含む油成分からなる油滴を、水に微細に乳化させ、その状態を安定に保つことを可能にする新たな技術に関する。上記したように、本発明の技術的特徴は、特に、モノマーを含む油成分からなる油滴の形成に曇点を有するノニオン系乳化剤を併用することで、微細化した油滴粒子が短時間で合一を生じることを抑制できる点を見出したことにある。さらに、本発明の技術的特徴は、その好ましい形態として、モノマーがアクリル系単量体である場合に、原料であるアクリル系モノマーを含む油成分におけるSP値が8.0〜10.0となるように調整された構成することで、粒子径が揃った状態で微細化、乳化してなる上記油成分からなる油滴の微小乳化物が得られることを見出した点にある。
<亜臨界水の製造装置>
図2に、本発明のモノマーの微小乳化物の製造方法で行う「亜臨界乳化法」を実施するための装置の模式的な概略フロー図を示した。この装置は、図2に示したように、水と、モノマーを含む油成分との2つの液をそれぞれに流入するための流入路と、流入した液が合流する混合器とからなる混合部と、該混合部に続いて配置された、適宜な高温高圧に設定することで、水を、超臨界状態、亜臨界状態にするための超臨界・亜臨界工程部(図2では亜臨界工程部と記載)と、該工程からでた液に特定の乳化剤を添加し、急速に冷却(急冷)して粒子の合一を抑制しながら水とモノマーとを相分離させることで乳化物にする冷却部とを有してなる。
上記のような装置を用いることで、亜臨界工程部で、モノマーを含む油成分が亜臨界水に瞬時に溶解する。そして、これに、次の冷却部で曇点を有する乳化剤を添加して急冷することにより、粒子径が揃った状態の微小粒子が速やかに形成され、しかも、形成された微小粒子が短時間に合一になることが効果的に抑制された、本発明が目的とするモノマーを含む油滴からなる微小乳化物が得られる。図2に示した構成の装置によれば、水を、高温・高圧の極限環境で現れる、超臨界や亜臨界状態の特異な性質を有する水が得られる。本発明の製造方法では、この特異な性質を示す状態の水の中でも、超臨界よりもマイルドな亜臨界の状態の水を利用することで、本発明が目的とする、工業上利用することが可能になる、粒子径が揃った状態で微細化、乳化してなり、しかも、短時間に粒子が合一になることが有効に抑制されたモノマーを含む油滴からなる微小乳化物を得ることを実現している。本発明では、AKICO社が設計製造した超臨界乳化装置「SFW−E40S」を使用して種々の実験を行い、鋭意検討した結果、本発明のモノマーの微小乳化物の製造方法に至ったものである。
図3に、従来の機械的な撹拌乳化(ミキサー乳化)でアクリル系モノマーのミクロサイズの粒子を得た場合と、本発明の亜臨界乳化法で、アクリル系モノマーの乳化物(油滴)を得た場合の、粒度分布の違いを示した。具体的には、原料モノマーには、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)とアクリル酸2エチルヘキシル(2EHA)との1:1の混合物溶液を用いた。曇点を有する乳化剤の使用量は、原料モノマーに対して25%となるようにして使用した。亜臨界乳化法を実施する前記した装置での乳化条件は、温度350℃×圧力25MPa(亜臨界条件)であり、その乳化時間は5秒とした。また、従来法である機械的な撹拌乳化の乳化条件は、5000rpm×30分とした。
図3に示したように、従来法での30分間程度の時間では、得られる乳化物は、4000〜10000nmのブロードのピークと、500〜600nmにシャープなピークがあるものになり、大きな粒径のものを広い粒度分布で含む、種々の粒子径のモノマーの乳化物となることがわかった。これに対し、本発明で行う亜臨界乳化法では、大きな粒径のものは全く含まれず、100nm近傍にシャープなピークをもつモノマーの乳化物が得られることが確認できた。
上記したように、本発明者らは、本発明の目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、従来の機械的撹拌による乳化方法とは基本原理が全く異なる、新規な乳化手法(亜臨界乳化法)を見出した。その結果、モノマーを含む油成分からなる油滴が、水に、微細に乳化してなり、特に、形成後の粒子の合一の発生が抑制され、安定して水中に粒子径が揃った油滴の状態で微細化、乳化してなる、同様の性状を有する微小樹脂乳化物を得るのに必要になるモノマーの微小乳化物の作製に成功した。
これに対し、従来の機械的撹拌による乳化方法では、機械的撹拌力により、水と油を撹拌混合乳化させており、数分から数十分程度充分に撹拌したとしても、500nmから5000nm程度の油滴が作製できるに過ぎない。このため、これよりも微細化させるためには、より長時間にわたって、機械的撹拌を行う必要がある。また、より長時間の微細化処理を行ったとしても、その微粒子の粒度分布は、先に説明した図3に示したように、ブロードな粒度分布のものになり、粒子が微細で且つ粒径が揃った均一な乳化物にはならない。これに対し、先に挙げた「超臨界水」を利用した特許文献1の技術では、その利用例が、モノマーを対象とした本発明と異なり、炭素鎖長が10〜14の直鎖の飽和炭化水素を用いたもので、さらに、本発明で使用する亜臨界水よりも高温の超臨界水を使用したものではあり、この点で異なるが、超臨界水への混合から乳化物の調製まで、僅か十秒〜数十秒で、機械的撹拌を一切することなく、40nmから500nm程度の微小油滴が作成可能であるとしている。図3は、この点を、モノマーを含む油成分を用い、「超臨界水」よりも条件がマイルドな「亜臨界水」を利用して確認した結果である。
図1に示したように、水は、気体(水蒸気)、液体、固体(氷)の状態で存在するが、温度と圧力を上昇させると、374℃、22MPaの、高温、高圧下(臨界点)にて、液体と気体の境界線がなくなり、より高温・高圧にて超臨界水となる。超臨界水では、液体でありながら、気体特性も両存し、密度が小さくなり、比誘導率も低下するという特異な現象が見られる。超臨界水では比誘電率が低下するので、溶剤と類似した溶解力が発生し、超臨界水が油を溶解した状態になる。水の比誘電率は、室温では79程度であり、油成分であるモノマー類の比誘電率は約40以下であるので、常温常圧下で、水とモノマー類とを混合しても、均一な相にすることは不可能であり、2相に分離した状態になる。これに対し、温度の上昇とともに、比誘電率は徐々に減少し、例えば、温度400℃、圧力25MPaの超臨界状態では、水の比誘電率が6と低下して油成分と同程度になるので、常温常圧では水相と有機(油)相に分かれていたものが、上記した超臨界状態では、水と油が相溶した均一相になる。そして、これらのことは、超臨界状態でなくても、水を高温高圧にして比誘電率を低下させた状態にすれば、油成分であるモノマー類との相溶性を高めることができることを意味している。
上記した認識の下、本発明者らは、超臨界状態よりもマイルドである亜臨界状態の水を利用すれば、特許文献1の技術で対象としているよりも耐熱温度が低く、常温常圧では決して均一な相にならなかったモノマー類を含む油成分を、水に良好な状態で微細な油滴にして乳化させることができるのではないかと考え、検討を行い、本発明に至ったものである。すなわち、本発明の技術では、上記した高温・高圧の超臨界状態の水よりもマイルドな状態の熱水である亜臨界水を利用する。
次に、本発明の製造方法で使用することができる、曇点を有するノニオン系乳化剤、モノマー及び重合開始剤について説明する。なお、本明細書における「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および「メタクリル」の双方を意味し、また、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を意味する。また、これらをまとめてアクリル系モノマー類と呼ぶ。
(乳化剤)
本発明の製造方法では、下記に挙げるようなノニオン性の界面活性剤の中の曇点を有するものを使用する。曇点を有するノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類や、ポリオキシエチレンアルキレン誘導体類や、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル類等から、曇点を有するものを選択して使用することができる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等、或いは、上記した骨格と重合性の不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤等を挙げることができる。これらのノニオン系乳化剤は、単独で用いてもよいし、数種類を組み合わせて用いてもよい。
上記に挙げたような界面活性剤の中から、「曇点」が、50℃〜100℃のものを用いることが好ましい。本発明者らは、前述したようなモノマーを含む油成分と水とを、油成分を溶解できる、水の沸点以上、臨界温度未満の状態(亜臨界水の状態)で混合することで、油成分を亜臨界水に溶解させ、その後に乳化剤を添加しながら急冷して油滴の微小乳化物を得る際に、乳化剤に、上記に挙げたような曇点を有するノニオン系乳化剤を使用すると、短時間で生じることのあった油滴粒子の合一が効果的に抑制でき、微小になった油滴粒子が合一になるのを効果的に抑制できることを見出した。本発明者らの検討によれば、更に、上記で、曇点の異なる少なくとも2種のノニオン系乳化剤を用いることが好ましく、このように構成すれば、油滴粒子の合一の発生の抑制において、より顕著な効果が得られる。また、例えば、50℃/秒〜200℃/秒程度で「急冷」すれば、形成する油滴の微小化、油滴粒子の合一の抑制を効果的にすることができる。具体的には、油滴の微小乳化物を得た後、油滴粒子の合一の発生が認められるまでの時間を、本発明の製造方法の構成で行って油滴の微小乳化物を得た場合と、曇点を有するノニオン系乳化剤を使用せずに油滴の微小乳化物を得た場合とで比較すると、本発明の製造方法の場合は、油滴粒子の合一の発生が認められるまでの時間を、数倍〜1000倍、長期化できる。例えば、曇点を有するノニオン系乳化剤を使用せずに油滴の微小乳化物を得た場合、早い場合には数秒〜数分で油滴粒子の合一が認められ、合一が進んで分離を生じることがあった。これに対し、曇点を有するノニオン系乳化剤を使用した本発明の製造方法の場合は、最低でも十分以上、多くは1日以上、場合によっては月単位で油滴粒子の合一が認められなかった。
(重合性単量体)
本発明の製造方法で使用する重合性単量体(モノマー)としては、ラジカル重合可能なものであればよく、下記に挙げるような、(メタ)アクリル系モノマー類や、カルボニル基含有モノマーや、芳香族ビニル系モノマーや、窒素含有モノマー等をいずれも用いることができる。
(メタ)アクリル系モノマー類としては、特に限定されるものではないが、下記に挙げるものがいずれも使用できる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の、シクロアルキル(メタ)アクリレート類;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−(3−)ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;
ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等の、ポリアルキレンオキシド基含有(メタ)アクリレート類;
p−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレート類;
ラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;
2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の、アミノアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の、多官能性(メタ)アクリレート類;
ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等の金属含有(メタ)アクリレート類;
γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の、シリコン含有(メタ)アクリレート類;
2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールや、1−(メタ)アクリロイル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−アミノ−4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の、耐紫外線基含有(メタ)アクリレート類;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチルクロライド塩、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等の、他の(メタ)アクリル系単量体;
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の、アルデヒド基又はケト基に基づくカルボニル基含有単量体;
スチレン(St)、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル系単量体;
1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等の、共役ジエン系単量体;
(メタ)アクリル酸、アクリル酸二量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸を反応させたモノマー等の、カルボキシ基含有単量体;
エチレン、プロピオン酸ビニル等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらは、単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の微小乳化物の製造方法を適用する場合の好適なモノマーとしては、アクリル系モノマーが挙げられる。本発明は、汎用のアクリル系モノマーに適用できる技術であるため、今後の利用が期待される。
また、本発明の微小乳化物の製造方法で、アクリル系モノマーを含有する油滴をより良好な乳化状態にするためには、乳化させるアクリル系モノマー中に、親水性官能基を有するアクリル系モノマーを0.1質量%以上含有させた構成とすることが好ましい。また、上記親水性官能基としては、カルボキシ基或いはヒドロキシ基であることが好ましい。
後述するように、本明細書では、本発明の製造方法で得られるモノマーの微小乳化物について、アクリル系モノマー類を例に挙げて説明し、上記したようにアクリル系モノマー類への適用は工業上、期待されるものであるが、本発明の技術は、必ずしもアクリル系モノマー類に限定されるものではない。本発明によれば、上記に挙げたような種々のモノマー或いは複数種のモノマーの、微細で粒子径の揃った微小乳化物を迅速に得ることが可能である。また、本発明の製造方法で得られるモノマーの微小乳化物は、上記したようなモノマーが含有されていればよく、例えば、ヘプタン等の直鎖アルカン類やオリゴマー類等々(例えば、ポリブテン系、ポリブタジエン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系樹脂等々)をモノマーに溶解したような、複合油滴からなる微小乳化物の製造も可能になる。複合油滴とする場合の直鎖アルカン類やオリゴマー類の比率としては、用途等によって異なるが、50質量%未満であることが好ましい。
本発明者らの検討によれば、例えば、モノマー類に、シリコーンオイルを併用することが好ましい。シリコーン類としては、シリコーンオイルや変性シリコーンオイル等を用いることが好ましい。シリコーンオイルとしては、例えば、ジアルキルシリコーンオイル;環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェニルシロキサン;アルキルフェニルシロキサン等が挙げられる。その他、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等が使用できる。これらシリコーンオイルの市販されているものの例としては、信越化学工業社製の、KF−96〔10,20,30,50,500,1000,3000〕、KF−56、KF−58、KF−54等や、また、東芝シリコーン社製の、TSF451シリーズ、TSF456シリーズ、TSF410、411、440、4420、484、483、431、433シリーズ、THF450シリーズ、TSF404、405、406、451−5A、451−10A、437シリーズ、TSF440、400、401、4300、4445、4700、4450、4702、4730シリーズ、TSF434、4600シリーズ等や、さらに、東レシリコーン社製の、HS−200等が挙げられる。本発明において、モノマー類に、シリコーンオイル等を併用する場合の原料とする油成分中のシリコーン類の含有比率としては、例えば、5%〜20%程度とすることが好ましい。
本発明者らは、本発明の目的を達成すべく検討を進める過程で、モノマーの種類の違いによって、或いは、同じ種類のモノマーにおいても、より微細化された良好な微小乳化物が得られる処理温度が、それぞれ異なるとの知見を得た。そこで、この点を明らかにするため、前記した装置で、種々のモノマーを用いて試験を行い、この点についての詳細を検討した。その結果、油成分(モノマー)のSP値(溶解度パラメータ)が8.0〜10.0である場合に、より低温のマイルドな条件で、より微細な微小乳化物を得ることができることを見出した。個々のモノマーについてのSP値は既に知られており、例えば、相溶性の高いモノマーの組合せを選択する場合や、使用するモノマーに対して貧溶媒や良溶媒を選択する場合などに利用されている。したがって、知られているホモポリマーのSP値を利用して、SP値が8.0〜10.0のモノマーを適宜に選択して使用すればよい。また、複数のモノマーを使用する場合には、これらの公知のSP値を利用して、油成分(モノマー)のSP値が8.0〜10.0、より好ましくは8.5〜9.5となるように配合を調整して使用すればよい。本発明者らは、SP値が上記した範囲内になるように調整した2以上のモノマーの組合せを用いた場合も、低温のマイルドな条件で、良好な状態の微細な微小乳化物を得ることができることを確認した。
ここで、SP値(溶解度パラメータ)とは、下記式より算出される凝集エネルギー密度の平方根で定義される物性値である。
δ(SP値)=(ΣEcoh/ΣV)1/2
上記式に示されているように、SP値(溶解度パラメータ)は、その分子構造からFedorsの推算法により算出されるものであり、凝集エネルギー密度とモル分子容を基に計算される。すなわち、物質の各官能基の凝集エネルギー密度の合計ΣEcohと、モル分子容の合計ΣVより、上記式のように定義することができる。凝集エネルギーの単位はJ/molの場合が多いが、本明細書では、J/molの単位のSP値を4.19の係数で除してcal/molを用いた。原子団、基固有の凝集エネルギー、モル分子容の定数は「R.F.Fedors, Polym. Eng. Sci., 14 [2], 147-154(1974)」に記載の数値を用いることができる。
(重合開始剤)
本発明の微小樹脂乳化物の製造方法で得たモノマーの微小乳化物から、該微小乳化物に含有されているモノマーを重合する際に用いることができる重合開始剤は、使用したモノマーの種類にもよるが、特に限定されるものでなく、従来公知のものをいずれも使用できる。例えば、下記に挙げるような、一般的にラジカル重合に使用される重合開始剤を適宜に用いることができる。
具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;
アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類;
2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩類等の水溶性アゾ化合物;
過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類等が挙げられる。
これらの重合開始剤は単独でも使用できるほか、2種類以上の混合物としても使用できる。また、重合速度の促進、70℃以下での低温の重合が望まれるときには、例えば、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
以下、上記結論を得るに至った実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<実施例1:モノマーの微小乳化物の調製>
下記のA〜Cの液状原料を用意した。
A液(水) :イオン交換水
B液(油滴原料):アクリル酸2エチルヘキシル(2EHA、SP値=8.62)
C液(乳化剤) :ノイゲンXL−100(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、曇点=79℃、HLB14.7)の5%希釈水溶液
前記したAKICO社製の、亜臨界水〜超臨界水の供給ができる超臨界水供給装置「SFW−E40S」を使用し、図2に示したような構成の試験装置を用意した。この装置は、2つの原料の液の流入路と、流入した液が合流する混合器とからなる油滴原料の混合部と、該混合部に続いて配置した、水を、超臨界状態或いは亜臨界状態の熱水にするための超臨界・亜臨界工程部と、該工程から出た液を150℃/秒程度の速度で急速に冷却することで粒子径がナノサイズの乳化物(油滴)を得る冷却部とを有する。本発明の製造方法を実施可能にするため、使用した試験装置は、超臨界・亜臨界工程部から出た液に、曇点を有するノニオン系乳化剤を添加しながら、冷却部で液を急冷できる構成となっている。本発明の目的は、よりマイルドな条件でモノマーを含む油成分からなる油滴が、水に微細に乳化してなるモノマーの微小乳化物を得ることを目的としているため、上記超臨界・亜臨界工程部における条件を、水温が臨界温度の手前の300℃〜370℃の熱水になる高温・高圧とした。このため、超臨界・亜臨界工程部を図2に示したように、以下、亜臨界工程部と呼ぶ。
上記構成の装置を用い、その流入路から、液状原料として、A液である水を7.8ml/分、B液の2EHA(油滴原料)を2.2ml/分となる速度でそれぞれ流入させ、亜臨界工程部において、水が、350℃の熱水になる高温・高圧の条件と、370℃の熱水になる高温・高圧の2つの条件で、油滴原料を水に溶解させた。続いて、亜臨界工程部から出た液を、冷却部の、油滴が形成され始めた初期段階で、C液の曇点を有するノニオン系乳化剤溶液を10ml/分の速度で添加した。その結果、亜臨界工程部における熱水の温度が370℃の条件の場合に、平均粒子径が191nmとより小さい油滴が得られた。図4aに示したように、350℃の熱水の条件でも、平均粒子径が200nmの小さい油滴が得られた。また、370℃の条件で得た油滴の粒度分布は、シャープな正規分布を示すものであり(不図示)、微細で均一な乳化物が得られたことが確認できた。得られた油滴の平均粒子径及び粒度分布の測定は、動的光散乱法によって求めた。動的光散乱法による平均粒子径(直径)の測定は、乳化物を水で適当な濃度に希釈した後、FPAR−1000(商品名、大塚電子社製)を用いて、25℃で行った。
<実施例2〜7:モノマーの微小乳化物の調製>
実施例2〜7も、先に説明した実施例1に準じて行った。実施例2〜7では、亜臨界工程部における水温の条件を、表1に示したそれぞれの温度範囲で、実施例4については20℃毎、その他の実施例では10℃毎替えてそれぞれ試験を行った。表1に、実施例1〜7に用いた原料モノマーの種類と組成と、原料モノマーのSP値をまとめて示した。また、表1に、これらの原料モノマーを用いたそれぞれの場合における、得られた乳化物の粒子の平均粒子径の最小値と、この最小値の粒径の乳化物が得られた温度を括弧書きに記載し、まとめて示した。
<実施例1〜7で得たモノマーの乳化物の平均粒子径と亜臨界工程部の温度との関係>
図4a〜図4gに、上記した実施例1〜7で使用した各原料モノマーについて、亜臨界工程部におけるそれぞれの温度条件と、各温度において得られたそれぞれのモノマーを含んでなる、微小乳化物の平均粒子径の関係をまとめて示した。また、図5に、実施例1〜7で使用した各原料モノマーのSP値と、その場合の最適な処理温度をプロットしたものを示した。この結果、SP値が8.0〜10.0、より好ましくは8.5〜9.5、であるように調整されている原料モノマーを用いた場合に、水の臨界点未満のより低温のマイルドな条件で、微粒で均一な、モノマーの微小乳化物を得ることができることがわかった。
<実施例1〜7で得たモノマーの微小乳化物の粒子の合一についての評価>
比較のため、実施例1〜7のそれぞれにおいて、得られた乳化物の粒子の平均粒子径の値が最小値であった亜臨界工程部における水温の条件で、冷却部で、C液のノニオン系乳化剤溶液を添加しなかった以外は同様の条件で微小乳化物を調製し、得られた乳化物において粒子の合一が生じるまでの時間を測定した。そして、実施例1〜7のそれぞれにおいて、乳化物の粒子の平均粒子径の値が最小値のものが得られた場合について、得られた乳化物において粒子の合一が生じるまでの時間を測定することを試みた。しかし、各比較例の微小乳化物では、いずれの場合も粒子の合一が生じるまでの時間が短く、測定するのが困難な状態であった。これに対し、対応する各実施例における微小乳化物においては、いずれも、1日経っても粒子の合一が生じることはなかった。
<実施例8、9:亜臨界乳化法で得た微小乳化物の重合−1>
実施例1〜7に準じた方法で、表2に示した2種のモノマーを濃度1%で含んでなる液状の微小乳化物(乳化液)を作製した。この際、上記のC液(乳化剤)として、実施例8では、ノイゲンTDS−80(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、HLB13.3)の1%希釈水溶液を用い、実施例9では、ノイゲンTDS−80の0.5%希釈水溶液(実施例9)をそれぞれ使用した。各液の流入速度はA液である水を9.8ml/分となる速度で、2種のモノマーを配合してなるB液を0.2ml/分となる速度で流入させ、冷却部の、油滴が形成され始めた初期段階でC液を10ml/分の速度で添加して、水温350℃、圧力:25MPaで亜臨界乳化を行った。そして、粒子の合一が生じていないことを確認した後、上記亜臨界乳化法で得られた乳化液250gに、重合開始剤として、パーブチルH(商品名:日油社社製)の5%希釈水溶液1gと、エリソルビン酸の5%希釈水溶液1gとを添加し、80℃で2時間撹拌することで重合処理し、樹脂乳化物を得た。
表2に、亜臨界乳化法で得た微小乳化物の平均粒子径と、上記の実施例8、9で得られた、重合処理して得た微小樹脂乳化物の平均粒子径をまとめて示した。
<実施例10:亜臨界乳化法で得た微小乳化物の重合−2>
実施例1〜7に準じた方法で、表3に示した2種のモノマーを含んでなる液状のナノ乳化物(乳化液)を作製した。この際、上記のC液(乳化剤)として、ノイゲンTDS−80(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、曇点60℃、HLB13.3)の5%希釈水溶液を使用した。各液の流入速度はA液である水を7ml/分となる速度で、2種のモノマーを配合してなるB液を3ml/分となる速度で流入させ、冷却部の、油滴が形成され始めた初期段階でC液を10ml/分の速度で添加して、水温350℃、圧力:25MPaで亜臨界乳化を行った。そして、粒子の合一が生じていないことを確認した後、上記亜臨界乳化法で得られた乳化液250gに、重合開始剤として、パーブチルHの5%希釈水溶液1gと、エリソルビン酸の5%希釈水溶液1gとを添加し、下記2種類の温度条件で重合した。80℃で2時間撹拌することで重合処理した樹脂乳化物と、25℃で8時間撹拌することで重合処理した樹脂乳化物を得た。
<実施例11:亜臨界乳化法で得た微小乳化物の重合−3>
実施例1〜7に準じた方法で、表3に示した2種のモノマーを濃度10%で含んでなる液状の微小乳化物(乳化液)を作製した。この際、上記のC液(乳化剤)として、前記したノイゲンTDS−80(商品名)の5%希釈水溶液を用いた。各液の流入速度はA液である水を7.8ml/分となる速度で、2種のモノマーを配合してなるB液を2.2ml/分となる速度で流入させ、冷却部の、油滴が形成され始めた初期段階でC液を10ml/分の速度で添加して、水温350℃、圧力:25MPaで亜臨界乳化を行った。そして、粒子の合一が生じていないことを確認した後、上記亜臨界乳化法で得られた乳化液250gに、重合開始剤として、パーブチルHの5%希釈水溶液5gと、エリソルビン酸の5%希釈水溶液5gとを添加し、重合温度25℃で15時間撹拌することで重合処理し、樹脂乳化物を得た。表3に示したように、モノマー乳化物の粒径よりも重合後の粒子の粒径が小さくなることを確認した。
表3に、亜臨界乳化法で得たモノマーの微小乳化物の平均粒子径と、上記の実施例10及び11で重合処理して得た各微小樹脂乳化物の平均粒子径をまとめて示した。
<実施例12:亜臨界乳化法で得た微小乳化物の重合−4>
実施例1〜7に準じた方法で、表4に示した2種のモノマーを含んでなる液状のナノ乳化物(乳化液)を作製した。この際、上記のC液(乳化剤)として、ノイゲンTDS−80(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、曇点60℃、HLB13.3)の22.5%希釈水溶液を使用した。各液の流入速度はA液である水を15ml/分となる速度で、CHMAと2EHAの2種のモノマーと、シリコーンオイルKF−96−50cs(商品名:信越化学工業社製)とを、45:45:10の比率で配合してなるB液を15ml/分となる速度で流入させ、冷却部の、油滴が形成され始めた初期段階でC液を15ml/分の速度で添加して、水温350℃、圧力:25MPaで亜臨界乳化を行った。そして、粒子の合一が生じていないことを確認した後、上記亜臨界乳化法で得られた乳化液100gに、重合開始剤として、パーブチルHの5%希釈水溶液3gと、エリソルビン酸の5%希釈水溶液3gとを添加し、25℃で15時間攪拌することで重合処理した樹脂乳化物を得た。
表4に、亜臨界乳化法で得たモノマーの微小乳化物の平均粒子径と、上記の実施例12で得られた、重合処理して得た微小樹脂乳化物の平均粒子径をまとめて示した。
<比較例1:実施例1の乳化条件を超臨界条件に変更して作製した乳化物の調製>
実施例1の比較として、乳化温度条件を亜臨界条件から、超臨界条件の440℃に変更した以外は実施例1と同様な条件でモノマーの乳化物を調製した。
表5に、上記比較例1で得られたモノマーの乳化物の性状を示した。その結果、表1に示した実施例1と、表5に示した比較例1の結果から、亜臨界乳化法によって得たモノマーの微小乳化物が、超臨界乳化条件では、粒子の合一が短時間に生じてしまい良好な微小乳化物が得られないことがわかった。
<比較例2、3:従来の機械的撹拌で作製した乳化物の重合>
実施例8、9の比較として、従来の機械的撹拌で作製したモノマーの乳化物(乳化液)の重合を行った。比較例では、前記した実施例8、9の方法で行ったのと、モノマー濃度、乳化剤濃度が同一になるように、モノマーと乳化剤をイオン交換水に添加し、ミキサーで5000rpm×30分撹拌して乳化液を作製した。得られたモノマーの乳化液250gに、重合開始剤として、パーブチルHの5%希釈水溶液1gとエリソルビン酸の5%希釈水溶液1gを添加し、80℃で2時間撹拌することで重合処理して、比較例1、2の樹脂乳化物を得た。表6に、上記の比較例2、3で得られた、重合処理して得られた微小樹脂乳化物の平均粒子径をまとめて示した。
表2に示した実施例8、9と、表6に示した比較例2、3の結果から、亜臨界乳化法によって得たモノマーの微小乳化物に重合開始剤を添加し、重合処理して得られる樹脂乳化物の方が、従来法で得たモノマー乳化物を重合処理して得られる樹脂乳化物よりも、平均粒径が小さくなることがわかった。
上記した通り、本発明によれば、モノマーを含む油成分を原料に用い、亜臨界乳化法を使用して乳化処理を行った場合に、「超臨界水」を利用するよりも、マイルドな条件で安定して乳化することができるので、耐熱性に劣るモノマーが分解することなく、より微細で且つ均一な粒度分布をもつモノマーを含む油滴からなる微小乳化物が得られる。本発明の製造方法は、水の臨界点である374℃よりも低い温度のマイルドな条件でアクリル系モノマー類の乳化物を得、その後に起こる粒子の合一を効果的に抑制した初めての事例である。すなわち、先に挙げた特許文献1の技術では、先述したように、油滴として飽和炭化水素であるドデカン等を用い、440℃以上で超臨界水にして処理しており、この点が全く異なる。
水と、油成分のモノマーとの溶解温度を低下させることができたことは、本発明で目的としている耐熱性に劣るモノマー類の微小乳化物を得るためには極めて重要である。すなわち、本発明で目的としている、アクリル系モノマー類等の油溶性のモノマーを油成分とした微小乳化物は、その後に、一連の操作で重合させて微細で均一なポリマー粒子を得ることを想定しており、微小乳化物を得る工程でモノマー類が熱分解したのではポリマー設計ができなくなる。本発明の製造方法で行う、油滴原料のモノマーと水との相溶化処理する時間は、数秒から十秒であり、極めて短時間である。しかし、その場合でもモノマーの分解が起こることは予想され、できるだけ低温のマイルドな条件で微小乳化物を得ることが望まれるのに対し、本発明の製造方法によれば、よりマイルドな条件で、従来の製造方法では実現することができなかったモノマーを含む微細で均一な微小乳化物(油滴)が得られ、しかも、油滴が短時間で合一になることを有効に抑制でき、微小乳化物の状態を比較的長く維持できるようになる。このため、これに続く一連の操作で微小乳化物(油滴)を重合させた場合に、微細な粒径のものとすることが可能になる。このため、本発明の亜臨界乳化法を利用すれば、従来の技術では実現することができなかった、より微細で均一な粒度分布を示すポリマー粒子を得ることが期待され、その利用の展開が期待される。

Claims (9)

  1. 重合性単量体を含む油成分からなる油滴が、水に微細に乳化してなる重合性単量体の微小乳化物の製造方法であって、
    前記油成分と水とを、前記油成分を溶解できる、水の沸点以上、水の臨界温度未満の状態で混合することで前記油成分を水に溶解させ、その後に乳化剤を添加しながら急冷して前記油滴の微小乳化物を得る際に、前記乳化剤として、曇点を有するノニオン系乳化剤を使用することを特徴とする重合性単量体の微小乳化物の製造方法。
  2. 前記曇点を有するノニオン系乳化剤の添加を、その曇点以上の温度条件下で行う請求項1に記載の重合性単量体の微小乳化物の製造方法。
  3. 前記曇点を有するノニオン系乳化剤が、曇点が異なる2種以上のノニオン系乳化剤を含む請求項1又は2に記載の重合性単量体の微小乳化物の製造方法。
  4. 前記重合性単量体がアクリル系単量体であり、前記油成分のSP値が8.0〜10.0である請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性単量体の微小乳化物の製造方法。
  5. 前記アクリル系単量体中に、親水性官能基を有するアクリル系単量体を0.1質量%以上含有する請求項4に記載の重合性単量体の微小乳化物の製造方法。
  6. 前記親水性官能基が、カルボキシ基又はヒドロキシ基である請求項5に記載の重合性単量体の微小乳化物の製造方法。
  7. 前記微小乳化物の粒子径が、20nm〜400nmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性単量体の微小乳化物の製造方法。
  8. 微小樹脂粒子の乳化物を得る微小樹脂乳化物の製造方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の重合性単量体の微小乳化物の製造方法で得た重合性単量体の微小乳化物から、該微小乳化物に含有されている重合性単量体を重合することで微小樹脂粒子の乳化物を得ることを特徴とする微小樹脂乳化物の製造方法。
  9. 前記重合の際に、前記ノニオン系乳化剤の前記曇点以下の温度で、重合する請求項8に記載の微小樹脂乳化物の製造方法。
JP2018051490A 2018-03-19 2018-03-19 重合性単量体の微小乳化物の製造方法及び微小樹脂乳化物の製造方法 Active JP6519032B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018051490A JP6519032B1 (ja) 2018-03-19 2018-03-19 重合性単量体の微小乳化物の製造方法及び微小樹脂乳化物の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018051490A JP6519032B1 (ja) 2018-03-19 2018-03-19 重合性単量体の微小乳化物の製造方法及び微小樹脂乳化物の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6519032B1 JP6519032B1 (ja) 2019-05-29
JP2019162585A true JP2019162585A (ja) 2019-09-26

Family

ID=66655750

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018051490A Active JP6519032B1 (ja) 2018-03-19 2018-03-19 重合性単量体の微小乳化物の製造方法及び微小樹脂乳化物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6519032B1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6596640B1 (ja) * 2019-03-29 2019-10-30 サイデン化学株式会社 複合微小乳化物の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6519032B1 (ja) 2019-05-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Landfester Polyreactions in miniemulsions
JP6240637B2 (ja) 乳化重合におけるスチレン化フェノールエトキシレート
Tang et al. Miniemulsion polymerization—a comparative study of preparative variables
JP7088202B2 (ja) 変性ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、変性ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法、延伸多孔体の製造方法
WO2017126545A1 (ja) ゴム質重合体、グラフト共重合体および熱可塑性樹脂組成物
TWI408147B (zh) 一種無乳化劑的壓克力乳液之聚合方法
Ronco et al. Particle nucleation using different initiators in the miniemulsion polymerization of styrene
Zhuang et al. Particle kinetics and physical mechanism of microemulsion polymerization of octamethylcyclotetrasiloxane
EP1129117B1 (fr) Polymeres fluores par polymerisation en miniemulsion
WO2019065640A1 (ja) 変性ポリテトラフルオロエチレン、成形物、延伸多孔体の製造方法
WO2019065644A1 (ja) 変性ポリテトラフルオロエチレン、成形物、延伸多孔体の製造方法
KR20160114149A (ko) 소수성 단량체의 수지-지지체 에멀전 중합
JP6519032B1 (ja) 重合性単量体の微小乳化物の製造方法及び微小樹脂乳化物の製造方法
TWI247014B (en) A process for preparing polymers
JP6296471B1 (ja) 重合性単量体の微小乳化物の製造方法及び微小樹脂乳化物の製造方法
Pakdel et al. Incorporating hydrophobic cellulose nanocrystals inside latex particles via mini‐emulsion polymerization
EP4015541A1 (en) Miniemulsions comprising superhydrophobic and/or hydrophobic monomers, method of preparing the same and use thereof
JP6596640B1 (ja) 複合微小乳化物の製造方法
WO2008071589A2 (de) Radikalisches polymerisationsverfahren
JP2001348404A (ja) ブロック共重合体ラテックスの製造方法
Chen et al. Preparation of functionalized polystyrene latexes by radiation-induced miniemulsion polymerization using a Y-type polymerizable surfactant as sole stabilizers
JP5873843B2 (ja) 乳濁液の製造方法
JP2018168260A (ja) シード微粒子の製造方法、シード微粒子分散体及び重合体の製造方法
JP2002506482A (ja) ポリ塩化ビニル、その製造方法、およびそれを含有する組成物
JPH0578420A (ja) 貯蔵安定性の優れたw/o型エマルジヨンポリマーの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180705

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20180705

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20181018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181023

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181218

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190115

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190212

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190312

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190401

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6519032

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250